判例検索β > 令和3年(行ケ)第2号
選挙無効請求事件
事件番号令和3(行ケ)2
事件名選挙無効請求事件
裁判年月日令和4年2月24日
法廷名名古屋高等裁判所  金沢支部
結果棄却
全文全文
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2022-02-24
情報公開日2022-03-15 04:00:09
裁判所の詳細 / 戻る / PDF版
主文1
原告らの請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告らの負担とする。

第1

実及び理由
請求
令和3年10月31日に行われた衆議院(小選挙区選出)議員選挙の富山県
第1区ないし第3区、石川県第1区ないし第3区並びに福井県第1区及び第2区における選挙をいずれも無効とする。
第2

事案の概要
本件は、令和3年10月31日施行の衆議院議員総選挙(以下本件選挙
という。)について、富山県、石川県及び福井県の各選挙区の選挙人である原告らが、公職選挙法13条1項、別表第一の衆議院小選挙区選出議員の議員定数配分規定(以下、改正の前後を通じ、これらの衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りを定める規定を併せて区画規定といい、特に本件選挙に係る選挙区割りを定めた区画規定を本件区画規定といい、同規定の定める選挙区画割り自体を本件選挙区割りという。)は憲法によって要求される人口比例選挙によって保障される一人一票の投票価値の平等に違反して無効であるから、これに基づき施行された本件選挙の上記各選挙区における選挙も無効であると主張して、公職選挙法204条に基づき、それぞれ上記各選挙区における選挙を無効とすることを求めた事案である。
1
前提事実(証拠を掲記しないものは、争いのない事実又は弁論の全趣旨によ
り認められる事実)


当事者(原告適格)

原告Aは、本件選挙の富山県第1区の、原告Bは富山県第2区の、原告Cは富山県第3区の各選挙人である。


原告Dは本件選挙の石川県第1区の、原告Eは石川県第2区の、原告F1
は石川県第3区の各選挙人である。

原告Gは本件選挙の福井県第1区の、原告Hは福井県第2区の各選挙人である。



本件選挙

本件選挙は、平成29年法律第58号(以下平成29年改正法とい
う。)による公職選挙法の改正(以下平成29年改正という。)後の選挙区割り規定(以下本件選挙区割規定という。)の下で施行された。イ
本件選挙において、選挙当日の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の較差(概数。以下同じ。)は、選出される議員1人当たりの選挙人数が最少の鳥取県第1区を1とした場合、最大の東京都第13区は2.079であり、富山県第1区は1.159、同第2区は1.072、同第3区は1.579、石川県第1区は1.629、同第2区は1.408、同第3区は1.055、福井県第1区は1.625、同第2区は1.137であった(乙1の2)。



衆議院議員選挙制度の改正経緯、最高裁判所判決の推移等

衆議院議員の選挙制度は、平成6年の公職選挙法の一部を改正する法律(平成6年法律第2号)並びに同法律の一部を改正する平成6年法律第10号及び同第104号により、従来の中選挙区単記投票制から小選挙区比例代表並立制に改められた。そして、これと同時に成立した衆議院議員選挙区画定審議会設置法(以下、その後の改正の前後を通じて区画審設置法という。)において、衆議院議員選挙区画定審議会(以下区画審という。)は、衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し、調査審議し、必要があると認めるときは、その改定案を作成して内閣総理大臣に勧告するものとされた(同法2条)。また、上記改定案を作成するに当たっての基準(以下、後記の区画審設置法の改正の前後を通じて区割基準という。)として、①各選挙区の人口の均衡を図り、各選挙区の人口のう2
ち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上にならないようにすることを基本とし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないこと(同法3条1項)、②各都道府県の区域内の衆議院小選挙区選出議員の選挙区の数は、各都道府県にあらかじめ1を配当した上で(以下、この配当方式を1人別枠方式という。)、これに、衆議院小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とすること(同条2項)が定められた。

平成21年8月30日に施行された衆議院議員総選挙(以下平成21年選挙という。)は、同14年に成立した公職選挙法の一部を改正する法律(平成14年法律第95号)により改正された選挙区割り(以下旧選挙区割りという。)の下で施行されたものであり、選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は、高知県第3区と千葉県第4区との間の1対2.304(概数)であり、高知県第3区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は、45選挙区であった(乙2の1)。
平成21年選挙に関する最高裁平成22年(行ツ)第207号同23年3月23日大法廷判決・民集65巻2号755頁(以下平成23年大法廷判決という。)は、平成24年法律第95号(以下平成24年改正法という。)による改正前の区画審設置法3条1項は、選挙区の改定案の作成につき、選挙区間の人口の最大較差が2倍未満になるように区割りをすることを基本とすべきものとしており、これは、投票価値の平等に配慮した合理的な基準を定めたものということができると評価する一方、人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点から導入された同条2項の1人別枠方式については、既に立法時の合理性が失われていたものというべきであるから、当時の区画基準のうち1人別枠方式に係る部分及び当時の公職選挙法13条1項、別表第一の規定の定める選挙区割3
りも、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていた旨判示した。そして、同判決は、これらの状態につき憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、上記区画基準及び区画規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということができないとした上で、事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に、できるだけ速やかに1人別枠方式を廃止し、平成24年改正前の区画審設置法3条1項の趣旨に沿って区割規定を改正するなど、投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があると判示した。

平成23年大法廷判決後、平成24年11月16日、小選挙区選出議員の定数について、0増5減を行うこと及び当時の区割基準を定める規定のうち1人別枠方式に係る部分を削除することを内容とする改正法案が、平成24年改正法として成立した。平成24年改正後は、平成24年改正前の区画審設置法3条1項が同改正後の区画審設置法3条となり、同条の内容のみが区画基準となった。


平成24年改正法の成立と同日に衆議院が解散され、平成24年12
月16日、平成21年選挙と同様に当時の区割規定及びこれに基づく旧選挙区割りの下で、衆議院議員総選挙(以下平成24年選挙とい
う。)が施行された。
なお、平成24年選挙当日における選挙区間の最大較差(選挙人)は、高知県第3区と千葉県第4区との間の1対2.425であり、高知県第3区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は、72選挙区であった(乙2の2)。
平成24年選挙に関する最高裁平成25年(行ツ)第209号、第210号、第211号同年11月20日大法廷判決・民集67巻8号1503頁(以下平成25年大法廷判決という。)は、平成24年選挙時において、当時の区割規定の定める選挙区割りが、平成21年選挙当時と同様4
に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったが、同選挙前の時点において是正の実現に向けた一定の前進と評価し得る法改正が成立に至っていたものということができ、当時の区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で、国会においては、今後も、平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要があると判示した。

区画審は、内閣総理大臣に対し、平成25年3月28日、平成24年改正法の附則に規定された区割基準及び当時の区画審設置法3条に基づき、各都道府県の選挙区数の0増5減を前提に、選挙区間の人口較差が2倍未満となるように17都県の42選挙区において区割りを改めることを内容とする選挙区割りの改定案を勧告し(乙5、6)、上記改定案に基づく選挙区割りの改定を盛り込んだ平成24年改正法の改正法案が、平成25年6月24日、平成25年法律第68号として成立した(以下、同法律による改正を平成25年改正という。)。


平成26年11月21日、衆議院が解散され、同年12月14日、平成25年改正後の選挙区割りの下で、衆議院議員総選挙(以下平成26年選挙という。)が施行された。同改正後の選挙区割りにおける選挙区間の最大較差(人口)は、1対1.998となるものとされていたが、平成26年選挙当日における選挙区間の最大較差(選挙人)は、宮城県第5区と東京都第1区との間の1対2.129であり、宮城県第5区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は、13選挙区であった(乙2の3)。
平成26年選挙に関する最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷判決・民集69巻7号2035号(以下平成27年大法廷判決という。)は、平成25年改正後の区割規定の定める選挙区割り5
について、投票価値の較差が生じた主な要因が平成24年改正により1人別枠方式が廃止された後の区画審設置法による区割基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異なる定数が配分されていることにあるとして、このような投票価値の較差が生じたことは、全体として平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたとはいえないことの表れというべきであると指摘し、平成24年選挙時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものではあるとしつつも、平成26年選挙までの間に是正に向けた一定の前進と評価し得る法改正及びこれに基づく選挙区割りの改定が行われたものということができ、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえない旨判示した。その上で、国会においては、今後も、衆議院に設置された検討機関において行われている投票価値の較差の更なる縮小を可能にする制度の見直しを内容とする具体的な改正案の検討と集約が早急に進められ、平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要があると判示した。

平成25年改正法成立の前後を通じて、国会においては今後の人口移動によっても憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にならないようにするための制度の見直しについて、総定数の削減の要否等を含め、引き続き検討が続けられ、平成26年6月19日、衆議院に、衆議院議院運営委員会での議決に基づき、衆議院選挙制度に関する調査・検討等を行うための有識者による議長の諮問機関として、有識者を委員とする衆議院選挙制度に関する調査会(以下選挙制度調査会という。)が設置された。選挙制度調査会に対する諮問事項は、現行制度を含めた選挙制度の評価、衆議院議員定数削減の処理及び一票の較差を是正する方途等(以下一票の較差の是正等という。)であり、各会派は、選挙制度調査会の答申を6
尊重するものとされていた(乙9)。
選挙制度調査会においては、同年9月11日から同年11月20日まで、合計4回の会合が開かれ、一票の較差の是正等について議論がされた(乙8の1ないし4)。
選挙制度調査会は、平成27年大法廷判決の前後を通じて、各党の意見を聴取しつつ、一票の較差の是正等について多数回にわたって議論を重ねた結果、衆議院議長に対し、平成28年1月14日、次の内容の答申を提出した。
その内容は、①衆議院議員の選挙制度のあり方については、現行の小選挙区比例代表並立制を維持し、②議員定数の削減については、衆議院議員の定数を10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、比例代表選出議員の定数につき4削減して176人)とする案が考えられるとした。また、③投票価値の格差の是正については、小選挙区選挙における各都道府県間の投票価値の格差をできるだけ小さくすること、各都道府県の配分議席の増減変動が小さいこと、一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であることとした上で、この諸条件に照らして検討した結果として、各都道府県への議席配分につき、各都道府県の人口を一定の数値(小選挙区基準除数)で除し、それぞれの商の整数に小数点以下を切り上げて得られた数の合計数が小選挙区選挙の定数と一致するようにする方式(いわゆるアダムズ方式)により行うものとした。そして、各都道府県への議員配分の見直しは、制度の安定性を勘案し、10年ごとに行われる国勢調査の結果による人口に基づき行うものとし、その5年後に行われる国勢調査の結果、選挙区間の人口の較差が2倍以上の選挙区が生じたときは、各都道府県への議席配分の変更は行わず、区画審において上記の較差が2倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うものとした。
7
(乙10)

前記答申を受けて、平成28年5月20日、衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律(平成28年法律第49号。以下平成28年改正法という。)が成立した。
平成28年改正法は、その本則において、①衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差について、選挙制度の安定性を勘案し、各都道府県の区域内の選挙区の数を平成32年(令和2年)以降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づき、アダムズ方式により配分した上で、各選挙区間の最大較差(日本国民の人口)が2倍以上にならないようにすること(平成28年改正後の区画審設置法3条1項、2項、4条1項)、②平成37年(令和7年)以降の簡易国勢調査(統計法5条2項ただし書により行われる国勢調査であり、大規模国勢調査を行った年から5年目に当たる年に簡易な方法により行われる国勢調査)の結果に基づく各選挙区間の最大較差(日本国民の人口)が2倍以上になったときは、選挙区の安定性を図るとともに較差2倍未満を達成するため、各都道府県の選挙区数を変更することなく、区画審が較差是正のために選挙区割りの改定案の作成及び勧告を行うものとすること(同区画審設置法3条3項、4条2項)、③衆議院議員の定数を10人削減すること(平成28年改正後の公職選挙法4条1項)を明確に規定するとともに、平成28年改正法の附則において、ⓐ平成32年(令和2年)の大規模国勢調査までの措置として、平成27年の簡易国勢調査の結果に基づき、各選挙区の人口に関し、平成32年見込人口を踏まえ、平成32年(令和2年)までの5年間を通じて較差2倍未満となるよう区割りを行うなどの措置を行うこと(平成28年改正法附則2条1項、2条3項)、ⓑ小選挙区選挙の定数6減の対象県について、平成27年の簡易国勢調査に基づき、アダムズ方式により都道府県別定数を計算した場合に減員対象となる都道府県のうち、議員1人当たり人8
口の最も少ない都道府県から順に6県とすること(同附則2条2項1号)、ⓒ平成28年改正法の施行後においても、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度の在り方については、不断の見直しが行われるものとすること(同附則5条)を定めている。

平成28年改正法の成立後、同法附則の規定に従って区画審による審議が行われ、区画審は、平成29年4月19日、内閣総理大臣に対し、選挙区割りの改定案の勧告をした。
前記勧告は、平成28年改正法附則に基づき、各都道府県の選挙区数の0増6減を前提に、平成27年の簡易国勢調査に基づく選挙区間の最大較差(人口)を2倍未満(1.956倍)とするのみならず、平成32年(令和2年)見込人口に基づく選挙区間の最大較差(人口)も2倍未満(1.999倍)となるように19都道府県の97選挙区において区割りを改めることを内容とするものであった。
(乙14の1及び2)


選挙区割りの改定案を内容とする前記勧告を受けて、内閣は、平成29年5月16日、平成28年改正法に基づき、同法のうち、0増6減を内容とする公職選挙法の改正規定の施行期日を定めるとともに、上記改定案に基づく選挙区割りの改定を内容とする公職選挙法の改正事項を定める法制上の措置として、衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(平成28年改正法の一部を改正するもの)を国会に提出し、平成29年6月9日、上記改正法案が平成29年法律第58号として成立した(以下、上記法律を平成29年改正法といい、同法による改正を平成29年改正という。)。平成29年改正法は、本件勧告どおり、衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定を19都道府県97選挙区において行うこと等を内容とするものである。

平成29年9月28日、衆議院が解散され、同年10月22日、本件選9
挙区割りの下で、衆議院議員総選挙(以下平成29年選挙という。)が施行された。
平成29年選挙当日における選挙区間の最大較差(選挙人)は、鳥取県第1区と東京都第13区との間の1対1.979であり、最大較差(選挙人)が2倍以上となった選挙区は0であった(乙2の4)。
平成29年選挙に関する最高裁平成30年(行ツ)第153号同年12月19日大法廷判決・民集72巻6号1240頁(以下平成30年大法廷判決という。)は、本件選挙区割りについて、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできないと判示した。同判決は、その理由中において、アダムズ方式を導入した平成28年改正やその後の平成29年改正について、平成32年(令和2年)に行われる国勢調査の結果に基づく選挙区割りの改定に当たり、各都道府県への定数配分を人口に比例した方式の一つであるアダムズ方式により行うことによって、選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させ、その状態が安定的に持続するよう立法措置を講じたものであると評価し、平成29年選挙当時においては、平成28年改正後の区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができるとした上で、平成27年大法廷判決が平成26年選挙当時の選挙区割りについて判示した憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は、平成29年改正法による改正後の平成28年改正法によって解消されたものと評価することができると判示した。⑷

平成29年改正後の人口の増減
令和2年10月1日を調査時点とする大規模国勢調査が実施され、令和3年6月25日、その結果の速報値が公表され、同年11月30日、その結果の確定値が公表された。これによると、平成27年から令和2年までの5年間における各都道府県の人口については、その5年間を通じて較差2倍未満とすべく選挙区割りの改定を行った平成28年改正及び平成29年改正が前10

提とした平成32年見込人口を算出した際に想定したところと異なる人口移動が示されており、具体的には、東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県、福岡県の5都県に平成32年見込人口が計算上想定した増加率を超える割合で人口が流入している一方、北海道、青森県等の33道府県からは、平成32年見込人口が計算上想定した減少率を超える割合で人口が流出するなどしている状況が、統計上認められた。
(乙1の1の1及び1の2、23の1及び2)


本件選挙の施行及び選挙区間の較差について

令和3年10月14日、衆議院が解散され、同月31日、本件選挙区割りの下で、衆議院議員総選挙(本件選挙)が施行された。
平成29年改正以降、区割規定に関する法改正はされておらず、本件区割規定は、平成29年選挙時の区割規定と同一のものである(本件選挙区割り自体も、平成29年選挙時の選挙区割りと同一である。)。
令和2年10月1日を調査時とする大規模国勢調査の結果(令和3年11月30日公表に係る確定値)による最大較差(人口)は、鳥取県第2区と東京都第22区との間の1対2.096であり、23選挙区において、較差(人口)が2倍以上となった(乙1の1の2)。
また、本件選挙当日における選挙区間の最大較差(選挙人)は、鳥取県第1区と東京都第13区との間の1対2.079であり、29の選挙区において、較差(選挙人)が2倍以上となった(乙1の2)。


現行の区画審設置法によって予定されている、アダムズ方式に基づく都道府県別定数を前提とする、国勢調査人口による選挙区間の最大較差が2以上とならないような選挙区割りの見直しについては、10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に、区画審が選挙区割りの改定案を作成し勧告することとされている(同法4条1項)。そのため、今後、令和2年実施の大規模国勢調査の11

結果(速報値)が官報で公示された令和3年6月25日(乙1の1の1)から1年以内に(令和4年6月25日までに)区画審による選挙区割りの改定案の勧告がされ、同勧告を受け、その内容を実現する立法的措置が講じられることとなる見込みである。
実際、令和2年実施の大規模国勢調査の結果(速報値)が令和3年6月25日に官報で公示されたことを受け、改定案の作成に向けて、同年7月2日以降、数次にわたり区画審が開催されており、各選挙区の人口、選挙区の現状等のレビュー、都道府県知事への意見照会等についての審議が行われている(乙29)。
なお、令和2年の大規模国勢調査の結果を前提に、平成28年改正後の区画審設置法3条2項に基づく改定後の都道府県別定数を計算すると、定数が増加するのは、東京都(5増)、神奈川県(2増)、埼玉県(1増)、千葉県(1増)及び愛知県(1増)であり、定数が減少(いずれも1減)するのは、宮城県、福島県、新潟県、滋賀県、和歌山県、岡山県、広島県、山口県、愛媛県及び長崎県の10県である。そして、同改定前の都道府県間の最大較差(人口)は、東京都(54万2569人)と鳥取県(27万4549人)の間の1.976倍であるところ、同改定後における都道府県間の最大較差(人口)は、岡山県(46万5829人)と鳥取県(27万4549人)との間の1.697倍となる見込みである。(乙1の1の2)
2


争点
本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っているか否か


3


憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったか否か争点に関する当事者の主張
争点⑴(本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至12

っているか否か)について
(原告らの主張)

本件選挙区割りは、憲法56条2項、1条、前文第1文が定める人口比例選挙の要求に反するから、憲法98条1項により無効である。

正当に選挙された国会議員は、国会において、主権を有する国民を代表する。非人口比例選挙では、国会議員は、正当に選挙(憲法前文第1項第1文前段)された代表者に該当しないため、非人口比例選挙は、違憲である。


違憲判断の基準時は、本件選挙の選挙投票日であるところ、平成28年改正法及び平成29年改正法に基づく立法措置の対象となる選挙は、令和4年以降施行の衆院選であるから、上記立法措置が存在することを認め、それを理由として平成29年選挙は違憲状態ではないと判断した平成30年大法廷判決は誤りである。

(被告らの主張)

本件選挙区割りは、平成30年大法廷判決によって違憲状態に至っていないと評価された平成29年選挙時の選挙区割りと同一のものであり、同判決によって、平成27年判決が判示した違憲状態が解消された旨明示的に判断されている以上、本件選挙区割りも同様の評価がされるべきものであり、本件選挙区割りが違憲状態に至っているとはいえない。


確かに、本件選挙時には、選挙区間の最大較差が2倍を僅かに上回っており、較差が2倍以上の選挙区も複数存在したが、平成28年改正法は、平成22年の大規模国勢調査から平成27年の簡易国勢調査までの日本国民の人口の増減率に基づき算出した平成32年見込人口を基準としても最大較差を2倍未満とすることを基本とすることとしたものであり、当該増減率と異なる人口移動があったことを要因として、結果的に2倍以上の較差が生じることも当然にあり得るものである。つまり、平成23年から平13

成27年までの各大法廷判決が問題視してきた1人別枠方式のような選挙制度自体に起因する構造的な問題により2倍以上の較差が生じたものではないのである。
そして、本件選挙時に認められた選挙区間の較差(人口)については、平成32年(令和2年)の大規模国勢調査の結果に基づき、区画審により、アダムズ方式に基づく都道府県別定数を前提に、国勢調査人口による選挙区間の最大較差が2以上とならないような選挙区割りの改定案の勧告が、令和4年6月25日までに行われることが法律上予定されていることにより、早晩確実に解消される見込みである。その上、現行の選挙制度(現行の区画審設置法)が予定する選挙区割りの改定は、選挙制度の安定性を確保する観点から、10年又は5年単位とされており、さらには、国会の判断により、最初にアダムズ方式による議席配分が実施されるのは平成32年(令和2年)の大規模国勢調査以降とされたのであるから、平成29年選挙から平成28年改正後の区画審設置法が予定する各選挙区割りの改定までの間に(本件選挙は上記の改定よりも前に行われている。)、ある程度の選挙区間の較差の変動が生じることは当然にあり得ることであり、そのような場合に備えて10年又は5年単位で選挙区割りを行い、是正するという現行の選挙制度が整備されているということができる。なお、そのような較差の変動があり得たことは、将来の人口移動を正確に予測することが困難であることや、小選挙区選出議員の定数増は事実上困難であり、都道府県内における個々の選挙区割りの決定の段階において市区町村を基本的な単位として、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情及び地理的状況等についても適切に考慮する必要があるなどそもそも国会が行うことができる選挙区間の較差の是正には一定の制約があることからも、明らかである。

区割規定やそれに基づく選挙区割りの憲法適合性を判断するに当たって14

は、最大較差の数値や較差が2倍以上となった選挙区の数という客観的かつ形式的な数値だけでなく、当該較差の数値の背後にある選挙制度の仕組みや、当該較差を生じさせる要因等も含めて種々の政策的考慮要素を総合的に考慮する必要があるところ、本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りにつき本件選挙時に2倍以上の較差が生じたことについては、平成32年見込人口の見込みと異なる人口移動があったことを要因とするものであり、選挙制度自体に起因する構造的な問題によるものではないこと、現行の選挙制度においては当該較差(人口)が早晩確実に解消される見込みであること、そもそも較差の是正には種々の限界があること等を考慮すれば、本件選挙区割りについては、違憲状態には至っていないと判断された平成29年選挙区割りと同様の評価がされるべきであって、違憲状態とはいえない。


争点⑵(憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったか否か)について

(原告らの主張)

合理的期間の判例法理自体が憲法に違反し、憲法98条1項により、その効力を有しない。


仮に上記アの主張が認められないとしても、本件選挙日の時点において当該合理的期間は既に徒過していると解されるので、本件選挙は憲法98条1項により、無効である。

(被告らの主張)

合理的期間内における是正がされなかったといえるか否かの判断枠組み平成25年大法廷判決及び平成27年大法廷判決が判示するとおり、憲法秩序の下における司法権と立法権との関係に照らすと、議席配分又は選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っている旨の司法の判断がされれば国会はこれを受けて是正を行う責務を負うものである15

ところ、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったといえるか否かを判断するに当たっては、単に期間の長短のみならず、是正のために採るべき措置の内容、そのために検討を要する事項、実際に必要となる手続や作業等の諸般の事情を総合考慮して、国会における是正の実現に向けた取組が司法の判断の趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものであったといえるか否かという観点から評価すべきものと解される。そして、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったか否かは、裁判所において投票価値の較差が憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っているとの判断が示されるなど、国会が、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態となったことを認識し得た時期を基準(始期)として、上記の諸般の事情を総合考慮して判断されるべきである。このように国会が認識し得た時期を基準(始期)とすることについては、①平成23年大法廷判決において、平成19年6月13日大法廷判決(引用者注:平成19年大法廷判決)において、平成17年の総選挙の時点における1人別枠方式を含む本件区割基準及び本件選挙区割りについて、(中略)いずれも憲法の投票価値の平等の要求に反するに至っていない旨の判断が示されていたことなどを考慮すると、本件選挙までの間に本件区割基準中の1人別枠方式の廃止及びこれを前提とする本件区割規定の是正がされなかったことをもって、憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったものということはできないと判断されていること、②平成25年大法廷判決において、本件旧区割基準中の1人別枠方式に係る部分及び同方式を含む同区割基準に基づいて定められた選挙区割りについては、前掲最高裁平成19年6月13日大法廷判決までは憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていないとする当審の判断が続けられており、これらが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っているとする当裁判所大法廷の判断が示されたのは、平成23年3月23日であり、国会におい16てこれらが上記の状態にあると認識し得たのはこの時点からであったというべきである。と判断されていること、③平成25年7月施行の参議院議員選挙に関する選挙無効訴訟に係る最高裁判所平成26年11月26日大法廷判決(民集68巻9号1363ページ)においても、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っているとし、その解消のために選挙制度の仕組み自体の見直しが必要であるとする当裁判所大法廷の判断が示されたのは、平成24年大法廷判決の言渡しがされた平成24年10月17日であり、国会において上記の状態に至っていると認識し得たのはこの時点からであったというべきである。と判断されていることからして明らかである。
なお、原告らは、

『合理的期間の判例法理』自体が、憲法に違反し、憲法98条1項により『その効力を有しない』

と主張するが、かかる原告らの主張は、同種選挙無効訴訟に関する累次の最高裁大法廷判決が前提としてきた判断枠組みとは異なる独自の見解であり、理由がない。イ
国会が、本件選挙時までに本件区割規定及びこれに基づく本件選挙区割りが違憲状態であると認識することはできなかったことなどからすれば、合理的期間内に是正がされなかったなどと評価することはできないことこれを本件について見ると、平成30年大法廷判決は、平成27年大法廷判決が平成26年選挙当時の選挙区割りについて判示した憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は、平成29年改正法による改正後の平成28年改正法によって解消されたものと評価することができるとした上で、

本件区割規定の定める本件選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、本件区割規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない

と判示している。そして、本件選挙は、平成30年大法廷判決後に初めて行われた総選挙であるから、仮に何らかの事情により同判決における本件選挙区割りに関する評価が覆17

り、違憲状態に至っているとしても、国会において、そのことを認識すべき契機は一切存在せず、その状態を認識し得ない状況であったことは、明らかである。そもそも平成28年改正後の区画審設置法では、大規模国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に、区画審が選挙区割りの改定案を作成し勧告することとされており(同法4条1項)、同改正の時点で、国会の政治的な判断として、同法の仕組みを初めて適用するのは平成32年(令和2年)の大規模国勢調査以降とされ、同年までの投票価値の較差については、平成32年見込人口も基準として2倍未満の較差を維持する選挙区割りの改定を行うことで担保することとされていた。そうすると、国会は、令和2年の大規模国勢調査の結果による人口(速報値)が最初に官報に公示された日(実際には令和3年6月25日)以後、区画審による改定案の勧告を待って、同勧告を踏まえた立法的措置を講じることを予定しており、それとは異なるタイミングで選挙制度の改定を行うことは、平成28年改正や平成29年改正によって設けられた選挙制度が予定するところと整合しないばかりか、選挙制度の安定性を考慮して平成32年(令和2年)の大規模国勢調査以降にアダムズ方式による議席配分を導入することとした判断に正面から相反するものというべきである。
以上のとおり、国会において、本件選挙までに、本件区割規定の定める本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあるなどということは全く認識し得ない状況にあった上、立法府として選挙制度の在り方の不断の見直しを行う決意を示していることも考慮すれば、本件区割規定の定める本件選挙区割りについて憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったなどといえないことは明らかである。
第3
1
当裁判所の判断
憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば投票価値の平等を要求しているも18

のと解される。他方、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ、国会の両議院の議員の選挙については、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(43条2項、47条)、選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められている。衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には、選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに際して、憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるが、それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されるのであって、具体的な選挙区を定めるに当たっては、都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸要素を考慮しつつ、国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに、投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところである。したがって、このような選挙制度の合憲性は、これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり、国会がこのような選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが、上記のような憲法上の要請に反するため、上記の裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである(最高裁昭和49年(行ツ)第75号同51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁、平成23年大法廷判決、平成25年大法廷判決、平成27年大法廷判決及び平成30年大法廷判決参照)。
19

2
争点⑴(本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っているか否か)について
前記第2の1⑶クのとおり、平成28年改正法は、投票価値の較差を是正するための新たな議席配分方式として、各都道府県の人口に比例した配分方式の一つであるアダムズ方式を採用する規定を設けた上で、アダムズ方式による各都道府県への定数配分を平成32年以降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づいて行うこととし、その5年後に行われる簡易国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口の較差が2倍以上となったときは同較差が2倍未満となるように各都道府県内の選挙区割りの改定を行うことを定め、さらに、アダムズ方式による定数配分が行われるまでの措置として、選挙制度の安定性を確保しつつ較差の是正を図るため、その附則において、平成27年簡易国勢調査の結果に基づきアダムズ方式により定数配分を行った場合に選挙区数の削減が見込まれる議員1人当たりの人口の少ない6県の選挙区数をそれぞれ1減ずる0増6減の措置を採るとともに、平成28年改正後の区画審設置法3条1項と同様の区割基準に基づき、次回の国勢調査が行われる平成32年までの5年間を通じて選挙区間の人口の較差が2倍未満となるように選挙区割りの改定を行うこととしたものである。そこで、区画審による改定案の勧告を経て制定された平成29年改正法において、19都道府県の97選挙区における選挙区割りの改定を内容とする公職選挙法の改正が行われ、同改正後の本件区割規定の定める本件選挙区割りの下において平成29年選挙が行われ、平成29年選挙における選挙区間の投票価値の較差は、平成27年簡易国勢調査の結果による人口の最大較差において1対1.956、選挙当日の選挙人数の最大較差においても1対1.979に縮小され、選挙人数の最も少ない選挙区を基準として較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなくなった。これを受けて、平成30年大法廷判決は、平成27年大法廷判決が平成26年選挙当時の選挙区割りについて判示した憲法の投票価20

値の平等の要求に反する状態は、平成29年改正法による改正後の平成28年改正法によって解消されたものと評価することができると判示したものである。
その後、法改正は行われなかったため、本件選挙は、平成29年選挙の際と同一の区割規定に基づく同一の選挙区割りの下において施行されたところ、本件選挙区割りの下における選挙区間の投票価値の較差は、本件選挙当日の選挙人数の最大較差においては1対2.079となり、29の選挙区において、較差(選挙人)が2倍以上となり、平成29年選挙時よりもその較差が拡大する結果となった。
しかしながら、本件区割規定自体は、投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずることを求めた平成23年大法廷判決以降の各大法廷判決の趣旨に沿って較差の是正を図ったものであり、投票価値の平等を最も重要かつ基本的な基準としつつ、新たな定数配分の方式をどの時点から議員定数の配分に反映させるかという点も含めて、国会において考慮することができる諸要素を踏まえた上で定められたものということができ、本件選挙当時においては、平成28年改正後の区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができるから、平成28年改正法及び平成29年改正法による選挙区割りの改定等は、国会の裁量権の行使として合理性を有するというべきである。
そして、本件選挙によって上記のような投票価値の較差が生じた理由を検討するに、本件選挙区割りは、アダムズ方式によるものではないものの、アダムズ方式による定数配分が行われるまでの措置として、選挙制度の安定性を確保しつつ較差の是正を図るため、平成28年改正後の区画審設置法3条1項と同様の区割基準に基づき、次回の国勢調査が行われる平成32年(令和2年)までの5年間を通じて選挙区間の人口の較差が2倍未満となるように改定されたものであるところ、前記第2の1⑷のとおり、実際に行われた21

令和2年10月1日を調査時点とする大規模国勢調査においては、東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県、福岡県の5都県に平成32年(令和2年)の見込み人口において計算上想定された増加率を超える割合で人口が流入している一方で、北海道、青森県等の33道府県からは計算上想定された減少率を超える割合で人口が流出するなどしたことが要因となり、本件選挙当日において、29の選挙区において較差(選挙人)が2倍以上となる結果が生じたものということができる。
以上に加え、本件選挙が施行された時点において、平成32年(令和2年)以降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果に基づく各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行うことによって1人別枠方式の下における定数配分の影響を完全に解消させる立法措置が講じられており、令和2年実施の大規模国勢調査の結果を受けて法改正に向けて区画審が開催されている状況も踏まえれば、本件選挙において、結果的に投票価値の較差が2倍以上となる選挙区が生じる結果が生じたことをもって直ちに本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っているものと評価することはできないというべきである。
なお、原告らは、本件選挙区割りは、憲法56条2項、1条、前文1項1文が定める人口比例選挙の要求に反するから、憲法98条1項により無効である旨主張するが、上記説示したところによれば、これらの規定は、原告らが主張する人口比例選挙を要求するものとは解されない。
そうすると、その他原告らが主張する点を考慮しても、本件選挙当時において、本件区割規定の定める本件選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、本件区割規定が憲法の規定に違反するものということはできない。
3
結論
よって、原告らの請求は、その余の争点(争点⑵)について判断するまで22

もなく、いずれも理由がないから、これらを棄却することとして、主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所金沢支部第1部

裁判長裁判官

蓮井俊治
裁判官

平野剛史
裁判官

峯金容子
23

トップに戻る

saiban.in