判例検索β > 令和2年(ネ)第78号
小松基地戦闘機離着陸差止等請求控訴事件
事件番号令和2(ネ)78
事件名小松基地戦闘機離着陸差止等請求控訴事件
裁判年月日令和4年3月16日
法廷名名古屋高等裁判所  金沢支部
原審裁判所名金沢地方裁判所
原審事件番号平成20(ワ)847
全文全文
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2022-03-16
情報公開日2022-06-08 04:00:32
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主1文
一審原告ら(ただし、原告番号2118ないし2122の5名を除く。)の控訴並びに一審被告の控訴及び附帯控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。


本件訴訟のうち、別紙死亡原告目録記載の者の航空機の離着陸等の差止め及び音量規制の請求に関する部分は、同目録の死亡年月日欄の日の同人らの死亡によりいずれも終了した。



本件各訴え(⑴に係る部分を除く。)のうち、次の各部分をいずれも却下する。

自衛隊が使用する航空機の離着陸等の差止め及び音量規制の請求に関する部分


令和4年3月1日以降に生ずべき損害(慰謝料)の賠償請求に関する部分


一審被告は、一審原告ら各自(ただし、原告番号2118ないし2122の5名を除く。)に対し、次の各金員を支払え。

別紙認容額一覧の各一審原告に対応する⑬慰謝料総額(円)(A期間)欄及び⑭弁護士費用(円)(A期間)欄記載の各金員並びにこれらに対する一審原告ら(第1事件)についてはいずれも平成21年3月31日から、一審原告ら(第2事件)についてはいずれも同年5月9日から各支払済みまで年5分の割合による金員


別紙認容額一覧の各一審原告に対応する⑲慰謝料総額(円)(B期間)欄記載の金員並びに⑮B期間の初月欄記載の月から⑯B期間の末月欄記載の月までの各歴月に対応する⑩調整後慰謝料月額(円)欄記載の金額に対するその各翌月1日から各支払済みまで、令和2年3月までの歴月分については年5分の、令和2年4月以降の歴月分については年3%の各割合による金員
1

2
一審原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
原告番号2118、同2119、同2120、同2121及び同2122の
一審原告らの控訴をいずれも棄却する。
3
一審原告らの当審における拡張請求のうち、令和4年3月1日以降に生ずべき損害(弁護士費用)の賠償請求に関する部分をいずれも却下する。
4
一審被告は、一審原告ら各自(ただし、原告番号2118ないし2122の5名を除く。)に対し、別紙認容額一覧の各一審原告に対応する㉑弁護士費用(円)(B期間)欄記載の金員並びに⑮B期間の初月欄記載の月から⑯B期間の末月欄記載の月までの各歴月に対応する⑳弁護士費用月額(円)欄記載の金額に対するその各翌月1日から各支払済みまで、令和2年3月までの歴月分については年5分の、令和2年4月以降の歴月分については年3%の各割合による金員をそれぞれ支払え。

5
一審原告らのその余の当審における拡張請求をいずれも棄却する。
6
訴訟費用については、原告番号2118、同2119、同2120、同2121及び同2122の各一審原告に生じた費用は、第1、2審を通じて、同一審原告らの負担とし、その余の一審原告らに生じた費用は、第1、2審を通じてこれを10分し、その9を同一審原告らの負担とし、その余を一審被告の負担とし、一審被告に生じた費用は、第1、2審を通じてこれを20分し、その9を一審原告らの負担とし、その余を一審被告の負担とする。
7
この判決の1項⑶及び4項は、この判決が一審被告に送達された日から14日を経過したときは、仮に執行することができる。ただし、一審被告が、一審原告に対し、別紙認容額一覧の同一審原告に対応する㉓担保額(円)欄記載の金額の担保を供するときは、一審被告は、その仮執行を免れることができる。

第1

実及び
当事者の求めた裁判
2理由1
一審原告らの控訴の趣旨


原判決を次のとおり変更する。



差止請求

一審被告は、自ら又はアメリカ合衆国軍隊をして、一審原告らのために、小松飛行場において、毎日午後0時から同2時及び毎日午後6時から翌日午前7時までの間、一切の軍用機を離発着させたり、そのエンジンを作動させたりしてはならない。


一審被告は、自ら又はアメリカ合衆国軍隊をして、一審原告らのために、小松飛行場の使用により、毎日午前7時から午後0時及び毎日午後2時から午後6時までの間、一審原告らの居住地に対し70ホン(A)を超える一切の軍用機の発する騒音を到達させてはならない。



損害賠償請求
一審被告は、一審原告ら各自に対し、次の各金員を支払え。

120万円及びこれに対する第1事件原告らについては平成21年3月31日から、第2事件原告らについては同年5月9日から各支払済みまで年5分の割合による金員


第1事件原告らについては平成21年3月31日から、第2事件原告らについては同年5月9日から、一審被告が自ら又はアメリカ合衆国軍隊をして一審原告らのために上記⑵のア及びイの各措置をなし又はなさしめるまでの間、毎月末日限り、各5万円及びこれに対するそれぞれ発生月の翌月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員


第1事件原告らについては平成21年3月31日から、第2事件原告らについては同年5月9日から、一審被告が自ら又はアメリカ合衆国軍隊をして一審原告らのために上記⑵のア及びイの各措置をなし又はなさしめるまでの間、毎月末日限り、各1万円及びこれに対するそれぞれ発生月の翌月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員(当審における拡張請3
求)
2
一審被告の求めた裁判


控訴の趣旨

原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。


上記取消部分に係る一審原告らの請求をいずれも棄却する。



附帯控訴の趣旨

原判決中、本件訴えのうち、令和元年6月18日から事実審口頭弁論終結日までの損害賠償金の支払を求める訴えをいずれも却下した部分を取り消す。


第2

上記取消部分に係る一審原告らの請求をいずれも棄却する。

事案の概要(以下、特に断らない限り、略称は原判決の例による。ただし、原判決別紙略称等一覧の151頁末行の平成25年防衛省令第4号を平成25年防衛省令第5号に改める。)

1
本件は、一審被告が航空自衛隊の基地として設置、管理する小松飛行場(本件飛行場)の周辺に居住し又は居住していた者(その相続人を含む。)である一審原告らが、本件飛行場に離着陸する自衛隊の航空機(自衛隊機)及びアメリカ合衆国軍隊(米軍)の航空機(米軍機)の発する騒音等によって被害を受けているとして、一審被告に対し、次の請求をした事案である。


本件各差止請求
一審原告らの平和的生存権、人格権、環境権又は昭和50年10月4日に防衛施設庁長官が石川県知事及び本件飛行場周辺8市町村長との間で取り交わした本件基本協定書並びに同日に名古屋防衛施設局長が小松市長及び加賀市長との間で取り交わした本件協定書(併せて、10・4協定)に基づき、①毎日午後0時から同2時の間及び毎日午後6時から翌日午前7時までの間については、自衛隊機及び米軍機(自衛隊機等)の離着陸及びエンジンの作動(離着陸等)全ての差止めを、②その余の時間帯については、一審原告ら4
の居住地に対し70ホン(A)(70dB(A))を超える自衛隊機等の発する騒音を到達させることの差止め(音量規制)をそれぞれ求める請求⑵

本件損害賠償請求
一審被告による本件飛行場の設置、管理に瑕疵があるとして、国家賠償法2条1項に基づき、一審原告ら各自につき、①本件各訴え提起の3年前の日から本件各訴状送達日までの期間(A期間)に係る損害金として合計120万円(慰謝料100万円と弁護士費用20万円)及びこれに対する本件各訴状送達日の翌日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下改正前民法という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払、②本件各訴状送達日の翌日から上記⑴の差止めがされるまでの間(B期間)の損害金として、毎月末日限り、慰謝料5万円及びこれに対する当該月の翌月1日から各支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求

2
原審は、本件各差止請求につき、本訴提起後に死亡した原判決別紙死亡原告目録記載の者に関する部分の当然終了を宣言し(原判決主文1項)、その余の訴えのうち自衛隊機の運航等の差止請求は不適法であるとして却下し(原判決主文2項⑴)、米軍機の運航等の差止請求を棄却し(原判決主文4項)、また、本件損害賠償請求につき、原審口頭弁論終結日の翌日以降に生ずべき損害(将来分)に係る訴えは不適法であるとして却下し(原判決主文2項⑵)、原審口頭弁論終結日までに生じた損害(過去分)に関しては、一部の者を除いて原判決主文3項の限度で認容し(原判決主文3項)、その余の請求をいずれも棄却した(原判決主文4項)。
これに対し、一審原告ら及び一審被告がそれぞれの敗訴部分を不服として控訴した。当審において、一審原告らは、B期間の損害として月額1万円の弁護士費用及びこれに対する遅延損害金の支払請求を追加し、他方で、一審被告は、原審が却下した原審の口頭弁論終結の日の翌日から当審の口頭弁論5
終結の日までに発生した損害賠償請求の棄却を求めて附帯控訴をした。なお、当審において、一審原告らのうち49名(当事者の死亡に伴う訴訟承継前の人数。原告番号82~85、141、213、214、244~248、316、352、468、469、639、739、857、858、881~886、1009、1080、1081、1180、1181、1194~1199、1243~1246、1571~1574、1745、1854、2117、2128)は訴えを全部取り下げた。
3
本件の前提事実、一審原告らの主張の要旨及び一審被告の主張の要旨は、次
のとおり補正し、4及び5のとおり、当審における当事者の主張を付加するほかは、原判決事実及び理由欄の第2章の第2、第3章及び第4章(原判決9頁冒頭から137頁5行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(原判決の補正)


原判決9頁14行目から15行目にかけての土地約160㎡を土地約160万㎡に改める。⑵

原判決10頁21行目の飛行場整備工事を飛行場施設整備工事に

改める。


原判決13頁3行目の提供することの次に

、米軍がこれらの施設を使用している期間中は、地位協定の関連ある条項が適用されること

を加える。


原判決14頁1行目の小松地方刑務隊を小松地方警務隊に改める。


原判決23頁2行目の三種区域を第三種区域に改め、6行目の

及びを並びにに改める。


原判決23頁10行目の前記6⑹を前記5⑺に改め、11行目か
ら12行目にかけての平成25年防衛省令第4号を平成25年防衛省令第5号に改める。6


原判決25頁22行目の別紙原告ら居住歴一覧表を本判決別紙原告ら居住歴一覧表(以下「居住歴一覧表という。)」に改め、24行目の(令和元年6月17日)を削り、同26頁1行目末尾の次に

なお、「請求の始期

又は請求の終期が年月のみで表示されている場合の請求の始期は当月1日を、請求の終期は当月末日をいう。」を加える。⑻

原判決26頁2行目の別紙死亡原告目録を本判決別紙死亡原告目録
に改める。


原判決26頁4行目冒頭から10行目末尾までを以下のとおり改める。⑶一審被告は、当審において、就学、就職、転勤等のために住民票上の住所と実際の居住地が一致しない事例が見られるから、住民票の提出のみでは居住実態を正確に確認することができないとして、一審原告ら訴訟代理人弁護士らに対して、聞き取り調査やアンケート調査による居住実態の確認を求めたところ(一審被告作成の令和3年7月14日付け事務連絡参照)、一審原告ら訴訟代理人弁護士において、世帯毎に一審原告に対するアンケート調査を実施した。実施されたアンケート調査の内容は、世帯全員(一審原告)の住民票上の居住歴を記載した回答書を送付し、世帯の代表者から、上記の住民票上の居住歴と実際の居住地との異同の有無並びに住民票上の居住歴と異なる場合には実際の居住地の場所、期間及び理由が記入された回答書の返送を受けるというものであった。上記アンケート調査の内容によれば、一審原告らの上記⑴の請求の始期から現在までの住民票等の住所及び異動の履歴は、おおむね居住歴一覧表の「住所欄及び転居日欄に記載のとおりであり(一部には、住民票等の記載内容と異なる上記アンケート調査に係る回答書の記載内容が記載されているものもある。)、また、住所地の告示W値は、居住歴一覧表のW欄記載のとおりである(なお、外は告示コンター
7
の範囲外をいう。)。(以上につき、居住歴一覧表掲記の証拠、弁論の全趣旨)」

原判決41頁3行目の怒鳴りありを怒鳴り合いに改める。


原判決82頁7行目の別紙原告別住宅防音実績表を別紙一審原告別住宅防音実績表(以下「住宅防音実績表という。)」に改める。

原判決122頁7行目の別紙原告別住宅防音実績表から9行目の

記載のとおりである。)。

までを

住宅防音実績表(備考欄の記載を除く。)記載のとおりである。

に改め、同行目の別紙原告別住宅防音実績表を住宅防音実績表に改める。

原判決128頁15行目の本件飛行場に転入したを本件飛行場周辺に転入したに改める。⒁
原判決129頁3行目の居住を介するに至ったを居住を開始するに至ったに改める。⒂
原判決129頁18行目の次行に以下を加える。

上記の類型A、類型B1、類型B2、類型B3に該当する一審原告らは、別紙「危険接近一覧

に記載のとおりである。」
4
当審における一審原告らの主張


自衛隊機の運航等の差止請求に係る訴えの適否について

原審は、自衛隊機の運航に関する防衛大臣の権限は、周辺住民への影響
にも配慮されるべきものであるから、騒音等について周辺住民に受忍を義務付けるので、民事訴訟による差止請求は不適法であるとするが、誤りである。
これは根拠もなく周辺住民への影響に対する配慮を組み込み、一方的に周辺住民に騒音受忍義務を課すもので、極めて不当であり、法的正当性は全くない。このような周辺住民への配慮と周辺住民に騒音受忍を義務付ける明文の規定がないからこそ、自衛隊機の運航は、内部的には職務命令8とそれに基づく実行であり、外部的である周辺住民との関係では、単なる事実行為に当たると評価されるのである。イ
また、原審は、昭和62年日本原演習場訴訟最判の事案は、本件とは事
案を異にするとするが、誤りである。
自衛隊の実弾射撃訓練と自衛隊機の運航とは法的な性格を同じくするものであり、実弾射撃訓練及び演習場への立入禁止措置が公有物である演習場の公物管理権を基礎するという論理は、公有物である自衛隊機の運航についても妥当し、自衛隊機の公物管理権を根拠として所期の目的を達成することが十分可能であり、周辺住民の受忍の義務付けという論理は必要ない。自衛隊機の運航は権力的な権能だから受忍を義務付けると考えているのであれば、明文の義務付け規定が必要であることは法の支配の原理及び法律による行政の原則の下では、当然のことである。

さらに、原審は、民事上の訴えとして不適法であるとしても、行訴法3
7条7項の差止めの訴えにより争う余地があるから、裁判を受ける権利を侵害しないとするが、不合理である。行政訴訟が可能であるかは平成28年厚木基地行政訴訟最判まで不明であり、その不明な期間に本件が提訴されているから、一審原告らの差止請求の請求方法の選択は救済されるべきである。先行する第1・2次訴訟の一審判決も第3・4次訴訟一審判決も、民事差止請求を適法とする正当な判断をしている。

原審は、自衛隊機の違憲性について判断していないが、原判決の論理が
当てはまるのは合憲・適法の自衛隊機の運航による場合に限られ、違憲・違法の自衛隊機の運航についての防衛大臣の権限が周辺住民に対して一方的に騒音受忍を義務付けることはできない。


米軍機の運航等の差止請求の当否について

原審は、米軍機の運航等の差止めを求める請求は、一審被告に対してそ
の支配の及ばない第三者の行為の差止めを請求するものであるとして否定9
したが、誤りである。
一審被告が米軍機の運航等を規制、制限できるかは、米軍機の運航等に関して日本の国内法が適用できるかという問題と同じである。当該国が自ら同意しない限り主権が制限されることはないという領域主権は国際法上確立した原則であり、受入国が条約等で別段の合意をしない限りは、領域主権の原則に立ち返って国内法が適用されなければならない。日本の排他的管轄権を日米地位協定(地位協定)が例外的に制限しているから、本件飛行場の使用権を地位協定により付与する場合にその付与が包括的であることは許されず、個別に国内法の適用排除の合意がない限りは国内法の適用があるというべきである。このような理解は駐留外国軍隊に関する国際法上共通のものであり、ベルギーやイギリスでは、NATO軍ないし米軍について国内法の適用があるとする当事国間の協定がなくても、当然に国内法が適用されている。
そして、差止請求については、地位協定18条5項の請求権から何ら除外されていないから、地位協定18条5項の請求権には差止請求も含まれると考えるのが妥当である。

原審は、違憲無効の安保条約の効力を前提としていること自体が誤りで
ある。安保条約及び同条約によって日本国内で活動する在日米軍は日本国憲法前文及び第9条に反することは明らかである。在日米軍機の運航等は安保条約を根拠とするから、安保条約が違憲無効であれば、領域主権の原則に従って日本が排他的管轄権を有する結果、国内法が適用され、一審被告において米軍機の運航等を規制し、制限することができることは明白である。


侵害行為の態様及び侵害の程度等の判断の誤り

飛行教導群の移駐による騒音状況の悪化
原審は、平成28年6月の飛行教導群(いわゆるアグレッサー)の移駐10

によって騒音状況の悪化を生じさせていないとするが、誤りである。飛行教導群の移駐前の4年間(2012年度から2015年度)の管制回数の平均は1万7020回であるのに対し、移駐後の2016年度は1万9008回、2017年度は1万8454回、2018年度は1万7612回といずれの年度も移駐前に比べて増加している。
また、当審で提出した、前回報告書以降の騒音状況の分析結果をまとめた騒音調査報告書Ⅶ(甲E170)のとおり、①上記移駐後の平成28年度以降のa町の修正機数の年平均値や1日の平均騒音発生回数が
急激に増加し、騒音レベルの年平均値(パワー平均)も90以上の高止まりしていること(同資料①)、②小松市b町の修正機数の年平均値も上昇していること(同資料③)、③a町と加賀市c町の騒音発生回数は、上記移駐した平成28年7月以降から飛躍的に増大しており、同月から平成31年3月までの騒音発生回数の平均は、上記移駐前の平成23年4月から平成28年6月までの騒音発生回数の平均より増加している(同資料④)。
したがって、平成28年の騒音状況の悪化は一時的なものではなく、平成29年度以降も、騒音発生回数や騒音発生時間が増加した状態が一貫して継続しており、平成28年の飛行教導群移駐によって騒音状況は質的に異なるステージに上がったというべきである。

地上音、爆発及び墜落の危険性は独立の侵害行為であること
原審は、本件飛行場から生じる地上音は測定結果に反映されているなど
として地上音を飛行騒音と区別した独立の侵害行為とすることはできないとするが、誤りである。
本件飛行場で飛行騒音以外に地上音が生じていることは明らかである。本件飛行場近辺に居住等している一審原告らが日常的に受けている地上音を正しく評価するためには、地上音を独立の侵害行為として評価し、W値11

を基準とした損害額とは別の損害を認める必要がある。
また、原審は、爆発及び墜落の危険性は一審原告らの不安はいまだ抽象的な危惧感にとどまるとして、独立の侵害行為とはいえないとするが、誤りである。
本件飛行場周辺では軍用機の墜落事故や燃料タンク等の落下事故が現実に複数回起きており、近時も部品の落下事故が続いている。落下物は住民の生命身体に重大な危険をもたらすものであり、これによる特別の精神的負荷は本件飛行場周辺に居住等する住民に共通する被害であり、単なる不安感ではない。

平和的生存権が侵害されていること
原審は、平和的生存権の具体的権利性を否定するが、誤りである。平和的生存権は裁判規範として十分な内容を持つ具体的な権利であ
る。憲法9条に違反する実態を持つ自衛隊及び在日米軍の軍事行動とこれに付随して発生する事故等が周辺住民の平和的生存権を侵害することは明らかである。違法性判断においては、一審原告らの平和的生存権の侵害を十分考慮しなければならない。


共通被害である身体的被害(健康被害)が認定されるべきこと

共通被害の発生を立証していること
原審は、一審原告らが便宜上行った症状等の区分①から⑨の分類に従い、
小分けした症状ごとに共通損害たる健康被害かどうかを検討して健康被害の現実の発生の立証がないとするが、誤りである。
一審原告らが主張する共通被害は、心身相関の考え方に基づき、
精神的苦痛や生活妨害にとどまらず、身体的被害(健康被害)をも含むものであり、健康な生活の破壊につながる被害のすべてにわたって広く認められ、共通被害としての身体的被害(健康被害)は、具体的な疾患・疾病やその程度に至って見られる生理的・心理的現象ではなく、身体障害12

に連なる危険性のある生理的・心理的現象である。騒音というストレス作因による具体的な生理的・心理的現象の外部への現れ方ないし態様は各人によって異なる面があり、妊婦であれば胎児の発育阻害の形で、夜勤者であれば昼間の睡眠妨害の形で発現するが、騒音によって各種身体的障害に連なる危険性のある生理的・心理的現象が生じているという限度では一審原告ら全員に共通し、これに伴う精神的苦痛の性質及び程度において差はなく、被害の共通性は優に認められる。その先にある可能性ないし危険性としての睡眠障害や高血圧、低出生体重等の具体的疾患の同一性までは求められていない。
また、原審は、非特異的な疾病や身体症状の場合は疫学調査によっては個別的検討を待たずして現実の被害を立証することができないとするが、共通被害論を理解しないものである。
騒音ばく露集団に健康被害が生じていることの立証は、疫学的因果関係の立証で足りるというべきである。なぜなら、当該集団につき、騒音から健康被害が生じるとの疫学的因果関係があることは、騒音加害と騒音ばく露集団内に生じている健康被害との間に、科学的に証明された事実的因果関係が存在することを意味することに他ならない。共通損害という集団に生じている損害賠償の場面では、当該集団に被害が生じているか否かが直接問題になり、当該集団についての疫学的因果関係は、当該集団についての個別的因果関係そのものである。
そして、非特異的疾患であっても集団的な因果関係の認定を超えて個別的な因果関係の存在を強く推認することが可能である。
疫学における寄与危険割合((相対危険度(=ばく露群の累積り患率(=累積発生率)と非ばく露群の累積り患率の比)-1)÷(相対危険度))は、当該身体的被害等のうち騒音によって生じた確率を示すものであって、当該非特異的疾患が騒音で生じた可能性を定量的に示すものであ13

る。寄与危険割合を算出する際に必要となる累積り患率(累積発生率)は得られていないが、横断研究(断面調査)で得られる存在率(有病率)は、当該病気等で死亡したり対象集団外に移動したりしないとみなせる場合には、累積発生率に近い値となる(甲C78)。その可能性が低い慢性疾患の場合は、有病率をもって危険度を把握することもある(甲C8)。2011年調査で明らかになっている各種騒音被害の存在率(服部医師は粗割合と呼ぶ。)から求めたみなし寄与危険割合をもって、非特異的疾患についても因果関係の程度を把握することができる。これによれば、例えば、2011年調査の非特異性の被害である腰が痛いという訴えのみなし寄与危険割合は29.6%であり、騒音地区の住民の腰が痛いという身体症状の少なくとも約3割が戦闘機騒音によって引き起こされたといえる。

健康被害が生じる相当程度の可能性が立証されていること
原審は、昭和56年大阪国際空港訴訟最判が認めた被害類型に加えて、
健康被害が生じる相当程度の可能性をも保護法益と認めて救済を厚くしたが、その立証がないとした点は不当である。
原審は、2011年調査のうち、子どもの問題行動調査で用いられたCBCLの質問項目にはいずれを選択すべきか一義的に明らかとはいえないものも多数含まれており、回答者の主観的評価のばらつきが混入し得るとし、また、睡眠障害で用いられたアテネ不眠症尺度や精神疾患で用いられたGHQについても同様に、主観的評価のばらつきの混入を理由に各調査結果の証拠力に一定の限界があるとしたが、誤りである。
CBCLもアテネ不眠症尺度もGHQも、各調査対象者の主観的評価に基づき回答する質問紙調査でありながら、主観的評価であることの影響はなく定量的にそれぞれの健康度を把握できるものとして、世界的評価が確立しているのである。
14

また、原審は、子どもの問題行動調査において、小松基地の戦闘機騒音による健康影響を調査するものであることが明示されていたことを問題視するが、同様に小松基地の戦闘機騒音による影響を調査するものであることが明示されていた生活妨害や精神的苦痛の調査結果の信用性を肯認しているから、子どもの問題行動調査等で調査目的を明示することの問題性も同様に無視できるほど小さいというべきである。
さらに、原審は、疫学、特にオッズ比等の統計数値に対する理解不足と思われる判断が散見される。例えば、原審は、オッズ比は相対的危険度より大きな値となるためオッズ比をもって、ばく露群と対照群のリスクの比とみることはできないことに留意する必要があるとするが、原審のいう留意点は、存在に時間的前後という要素も加わる1次元の事象を扱うケースコントロール研究で求めたオッズ比を、同じ1次元の指標である相対的危険度の代用として用いる場合に妥当するが、一時点における存在というゼロ次元の事象を扱う横断研究(2011年調査)で求めたオッズ比という指標を、次元の異なる一次元の指標である相対危険度の代用として用いることはできないのである。また、オッズ比と割合とは別の概念であり、オッズ比から割合の大小を導くことはできず、影響の大小も比較できない。⑸

本件飛行場の公共性及び公益上の必要性に関する判断の誤り
原審は、本件飛行場の供用ないし本件飛行場における航空機の運航が受忍
限度の判断において考慮されるべき一定の公共性と公益上の必要を有することは否定できない、この点は、自衛隊又は自衛隊機等の運航等が憲法9条に反するか否かによって左右されないとするが、立憲主義憲法の規範構造や憲法の最高法規性の意味を全く理解しておらず、明らかに誤っている。憲法は、国民の権利、自由を確保するための最高法規であり、憲法規範に違反する国家行為は国法秩序において一切容認される余地はない。憲法規範が国法秩序からの排除を求めるものについて、国賠法の解釈適用において15

公の利益、公共性、公の必要等の名称を付して国民の利益とし
て考慮することが許されないことは憲法上当然のことである。
また、原審は、行政法規を例に挙げ、個人の権利利益の保護とは直接関連しない場合の行政法規の違反の有無や程度は、受忍限度の判断において考慮の対象とならず、この理は、公権力の行使に当たる行為の根拠規定自体が憲法に違反する場合にも妥当するとするが、論理的に誤っている。
全ての憲法規範は人権保障のために存在し個人の権利利益に直接関連する。また、違法性判断の場において、単なる行政法規違反と憲法違反とを全く同一視し、同一次元のレベルで考える思考は、立憲主義憲法の本質や憲法の最高法規性の本質を全く理解していない。憲法規範に違反する国家行為は当然に強度の違法性を持つ。一審被告は、憲法9条に違反する自衛隊機及び在日米軍機の小松基地の使用によって一審原告らの平和的生存権を侵害し、一審原告らに被害を発生させ続けており、国法秩序において強度の違法性が認められる。


一審原告らの居住実態について(下記5⑹に対する反論)一審被告は、アンケート調査(補正後の前提事実8⑶)に回答しない一審
原告らについては、請求原因事実の立証がない旨を主張するが、アンケートの回答書からも明らかなとおり、圧倒的多数の一審原告らは、住民票上の住所と居住実態が一致しており、住民票上の住所と居住実態が一致しない者は僅か35名にすぎないから、アンケート調査に回答しない一審原告らについても、住民票上の住所に居住していると認めることに何ら支障はなく、請求原因事実の立証としては十分である。
なお、一審原告A1(原告番号251)は、令和3年4月から、小松市d町e丁目f番地gで生活しているが、住民票上の住所(七尾市h町i部j番地)を変更していないのは、平日に仕事を休むことができず、変更の手続をとることができないからである。
16



損害額の判断の誤り

基準となる慰謝料額が不当に低額であること
原審は、侵害行為の状況や健康被害の状況について誤った認定に基づき、
慰謝料額を不当に低額に認定している。原審が、一審原告らが主張した考慮要素のほとんどについて言及していないことも慰謝料額の不当な低額認定の原因となっている。
また、原審は、慰謝料の増額幅をW80区域とW75区域では4000円とするのに対し、W85区域とW80区域、W90区域とW85区域では各3000円と不当に低額な増額幅にとどめている。全国各地の近時の騒音基地訴訟の例に照らしても、過去の小松基地訴訟の判決に照らしても、告示コンターの騒音レベルが増加するにつれて、慰謝料増額幅が減少されるという判断が示されたことはなく、原判決の判断は異例であり、社会通念に反する認定である。深刻な騒音レベルが更に少しでも増加することは、比較的レベルの低い騒音区域に生活する者よりも、更に耐え難い精神的苦痛を伴うことは容易に想定し得る点からも、誤りである。
さらに、原審は、告示コンター内の居住期間が歴月の一部にとどまる日数分については、その歴月の損害を一律に損害額算定の対象から除外するが、誤りである。
告示コンター内に居住する事実から損害の発生が認められるにもかかわらず、その損害額の立証の困難や算定の煩雑さから、その一部を一律に損害額の算定対象から除外することは許されない。歴月の一部にとどまる日数分の損害額の評価が一律0円というのであれば、自由心証主義の範囲を逸脱した判断である。

住宅防音工事による減額の不当性
原審は、住宅騒音測定の結果が概ね仕方書記載の防音効果を有している
として、住宅防音工事は航空機騒音による被害の軽減に寄与しているもの17

と認められ、慰謝料額を算定する際にも考慮されるとするが、誤りである。屋内の騒音は、航空機の飛行状況や機種、家屋の構造、天候等の諸事情により様々であり、防音効果の現れ方も様々であって、仕方書どおりの施工がされたからといって防音工事済み住宅の全てが一審被告の定める計画防音量を達成しているとはいえない。一審被告は、防音工事完了後に防音量の測定は一切行っていない。また、住宅には、そもそも遮音の効果があり、これを差し引いた純粋な防音工事による防音効果については検証されていない。さらに、住宅防音工事が機能を発揮するためには、防音区画を密閉しなければならないところ、それでは家族のコミュニケーションが阻害され、外気の自然な導入も困難となり、息苦しさや閉塞感を与えることになるから、実際に一日中開口部を密閉した状態で生活することは非現実的であり、住宅防音工事が航空機騒音の被害の軽減に寄与しているとは認められない。
また、原審は、防音工事が施された部屋が一室増えるごとに慰謝料減額率を増加させているが、その具体的根拠が示されていない。上記の点からすれば、仮に住宅防音工事による減額を認めるとしても、その割合は極めて限定的で、居室数や工事内容に関わらず、一律に10%程度に抑えるべきである。

弁護士費用について(当審における拡張請求)
原審は、A期間に生じた慰謝料額の10%に相当する金額についてのみ
弁護士費用を認定し、B期間の弁護士費用を請求していないと誤解した可能性があるが、一審原告らは、B期間も含めた慰謝料総額の20%に相当する弁護士費用を請求している。
この点を明白にするために、一審原告らは、当審において、請求原因の追加として、本件各訴状送達の日の翌日から、一審原告らの控訴の趣旨⑵ア及びイの各措置をなし又はなさしめるまでの間、一審原告らに毎月発生18

する慰謝料相当額の20%に当たる金額も弁護士費用として本件不法行為による損害の一部として請求を追加した。
また、原審が弁護士費用の算出方法を慰謝料額の10%としたのは不当に低額である。本件のような基地騒音訴訟においては、多岐にわたる専門知識や相当の時間と費用等が必要であり、非常に難易度の高い事件類型である。本件訴訟では、全国に類を見ない大規模疫学調査を実施してきたという事情もある。第3・4次訴訟控訴審判決では、慰謝料総額の15%に相当する弁護士費用が認められた。


本件損害賠償請求(将来分)が認められるべきこと
原審が本件損害賠償請求(将来分)に係る訴えを不適法として却下したの
は、民訴法135条の解釈及び適用を誤っている。
原審が指摘する昭和56年大阪国際空港訴訟最判等は、航空機騒音の騒音被害一般についての将来分の損害賠償請求を不適法としたものではなく、個別事件における事例判断にすぎないから、原審は、判例の射程を見誤り過度な一般化をして、実質的に判例違反を犯している。
昭和56年大阪国際空港訴訟最判は、航空機騒音による被害を取り扱った先例的な事案に対する判断であったが、その後の全国各地の自衛隊基地等の航空機騒音に関する訴訟での判断手法は確立している。現在の司法判断の下では、不動産の不法占有に関する損害賠償請求事案と航空機騒音事案との間に差異はなく、昭和56年大阪国際空港訴訟最判のいう一義的に明確という要件は厳格に過ぎるというべきである。
一審被告の小松基地周辺住民に対する爆音発生行為は、①約半世紀にも及ぶ間断のない一貫した同種の違法行為であり、②裁判所からこれまでに4件もの当該行為の違法性を前提とした賠償を命じる判決が出され、③現在に至っても爆音発生行為を停止させるか又は違法性がなくなる程度に抑制するという具体的な見通しが皆無であり、④その意思もないという事情がある。こ19

れらの事情からすれば、本請求は、請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在しその継続が予測されるという要件を十分満たすものである。
また、一審被告に有利な影響を生ずるような将来における事情の変動は、一審被告による爆音発生行為の停止抑制と一審原告らの当該居住地からの離脱の2点であり、あらかじめ明確に予測し得る。加害者である一審被告は、自らの行為をコントロールできる立場にあり、人的・継続的資源も一審原告らに比し膨大であるから、請求異議の訴えによりその発生を証明し執行を阻止しうるという負担を一審被告に課しても格別不当とはいえない。したがって、民訴法135条の要件を満たすから、本件損害賠償請求(将来分)は認められるべきである。


移転の補償等は考慮要素とならないこと(下記5⑵に対する反論)一審被告は、移転の補償等を受けて第一種区域内に転居した者については、違法性が否定される旨を主張するが、移転の補償等を受けることは、居住地を移転する住民らに認められた正当な利益である一方、これを受ける際には騒音の危険を認識して一審被告の責任を減免することに同意するなどの条件は一切付されていない。定められた制度を利用したに過ぎない住民らにおいて、その後に加害者である一審被告に対して損害賠償請求するという正当な権利行使が信義則違反や権利濫用に該当することを基礎付けるような特段の事情も存在しない。
また、一審被告は、移転の補償等を受けた者の損害賠償請求は信義則に違反するなどと主張するが、移転の補償等と、その後に生じる騒音に伴う被害とは無関係である。危険への接近の法理を適用する余地のない本件において、他に騒音被害を負っている住民らがその正当な権利行使として損害賠償請求を行うことを信義則上禁止するような特段の事情も存在しない。
さらに、一審被告は、移転の補償等を受けたことは、少なくとも慰謝料額20

の減額要素になる旨を主張するが、移転の補償等は、飽くまでも移転に要する費用に関する補償であって、騒音に伴う被害・損害の

補などではないか

ら、慰謝料が減額されるべき理由も存在しない。
5
当審における一審被告の主張


少なくとも告示W値75の地域のうち、加賀市k町、能美市l町、n町o、小松市p町及びこれら以遠の地域については、損害賠償の対象から除外すべきであること

原審は、騒音実態を認定するに当たって、環境庁方式と施設庁方式とのW値の算出方法の相違を踏まえ、①機数の補正、②継続時間の補正、③ジェット機の着陸時の補正をすれば、施設庁方式のW値は、日WECPNLの80%レンジ上端値よりも大きな値と推認できるとするが、そのような認定は誤りである。
上記①については、三者共同測定において複数機による編隊飛行等の際にも1として数えられることは施設庁方式でW値を算出する場合でも同様であるから、原判決の判示は的外れである。上記②については、原審は、実際の騒音の継続時間が環境庁方式の場合の20秒(固定値)を上回ることを前提とするが、原告騒音調査報告書Ⅵ(甲E167の資料51、53頁参照)によれば、平成23年度から平成28年度までの小松市b町及び同市q町の騒音の継続時間の平均値はいずれも20秒を下回っており、むしろ継続時間の補正を行うと、算出されるW値が小さくなる可能性がある。また原審が依拠する甲C第2号証は、

環境庁方式では騒音の継続時間の違いを評価できず、エンジン調整やヘリコプターの騒音のように長い騒音を過少評価する可能性が高

く、滑走路から離れた地点で過大評価となる(同201頁)としており、滑走路から相当距離があり、エンジン調整音が問題とならない告示W値75の地域における施設庁方式によるW値が、継続時間の補正をした日WECPNLの80%レンジ上端値より21

大きくなるとはいえず、むしろ小さくなる可能性があるといえる。上記③についても、着陸音のみの補正(2dBの加算)であり、僅か2%程度の増加があるにすぎない。そうすると、上記②③の補正をしても三者共同測定地点における施設庁方式のW値が、日WECPNLの80%レンジ上端値を上回るかは必ずしも明らかではなく、告示W値を大きく下回る三者共同測定の結果を補正することにより告示W値との差が埋まることが確実であるとはいえない。

原審は、三者共同測定の結果を踏まえても、W75区域の騒音状況は、少なくとも昭和57年度調査の際に近い水準にあり、これが大きく改善しているとはいえないとするが、三者共同測定の結果を正当に評価しておらず誤りである。
三者共同測定の結果による日WECPNLの80%レンジ上端値をみると、原判決が損害賠償の対象期間とした平成18年度以降(平成30年度まで)のW値の平均値は、加賀市k町で66.46、能美市l町で66.54、n町oで65.69、小松市p町で71.92であり、告示W値を大きく下回っており(9.31~3.08)、第3・4次訴訟の損害賠償対象期間(平成7年度から平成17年度)の平均値(順に、①73.22、②70.44、③71.67、④75.78)と比較しても下回っている(6.76~3.86)。加賀市k町、能美市l町及びn町o並びにこれら以遠の地域については、昭和57年度調査当時はもとより、第3・4次訴訟当時と比べても騒音状況が大きく改善していることは明らかである。人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準として定められた環境基準のW70以下であるのに、受忍限度を超える騒音状況であるというのは背理である。また、小松市p町及び同町以遠の地域についても、同様に騒音状況が改善し、もはや告示W値75に相当する騒音実態はない。
22


したがって、別紙原告別居住歴表【75W(加賀市k町・小松市p町及び同町以遠(l町・m町を含む)・85W加賀市c町抽出分】に記載のとおり、これらの地域に居住期間がある一審原告らについては、同期間を損害賠償の対象から除外するのが相当である。



移転の補償等を受けて第一種区域に転居した者の損害賠償請求は認められないこと

一審原告らのうち、少なくとも移転の補償等を受けて居住地を変更したにもかかわらず、引き続き第一種区域(告示W値75以上の区域)内に居住し、その上で本件訴えを提起した者2名及びその関係者である7名の合計9名(別紙原告別居住歴表【移転措置関係者】参照。なお、原告番号468及び同469は訴えを取り下げた。)については、利益衡量上、本件飛行場の供用に伴い発生する航空機騒音等の侵害行為が社会通念上受忍すべき限度を超える被害をもたらしているとはいえず、違法性が否定されるべきである。
移転の補償等は、防衛大臣が指定する移転対象区域(第二種区域ないしみなし第二種区域)に当該指定の際現に所在する建物等の所有者及び当該建物等に関する所有者以外の権利を有する者に対する、当該建物等を同区域外に移転し又は除却する場合に当該移転又は除却により通常生ずべき損失の補償、建物等の所有者に対する、移転先に所在する土地の買入れ並びに地方公共団体その他の者に対する、移転先の道路、水道、排水施設その他の公共施設の整備費用の助成を行うというものであって、移転の補償等を受ける者に対して、航空機騒音等の影響を抜本的に解消する効果をもたらすものであるといえる。
上記の者については、航空機騒音等による影響の程度を具体的に認識しながら、移転先におけるその影響と生活上・経済上の便益その他一切の事情を十分に吟味した上で、航空機騒音等による影響を抜本的に解決するこ23

とができるという移転等補償措置が本来有している効果を全面的に受けることを自ら放棄し、指定区域外を含めた非常に広範な選択肢の中から、あえて引き続き航空機騒音等による影響のある第一種区域内に居住することを選択したのであるから、航空機騒音等の影響を受けることを甘受したというべきである。移転の補償等を受ける者は、建物の現在価値額や取壊費用等の建物移転費だけでなく、移転先地の選定費、住民登録等の手続費用等の移転雑費や、その他種々の費用等を合算した建物等の移転補償額を支給されての移転である。実際に、一審被告が移転の補償等の措置を講じた671戸のうち、上記の者以外のほとんどが第一種区域外に転居している。なお、移転先の建物に後から居住するようになった原告番号151や移転後に生まれた原告番号152及び153についても、利益衡量上、違法性が否定されるべきことは同様である。

仮に、上記の者との関係で違法であるとしても、上記の者については、上記アのとおり、自らの判断により、一審被告の負担において多額の費用を要する移転の補償等を受け、航空機騒音等による影響を解消する機会を得ながら、第一種区域内に転居することを選択しており、自らの判断により甘受した航空機騒音による影響等を理由として、一審被告に対し、損害賠償請求することは、実質的にみて、二重に補償を求めているに等しいものといえ、一審被告から受けた移転の補償等の規模に鑑みても、信義則に反し許されないというべきである。


少なくとも、多額の移転補償を受けたという事実それ自体が慰謝料額の算定に係る減額事情といえるから、これを十分に考慮した上で慰謝料額の算定が行われるべきである。移転の補償等を受けていない他の一審原告らの慰謝料額と同様に算定することは、公平の観念に反し、また、住宅防音工事の実施を減額事由として考慮していることとの対比においても、減額事由とされるべきことは明らかである。
24



航空機騒音による被害についての誤り

原審は、健康被害が生じる相当程度の危険が生じていることも不法行為法上保護されるべき利益であり、昭和56年大阪国際空港訴訟最判もこれを許容しているとするが、誤りである。
上記最判は、慰謝料請求権の発生原因たる被害と認めたのは、身体障害に連なる可能性を有するストレス等の生理的・心理的影響であって、身体被害の発生の危険性そのもの否定していると解され、原審のいう健康被害が生じる相当程度の危険が生じていることが慰謝料請求権の発生原因事実となることを許容しているとは解されない。また、原審は、最高裁平成12年9月22日判決及び最高裁平成15年11月11日判決を参照として引用するが、これらは、他の一般の不法行為ないし債務不履行とは異なる特殊な面が存する医療過誤訴訟における判断であり、健康被害全般については、その被害が生じなかった可能性を法的に保護することが困難であるとするものであるから、原審の判断は、上記各判決に反するものである。


原審は、共通被害として睡眠妨害が生じているとするが、睡眠妨害を共通損害として認定すべきではない。
夜間の航空機騒音の発生状況は、本件飛行場における自衛隊機による訓練は、午後9時30分から翌日午前7時までの時間帯では基本的に行われておらず、緊急発進等やむを得ない場合を除いて発生しない。実際に午後10時から翌日午前7時までの時間帯における自衛隊機の管制回数は平成25年度から平成29年度の1か月平均では1.05回にすぎない。常時測定点である小松市a町及び加賀市c町における同時間帯の1年間の70dB以上騒音発生回数は、平成28年度から平成30年度では1回から5回(最大で15回)にすぎない。そもそも昼間を睡眠時間帯として日常的に航空機騒音にばく露している一審原告らは少数にとどまっており、また、25

実際に航空機騒音を原因とする睡眠妨害が生じている者は極めて少数にとどまるから、睡眠妨害は一審原告らに共通して生ずる損害として認められるような性質・程度のものとは認められない。第3・4次訴訟控訴審判決では、睡眠妨害を共通する被害と認めるのは困難としているところ、その認定に当たり基礎とした事実関係に比べて、原判決が基礎とした事実関係が悪化ないし増悪したとは認められない。


本件飛行場の公共性及び公益上の必要性等についての誤り
原審は、本件飛行場の公共性・公益性について肯定的評価をしながらも、受忍限度の判断において、総合評価としては殊更重視できないとして不当に低い評価をする点で誤りがある。
本件飛行場は、民間航空との共同使用により国内線及び国際線が就航しているから、周辺住民も直接的に利益を享受しており、このような利益と本件飛行場の存在によって被る被害との間に彼此相補の関係が成り立つ。また、災害派遣や防災活動の拠点として、周辺住民は迅速な対応を受けることができる利益を享受し得る点も同様に彼此相補の関係が成り立つ。さらに、本件飛行場の存在は企業誘致等に有用で、地域の活性化につながり、その恩恵は、本件飛行場の周辺住民があまねく享受している。



住宅防音工事その他の周辺対策の効果についての誤り
原審は、一審被告による住宅防音工事については、航空機騒音による被害を十分に解消・低減するものとはいえず、本件飛行場の供用の違法性(受忍限度)の判断及び慰謝料額の算定における影響は限定的なものにとどまるとするが、住宅防音工事の効果を不当に過小評価するものである。
開口部の密閉性を高めることにより防音効果が高まることは明らかであり、また、開口部を密閉しても換気装置による外気の取入れが可能であり、一つの部屋で家族が団らんすることもできる。そして、夏季・冬季に空調機器を使用するのが通常であるところ、住宅防音工事による家屋の気密性の向上は、26

むしろ節電につながる側面もある。さらに、一審被告は、地域の騒音状況に相応した周辺対策を実施している。
しかも、一審被告は、原審でも主張したとおりの巨額の費用をかけた周辺対策を継続して実施しており、これにより本件飛行場周辺地域の住民の騒音源に対する否定的評価を和らげ、騒音によって受ける精神的不快感を解消ないし軽減する効果がある。


一審原告らの居住実態について

当審において実施されたアンケート調査(上記補正後の前提事実8⑶)に回答した一審原告らのうち、別紙居住実態区域外原告ら一覧記載の者については、住民票等とは異なる居住実態があり、指定区域内に居住していなかったとする期間があり、その間は騒音被害の発生を観念することができないから、その期間について、損害賠償請求が認められる余地はない。


上記アのアンケート調査に回答しない別紙調査未回答原告ら一覧記載の一審原告らについては、容易に回答し得るアンケート調査に合理的な理由もなく回答していないから、原判決の判示する住民票に記載された住所及びその異動の履歴(中略)と異なる事実を認めるべき特段の事情があるというべきである。本件飛行場周辺の特定の住所地における居住事実は、一審原告らが立証責任を負うものであり、また、アンケート調査に回答して自己に不利な事実を述べた上記アの一審原告らとの取扱いの公正を図るという観点からも、実際の居住場所について更なる立証が必要であることは明らかであるところ、回答期限(令和3年8月6日)を経過した令和4年2月9日現在においても回答しないものであり、更なる立証がされる見込みはない。
したがって、上記のアンケート調査に回答しない一審原告らについては、請求原因事実の立証がないといわざるを得ないから、その損害賠償請求が27

認められる余地はない。


損害額の算定の誤り

慰謝料額を第3・4次訴訟控訴審判決より増額させるのが相当といえる事情は存在しないこと
上記⑸の事情を適切に評価して慰謝料額を算定すべきである。また、本件の慰謝料の算定においては、公平の観念に従い、前次訴訟の確定判決である第3・4次訴訟控訴審判決を比較対象とすべきところ、従来の慰謝料月額から3割以上の増額を相当といえる事情は見当たらない。むしろ、三者共同測定の結果によれば、上記⑴のとおり、加賀市k町、能美市l町、n町o及び小松市p町における平成18年度以降の日WECPNLの80%レンジ上端値の平均値は、第3・4次訴訟当時の平成7年度ないし平成17年度の平均値を明らかに下回っているほか、全体的な傾向として、本件飛行場周辺の騒音状況は上記の判決の当時よりも改善傾向にある。また、貨幣価値に変動は見られない。このように慰謝料月額を減額するのが相当といえる事情こそあれ、増額を根拠付けるような事情は見当たらない。


加賀市c町及び同町以遠の告示W値85の地域については、告示W値80の地域と同額の慰謝料額にすべきこと
三者共同測定の結果による日WECPNLの80%レンジ上端値をみると、原判決が損害賠償の対象期間とした平成18年度以降のW値の平均値は80.62であり、告示W値を4.38も下回っており、昭和57年度調査当時と比べて、騒音状況が大きく改善し、告示W値85に相当する騒音実態がなく、せいぜい告示W値80程度の騒音状況にあるにすぎないから、これらの地域の居住期間(別紙原告別居住歴表【75W(加賀市k町・小松市p町及び同町以遠(l町・m町を含む)・85W加賀市c町抽出分】参照)については告示W値80の地域と同額の賠償28

額にとどめるべきである。

住宅防音工事による減額について適切な減額が認められるべきこと原審は、2室目以降の減額率を下げているが、不当である。2室目以降であっても防音効果そのものには変わりがなく、一審原告らにおいて効果が見込める部屋を選択して工事を実施しているのである。
また、原審は、外郭防音工事を実施した住宅についても通常の防音工事の場合と同様に減額率を30%としたことは誤りである。外郭防音工事は、告示W値85以上の区域に所在する住宅を対象に、住宅全体を一つの防音区画として、その外郭について防音工事を実施するものであり、区画ごとに行われる防音工事とは異なり、屋内全室に防音効果が得られるものであるから、通常の防音工事と同等の評価をすべきではなく、それを超える減額割合が認められるべきである。


B期間に係る弁護士費用について(当審における拡張請求に対する認否反論)
一審原告らは、原審がB期間に係る弁護士費用を認容しなかったことが、不当であるかのような主張をするが、一審原告らは、原審においてこれを求めていなかったのであり、原審の判断に誤りはない。B期間についても、A期間について述べたのと同様、一審原告らの主張する弁護士費用の額は不当に高額である。



原審の口頭弁論終結日の翌日から事実審口頭弁論終結日までの損害賠償請求は棄却されること(附帯控訴)
原審の口頭弁論終結日の翌日である令和元年6月18日から事実審口頭弁論終結日までの損害賠償請求は、原審では将来請求として不適法とされたが、事実審口頭弁論終結日時点においては、現在給付の訴えとして適法となるから、原判決中、その損害賠償請求の訴えをいずれも却下した部分を取り消し、同訴えをいずれも棄却するとの判決を求める。
29

第3

当裁判所の判断

1
当裁判所も、原審と同じく、本件各差止請求のうち、訴え提起後に死亡した一審原告らの差止請求は当然に終了することを宣言し、自衛隊機の運航等の差止請求は不適法であるから却下し、米軍機の運航等の差止請求は理由がないから棄却し、本件損害賠償請求(当審における拡張請求を含む。)につき、口頭弁論終結日の翌日以降に生ずべき損害(将来分)に係る訴えは不適法であるから却下するのが相当であるが、当審の口頭弁論終結日までに生じた損害(過去分)に関しては、主文1項⑶及び4項の限度で認容し、その余を棄却するのが相当であると判断する。その理由は、以下のとおりである。
【本件各差止請求について】
2
死亡原告らの差止請求について
本件訴訟のうち、別紙死亡原告目録記載の者の自衛隊機及び米軍機の離着陸等の差止め及び音量規制の請求に関する部分は、同人らの死亡により当然に終了したというべきである。その理由は、原判決事実及び理由欄の第5章の第1の1及び2(原判決137頁8行目から26行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、別紙死亡原告目録を本判決別紙死亡原告目録と読み替えるものとする。その結果、原審において当然に終了したものとされた一審原告らに加え、原審口頭弁論終結日以後死亡した一審原告ら及び同日以前に死亡していたことが当審において判明した一審原告らについても当然に終了したものとなる。

3
自衛隊機の運航等の差止請求に係る訴えの適否について


上記2を除く一審原告らの上記差止請求に係る訴えは不適法であると判断する。その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決事実及び理由欄の第5章の第2(原判決138頁5行目から同143頁23行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

(原判決の補正)
30


原判決138頁22行目の同訓令2条6項を同訓令2条6号に
改める。


原判決139頁1行目の公共の福祉の増進することを公共の福祉を増進することに改め、5行目から6行目にかけての障害の防止するためを障害の防止を図るために改める。⑵

これに対し、一審原告らは、周辺住民への配慮や周辺住民の騒音受忍を義務付ける明文の規定がないことを理由に、周辺住民の騒音の受忍義務を否定し、自衛隊機の運航は単なる事実行為であり公権力の行使に当たらない旨を主張する。
しかしながら、上記⑴で引用した原判決が説示するとおり、自衛隊機の運航に伴う騒音等の影響は飛行場周辺に広く及ぶことは不可避であるから、自衛隊機の運航に関する防衛大臣の権限の行使は、その運航に必然的に伴う騒音等について周辺住民に受忍を義務付けるものであり、その権限の行使は、その騒音等により影響を受ける周辺住民との関係において、公権力の行使に当たる行為に当たるものというべきである。一審原告らが指摘する明文の規定がないことは上記の判断を左右せず、周辺住民に対する防衛大臣の配慮義務を根拠として周辺住民の受忍義務が導かれるものでもない。自衛隊機の運航が公権力の行使に当たらない旨の一審原告らの上記主張は採用することができない。
また、一審原告らが引用する昭和62年日本原演習場訴訟最判の事案が、本件とは事案を異にする理由については、上記⑴で引用した原判決141頁15行目から同142頁1行目に記載のとおりであって、自衛隊機に公物管理権が認められる旨の一審原告らの主張は、上記の判断を左右しない。さらに、一審原告らは、本件の訴えを提起した時点では、行政訴訟が可能であるかは不明であったから、救済すべきである旨を主張するが、民事上適法か否かは、行政訴訟が可能か否かによって決せられるものではないから、31

原判決を引用して説示したとおり、民事上不適法とされる以上、一審原告らの同主張は判断を左右しない。
一審原告らは、違憲・違法の自衛隊機の運航によって周辺住民に対して騒音受忍を義務付けることはできない旨を主張するが、上記⑴で引用した原判決143頁9行目から23行目に記載のとおり本件において自衛隊の違憲性についての判断を要するものではないから、一審原告らの上記主張は採用することができない。
4
米軍機の運航等の差止請求の当否について


上記2を除く一審原告らの上記差止請求は理由がないものと判断する。その理由は、原判決事実及び理由欄の第5章の第3(原判決143頁25行目から同147頁6行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。



これに対し、一審原告らは、領域主権の原則からは、本件飛行場の使用権の付与が包括的であることは許されず、条約等で個別に国内法の適用排除の合意がない限りは国内法が適用される旨を主張する。
しかしながら、上記第2の3⑶で補正後の前提事実2⑽のとおり、本件飛行場のうち米軍提供区域については、地位協定2条1項

に基づき、同

条4項⒝の適用ある施設及び区域として米軍に提供すること、米軍がこれらの施設を使用している期間中は地位協定の関連ある条項が適用されることについて合意がされたものであって、米国は、地位協定3条1項により、その運営、管理のため必要なすべての措置を執ることができるものとされ、米軍に提供された本件飛行場の管理運営の権限は、少なくとも米軍機の運航等に関しては、すべて米国に委ねられるものと解されるから、一審原告らの上記主張は採用することができない。
その余の一審原告らの主張に理由がないことは、上記⑴で引用した原判決で説示したとおりである。
32

【本件損害賠償請求について】
5
本件損害賠償請求(過去分)に係る判断の枠組みについて
上記の判断の枠組みについては、次のとおり補正するほかは、原判決事実及び理由欄の第6章の第1(原判決147頁9行目から同149頁3行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

(原判決の補正)


原判決148頁24行目の必要性と内容と程度を必要性の内容と程度に改める。⑵

原判決149頁1行目から2行目にかけての最高裁平成7年7月7日判決・民集49巻7号1870頁参照を

平成5年厚木基地訴訟最判、平成5年横田基地訴訟最判参照

に改める。6
侵害行為の態様及び侵害の程度等(騒音ばく露の実態等)について⑴

侵害行為の態様及び侵害の程度等(騒音ばく露の実態等)についての認定は、次のとおり補正するほかは、原判決事実及び理由欄の第6章の第2(原判決149頁5行目から同197頁2行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

(原判決の補正)

原判決149頁23行目の小松地方刑務隊を小松地方警務隊に
改める。


原判決156頁2行目の167,の次に「170、」を加え、24
行目の飛行教導群が小松基地に移駐したから同157頁1行目の「全趣旨)。」までを以下のとおり改める。飛行教導群が小松基地に移駐した平成28年度の管制回数は、合計1万9008回(うち上記移駐後の同年7月から平成29年3月までは1万4263回)であり、平成29年度の管制回数は1万8454回、平成30年度の管制回数は1万7612回であった(甲E167、17033(資料⑤))。ウ
原判決166頁1行目の204の次に

、235、288

を加え、
同167頁5行目の前記期間におけるを平成16年度から令和元年度までのに改め、18行目の平成29年度のW値76(81)を平成29年度ないし令和元年度のW値76(80~81)に改め、25行目冒頭から同168頁5行目末尾までを以下のとおり改める。平成16年度から令和元年度までの年度ごとの年平均W値(なお、括弧内の値は同年度の日WECPNLの80%レンジ上端値)をみると、①三者共同測定地No3(k町)では、58(62)(ただし、平成29年度を除くと61(64))~68(71)の範囲で概ね60台前半を、日WECPNLの80%レンジ上端値も平成19年度以降は70に達することなく概ね60台後半を推移し、②同No5(l町)では、58(60)(ただし、平成30年度を除くと61(65~66))~69(74)の範囲で概ね60台前半を、日WECPNLの80%レンジ上端値も平成19年度以降は70に達することなく概ね60台後半を推移し、③同No11(p町)では、61(70)~71(74~75)の範囲で概ね60台後半を推移し、④同No31(n町o)では、60(63~65)~66(70)の範囲で概ね60ないし63を、日WECPNLの80%レンジ上端値も平成17年度以降は70に達することなく概ね60台後半を推移している。

原判決180頁1行目及び5行目の検証の前に原審におけるを

加える。

原判決182頁2行目の平成24年度から3行目の程度までを

平成24年度から平成30年度までは、年間1万6000回から1万9000回程度

に改め、6行目の平成29年度を平成30年度に改める。
34


原判決186頁14行目の後記のとおりを上記7⑵エのとおり
に改める。

原判決187頁16行目の「存在する。」から同188頁5行目のそうであるとすれば,までを

存在するものの、昭和57年度調査に基づき昭和59年告示による第一種区域等の指定をした後は、現在に至るまで告示コンターの見直しがされていないこと(前提事実6⑷)をも併せ考えると、

に改める。ク
原判決190頁3行目冒頭から26行目末尾までを以下のとおり改める。⑷飛行教導群の移駐による騒音状況への影響一審原告らは、平成28年6月の飛行教導群の移駐により航空管制回数や騒音発生回数等が増加しており、騒音状況が悪化している旨を主張し、原審における一審原告らの本人尋問の結果中(原告番号18、同649、同783、同1128及び同1796)には上記移駐後に騒音状況が悪化した旨を述べる部分があり、また、当審で提出された騒音調査報告書Ⅶ(甲E170)でも、飛行教導群が移駐した平成28年の騒音状況の悪化が一時的なものではなく、平成29年度以降も騒音発生回数等が増加した状態が継続していることが裏付けられるとする。上記報告書Ⅶ(甲E170)によれば、三者共同測定地点である小松市a町の「修正機数の年平均値が上記の移駐後の平成28年度から平成30年度にかけて増加傾向にあること、a町と加賀市c町の合計騒音発生回数の上記移駐後の平均値(平成28年7月から平成
31年3月までのもの、平成28年度から平成30年度までのもの)が、上記の移駐前の平均値(平成23年4月から平成28年6月までのもの、平成23年度から平成27年度までのもの)を上回っていることが認められる。他方で、上記報告書Ⅶによれば、c町の修正機35数の年平均値は平成28年度から平成30年度にかけて減少傾向にあること、また、c町自体の騒音発生回数は、平成29年度と平
成30年度では減少傾向にある上、いずれの年度の騒音発生回数も平成24年度ないし平成27年度のそれを下回っていることが認められる。しかも、告示コンター内に位置する測定地の三者共同測定の結果を見ても、本件請求対象期間である平成17年度以降において、上記移駐後の平成28年度以降に最大値が計測されたのは、a町(平成29年度のW値83)以外にはないことが認められる(乙A288参照)。
また、航空管制回数については、平成28年度から平成30年度までの管制回数は、平成24年度から平成27年度までの平均管制回数1万7020回(甲E170の資料⑤)をいずれも上回った状態にあることが認められるものの、平成29年度及び平成30年度の管制回数それ自体は減少傾向にある上、平成29年度及び平成30年度の管制回数は、平成24年度の管制回数18226回(甲E170の資料⑤)と同水準の状況にあり、本件請求対象期間に含まれる平成17年度ないし平成21年度の管制回数(甲E146の43、49、50頁)をいずれも下回っていることが認められる。
これらに照らすと、飛行教導群の移駐により騒音状況が、本件損害賠償請求の内容に影響を及ぼす程度に悪化したものと認めることはできない。」


これに対し、一審原告らは、平成28年6月の飛行教導群の移駐によって騒音状況が悪化している旨を主張するが、上記⑴クで補正して引用した原判決で説示したとおりであるから、一審原告らの上記の主張は採用することができない。
また、一審原告らは、地上音を独立の侵害行為として評価すべき旨を主張36

するが、社会生活上受忍すべき限度を超える地上音が発生していることを裏付けるに足りる的確な証拠はない。一審原告らが主張する爆発及び墜落の危険性について損害賠償請求が認められない理由は、上記⑴で引用した原判決で説示したとおりである(原判決193頁14行目以下)。
さらに、一審原告らが主張する平和的生存権に基づく損害賠償請求が認められない理由は、上記⑴で引用した原判決で説示したとおりである(原判決195頁26行目以下)。


他方で、一審被告は、少なくともW75区域のうち、加賀市k町、能美市l町、n町o、小松市p町及びこれら以遠の地域については、告示W値75に相当する騒音実態にはない旨を主張する。
上記の4地点での三者共同測定の結果については、上記⑴ウで補正して引用した原判決で認定したとおりであって、日WECPNLの80%レンジ上端値(この数値は、小松市発行の基地と小松や石川県発行の小松基地周辺の騒音対策では、施設庁方式によるW値と、便宜上、ほぼ同等の値を示すものとされている。甲E169の131頁、乙A235参照)でもW値70に達しない状況がみられており、施設庁方式によるW値としても75を下回っている状況にある可能性は否定し切れない。
しかしながら、一審被告の上記主張は、告示コンターが騒音実態を適切に反映されていないことを前提としたものであるが、そもそも告示コンターは生活環境整備法が適用される場面において、その適用範囲を画する重要な役割を有するところ、本件基本協定書では、一審被告は、常時騒音測定の調査結果に基づいて少なくとも年1回騒音コンターの見直しを行うこととされているところ、昭和57年度調査に基づき昭和59年告示による第一種区域等の指定をした後は、現在に至るまで告示コンターの見直しを行っていない(前提事実2⑻(原判決11頁から12頁)、6⑷(原判決22頁から23頁))。
37

また、一審原告ら作成の被害状況陳述書(甲F1。枝番を含む。)を見ても、一審被告が上記4地点の以遠に居住すると主張する一審原告らの被害状況陳述書(ただし、作成された平成21年当時には同所に居住していなかった分を除く。)には、睡眠の被害に関する記載がないもの(甲F1の931、933、935、936、1727、1781)や、k町上空の自衛隊機による騒音は低減されたと感じている旨の記載があるもの(甲F1の1852)が見られるものの、それ以外の多くのものは、被害の内容や程度について、他のW75区域に居住する一審原告らの被害状況陳述書の記載内容と大きな差異はないものと認められる。
これらに照らすと、告示コンター内のうち、一審被告が主張する上記の4地点以遠の地域について施設庁方式によるW値75に達しない騒音実態にあるものと認めることは相当ではないというべきである。これと異なる一審被告の上記主張は採用することができない。
7
航空機騒音による被害(被侵害利益の性質及び内容並びに被害の程度等)について


航空機騒音による被害(被侵害利益の性質及び内容並びに被害の程度等)についての認定は、次のとおり補正するほかは、原判決事実及び理由欄の第6章の第3(原判決197頁4行目から同275頁16行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

(原判決の補正)

原判決200頁22行目の健康被害の前に疾病又は身体症状といったを加え、25行目及び同201頁20行目から21行目にかけての各健康被害の前にいずれも疾病等のを加える。


原判決222頁16行目の結果についてははを結果については
に改める。


原判決242頁23行目の⑷イを4⑷イに改める。38


原判決244頁4行目の当該身体症状の有無等を当該自覚症状に対応する疾病の有無に改め、7行目の身体症状等を疾病に改める。


原判決244頁9行目冒頭から22行目末尾までを以下のとおり改める。

また、2011年調査についてみると、告示W値75以上の区域において、①「胸がどきどきする

、②肩がこる及び③腰が痛いとの項目につき、かなりある又はひどくあると回答した者の
割合をみると、①では最大5.5%(W85区域)、②では最大21.5%(W85区域)、③では最大23.8%(W75区域)であるのに対し、非騒音区域では①につき0.8%、②につき13.8%、③につき16.4%であり、また、現在の健康状態についてもよくない又は余りよくないと回答した者の割合は最大19.2%(W80区域)であるのに対し、非騒音地区では9.3%であって(甲E147の表5-1-4-1)、本件飛行場周辺において健康状態の不調を訴えている住民の割合は、生活妨害の場合(上記5⑷ア)に比して相当小さいものということができる。」


原判決244頁26行目のというのであってから同245頁1行目から2行目にかけてのこれらの調査によってもまでを

というのであり、また、1998年調査の結果及び2011年調査の結果からも

に改める。


原判決254頁1行目冒頭から7行目の総合的に考慮すると,までを

このように出生時体重に影響を及ぼす要因は様々であって、2011年調査の多要因調整によって適切な調整がされているといえるかについては疑問が残ることに照らすと、

に改める。

原判決262頁16行目の⑸を5⑸に改める。

原判決263頁7行目の認め得るようを認め得るようなに改め
39

る。


これに対し、一審原告らは、その主張する健康被害の内容について、心身相関の考え方に基づき、具体的な疾病・疾患ではなく、身体障害に連なる危険性のある生理的・心理的現象であり、騒音というストレスによる具体的な生理的・心理的現象の外部への現れ方は各人によって異なるとしても、騒音によって上記の生理的・心理的現象が生じているという限度では共通しており、疫学的な調査結果によって上記の内容の健康被害が直接的に立証されている旨を主張する。
しかしながら、損害賠償請求の対象となる健康被害は、飽くまでも現実に発生した疾病や身体症状が基本となるものであって、一審原告らが共通被害として主張する身体障害に連なる危険性のある生理的・心理的現象については、上記⑴で補正して引用した原判決が説示するとおり、疾病等が生じる相当程度の危険性があると認められる場合に限って不法行為法上の保護に値する利益に当たるものと解するのが相当である。一審原告らが健康被害として主張する、身体障害に連なる危険性のある生理的・心理的現象についても、それによって上記の疾病等が生じる相当程度の危険性があると認められる場合に限って、損害賠償請求権の発生が認められることとなる。本件においては、一審原告らの提出する疫学的な調査結果によっても、上記の疾病等が生じる相当程度の危険性があるとは認められない。このように解しても昭和56年大阪国際空港訴訟最判に抵触するものではない。
もっとも、一審原告らが指摘する心身相関の考え方に照らすと、ストレス等といった身体障害に連なる危険性のある生理的・心理的現象については、静穏な日常生活の享受を妨害されたことによる共通被害として認められる、航空機騒音をうるさく感じ、苛立ちや怒り等による情緒的被害や不快感等の精神的苦痛によって引き起こされるものともいえるから、静穏な日常生活の享受を妨害されたことに伴う慰謝料の算定においては、そうした精神的40

苦痛によるストレス等も十分に考慮されているのであり、仮に、一審原告らが主張する身体障害に連なる危険性のある生理的・心理的現象が認められたとしても、そのことから直ちに慰謝料の額に変動を及ぼすものとは解されない。
また、一審原告らは、非特異的疾病ないし身体症状についても、航空機騒音によるものであることが疫学的に立証されている旨を主張するが、疫学的に見て航空機騒音と非特異的疾病等との間に関連性が認められるとしても、その関連性の程度や度合いは明らかではなく、法的に見て、航空機騒音によって疾病等が発生する相当程度の危険性があると認めることは困難である。なお、一審原告らは、寄与危険割合によって因果関係の程度を把握することができ、それを算出するのに必要な累積発生率は、慢性疾患の場合には、横断研究(断面調査)である2011年調査で得られた存在率(有病率)と近い値になる旨を主張するが、一審原告らが引用する甲C第78号証は、そのような可能性があることを示唆するにとどまり、本件において、2011年調査によって得られた存在率をもって累積発生率に近い値であると断定することはできない。
そして、疾病等が生じる相当程度の危険性があると認められないことについては、上記⑴で補正して引用した原判決が説示するとおりであって、一審原告らが種々主張する点を踏まえても、上記の結論は左右されない。⑶

他方で、一審被告は、昭和56年大阪国際空港訴訟最判は、健康被害が生じる相当程度の危険をもって慰謝料請求権の発生原因とすることを認めていない旨を主張するので検討するに、昭和56年大阪国際空港訴訟最判は、身体的被害の可能性ないし危険性を帯有する生理的・心理的現象を慰謝料請求権の発生原因たる被害と認めるものであり、原審が慰謝料請求権の発生原因たる被害とした健康被害が生じる相当程度の危険が生じていることとは文言上差異があることは一審被告の主張するとおりである。また、昭和5641

年大阪国際空港訴訟最判は、単なる身体的被害発生の可能性ないし危険性そのものを慰謝料請求権の発生原因たる被害とみることはできない旨を明言するものであるが、原審のいう健康被害が生ずる相当程度の危険というのはこれに一定程度の絞りをかけるものと解され、原審の判断が昭和56年大阪国際空港訴訟最判に反する違法なものであるとはいえないから、この点に関する一審被告の主張は上記⑵の判断を左右しないというべきである。また、一審被告は、睡眠妨害を共通被害として認定することはできない旨を主張するが、上記⑴で引用した原判決が説示するとおり、本件飛行場に係る航空機騒音の多くは日中に集中しているために生活妨害の程度としては限定的なものではあるが、睡眠が必要となるときにそれが妨げられるという点においては、告示コンター内に居住する一審原告らに共通して、睡眠妨害の被害が生じているものということができるので、一審被告の上記主張は採用することができない。
8
本件飛行場の公共性及び公益上の必要性等について


本件飛行場の公共性及び公益上の必要性等についての認定は、原判決27
5頁21行目の小松地方刑務隊を小松地方警務隊に改めるほかは、原判決事実及び理由欄の第6章の第4(原判決275頁18行目から同281頁16行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。⑵

これに対し、一審原告らは、最高法規である憲法規範に違反する国家行為
は強度の違法性を有するから、公共性等を考慮することは許されない旨を主張する。
しかしながら、憲法が日本国の最高法規であるからといって全ての民事訴訟事件において憲法適合性の判断が必要となるものではなく、本件における違法性の有無を判断するに当たって、憲法違反の有無についての判断を要しないことは上記⑴で引用した原判決で説示したとおりであるから、これと異なる一審原告らの上記主張は採用することができない。
42



他方で、一審被告は、本件飛行場の周辺住民が享受する利益と本件飛行場
の存在によって被る被害との間は彼此相補の関係が成り立つ旨を主張するが、そのような関係が認められないことは上記⑴で引用した原判決で説示したとおりであるから、これと異なる一審被告の上記主張は採用することができない。
9
侵害行為の開始とその後の経過等について
侵害行為の開始とその後の経過等についての認定は、原判決283頁17行目の締結当時者を締結当事者に改めるほかは、原判決事実及び理由欄の第6章の第5(原判決281頁18行目から同284頁6行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

10

一審被告による周辺対策及び音源対策等について



一審被告による周辺対策及び音源対策等についての認定は、次のとおり補正するほかは、原判決事実及び理由欄の第6章の第6(原判決284頁8行目から同303頁8行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

(原判決の補正)

原判決287頁6行目の次行に以下を加える。
平成30年度には、上記住宅防音工事として1736世帯に対し合計で約17億6873万円を助成しており、各種復旧工事を除く住宅防音工事の1世帯当たりの平均助成額は約375万円であり、外郭防音工事の1世帯当たりの平均助成額は約765万円であった(乙A253)。

原判決287頁12行目の外郭工事標準仕方書を外郭防音工事標準仕方書に、16行目の告示W値80dBを告示W値80に、17行目の告示W値75dB以上を告示W値75以上に各改める。

原判決289頁1行目の別紙から3行目の記載のとおりまでを
43

住宅防音実績表に記載のとおりに、9行目の上記別紙原告別住宅防音実績表を住宅防音実績表に、20行目の別紙原告別住宅防音実績表を住宅防音実績表に各改める。エ
原判決289頁22行目の末尾になお、一審原告A2ら(原告番号35・36)の居宅、同A3ら(原告番号188・189・192)の居宅、同A4ら(原告番号263・264)の居宅、同A5ら(原告番号323~326)の居宅、同A6ら(原告番号381・382)の居宅、同A7ら(原告番号521~524)の居宅及び同A8ら(原告番号1396~1398)の居宅については、住宅防音実績表記載のとおり、解体建替後に住宅防音工事が施工されている。を加える。オ
原判決293頁16行目の226の次に「、237」を加える。

原判決294頁7行目の「飛行場等の周辺の移転措置実施に伴う損失補償基準を「飛行場等周辺の移転措置実施に伴う損失補償基準」に、8行目の飛行場周辺を「飛行場周辺に、10行目の損失基準
を損失補償基準に各改める。


原判決294頁26行目の平成29年度を平成30年度に、同
295頁1行目の671戸を677戸に、同行目から2行目にか
けての約97万5000㎡を約97万9000㎡に、同行目の
約304億8722万円を約306億3432万円に、6行目及
び9行目の各平成29年度をいずれも平成30年度に各改める。


原判決296頁の4行目の平成から5行目の5000㎡を平成30年度までに約97万9000㎡に、6行目の671戸を677戸に各改める。

原判決298頁26行目の次行に

エ上記の各助成は、平成30年度においても着実に実施されている(乙A237)。

を加える。⑵

これに対し、一審被告は、住宅防音工事その他の周辺対策の効果を強調す44

るが、一審被告が種々主張する事情を踏まえても、上記⑴の判断は左右されない。なお、当審において実施した当事者双方からの申出による検証のうち、一審被告の申出に係る目的の中には、外郭防音工事が施工された住宅の居室の内外における騒音発生時の状況を検証することが含まれていたが、同住居での検証の際に、屋外において80dB以上を計測する騒音の発生機会が1度しかなかったため、外郭防音工事の効果を十分に確認することはできなかった(当審における検証の結果、乙A289)。
11

本件飛行場の供用による違法な権利侵害ないし法益侵害の有無について本件飛行場を設置・管理する一審被告には、告示W値75以上の区域に居
住する一審原告との関係において、国賠法2条1項の設置又は管理の瑕疵があるものと認められる。その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決事実及び理由欄の第6章の第7(原判決303頁10行目から同306頁4行目)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(原判決の補正)


原判決304頁17行目の有するものとを有するものに改める。



原判決305頁9行目のこの間を昭和57年度調査に基づき昭和59年告示による第一種区域等の指定をしたのを最後にに改める。


原判決305頁18行目の

というのである。

の次にそして、移転の補償等を受けて第一種区域内に転居した一審原告らとの関係では、移転の補償等を受けることによって航空機騒音による被害が低減されたといえるものの、移転の補償等を受けたというだけで、上記の者が移転後に受ける航空機騒音による被害が受忍限度の範囲内にあるものと評価することはできない。これに反する一審被告の主張は採用することができない。を加える。
12

一審原告らの居住歴について
一審原告らの居住歴についての認定は、次のとおり補正するほかは、原判決
事実及び理由欄の第6章の第8(原判決306頁6行目から同310頁45

16行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。したがって、原告番号2118ないし2122の一審原告5名の本件損害賠償請求(過去分)には理由がない。
(原判決の補正)


原判決307頁1行目の2117,同を削り、7行目の(ただし,
から8行目の2117-1)までを削る。


原判決307頁10行目冒頭から14行目末尾までを以下のとおり改める。

3他方、上記2の者らを除く一審原告については、居住歴一覧表の「請求の始期

と請求の終期の間の損害賠償を請求しているところ、上記の一審原告らの住民票等に記載された住所及びその異動の履歴は、おおむね居住歴一覧表に記載のとおりである(補正後の前提事実8⑶のとおり、一部にアンケート調査の回答書の記載内容が記載されているものもある。)。」



原判決307頁25行目冒頭から同308頁5行目末尾までを以下のとおり改める。
そこで、上記の住民票等に記載された住所及びその異動の履歴と異なる事実を認めるべき特段の事情の有無について検討する。⑴回答書の記載内容と住民票の記載内容が異なる一審原告について一審被告は、補正後の前提事実8⑶のアンケートの回答書の記載内容に基づき、別紙「居住実態区域外原告ら一覧に記載の一審原告については、住民票に記載された住所とは異なる居住実態があり、実際に居住していたとする場所が指定区域の外に位置する期間については、上記の特段の事情がある旨を主張する。

一審原告A9(原告番号160)について
同一審原告(旧姓A10)の父である一審原告A11は、一審原告A9について、回答書の実際の居住地欄に小松市r町s-t、
46

生活期間欄に平成12年5月~令和元年11月、理由欄
に結婚と記入する(乙A290の158)。
しかしながら、同一審原告(平成8年6月生)の婚姻日は令和元
年11月27日であり、住民票上は同日に小松市r町s番地tに
転居しているところ(甲F196の160の1・2)、上記回答書中の同一審原告の住民票上の居住歴には小松市u町v番地w(以下
従前の住所地という。)の記載しかなく、現在の住所地が記載さ
れていなかったこと(乙A290の158)、住民票上の従前の住所地への転居日は平成12年4月5日であったこと(甲F193の160)が認められるから、上記回答書の実際の居住地欄には、同一
審原告の住所地の記載の誤りを訂正する趣旨で現在の住所地が記入され、生活期間欄には従前の住所地に実際に居住した期間が記入さ
れたものと考えられる。
そうすると、上記回答書の記載内容を踏まえても、上記の特段の
事情があるとはいえないから、同一審原告が従前の住所地に居住していたのは、住民票等の記載内容のとおり令和元年11月26日までと認められる。

一審原告A1(原告番号251)について
同一審原告は、住民票等では、平成19年9月12日に小松市d町e丁目f番地g(W75区域)に転居した後、令和元年12月7日には石川県七尾市h町(告示コンター外)に転居した(甲F196の251)とされているところ、同一審原告は、アンケートの回答書(乙A290の251)の生活期間欄に2019年5月~2021年3月頃、理由欄に仕事のため七尾市内へと記入し、また、小松市d町e丁目f番地gに住民票を移していない理由について、七尾市に住民票を移したのは、母親を扶養家族に移すためであり、七尾47

市から小松市に住民票を移していないのは、会社に対する関係で移す必要性がなかったためと平日休みが取りづらいためである旨を述べている(甲F197の41)。
そうすると、同一審原告は、小松市d町e丁目f番地gを生活の
本拠と定めたが、仕事の都合で一時的に石川県七尾市内に居住し、実際の転居日よりも7か月程度遅れて転入の届出をしていることになるから、小松市d町に戻ったものの転居の届出ができていない旨の同一審原告の上記供述記載部分を信用することができる。したがって、同一審原告は、平成31年4月30日までと令和3年4月1日以降は小松市d町e丁目f番地g(W75)に居住しているものと認めるのが相当である。

一審原告近A12(原告番号1704)について
上記一審原告と同居していた一審原告A13は、一審原告A12については、住民票等の記載の住所地とは異なり、平成28年4月以降は金沢市に単身赴任している旨を回答しているから(乙A290の1702の2)、一審原告A12が住所地(W75)に居住していたのは、同年3月31日までであると認めるのが相当である。


別紙居住実態区域外原告ら一覧記載のその余の一審原告ら(た
だし、後記⑶の一審原告A14(原告番号1796)を除く。)について一審被告が指摘する点は、いずれも居住歴一覧表記載の請求の始期又は請求の終期に正確に反映されており、そのほかには上記の特段の事情は見当たらないから、上記の一審原告らは、居住歴一覧表記載の請求の始期から請求の終期までの間は、居住歴一
覧表に記載の住所地に居住していたものと認められる(なお、年月の記載しかないものの日は、請求の始期につき当月1日、請求の終期につき当月末日である。)。48


一審原告A16(原告番号182)について
同一審原告は、小松市α町β番地γから千葉県富里市へ転出しているが、同一審原告はその転出の届出をしていないこと(住民票上は令和2年2月17日に転出確定。甲F196の182)、同一審原告のおばである一審原告A17は、上記の転居につき転居日不明と記
載された回答書を前提として回答しており、実際の転居日について回答していないこと(乙A290の179)、一審原告A16は、平成30年3月7日に婚姻し、同一審原告につき千葉県成田市を本籍地とする新戸籍が編成されていること(一審原告A18の訴訟手続受継の申立書の添付資料参照)、以上の事実が認められる。
上記の認定事実によれば、一審原告A16が小松市α町(W80)に居住していたのは平成30年3月6日までであると認めるのが相当である。


一審原告A19(原告番号741)について
同一審原告の訴訟承継人であるA20は、同一審原告が住所地(小松市δ町ε番地)と異なり、平成27年4月以降小松市ζ町η-θ所在の施設に入居していた旨を回答しているから(甲F197の54)、同年3月31日までは上記の住所地(W80)に居住し、同年4月1日以降は上記の小松市ζ町(W75)に居住していたものと認めるのが相当である。


一審原告A21、同A22及び同A23(原告番号1089、1090、1091)について
一審原告A21は、同居の家族を含む上記の一審原告ら3名については、住民票等の記載の住所地とは異なり、平成30年2月以降、母の介護のため小松市ι町κに居住している旨を回答しているから(乙A290の1089)、上記の一審原告ら3名が住所地(W80)に49

居住していたのは同年1月31日までであり、同年2月1日以降は上記の小松市ι町(W75)に居住しているものと認めるのが相当である。

一審原告A24(原告番号1275)について
同一審原告は、住民票等の記載の住所地とは異なり、令和2年10月以降、小松市ζ町λ-μ所在の施設に入所している旨を回答しているから(乙A290の1275)、同年9月30日までは住民票等の記載の住所地(W85)に居住し、同年10月1日以降は上記の小松市ζ町(W75)に居住しているものと認めるのが相当である。


一審原告A25(原告番号1553)について
同一審原告と同居していた一審原告A26は、一審原告A25については、住民票等の記載の住所地とは異なり、令和3年3月以降、シンガポールに単身赴任している旨を回答しているから(乙A290の1553)、一審原告A25が住所地(W75)に居住していたのは、同年2月28日までであると認めるのが相当である。


一審原告A27、同A28、同A29及び同A30(原告番号660、721、1648、1995)について
上記の一審原告らは、いずれも住民票等の記載の住所地(なお、一審原告A29(原告番号1648)の住所地は能美市ν町ξ番地ο)とは異なる場所に居住している旨を主張し、回答書中にもこれに沿う記載があるものの、これらの居住事実は、上記オないしケとは異なり、いずれも後記15(損害額)で算定する調整後慰謝料月額を増額
する方向に働くものであるところ、上記の居住事実を裏付ける客観的な証拠がないから、上記の主張はいずれも採用することができない。


回答書の提出がない一審原告らについて
一審被告は、アンケート調査に回答しなかった一審原告らについては、50

上記の特段の事情があるというべきであり、居住事実の立証がない旨を主張する。
アンケート調査に回答していない者のうち、既に死亡した者に対してはアンケート調査や聞き取り調査を実施することができず、回答することができない上、居住実態の確認を申し入れた一審被告においても、死亡した者の居住実態の確認についてまで明確に要望していなかったという経緯をも考慮すると、既に死亡した者については、上記の特段の事情があるとまではいえないものとして、請求の始期から請求の終期
までの居住場所は居住歴一覧表に記載の住所地のとおりであると認めるのが相当である(なお、A31(原告番号771)も既に死亡している。)。
他方で、アンケート調査の実施方法は、補正後の前提事実8⑶に記載のとおりであり、住民票に記載の住所地と異なる場所に居住していた事実がなければ、単に異ならない旨を回答すれば足りるもので容易に回答可能であることからすると、このような調査に回答しない以上、居住事実についての立証が尽くされていないものというほかない。
もっとも、原審で提出された被害状況陳述書(F1)は住所地に実際に居住していることを前提に作成されているものと考えられること、一審被告によるアンケート調査等の実施の要望は当審になってされたものであることを考慮すると、上記の特段の事情があるといえるのは、原審の口頭弁論終結日の属する令和元年6月以降の部分に限られるものとするのが相当である。
そうすると、回答書の提出のない一審原告らのうち令和元年6月以降について損害賠償を求めている7名(原告番号397~399、874、1399、2178、2180)については、令和元年6月以降に主張の住所地に居住していた事実を認めることができないものというべきで51

ある。」


原判決308頁6行目冒頭の⑴を⑶に改め、8行目の(令和元年6月17日)を削り、11行目の本人尋問の前に原審におけるを加える。



原判決309頁4行目冒頭の⑵を⑷に改め、5行目冒頭から7行目末尾までを以下のとおり改め、8行目の本人尋問の前に原審におけるを加え、24行目末尾の次に

これに反する上記の回答書(乙A290の1796)の記載内容は採用することができない。

を加える。一審原告A15(原告番号1798)は、本件損害賠償請求に係る請求対象期間を平成17年12月24日から令和2年4月7日までとして、同月8日に野々市市に転居するまでは、住民票等の記載のとおり加賀市x町y丁目z番地に居住していた旨を主張し、その父である一審原告A14作成の回答書(乙A290の1796)には同旨の記載がある。


原判決309頁25行目冒頭の⑶を⑸に改め、同310頁4行目の本人尋問の前に原審におけるを加える。



原判決310頁16行目の次行に以下を加える。

⑹上記⑴ないし⑸の一審原告ら以外の一審原告らについては、上記の特段の事情は見当たらないから、居住歴一覧表の「請求の始期

から請求の終期までの期間は、その住所地に居住していたものと認めるのが相当である。」

13

危険への接近の法理について
一審被告がいわゆる危険への接近の法理が適用されると主張する一審原告ら
については、いずれも上記の法理が適用されないものと判断する。その理由は、原判決事実及び理由欄の第6章の第9(原判決310頁18行目から同313頁1行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。14

移転の補償等を受けて第一種区域内に転居した一審原告らについて52

一審被告は、移転の補償等を受けて居住地を変更したにもかかわらず、引き続き第一種区域(告示W値75以上の区域)内に居住し、その上で本件訴えを提起した者2名及びその関係者7名の合計9名(別紙原告別居住歴表【移転措置関係者】。ただし、訴えを取り下げた原告番号468及び同469を除く。)については、一審被告の負担において多額の費用を要する移転の補償等を受け、航空機騒音等による影響を解消する機会を得ながら、自らの判断により甘受した航空機騒音による影響等を理由として、一審被告に対し、損害賠償請求することは、信義則に反し許されない旨を主張する。なお、一審被告は、これらの一審原告については違法性が否定されるべき旨を主張するが同主張が採用し得ないものであることは上記11で原判決を引用するに際し補正して説示したとおりである。
生活環境整備法では、移転の補償等を受けるのに第一種区域外に転居することは求められてはおらず、また、第一種区域内に転居する場合には航空機騒音に係る損害賠償請求をしない旨の合意もされていない(弁論の全趣旨)。しかしながら、移転の補償等は、一審被告の負担において移転することによって第二種区域における航空機騒音等による被害を解消する手段として位置付けられるものであって、第二種区域内に居住する者にとっては自らが受けている航空機騒音等の影響や程度等を熟知した上で、移転先を選定したものといえること、また、その移転に当たっては、建物の移転に要する種々の費用についても補償を受けられること(上記10⑴で引用した原判決事実及び理由欄の第6章の第6の2⑴(原判決293頁15行目以下)参照)、実際に、移転の補償等を受けた677戸のほとんどは、告示コンター外に転居しているところ(弁論の全趣旨)、上記の一審原告らにおいて、告示コンター外に転居することが困難であった事情は明らかにされていないこと、以上の事実を指摘することができる。
これらに照らすと、移転の補償等を受けて第一種区域内に転居した一審原53

告ら(原告番号148ないし150、1473ないし1475)については、信義則に照らし、移転後の居住期間についての損害賠償額の3割を減額するのが相当である。したがって、一審被告の上記主張はその限度において理由があり、移転補償等は考慮要素とならない旨の一審原告らの主張は、上記説示の限度で理由があり、その余は理由がない。
他方で、上記の移転後になって移転先での居住を開始した一審原告ら(原告番号151ないし153)については、上記で指摘した事情が妥当しないから、損害賠償請求が制限される理由はない。
15

損害額について



一審原告ら(ただし、原告番号2118ないし2122の5名を除く。)の一審被告に対する本件損害賠償請求(過去分)については、別紙認容額一覧のとおりであると認められる。その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決事実及び理由欄の第6章の第10の1ないし3(原判決313頁3行目から同316頁20行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

(原判決の補正)

原判決314頁16行目の次行に以下を加える。

なお、遅延損害金の利率については、A期間及びB期間のうち令和2年3月31日までに生じた損害については改正前民法所定の年5分であり、同年4月1日以降に生じた損害については現行の民法所定の年3%となる。



原判決314頁26行目末尾の次に

また、本件請求対象期間内に告示コンター内で転居した場合もこれと同様であって、当該転居の日の属する歴月については、転居の前後の「調整後慰謝料月額

(後記⑹)を比較して、より低い金額の限度で損害が発生したものと認めるのが相当である。」を加える。
54


原判決316頁12行目の相当でありの次に

(告示コンター内で転居した場合も同様である。)

を加える。

原判決316頁17行目のA期間の次に及びB期間を加え、1
8行目から19行目にかけての

(ただし、100円未満は四捨五入する。)

を削り、20行目末尾の次に以下を加える。B期間の弁護士費用は、当審における一審原告らの拡張請求に基づくものである。一審原告らは、原審がこれを認容しなかったことが、一審原告らの弁護士費用の請求がA期間についてのみであると誤解したことによるものであるかのような主張をするが、B期間について弁護士費用を求める旨の主張は、原審において一審原告らから提出された書面には一切記載されていなかったものであり、これを認めなかった原審の判断に誤りはなく、一審原告らの同主張には理由がない。


これに対し、慰謝料額について、一審原告らは、低額にすぎること、W値の増大に伴う慰謝料の増額幅が同額でないことの不合理さなどを指摘し、他方で、一審被告は、第3・4次訴訟控訴審判決の慰謝料額を増額する理由がないことやその当時と貨幣価値に変動がないことなどを指摘するが、静穏な日常生活の享受の妨害の程度については、告示W値の上昇に伴って、必ずしも比例的に増大するわけではなく、増大の仕方が逓減する場合もあり得ること(原判決236頁21行目ないし25行目、同261頁15行目ないし18行目参照)、昭和50年に締結された10・4協定では一審被告において10年以内に速やかに環境基準の達成を期するものとされ、第1・2次訴訟及び第3・4次訴訟においても本件飛行場の供用の違法性が繰り返し指摘されてきたにもかかわらず、騒音状況は大きく改善されることなく継続していること、その他本件において現れた一切の事情を総合考慮すると、双方が種々主張する事情を考慮してみても、上記⑴の認定判断は左右されない。
55



また、一審原告らは、告示コンター内の居住期間が歴月の一部にとどまる場合に損害額を認めないのは違法である旨を主張する。
しかしながら、本件における航空機騒音については、民間空港におけるものとは異なり、曜日等によって相当変動するものであって、必ずしも日割計算になじむものとは言い難い面があること、本件では継続的な相当長期にわたる損害賠償請求がされていることに照らすと、歴月を単位として損害額を算定するのが相当であるから、一審原告らの上記主張は採用することができない。なお、月の途中に告示コンター内で転居した場合に転居の前後の居住期間自体は歴月の一部にとどまるが、この場合の転居の当月分について損害賠償請求が認容されるべきことは上記⑴で原判決を引用するに際し補正して説示したとおりである。



他方で、一審被告は、加賀市c町及び同町以遠のW85区域の騒音状況はW80区域と同程度であるから、慰謝料額をW80区域と同額にすべき旨を主張するが、上記6⑶で説示したのと同様に一審被告の上記主張は採用することができない。



さらに、一審原告ら及び一審被告は、住宅防音工事による減額の程度の大小及び弁護士費用の多寡についても争っているが、双方が種々主張する事情を踏まえても、上記⑴の認定判断は左右されない。


小括

損害元金額
上記10及び12で補正して引用した原判決(第6章の第6の1⑵及び第8)において認定した一審原告らが告示コンター内に居住していた期間や住宅防音工事の実施状況等に係る事実を踏まえ、上記⑴で補正して引用した原判決の説示したところに従い計算すると、後記イのとおりの別紙認容額一覧の各一審原告に対応する⑬慰謝料総額(円)(A期間)、⑲慰謝料総額(円)(B期間)、⑭弁護士費用(円)(A期間)
56

及び㉑弁護士費用(円)(B期間)欄記載の金額を合計した金額である㉒損害合計額(円)欄記載の金額が、各一審原告が一審被告に賠償を求めることができる損害元金となる。

別紙認容額一覧について
別紙認容額一覧は、損害賠償請求が認められる一審原告ら(死亡した者については、氏名の冒頭に亡を付し、訴訟承継人がある場合には、枝番に1を付した。)ごとの認容額を記載している。
別紙認容額一覧記載の項目のうち、①転居日等欄記載の日には、告示コンター内に転居した日又は住宅防音工事が完成した日ないし住宅防音工事済みの建物の解体等の日を記載している(なお、後者の場合は、日付を斜体で表記し、解体等の日が不明な場合には、解体等された月又は年の翌月ないし翌年の初日を記載している。上記⑴で引用した原判決第6章第10の2⑶(原判決316頁6行目以下))。
③請求の始期欄と④請求の終期欄には、居住歴一覧表で示された一審原告らが損害賠償を求める期間の始期と終期を記載している(なお、終期が空欄のものは将来分を請求している。)。
⑤期間の初月欄と⑥期間の末月欄には、当裁判所が上記12で認定した一審原告らが告示コンター内に居住した事実に基づいて、上記の損害賠償請求が認容される期間の始期と終期を記載し、その認容される期間のうちA期間に区分される月数を⑪賠償対象歴月(A)欄に、B期間に区分される月数を⑰賠償対象歴月(B)欄に記載している。
そして、上記の認容される期間に対応する一審原告らの居住地の告示W値は、②W値欄記載のとおりであり、⑦慰謝料基準月額(円)は、当該告示W値に対応する基準となる慰謝料月額(上記⑴で引用した原判決第6章の第10の1⑴(原判決313頁4行目以下))である。また、⑧防音工事室数は、上記の認容される期間に対応した各一審原告の住57

居における住宅防音工事実施済居室数であり(ただし、上記⑴で引用した原判決第6章の第10の2⑴、⑵(原判決315頁2行目以下)において説示したところを踏まえ、6室以上の場合や、外郭防音工事又は防音区画改善工事が実施された住宅については、いずれも5としている。)、当該室数に応じた減額割合(同2⑵)は、⑨減額率のとおりであり、⑦慰謝料基準月額(円)から同減額をした金額は、⑩調整後慰謝料月額(円)欄の金額となる。なお、上記14で説示した、移転の補償等を受けて第一種区域内に転居した一審原告ら(原告番号148~150、1473~1475)の減額割合も⑨減額率欄に記載している。そうすると、上記の認容される期間のうち、A期間に係る慰謝料の総額が⑬慰謝料総額(円)(A期間)欄の金額であり、B期間に係る慰謝料の総額が⑲慰謝料総額(円)(B期間)欄の金額となる。慰謝料額は、⑩調整後慰謝料月額(円)に⑪賠償対象暦月(A)及び⑰賠償対象暦月(B)の月数(なお、B期間の賠償対象歴月の初月と末月は、⑮B期間の初月と⑯B期間の末月欄に記載のとおりである。)を乗じた金額であるが、認容される期間に応じて慰謝料月額が異なったり、認容される期間が分断されたりする場合があるため、その各期間に応じた金額を⑫慰謝料小計「円(A期間)」又は⑱慰謝料小計「円(B
期間)」欄に記載しており、その小計欄の合計金額が上記の総額欄の金額となる(なお、上記の事情がなければ、1行で記載され、小計欄と総額欄が同額となる。)。
そして、弁護士費用については、A期間の弁護士費用は、A期間の慰謝料総額に10%を乗じた⑭弁護士費用(円)(A期間)記載の金額(ただし、100円未満四捨五入)であり、B期間の弁護士費用は、⑩調整後慰謝料月額(円)欄記載の金額に10%を乗じた⑳弁護士費用月額(円)欄記載の金額にこれに対応する⑰賠償対象歴月(B)欄58

記載の月数(その初月と末月の記載あり)を乗じた金額の合計である㉑弁護士費用(円)(B期間)記載の金額である。ウ
認容額
以上によれば、一審原告ら(原告番号2118ないし2122の5名を除く。)は、一審被告に対し、国賠法2条1項に基づき、各自、次の金員の支払を求めることができる。
A期間に生じた損害につき、別紙認容額一覧の各一審原告に対応する⑬慰謝料総額(円)(A期間)欄及び⑭弁護士費用(円)(A期間)欄各記載の各金員並びにこれらに対する訴状送達日(第1事件原告らにつき平成21年3月30日、第2事件原告らにつき同年5月8日)の各翌日から各支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金
B期間に生じた損害につき、別紙認容額一覧の各一審原告に対応する⑲慰謝料総額(円)(B期間)欄記載の金員及び⑮B期間の初月
欄記載の月から⑯B期間の末月欄記載の月までの各歴月に対応する⑩調整後慰謝料月額(円)欄記載の金額に対するその各翌月1日から各支払済みまで、令和2年3月までの歴月分については改正前民法所定の年5分の、令和2年4月以降の歴月分については現行の民法所定の年3%の各割合による遅延損害金
一審原告らの当審における拡張請求のうち、B期間に生じた損害に係る弁護士費用として、別紙認容額一覧の各一審原告に対応する㉑弁護士費用(円)(B期間)欄各記載の各金員及び⑮B期間の初月欄記載の月から⑯B期間の末月欄記載の月までの各歴月に対応する
⑳弁護士費用月額(円)欄記載の金額に対するその各翌月1日から各支払済みまで、令和2年3月までの歴月分については改正前民法所定の年5分の、令和2年4月以降の歴月分については現行の民法所定の年59

3%の各割合による遅延損害金
16

本件損害賠償請求(将来分)に係る訴えの適否について



本件損害賠償請求のうち、本件口頭弁論終結日の翌日以降に生ずべき損害についての損害賠償請求に係る訴えは、いずれも不適法であるから、却下すべきであると判断する。その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決事実及び理由欄の第6章の第11(原判決320頁3行目から同321頁25行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。原審の口頭弁論終結日の翌日から当審の口頭弁論終結日までの分については、原審においては不適法とされたものが当審においては適法となるものの理由がないものとされるから、この部分についての棄却を求める一審被告の附帯控訴に理由がある。

(原判決の補正)

原判決320頁18行目の又はを「かつ、」に改める。

原判決320頁23行目の昭和56年大阪国際空港訴訟最判の次に

、平成5年厚木基地訴訟最判、平成5年横田基地訴訟最判

を加え、24行目の参照の前に

、最高裁平成28年12月8日第一小法廷判決・裁判集民事254号35頁

を加える。


これに対し、一審原告らは、原審が参照引用する最高裁判決は、いずれも事例判断にすぎず、判例の射程を誤って一般化している旨を主張する。しかしながら、上記⑴で補正して引用した原判決が参照引用する最高裁判決は、いずれも本件と同じく航空機騒音に係る損害賠償請求の事案についての判断であり、上記の最高裁判決の判断の趣旨は、本件にも同様に妥当するものであるから、一審原告らの上記主張は採用することができない。その余の一審原告らの主張を踏まえても、上記⑴の判断は左右されない。
17

結論
以上によれば、本件各差止請求のうち、訴え提起後に死亡した一審原告ら60

の差止請求は当然に終了することを宣言し(主文1項⑴)、自衛隊機の運航等の差止請求は不適法であるから却下し(主文1項⑵ア)、米軍機の運航等の差止請求は理由がないから棄却し(主文1項⑷)、また、本件損害賠償請求(当審における拡張請求を含む。)のうち、当審の口頭弁論終結日の翌日以降に生ずべき損害(将来分)に係る訴えは不適法であるから却下し(主文1項⑵イ、3項)、当審の口頭弁論終結日までに生じた損害(過去分)については、原告番号2118ないし2122の5名を除く一審原告らの請求は主文1項⑶及び4項の支払を求める限度で理由があり、一審原告らのその余の請求はいずれも理由がないこととなる(主文1項⑷、5項)。したがって、原告番号2118ないし2122の一審原告らの控訴をいずれも棄却し(主文2項)、その余の一審原告らの控訴並びに一審被告の控訴及び附帯控訴に基づき、原判決を主文1項のとおり変更し、当審における拡張請求については主文3項ないし5項のとおりとすべきであるから、主文のとおり判決する。名古屋高等裁判所金沢支部第1部

裁判長裁判官

蓮井
裁判官

橋本
裁判官

峯金
61

俊治修容子
62

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