判例検索β > 令和4年(わ)第49号
入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害、加重収賄、贈賄
事件番号令和4(わ)49
事件名入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害、加重収賄、贈賄
裁判年月日令和4年7月8日
法廷名那覇地方裁判所
全文全文
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2022-07-08
情報公開日2022-09-21 04:00:07
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主文
被告人Aを懲役3年6月に、被告人Bを懲役3年に、被告人Cを懲役2年に処する
被告人Aに対し、未決勾留日数中40日をその刑に算入する。
被告人B及び被告人Cに対し、この裁判が確定した日から4年間それぞれその刑の執行を猶予する。
被告人Aから1700万円を追徴する。
訴訟費用は被告人Cの負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人Aは、普通地方公共団体である沖縄県八重山郡a町の町長として、同町が発注する工事の指名競争入札に関する予定価格及び最低制限価格の決定等に関する同町の事務を掌理する職務に従事していたもの、被告人Bは、海洋構造物の建設、ケーブルパイプラインの布設浚渫等を業とするD株式会社の代表取締役として同社の業務全般を統括していたもの、被告人Cは、同社の下請けとして海上警備の業務に従事するなどしていたもの、
分離前相被告人Eは、
各種鉄鋼構造物の設計、
製造、
運転及びこれらに関する工事請負等を業とするF株式会社沖縄支店長代理として、同支店が担当する沖縄県内における工事等の営業等の業務に従事していたもの、分離前相被告人Gは、平成29年当時は、同社環境本部営業統括部東日本営業部第二営業室所属の営業担当として、令和2年当時は、同営業統括部アクア営業部所属の営業担当として、a町における海底送水管工事の入札に関する業務に従事していたもの、分離前相被告人Hは、同社環境本部アクア事業部パイプライン技術部技術室長として、前記海底送水管工事の工事費用に関する積算等同工事の入札に関する業務に従事していたものであるが、
第1

被告人A、同B、同Cは、平成29年5月26日に前記a町が指名競争入札
を執行したa町東部第1区海底送水管更新工事(b~c)の請負契約の締結に関し、前記F株式会社に前記工事を落札させようと考え、共犯者E、同Gと共謀の上、被告人Aが、前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに、その職務に反し、前記工事の最低制限価格を被告人Cに教示すれば、被告人Bを経由してその価格が前記入札の指名業者である同社の従業員に伝達されて、同社が前記入札において最低制限価格を踏まえた金額で入札することを知りながら、同月24日頃、沖縄県内において、同県内にいた被告人C及び共犯者Eに対し、前記入札に関する秘密事項である前記工事の最低制限価格が8億4943万2000円である旨電話で教示し、よって、同月26日、同県石垣市(住所省略)において執行された前記入札において、前記F株式会社に前記教示した価格と同額で入札させて、同社に前記工事を落札させ、もって、入札等に関する秘密を教示するとともに、偽計を用いて入札等の公正を害すべき行為を行った
第2

被告人Aは、前記第1のとおり、前記F株式会社が前記工事を落札できるよ
うに最低制限価格を教示する職務上不正な行為をしたことに対する謝礼及び今後も同社に有利な取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、平成30年3月16日頃、沖縄県石垣市(住所省略)に停車中の自動車内において、被告人Bから、現金1000万円の供与を受け、もって自己の職務上不正な行為をしたことに関し賄賂を収受した
第3

被告人A、同B、同Cは、令和2年5月28日に同町が指名競争入札を執行
したa海底送水管更新工事の請負契約の締結に関し、同社に前記工事を落札させようと考え、共犯者E、同H、同Gと共謀の上、被告人Aが、前記職務に従事する者として適正に入札等に関する職務を行う義務があるのに、その職務に反し、前記工事の最低制限価格を被告人Bに教示すれば、その価格が前記入札の指名業者である同社の従業員に伝達されて、同社が前記入札において最低制限価格を踏まえた金額で入札することを知りながら、同月20日、沖縄県石垣市(住所省略)の飲食店d店内において、被告人Bに対し、前記入札に関する秘密事項である前記工事の最低制限価格が6億7288万1000円である旨記載された書面を交付してその価格を教示し、よって、同月28日、同市(住所省略)所在のa町役場仮設庁舎ホールにおいて執行された前記入札において、前記F株式会社に前記教示した価格に近接した6億7288万2000円で入札させて、同社に前記工事を落札させ、もって、入札等に関する秘密を教示するとともに、偽計を用いて入札等の公正を害すべき行為を行った
第4

被告人Aは、前記第3のとおり、前記F株式会社が前記工事を落札できるよ
うに被告人Bに対し、前記入札に関する秘密事項である前記工事の最低制限価格を教示する職務上不正な行為をしたことに対する謝礼及び今後も同社に有利な取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら1
令和2年5月20日、沖縄県石垣市(住所省略)の飲食店d店内において、被告人Bから、現金200万円の供与を受け、もって自己の職務上不正な行為をしたことに関し賄賂を収受した

2
同年12月4日頃、同市(住所省略)の飲食店e店内において、被告人Bから、現金500万円の供与を受け、もって自己の職務上不正な行為をしたことに関し賄賂を収受した

第5
1
被告人Bは、
被告人Cと共謀の上、前記第4の1の日時場所において、被告人Aに対し、前記第4記載の趣旨の下に現金200万円を供与し、もって被告人Aが職務上不正な行為をしたことに関し賄賂を供与した

2
前記第4の2の日時場所において、被告人Aに対し、前記第4記載の趣旨の下に現金500万円を供与し、もって被告人Aが職務上不正な行為をしたことに関し賄賂を供与した

第6

被告人Cは、被告人Bと共謀の上、前記第4の1の日時場所において、被告
人Aに対し、前記第4記載の趣旨の下に現金200万円を供与し、もって被告人Aが職務上不正な行為をしたことに関し賄賂を供与した
(量刑の理由)
1
本件は、当時のa町長、指名業者であるF会社の担当者、その下請け・孫請け事業者ないしその代表者が共謀し、
a町発注の海底送水管更新工事2件について、
指名競争入札の最低制限価格を教示し、これと同額又は近接した金額で前記F会社に落札させた上、その謝礼等の趣旨で贈収賄に及んだという事案である。これら一連の犯行は、まさに官民の不正な癒着というべきであって、落札価格を不当に釣り上げるのではなく、特定の指名業者による落札を確実にするという事案の性質を考慮しても、町長の職務行為の廉潔性や入札制度の公正性を蔑ろにし、社会の信頼を大きく失墜させるものである。

2
被告人Aは、町長就任以前の町議会議員の頃から業者側の接待を受けていたところ、町長に就任するや、一度目(平成29年度)の最低制限価格の教示に及んだ。二度目(令和2年度)の教示も、国の補助金の交付見込みが立つなど当該工事の入札実施が現実味を帯びるや自らこれを業者側に伝え、改めて最低制限価格の教示を求められると躊躇なく応じている。被告人Aの述べるところを踏まえても、経緯や動機に大きく酌むべき点は見当たらないし、自らが定め、自らが封印した入札の秘密を、実に安易に教示したとの非難を免れない。これらの見返りに収受した賄賂は、合計1700万円とこの種事案の中でも高額である。強く廉潔性が求められる現職町長の立場を悪用して犯行を繰り返した刑事責任は重く、実刑判決は免れない。
その上で、事実を潔く認め、a町に寄附を行うとともに、退職金につき返納申入れや供託を行うなど、深い反省の態度を示していること、妻及び長男が指導監督を誓約していることなど、弁護人の指摘を踏まえて一般情状一切も考慮し、刑期を定めた。

3
被告人B及び同Cについてみると、各工事を落札するF会社の下請け・孫請けに入ることで利益を受けたいなどという利欲的な動機に酌量の余地はない。F会社関係者と被告人Aの会食の場を設け、一連の贈賄行為を主導的に行った被告人B、被告人Aの知己として、同人と業者側との連絡窓口の役を担い、200万円の賄賂を供与した被告人Cとも、果たした役割は、単なるパイプ役にとどまらないものがあって、軽視し難い。各人の役割の軽重や供与した賄賂額の多寡を踏まえつつ、両名がいずれも事実を認め、反省の弁を述べていること、被告人Bについては妻が指導監督を誓約していることといった事情を考慮して、各犯情に応じた懲役刑を量定し、刑の執行を猶予した。
(求刑・被告人Aにつき懲役4年、主文同旨の追徴、被告人Bにつき懲役3年、被告人Cにつき懲役2年)
令和4年7月8日
那覇地方裁判所刑事第1部

裁判長裁判官

小野
裁判官

加藤
裁判官

山本裕信貴隼人
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