判例検索β > 平成30年(ワ)第4329号等
損害賠償等請求事件 特許権 民事訴訟
事件番号平成30(ワ)4329等
事件名損害賠償等請求事件
裁判年月日令和4年3月18日
法廷名東京地方裁判所
全文全文添付文書1添付文書2
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2022-03-18
情報公開日2022-04-09 04:00:18
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令和4年3月18日判決言渡
平成30年(ワ)第4329号

同日原本領収

裁判所書記官

損害賠償等請求事件(第1事件)、同第23514

号損害賠償等請求事件(第2事件)
口頭弁論終結日

令和3年11月22日
判決
第1事件・第2事件原告
同訴訟代理人弁護士

髙橋順同兼松由同向
同訴訟復代理人弁護士


同補佐人弁理士

林第
株式会社アーツブレインズ

株式会社フィートジャパン

1事件被告一理宣富子明彰太郎直生樹
(以下被告フィートジャパンという。)
第2事件被告
株式会社センティリオン
(以下被告センティリオンという。)

上記2名訴訟代理人弁護士
同弓同木村剛大同河部康弘同藤沼光太同神田秀斗同平田慎二
同補佐人弁理士

伊藤同小金木主1林削幸田夫博温章郎文
被告フィートジャパンは、原告に対し、1億6000万円並びにう
ち17万7231円に対する平成30年6月14日から支払済みまで年5分の割合による金員及びうち1億5982万2769円に対する令和元年12月31日から支払済みまで同割合による金員を支払え。2
被告センティリオンは、原告に対し、7715万0014円及びこ
れに対する令和元年12月31日から支払済みまで年5分の割合によ
る金員を支払え。
3
原告のその余の請求をいずれも棄却する。

4
訴訟費用は、原告に生じた費用の13分の1及び被告センティリオ
ンに生じた費用の5分の1を原告の負担とし、原告に生じた費用の13分の8及び被告フィートジャパンに生じた費用を被告フィートジャ
パンの負担とし、原告及び被告センティリオンに生じたその余の費用を被告センティリオンの負担とする。
5
本判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。事実及び理由

(目次)省略
第1請求
1第1事件
被告フィートジャパンは、原告に対し、1億6000万円及びこれに対する平成30年6月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2第2事件
被告センティリオンは、原告に対し、1億円及びこれに対する平成30年7月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1事案の要旨

本件は、発明の名称を二重瞼形成用テープ又は糸及びその製造方法とする特許第3277180号の特許(以下本件特許という。)に係る特許権
(以下本件特許権という。)の特許権者である原告が、別紙被告製品目録1記載A1ないし10の各製品(以下被告製品A1、被告製品A2などという。)及び同目録2記載B1ないし6の各製品(以下被告製品B1、被告製品B2などといい、被告製品A1ないし10及びB1ないし6を合わせて被告各製品という。)が本件特許の特許請求の範囲の請求項1記載の発明(以下本件発明という。)の技術的範囲に属し、被告フィートジャパンによる被告製品A1ないし10の生産等及び被告センティリオンによる被告製品B1ないし6の生産等がいずれも本件発明の実施に当たると主張して、不法行為に基づき、被告フィートジャパンに対し、5億0459万7632円
(特許法(以下法という。)102条2項による損害金4億5872万5120円及び弁護士等費用相当額4587万2512円)のうち1億6000万円及びこれに対する平成30年6月8日付け訴えの追加的変更の申立書送達日の翌日である同月14日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払
を、被告センティリオンに対し、2億3755万9938円(法102条2項による損害金2億1596万3580円及び弁護士等費用相当額2159万6358円)のうち1億円及びこれに対する訴状送達日の翌日である同年7月27日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2
前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠(以下、書証番号は特
記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)

当事者

原告は、化粧品の研究開発、製造、輸出入、販売等を業とする株式会社
である。

被告らは、化粧品の研究開発、企画、製造、輸出入、販売等を業とする
株式会社である。

(2)

本件特許

Z(以下Zという。)は、平成13年5月29日、本件特許に係る
特許出願(特願2001-160951号。以下本件出願という。)をし、平成14年2月8日、本件特許権の設定の登録(請求項の数11)を受けた(以下、本件出願の願書に添付した明細書及び図面を併せて本件明細書という。また、明細書の発明の詳細な説明中の段落番号を【0001】などと、図を【図1】などと、それぞれ記載する。)。
Zは、本件出願に先立つ平成12年10月3日、発明の名称を二重瞼形成用テープとする特許出願(特願2000-303797号(以下優先権基礎出願という。))をしていたところ、本件出願について、
優先権基礎出願の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを合わせて優先権基礎出願明細書等という。)に記載された発明に基づく優先権を主張した(甲10、乙7)。

Z及び原告は、平成14年8月15日、Zが原告に対して本件特許権の
専用実施権を設定する旨の専用実施権設定契約を締結し、同日、その旨を
登録した。

Zは、平成29年1月5日、原告に対し、本件特許権を譲渡し、同月1
1日、その旨を登録した。
(3)
本件発明に係る特許請求の範囲
本件特許の特許請求の範囲の請求項1(本件発明)の記載は、以下のとおりである。
【請求項1】
延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、

粘着剤を塗着することにより構成した、
ことを特徴とする二重瞼形成用テープ。

(4)

本件発明の構成要件の分説
本件発明は、以下の構成要件に分説することができる(以下、各構成要件につき、頭書の記号に従って構成要件Aなどという。)。
A
延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成
した細いテープ状部材に、

B
粘着剤を塗着することにより構成した、

C
ことを特徴とする二重瞼形成用テープ

(5)

被告らによる被告各製品の販売等

被告フィートジャパンは、遅くとも平成28年4月以降、被告製品A1
及び2を製造販売し、遅くとも平成29年8月以降、被告製品A3ないし
10を製造販売した。

被告センティリオンは、遅くとも平成29年8月以降、被告製品B1な
いし6を製造販売した。
(6)

被告各製品の構成及び構成要件充足性

被告製品A1ないし10及びB1ないし5は、延伸可能で合成樹脂によ
りテープ状部材を形成している二重瞼形成用テープである。

被告製品B6は、合成樹脂によりテープ状部材を形成している二重瞼形
成用テープである。

被告各製品は、構成要件Cを充足する。

3争点
(1)

被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか

文言侵害の成否

(ア)

構成要件Aの充足性(争点1-1)

(イ)

構成要件Bの充足性(争点1-2)


(2)

均等侵害の成否(争点1-3)
無効の抗弁の成否


公然実施に基づく新規性欠如(争点2-1)


登録実用新案第3050392号公報(乙8。以下乙8文献とい

う。)を主引用例とする進歩性欠如(争点2-2)

実願平5-12228号(実開平6-61225号)のCD-ROM
(乙9。以下乙9文献という。)を主引用例とする進歩性欠如(争点
2-3)

雑誌カワイイ!11月号(第5巻第13号通巻61号)126頁

(乙10。以下乙10文献という。)を主引用例とする進歩性欠如(争点2-4)

実公昭51-35326号公報(乙31。以下乙31文献という。)
を主引用例とする進歩性欠如(争点2-5)

米国特許第3645835号明細書(乙11の1。以下乙11文献
という。)を主引用例とする進歩性欠如(争点2-6)
(3)
損害額(争点3)

第3争点に関する当事者の主張
1被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか
(1)

争点1-1(構成要件Aの充足性)について
(原告の主張)

(ア)

被告各製品のテープ状部材が弾性的な伸縮性を備えるか
弾性的な伸縮性の解釈
a
本件特許に係る審決取消請求事件における判決(甲9。知的財産高
等裁判所平成27年(行ケ)第10242号同28年9月20日判決。以下別件審決取消訴訟判決という。)では、本件発明の要旨につ
いて、延伸させたテープ状部材の収縮力によりテープ状部材を瞼に食い込ませて二重瞼を形成する発明と認定されたところ、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂という構成は、
本件発明の要旨を実現するためのものである。
そして、本件明細書には、引っ張った状態にあるテープ状部材が弾性的に縮むが、本来、瞼はその両側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的に縮んだテープ状部材がそれを貼り付けた瞼にくい込む状態になって、二重瞼のひだが形成される。(【0008】)、引っ張った状態にあるテープ状部材1が弾性的に縮むが、本来、瞼はその両側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的に縮んだテープ状部材1がそれを貼り付けた瞼7にくい込む状態になって、二重瞼のひだが形成される。
(【0017】)等の記載があることからすると、本件発明において、テープ状部材の弾性的な収縮力が瞼に作用した結果、テープ状部材が瞼に食い込んだ状態、すなわち、テープ状部材の収縮力とテープ状部材を貼り付ける前の元の瞼の状態に戻そうとする当該瞼の弾発力が釣り合った状態になれば足りることは明らかである。
そうすると、弾性的な伸縮性とは、テープ状部材を押し付ける

ことによって生じた食い込みがその収縮力によって維持される場合をも含むと解される。
b
これに対して、被告らは、別件審決取消訴訟判決が認定した本件発
明の要旨が、テープ状部材それ自体の収縮力が瞼に食い込む原因となることを要求しているとして、弾性的な伸縮性とは、弾性的な収
縮力を利用して瞼にテープ状部材を押し当て、二重瞼を形成するための伸縮性に限定して解釈されるべきであると主張する。
しかし、別件審決取消訴訟判決は、本件発明の解決手段である延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性が、二重瞼が作られた後の
状態に対して、

瞼に食い込む状態になって、二重瞼のひだが形成され

るなどの作用効果を示す旨を述べていると容易に理解することが
できる。そうすると、同判決が認定した本件発明の要旨のテープ状部材を瞼に食い込ませてとは、二重瞼が作られた後の状態、すなわち、テープ状部材を瞼に食い込ませた状態を意味し、テープ状部材を押し付けることによって生じた食い込みがその収縮力により維持される場合を含むことは明らかである。

したがって、被告らの上記主張は理由がない。
(イ)

被告各製品のテープ状部材が弾性的な伸縮性を備えること
a
前記(ア)aによれば、延伸後にも弾性的な伸縮性を有する状態と
は、テープ状部材の収縮力とテープ状部材を貼り付ける前の元の瞼の状態に戻そうとする当該瞼の弾発力が釣り合った状態をいうから、延伸後にも弾性的な伸縮性を有することを確認するためには、延
伸後、テープ状部材を貼り付ける前の元の瞼の状態に戻そうとする当該瞼の弾発力と釣り合う、テープ状部材の収縮力を計測すべきである。具体的には、被告各製品を300mm/分の試験速度で80mmに
なるまで引っ張り、到達後直ちに300mm/分の試験速度で初期状態に戻す過程において、試験速度を維持するために必要となる試験力がゼロとなるまでの収縮距離及び80mm伸張時の試験力を測定したところ、以下のとおりとなった(甲17、18、46ないし59。以下原告試験結果という。)。

製品

収縮距離(mm)

被告製品A1
被告製品A2
被告製品A3
被告製品A4
被告製品A5
被告製品A6
被告製品A7

6.4~7.0
9.5~12.8
11.0~12.5
10.5~11.5
10.1~10.9
10.7~11.9
10.7~11.2

80mm伸張時の
試験力(N)
1.08~1.14
2.24~2.42
2.15~2.32
1.19~1.34
2.99~3.29
1.56~1.61
1.31~1.43

被告製品A8
被告製品A9
被告製品A10
被告製品B1
被告製品B2
被告製品B3
被告製品B4
被告製品B5
被告製品B6

9.5~12.2
11.1~11.6
9.3~11.5
10.6~11.0
10.5~10.9
10.8~11.3
9.4~10.8
10.4~11.0
10.3~11.4

1.77~1.84
1.52~1.55
1.63~1.68
1.56~1.62
2.65~2.72
1.78~1.97
1.05~1.15
2.75~3.40
1.20~1.32

上記試験方法によれば、テープ状部材の収縮力に応じて300mm/分という一定の試験速度を保とうとする力に抗う力が生じることから、同試験速度を保つための力(試験力)が必要となる。テープ状部材を80mmになるまで引っ張った時点で収縮力がなくなっていれば、初期状態に戻す過程に移行すると同時に、300mm/分の試験速度を保つための力は必要なくなるため、試験力はゼロとなるはずである。また、テープ状部材の収縮力が強くなるほど、テープ状部材を80mmになるまで引っ張った後、300mm/分という一定の試験速度を保つための試験力がゼロになるまでの距離(収縮距離)は長くなる。
原告試験結果によれば、被告各製品は、原告の株式会社イトウ(以下イトウ社という。)及び株式会社ヒロ・コーポレーションに対
する損害賠償等請求訴訟(東京地方裁判所平成26年(ワ)第25485号。以下関連訴訟という。)において裁判所が本件特許権を侵
害するとの心証を開示したポリエチレンを用いた製品フィートストロングファイバーシングルワイド(甲13。以下訴外製品という。)の収縮距離の最短値(6.2mm)よりも収縮距離が長く、訴外製品の80mm伸張時の試験力の最小値(1.05N)以上の試験力となっている。また、被告製品A1を除く被告各製品は、原告が製造販売する本件特許の実施品である二重瞼形成用テープメザイク

(甲62。以下原告製品という。)の収縮距離の最短値(8.6
mm)よりも収縮距離が長く、被告各製品は、いずれも、原告製品の80mm伸張時の試験力の最小値(1.05N)以上の試験力となっている。
また、被告各製品を使用して二重瞼を形成する方法を説明した動画
(乙34)を見ると、テープ状部材の収縮により生じる縦じわであるヘリンボーンが存在することが確認できる。
さらに、関連訴訟において、裁判所が、訴外製品について、本件特許権を侵害するとの心証を開示したところ、被告製品A1及び2は、訴外製品と商品名、外箱、製品の外観及び材質等が同一であるか、極
めて類似している。被告フィートジャパンは、上記心証開示を受けて、訴外製品と同一の構成を有する被告製品A1及び2も差止めの対象となる可能性があると考え、その製造販売を停止した旨主張していた。このような被告フィートジャパンの態度からすると、被告らは、被告各製品が本件発明の技術的範囲に属することを自認しているといえる。
以上によれば、被告各製品は、いずれも延伸させたテープ状部材の収縮力によりテープ状部材を瞼に食い込ませて二重瞼を形成することができる程度に十分な収縮力を有するといえるから、弾性的な伸縮性(構成要件A)を備えるというべきである。b
これに対して、被告らは、①被告らが、被告各製品を300mm/分の試験速度で初期状態から80mmまで延伸させ、その後、試験片の端部を離して引っ張った状態から解放し、1分経過した後の試験片の長さを測定した結果(以下被告試験結果という。)によれば、
被告各製品の延伸後の収縮率は3.5ないし5.8%にすぎず、人間
の目の横幅を26mmとすると、そのうちわずか1mm前後しか収縮していないこと、②ポリエチレンフィルムを延伸させると、ほとんど
変形していない部分(A相)、中間相(B相)及び延伸しきった部分(C相)が生じるところ、被告試験結果によれば、延伸させた被告各製品には、B相が5mm、C相が75mm存在し、人間の目の横幅は約25mmであるから、二重瞼を形成する部分には延伸しきったC相があること、③被告製品A1及び3ないし10並びにB1ないし4が粘着剤を塗工したものであるとすると、低密度のポリエチレン及び中密度のポリエチレンでは、連続耐熱温度が低く、粘着剤である酢酸エチルを塗工することを前提としたテープ状部材としては採用することができないため、それらのテープ状部材は高密度ポリエチレンである
と考えられるところ、高密度ポリエチレンは伸縮性が低いこと、④被告製品A2及びB5は、2本のテープをねじることにより強固なテープ状部材とし、強く瞼に押し付けることにより二重瞼を形成しやすくしたものであること、⑤被告製品B6は、テープの片面のみに接着剤を塗布し、閉じた瞼が開く際、テープが垂れ下がる瞼を支えることに
より二重瞼を形成するシャッター型であることからすると、被告各製品においては、収縮力が二重瞼の形成に寄与していないと主張する。しかし、上記①について、被告試験結果では、延伸後の収縮に際して、どの程度の収縮力が作用したかが測定されておらず、どのような作業をして被告試験結果を得たのかも明らかでない。試験片の長さを
測定するに当たっては所定の張力が加えられていると考えられるところ、このような張力の作用下では、収縮後のテープ状部材が再度伸長されてしまうため、正確に長さを測定することはできない。また、仮に被告試験結果が正しいとすると、これにより、被告各製品が延伸後3.5ないし5.8%収縮するということとなり、本件発明における
テープ状部材の延伸後の収縮性は、瞼の上に貼り付けられた延伸
後のテープ状部材が瞼に生じさせた食い込みを維持することがで

きる程度のものであれば足りるから、被告各製品はこれができる程度の十分な収縮力を有していたといえる。
上記②について、被告らが指摘するC相は、張力を加えてもそれ以上ネッキング延伸(ネッキングを伴った冷延伸)しないことを意味するにすぎず、物性として塑性変形のみに移行したことを意味せず、弾
性的な伸縮性は失われていないから、未だ収縮力を保持している。上記③について、粘着剤を塗着(構成要件B)とは、直接塗工する方法によることに限られず、使用される粘着剤の種別を限定するものでもない。被告らは、溶剤型粘着剤である酢酸エチルの乾燥温度は120ないし130℃でなければならないとするが、その根拠とす
る特許公報(乙38)の記載は、ある特許における粘着剤の乾燥温度や所要時間の例を説明したものにすぎず、一般化できるものではない。上記④について、被告らの主張によれば、テープ状部材は、延伸させたことにより収縮しない状態に変化したはずであるところ、ねじる操作によってさらに伸縮性が失われることになるとは考えられないか
ら、ねじる行為に特段の意味はないというほかない。
上記⑤について、被告製品B6のテープ状部材は、延伸後も伸縮性を有する長いテープ片の中央の一部分に、非伸縮性の短いテープ片を貼着したものにすぎず、このテープ状部材自体、延伸後も伸縮性を有する。

したがって、被告らの上記主張は理由がない。

被告製品B6のテープ状部材が延伸可能であること

(ア)

前記ア(イ)のとおり、被告製品B6は、延伸可能なテープ状部材である。
このことは、被告製品B6の外装裏面の使用方法に

STEP3黒色の両端を持って、左右にゆっくりと8cmぐらいまで伸ばしてください。

と記載されていること(甲39)から明らかである。
したがって、被告製品B6は、延伸可能(構成要件A)を備える。(イ)

これに対して、被告らは、被告製品B6のテープ状部材は、中央に非
伸縮性の細いテープ状部材が貼り合わされているから、延伸しないと主張する。
しかし、被告製品B6のテープ状部材の中央にある短いテープ片は、
延伸後も伸縮性を有する長いテープ片の中央の一部分に貼着したものにすぎず、前記ア(イ)のとおり、このテープ状部材自体、延伸可能なものであるから、上記主張は理由がない。

小括
以上によれば、被告各製品は、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材(構成要件A)を充足する。
(被告らの主張)

(ア)

被告各製品のテープ状部材が弾性的な伸縮性を備えるか
弾性的な伸縮性の解釈
a
本件明細書には、上記構成を有する二重瞼形成用テープによって二重瞼を形成するには、テープ状部材の両端を把持して弾性的に延びた状態になるように引っ張り、その状態でテープ状部材の粘着剤を塗着した部分を瞼におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤によりテープ状部材をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部を離す。これにより、引っ張った状態にあるテープ状部材が弾性的に縮むが、本来、瞼はその両側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的に縮んだテープ状部材がそれを貼り付けた瞼にくい込む状態になって、二重瞼のひだが形成される。両端の不要な部分はその後に切除すればよい。(【0008】)、次に、このテープ状部材1は、両端を把持して引っ張ったままの状態で、図4に示すように、粘着剤2を塗着した部分を、瞼7におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤2によりテープ状部材1をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部3を離す。これにより、引っ張った状態にあるテープ状部材1が弾性的に縮むが、本来、瞼はその両側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的に縮んだテープ状部材1がそれを貼り付けた瞼7にくい込む状態になって、二重瞼のひだが形成される。両端の把持部3はひだの形成後に切除する。(【0017】)と記載されている。これらの記載によれば、本件発明は、テープ状部材を延伸させて瞼に貼り付け、又は押し当てた後、
テープ状部材が弾性的に縮んだときに初めて、これが瞼に食い込み、結果として二重瞼が形成されることを想定している。
また、別件審決取消訴訟判決が認定した本件発明の要旨は、延伸させたテープ状部材の収縮力によりテープ状部材を瞼に食い込ませて二重瞼を形成する発明であり、テープ状部材それ自体の収縮力が瞼
に食い込む原因となることを要求している。
以上によれば、弾性的な伸縮性とは、弾性的な収縮力を利用し
て瞼にテープ状部材を押し当て、二重瞼を形成するための伸縮性に限定して解釈されるべきである。
b
これに対して、原告は、弾性的な伸縮性とは、テープ状部材を

押し付けることによって生じた食い込みがその収縮力によって維持される場合をも含むと主張する。
しかし、前記aの別件審決取消訴訟判決の要旨認定によれば、本件発明は延伸させたテープ状部材の収縮力により…二重瞼を形成する発明であるとされる。また、同判決は、本件発明の作用効果につい
て、このテープ状部材の両端を持って引っ張った状態でそれを瞼のひだを形成したい位置に押し当てて粘着剤により貼り付ければ、両端を離した際、引っ張った状態にあるテープ状部材が弾性的に縮み、瞼に食い込む状態になって、二重瞼のひだが形成され、簡単にきれいな二重瞼を形成することができ、また、テープ状部材が瞼に直接二重にするためのひだを形成するので、従来の方法のように、皮膚につれを生じさせたり、皮膜の跡を残したりすることはなく、自然な二重瞼を形成することができる(段落【0008】、【0009】、【0032】)。と認定している。これらの認定によれば、テープ状部材が弾性的に縮むことにより、二重瞼が形成(維持ではない。)されるというプロセスが明
確に示されており、二重瞼が形成された後に作用効果が生じると

はされていないといえる。
したがって、原告の上記主張は理由がない。
(イ)

被告各製品のテープ状部材が弾性的な伸縮性を備えないこと
a(a)被告各製品を300mm/分の試験速度で初期状態から80mm
まで延伸させ、その後、試験片の端部を離して引っ張った状態から解放し、1分経過した後の試験片の長さを測定したところ、以下の被告試験結果のとおりとなった(小数点第3位を四捨五入。乙47、50、52。)。
なお、被告製品A3及び4と被告製品A5及び6、被告製品A7

及び8と被告製品A9及び10、被告製品B1と被告製品B2及び3は、それぞれ、幅が異なるだけで同じ材質であるから、収縮力は同程度といえる。

製品
被告製品A1・2
被告製品A3・4
被告製品A7・8

試験片の長さ(mm)
収縮幅(mm)
破断したため測定不能
75.44
4.56
75.58
4.42

被告製品B1
被告製品B4
被告製品B5
被告製品B6

76.91
75.34
75.58
77.20

3.09
4.66
4.42
2.80

上記の被告試験結果によると、試験片を80mmまで延伸させた
後にこれを解放すると、最も収縮したものの収縮幅は4.66mm(被告製品B4)で、収縮率は5.8%であり、最も収縮しなかったものの収縮幅は2.80mm(被告製品B6)で、収縮率は3.5%であった。人間の目の最大横幅は約26mmであるから、上記収縮率を当てはめると、収縮幅は0.91ないし1.508mmとなる。
このように、被告各製品はわずか1mm前後しか収縮しないから、これが二重瞼の形成に寄与しているとはいえない。

(b)

ポリエチレンフィルムを延伸させようとすると、まだほとんど延

伸されていない部分と延伸されつくした部分の二つに分かれ、全体の延伸は、前者が減少して後者が増大するという形で進行し、一定程度延伸させると、もはやそれ以上は延伸しない状態(塑性変形)となることが知られている。実際には、上記二つの部分に完全に分かれているのではなく、以下のとおり、両者の中間領域が存在し、まだほとんど変形していない部分(A相)、中間域(B相)及び延伸しきった部分(C相)にわけて考えることができる。

被告試験結果によれば、被告各製品を延伸し、引っ張った状態か
ら解放した後の長さは、最も短いもので約75mmであり、このときの収縮幅は約5mmである。ポリエチレンは、荷重をかけ始めたごく初期においては弾性的性質を示すが、応力の増加とともに、上記のとおり、弾性変形に塑性変形が加わってその合成の変形が現れ、最終的に塑性変形のみに移行する。そうすると、上記約75mmの部分は、塑性変形領域であるから、C相に相当し、約5mmの収縮幅は、塑性変形領域でも延伸しきった部分でもないから、B相に相当する。
人間の目の横幅は約25mmであるから、被告各製品を瞼に押し

当て、実際に収縮がどのように作用しているかを図式化すると、以下のとおりとなる。

このように、瞼上において、B相、すなわち収縮部分は全く作用
していない。
(c)

アクリル系粘着剤には、溶剤型粘着剤とエマルジョン型粘着剤が

あるところ、二重瞼形成用テープに用いるためには、耐熱性、耐水性等に優れた溶剤型粘着剤を用いる必要がある。そして、溶剤型粘着剤は、粘着剤成分を有機溶剤に溶かした均一溶液を各種フィルム
やシート(支持体)表面に塗工し、ドライヤーにより熱乾燥させなければならず、安全性の観点から溶剤として酢酸エチルを採用すると、120ないし130℃の温度で溶剤を熱乾燥させることになる。しかし、被告製品A1及び3ないし10並びにB1ないし4の材
質であるポリエチレンについて、低密度のポリエチレン及び中密度のポリエチレンは、テープ状部材として十分な伸縮性を有するものの、連続耐熱温度がそれぞれ82ないし100℃、105ないし121℃であるため、粘着剤である酢酸エチルを塗工することを前提としたテープ状部材としては採用することができない。他方で、高
密度ポリエチレンであれば、連続耐熱温度が121℃であるため、ある程度耐熱性を有しているといえるが、伸縮性が低い。
したがって、ポリエチレンである被告製品A1及び3ないし10
並びにB1ないし4は、その密度の高低にかかわらず、伸縮性が確保された上で,かつ、粘着剤を塗工することが可能な程度に耐熱性
があるという条件に合致しないため、延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂となり得ない。(d)

被告製品A2及びB5は、2本のテープをねじることにより、被

告製品A1よりも2倍程度厚く、強固なテープ状部材とし、このようなテープ状部材をより強く瞼に押し付けることによって、深い溝を刻み、二重瞼を形成しやすくしたものであるから、その収縮力が二重瞼の形成に寄与する余地はない。
したがって、被告製品A2及びB5は、その収縮力を利用して二
重瞼を形成するものではない。
(e)

被告製品B6は、テープの片面のみに接着剤を塗布し、閉じた瞼

が開く際、テープが垂れ下がる瞼を支えることにより二重瞼を形成するシャッター型であるから、収縮力を利用して二重瞼を形成して
いない。
(f)

前記(ア)のとおり、弾性的な伸縮性とは、二重瞼を形成するた

めの伸縮性と解釈されるべきであるところ、前記(a)ないし(e)によれば、被告各製品は弾性的な伸縮性(構成要件A)を備えない。
b
これに対して、原告は、①原告試験結果によれば、被告各製品のほぼ全てが、訴外製品及び原告製品より、収縮距離が長く、80mm伸張時の試験力も大きいから、弾性的な伸縮性を満たす、②被告各製品を使用して二重瞼を形成すると、テープ状部材の収縮により生じる縦じわ(ヘリンボーン)の存在が確認できる、③被告フィートジャ
パンは、関連訴訟において、訴外製品と同一の構成を有する被告製品A1及び2も本件特許権による差止めの対象となる可能性があると考え、その製造販売を停止した旨主張しており、本件発明の技術的範囲に属することを自認していると主張する。
しかし、上記①について、被告各製品が構成要件Aを充足するとい
うためには、延伸後の弾性的な伸縮性を利用しているかを検証す
る必要があるから、被告各製品の引張試験を実施するに当たっては、被告各製品を延伸させた後、それを引っ張った状態から解放する(両端から把持した手を離す)工程が不可欠である。そうであるにもかかわらず、原告試験結果においては、300mm/分の試験速度で、試
験開始からの変位が80mmになるまで引っ張った後、同一の試験速度で初期状態に戻すという極めて不自然な試験方法が採用されており、上記解放の工程がとられていない。これでは、延伸後に被告各製品がどの程度伸縮するかが明らかでないばかりか、初期状態に戻す際、テープ部材にたわみが生じてしまい、収縮距離を増大させることとなっ
て不当である。
上記②について、非伸縮性素材(ポリエステル及びポリプロピレン)
を使用した二重瞼形成用テープを使用した場合であっても、縦じわが発生することから、縦じわの存在が確認できることは収縮の根拠とならない。縦じわは、テープ状部材の収縮によってのみ生じるものではなく、テープ状部材を瞼に押し付けたときの食い込み方によっても生じ得るものである。

上記③について、被告フィートジャパンが被告製品A1及び2の製造販売を停止したとしても、被告製品A1及び2が本件特許権を侵害することを被告フィートジャパンが認めたことにはならない。
したがって、原告の上記各主張はいずれも理由がない。

被告製品B6のテープ状部材が延伸可能でないこと

(ア)

本件発明は、テープ状部材が延伸可能で伸縮性を有する

という性質により二重瞼を形成するところに特徴があるが、二重瞼は瞼全体に形成されなければ意味がないから、瞼に押し当てるテープ状部材全体が延伸可能である必要がある。特に、瞼は眼球が球体になっていることに合わせて凸状になっており、中央部付近がテープ状部材に対する反発力が最も強くなるから、中央部付近が延伸可能であることは必須である。
しかし、被告製品B6においては、非伸縮性の細いテープが中央部で貼り合わされているから、テープ状部材の中央部付近は延伸しない。被
告製品B6の外装表面にしっかり支える!!、瞼の中心を支える
と記載されていることからも明らかなように、被告製品B6は、非伸縮性の細いテープ状部材により落ちてくる瞼を支えることによって二重瞼を形成するシャッター型に分類される商品である。
したがって、被告製品B6は延伸可能(構成要件A)を備えない。
(イ)

これに対して、原告は、被告製品B6のテープ状部材自体、延伸後も
伸縮性を有すると主張する。

しかし、上記主張は、非伸縮性の細いテープ状部材が中央に貼り合わされていることを全く無視するものであり、理由がない。

小括
以上によれば、被告各製品は、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材(構成要件A)
を充足しない。
(2)

争点1-2(構成要件Bの充足性)について
(原告の主張)

(ア)

被告各製品のテープ状部材が粘着剤を塗着したものであるか
粘着剤を塗着の解釈
a
二重瞼形成用テープにおいて、テープ状部材を瞼に貼着する手段と
して当該テープ状部材に粘着剤を設けることは技術常識である。そして、本件明細書における本件発明の作用効果に関する記載(【0008】、【0009】、【0032】等)や別件審決取消訴訟判決による本件発明の要旨認定によれば、本件発明の粘着剤も、上記技術
常識の範囲内のものにすぎず、本件発明の技術的特徴部分を構成するものではない。
したがって、粘着剤を塗着とは、テープ状部材に粘着剤を設け
た構造と解すべきである。

b
これに対して、被告らは、塗着というためには粉末や液体があり、当該粉末や液体を塗り付ける行為が必要であって、知的財産高等裁判所平成23年(行ケ)第10130号同24年1月16日判決(乙18。以下平成24年知財高裁判決という。)
を引用して、ラミネート加工と塗り付ける行為は別の行為であると主張する。
しかし、平成24年知財高裁判決は、フィルムの積層に技術的特徴
を有する積層体に係る発明に関し、個々の具体的積層体構造に基づき検討することが不可欠であった事例において、積層と塗着を区別
したものにすぎず、上記のような積層体とは関係のない本件発明における塗着の解釈に当たっては、何ら根拠となるものではない。
したがって、被告らの上記主張は理由がない。

(イ)

被告各製品のテープ状部材が粘着剤を塗着したものであること
a
被告製品A1及び2の外装裏面には、材質として、皮膚用アクリル粘着剤との記載がある。また、被告各製品の外装裏面の使用方法のSTEP3には、瞼に接するテープ状部材を指して、細い粘着剤との記載がある。
実際、被告各製品を左右に伸ばし、出てきたテープ状部材を手で触れると、手に粘着する。
したがって、被告各製品は、そのテープ状部材の両面に粘着剤が設けられているので、粘着剤を塗着(構成要件B)したものという
べきである。

b
これに対して、被告らは、被告各製品においては、米国ミネソタ州
に本社を置く3M(以下3M社という。)が製造したテープを使
用しており、この3M社製テープは剝離面を有する剝離紙に粘着剤を塗布して基材に貼り合わせるラミネート方式のテープであるから、被告各製品は粘着剤を塗着したものではないと主張する。

しかし、被告各製品の製造過程を立証する証拠はないし、被告らが指摘する3M社製テープが、被告らが主張するような剝離紙に塗布した粘着剤を基材に付ける転写テープであることを示す証拠もない。したがって、被告らの上記主張は理由がない。

自白の撤回の可否
被告フィートジャパンは、被告製品A1及び2が構成要件Bを充足する
ことを認めたにもかかわらず、その後、これを否認するに至り、自白を撤回した。
原告は、上記撤回について同意しておらず、被告フィートジャパンは、上記自白が真実に反し、かつ、錯誤に基づいてされたことを立証しない。したがって、被告フィートジャパンによる自白の撤回は許されない。

小括
以上によれば、被告各製品は、粘着剤を塗着することにより構成した(構成要件B)を充足する。

(被告らの主張)

(ア)

被告各製品のテープ状部材が粘着剤を塗着したものであるか
粘着剤を塗着の解釈
a
塗着について、本件明細書には特段定義することなく用いられ

ているところ、一般的には、

表面を塗り着けること。

(乙16)という意味である。
このような語義からすると、塗着とは、塗る行為をその要
素とするところ、塗るとは、

物の面に粉末や液体などをなすりつける。

(乙17)という行為を指す。したがって、塗着というためには、粉末や液体があり、
当該粉末や液体を塗り付ける行為が必要である。実際、平成

24年知財高裁判決では、気泡シートに関する特許について、

「…微着シート層10の微着性は、張付面側のベース層を汎用合成樹脂フィルムで形成して、その上に微着性の透明合成樹脂をラミネートするという手段によっても形成可能である。

とは、汎用合成樹脂フィルムと微着性の透明合成樹脂をラミネートして積層するものであ
って、具体的接着剤層の形成方法として塗布・乾燥を用いる引用発明1Aとは形成方法や材料が異なる。」と判断されており、ラミネート
加工(積層)と塗り付ける行為(塗着)とは別の行為であると判
断されている。
b
これに対して、原告は、粘着剤を塗着とはテープ状部材に粘着

剤を設けた構造と解すべきであると主張する。
しかし、本件明細書には、

図中4は、粘着剤2を塗着した部分に貼着して二重瞼形成用テープの取り扱いを容易にするための離型紙を示している。

(【0012】)、

粘着剤12を塗着した部分に予め二重瞼形成用テープの取り扱いを容易にするための離型紙などを貼着しておき、それをシート状部材11と共に切断線Lに沿って切断することもできる。

(【0013】)という記載がある。これらの記
載からすると、離型紙は、粘着剤を塗着した部分に貼着
されるものであるところ、本件明細書においては、塗着と貼着
は区別して用いられているといえる。
したがって、塗着とは、貼り着ける(貼着)行為、すなわ
ち、ラミネート加工を除いたものとして用いられていることは明らか
であるから、原告の上記主張は理由がない。
(イ)

被告各製品のテープ状部材が粘着剤を塗着したものでないこと
a
被告各製品の製造に当たっては、まず、支持体と粘着剤との接着を
良くし、耐湿性、耐水性等を持たせるための下塗剤(プライマー)と呼ばれる塗料を塗工したテープ状合成樹脂を、基材の上に製造する。そして、上記工程とは別に、剥離紙を用意し、その上に粘着剤を塗工した粘着剤層を製造する。その上で、上記テープ状合成樹脂と粘着剤層とを貼り合わせること(ラミネート加工)により、被告各製品を完成させる。

被告らは、3M社の日本代理店に対し、被告各製品の製造加工を委託しているところ、3M社製テープは、剝離面を有する剝離紙に粘着
剤を塗布して基材に貼り合わせるラミネート方式のテープである。したがって、上記各工程から明らかなとおり、被告各製品は、粘着剤を直接塗着しておらず、粘着剤を塗工した剥離紙を基材に貼り
合わせている(ラミネート加工)のみであるから、粘着剤を塗着
を充足しない。

b
これに対して、原告は、被告各製品はそのテープ状部材の両面に粘
着剤が設けられていると主張する。
しかし、被告各製品の材質はポリエチレンであるところ、ポリエチレンは一般的に耐熱性が低く、熱にさらされると容易に変形してしまう特性がある。ポリエチレンに粘着剤を塗工し、その後、ドライヤー
(乾燥機)にかけると、ポリエチレンがドライヤーの熱風で変形してしまう可能性が高い。仮にドライヤーの温度を下げると、造膜に時間を要することになり、生産効率が悪くなる。
したがって、ポリエチレンを採用した被告各製品に直接粘着剤が設けられることはあり得ないから、原告の上記主張は理由がない。


自白の撤回の可否
被告フィートジャパンは、被告製品A1及び2が構成要件Bを充足することについて、一旦は認めたものの、被告製品A1及び2の製造元に確認したところ、基材の上に粘着剤層をラミネート加工により積層したものであり、粘着剤を塗着していないことが判明した。

したがって、被告フィートジャパンによる自白は、真実に反し、かつ、錯誤によるものであるから、撤回が許されるべきである。

小括
以上によれば、被告各製品は、粘着剤を塗着することにより構成した(構成要件B)を充足しない。

(3)

争点1-3(均等侵害の成否)について

(原告の主張)

仮に、被告各製品がテープ状部材に粘着剤を塗工した剥離紙を貼り合わせること(ラミネート方式)によって構成されており、これが本件発明の構成要件A及びBの

テープ状部材に、粘着剤を塗着すること

に含まれないとしても、以下のとおり、テープ状部材に粘着剤を塗工した剥離紙を貼り合わせることにより構成した被告ら製品は本件発明の

テープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した

と均等なものとして、本件発明の技術的範囲に属する。

均等の第1要件について

(ア)

本件特許の特許請求の範囲(請求項1)は、

延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した、ことを特徴とする二重瞼形成用テープ

である。そして、本件発明の課題は、自然な二重を形成できるようにした二重瞼形成用テープ(【0003】)を提供すること、及び、二重瞼を形成するための従来の方法として、水性ラテックスエマルジョンやポリマーエマルジョンなどを用いて瞼の皮膚を接着し、二重のひだを形成する方法、あるいは、瞼に片面粘着テープを貼り付けたり硬化型ポリマーを塗着することにより皮膜を形成し、それによって二重の折り込みひだを形成する方法などが知られているが、いずれも非常に細かい作業を行う必要があって、ある程度慣れないときれいな仕上がりを得ることができず、また、前者の接着による場合には接着により皮膚のつれが生じたり、後者の皮膜形成では皮膜の跡が残るなどの問題(【0002】)があったことである。これに対して、本件発明は、

延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した

(【0004】)
ことを特徴とする二重瞼形成用テープであるところ、このテープ状部材の両端を持って引っ張った状態で、それを瞼のひだを形成したい位置に押し当てて粘着剤により貼り付ければ、両端を離した際、引っ張った状態にあるテープ状部材が弾性的に縮み、瞼に食い込む状態になって、二重瞼のひだが形成され、簡単にきれいな二重瞼を形成することができ、また、テープ状部材が瞼に直接二重にするためのひだを形成するので、従来の方法のように、皮膚につれを生じさせたり、皮膜の跡を残したりすることはなく、自然な二重瞼を形成することができる(【0008】、【0009】及び【0032】)。
以上のような本件発明に係る特許請求の範囲及び本件明細書の記載、
特に本件明細書に記載された従来技術との比較から導かれる本件発明の課題、解決方法及び効果に照らせば、本件発明の本質的部分、すなわち、特許請求の範囲の記載のうち従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分は、延伸させたテープ状部材の収縮力によりテープ状部材を瞼に食い込ませて二重瞼を形成するために、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したテープ状部材により二重瞼形成用テープを構成した点にあるといえる。(イ)

被告各製品は、前記(1)(原告の主張)のとおり、いずれも、延伸させたテープ状部材の収縮力によりテープ状部材を瞼に食い込ませて二重瞼を形成するために、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したテープ状部材により二重瞼形成用テープを構成したものであるから、本件発明に係る特許請求の範囲の記載のうち従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分を備えている。

したがって、本件発明と被告各製品との相違部分(テープ状部材
に粘着剤を塗着するか、粘着剤を塗工した剝離紙を貼り合わせる(ラミネート方式)か)は、本質的部分ではないから、被告各製品は、均等の第1要件を満たす。

均等の第2要件について
被告各製品は、本件発明のテープ状部材に粘着剤を塗着すること
を、粘着剤を塗工した剝離紙を貼り合わせることに置き換えたにすぎ
ず、テープ状部材を瞼に貼り付けるための粘着剤層をテープ状部材に設けたことに変わりはない。
そして、前記イ(ア)の本件発明の作用効果からすると、本件発明における粘着剤を塗着することを粘着剤を塗工した剝離紙を貼り合わせることに置き換えても、同一の作用効果が得られる。
したがって、被告各製品は、均等の第2要件を満たす。

均等の第3要件について

(ア)

被告各製品が製造販売された当時、テープ状部材を瞼に貼着する

手段として、テープ状部材に粘着剤を塗布することは周知技術であり(乙8、12、31)、また、粘着剤を塗工した剝離紙を基材(テープ状部材)に貼り合わせること(ラミネート方式)も周知技術であった(特開平5-287245号(以下甲44文献という。))。したがって、被告各製品が製造販売された当時において、本件発明のテープ状部材に、粘着剤を塗着することという構成の代わりに

粘着剤を塗工した剝離紙を貼り合わせることという構成を採用することは、当業者が本件発明から容易に想到することができたといえるから、被告各製品は、均等の第3要件を満たす。
(イ)

これに対して、被告らは、二重瞼形成用テープにおいてラミネート方
式を採用することにつき特許査定がされた特許第6329309号(乙54。以下乙54特許という。)が存在するから、粘着剤を塗着することからラミネート方式に置換することは容易ではなかったと主
張する。
しかし、乙54特許が特許査定されるまでに、被告ら代表者を含む同特許に係る出願人は、特許請求の範囲について、コロナ放電処理工程又はプラズマ処理工程による表面処理や粘着剤の厚さに関する限定をし、

先行2発明は、「未処理のテープ状合成樹脂に、粘着剤層をラミネートにより積層させる

ことにより粘着剤層をテープ状部材に形成させているのに対し、本願発明は、

表面が特定の乾式処理(コロナ放電処理又はプラズマ処理工程)がなされたテープ状合成樹脂に、粘着剤層をラミネートにより積層させる

ことにより粘着剤層をテープ部材に形成させている点で相違する。」(甲63の4)と説明していることからする
と、乙54特許に係る発明は、粘着剤の塗工方法としてラミネート方式を採用したことにより特許査定されたものと解することはできない。したがって、被告らの上記主張は理由がない。

小括
以上のとおり、被告各製品は、均等の第1ないし3要件をいずれも満た
す上、被告各製品は、公知技術と同一又は当業者がこれから容易に推考できたものとは認められないから、第4要件を満たし(なお、被告らの主張に対する反論は、後記2のとおりである。)、第5要件に関して被告らは主張立証しないから、第5要件も満たすというべきである。
したがって、被告各製品は、本件発明に係る特許請求の範囲に記載され
た構成と均等なものとして、本件発明の技術的範囲に属する。
(被告らの主張)

均等の第1要件について

(ア)
被告各製品は、いずれも、延伸させたテープ状部材の収縮力によりテープ状部材を瞼に食い込ませて二重瞼を形成する(別件審決取消訴訟判決で認定された本件発明の要旨)ための延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材(構成要件A)の構成を備えていない。
したがって、被告各製品は、本件発明の本質的部分を備えていないから、均等の第1要件を満たさない。
(イ)

これに対して、原告は、本件発明の本質的部分は、延伸させたテープ状部材の収縮力によりテープ状部材を瞼に食い込ませて二重瞼を形成するために、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したテープ状部材により二重瞼形成用テープを構成した点にあると主張する。
しかし、被告各製品は、原告の主張する本件発明の本質的部分を備え
ておらず、均等の第1要件を満たす余地はないから、原告の上記主張は理由がない。

均等の第2要件について

(ア)
被告各製品は、いずれも、二重瞼の形成に当たり収縮力を利用してい
ない。
したがって、被告各製品は、原告の主張する収縮力により、簡単にきれいな二重瞼を形成することができ、また、従来の方法のように、皮膚につれを生じさせたり、皮膜の跡を残したりすることはなく、自然な二重瞼を形成することができるという作用効果を奏しないから、均等の第
2要件を満たさない。
(イ)

これに対して、原告は、本件発明の作用効果からすると、本件発明に
おける粘着剤を塗着することを粘着剤を塗工した剥離紙を貼り合わせることに置き換えても、同一の作用効果が得られると主張する。しかし、前記ア(ア)のとおり、被告各製品は、延伸可能で延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材(構成要件A)の構成を備えていないため、引っ張った状態にあるテー
プ状部材が弾性的に縮み、瞼に食い込む状態になって、二重瞼のひだが形成されるという本件発明の作用効果を奏することはない。
したがって、本件発明における粘着剤を塗着することを粘着剤を塗工した剥離紙を貼り合わせることに置き換えたとしても、作用効果が共通しないから、原告の上記主張は理由がない。


均等の第3要件について

(ア)

本件発明の塗着方式による場合、基材(第一基材)に直接粘着剤

を塗工するため、粘着剤を乾燥処理する際の揮発温度は、第一基材の耐熱温度が上限となり、採用できる粘着剤の種類が限られてしまう。他方で、被告各製品のようなラミネート方式による場合、第一基材(ポリエチレン)に第二基材としての粘着剤を貼り合わせることになるところ、粘着剤を貼り合わせるために乾燥処理をする必要があるのは塗着方式と同様であるが、その揮発温度は、塗着方式と異なり、乾燥処理が直接施される第二基材を基準として考えればよい。したがって、ラミ
ネート方式の場合、粘着剤(第二基材)の揮発温度は、第一基材の耐熱温度を超えないようにする必要がなく、第一基材の耐熱温度にかかわりなく、自由に粘着剤を採用することができる。
また、二重瞼形成用テープにおいてラミネート方式を採用したことにつき特許査定された乙54特許が存在することからすると、二重瞼形成
用テープにおいてラミネート方式を採用することに進歩性が認められ、粘着剤を塗着することからラミネート方式に置換することが容易ではなかったことは明らかである。
そうすると、被告各製品のようなラミネート方式においては、第二基材を第一基材の耐熱温度にかかわりなく自由に選択できるという、塗着を構成要件とする本件発明とは異なる作用効果があり、また、二重瞼形成用テープにおいてラミネート方式を採用することには進歩性が認
められると判断されていることから、粘着剤を塗着することからラミネート方式に置換することは容易ではない。
以上によれば、被告各製品は、均等の第3要件を満たさない。
(イ)

これに対して、原告は、甲44文献を根拠として、粘着剤を塗工した
剥離紙を基材(テープ状部材)に貼り合わせること(ラミネート方
式)は周知技術であったと主張する。
しかし、甲44文献にラミネート方式の記載があることのみをもって、これを周知技術であるとするのは論理の飛躍が大きい。また、甲44文献に記載されているのは、自動車用部品等と鋼板等とを接着するための粘着テープに係る発明であり、二重瞼形成用テープとは全く技術分野が
異なる上、関連性もないものである。
したがって、全く異なり、関連性もない技術分野に属する発明が記載された甲44文献をもって、二重瞼形成用テープにおける粘着剤を塗着することをラミネート方式に置換することが容易であるということはできず、原告の上記主張は理由がない。


小括
以上のとおり、被告各製品は、均等の第1ないし3要件をいずれも満たさず、また、後記2のとおり、本件発明は新規性及び進歩性が欠如するため、被告各製品についても、同様に、公知技術と同一又は当業者がこれから容易に推考できたといえ、第4要件も満たさないから、本件発明に係る
特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとはいえない。
2無効の抗弁の成否
(1)

争点2-1(公然実施に基づく新規性欠如)について
(被告らの主張)


本件発明の特許要件の判断基準日

(ア)

本件明細書と優先権基礎出願明細書等を対比すると、本件明細書には、
①粘着剤の塗着態様に関して、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材1において、粘着剤2をテープ状部材1の表面又は裏面のどちらか一方の面だけに塗着する実施例及び粘着剤2をテープ状部材1の粘着剤2が塗着される側の面を部分的に覆うように塗着する実施例(【0014】及び【0015】。以下、これらの実施例を併せて追加実施例1という。)、②破断部を有するシートに関して、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材21に、引っ張りによって破断する破断部を中央に有し、シリコン加工を施したフィルム又は
シリコン樹脂をペーパー状にしたシリコンペーパーからなる細いテープ状のシート22を貼り付ける実施例(【0019】。以下追加実施例2という。)が記載されており、これらは優先権基礎出願明細書等から追加されたものである。そして、本件明細書には、追加実施例2により、把持部や離型紙を設けなくても、テープ状部材21の粘着剤が指や
他の物品に付着するということがなく、二重瞼形成用テープ20を使用するときには当該二重瞼形成用テープ20を左右両側に引っ張るだけでテープ状部材21が延びた状態で露出するから使いやすくなるという効果を達成することが記載されている(【0025】)。
(イ)

後の出願の特許請求の範囲の文言が、先の出願の当初明細書等に記載
されたものといえる場合であっても、後の出願の明細書の発明の詳細な説明に、先の出願の当初明細書等に記載されていなかった技術的事項を記載することにより、後の出願の特許請求の範囲に記載された発明の要旨となる技術的事項が、先の出願の当初明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えることになる場合には、その超えた部分については優先
権主張の効果は認められない。
ここで検討すべき対象は、本件発明が優先権基礎出願明細書等に記載
されているか否かではなく、本件明細書の発明の詳細な説明に、優先権基礎出願明細書等に記載されていなかった技術的事項を記載することにより、本件発明の要旨となる技術的事項が優先権基礎出願明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えることになるか否かである。
別件審決取消訴訟判決は、本件発明の要旨の認定に当たり、本件明細
書の【0001】ないし【0004】、【0008】ないし【0010】、【0014】ないし【0019】、【0025】及び【0032】を参酌しており、これらの段落に記載された技術的事項は、全て本件発明の要旨となるものである。したがって、【0014】及び【0015】に記載された追加実施例1並びに【0019】及び【0025】に記載された追加実施例2は、本件発明の構成を備えるものである以上、本件発明の要旨となる技術的事項である。
したがって、追加実施例1及び2を本件明細書に加えることにより、本件発明の要旨となる技術的事項が優先権基礎出願明細書等に記載され
た技術的事項の範囲を超えることになることは明らかであるから、その超えた部分については優先権主張の効果は認められない。
以上によれば、本件発明の特許要件の判断基準日は、優先権基礎出願の日である平成12年10月3日に遡及せず、本件出願の日である平成13年5月29日というべきである。

(ウ)

原告は、本件出願の日に先立つ平成13年3月に、原告製品の販売を
開始したところ、原告製品は、本件発明の技術的範囲に属するものである。
したがって、本件発明は、本件出願前に日本国内において公然実施をされた発明(法29条1項2号)であるから、本件特許は無効にされるべきものと認められ、原告は被告らに対しその権利を行使することができない(法104条の3第1項、123条1項2号)。


原告の主張に対する反論
これに対して、原告は、別件審決取消訴訟判決では、本件明細書のうち、優先権基礎出願明細書等に記載された範囲内の事項のみを参酌し、追加実施例1及び2を参酌していないと主張する。
しかし、原告が指摘する別件審決取消訴訟判決の箇所は、本件発明の
延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂の技術的意義についてのみ判断した部分であり、細いテープ状部材や粘着剤を塗着することの技術的意義について判断した部分ではないから、本件発明全体の要旨を認定したものではない。
したがって、原告の上記主張は、本件発明の一部である合成樹脂に関す
る別件審決取消訴訟判決が認定した要旨を本件発明全体の要旨と誤って捉えたものであるから、理由がない。
(原告の主張)

被告らは、本件明細書と優先権基礎出願明細書等を対比すると、追加実
施例1及び2が追加されており、これらは本件発明の実施例に相当するところ、追加実施例1及び2を本件明細書に加えることにより、本件発明の要旨となる技術的事項が優先権基礎出願明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えることになるから、その超えた部分については優先権主張の効果は認められず、本件発明の特許要件の判断基準日は、本件出願の日で
ある平成13年5月29日であると主張する。
しかし、本件明細書には、優先権基礎出願明細書等の記載事項の全てが実質的に含まれており、別件審決取消訴訟判決でも、本件発明の要旨を認定するに当たり、本件明細書のうち、優先権基礎出願明細書等に記載された範囲内の事項(本件明細書【0002】ないし【0004】、【000
8】、【0009】及び【0032】)のみを参酌し、追加実施例1及び2を参酌していないから、追加実施例1及び2に記載された事項にかかわ
らず、優先権基礎出願明細書等のみによっても、本件発明を優に認定することができる。
さらに、本件明細書及び優先権基礎出願明細書等において共通する実施例である【図1】と、本件明細書において新たに追加された追加実施例2とでは、本件発明の要旨となる技術的事項である

延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した

部分の具体的構成が同じである。また、本件明細書の【0024】の記載からすると、【図1】に示される実施例と追加実施例2とでは、上記部分の作用効果も同じである。
したがって、本件発明の要旨となる技術的事項である上記部分は、追加
実施例1及び2が加わったことにより、優先権基礎出願明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えたことにはならないから、この技術的事項についての特許要件の判断基準日は、優先権基礎出願の日(平成12年10月3日)に遡及することとなる。

本件発明の実施品である原告製品の構成における

延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した

部分は、本件明細書の【図1】及び追加実施例2における同部分と実質的に同じ構造及び作用効果を有する。そして、前記アのとおり、上記部分についての特許要件の判断基準日は、原告製品の販売が開始される前の優先権基礎出願の日に遡及する。
したがって、本件発明は、特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明であるとはいえない。
(2)

争点2-2(乙8文献を主引用例とする進歩性欠如)について
(被告らの主張)


一致点及び相違点
優先権基礎出願前に日本国内において頒布された刊行物である乙8文献
には、

柔らかい樹脂などの細いテープ状の皮膜に、接着剤を塗布することにより構成した、瞼の皮膚にしわを作り出すことにより、二重瞼を作るための、アイシャドーやアイラインの代わりになる薄型粘着シール

(以下乙8発明という。)が記載されている。
本件発明と乙8発明を対比すると、

樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した、二重瞼形成用テープ

という点で一致する。
しかし、本件発明のテープ状部材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるのに対し、乙8発明の皮膜は、柔らかい樹脂により形成したものではあるもの

の、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるかは不明である点(以下相違点1という。)において、両者は相違する。

相違点1の容易想到性

(ア)

優先権基礎出願前に外国において頒布された刊行物である乙11文献
には、延伸させた伸縮性基材の収縮力により皮膚にしわを作り出すために、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する熱可塑性ポリウレタンフィルムにより形成した基材に、感圧接着剤を施すことにより構成した、しわ形成用装飾用化粧品(以下乙11発明という。)が記載されている。
そして、乙8発明と乙11発明は、皮膚に貼り付けられる装飾用の貼付部材という共通の技術分野に属し、皮膚に装飾用のしわを形成するという共通の作用・機能を有する。また、乙11発明は、アイライナーとしても使用でき、上瞼の横ひだに沿って貼り付けることが可能な形状と
することが想定されているから、アイラインの代わりになる薄型粘着シールである乙8発明に適用することが乙11文献において示唆されてい
るといえる。
さらに、優先権基礎出願当時、テープの引張応力を利用して、美容のために瞼の皮膚に収縮力を加えることや、舞台用又は劇場用の化粧において二重瞼形成用の化粧が行われていることは、いずれも技術常識であった(乙12、32)。

これらの技術分野の共通性,作用・機能の共通性,乙11文献中の示唆及び技術常識に鑑みると、乙8発明と乙11発明を組み合わせる動機付けが認められ、相違点1に係る本件発明の構成は、乙8発明と乙11発明を組み合わせることにより、容易に想到することができたというべきである。

以上によれば、本件発明は、乙8発明を主引用発明とし、これに乙11発明を組み合わせることにより、容易に発明することができたといえるから、本件特許は無効にされるべきものと認められ、原告は被告らに対しその権利を行使することができない(法104条の3第1項、123条1項2号、29条2項)。

(イ)

これに対して、原告は、乙8発明の薄型粘着シールは伸長により

変形させて使用することは想定されておらず、伸長により変形させて使用する乙11発明を適用することにつき阻害要因が認められると主張する。
しかし、乙8発明は、柔らかい樹脂などの細いテープ状により構

成される薄型粘着シールである上、瞼はその開閉により伸縮するから、瞼の伸縮に伴う薄型粘着シールの伸縮や変形は当然に想定されたものといえる。
したがって、原告の上記主張は理由がない。
(原告の主張)

相違点

本件発明のテープ状部材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるのに対し、乙8発明の柔らかい皮膜などの皮膜が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものではないという点(以下相違点1’という。)で、両者は相違する。

相違点1’の非容易想到性
被告らは、相違点1(相違点1’)について、乙8発明と乙11発明を組み合わせる動機付けが認められると主張する。
しかし、乙11文献では、舞台効果用のしわ形成用装飾用化粧品を
身体のどの部分に適用するのかは明らかにされておらず、形成されるしわについて、本件発明のように基材の伸長方向に沿って延びる食い込みによるものか、基材の伸長方向と交差する方向に延びるものなのかなど、その機序や態様も不明である。このように、乙11文献には、舞台効果用のしわ形成用装飾用化粧品を細いテープ状部材に形成して二重瞼形成
用テープとして使用することや、その基材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成されたものであることについて、何ら開示されていないし、示唆もされていない。
また、アイライナーと舞台効果用のしわ形成用装飾用化粧品との関連性や、舞台効果用のしわ形成用装飾用化粧品を上瞼の横ひだに沿っ
て貼り付けることが可能な形状とすることについて、何ら開示されていないし、示唆もされていない。
さらに、乙8発明のように、容貌を改善する美容を主たる目的とし、本来、瞼を開けたときに出現し、閉じたときに消失する二重瞼のしわと、乙11発明のように、扮装するために容貌を劣化させることを主たる目的と
し、様々な部位の皮膚に固定的に形成される舞台効果用の収縮によるしわとを、一くくりにすることはできず、両者は作用・機能において共通性を
有しない。
むしろ、乙8発明の薄型粘着シールは、既に上瞼の形に適合させた形状に形成されており、伸長により変形させて使用することは想定されていないから、このような乙8発明に対して、伸長により変形させて使用する乙11発明を適用することには、阻害要因が認められる。

したがって、乙8発明と乙11発明を組み合わせる動機付けは認められないし、むしろ、乙11発明を組み合わせることにつき阻害要因が認められるから、乙8発明に乙11発明を適用することにより、本件発明を容易に発明することができたとはいえない。
(3)

争点2-3(乙9文献を主引用例とする進歩性欠如)について
(被告らの主張)

一致点及び相違点
優先権基礎出願前に日本国内において頒布された刊行物である乙9文献には、

裏面に貼着部を持ち、弾力性のある材質から成る細いテープ状の片により構成した、まぶたの皮膚にしわを作り出すことにより、一重まぶたを二重まぶたに矯正するための、一重まぶた矯正具

(以下乙9発明という。)が記載されている。
本件発明と乙9発明を対比すると、

細いテープ状部材に、粘着剤を設けることにより構成した、二重瞼形成テープ

という点で一致する。しかし、本件発明のテープ状部材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるのに対し、乙9発明の細いテープ状の片は、弾力性のある材質ではあるものの、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるかは不明であるという点(以下相違点2という。)で、両者は相違する。


相違点2の容易想到性

(ア)

乙9発明と乙11発明は、皮膚に貼り付けられる装飾用の貼付部材と
いう共通の技術分野に属し、皮膚に装飾用のしわを形成するという共通の作用・機能を有する。また、乙11発明は、アイライナーとしても使用でき、上瞼の横ひだに沿って貼り付けることが可能な形状とすることが想定されているから、上瞼の横ひだに沿って貼り付けるものである乙9発明に適用することが乙11文献において示唆されているといえる。さらに、優先権基礎出願当時、テープの引張応力を利用して、美容のために瞼の皮膚に収縮力を加えることや、舞台用又は劇場用の化粧において二重瞼形成用の化粧が行われていることは、いずれも技術常識であ
った(乙12、32)。
これらの技術分野の共通性,作用・機能の共通性,乙11文献中の示唆及び技術常識に鑑みると、乙9発明と乙11発明を組み合わせる動機付けが認められ、相違点2に係る本件発明の構成は、乙9発明と乙11発明を組み合わせることにより、容易に想到することができたというべ
きである。
以上によれば、本件発明は、乙9発明を主引用発明とし、これに乙11発明を組み合わせることにより、容易に発明することができたといえるから、本件特許は無効にされるべきものと認められ、原告は被告らに対しその権利を行使することができない(法104条の3第1項、12
3条1項2号、29条2項)。
(イ)

これに対して、原告は、乙9発明の一重まぶた矯正具は伸長によ

り変形させて使用することは想定されておらず、伸長により変形させて使用する乙11発明を適用することにつき阻害要因が認められると主張する。
しかし、乙9発明は、弾力性のある材質から成る細いテープ状の片により構成されるものである上、瞼はその開閉により伸縮するから、瞼
の伸縮に伴うテープ状の片の伸縮や変形は当然に想定されたものといえる。
したがって、原告の上記主張は理由がない。
(原告の主張)

相違点
本件発明のテープ状部材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるのに対し、乙9発明の細いテープ状の片が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものではないという点(以下相違点2’という。)で、両者は相違する。


相違点2’の非容易想到性
被告らは、相違点2(相違点2’)について、乙9発明と乙11発明を組み合わせる動機付けが認められると主張する。
しかし、前記(2)(原告の主張)のとおり、乙11文献には、舞台効果用のしわ形成用装飾用化粧品を二重瞼形成用テープとして使用することや、その基材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成されたものであることについての開示や示唆はなく、そのほかに、乙9文献及び乙11文献のいずれにおいても、乙9発明と乙11発明を組み合わせることを動機付ける開示や示唆は全くない。

むしろ、乙9発明の一重まぶた矯正具は、乙8発明の薄型粘着シールと同様に、既に上瞼の形に適合させた形状に形成されており、伸長により変形させて使用することは想定されていないから、このような乙9発明に対して、伸長により変形させて使用する乙11発明を適用することには、阻害要因が認められる。

したがって、乙9発明と乙11発明を組み合わせる動機付けは認められないし、むしろ、乙11発明を組み合わせることにつき阻害要因が認めら
れるから、乙9発明に乙11発明を適用することにより、本件発明を容易に発明することができたとはいえない。
(4)

争点2-4(乙10文献を主引用例とする進歩性欠如)について
(被告らの主張)


一致点及び相違点
優先権基礎出願前に日本国内において頒布された刊行物である乙10文献には、

細いテープ状部材を瞼に貼り付けることができるように構成した、瞼の皮膚に深くて幅の広い二重のしわを作り出すための、アイシャドウの代わりになるアイテープ

(以下乙10発明という。)が記載されている。

本件発明と乙10発明を対比すると、

細いテープ状部材に、粘着剤を設けることにより構成した、二重瞼形成用テープ

という点で一致する。しかし、本件発明のテープ状部材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるのに対し、乙10発明の細いテープ状部材は延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるかは不明である点(以下相違点3という。)で、両者は相違する。

相違点3の容易想到性

(ア)
乙10発明と乙11発明は、皮膚に貼り付けられる装飾用の貼付部材
という共通の技術分野に属し、皮膚に装飾用のしわを形成するという共通の作用・機能を有する。また、乙11発明は、アイライナーとしても使用でき、上瞼の横ひだに沿って貼り付けることが可能な形状とすることが想定されているから、アイシャドウの代わりになるアイテープである乙10発明に適用することが乙11文献において示唆されているとい
える。
さらに、優先権基礎出願当時、テープの引張応力を利用して、美容の
ために瞼の皮膚に収縮力を加えることや、舞台用又は劇場用の化粧において二重瞼形成用の化粧が行われていることは、いずれも技術常識であった(乙12、32)。
これらの技術分野の共通性,作用・機能の共通性,乙11文献中の示唆及び技術常識に鑑みると、乙10発明と乙11発明を組み合わせる動
機付けが認められ、相違点3に係る本件発明の構成は、乙10発明と乙11発明を組み合わせることにより、容易に想到することができたというべきである。
以上によれば、本件発明は、乙10発明を主引用発明とし、これに乙11発明を組み合わせることにより、容易に発明することができたとい
えるから、本件特許は無効にされるべきものと認められ、原告は被告らに対しその権利を行使することができない(法104条の3第1項、123条1項2号、29条2項)。
(イ)

これに対して、原告は、乙10発明のアイテープは伸長により変

形させて使用することは想定されておらず、伸長により変形させて使用
する乙11発明を適用することにつき阻害要因が認められると主張する。しかし、乙10発明は、瞼に貼り付けられるアイテープである上、瞼はその開閉により伸縮するから、瞼の伸縮に伴うアイテープの伸縮や変形は当然に想定されたものといえる。
したがって、原告の上記主張は理由がない。

(原告の主張)

相違点
本件発明のテープ状部材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるのに対し、乙10発明
の細いテープ状部材は延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものではないという点(以下相違点3’という。)で、両者は相違する。イ
相違点3’の容易想到性
被告らは、相違点3(相違点3’)について、乙10発明に乙11発明を組み合わせる動機付けが認められると主張する。
しかし、前記(2)(原告の主張)のとおり、乙11文献には、舞台効果用のしわ形成用装飾用化粧品を二重瞼形成用テープとして使用することや、その基材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成されたものであることについての開示や示唆はなく、そのほかに、乙10文献及び乙11文献のいずれにおいても、乙10発明と乙11発明を組み合わせることを動機付ける開示や示唆は全くない。
むしろ、乙10発明のアイテープは、乙8発明の薄型粘着シール
と同様に、既に上瞼の形に適合させた弓形状に形成されており、伸長により変形させて使用することは想定されていないから、このような乙10発明に対して、伸長により変形させて使用する乙11発明を適用することには、阻害要因が認められる。

したがって、乙10発明と乙11発明を組み合わせる動機付けは認められないし、むしろ、乙11発明を組み合わせることにつき阻害要因が認められるから、乙10発明に乙11発明を適用することにより、本件発明を容易に発明することができたとはいえない。
(5)

争点2-5(乙31文献を主引用例とする進歩性欠如)について
(被告らの主張)

一致点及び相違点
優先権基礎出願前に日本国内において頒布された刊行物である乙31文献には、一重瞼の上に二重瞼となるよう皺5をつくり皺5がそのままの状態で保持されるようテープを貼着して二重瞼を形成するために、三ケ月形に断裁された延伸方向に関し格別制約を受けない合成樹脂フイルム1に、粘着剤3を塗布することにより構成した、アイラインを引くことができる効果も併せ有する二重瞼用貼着テープ(以下乙31発明という。)が記載されている。
本件発明と乙31発明を対比すると、

合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した、二重瞼形成用テープ

という点で一致する。しかし、本件発明のテープ状部材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるのに対し、乙31発明の合成樹脂フイルム1は、延伸する素材ではあるものの、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるかは不明である点(以下相違点4という。)で相違する。

相違点4の容易想到性

(ア)
乙31発明と乙11発明は、皮膚に貼り付けられる装飾用の貼付部材
という共通の技術分野に属し、皮膚に装飾用のしわを形成するという共通の作用・機能を有する。また、乙11発明は、アイライナーとしても使用でき、上瞼の横ひだに沿って貼り付けることが可能な形状とすることが想定されているから、アイラインを引くことができる効果をも有する二重瞼用貼着テープである乙31発明に適用することが乙11文献に
おいて示唆されているといえる。
さらに、優先権基礎出願当時、テープの引張応力を利用して、美容のために瞼の皮膚に収縮力を加えることや、舞台用又は劇場用の化粧において、二重瞼形成用の化粧が行われていることは、いずれも技術常識である(乙12、32)。

これらの技術分野の共通性,作用・機能の共通性,乙11文献中の示唆及び技術常識に鑑みると、乙31発明と乙11発明を組み合わせる動
機付けが認められ、相違点4に係る本件発明の構成は、乙31発明と乙11発明を組み合わせることにより、容易に想到することができたというべきである。
以上によれば、本件発明は、乙31発明を主引用発明とし、これに乙11発明を組み合わせることにより、容易に発明することができたとい
えるから、本件特許は無効にされるべきものと認められ、原告は被告らに対しその権利を行使することができない(法104条の3第1項、123条1項2号、29条2項)。
(イ)

これに対して、原告は、乙31発明の二重瞼用貼着テープは伸長

により変形させて使用することは想定されておらず、伸長により変形さ
せて使用する乙11発明を適用することにつき阻害要因が認められると主張する。
しかし、乙31発明は、延伸する素材である合成樹脂フイルム1
により構成される上、瞼はその開閉により伸縮するのであるから、瞼の伸縮に伴う二重瞼用貼着テープの伸縮や変形は当然に想定されたも
のといえる。
したがって、原告の上記主張は理由がない。
(原告の主張)

相違点
本件発明のテープ状部材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるのに対し、乙31発明の合成樹脂フイルム1が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものではないという点(以下相違点4’という。)で、両者は相違する。イ
相違点4’の非容易想到性
被告らは、相違点4(相違点4’)について、乙31発明に乙11発明
を組み合わせる動機付けが認められると主張する。
しかし、前記(2)(原告の主張)のとおり、乙11文献には、舞台効果用のしわ形成用装飾用化粧品を二重瞼形成用テープとして使用することや、その基材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成されたものであることについての開示や示唆はなく、そ
のほかに、乙31文献及び乙11文献のいずれにおいても、乙31発明と乙11発明を組み合わせることを動機付ける開示や示唆は全くない。むしろ、乙31発明の二重瞼用貼着テープは、乙8発明の薄型粘着シールと同様に、延伸により変形させることなく、そのままの形状(三ケ月形)で皮膚に貼付され、貼付後もその形状が実質的に維持さ
れることで、二重瞼のひだを保持するものである。このような乙31発明に対して、伸長により変形させて使用する乙11発明を適用すると、上瞼の形に従って形成された三ケ月形が失われ、その本来の機能を喪失してしまうことになるから、阻害要因が認められる。
したがって、乙31発明と乙11発明を組み合わせる動機付けは認めら
れないし、むしろ乙11発明を組み合わせることにつき阻害要因が認められるから、乙31発明に乙11発明を適用することにより、本件発明を容易に発明することができたとはいえない。
(6)
争点2-6(乙11文献を主引用例とする進歩性欠如)について
(被告らの主張)

一致点及び相違点

(ア)

前記(2)(被告らの主張)イ(ア)のとおり、乙11文献には、延伸させた伸縮性基材の収縮力により皮膚にしわを作り出すために、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する熱可塑性ポリウレタンフィルムにより形成した基材に、感圧接着剤を施すことにより構成した、しわ形成用装飾用化粧品(乙11発明)が記載されている。
本件発明と乙11発明を対比すると、

延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した部材に、粘着剤を施すことにより構成した

という点で一致する。しかし、本件発明が細いテープ状部材であるのに対し、乙11発
明の熱可塑性ポリウレタンフィルムは、細いテープ状部材であ
るかは不明である点(以下相違点5という。)において、また、本件発明が二重瞼形成用テープであるのに対し、乙11発明はしわ形成用装飾用化粧品である点(以下相違点6という。)において、両者は相違する。

(イ)

これに対して、原告は、本件発明のテープ状部材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるのに対し、乙11発明の熱可塑性ポリウレタンフィルムにより形成した基材は延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものではないことが、両者の相違点であると主張する。
しかし、本件発明は、テープ状部材の伸長方向に沿って延びる食
い込みにより、テープ状部材の伸長方向と交差する方向に延びる縦じわを生じさせるものであり、乙11文献に記載された熱可塑性ポリウレタンフィルムにより形成した基材も、伸縮性を備え、これを人の
皮膚の凸曲面に貼り付けることにより、基材の伸長方向に沿って食い込みが生じ、これに伴って基材の伸長方向と交差する方向に縦じわが生じるから、本件発明のしわの形成原理と乙11発明のそれとは完全に同一であり、乙11発明の熱可塑性ポリウレタンフィルムにより形成した基材は延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものである。したがって、原告の上記主張は理由がない。


相違点5及び6の容易想到性
乙8文献、乙9文献、乙10文献及び乙31文献によれば、優先権基礎出願当時、上瞼に細いテープ状部材を貼り付けることにより、上瞼の皮膚にしわを作り出して、二重瞼を形成することは慣用技術であったといえる
(以下、この慣用技術を本件慣用技術という。)。
そして、二重瞼を形成するためにテープ状部材により形成されるしわは、瞼を閉じたときには消失するものではなく、瞼を閉じたときであっても残存するものであるから、乙11発明のしわ形成用装飾用化粧品がしわを消失させるものでないとしても、二重瞼を形成するためのテープとして
使用可能である。また、乙11発明のしわ形成用装飾用化粧品について、当業者は、容貌を向上させることを目的とするものであると認識することができるから、本件慣用技術と同様の目的を有する。したがって、乙11発明と本件慣用技術は、皮膚に貼り付けられる装飾用の貼付部材という点において共通の技術分野に属し、皮膚に装飾用のしわを形成するとい
う共通の作用・機能を有し、容貌を向上させるという共通の目的を有するものである。
そして、乙11文献には、伸縮性基材を使用した感圧接着剤物質を装飾用化粧品の形状にすることや、装飾用化粧品の一態様としてアイライナーの形状にすることが記載されており、伸縮性基材で構成される装飾用
化粧品を上瞼の横ひだに沿って貼り付けることができる形状とすることが示唆されている。したがって、乙11発明は、アイライナーとしても使用でき、上瞼の横ひだに沿って貼り付けることができる形状とすることが想定されているから、本件慣用技術のように上瞼の皮膚に貼り付けることが乙11文献において明確に示唆されているといえる。

さらに、優先権基礎出願当時、テープの引張応力を利用して、美容のために瞼の皮膚に収縮力を加えることや、舞台用又は劇場用の化粧において
二重瞼形成用の化粧が行われていることは、いずれも技術常識であった(乙12、32)。
これらの技術分野の共通性,作用・機能の共通性,乙11文献中の示唆及び技術常識に鑑みると、乙11発明と本件慣用技術を組み合わせる動機付けが認められ、相違点5及び6に係る本件発明の構成は、乙11発明と
本件慣用技術を組み合わせることにより、容易に想到することができたというべきである。
以上によれば、本件発明は、乙11発明を主引用発明とし、これに本件慣用技術を組み合わせることにより、容易に発明することができたといえるから、本件特許は無効にされるべきものと認められ、原告は被告らに対
しその権利を行使することができない(法104条の3第1項、123条1項2号、29条2項)。
(原告の主張)

相違点
本件発明が細いテープ状部材であるのに対し、乙11発明の熱可塑性ポリウレタンフィルムは、細いテープ状部材ではない点(以下相違点5’という。)において、また、本件発明が二重瞼形成用テープであるのに対し、乙11発明はしわ形成用装飾用化粧品である点(相違点6)において、両者は相違する。
さらに、本件発明のテープ状部材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるのに対し、乙11発明の熱可塑性ポリウレタンフィルムにより形成した基材はこのような構成を備えない点(以下相違点7という。)でも、両者は相違する。

相違点5’及び6の非容易想到性
被告らは、相違点5’及び6について、乙11発明と本件慣用技術を組
み合わせる動機付けが認められると主張する。
しかし、前記(2)(原告の主張)のとおり、乙11文献には、舞台効果用のしわ形成用装飾用化粧品を二重瞼形成用テープとして使用することや、その基材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成されたものであることについての開示や示唆はなく、そ
のほかに、乙11文献において、乙11発明と被告らが主張する本件慣用技術を組み合わせることを動機付ける開示や示唆は全くない。また、本来、瞼を開けたときに出現し、閉じたときに消失する二重瞼のしわと、乙11発明のように、様々な部位の皮膚に固定的に形成される舞台効果用の収縮によるしわとは、作用・機能において共通性を有しない。

したがって、乙11発明と本件慣用技術を組み合わせる動機付けは認められないから、乙11発明に本件慣用技術を適用することにより、本件発明を容易に発明することができたとはいえない。
3争点3(損害額)について
(原告の主張)
(1)

限界利益の額

被告各製品の売上額

(ア)

被告各製品の販売期間、販売月数、1か月当たりの販売個数、1箱当
たりの販売価格及び売上額は、別紙損害額一覧表の原告の主張の
販売期間、販売月数、販売個数/月、販売価格/箱及
び売上額欄記載のとおりであり、被告製品A1ないし10の売上額の合計は9億5131万4800円、被告製品B1ないし6の売上額の合計は4億8020万5200円である。
(イ)

これに対して、被告らは、被告各製品の売上額は別紙損害額一覧表の
被告らの主張の売上額欄記載のとおりであると主張する。
しかし、被告らは、被告らの主張する販売期間以降も被告各製品の販
売を継続していた。また、被告らの主張する売上額は、直送依頼書等(乙68ないし73、82ないし84、85の1)に基づくところ、これらは、作成者の特定に資する情報がいずれも黒塗りにされているため、発注元や届け先に被告らの取引先の名前が記載されているか、同取引先の押印や担当者の署名が存在するかが不明であり、同取引先がその意思
に基づき作成したものであるかが明らかでないから、およそ信用性が認められない。したがって、被告らの上記主張は理由がない。
仮に、前記(ア)の主張が認められないとしても、少なくとも、上記発注書等に記載された期間、同発注書等に記載された数量の被告各製品が販売されたといえるから、1月当たりの販売個数は、被告製品A1につき
40箱、被告製品A2につき50箱、被告製品A3につき3319箱、被告製品A4につき934箱、被告製品A5につき1135箱、被告製品A6につき450箱、被告製品A7につき5767箱、被告製品A8につき1511箱、被告製品A9につき4095箱、被告製品A10につき883箱、被告製品B1につき2033箱、被告製品B2につき1
884箱、被告製品B3につき982箱、被告製品B4につき715箱、被告製品B5につき1221箱、被告製品B6につき238箱と認めるべきである。

被告各製品の経費

(ア)

被告各製品の限界利益は1本当たり7円を下ることはないから、1箱
当たりの経費は、別紙損害額一覧表の原告の主張の経費/箱欄
記載のとおりである。
(イ)

これに対して、被告らは、被告製品A1及び2の経費がそれぞれ約2
82円及び約288円であると主張する。
しかし、被告らは、被告らの主張する経費を裏付ける証拠を何ら提出していないから、被告らの上記主張は理由がない。

仮に、前記(ア)の主張が認められないとしても、被告各製品の1箱当たりの経費は、いずれも、被告らが主張する被告製品A1に係る経費のうちイトウ社利益分(イトウ社の口座を使用する対価(帳合料)とされるもの)を除いた196円と認めるべきである。

真実擬制
原告は、被告各製品の売上額及び製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を立証するために、書類提出命令(法105条1項)を申し立てた。東京地方裁判所は、被告らに対し、決定確定の日から2週間以内に、被告各製品に係る販売先、売上高(販売数量及び販売価格)、
売上原価、販売期間、製造数量及び在庫数量のいずれかが記載された得意先別元帳、売上帳等の文書又は電磁的記録(以下本件対象文書という。)の提出を命じる決定をし、同決定は令和2年7月2日に確定した。しかし、被告らは、同日から2週間以内に、本件対象文書を上記裁判所に提出せず、現在に至るまで提出していない。

本件対象文書は、いずれも被告らの日常業務において作成される帳簿書類等であるから、本件対象文書の記載に関して原告が具体的に主張することは著しく困難である。また、被告らが、本件訴訟において、販売先、売上高(販売数量及び販売価格)、売上原価等に係る資料を何ら提出していないことからすると、本件対象文書により証明すべき事実、すなわち被告
各製品の限界利益を他の証拠により立証することも著しく困難である。この点について、被告らは、被告各製品に係る帳簿書類等について、取引先や作成者名を黒塗りしたものを書証として提出するが、このような文書では、そもそも被告らの業務に関する文書であるかすら不明であるし、文書の信用性を判断するためには、黒塗りされていない、その全体が欠か
せないから、原告が本件対象文書により証明すべき事実を証明することが著しく困難であることに変わりはない。

したがって、民訴法224条3項に基づき、本件対象文書により証明しようとする、原告が主張する被告各製品の売上額、経費及び1本当たりの限界利益7円はいずれも真実と認められるべきである。

小括
したがって、別紙損害額一覧表の原告の主張の利益欄記載のと

おり、被告フィートジャパンは、本件特許権を侵害する被告製品A1ないし10を販売したことにより、合計4億5872万5120円の利益を受けたと認められるから、原告の受けた損害の額は、同金額と推定される(法102条2項)。
また、別紙損害額一覧表の原告の主張の利益欄記載のとおり、

被告センティリオンは、本件特許権を侵害する被告製品B1ないし6を販売したことにより、合計2億1596万3580円の利益を受けたと認められるから、原告の受けた損害の額は、同金額と推定される(法102条2項)。
(2)

推定覆滅事由

競合品の存在

(ア)

被告らは、原告製品及び被告各製品の競合品として、株式会社ビー・
エヌ(以下ビー・エヌ社という。)の二重瞼形成用テープマイクロファイバー(以下マイクロファイバーという。)が存在し、平成30年11月の販売開始から270万個が販売されたと主張する。しかし、マイクロファイバーは、原告が被告らにより本件特許権を侵害されたことによる損害賠償を請求する期間のうち、平成28年4月から平成30年10月までの間は、本件発明の技術的特徴を利用しない製品として販売されており、同年11月から令和元年12月までの間は、
原告の販路のうち6ないし7%の割合にすぎない量販店ドン・キホーテ(以下ドン・キホーテという。)において販売されていたにと
どまる。
また、マイクロファイバーは、平成24年から平成26年12月までに、本件特許権を侵害するタイプのもの160万個が出荷され、平成27年1月以降に、本件発明の技術的特徴を利用しないタイプのもの110万個が出荷されたにすぎず、被告らが主張する販売数量合計570万
個は誤りである。
したがって、被告らの上記主張は理由がない。
(イ)

被告らは、原告製品及び被告各製品の競合品として、株式会社ディ
ー・アップ(以下ディー・アップ社という。)の二重瞼形成用テープオリシキアイリッドスキンフィルム(以下オリシキとい

う。)が販売されていたと主張する。
しかし、オリシキは、本件発明の技術的特徴を利用する二重瞼を形成する収縮食い込み型の二重瞼形成用テープではなく、瞼に液体を塗って乾かし、透明な人口皮膜を形成することで二重瞼を形成する二重瞼形成用アイテム(いわゆるシャッター型)であるから、原告製品及び被告各
製品の競合品ではない。二重瞼形成用アイテムの市場において、接着型、シャッター型、収縮食い込み型では、それぞれ特徴や使いやすさが異なり、各消費者が好みに応じて使い分けているものであり、オリシキは、原告製品及び被告各製品とは別の市場の商品である。
したがって、被告らの上記主張は理由がない。


被告各製品の性能
被告らは、被告各製品は本件発明の技術的特徴を利用しておらず、そのような技術的特徴を訴えて販売されたものではなく、被告各製品の売上げは被告各製品独自の性能や被告らの宣伝方法によるものであると主張する。
しかし、被告各製品が本件発明の技術的特徴を利用していることは、前記1における(原告の主張)のとおりである。また、被告各製品の外装に
は、二重瞼形成用テープとしてグッとまぶたにくい込む、溝の深いまぶたが作れる!などという記載があるところ、消費者が被告各製品により二重瞼を形成することができる(形成された二重瞼を維持することができる)のは本件発明の技術的特徴を利用しているためであるから、被告各製品は、本件発明の技術的特徴を利用して訴求するものである。
また、二重瞼形成用テープにおけるもっとも重要な訴求点は、二重瞼が自然に形成されるか否かであり、被告らが主張する被告各製品の独自の性能は付随的な要素にすぎないから、被告各製品の売上げに貢献したものではないことは明らかである。
したがって、被告らの上記主張は理由がない。


小売店における営業方法
被告らは、各小売店において、被告各製品の広告宣伝が適切に行われているかを逐次確認し、被告各製品の売上げを向上させるため、独自の改善努力を行っていたと主張する。
しかし、被告らが主張する改善努力は、一般的な売上げの改善努力の範
疇に収まるものであり、被告各製品の売上げの増進に特に貢献したということはないから、被告らの上記主張は理由がない。

本件発明の技術的価値
被告らは、本件発明は新たな技術的発想を開示するものではないから、その技術的価値は小さいと主張する。

しかし、被告各製品は、本件発明の技術的特徴を用いて二重瞼を形成しているのであって、被告らの上記主張が誤りであることは明らかである。(3)

小括
以上によれば、被告製品A1ないし10が販売されたことにより原告が受
けた損害は、主位的には4億5872万5120円である。そして、本件訴訟を追行するのに要した弁護士費用及び弁理士費用は、4587万2512
円である。
また、被告製品B1ないし6が販売されたことにより原告が受けた損害は、主位的には2億1596万3580円である。そして、本件訴訟を追行するのに要した弁護士費用及び弁理士費用は、2159万6358円である。(被告らの主張)
(1)

限界利益の額

被告各製品の売上額
被告各製品の販売期間、販売個数(ただし、無償提供した914個を含む。)、1箱当たりの販売価格(卸売価格)及び売上額は、別紙損害額一覧表の被告らの主張の販売期間、販売個数、販売価格/箱

及び売上額欄記載のとおりであり、被告製品A1ないし10の売上額の合計は1億7674万6028円、被告製品B1ないし6の売上額の合計は7153万7472円である(乙68ないし73、82ないし84、85の1)。

被告各製品の経費
被告製品A1及び2の1箱当たりの経費は、以下のとおりである。
配送費
外箱
中箱
セットアップ
パッケージ
容器・プッシャー
テープ・加工費
イトウ社利益分
合計

被告製品A1
12円
0.98円
6.8円
30円
14円
19.7円
112円
86円
約282円

被告製品A2
12円
0.98円
6.8円
30円
14円
19.7円
155円
49円
約288円

上記イトウ社利益分とは、被告各製品を問屋に販売する際、イトウ
社に対してその口座を使用する対価(帳合料)として支払う必要があったものである。
そして、被告各製品の1箱当たりの経費は、別紙損害額一覧表の被告らの主張の経費/箱欄記載のとおりである。ウ
真実擬制
原告は、書類提出命令が発令されたにもかかわらず、被告らが対象文書を提出しなかったことから、民訴法224条3項に基づき、原告の主張が真実であると擬制されるべきであると主張する。
しかし、同項の規定は、

当事者が文書提出命令に従わないときは、裁判所は、当該文書の記載に関する相手方の主張を真実と認めることができる。

というものであり、裁判所に対して真実擬制をすることを義務付けるものではない。本件においては、被告らは、前記ア及びイのとおり、売上げや経費に関する具体的な主張立証をしているので、真実擬制をする必要はない。
したがって、原告の上記主張は理由がない。


小括
したがって、別紙損害額一覧表の被告らの主張の利益欄記載の
とおり、被告製品A1ないし10の利益は9059万2035円、被告製品B1ないし6の利益は3940万8288円であり、合計すると1億3000万0323円である。

(2)

推定覆滅事由

競合品の存在

(ア)

ビー・エヌ社は、平成30年11月、原告製品及び被告各製品と競合
する二重瞼形成用テープであるマイクロファイバーを発売した。
原告製品の年間販売個数が約6万個であるのに対し、マイクロファイバーは、旧製品が平成26年12月までに300万個以上販売され、平
成30年11月から現在に至るまで、270万個販売されるほどの人気商品である。実際、ドン・キホーテにおける販売個数について、マイクロファイバーの販売が開始された後、平成31年4月に被告製品A3ないし10及び被告製品B1ないし6の販売が終了したにもかかわらず、原告製品の同年の販売個数が減少している。

したがって、原告製品の売上げが伸びず、損害が発生したのは、被告各製品の販売によるものではなく、競合品であるマイクロファイバーの販売開始によるものである。
(イ)

ディー・アップ社は、平成30年3月22日、原告製品及び被告各製
品と競合する二重瞼形成用テープのオリシキを発売した。

前記(ア)のとおり、原告製品の平成31年の販売個数は減少しているところ、これはオリシキの発売時期と重なる。
二重瞼を形成する方法について、オリシキが、原告製品とは異なり、シャッター型に分類されるとしても、二重瞼を形成することに変わりはなく、オリシキは原告製品の競合品というべきである。

したがって、原告製品の売上げが伸びず、損害が発生したのは、被告各製品の販売によるものではなく、競合品であるオリシキの販売開始によるものである。

被告各製品の性能
被告試験結果によれば、被告各製品の延伸後の収縮距離はわずか5mm程度であり、瞼上で収縮力を発揮していないから、被告各製品は、本件発明の技術的特徴を利用していないことは明らかである。
また、被告各製品の外装には、本件発明の技術的特徴である延伸後の弾性的な伸縮性について言及する記載は一切なく、被告らはこのような特徴
を利用して被告各製品を販売したものではない。被告各製品の売上げは、被告各製品独自の性能や被告らの宣伝方法によるものである。


小売店における営業方法
被告らは、第三者に委託して、各小売店における被告各製品の陳列方法、商品の導入状況、販促物の設置の有無等、被告各製品の広告宣伝が適切に行われているかを逐次確認し、改善すべき点が見つかれば、当該小売店に対して改善を申し入れていた。小売店は全国各地に存在し、卸元一社が全
ての小売店を見て回り、改善のための交渉をすることは不可能であり、被告らは、自らの人脈を活用して上記業務の委託先を探し出し、重要な小売店については、売上げを向上させるためのきっかけを常に把握できるよう努力していた。
被告らは、一般には行われていない独自の改善努力をし、これが被告各
製品の売上げに寄与していた。

本件発明の技術的価値
しわ形成のために延伸後の弾性的な伸縮性を利用するという発想は、乙11発明にあるように、本件特許の出願以前から知られていたものであり、本件発明は新たな技術的発想を開示するものではないから、その技術的価
値は小さい。

小括
以上を踏まえると、被告各製品を販売したことによる利益に対し、少なくとも80%の推定の覆滅を認めるべきである。

第4当裁判所の判断
1本件明細書の記載事項等
(1)

本件明細書(甲10)の発明の詳細な説明には、以下のとおりの記載があ
る(下記記載中に引用する図は別紙本件明細書図面参照)。

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、簡単かつ容易にきれいな二重瞼を形成できるようにした二重瞼形成用テープまたは糸、及びその製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】二重瞼を形成するために、従来から、水性ラテックスエマルジョンやポリマーエマルジョンなどを用いて瞼の皮膚を接着し、二重のひだを形成する方法、あるいは、瞼に片面粘着テープを貼り付けた
り硬化型ポリマーを塗着することにより皮膜を形成し、それによって二重の折り込みひだを形成する方法などが知られている。しかしながら、これらの方法は、いずれも非常に細かい作業を行う必要があって、ある程度慣れないときれいな仕上がりを得ることができず、また、前者の接着による場合には接着により皮膚のつれが生じたり、後者の皮膜形成で
は皮膜の跡が残るなどの問題もあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような問題を解決し、皮膚につれを生じさせたり皮膜の跡を残したりすることなく、簡単にきれいな二重瞼を形成できるようにした二重瞼形成用テープまたは糸を提
供することにある。本発明の他の課題は、瞼に直接二重にするためのひだを形成し、自然な二重を形成できるようにした二重瞼形成用テープまたは糸を提供することにある。本発明の他の課題は、二重瞼形成のための操作が安全かつ容易な二重瞼形成用テープまたは糸を提供することにある。本発明の他の課題は、上記二重瞼形成用テープをきわめて容易に
製造する方法を提供することにある。

【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための本発明に係る二重瞼形成用テープは、基本的には、延伸可能でその延伸後にも弾性的
な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した、ことを特徴とするものである。上記粘
着剤は上記テープ状部材の両面または片面に塗着することができる。また、上記二重瞼形成用テープは、両端に指先で把持するための表面に粘着性のない把持部を設けることができる。
【0005】上記二重瞼形成用テープは、上記テープ状部材の両面または片面に引張りによって破断する破断部を有する剥離シートを貼付することができる。上記二重瞼形成用テープは、上記破断部が上記シートの長手方向略中央に設けられた切欠溝によって形成されるのが適切であり、上記シートがシリコンペーパーまたはシリコン加工を施したフィルムであるのが好ましい。

【0006】一方、本発明に係る二重瞼形成用テープの製造方法は、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した任意長のシート状部材の両面または片面に粘着剤を塗着すると共に、その幅方向両端に粘着性のない把持部を形成し、これを幅方向に細片状に切断する、ことを特徴とするものである。本発明に係る二重瞼形成用
テープの他の製造方法は、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した任意長のシート状部材の両面または片面に粘着剤を塗着し、該粘着剤が塗着されたシート状部材の両面または片面に、長手方向略中央に切欠溝を形成した剥離シートを貼付し、これを幅方向に細片状に切断する、ことを特徴とするものである。

【0007】また、本発明に係る二重瞼形成用糸は、基本的には、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した糸状部材に粘着剤を塗着することにより構成した、ことを特徴とするものである。上記二重瞼形成用糸は、両端に指先で把持するための表面に粘着性のない把持部を設けることができ、また、上記糸状部材を引張り
によって破断する破断部を有するカバーで覆うことができる。
【0008】上記構成を有する二重瞼形成用テープによって二重瞼を形
成するには、テープ状部材の両端を把持して弾性的に延びた状態になるように引っ張り、その状態でテープ状部材の粘着剤を塗着した部分を瞼におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤によりテープ状部材をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部を離す。これにより、引っ張った状態にあるテープ状部材が弾性的に縮むが、本来、瞼はその両
側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的に縮んだテープ状部材がそれを貼り付けた瞼にくい込む状態になって、二重瞼のひだが形成される。両端の不要な部分はその後に切除すればよい。【0009】このようにして、上記テープ状部材は瞼に直接二重にするためのひだを形成するので、前記従来の方法のように、皮膚につれを生
じさせたり皮膜の跡を残したりすることはなく、自然な二重瞼を形成することができ、しかも、テープ状部材の両端を持って引っ張った状態でそれを瞼のひだを形成したい位置に押し付ければよいので、簡単にきれいな二重瞼を形成することができる。また、上記従来の方法では、瞼の皮膚を接着したり、瞼に片面粘着テープ等を貼り付けたりするとき、自
分の操作でひだを作るためにプッシャー等を用いる必要があるが、本発明の二重瞼形成用テープは、それ自身の収縮によって二重瞼を形成するので、上記プッシャー等を用いる必要がなく、二重瞼形成を安全かつ容易に行うことができる。

【0010】
【発明の実施の形態】図1は本発明の二重瞼形成用テープの一実施例を示している。この二重瞼形成用テープは、基本的には、弾性的に伸縮する細いテープ状部材1の表裏に粘着剤2を塗着することにより構成することができるものである。上記テープ状部材1としては、両端を持って
引っ張ったときに伸長し、しかも、弾性的に復帰しようとする収縮力が作用するものであればよいが、特に、延伸可能でその延伸後にも弾性的
な伸縮性を有するポリエチレン等の合成樹脂により形成するのが望ましい。このテープ状部材1は、一般的には幅が1~3mm程度の細い帯状に形成されるが、幅が必ずしもその範囲内である必要はなく、また明確な帯状を形成していなくても差し支えない。更に、上記粘着剤2としては、皮膚用に用いられる各種粘着剤を利用することができる。
【0011】上記テープ状部材1は、その両端を指先で把持して瞼に貼り付けるため、両端には表面に粘着性のない把持部3を設けるのが望ましい。この把持部3は、例えば、図示したように、テープ状部材1に塗着した表裏の粘着剤2の上に覆いシートを粘着させることにより形成す
るのが適切であるが、テープ状部材1の端部に覆いシートを巻き付け、あるいはテープ状部材1の端部に粘着性を抑制する塗料その他の塗着剤、薬剤を塗り、更には、粘着剤2自体を塗着しないことにより該把持部3を構成することもできる。
【0012】また、該把持部3は、粘着剤3の粘着性を完全に抑制する
ものである必要はなく、例えば、テープ状部材1の片面のみに前記覆いシートを粘着させておくとか、テープ状部材1の片方端のみに上述した適宜把持部3を設けることもできる。この把持部3は、一般的に、テープ部材1の端部から5mm以上設けるのが把持を容易にするうえで望ましい。なお、図中4は、粘着剤2を塗着した部分に貼着して二重瞼形成
用テープの取り扱いを容易にするための離型紙を示している。
【0013】上記二重瞼形成用テープは、図2に示すように、弾性的に伸縮するX方向に任意長のシート状部材11の表裏全面に粘着剤12を塗着すると共に、その幅方向(W方向)両端に粘着性のない把持部13を形成し、これを多数の切断線Lに沿って細片状に切断することにより、
極めて容易に製造することができる。この場合、シート状部材11としては、図1の前記テープ状部材1と同様な素材を用いることができる。
また、把持部13は、シート状部材11に塗着した表裏の粘着剤12の上に覆いシートを粘着させることにより形成したり、粘着性を抑制する塗料その他の塗着剤、薬剤を塗るなど、前記図1の例と同様にして形成することができる。さらに、上記把持部13は、シート状部材に粘着剤を塗着する際に把持部となる両端に粘着剤を塗着しないことにより形成することもできる。また、粘着剤12を塗着した部分に予め二重瞼形成用テープの取り扱いを容易にするための離型紙などを貼着しておき、それをシート状部材11と共に切断線Lに沿って切断することもできる。【0014】なお、図1及び図2に示す実施例では、弾性的に伸縮する
細いテープ状部材1の表裏両面に粘着剤2を塗着しているが、必ずしもこの実施例に限定される必要はなく、例えば、上記粘着剤2は弾性的に伸縮する細いテープ状部材1の表面または裏面のどちらか一方の面だけに塗着してもよく、その場合、上記離型紙4や覆いシートは粘着剤12を塗着した面だけに設ければよい。また、図1及び図2に示す実施例で
は、粘着剤2はテープ状部材1の表裏両面にその面を全面的に覆うように粘着剤2を塗着しているが、必ずしもこの実施例に限定される必要はなく、テープ状部材を引っ張った状態で瞼に貼り付ける際に支障がなければ、粘着剤2はテープ状部材1の粘着剤2が塗着される側の面を部分的に覆うように塗着してもよい。

【0015】すなわち、テープ状部材を引っ張った状態で瞼に貼り付ける際に、引っ張った状態のテープ状部材はその両端が粘着剤により瞼に貼り付けられていれば、テープ状部材の中央部分に粘着剤がなくてもテープ状部材は張力により瞼に食い込む状態で貼り付けられるから、テープ状部材の中央部分に粘着剤が塗着されてなくても格別支障はない。ま
た、テープ状部材1の長手方向に粘着剤を塗着した部分と塗着していない部分が短い間隔で交互に設けられていても、テープ状部材を引っ張っ
た状態で瞼に貼り付ける際に格別支障はない。したがって、粘着剤2はテープ状部材1の粘着剤2が塗着される側の面を全面的に覆うように塗着してもよいが、必ずしもこの実施例に限定される必要はなく、テープ状部材を引っ張った状態で瞼に貼り付ける際に支障がないように配慮すれば、粘着剤2はテープ状部材1の粘着剤2が塗着される側の面を部分的に覆うように塗着してもよい。
【0016】次に、上記構成を有する二重瞼形成用テープによって二重瞼を形成する方法について説明する。図3は、テープ状部材1を、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂によって構成し、
その両端の把持部3を指先で持って引っ張ることにより伸長させた状態、即ち、そのテープ状部材1を瞼に貼り付ける準備状態を示している。この状態では、テープ状部材1が弾性的に復帰しようとする収縮力を持っている。
【0017】次に、このテープ状部材1は、両端を把持して引っ張った
ままの状態で、図4に示すように、粘着剤2を塗着した部分を、瞼7におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤2によりテープ状部材1をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部3を離す。これにより、引っ張った状態にあるテープ状部材1が弾性的に縮むが、本来、瞼はその両側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的
に縮んだテープ状部材1がそれを貼り付けた瞼7にくい込む状態になって、二重瞼のひだが形成される。両端の把持部3はひだの形成後に切除する。
【0018】このようにして、上記テープ状部材1は瞼7に直接二重にするためのひだを形成するので、前記従来の方法のように、皮膚につれ
を生じさせたり皮膜の跡を残したりすることはなく、自然な二重瞼を形成することができ、しかも、テープ状部材1の両端を持って引っ張った
状態でそれを瞼7のひだを形成したい位置に押し付ければよいので、簡単にきれいな二重瞼を形成することができる。また、上記従来の方法では、瞼の皮膚を接着したり、瞼に片面粘着テープ等を貼り付けたりするとき、自分の手でひだを作るためにプッシャー等を用いる必要があるが、上記二重瞼形成用テープでは、それ自身の収縮によって二重瞼を形成するので、上記プッシャー等を用いる必要がなく、二重瞼形成を安全かつ容易に行うことができる。
【0019】図5~図6は、本発明に係る二重瞼形成用テープの他の実施例を示している。該実施例における二重瞼形成用テープ20は、図5
~図6に示すように、弾性的に伸縮する細いテープ状部材21の粘着剤(図示せず)が塗着されている表裏両面に、引張りによって破断する破断部を中央に有する細いテープ状のシート22、22がそれぞれ貼付されている。上記破断部は、図6の部分拡大図に示すように、シート22の貼付面側に幅方向に設けられた切欠溝23によって形成するのが望ま
しい。この場合、シート状部材21としては、図1に示す実施例のテープ状部材1と同様な素材を用いることができ、シート22としては、シリコン加工を施したフィルム、あるいはシリコン樹脂をペーパー状にしたシリコンペーパーを用いることにより、破断及び粘着剤からの剥離が容易になる。

【0024】図10及び図11は、図5及び図7に示す二重瞼形成用テープを両側に引っ張った状態を示す側面図であるが、テープ状部材21は引っ張りにより長手方向中央の破断部付近から延び始め、左右両側に引っ張られるにつれて破断部から離れた側のテープ状部材21も順次延びていく。テープ状部材21が延びるとその厚さは減少していくが、図
10及び図11に示されているテープ状部材21の厚さの状況は、テープ状部材21の中央部分が延びているにもかかわらずその両端側のかな
りの部分がまだ延び始めていないことを示しており、このことからテープ状部材21は図10及び図11に示す状態よりもかなり長く延びるものであることがわかる。なお、図5~図7に示す二重瞼形成用テープ20を用いて二重瞼を形成する方法は、図1に示す実施例における二重瞼形成用テープによって二重瞼を形成する方法と同様である。

【0025】図5~図7に示す実施例の二重瞼形成用テープ20は、テープ状部材21の粘着剤が塗着された両面または片面に引張りによって破断する破断部を有するシート22を貼付したから、図1に示す実施例の二重瞼形成用テープのような把持部や離型紙を設けなくてもテープ状部材21の粘着剤が指や他の物品に付着するということがない。そして、
該二重瞼形成用テープ20を使用するときには該二重瞼形成用テープ20を左右両側に引っ張るだけでテープ状部材21が延びた状態で露出するから、図1に示す実施例の二重瞼形成用テープよりもさらに使いやすい。

【0032】
【発明の効果】以上に詳述した本発明の二重瞼形成用テープまたは糸によれば、皮膚につれを生じさせたり皮膜の跡を残したりすることなく、簡単で容易、安全にきれいな二重瞼を形成することができる。

(2)
前記(1)の記載事項によれば、本件明細書には、本件発明に関し、以下のと
おりの開示があると認められる。

二重瞼を形成するために、従来から、瞼の皮膚を接着し、二重のひだを
形成する方法や、瞼に皮膜を形成し、それによって二重の折り込みひだを形成する方法等が知られているが、これらの方法は、いずれも非常に細かい作業を行う必要があって、ある程度慣れないときれいな仕上がりを得ることができず、接着により皮膚のつれが生じたり、皮膜の跡が残るなどの問題もあった(【0002】)。


本発明は、前記アの問題を解決するため、皮膚につれを生じさせた
り皮膜の跡を残したりすることなく、簡単にきれいな二重瞼を形成することを目的として、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着した二重瞼形成用テープの構成を採用した(【0003】及び【0004】)。

上記構成を有する二重瞼形成用テープは、テープ状部材の両端を把持して弾性的に延びた状態になるように引っ張り、その状態でテープ状部材の粘着剤を塗着した部分を瞼におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤によりテープ状部材をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部を離すことにより、引っ張った状態にあるテープ状部材が弾性的に縮むが、
本来、瞼はその両側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的に縮んだテープ状部材がそれを貼り付けた瞼にくい込む状態になって、二重瞼のひだが形成される(【0008】)。
上記テープ状部材は、このようにして瞼に直接二重にするためのひだを形成するので、皮膚につれを生じさせたり皮膜の跡を残したりすることは
なく、自然な二重瞼を形成することができ、しかも、テープ状部材の両端を持って引っ張った状態でそれを瞼のひだを形成したい位置に押し付ければよいので、簡単にきれいな二重瞼を形成することができ、また、二重瞼形成用テープ自身の収縮によって二重瞼を形成するので、ひだを作るためのプッシャー等を用いる必要がなく、二重瞼形成を安全かつ容易に行うこ
とができるという効果を奏する(【0009】及び【0032】)。2被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか
(1)

争点1-1(構成要件Aの充足性)について

被告製品A1ないし10及びB1ないし5のテープ状部材が弾性的な伸縮性を備えるか(ア)

弾性的な伸縮性の解釈

a
本件発明に係る特許請求の範囲には、

延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した、ことを特徴とする二重瞼形成用テープ。

との記載がある。この記載からは、本件発明の合成樹脂により形成した細いテープ状部材が弾性的な伸縮性を有しており、その弾性的な伸縮性がテープ状部材の延伸後にも
存在するという構成を備えるものであることは理解できる。しかし、上記の弾性的な伸縮性がどのように作用するものであるかについ
ては、明らかではない。

そして、本件明細書には、上記構成を有する二重瞼形成用テープによって二重瞼を形成するには、テープ状部材の両端を把持して弾性的に延びた状態になるように引っ張り、その状態でテープ状部材の粘着剤を塗着した部分を瞼におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤によりテープ状部材をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部を離す。これにより、引っ張った状態にあるテープ状部材が弾性的に縮むが、本来、瞼はその両側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的に縮んだテープ状部材がそれを貼り付けた瞼にくい込む状態になって、二重瞼のひだが形成される。(【0008】)、このテープ状部材1は、両端を把持して引っ張ったままの状態で、図4に示すように、粘着剤2を塗着した部分を、瞼7におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤2によりテープ状部材1をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部3を離す。これにより、引っ張った状態にあるテープ状部材1が弾性的に縮むが、本来、瞼はその両側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的に縮んだテープ状部材1がそれを貼り付けた瞼7にくい込む状態になって、二重瞼のひだが形成される。(【0017】)との記
載があり、【図4】においては、テープ状部材1が、単に瞼7
上に貼り付けられるのではなく、瞼7に力を加えて押し当てられ、瞼7が凹んでいることが示されている。これらの記載等によれば、本件発明の二重瞼形成用テープは、瞼がその両側に比して中央部
が眼球に沿って前方に突出しているため、テープ状部材を瞼に押

し当てることにより、テープ状部材が瞼に食い込む状態となって、二重瞼のひだが形成されるというものであると理解できる。
そうすると、本件発明における二重瞼のひだの形成は、直接的にはテープ状部材が瞼に押し付けられることによって実現されるもの
であるから、弾性的な伸縮性を有するテープ状部材とは、瞼

に押し当てられたテープ状部材が収縮力によって瞼に食い込み、
この食い込みの結果として二重瞼が形成されるようなものに限られず、テープ状部材を押し当てることによって形成された二重瞼が収縮
力により維持されるようなものも含むと解するのが相当である。
b
これに対して、被告らは、弾性的な伸縮性とは、弾性的な収縮

力を利用して瞼にテープ状部材を押し当て、二重瞼を形成するための伸縮性に限定して解釈されるべきであると主張する。
しかし、本件発明に係る特許請求の範囲及び本件明細書には、被告らが主張するように限定して解釈すべきであるとの記載はなく、そのような示唆もうかがわれない。

したがって、被告らの上記主張は採用することができない。
(イ)

被告製品A1ないし10及びB1ないし5のテープ状部材が弾性的な伸縮性を備えるかa
証拠(甲17、18、46ないし59)によれば、原告において、
被告各製品の両端を試験機の上下のつかみ具でそれぞれつかみ、300mm/分の試験速度で、開始からのつかみ具の変位が80mmにな
るまで引っ張り、80mmに到達後直ちに、300mm/分の試験速度で、初期状態に戻す操作を行い、試験機が引っ張る力(試験力)と上記変位の推移を測定したところ、上記変位が80mmに到達したときの試験力及び収縮距離(上記変位が80mmに到達した後、初期状態に戻す過程において、試験力がゼロとなったときの上記変位を測定し、80mmから差し引いたもの)が、原告試験結果(前記第3の1(1)(原告の主張)ア(イ)a)のとおりであったことが認められる。上記試験方法は、試験機による試験力が被告各製品による収縮力
(被告各製品が試験機のつかみ具を引っ張る力)と等しいことを前提
に、試験力がゼロになるまでは被告各製品による収縮力が働いており、試験力がゼロになったときに初めて収縮力が失われたことを示すものであるといえる。そして、原告試験結果からは、被告各製品を80mmに延伸した時点において、試験機による1.05ないし3.40Nの試験力及び被告各製品によるこれと等しい収縮力が働いており、その
後直ちに初期状態に戻す操作を行い、試験力がゼロになった時点において、被告各製品は80mmまで延伸した状態から6.4ないし12.8mm収縮していることが読み取れる。このような結果によると、被告各製品は、これらを延伸させた後も、なお収縮力を有するものであると認めることができる。

そして、証拠(甲11、12、28、39、乙34)によれば、被告製品A1ないし10及びB1ないし5は、粘着剤が設けられた細いテープ状部材であり、これを瞼に押し当てることにより二重瞼を形成するものであると認められるところ、被告製品A1ないし10及びB1ないし5は延伸後も上記の収縮力を有しており、この収縮力により、
形成された二重瞼が維持されるということができる。
したがって、被告製品A1ないし10及びB1ないし5は弾性的な伸縮性を備えると認めるのが相当である。b(a)被告らは、被告各製品の引張試験を実施するに当たっては、被告各製品を延伸させた後、それを解放する(両端から把持した手を離す)工程が不可欠であるにもかかわらず、原告試験結果においては、300mm/分の試験速度で、試験開始からの変位が80mmになるまで引っ張った後、同一の試験速度で初期状態に戻すという極めて不自然な試験方法が採用されており、上記解放の工程がとられていないから、延伸後に被告各製品がどの程度伸縮するかが明らかでないばかりか、初期状態に戻す際、テープ部材にたわみが生じてし
まい、収縮距離を増大させることとなって、不当であると主張する。しかし、前記aのとおり、原告試験結果におけるつかみ具の変位
が80mmに到達したときの試験力及び収縮距離は、被告各製品を延伸させた後、これが収縮する方向に力が働いていることを裏付けるものと合理的に理解することができる。また、試験力がゼロにな
るまでは、被告各製品は試験機のつかみ具を引っ張っていることを意味するから、初期状態に戻す過程で、被告各製品にたわみが生じることはなく、収縮距離を増大させることにはならないというべきである。
したがって、被告らの上記主張は採用することができない。

(b)

被告らは、被告各製品を300mm/分の試験速度で初期状態か

ら80mmまで延伸させた後、試験片の端部を離し、1分経過した後の試験片の長さを測定し、被告試験結果(前記第3の1(1)(被告らの主張)ア(イ)a(a))を得られたところ、これを人間の目の横幅で換算すると、被告各製品は1mm前後しか収縮しないことになると主張する。
しかし、被告らが1分経過した後の試験片の長さをどのように測

定したかは、証拠上明らかでない。しかも、証拠(乙34)によれば、被告各製品は、これを延伸させた後、その一端を持って下向きに垂らすと、完全な直線状態にならないことが認められ、試験片の長さを測るためには、その形を整える必要があるところ、このときに試験片を延伸させる方向に力が加わる可能性が高く、被告試験結果はこの点において正確性に疑いがあるといわざるを得ない。
したがって、被告試験結果及びこれを前提とする被告らの主張は
採用することができない。
(c)

被告らは、①ポリエチレンフィルムを延伸させると、ほとんど変
形していない部分(A相)、中間相(B相)及び延伸しきった部分(C相)が生じるところ、被告試験結果によれば、延伸させた被告各製品には、B相が5mm、C相が75mm存在し、人間の目の横幅は約25mmであるから、二重瞼を形成する部分には延伸しきったC相が存在すること、②被告製品A1及び3ないし10並びにB
1ないし4が粘着剤を塗工したものであるとすると、これらは高密度ポリエチレンであると考えられるが、高密度ポリエチレンは伸縮性が低いこと、③被告製品A2及びB5は、2本のテープをねじることにより強固なテープ状部材とし、強く瞼に押し付けることにより二重瞼を形成しやすくしたものであることからすると、被告各製
品においては、収縮力が二重瞼の形成維持に寄与していないと主張する。
しかし、上記①について、仮に被告らが主張するようなA相、B相及びC相に分類することができ、A相が弾性状態、C相が塑性状態、B相がその中間の状態にあるとしても、B相がどのような弾性
性能を有するかは、被告らが参照した文献(乙56)を含む本件全証拠によっても、明らかではない。また、被告らは、テープ状部材
を80mmに延伸させ、引っ張った状態からから解放した後の長さが約75mmで、収縮幅が約5mmであるから、C相が約75mmで、B相が約5mmであると主張するものであるが、80mmの部分がB相及びC相のみによって構成されていることを認めるに足りる証拠はない。また、約5mm収縮したからB相は約5mmである
ということは、収縮後にB相が存在しなくなってしまうということであって、およそあり得ないというべきである。弾性変形による伸びが約5mmであると理解しても、これがA相によるものかB相によるものかは明らかでない。しかも、約75mmの部分がC相のみによって構成されるかも証拠上明らかではなく、むしろ、収縮した
A相又はB相を含んでいたとしても不合理ではないといえる。そうすると、被告らの上記主張は、前提を誤っているというほかない。上記②について、被告製品A1及び3ないし10並びにB1ないし4の素材が何であれ、前記(a)で検討したとおり、原告試験結果の信用性が否定されない以上、これらが延伸後にも収縮力を有するこ
とは明らかである。
上記③について、証拠(甲12、39、乙34)によれば、被告製品A2及びB5は、2本のテープ状部材を有し、延伸させた2本のテープ状部材をねじった上で、瞼に食い込ませて二重瞼を形成するものであることが認められるが、ねじることによりテープ状部材
の収縮力が失われるとは直ちには考えられないし、むしろ二重瞼の形成にテープ状部材2本分の収縮力が働いているということができる。
以上によれば、被告らの上記主張は採用することができない。

被告製品B6のテープ状部材が、
延伸可能であって、かつ、
弾性的な伸縮性を備えるか

(ア)

本件発明に係る特許請求の範囲には、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有するテープ状部材を二重瞼形成用テープとして使用することが記載されている。
そして、本件明細書には、上記構成を有する二重瞼形成用テープによって二重瞼を形成するには、テープ状部材の両端を把持して弾性的に延びた状態になるように引っ張り、その状態でテープ状部材の粘着剤を塗着した部分を瞼におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤によりテープ状部材をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部を離す。これにより、引っ張った状態にあるテープ状部材が弾性的に縮むが、本来、瞼はその両側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的に縮んだテープ状部材がそれを貼り付けた瞼にくい込む状態になって、二重瞼のひだが形成される。(【0008】)との記載がある。
これらによれば、テープ状部材のうち延伸可能な部分は、

延伸後にも弾性的な伸縮性を有するものであって、かつ、二重瞼の形成に寄与するものであるから、少なくともテープ状部材のうち瞼に押し当てて二重瞼を形成する部分が延伸可能な部分を含むことが必要であると理解できる。もっとも、本件発明の特許請求の範囲及び本件明細書には、これ以上にテープ状部材のうち延伸可能な部分

を具体的に規定する記載はなく、本件発明のテープ状部材は、瞼に押し当てる部分のうち一部でも延伸可能な部分(延伸後にも弾性的な伸縮性を有する部分)を含んでいれば、当該部分が二重瞼の形成に寄与し、本件発明の作用効果を奏するということができる。
したがって、テープ状部材のうち延伸可能な部分については、

瞼に押し当てる部分の全部又は一部と解するのが相当である。
(イ)

証拠(甲39、乙34)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品B6は、
粘着剤が設けられた細いテープ状部材であり、これを瞼に押し当てることにより二重瞼を形成するものであること、延伸させた被告製品B6のテープ状部材の中央部には、非伸縮性の細いテープが貼り合わされているところ、当該テープは、瞼に押し当てられて二重瞼を形成する部分のうち約半分であることが認められる。
そして、原告試験結果によれば、被告製品B6は、80mmまで延伸することができ、これを延伸させた後にも収縮力を有するといえるところ、これは被告製品B6のテープ状部材のうち上記テープ以外の部分が有する性能であるということができる。
そうすると、被告製品B6のテープ状部材のうち上記テープ以外の部
分は、瞼に押し当てられることにより二重瞼を形成し、延伸させた後も有する収縮力により、出来上がった二重瞼の維持に寄与しているということができる。したがって、被告製品B6のテープ状部材は、弾性的な伸縮性を備え、かつ、延伸可能であると認めるのが相当である。(ウ)

被告らは、被告製品B6は、非伸縮性の細いテープが中央部で貼り合
わされ、当該テープの片面のみに接着剤を塗布し、閉じた瞼が開く際、テープが垂れ下がる瞼を支えることにより二重瞼を形成するシャッター型であり、収縮力を利用して二重瞼を形成していないし、反発力が最も強い中央部付近に伸縮性がないと主張する。
しかし、前記(ア)のとおり、テープ状部材のうち延伸可能な部
分は、瞼に押し当てる部分の一部で足り、必ずしもその中央部になければならないとは解されない。また、前記ア(ア)aのとおり、テープ状部材は収縮力を利用して二重瞼を形成するものに限られず、形成された二重瞼の維持に寄与するものも含む上、前記(イ)のとおり、被告製品B6
のテープ状部材のうち非伸縮性の細いテープ以外の部分は、瞼に押し当てられて二重瞼を形成する部分のうち約半分を占めるから、当該部分が
有する収縮力は、形成された二重瞼の維持に寄与しているといえる。したがって、被告らの上記主張は採用することができない。

小括
被告製品A1ないし10及びB1ないし5については、前記前提事実(6)ア及び前記アによれば、構成要件Aを充足すると認めるのが相当である。
また、被告製品B6については、前記前提事実(6)イ及び前記イによれば、構成要件Aを充足すると認めるのが相当である。
(2)

争点1-2(構成要件Bの充足性)について

被告製品A3ないし10及びB1ないし6のテープ状部材が粘着剤を塗着したものか(ア)

粘着剤を塗着の解釈
a
本件発明に係る特許請求の範囲には、

延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した、ことを特徴とする二重瞼形成用テープ。

との記載がある。そして、本件明細書には、上記構成を有する二重瞼形成用テープによって二重瞼を形成するには、テープ状部材の両端を把持して弾性的に延びた状態になるように引っ張り、その状態でテープ状部材の粘着剤を塗着した部分を瞼におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤によりテープ状部材をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部を離す。これにより、引っ張った状態にあるテープ状部材が弾性的に縮むが、本来、瞼はその両側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的に縮んだテープ状部材がそれを貼り付けた瞼にくい込む状態になって、二重瞼のひだが形成される。(【00
08】)、このテープ状部材1は、両端を把持して引っ張ったままの状態で、図4に示すように、粘着剤2を塗着した部分を、瞼7におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤2によりテープ状部材1をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部3を離す。これにより、引っ張った状態にあるテープ状部材1が弾性的に縮むが、本来、瞼はその両側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的に縮んだテープ状部材1がそれを貼り付けた瞼7にくい込む状態になって、二重瞼のひだが形成される。(【0017】)との記載がある。
これらの記載によれば、本件発明の二重瞼形成用テープは、
テープ状部材の粘着剤を塗着した部分を瞼におけるひだ

を形成したい位置に押し当てて、当該粘着剤によりテープ状部材をそこに貼り付けるものであると理解できる。そうすると、粘着剤を塗着とは、テープ状部材に粘着剤が設けられた構造をいうと解するのが相当である。
b
被告らは、塗着というためには、粘着剤が設けられていればよ

いというのではなく、粉末や液体を塗り付ける行為が必要で
あるとし、また、平成24年知財高裁判決を指摘して、塗り付ける行為に該当しないラミネート加工は含まれないと主張する。
しかし、本件発明は、二重瞼形成用テープという物の発明であ
るところ、前記aのとおり、この二重瞼形成用テープは、テープ状部材の両端を把持して弾性的に延びた状態になるように引っ張り、その状態でテープ状部材の粘着剤を塗着した部分を瞼におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤によりテープ状部材をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部を離す(【0008】)ことにより二重瞼を形成するものであるから、本件発明の塗着とは、粉末や液体を塗り付ける行為を伴わなくとも、ひだを形成したい位置にテープ状部材を貼り付けられるように、テープ状部材

に粘着剤が設けられた構造のものであれば足りるというべきであ

また、被告らが指摘する平成24年知財高裁判決は、具体的接着剤層の形成方法として塗布・乾燥を用いる発明との関係において、微着性合成樹脂フィルムのみを用いた一層構造のものと汎用合成樹脂フィルム上に微着性透明合成樹脂をラミネートした二層構造のものとを変更することが容易であったか否かを検討したものであり、本件のように塗着の意味内容を解釈しようとしたものではないか
ら、その解釈が直ちに本件に当てはまるものではない。
したがって、被告らの上記主張は採用することができない。

(イ)

被告製品A3ないし10及びB1ないし6のテープ状部材が粘着剤を塗着したものであるかa
証拠(甲28、39)によれば、被告製品A3ないし10及びB1
ないし6のテープ状部材には粘着剤が設けられていることが認められる。

したがって、被告製品A3ないし10及びB1ないし6のテープ状部材は、粘着剤を塗着したものであるといえる。
b
被告らは、被告製品A3ないし10及びB1ないし6のテープ状部
材は、剝離紙に粘着剤を塗工し、剝離紙上の粘着剤層を基材に貼り合わせるラミネート加工をしたものであるから、粘着剤を塗着した

ものではないと主張する。
しかし、前記(ア)のとおり、粘着剤を塗着とは、テープ状部材
に粘着剤が設けられた構造をいうものであり、これには被告らが主張するようなラミネート加工により粘着剤を塗工したものも含まれるから、被告らの上記主張は採用することができない。


自白の撤回の可否

被告フィートジャパンは、その製造販売に係る被告製品A1及び2が構成要件Bを充足することを認めたが、被告製品A1及び2は基材の上に粘着剤層をラミネート加工により積層したものであり、粘着剤を塗着していないことが判明したので、自白を撤回すると主張する。
しかし、前記ア(ア)のとおり、粘着剤を塗着とはテープ状部材に
粘着剤が設けられた構造をいうところ、証拠(甲11の2、甲12の2)によれば、被告製品A1及び2のテープ状部材には粘着剤が設けられていることが認められる。
そうすると、被告製品A1及び2が構成要件Bを充足するという被告フィートジャパンによる上記自白が真実に反するとは認められず、他にこれ
を認めるに足りる証拠はないから、上記自白の撤回は認められない。ウ
小括
被告製品A1及び2については、前記イのとおり、構成要件Bを充足することにつき自白が成立する。
また、被告製品A3ないし10及びB1ないしB6については、前記ア
によれば、構成要件Bを充足すると認めるのが相当である。
(3)

被告各製品が本件発明の技術的範囲に属することについてのまとめ以上によれば、被告各製品については、前記(1)ウのとおり、構成要件Aを充足し、前記(2)ウのとおり、構成要件Bを充足し、前記前提事実(6)ウのとおり、構成要件Cを充足する。

したがって、その余の点を判断するまでもなく、被告各製品は、本件発明の技術的範囲に属すると認められる。
3無効の抗弁の成否
(1)
争点2-1(公然実施に基づく新規性欠如)について

優先権基礎出願明細書等の記載事項
優先権基礎出願明細書等(乙7)には、以下のとおりの記載がある。
(ア)

特許請求の範囲
【請求項1】
弾性的に伸縮する細いテープ状部材に粘着剤を塗着することにより構成したことを特徴とする二重瞼形成用テープ。
【請求項2】

テープ状部材を、延伸可能でその延伸後に弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したことを特徴とする請求項1に記載の二重瞼形成用テープ。
(イ)
発明の詳細な説明
a
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、簡単かつ容易にきれいな二重瞼を形成できるようにした二重瞼形成用テープに関するものである。
【0002】

【従来の技術】
二重瞼を形成するために、従来から、水性ラテックスエマルジョンやポリマーエマルジョンなどを用いて瞼の皮膚を接着し、二重のひだを形成する方法、あるいは、瞼に片面粘着テープを貼り付けたり硬化型ポリマーを塗着することにより皮膜を形成し、それによって二重の
折り込みひだを形成する方法などが知られている。
しかしながら、これらの方法は、いずれも非常に細かい作業を行う必要があって、ある程度慣れないときれいな仕上がりを得ることができず、また、前者の接着による場合には接着により皮膚のつれが生じたり、後者の皮膜形成では皮膜の跡が残るなどの問題もあった。

【0003】
【発明が解決しようとする課題】

本発明は、このような問題を解決し、皮膚につれを生じさせたり皮膜の跡を残したりすることなく、簡単にきれいな二重瞼を形成できるようにした二重瞼形成用テープを提供することにある。
本発明の他の課題は、瞼に直接二重にするためのひだを形成し、自然な二重を形成できるようにした二重瞼形成用テープを提供すること
にある。
本発明の他の課題は、二重瞼形成のための操作が安全かつ容易な二重瞼形成用テープを提供することにある。
本発明の他の課題は、製造が極めて容易な二重瞼形成用テープを提供することにある。

b
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の二重瞼形成用テープは、基本的には、弾性的に伸縮する細いテープ状部材に粘着剤を塗着することに
より構成したことを特徴とするものである。
上記二重瞼形成用テープは、テープ状部材を、延伸可能でその延伸後に弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成し、また、両端に指先で把持するための表面に粘着性のない把持部を設けることができる。また、上記二重瞼形成用テープは、弾性的に伸縮するシート状部材
に粘着剤を塗着すると共にその両端に粘着性のない把持部を形成し、これを細片状に切断することにより構成することができる。
【0005】
上記構成を有する二重瞼形成用テープによって二重瞼を形成するには、テープ状部材の両端を把持して弾性的に延びた状態になるように
引っ張り、その状態でテープ状部材の粘着剤を塗着した部分を瞼におけるひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤によりテープ状部
材をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部を離す。これにより、引っ張った状態にあるテープ状部材が弾性的に縮むが、本来、瞼はその両側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的に縮んだテープ状部材がそれを貼り付けた瞼にくい込む状態になって、二重瞼のひだが形成される。両端の不要な部分は切除すればよい。
【0006】
このようにして、上記テープ状部材は瞼に直接二重にするためのひだを形成するので、前記従来の方法のように、皮膚につれを生じさせたり皮膜の跡を残したりすることはなく、自然な二重瞼を形成することができ、しかも、テープ状部材の両端を持って引っ張った状態でそ
れを瞼のひだを形成したい位置に押し付ければよいので、簡単にきれいな二重瞼を形成することができる。
また、上記従来の方法では、瞼の皮膚を接着したり、瞼に片面粘着テープ等を貼り付けたりするとき、自分の操作でひだを作るためにプッシャー等を用いる必要があるが、本発明の二重瞼形成用テープは、
それ自身の収縮によって二重瞼を形成するので、上記プッシャー等を用いる必要がなく、二重瞼形成を安全かつ容易に行うことができる。c
【0007】
【発明の実施の形態】

図1は本発明の二重瞼形成用テープの一実施例を示している。
この二重瞼形成用テープは、基本的には、弾性的に伸縮する細いテープ状部材1の表裏に粘着剤2を塗着することにより構成することができるものである。上記テープ状部材1としては、両端を持って引っ張ったときに伸長し、しかも、弾性的に復帰しようとする収縮力が作
用するものであればよいが、特に、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有するポリエチレン等の合成樹脂により形成するのが望ま
しい。このテープ状部材1は、一般的には幅が1~3mm程度の細い帯状に形成されるが、幅が必ずしもその範囲内である必要はなく、また明確な帯状を形成していなくても差し支えない。
更に、上記粘着剤2としては、皮膚用に用いられる各種粘着剤を利用することができる。
【0008】
上記テープ状部材1は、その両端を指先で把持して瞼に貼り付けるため、両端には表面に粘着性のない把持部3を設けるのが望ましい。この把持部3は、例えば、図示したように、テープ状部材1に塗着し
た表裏の粘着剤2の上に覆いシートを粘着させることにより形成するのが適切であるが、テープ状部材1の端部に覆いシートを巻き付け、あるいはテープ状部材1の端部に粘着性を抑制する塗料その他の塗着剤、薬剤を塗り、更には、粘着剤2自体を塗着しないことにより該把持部3を構成することもできる。また、該把持部3は、粘着剤3の粘
着性を完全に抑制するものである必要はなく、例えば、テープ状部材1の片面のみに前記覆いシートを粘着させておくとか、テープ状部材1の片方端のみに上述した適宜把持部3を設けることもできる。この把持部3は、一般的に、テープ部材1の端部から5mm以上設けるのが把持を容易にするうえで望ましい。

なお、図中4は、粘着剤2を塗着した部分に貼着して二重瞼形成用テープの取り扱いを容易にするための離型紙を示している。
【0009】
上記二重瞼形成用テープは、図2に示すように、弾性的に伸縮するシート状部材11の表裏全面に粘着剤12を塗着すると共に、その両
端に粘着性のない把持部13を形成し、これを多数の切断線Lに沿って細片状に切断することにより、極めて容易に製造することができる。
この場合、シート状部材11としては、図1の前記テープ状部材1と同様な素材を用いることができる。また、把持部13は、シート状部材11に塗着した表裏の粘着剤12の上に覆いシートを粘着させることにより形成したり、粘着性を抑制する塗料その他の塗着剤、薬剤を塗るなど、前記図1の例と同様にして形成することができる。さらに、粘着剤12を塗着した部分に予め二重瞼形成用テープの取り扱いを容易にするための離型紙などを貼着しておき、それをシート状部材11と共に切断線Lに沿って切断することもできる。
【0010】

次に、上記構成を有する二重瞼形成用テープによって二重瞼を形成する方法について説明する。
図3は、テープ状部材1を、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂によって構成し、その両端の把持部3を指先で持って引っ張ることにより伸長させた状態、即ち、そのテープ状部材
1を瞼に貼り付ける準備状態を示している。この状態では、テープ状部材1が弾性的に復帰しようとする収縮力を持っている。
【0011】
次に、このテープ状部材1は、両端を把持して引っ張ったままの状態で、図4に示すように、粘着剤2を塗着した部分を、瞼7における
ひだを形成したい位置に押し当てて、該粘着剤2によりテープ状部材1をそこに貼り付け、そのまま両端の把持部3を離す。これにより、引っ張った状態にあるテープ状部材1が弾性的に縮むが、本来、瞼はその両側に比して中央部が眼球に沿って前方に突出しているので、弾性的に縮んだテープ状部材1がそれを貼り付けた瞼7にくい込む状態
になって、二重瞼のひだが形成される。両端の把持部3はひだの形成後に切除する。

【0012】
このようにして、上記テープ状部材1は瞼7に直接二重にするためのひだを形成するので、前記従来の方法のように、皮膚につれを生じさせたり皮膜の跡を残したりすることはなく、自然な二重瞼を形成することができ、しかも、テープ状部材1の両端を持って引っ張った状
態でそれを瞼7のひだを形成したい位置に押し付ければよいので、簡単にきれいな二重瞼を形成することができる。
また、上記従来の方法では、瞼の皮膚を接着したり、瞼に片面粘着テープ等を貼り付けたりするとき、自分の手でひだを作るためにプッシャー等を用いる必要があるが、上記二重瞼形成用テープでは、それ
自身の収縮によって二重瞼を形成するので、上記プッシャー等を用いる必要がなく、二重瞼形成を安全かつ容易に行うことができる。
d
【0013】
【発明の効果】
以上に詳述した本発明の二重瞼形成用テープによれば、皮膚につれ
を生じさせたり皮膜の跡を残したりすることなく、簡単で容易、安全にきれいな二重瞼を形成することができる。

本件発明が優先権基礎出願明細書等に記載された発明か

(ア)
法41条2項は、後の出願に係る発明のうち、先の出願の当初明細書、
特許請求の範囲又は図面に記載された発明に限り、その出願時を法29条の適用につき限定的に遡及させることを定めている。
後の出願に係る発明が先の出願の当初明細書等に記載された事項の範囲のものといえるか否かは、単に後の出願の特許請求の範囲の文言と先の出願の当初明細書等に記載された文言とを対比するのではなく、後の
出願の特許請求の範囲に記載された発明の要旨となる技術的事項と先の出願の当初明細書等に記載された技術的事項との対比によって決定すべ
きであるから、後の出願の特許請求の範囲の文言が、先の出願の当初明細書等に記載されたものといえる場合であっても、後の出願の明細書の発明の詳細な説明に、先の出願の当初明細書等に記載されていなかった技術的事項を記載することにより、後の出願の特許請求の範囲に記載された発明の要旨となる技術的事項が、先の出願の当初明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えることになる場合には、その超えた部分については優先権主張の効果は認められないというべきである。
(イ)

前記ア(ア)によれば、本件発明に係る特許請求の範囲は、優先権基礎出
願明細書等の特許請求の範囲の請求項1及び2を組み合わせたものであると認められる。
そして、本件明細書における本件発明の課題(【0002】及び【0003】)、解決手段(【0004】)及び作用効果(【0008】、【0009】及び【0032】)についての記載によれば、本件発明は、瞼に押し当てられたテープ状部材が瞼に食い込むことによって、二重瞼
を形成又は維持する発明と解するのが相当であるところ、優先権基礎出願明細書等においても、これらの本件明細書の記載と同様の記載がある(【0002】ないし【0006】及び【0013】)。
他方で、本件明細書と優先権基礎出願明細書等を対比すると、本件明細書においては、優先権基礎出願明細書等から、追加実施例1(粘着剤
の塗着態様に関して、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材1において、粘着剤2をテープ状部材1の表面又は裏面のどちらか一方の面だけに塗着する実施例及び粘着剤2をテープ状部材1の粘着剤2が塗着される側の面を部分的に覆うように塗着する実施例(【0014】及び【0015】))及び
追加実施例2(破断部を有するシートに関して、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した細いテープ状部材
21に、引っ張りによって破断する破断部を中央に有し、シリコン加工を施したフィルム又はシリコン樹脂をペーパー状にしたシリコンペーパーからなる細いテープ状のシート22を貼り付ける実施例(【0019】))が追加されたことが認められる。
しかし、本件発明に係る特許請求の範囲には粘着剤を塗着すること
との記載があり、優先権基礎出願明細書等の請求項1にも同様の記載があるところ、粘着剤の塗着態様に関する追加実施例1は、上記粘着剤を塗着することの具体例を示したものにすぎないというべきである。そうすると、追加実施例1は、本件発明の実施に係る具体例であるとともに、優先権基礎出願明細書等の請求項1の発明の実施に係る具体例で
もあったといえるから、優先権基礎出願明細書等に新たな技術的事項を加えるものではない。
また、追加実施例2は、本件発明のテープ状部材に貼り付けるシ
ートに関する実施例であるから、本件発明の特許請求の範囲に記載された発明の要旨となる技術的事項ではない。

したがって、本件発明は、優先権基礎出願明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えるとは認められない。

小括
以上によれば、原告は、本件発明について、優先権基礎出願明細書等に記載された発明に基づき優先権を主張することができるから(法41条1
項)、法29条1項2号の規定の適用については、優先権基礎出願の日である平成12年10月3日を基準に判断することになる(法41条2項)。被告らは、平成13年3月に本件発明の技術的範囲に属する原告製品の販売が開始されたと主張するが、その販売開始日は上記優先日に後れるものであるから、本件発明は法29条1項2号に該当しない。

(2)

争点2-2(乙8文献を主引用例とする進歩性欠如)について


乙8文献の記載事項

(ア)

乙8文献には、以下のとおりの記載がある(下記記載中に引用する図
は別紙乙号証文献図面記載1参照)。
a
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】

瞼に貼る着色を目的としたシール
【請求項1(補正後)】
着色した、柔らかい樹脂などの皮膜に接着剤を塗布した粘着シールを瞼に貼りつける事で、アイシャドーやアイラインの代りになる薄型粘着シール

【請求項1(再補正後)】
着色した樹脂製フィルムに接着剤を塗布した構造の着色シールを、アイシャドー、またはアイラインを実際に瞼に描く場合の着色範囲の形状に裁断し、瞼に貼り付ける事で、アイシャドーやアイラインの代用にする事を目的とした、シール

b
(a)

【考案の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
本考案は、化粧に関するものである。

(b)
【従来の技術】
おもに女性における、瞼の化粧は、粉末や液状のアイラインやアイシャドー等を塗布し着色する事によって行われる。
この場合、人の手で塗布する必要があるため、高度な技術が要求され、うまく行かない場合、着色する形や範囲が歪になったり、微妙に色がまだらになり本来の色が出なかったりする。

また、瞼という不安定で、動きの激しい特別な場所に塗布するため、色が落ちやすく化粧直しが頻繁になってしまう。

特に、薄い色に仕上げたい場合には、塗布する分量を少なくする必要があり、通常以上に色が落ちやすく、化粧直しが大幅に多くなってしまう。
また、逆に化粧を落としたいときは、洗顔の必要があり、非常にめんどうである。

(c)

【考案が解決しようとする課題】
本考案が解決しようとする課題は、瞼に着色するとき、きれいな形や色で瞼に着色でき、しかも簡単に出来る事、また、激しい動きにたいして色が落ちず、逆に色を落としたいときには簡単に落ちる事である。

(d)

【課題を解決するための手段】
すでに着色した薄い粘着シールを瞼のサイズに合わせて裁断し、それを瞼に張り付ける。

(e)

【作用】
瞼に着色した粘着シールを貼る事で、アイラインやアイシャドーを
瞼に塗布したのと同様の効果が生まれ、また粘着シールそのものが着色されているため、たとえ薄い色にしたい時でも、特別な技術が不要で、むらが無くきれいに瞼が着色される。
また、粘着シールをはがすだけで、非常に簡単に短時間で色を落とす事が出来る。

(f)

【実施例】
着色した粘着シール(図1-1-A)を瞼に合わせて切り取り、台紙(図1-1-B)からはがす。
接着面が瞼側になるようにし、睫の生え際付近に貼り付ける。

(g)

【考案の効果】
1.粘着シールを張りつける事で瞼に着色でき、長時間にわたり

色落ちが無く、はがせば、簡単に取る事ができ、洗顔の手間が大幅に軽減される。
2.皮膚に、ある程度の硬さのある粘着シールが張り付けられる
ので、貼り付けられたところは皮膚のしわがなくなり、粘着シールの端に強制的に皮膚のしわが作製される。

したがって、理想的な二重瞼を作る事が可能になり、二重瞼を作る事を目的としたアイテープ同様の効果もある。
3.粘着シールに切れ目を入れたり、裁断しておくと利用者が裁
断する手間が要らず便利である。
4.着色する色は、任意の色が可能である。

5.また、粘着シールの表面に既存のアイシャドーやアイライン
で着色し、それを瞼に貼り付けても同様の効果がある。
(イ)

前記(ア)の記載事項によれば、乙8文献には、以下の乙8発明が記載さ
れていると認められる。
柔らかい樹脂などの細いテープ状の皮膜に、接着剤を塗布することに
より構成した、瞼の皮膚にしわを作り出すことにより、二重瞼を作るための、アイシャドーやアイラインの代わりになる薄型粘着シール

一致点及び相違点の認定
本件発明と乙8発明を対比すると、

樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した、二重瞼形成用テープ


いう点で一致すると認められる。
これに対し、本件発明のテープ状部材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるのに対し、乙8発明はこのような構成を備えない点(相違点1’)において相違すると認められる。


相違点1’の容易想到性

(ア)

乙11文献の記載事項
a
乙11文献には、以下のとおりの記載がある(記載内容は、乙11
文献の抄訳(乙11の2)によるものである。)。
(a)

本発明は、例えば、外科用ドレープ、縫合ストリップ又はシート、
接着包帯、バンデージ、ばんそうこう、ストラッピングテープ、装
飾用爪被覆材又は装飾用化粧品等、動物の皮膚や爪に使用する透湿性感圧接着性物質に関する。この接着物質は、基材、前記基材から成る少なくとも一方の面のボディー接着部の少なくとも実質的に全体に施される感圧接着剤を有して成る。
(b)

本発明は、概して、動物の体、特に人体に使用するための接着性

物質に関する。そのような物質の例は、接着包帯、ばんそうこう、包帯、外科用布材、および装飾用化粧品が挙げられる。
(c)

本発明の接着性物質は例えば、外科用、皮膚用又は美容的使用の

ために、人間の体の任意の部分に使用することができる。本発明の接着性物質の特定の使用例として、外科用ドレープ、縫合ストリッ
プおよびシート、接着包帯、バンデージ、ばんそうこう、装飾用爪被覆材、固形アイライナー、しわ形成材(劇場用のメークアップのため)等がある。
(d)

いくつかの用途のためには、基材においてある程度の等方性伸縮

性を備えることが望ましい。

(e)

Ⅳ.熱可塑性ポリウレタンフィルム
好ましいフィルムは押し出し又は好ましくは溶媒キャスティング
により製造することができる。好適な材料、およびその製品は米国特許第2,871,218号に記載されている。エスタン5701
および5702(BFグッドリッチ社製)は特に満足のいくものであることが判明している。エスタン5702はこれらの材料の中で
も最も有用であることが分かっている。
この材料は、テトラヒドロフラン又はアセトン溶液で最も良いキ
ャストである。
1ミルの厚さのフィルムであるエスタン5702の特性は、
MVP

1,620g/m2/24時間

O2の透過率4,880cc/m2/Atomos/24時間
引張強さ(重量ポンド毎平方インチ)
伸び率

5,300

730%

伸び率300%での引張応力(重量ポンド毎平方インチ)<50
0
硬度(デュロメーターA)

70

脆化温度(°F)<-100
(f)

本発明の好ましい使用態様の一つは、装飾用化粧品、例えばネイ

ルカバー、アイライナー、ビューティースポット、舞台効果、例えば(伸張状態で皮膚へ付着することによる)しわ形成である。
(g)

他の好ましい基材は、連続的な熱可塑性ポリウレタンフィルム、

例えば、エスタン(BFグリッドリッチ社製)、特にエスタン5702と5701、およびそのような材料で又はポリEEMAで被覆された伸縮性布帛である。
(h)

図2~7に示されるものと同様の物質が様々な他の目的のために

使用することができる。例えば、基材と接着剤を有して成る異なる形状の接着性物質を使用することにより、ビューティースポットやアイライナー等の他の装飾用化粧品を形成することができる。また、伸縮性基材を使用することで、舞台効果のためのしわ形成が可能となる。この接着性物質を延伸させ、皮膚に接着し、収縮させることで、しわ効果を生じさせることが可能である。

(i)

5.外科用ドレープ、縫合ストリップ又はシート、接着包帯、バ

ンデージ、ばんそうこう、帯状テープ、装飾用爪被覆材又は装飾用化粧品の形状である、請求項1に記載の感圧接着剤物質。
b
前記aの記載事項によれば、乙11文献には、以下の乙11発明が
記載されていると認められる。

延伸させた伸縮性基材の収縮力により皮膚にしわを作り出すために、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する熱可塑性ポリウレタンフィルムにより形成した基材に、感圧接着剤を施すことにより構成した、しわ形成用装飾用化粧品
(イ)

乙8発明と乙11発明を組み合わせることの動機付け等
a
被告らは、乙8発明と乙11発明は、皮膚に貼り付けられる装飾用
の貼付部材という技術分野が共通であり、皮膚に装飾用のしわを形成するという作用・機能が共通し、乙11文献には、乙11発明のしわ形成用装飾用化粧品がアイライナーとしても使用できることが記載されており、アイラインの代わりになる薄型粘着シールに係る
乙8発明に乙11発明を適用することの示唆があるなどとして、乙8発明と乙11発明を組み合わせることにより、相違点1(相違点1’)に係る本件発明の構成について容易に想到することができたと主張する。

そこで検討するに、乙8文献には、乙8発明の薄型粘着シール
について、ある程度の硬さがあり、これが

貼り付けられたところは皮膚のしわがなくなり、粘着シールの端に強制的に皮膚のしわが作製

されることで、理想的な二重瞼を作る事が可能にな(前記ア(ア)b(g))る旨の記載があり、この記載によれば、上記薄型粘着シールは、一定の硬さを有し、容易には延伸しないため、これを貼り付けた部分がしわにならず、その縁の部分に強制的にしわを形成す
るものであると理解できる。これに対して、乙11文献には、(伸張状態で皮膚へ付着することによる)しわ形成(前記(ア)a(f))、

伸縮性基材を使用することで、舞台効果のためのしわ形成が可能となる。この接着性物質を延伸させ、皮膚に接着し、収縮させることで、しわ効果を生じさせることが可能である。

(前記(ア)a(h))との記載があり、これらの記載からすると、乙11発明によりしわを形成する原理は、延伸させた熱可塑性ポリウレタンフィルムにより形成した基材が収縮することにより、皮膚の2つの地点の距離を縮め、上記基材の向きと交差する向きにしわを形成するものと理解できる。
そうすると、乙8発明と乙11発明では、しわを形成する原理が全く異なるものといわざるを得ない。
以上によれば、乙8発明と乙11発明とは、皮膚に貼り付けるしわ形成部材という限りでは、技術分野の関連性が一定程度あるといえるものの、しわを形成する原理に着目すると、その関連性は強いもので
はない。また、作用・機能についても、原理が異なっていることにより、いずれも装飾用のしわを形成するといっても、具体的にどのようなしわを形成するのかという点での共通性を認めることはできない。さらに、乙8文献及び乙11文献において、それぞれ、アイライナーとしても使用できる、アイラインの代わりになるといった記載がある
としても、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したという相違点1’について乙11発明をどのように適用すべきかは明らかではなく、その適用を動機付けるに足りる示唆があるとは認められない。
むしろ、乙8発明の薄型粘着シールが、乙11発明の熱可塑性ポリウレタンフィルムにより形成した基材のように伸縮性を有すると、上記薄型粘着シールを貼り付けた部分が伸縮し、その縁の

部分に強制的にしわが形成されることがなくなるので、乙8発明に乙11発明を組み合わせることには阻害要因が認められるというべきである。
したがって、乙8発明と乙11発明を組み合わせることについて、その動機付けが認められず、また、阻害要因が認められる。

b
被告らは、①優先権基礎出願当時、テープの引張応力を利用して、美容のために瞼の皮膚に収縮力を加えることや舞台用又は劇場用の化粧において二重瞼形成用の化粧が行われていることは技術常識であった、②乙8発明の薄型粘着シールは、瞼の伸縮に伴って伸縮したり、変形したりすることは当然に想定されていたと主張する。

しかし、上記①については、被告らが主張するような技術常識が認められたとしても、前記aのとおり、乙8発明と乙11発明を組み合わせる動機付けが認められず、阻害要因が認められることに変わりはない。
また、上記②について、前記aのとおり、乙8発明の薄型粘着シールは、一定の硬さを有し、容易には延伸しないため、これを貼り付けた部分がしわにならず、その縁の部分に強制的にしわを形成するものであるから、瞼の伸縮に伴って伸縮したり、変形したりすることが想定されていたとは認められない。
したがって、被告らの上記各主張はいずれも採用することができな
い。

小括
以上のとおり、乙8発明と乙11発明を組み合わせる動機付けは認められず、むしろ、これらを組み合わせることに阻害要因が認められるから、
本件発明について、当業者が乙8発明に乙11発明を組み合わせることで容易に発明することができたとは認められない。

(3)

争点2-3(乙9文献を主引用例とする進歩性欠如)について

乙9文献の記載事項

(ア)

乙9文献には、以下のとおりの記載がある(下記記載中に引用する図
は別紙乙号証文献図面記載2参照)。
a
【実用新案登録請求の範囲】
[請求項1]貼着部を持ち、まぶたに合わせた曲辺(1)を一部に持つ形状に切り取られたセロファン片

b
【考案の詳細な説明】
[0001]

[産業上の利用分野]
この考案は一重まぶたの矯正に関するものである。
[0002]
[従来の技術]
従来の一重まぶた矯正具は、接着剤を二重まぶたを形成する筒所だけ
に直接塗り付けて接着していた。しかし、これは皮膚の呼吸を妨げるうえ、アレルギー反応を起こしやすく、さらには、接着しただけなのでまぶたの折り目の矯正をするには至っていなかった。
[0003]
[考案が解決しようとする課題]

そのため使用者は何度となく接着することを余儀なくされ、接着部の皮膚が荒れてしまう。また、新たに接着した部分で二重に見せかけるが、今まであった折り目のしわがそのままなので目を開くときにはそこの所にまぶたがしわ寄ってしまい、まぶたをしわ寄せる箇所を新たに移してそこの所でしわ寄せて矯正させるという目的が果たされてい
なかった。
本考案はその欠点を改善することを目的とするものである。

[0004]
[課題を解決するための手段]
貼着部を持ち、まぶたに合わせた曲辺(1)を一部に持つ形状に切り取られたセロファン片で構成する。
[0005]
[作用]
台座から剥がした矯正具をそのまま、上まぶたを伸ばした状態の上に貼り付ける。貼り付けた状態で上まぶたを開くと、今までしわを寄せていた箇所にしわを寄せないように固定したまま同時に、新たに矯正
具上辺の曲辺(1)で別の箇所にしわを寄せるので、一重まぶたが矯正される。
[0006]
[実施例]
実施例1

図1に基づいて実施例1を説明する。
実施例1の矯正具は、
(イ)上辺部に緩やかな曲辺(1)を持つセロファンその他の弾力性のある材質から成る、薄いセロファン状の片。
(ロ)セロファン状の片の下辺部に直線状の辺(2)をもち、この
辺を含む下部で、今までまぶたを開くときにしわを寄せていた所へしわを寄せないように、伸ばしたまま固定する。
(ハ)まぶたを開く時セロファン状の辺の曲辺(1)でまぶたを内部に押し込み、ここで新たなまぶたのしわを寄せる線を形成する。(ニ)裏面に貼着部を持つ。

以上が本考案の実施例1である。
[0009]

[考案の効果]
本考案は、セロファンその他の弾力性のある材質からなるため通気性がよく、貼着部で固定するので必要以上に皮膚を傷める事がなくなった。また、新たな皮膚の折り目を加えながら今までの折り目を動かないように固定して矯正することによりいっそう矯正期間が短縮され
ることとなった。さらには、従来一重まぶたの人は、まぶたがまつげの上に圧迫していたので逆さまつげという症状に悩まされていたが、本考案によってまぶたを上に折り込むことでそのように圧迫することが無くなった。
(イ)

前記(ア)の記載事項によれば、乙9文献には、以下の乙9発明が記載さ
れていると認められる。
裏面に貼着部を持ち、弾力性のある材質から成る細いテープ状の片により構成した、まぶたの皮膚にしわを作り出すことにより、一重まぶたを二重まぶたに矯正するための、一重まぶた矯正具

一致点及び相違点の認定
本件発明と乙9発明を対比すると、

細いテープ状部材に、粘着剤を設けることにより構成した、二重瞼形成テープ

という点で一致すると認められる。
これに対し、本件発明のテープ状部材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるのに対し、
乙9発明はこのような構成を備えない点(相違点2’)において相違すると認められる。

相違点2’の容易想到性

(ア)
被告らは、乙9発明と乙11発明は、皮膚に貼り付けられる装飾用の
貼付部材という共通の技術分野に属し、皮膚に装飾用のしわを形成するという共通の作用・機能を有し、乙11文献には、乙11発明のしわ形成用装飾用化粧品がアイライナーとしても使用することができることが記載されており、上瞼の横ひだに沿って貼り付けるものである乙9発明に乙11発明を適用することの示唆があるなどとして、乙9発明と乙11発明を組み合わせることにより、相違点2(相違点2’)に係る本件発明の構成について容易に想到することができたと主張する。そこで検討するに、乙9文献には、乙9発明の矯正具について、
上まぶたを伸ばした状態の上に貼り付け、

貼り付けた状態で上まぶたを開くと、今までしわを寄せていた箇所にしわを寄せないように固定したまま同時に、新たに矯正具上辺の曲辺(1)で別の箇所にしわを寄せる

ことで、一重まぶたが矯正され([0005])、二重瞼を形成する旨の記載があり、この記載によれば、上記矯正具は、これを貼り付けた部分がしわにならないように一定の硬さを有し、容易には延伸しないため、その縁の部分にしわを形成するものであると理解できる。これに対して、前記(2)ウ(イ)aのとおり、乙11発明は、延伸さ
せた熱可塑性ポリウレタンフィルムにより形成した基材が収縮することにより、皮膚の2つの地点の距離を縮め、上記基材の向きと交差する向きにしわを形成するものである。そうすると、乙9発明と乙11発明では、しわを形成する原理が全く異なるといわざるを得ないから、皮膚に貼り付けるしわ形成部材という限りでは、技術分野の関連性が一
定程度あるといえるものの、しわを形成する原理に着目すると、その関連性は強いものではなく、作用・機能についても、原理が異なっていることにより、いずれも装飾用のしわを形成するとはいえ、具体的にどのようなしわを形成するのかという点での共通性を認めることはできない。また、乙9発明の矯正具が上瞼の横ひだに沿って貼り付けるもので
あり、乙11文献に乙11発明のしわ形成用装飾用化粧品がアイライナーとしても使用することができることが記載されているとしても、
延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものか否かという相違点2’について乙11発明をどのように適用すべきかは明らかではなく、その適用を動機付けるに足りる示唆があるとは認められない。
むしろ、乙9発明の矯正具が、乙11発明の熱可塑性ポリウレタンフィルムにより形成した基材のように、延伸させた後に収縮することによって、皮膚の2つの地点の距離を縮めることができる伸縮性を有すると、上記矯正具を貼り付けた部分が伸縮し、その縁の部分にしわが形成されることがなくなるので、乙9発明に乙11発明を組み合わせることには阻害要因が認められるというべきである。
したがって、乙9発明と乙11発明を組み合わせることについて、その動機付けが認められず、また、阻害要因が認められる。
(イ)

被告らは、①優先権基礎出願当時、テープの引張応力を利用して、美
容のために瞼の皮膚に収縮力を加えることや舞台用又は劇場用の化粧において二重瞼形成用の化粧が行われていることは技術常識であった、②乙9発明のテープ状の片は、瞼の伸縮に伴って伸縮することや変形することは当然に想定されていたと主張する。
しかし、上記①については、被告らが主張するような技術常識が認められたとしても、前記(ア)のとおり、乙9発明と乙11発明を組み合わせ
る動機付けが認められず、阻害要因が認められることに変わりはない。また、上記②について、前記(ア)のとおり、乙9発明の矯正具は、これを貼り付けた部分がしわにならないように一定の硬さを有し、容易には延伸せず、その縁の部分にしわを形成するものであるから、瞼の伸縮に伴って伸縮したり、変形したりすることが想定されていたとは認め
られない。
したがって、被告らの上記各主張はいずれも採用することができない。

小括
以上のとおり、乙9発明と乙11発明を組み合わせる動機付けは認められず、むしろ、これらを組み合わせることに阻害要因が認められるから、本件発明について、当業者が乙9発明に乙11発明を組み合わせることで容易に発明することができたとは認められない。

(4)

争点2-4(乙10文献を主引用例とする進歩性欠如)について

乙10文献の記載事項

(ア)

乙10文献には、以下のとおりの記載がある。
a
アイテープは、人間の目の横幅ぐらいの長さで、目の形に合わせて
若干湾曲し、細長く、平らで、一方の面に粘着剤が設けられたシール
である。
b
アイテープを、二重瞼を作りたい位置より少し上の線に沿って貼る
ことで、瞼を開いたときに二重瞼のひだが当該シール上にでき、深くて幅の広い二重瞼を形成することができる。
c
(イ)

アイテープは、アイシャドウの代わりに用いることができる。
前記(ア)の記載事項によれば、乙10文献には、以下の乙10発明が記
載されていると認められる。
細いテープ状部材を瞼に貼り付けることができるように構成した、瞼の皮膚に深くて幅の広い二重のしわを作り出すための、アイシャドウの代わりになるアイテープ


一致点及び相違点の認定
本件発明と乙10発明を対比すると、

細いテープ状部材に、粘着剤を設けることにより構成した、二重瞼形成用テープ

という点で一致すると認められる。

これに対し、本件発明のテープ状部材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるのに対し、
乙10発明はこのような構成を備えない点(相違点3’)において相違すると認められる。

相違点3’の容易想到性

(ア)
被告らは、乙10発明と乙11発明は、皮膚に貼り付けられる装飾用
の貼付部材という共通の技術分野に属し、皮膚に装飾用のしわを形成するという共通の作用・機能を有し、乙11文献には、乙11発明のしわ形成用装飾用化粧品がアイライナーとしても使用することができることが記載されており、アイシャドウの代わりになる乙10発明のアイテープに適用することの示唆があるなどとして、乙10発明と乙1
1発明を組み合わせることにより、相違点3(相違点3’)について容易に想到することができたと主張する。
そこで検討するに、乙10文献には、

アイテープを、二重瞼を作りたい位置より少し上の線に沿って貼ることで、瞼を開いたときに二重瞼のひだが当該シール上にでき、深くて幅の広い二重瞼を形成することができる。

(前記ア(ア)b)との記載があり、この記載によれば、上記アイテープは、乙8発明及び乙9発明と同様に、アイテープが
貼り付けられた部分がしわにならないように一定の硬さを有し、容易には延伸しないため、その縁の部分にしわを形成するものと理解できる。これに対して、前記(2)ウ(イ)aのとおり、乙11発明は、延伸させた
熱可塑性ポリウレタンフィルムにより形成した基材が収縮することにより、皮膚の2つの地点の距離を縮め、上記基材の向きと交差する向きにしわを形成するものである。そうすると、乙10発明と乙11発明では、しわを形成する原理が全く異なるといわざるを得ないから、皮膚に貼り付けるしわ形成部材という限りでは、技術分野の関連性が一
定程度あるといえるものの、しわを形成する原理に着目すると、その関連性は強いものではなく、作用・機能については、いずれも装飾用のし
わを形成するとはいえ、具体的にどのようなしわを形成するのかという点での共通性を認めることはできない。また、乙10発明のアイテープが上瞼の横ひだに沿って貼り付けるものであり、乙11文献に乙11発明のしわ形成用装飾用化粧品がアイライナーとしても使用することができることが記載されているとしても、延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものか否かという相違点3’について乙11発明をどのように適用すべきかは明らかではなく、その適用を動機付けるに足りる示唆があるとは認められない。むしろ、乙10発明のアイテープが上記の原理で二重瞼を形成す
るとすれば、乙8発明及び乙9発明と同様に、乙10発明についても乙
11発明を組み合わせることには阻害要因が認められる。
したがって、乙10発明と乙11発明を組み合わせることについて、その動機付けが認められず、また、阻害要因が認められる。
(イ)

被告らは、①優先権基礎出願当時、テープの引張応力を利用して、美
容のために瞼の皮膚に収縮力を加えることや舞台用又は劇場用の化粧に
おいて二重瞼形成用の化粧が行われていることは技術常識であった、②乙10発明のアイテープは、瞼の伸縮に伴って伸縮することや変形することは当然に想定されていたと主張する。
しかし、前記(2)ウ(イ)b及び(3)ウ(イ)について説示したのと同様の理由により、被告らの上記各主張はいずれも採用することができない。

小括
以上のとおり、乙10発明と乙11発明を組み合わせる動機付けは認められず、むしろ、これらを組み合わせることに阻害要因が認められるから、本件発明について、当業者が乙10発明に乙11発明を組み合わせることで容易に発明することができたとは認められない。

(5)

争点2-5(乙31文献を主引用例とする進歩性欠如)について


乙31文献の記載事項

(ア)

乙31文献には、以下のとおりの記載がある(下記記載中に引用する
図は別紙乙号証文献図面記載3参照)。
a
考案の詳細な説明

(a)

この考案は一重瞼を二重瞼の如くする為用いる貼着テープで、其

の目的とするところは美容上二重瞼にした方が目元が美しく見える人がこれを用いるものである。
(b)

この考案は表面がトレーシングペーパーの如く表面を形成する合

成樹脂フイルム1を目の上瞼の形に従つて三ケ月形2に断裁し、裏面に接着剤3(アラビヤゴム等)を塗布した二重瞼用貼着テープで
ある。
この考案のテープはこれを接続剤3が貼着しない剥離用の台紙4
に左右の瞼のテープを一対として数組のものを押圧して接着した謂ゆるタツクシール方式の物を作り使用に際しては、一対のテープを台紙4から剥離し、一重瞼の上に二重瞼となるよう皺5をつくり皺
5がそのままの状態で保持されるようテープを貼着するものである。(c)

而も樹脂フイルムを用いたことによりこれが破れるような患もな

く、格別力も加わらないので、フイルムの延伸方向等に関し格別制約を受けるものでないのでこれに関する特別の加工を必要としない。(d)

この考案はこれを使用する際、或いは当初から表面となる素面に

アイラインを描くことによつて瞼にこれに描く患しさと熟練した技術を必要とせず、左右の瞼に簡単に同じようなアイラインを引くことができる効果も併せ有するものである。
b
実用新案登録請求の範囲
表面を素面とした三ケ月形の合成樹脂フィルムを裏面に塗布した貼着用接着剤をもつて台紙上に剝離自在に貼着した二重瞼整形用貼着テ
ープ。
(イ)

前記(ア)の記載事項によれば、乙31文献には、以下の乙31発明が記
載されていると認められる。
一重瞼の上に二重瞼となるよう皺5をつくり皺5がそのままの状態で保持されるようテープを貼着して二重瞼を形成するために、三ケ月形に
断裁された延伸方向に関し格別制約を受けない合成樹脂フイルム1に、粘着剤3を塗布することにより構成した、アイラインを引くことができる効果も併せ有する二重瞼用貼着テープ

一致点及び相違点の認定
本件発明と乙31発明を対比すると、

合成樹脂により形成した細いテープ状部材に、粘着剤を塗着することにより構成した、二重瞼形成用テープ

という点で一致する。これに対し、本件発明のテープ状部材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるのに対し、乙31発明はこのような構成を備えない点(相違点4’)において相違す
る。

相違点4’の容易想到性

(ア)

被告らは、乙31発明と乙11発明は、皮膚に貼り付けられる装飾用
の貼付部材という共通の技術分野に属し、皮膚に装飾用のしわを形成するという共通の作用・機能を有し、乙11文献には、乙11発明のしわ形成用装飾用化粧品がアイライナーとしても使用することができることが記載されており、アイラインを引くことができる効果をも有する乙31発明の二重瞼用貼着テープに適用することの示唆があるとして、乙31発明と乙11発明を組み合わせることにより、相違点4(相
違点4’)について容易に想到することができたと主張する。
そこで検討するに、乙31文献には、乙31発明の二重瞼用貼着テープは、

表面がトレーシングペーパーの如く表面を形成する合成樹脂フィルム1を目の上瞼の形に従つて三ケ月2に裁断し、裏面に接着剤3(アラビヤゴム等)を塗布した二重瞼用貼着テープ

であり、

一対のテープを台紙4から剝離し、一重瞼の上に二重瞼となるよう皺5をつくり皺5がそのままの状態で保持されるようテープを貼着するものである。

(前記ア(ア)a(b))との記載があり、この記載によれば、上記二重瞼用貼着テープは、一重瞼の上に何らかの手段を用いて二重瞼のしわを形成し、そのしわがそのままの状態で保持されるように、しわの上から二重瞼用貼着テープを貼り付けるものであると理解できる。
これに対して、前記(2)ウ(イ)aのとおり、乙11発明は、延伸させた熱可塑性ポリウレタンフィルムにより形成した基材が収縮することにより、皮膚の2つの地点の距離を縮め、上記基材の向きと交差する向きにしわを形成するものである。そうすると、何らかの手段を用いて既に作成された皮膚のしわをテープで固定して保持する乙31発明と、
基材の収縮力により皮膚を引っ張ってしわを形成する乙11発明では、技術分野の関連性が弱く、作用・機能が共通しているとは認められない。また、乙11文献には、乙11発明のしわ形成用装飾用化粧品がアイライナーとしても使用することができることが記載されており、乙31発明の二重瞼用貼着テープがアイラインを引くことができる効果
をも有するとしても、しわを新たに形成する発明と既に形成されたしわを保持する発明という違いがあることから、乙31発明に乙11発明を適用することを動機付けるに足りる示唆があるとは認められない。むしろ、乙31発明の二重瞼用貼着テープが、乙11発明の熱可塑性ポリウレタンフィルムにより形成した基材のように伸縮性を有
すると、上記二重瞼用貼着テープにより皮膚のしわを固定した意味がなくなってしまうから、乙31発明に乙11発明を組み合わせること
には阻害要因が認められる。
したがって、乙31発明と乙11発明を組み合わせることについて、その動機付けが認められず、また、阻害要因が認められる。
(イ)

被告らは、①優先権基礎出願当時、テープの引張応力を利用して、美
容のために瞼の皮膚に収縮力を加えることや舞台用又は劇場用の化粧に
おいて二重瞼形成用の化粧が行われていることは技術常識であった、②乙31発明の二重瞼用貼着テープは、瞼の伸縮に伴って伸縮することや変形することは当然に想定されていたと主張する。
しかし、上記①については、被告らが主張するような技術常識が認められたとしても、前記(ア)のとおり、乙31発明と乙11発明を組み合わ
せる動機付けが認められず、阻害要因が認められることに変わりはない。また、上記②について、前記(ア)のとおり、乙31発明の二重瞼用貼着テープは、既に作成された皮膚のしわをテープで固定するものであるから、瞼の伸縮に伴って伸縮したり、変形したりすることが想定されていたとは認められない。

したがって、被告らの上記各主張はいずれも採用することができない。エ
小括
以上のとおり、乙31発明と乙11発明を組み合わせる動機付けは認められず、むしろ、これらを組み合わせることに阻害要因が認められるから、本件発明について、当業者が乙31発明に乙11発明を組み合わせること
で容易に発明することができたとは認められない。
(6)

争点2-6(乙11文献を主引用例とする進歩性欠如)について

一致点及び相違点の認定

(ア)
本件発明と乙11発明を対比すると、

延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成した部材に、粘着剤を施すことにより構成した

という点で一致すると認められる。
これに対し、本件発明が細いテープ状部材であるのに対し、乙1
1発明の熱可塑性ポリウレタンフィルムは、細いテープ状部材
であるかは不明である点(相違点5)、本件発明が二重瞼形成用テープであるのに対し、乙11発明はしわ形成用装飾用化粧品である点(相違点6)において相違すると認められる。

(イ)

原告は、本件発明のテープ状部材が延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものであるのに対し、乙11発明の熱可塑性ポリウレタンフィルムにより形成した基材はこのような構成を有しない点(相違点7)で相違すると主張する。しかし、乙11文献には、

基材においてある程度の等方性伸縮性を備えることが望ましい。

(前記(2)ウ(ア)a(d))、

(伸張状態で皮膚へ付着することによる)しわ形成である。

(前記(2)ウ(ア)a(f))、

伸縮性基材を使用することで、舞台効果のためのしわ形成が可能となる。

(前記(2)ウ(ア)a(h))との記載があることからすると、乙11発明の熱可塑性ポリウレタンフィルムにより形成した基材は延伸可能でその延伸後にも弾性的な伸縮性を有する合成樹脂により形成したものというべきである。
したがって、上記の点は相違点とは認められず、原告の上記主張は採用することができない。

相違点5及び6の容易想到性

(ア)

被告らは、乙8文献,乙9文献、乙10文献及び乙31文献によれば、
優先権基礎出願当時、上瞼に細いテープ状部材を貼り付けることによって上瞼の皮膚にしわを作り出し,二重瞼を形成する本件慣用技術が存在したところ、乙11発明と本件慣用技術は、皮膚に貼り付けられる装飾用の貼付部材という技術分野が共通であり、皮膚に装飾用のしわを形成するという作用・機能が共通し、乙11文献には、乙11発明がアイラ
イナーとしても使用することができることが記載されており、本件慣用技術を適用することの示唆があるとして、乙11発明と本件慣用技術を組み合わせることにより、相違点5及び6について容易に想到することができたと主張する。
しかし、乙11文献には、乙11発明を装飾用化粧品(前記(2)ウ
(ア)a(a)等)、(伸張状態で皮膚へ付着することによる)しわ形成(前記(2)ウ(ア)a(f))に用いることは示唆されているものの、二重瞼の形成において用いることについての具体的な示唆は認められない。また、これまでに検討したとおり、乙8発明、乙9発明及び乙10発明と乙11発明とでは、しわを形成する原理が全く異なり、また、乙31発明は、そもそも、しわの形成に係る発明であるとは認められないことから、乙11発明と本件慣用技術では、技術分野の関連性が強いものではなく、作用・機能の共通性を認めることもできない。
したがって、乙8文献,乙9文献、乙10文献及び乙31文献により、
優先権基礎出願当時、上瞼に細いテープ状部材を貼り付けることによって上瞼の皮膚にしわを作り出し,二重瞼を形成する本件慣用技術が存在したと認められたとしても、乙11発明と本件慣用技術を組み合わせる動機付けがあるとは認められない。
(イ)

これに対して、被告らは、優先権基礎出願当時、テープの引張応力を
利用して、美容のために瞼の皮膚に収縮力を加えることや舞台用又は劇場用の化粧において二重瞼形成用の化粧が行われていることは技術常識であったと主張する。
しかし、被告らが主張するような技術常識が認められたとしても、前記(ア)のとおり、乙11発明と本件慣用技術を組み合わせる動機付けが認
められないことに変わりはない。
したがって、被告らの上記各主張はいずれも採用することができない。

小括
以上によれば、乙11発明と本件慣用技術を組み合わせる動機付けが認められないから、本件発明について、当業者が乙11発明に本件慣用技術を組み合わせることで容易に発明することができたとは認められない。
4争点3(損害額)について
(1)

限界利益の額

法102条2項の利益の意義
法102条2項所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額は,侵害者の侵害品の売上高から,侵害者において侵害品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界
利益の額であり,その主張立証責任は特許権者側にあるものと解すべきである。

被告各製品の売上額

(ア)
販売期間
a
被告製品A1及び2

(a)

前記前提事実(5)アのとおり、平成28年4月に被告製品A1及び
2の販売が開始された。
(b)

証拠(甲8)によれば、被告製品A1及び2は、平成29年9月

頃、インターネット上で販売されていたことが認められ、平成28年4月から平成29年9月までの間、これらの製品が販売されていない時期があったことをうかがわせる証拠はない。
他方で、証拠(乙5)によれば、被告製品A1及び2は、平成3
0年1月頃には、インターネット上で販売されていなかったことが認められ、平成29年9月以降、これらの製品が販売されていたこ
とを認めるに足りる証拠はない。
したがって、被告らは、平成28年4月から平成29年9月まで

の18か月間、被告製品A1及び2を販売していたと認めるのが相当である。
(c)

これに対して、被告らは、平成28年8月に被告製品A1及び2

の出荷は終了したと主張し、販売実績表(乙3)を提出する。
しかし、前記(b)のとおり、被告製品A1及び2は、平成29年9
月頃、インターネット上で販売されていたのであり、その時期は被告らが出荷を終了したと主張する時期から1年以上が経過していることから、在庫品が販売されていたとは考えにくい。また、平成28年4月から同年8月までの被告製品A1及び2の販売個数が記載された上記販売実績表によっても、被告フィートジャパンが同月に
被告製品A1及び2の出荷を終了したかは明らかでない。
そうすると、上記販売実績表をもって被告らの上記主張を認める
には足りず、他に被告らの上記主張を裏付ける証拠はないから、被告らの主張は採用することができない。
b
被告製品A3ないし10及びB1ないし6

(a)

前記前提事実(5)のとおり、平成29年8月に被告製品A3ないし
10及びB1ないし6の販売が開始された。
(b)

証拠(甲75ないし81)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品

A3ないし10及びB1ないし6は、令和3年3月頃、インターネット上で販売されていたことが認められ、平成29年8月から令和
3年3月までの間、これらの製品が販売されていない時期があったことをうかがわせる証拠はない。
したがって、原告の主張するとおり、被告らは、平成29年8月
から令和元年12月までの29か月間、被告製品A3ないし10及びB1ないし6を販売していたと認めるのが相当である。

(イ)

1月当たりの販売個数

a
証拠(乙85)及び弁論の全趣旨によれば、被告らは、以下の販売月数欄記載の期間に、販売個数欄記載の個数の被告各製品を販売したと認められ、1か月当たりの販売個数を計算すると販売個数/月欄記載のとおりとなる(小数点以下四捨五入)。この点について、FAX発注票等(乙85の1)は、日付、商品、
販売個数等が記載されているものの、取引先や作成者等は黒塗りにされているため、被告らの販売に係る資料であるかは判然としないが、他に的確な証拠がないことから、少なくとも以下の販売があったものと認定するのが相当である。

被告製品A1
被告製品A2
被告製品A3
被告製品A4
被告製品A5
被告製品A6
被告製品A7
被告製品A8
被告製品A9
被告製品A10
被告製品B1
被告製品B2
被告製品B3
被告製品B4
被告製品B5
被告製品B6

b
販売月数216121820171912

販売個数100
63,061
14,938
21,560
5,394
115,345
27,200
81,895
17,658
36,591
32,021
14,732
13,577
24,421
2,855

販売個数/月50
3,3191,1355,767
1,511
4,0952,033
1,884715
1,221
これに対して、原告は、被告製品A1ないし6及び10並びにB1
ないし6の1か月当たりの販売個数は、前記aの1か月当たりの販売個数を上回り、別紙損害額一覧表の原告の主張の販売個数/月
欄記載のとおりであると主張する。

しかし、そのような事実を認めるに足りる証拠はないから、原告の上記主張は採用することができない。
(ウ)

1箱当たりの販売価格
a
証拠(乙85)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品A1及び2の
1箱当たりの販売価格は331円、被告製品A3ないし6の1箱当た
りの販売価格は576円、被告製品A7ないし10の1箱当たりの販売価格は480円、被告製品B1ないし6の1箱当たりの販売価格は576円と認められる。
b
これに対して、原告は、被告各製品1箱当たりの販売価格は、前記
aの1箱当たりの販売価格を上回り、別紙損害額一覧表の原告の主張の販売価格/箱欄記載のとおりであると主張する。この点について、証拠(甲8、75ないし80)によれば、インターネット上で、被告各製品を使用する顧客に対して、被告製品A1及び2は1箱当たり778円、被告製品A3ないし6は1箱当たり1320円、被告製品A7ないし10は1箱当たり1100円、被告製品B1は1箱
当たり1400円、被告製品B2は1箱当たり2680円、被告製品B3は1箱当たり1980円、被告製品B4ないし6は1箱当たり2220円でそれぞれ販売されていたと認められる。
しかし、証拠(甲8、75ないし80、乙85)及び弁論の全趣旨によれば、被告らは、被告各製品を、これを使用する顧客に対して直
接販売するのではなく、卸売業者を介して販売していたことが認められるから、小売価格である上記金額を採用することはできない。そして、被告らの卸売価格が、原告が主張する上記販売価格のとおりであることを認めるに足りる的確な証拠はない。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。

(エ)

小括

以上によれば、別紙認定額一覧表の推定損害額の売上額欄記
載のとおり、被告製品A1ないし10の売上額の合計は2億6865万7692円であり、被告製品B1ないし6の売上額の合計は1億1814万7392円である。

(ア)

被告各製品の経費
1箱当たりの経費
a
証拠(乙85ないし90)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品A
1及び2を製造するのに、配送費、外箱、中箱、パッケージ、セットアップ及び容器・プッシャーに要する費用並びにテープ・加工費を要するので、被告製品A1の1箱当たりの経費は196円、被告製品A2の1箱当たりの経費は239円と認められる。
そして、被告らは、被告製品A3ないし10及びB1ないし6の経費について具体的に主張しないが、弁論の全趣旨により、それぞれ1箱当たり196円と認めるのが相当である。

b
これに対して、原告は、被告各製品の限界利益は1本当たり7円を
下ることはないから、1箱当たりの経費は別紙損害額一覧表の原告の主張の経費/箱欄記載の金額であると主張する。しかし、そのような事実を認めるに足りる証拠はないから、原告の上記主張は採用することができない。
c
他方で、被告らは、被告各製品を問屋に販売する際、イトウ社に対
してその口座を使用する対価(帳合料)を支払う必要があり、被告製品A1については86円、被告製品A2については49円が経費として認められるべきであると主張する。
しかし、被告フィートジャパンが被告製品A1及び2を1箱販売するごとに、イトウ社に対して上記各金員を負担しなければならない法的な根拠は明らかにされていないし、実際に被告フィートジャパンが
イトウ社に対して上記各金員を支払ったことを認めるに足りる証拠もない。被告製品A3ないし10及びB1ないし6についても同様である。
したがって、被告らの上記主張は採用することができない。
(イ)

小括
以上によれば、別紙認定額一覧表の推定損害額の経費欄記載
のとおり、被告製品A1ないし10の経費の合計は1億0320万2516円であり、被告製品B1ないし6の経費の合計は4020万2932円である。


真実擬制の可否
上記認定に対して、原告は、被告各製品の売上額及び経費を立証するために、書類提出命令を申し立て、被告らは本件対象文書の提出を命じられたにもかかわらずこれを提出しないから、民訴法224条3項により、原告が主張する売上額及び経費を真実と認めるべきであると主張する。
しかし、同項の規定は、裁判所が、審理における当事者の主張及び証拠関係を考慮して、裁量的に当事者の主張を真実と認めることができるとするものである。本件において、被告らは、本件対象文書そのものは提出しなかったものの、その一部であるとして、商品や販売個数等が記載されたFAX発注票等(乙85ないし90)を、取引先や作成者等を黒塗りにし
て提出しており、その他の証拠を勘案して、前記イ及びウのとおりに被告各製品の売上額及び経費を一応合理的に計算することができる。そうすると、現在の証拠関係を前提にすれば、原告が主張するとおりに、上記の計算結果を大きく離れて被告各製品の売上額及び経費を認定することには無理がある。

したがって、本件において、同項により原告が主張する売上額及び経費を真実と認めることは相当でなく、原告の上記主張は採用することができ
ない。

小括
以上によれば、別紙認定額一覧表の推定損害額の利益欄記載の
とおり、被告製品A1ないし10の限界利益の合計は1億6545万5176円であり、被告製品B1ないし6の限界利益の合計は7794万44
60円である。
(2)

推定覆滅事由

推定覆滅の事情
法102条2項における推定の覆滅については,侵害者が主張立証責任を負うものであり,侵害者が得た利益と特許権者が受けた損害との相当因
果関係を阻害する事情がこれに当たると解される。

競合品の存在について

(ア)

証拠(甲20、83、乙30、74、77、78)によれば、以下の
事実を認めることができる。
a
遅くとも平成28年以降、二重瞼形成用アイテムとして販売されて
いる商品の類型には、接着型(粘着剤や両面粘着テープにより瞼の皮膚同士を貼り合わせ、二重瞼のひだの折り返しを固定するもの)、シャッター型(瞼の上にテープを貼り付けるなどして瞼より硬い皮膜を形成し、瞼を開いたときにその皮膜の上縁で瞼の皮膚が折り返されるもの)及び収縮食い込み型(弾性的に縮んだテープ状部材を瞼に食い込ませるもの)が存在した(甲20、乙30)。
b
ビー・エヌ社は、平成30年11月、原告から本件特許権について
の通常実施権の許諾を受け、収縮食い込み型の二重瞼形成用アイテムであるマイクロファイバーを発売した(乙74)。
c
ディー・アップ社は、平成30年3月22日、シャッター型の二重
瞼形成用アイテムであるオリシキを発売した(甲83、乙78)。
d
ドン・キホーテにおいて、平成30年1月1日から同年11月30
日までの期間中、原告製品が6万6564個、オリシキが5万3020個それぞれ販売され、そのほかに、接着型の二重瞼形成用アイテムであるコージーアイトーク、ルドゥーブル及びDUPワンダーアイリッドエクストラが合計29万7490個販売されたが、
マイクロファイバーの販売数は0個であった(乙77)。
また、ドン・キホーテにおいて、平成31年1月1日から令和元年11月30日までの期間中、原告製品が6万0134個、マイクロファイバーが4万0171個、オリシキが12万0644個それぞれ販売され、そのほかに、上記コージーアイトーク、ルドゥーブル

及びDUPワンダーアイリッドエクストラが合計33万6077
個販売された(乙77)。
(イ)

被告らは、原告製品の売上げが伸びずに損害が発生したのは、原告製
品及び被告各製品の競合品であるマイクロファイバー及びオリシキの販売が開始されたからであり、特にマイクロファイバーは販売開始から現在に至るまでに270万個が販売されるほどの人気商品であると主張する。
しかし、マイクロファイバー及びオリシキが販売されたのは、平成30年3月又は同年11月以降であり、前記(1)イ(ア)のとおり、被告各製
品の販売による本件特許権の侵害が認められた期間の一部にすぎない。また、証拠(甲82)によれば、ドン・キホーテにおける原告製品の販売はその販路全体の一部にすぎないと認められるところ、二重瞼形成用アイテムの市場又はそのうち収縮食い込み型の商品の市場における原告製品及び被告各製品の各シェアがどの程度のものであったかを認める
に足りる的確な証拠はない。
さらに、証拠(乙75)及び弁論の全趣旨によれば、令和3年1月頃、
マイクロファイバーの広告には累計販売数270万個突破と記載されていることが認められるが、二重瞼形成用アイテムの市場又は収縮食い込み型の商品の市場において販売された商品全体の個数が明らかではないから、上記の記載のみによってシェアを認定することはできないし、前記(1)イ(ア)のとおり、マクロファイバーの販売が開始されたのは、被
告各製品の販売により本件特許権が侵害されたと認められる期間の半ば頃である上、マイクロファイバーの販売個数の推移も明らかではない。以上によれば、マイクロファイバー及びオリシキが販売されていたことのみをもって、推定の覆滅を認めるのは相当でない。
もっとも、前記(ア)a及びdのとおり、二重瞼形成用アイテムには接着
型、シャッター型及び収縮食い込み型が存在し、ドン・キホーテにおける販売数を見ても、原告製品、マイクロファイバー及びオリシキのほかにも、接着型の二重瞼形成用アイテムが相当数販売されており(ただし、商品ごとに、これを1個購入することにより、どの程度の期間、二重瞼を形成することができるかなどの条件が異なると考えられるため、販売
数を単純に比較することはできない。)、需要者は、収縮食い込み型の被告各製品を購入することができない場合、同じく二重瞼形成用アイテムである接着型の商品やシャッター型の商品を購入することも十分に考えられる。そうすると、原告製品及び被告各製品の競合品が存在することに基づき、法102条2項により推定される損害額の10%について
推定の覆滅を認めるのが相当である。

被告各製品の性能について
被告らは、被告試験結果によれば、被告各製品の延伸後の収縮距離はわずかであり、瞼上で収縮力を発揮していないから、被告各製品は本件発明
の技術的特徴を利用しておらず、また、被告各製品の外装には本件発明の技術的特徴である延伸後の弾性的な伸縮性について言及する記載は一切な
く、被告各製品の売上げはその独自の性能や被告らの宣伝方法によるものであると主張する。
しかし、前記2のとおり、被告各製品は本件発明の技術的範囲に属し、その技術的特徴を利用したものであることは明らかである。また、前記イ(ア)aのとおり、二重瞼形成用アイテムは接着型、シャッター型及び収縮食
い込み型に大別でき、被告各製品を含む本件発明を実施した商品は収縮食い込み型に分類されるところ、証拠(甲11、12、28、39)によれば、被告各製品の外装は、被告各製品が収縮食い込み型の商品であることを表示していると認められるから、顧客に対する宣伝広告として本件発明の技術的特徴を一切訴えていなかったとはいえない。そして、被告各製品
が他にその売上げに寄与する特徴を有していることや、被告らがそれを宣伝広告したことを認めるに足りる証拠はない。
したがって、被告らの上記主張は採用することができない。

小売店における営業方法について
被告らは、第三者に委託して、各小売店において被告各製品の広告宣伝が適切に行われているかを逐次確認し、改善すべき点が見つかれば当該小売店に対して改善を申し入れており、一般には行われていない独自の改善努力をすることにより、売上げを伸ばしていたと主張する。
しかし、証拠(乙79、80)及び弁論の全趣旨によれは、被告フィー
トジャパンは、株式会社CBフィールド・イノベーションに対し、小売店における被告各製品の販売状況を確認し、商品の陳列方法や宣伝広告方法等を改善するなどする業務を委託したことが認められるものの、同社の活動報告書(乙81)を見ても、同社は、小売店を訪れ、売場のメンテナンスとして、取れかかった販促物を設置し直したり、新たに店頭に置くこと
となった商品について、販促物を追加して設置したりしたにとどまり、通常の販売方法を超える営業努力を行ったとまではいえず、他に被告らにお
いて特段の営業努力を行ったことを認めるに足りる証拠はない。
したがって、被告らの上記主張は採用することができない。

本件発明の技術的価値について
被告らは、しわ形成のために延伸後の弾性的な伸縮性を利用するという発想は、乙11発明にあるように、本件特許の出願以前から知られていた
ものであり、本件発明は新たな技術的発想を開示するものではないから、その技術的価値は小さいと主張する。
しかし、前記3のとおり、乙11発明を主引用発明又は副引用発明として考慮したとしても、本件発明には進歩性が認められるから、本件発明が新たな技術的発想を開示するものではないとはいえず、直ちにその技術的
価値が小さいともいえない。
したがって、被告らの上記主張は採用することができない。
(3)

小括

被告フィートジャパンに対する損害額

(ア)

前記(1)オのとおり、被告フィートジャパンが被告製品A1ないし10
を販売したことにより受けた限界利益は、別紙認定額一覧表の推定損害額の利益欄記載のとおりであり(合計1億6545万5176円)、前記(2)イのとおり、上記の限界利益の額に基づく原告の損害額の推定につき、10%の覆滅を認めるべきであるから、逸失利益に相当する損害の合計額は、1億4890万9658円と認められる(小数点以下四捨五入)。
そして、被告フィートジャパンの上記不法行為と相当因果関係の認められる弁護士費用相当額は、1400万円と認めるのが相当である。(イ)

前記(ア)の損害は、被告フィートジャパンが被告製品A1ないし10を
販売するごとに生じたと認められるところ、被告製品A1及び2については、その全てが原告の主張する遅延損害金の起算日である平成30年
6月14日より前に販売され、これらに係る損害が生じたといえるから、被告製品A1及び2に係る損害の損害賠償請求権の遅延損害金の起算日は同日と認めるのが相当である。
他方で、被告製品A3ないし10については、これらの販売されていた期間である平成29年8月から令和元年12月までの間に、損害が発
生した具体的な日を特定する証拠はないから、遅延損害金の起算日は上記期間の最終日である同月31日と認めるのが相当である。
したがって、被告製品A1及び2に係る逸失利益に相当する損害額並びに被告製品A3ないし10に係る逸失利益に相当する損害額は、別紙認定額一覧表の逸失利益(覆滅後)欄記載のとおりであり、これら
の金額に基づき、弁護士費用相当額を按分すると、同弁護士費用相当額欄記載のとおりとなる。原告の請求額の元本額は1億6000万円であり、これは被告製品A1ないし10に係る損害額の合計である1億6290万9658円を下回るが、原告は、遅延損害金の起算日がより前の被告製品A1及び2に
係る請求から認容することを求めるものと解されるので、被告製品A1及び2に係る損害額である17万7231円について平成30年6月14日からの遅延損害金を認容し、残りの請求額の元本額である1億5982万2769円(1億6000万円-17万7231円)について令和元年12月31日からの遅延損害金を認容することとする。


被告センティリオンに対する損害額

(ア)

前記(1)オのとおり、被告センティリオンが被告製品B1ないし6を販
売したことにより受けた限界利益は別紙認定額一覧表の推定損害額の利益欄記載のとおりであり(合計7794万4460円)、前記(2)イのとおり、上記の限界利益の額に基づく原告の損害額の推定につき、10%の覆滅を認めるべきであるから、逸失利益に相当する損害の合計
額は、7015万0014円と認められる。
そして、被告フィートジャパンの上記不法行為と相当因果関係の認められる弁護士費用相当額は、700万円と認めるのが相当である。(イ)

前記(ア)の損害は、被告センティリオンが被告製品B1ないし6を販売
するごとに生じたと認められるところ、被告製品B1ないし6について
は、これらの販売されていた期間である平成29年8月から令和元年12月までの間に、損害が発生した具体的な日を特定する証拠はないから、遅延損害金の起算日は上記期間の最終日である同月31日と認めるのが相当である。
第5結論
以上によれば,原告の被告フィートジャパンに対する請求は1億6000万円並びにうち17万7231円に対する平成30年6月14日から支払済みまで年5分の割合による金員及びうち1億5982万2769円に対する令和元年12月31日から支払済みまで同割合による金員の支払を求める限度で理由
があるから認容し、被告センティリオンに対する請求は7715万0014円及びこれに対する令和元年12月31日から支払済みまで同割合による金員の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部

裁判長裁判官

國分隆文
裁判官

小川矢野暁
裁判官

紀夫
(別紙)

被告製品目録1

A1

ストロングファイバー

シングルワイドⅡ

A2

ストロングファイバー

ダブルツイストⅡ

A3

ディファイウルトラファイバーⅡ

透明

1.2mm幅

A4

ディファイウルトラファイバーⅡ

肌色

1.2mm幅

A5

ディファイウルトラファイバーⅡ

透明

1.6mm幅

A6

ディファイウルトラファイバーⅡ

肌色

1.6mm幅

A7

FDブリッジファイバーⅡ

1.4mm幅

A8

FDブリッジファイバーⅡ

肌色

A9

FDブリッジファイバーⅡ

1.6mm幅

A10

FDブリッジファイバーⅡ

1.8mm幅

1.4mm幅

以上
(別紙)

被告製品目録2

B1

リュクススーパーファイバーⅡ

1.4mm幅

B2

リュクススーパーファイバーⅡ

1.6mm幅

B3

リュクススーパーファイバーⅡ

1.8mm幅

B4

パワーファイバーシングルスレッド

B5

パワーファイバーダブルスレッド

B6

パワーファイバーシングルプロップ
以上
(別紙)

本件明細書図面

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図10】

【図11】

以上
(別紙)

乙号証文献図面

1乙8文献

2乙9文献
【図1】

【図2】

(実施例1の左目用の正面図)

(実施例1の使用状態を示す斜視図)

【図3】
(実施例1の使用状態を示す断面図)

3乙31文献

以上
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