判例検索β > 令和4年(う)第174号
詐欺
事件番号令和4(う)174
事件名詐欺
裁判年月日令和4年5月24日
法廷名東京高等裁判所
結果棄却
原審裁判所名東京地方裁判所
原審事件番号令和3刑(わ)1734
全文全文
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2022-05-24
情報公開日2022-06-11 04:00:08
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令和4年5月24日宣告
令和4年

第174号

東京高等裁判所第6刑事部判決
詐欺被告事件
主文
本件控訴を棄却する
当審における未決勾留日数中100日を原判決の刑に算入する。

理由
第1事案の概要及び控訴の趣意(以下、略称は原判決の例に従う。)1本件は、当時いずれも若手官僚であった被告人及びA(原審における相被告人。)が、共謀の上、被告人らが既に設立していた会社(B商事株式会社及びC株式会社)を利用し、持続化給付金合計400万円及び家賃支援給付金合計1149万9996円をだまし取った、という事案である。
2本件控訴の趣意は、主任弁護人矢田次男及び弁護人吉野弦太作成の控訴趣意書記載のとおりであり、論旨は、訴訟手続の法令違反及び量刑不当である(主任弁護人は、第1回公判期日において、控訴趣意書中控訴申立ての趣旨3並びに控訴申立ての理由第2及び第3における事実誤認とは、いずれも量刑事情に関する事実誤認をいうものであり、量刑不当の主張である旨陳述した)。
第2訴訟手続の法令違反の論旨について
1訴訟手続の法令違反の論旨は、要するに、原審裁判所は、原審弁4号証
及び弁5号証の証拠調べ請求を却下する決定をしたが、これらはいずれも、被告人とAとの関係についての事実認定に大きな影響を及ぼす証拠であり、必要性、関連性が認められるから、前記却下決定は判断を誤ったものであり、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反に当たる、というのである。

2原審記録によれば、この点に関する原審の経過は、次のとおりである。すなわち、まず、原審第2回公判期日において、被告人両名の人間関係との立証趣旨で原審弁4号証及び弁5号証の取調べ請求がされ、検察官は、いずれについても不同意との意見を述べた。その後、同公判期日において、被告人及びAの各被告人質問が行われ、被告人は、原審弁護人の質問に答える形で、原審弁4号証及び弁5号証の内容及び趣旨について説明する供述をした。各被告人質問終了後、同公判期日において、検察官は、前記不同意意見を撤回し、いずれについても同意するとの意見を述べた。その後、原審裁判所は、原審第3回公判期日において、原審弁4号証及び弁5号証の証拠調べ請求をいずれも却下した。これに対し、原審弁護人が、証拠の必要性、相当性の判断を誤ったものであるとして異議を申し立てたが、原審裁判所は異議を棄却した。
このような原審の経過によれば、原審裁判所は、原審弁4号証及び弁5号証には証拠としての必要性がないことを理由に、前記却下決定をしたものと解されるところ、前記のとおり、被告人は、原審第2回公判期日において、これら証拠の内容及び趣旨について供述しているから、原審弁護人が原審弁4号証及び弁5号証によって立証しようとした内容は、既に原審の証拠調べ手続に現れ
たものということができる。したがって、原審弁4号証及び弁5号証につき、証拠としての必要性がないとの判断は相当というべきであり、前記却下決定に違法はない。
訴訟手続の法令違反の論旨は理由がない。
第3量刑不当の論旨について

1量刑不当の論旨は、要するに、被告人を懲役2年6か月の実刑に処した原判決の量刑は重過ぎて不当であり、被告人には執行猶予付きの判決が相当である、というものである。
2原判決は、被告人を前記の実刑に処し、他方、共同被告人であったAについては、懲役2年に処し、4年間その刑の執行を猶予したが、その量刑判断
の要旨は、次のとおりである。
⑴被告人及びAに共通の事情として、両名は若手官僚であり、国民全体の奉仕者として公共の利益のために職務を遂行することを求められていたにもかかわらず、詐欺という犯罪を繰り返したこと自体、国家公務員への国民の信頼を裏切るものであり、ましてや、前記の給付金制度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大により大きな影響を受けている中小企業を支えるために設けられた、中小企業庁ひいては経済産業省の重要政策であるのに、こともあろうに同省に所属あるいは関係する両名が重要政策の足を引っ張るという本来あり得ない犯行というべきであり、強い非難に値し、多額の国費がだまし取られた結果も重大である。
⑵被告人に関する事情として、華美な生活を改められない中で私利私欲を
伴って本件各犯行に及んだものであるのみならず、Aが以前にした失言やそれに伴う事態を執ように責め立てるなどして、犯行動機のないAを巻き込んで本件各犯行の実行行為を担当させたのであるから、非難の度合いは一層強くなる。本件各犯行を主導したのは被告人であることは、被告人も認めており、だまし取った現金の相当部分を利得したことも認めている。そうすると、被告人
に対する非難の度合いはかなり高く、その役割や結果の重大性も踏まえると、犯情は相当悪く、その刑事責任が重いことから、原則として実刑をもって臨むべきである。
⑶Aに関する事情として、被告人がいなければ犯行には及んでいなかったものであり、犯行に関与するに至った経緯には酌むべき余地がある。また、A
自身が費消した利得も認められない。もっとも、Aとしては、被告人からの指示をいくらでも断れただけでなく、実行行為のすべてを担当して犯行を前に進め、その中には自らの考えで工夫したものもある。そうすると、Aの果たした役割は重要であって、犯情は悪く、その刑事責任は決して軽くはないが、被告人のそれとは格段の差がある。

⑷一般情状として、全ての給付金について加算金等も含めて被害弁償が終わっており、200万円をAが負担したほかは、大部分を被告人が負担しており、財産犯である本件において被害回復されたことの意味は大きいこと、被告人は罪を認めている上、拝金主義的な人間に成り下がっていたことも率直に認め、Aを巻き込んだことなどについても申し訳ないと述べて反省の態度を示すとともに、これまでの生活を改めるなどして更生の意欲を示し、同居の父が母と共に被告人を監督していくと理解できる証言を原審公判廷でしたこと、懲戒免職処分を受けるなどの社会的制裁を受けたことなどの事情が認められる。⑸被害回復に尽力した点をはじめ、被告人のために酌むべき事情を十分評価しても、犯情の重さ、殊に非難の度合いの高さや役割の重大性から導かれる責任の重大さに照らすと、刑の執行を猶予するのが許容されるとはいえず、被
害回復の点等は刑期を定める上で考慮することとする。
3原判決の前記量刑判断は、その量刑事情の認定・評価において一部是認し難い点があるものの、被告人の刑の量定が重過ぎて不当であるとまではいえず、結論においてこれを是認することができる。
以下、所論に鑑み補足する。

⑴Aが以前にした失言やそれに伴う事態を執ように責め立てるなどして、犯行動機のないAを巻き込んで本件各犯行の実行行為を担当させた、との原判決の説示(前記2⑵)について
ア所論は、Aは、被告人と親しい友人として濃密な関係を築き、被告人やCの資金負担で飲食、遊興等の利益を積極的に得つづけており、たとえ被告人
がAを叱責することがあったとしても、一人の大人が精神的に支配され、自身の動機もないのに犯行へ加担せざるを得なくなるような関係であったとはおよそ認められず、また、Aは、本件各犯行時や、本件各犯行後に不正に受給した直後にも、被告人やCの利益にあずかり、金銭を受け取っていたのであるから、Aが不正受給の分け前としてCから利益の還元を受けていたことは明らか
であり、自身がその恩恵にあずかる動機で加担したことも明らかである、という。
イそこで検討すると、まず、関係証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
被告人とAは、高校生のとき以来の友人であったところ、被告人は、平成30年頃から、かつては起業の仲間であったが、その後仲違いした男性に対する民事訴訟を提起しようと考え、Aは被告人に求められてその準備に協力をしていたが、Aが親友でもある関係者の男性に対して、被告人に有利な証言をするよう説得を試みた際に、不正な手段を用いて証拠を作出した事実を告白し、これが実は録音されていて、被告人が、前記関係者の男性を味方に引き込むために同人を相手方として提訴した民事訴訟において、この録音データが証拠とし
て裁判所に提出されたことから、これらの訴訟の形勢は被告人にとって極めて不利なものとなった。被告人は、これをAの失態であるとして繰り返し責め、Aにおいても、このことで被告人に対して強い負い目を感じていた。そうした中で、Cの名義上の代表者から、同社において持続化給付金を申請するのかどうか打診されたことから、被告人は、Aと相談の上、Aに対し、Cが被告人と
コンサルティング契約を締結していることにしようと提案するとともに、具体的な申請手続を行うことを指示し、さらに、B商事についても同様の申請手続を指示したほか、家賃支援給付金の制度を知ると、同様に、Aに対し、B商事及びCについての申請手続を指示して、本件各犯行が行われることとなった。なお、Cは、被告人が、その資産運用益について、経費を計上することで利益
を圧縮するために設立したペーパーカンパニーであり、会社としての実態はなく、実質的には、被告人の財産を運用したり管理したりする被告人の財布のような存在であった。また、B商事は、Aが被告人に預けた金銭を運用するための会社として設立されたが、実際にそのような運用がなされることはなく、会社としての実態はなかった。

以上の経緯によれば、被告人が、Aが以前にした失言やそれに伴う事態を執ように責め立てるなどして、Aに本件各犯行の実行行為を担当させた、とする原判決の認定に誤りはない。
しかし、Aの犯行動機については、関係証拠によれば、所論も指摘するように、本件各犯行前後の頃、Aが、被告人から金銭の交付を受けたり、被告人やCの負担で旅行、飲食、遊興をしたりしていたこと、本件各犯行後、Aが、C名義の口座からA名義の口座への振込により金銭を取得したこと、原判決も説示するとおり、Aは、被告人からの指示を断ることも可能であったのに、本件各犯行の実行行為のすべてを担当して犯行を前に進め、自らの考えで工夫するなどしており、その犯行への関与の姿勢は消極的とはいい難いものであったことが認められる。これらの事実に照らすと、本件各犯行による詐取金を直接的
に受け取るのではなく、いったんこれを取得した被告人(Cの名義を含む。)から様々な形態で供与を受けるという間接的なものも含めれば、Aが、自分も利益を得られるのではないかと期待して本件各犯行に加担していた可能性は否定し難いというべきである。したがって、犯行のきっかけがなかったとの趣旨であればともかく、犯行動機のないAを巻き込んだとの原判決の認定・評価は
不合理というほかなく、この点は是認することができない。
⑵だまし取った現金の相当部分を利得したことを被告人が認めている、との原判決の説示(前記2⑵)について
ア所論は、①原判決は、詐取した金員に相当する額を最終的に誰が利得したといえるのか、その客観的事実や評価には一切触れないまま、被告人が詐取
した金員の大半を利得したことを認めたかのように説示しているが、被告人は、最終的な主たる利得者が被告人であることを認めたわけではなく、むしろ、Aも多額の利益を得ていたと主張していたのであり、原判決は殊更これを無視し、被告人が利益の大半を得たことを認めていると曲解した、②Aは、令和元年11月に被告人から旅行費用として50万円を受け取り、令和2年11
月にはCの費用で被告人や共通の友人と日帰り旅行をし、同年12月にも飲食等でCに31万3000円分の負担をさせ、令和3年1月には飲食や遊興で45万3912円分の負担をさせ、さらに、同年2月には、被告人からB商事の家賃支援給付金相当額として500万円を受け取っているほか、同月以降に、C名義の口座からA名義の口座に合計158万円の振込を受けており、Aは本件各犯行の詐取金から利得を得ている、という。
イそこで、まず、本件各犯行による詐取金の利得状況について検討する。関係証拠によれば、本件各犯行による詐取金について、次の事実が認められる。
㋐B商事の申請による持続化給付金200万円は、令和2年6月1日にB商事名義の口座に振り込まれ、その後、うち100万円が、前記の訴訟に係る陳
述書作成への謝礼の趣旨で、被告人の友人であるD名義の口座に振り込まれ、残り100万円は、そのままB商事名義の口座に残され、本件各犯行の申請に係る税理士への11万円の支払を除き、使われることはなかった。㋑Cの申請による持続化給付金200万円は、同年6月29日、C名義の口座に振り込まれ、その後そのほとんどが被告人名義の口座に移された。
㋒B商事の申請による家賃支援給付金549万9996円は、令和3年1月6日、B商事名義の口座に振り込まれ、その後、うち500万円が被告人名義の口座に移され、この500万円のうち100万円については更にC名義の口座に移り、この100万円は、被告人の利用していた会員制イタリアンレストランの口座への約61万円の振込及びD名義の口座への50万円の振込に用い
られた。この500万円を差し引いた残りの50万円弱については、B商事の法人税、会計ソフト代金、ウイルス対策ソフト代金として合計約20万円弱が費消されたほかは、B商事名義の口座に残ったままになった。
㋓Cの申請による家賃支援給付金600万円は、同年1月25日、C名義の口座に振り込まれ、その後、うち500万円が、被告人の友人であるE名義の
口座を経て、被告人名義の口座に移され、残りの100万円のうち合計35万円はD名義の口座に、50万円はE名義の口座に振り込まれた。
また、前記のとおり、本件各犯行に係る申請は、いずれも被告人がこれを行うことを決め、Aに指示して申請手続きを行わせたものであり、申請の目的も、前記の訴訟に係る支払の原資も含め、基本的には被告人の財産を増加させるためであったと認めるのが相当である。
以上を併せ考慮すれば、本件各犯行による詐取金合計約1550万円の
うち、C名義の口座に入金され又は被告人名義の口座に移された1200万円(ただし、その後最終的にDやE名義の口座に振り込まれた合計135万円を除く)については、これを被告人が取得したと評価するほかないし、B商事名義の口座に振り込まれたうち、前記の訴訟に係る謝礼の趣旨でDに支払われた100万円についても、被告人の得た利益と評価し得る。
そうすると、被告人が、本件各犯行による詐取金の相当部分を取得したと評価することに何ら不合理な点はない。同旨の原判決の認定・評価は相当である。
ウ所論の前記①は、原判決は、Aも多額の利益を得ていたとの主張を殊更
無視し、被告人が利益の大半を得たことを認めていると曲解した、という。しかし、前記のとおり、本件各犯行による詐取金の相当部分を被告人が取得したと評価するのが相当であるところ、原審公判廷において、被告人は、今回だまし取ったお金の

大部分はあなたが使ったということになりますけども、そこはよろしいんですか

との質問に対し、はいと答えていることに照ら
せば、これをもって、被告人が詐取金の相当部分の利得を認めたものと理解することは不合理でなく、原判決が曲解をしているということはない。所論は採用できない。
エ所論の前記②は、要するに、Aも本件各犯行による詐取金の相当部分を取得したと主張するものであるが、㋐詐取金の受給自体は令和2年6月以降で
あり、それ以前にAが被告人から金銭を受け取ったとしても、これを詐取金の分配と考える余地はないこと、㋑被告人は、C名義のものも含め、受給した詐取金の他にも多額の資産を有していたと認められ、Aが被告人やCから受けた利益が、必ずしも本件各犯行による詐取金を原資とするものとは認め難いこと、㋒所論の主張する令和3年2月の被告人からAへの500万円の授受については、関係証拠に照らし、振込によらずに両者の間にそのような金額の金銭の授受があったとは考え難いこと、などからすれば、所論の指摘する事情を踏まえても、Aが本件各犯行による詐取金の相当部分を取得したとまではいえず、被告人が本件各犯行による詐取金の相当部分を取得したとの前記イの評価は妨げられない。
なお、所論は、本件各犯行時も含め、C、B商事、被告人、A、E、Dらの
間で頻繁に資金移動がされており、本件が、AらがCの業務を行っていないにもかかわらず、その利益にあずかり、あるいは、あずかろうとする中で行われた犯罪であることからすれば、振り込まれた給付金が、直後から銀行取引履歴上どう減っていったかだけを見て、不正の利益を得た者を評価すること自体が誤りである、と主張する。これは、要するに、被告人とAらの間で資金移動が
頻繁にされ、Aらは被告人から利益を受けていたのであるから、そのような中で本件各犯行による詐取金が入金された以上、詐取金入金後の銀行取引履歴上の推移にかかわらず、Aが被告人から受けた利益は基本的に詐取金の分け前として評価すべきである、と主張するものと解される。しかし、Aが受ける利益は、いったん被告人のもとに帰属した詐取金について、被告人の判断でAに供
与されるものであるから、被告人自身の財産の処分行為の結果という側面の色濃いものであることが否定できないというべきである。したがって、詐取金の分配の趣旨と評価すべきか否かは、前記のような、詐取金入金後の銀行取引履歴のほか、利益の供与の時期、利益の供与の際にその趣旨が明示されていたか否か等の事情から検討するほかない。所論は採用できない。

⑶その他の所論について

所論は、①被告人は、当初持続化給付金に関する情報がもたらされた際、これを申請しないつもりであったが、その後、Aから、形さえ整えれば受給できるものと聞くにつれ、簡単に受給できるのであればとの思いで、その1週間後に申請をするに至ったものであり、また、それにより持続化給付金を受給できたことから、さらに、家賃支援給付金の不正受給にも手を染めてしまったものであり、動機は安易かつ短絡的であって許されるようなものではないが、当初から不正受給の計画を練って強固な犯意で本件各犯行に及んだものではない、②本件各犯行当時、被告人もAも、中小企業庁が行う各給付金事業の実務に携わったことはなく、その担当者からいわゆる内部情報を聞き出したこともないのであり、被告人が専門知識を悪用したことはなく、その立場を利用
したこともない、③被告人らは、申請に当たって事業活動や賃貸借契約を仮装したが、調査を受ければすぐにでも虚偽が発覚するような稚拙なものであり、犯行態様が巧妙で悪質性が高いとまではいえない、④申請手続きは全てAが担当し、必要な契約書や売上台帳等の文書をA自ら作成するなど、Aなくして本件各犯行の遂行はできなかった、⑤原判決では分析的に評価されていないが、
単に約1550万円の被害を回復しただけでなく、約400万円もの加算金等を支払っているのであって、被害弁償を超えて財産的制裁を受け終わった点も評価されるべきである、という。
イしかし、①については、そもそも受給要件を満たさないのに、これを仮装して給付金の支給を受けようとしている以上、計画的な犯行というべきであ
り、犯意にも確固たるものがあったというべきであって、所論は、結局、計画がじっくり練られたわけではなかったとか、何が何でも詐取しようというほどの強い意思はなかったと主張するものに過ぎず、原判決を不当としない。②及び③については、原判決も、量刑を重くする事情として、専門知識の悪用や、犯行態様の巧妙さを指摘しているわけではなく、所論は、より悪質というべき
事情がないと主張するものに過ぎず、これも原判決の量刑を不当としない。④については、そのような事情を前提としても、被告人が本件各犯行を主導したとの評価が変わるものではなく、原判決は左右されない。⑤については、原判決が加算金等の支払も含めて考慮していることは明らかであるから、所論は当たらない。
⑷以上によれば、犯行動機のないAを巻き込んだ旨の説示については、これを支持することはできないものの、原判決のその余の認定・評価は相当ということができる。そして、詐取金の額が多額であること、被告人が本件各犯行を主導し、詐取金の相当部分を利得したことなどに照らすと、これらのみでも犯情は相当に悪質というべきであり、被告人には原則として実刑をもって臨むべきであるとする原判決の評価は不合理ではないし、被告人を懲役2年6か月
に処した原判決の量刑が、重過ぎて不当であるともいえない。
したがって、原判決の量刑判断は、その結論において不合理とはいえない。量刑不当の論旨は理由がない。
⑸なお、当審における事実取調べの結果によれば、原判決後、被告人が、C名義の自動車2台を売却し、これを原資に700万円の贖罪寄付を行ったこ
と、被告人が更に反省を深め、更生に向けた具体的な行動を取り始めたことが認められるが、この点を踏まえても、原判決の量刑が重過ぎるに至ったとはいえない。
第4よって、刑訴法396条により本件控訴を棄却することとし、当審における未決勾留日数の算入につき刑法21条を適用して、主文のとおり判決す
る。
令和4年5月24日
東京高等裁判所第6刑事部

裁判長裁判官

石井俊和
裁判官

松本圭史
裁判官

杉山正

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