判例検索β > 平成27年(ワ)第3936号
損害賠償請求事件
事件番号平成27(ワ)3936
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日令和4年3月10日
法廷名福岡地方裁判所
全文全文添付文書1添付文書2添付文書3添付文書4添付文書5
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2022-03-10
情報公開日2022-04-08 04:00:12
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主文
1被告東芝は、別紙2(請求の趣旨一覧)の原告名欄記載の各原告(ただし、原告甲1、原告甲7、原告甲18及び原告甲20を除く。)に対し、各原告に係る同別紙の認容額の認容額合計欄記載の各金員及びこれに対する平成27年5月8日から各支払済みまで年5パーセントの割合による金員を
支払え。
2原告甲1、原告甲7、原告甲18及び原告甲20の請求並びに前項の各原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は、別紙3(訴訟費用負担一覧)記載のとおりの負担とする。4この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1
被告東芝、被告乙4、被告乙5、被告乙6及び被告乙7は、連帯して(ただし、下記2項及び3項の限度で、被告乙1、被告乙2及び被告乙3とも連帯して)、別紙2の原告名欄記載の各原告に対し、各原告に係
る同別紙の請求額の損害合計欄記載の各金員及びこれに対する平
成27年5月8日から各支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2
被告乙1は、被告東芝、被告乙4、被告乙5、被告乙6及び被告乙7と連帯して、別紙2の原告名欄記載の各原告に対し、各原告に係る同別
紙の請求額の損害合計(乙1分)欄記載の各金員及びこれに対す
る平成27年5月8日から各支払済みまで年5パーセントの割合による金員を、亡丙の相続財産の限度において支払え。
3
被告乙2及び被告乙3は、被告東芝、被告乙4、被告乙5、被告乙6及び被告乙7と連帯して、別紙2の原告名欄記載の各原告に対し、各原告に係る同別紙の請求額の損害合計(乙2・乙3分)欄記載の各
金員及びこれに対する平成27年5月8日から各支払済みまで年5パーセントの割合による金員を、亡丙の相続財産の限度において支払え。第2事案の概要
本件は、被告東芝が発行する株式(以下被告株式という。)の取引を行った原告らが、被告東芝が提出し公衆の縦覧に供された平成20年度(第170期)から平成26年度(第176期)の第3四半期までの期間に係る有価証券報告書及び四半期報告書には、同社の不適切な会計処理に起因する重要な事項についての虚偽記載があり、これによって損害を被ったと主張して、①被告東芝に対しては、金融商品取引法(以下、平成26年法律第44号による改正
の前後を問わず、金商法という。)21条の2第1項又は不法行為に基づき、②被告東芝の役員であった亡丙(訴訟承継前の被告)、被告乙4、被告乙5、被告乙6及び被告乙7(以下、併せて被告役員らという。)に対しては、金商法24条の4が準用する同法22条、会社法429条又は不法行為に基づき、損害賠償請求の一部請求として、別紙2の請求額の損害合計
欄記載の各金員及びこれに対する被告東芝が不適切会計の調査経過等に関する告知を行った平成27年5月8日から各支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。
なお、亡丙は、本件訴訟係属中の平成29年12月8日に死亡し、被告乙
1、被告乙2及び被告乙3が亡丙の相続を限定承認して本件訴訟を承継したため、これらの相続人らについては、上記損害賠償金及び遅延損害金につき、各相続分に応じて他の被告らとの連帯支払を求める請求に変更された。1前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)



当事者等

原告らは、被告株式を取得し、売却する等の取引を行った者である。イ
被告東芝は、電気機械器具製造業等を目的とする株式会社であり、会社法上の指名委員会等設置会社(平成26年法律第90号による改正前の会社法上の委員会設置会社)である。
被告東芝は、原告らが被告株式を取得した当時(後記⑶参照)、東京証
券取引所市場第一部に上場していた。

被告東芝における事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとされており、例えば、第170期は、平成20年4月1日から平成21年3月31日までの1年間であった。
ウ(ア)被告役員らは、いずれも被告東芝の役員を務めていた者であり、その在任期間及び地位は、別紙4(被告役員一覧)記載のとおりである。
(甲A66⑪⑫、弁論の全趣旨)
(イ)亡丙は、平成29年12月8日に死亡し、その妻である被告乙1並びに子である被告乙2及び被告乙3が、亡丙の有していた権利義務(及び本件訴訟における被告としての地位)を承継した。
ただし、被告乙1、被告乙2及び被告乙3は、横浜家庭裁判所に対し
て限定承認の申述をし、同裁判所は、平成31年3月26日、当該申述を受理するとともに、被告乙3を相続財産管理人に選任した。そして、被告乙3は、同年4月2日、同年3月26日に限定承認をした旨及び一切の相続債権者及び受遺者は2か月以内に請求の申出をすべき旨を公告した。

(乙B13から15まで)


被告東芝による有価証券報告書等の提出
被告東芝は、関東財務局長に対し、別紙5(本件訂正報告書による有価証券報告書等の訂正一覧)記載のとおり、平成21年6月から平成27年2月
にかけて、第170期から第175期までの有価証券報告書及び第176期第3四半期の四半期報告書(以下、有価証券報告書と四半期報告書を併せて有価証券報告書等といい、同別紙記載の有価証券報告書等を本件有価証券報告書等という。)を提出した。本件有価証券報告書等においては、連結財務諸表に、売上高、継続事業からの税金等調整前当期純利益(△損失)(以下継続事業税引前当期純損益という。)、当社株主に帰属する当期純利益(△損失)(以
下当期純損益という。)、株主資本、純資産額及び総資産額の各項目について、同別紙の各提出時の金額欄記載のとおりの金額が記載されていた。
また、本件有価証券報告書等は、同別紙の各提出日記載の頃に、それぞれ公衆の縦覧に供された。
なお、本件有価証券報告書等においては、組替え(米国会計基準の要求に従い、ある財務報告の時点における非継続事業〔既に処分された又は処分予定の事業〕について、時点の異なる財務情報の比較可能性の確保のため、当該財務報告において比較対象として記載される過去の財務諸表においても非継続事業であったものとして遡及修正を行うこと)等の影響により、同一の
期・項目について、それぞれ異なる金額が記載されているものがあるが、同別紙では証拠欄に表示された証拠に記載された数値を引用している。(甲A2、3、5、7、9、11、13、54、乙A42、弁論の全趣旨)⑶

原告らによる被告株式の取得及び処分
原告らは、別紙6(取引履歴一覧)記載のとおり、被告株式の取得及び処
分を行った。(乙A45①②、各調査嘱託の結果、弁論の全趣旨)⑷

本件有価証券報告書等の訂正に至る経緯等

被告東芝は、平成27年2月12日、証券取引等監視委員会から、金商法26条に基づき報告命令を受けるとともに、工事進行基準案件等について開示検査を受けた。(甲A15、乙A2)


被告東芝は、平成27年4月3日、特別調査委員会の設置に関するお知らせと題する書面を公表した。同書面においては、平成25年度における一部インフラ関連の工事進行基準に係る会計処理について、調査を必要とする事項が判明したとして、被告東芝において社外の専門家を含む特別調査委員会を設置し、事実関係の調査を行う旨が記載されていた。

(乙A6、乙D36)

被告東芝は、平成27年5月8日、第三者委員会設置のお知らせ、剰余金の配当(期末)に関するお知らせ、業績予想の修正に関するお知らせと題する各書面を公表した。これらの書面においては、○上記イ記載の特別調査委員会による調査のⅰ
過程で、一部インフラ関連の工事進行基準案件において、工事原価総額が過少に見積もられ、工事損失(工事損失引当金を含む。)が適時に計上されていない等の事象が判明したこと、○上記○以外にもさらなる調査を必ⅱ

要とする事項が判明したことから、特別調査委員会の枠組みから日本弁護士連合会が定めるガイドラインに準拠した第三者委員会による調査の枠組
みに移行する旨を決定したこと、○特別調査委員会によるそれまでの調査ⅲ
結果によれば、平成25年度以前の過年度決算修正を行う可能性が生じており、これと併せて平成26年度決算への影響額を見極めていることから、決算発表は平成27年6月以降となる見込みであること、○被告東芝ⅳ
の取締役会で同年3月末日を基準日とする剰余金の配当を無配とする旨を
決議したこと、○平成26年度通期の業績予想について、同年9月18日ⅴ
に公表した前回予想を修正して未定とすること等が記載されていた。(甲A66①~③、乙A12)

被告東芝は、平成27年5月13日、現時点で判明している過年度修正額見込み及び第三者委員会設置に関する補足説明と題する書面を公表した。
これらの書面においては、○現時点で判明している過年度修正額見込ⅰみとして、工事原価総額の過少見積りとそれに伴う工事損失(引当金)計上時期に関する過年度の要修正額として、平成23年度から平成25年度までの累計の営業損益ベースで▲(マイナス)500億円強を見込んでいるが、この見込みは同日時点におけるものであり、新たに設置される第
三者委員会における判断とは異なる可能性があること、○特別調査委員会ⅱ
の調査の過程で、工事進行基準案件以外にも、さらなる調査が必要な事項(損失引当計上の時期及び金額の妥当性、経費計上時期の妥当性、在庫の評価の妥当性等)が判明しており、被告東芝として、全社的・網羅的に調査する必要があると判断したこと、○上記○記載の事項によりさらなる過ⅲⅱ
年度決算の修正が必要となるか否か、必要となった場合の要修正額の規模は同日時点で不明であること等が記載されていた。
(甲A66④、乙A31)

被告東芝は、平成27年5月22日、第三者委員会の調査対象に関するお知らせと題する書面を公表した。
同書面においては、①工事進行基準案件に係る会計処理、②映像事業における経費計上に係る会計処理、③ディスクリート、システムLSIを主とする半導体事業における在庫の評価に係る会計処理、④パソコン事業における部品取引等に係る会計処理の調査を第三者委員会に委託することが記載されていた。

(甲A66⑤、乙A32)

第三者委員会は、平成27年7月20日、上記オ記載の各会計処理等に関する調査報告書(以下本件報告書という。甲A28②、29②)を取りまとめた。

第三者委員会は、本件報告書において、被告役員らの関与の下で、①工事進行基準案件(A案件からS案件まで)において、工事原価総額の過少見積りによる損失引当金の過少計上又は未計上等の不適切な会計処理が行われた、②映像事業において、C/О(キャリーオーバー。当期で引き当てるべき引当金を計上しなかったり、経費の計上を翌期以降に先延ばしにしたりすることで見かけ上の当期利益を嵩上げすること。)と称する損益調整による不適切な会計処理が行われた、③ディスクリート、システムL
SIを主とする半導体事業において、滞留在庫につき適切な時期に評価損を計上しない、期中前工程のTOV(標準原価)改定による当期利益の嵩上げ等の不適切な会計処理が行われた、④パソコン事業において、マスキング価格を用いたODM先とのBuy-Sell取引(被告東芝又はその子会社が部品を購入し、ODM先に有償支給する部品取引と、部品供給を
受けたODM先が自己調達部品と合わせてパソコンを製造し、上記子会社に納入する完成品取引を総称する取引)により部品供給量を調整し、取引実態に沿わない利益が計上される等の不適切な会計処理が行われた等の判断を示しており、被告東芝の過年度の連結会計について、別紙7(第三者委員会指摘要修正額)記載のとおりの修正が必要であるとした。

(甲A29②)

被告東芝は、平成27年7月20日、第三者委員会調査報告書の受領及び判明した過年度決算の修正における今後の当社の対応についてのお知らせと題する書面を公表した。同書面においては、本件報告書に基づく第三者委員会への嘱託事項に関
する過年度決算の要修正額は、第170期から第176期第3四半期までの累計で▲1518億円となること(別紙7参照)、被告東芝の自主チェックによる要修正額が上記期間の累計で▲44億円となること等が記載されるとともに、本件報告書の要約版が添付されていた。
(甲A28①②、66⑨)

被告東芝は、平成27年7月21日、第三者委員会の調査報告書全文の公表及び当社の今後の対応並びに経営責任の明確化と題する書面を公表し、併せて本件報告書の全文を公表した。(甲A29①②、66⑩)ケ
被告東芝は、平成27年8月18日、新経営体制及びガバナンス体制改革策並びに過年度決算の修正概要及び業績予想についてのお知らせと題する書面を公表した。

同書面においては、過年度決算の修正内容の概要(ただし、未確定のもの。)として、継続事業税引前当期純損益について、本件報告書記載の要修正額に自主チェック、固定資産の減損、派生影響等を含む修正額を加えた額が累計▲2130億円(第170期:▲803億円、第171期:▲372億円、第172期:153億円、第173期:▲854億円、
第174期:▲796億円、第175期:▲9億円、第176期第1四半期から第3四半期まで:551億円)である旨等が記載されていた。(甲A66⑬)

被告東芝は、平成27年9月7日、

過年度決算の修正、2014年度決算の概要及び第176期有価証券報告書の提出並びに再発防止策の骨子等についてのお知らせ

と題する書面を公表した。同書面においては、過年度決算の修正作業及び平成26年度の決算作業が監査手続も含めて終了した旨のほか、過年度決算の修正内容の概要として、継続事業税引前当期純損益について、本件報告書記載の要修正額に自主チェック、固定資産の減損、派生影響等を含む修正額を加えた額が
累計▲2248億円(第170期:▲764億円、第171期:▲415億円、第172期:71億円、第173期:▲840億円、第174期:▲847億円、第175期:14億円、第176期第1四半期から第3四半期まで:533億円)である旨等が記載されていた。
(甲A32、37、66⑯、乙F1)



被告東芝による本件有価証券報告書等の訂正
被告東芝は、平成27年9月7日、関東財務局長に対し、本件有価証券報告書等の各期について訂正を行う報告書(以下、併せて本件訂正報告書という。)を提出した。
本件訂正報告書は、本件有価証券報告書等のうち、売上高、継続事業税引前当期純損益、当期純損益、株主資本、純資産額及び
総資産額等の項目につき訂正を行うものであり、これらの項目の訂正後の金額は、別紙5の各訂正後の金額欄記載のとおりである。
なお、第170期有価証券報告書については訂正報告書が提出されていないため、同期の訂正後の金額については、第171期の訂正報告書に過年度分として記載された数値を引用している。

(甲A4、6、8、10、12、13、55、乙A1、41)


金融庁による課徴金納付命令等

証券取引等監視委員会は、平成27年12月7日、金融庁に対し、被告東芝の有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告を行った。(甲A15、乙A2、乙F2)


金融庁長官は、平成27年12月24日、被告東芝が①工事進行基準案件の一部において、工事損失引当金の過少計上及び売上げの過大計上を行ったほか、②映像事業、③半導体事業及び④パソコン事業等の一部において、売上原価の過少計上、費用の過少計上等を行った結果、○第171期ⅰ
有価証券報告書に、同期における連結当期純損益が539億4300万円(100万円未満切り捨て。以下同じ。)の損失であるところを197億4300万円の損失と記載したこと、○第173期の有価証券報告書ⅱ
に、同期における連結当期純損益が31億9400万円の利益であるところを700億5400万円の利益と記載したこと、○第174期有価ⅲ
証券報告書に、同期における連結当期純損益が134億2500万円の利益であるところを773億6600万円の利益と記載したことは、いずれも有価証券報告書における重要な事項についての虚偽記載に当たる等として、被告東芝に対し、平成28年2月25日を納付期限として課徴金73億7350万円を納付するよう命ずる決定(以下本件課徴金納付命令という。)をした。なお、被告東芝は、本件課徴金納付命令に先立つ審判手続において、金
商法178条1項2号及び4号に係る事実並びに納付すべき課徴金の額を認める旨の答弁書を提出していた。
(甲A16、乙A3、14、乙D17、乙E4、乙F6①)⑺

被告株式の株価推移
被告株式の平成27年及び平成28年の株価(以下、株価は全て終値を指
す。)の推移は、別紙8(株価推移)記載のとおりである。
なお、被告株式については、平成30年10月1日を効力発生日として10株を1株とする株式の併合が行われている。
(乙A13、55、乙C45①②、乙F3、6②、弁論の全趣旨)⑻

本件訴訟の提起
原告らは、①平成27年12月21日に第1事件、②平成28年3月28日に第2事件、③同年8月9日に第3事件をそれぞれ提起した。(裁判所に顕著な事実)

2争点


本件有価証券報告書等における重要な事項についての虚偽の記載の有無及
び範囲


被告らの金商法21条の2、同法24条の4が準用する22条、会社法4
29条又は不法行為に基づく責任

原告らの損害の発生及びその額

3争点に関する当事者の主張


本件有価証券報告書等における重要な事項についての虚偽の記載の有無及び範囲について
(原告らの主張)
ア(ア)一般に、有価証券報告書等の訂正が行われるのは、訂正前の有価証券報告書等に虚偽があることが理由であるから、本件有価証券報告書等のうち被告東芝による訂正前後で記載が異なる箇所は全て虚偽の記載であ
る。
また、金商法に基づく責任追及に際しては虚偽記載の存否が問題となるにとどまるから、原告らは虚偽の内容を主張立証すれば足り、公正な会計基準(慣行)を含む真実の内容を主張立証する必要はないし、虚偽記載の範囲(増減額)や各案件の不正な会計処理の内容を特定
して主張立証する必要もない。
(イ)本件報告書は、被告東芝において不適切な会計処理が存在し、それに基づき本件有価証券報告書等の当期純損益等の数値に誤った記載がされたことを明らかにしているところ、本件報告書は被告東芝が約10億円の費用をかけて作成させたものであり、その記載内容には高度の信
用性が認められる。原告らは、同報告書の記載を引用する等して本件有価証券報告書等に虚偽の記載があることを補強しており、それ以上の詳細な主張立証は不要である。

そして、有価証券報告書等のうち、当期純損益、純資産、株主資本の項目は、投資判断指標(PER・PBR・ROE)の算定に用いられるものであるし、売上高、総資産額等は被告東芝自身が
主要な経営指標の推移として挙げており、その訂正規模からしても投資者の判断に影響を与えることは明らかである。本件有価証券報告書等に重要な事項についての虚偽の記載が存在することに疑いを差し挟む余地は
ない。
(被告東芝の主張)

被告東芝は、本件有価証券報告書等のうち、第171期、第173期及
び第174期の各有価証券報告書の連結財務諸表における当期純損益に重要な事項について虚偽の記載が存在したことは争わない(ただし、訂正の全額が虚偽記載であると認めるものではない。後記イ及びウ参照)が、その他の継続開示書類については、重要な事項についての虚偽記載は存在しない。
金商法21条の2に基づく請求においては、被告東芝の会計処理が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に照らして許容されないものであり、かつ法的に虚偽と評価される程度の違反であることを主張立証する必要があるが、原告らは、その内容である会計処理の基礎となる個別具体的
な事実関係、被告東芝が違反したとする会計基準の内容及び理由、会計基準違反の結果等につき何ら具体的な主張立証を行っていない。

減損損失の追加計上分は虚偽記載に当たらないこと
被告東芝は、第170期以降の減損(米国会計基準においては、長期性の資産〔資産グループ〕の帳簿価額が公正価値を超えている状況を指
す。)損失の追加計上を行っているところ、これらは同基準で認められる範囲内で可能な限り簡便かつ保守的に見積もる方向で訂正を行ったものであり、過年度の各決算当時に認識すべきであった減損損失を認識していなかったために追加計上したものではない。
本件有価証券報告書等の当期純損益の訂正のうち、減損損失の追加
計上分(実効税率を控除後の数値は、第170期:▲24768百万円、第171期:▲5310百万円、第172期:▲6161百万円、第173期:▲35000百万円、第174期:▲16093百万円、第175期:▲9685百万円。)は、虚偽記載に当たらない。

組替えによる訂正部分は虚偽記載に当たらないこと
被告東芝は、第173期中に買収したランディス・ギア社および第174期中に買収したIBM社のリテール・ストア・ソリューション事業について、各買収の翌期の財務諸表にPPA(Purchase

Price

Allocation)の手続を反映させるとともに、各買収の当期の財務諸表を遡及的に組み替えて表示した。
本件有価証券報告書等の当期純損益の訂正のうち、上記各買収の翌
期の有価証券報告書提出時点で実施済みであったこれらの組替え分(第173期:▲3651百万円、第174期:▲167百万円)は、虚偽記載に当たらない。

当期純損益以外の項目は重要な事項についての虚偽記載に当たらな
いこと
本件有価証券報告書等における売上高、株主資本、純資産、総資産の訂正比率は、被告東芝の事業規模等に照らして明らかに小さく、重要な事項についての虚偽記載に該当しない。また、株主資本、純資産及び継続事業税引前当期純損益は、いずれも企業の現在の収益力とは直接関係せず、当期純損益と比べて投資判断に与え
る影響は限定的であり、重要な事項についての虚偽記載に該当しない。オ
当期純損益の改善又は訂正比率僅少
第172期及び第175期の有価証券報告書並びに第176期第3四半期報告書の当期純損益は、いずれもプラスに修正されており(別紙5
参照)、被告株式を取得するという投資判断を誤らせる内容の重要な事項についての虚偽記載は存在しない。
また、第170期は、被告東芝が過去最大の損失(▲3989億円)を計上した年度であるところ、▲553億円という訂正額は相対的に低額である上、極めて多額な過去最大の損失という情報に影響を与えるものでも
ないから、同期の有価証券報告書に重要な事項についての虚偽の記載があるとはいえない。
(被告役員らの主張)

原告ら主張の本件有価証券報告書等の虚偽記載については、否認する。虚偽とは一般に公正妥当と認められる会計基準(慣行)に違反することを指し、被告東芝が本件有価証券報告書等の訂正を行ったからといって、直ちに訂正前の記載に虚偽があるとはいえない。本件有価証券報告書等に
虚偽記載があると主張するのであれば、問題となる会計処理が行われた取引を特定し、不正の内容(いかなる公正妥当と認められる会計基準を、どのような方法で違反した結果、いくらの虚偽の記載が生じたのか)を特定しなければならないが、原告らはこれらの事項を主張立証していない。また、仮に虚偽記載が認められるとしても、利益額があるべき数値より
低く記載されていた部分や、被告東芝の事業内容や事業規模からして訂正前後の差額が僅少な部分もあり、投資判断に大きな影響を与えたとはいえないから、重要な事項についての虚偽記載に該当しない。

本件報告書は、本件有価証券報告書等の虚偽記載の有無について認定を
行ったものではなく、本件報告書において損益影響額とされた金額と被告
東芝が実際に訂正した額も一致していない。第三者委員会の認定に反する資料が多数存在するにもかかわらず(被告役員らも十分な手続保障や攻撃防御の機会が与えられなかった。)、それらを採用しない根拠も説明されていない等、事実認定のプロセスが不明であるほか、具体的案件ごとに採用されるべき公正妥当な会計基準(慣行)が明らかにされておらず、その
記載内容を本件訴訟における認定の基礎にすることは許されない。⑵

被告らの金商法21条の2、同法24条の4が準用する22条、会社法4
29条又は不法行為に基づく責任
(原告らの主張)

被告東芝の責任
(ア)金商法21条の2
前記⑴(原告らの主張)記載のとおり、本件有価証券報告書等には重要な事項について虚偽の記載があるから、それらの提出者である被告東芝は、金商法21条の2第1項に基づき、原告らに生じた損害を賠償する責任を負う。
除斥期間を定めた金商法21条の3を文面どおりに適用すると、有価証券報告書の虚偽を巧妙に隠匿した方が有利になり妥当でないから、虚偽記載が存在する場合には

当該書類が提出され、後に虚偽記載が判明した時から5年間

と読み替えるべきである。本件有価証券報告書等の虚偽記載が判明したのは平成27年5月8日であり、同条により被告東
芝が損害賠償責任を免れることはない。
(イ)不法行為
被告東芝は、その提出する有価証券報告書等について、①ある会計年度において新しく重要な事項についての虚偽記載をしないように配慮すべき注意義務及び②過去に提出した有価証券報告書等についての虚偽記
載を速やかに発見し、修正し、公表する注意義務を負っていたところ、前記⑴(原告らの主張)記載のとおり、第170期から第176期にかけて1期当たり何百億円もの虚偽記載を重ねたのであるから、上記各義務に違反していることは明らかである。
また、証券取引所に上場している被告東芝は、③その発行する有価証
券に関する投資判断に影響を与える重要な会社情報につき、一般投資者に対し、直ちに開示すべき注意義務を負っていると解される。被告東芝が本件有価証券報告書等における虚偽記載の事実を小出しに公表したこと(前記前提事実⑷参照)は、上記適時開示義務に違反する。さらに、被告東芝は、第170期有価証券報告書の提出以前に被告株
式を取得した原告らに対する関係においても、④有価証券報告書等の虚偽記載につながる不正な会計処理が発生しないように、日常的に業務を監視するべき注意義務及び⑤株主に対して不正な会計処理が発生し進行している旨を公表すべき注意義務を負っていた。
被告東芝は、不法行為に基づき、原告らに生じた損害を賠償する責任を負う。

被告役員らの責任
(ア)金商法24条の4が準用する同法22条1項
前記⑴(原告らの主張)記載のとおり、本件有価証券報告書等には重要な事項について虚偽の記載があるから、それらの提出時に被告東芝の役員等であった被告役員らは、金商法24条の4が準用する同法22条
1項に基づき、原告らに生じた損害を賠償する責任を負う。
(イ)会社法429条
前記⑴(原告らの主張)記載のとおり、本件有価証券報告書等には重要な事項についての虚偽の記載(会社法429条2項1号ロ)があるから、それらの提出時に被告東芝の役員等であった被告役員らは、同項に
基づき、原告らに生じた損害を賠償する責任を負う。
また、被告東芝は適時開示義務違反について不法行為責任を負う(前記ア(イ)参照)ところ、被告役員らは、悪意又は重大な過失により適時開示義務に違反したものとして、同条1項に基づき、原告らに生じた損害を賠償する責任を負う。

(ウ)不法行為
被告東芝の役員であった被告役員らは、被告東芝と同様に①ある会計年度の有価証券報告書等において新しく重要な事項についての虚偽記載をしないように配慮すべき注意義務及び②過去に提出した有価証券報告書等についての虚偽記載を速やかに発見し、修正し、公表する注意義務
を負っていたほか、有価証券報告書等の虚偽記載を完全に封じるために、③自分が役員を退く際にその任期中に提出された有価証券報告書等の重要な事項について虚偽記載がないかどうかを速やかに発見し、修正し、公表する注意義務及び④前任者の時代に提出された有価証券報告書等の重要な事項について虚偽記載がないかどうかを速やかに発見し、修正し、公表する注意義務をも負っていた。それにもかかわらず、被告役員らは、本件有価証券報告書等に虚偽の記載を行い(前記⑴〔原告らの主張〕参照)、またその是正措置を執らなかったのであるから、役員としての任期にかかわらず、全ての虚偽記載について、注意義務違反が認められる。
また、被告役員らは、⑤被告東芝の発行する有価証券に関する投資判
断に影響を与える重要な会社情報につき、一般投資者に対し、直ちに開示すべき注意義務に違反したものとして、被告東芝と同じくこの点についても不法行為責任を負う。
(被告東芝の主張)
本件有価証券報告書等の訂正は、被告東芝における複数の事業・案件に関
する記載が含まれており、各会計処理に関与した被告東芝の役員及び従業員は異なっているにもかかわらず、原告らは、被告東芝の加害行為及び故意過失について何ら具体的な主張を行っていない。不法行為請求に係る請求原因事実の特定として明らかに不十分である。
(被告役員らの主張)

有価証券報告書等を提出する会社の役員は、その職責として当該会計年度において作成する有価証券報告書等に重要な事項について虚偽記載をしないように配慮すべき義務を負うとしても、役員が負うべき注意義務の内容は、役員ごとの個別具体的な事情に基づいて判断されるべきものであり、一律に被告東芝と同様の注意義務を負うものではないし、役員として作成に関与し
ていない過去の有価証券報告書等に虚偽があることまで発見、修正、公表する義務を負うとは考えられない。
原告らは、被告役員らのどのような行為が注意義務違反に該当するのか特定しておらず、失当である。また、被告役員らは、極めて大規模な会社である被告東芝の役員として、他の部門等が適正に職務を執行していることを信頼しつつ、自らの所管業務に可能な限り注意を尽くしていたから、相当の注意(金商法21条2項1号)を払っていたといえるほか、会社法429条に
おける任務懈怠、不法行為における故意過失がない。
有価証券報告書の提出者の責任を限定する趣旨で設けられた金商法21条の3の趣旨は提出者の役員にも妥当し、同条は役員の同法に基づく責任についても類推適用されるべきである。被告役員らが損害賠償債務を負うとしても、本件有価証券報告書等の提出から訴訟提起までに5年が経過している場
合には、除斥期間経過により同債務は消滅した。


原告らの損害の発生及びその額
(原告らの主張)

原告らの損害
原告らは、本件有価証券報告書等の重要な事項についての虚偽記載によ
り嵩上げ額損害、信用毀損等損害及びろうばい売り等損害を被った。被告株式は平成28年2月12日に155円という最安値を記録したところ、かかる最安値は上記の結果に他ならない(虚偽記載以外に原因はない)から、同日までに被告株式を処分した原告との関係では取得時の株価と処分時の差額が損害となり、同日以降も被告株式を保有していた原告と
の関係では、取得時の株価から155円を控除した額が損害となる。イ
原告らの請求額
(ア)取得自体損害(主位的主張)
原告らは、本件有価証券報告書等に正確な情報が記載されていると信
じて被告株式を取得した者であるが、前記⑴(原告ら主張)の悪質かつ甚大な規模の虚偽記載に関する情報が当初から記載されていれば、被告株式を取得することはあり得なかったから、その取得のための支出自体が原告らの損害となる。
原告らの具体的な損害額は、被告株式の取得に要した費用の総額を基礎とし、現在保有されている株式については、一部請求の趣旨で一株当たり180円の評価額を控除し、処分済みの株式については、処分によ
り得られた処分額を控除した別紙2の請求額の株式損害欄記載
のとおりである(なお、原告らは、金商法21条の2第3項に基づく損害推定については主張していない。)。
(イ)高値取得損害(予備的主張)
仮に取得自体損害が認められず、高値取得損害が妥当するとしても、
原告らが被告株式を取得した時点での実態株価はほぼ皆無と評価せざるを得ず、請求額に差異は生じない。

取引諸経費
原告らが被告株式の取引に要した諸経費(有価証券の購入・売却の際の手数料及び消費税、信用取引の信用買新規の手数料及び消費税、信用取引
の信用売決済の手数料及び消費税、信用取引の金利、信用取引の管理費及び消費税)も、原告らの損害である。

弁護士費用
上記アからウまでの損害の1割に相当する弁護士費用も原告らの損害である。


遅延損害金
原告らの損害は被告株式取得時点に発生しているところ、本件訴訟においては、一部請求として、被告東芝が最初に虚偽記載を公表した平成27年5月8日以降の遅延損害金の支払を求める。

(被告らの主張)

損害賠償の範囲について
(ア)本件は虚偽記載なければ取得なしとはいえない事案であるから、被告株式の取得価額から処分価額を控除した残額分が原告らの損害である(取得自体損害)とは認められない。投資者の判断は被告株式を適正な価額で取得することについてのみ歪められているため、虚偽記載によって嵩上げされていた株式の価値に相当する額の金銭等の支出をし
たことは損害となり得る(高値取得損害)が、信用毀損等損害及びろうばい売り等損害については、一般的な株価下落リスクが顕在化したものとして投資者が引き受けているほか、いわゆる間接損害にすぎないから、本件における賠償の対象とはなり得ない。
(イ)また、上記高値取得損害の論理的な帰結として、被告東芝が重要な事
項についての虚偽記載がある有価証券報告書を提出した日より前に取得された被告株式は損害賠償の対象となり得ないほか、被告株式取得後になされた虚偽記載に起因する株価下落は、当該株式との関係では、相当因果関係ある損害に含まれない。
(ウ)さらに、被告東芝は平成27年4月3日に過年度決算の修正について
具体的に警告を行い(前記前提事実⑷イ参照)、これにより投資者は被告東芝の過年度の有価証券報告書等の記載が誤っている疑いがあることを認識できる状態になったから、同日以降に被告株式を取得した原告らは、当該株式の関係では、本件有価証券報告書等の記載を信頼しておらず、虚偽記載のリスクを引き受けていた。これらの被告株式について
は、権利侵害行為及び相当因果関係ある損害を欠くほか、危険への接近の法理により、損害賠償請求が成立する余地はない。

本件における高値取得損害の算定について
本件において、被告東芝が本件有価証券報告書等の訂正報告書を公表
し、訂正の全容が明らかになった平成27年9月7日から起算して、遅くとも約1か月後の同年10月9日までには投資者が同公表を踏まえた投資判断を完了したと考えられ、虚偽記載による株価の嵩上げは仮に存在しているとしても同日までに解消されていたから、それ以降の株価下落は虚偽記載と無関係である。

取引諸経費及び遅延損害金
本件は虚偽記載なければ取得なしの事案ではなく、原告らは自らの
投資判断として被告株式を取得したものであるから、いずれにせよ支出を要した取引諸経費は損害に含まれない。
また、遅延損害金の起算日は損害の発生日(取得価額より低い価額で処分した場合は当該処分時、未処分の場合は請求時)とすべきである。第3争点に対する判断
1被告東芝に対する請求(損害賠償責任)について


本件有価証券報告書等における重要な事項についての虚偽の記載の有無及
び範囲

金商法に基づき提出される財務計算に関する書類は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従って作成しなければならないとされており
(同法193条、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則1条1項等参照)、有価証券報告書等の記載が、不法行為責任が成立し得る虚偽記載であるか、金商法21条の2第1項の重要な事項についての虚偽の記載に当たるか否かは、投資者の投資判断及び市場における当該有価証券の価格形成に重要な影響を与える事項について、当該記載が一
般に公正妥当と認められる企業会計基準に違反した会計処理に基づきなされたかどうかによって判断すべきである。

この点、原告らは、本件有価証券報告書等のうち本件訂正報告書等により訂正された箇所の全部が虚偽記載であり、本件有価証券報告書等には金
商法21条の2所定の重要な事項についての虚偽の記載がある旨主張する。そして、原告らは、本件有価証券報告書等の重要な事項について虚偽記載が存在することを基礎づけるために、本件報告書は、本件有価証券報告書等の重要な事項について不適切な会計処理が存在し、それに基づき有価証券報告書等の当期純損益等の数値に誤った記載がされたことを明らかにしているところ、その記載内容には高度の信用性が認められる旨主張する。
しかしながら、後記ウ(オ)記載のとおり、本件報告書には、上記虚偽記載の内容である会計処理の基礎となる個別具体的な事実関係、被告東芝が違反したとされる会計基準の内容及び理由、会計基準違反の結果等につき具体的な記載がない。

しかるに、被告東芝は、同訂正前の第171期、第173期及び第174期の各有価証券報告書の連結財務諸表における当期純損益に重要な事項についての虚偽記載があることを争っていない。また、被告東芝は、上記各有価証券報告書の当期純損益のうち、減損損失の追加計上分及び組替えによる訂正部分についてのみ虚偽記載に当たらない旨を主張する
(前記第2の3⑴〔被告東芝の主張〕イ・ウ参照)にとどまり、その余の部分については具体的な反論を行っていない。これは、本件報告書は、被告東芝が第三者委員会に作成を依頼し、被告東芝が提供した資料を基礎として作成されたものであることに鑑み、被告東芝は、上記虚偽記載の事実の意味内容を正しく理解しつつ、選別的に自白をしているものと解され
(金融庁による本件課徴金納付命令についても争っていない。前記前提事実⑹イ参照)、当該自白部分は、個別具体的な事実を認めるものではなく、いわば抽象的な事実である重要な事項についての虚偽記載の存在を認めるものであるものであっても、裁判上の自白が成立するものとして立証不要効(民事訴訟法179条)を認めることが許容される。

したがって、原告らと被告東芝との間においては、訂正前後の上記各有価証券報告書の連結財務諸表における当期純損益について、第171期:▲28890百万円(訂正額▲34200百万円-減損▲5310百万円)、第173期:▲31860百万円(訂正額▲70511百万円-減損▲35000百万円-組替え▲3651百万円)、第174期:▲47848百万円(訂正額▲64108百万円-減損▲16093百万円-組替え▲167百万円)の差額部分が重要な事項についての虚偽記載に該
当するといえる(以下本件虚偽記載部分という。)。

これに対し、被告東芝は、本件虚偽記載部分以外については、重要な事項についての虚偽記載はないとして原告らの上記主張を争っているため、原告らは、重要な事項についての虚偽記載の存在を主張立証する必要があ
る。そこで、以下検討する。
(ア)訂正=虚偽という原告らの主張について
原告らは、有価証券報告書等の訂正は、虚偽の記載が存在することを理由に行われるものであるとして、本件有価証券報告書等のうち被告東芝による訂正前後で記載が異なる箇所は全て虚偽記載である旨主張す
る。
しかしながら、有価証券報告書等の提出者が一般に公正妥当と認められる企業会計基準に違反するとはいえなくとも、より保守的な会計処理に基づき記載を訂正する等こと等は十分に考えられるほか、金商法は有価証券報告書の提出者が当該報告書及びその添付書類のうちに訂正を必
要とするものがあると認めたときは、自発的な訂正が可能である旨を定めていること(同法24条の2第1項、7条1項)等に照らせば、訂正がされたことをもって直ちに虚偽の記載があったということはできない。
原告らの上記主張は独自の見解に基づくものであって、採用できな
い。
(イ)当期純損益の減損損失追加計上部分について
原告らは、本件有価証券報告書等の当期純損益の訂正のうち、第
170期以降の減損損失の追加計上による部分(第170期:▲24768百万円、第171期:▲5310百万円、第172期:▲6161百万円、第173期:▲35000百万円、第174期:▲16093百万円、第175期:▲9685百万円。甲A4〔p117、118〕、6〔p121〕、8〔p126〕、10〔p124〕、12〔p126〕記載の各金額に当時の実効税率を踏まえて調整した額。)についても、本件報告書の考え方に従って訂正されたものであり、虚偽記載に当たる旨主張する。
この点、米国会計基準においては、減損の兆候が把握された長期性資
産について、当該資産の帳簿価額が回収不能(割引前の将来キャッシュフローの総額が帳簿価額を下回ること)であり、かつ公正価値を上回る(帳簿価額が割引後将来キャッシュフローを上回る)ことが明らかになった場合に減損損失を認識しなければならないとされているところ、被告東芝は当初の本件有価証券報告書等の作成時には減損の兆候が把握さ
れず、帳簿価額が回収不能とは認められなかった旨主張し、被告東芝の経理担当従業員も米国会計基準で認められる範囲内で可能な限り簡便かつ保守的に見積もったことにより上記訂正を行った旨の供述をする(乙A36)。
そうすると、上記減損損失追加計上分が一般に公正妥当と認められる
企業会計基準に違反した会計処理によるものとして虚偽記載に該当するためには、上記当初のキャッシュフローの見積りが不合理であり、当時の本来のキャッシュフロー見積りの合計額が帳簿価額を下回っていたと認められる必要があるが、原告らはこの点につき何ら主張立証をしない。

そのため、被告東芝が減損損失を計上していなかったことが一般に公正妥当と認められる企業会計基準に違反した会計処理であったと認めるに足りる証拠はなく、減損損失追加計上に関する訂正が虚偽記載に当たるとは認められない。
(ウ)当期純損益の組替え部分について
証拠(甲A7、9、11)及び弁論の全趣旨によれば、被告東芝は、第173期中に買収したランディス・ギア社及び第174期中に買収したIBM社のリテール・ストア・ソリューション事業について、各買収の翌期の有価証券報告書において、各買収の当期の数値を遡及的に組み替えて表示したことが認められる。
本件訂正報告書における両期の有価証券報告書の当期純損益の訂

正部分のうち、第175期有価証券報告書提出時点で実施済みであったこれらの組替え分(第173期:▲3651百万円、第174期:▲167百万円)は、一般に公正妥当と認められる企業会計基準に違反した会計処理に基づくものとはいえず、虚偽記載に当たるとは認められない。

(エ)当期純損益における重要な事項についての虚偽記載が存在するといえる範囲について
a
第171期、第173期及び第174期有価証券報告書の当期純損益のうち、重要な事項についての虚偽記載である本件虚偽記載部分が存在することは前記イ記載のとおりであるところ、上記(イ)・(ウ)記載のとおり、それ以外の減損損失追加計上及び組替えによる訂正部分が虚偽記載に当たるとは認められない。
それゆえ、第171期、第173期及び第174期有価証券報告書の当期純損益のうち、重要な事項についての虚偽記載に当たると
いえるのは本件虚偽記載部分に限られる。

b
第170期、第172期及び第175期の各有価証券報告書並びに
第176期第3四半期報告書の当期純損益については、訂正され
た事実のみから虚偽記載であるとはいえず(上記(ア)参照)、減損損失追加計上による訂正部分が虚偽記載に当たるとは認められない(上記(イ)参照)ところ、本件報告書において当期純損益の修正に係る記載はなく(後記(オ)参照)、他に原告らから虚偽記載の存在を裏付ける具体的な主張立証はない。
さらに、これらの有価証券報告書等の当期純損益の訂正部分に
ついて、同部分の重要事項性について以下検討する。
(a)第170期有価証券報告書の当期純損益の訂正額は▲55319百万円である(別紙5参照)が、そこから虚偽記載に当たらな
い減損損失追加計上分(▲24768百万円)を控除した残額は▲30551百万円である。
かかる訂正額がそれ自体小さいものといえないことは論を俟たな
いが、連結で5、6兆円の売上高を有し、1000億円を超える当期純利益を計上することもあった被告東芝の企業規模に照らせば、
一見して明らかに大きいともいえない。訂正前第170期有価証券報告書の当期純損益のうち、上記訂正額が占める割合は約8.
8%にとどまること(なお、訂正後の当期純損益に対しては約
7.6%とさらに低い。)、被告東芝は第170期に過去最大の当期純損失を計上しており、▲30551百万円の訂正はその事実自
体に変更を及ぼすものではないことを併せ考慮すると、同金額が投資者の投資判断及び市場における当該有価証券の価格形成において重要な影響を与えたといえない。
(b)次に、第172期及び第175期の有価証券報告書の訂正額から、同様に虚偽記載に当たらない減損損失追加計上分を控除する

と、その残額は第172期:26642百万円、第175期:19099百万円であり、減損損失追加計上のない第176期第3四半期報告書の訂正額(35305百万円)を含め、いずれも当期純利益を増加させるものであった。
このような利益を過少に記載していたとされる場合には、株式の
取得者に虚偽記載と相当因果関係ある損害が生ずることは観念し難いほか、平成26年法律第44号による改正を経ていわゆる逆粉飾
の事案で有価証券を処分した者にも金商法21条の2第1項による責任追及を認める趣旨で、同項の請求権者に処分した者が加え
られたことは、逆粉飾の事案で有価証券を取得した者が同項に
基づく請求を行うことは金商法も想定していないという理解と整合的である。

そうすると、上記の当期純利益を増加させる訂正部分について
は、それにより投資者の投資判断及び市場における当該有価証券の価格形成に何らかの影響が生ずることは否定されないまでも、被告株式を取得した者との関係では、類型的に重要な事項についての虚偽記載に当たらないと解するのが相当である。

(c)以上によれば、第170期、第172期及び第175期の各有価証券報告書並びに第176期第3四半期報告書の当期純損益に
ついて、仮に虚偽記載が存在するとしても、それが重要な事項についての虚偽記載に該当するとは認められない。
(オ)本件報告書について
a
原告らは、本件報告書の記載をもって、本件有価証券報告書等に虚
偽の記載があることが裏付けられる旨主張するのに対し、被告東芝は実際に訂正した会計処理に限り、本件報告書記載の事実関係を大筋で認め、評価部分も積極的には争わない。
しかしながら、本件報告書における調査対象とされた会計処理の適正性の内容は明らかでなく、不適切とされた会計処理の全てが一般に公正妥当と認められる企業会計基準に違反するものであったかどうかは疑問である(被告東芝も、同報告書で指摘された要修正額の一部を上記企業会計基準に照らしても修正は不要と判断している。甲A32、37、66⑯、乙F1)。
また、本件報告書は第170期から第176期第3四半期までの
売上高及び継続事業税引前当期純損益につき修正が必要と指
摘するものであるが、それ以外の項目(当期純損益、株主資本、純資産、総資産等)の修正には何ら言及していないほか、被告東芝が同報告書公表後に行った本件有価証券報告書等の訂正
額と上記指摘額も一致していない(別紙5及び7参照)。
本件で問題となる虚偽記載の有無は、本件有価証券報告書等の記載について、それが一般に公正妥当と認められる企業会計基準に違反した会計処理に基づきなされたか否かによって決せられることは前記ア記載のとおりであるが、原告らは、本件報告書で指摘された不適切な会計処理及びそれによる要修正額が、本件有価証券報告書等の記載といかに関連するか(当該会計処理により、どの項目にいくらの増減が生じるのか)について何ら主張立証していない。
さらに、本件報告書において不適切な会計処理とされた案件の
うちに、一般に公正妥当と認められる企業会計基準に違反した会計処
理に該当するものが存在し得るとしても、それにより本件有価証券報告書等にいかなる範囲で虚偽記載が生じるかを具体的に特定することは困難である。
b(a)加えて、本件報告書において修正が必要とされた売上高については、被告東芝の訂正前本件有価証券報告書等の売上高にお

いて占める割合は最大で約0.1%と、それ自体ごく小さいといえる(別紙5参照)。
(b)継続事業税引前当期純損益についても、第172期及び第175期の要修正額は、訂正前の有価証券報告書における比率は最大約4.3%にとどまっている。
これに対し、第170期、第173期及び第176期第三四半期
の要修正額については、比率が最大約22.5%と相当程度高いも
のの、これらの期における損益を逆転させるものではない。第171期及び第174期については、いずれも訂正前有価証券報告書記載の継続事業税引前当期純損益に対し50%以上の比率を占
め、損益を逆転させるものもあるが、継続事業税引前当期純損益が損益計算の中途過程で算出される項目であることにも留意す
る必要がある(これらの期についてはより直接的な収益力の指標である当期純損益に重要な事項について虚偽記載があると認めら
れる。前記ア参照)。
本件報告書と本件有価証券報告書等の対応関係を特定できないこ
とは上記a記載のとおりであるが、仮に本件報告書における継続事業税引前当期純損益の要修正額が本件有価証券報告書等に反映されたとしても、それにより投資者の投資判断及び市場における被告株式の価格形成に重要な影響を与えると認めるに足りる証拠はない。
c
結局、本件報告書の記載から本件有価証券報告書等における重要な
事項についての虚偽記載の存在を導くことはできず、原告らの主張は採用できない。

したがって、本件有価証券報告書等については、第171期、第173期及び第174期の当期純損益のうち、第171期:▲28890百
万円、第173期:▲31860百万円、第174期:▲47848百万円の訂正部分(本件虚偽記載部分)に重要な事項についての虚偽記載があるといえる一方で、その余の部分に重要な事項についての虚偽記載があると認めるに足りる証拠はない。
なお、本件有価証券報告書等には、提出年度の数値に加え、過年度の数値も併記されているところ、過年度に係る記載は時の経過により情報としての価値は逓減しているものと解され、提出年度の数値との対比の
限度で用いられるのが通常であるから、当該記載が投資判断等に与える影響は限定的である。本件虚偽記載部分が提出年度以外の有価証券報告書等において引用されているとしても、上記判断は左右されない。⑵
被告東芝の不法行為責任

会社が提出した有価証券報告書等に重要な事項についての虚偽の記載があった場合には、誤った情報により歪められた市場価格を前提とした投資判断を余儀なくされる、虚偽記載の判明に市場が過剰反応を示す等してその株式を取得した投資者の財産権を侵害するおそれがあるから、有価証券報告書等を提出する会社は、その重要な事項について虚偽の記載をしないように配慮すべき注意義務を負う。

被告東芝が提出した第171期、第173期及び第174期有価証券報告書に重要な事項についての虚偽の記載(本件虚偽記載部分)があることは上記⑴記載のとおりであり、これらの有価証券報告書が被告東芝において組織的に作成されたものであることは明らかである。法人(組織)としての被告東芝は、代表者等の特定の個人の故意・過失を問題にするまでも
なく、上記注意義務を怠ったものと認められるから、不法行為に基づき、被告株式を取得した原告らに生じた損害を賠償する責任を負う。

原告らは、被告東芝が本件有価証券報告書等における虚偽記載の事実を小出しに公表したことが適時開示義務に違反する旨主張するが、前記前提
事実⑷記載の公表内容等に照らせば、被告東芝は本件有価証券報告書等の訂正について、各時点において判明した事実の概要やその判明経緯、その後の見通し等をその時々に入手していた資料に基づいてできる限りの開示をしていたといえ、その過程にあえて開示を遅らせる等の不合理な点があったと認めるに足りる証拠はない。
なお、原告らは、被告東芝のグループ会社であるウェスチングハウス社ののれん減損に係る公表についても、適時開示義務違反がある旨主張する
が、義務違反を基礎づける具体的な事情を主張立証しておらず、失当である。
被告東芝に適時開示義務違反の不法行為は成立しない。

原告らは、被告東芝につきその他にも注意義務違反の存在をるる主張するが、これらを認めるに足りる証拠はない。

2被告役員らに対する請求について


本件有価証券報告書等における重要な事項についての虚偽の記載の有無及び範囲

虚偽記載の存否が一般に公正妥当と認められる企業会計基準に違反した会計処理に基づきなされたかによって決せられることは前記1⑴ア記載のとおりであるところ、本件有価証券報告書等につき訂正が行われたことのみから同部分が虚偽であったということはできず(同ウ(ア)参照)、原告らは、虚偽記載であると主張する個々の記載について、それが一般に公正妥当と認められる企業会計基準に違反した会計処理に基づきなされたもので
あることを主張立証しなければならない。

本件において、原告らが本件報告書により虚偽記載の存在が裏付けられる旨主張するのに対し、被告役員らは同報告書には証拠としての信用性がないとしてこれを争っている。そこで、以下検討する。

(ア)本件報告書は、第三者委員会が、調査補助者(弁護士及び公認会計士)の補佐の下で作成したものであるところ、作成に当たっては役職員及び会計監査人のヒアリング、経理データ、採算管理データ、証憑、社内会議資料・議事録、デジタル・フォレンジックにより復元されたパソコン内データ等の資料を調査したとされている(甲A29②)。同報告書に記載された基礎事実の正確性を吟味するためには、その基になった上記資料を参照することが不可欠であるが、原告らは、被告東芝が多額の費用を投じ、著名な実務家により作成されたものであるからその記載は信用できる等という抽象的な主張に終始し、被告役員らによる再三の求めにもかかわらず、上記資料の提出を含め、報告書の裏付けとなる事情について何ら主張立証を行っていない。
被告役員らが提出する被告東芝の内部資料や監査法人作成に係る資料
(乙B8から12まで、乙C10から27まで、30、32から44まで、乙D58、乙E5から26まで、29から50まで)の記載と本件報告書に記載された被告役員らの認識や指示内容等は必ずしも一致していないこと、同報告書も、②映像事業における経費計上等、③半導体事業における在庫評価、④パソコン事業における部品取引(Buy-Se
ll取引)等について、一部のデータが存在しない等の調査の限界があったとしていること等を併せ考慮すれば、具体的な裏付けを欠いたまま同報告書に基づき事実を認定することは困難である。
(イ)また、本件で問題とされた引当金や経費等の計上については、米国会計基準や企業会計基準等の指針が存する(甲A36、40、41、47
から49まで、乙C28、乙D28から30まで)ものの、これらは個別の事案における具体的な見積り方法等を網羅しているわけではなく、本件報告書は、その判断(当てはめ)が他の見解を許さない唯一の会計処理であったことを示していない。
部品の有償支給に係る取引で収益を認識することの可否等の本件報告
書が採用した見解の当否については当事者間に争いがあり、これらの事項については複数の考え方が存在していたことがうかがわれる(甲A14、乙B1①②、6、7、乙C29、乙D14、乙E1)中で、上記見解が一般に確立していたことにつき立証はない。
(ウ)そうすると、本件訴訟において、本件報告書の記載から本件有価証券報告書等に虚偽の記載があったと認定することはできない。

また、原告らは、金融庁が被告東芝に対して本件課徴金納付命令を行ったこと(前記前提事実⑹参照)や被告東芝が被告役員らに対し公正な会計慣行に違反する会計処理があったとして損害賠償請求をしていること(甲A56から64まで参照)等を指摘するが、被告役員らは、被告東芝からの損害賠償請求を争っているところ、虚偽記載の存在は会計処理それ自体について客観的に判断されるべきものであって、行政による処分や被告東
芝が執った経営上の措置等の事後的な事情により判断が左右されるものではない。

さらに、前記1⑴ウ記載のとおり、原告らは本件有価証券報告書等の記載について、一般に公正妥当と認められる企業会計基準に違反した会計処理が行われたことを具体的に主張立証しておらず、被告役員らとの関係に
おいては、本件有価証券報告書等の虚偽記載が存在すると認められない。⑵

被告役員らの金商法24条の4が準用する同法22条1項、会社法429
条又は不法行為(民法709条)に基づく責任
前記⑴記載のとおり、本件有価証券報告書等に虚偽の記載があるとは認められず、被告役員らが、金商法24条の4が準用する同法22条1項、会社法429条又は民法709条に基づく損害賠償責任を負う旨の主張は、前提を欠く。
また、被告東芝に適時開示義務等の違反は認められず(前記1⑵イ・ウ参照)、被告役員らに原告ら主張に係る開示に関与した者がいるとしても、同
義務違反による損害賠償責任(会社法429条又は民法709条)を負う余地はない。


したがって、原告らの被告役員らに対する請求は、その余の点を判断する
までもなく、理由がない。
3被告東芝に対する請求(損害)について

本件における損害(総論)

取得自体損害の主張
原告らは、被告東芝による虚偽記載がなければ原告らが被告株式を取得
することはなかったとして、取得に要した費用の総額と処分価額との差額が損害であると主張する(取得自体損害)。
しかしながら、本件有価証券報告書等について重要な事項についての虚偽記載と認められるのは、第171期、第173期及び第174期有価証券報告書の当期純損益に係る記載の一部(本件虚偽記載部分)に限られることは前記1⑴記載のとおりである。本件虚偽記載部分はそれ自体、被告東芝をして東京証券取引所における上場廃止基準に抵触させるものでないことは明らかであるし、証拠(甲A66⑲、乙F4)及び弁論の全趣
旨によれば、同取引所は、本件有価証券報告書等の訂正報告書の提出及びその概要の公表後、被告東芝の内部管理体制等について改善の必要性が高いと認め、平成27年9月15日に被告株式を特設注意市場銘柄に指定したものの、その後被告東芝から2回にわたる内部管理体制確認書の提出を受けて、平成29年10月12日には上記指定を解除し、被告株式の上場
を維持したことが認められる。
上記の他、原告らにおいて、本件虚偽記載部分を認識していれば被告株式を取得しなかったことを裏付ける特別の事情はうかがわれず、本件全証拠によっても、原告らは本件虚偽記載部分がなければ被告株式を取得しなかったと認めるに足りない。


虚偽記載と相当因果関係ある損害
本件において、取得自体損害は認められない(上記ア参照)ものの、原告らは、本件虚偽記載部分がなかった場合の被告株式の価値を超える余分な対価を支払ったことにより損害を被ったと認められるところ、本件虚偽記載部分の存在により株価が不当に高く評価され、嵩上げされた株式価値相当分(以下嵩上げ額という。)が損害となることは明らかである。また、虚偽記載が何らかの形で発覚し、それにより会社の信用毀損等が生
じ、さらに投資者の過剰反応(いわゆるろうばい売り等)が生じることは一般的であるから、本件虚偽記載部分に起因する信用毀損や過剰反応から生じる株価下落分(以下、併せてろうばい売り等の額という。)についても、被告東芝の不法行為と相当因果関係ある損害というべきである。⑵

損害賠償の対象となる株式の範囲等

原告らが被告株式を取得した時期はそれぞれ異なっている(別紙6参
照)ところ、被告東芝は本件虚偽記載部分を含む第171期有価証券報告書を平成22年6月23日の取引終了後に公衆の縦覧に供しており(弁論の全趣旨)、翌24日以降に被告株式を取得した原告らにおいては、高値取得を余儀なくされ、かつ虚偽記載判明後の株価下落によりその資産を毀損されたものとして、嵩上げ額損害及びろうばい売り等の額損害の両方が認められる。
これに対し、同月23日の取引終了時点で既に取得済みであった被告株式については、虚偽記載による嵩上げを観念することができず、認め
られる損害はろうばい売り等の額に限られる。

また、被告東芝は、平成27年4月3日に工事進行基準案件に係る会計処理の適正性について調査を要する事項が判明したとして特別調査委員会を設置すること等を書面により公表した(前記前提事実⑷イ)ところ、同書面には被告東芝の業績に影響を及ぼす可能性がある旨が記載さ
れており(乙A6、乙D36)、複数の報道機関が、同日中に被告東芝において工事費用の過少見積りにより利益が過大計上されていた可能性がある旨を報道していた(乙A46①~③)。これらの事情に照らせば、一般の投資者は、同日には被告東芝の過年度の有価証券報告書等の記載に誤りがある疑いを認識することができる状態になったと認められ、翌4日以降に被告株式を取得した者は、今後の株価の動向が有価証券報告書の虚偽記載等による影響を受けることを
認識した上で、その後の反転上昇を期待してあえて株価下落のリスクを引き受けたというべきである。
そうすると、原告らが同日以降に取得した被告株式(別紙6の塗りつぶし部分)については、本件虚偽記載部分に起因した値下がりが生じたとしても、原告らはそのようなリスクを承知して投資判断を行ったので
あるから、当該株式につき虚偽記載と因果関係ある損害を認める余地はない。


嵩上げ額及びろうばい売り等の額の算定方法

本件虚偽記載部分と相当因果関係ある損害(嵩上げ額及びろうばい売
り等の額)は、虚偽記載が発覚して株価が下落する過程で間接的に把握されるものと解され、①本件虚偽記載部分発覚前後の株価下落のうち、嵩上げ額及びろうばい売り等の額が反映されたと認められる範囲を検討し、②その後、本件虚偽記載部分と相当因果関係ある株価の下落期間内において、虚偽記載と無関係の要因で下落した分の有無を考慮すべきである。
もっとも、上記方法によっても嵩上げ額及びろうばい売り等の額が本件虚偽記載部分と相当因果関係ある株価の下落分に反映された程度は間接的に把握されるものにすぎず、本件虚偽記載部分が複数の期の有価証券報告書にかけて存在し、被告株式を取得した時期によりその影響の有無及び程度も異なることからすると、その反映額を正確に認定すること
は極めて困難である。
したがって、本件においては、損害が発生したことは明らかであるが、損害の性質上その額を正確に認定することが極めて困難であるときに該当するといえるから、民事訴訟法248条を適用して相当な損害額を認定するのが相当である。

①本件虚偽記載部分発覚前後の株価下落のうち、嵩上げ額及びろうば
い売り等の額が反映されたと認められる範囲
(ア)a

別紙8記載の被告株式の株価推移について、証拠(甲A65①~
⑧、66⑦⑧)及び弁論の全趣旨によれば、○被告東芝が平成27ⅰ
年4月3日にした特別調査委員会設置の公表等により、同日時点で512.4円であった被告株式は、翌取引日の同月6日に487.4円に下落し、○同年5月8日(株価:483.3円)に第三者委ⅱ
員会への移行等を公表すると翌取引日である同月11日には40
3.3円まで急落した。○同年6月は概ね420円台から450円ⅲ
台で推移したが、同年7月上旬に不適切会計の額が1500億円を超える可能性がある旨の報道がされると、同月16日には369.
3円に至った。○その後、同年8月20日には391.9円まで値ⅳ
を戻したが、第176期有価証券報告書の提出期限が再度延長されたことが報じられると再び下落に転じた。○同年9月7日(株価:ⅴ
352.7円)に本件訂正報告書が提出された後も下落傾向は続いたが、同月29日に291.9円と底を打った後は、反転上昇した
(同年10月中旬から下旬にかけては330円台から350円台で落ち着いた。)。
以上によれば、本件虚偽記載部分の発覚前後の株価下落のうち、
本件虚偽記載部分と因果関係ある期間の始期は、不適切会計の可能性が公表された同年4月3日、本件訂正報告書の公表による影響が
織り込まれたのは、株価が底を打った同年9月29日と考えられるから、終期は同日と認めるのが相当であり、当該期間の下落分は220.5円(512.4円-291.9円)となる。
b
原告らは、被告東芝の株価が最低額(158円)を記録した平成
28年2月12日を終期とすべき旨を主張するが、本件虚偽記載部分の存在は本件訂正報告書が提出された平成27年9月7日には明
らかになっていたにもかかわらず、その影響が約5か月後にようやく解消したというのは、迅速かつ多量の売買が可能であり、投資者の判断が速やかに株価に反映される証券取引の現状からして考え難い。
本件虚偽記載部分に起因する株価下落がそのような長期間にわた

り継続したと断ずるに足りる証拠はなく、上記主張は採用できな
い。
(イ)そして、本件で損害賠償の対象となる株式は平成27年4月3日以前に取得されたものである(前記⑵イ参照)ところ、取得価額が512.4円よりも高額な場合、その差額は本件虚偽記載部分と無関係に
上昇していたものであるし、取得価額が512.4円よりも低額な場合についても、差額は虚偽記載と無関係に下落していた結果であるから、いずれについても本件虚偽記載部分と相当因果関係ある損害とはいえない。
また、原告らの損害は本件口頭弁論終結時を基準に現実化したもの
に限られるから、処分価額が291.9円を超える場合には、処分価額を基準として損害を算定すべきである。
これらの取得価額及び処分価額における調整をまとめると、本件虚偽記載部分と相当因果関係ある株価の下落の範囲を求める算式は次のとおりである(なお、本件口頭弁論終結日である令和3年10月7日
時点で保有を継続している株式については、処分価額を同日の株
価である491円〔4910円を株式併合前の単位に引き直したもの。〕と読み替える。)。

取得価額<512.4円、かつ、処分価額<291.9円の株
式:取得価額-291.9円


取得価額<512.4円、かつ、処分価額≧291.9円の株
式:取得価額-処分価額


取得価額≧512.4円、かつ、処分価額<291.9円の株
式:512.4円-291.9円


取得価額≧512.4円、かつ、処分価額≧291.9円の株
式:512.4円-処分価額


本件虚偽記載部分と無関係な要因による下落
(ア)前記イ(ア)記載のとおり、被告東芝の株価は本件虚偽記載部分と因果関係ある下落期間の始期である平成27年4月3日と終期である同年9月29日の間で220.5円下落している(下落率43.0%)ところ、証拠(乙A16から20まで)及び弁論の全趣旨によれば、い
ずれも被告東芝と同じ大手電機・重電産業に属し、中国向け売上比率が高い点が共通する企業においても、上記両日の間に、○シャープ株ⅰ
式会社は92円(231円-139円。下落率39.8%)、○株式ⅱ
会社日立製作所は239.4円(831.4円-592円。下落率28.8%)、○三菱電機株式会社は404.5円(1467.5円-ⅲ
1063円。下落率27.6%)、○パナソニック株式会社は386ⅳ
円(1565.5円-1179.5円。下落率24.7%)、○三菱ⅴ
重工業株式会社は150.6円(667.1円-516.5円。下落率22.6%)の株価下落が生じており、被告株式と上記5社の株価推移は上記期間を通じて連動しているとまではいえないが、少なくと
も同年6月以降については、変動の程度こそ異なるものの、共通した下落傾向があると認められる。
そうすると、平成27年4月3日から同年9月29日までの被告株式の下落については、本件虚偽記載部分とは無関係な市況の悪化が一定程度影響を及ぼしたというべきである。
(イ)また、本件有価証券報告書等においては、多数の項目について訂正が行われており(別紙5参照)、その公表は被告株式の株価形成に大
きな影響を与えたと推認されるところ、このうち本件虚偽記載部分は第171期、第173期及び第174期の各有価証券報告書の当期純損益のうち一部(第171期:▲28890百万円、第173期:▲31860百万円、第174期:▲47848百万円。累計▲108598百万円。)にすぎない。本件虚偽記載部分を除く訂正は、
本件有価証券報告書等の当期純損益の訂正累計額▲158938
百万円(▲55319百万円+▲34200百万円+20481百万円+▲70511百万円+▲64108百万円+9414百万円+35305百万円)においても30%以上を占め、訂正額全体における比率は一層増加するし、本件虚偽記載部分が存在する有価証券報告書
は提出から少なくとも2年以上が経過していた過去の期のものであることからすると、本件虚偽記載部分が及ぼした影響は相当程度限定的であったといえる。

本件における嵩上げ額及びろうばい売り等の額の割合
これまでに判示した事情が株価形成に与える影響及び程度並びに被告
株式の推移等本件に表れた一切の事情を斟酌すると、前記イ(イ)の算式を用いて求められる公表後下落額のうち、嵩上げ額に対応する下落は20%、ろうばい売り等による下落は20%、残る60%は本件虚偽記載部分と無関係な要因(市況の悪化、本件虚偽記載部分を除く訂正等)による下落と認めるのが相当である。


被告株式の取得時期に応じた調整
(ア)本件において、第171期有価証券報告書が公衆の縦覧に供された平成22年6月23日以前に取得された被告株式については、虚偽記載による嵩上げ額を観念できないことは前記⑵ア記載のとおりであるが、同月24日以降に取得された株式であっても、取得後に公衆の縦覧に供された有価証券報告書の重要な事項についての虚偽記載が取得価額に影響することはないから、当該虚偽記載による嵩上げ額は存在しない。
また、有価証券報告書が5年間公衆の縦覧に供されること(金商法25条1項4号)からすると、嵩上げ額を構成し得る虚偽記載は、取
得から直近に公衆の縦覧に供された有価証券報告書に係るものだけでなく、それ以前から継続的に縦覧に供されていた有価証券報告書に係るものも含まれることから、虚偽記載が嵩上げ額に与える影響は、被告株式の取得時期ごとに検討する必要がある。
(イ)本件虚偽記載部分は、第171期、第173期及び第174期の各
有価証券報告書について、当期純損失を過少に、当期純利益を過大に記載していたものであるが、いずれもその規模が数百億円に上るものの、損益の逆転をもたらすものではない点等が共通している。その上で、一般に直近の財務情報の方が株価に与える影響は大きいことを考慮すると、第171期有価証券報告書の提出日の翌日である平成22
年6月24日から第173期有価証券報告書の提出日である平成24年6月22日までの間に取得された被告株式については、上記エ記載の嵩上げ額のうち30%(残る70%は取得後に公衆の縦覧に供された第173期及び第174期の各有価証券報告書に係る虚偽記載に対応。)、第173期有価証券報告書の提出日の翌日である同月23日
から第174期有価証券報告書の提出日である平成25年6月25日までの間に取得された被告株式については、上記エ記載の嵩上げ額のうち60%(残る40%は取得後に公衆の縦覧に供された第174期有価証券報告書に係る虚偽記載に対応。)、第174期有価証券報告書の提出日の翌日である同月26日から被告東芝が虚偽記載のリスクを公表した平成27年4月3日(前記⑵イ参照)までの間に取得された被告株式については、上記エ記載の嵩上げ額の100%が原告らの
損害とするのが相当である。


具体的な損害額

算定対象株式の特定
(ア)本件において損害賠償の対象となるのは、平成27年4月3日までに
取得され、かつ、同日において未処分であった被告株式であるところ、原告らは虚偽記載の存在が発覚するまでの間、あるいはその発覚後にかけて、被告株式の取得又は処分を繰り返し行っているため、損害賠償請求の対象となる被告株式の特定しなければならない。
この点、株式とは、会社に対する持分が没個性的に細分化された割合
的地位であり、殊に被告株式のように株券が発行されず、数量のみによって把握される振替株式については、株式の取得及び処分は、その会社の持分割合の増減として把握されるにすぎない。そうすると、算定対象株式の特定にあたっては、一定期間内の取得と処分とを割合的に捉えて有価証券の帳簿価額とする総平均法の考え方に基づき、損害賠償請求の
対象期間の末日時点の保有株式数について、同期間の期首時点の保有株式数と同期間中の取得株式数で案分することにより算定対象株式の数量を求めるのが相当である。
(イ)a

上記(ア)記載の総平均法に基づけば、本件における算定対象株式は、
被告東芝が過年度の会計処理に不適切なものが存在する可能性を公表した平成27年4月3日(期末)に未処分であった株式数に、期首から同日までに取得した株式数を乗じ、期首時点で保有していた株式数と期首から同日までに取得した株式数の和で除することにより算出することができる。
そして、前記⑶オ記載のとおり、本件虚偽記載部分が記載された第171期有価証券報告書が公衆の縦覧に供された翌日の平成22年6月24日以降に取得された株式にのみ認められる嵩上げ額の損害につ
いては同日が期首となるのに対し、取得時期が問題にならないろうばい売り等の額の損害については、上記期末までの全期間が対象となり、別紙6の各取引に基づき算出された算定対象株式は、別紙9(嵩上げ額損害の算定)-1のE及び別紙10(ろうばい売り等の額
損害の算定)-1のC記載のとおりである。

b
また、対象期間中に取得した株式の取得単価は、対象期間の株式数
に対応する約定金額の合計を、同期間中の株式取得数の合計で除した平均値として求めることができ、別紙6の各取引に基づき算出されたその具体的な額は別紙9-1のL及び別紙10-1のJ記載
のとおりである。


取引単位ごとの損害額の算定
本件における損害は、前記公表後に行われた被告株式の処分を基礎に、当該取引における1株当たりの損害額(前記⑶イ(イ)記載の方法で調整した取得価額と処分価額の差)に当該取引における被告株式の処分数とそれに
占める算定対象株式の割合を乗じることにより算出される(取引ごとの損害額は別紙9-2及び別紙10-2、合計額は別紙9-1M及び別紙10-1K参照。)。
また、本件口頭弁論終結時において未処分の算定対象株式については、処分価額を株式併合前の単位に引き直した終結時の株価(491円)に読
み替えて算定を行い、これらの結果は別紙9-1N及び別紙10-1Lのとおりである。

株式損害
以上の計算を行った上で、嵩上げ額については、本件虚偽記載部分とは
無関係な事情による株価下落分の控除及び取得時期に応じた調整(前記⑶ウ・エ・オ参照)を行い、ろうばい売り等の額については、前者の控除を行うと、原告らの嵩上げ額は別紙9-3嵩上げ額合計、ろうばい売り等の額は別紙10-1ろうばい売り等の額合計記載のとおりとなり、これらの合計が株式そのものに係る損害となる。
原告甲1及び原告甲7は、いずれも平成27年4月4日以降に被告株式を取得しているため株式損害が認められず、原告甲18及び原告甲20
は、いずれも本件口頭弁論終結時まで被告株式の保有を継続しているところ、同時点での株価が取得価額を上回っているため株式損害が認められない(別紙6、9及び10参照)。

取引諸経費
原告らは、被告株式の取得及び処分に要した取引諸経費が不法行為における損害に含まれる旨主張するが、原告らが本件虚偽記載部分がなければ
被告株式を取得しなかったとは認められない(前記⑴ア参照)。原告らは、その時々の状況に応じた自らの投資判断として被告株式の取得及び処分を行ったのであるから、その実現に要する費用は原告らの負担に帰すべきものであり、取引諸経費は本件虚偽記載部分と相当因果関係ある損害に当たらない。


弁護士費用
被告東芝の不法行為による株式損害が認められる原告については、同不
法行為と相当因果関係ある弁護士費用として、当該株式損害の10%に相当する別紙2の認容額の弁護士費用欄記載の額を認める。

遅延損害金
不法行為による損害賠償債務は、損害発生と同時に、何らの催告を要することなく遅滞に陥る(最高裁判所昭和34年(オ)第117号同37年9月4日第3小法廷判決・民集16巻9号1834頁参照)。
本件において損害賠償の対象となる嵩上げ額の損害は、その性質からして原告らが被告株式を取得した時点で発生したと解されるほか、被告東芝の公表により平成27年4月3日の翌取引時には信用毀損やろうばい売り等の影響による株価下落が生じていた(別紙8、前記⑶イ(ア)a参照)のであるから、被告東芝の不法行為による損害は、遅くとも同年5月8日(前記前提事実⑷ウ記載の公表日)までには損害が観念的には発生していたと認められるから、被告東芝の損害賠償債務は同日までに遅滞に陥っていた
といえる。
4以上により、被告東芝は、民法709条に基づき、別紙2の認容額の認容額合計欄記載の各金員及びこれらに対する遅延損害金の限度で原告らに生じた損害を賠償する義務を負う。
なお、以上の認定説示からすれば、被告東芝に対する金商法21条の2に基
づく請求の認容額は、除斥期間の制限があり、弁護士費用を損害として主張することも認められないと解されるから、これと選択的併合の関係にある不法行為に基づく請求についての認容額を超えないことは明らかである。第4結論
以上のとおりであるから、原告甲1、原告甲7、原告甲18及び原告甲20
を除く各原告の請求は、被告東芝に対し別紙2の認容額の認容額合計欄記載の各金員及びこれらに対する平成27年5月8日から支払済みまで年5パーセントの割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余はいずれも理由がないから棄却するとともに、原告甲1、原告甲7、原告甲18及び原告甲20の請求は全部理由がないから棄却するこ
ととする。
よって、主文のとおり判決する。
福岡地方裁判所第6民事部

裁判官


裁判官

田雅子中悠
裁判長裁判官立川毅は、差支えのため署名押印することができない。
裁判官

林雅子
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