判例検索β > 令和3年(行ケ)第10123号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号令和3(行ケ)10123
事件名審決取消請求事件
裁判年月日令和4年5月19日
法廷名知的財産高等裁判所
全文全文
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2022-05-19
情報公開日2022-06-03 04:00:18
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令和4年5月19日判決言渡
令和3年(行ケ)第10123号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

令和4年3月1日
判決原告
仲吉商事株式会社

同訴訟代理人弁護士

秋山健人
同訴訟代理人弁理士

黒瀬雅一丹治被
ミールソリューション株式会社


同訴訟代理人弁理士

友主野英三文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

第1

彰実及び理由
請求
特許庁が無効2019-800081号事件について令和3年8月30日にした審決を取り消す。

第2

事案の概要

1
特許庁における手続の経緯等


被告は、平成25年8月30日、発明の名称を食器とする発明について、特許出願(特願2013-179679号。以下本件出願という。)をし、平成26年10月24日、特許権の設定登録(特許第5636478
号。請求項の数5。以下、この特許を本件特許という。)を受けた(甲77)。


原告は、令和元年10月9日、本件特許について特許無効審判(無効2019-800081号事件)を請求した(甲77)。
被告は、令和2年2月12日付けで特許請求の範囲について訂正請求(以下本件訂正という。甲62)をした後、同年3月13日付けの訂正拒絶理由通知(甲63)を受けた。
特許庁は、令和3年8月30日、本件訂正は認められないとした上で、

本件審判の請求は、成り立たない。

との審決(以下本件審決という。)を
し、その謄本は、同年9月16日、原告に送達された。



原告は、令和3年10月14日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。

2
特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載は、次のとおりである(以下、請求項の番号に応じて、請求項1に係る発明を本件発明1などとう。甲78)

【請求項1】
平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されるように接着される積層厚板部と、
食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部と、前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5~15mmとなるよう形成されたR部とを具備し、
前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色
を持つ
ことを特徴とする幼児用食器。
【請求項2】
平板上に加工された複数枚の竹材平板である第1、第2、第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順に積層されるように接着されて構成される積層厚板部と、
食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部と、前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5~15mmとなるよう形成されるR部とを具備し、
前記第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し、
前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つことを特徴とする幼児用食器。【請求項3】
請求項1もしくは2記載の幼児用食器において、前記複数枚の竹材平板の木目方向を略同一方向とすることを特徴とする幼児用食器。
【請求項4】
請求項1もしくは2記載の幼児用食器において、前記複数枚の竹材平板の木目方向を層ごとに互い違いの方向とすることを特徴とする幼児用食器。【請求項5】
請求項1乃至4のうち1項記載の幼児用食器において、前記幼児用食器の窪み部を形成する底面に対する裏側の面において内周に若干の深さの溝が設けられていることを特徴とする幼児用食器。
3
本件審決の理由の要旨


本件審決の理由は、別紙審決書(写し)記載のとおりである。
その要旨は、原告主張の無効理由1(甲1ないし8をそれぞれ主引用例と
する本件発明1ないし3の新規性の欠如、甲1ないし3をそれぞれ主引用例とする本件発明5の新規性の欠如)及び無効理由2(甲1ないし8を主引用例とする本件発明1の進歩性の欠如、甲1ないし8を主引用例とする本件発明2の進歩性の欠如、甲1ないし8を主引用例とする本件発明3の進歩性の欠如、甲1ないし17、19及び20に基づく本件発明4の進歩性の欠如、甲1ないし3を主引用例とする本件発明5の進歩性の欠如)は、いずれも理由がないというものである。


本件審決が認定した甲4(著者:中里邦博ベビーギフト100(初版発行2012年10月23日、株式会社阪急コミュニケーションズ)のNo51)に記載された各発明(以下、それぞれを甲4-1発明、甲4-2発明という。)、本件発明1と甲4-1発明の一致点及び相違点、本件発明2と甲4-2発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。ア
甲4-1発明
竹の集成材からなる所定の厚みのある部分と、
前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分とが形成され、前記窪んだ部分において、底面と立ち上がり面が形成され、前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし、前記角は丸みがつけられており、前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が、前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つ
こども用食器。


甲4-2発明
竹の集成材からなり、下から上に向けて、下部部分、中間部分、上部部分からなる所定の厚みのある部分と、
前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分とが形成され、前記窪んだ部分において、底面と立ち上がり面が形成され、前記底面と
前記立ち上がり面とは角をなし、前記角は丸みがつけられており、前記中間部分の色が前記下部部分及び上部部分のそれぞれの色とは異なる色合いを持つこども用食器。

本件発明1と甲4-1発明の一致点及び相違点
(ア)

一致点

(一致点4)
平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板が積層されるように接着される積層厚板部と、食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部と、前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が形成されたR部とを具備し、前記立面と前記底面における中間部分の色が、前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ幼児用食器。である点。(イ)

相違点

(相違点9)
本件発明1は、複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されることで、立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なるのに対し、甲4-1発明は、複数の竹材平板が積層され、中間部分の色が上部部分及び下部部分の色とは異なるものであるが、素材色が異なる竹材平板を2種以上、その色が互い違いになるように竹材平板を積層したものであるか、さらに、立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が立ち上がり上部部分
及び立ち上がり下部部分を構成する竹材平板の素材色とは異なるかについて、ともに不明である点。
(相違点10)
本件発明1は、立面と底面とのなす角が半径略5~15mmとなるよう形成されたR部を具備し、前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つのに対し、
甲4-1発明は、立面と底面とのなす角がR部を備え、前記立面と前記底面において、中間部分の色が、前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つものであるが、前記R部が半径略5~15mmとなるよう形成されているか、さらに、前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が、立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なるかについて、ともに不明である点。(ウ)

まとめ
本件発明1と甲4-1発明とは、相違点9及び10において相違し、
本件発明1は、甲4-1発明であるとはいえないから、特許法29条1項3号に該当しない。

本件発明2と甲4-2発明の一致点及び相違点
(ア)

一致点

(一致点12)
平板上に加工された複数枚の竹材平板が下層から上層に向けて積層されるように接着されて構成される積層厚板部と、食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部と、前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が形成されたR部とを具備し、前記立面と前記底面における中間部分の色が、前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つ幼児用食器。である点。(イ)

相違点

(相違点27)
本件発明2は、複数枚の竹材平板が、第1、第2、第3の竹材平板からなり、前記

第1、第2、第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順で積層

され、

前記第2の竹材平板の素材色が、少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ

のに対し、甲4-2発明は、複数枚の竹材平板が下層から上層に向けて積層されて厚板部分を構成しており、前記厚板部分の中間部分の色が前記厚板部分の下部部分及び上部部分の色とは異なる色合いを持つものであるが、複数枚の竹材平板が第1、第2、第3の竹材平板からなるか不明であり、さらに、前記第2の竹材平板の素材色が、少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つかについて、ともに不明である点。
(相違点28)
本件発明2は、立面と底面とのなす角が半径略5~15mmとなるよう形成されたR部を具備し、

第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し、前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ

のに対し、甲4-2発明は、立面と底面とのなす角を備え、前記立面と前記底面において、中間部分の色が、前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色
合いを持つものであるが、R部が半径略5~15mmとなるよう形成されているか、さらに、第2の竹材平板が、前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し、前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つかについて、ともに不明である点。
(ウ)

まとめ
本件発明2と甲4-2発明とは、
相違点27及び28において相違し、

本件発明2は、甲4-2発明であるとはいえないから、特許法29条1項3号に該当しない。
第3
1
当事者の主張
取消事由1(甲4を主引用例とする本件発明1の新規性の判断の誤り)(1)

原告の主張
甲4の記載事項
甲4の4枚目(以下、単に甲4という。
)の右側には、別紙2のとお
り、

近年では、CO2を吸収して地球温暖化を抑止する天然資源としても期待される竹ですが、これをこども用食器に採用し、国内外で注目を集めるブランドがファンファンです。、

竹の集成材が見た目にも美しく癒されるアイテムが揃います。

との記載があるから、甲4記載のこども用食器は、竹の集成材から形成されている。
甲4の左側には、別紙2のとおり、上段にこども用食器の全体写真(以下甲4全体写真という。)が、下段に上記こども用食器の部分拡大写真(以下甲4部分拡大写真という。
)が掲載されている。


甲76の記載事項
(ア)

甲76は、原告従業員作成の甲4の開示事項を説明した説明書であ
る。
甲76の3枚目の右側の
三層の場合
との記載の下の上段の画像は、

甲4部分拡大写真を拡大した画像であり、下段の2つの画像は、原告の工場で製品製造工程を撮影した写真の画像の一部(甲76の2枚目)を拡大したものである。
(イ)

甲76の4枚目の左側のベビーギフト100の紙面との記載の

下の2つの画像は、甲4全体写真及び甲4部分拡大写真をそれぞれ拡大した画像であり、甲76の4枚目の右側の実物との記載の下の2つの画像は、2021年(令和3年)1月29日、原告がメルカリで購入した食器(以下実物食器という場合がある。
)を甲4全体写真及び甲
4部分拡大写真を拡大した上記各画像と同様のアングルで撮影した画像である(上側の画像を実物全体画像
、下側の画像を実物部分拡大画像という場合がある。。甲76の4枚目の右側の実寸(cm)φ)23×H2.1との記載は実物食器の実寸を記載したものである。(ウ)

甲76の5枚目の左側の画像は、甲4全体写真の画像について、真
ん中の画像は、甲4全体写真の画像の一部を拡大した画像について、右側の上段の画像は、甲4全体写真の画像の一部を拡大した画像について、右側の下段の画像は、甲4部分拡大写真の一部を縮小した画像についてそれぞれ説明するものである。

相違点の認定の誤り
(ア)

甲76の3枚目の右側の三層の場合との記載の下の上段の画像

のとおり、甲4部分拡大写真から、甲4記載のこども用食器は、
三層二層及び一層からなる3層の竹材平板からなり、

この3層の竹材平板の二層目の竹材平板の色合いを一層目及び三層目の竹材平板の色合いに比して濃くしているものを看取できる。そして、竹の集成材が、複数枚の竹材の平板を積層し、接着剤で接着したものであることは、技術常識であることからすると、甲4には、
平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板の素材色が2種である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されるように接着されるこども用食器が開示されている。また、甲4部分拡大写真の竹材平板をみると、この竹材平板を構成する竹材
(ピース材)
それぞれの色合いは異なっている
(ピース材毎にブラ
ウンに濃淡がある)とともに、窪んだ部分に備えられた立ち上がり面に不規則に並ぶ竹材繊維
(導管)
を看取できる。
仮に二層目の竹材平板の濃
い色合いを一層目及び三層目の竹材平板の色合いに比して濃くするために
塗装
の方法を用いた場合には、
二層目の竹材平板の濃い色合いは、
竹材(ピース材)毎に濃淡が出ることはなく、均一となるはずである。しかも、
甲76の3枚目の記載のとおり、

不規則に並ぶ竹の繊維(導管)、節、積層部分などを塗装で表現するのは不可能

である。そうすると、甲4には、

二層目の竹材平板の濃い色合いは、着色加工したものではなく、竹材の素材色である

ことが示されている。また、同様に、

一層目及び三層目の竹材平板の色合いは、竹材の素材色である

ことが示されている。
次に、甲76の5枚目の右側の2つの画像及び

傾斜の開始位置は三層から始まり、傾斜の範囲は二層目が大半を占める事が写真から確認できる。

との記載によれば、甲4記載のこども用食器は、入隅部が曲面状のR部で形成され、
この入隅部の曲面状の立ち上がりは、
3層からなり、
その中間部分を構成する二層目の竹材平板の色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する一層目及び三層目の竹材平板の色とは異なる色を持つことを看取できる。
以上によれば、甲4には、甲4記載のこども用食器が、
複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層され

立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材、色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる

構成(相違点9に係る本件発明1の構成)を備えることが開示されている。
したがって、本件審決が上記構成は本件発明1と甲4記載のこども用食器(甲4-1発明)
との相違点であると認定したのは誤りである。
(イ)

甲76の5枚目の左側の画像は、甲4全体写真に示されたこども用食器の形状、寸法等について説明するものであり、左側の画像記載のAはこども用食器の外径Bは

こども用食器の竹の集成、材からなる所定の厚みのある部分の内側の径

Cは

こども用食器、の二層目の竹材平板の内側の径

Dは

こども用食器の竹の集成材、からなる所定の厚みのある部分の幅

Eは

こども用食器を真上か、ら見たときの二層目の竹材平板の幅

を示したものであり、A´ない
しE´は、それぞれAないしEの実寸を示したもので
ある。
A:B:Cの比率は、100:94.8:88.3であること(甲76の5枚目の左側)A´

(こども用食器の外径の実寸)が、23cm
(230mm)であること(甲4)に基づいてB´及びC´を
算出すると、

(こども用食器の竹の集成材からなる所定の厚みの
ある部分の内側の径の実寸)は218mm、

(こども用食器の二
層目の竹材平板の内側の径の実寸)は203mmとなる。また、甲76の5枚目のとおり、

(こども用食器の竹の集成材からなる所定の
厚みのある部分の幅の実寸)は6mm、

(こども用食器を真上か
ら見たときの二層目の竹材平板の幅の実寸)は7.5mmとなる。そして、甲76の5枚目中欄のRごとの見え方の違いとの表に、
R5
の場合、
2層目の濃色部分がE´の1/4以下になるR10の場


合、
2層目の濃色部分がE´に近いR15の場合、

2層目の濃色部分がE´から大幅にずれ
るとの記載があることからすると、E´」

が7.5mmである場合、その見え方は、「R10

の場合の見え方に該当するから、甲4記載のこども用食器の立面と底面とのなす角は、半径略10mm弱となるよう形成されたR部になる。また、前記(ア)のとおり、甲4記載のこども用食器は、入隅部の曲面状の立ち上がりは、3層からなり、その中間部分を構成する二層目の竹材平板の色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する一層目及び三層目の竹材平板の色とは異なる色を持つ構成を備えている。
以上によれば、甲4には、甲4記載のこども用食器は、
立面と底面とのなす角が半径略10mm弱となるよう形成されたR部を具備し、
前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ(相違点10に係る本件発明1の構成)構成
を備えることが開示されている。
したがって、本件審決が上記構成は本件発明1と甲4記載のこども用食器(甲4-1発明)
との相違点であると認定したのは誤りである。

小括
以上のとおり、本件審決における相違点9及び10の認定に誤りがあるから、本件発明1は甲4記載のこども用食器
(甲4に記載された発明)
と同一の発明であるといえないとした本件審決の判断は誤りである。
(2)

被告の主張
原告の主張は争う。
すなわち、原告主張の本件審決の取消事由に係る無効理由は、刊行物であ
る甲4を主引用例とするものであるから、甲4に記載された発明と本件発明1とが同一であるかどうかが審理の対象となる。
しかるところ、原告が甲4の開示事項を説明した説明書として提出する甲76は、本件審判では審理判断されず、本件訴訟において、新たに提出されたものであるのみならず、甲4に開示されていない事項や、甲4全体写真及び甲4部分拡大写真の被写体との同一性の立証のない実物と称する物の画像(甲76の4枚目の右側の画像)等を根拠として、甲4の記載内容を説明したものである。かかる甲76に基づく原告の主張は、主張自体失当である。
2
取消事由2(甲4を主引用例とする本件発明2の新規性の判断の誤り)(1)

原告の主張
前記1⑴ウ(ア)と同様の理由により、甲4には、甲4記載のこども用食器が、

複数枚の竹材平板が、第1、第2、第3の竹材平板からなり

、この

第1、第2、第3の竹材平板

が下層から上層に向けてこの順で積層され、

前記第2の竹材平板の素材色が、少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ

構成(相違点27に係る本件発明2の構成)を備えることが開示されている。
また、前記1⑴ウ(イ)と同様の理由により、甲4には、甲4記載のこども用食器

立面と底面とのなす角が半径略10mm弱となるよう形成されが、たR部

を具備し、

第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し、前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ

構成
(相違点28に係る本件発明2の構成)
を備えることが開示されてい
る。
そうすると、本件審決が上記各構成は本件発明2と甲4記載のこども用食器(甲4-2発明)との相違点であると認定したのは誤りであるから、本
件発明2は甲4記載のこども用食器
(甲4に記載された発明)と同一の発
明であるといえないとした本件審決の判断は誤りである。
(2)

被告の主張
原告の主張は争う。

3
取消事由3(本件発明3ないし5の新規性及び進歩性の判断の誤り)(1)

原告の主張
本件審決は、
①本件発明3は、
甲4に記載された発明であるとはいえない、

②本件発明3ないし5は、甲4等に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない旨判断した。
しかしながら、前記1(1)及び2(1)のとおり、本件審決における甲4を主引用例とする本件発明1及び2の新規性の判断に誤りがあるから、当該判断に基づく本件発明3ないし5の上記①及び②の判断も誤りである。(2)

被告の主張
原告の主張は争う。

第4
1
当裁判所の判断
明細書の記載事項について
本件出願の願書に添付した明細書(以下、図面を含めて本件明細書という。甲78)には、次のような記載がある(下記記載中に引用する図1ないし3、8及び9については別紙1を参照)

(1)

【技術分野】

【0001】
本発明は、木材を用いた幼児用食器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、年齢の早いうちから自立心を育成する一環として、幼児教育中において、様々な生活習慣、作法を比較的幼年のうちから実践を通して学ばせる
カリキュラムが行われている。この中には食事作法について学ばせるカリキュラムもある。
【0003】
食事をとるとは、原理的に、特定の容器に盛られている摂取対象物たる食物(の一部)を特定の取出し用具を用いて自分の口まで運ぶ、という動作になる。取出し用具としては、箸、スプーン、ナイフ、フォークなどといったものが代表的である。幼児教育の場合、まず、スプーンといった、指全体で握ることのできるものから入るのが理想的である。箸では指の動きを必要とするために使用法が高度となり、ナイフやフォークでは使用中に怪我をするリスクがあるためである。
【0004】
この際、スプーンを握るまでは良いが、そのあとのスプーンを使って目標の食物の一部をスプーンに載せることまで考慮がなされていないのが現状である。すなわち、とりにくかったり、容器の端にあるものすべてを余すことなくスプーンに載せるのは物理的に至難の業であったりする。このことは、幼児に限らず、老年者、非健常者においても、同様の仕儀となっている。【0005】
この点で、たとえば特許文献1では、スプーンを使って飲食物を食べるときに使用する食器において、食器の一部に湾曲部を設けた構成を開示している。
【0006】
しかし、単に食器の一部に湾曲部を設けただけでは、対象食物が滑りやすい素材であったときなどは特に、横滑りするだけで、却ってとらえにくくなってしまう。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】

食材を余さずに掬い上げられるという点においては、形状だけでなく、素材も関係する。
たとえば、
陶器性のものは、
特殊な表面処理を施さない限り、
滑りやすいことは否めない。
【0009】
本願は、上記のような課題を克服するべく、幼年層、老年層、非健常者等にとって、食材を余すことなく掬い上げられることを可能とする食器を提供することをその目的とする。
(2)

【課題を解決するための手段】

【0010】
まず、上記課題を克服するための素材について考察する。近年、特許文献2或いは3の如く、円筒形の竹を平板上に加工する技術が確立され、竹材の高い硬度、剛性や耐水性に優れている特性を生かし、家具材や建設資材等に広く使用されている。
【0011】
また、竹材に含まれるアミノ酸のうちのチロシンが食物腐敗を抑制する効果があることを利用して、特許文献3の如くかまぼこ板に使われている例もある。
【0012】
上記のように竹材は、硬度や剛性、耐水性に優れており、食物の腐敗抑制効果もある上、機械的加工も容易である。これらの特性を生かして、昔から食物を盛る食器に応用されてきたが、多くは竹の円筒形状を利用したコップにしたり、或いは竹を半分に割って皿にしたりと、限られた形でしかなく、一般の陶磁器等の食器と同様な形状での応用はなかった。
【0013】
そこで、本発明においては、好適には素材として竹を用いる。竹は、特に東南アジアには無尽蔵に存在するのが現状であり、且つ、6年に一回は伐採
しないと良い竹林は育たないということから、むしろ量的には無限にあると言ってよい。また、竹を素材として用いるということは木材の消費を減少することに繋がるから、環境保全が達成される。但し、本願の技術思想としての核心はあくまで幼年層、老年層、非健常者等にとって、食材を余すことなく掬い上げられることを可能とすることにあるので、竹製であることは必須ではない。他の木材によってもよい。なお、本願においては、竹は木材の一種として扱う。
【0014】
上記のような各課題を解決するために、本発明者は、種々実験、試作を重ねた末に、食物盛込み用の窪みの角に食物が停留しないで、きれいにかき取れるための底面角として、半径が略5~15mm程度の曲面が好適であることを見出した。この半径は更に好適には8~12mm程度とし、半径10mm程度が最も好ましい。したがって、本発明に係る幼児用食器は、平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されるように接着される積層厚板部と、食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部と、前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5~15mmとなるよう形成されたR部とを具備し、前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分とは異なる色を持つ。或いは本発明に係る幼児用食器は、平板上に加工された複数枚の竹材平板である第1、第2、第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順に積層されるように接着されて構成される積層厚板部と、食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部と、前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5~15mmとなるよう形成されるR部とを具備し、前記第2の竹材平板が前記R部を形成する
入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し、前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ。
【0015】
窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5~15mmとなるよう形成されているため、使用者は、特に幼児や老年層、非健常者であっても、この角を持った曲面により、食物がスプーン上に確実に乗り、食器の外にこぼれることを防止することができる。したがって、特に幼児用、老年層(特に要介護者)用の食器、非健常者用の食器等に好適に用いることができる。さらに、上記構成を備える本発明に係る食器は、これを洗浄する場合においても、食物カスが停留することなくきれいに洗浄することができる。
【0016】
また、上記において、前記複数の木材平板の素材色が少なくとも2種以上であるように構成してもよい。つまり、上記食器を構成する木材平板の積層体で各層ごとに色が異なるように、たとえば2色が互い違いに積層されるように、構成することができる。窪み断面のたとえば1、2、3層の色が変わっていることにより、窪みの深さが視覚的にはっきりと認識・判別することができ、スプーンでの食物かき上げ動作を確実化することを助ける効果を奏する。さらに、食物窪みがはっきりすることにより寄木細工のような模様を形成し、食器のデザイン性が向上する。
【0017】
さらに上記において、前記複数の木材平板の木目方向を略同一方向とする構成をとってもよい。食器の外側角には、竹による場合、竹繊維が模様として点状に出現するが、これらの方向性が多層(たとえば3層)とも揃っていることから、食器のデザイン性が向上する。

【発明の効果】
【0018】
以上、説明したように、本発明に係る食器においては、窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5~15mmとなるよう形成されているため、使用者は、特に幼児や老年層、非健常者であっても、この角を持った曲面により、食物がスプーン上に確実に乗り、食器の外にこぼれることを防止することができる。
また、
竹を材とした場合、
これに加えて、
竹材の高い硬度、剛性や耐水性に優れている特性と竹材に含まれるアミノ酸のうちのチロシンが食物腐敗を抑制する効果を生かした堅牢で衛生的な食器を提供することができる。
(3)

【0026】
図1は本願の一実施形態に係る竹製食器の概略を示した平面図、図2は同
断面図、図3は図2のA部分を拡大して示した部分的断面図、図4はその底面とその部分的断面を示した概念的底面図である。なお、本実施形態においては、材として竹を用いた場合を説明するが、本願の思想は竹材に限ることなく適用することができる。
【0027】
本実施形態に係る竹製食器100は、図2に示すように平板状竹材を3枚接着した積層板が後述するように掘り込まれて形成され、
図1に示すように、
ほぼ中心部に内周収容部である第1の収容部1が形成され、第1の収容部1の周囲に隔壁である立ち上がり10によって区分けされる外周収容部20(図示しない)が形成されている。外周収容部20は詳細には、第1の収容部1と立ち上がり11によって区分けされる第2の収容部21、第1の収容部1と立ち上がり12によって区分けされる第3の収容部22、第1の収容部1と立ち上がり13によって区分けされる第4の収容部23によって構成されている。また、外周収容部20を構成する第2の収容部~第4の収容部
は互いに立ち上がり50、60、70によって区切られている。
【0028】
図2及び図3を参照する。竹製食器100は、断面においては、3層の竹平面材a、b、cが積層されて一体に整形されて構成されており、立ち上がり部33は、下から40a、33a、33b、33cが積層された構成となっている。ただし、本実施形態においては、40aと33aとは位置的な区切りにすぎず、
40a及び33aは素材的には一体のものとして構成される。
また、3層の竹平面材a、b、cのうち、b層の色合いをa層、c層に比して濃いめのものとする。これによって、美観上のアクセントが生まれる。さらに、窪みの深さが視覚的にはっきりと認識・判別することができ、スプーンでの食物かき上げ動作を確実化することを助ける効果を奏する。さらに、食物窪みがはっきりすることにより寄木細工のような模様を形成し、食器のデザイン性が向上する。
【0030】
ここで再び図1~図3を参照する。竹製食器100には、各収容部の立ち上がりと底面との取り合い部、一つの立ち上がり部とこれに隣接する立ち上がり部との間の取り合い部、に各々略10mm程度の半径によるRを設けてある。具体的に、たとえば第4の収容部23において、底面部40と立ち上がり部33との取り合い部に、図3に示されるような半径略10mmの曲線断面が図3の紙面と直交する方向に延伸されて形成されている。また、平面においても、たとえば、立ち上がり70と立ち上がり13との間の取り合い部には、図1に示されるような半径略10mmの曲線断面が図1の紙面と直交する方向に延伸されて形成されている。畢竟、平面と立面の交差する箇所には1/10程度の曲率を持つ曲面が内側に形成されている。したがって、底面と二つの立面が交錯する箇所、
たとえば第4の収容部23の底面部40、
立ち上がり70、立ち上がり13の3者が交錯する箇所においては、入隅で
あっても、曲率1/10程度の曲面が形成されることになる。
【0031】
上記においては曲面を形成する場合のRとして、半径10mmの場合を例にとって説明したが、数値としてこれに限定されるわけではない。本発明者の実験によれば、立面と底面とのなす角は半径略5~15mmとなるよう形成されたR部であることが、本願の目的を達成するために好適である。この半径は更に好適には8~12mm程度とし、半径10mm程度が最も好ましい。
(4)

【0035】
本実施形態に係る竹製食器の作用・動作について説明する。図8は、本実
施形態に係る竹製食器の使用の状況を説明するための概念図であり、図9はその断面図である。図8及び9において、
(a)はスプーンを取り合い部に差
し込むところを、
(b)
は取り合い部に差し込まれたスプーンが食物を載せる
ところを、
(c)はスプーンに食物が載せられた状態で掬い上げるところを、それぞれ示している。
【0036】
使用者(たとえば幼児)はまず、スプーンSPで取得目標の食物Fを立ち上がり部際まで追い込んでおいた状態にし、
ここにスプーンを差し入れる
(図
8
(a)。
)差し入れられたスプーンSPによって食物Fは立ち上がり
(10、
30、50等)の方向に平面上の押圧を受けるが、立ち上がりからの反力を受ける。この際に、立ち上がり下部には本願独自の曲面(半径略8~12mmの曲線が断面形成される面)が形成されている。曲面が内側に形成されているために、形成されていない場合(たとえば立ち上がりが底面から鉛直方向に起立して形成されている場合)に比べて、横から押された食物の逃げ場を消滅せしめているため、食物Fは押された立ち上がりの方向か立ち上がりからの反力方向であるスプーンSPの方向かのいずれかに移動することにな
る(図9(a)。ここで、Rが半径10mm程度として形成されているため)
に、スプーン(一般的なスプーン或いは幼児用等の肉厚が厚く窪みが深くなく収容面が若干狭いスプーン等を含む)の掬い面の外面の曲線と好適に適合するために、スプーンSP下部と底面部との間に隙間を生ずることなくスプーンSPにて無理なく底ざらえをすることができる。またRが半径10mm程度であることから曲面の上部の鉛直の立ち上がりが壁となるため、使用者はほんの僅かの力を用いるだけで、食物は立ち上がりからの反力を受けてスプーンSPの方向に押圧されることになる。つまり、幼児や年配者が発する少しの力を効率的にスプーンへの食物移載力に転換することができる。そのために、立ち上がりからの反力を受けた食物FはスプーンSPと立ち上がり(10、30、50等)との間にとどまることなく、スプーンSPの窪みにスムーズに移行することになる(図8(b)
、図9(b)。

【0037】
こうして移載された食物Fをスプーン上に載せた状態で、立ち上がり(10、30、50等)に沿ってスプーンSPを移動させれば、ほぼ自然に食物を口にまでスムーズに運ぶことができることとなる。
【0038】
以上詳細に説明したように、本願によれば、市販されている一般の各種スプーンを用いると本発明の食器に盛った食物をこぼさずに綺麗に掬うことができ、幼児や高齢者用の食器として大変有用なものとなる。また、上記の底面角の曲面により、食器を洗浄する場合に底面角に食物の残渣が残ることなく綺麗に洗浄することが可能となる。
2
取消事由1(甲4を主引用例とする本件発明1の新規性の判断の誤り)について


甲4の記載事項

甲4は、本件出願前に頒布された刊行物であるベビーギフト100
と題する書籍(初版発行2012年10月23日)のNo51の商品の紹介ページ(見開き1頁)である。
別紙2のとおり、甲4の左側には、上段にNo51の商品の全体を真

上から撮影した写真(甲4全体写真)が、下段に上記商品の一部を側面から撮影した写真(甲4部分拡大写真)が掲載され、甲4の右側には、次のとおりの文章(以下甲4文章部分という。
)が記載されている。
No51ファンファンのバランサーセットBRANDFUNFAMDESIGNERBRANDARCHITECTURESIZE(cm)φ23×H2.1(plate).12(spoon&fork)PRICE¥3、9902、3年で成長し、勢いのある時はたった1日で1m以上も伸びることがあるという竹。近年では、CO2を吸収して地球温暖化を抑止する天然資源としても期待される竹ですが、これをこども用食器に採用し、国内外で注目を集めるブランドがファンファンです。枯渇する化石燃料によるプラスティックで作られた食器で、お料理を作ってくれた人や食べ物に感謝の気持ちが湧くだろうか?プロデューサーのAさんが抱くその思い、そして次世代を担うこどもが環境問題に関心を持つきっかけになればという願いも手伝い2008年に誕生しました。温暖湿潤な地域でしか生育しない竹ゆえに、欧米の人が珍しがり話題となってまず海外で火がつき、やがて日本でもブレイク。和食の基本、一汁三菜を前提にした卓膳セット、洋食のフルコースの内容や順番を学べるテーブルマナーセット、おせち料理にも最適なそば重など、竹の集成材が見た目にも美しく癒されるアイテムが揃います。ベビーギフトにおすすめなのがこちら。栄養のバランス、その配分をイメージしやすいようアイコンが記されたプレートとスプーン&フォークのセットです。ウレタン塗装が4層にコーディネートされているので、熱いお料理ももちろん大丈夫。おとなのためのランチプレートシリーズには、離乳食に対応したベビーミールセットも用意されています。名前を刻印するオーダーメイドにも対応。竹のように丈夫ですくすく育って欲しいという職人さんの想いが込められている素敵な食器です。⑵

相違点10の認定の誤りについて

前記(1)認定の甲4の記載事項によれば、甲4には、本件審決認定の甲4-1発明(竹の集成材からなる所定の厚みのある部分と、前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分とが形成され、前記窪んだ部分において、底面と立ち上がり面が形成され、前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし、前記角は丸みがつけられており、前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が、前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つこども用食器。)が記載されていることが認められる。そして、本件発明1と甲4-1発明を対比すると、本件審決認定のとおり、両発明は、平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板が積層されるように接着される積層厚板部と、食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部と、前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が形成されたR部とを具備し、前記立面と前記底面における中間部分の色が、前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ幼児用食器。である点で一致することが認められる。

次に、本件発明1の特許請求の範囲の請求項1には、本件発明1のR部は、前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5~15mmとなるよう形成された構成を有することが規定されている。本件明細書には、R部に関し、本件発明1の実施形態として、
竹製食器100には、各収容部の立ち上がりと底面との取り合い部、一つの立ち上がり部とこれに隣接する立ち上がり部との間の取り合い部、に各々略10mm程度の半径によるRを設けてある。具体的に、たとえば第4の収容部23において、底面部40と立ち上がり部33との取り合い部に、図3に示されるような半径略10mmの曲線断面が図3の紙面と直交する方向に延伸されて形成されている。また、平面においても、たとえば、立ち上がり70と立ち上がり13との間の取り合い部には、図1に示されるような半径略10mmの曲線断面が図1の紙面と直交する方向に延伸されて形成されている。(【0030】)との記載があり、別紙1のと
おり、図1及び3には、
R部が図示されている。
そこで、
R部に関する甲4の記載について検討するに、甲4文章部分
中のφ23×H2.1(plate)との記載から、甲4記載のこども用食器は、直径(φ)23cm、高さ(H)2.1cmであることを理解できるが、他方で、甲4の記載事項全体をみても、上記直径及び高さ以外の寸法についての記載はない。
また、甲4全体写真及び甲4部分拡大写真(別紙2参照)のアングル、解像度等に照らすと、甲4全体写真及び甲4部分拡大写真から、被写体であるこども用食器のR部を形成する立面と底面とのなす角の
角度や半径の寸法についてまで認識することは困難である。
以上を総合すると、甲4に接した当業者において、甲4から、甲4記載のこども用食器のR部は、前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5~15mmとなるよう形成された構成を有することが開示されているものと認識することはできないというべきである。

そうすると、甲4記載のこども用食器は、少なくとも、相違点10に係る本件発明1の構成中の立面と底面とのなす角が半径略5~15mmとなるよう形成されたR部を具備しとの構成を備えていない点で本件発明1と相違するから、本件発明1は、甲4記載のこども用食器(甲4に記載された発明)と同一の発明であるものと認めることはできない。


原告の主張について
原告は、①甲4全体写真について説明した甲76の5枚目の左側の画像記載のとおり、A(こども用食器の外径)
:B(こども用食器の竹の集成材から
なる所定の厚みのある部分の内側の径)(こども用食器の二層目の竹材平:C
板の内側の径)の比率は、100:94.8:88.3である、②この比率と甲4記載の実寸から、A´(Aの実寸)は230mm、B´(Bの実寸)は218mm、C´(Cの実寸)は203mm、D´(こども用食器の竹の集成材からなる所定の厚みのある部分の幅の実寸)は6mm、E´(こども用食器を真上から見たときの二層目の竹材平板の幅の実寸)は7.5mmと算出される、③甲76の5枚目中欄のRごとの見え方の違いの表によれば、E´が7.5mmである場合、その見え方は、R10の場合の見え方に該当するから、甲4記載のこども用食器の立面と底面とのなす角は、半径略10mm弱となるよう形成されたR部になるとして、甲4には、甲4記載のこども用食器は、
立面と底面とのなす角が半径略10mm弱となるよう形成されたR部の構成を有することの開示がある旨主張する。しかしながら、甲76は、原告従業員が作成した書面(作成日2021年10月25日)であり、そもそも本件出願前に頒布された刊行物に当たらないこと、甲4には、こども用食器の直径(φ)及び高さ(H)以外の寸法についての記載はなく(前記(2)イ)
、甲76記載のAないしCの比率やA
´ないしE´の寸法の記載もないこと、
甲4には、
甲76の5枚目中欄の
Rごとの見え方の違いの表の記載はないことに照らすと、甲4に接した当業者において、甲4から、上記①ないし③の事項を認識し、又は理解することはできないから、原告の上記主張は、その前提において採用することができない。


小括
以上のとおり、本件発明1は、甲4記載のこども用食器
(甲4に記載さ
れた発明)と同一の発明であるものと認めることはできないから、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
したがって、その余の点について判断するまでもなく、原告主張の取消事由1は理由がない。

3
取消事由2(甲4を主引用例とする本件発明2の新規性の判断の誤り)について
(1)

相違点28の認定の誤りについて
原告は、
甲4及び76に基づいて、
甲4には、
甲4記載の
こども用食器

が、
立面と底面とのなす角が半径略10mm弱となるよう形成されたR部を具備し、

第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し、前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ

構成(相違点28に係る本件発明2の構成)を備えることが開示されているから、本件審決における相違点28の認定に誤りがある旨主張する。しかしながら、前記2(2)及び(3)で説示したのと同様の理由により、甲4記載のこども用食器は、少なくとも、相違点28に係る本件発明2の構成中の立面と底面とのなす角が半径略5~15mmとなるよう形成されたR部を具備しとの構成を備えていない点で本件発明2と相違するから、
原告の上記主張は、採用することができない。
(2)

小括

以上によれば、本件発明2は、甲4記載のこども用食器
(甲4に記載さ
れた発明)と同一の発明であるものと認めることはできないから、その余の点について判断するまでもなく、原告主張の取消事由2は理由がない。4
取消事由3(本件発明3ないし5の新規性及び進歩性の判断の誤り)について
原告は、本件審決が、①本件発明3は、甲4に記載された発明であるとはいえない、②本件発明3ないし5は、甲4等に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない旨判断したが、本件審決における甲4を主引用例とする本件発明1及び2の新規性の判断に誤りがあるから、当該判断に基づく本件発明3ないし5の上記①及び②の判断も誤りである旨主張する。
しかしながら、前記2及び3で説示したとおり、本件発明1及び2は、いずれも甲4に記載された発明と同一の発明であると認めることはできないから、原告の上記主張は、その前提において採用することができない。
したがって、原告主張の取消事由3は理由がない。

第5

結論
以上のとおり、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、本件審決を取り消すべき違法は認められない。
したがって、原告の請求は棄却されるべきものであるから、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第1部

裁判長裁判官

大鷹一郎
裁判官

小川卓逸
裁判官小林康彦は、転補のため署名押印することができない。

裁判長裁判官

大鷹一郎
(別紙1)

明細書

【図1】

【図3】

【図2】

【図8】

【図9】

(別紙2)

甲4

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