判例検索β > 令和3特年(わ)第1495号
各法人税法違反、地方法人税法違反、消費税法違反、地方税法違反
事件番号令和3特(わ)1495
事件名各法人税法違反,地方法人税法違反,消費税法違反,地方税法違反
裁判年月日令和3年12月10日
法廷名東京地方裁判所
全文全文
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2021-12-10
情報公開日2022-03-03 04:00:37
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令和3年12月10日
令和3年特

東京地方裁判所刑事第8部宣告

第1495号

各法人税法違反,地方法人税法違反,消費税法違反,

地方税法違反被告事件
主文
被告人A有限会社を罰金3000万円に処する
被告人Bを懲役1年8月に処する。
被告人Bに対し,この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。理由
(罪となるべき事実)
被告人A有限会社(以下被告会社という。
)は,アニメーション映像(以下
アニメ作品という。)の企画・制作等の事業を営み,株式会社として存続する会社,被告人B(以下被告人という。)は被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが,被告人は,被告会社の業務に関し第1

売上高の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上,別表1【掲
載省略】記載のとおり
1
事業年度欄記載の平成26年9月1日から平成27年8月31日までの事業年度における実際所得金額,これに対する正規の法人税額が,実際額欄記載のとおりであったにもかかわらず,確定申告日欄記載の日に,所轄税務署欄記載の税務署において,同税務署長に対し,確定申告方法欄記載の方法により,所得金額,これに対する法人税額が,申告額欄記載の金額である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,ほ脱法人税額欄記載のとおり,前記事業年度における正規の法人税額と前記申告税額との差額34,530,100円を免れ,

2
事業年度欄記載の平成28年9月1日から平成30年8月31日までの2事業年度における実際所得金額,これに対する正規の法人税額,課税標準法人税額及びこれに対する正規の地方法人税額が,それぞれ実際額欄記載のとおりであったにもかかわらず,確定申告日欄記載の各日に,所轄税務署欄記載の税務署において,同税務署長に対し,確定申告方法欄記載の方法により,所得金額,これに対する法人税額,課税標準法人税額及びこれに対する地方法人税額が,それぞれ申告額欄記載の金額である旨の虚偽の法人税及び地方法人税確定申告書を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,ほ脱法人税額欄及びほ脱地方法人税額欄記載のとおり,前記各事業年度における正規の法人税額と前記申告税額との差額合計71,590,400円及び正規の地方法人税額と前記申告に係る地方法人税額との差額合計3,150,000円を免れ
第2

課税売上の一部を除外するなどの方法により,別表2【掲載省略】記載の
とおり,課税期間欄記載の平成26年9月1日から平成27年8月31日まで及び平成28年9月1日から平成30年8月31日までの3課税期間における実際の消費税の課税標準額,これに対する消費税額,これから控除されるべき消費税額,納付すべき消費税額,納付すべき地方消費税の譲渡割額が,それぞれ実際額欄記載のとおりであったにもかかわらず,確定申告日欄記載の各日に,所轄税務署欄記載の税務署において,同税務署長に対し,確定申告方法欄記載の方法により,消費税の課税標準額,これに対する消費税額,これから控除されるべき消費税額,納付すべき消費税額,納付すべき地方消費税の譲渡割額が,それぞれ申告額欄記載の金額である旨の虚偽の消費税及び地方消費税の確定申告をし,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為により,ほ脱消費税額欄及びほ脱地方消費税譲渡割額欄記載のとおり,前記各課税期間の正規の納付すべき消費税額と前記申告に係る納付すべき消費税額との差額合計22,749,900円及び同課税期間の正規の納付すべき地方消費税の譲渡割額と前記申告に係る納付すべき地方消費税の譲渡割額との差額合計6,138,900円を免れた。
(事実認定の補足説明)
弁護人は,公訴事実に争いはないとしつつ,判示第1の1に関し,当該事業年度に全13話中6話分がテレビ放映されたアニメ作品の制作費について,被告会社がその放映済み分の売上を平成27年8月期に計上せず,翌平成28年8月期に繰延計上したことは不正の行為に当たらず,被告人に不正性の認識もなかったかのような主張をする。しかし,同アニメ作品は,その共同製作契約書によれば,各話ごとの放映日と納品期限が定められ,各話当たりの単価も算出可能な形で契約が締結されていたのであるから(なお,第4話分までの制作費も同事業年度内に支払が行われている。),放映済みの第6話分までの売上は,客観的に平成27年8月期に計上すべきものであったと認められる。また,被告会社においては,同アニメ作品以外のアニメ作品について,事業年度をまたいでテレビ放映された場合,放映日の属する事業年度にその売上を計上しており,被告人自身,捜査段階において,公訴事実に係る売上の繰延計上は,利益の圧縮目的で行った旨を認めていたのであるから,不正性の認識も認められる。弁護人の主張はいずれも採用できず,判示罪となるべき事実を認定した。
(量刑の理由)
本件は,アニメ作品の企画・制作等の事業を行うとともに,アニメ作品とのコラボレーション企画やグッズ販売等を行う複数の飲食店等をも営む被告会社が,平成27年8月期,平成29年8月期及び平成30年8月期の3事業年度における法人税及び地方法人税並びに同3課税期間における消費税及び地方消費税を免れたという,期限内虚偽過少申告ほ脱犯の事案である。
被告会社は,合計約4億4100万円の所得を秘匿するなどして,法人税等合計約1億900万円,消費税等合計約2800万円をほ脱しており,脱税規模は同種事案と比較して小さいものではない。主たる手口である売上除外は,飲食店の現金での売上に係る帳簿の記載を削除し,当該現金を自宅に保管していたというものであり,被告会社において導入していたPOSレジシステムの記録を精査すれば容易に判明するものであることからすれば,特に巧妙なものとまではいえないものの,被告人は,会計を担当していた妻が,帳簿の改ざん等に消極的な姿勢を示していたのに,執拗にその指示をするなどしていたのであるから,脱税の意図は強かったといえる。平成27年8月期にテレビ放映されたアニメ作品の売上を翌期に繰延計上した手口も,翌期に従前と同様に飲食店の現金売上を除外するなどして,結局のところ前記繰延計上にかかる税金の支払を免れているのであるから,全体として前記売上除外と同等の悪質性があるというべきである。被告人は,本件に至る経緯や動機として,アニメ業界では,近年作品の品質向上を求められてコストが増大する半面,クライアントから支払われる報酬は増えず,アニメ作品だけでは黒字を出しにくいという現状があり,ヒット作品も容易に出るものではないため,将来の経営悪化に備えて資金を残しておきたかったと供述する。被告人はアニメ作品の制作等に打ち込む生活を送っており,脱税した現金を私的な遊興費等に費消していたとはうかがわれず,上記動機に関する供述を疑うべき理由は認められない。しかしながら,ヒット作品に恵まれるかどうかが収益を左右すること自体は,程度の差こそあれ,被告会社やアニメ業界特有の問題ではないし,被告会社は,品質の高さにこだわったアニメ作品が高く評価され,その顧客吸引力を関連グッズの販売等を手掛ける複数の飲食店の売上拡大という形で収益化し,平成24年の決算期以降は,会社全体として大幅な黒字が続く状態となっていた。にもかかわらず,被告人は,同期以降継続して売上除外を繰り返す中,本件に至ったというのであるから,被告人の供述する将来に対する不安感等を踏まえても,本件に至る経緯や動機に酌むべき事情があったとはいえず,その意思決定は経営者として強い非難を免れない。
以上によれば,被告会社及び被告人の刑事責任は重く,それぞれ相応の罰金刑ないし懲役刑を科する必要がある。
その上で,一般情状をみると,被告人は,税務調査が入った直後は,POSレジシステムの記録の削除を従業員に指示するなどしていたが,ほどなく事実を全て認め,押収漏れになっていた現金も追加で提出するなど税務調査及び捜査に積極的に協力しており,既に被告会社に係る平成25年分以降の修正申告を行い,本件に関する本税,延滞税及び加算税の納付も済ませている。被告会社及び被告人に前科前歴はなく,被告人は,今後は同様の行為がないよう,専門家による税務処理等に関する助言・支援を得られる経営体制を整えるなどしている。これらの諸事情も考慮すると,被告会社については主文の罰金額を,被告人については主文の刑期をそれぞれ量定した上,被告人についてはその執行を猶予するのが相当である。
(求刑

被告会社につき罰金4000万円,被告人につき懲役1年8月)

令和3年12月10日
東京地方裁判所刑事第8部

裁判官田中昭行
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