判例検索β > 令和2年(わ)第457号
建造物侵入、住居侵入、窃盗、強盗、銃砲刀剣類所持等取締法違反
事件番号令和2(わ)457
事件名建造物侵入、住居侵入、窃盗、強盗、銃砲刀剣類所持等取締法違反
裁判年月日令和4年7月20日
法廷名京都地方裁判所
全文全文
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2022-07-20
情報公開日2022-09-15 04:00:08
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主文
被告人を懲役12年に処する
未決勾留日数中540日をその刑に算入する。
京都地方検察庁で保管中の果物ナイフ1本(同庁令和3年領1787号符号1)を没収する。
理由
【罪となるべき事実】
第1
1
(令和2年9月18日付け起訴状京都の路上強盗事件)

被告人は、帰宅途中のAから金品を強取する目的で、令和2年3月13日午前3時40分頃、京都市内の歩道上において、同人(当時35歳)に対し、その背後から抱き付いて手でその口を塞ぎ、同人を路上に引き倒し、包丁様の刃物をその顔に突き付け、騒いだら顔刺すぞと言うなどの暴行脅迫を加え、その反抗を抑圧した上、同人から同人所有又は管理の現金約9000円及びキャッシュカード等16点在中の手提げ鞄(時価合計約2万3000円相当)を強取した。

2
被告人は、前記1の犯行により強取したキャッシュカードを使用して現金を
窃取しようと考え、同日午前4時21分頃、同市内のコンビニエンスストアB店において、同所に設置された現金自動預払機に前記キャッシュカードを挿入して同機を作動させ、株式会社C銀行お客さまサービス部長D管理の現金8万3000円を引き出してこれを窃取した。
第2(令和2年7月30日付け起訴状マンション強盗事件)
1
被告人は、帰宅途中のEから金品を強取しようと考え、令和2年4月13日午後9時37分頃、
京都市内のマンションのエレベーター内において、(当
同人
時28歳)に対し、その背後から抱き付いて手でその口を塞ぎ、包丁様の刃物をその腹部に突き付け、動くな騒いだら殺すぞなどと言うなどして、同人に前記マンション同人方まで案内させ、その頃、同人から金品を強取する目的で、同人に解錠させた玄関扉から同人方に侵入した上、引き続き、同人方玄関内において、同人に対し、前記包丁様の刃物をその胸元に近付け、刺しといた方がよかったか殺されたいんか金出せキャッシュカード出せと言うなどの暴行脅迫を加え、その反抗を抑圧し、同人所有又は管理の現金2万円及びキャッシュカード1枚を強取し、その際、前記暴行脅迫により、同人に加療約15日間を要する両手切創の傷害を負わせた。
2
被告人は、前記第2、1の犯行により強取したキャッシュカードを使用して
現金を窃取しようと考え、同日午後9時59分頃、同市内のコンビニエンスストアF店において、同所に設置された現金自動預払機に前記キャッシュカードを挿入して同機を作動させ、株式会社C銀行お客さまサービス部長D管理の現金50万円を引き出してこれを窃取した。
第3(令和3年3月29日付け起訴状横浜の路上強盗事件)
1
被告人は、通行人から金品を強取しようと考え、令和2年4月19日午後7
時51分頃、横浜市内の路上において、Gに対し、背後からその口を右手で塞ぎ、左手に持った果物ナイフ(刃体の長さ約9.7センチメートル。京都地検令和3年領1787号符号1)を示しながら、

動くな。声を出すな。

と言い、同人の顔面付近を拳で2回殴るなどの暴行脅迫を加え、その反抗を抑圧した上、同人から手提げかばんを強取しようとしたが、同人に抵抗されたため、その目的を遂げず、その際、同人に加療約17日間を要する左手切創等の傷害を負わせた。
2
被告人は、業務その他正当な理由による場合でないのに、前記第3、1記載
の日時場所において、前記第3、1記載の果物ナイフ1本を携帯した。第4(令和2年5月29日付け起訴状コンビニ強盗事件)
被告人は、現金を強取する目的で、令和2年5月7日午前2時24分頃、株式会社HのCVS事業部部長Iが看守する京都市内のコンビニエンスストアJ店に、同店南西出入口から侵入し、その頃、同所において、同店従業員Jに対し、持っていたナイフの刃を突き付け、札を全部出せなどと言い、同ナイフで同人の両手を数回切り付けるなどの暴行脅迫を加え、同人の反抗を抑圧して現金を強取しようとしたが、レジスターのキャッシュドロアーを開けられなかったためにその目的を遂げず、その際、前記暴行により、同人に加療約25日間を要する右手背切創及び左手背切創等の傷害を負わせた。
【証拠の標目】
(略)
【累犯前科】
1
平成25年5月10日に東京地方裁判所立川支部で宣告
詐欺罪により懲役1年6月
平成28年8月11日刑の執行終了

2
平成29年2月14日に大津地方裁判所彦根支部で宣告
1の刑執行終了後に犯した詐欺罪により懲役2年10月
令和元年10月7日刑の執行終了

【法令の適用】


第1の1

刑法236条1項

第1の2、第2の2

刑法235条

第2の1

住居侵入の点につき刑法130条前段
強盗致傷の点につき同法240条前段

第3の1

刑法240条前段

第3の2

銃砲刀剣類所持等取締法31条の18第2項
2号、22条

第4

建造物侵入の点につき刑法130条前段
強盗致傷の点につき同法240条前段

科刑上一罪の処理
第2の1

住居侵入強盗致傷との間には手段結果の関
係があるので、刑法54条1項後段、10条
により1罪として重い強盗致傷罪の刑によ
り処断する。

第4

建造物侵入強盗致傷との間には手段結果の
関係があるので、刑法54条1項後段、10
条により1罪として重い強盗致傷罪の刑に
より処断する。

刑種の選択
第2の1、第3の1、第4
第1の2、第2の2、第3の2

いずれも有期懲役刑
いずれも懲役刑

犯加重
いずれも刑法59条、
56条1項、
57条
(3
犯の加重。第1の1、第2の1、第3の1、
第4につき同法14条2項の制限内で)

併合罪の処理

刑法45条前段、47条本文、10条(刑及
び犯情の最も重い第4の罪の刑に同法14
条2項の制限内で法定の加重)

未決勾留日数

刑法21条


刑法19条1項2号、2項本文


訴訟費用の不負担

刑事訴訟法181条1項ただし書

【量刑の理由】
被告人は、約2か月の間に、強盗をするために、予め自宅からナイフ等の刃物を持ち出し、一人歩きの女性を物色することを複数回繰り返す中で、強盗致傷3件及び強盗1件等の犯行に及んでおり、常習的な犯行である。京都の路上強盗事件とマンション強盗事件では、刃物を示して現金やキャッシュカードを奪うだけでなく、キャッシュカードを用いた窃盗を確実に行うべく、被害者の身分証明証を利用し、暗証番号が違っていたら更に危害を加える旨脅迫するなどして、正しい暗証番号を聞き出し、窃盗を遂げている。コンビニ強盗事件では、緊急事態宣言下で出歩く女性がいなかったことからコンビニ強盗に変更し、現金を差し出さない被害者の両手を複数回に渡って意図的に切り付けている。いずれの事件でも金員奪取に向けた強固な犯意が認められる上、刃物を利用した危険性の高い犯行であり、特に刃物で意図的に傷付けたコンビニ強盗事件は悪質である。また、マンション強盗事件では被害者方に押し入り、横浜の路上強盗事件では、助けを呼ぶ被害者の頭を殴り付けてもいて、ナイフを示すことにとどまらない恐怖心を被害者に与えている。横浜の路上強盗事件とコンビニ強盗事件の各被害者は、刃物による傷で後遺症や目立つ傷跡を残しており、傷害結果を軽く見ることはできない。また、京都の路上強盗事件とマンション強盗事件については、当初から被害者の銀行預金等も狙った犯行であるところ、窃盗も含めた被害額は多額である。
被告人は、コンビニ強盗事件を除き十分な収入がある中で、遊興費欲しさから各犯行に及んでいる。被告人は、他人の人生に自分という存在を刻み付けたいとの承認欲求もあったなどと述べるが、いずれにしても身勝手な動機である。また、被告人は、約15年前ではあるものの、刃物を用いた女性に対する強盗致傷という同種前科を有する上、その後も服役を繰り返しながら、直近の刑執行終了から半年程度で各犯行に及んでいる。前科の多くは金目当ての犯行であり、被告人が各犯行に及んだことには、厳しい非難が妥当する。
以上を踏まえ、被告人がした罪の重さを検討すると、同種事案(刃物を用いた強盗致傷の単独犯であって、処断罪と同種の罪の件数が2~4件の事案)の中で相当重い部類といえる。
そして、再犯可能性についてみると、常習性や前科関係からすると、再犯のおそれは低くない。もっとも、被告人は起訴後に罪を認め、自分のずれた価値観等を改めたい旨述べるなど更生の意欲を示しており、このことは被告人に有利に考慮することができる。
以上より、被告人に対しては、主文の刑を科すのが相当であると判断した。(求刑

懲役18年及び主文掲記の没収、弁護人の科刑意見

懲役8年)

令和4年7月20日
京都地方裁判所第3刑事部

裁判長裁判官

安永武央
裁判官

村川主和
裁判官

大野友己
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