判例検索β > 令和3年(わ)第580号
強盗傷人、強盗被告事件
事件番号令和3(わ)580
事件名強盗傷人、強盗被告事件
裁判年月日令和4年3月3日
法廷名札幌地方裁判所
全文全文
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2022-03-03
情報公開日2022-03-30 04:00:11
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判決主文
被告人を懲役7年に処する
未決勾留日数中120日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、現金を強奪しようと考え、
第1

令和3年7月12日午後4時50分頃、札幌市(住所省略)所在のマンショ
ン共同玄関内において、A(当時37歳)に対し、手に持った彫刻刀様の刃物を突き付けながら

金持っているか。

と言って脅迫し、その反抗を抑圧した上、同人所有又は管理の現金約1万100円及びキャッシュカード等6点在中のがま口財布1個(時価合計約3000円相当)を奪い、
第2

同月14日午後0時35分頃、同市内の山道内において、登山者であるB
(当時66歳)に対し、その頭部等を杖で多数回殴るなどの暴行を加えるとともに、「金だ。」などと言って脅迫し、その反抗を抑圧して、同人所有又は管理の現金約22万円及び自動車運転免許証等8点在中の長財布1個(時価合計約8000円相当)を奪い、その際、前記暴行により、同人に加療約3か月間を要する見込みの右示指中手骨骨折、右母指基節骨骨折、左母指末節骨骨折、前額部裂創、右前腕裂創、頭頂部裂創、上顎骨骨折、頭部打撲、左右上腕打撲及び左右前腕打撲の傷害を負わせた。
(証拠の標目)省略
(法令の適用)
1
構成要件及び法定刑を示す規定

被告人の判示第1の所為は刑法236条1項に、判示第2の所為は同法240条前段にそれぞれ該当する。
2
刑種の選択

判示第2の罪について有期懲役刑を選択する。
3
併合罪の処理

刑法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により重い判示第2の罪の刑に法定の加重をする。
4
宣告刑の決定

以上の刑期の範囲内で被告人を懲役7年に処する。
5
未決勾留日数の算入

刑法21条を適用して未決勾留日数中120日をその刑に算入する。6
訴訟費用の不負担

訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させない。(量刑の理由)
本件の特徴として指摘すべきは、安易に金銭を得ようといわゆる支援金系サイトを無計画に利用してその料金の捻出に窮した被告人が、同サイトの料金に充てるための金銭を他人から奪い取ろうという短絡的で身勝手な動機から、強盗の犯行に及び、その2日後には強盗傷人の犯行に及んだという点である。被告人は、証拠隠滅の態様等からはやや場当たり的に犯行に及んだ感があるが、人目に付きにくく、逃げ場のない山道や集合住宅の共同玄関部分を犯行場所とし、抵抗されにくいであろうとみて女性を標的に選んで犯行を企てるなど、いずれの犯行も相応の計画性をもって敢行しており、後述の犯行態様からしても、犯行を決意した後の財物奪取に向けた犯意は、いずれも躊躇のない強固なものである。
そして、量刑の中心となる強盗傷人の犯行において、被告人は、被害者の背後からいきなりその頭部を、強度を考えて選んだ杖で複数回殴打するなどして現金等を奪い、その後も、逃げる被害者を追い掛けて枢要部である頭部等を多数回殴打するなど、執拗に危険性の非常に高い暴行を加えた。このような暴行により、被害者は、加療約3か月間を要する骨折を含め重大な身体的被害のほか、死を覚悟するほどの恐怖心等の多大な精神的苦痛を被っているし、財産的被害もこの種事犯の中では比
較的多い。また、強盗の犯行も、被害者に狙いを定めてからその後を追尾した上、首近くに彫刻刀様の刃物を突き付ける脅迫を加えて現金等を奪ったというものであり、危険性の高い犯行である。居住する集合住宅の敷地内で突如襲われた被害者は、事件後も外出することにさえ恐怖を感じるなど、多大な精神的苦痛を被っており、また、財産的被害も軽視することはできない。
このように、本件各犯行に関する事情は悪質である。もっとも、強盗傷人の結果の重大性の評価に際し、被害者との間で支払い済みの50万円を含め総額で200万円支払う旨の示談が成立しているという事情は、今後約2年半にわたって分割払することとされている残金の150万円についても、その原資が被告人の年金収入であることや被告人の兄が振込みの代行に協力するとして示談に加わっていることを加味すれば、現実的な履行可能性のあるものといえるから、被害者が被告人を宥恕するに至っていないため自ずと限界があるものの、一定程度考慮できる事情といえる。そうすると、本件は、同種事案((処断罪)強盗致傷、(共犯関係等)単独犯、(強盗の点)既遂、(凶器等)あり、(処断罪と同一又は同種の罪の件数)2~4件、(傷害の程度)3か月以内)の量刑傾向の中では、中程度に位置付けられる。
その上で、各被害者の被った被害の大きさに思いを及ばせ、自らの身の振り方を更に真剣に考えるなどして今後一層の反省を深めることが必要であると思われるものの、被告人が、公訴事実を含む基本的な事実関係を認めて被告人なりに反省の態度を示そうとしていること、被告人には20年以上前の異種の事犯に係る罰金前科があるにとどまること等の事情も併せ考慮して、被告人を主文の刑に処するのが相当であると判断した。
(検察官沼前輝英、同石井亮太郎、国選弁護人野田晃弘(主任)、同仲世古善樹各出席)
(求刑

懲役9年、弁護人の科刑意見

懲役5年)

令和4年3月3日

札幌地方裁判所刑事第1部

裁判長裁判官

石田寿一
裁判官

古川善敬
裁判官

北村規哲
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