判例検索β > 令和3年(わ)第713号
詐欺
事件番号令和3(わ)713
事件名詐欺
裁判年月日令和4年7月8日
法廷名名古屋地方裁判所
全文全文
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2022-07-08
情報公開日2022-08-26 04:00:09
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主文
被告人を懲役2年10月に処する
未決勾留日数中150日をその刑に算入する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
【罪となるべき事実】
被告人は、
第1

A、B、C及びDと共謀の上、中小企業庁が所管する国の持続化給付金制度を利用して同給付金の名目で現金をだまし取ろうと考え、Bが、令和2年7月1日、三重県鈴鹿市(住所省略)の同人使用の建物内において、真実は、申請名義人の事業内容、事業収入等の内容は虚偽であるのに、これらが真実であるように装い、インターネットに接続されたパーソナルコンピュータを使用して、同給付金申請用ページに接続し、Dがサービス業を営む個人事業者であり、前年の年間事業収入を250万1910円、令和2年の売上減少対象月を4月、同月の月間事業収入を8万4740円、売上減少対象月の前年売上額を20万8492円などと入力するとともに、同入力内容に沿う内容虚偽の所得税確定申告書の控え及び売上台帳等の画像データ等を添付して同給付金の給付を申請し、同庁から同給付金の給付決定等について業務委託を受けた一般社団法人E等から更に業務委託を受けたF株式会社の審査担当者らを介し、一般社団法人E持続化給付金事務局事務局長補佐Gに、同給付申請が給付要件を満たす正当なものと誤信させてその給付を決定させ、よって、同年7月7日、一般社団法人Eから業務委託を受けた株式会社Hの担当者に、名古屋市(住所省略)株式会社I銀行J支店に開設されたD名義の普通預金口座に現金100万円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。

第2

A、B、C及びKと共謀の上、中小企業庁が所管する国の持続化給付金制度を利用して同給付金の名目で現金をだまし取ろうと考え、Bが、令和2年7月11日、前記第1の同人使用の建物内において、真実は、申請名義人の事業内容、事業収入等の内容は虚偽であるのに、これらが真実であるように装い、インターネットに接続されたパーソナルコンピュータを使用して、同給付金申請用ページに接続し、Kがサービス業を営む個人事業者であり、前年の年間事業収入を255万1910円、令和2年の売上減少対象月を4月、同月の月間事業収入を8万4740円、売上減少対象月の前年売上額を21万2659円などと入力するとともに、同入力内容に沿う内容虚偽の所得税確定申告書の控え及び売上台帳等の画像データ等を添付して同給付金の給付を申請し、同庁から同給付金の給付決定等について業務委託を受けた一般社団法人E等から更に業務委託を受けたF株式会社の審査担当者らを介し、一般社団法人E持続化給付金事務局事務局長補佐Gに、同給付申請が給付要件を満たす正当なものと誤信させてその給付を決定させ、よって、同年7月20日、一般社団法人Eから業務委託を受けた株式会社Hの担当者に、名古屋市(住所省略)株式会社L銀行M支店に開設されたK名義の普通預金口座に現金100万円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。
第3

A、B、C、D及びNと共謀の上、中小企業庁が所管する国の持続化給付金制度を利用して同給付金の名目で現金をだまし取ろうと考え、Bが、令和2年7月11日、前記第1の同人使用の建物内において、真実は、申請名義人の事業内容、事業収入等の内容は虚偽であるのに、これらが真実であるように装い、インターネットに接続されたパーソナルコンピュータを使用して、同給付金申請用ページに接続し、Nがサービス業を営む個人事業者であり、前年の年間事業収入を205万3260円、令和2年の売上減少対象月を4月、同月の月間事業収入を6万9800円、売上減少対象月の前年売上額を17万1105円などと入力するとともに、同入力内容に沿う内容虚偽の所得税確定申告書の控え及び売上台帳等の画像データ等を添付して同給付金の給付を申請し、同庁から同給付金の給付決定等について業務委託を受けた一般社団法人E等から更に業務委託を受けたF株式会社の審査担当者らを介し、一般社団法人E持続化給付金事務局事務局長補佐Gに、同給付申請が給付要件を満たす正当なものと誤信させてその給付を決定させ、よって、同年7月20日、一般社団法人Eから業務委託を受けた株式会社Hの担当者に、名古屋市(住所省略)株式会社O銀行P支店に開設されたN名義の普通預金口座に現金100万円を振込入金させ、もって人を欺いて財物を交付させた。
【事実認定の補足説明】
第1
1
争点等
本件で、共犯者とされているA、B、C、D、K及びNに、各判示の詐欺の故意及び共謀があったこと自体は、被告人側も特段争っておらず、証拠上も認めることができる。
補足すると、
(本件共犯者らの供述には曖昧な部分もあるものの、
)まず、本
件の各給付申請名義人であるD、K及びNは、当時、いずれも個人事業者ではなかったにもかかわらず、持続化給付金を受け取るため、虚偽内容の確定申告書(ないしその控え)を税務署や給付申請手続を代行するBに提出していること(なお、Dは、判示第3の事件では、Nに対し、税務署では職業について虚偽内容の説明をするよう教示するなどもしていること)などからすれば、それぞれ、本件で正規な手続によることなく給付申請がなされ得ることを認識し、本件詐欺についての少なくとも未必的な故意があったことが推認できる。また、Aは、当時、同じ会社(放送受信料の収納代行業務等を行う株式会社Q)に勤務していたDについてはもとより、大学生であったKやNについても個人事業者ではないことを認識しながら、これらの者を持続化給付金の給付申請希望者等として繰り返し被告人に引き合わせるなどしたと認められること、行政書士であり本件の給付申請手続を代行したBは、自身が作成して給付申請までの一連の手続に用いられた各確定申告書等に、特段の資料にも基づかずほぼ一律の内容を適当に記載するなどしていること、そして、当時被告人と交際しており、その活動を手伝うなどしていたCについても、本件で給付申請名義人の手元に残るのは持続化給付金制度の趣旨を逸脱するほど低額の40万円であるといった不自然なスキームを分かりながら、一連の手続の進捗状況を確認してAに対し適宜指示する等もしていることなどに照らすと、いずれも本件の各給付申請が正規なものではないことを認識し、ひいては本件詐欺の故意(少なくとも未必的な故意)を有していたことが推認できる。そして、これらの者の間には、その連絡状況やそれぞれの関与の態様等を踏まえ、本件詐欺の共謀(一部は順次的な共謀)が成立していたと認められる。
2
もっとも、被告人は、本件で持続化給付金の給付申請手続が不正になされるという認識はなかった旨述べ、弁護人は、判示第1ないし第3の各行為のいずれについても被告人には詐欺の故意及び共犯者らとの共謀が無いから、無罪であると主張している。そこで、当裁判所が前記罪となるべき事実を認定した理由を説明する。

第2

本件での被告人の関与状況等について

1
関係各証拠によれば、まず、以下の事実関係(これらについては被告人側も特段争っていない。
)が認められる。


当時、被告人は、国会議員事務所のボランティアスタッフであったところ、令和2年3月頃に持続化給付金制度の存在を知った。そして、同年4月頃、知人のRから紹介されたAに対し、同制度に興味のある人集めをするよう持ち掛けるとともに、同月末ないし同年5月初め頃、以前から被告人と仕事上の付き合いのあった行政書士であるBに対して、持続化給付金の給付申請希望者からの相談を受けるように持ち掛け、また、給付申請手続に用いる確定申告書の作成分も含めたBの報酬についての話もした。



同月4日、被告人は、名古屋市内にあるバー(S)で、A及びC同席の下、Aの勤務先会社のインターン生であり、当時大学生のK、同社の従業員であるD及びTと会い、政党の秘書をやっているなどと自己紹介するとともに、持続化給付金制度に関する説明をした(以下5月4日会合といい、この会合が判示第1、第2の各事件につながっている。なお、このときにされた詳しい説明内容については後記2で検討する。)。
同月12日、被告人は、名古屋市内にある料理屋(U)で、A及びC同席の下、Aから紹介された、当時大学生であったN他1名と会い、政党の秘書をやっている旨自己紹介をするとともに、持続化給付金制度に関する説明をした(以下5月12日会合といい、この会合が判示第3の事件につながっている。なお、このときにされた詳しい説明内容については、後記2で検討する。)。
その後、被告人は、Bに対し、LINEで、同月18日にT、D、Kを含む給付申請希望者の名前等を、同月21日にNを含む給付申請希望者の名前等を記載して送信した(この連絡の後、本件の各給付申請名義人とBとの間で所要のやり取り等がなされ、Bは各判示の給付申請手続を行った。。)


ところで、5月4日会合後、被告人は、こうした給付申請希望者に対する持続化給付金制度についての説明会を複数回(少なくとも5、6回)行い、その際、給付申請希望者に対し、手数料として60万円を徴取する旨の説明もした。
この間の同月10日に行った説明会では、被告人は、国会議員秘書である旨自己紹介した上で、参加者の中に大学生や会社勤めをしている者といった、個人事業者ではない者も存在することを確認しつつ、持続化給付金の申請に関し、次のような説明をした。すなわち、被告人は、

裏ワザじゃないんですけど、去年に遡って個人事業主をやっていたという……

立て付けとしましては不正受給になってしまうという細かい条件がありまして、……個人事業主さんとしての活動を、貰った後も必ずやっていただくことが第一条件となっています

、皆さんもやはり学生の方とか、まだ社会出て間もない方とかですね、……事業主としてまずやっていけるのかどうかっていう疑問もあるかもしれません。……貰った後に経済産業省のほうからですね、皆様に対して……抜き打ち調査があった時に必ずですね、リスクにならないように、こちらサポート体制をしっかりとやります……、

個人事業主とはどういったことなのかとか、そこもご理解いただく必要があります……

今回貰う給付金を、次の確定申告までに貯めてるとですね、……残ったお金必ず税金とられちゃいますので。それは……事業税という形で。これはもう個人事業主と全く同じ扱いになりますので……

などといった発言をした(以下5月10日発言という。)。


本件の過程で、Tは、持続化給付金の給付申請手続の進捗や手数料回収の進行状況等について一元的に管理するVのスプレッドシートを作成した。このスプレッドシートについては、K、D及びNが給付申請名義人となった件に関する記載も含まれ、Tの後はDが管理に当たり、D、A及びCがアクセスする権限を有していた。

2
次に、本件の給付申請名義人となったD、K及びNの各証言についてみる。⑴

5月4日会合の状況につき、D及びKは、公判廷で、それぞれ被告人に対し、Aの下で働いている(D)とか、Aの会社でインターンとして働いており、大学生である(K)と自己紹介した、被告人からは、

個人事業主をこれからやっていく人全員が持続化給付金を受け取れる。(D)「個人事業主


になれば100万円を受け取ることができる。(K)などと説明を受けた、」
被告人から、持続化給付金を受け取るためには前年から個人事業者として収入を得ていたことが必要だとは教えてもらっていない(D)などと証言している。
次に、5月12日会合の状況につき、Nは、公判廷で、被告人に対し、大学生であり運送会社でアルバイトをしていると自己紹介した、被告人からは、

個人事業主になったら100万円がもらえる。40万円が自分の手元に残って、残りの60万は手数料として持っていかれる

などと説明を受けた、被告人から、持続化給付金を受け取るためには前年の収入について個人事業者として確定申告をしたことが必要だとは教えてもらっていないなどと証言している。


これら被告人が行ったとされる説明に関する各証言内容は、Dらがいずれも個人事業者ではないにもかかわらず、被告人からは、今後個人事業者になれば持続化給付金を受け取ることができるとの趣旨を言われたという点でそれぞれ合致している上、Nが聞いたという手数料の点も含め、いずれも被告人が同時期に行った別の説明会でも概ね同趣旨の説明(前記1⑶の5月10日発言等)がなされていることによっても、よく裏付けられているといえる。また、各自が給付申請名義人及び(Nの)紹介者にすぎないというKやNの本件における立場ないし役割のほか、Kは、捜査段階の当初はAをかばって被告人に不利な供述をしていたが、その後Aに対する不信感が増して素直に話そうという心境になったと証言しているところに特段疑いをいれるべき点はないこと、Nには共犯者の誰かをかばわなければならないような人的な関係はうかがわれないことからしても、KやNがあえて被告人に不利益な証言に及ぶ利益も形跡も見い出せない。以上によれば、K及びNの各証言の信用性は高いと考えられる。そして、Kの証言と整合するDの前記証言にも併せて信用性を認めることができる。
弁護人は、KやNは、被告人と話をする前にA等の別の人物から持続化給付金の話を既に聞いており、被告人から聞いたと認識している内容は正確な記憶に基づくものとはいえない旨をいうが、KもNもいずれも明確に被告人から説明を受けた旨証言している上、前記のようにこれらの証言を支える事情も種々存在することにも鑑みれば、KやNに弁護人指摘のような記憶の混同が生じているとは考えられない。

3
進んで、B及びCの各証言についてみる。


Bは、令和2年5月初め頃の電話で、被告人から、
代議士の事務所に行っているが、コロナで売上げが下がって大変だという相談がたくさんある。売上げは大体皆が250万円くらいで、職業としては健康食品の販売だが、利益はほとんどない状態で38万円以下。このような内容で確定申告書を作ってほしい。給付申請希望者から電話があったら対応してください。などの趣旨を言われ、これに応じた旨証言している。
Bが被告人から言われたという内容は、Bが本件で作成した各確定申告書等関係書類の内容とも沿うものであるところ、関係証拠によっても、本件で、Bが、第三者からの示唆なく専ら自身の判断でそうした内容の確定申告書等を繰り返し作成した上、各判示のような行動に出るべき理由や、また、そうした示唆が被告人以外の者から与えられた可能性はうかがわれない。弁護人は争うようであるが、Bの上記証言の信用性に特段の疑問はない。⑵

Cは、被告人が、持続化給付金の給付申請に関し、令和2年5月頃、政党の裏スキームというか裏ルートを使って、正規の方法(Cのいう表ルート)ではない方法で給付金を受け取れるというような内容を案内してもらったと証言している。また、スプレッドシートに関し、その入力項目については、被告人、A、D及びTが決めたものであり、被告人はCのパソコン上でスプレッドシートの内容を確認してAやDに所要の指示をしていた旨証言している。
Cの証言のうち、被告人が裏ルートなどという言葉を使っていたという点は、5月10日発言の内容とも整合するものであり、また、スプレッドシートに関する点については、被告人がAに持続化給付金に興味のある人集めを持ち掛けたという本件の発端(前記1⑴)に加え、党員拡大等のため持続化給付金についての説明会をしていたなどという被告人の供述を前提とすればなおさら、被告人においてもその後の手続の進捗状況等に関心を持つはずであって、被告人がスプレッドシートの内容確認等をしていたというのは合理的である。また、本件事件の当時、Cは被告人と交際する親密な関係にあったものであり、その後は関係性が解消されたとはいえ、上記の証言部分に関して被告人に殊更責任を転嫁しようとする動機も見い出し難い(なお、以上で検討した趣旨に照らし、本件の捜査段階に至るまでスプレッドシートを見たことすらなかったという被告人の供述を信用することはできない。)。4
以上によれば、本件での被告人の関与状況等について、前記1の特段争いのない事実関係に加え、D、K及びN(前記2)並びにB及びC(前記3)の各証言に係る事実関係を認めることができる。

第3

被告人における詐欺の故意及び共謀について

1⑴

前記第2で検討したところによれば、被告人は、5月4日会合及び5月12日会合において、個人事業者ではなく受給資格を有しないD、K及びNに対し、それを知りながら、今後個人事業者になれば持続化給付金を受け取ることができるなどと虚偽の内容(なお、被告人も、持続化給付金が新型コロナウイルスの影響で経済的打撃を受けた個人事業者に対して支払われるべきものであることは分かっていた旨自認している。)の説明をし、併せてBに対しては、確定申告書の作成等を依頼するに際して、個々の給付申請希望者の属性等に関わらず売上額や職業等について一律的な内容の話をした。その後も、給付申請希望者らが現に給付申請をしたかなどをスプレッドシートで確認するなどし、これに関心を寄せていたものと認められる。
以上の事実経過に照らすならば、被告人は、本件で、D、K及びNについて虚偽の内容の給付申請がなされ、これが正規の給付申請である旨誤信した持続化給付金事務担当者が所定の手続を行い、これによって持続化給付金が現に交付されることを予見し、かつこれを容認していたものと認めるのが相当である。



これに対し、公判廷で、被告人は、
(その内容自体相当不明確であるが、

要旨、本件に関しては、政党の党員拡大と将来政治家として選挙に出る際の支持につながればよいと考えて、持続化給付金の受給を希望する者を集めることをAに依頼し、自分は持続化給付金制度等の支援策の説明をした上で、給付申請希望者をBにつないだだけである、説明会の場で、当時経済産業省のホームページにも載っていない情報を伝えているという意味で裏ワザなどといったオーバートークをしたことはあるものの、持続化給付金の不正な給付申請がされることは承知していなかったという趣旨の供述をしている。しかし、
オーバートークについて被告人が述べるところは、その趣旨
自体理解に苦しむところである上、5月10日発言における(制度の仕組みをよく知っている立場でありながら)明らかに持続化給付金制度の趣旨から外れた説明内容を用いていること等に照らしても、被告人が給付申請希望者に対して説明したところが単に誇張したものにすぎないとの認識であったなどとはおよそ考え難い。また、被告人は、その供述によっても、給付申請名義人から徴収する手数料が持続化給付金制度の趣旨を逸脱するほど高額な60万円であることを認識していたのであって(前記第2・1⑶)、こう
した点からも、被告人が本件の給付申請が不正なものである旨承知していたことは十分うかがうことができる。被告人の供述は、本件に関係する状況等に照らしても、それ自体不自然不合理といわざるを得ず、前記⑴の認定を左右するような証拠価値を有しない。
更に補足すると、弁護人は、被告人は持続化給付金の申請を手伝うことによって党員拡大等につなげようと考えていたのであり、被告人に対する信頼を失わせるような不正な持続化給付金への関与といった不合理なことは行わない旨主張する。しかし、党員拡大等につなげようとしたとの被告人の供述を前提としても、5月10日発言からもうかがえるとおり、被告人は給付申請希望者らに対して自身が政党関係者であることを含め様々な説明方法を用いるなどしており、制度に詳しくない末端の給付申請希望者らについては、いずれかの時点で給付申請が正規なものではないことを認識し得たとしても、通常は未必的なものにとどまると考えられること等からすれば、これが被告人に対する信頼を損なわせるものに当たるとは必ずしもいえないから、弁護人の主張は当たらない。
また、弁護人は、CはAを介して事業をしていなかった者が持続化給付金の給付申請をしてよいかBに確認しているが、被告人が不正な申請に関わることを承知していたのであればCにそのようなことをさせないはずであるともいうが、CやBの証言によれば、最近事業を始めた人から持続化給付金を正規に受け取ることができるかという趣旨の個別の質問があり、Bに確認したといった程度のこととうかがわれるのであって、これを被告人が止めなかったからといって特段異とすべきものではない。
その他、弁護人の主張等に鑑み検討しても、前記⑴の判断は左右されない。2⑴

前記1⑴でみたような本件における被告人の認識内容等からすれば、まず、被告人には、判示第1ないし第3の各詐欺の故意が優に認められる。


次に、共謀の点について検討すると、前記第1、第2でみた本件における被告人や共犯者らの関与の仕方等にも照らすと、遅くとも各給付申請名義人が税務署に虚偽内容の確定申告書を提出するなどした令和2年6月下旬ないし7月上旬頃の時点では、被告人と各給付申請名義人を含む共犯者らとの間には、本件各詐欺を行うことについて少なくとも黙示的な意思連絡があったものと認められる。
そして、前記第2、第3・1のように、被告人は、本件各詐欺の過程において、政党関係者である自らの肩書を利用して、D、K及びNに対し、持続化給付金の不正受給に誘引する内容の説明をし、また、給付申請の手続を代行する行政書士のBも引き入れた上、給付申請の希望者をBにつなぐなど、中心的な立場で重要な役割を果たしたものと評価することができる。なお、手数料60万円の配分等について、Cは、

被告人から、Bに5万円、Aらに30万円、被告人に25万円と聞いており、被告人はCに『手数料』を受け取らせていた。

と証言しているところ、前述したCと被告人の間柄(前記第2・3⑵)や、Dも、回収した手数料をCに渡していた旨証言していること等に照らし、Cの上記証言部分にも特段疑いをいれるべき点は見い出せない。いずれにしても、被告人には各詐欺の正犯性も優に認めることができる。
第4

結論
以上の次第で、被告人に判示第1ないし第3の各詐欺の故意及び共犯者らとの共謀を認め、前記罪となるべき事実を認定した。

【法令の適用】
罰条
判示第1ないし第3の各所為について、いずれも刑法60
条、246条第1項

併合罪の処理

刑法45条前段、47条本文、10条(犯情の最も重い判
示第3の罪の刑に法定の加重)

未決勾留日数の算入

刑法21条


刑事訴訟法181条1項本文(負担)

訟費用
【量刑の理由】
本件は、被告人が、共犯者らと共に、新型コロナウイルス感染症の拡大により経済的打撃を受けた個人事業者の事業継続を迅速に支援するため比較的簡易な手続で給付が行われることにつけ込み、種々役割分担の上持続化給付金を詐取するという3件の詐欺行為(被害総額合計300万円)を行った事案であり、その組織的かつ計画的な態様は相当悪質である。その中で被告人は、政党関係者という自己の肩書きを利用するなどして、D、K及びNが給付申請希望者として本件犯行に加担することに大きな影響を与え、また、給付申請行為を代行等する行政書士のBを引き入れ、給付申請名義人とBとの間をつなぐなど、中心的な立場で重要な役割を果たしている。本件共犯者の中でも、被告人の責任は大きいものであったといえる(なお、当時被告人と交際関係にあったCが、Aに対して種々指示をしているなどの状況からも、被告人とその他の共犯者らとの力関係が見て取れる。)。
それに加えて、被告人は、平成23年9月に詐欺罪により懲役1年6月に処せられ、平成25年4月に刑執行終了した前科があることも、本件の量刑上決して軽視することはできない。
以上からすれば、被告人の刑事責任は全体として重く、本件につき実刑は免れないものというべきである。
その上で、被告人が被害弁償金名目の金員として給付申請名義人らに交付した金員は合計30万円にとどまっているが、共犯者によるものとはいえ、判示第1に関してはDが被害弁償金を準備しており、判示第2に関してはKにより被害弁償がなされていることといった事情に加え、本件で詐取された金銭のその後の流れ等は完全に解明されておらず、また、共犯者らのうち取り分けAの本件における関与の仕方や周囲の人間関係等にも不透明な部分は残るなど、検察官のように、被告人を本件の首謀者とまで断じることができるかにはやや疑問がないではないことなどの点も考慮し、被告人を懲役2年10月に処するのが相当と判断した。(求刑

懲役4年)
令和4年7月12日
名古屋地方裁判所刑事第4部

裁判長裁判官

辛島
裁判官

藤根明桃世
裁判官

奥野育美
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