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持続化給付金等支払請求事件
事件番号令和2(行ウ)455
事件名持続化給付金等支払請求事件
裁判年月日令和4年6月30日
法廷名東京地方裁判所
全文全文
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2022-06-30
情報公開日2022-08-04 04:00:07
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令和4年6月30日判決言渡

同日原本領収

令和2年(行ウ)第455号

持続化給付金等支払請求事件

口頭弁論終結日

裁判所書記官

令和4年3月3日
判主決文1
本件訴えのうち、確認請求に係る部分をいずれも却下する。

2
原告のその余の請求をいずれも棄却する。

3
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求

1
主位的請求1


被告国は、原告に対し、296万8000円及びこれに対する令和2年10月31日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。



被告国は、原告に対し、150万円及びこれに対する令和2年12月19日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

2
主位的請求2


被告Aは、原告に対し、200万円及びこれに対する令和2年10月31日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。



被告Bは、原告に対し、96万8000円及びこれに対する令和2年10月31日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。

3
主位的請求1⑴に対する1次的予備的請求(以下予備的請求1とい
う。)


被告国は、原告が令和2年9月8日付けでした持続化給付金の給付に係る申請に対し、給付額を200万円と決定せよ。



被告国は、原告が令和2年9月8日付けでした家賃支援給付金の給付に係る申請に対し、給付額を96万8000円と決定せよ。
4
主位的請求1⑴に対する2次的予備的請求(以下予備的請求2とい
う。)


原告が令和2年9月8日付けでした持続化給付金の給付に係る申請に基づき、原告が、被告国との間において、持続化給付金給付規程(中小法人等向け)9条1項に定める贈与契約上の地位を有することを確認する。


原告が令和2年9月8日付けでした家賃支援給付金の給付に係る申請に基づき、原告が、被告国との間において、家賃支援給付金給付規程(中小法人等向け)10条1項に定める贈与契約上の地位を有することを確認する。
5
主位的請求1⑴に対する3次的予備的請求(以下予備的請求3とい
う。)


原告が令和2年9月8日付けでした持続化給付金の給付に係る申請について、原告が持続化給付金給付規程(中小法人等向け)8条1項3号により不給付とされない地位にあることを確認する。



原告が令和2年9月8日付けでした家賃支援給付金の給付に係る申請について、原告が家賃支援給付金給付規程(中小法人等向け)9条1項3号によ
り不給付とされない地位にあることを確認する。
第2
1
事案の概要
本件は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下風営法という。)2条5項に定める性風俗関連特殊営業を行う原告が、持続化給付金給付規程(中小法人等向け)に基づく給付金(以下持続化給付金という。)及び家賃支援給付金給付規程(中小法人等向け)に基づく給付金(以下家賃支援給付金といい、持続化給付金と併せて本件各給付金という。)について、性風俗関連特殊営業を行う事業者に給付しない旨の上記各規程の定め(以下本件各不給付規定という。)は憲法14条1項に違反
しており無効であるなどと主張して、前記第1の各請求を行う事案である。主位的請求1⑴は、原告と被告国との間には、原告がした本件各給付金の申請(以下本件各申請という。なお、本件各申請が適式にされたものか否かについては争いがある。)により本件各給付金の贈与契約(以下本件各贈与契約という。)が成立したとして、被告国に対し、本件各贈与契約に基づき、持続化給付金200万円及び家賃支援給付金96万8000円並びにこれらに対する令和2年10月31日から支払済みまで民法所定年3分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。
主位的請求1⑵は、被告国が本件各不給付規定を定めるなどしたことは違法であるとして、被告国に対し、国家賠償法(以下国賠法という。)1条1項に基づく損害賠償請求として、損害金150万円及びこれに対する訴状送達
の日の翌日である令和2年12月19日から支払済みまで民法所定年3分の割合による遅延損害金の支払を求めるもの(以下本件国賠請求という。)である。
主位的請求2⑴は、原告と被告Aとの間には持続化給付金の受領委任契約が成立したとして、被告Aに対し、同契約に基づき、持続化給付金200万円及
びこれに対する令和2年10月31日から支払済みまで民法所定年3分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。
主位的請求2⑵は、原告と被告Bとの間には家賃支援給付金の受領委任契約が成立したとして、被告Bに対し、同契約に基づき、家賃支援給付金96万8000円及びこれに対する令和2年10月31日から支払済みまで民法所定年
3分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。
予備的請求1は、主位的請求1⑴に対する1次的予備的請求として、被告国に対し、本件各贈与契約に基づき、原告に対する持続化給付金の給付額を200万円、家賃支援給付金の給付額を96万8000円とする各決定をするよう求めるものである。

予備的請求2は、主位的請求1⑴に対する2次的予備的請求として、被告国との間で、原告が本件各贈与契約上の地位を有することの確認を求めるものであり、予備的請求3は、主位的請求1⑴に対する3次的予備的請求として、被告国との間で、原告が本件各不給付規定により本件各給付金を不給付とされない地位にあることの確認を求めるものである(以下、予備的請求2及び3に係る訴えを本件各確認の訴えという。)。
2
関係法令等


本件各給付金について

持続化給付金は、令和2年4月7日付けで閣議決定された新型コロナウイルス感染症緊急経済対策(甲6)において、特に厳しい状況にある幅広い業種・事業形態の中堅・中小・小規模事業者、フリーランスを含む個人事業主に対して、万全のセーフティネットを構築すべく、事業の継続を支え、事業全般に広く使える、再起の糧とするための新たな給付金制度として創設することとされたものである。同月20日付けで閣議決定され、同月30日付けで成立した令和2年度補正予算(第1号)(甲7)で予算措置が講じられたことを受け、中小法人等向けと個人事業者向けの2つの持続化給付金給付規程が定められた。これらの規程はその後数次に
わたり改正されているところ、本件に関係する持続化給付金給付規程は、中小法人等向けで、同年8月1日付けのもの(以下持続化給付金規程という。)である。

家賃支援給付金は、与党賃料支援PTが令和2年5月8日付けで、新型コロナウイルス感染症による突然の需要蒸発により売上高の急減に晒されている多くの企業・事業者の存続・継続のためには何よりも固定経費負担を減らす政策が求められているとして、

売上げが大幅に落ち込むなど特に厳しい状況にある中堅・中小企業者・小規模事業者・個人事業主のテナントに対し、持続化給付金に加え、無利子・無担保融資の元本返済にも活用できる『特別家賃支援給付金』を給付

するよう政府に求めたのを受けて(甲12)、創設することとされたものである。同月27日付けで閣議決定され、同年6月12日に成立した令和2年度補正予算(第2号)(甲13)で予算措置が講じられたことを受け、中小法人等向けと個人事業者等向けの2つの家賃支援給付金給付規程が定められた。これらの規程はその後数次にわたり改正されているところ、本件に関係する家賃支援給付金給付規程は、中小法人等向けで、同年8月26日付けのもの(以下
家賃支援給付金規程といい、持続化給付金規程と併せて本件各規程という。)である。

本件各規程の定め
本件に関係する本件各規程の定めは別紙3-1・2記載のとおりであり(甲1、2。同別紙で使用した略語は本文においても用いる。)、本件各
不給付規定は持続化給付金規程8条1項3号及び家賃支援給付金規程9条1項3号に定められている。


風営法の定め

風営法は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業
等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とするものである(1条)。

風俗営業とは、2条1項各号のいずれかに該当する営業をいい、設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業(同項1号)や、設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業(同4号)などがこれに当たるとされている。


性風俗関連特殊営業とは、店舗型性風俗特殊営業、無店舗型性風俗特殊営業、映像送信型性風俗特殊営業、店舗型電話異性紹介営業及び無店舗型電話異性紹介営業をいう(2条5項)。接客業務受託営業とは、専ら、2条13項各号に掲げる営業を営む者から委託を受けて当該営業の営業所において客に接する業務の一部を行うことを内容とする営業をいい(同項柱書き)、同項各号の中には、性風俗関連特殊営業のうち店舗型性風俗特殊営業が掲げられている(同項2号)。

風俗営業を営もうとする者は、営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下公安委員会という。)の許可を受けなければならず(3条1項)、4条にはその許可の基準が定められている。同条1項は営業の許可を受けようとする者が同項各号のいずれかに該当するときは許可をしてはならないという人的欠格事由について定め、同条2項1号は営業所の構造・設備について、風俗営業の種別に応じて国家公安委員会規則で定め
る技術上の基準に適合しないときは許可をしてはならないという物的欠格事由について定め、同項2号は営業所が、良好な風俗環境を保全するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都道府県の条例で定める地域内にあるときは許可をしてはならないという営業制限地域について定めている。

また、12条以下では、許可を受けて風俗営業を営む者の遵守事項等について定めている。

性風俗関連特殊営業については上記エのような許可制はとられておらず、性風俗関連特殊営業を営もうとする者は、営業所ないし事務所の所在地を
管轄する公安委員会に所定の届出書を提出すれば足りることとされ(27条1項、31条の2第1項、31条の7第1項、31条の12第1項、31条の17第1項)、これに対して公安委員会は届出書の提出があった旨を記載した書面を交付することとされている(27条4項、31条の2第4項、31条の7第2項、31条の12第2項、31条の17第2項)。
その上で、店舗型性風俗特殊営業について、営業禁止区域(28条1項)、営業禁止地域(28条2項)、営業時間制限(28条4項)、広告宣伝規制(28条5項、8項、9項)及び禁止行為(28条11項、12項)等の各種規制が定められており、他の性風俗関連特殊営業についても、その性質に応じて上記各条項が準用されているところ(31条の3、31条の8、31条の13、31条の18)、例えば、上記営業禁止地域については、店舗型性風俗特殊営業、無店舗型性風俗特殊営業の受付所営業(31
条の2第4項参照)及び店舗型電話異性紹介営業に関し、都道府県は、善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要があるときは、条例により、地域を定めて、上記各営業を営むことを禁止することができるとされている(28条2項、31条の3第2項、31条の13第1項)。


以上のとおり、性風俗関連特殊営業に対しては風俗営業と異なる規制が設けられているところ、このような規制が導入されたのは昭和59年法律第76号による改正(以下昭和59年改正という。)時である。なお、昭和59年改正時は風俗関連営業との名称であったのが、平成10年法律第55号による改正(以下平成10年改正という。)
時に性風俗特殊営業と改められ、平成13年法律第52号による改正時に現在の性風俗関連特殊営業に改められたものである。


中小企業庁設置法の定め
本件各給付金は中小企業庁が所管するところ、中小企業庁設置法は、健全な独立の中小企業が、国民経済を健全にし、及び発達させ、経済力の集中
を防止し、かつ、企業を営もうとする者に対し、公平な事業活動の機会を確保するものであるのに鑑み、中小企業を育成し、及び発展させ、かつ、その経営を向上させるに足る諸条件を確立することを目的とし(1条)、中小企業庁は、上記目的を達成することを任務とするものと定めている(3条)。

3
前提事実(争いのない事実、顕著な事実並びに掲記証拠〔書証は特記しない限り枝番を含む。以下同じ。〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴

当事者

原告は、性風俗関連特殊営業のうち、無店舗型性風俗特殊営業である

人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの

(風営法2条7項1号)を行う株式会社である(弁論の全趣旨)。

被告Aは、令和2年9月当時、持続化給付金に係る事務局業務を受託していたものである(甲9)。


被告Bは、令和2年9月当時、家賃支援給付金に係る事務局業務を受託していたものである(甲14)。



本件各申請に至る経緯

令和2年5月1日、持続化給付金の申請要領、申請規程及び給付規程が公表され、同日、持続化給付金の申請受付が開始された(弁論の全趣旨)。

令和2年7月4日、家賃支援給付金の申請要領、申請規程及び給付規程が公表され、同月14日、家賃支援給付金の申請受付が開始された(弁論の全趣旨)。


本件各給付金の申請要領(甲11、15)には、事務局が定める方法(持続化給付金規程6条、家賃支援給付金規程7条)として、それぞれ申請用のウェブサイト(以下本件各ウェブサイトという。)から申
請する方法のみを定めているところ、本件各ウェブサイトでは、性風俗関連特殊営業を行う事業者に該当しないこと等の宣誓事項(持続化給付金規程7条、家賃支援給付金規程8条)にチェックをして宣誓しなければ申請の手続を完了することができない仕組みとなっていた(甲29、30)。


原告は、令和2年9月8日、持続化給付金事務局及び家賃支援給付金事務局にそれぞれ宛てて本件各給付金を申請する旨を記載した同日付けの書面(甲18の1、19の1)を中小企業庁の所在地に発送し、同月9日、これらの書面はいずれも中小企業庁に到達した(甲18の2、19の2。本件各申請)。また、原告は、同日、持続化給付金事務局及び家賃支援給付金事務局にそれぞれ宛てて本件各給付金の申請に必要な書類
を中小企業庁の所在地に発送し、これらの書類は、同月10日、中小企業庁に到達した(甲20、弁論の全趣旨)。

4
原告は、令和2年11月30日、本件訴えを提起した(顕著な事実)。争点及び当事者の主張
本件の主たる争点は以下の⑴から⑸までのとおりであり、各争点に関する当
事者の主張の要旨は、別紙4記載のとおりである。



本件各贈与契約に基づく請求の当否



本件国賠請求の当否



被告A及び被告Bに対する各請求の当否



本件各不給付規定の憲法14条1項等への適合性

本件各確認の訴えの適法性

第3

当裁判所の判断

1
争点⑴(本件各不給付規定の憲法14条1項等への適合性)について⑴

憲法14条1項に違反するか否かの判断枠組みについて

憲法14条1項は、法の下の平等を定めているが、同規定は合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理性を有する限り、何ら同規定に違反するものではない(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷
判決・民集18巻4号676頁参照)。そして、このことは、法律上の取扱いか事実上の取扱いかで異なるものではなく、国が行う給付行政において、給付金等の給付基準を法令ではなく内部規則により定める場合についても、同様に当てはまるものというべきである。

本件各給付金のような給付行政は、限られた財源の中で行われるものであるから、給付の対象者をどのように選別して、各対象者にどの程度の給
付をすべきか等の給付基準の策定に当たっては、当該給付に係る政策目的の実現に向けた効果的、効率的なものとする必要があり、そのためには、潜在的な対象者の間に存する事実関係上の差異に着目することに加え、類似の目的を有する他の施策とのすみ分けや均衡についても考慮すべきものである。また、当該給付の実施が他の政策目的の実現を阻害することとな
らないように、他の施策との整合性についても考慮することが必要である。さらに、給付行政もまた公金の支出である以上、その制度設計に際しては、政治的中立性や政教分離の原則への配慮を要することはもちろん、当該支出について最終的に納税者の理解を得られるものとなるよう一定の配慮をすることも許されるものというべきである。

このように、給付基準の策定に当たっては様々な政策的・政治的な考察に基づく検討を要するものといえるから、給付基準の策定は当該給付行政の実施主体たる行政庁の合理的な裁量判断に委ねられているものというべきである。特に、本件各給付金のように、その目的が中小事業者らの事業の継続を支えるという社会経済的なものである場合には、給付の
費用対効果を判断するに当たっても、例えば当該事業への参入及び撤退の難易並びに廃業により生ずることが予想される国民経済上の不利益の程度といった面を考慮することも必要となるなど、その裁量の範囲は広範なものになるといわざるを得ない。
以上によれば、本件各不給付規定が、性風俗関連特殊営業を行う事業者
について他の事業者と区別して本件各給付金の給付対象から除外していることが憲法14条1項に違反するか否かについては、そのような区別をする目的に合理的な根拠があり、かつ、その区別の具体的内容が上記の目的との関連において不合理なものではなく、行政庁の合理的な裁量判断の範囲を超えるものではないと認められる場合には、当該区別は、合理的理由のない差別に当たるとはいえず、憲法14条1項に違反するということはできないものと解するのが相当である。


以上に説示するところに対し、原告は、①本件各不給付規定は特定の職業に対する地位の格下げ・スティグマの押し付けにとどまらず、その助長・再生産という深刻な効果をもたらすこと、②本件各不給付規定の合理性を検討するに当たっては、高度の専門技術的な考察が介在する余地はな
く、政府の裁量は極めて狭いこと、③本件各不給付規定は、職業の選択・遂行の自由の制約につながるもので、特に職業それ自体を否定するような規定であるから、精神的自由の場合に準じて判断する必要があること、④本件各給付金は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大という緊急事態の下における中小企業の事業を営む国民一人一人の日常生活を維持するとい
う社会保障的給付の性格を有するものであることなどを理由として、本件各不給付規定の合憲性については厳格な審査が必要であり、本件各不給付規定は、これを定めるについてやむにやまれぬ事由がない限り、合理的な根拠なく差別的取扱いをするものとして憲法14条1項に違反する旨主張する。

しかしながら、上記①については、原告の主張するような事情の有無及び当否は、当該区別について、その目的の合理性や同目的との合理的関連性の有無を検討する際に考慮すべきであるのは格別、前記判断枠組みを左右すべき事情とまでは解することができない。上記②については、高度の専門技術的な考察の要否のみが裁量判断の範囲の広狭を決する決
め手となるものではないし、本件についていえば、上記イのとおり、給付基準の策定に当たって様々な政策的・政治的な考察に基づく検討を要する以上、行政庁に広範な裁量判断が許されているものといわざるを得ない。上記③については、本件各給付金は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う売上の急減に直面する中小法人等や個人事業主に対して、その事業の継続を下支えするという目的のもと、一定の額の給付金(中小法人等に対しては、持続化給付金につき事業収入の減少分について200万円を上限とし、家賃支援給付金につき6か月分の家賃相当額の一部について600万円を上限とするもの。)を給付するものであって、本件各給付金を給付しないことが、特定の職業の選択や遂行を直接禁止するものでないことはもとより、実質的にこれと同等の効果をもたらす
ものということもできない。また、上記④については、本件各給付金は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けての経済対策の一環として事業の継続を下支えするために中小法人等や個人事業主に給付されるものであって、当該中小法人等に雇用されるなどした個人の生活保障を直接の目的とするものではない。確かに、事業の継続を支えることは事業者や
その従業員の生活保障に資するものであるといえるが、こうした経済対策は、各種施策を総合的に実施することにより国民経済を支え、ひいては個人の生活を支えることを目的とするものであるから(新型コロナウイルス感染症緊急経済対策〔関係法令等⑴ア〕においても、本件各給付金や資金繰り対策等の事業継続のための支援に加え、雇用調整助成金の
助成率の引上げや対象の拡充、生活困窮世帯や子育て世帯に対する給付金の給付、社会保険料の減免等の種々の方策が実施されており〔甲6〕、これらの制度の中には性風俗関連特殊営業に係る事業者やその被用者も対象とするものがある。)、こうした経済対策の一環として個々の給付金の給付基準を策定する際における行政庁の裁量の範囲については、個
人の生活保障を直接の目的とした社会保障給付における給付基準の策定の場合と比較しても、より広範なものになるといわざるを得ない。以上のとおり、本件各不給付規定の合憲性については厳格な審査が必要であるとする原告の上記主張は、その前提において採用することができない。

よって、以下では上記の判断枠組みに従って本件各不給付規定の合理性について検討する。



風営法上の性風俗関連特殊営業の位置付けについて

被告は、本件各不給付規定の根拠について、風営法上、性風俗関連特殊営業に対しては、それが性を売り物とする本質的に不健全な営業であることを前提に種々の規制措置が講じられていることから、性風俗関連特殊営業を行う事業者に対し、国庫からの支出により事業の継続の下支え
を目的とした本件各給付金を給付することには、国民の理解を得ることが困難な点にある旨主張する。そこで、まず、風営法上の性風俗関連特殊営業の位置付けについて検討する。

風営法は、飲酒、射幸、性といった人間の本能的欲望に起
因する歓楽性・享楽性が過度にわたるおそれのある営業を規制等の対象とするものである。これらの営業については、その歓楽性・享楽性が本能的欲望に起因するものであるがゆえに完全に禁圧することは不可能であり、また不相当でもある一方で、これを放任すれば、人間の理性を麻痺させ、歓楽性・享楽性に歯止めがきかなくなるなどして、善良の風俗や清浄な風
俗環境を害し、判断能力の未熟な年少者の健全な育成が害されるなどの弊害が生じ得るために各種規制等の対象とされているものと解される。風営法は、規制の対象とする営業として風俗営業と性風俗関連特殊営業を区分して定めているところ、風俗営業とは主として飲酒や射幸
に関連するものであり、性風俗関連特殊営業は性に関連するものであ
る(関係法令等⑵イ、ウ参照)。そして、風営法は、その目的規定(関係法令等⑵ア)においても明らかなとおり、風俗営業については、規制を課すことと同時にその健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることをも目的とするのに対し、性風俗関連特殊営業については、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずる対象とはされておらず、専ら規制の対象とされているものである。すなわち、風俗営業については許可制が採用され、風俗営業を営もうとする者の人的欠格事由、営業所に係る物的欠格事由及び営業制限地域等の許可の基準が定められ、同基準に適合しない場合には公安委員会は営業の許可をしてはならないこととされ、加えて、許可を受けて風俗営業を営む者について具体的な遵守事項等を定めることによって、風俗営業に求められる適正な業務等の水準が示
され、その水準に誘導することによる風俗営業の健全化が図られている(関係法令等⑵エ)。これに対し、性風俗関連特殊営業については届出制が採用され、性風俗関連特殊営業を営もうとする者は公安委員会に所定の届出書を提出すれば足り、これに対して公安委員会は届出書の提出があった旨を記載した書面を交付することとされているのみであり(関係法令等
⑵オ)、性風俗関連特殊営業については、風俗営業における許可の基準や遵守事項のように、その健全化を図るために当該営業に求められる適正な業務等の水準というものは示されていない。もとより、このことは、性風俗関連特殊営業に対する規制が、風俗営業に対する規制より緩和されているということを意味するものではない。性風俗関連特殊営業についても各
種規制が課されているところ、例えば場所的規制についていえば、都道府県が条例で風俗営業に係る営業制限地域を定めるに当たっては政令で一定の基準が定められているのに対し、都道府県が条例で店舗型性風俗特殊営業、無店舗型性風俗特殊営業の受付所営業、店舗型電話異性紹介営業の営業禁止地域を定めるに当たっては格別の基準は定められておらず、各都道
府県の判断によって、より広範な地域において営業自体を禁止することが可能とされている(関係法令等⑵エ、オ)。

以上のとおり、性風俗関連特殊営業は、風営法において風俗営業と異なる法的取扱いを受けているところ、この点について、昭和59年改正に係る法律案の国会での審議の際、当時の警察庁の担当者は風俗関連営業というのはいわゆる性を売り物にした営業でございまして、これは公に許可をして認知をするという性格のものではないというふうに考えておるわけでございます。(中略)営業を営む人的な事由によってその内容が左右されることは比較的少ないというふうに考えられるわけでございまして、欠格事由を設けてそれによって営業の健全化を図るとか業務の適正化をやっていくというものにちょっとなじまないということでございます。そうでなくて、むしろ我々の方は、必要な規制を行いまして、それに違反をすれば厳正な措置をとっていくという方が望ましいのではないかという形で臨むことにしたものでございます。、風俗関連営業と申しますのは、その行為から規制をするのになかなかなじまないものではないかなという感じを持っておるわけでございます。(中略)そういう営業者なり従業員が行います行為そのものを対象にするのにはなじまないのではないか。したがいまして、構造をいろいろ考えてみましても、そこで行われます行為というものが構造を変えたためによくなると期待できるという形にはなかなかならないのではないかという感じを持っておる、そういう種類の営業ではなかろうかと考えておるわけでございます。したがいまして、(中略)こういう営業形態に対しましては、やはり厳しい遵守事項を設けまして、それに違反するという形のものに対しまして厳正に対処するということが適当ではなかろうか、かように考えておるわけでございます。と答弁し(乙2)、平成10年改正に係る法律案の国会審議の際にも今回の改正で性風俗特殊営業につきましては、今委員御指摘のとおり、性を売り物とする本質的に不健全な営業で、(中略)業務の適正化あるいは営業の健全化というのは本来的になじまない営業であります。このような営業について、公の機関がその営業を営むことを禁止の解除という形での許可という形で公認することは不適当であると考えて、届け出制にし、実態を把握し、また風俗営業に比べて営業禁止区域等極めて厳しい規制をもって臨むという立て方をしておるものでございます。と答弁している(乙3)。エ
上記イの風営法の定め及び上記ウの国会における政府答弁の内容をも踏まえれば、上記のような風営法上の性風俗関連特殊営業に対する法的取扱いは、その歓楽性・享楽性が人間の本能的欲望に起因するものであることに加え、我が国の国民の大多数が、性行為や性交類似行為は極めて親密かつ特殊な関係性の中において非公然と行われるべきであるという性的道義
観念を多かれ少なかれ共有していることを前提として、客から対価を得て一時の性的好奇心を満たし、又は性的好奇心をそそるためのサービスを提供するという性風俗関連特殊営業が本来的に備える特徴自体がこうした大多数の国民が共有する性的道義観念に反するものであり、かつ、このような特徴は風営法が当該営業に対して営業所の構造・設備についての技術上
の基準その他のいかなる条件を課したとしても変わりようのないものであることから、業務の適正化や営業の健全化といった目的になじまないとの考えに基づくものと解される。そして、以上のような性風俗関連特殊営業の本来的に備える特徴に照らして、国が、性風俗関連特殊営業に求められる適正な業務等の水準なるものを公的に示して当該水準に到達することを
推奨したり、一定の水準に到達したものを許可という形で公的に認知したりすることは、上記のような大多数の国民が共有する性的道義観念にも反して相当ではないこと、他方で、こうした営業を一般的に禁止することもまた営業の自由を過度に制約し、あるいは国民に対し最小限度以上の性道徳を強制することにもなって相当ではないことから、性風俗関連特殊営業
については、善良な風俗と清浄な風俗環境の保持及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止を目的として営業禁止地域等の厳格な規制を課した上で、違法行為が行われた場合には直ちに行政処分や刑事罰をもって臨めるようその実態を把握するための方策として届出制が採用されているものと考えられるのであって、こうした風営法上の性風俗関連特殊営業に対する区別には合理的な理由があるものというべきである。
なお、上記のような性的道義観念は時代によって変遷し得るものである
上、個々人によって差異があることも当然であるが、少なくとも、昭和59年改正や平成10年改正が成立し施行された当時において、性行為や性交類似行為は極めて親密かつ特殊な関係性の中において非公然と行われるべきであり、客から対価を得て一時の性的好奇心を満たし、又は性的好奇心をそそるためのサービスを提供するような営業が公の機関の
公認の下に行われることは相当でないとの観念自体は大多数の国民に広く共有されていたものと推認されるところ、その後、そのような考えが大きく変容したというような事情も認め難いことからすれば、現時点においても、風営法上性風俗関連特殊営業に対して異なる取扱いをすることの合理的理由が失われたとはいえないものというほかはない。



本件各不給付規定の合理性について

以上を前提に本件各不給付規定の合理性の有無について検討する。本件各給付金は、いずれも、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う訪日観光客(インバウンド)需要の蒸発や営業自粛等により売上の急減に直
面する事業者に対して、その事業の継続を下支えすることを目的として給付されるものである(関係法令等⑴)。
そして、本件各規程は、本件各不給付規定を定め、性風俗関連特殊営業を行う事業者を給付対象者から除外しているところ、これは、上記⑵のとおり、性風俗関連特殊営業は、人間の本来的欲望に根差した享楽性・
歓楽性を有する上、その本来的に備える特徴自体において、風営法上も国が許可という形で公的に認知することが相当でないものとされていることに鑑み、本件各給付金の給付対象とすること、すなわち、国庫からの支出により廃業や転業を可及的に防止して国が事業の継続を下支えする対象とすることもまた、大多数の国民が共有する性的道義観念に照らして相当でないとの理由によるものと解される。そして、前記⑴イのとおり、給付行政における給付基準の策定に当たっては、他の施策との整
合性に加え、当該給付をすることについて大多数の国民の理解を得られるかどうかや給付の費用対効果その他の点について考慮することが必要であることからすると、上記のような本件各不給付規定の目的には、合理的な根拠があるものと認められる。
また、本件各給付金の給付対象とすることが相当でないのは、性風俗関
連特殊営業が一般的・類型的に有する上記のような特徴によるものであるから、性風俗関連特殊営業を行う事業者を一律に本件各給付金の給付対象から除外することは上記目的との関連において不合理なものではなく、行政庁の合理的な裁量判断の範囲を超えるものではないと認められる。


原告の主張について
原告は、本件各不給付規定は性風俗関連特殊営業に対し不健全であるというラベル付けをした上で、その地位の格下げを目的とするもので、憲法14条1項の要請に正面から反し許されない旨主張する。

しかしながら、風営法自体が、大多数の国民が共有する性的道義観念を踏まえて、性風俗関連特殊営業を風俗営業と区分して、業務の適正化や営業の健全化といった目的になじまないものとして専ら規制の対象とする取扱いをしているものであり、当該区分に合理的理由があることは前記⑵のとおりであるところ、本件各不給付規定はそのような風営法上
の性風俗関連特殊営業の位置付けを踏まえ、これとの整合性その他の観点から定められたものであることからして、本件各不給付規定自体が性風俗関連特殊営業の地位の格下げを目的として定められたものとは解されず、他に原告の主張を認めるに足りる証拠もない。よって、原告の上記主張は採用することができない。
原告は、性風俗関連特殊営業は適法な事業であるから、これを他の事業と別異に取り扱う合理的な理由はないと主張する。
原告が、性風俗関連特殊営業一般が適法な事業であると主張するのであれば、それは、風営法上、所定の届出さえすれば営業を行うことが許されているという趣旨と解される。しかしながら、法律上禁止されていない事業であるからといって、直ちに国等の公的機関が公的資金を支出
して支えることが相当な事業であるということにはならないのであって、このことは、本件各給付金の給付対象者が事業規模等によって限定されていたり(別紙3-1の⑷①、同3-2の⑷②)、本件各不給付規定以外にも不給付要件が定められたりしていること(別紙3-1の⑻、同3-2の⑻)からも明らかである。また、原告は、性風俗関連特殊営業を
行う事業者の中には関連法規を遵守し、誠実に確定申告をして納税をしているものもいるとも指摘する。しかしながら、仮に、当該事業者が、風営法や売春防止法、あるいは社会の健全な性道徳・性秩序を保護法益とする各種刑罰規定に違反していなかったとしても、それは法が刑罰等をもって国民に要求する最小限度の性道徳・性秩序に違反していないと
いうことを意味するものにすぎないのであって、そのような者の営む事業であっても、当該事業が一般的・類型的に有する特徴に着目して国等の公的機関が公的資金を支出して支える対象から外すことが相当性を有するということはあり得るものである。労働者保護に係る各種法令を遵守していることや納税の義務を適正に履行していることについても同様
であり、そのことから直ちに、当該事業者の営む事業を国等の公的機関が公的資金を支出して支えることが相当であるということにはならない。原告は、性風俗関連特殊営業を行う事業者も他の事業者と同様に新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う影響を受けて苦しんでいるとも主張するが、これまでに説示するところに照らしても、それは本件各不給付規定の合理性を判断する際に多数検討すべき要素の一つではあっても、それだけで上記合理性を否定すべき事情であるとまではいえない。
なお、これまでに説示するところは、飽くまで公的資金によって事業の継続を下支えするという本件各給付金について、限られた財源を効率的に活用する等の観点から、当該事業の特徴や内容に基づく区別が許容され得ることをいうものにすぎない。性風俗関連特殊営業を行う事業者やその従業員、あるいは同事業者から委託を受けて接客業務を行う事業
者であっても個人として尊重され、法の下に平等な取扱いを受けるべきことは当然であり、こうした個人の生命や自由の保障について、当該個人の職業に基づく差別が許容されるものではないことはいうまでもない。ウ
以上によれば、本件各不給付規定が性風俗関連特殊営業を行う事業者について他の事業者と区別して本件各給付金の給付対象から除外している
ことは合理的理由のない差別に当たるとはいえず、憲法14条1項に違反するということはできない。


適用違憲の主張について
原告は、①営業自粛要請に応じて休業していたこと、②設立以来確定申告
をして納税していること、③反社会的勢力とは一切関係していないこと、④関連法規を遵守して業務を行っていること、⑤人身取引や性的サービスの強要などの事情は皆無であること、⑥不当な労働搾取は一切行っておらず、セックスワーカーの安全・健康を守り、適切なサポートをしていることなどの事情があるため、本件各不給付規定は少なくとも原告に適用する限りにおい
て憲法14条1項に違反し無効であると主張する。
しかしながら、本件各不給付規定は、前記⑶のとおり、性風俗関連特殊営業が本来的に備える特徴に照らし、一般的かつ類型的に国庫からの支出により国が事業の継続を下支えする対象とするのは相当でないとの判断の下に定められたものであり、そのことが憲法14条1項に違反するものではないことはこれまでに説示したとおりである。そうすると、仮に、原告に上記各事情が存在したとしても、性風俗関連特殊営業を行う事業者である以上、原告
を本件各給付金の対象としなかったことが直ちに憲法14条1項に違反するものとはいえないから、原告の上記主張もまた採用することができないものというほかはない。


原告が主張するその余の無効事由について

原告は、本件各不給付規定は、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の禁止や平等原則等の行政法上の一般原則に違反し、無効であると主張する。しかしながら、本件各不給付規定による取扱いが行政庁の合理的な裁量判断の範囲を超えるものではなく、憲法14条1項に違反しないことは前記⑶のとおりであり、原告の上記主張は採用することができない。

原告は、本件各不給付規定は中小企業庁設置法の目的との間に合理的な関連性を欠くものであると主張するが、中小企業庁も国の行政機関の一つである以上、中小企業庁が実施する施策について、国の他の施策との整合性を考慮することも当然にあり得ることであって、本件各不給付規定を定めるに当たって風営法上の性風俗関連特殊営業の位置付けを考慮したことが直ちに、本件各不給付規定を無効ならしめる事情となるもの
ではない。


小括
以上のとおりであるから、本件各不給付規定は、憲法14条1項や行政
法上の一般原則に違反するものとはいえない。そして、他に、本件各不給付規定の有効性を否定すべきような事情もない。

2
争点⑵(本件各贈与契約に基づく請求の当否)について上記1のとおり、本件各不給付規定は有効であり、その下では、性風俗関連特殊営業を行う事業者である原告は、本件各給付金の給付対象者ではないといわざるを得ないから、原告と被告国との間に本件各贈与契約が成立したとは認められない。
そうすると、本件各贈与契約の成立を前提とする原告の被告国に対する主位
的請求1⑴及び予備的請求1は、いずれも理由がない。3
争点⑶(本件国賠請求の当否)について
上記1のとおり、本件各不給付規定を定めたことが違憲・違法であるとは認められず、原告が本件各給付金の給付対象とされなかったことも違憲・違法であるとは認められないから、本件各不給付規定を定めたこと又は本件各不
給付規定に基づき原告に対して本件各給付金の給付をしないことに、国賠法1条1項所定の違法があるとは認められない。したがって、本件国賠請求(主位的請求1⑵)は理由がない。
4
争点⑷(被告A及び被告Bに対する各請求の当否)について被告A及び被告Bに対する各請求は、原告が本件各贈与契約に基づき本件各
給付金を受領できる地位にあることを前提とするものであるところ、原告と被告国との間に本件各贈与契約が成立したとは認められないことは前記2のとおりであるから、被告A及び被告Bに対する各請求はいずれも理由がない。5
争点⑸(本件各確認の訴えの適法性)について
本件においては、原告は、被告国に対して、本件各贈与契約に基づく本件各給付金の給付の訴えを提起することができ、現にこれを提起しているのであり、それとは別に又は当該訴えが棄却された場合に備えて、本件各贈与契約上の地位を有することや本件各不給付規定により不給付とされない地位にあることの確認を求めることが原告と被告国との間の紛争の解決にとって有効・適切であ
るというべき事情は見当たらないから、本件各確認の訴えは、その確認の利益を欠き不適法である。
6
結論
以上によれば、本件訴えのうち、本件各確認の訴えは不適法であるからいずれも却下すべきであり、原告のその余の請求は理由がないからいずれも棄却すべきである。

よって、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第51部

裁判長裁判官
岡田幸人溝渕章展
裁判官
裁判官釜村健太は、異動のため署名押印することができない。

裁判長裁判官
岡田幸人
(別紙3-1)
持続化給付金規程の定め



通則(1条)
持続化給付金の給付については、持続化給付金規程に定めるところによる。


趣旨・目的(2条)
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うインバウンドの急減や営業自粛等により、特に大きな影響を受けている中堅企業、中小企業その他の法人等(以下中小法人等という。)及びフリーランスを含む個人事業者に対して、事業の継続
を支え、再起の糧とされるため、事業全般に広く使える給付金を給付することを目的とする。


事務局の設置(3条)
中小企業庁は、2条の目的を達成するため、持続化給付金事務局(以下、単に事務局ということがある。)を設置し、事務局が給付に必要な事務を行う。


給付対象者(4条1項)
持続化給付金の申請者が中小法人等の場合には、以下のいずれにも該当しなければならない。


令和2年4月1日時点において、資本金の額若しくは出資の総額が10億円未満であること又は資本金の額若しくは出資の総額が定められていない場合は
常時使用する従業員の数が2000人以下であること。


令和元年以前から事業により事業収入(売上)を得ており、今後も事業を継続する意思があること。


令和2年1月以降、申請日の属する月の前月までの間で、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、前年同月比で事業収入が50%以上減少した月(以下対象月という。)が存在すること。


給付額(5条)
持続化給付金の給付額は、200万円を超えない範囲で、対象月(複数存在する場合はその一つを申請者が任意に選択する。)の属する事業年度の直前の事業年度の年間事業収入から、対象月の月間事業収入に12を乗じて得た額を差し引いたものとする。



給付申請(6条)
持続化給付金の申請は、令和2年5月1日から令和3年1月15日までの間に、事務局が定める方法により、事務局に対して行うものとする。


宣誓事項(7条)
同条は、その各号のいずれにも宣誓した者でなければ持続化給付金を給付しな
い旨を定めているところ、同条3号は、宣誓事項の一つとして、8条に定める不給付要件に該当しないことを掲げている。


不給付要件(8条1項)
申請者が風営法に規定する性風俗関連特殊営業又は当該営業に係る接客業務受託営業を行う事業者に該当する場合には、持続化給付金を給付しない
(3号)。このほか、既に給付通知を受け取った者(1号)、国又は公共法人(2号)、政治団体(4号)、宗教上の組織又は団体(5号)及び持続化給付金の趣旨目的に照らして適当でないと中小企業庁長官(以下長官という。)が判断する者(6号)に対しても、持続化給付金を給付しないこととされている。⑼

給付金の給付(9条)
持続化給付金は、国の持続化給付金事業の予算額の範囲内で給付を行うものであり、国の持続化給付金事業の予算額の範囲内に限り、申請者からの申請で成立し、事務局の審査を経て長官が給付額を決定する贈与契約である(1項)。申請者は、事務局との間で、持続化給付金を申請者の代理で受領し、給付決定
額全額を申請者に支払う旨の受領委任契約を締結する。長官は、申請者と受領委任契約を締結した事務局に対して持続化給付金を支払う。(2項)なお、中小企業庁において定めた令和2年6月29日付け持続化給付金申請規程(乙5)には、申請時に、申請者と事務局との間で上記受領委任契約が締結されるものと定められている。
以上(別紙3-2)
家賃支援給付金規程の定め



通則(1条)
家賃支援給付金の中小法人等に対する給付については、家賃支援給付金規程に
定めるところによる。


趣旨・目的(2条)
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い発出された緊急事態宣言の延長等により、売上げの急減に直面する中小法人等にとって土地又は建物の賃料等の負担が特に重くなっている現状に鑑み、これらの中小法人等に対し、事業の継続を下支
えするための給付金を給付し、もって賃料等の円滑な支払に資することを目的とする。


事務局の設置(3条)
長官は、2条の目的を達成するため、家賃支援給付金事務局(以下、単に事務局ということがある。)を設置し、事務局が給付に必要な事務を行う。


給付対象者(4条)
家賃支援給付金の申請者は、以下のいずれにも該当しなければならない。①

国内の土地又は建物に関する賃貸借契約及びこれに類似する契約又は処分(以下賃貸借契約等という。)に基づき他人の所有する土地又は建物を使用及び収益する権利を有する者であること。



令和2年4月1日時点において、資本金の額若しくは出資の総額が10億円未満であること又は資本金の額若しくは出資の総額が定められていない場合は常時使用する従業員の数が2000人以下であること。



令和元年12月31日以前から事業により事業収入(売上げ)を得ており、今後も事業を継続する意思があること。



令和2年5月から申請日の属する月の前月までの間に、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、事業収入が前年同月比で50%以上減少した月(対象月)又は前年同期比で連続する3か月の事業収入の合計が前年期比で30%以上減少した期間が存在すること。


給付額(5条1項及び6条1項)
家賃支援給付金の給付額は、申請者が申請日の前1か月以内に賃料等として支
払った額と、令和2年3月31日時点で有効な賃貸借契約等により1か月分の賃料等として支払うこととされている額のうち、いずれか低い方を基準額とした上で、当該基準額の総額が75万円以下の場合には、その額に3分の2を乗じて得た額に6を乗じて得た額とし、当該基準額の総額が75万円より大きい場合には、600万円を超えない範囲で、その額から75万円を差し引いて得た額を3
で除し、それに50万円を加えた額に、6を乗じて得た額とする。⑹

給付申請(7条)
家賃支援給付金の申請は、令和2年7月14日から令和3年1月15日までの間に、事務局が定める方法により、事務局に対して行う。



宣誓事項(8条)
同条は、その各号のいずれにも宣誓した者でなければ、家賃支援給付金を給付しない旨を定めているところ、同条7号は、宣誓事項の一つとして、9条に定める不給付要件に該当しないことを掲げている。



不給付要件(9条1項)
申請者が風営法に規定する性風俗関連特殊営業又は当該営業に係る接客業務受託営業を行う事業者に該当する場合には、家賃支援給付金を給付しない(3号)。このほか、既に給付通知を受け取った者(1号)、国又は公共法人(2号)、政治団体(4号)、宗教上の組織又は団体(5号)及び家賃支援給付金の趣旨目的に照らして適当でないと長官が判断する者(6号)に対しても、家賃支援給付金を給付しないこととされている。



給付金の給付(10条)
家賃支援給付金の給付は、申請者からの申請で成立し、事務局の審査を経て長官が給付額を決定する贈与契約である(1項)。
申請者が申請を行うことにより、申請者と事務局は、事務局が家賃支援給付金を申請者の代理として受領し、給付決定額全額を申請者に支払う旨の受領委任契約を締結するものとする(2項)。
長官は、申請者と受領委任契約を締結した事務局に対して家賃支援給付金を支払う(3項1号)。
以上
(別紙4)
争点に関する当事者の主張の要旨

1
争点⑴(本件各不給付規定の憲法14条1項等への適合性)について
(原告の主張の要旨)


本件各不給付規定が憲法14条1項に違反するか否かについては、①本件各不給付規定は特定の職業に対する地位の格下げ・スティグマの押し付けにとどまらず、その助長・再生産という深刻な効果をもたらすものであること、②本件各不給付規定の合理性を検討するに当たっては、高度の専門技術的な考察が
介在する余地はなく政府の裁量は極めて狭いこと、③本件各不給付規定は、職業の選択・遂行の自由の制約につながるもので、特に職業それ自体を否定するような規定であるから、精神的自由の場合に準じて判断する必要があること、④本件各給付金は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大という緊急事態の下における中小企業の事業を営む国民一人一人の日常生活を維持するという社会
保障的給付の性格を有するものであることから、厳格な審査が必要であり、本件各不給付規定は、これを定めるについてやむにやまれぬ事由がない限り、合理的な根拠なく差別的取扱いをするものとして憲法14条1項に違反するものというべきである。
本件各不給付規定は、その目的においてやむにやまれぬ事由はない。社会通念や国民の理解が得られにくいといった事由は、そもそも憲法上許容し得る正当な目的となり得ない。また、仮に事業の下支えをするという経済的な目的を措定したとしても、性風俗関連特殊営業は適法な事業であり、これを行う事業者も、他の事業者と同様に、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う影響を受けて苦しんでいるのであり、未曽有の国家的災害の中で事業の継続を
目的とする給付金制度において、性風俗関連特殊営業の事業者のみを別異に取り扱う合理的な理由はなく、手段に合理性・相当性はなく許容されない。そもそも、本件各不給付規定は、性風俗関連特殊営業に不健全とのラベル付けをした上で、その地位の格下げを目的とするもので、差別の禁止・地位の格下げの禁止という憲法14条1項の要請に正面から反し、目的手段審査を経るまでもなく許されない。


本件各規程は、本件各給付金の給付(贈与契約の相手方の選択)に係る一種の行政規則であるが、これが一定の外部的効果を有するには、個々の規定が、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の禁止や平等原則等の行政法上の一般原則に適合したものでなければならず、また行政組織法の目的との合理的関連性が必要であるというべきである。
しかしながら、本件各不給付規定は上記⑴のとおり行政が遵守すべき平等原
則に違反しているほか、以下の事由により無効である。

被告国は、本件各不給付規定を定めるに当たって、性風俗関連特殊営業を行う事業者に対して本件各給付金を給付することについて国民の理解が得られにくいといった事情や、従前の各種給付金についても性風俗関連特殊営業
を行う事業者に対して給付しない取扱いをしてきたという事情を考慮しているところ、こうした事情を考慮することは、法の下の平等の趣旨ないし要請に反し、また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う影響を受けた事業の継続を支えるという本件各給付金の趣旨・目的にも反するものであり、本来、考慮・重視すべきでない事情を考慮・重視したものといえる。他方、被告国
は、本件各不給付規定を定めるかどうかを判断するに当たって、①性風俗関連特殊営業を行う事業者に対する誤った差別的国民感情やスティグマの助長・拡大を防止する必要性、②性風俗関連特殊営業が多くの自治体で営業自粛要請の対象とされてきたこと、③性風俗関連特殊営業を行う事業者の中には誠実に確定申告を行い、また、各種法令に違反せずに事業を営んでいるも
のもいること、④性風俗関連特殊営業の中でも、原告が営むデリバリーヘルス等については、事業者の経営状態が悪化すると、事業者と契約をしているキャストの身体の安全・健康や働く環境の悪化にもつながることから、事業者を救済する必要があることなどの各事情を考慮・重視すべきであったのに、こうした事情を考慮・重視していない。以上によれば、本件各不給付規定を定めたことには、考慮・重視すべきでないことを考慮・重視し、考慮・重視すべきことを考慮・重視していないという点で裁量権の範囲の逸脱又はその
濫用がある。

中小企業庁の目的について定める中小企業庁設置法1条にいう健全とは、中小企業の生産の効率性を向上させ、中小企業の技術・経営の高度化、資材・設備の確保等を図ることによって中小企業の経営を堅実なものにし経営の安定化を図ることを意味するものであり、性的秩序を守ることあるいは
最小限度の性道徳を維持することなどは含意しておらず、本件各不給付規定は中小企業庁設置法の目的との間に合理的な関連性を欠くものである。そもそも、性的秩序ないし性道徳との関係での健全性については、風営法や売春防止法等を所管する警察庁や公安委員会の行政活動によってその保護が図られるべきものであり、中小企業庁が行う本件各給付金の給付や本件各給付金
に係る給付規則・裁量基準の規定内容との関係で考慮することは、個々の法令の趣旨目的を無視した行政機関の恣意的判断を招くこととなり、許されるものではない。

原告には、①C知事による営業自粛要請に応じて休業していたこと、②設立以来確定申告をして納税していること、③反社会的勢力とは一切関係していないこと、④風営法、売春防止法、職業安定法などの関連法規を遵守して業務を行っていること、⑤人身取引や性的サービスの強要などの事情は皆無であること、⑥不当な労働搾取は一切行っておらず、セックスワーカーの安全・健康を守り、適切なサポートをしていることなどの事情があるため、本件各不給付規
定は少なくとも原告に適用する限りにおいて憲法14条1項に違反し無効である。
(被告国の主張の要旨)


憲法14条1項は、法の下の平等を定めているところ、同規定は、合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって、各人に対する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理性を有する限り、何ら同規定に違反するものではない。
そして、本件各給付金に係る事業のような給付行政においては、多数の政策上の必要性の中から実際に補助等を行うものを選択し、財政上の負担を考慮の上、より効果的な方法、対象範囲、時期等を選択し決定する必要があるものであり、給付金等をいかなる基準でいかなる範囲の者にどの程度給付することとするかは、行政庁の合理的な裁量判断に委ねられている。

したがって、本件各不給付規定の適否については、その規定理由に合理的な根拠があり、かつ、その区別が上記理由との関連で著しく不合理なものではなく、合理的な裁量判断の限界を超えていないと認められる限り、合理的な理由のない差別とはいえず、これを憲法14条1項に違反するものということはできない。



本件各給付金に係る事業は、新型コロナウイルス感染症の拡大する中で、対象事業者の事業の継続を下支えするためのものであり、国民経済の発展の観点から行われている経済政策である。
風営法においては、風俗営業は許可制が採用されている一方、性風俗関連特
殊営業については届出制が採用されているところ、これは、性風俗関連特殊営業が性を売り物とする本質的に不健全な営業であって、業務の健全化又は適正化になじむものではなく、あたかもその営業を公認するかのような許可制を採用することが相当でない業務とされているからであり、そのことを前提に、性風俗関連特殊営業につき種々の規制措置が講じられてきたものである。このよ
うな性風俗関連特殊営業に対し、国庫からの支出により、事業の継続ないし再起を目的とした給付金を給付することは、国民の理解を得ることが困難である。性風俗関連特殊営業は、災害対応も含めて一貫して公的金融支援や国の補助制度の対象とされてこなかったところ、その背景にも同様の考慮があったことは明らかである。
このように本件各不給付規定により、風営法に規定される性風俗関連特殊営業を営む事業者を給付の対象外としたことは、合理的な根拠に基づく区別とい
うことができる。また、以上に述べた事情は、風営法が規定する性風俗関連特殊営業が一般的に有する性質として指摘されていることは明らかであり、本件各不給付規定により、性風俗関連特殊営業を営む事業者を一律に給付対象から除外することも手段として合理性を欠くものではない。したがって、本件各不給付規定は、行政庁の合理的な裁量判断の範囲内で定められたことは明らかで
あって、合理的理由のない差別とはいえない。


原告は、本件各不給付規定を設けたことは、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用であると主張するが、上記⑵のとおり、性風俗関連特殊営業に係る事業を国庫からの支出により下支えすることは国民の理解を得ることが困難なものである。そのことを踏まえ、本件各不給付規定により性風俗関連特殊営業を給付対
象から除外することには、合理的な理由があるというべきであり、考慮すべきでない事情が考慮されたなどと解する理由は全くないし、平等原則に反するものでもない。もとより、営業自粛要請の対象とされたことや、確定申告をし、各種法令を遵守しているなどといった事情は、本件各不給付規定の合理性を左右するような事情ではなく、その他、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用を基礎
付けるものとして原告がるる主張する点も理由がないことは明らかである。⑷

原告は、少なくとも本件各不給付規定は原告に適用する限りにおいて違憲・無効であると主張するが、前記のとおり、本件各不給付規定によって性風俗関連特殊営業を営む事業者を一律に本件各給付金の給付対象から除外したことに
は合理的な理由があり、憲法14条1項に反するものではない。原告の主張するような休業要請への協力、確定申告をしていること、反社会的勢力との関係がないこと、法令を遵守していること、人身取引や性的サービスの強要を行っていないこと、セックスワーカーの安全・健康を守り、適切なサポートをしていることといった事情が、その合理性を左右するような事情でないことは明らかであって、適用違憲をいう原告の主張は前提を欠いており、理由がない。2
争点⑵(本件各贈与契約に基づく請求の当否)について
(原告の主張の要旨)


原告は資本金100万円の法人であり、令和元年以前から事業による事業収入を得ており今後も事業を継続する意思を有している。また、原告の令和2年5月の事業収入は462万0400円であって、これは前年同月の事業収入1534万9000円から50%以上減少しているため、原告は持続化給付金規
程4条が定める給付対象者に該当する。また、原告は、以上に加えて、賃貸借契約を締結し他者が所有する建物を使用占有する権利を有しており、家賃支援給付金規程4条が定める給付対象者にも該当する。
原告は、持続化給付金規程8条、家賃支援給付金規程9条が定める不給付要件のうち、本件各不給付規定以外の要件には該当しない。



被告国による本件各規程の公表は、本件各給付金の給付に係る贈与契約の申込みの意思表示であり、申請者による申請が申込みに対する承諾の意思表示であると解される。本件各不給付規定が無効である場合、国による贈与契約の申込みは、本件各不給付規定のない形での意思表示となり、その結果、本件各給付金の申請を行った原告との間に本件各贈与契約が成立する。



本件各給付金について、事務局が定める申請方法は、本件各ウェブサイトを通じてするというものであったが、この申請方法においては、申請者が本件各不給付規定に該当しないことを宣誓しないと申請手続を完了することができない仕組みとなっていた。性風俗関連特殊営業を行っている原告は、事務局が定
める申請方法である本件各ウェブサイトを通じた申請ができなかったため、原告訴訟代理人を通じて中小企業庁に問合せを行い、同庁総務課職員の回答に従い、中小企業庁の所在地に各事務局宛ての各申請書類を郵送したものである。本件各給付金の申請について

事務局が定める方法により、事務局に対し

行わなければならないものとする本件各規程の定め(持続化給付金規程6条2項、家賃支援給付金規程7条2項)は、本件各不給付規定を前提とするものである以上、本件各不給付規定が無効であれば、これらの申請方法に係る規定も
無効であると解さざるを得ないし、また、申請方法の不遵守を根拠に給付を拒否することは権利の濫用であって許されない。したがって、本件各申請が国に対してされた時点で本件各贈与契約は成立したこととなる。

原告の対象月である令和2年5月(月間事業収入は462万0400円)が属する事業年度の前年度の事業収入は1億6600万円である。したがって、直前の事業年度の年間事業収入から対象月の月間事業収入に12を乗じて得た額を差し引いた金額は1億1055万5200円であって、200万円を超えるから、原告に給付される持続化給付金の額は200万円である。また、原告は本件各申請の直前1か月に、賃料等として24万2000円を
支払っており、これは75万円以下であるから、原告に給付される家賃支援給付金の額は、24万2000円の3分の2に相当する額の6か月分である96万8000円である。
本件各給付金の給付額は長官が決定するものとされているが、本件各給付金は、本件各規程上、給付要件を満たし不給付要件を満たさない全ての申請者に
対して一律に給付するものとされており、また、給付額についてもその計算方法を定めており、給付の可否及び給付額について長官は何らの裁量も与えられていない。したがって、本件各申請に対して長官が不給付とする決定を行うこと、あるいは上記と異なる給付額を決定することは許されず、本件各申請の審査に必要な相当期間が経過した時点で、上記金額を給付額とする長官の決定が
あったものと信義則上擬制されるべきである。
持続化給付金事務局は、持続化給付金の申請から振込までの標準的期間が2週間である旨を明らかにしている。したがって、持続化給付金について審査に必要な相当期間は2週間である。また、家賃支援給付金について審査に必要な相当期間も1か月を超えることはないと考えられる。原告は令和2年9月8日に本件各申請を行い、申請に必要な書類は同月10日に到達したのであるから、持続化給付金については遅くとも同月24日までに長官の決定が擬制され、家
賃支援給付金については遅くとも同年10月10日までに長官の決定が擬制される。本件各給付金は長官による決定後速やかに振り込む旨を定めているから、持続化給付金については遅くとも同年9月30日までに、家賃支援給付金については遅くとも同年10月30日までには原告に対する振込みがされなければならず、上記各日が本件各給付金の履行期限となる。

したがって、原告は、被告国に対し、本件各贈与契約に基づき、持続化給付金200万円、家賃支援給付金96万8000円及びこれらの履行期の後の日である令和2年10月31日から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金の支払を求める権利を有する。
仮に、長官による給付額の決定の意思表示が擬制されないとしても、長官は、
給付の可否及び給付額について裁量を有しておらず、申告から相当期間の経過後、給付額を持続化給付金について200万円、家賃支援給付金について96万8000円と決定すべき義務を負っている。
(被告国の主張の要旨)


本件各規程に係る贈与契約の成立については、本件各規程の公表が贈与契約の申込みの意思表示であり、申請者による本件各給付金の申請行為が承諾の意思表示であるとして位置付けられている。もっとも、本件各規程上、本件各給付金の申請については、事務局が定める方法により事務局に対して行うことが求められており、かかる申請でなければ、本件各規程に係る贈与契約
は成立し得ない。原告は、本件各給付金の申請書類を事務局ではない中小企業庁に送付したものの、事務局が定める方法である本件各ウェブサイトを通じた申請をしておらず、適式な申請があったとは認められない。よって、原告と被告国との間で本件各贈与契約が成立したと解する余地はない。⑵

そもそも、原告は、本件各不給付規定により、本件各給付金の対象者とならないのであって、このことからも、原告と被告国との間に本件各贈与契約が成立したと解する余地はない。

3
争点⑶(本件国賠請求の当否)について

(原告の主張の要旨)


前記1(争点⑴)で述べたとおり、本件各不給付規定は違憲若しくは原告に適用される限度において違憲であり、又は本件各不給付規定を定めることが裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たる。したがって、本件各不給付規定を定
めたこと、又は本件各不給付規定に基づき原告に対して本件各給付金の給付をしないことには国賠法1条1項所定の違法があり、過失も認められる。⑵

被告国が、性風俗関連特殊営業について、

社会通念上、公的資金による支援対象とすることに国民の理解が得られにくい

と根拠なく決め付けて本件各給付金の対象外としたことにより、新型コロナウイルス感染症の拡大といった
100年に一度のパンデミック下でも支援する価値のない業種であるとの偏見が世間一般に流布され、同営業を行う事業者である原告に対する職業差別を助長した。これにより原告が被った無形損害は100万円を下らない。また、本件訴えの提起に必要となった弁護士費用のうち50万円は被告国の行為と相当因果関係のある損害である。

(被告国の主張の要旨)


国賠法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずることを規定するものであ
るから、当該公務員の行為が国賠法上違法と認められるためには、当該公務員が損害賠償を求める個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反したことが必要である。
そして、公務員が当該個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反し、国賠法上の違法が認められるためには、当該公務員が職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情があることが必要である。



前記のとおり、本件各不給付規定は憲法14条1項に違反するものではなく、本件各不給付規定の策定につき裁量権の範囲の逸脱又はその濫用はない。本件各不給付規定に基づき性風俗関連特殊営業を営んでいることを自認する原告を本件各給付金の給付対象外とすることについて、原告との関係で何ら職務上の注意義務違反は認められない。

4
争点⑷(被告A及び被告Bに対する各請求の当否)について
(原告の主張の要旨)


家賃支援給付金規程には、申請者と事務局との間の受領委任契約について、申請者が申請を行うことにより締結する旨が定められており(10条2項)、申請者による申請は、家賃支援給付金に係る贈与契約の承諾の意思表示である
と同時に、受領委任契約の承諾の意思表示であることを定めている。他方、持続化給付金規程には、受領委任契約の成立について

申請者は、事務局との間で、(中略)受領委任契約を締結する

と定められているのみで(9条2項1号)、受領委任契約の締結方法について明確な規定が欠けているが、申請者と被告国との間の持続化給付金に係る贈与契約は申請者の申請によって成立する
こととされていること、持続化給付金規程はその後に策定された家賃支援給付金規程とほぼ同内容であること等からすれば、家賃支援給付金の場合と同様に、持続化給付金規程の公表が事務局による受領委任契約の申込みであり、申請者による持続化給付金の申請が事務局に対する受領委任契約の承諾の意思表示を兼ねているものと解される。



前記2(争点⑵)で主張したとおり、本件各給付金の申請について

事務局が定める方法により、事務局に対し

行わなければならないものとする本件各規程の定めは、本件各不給付規定を前提とするものである以上、本件各不給付規定が無効であれば、これらの申請方法に係る規定も無効であると解さざるを得ない。原告は、原告訴訟代理人を通じて中小企業庁に問合せを行い、同庁総務課職員の回答に従い、中小企業庁の所在地に各事務局宛ての各申請書類を郵
送したものであるから、本件各申請が国に対してされた時点で原告と被告A及び被告Bとの間でそれぞれ受領委任契約が成立したこととなる。


よって、原告は、各受領委任契約に基づき、被告Aに対しては、持続化給付金200万円及びこれに対するその履行期の後の日である令和2年10月31日から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金、被告Bに対しては、家賃
支援給付金96万8000円及びこれに対するその履行期の後の日である令和2年10月31日から支払済みまで年3分の割合による遅延損害金の各支払を求める権利を有する。
(被告Aの主張の要旨)
否認ないし争う。原告は持続化給付金規程の定める申請を行っていない。ま
た、被告Aは、原告の持続化給付金に係る申請書類等の送付も受けていない。(被告Bの主張の要旨)


否認ないし争う。被告Bは、原告の家賃支援給付金に係る申請書類等の送付を受けておらず、被告Bを当事者とする受領委任契約は成立していない。


被告Bは、飽くまで家賃支援給付金を代理受領したことを前提に申請者に対して支払債務を負うことになる。本件では、被告Bは家賃支援給付金の制度終了に伴い、現在、被告国から家賃支援給付金を一切代理受領していない。また、仮に、原告の被告国に対する家賃支援給付金の請求が認容された場合、被告国は原告に対して直接支払を行うことになるから、その場合に、被告Bが家賃支
援給付金を代理受領することも想定されていない。受領委任契約の建付けからしても、被告Bが家賃支援給付金を代理受領していない以上、原告に対して金銭支払債務を負うことはない。
5
争点⑸(本件各確認の訴えの適法性)について

(原告の主張の要旨)


予備的請求2について
本件各規程では、長官による給付額の決定に先立って事務局による審査が行
われることが前提とされているところ、予備的請求2は、裁判所が、上記審査が行われていない以上長官に本件各給付金の給付額を決定する義務は発生していないとの解釈を採る場合に備え、原告が被告国との間で本件各贈与契約上の地位を有することの確認を求めるものである。本件各贈与契約が成立すれば、事務局による審査義務が発生し、その結果として長官による給付額の決定に至
ることは明らかであるから、仮に、本件各贈与契約に基づく本件各給付金の給付請求(主位的請求1⑴)や、給付額決定の請求(予備的請求1)ができないのであれば、紛争の抜本的解決のために本件各贈与契約上の地位を有することの確認請求を選択することが必要かつ適切である。以上によれば、確認の対象は適切であり、即時確定の利益も認められる。



予備的請求3について
本件各規程における贈与契約の成立要件及び長官による給付額の決定義務の有無については解釈の余地がある。また、本件各申請に関して、本件各不給付規定以外の他の規定に係る形式的な要件の不備等により給付等を受けられない
可能性もある。予備的請求3は、これらの事情により、主位的請求1⑴、予備的請求1及び同2が棄却された場合に備えて、原告が事務局の審査において本件各不給付規定を理由として不給付とされない地位にあることの確認を求めるものである。主位的請求1⑴、予備的請求1及び同2が認められない場合には、紛争の抜本的解決のために、紛争の根幹となる本件各不給付規定によって不給
付とされない地位にあることの確認を求めるほかなく、これが認められると、原告は、後日形式的な要件の不備を訂正して申請することにより給付を受けられることとなるので、この請求を選択することは必要かつ適切である。以上によれば、確認の対象は適切に選択されており、即時確定の利益も認められる。(被告国の主張の要旨)


予備的請求2について
原告は、予備的請求2において、長官に各給付額を決定する義務が発生していないことを前提としており、そうであれば、原告が確認を求める法律関係とは、長官の各給付額を決定する義務の存在を前提としない各申請に基づく各贈与契約上の地位ということに帰着してしまうのであって、そのようなごく抽象的な法律関係の有無が確認されても、原告が本件各給付を受けられるか否かが争われる本件紛争の抜本的な解決を図り難いことは明らかである。
したがって、原告が予備的請求2に係る訴えで確認を求める対象は、紛争の解決にとって有効・適切とはいえないため、確認の利益を欠き不適法である。⑵

予備的請求3について
原告が本件各不給付規定を理由として不給付とされない地位にあることが確
認されても、原告も自認するように、それ以外の理由で不給付とされることは既判力によっても妨げられない。そのような極めて限定的な内容しか有しない法律上の地位につき既判力をもって確定しても、本件紛争の抜本的な解決を図り難いことは明らかである。
したがって、原告が予備的請求3に係る訴えで確認を求める対象は、紛争の
解決にとって有効・適切とはいえないため、確認の利益を欠き不適法である。以上
(別紙1)及び(別紙2)については、記載を省略。
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