判例検索β > 令和3年(わ)第1462号
非現住建造物等放火、建造物損壊、器物損壊
事件番号令和3(わ)1462
事件名非現住建造物等放火、建造物損壊、器物損壊
裁判年月日令和4年8月30日
法廷名京都地方裁判所
全文全文
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2022-08-30
情報公開日2022-10-06 04:00:08
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主文
被告人を懲役4年に処する
未決勾留日数中250日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、
第1【令和3年11月2日付け起訴状記載の公訴事実】
1
令和3年7月24日午後7時9分頃、名古屋市a区b町c番d号所在の在日本
大韓民国民団愛知県地方本部敷地内において、A組合(代表理事B)所有の同所建物に付属する硬質ポリ塩化ビニル管に、着火剤を紙に包んで麻縄で縛ったものを立てかけ、その紙にライターを使用して点火して火を放ち、同管(雨どい及び雨どい受け)を焼損させた上、同管付近の同建物壁面及び同組合所有の芝を焼損させ(損害見積額合計51万7,000円)、
2
同日午後7時11分頃、同区b町c番e号所在の学校法人愛知韓国学園名古屋
韓国学校敷地内において、同学園(理事長C)所有の同所建物に付属する硬質ポリ塩化ビニル管に、着火剤を紙に包んで麻縄で縛ったものを立てかけ、その紙にライターを使用して点火して火を放ち、同管(雨どい及び雨どい受け)を焼損させた上、同管付近の同建物壁面及び同学園所有の芝を焼損させ(損害見積額合計25万3,000円)、
もってそれぞれ他人の建造物を損壊するとともに、他人の物を損壊し、第2【訴因変更後の令和3年12月27日付け起訴状記載の公訴事実】
令和3年8

月30日午後4時10分頃、京都府宇治市伊勢田町ウトロf番地のg所在のDが所有する木造トタン葺平屋建家屋(延床面積約50㎡)において、同家屋に火を放てば、同家屋を焼損した上、近接する別表記載の家屋等6棟に火が燃え移ることを認識しながら、別表番号1及び2の両家屋が現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない空き家であると誤信した上で、上記木造トタン葺平屋建家屋内にある木製床板の上にキッチンペーパーを差し込んだライター用オイル入りの缶を置き、その上からライター用オイルを撒いた上、上記キッチンペーパーにライターで点火して火を放ち、その火を同床板に燃え移らせるなどし、よって上記家屋を全焼させるとともに、別表記載の家屋等6棟を全焼させるなどして焼損(焼損面積合計約389㎡)した。(法令の適用)
1
構成要件及び法定刑を示す規定

被告人の判示第1の1及び2の各所為のうち、各建造物損壊の点はいずれも刑法260条前段に、各器物損壊の点はいずれも刑法261条に、判示第2の所為は刑法109条1項にそれぞれ該当する。
2
科刑上の一罪の処理

判示第1の1及び2は、それぞれ1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから、刑法54条1項前段、10条により1罪としていずれも重い建造物損壊罪の刑で処断する。
3
併合罪の処理

刑法45条前段の併合罪であるから、刑法47条本文、10条により最も重い判示第2の罪の刑に法定の加重をする。
4
宣告刑の決定

以上の刑期の範囲内で被告人を懲役4年に処する。
5
未決勾留日数の算入

刑法21条を適用して未決勾留日数中250日をその刑に算入する。6
訴訟費用

訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させない。(量刑の理由)
被告人は、かねて在日韓国朝鮮人が不当に利益を得ているなどとして嫌悪感や敵対感情等を抱くとともに、日本人もこの問題を考えることなく放置しているなどとして不満を持っていたところ、離職を余儀なくされるなどして自暴自棄になる中、鬱憤を晴らすとともに、在日韓国朝鮮人や日本人を不安にさせてこの問題に世間の注目を集め、自分が思うような排外的な世論を喚起したいなどと考え、判示第1の建造物損壊器物損壊の各犯行(以下、併せて名古屋事件という。)に及んだ。しかし、この事件が期待したほど世間の注目を集めなかったことから、これに不満を覚え、より大きな事件を起こして強く世論を喚起したいなどと考えるとともに、折から在日韓国朝鮮人が居住する京都のウトロ地区に平和祈念館の開設計画があることを知ると、そこで展示される予定になっていた立て看板等を焼損して、その展示や同館の開設を阻止しようなどとも考え、これらが収納されていた木造家屋に放火して、判示第2の非現住建造物等放火の犯行(以下京都事件という。)にも及んだ。
京都事件についてみると、被告人は、当時住んでいた奈良からウトロ地区まで出向いて、上記家屋内に入り込み、あらかじめ用意したライター用オイルを入れた缶に、キッチンペーパーを導火線として差し込んだ手製の発火装置を木の床の上に置き、同種のオイルを同キッチンペーパーとその付近の床に撒いた上、同装置に点火して放火した。強固な犯意に基づき、同家屋を全焼させるとともに周囲に密集する木造家屋等をも延焼させるおそれの大きい、誠に危険な態様で放火したものというべきであり、現に家屋等5棟が全焼し、2棟が半焼して焼損面積は合計約389㎡に及ぶという重大な結果を生じさせている。加えて、地域住民にとっての活動拠点が失われ、その象徴とされる立て看板等の史料が焼失するなどしており、被害者らが被った財産的損害のみならず精神的苦痛等も大きいものとうかがわれ、その処罰感情が極めて厳しいのも当然といえる。
名古屋事件も、事前の実験を踏まえて紙に包むなどした2組の着火剤を用意し、奈良から名古屋まで出向いて続けざまに行った、強い犯意に基づく陰湿な犯行である。財産的な損害額自体も合計77万円と相応に大きい上、韓国学校に通う子どもらや保護者を含む関係者に与えた不安感等も軽視できず、被害者らの処罰感情は厳しい。
なお、名古屋事件から僅か1か月余り後に、よりエスカレートした京都事件を引き起こした点も軽視できない。
そして、京都・名古屋両事件に関する上記の動機は、主として、在日韓国朝鮮人という特定の出自を持つ人々に対する偏見や嫌悪感等に基づく、誠に独善的かつ身勝手なものであって、およそ酌むべき点はない。のみならず、被害の発生を顧みることなく放火や損壊といった暴力的な手段に訴えることで、社会の不安をあおって世論を喚起するとか、自己の意に沿わない展示や施設の開設を阻止するなどといった目的を達しようとすることは、民主主義社会において到底許容されるものではない。本件各犯行の動機は甚だ悪質というべきであり、被告人に対しては、本件各犯行を行ったことについて、相当に厳しい非難が向けられなければならない。これらの犯情等によると、被告人の刑事責任にはかなり重いものがある。その余の事情をみると、被告人は、これまで前科がないほか、当公判廷で事実を認め、排外的なものを含めて自らの考え方を変えていく必要があるなどと言及する部分もある。もっとも、本件各犯行で意図した世論の喚起にこだわるような姿勢も最後まで見せるなど、反省が深まっているようにはうかがえない。これらの事情も相応に踏まえつつ、被告人を主文の刑に処することとした。
(求刑・懲役4年)
令和4年9月1日
京都地方裁判所第1刑事部
裁判長裁判官

増田啓祐
裁判官

平手一男
裁判官

熊野結
(別表省略)

衣子
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