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特別地方交付税の額の決定取消請求事件
事件番号令和2(行ウ)66
事件名特別地方交付税の額の決定取消請求事件
裁判年月日令和4年3月10日
法廷名大阪地方裁判所
全文全文
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2022-03-10
情報公開日2022-03-24 04:00:09
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主1文
処分行政庁が令和元年12月に原告に対してした,令和元年度の第1回目の特別交付税の額の決定を取り消す。

2
処分行政庁が令和2年3月に原告に対してした,令和元年度の第2回目の特別交付税の額の決定を取り消す。

3
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求

主文同旨
第2

事案の概要
地方団体である原告(泉佐野市)は,総務大臣から,令和元年12月,令和元
年度の第1回目の特別交付税の額の決定(以下本件12月分決定という。)を
受け,令和2年3月,令和元年度の第2回目の特別交付税の額の決定(以下本件3月分決定といい,本件12月分決定と併せて本件各決定という。)を受
けた。
本件は,原告が,令和元年度における市町村に係る特別交付税の額の算定方法の特例を定めた,特別交付税に関する省令附則5条21項(令和2年総務省令第111号による改正前のもの。以下同じ。
)及び同附則7条15項(令和2年総務
省令第12号による改正前のもの。特に断らない限り,以下同じ。以下本件各特例規定という。)は,いわゆるふるさと納税として地方税法37条の2及び同
法314条の7の規定により個人の都道府県民税及び市町村民税(以下個人住民税という。)の特例控除の対象となる寄附金(以下ふるさと納税寄附金と
いう。に係る収入が多額であることをもって,

特別交付税の額を減額するもので
あって,地方交付税法(昭和25年法律第211号)の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるから,本件各特例規定に基づいて原告に対して交付する令和元年度の特別交付税の額を算定した本件各決定は違法であるなどと主張して,被告を相手に,本件各決定の取消しを求める事案である。
なお,当裁判所は,令和3年4月22日,本件訴えは,裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たるとする中間判決を言い渡した。
1
関係法令の定め


地方交付税法


地方交付税法の目的
地方交付税法1条は,
同法は,
地方団体
(都道府県及び市町村をいう
〔同

法2条2号〕
。以下同じ。
)が自主的にその財産を管理し,事務を処理し,
及び行政を執行する権能を損なわずに,その財源の均衡化を図り,及び地方交付税の交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによって,地方自治の本旨の実現に資するとともに,地方団体の独立性を強化することを目的とする旨規定する。

地方交付税の意義
地方交付税法2条1号は,同法において,地方交付税とは,同法6条の規定により算定した所得税,法人税,酒税及び消費税のそれぞれの一定割合の額並びに地方法人税の額で地方団体が等しくその行うべき事務を遂行することができるように国が交付する税をいう旨規定する。


運営の基本
地方交付税法3条1項は,総務大臣は,常に各地方団体の財政状況の的確な把握に努め,地方交付税の総額を,同法の定めるところにより,財政需要額が財政収入額を超える地方団体に対し,衡平にその超過額を補塡することを目途として交付しなければならない旨規定する。
地方交付税法3条2項は,国は,地方交付税の交付に当たっては,地方自治の本旨を尊重し,条件を付け,又はその使途を制限してはならない旨規定する。
地方交付税法3条3項は,地方団体は,その行政について,合理的かつ妥当な水準を維持するように努め,少なくとも法律又はこれに基づく政令により義務付けられた規模と内容とを備えるようにしなければならない旨規定する。

地方交付税の総額
地方交付税法6条1項(平成28年法律第86号による改正前のもの。以下同じ。
)は,所得税及び法人税の収入額のそれぞれ100分の33.
1,
酒税の収入額の100分の50,
消費税の収入額の100分の20.
8並びに地方法人税の収入額をもって地方交付税とする旨規定する。地方交付税法6条2項(平成28年法律第86号による改正前のもの。以下同じ。
)は,毎年度分として交付すべき地方交付税の総額は,当該年
度における所得税及び法人税の収入見込額のそれぞれ100分の33.1,酒税の収入見込額の100分の50,消費税の収入見込額の100分の20.8並びに地方法人税の収入見込額に相当する額の合算額に当該年度の前年度以前の年度における地方交付税で,まだ交付していない額を加算し,又は当該前年度以前の年度において交付すべきであった額を超えて交付した額を当該合算額から減額した額とする旨規定する。

地方交付税の種類等
地方交付税法6条の2第1項は,地方交付税の種類は,普通交付税及び特別交付税とする旨規定する。
地方交付税法6条の2第2項は,毎年度分として交付すべき普通交付税の総額は,同法6条2項の額の100分の94に相当する額とする旨規定する。
地方交付税法6条の2第3項は,毎年度分として交付すべき特別交付税の総額は,同法6条2項の額の100分の6に相当する額とする旨規定する。


普通交付税の額の算定
地方交付税法10条1項,2項は,普通交付税は,毎年度,基準財政需要額(各地方団体の財政需要を合理的に測定するために,当該地方団体について同法11条の規定により算定した額をいう〔同法2条3号〕。
特に断らない限り,以下同じ。
)が基準財政収入額(各地方団体の財政力
を合理的に測定するために,当該地方団体について同法14条の規定により算定した額をいう
〔同法2条4号〕特に断らない限り,

以下同じ。

を超える地方団体に対して,当該地方団体の基準財政需要額が基準財政収入額を超える額を交付する旨規定する。
地方交付税法10条3項本文は,総務大臣は,同条1項及び2項の規定により交付すべき普通交付税の額を,遅くとも毎年8月31日までに決定しなければならない旨規定する。
地方交付税法11条は,基準財政需要額は,同法12条に規定する測定単位の数値を同法13条の規定により補正し,これを当該測定単位ごとの同法12条に規定する単位費用に乗じて得た額を当該地方団体について合算した額とする旨規定する。
地方交付税法14条1項~3項は,基準財政収入額は,市町村にあっては,当該市町村の普通税等の22の収入項目ごとに,一定の算定基礎により,総務省令で定める方法により,算定する(原則として,各収入項目について,標準税率又はこれに相当するものによって算定した当該年度の収入見込額の75%に相当する額を算入する。
)旨規定する。

特別交付税の額の算定
地方交付税法15条1項は,特別交付税は,㋐同法11条に規定する基準財政需要額の算定方法によっては捕捉されなかった特別の財政需要があること,㋑同法14条の規定により算定された基準財政収入額のうちに著しく過大に算定された財政収入があること,㋒地方交付税の額の算定期日後に生じた災害(その復旧に要する費用が国の負担によるものを除く。等のため特別の財政需要があり,

又は財政収入の減少があるこ
と㋓その他特別の事情があること,により,基準財政需要額又は基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大又は基準財政収入額の算定過少を考慮しても,なお,普通交付税の額が財政需要に比して過少であると認められる地方団体に対して,総務省令で定めるところにより,当該事情を考慮して交付する旨規定する。
地方交付税法15条2項は,総務大臣は,総務省令で定めるところにより,
同条1項の規定により各地方団体に交付すべき特別交付税の額を,毎年度,2回に分けて決定するものとし,その決定は,第1回目は12月中に,第2回目は3月中に行わなければならない旨,この場合において,第1回目の特別交付税の額の決定は,その総額が当該年度の特別交付税の総額のおおむね3分の1に相当する額以内の額となるように行うものとする旨規定する。
地方交付税法15条4項は,総務大臣は,同条2項前段又は同条3項の規定により特別交付税の額を決定したときは,これを当該地方団体に通知しなければならない旨規定する。

特別交付税の交付時期
地方交付税法16条1項は,特別交付税は,毎年度,同法15条2項の規定により12月中に総務大臣が決定する額については12月に,同項の規定により3月中に総務大臣が決定する額については3月に交付する旨規定する。


地方交付税の額の算定方法に関する意見の申出
地方交付税法17条の4第1項は,地方団体は,地方交付税の額の算定方法に関し,総務大臣に対し意見を申し出ることができ,この場合において,市町村にあっては,当該意見の申出は,都道府県知事を経由してしなければならない旨規定する。
地方交付税法17条の4第2項は,総務大臣は,同条1項の意見の申出を受けた場合においては,これを誠実に処理するとともに,その処理の結果を,地方財政審議会に,同法23条の規定により意見を聴くに際し,報告しなければならない旨規定する。

地方交付税の額に関する審査の申立て
地方交付税法18条1項は,地方団体は,同法10条4項又は同法15条4項の規定により地方交付税の額の決定又は変更の通知を受けた場合において,当該地方団体に対する地方交付税の額の算定の基礎について不服があるときは,通知を受けた日から30日以内に,総務大臣に対し審査を申し立てることができる旨,この場合において,市町村にあっては,当該審査の申立ては,都道府県知事を経由してしなければならない旨規定する。


地方交付税の額の算定に用いる数の錯誤等
地方交付税法19条1項は,総務大臣は,同法10条4項の規定により普通交付税の額を通知した後において,又は同法18条1項の規定による審査の申立てを受けた際に,普通交付税の額の算定の基礎に用いた数について錯誤があったことを発見した場合(当該錯誤に係る数を普通交付税の額の算定の基礎に用いた年度以降5か年度内に発見した場合に限る。で,

当該地方団体について基準財政需要額又は基準財政収入額を
増加し,又は減少する必要が生じたときは,錯誤があったことを発見した年度又はその翌年度において,総務省令で定めるところにより,それぞれその増加し,又は減少すべき額を当該地方団体に交付すべき普通交付税の額の算定に用いられるべき基準財政需要額若しくは基準財政収入額に加算し,又はこれらから減額した額をもって当該地方団体の当該年度における基準財政需要額又は基準財政収入額とすることができる旨規定する。
地方交付税法19条7項は,地方団体は,同条1項から5項までの場合においては,同条6項の文書を受け取った日から30日以内に,総務大臣に対し異議を申し出ることができる旨規定する。

地方交付税の額の減額等の意見の聴取
地方交付税法20条2項は,総務大臣は,同法10条3項,同法15条2項及び3項,同法18条2項並びに同法19条1項から5項まで及び8項の規定による決定又は処分について関係地方団体が十分な証拠を添えて衡平又は公正を欠くものがある旨を申し出たときは,公開による意見の聴取を行わなければならない旨規定する。


地方財政審議会の意見の聴取
地方交付税法23条は,総務大臣は,次に掲げる場合には,地方財政審議会の意見を聴かなければならない旨規定する。

1号

地方交付税の交付に関する命令の制定又は改廃の立案をしようとするとき。

(2号以下略)


特別交付税に関する省令

市町村に係る12月分の算定方法
特別交付税に関する省令3条1項(令和2年総務省令第12号による改正前のもの。以下同じ。
)は,各市町村に対して毎年度12月に交付すべき
特別交付税の額は,同項1号の額及び同項6号の額の合算額に,同項3号の額から同項4号の額を控除した額(当該額が負数となるときは,0とする。と同項2号の額の合算額から同項5号の額を控除した額

(当該額が負
数となるときは,0とする。
)を加えた額とする旨規定する。
(各号略)


市町村に係る3月分の算定方法
特別交付税に関する省令5条1項(令和2年総務省令第111号による改正前のもの。以下同じ。
)は,各市町村に対して毎年度3月に交付すべき
特別交付税の額は,同項1号の額に同項3号の額から同項4号の額を控除した額(当該額が負数となるときは,0とする。
)と同項2号の額の合算額
から同項5号の額を控除した額
(当該額が負数となるときは,
0とする。

を加えた額とする旨規定する。
(各号略)

本件各特例規定(市町村に係る令和元年度の特別交付税の額の算定方法の特例)
市町村に係る12月分の算定方法の特例
特別交付税に関する省令附則5条21項は,令和元年度において,当該年度の基準財政需要額(普通交付税に関する省令48条の規定の適用を受ける場合にあっては,同条の規定を適用しないで算定した基準財政需要額。以下この項において同じ。
)が基準財政収入額(同条の規定の適
用を受ける場合にあっては,同条の規定を適用しないで算定した基準財政収入額。
以下この項において同じ。を超える各市町村に対して12月

に交付すべき特別交付税の額は,特別交付税に関する省令3条1項の規定にかかわらず,同項1号の額及び同項6号の額の合算額に,同項3号の額から同項4号の額を控除した額(当該額が負数となるときは,0とする。
)並びに同項2号の額の合算額から当該年度の4月1日から9月
30日までの間における地方税法等の一部を改正する法律(平成31年法律第2号)1条の規定による改正前の地方税法37条の2第1項1号及び同法314条の7第1項1号に掲げる寄附金の収入見込額の2分の1に相当する額並びに地方税法37条の2第2項及び同法314条の7第2項に規定する特例控除対象寄附金の収入見込額の2分の1に相当する額並びに基準財政収入額の合算額が基準財政需要額に1.22を乗じて得た額又は基準財政需要額に28億6400万円を加えた額のいずれか大きい額を超える額として総務大臣が定める額を控除した額(当該額が負数となるときは,0とする。
)を加えた額とする旨規定す
る。
市町村に係る3月分の算定方法の特例
特別交付税に関する省令附則7条15項は,令和元年度において,当該年度の基準財政需要額(普通交付税に関する省令48条の規定の適用を受ける場合にあっては,同条の規定を適用しないで算定した基準財政需要額。以下この項において同じ。
)が基準財政収入額(同条の規定の適
用を受ける場合にあっては,同条の規定を適用しないで算定した基準財政収入額。
以下この項において同じ。を超える各市町村に対して3月に

交付すべき特別交付税の額は,特別交付税に関する省令5条1項の規定にかかわらず,同項1号の額に同項3号の額から同項4号の額を控除した額(当該額が負数となるときは,0とする。
)並びに同項2号の額の合
算額から,次の1号の額から2号の額を控除した額を控除した額(当該額が負数となるときは,0とする。
)を加えた額とする旨規定する。
1号

当該年度における地方税法等の一部を改正する法律(平成31年
法律第2号)1条の規定による改正前の地方税法37条の2第1項1号及び同法314条の7第1項1号に掲げる寄附金の収入見込額の2分の1に相当する額並びに地方税法37条の2第2項及び同法314条の7第2項に規定する特例控除対象寄附金の収入見込額の2分の1に相当する額並びに基準財政収入額の合算額が基準財政需要額に1.22を乗じて得た額又は基準財政需要額に28億6400万円を加えた額のいずれか大きい額を超える額として総務大臣が定める額

2号

特別交付税に関する省令3条1項の規定によって算定した額から
同省令附則5条21項の規定によって算定した額を控除した額
2
前提事実
当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実は,次のとおりである。


ふるさと納税制度の概要
いわゆるふるさと納税制度は,平成20年に創設された。すなわち,平成20年法律第21号による地方税法の一部改正により,
個人住民税
(所得割)
の納税義務者の地方団体に対する寄附金のうち一定額を超える額について,所得税の所得控除(所得税法78条1項)及び10%相当額の個人住民税の税額控除がされることに加えて,個人住民税(所得割)の税額控除の金額に所定の上限額の範囲内で特例控除額の加算がされるという制度(以下ふるさと納税制度という。)が設けられた(上記改正後の地方税法37条の2第
1項,2項及び314条の7第1項,2項)




本件各特例規定の制定経緯

ふるさと納税制度創設当時における,地方交付税におけるふるさと納税寄附金の取扱い
ふるさと納税研究会による報告
ふるさと納税制度の創設に先立ち,総務大臣の下,有識者等による研究会として,
ふるさと納税研究会が開催された。
ふるさと納税研究会は,
ふるさとに対する納税者の主体的な貢献を可能にする税制上の仕組みの実現に向けた諸課題について研究・検討し,平成19年10月,その結果をふるさと納税研究会報告書と題する報告書にまとめた。
ふるさと納税研究会報告書には,地方交付税におけるふるさと納
税寄附金の取扱いについて,
現行の地方交付税制度のもとでは,地方団体が寄附金を受けても当該地方団体の地方交付税が減少することはなく,また,寄附者の住所地の地方団体においては,個人住民税減少分の75%は基準財政収入額に反映される『ふるさと納税』,の趣旨を踏まえれば,『ふるさと納税』に相当する寄附金についても,これまでと同様の取扱いとし,寄附を受領した地方団体の地方交付税が減少することのないようにすることが望ましい。また,寄附者の住所地の地方団体において寄附により個人住民税が減少した場合についても,これまでと異なる取扱いをすべき理由はなく,減少額の75%を基準財政収入額に反映することが望ましいと記載されていた。(以上につき,甲7)
法令上の定め
ふるさと納税制度の創設当時,ふるさと納税寄附金に係る収入について,地方交付税の減額要因とする旨の法令上の定めは存在しなかった。イ
地方団体のふるさと納税寄附金に係る収入の状況等
全ての地方団体のふるさと納税寄附金に係る収入の合計額は,ふるさと納税制度が創設された平成20年度においては約81億円であり,平成25年度までにおいては約100億円前後で推移していたが,平成26年度においては約389億円,いわゆるワンストップ特例制度が導入された平成27年度においては約1653億円,平成28年度においては約2844億円,平成29年度においては約3653億円,平成30年度においては約5127億円と増加した。
他方で,平成30年度において,ふるさと納税寄附金に係る収入額が大きい上位10団体(いずれも市町村である。
)の収入額の合計額は,約15
54億円であり,全ての地方団体のふるさと納税寄附金に係る収入の合計額(約5127億円)の約30.3%を占めていた。なお,平成30年度における原告のふるさと納税寄附金に係る収入額は,約498億円であり,全ての地方団体の中で最も大きかった。
また,ふるさと納税寄附金に係る収入額と基準財政収入額(地方交付税法14条1項)を合計した場合に,不交付団体(普通交付税が交付されない地方団体をいう。以下同じ。
)の財政力指数(基準財政収入額を基準財政
需要額で除した数値。以下同じ。
)の平均値(平成30年度においては1.
21,令和元年度においては1.22)及び財源超過額(基準財政収入額が基準財政需要額を超える額。以下同じ。
)の平均額(平成30年度におい
ては24億3800万円,令和元年度においては28億6400万円)を上回る地方団体が生じていた。
(以上につき,乙24,弁論の全趣旨)

平成30年度特例規定
上記イのような状況を受け,総務大臣は,ふるさと納税寄附金に係る収入によって,平均的な不交付団体を上回る財政力を有するに至った地方団体について,地方団体間の財源配分の均衡を図る観点から,特別交付税の算定において,不交付団体に準じた取扱いとすることとして,特別交付税に関する省令の一部を改正する省令
(平成31年省令第20号)
を制定し,
特別交付税に関する省令附則7条15項(令和元年総務省令第61号による改正前のもの。以下平成30年度特例規定という。
)を新設した。
平成30年度特例規定は,平成30年度において,基準財政需要額が基準財政収入額を超える各市町村に対して3月に交付すべき特別交付税の額について,本件各特例規定と同様に,ふるさと納税寄附金に係る収入の一定額を特別交付税の減額要因となる事情として定めるものであった。

本件各特例規定
総務大臣は,令和元年12月11日,特別交付税に関する省令の一部を改正する省令(令和元年総務省令第61号)を制定した。これは,令和元年度における市町村に係る特別交付税の額の算定方法の特例規定(本件各特例規定)として特別交付税に関する省令附則5条21項(上記関係法令の定め⑵ウ

)及び同附則7条15項(上記関係法令の定め⑵ウ
)を設

けるなどの改正をしたものである。
本件各特例規定は,令和元年度において,基準財政需要額が基準財政収入額を超える各市町村に対して12月及び3月に交付すべき特別交付税の額は,特別交付税に関する省令3条1項及び同省令5条1項の規定(上記関係法令の定め⑵ア,イ)にかかわらず,当該地方団体の当該年度における基準財政収入額に当該年度におけるふるさと納税寄附金の収入見込額の2分の1に相当する額を加算した額が,基準財政需要額に不交付団体の財政力指数の平均を乗じて得た額又は財源超過額の平均額を加算した額のいずれか大きい額を超える地方団体については,当該超える額を災害等に要する経費以外の算定額から減額して算定する旨を定めるものであった。
なお,平成27年度から平成29年度までの間に,地方団体全体においてふるさと納税寄附金の募集に要した経費のふるさと納税寄附金に係る収入に占める割合が約50%であったことから,平成30年度特例規定及び本件各特例規定において,基準財政収入額に加算するふるさと納税寄附金の収入見込額はその2分の1に相当する額とされた(乙25)



本件12月分決定
総務大臣は,令和元年12月,原告について,地方交付税法15条2項に基づき,特別交付税に関する省令附則5条21項の規定を適用した上,令和元年度の12月に原告に交付すべき特別交付税の額を710万2000円とする旨の決定(本件12月分決定)をし,大阪府知事を経由して,同月13日付けの通知書により,泉佐野市長に通知した(甲1の1・2)




本件12月分決定に対する審査申立て
原告は,令和元年12月25日,本件12月分決定の額の算定の基礎について不服があるなどとして,総務大臣に対し,地方交付税法18条1項に基づく審査申立てをした。これに対し,総務大臣は,令和2年1月23日,上記審査申立てを却下する旨の決定をした。
(甲2の1~4,5の1・2)



意見の申出
原告は,令和2年2月26日,大阪府知事を経由して,総務大臣に対し,地方交付税法17条の4第1項に基づき,
本件各特例規定の見直しについて,
意見の申出をした。
原告が申し出た意見の概要は,①

ふるさと納税を含め,個人が任意に支出する寄附金については,基準財政収入額に算入しないこととしている。と

する平成30年3月の交付税の算定方法に関する意見の処理方針,②有識者等によるふるさと納税研究会報告書
(甲7)の

寄附を受領した地方団体の地方交付税が減少することのないようにすることが望ましい。

との意見,③会計年度独立の原則,に反して,ふるさと納税寄附金収入の2分の1を基準財政収入額と同等とみなして特別交付税の交付算定額から控除することの見直しを要望する,というものであった。
これに対し,総務大臣は,令和2年3月27日,大阪府を通じて,原告に対し,原告の上記意見を採用しない旨の処理結果を送付した。
(以上につき,
甲3,6の1・2)


本件3月分決定
総務大臣は,令和2年3月,原告について,地方交付税法15条2項に基づき,特別交付税に関する省令附則7条15項の規定を適用した上,令和元年度の3月に原告に交付すべき特別交付税の額を4616万7000円とする旨の決定(本件3月分決定)をし,大阪府知事を経由して,同月27日付けの通知書により,泉佐野市長に通知した(甲4の1・2)




本件訴えの提起
原告は,令和2年6月8日,本件各決定の取消しを求める本件訴えを提起した。



特別交付税の概要等

特別交付税(特別交付金)の創設
地方財政平衡交付金法の制定(昭和25年)
特別交付税は,地方財政平衡交付金法(昭和25年法律第211号。なお,昭和29年法律第101号において題名が地方交付税法に改められた。の附則において,

昭和25年度及び昭和26年度の暫定措置とし
て創設された(当時の名称は,
特別交付金であった。。

すなわち,地方財政平衡交付金法附則2条は,昭和25年度及び昭和26年度に限り,
地方財政平衡交付金
(地方交付税の前身に当たるもの)
の総額のうち10分の1に相当する額は,特別交付金とする旨規定し,同法附則4条は,特別交付金は,同法12条の測定単位によっては捕捉し難い特別の財政需要があること,交付金の額の算定期日後に生じた災害
(その復旧に要する費用が国の負担によるものを除く。等のため特別)
の財政需要があることその他特別の事情があることにより,交付金の額が財政需要に比して過少であると認められる地方団体に対して,当該事情を考慮して交付する旨規定していた。
地方財政平衡交付金法の改正(昭和27年)
その後,昭和27年法律第166号による地方財政平衡交付金法の改正により,地方交付税は,同法の本則(同法15条)において恒久的に定められることとなった。上記改正により,特別交付金の額の算定に関する規定は,現在の特別交付税法15条1項と同様の規定となった。すなわち,上記改正後の地方財政平衡交付金法15条1項は,特別交付金は,同法11条に規定する基準財政需要額の算定方法によっては捕捉されなかった特別の財政需要があること,同法14条の規定により算定された基準財政収入額のうちに著しく過大に算定された財政収入があること,地方財政平衡交付金の額の算定期日後に生じた災害(その復旧に要する費用が国の負担によるものを除く。等のため特別の財政需要が)
あり,又は財政収入の減少があることその他特別の事情があること,により,基準財政需要額又は基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大又は基準財政収入額の算定過少を考慮しても,なお,普通交付金(普通交付税の前身に当たる。
)の額が財政需要
に比して過少であると認められる地方団体に対して,規則で定めるところにより,当該事情を考慮して交付する旨規定していた。

特別交付税(特別交付金)に関する国会審議における政府委員の答弁特別交付税(特別交付金)に関する国会審議における政府委員の答弁の概要は,次のとおりであった。
昭和26年11月24日参議院地方行政委員会における政府委員(地方自治庁財政課長)の答弁
昭和26年11月24日参議院地方行政委員会において,
政府委員
(地
方自治庁財政課長)

地方財政平衡交付金の特別交付金の配分に当りは,ましては,…基準財政収入額にも競輪や競馬の収入があります場合にはプラスをして行くというような方法をとっておるわけであります。など

と答弁した(乙20)

昭和39年12月10日参議院地方行政委員会における政府委員(自治省財政局長)の答弁
昭和39年12月10日参議院地方行政委員会において,
政府委員
(自
治省財政局長)は,
特別交付税を計算いたします場合に,たとえば,競馬競輪収入が非常に多いとか,あるいは水利使用料が多いという分につきましては,その分は基準財政収入額の計算に入らないわけであります。その分は減額項目として一定額を計算の基礎に置いて減額しておるわけであります。などと答弁した(乙21)。
昭和55年3月25日参議院地方行政委員会における政府委員(自治省財政局長)の答弁
昭和55年3月25日参議院地方行政委員会において,政府委員(自治省財政局長)は,

基本的に,全地方公共団体の共有の財源でありかつ財源調整を目的とする特別交付税の配分ということでございますので,ある一定のものについてはこれは財源的な余裕があるという見地から引いても差し支えない。

などと答弁した(乙22)。
3
争点


本案前の争点

本件訴えが裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たるか否か
(争点1)


地方交付税法15条2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定が,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか否か(争点2)




本件各決定の取消しを求める訴えの利益の有無(争点3)
本案の争点
本件各特例規定が地方交付税法15条1項の委任の範囲を逸脱した違法な
ものとして無効であるか否か(争点4)
4
争点に関する当事者の主張


争点1(本件訴えが裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たるか否か)について
上記の点に関する当事者の主張は,中間判決に記載のとおりである。


争点2(地方交付税法15条2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定が,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか否か)について
(原告の主張)

行政処分に当たること
地方交付税法15条2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定は,地方団体が地方交付税法の規定に従って特別交付税の交付を受ける権利を侵害する国の行為であり,公権力の主体である国が,直接,独立の法主体である地方団体の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められている行為に当たるから,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。

時機に後れた攻撃防御方法であるとの申立て
地方交付税法15条2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない旨をいう被告の主張は,時機に後れた攻撃防御方法であるから,却下を求める。

(被告の主張)

行政処分に当たらないこと
行政主体を名宛人とする行為
国や地方団体といった行政主体は,法律上付与された行政権限の主体であり,私人とは本質的に異なる存在であるから,私人が行政主体から公権力の行使を受けてその権利が形成されたりその範囲が画されたりすることと,行政主体が他の行政主体から公権力の行使を受けて法令上の権限が分配等されることとは,それぞれその法的性質が異なる。行政事件訴訟法は,このような法的性質の相違を前提に,主観訴訟と客観訴訟を明確に区別し,抗告訴訟を飽くまでも国民の権利の救済を守備範囲とする主観訴訟として位置付けている。そうすると,行政主体を名宛人とする行為については,その根拠となる法令が,私人を名宛人とする場合にも同様の法的地位の変動を想定しており,行政主体を私人と同様に扱っている場合でなければ,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないというべきである。
地方交付税法15条2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定は,地方団体のみをその名宛人とすることを想定し,私人を名宛人とすることを想定しておらず,本来は国民から税を徴収すべき立場にある地方団体に対して国が代わりに徴収した税を配分する行為であるから,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるということはできない。
訴訟手続によらない紛争解決の仕組み
また,地方交付税法には,総務大臣による地方交付税の額の決定について,
抗告訴訟の対象とすることを念頭に置く規定は存在しない一方で,行政内部の紛争処理手続として地方交付税の額に関する審査の申立ての手続が定められ(同法18条1項,19条7項)
,さらに,地方交付税の
額の算定方法に関する意見の申出の手続が定められている(同法17条の4)
。このように,地方交付税法において,各地方団体に交付する地方交付税の額の決定について,訴訟手続によらない内部紛争解決の手続規定によって紛争解決を図る仕組みが特別に設けられていることに照らせば,地方交付税法は,特別交付税の額の決定を抗告訴訟の対象とすることを想定していないといえる。

小括
したがって,地方交付税法15条2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。



争点3(本件各決定の取消しを求める訴えの利益の有無)について
(原告の主張)

訴えの利益があること
本件各決定の取消しを求める訴えの利益はある。
これに対し,被告は,地方交付税の総額の決定はやり直せないから原告に対してのみ地方交付税の額の決定を行うことは法律上不可能である旨主張する。しかし,違法行為であるにもかかわらず是正できない旨の主張は許されるものではない。また,違法な配分であれば,翌年以降の年度において調整すべきである。したがって,被告の上記主張は採用することができない。


時機に後れた攻撃防御方法であるとの申立て
本件各決定の取消しを求める訴えの利益がない旨をいう被告の主張は,時機に後れた攻撃防御方法であるから,却下を求める。

(被告の主張)

訴えの利益がないこと
総務大臣が,地方交付税の総額の配分から離れて,原告に対してのみ地方交付税の額の決定を行うことは法律上不可能であり,本件各決定が取り消されたとしても,総務大臣は,地方交付税法で定められた令和元年度の地方交付税の総額の上限を超えて,地方交付税の額を定める余地はないことから,本件各決定と同額の特別交付税の額の決定を原告に対して行わざるを得ない。そうすると,本件各決定を取り消すことにより原告に回復すべき権利又は法律上の利益が存在するということはできない。


小括
したがって,本件各決定の取消しを求める訴えの利益はない。



争点4(本件各特例規定が地方交付税法15条1項の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるか否か)について

(原告の主張)

地方交付税法15条1項違反であること
地方交付税法15条1項の解釈
地方交付税法15条1項は,地方団体の収入が多額であることを理由として,特別交付税を減額する旨規定しておらず,他の地方団体との均衡を図ることを目的として,
特別交付税を減額する旨も規定していない。
すなわち,同項は,特別交付税の減額要因として,①基準財政需要額の算定方法の画一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大,又は②基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる基準財政収入額の算定過少を定めているところ,上記②は,基準財政収入額を構成する収入の算定結果が著しく過少であること
(基準財政収入額の過少)
をいう。
そして,
ふるさと納税寄附金に係る収入は,上記①又は②に当たらない。地方交付税制度の基本的枠組みとの関係
地方交付税制度においては,算定基準の明確化及び恣意介入の排除の観点から,基本的主要事項について法律で定め,具体的細目について省令で定めることとされ,
地方交付税法は,基準財政収入額」財政収入」
「,に該当する収入について,限定的に定めている(地方交付税法14条3項等)。本件各特例規定は,具体的細目について定めるものではなく,特別交付税の算定方法の基本的事項について定めるものであり,また,ふるさと納税寄附金に係る収入額を基準財政収入額と同等に取り扱うものであり,実質的に省令によって地方交付税法が定める基準財政収入額の内容を変更するものである。小括そうすると,ふるさと納税寄附金に係る収入を特別交付税の減額要因として規定する本件各特例規定は,地方交付税法15条1項に反するものである。イその他の違法事由地方財政法26条違反地方財政法26条は,地方交付税が減額される事由について,「法令の規定に違背して著しく多額の経費を支出し,又は確保すべき収入の徴収等を怠った場合に限定している。原告がふるさと納税として多額の寄附金を集めたことは法令の規定に違背するものではなく,原告は確保すべき収入の徴収等を怠っていないから,地方財政法26条が定める地方交付税が減額される場合に該当しない。
そうすると,令和元年度の原告に交付する特別交付税の額を減額した本件各決定は,地方財政法26条に違反し,違法である。
会計年度独立の原則違反
ある年度にふるさと納税寄附金に係る収入があったとしても,当該寄附金に係る返礼品の提供のための経費その他事務経費が翌年度以降に生ずることもある。
そうすると,このような年度ごとの収支の変動を考慮しない本件各特例規定は,地方自治法208条が定める会計年度独立の原則に違反するものである。
信義則違反
ふるさと納税研究会報告書
(甲7)において,ふるさと納税寄附金
を受領した地方団体の地方交付税が減少することのないようにすることが望ましいとされ,
被告は,
ふるさと納税寄附金に係る収入については,
基準財政収入額に算入しないこととしてきたにもかかわらず,法改正によらず,また,相当な予告期間を置かずに,ふるさと納税寄附金に係る収入を特別交付税の減額要因として定める本件各特例規定が制定された。そうすると,本件各特例規定は,上記の方針を信頼してきた原告に想定外の財政上の不利益をもたらすものであり,信義則に反し,違法である。
他事考慮(懲罰目的)の違法
総務大臣は,ふるさと納税制度に関する技術的助言に原告が従わなかったことを実質的な理由として,地方税法37条の2第2項及び同法314条の7第2項に基づく指定をしなかった。これに対し,原告は,国地方係争処理委員会に対する国の関与に関する審査の申出,国の関与に関する訴えを提起した。
そうすると,本件各特例規定は,原告が上記の技術的助言に従わなかったことや,
審査の申出及び訴訟の提起をしたことに反発し,
見せしめ,
懲罰の意図が働いて制定されたものであり,
他事考慮によるものであり,
違法である。
(被告の主張)

地方交付税法15条1項違反でないこと
地方交付税法15条1項が定める特別交付税の減額要因
a
地方交付税制度の基本原則,地方交付税の位置付け
地方交付税は,財源の均衡化を図ることを目的とし(地方交付税法1条)財政需要額が財政収入額を超える地方団体に対して衡平にその,
超過額を補塡することを目途として交付されるものである(同法3条1項)
。これらの地方交付税の目的,基本原則の下,特別交付税は,基
準財政需要額と基準財政収入額との差を基礎として交付される普通交付税の交付によっては地方団体の財政需要が満たされない場合に,基準財政需要額及び基準財政収入額では捕捉できない財政需要額及び財政収入額を考慮して交付するものと位置付けられている。

b
基準財政需要額又は基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大又は基準財政収入額の算定過少を考慮してもの趣旨上記aのような地方交付税制度の基本原則,特別交付税の位置付け等に照らすと,
地方交付税法15条1項のうち,
基準財政需要額又は基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大又は基準財政収入額の算定過少を考慮してもと定める部分は,
普通交付税のみでは,基準財政需要額や基準財政収入額を捕捉することには限界があることを前提に,普通交付税の算定に用いる基準財政需要額及び基準財政収入額の算定方法の画一性から生ずる財政需要額と基準財政需要額,財政収入額と基準財政収入額とのかい離が生ずることを,特別交付税算定における減額要因として規定するものと解される。すなわち,同項は,特別交付税の減額要因として,基準財政需要額が地方団体の個別具体の財政需要額と比較して過大となっている場面と,基準財政収入額が地方団体の個別具体の財政収入額と比較して過少となっている場面という,交付の必要性を緩和・解消する場面を需要・収入の両面から包括的に規定し,これらを,特別交付税算定における減額要因として機能させることを規定するものである。
c
基準財政収入額算定上の項目に係る収入の算定過少に殊更限定されないこと
そして,上記aのような地方交付税制度の基本原則,特別交付税の位置付け等,上記bのような基準財政需要額又は基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大又は基準財政収入額の算定過少を考慮してもの趣旨に照らせば,特別交付税の額の算定において,基準財政収入額の算定項目に含まれない財政収入額を考慮することを地方交付税法が禁止しているとは到底解されない。かえって,地方交付税法はどのような収入を特別交付税の算定において減額要因とみるかについて,具体的・個別的な制約を課していないこと,これを前もって法律で定めることは普通交付税の画一的な算定方法を補完するという特別交付税の本来の役割を損なうことになること,特別交付金が暫定的であった当時においても,競輪・競馬に係る収入という基準財政収入額の項目に挙げられていない収入を特別交付金の減額要因としていた中,これを本則に規定し,恒久化した法制度の下でも同様の減額をする運用を想定していたことに鑑みると,地方交付税法15条1項は,特別交付税を減額する場合について,基準財政需要額算定上の項目外の需要や基準財政収入額算定上の項目外の収入を排除して,それらの項目そのものの算定が過大や過少の場合に殊更限定する趣旨のものではないというべきである。

d
小括
そうすると,地方交付税法15条1項の委任に基づいて総務大臣が策定した省令は,
上記の同法の基本的枠組みに反するものでない限り,
同法の委任の範囲を超えるものではない。すなわち,同法15条1項に基づく省令を定めるに当たって,基準財政収入額で捕捉されなかった財政収入を減額要因として特別交付税の交付に際して考慮することは,およそ地方交付税法の委任の範囲を超えるものではない。
本件各特例規定について
本件各特例規定は,ふるさと納税寄附金に係る収入額が基準財政収入額の画一的な算定方法では捕捉することができないため,当該収入から生じる地方団体間の財源配分の不均衡が相当大きくなったことから,財政需要額が財政収入額を超える地方団体に対し衡平にその超過額を補塡するという観点から,特別交付税においてふるさと納税寄附金に係る収入の一定額を考慮することとしたものである。
そして,ふるさと納税寄附金に係る収入は,地方交付税法14条において基準財政収入額の収入項目として定められていないから,現実には財政収入として存在しても,基準財政収入額においては算定上考慮できず,したがって財政収入を評価する上で基準財政収入額の算定が過少となっているとみるべきものであり,しかも,同法15条1項が規定する特別交付税の交付事由があり,財政需要に対する不足があるとしても,これを緩和・解消する要因になるものであるから,ふるさと納税寄附金に係る収入がここに含まれることは明らかである。
また,本件各特例規定は,ふるさと納税寄附金に係る収入の全額ではなく2分の1を考慮するものとし,控除額の算定に当たり,基準財政需要額に不交付団体の財政力指数の平均を乗じた額又は基準財政需要額に財源超過額の平均額を加算した額のうち,より大きい額を差し引くことをした上で,災害等に要する経費等当該地方団体の財政事情がどのようなものであるかにかかわらず交付することが適当な項目からは減額せず,減額の対象を絞り込むなど従前の取扱いを著しく変更することがないよう十分な配慮も行っている。
さらに,
本件各特例規定の内容については,
地方財政審議会においても意見を聴取し,何ら異論の出なかったところであり,慎重な手続を踏んでいる。これらのことからも,本件各特例規定の合理性は明らかである。
小括
したがって,本件各特例規定が,地方交付税法15条1項の委任の範囲を逸脱した違法なものということはできない。

その他の違法事由について
地方財政法26条違反について
地方財政法26条は,地方交付税法所定の算定をして決定した地方交付税の額について減額する場合を定めたものにすぎない。これに対し,本件各特例規定は,一旦決定した特別交付税の額を減額するものではなく,その額の算定方法自体を定めたものである。
そうすると,本件各特例規定は,地方財政法26条に違反しない。会計年度独立の原則違反について
地方交付税の算定の基礎となる財政需要や財政収入は当該年度に生ずると考えられる標準的な額で算定することになるところ,ふるさと納税寄附金が急激に増大を始めた平成27年度以降の全地方団体の収入とこれに要した経費の実績から,その収入の見込額の2分の1の額が標準的な収入額であるとの判断は合理的であったといえる。
そうすると,本件各特例規定は,会計年度独立の原則に違反しない。信義則違反について
被告が特別交付税の算定においてふるさと納税寄附金に係る収入を考慮しないという処理方針を示したことはなく,原告に一定額の特別交付税が交付されるという信頼が生ずるものではない。
そうすると,本件各特例規定による特別交付税の算定が行われたことを信義則違反とみることはできない。
他事考慮(懲罰目的)の違法について
本件各特例規定が制定されたのは,原告が技術的助言に従わなかったことや,審査の申出及び訴訟の提起をしたことに反発し,見せしめ,懲罰の意図が働いたためではなく,ふるさと納税の運用状況から,特別交付税において財政需要額が財政収入額を超える額の衡平な補塡の観点からふるさと納税寄附金に係る収入を一定限度で考慮すべきであると考えられたためである。
そうすると,本件各特例規定は,他事考慮によるものではない。
第3

当裁判所の判断

1
争点1(本件訴えが裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たるか否か)について
中間判決で判断したとおり,本件訴えは,裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たる。
2
争点2(地方交付税法15条2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定が,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか否か)について⑴

検討

地方交付税の目的
地方交付税は,地方交付税法6条の規定により算定した所得税等の一定割合の額及び地方法人税の額で地方団体が等しくその行うべき事務を遂行することができるように国が地方団体に対して交付する税である(同法2条1号,3条1項)
。地方交付税の種類は,普通交付税及び特別交付税で
ある(同法6条の2第1項)
。地方交付税は,地方団体がその事務を行うた
めの財源となるものであって,使途が制限されない一般財源である(同法3条2項)

また,地方団体は,地方自治法上は普通地方公共団体に当たり(同法1条の3第2項)地域における事務等を処理する法人であり

(同法2条1項,
2項)国の事務を国に代わって処理するのではなく,

地方団体自らの事務
を処理するものである(同法2条1項,2項参照)

そうすると,地方交付税は,国から独立した法人である地方団体が自らの事務を行うために交付されるものであるといえる。

地方交付税の性質
上記アのとおり,地方交付税は,国が地方団体に対して交付するものと定められているところ(地方交付税法2条1号,3条1項)
,地方団体が自
ら賦課・徴収するものではなく,国が賦課・徴収した所得税等の国税の一定割合が,地方交付税法に基づく総務大臣による具体的な交付額の算定・決定を経て,各地方団体に配分・交付されるものである。
そうすると,地方交付税は,国の地方団体に対する支出金の性質を持つものというべきである。


地方交付税の額の決定の仕組み
地方交付税のうち,普通交付税については,毎年度,基準財政需要額が基準財政収入額を超える地方団体に対して当該地方団体の基準財政需要額が基準財政収入額を超える額を交付するものとされた上,総務大臣は,各地方団体に対して交付すべき普通交付税の額を,遅くとも毎年8月31日までに決定しなければならないとされている(地方交付税法10条1項~3項)

他方で,特別交付税については,地方交付税法11条に規定する基準財政需要額の算定方法によっては捕捉されなかった特別の財政需要があること等により,基準財政需要額又は基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大又は基準財政収入額の算定過少を考慮しても,なお,普通交付税の額が財政需要に比して過少であると認められる地方団体に対して,総務省令で定めるところにより,当該事情を考慮して交付するものとされている(同法15条1項)
。総務大臣は,総務省
令で定めるところにより,各地方団体に交付すべき特別交付税の額を,毎年度,2回に分けて決定するものとされている(同法15条2項)。また,
地方交付税は,毎年度,所定の時期にそれぞれ所定の額を交付するとされている(同法16条)

このように,国が地方団体に対して交付する地方交付税の具体的な額は,普通交付税及び特別交付税のいずれについても,総務大臣が一定の算定方法等に従った決定を行うことによって確定することになる。

以上のように,地方交付税は,国から独立した法人である地方団体が自らの事務を行うために交付されるものであって
(上記ア)国の地方団体に

対する支出金の性質を持ち(上記イ)
,また,その具体的な額は,総務大臣
が一定の算定方法等に従った決定を行うことによって確定することになる(上記ウ)
。そして,これらの事情等に照らせば,地方団体は,地方交付税
法に基づく地方交付税の額の決定を受けることにより,当該決定に係る地方交付税の額の交付を受ける具体的な権利ないし法律上の利益を取得するものというべきである。
そうすると,地方交付税法15条2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定は,地方交付税法を根拠として優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり,地方団体の上記権利ないし法律上の利益に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解するのが相当である。


なお,原告は,地方交付税法15条2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない旨をいう被告の主張は,時機に後れた攻撃防御方法であるとして却下を求めている。しかし,上記主張により訴訟の完結を遅延させることとなると認められないから,上記主張は却下しないこととする。



被告の主張について

行政主体を名宛人とする行為
被告は,前記第2の4⑵の(被告の主張)欄のア

のとおり,行政主体

を名宛人とする行為については,その根拠となる法令が,私人を名宛人とする場合にも同様の法的地位の変動を想定しており,行政主体を私人と同様に扱っている場合でなければ,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないところ,地方交付税法15条2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定は,地方団体のみをその名宛人とすることを想定し,私人を名宛人とすることを想定しておらず,本来は国民から税を徴収すべき立場にある地方団体に対して国が代わりに徴収した税を配分する行為であるから,直接国民の権利義務に影響を及ぼすものではない旨主張する。
しかし,地方交付税法に基づく地方交付税の額の決定は,地方団体のみがその名宛人となり得る行為であるものの,上記⑴で説示したとおり,地方交付税は,国から独立した法人である地方団体が自らの事務を行うために交付されるものであり,国の地方団体に対する支出金としての性質を有するものというべきであって,国が地方団体に代わって徴収した税の配分としての性質を有するものということはできない。そして,上記⑴で説示したとおり,地方交付税法が定める地方交付税の額の決定の仕組み等にも照らせば,同法に基づく地方交付税の額の決定を受けた地方団体は,当該決定に係る地方交付税の額の交付を受ける具体的な権利ないし法律上の利益を取得するというべきであるから,地方交付税の額の決定は,直接,国から独立した法人である地方団体の権利義務に影響を及ぼすものといえる。したがって,被告の上記主張は採用することができない。

訴訟手続によらない紛争解決の仕組み
被告は,前記第2の4⑵の(被告の主張)欄のア

のとおり,地方交付

税法において,各地方団体に交付する地方交付税の額の決定について,訴訟手続によらない内部紛争解決の手続規定によって紛争解決を図る仕組みが特別に設けられていることに照らせば,地方交付税法は,特別交付税の額の決定を抗告訴訟の対象とすることを想定していないといえる旨主張する。
しかし,地方交付税法が,地方交付税の額の決定についてその算定の基礎に不服がある場合における不服申立ての手続
(同法19条)地方交付税

の額の算定方法に関する意見の申出の手続(同法17条の4)等,訴訟以外の紛争処理制度を設けていることをもって,直ちに地方交付税の額の決定の行政処分性が否定されるものではない。そして,上記⑴で説示したとおり,地方交付税の目的,性質,同法が定める地方交付税の額の決定の仕組み等に照らせば,地方団体は,同法に基づく地方交付税の額の決定を受けることにより,当該決定に係る地方交付税の額の交付を受ける具体的な権利ないし法律上の利益を取得するものというべきであり,地方交付税の額の決定は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるというべきである。したがって,被告の上記主張は採用することができない。


小括
以上によれば,地方交付税法15条2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。

3
争点3(本件各決定の取消しを求める訴えの利益の有無)について⑴

検討

上記2で説示したとおり,地方交付税法15条2項に基づく総務大臣による特別交付税の額の決定は,当該決定に係る特別交付税の額の交付を受ける具体的な権利ないし法律上の利益に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから,当該決定を受けた地方団体はその取消しによって上記法的効果を排除することができる。そうすると,同項に基づく総務大臣による特別交付税の額の決定を受けた地方団体は,当該決定の取消しを求める訴えの利益を有するというべきである。
したがって,本件各決定の取消しを求める訴えの利益はある。

なお,原告は,本件各決定の取消しを求める訴えの利益はない旨をいう被告の主張は,
時機に後れた攻撃防御方法であるとして却下を求めている。
しかし,上記主張により訴訟の完結を遅延させることとなると認められないから,上記主張は却下しないこととする。



被告の主張について
被告は,前記第2の4⑶の(被告の主張)欄のとおり,総務大臣が,地方交付税の総額の配分から離れて,原告に対してのみ地方交付税の額の決定を行うことは法律上不可能であり,本件各決定が取り消されたとしても,総務大臣は,地方交付税法で定められた令和元年度の地方交付税の総額の上限を超えて,地方交付税の額を定める余地はないことから,本件各決定と同額の特別交付税の額の決定を原告に対して行わざるを得ないのであるから,本件各決定を取り消すことにより原告に回復すべき権利又は法律上の利益が存在するということはできない旨主張する。
しかし,地方交付税法は,地方団体に対して交付する普通交付税の額を決定し,これを通知した後,普通交付税の額の算定の基礎に用いた数について錯誤があったことを発見した場合,錯誤があったことを発見した年度又は翌年度等において当該地方団体に対して交付すべき普通交付税の額の算定に用いられるべき基準財政需要額に加算するなどして調整する旨を定めている(同法19条1項。前記関係法令の定め⑴サ


。このことに鑑みれば,総務

大臣において,本件各決定が取り消された場合においても,改めて原告に対して交付すべき令和元年度の特別交付税の額の決定をし,翌年度以降において原告に対して交付すべき普通交付税又は特別交付税の額の算定において調整するなどして対応することが,およそ不可能であるなどといえない。したがって,被告の上記主張は採用することができない。


小括
以上によれば,本件各決定の取消しを求める訴えの利益はある。
4
争点4(本件各特例規定が地方交付税法15条1項の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるか否か)について


判断枠組み
地方交付税法15条1項は,特別交付税は,同法11条に規定する基準財政需要額の算定方法によっては捕捉されなかった特別の財政需要があること,同法14条の規定により算定された基準財政収入額のうちに著しく過大に算定された財政収入があること,
地方交付税の額の算定期日後に生じた災害
(そ
の復旧に要する費用が国の負担によるものを除く。
)等のため特別の財政需
要があり,又は財政収入の減少があることその他特別の事情があること,により,基準財政需要額又は基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大又は基準財政収入額の算定過少を考慮しても,なお,普通交付税の額が財政需要に比して過少であると認められる地方団体に対して,総務省令で定めるところにより,当該事情を考慮して交付する旨規定する(前記関係法令の定め⑴キ




本件各特例規定は,地方交付税法15条1項の委任に基づいて特別交付税の具体的な算定方法を定めるものであるから,同項の委任の範囲を逸脱するものである場合には,その逸脱する部分は違法なものとして効力を有しないというべきである。
そこで,本件各特例規定が地方交付税法15条1項の委任の範囲を逸脱するものであるか否かについて,以下検討する。


本件各特例規定が地方交付税法15条1項の委任の範囲を逸脱するものであるか否かについて

地方交付税法15条1項の文理からの検討
まず,法文の文理をみると,地方交付税法15条1項は,特別交付税は,
(A)㋐第11条に規定する基準財政需要額の算定方法によっては捕捉されなかった特別の財政需要があること㋑,第14条の規定により算定された基準財政収入額のうちに著しく過大に算定された財政収入があること,㋒

交付税の額の算定期日後に生じた災害(その復旧に要する費用が国の負担によるものを除く。等のため特別の財政需要があり,)又は財政収入の減少があること

,㋓その他特別の事情があることに
より,
(B)
基準財政需要額又は基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大又は基準財政収入額の算定過少を考慮しても,なお,
(C)普通交付税の額が財政需要に比して過少であ
ると認められる地方団体に対して,総務省令で定めるところにより,当該事情を考慮して交付すると定めている。
このような地方交付税法15条1項の文理に照らせば,同項は,上記(A)の㋐~㋓の各事情があることを特別交付税の交付事由とし,上記(B)の各事情があることを特別交付税の減額要因として,これらの事情を考慮して,普通交付税の額が財政需要に比して過少であると認められる地方団体に対して,
特別交付税を交付することを定めた上,(A)
上記
及び(B)の各事情の具体的内容を定めることにつき,総務省令に委任しているものと解するのが自然である。
このうち,上記(B)の特別交付税の減額要因となる事情である基準財政需要額又は基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大又は基準財政収入額の算定過少とは,①基準財政需要額…の算定方法の画一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大又は②,
基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる…基準財政収入額の算定過少という2種類の事情を定めているものと解される。
そして,このうち上記②の基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる…基準財政収入額の算定過少とは,その文理,地方交付税法15条1項の構造(上記②は上記(A)の㋑と対になっていること,上記(B)には上記(A)の㋓に相当する減額要因となる事情についての包括的な定めが存在しないこと等)同法14条が定める基準財政収入額の,
算定方法の内容(前記関係法令の定め⑴カ

)等に照らせば,普通交付

税の算定の基礎に用いられる基準財政収入額が画一的な方法で算定されることに起因して,基準財政収入額の算定の基礎となる収入項目に係る現実の収入額と基準財政収入額中の当該収入項目に係る基準税額とに差異が生じ,そのために当該基準税額の算定過少が生じていることをいうものと解するのが相当である。すなわち,地方交付税法15条1項は,その文理上,基準財政収入額の算定の基礎とならない収入項目に係る収入が存在すること又はこれが一定額に及ぶことを特別交付税の減額要因となる事情として定めることにつき,総務省令に委任しているものと解することはできないというべきである。
これを本件各特例規定についてみると,本件各特例規定は,地方団体の令和元年度におけるふるさと納税寄附金に係る収入が一定額に及ぶことを特別交付税の減額要因となる事情として定めるものであるところ(前記関係法令の定め⑵ウ,
前記前提事実⑵エ)地方団体がふるさと納

税寄附金に係る収入を得たことは,上記①の基準財政需要額…の算定方法の画一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大がある場合に当たらないことは明らかである。そして,ふるさと納税寄附金に係る収入は基準財政収入額の算定の基礎となる収入項目に当たらないから(地方交付税法14条等参照)地方団体がふるさと納税寄附金に係る収入を得,
たことは,上記②の基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる…基準財政収入額の算定過少がある場合にも当たらないというべきである。
そうすると,ふるさと納税寄附金に係る収入が一定額に及ぶことを総務省令により特別交付税の減額要因となる事情として定めることは,上記(A)及び(B)の各事情(具体的には,上記(B)に関する上記①及び②)の具体的内容を定めるものということはできないから,法文の文理からは,本件各特例規定が地方交付税法15条1項の委任の範囲内の事項を定めるものということはできない。

地方交付税法15条1項の委任の趣旨からの検討
上記アで説示したとおり,本件各特例規定は,地方交付税法15条1項の文理に照らせば,同項の委任の範囲内の事項を定めるものということはできない。もっとも,本件各特例規定が,同項が総務省令に委任した趣旨に適合するものといえるのであれば,同項の委任の範囲内の事項を定めるものと解する余地もないとはいえない。
そこで,地方交付税法15条1項の委任の趣旨について検討すると,同項が特別交付税の交付事由及び減額要因となる事情の具体的内容について総務省令に委ねたのは,特別交付税の交付事由及び減額要因となる事情の具体的内容については,地方行政・地方財政・地方税制や地方団体の実情等に通じた総務大臣の専門技術的な裁量に委ねるのが適当であることに加え,状況の変化に対応した柔軟性を確保する必要があり,法律で全て詳細に定めるのは適当ではないことによるものと解される。
他方,ふるさと納税寄附金に係る収入が一定額に及ぶことについて,地方団体間の公平性を確保しその納得を得るという観点から,これを特別交付税の減額要因となる事情とするか否かは,ふるさと納税制度の創設の経緯,ふるさと納税の全体の規模(前記前提事実⑵)等に照らせば,地方交付税制度の本質的事項についての政策決定であるといえるから,基本的には,立法者において主として政治的,政策的観点から判断すべき性質の事柄であるというべきである。また,本件各特例規定は,ふるさと納税寄附金に係る収入が多額である地方団体にとって,特別交付税の交付額の大幅な減額をもたらし得るものであって,当該地方団体に重大な財政上の不利益を生じさせ得るものである(なお,市町村の普通交付税の基準財政収入額の算定の対象となっている収入項目は22項目〔地方交付税法6条の3の交通安全対策特別交付金,地方特例交付金等の地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律8条の地方特例交付金を含めると24項目〕であるところ,
平成30年度において,
そのうち市町村民税,
固定資産税,
市町村たばこ税及び地方消費税交付金の4項目はふるさと納税寄附金に係る収入よりも収入額が大きいが,その余の18項目はふるさと納税寄附金に係る収入よりも収入額が小さい〔乙36〕)
。。そのような定めは,総務
大臣の専門技術的な裁量に委ねるのが適当な事柄であるとはいい難いし,状況の変化に対応した柔軟性の確保が問題となる事柄でもないから,そのような定めについてまで上記の委任の趣旨が妥当するとはいえない。以上によれば,地方交付税法15条1項が,総務大臣に対し,同大臣限りでそのような定めをすることを委ねたものと当然に解することはできない。

小括
以上によれば,ふるさと納税寄附金に係る収入が一定額に及ぶことについて特別交付税の減額要因となる事情として定めることは,地方交付税法15条1項の文理に照らし,その委任の範囲内にあるということはできず,同項の委任の趣旨をしんしゃくしても,これが委任の範囲内にあるというべき根拠を見いだすことはできない。
そして,本件各特例規定は,いずれも,ふるさと納税寄附金に係る収入が存在し,かつ,それが一定額に及ぶことについて特別交付税の減額要因となる事情として定めるものであるところ,以上に説示したところによれば,そもそも,ふるさと納税寄附金に係る収入が存在することを特別交付税の減額要因となる事情として定めることは,地方交付税法15条1項の委任の範囲内の事項を定めるものとはいえないから,本件各特例規定は,それらの規定内容に照らせば,それらの全体について,同項の委任の範囲を逸脱した違法なものであるというべきである。
そうすると,本件各特例規定は,いずれも地方交付税法15条1項の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである。
以上説示したところによれば,本件各特例規定に基づいて,原告に対して交付する令和元年度の特別交付税の額を算定することはできないから,本件各決定はいずれも違法である。


被告の主張について

基準財政需要額又は基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大又は基準財政収入額の算定過少を考慮してもの趣旨について
被告は,前記第2の4⑷の(被告の主張)欄のア

a,bのとおり,地

方交付税制度の基本原則
(地方交付税法3条1項)基準財政需要額及び基

準財政収入額では捕捉できない財政需要額及び財政収入額を考慮して交付されるとの特別交付税の位置付け等に照らすと,地方交付税法15条1項は,特別交付税の減額要因として,基準財政需要額が地方団体の個別具体の財政需要額と比較して過大となっている場面と,基準財政収入額が地方団体の個別具体の財政収入額と比較して過少となっている場面という,交付の必要性を緩和解消する場面を需要収入の両面から包括的に規定し,・

これらを,特別交付税算定における減額要因として機能させることを規定するものである旨主張する。
しかし,上記⑵アで説示したとおり,地方交付税法15条1項は,その文理に照らし,特別交付税の減額要因となる事情として,①基準財政需要額…の算定方法の画一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大又は,
②基準財政収入額の算定方法の画一性のため生ずる…基準財政収入額の算定過少という2種類の事情を定めていると解されるところ,同項が,単に,同法14条により算定された基準財政需要額が実際の財政需要額と比較して過大となっていること,又は算定された基準財政収入額が実際の財政収入額と比較して過少となっていることを減額要因となる事情として包括的に定めているものと解することは,上記の同項の文理と整合的であるとはいい難い。また,上記⑵イで説示したところに照らせば,基準財政収入額としては捕捉されない財政収入について,総務大臣限りで特別交付税の減額要因として定めることが,同法15条1項の委任の趣旨に当然に含まれるものと解することもできない。そうすると,同項が,単に,基準財政需要額が実際の財政需要額と比較して過大となっていること,又は基準財政収入額が実際の財政収入額と比較して過少となっていることが特別交付税の減額要因となる事情になると包括的に規定していると解することはできないというべきである。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。

基準財政収入額算定上の項目の算定過少に殊更限定されないことについて
被告は,前記第2の4⑷の(被告の主張)欄のア

cのとおり,①地方

交付税法はどのような収入を特別交付税の算定において減額要因とみるかについて,具体的・個別的な制約を課していないこと,②これを前もって法律で定めることは普通交付税の画一的な算定方法を補完するという特別交付税の本来の役割を損なうことになること,③特別交付金が暫定的な制度であった昭和25年度及び昭和26年度当時においても,競輪・競馬に係る収入という基準財政収入額の算定の基礎とならない収入が特別交付税の減額要因とされていた中,これを本則に規定し,恒久化した法制度の下でも同様の減額をする運用をしていたことに鑑みると,地方交付税法15条1項は,特別交付税を減額する場合について,基準財政需要額算定上の項目外の需要や基準財政収入額算定上の項目外の収入を排除して,その項目そのものの算定が過大や過少の場合に殊更限定する趣旨のものではない旨主張する。
しかし,上記①(地方交付税法が特別交付税の算定における減額要因の制約を課していないこと)については,一般に,法律の委任を受けて行政機関により定められた委任命令が,委任の範囲を逸脱したものとして違法となるのは,法律が具体的又は個別的に課した制約に反する事項を定めるものである場合に限られるものではない。そして,上記⑵で説示したとおり,本件各特例規定は,地方交付税法15条1項の文理によると,その委任の範囲内の事項を定めるものということはできず,同項の委任の趣旨をしんしゃくしても,これが委任の範囲内にあるということはできず,同項の委任の範囲を逸脱した違法なものというべきである。
また,上記②(減額要因を前もって法律で定めることは特別交付税の本来の役割を損なうこと)については,地方交付税法15条1項の委任の趣旨について,特別交付税の交付事由及び減額要因となる事情の具体的内容につき総務省令で定めることを委ねたものである(すなわち,基準財政収入額の算定の基礎となる収入項目として定められていない収入を特別交付税の減額要因として定めることを委ねておらず,これを定めるには法律の改正を要する)と解したとしても,普通交付税の画一的算定方法によって捕捉されない財政需要を満たすという特別交付税の役割,機能が損なわれるとは必ずしもいえない。かえって,上記⑵イで説示したとおり,ふるさと納税寄附金に係る収入額を特別交付税の減額要因となる事情として定めるか否かは,基本的には,立法者において主として政治的,政策的観点から判断すべき性質の事柄であり,また,本件各特例規定は,地方団体に重大な財政上の不利益を生じさせ得るものであるから,このような定めをすることが委任の趣旨に必ずしも適合するものということはできない。そして,上記③(競輪・競馬に係る収入)については,特別交付税に関する省令は,基準財政収入額の算定の基礎とならない競馬・競輪等の公営競技に係る収益金について特別交付税の減額要因となる事情とする旨を定めており(同省令3条1項4号イ等)
,特別交付税(特別交付金)に関する
国会審議における政府委員は,競馬・競輪に係る収益金を特別交付税の減額要因となる事情として考慮する運用に法的問題はない旨の各答弁をしている(前記前提事実⑻イ)ものの,上記⑵アで説示したとおり,地方交付税法15条1項は,特別交付税の減額要因となる事情について限定的に規定していることに鑑みると,同項が,基準財政収入額の算定の基礎とならない収入項目に係る収入について特別交付税の減額要因として定めることを総務省令に委任したと解することは困難である。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。

本件各特例規定について
被告は,前記第2の4⑷の(被告の主張)欄のア

のとおり,本件各特

例規定は,ふるさと納税寄附金に係る収入の全額ではなく2分の1を考慮することとしているなど,従前の取扱いを著しく変更しないよう十分な配慮も行っており,また,本件各特例規定の制定に当たっては,地方財政審議会に対する意見聴取を踏まえるなど慎重な手続を踏んでいることからも,本件各特例規定の合理性は明らかである旨主張する。
しかし,本件各特例規定の内容自体に合理性があるからといって,直ちに本件各特例規定が地方交付税法15条1項の委任の範囲内の事項を定めるものということはできない。そして,同項の文理等に照らせば,本件各特例規定が同項の委任の範囲を逸脱したものであることは,上記⑵で説示したとおりである。


小括
以上によれば,本件各特例規定は,いずれも地方交付税法15条1項の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである。
そして,本件各特例規定に基づいて,原告に対して交付する令和元年度の特別交付税の額を算定することはできないから,原告主張の他の違法事由について判断するまでもなく,本件各決定は,いずれも違法である。5
まとめ
以上のとおり,本案前の争点に関し,本件訴えは,裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たり(上記1)
,地方交付税法15条2項に基づき総務大
臣が行う特別交付税の額の決定は,
抗告訴訟の対象となる行政処分に当たり
(上
記2)
,本件各決定の取消しを求める訴えの利益はある(上記3)
。その上で,
本案の争点に関し,本件各特例規定は,いずれも地方交付税法15条1項の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである
(上記4)そして,

本件各決定はいずれも違法である。

第4

結論
よって,原告の請求はいずれも理由があるからこれらを認容することとして,
主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第7民事部

裁判長裁判官

山地
裁判官

太田章子
裁判官

山田慎悟修
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