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審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号令和3(行ケ)10051
事件名審決取消請求事件
裁判年月日令和4年2月10日
法廷名知的財産高等裁判所
全文全文
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2022-02-10
情報公開日2022-02-16 04:00:17
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令和4年2月10日判決言渡

令和3年(行ケ)第10051号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

令和3年11月17日
判決原X
同訴訟代理人弁理士

高岡同小田同岩堀明代同高橋香元同告山下武志被一直告特
同指定代理人

加藤同千壽哲同井上千同村上同山田主許亮庁長官啓郎弥子聡啓之文1原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は,原告の負担とする。

3
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。

第1

実及び理由
請求
特許庁が不服2019-17215号事件について令和2年11月30日
にした審決を取り消す。
第2
1
事案の概要
特許庁における手続の経緯等
(1)

原告は,平成27年(2015年)5月12日,発明の名称を光子活性化ゲルでコーティングされた頭蓋内ステントおよび塞栓コイルとする発明
につき,特許出願(パリ条約による優先権主張(いずれも米国)平成26年(2014年)5月12日(以下本件優先日という。,同日,同年10)
月2日)をした(特願2016-566730号。請求項の数16。以下本件出願という。。)(甲12)
(2)

原告は,
平成31年2月15日付けの拒絶理由通知を受けたため,
令和元

年7月3日,特許請求の範囲を補正する旨の手続補正書(補正後の請求項の数11)
及び意見書を提出したが,
同年8月14日付けで拒絶査定を受けた。
(甲10,11)
(3)

原告は,令和元年12月20日,拒絶査定不服審判(不服2019-17
215号事件)を請求するとともに,特許請求の範囲を補正する旨の手続補
正書を提出した
(補正後の請求項の数4。本件補正
以下
という。。

(甲9)
(4)

特許庁は,令和2年11月30日,本件補正を却下した上で,

本件審判の請求は,成り立たない。

との審決(以下本件審決という。)をし,そ
の謄本は,同年12月15日,原告に送達された。
(5)

原告は,
令和3年4月13日,
本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起

した。
2
特許請求の範囲の記載
(1)

本件補正前
本件補正前の請求項1に係る特許請求の範囲の記載は,次のとおりである
(甲10)

頭蓋内ステントであって,近位端部と,遠位端部と,前記近位端部と前記遠位端部との間に伸びるチューブ状の側壁と,前記側壁の少なくとも一部を覆うパッチであって,前記パッチが,頭蓋内動脈瘤の頸部を通る血流を迂回させることが可能である,パッチと,前記パッチに,または前記パッチの境界線に沿って配置された放射線不透過マーカーと,を備える,頭蓋内ステント。(2)

本件補正後
本件補正後の請求項1(以下本件請求項1という。
)に係る特許請求の

範囲の記載は,次のとおりである(甲9。補正箇所に下線を付した。また,便宜のため各構成要件に符号を付した(以下,各符号に従い構成要件A等という。。。
))
A頭蓋内ステントであって,B近位端部と,C遠位端部と,D前記近位端部と前記遠位端部との間に伸びるチューブ状の側壁と,E前記側壁の少なくとも一部を覆うパッチであって,前記パッチが,頭蓋内動脈瘤の頸部を通る血流を迂回させることが可能である,パッチと,F前記頭蓋内動脈瘤の空洞を埋めるように構成された塞栓コイルと,G前記パッチに,または前記パッチの境界線に沿って配置された第1の放射線不透過マーカーと,HI3を備える,J前記塞栓コイル上に配置された第2の放射線不透過マーカーと,頭蓋内ステント。
本件審決の理由の要旨

(1)

本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであり,要するに,
本件請求項1に記載された発明(以下本件補正発明という。
)は,甲1の
公表特許公報(特表2001-509412号。以下甲1公報という。)
に記載された発明(以下甲1発明という。
)及び以下の甲2ないし甲6の
各特許公報(以下,書証番号に従い甲2公報等という。
)に記載された周
知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は却下すべきである,そして,本件補正前の請求項1に記載された発明は,甲1発明及び上記の周知技術に基づいて当業者
が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件出願は拒絶すべきである,というものである。
甲2:公表特許公報(特表2012-524620号)
甲3:公表特許公報(特表2007-530213号)
甲4:公開特許公報(特開平9-99094号)

甲5:公表特許公報(特表2004-535868号)
甲6:公開特許公報(特開2005-177488号)
(2)

本件審決が認定した甲1発明は,次のとおりである。

頭蓋内動脈瘤に適用される閉塞デバイスであって,近位端部と,遠位端部と,前記近位端部と前記遠位端部との間に延びる円筒形状の周壁と,前記周壁の少なくとも一部に被覆される被覆材料であって,前記被覆材料が,頭蓋内動脈瘤の頸部を通る血流を動脈瘤内に進入させないようにする,被覆材料と,前記頭蓋内動脈瘤の嚢内に注入されて前記頭蓋動脈瘤内で塊を形成するように構成された塞栓物質であるコイルと,を有する閉塞デバイス。(3)

本件審決が認定した本件補正発明と甲1発明との一致点及び相違点は,
次のとおりである。

一致点
頭蓋内ステントであって,
近位端部と,
遠位端部と,
前記近位端部と前記遠位端部との間に伸びるチューブ状の側壁と,前記側壁の少なくとも一部を覆うパッチであって,前記パッチが,頭蓋
内動脈瘤の頸部を通る血流を迂回させることが可能である,パッチと,前記頭蓋内動脈瘤の空洞を埋めるように構成された塞栓コイルと,を備える,頭蓋内ステント。

相違点
パッチ及び塞栓コイルについて,本件補正発明では,前記パッチに,ま
たは前記パッチの境界線に沿って配置された第1の放射線不透過マーカーと,前記塞栓コイル上に配置された第2の放射線不透過マーカーと,を備えるのに対して,甲1発明では,そのような構成を有するか明らかでない点。
4
原告の主張する取消事由
独立特許要件(本件補正発明の甲1発明に対する進歩性)の判断の誤り
第3

当事者の主張

〔原告の主張〕
以下のとおり,本件補正発明は甲1発明に対する進歩性を欠くものではないから,独立特許要件を満たさないとした本件審決の判断には誤りがある。1
本件補正発明の認定に誤りがあること

(1)

以下の(2)ないし(4)によれば,本件補正発明は,次のとおり,本件請求項
1の内容に構成要件Kを付加して認定すべきである。したがって,本件補正発明について,本件請求項1の記載どおり認定した本件審決の判断には誤りがある。
A頭蓋内ステントであって,B近位端部と,C遠位端部と,D前記近位端部と前記遠位端部との間に伸びるチューブ状の側壁と,E前記側壁の少なくとも一部を覆うパッチであって,前記パッチが,頭蓋内動脈瘤の頸部を通る血流を迂回させることが可能である,パッチと,F前記頭蓋内動脈瘤の空洞を埋めるように構成された塞栓コイルと,G前記パッチに,または前記パッチの境界線に沿って配置された第1の放射線不透過マーカーと,HIを備え,K前記塞栓コイル上に配置された第2の放射線不透過マーカーと,前記パッチ及び前記塞栓コイルは前記頭蓋内ステントが頭蓋内に送達される前に前記頭蓋内ステントに備えられている,J(2)頭蓋内ステント。本件請求項1は,いつの時点で頭蓋内ステントがパッチ及び塞栓コイル
を備えるかは明示していないが,本件補正発明は,物の発明であって方法の発明ではないから,パッチ及び塞栓コイルについては,頭蓋内において初めて頭蓋内ステントに備えられるものと解釈するのではなく,頭蓋内に送達される前に備えられているものと解釈するのが,文言解釈として通常である。また,本件出願に係る明細書(甲12。以下,図面と併せて本願明細書
という。をみても,

パッチ及び塞栓コイルが頭蓋内において初めて頭蓋内ス
テントに備えられると解釈されることを明示する記載はない。

(3)

本件請求項1において,各構成要素がいつの時点で互いにどのような関
係にあるかまでを特定するような記載がないとすると,
本件補正発明は,
前記塞栓コイルは前記頭蓋内ステントが頭蓋内に送達された後に前記頭蓋内ステントに備えられる,との構成も含むこととなる。しかしながら,本件補正発明をこのように認定すると,医師によって当該発明を実施する医療行為が特許権の侵害となる可能性がある上,当該発明が産業上の利用可能性の要件を満たさないとした場合に多くの医療機器の特許発明に同様の無効理由が存在することになりかねない。
これらの問題点について妥当な結論を得るためには,本件補正発明につい
て,少なくとも構成要件Kを付加して認定すべきである。
(4)

本願明細書の段落【0018】には,頭蓋内ステント及び塞栓コイルが
別々に用意され,頭蓋内において初めて組み合わされて使用されることが記載されているのであって,頭蓋内ステントが塞栓コイルを備えると記載されているのではない。
また,
本件補正後の特許請求の範囲の請求項3(以下
本件請求項3という。
)が規定するのは,
前記塞栓コイルが,前記頭蓋内ステントのチューブ状の側壁内の穿孔されたスロットを通して,前記頭蓋内ステントのチューブ状の側壁から前記頭蓋内動脈瘤の中へ展開するように構成されるものであることであるところ,これは塞栓コイルの構成ではなく機能を説明しているものである上,本件請求項3には,頭蓋内ステント及び頭
蓋内ステントに備えられる塞栓コイルが,頭蓋内に送達される前の時点や送達された後の時点でどのような関係にあるかを特定するような記載はない。そして,
構成という用語には,いつの時点で互いにどのような関係にある
かまでを特定するような意味はない。
そうすると,本件請求項3は,被告が主張するような,
頭蓋内ステントと塞栓コイルは別々の部品として用意され,頭蓋内ステントは,塞栓コイルの頭蓋内動脈瘤への配置前に,あらかじめ頭蓋内に配置されていることを特定しようとするものではない。2
甲1発明の認定に誤りがあること
(1)

以下の(2)及び(3)によれば,
甲1発明は,
次のとおり認定すべきである
(本

件審決の認定と異なる部分に下線を付した。。したがって,下線部分を認定)
しなかった本件審決の判断には誤りがある。

頭蓋内動脈瘤に適用される閉塞デバイスであって,近位端部と,遠位端部と,前記近位端部と前記遠位端部との間に延びる円筒形状の周壁と,を有するが,閉塞デバイスが頭蓋内に送達される前には,前記周壁の少なくとも一部に被覆される被覆材料であって,前記被覆材料が,頭蓋内動脈瘤の頸部を通る血流を動脈瘤内に進入させないようにする,被覆材料と,前記頭蓋内動脈瘤の嚢内に注入されて前記頭蓋動脈瘤内で塊を形成するように構成された塞栓物質であるコイルと,を有していない,閉塞デバイス。(2)

甲1発明の請求項23,甲1公報の段落【0021】ないし【0028】
の記載及び図面3AないしDによれば,甲1発明の被覆材料及び塞栓物質で
あるコイルは,いずれも閉塞デバイスが動脈瘤に近位の管腔内で展開させられた後に挿入されるものである。
(3)

本件補正発明は,
構成要件Kを付加して認定すべきであるところ,
これと

対比させる甲1発明の認定においても,構成要件Kに対応する構成要素を認定すべきである。

3
一致点及び相違点の認定に誤りがあること

前記1及び2によれば,本件補正発明と甲1発明との一致点及び相違点は,次のとおり認定すべきである(本件補正発明の頭蓋内ステントパッチ,
及び塞栓コイルが,それぞれ甲1発明の閉塞デバイス被覆材料及

び塞栓物質であるコイルに相当することは認める。。

(1)

一致点
頭蓋内ステントであって,
近位端部と,
遠位端部と,
前記近位端部と前記遠位端部との間に伸びるチューブ状の側壁と,を備える,頭蓋内ステント。

(2)

相違点
相違点a
本件補正発明では,
頭蓋内ステントが頭蓋内に送達される前にパッチ
(側
壁の少なくとも一部を覆うパッチであって,前記パッチが,頭蓋内動脈瘤の頸部を通る血流を迂回させることが可能である,パッチ)が頭蓋内ステ
ントに備えられているのに対して,甲1発明では,頭蓋内ステントが頭蓋内に送達される前には頭蓋内ステントがパッチを備えていない点。イ
相違点b
本件補正発明では,頭蓋内ステントが頭蓋内に送達される前に塞栓コイ
ル(頭蓋内動脈瘤の空洞を埋めるように構成された塞栓コイル)が頭蓋内ステントに備えられているのに対して,甲1発明では,頭蓋内ステントが頭蓋内に送達される前には頭蓋内ステントが塞栓コイルを備えていない点,及び,本件補正発明では,頭蓋内ステントが塞栓コイル上に配置された第2の放射線不透過マーカーを備えるのに対して,甲1発明では,頭蓋
内ステントが塞栓コイル上に配置された第2の放射線不透過マーカーを備えていない点。


相違点c
本件補正発明では,頭蓋内ステントがパッチにまたはパッチの境界線に沿って配置された第1の放射線不透過マーカーを備えるのに対して,甲1発明では,頭蓋内ステントがパッチにまたはパッチの境界線に沿って配置された第1の放射線不透過マーカーを備えていない点。

4
容易想到性の判断に誤りがあること
(1)

相違点aについて
甲1公報においては,頭蓋内ステントが頭蓋内に送達される前に,パッチが頭蓋内ステントに備えられていることについて,記載も示唆もされていない。


甲1公報には,甲1発明の請求項23に記載された発明の実施態様として,閉塞デバイスが頭蓋内に送達されて管腔内で展開させられた後に,被覆材料が動脈瘤の近位領域へ管腔を通して挿入され,閉塞デバイスの内面に接触することが記載されている。そして,請求項23の内容によれば,この閉塞デバイスが頭蓋内に送達される前に,被覆材料が閉塞デバイスに
備えられている必要性はない。したがって,甲2公報及び甲3公報に記載された相違点aの構成を甲1発明に適用する動機付けはない。
(2)

相違点bについて
甲1公報ないし甲6公報においては,頭蓋内ステントが頭蓋内に送達される前に,塞栓コイルが頭蓋内ステントに備えられていることについて,記載も示唆もされていない。また,甲4文献ないし甲6文献に記載されている各発明においては,塞栓コイル自体が放射線不透過性材料によって構成されているから,甲4公報ないし甲6公報には,塞栓コイルが塞栓コイル上に配置された第2の放射線不透過マーカーを備えることについて,記
載も示唆もされていない。さらに,甲1公報ないし甲3公報においても,上記の構成について,記載も示唆もされていない。

以上によれば,甲1公報ないし甲6公報からは,相違点bの構成を採用する動機付けは生じない。

構成要件H(
前記塞栓コイル上に配置された第2の放射線不透過マーカー
)の配置との用語は,
それぞれの位置に割り当てる人や物,を,それぞれ適当な位置に置くことなどの意味を有することからすれば,

塞栓コイル自体が放射線不透過性材料である場合に,
塞栓コイルの表面上には,放射線不透過マーカーとして機能する材料が配置されていると認定することは,明らかに誤りである。

塞栓コイル自体が放射線不透過性材料であるものが周知技術であったとしても,塞栓コイル上に別部材として放射線不透過マーカーを取り付ける
という態様は,構成としてより複雑であることも踏まえると,周知技術であるとはいえない。
また,仮に,塞栓コイル上に別部材として放射線不透過マーカーを取り付けるという態様が周知技術であったとしても,被告がその根拠とする乙5ないし乙8の各文献は,本件出願の審査・審理の過程では挙げられなか
ったものである上,被告は,同態様について,本件出願の審査・審理の過程では何ら言及しなかったものであることからすれば,本件訴訟において,被告が同態様を周知技術として主張することは認められるべきではない(知的財産高等裁判所平成21年9月16日判決(平成20年(行ケ)第10433号)。


(3)

まとめ
以上によれば,甲1公報ないし甲6公報からは,甲1発明において相違点
a及びbの構成を採用して本件補正発明に至る動機付けは生じない。したがって,相違点cについて検討するまでもなく,本件補正発明は,甲1発明に対する進歩性を欠くものではない。
〔被告の主張〕

以下のとおり,本件補正発明は甲1発明に対する進歩性を欠くから,本件補正を却下した本件審決の判断に誤りはない。
1
本件補正発明の認定に誤りがないこと
(1)

本件請求項1の記載は,その記載のとおりに本件補正発明の有する技術
的事項を理解することができる明確なものであり,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情は見当たらない。
したがって,本件請求項1の記載のとおりに本件補正発明を認定した本件
審決に誤りはなく,他方で,構成要件Kを付加して認定すべきであるとする原告の主張は,本件請求項1に記載のない発明特定事項を付加するものであるから誤りである。
(2)

本件請求項1においては,
頭蓋内ステントについて,
構成要件BないしH

を備えるとのみ規定されており,各構成要素がいつの時点で互いにどのような関係にあるかは何ら特定されていない。また,本件請求項1には,原告が主張するような経時的概念を含めて解釈すべき用語も見当たらない。本件請求項1の備えるという語及び本件出願に係る国際特許出願の明細書原文
(乙3。
国際公開番号WO2015/175542)
において
備える
の訳語として使用されているcomprisingの語は,いずれも構成要件Bな
いしHに係る各構成要素がいつの時点で互いにどのような関係にあるかまでを特定するような意味を含むものではない。
(3)

本願明細書の段落【0018】及び【0023】の記載によれば,本願明
細書においては,頭蓋内ステント及び塞栓コイルが頭蓋内において初めて組み合わされる実施態様が記載されているが,頭蓋内ステント及び塞栓コイルが頭蓋内への配置前に取り付けられていることについては,記載も示唆もされていない。また,本願明細書の段落【0018】の記載に基づく本件請求
項3は,本件補正発明を更に限定しようとする請求項である。そうすると,本件補正発明は,頭蓋内ステント及び塞栓コイルが頭蓋内において初めて組み合わされるという技術的事項を含み得る発明として解釈することができるものと理解される。
2
甲1発明の認定に誤りがないこと
引用発明は,出願に係る特許発明の発明特定事項に相当する事項を過不足のない限度で認定すれば足り,発明特定事項との対応関係を離れて,引用発明を必要以上に限定して認定する必要はない。
そして,本件補正発明は,構成要件BないしHに係る各構成要素について,それらが頭蓋内に送達される前の時点や送達された後の時点でどのような関係
にあるかは何ら特定されないものとして認定されるのであるから,甲1発明の認定に当たっても,これらの構成要素に相当する事項同士が,いつの時点でどのような関係にあるかまで限定して認定する必要はなく,本件審決の認定に誤りはない。
3
一致点及び相違点の認定に誤りがないこと
上記1及び2によれば,本件補正発明と甲1発明との一致点及び相違点について,本件審決の認定に誤りはない。

4
容易想到性の判断に誤りがないこと
(1)

本件審決の容易想到性の判断には何ら誤りはない。
原告の主張は,
誤った

相違点に基づく当を得ないものである。
(2)

原告の主張は,要するに,頭蓋内ステント(閉塞デバイス)が頭蓋内に送
達されるタイミングと,頭蓋内ステント(閉塞デバイス)にパッチ(被覆材料)が取り付けられるタイミングとの関係を問題にするものであるが,その前提に誤りがある。
(3)

塞栓コイル自体が放射線不透過性材料であれば,塞栓コイルの表面上に
は放射線不透過マーカーとして機能する材料が配置されているといえる。そ
うすると,甲4公報ないし甲6公報には,塞栓コイル上に放射線不透過マーカーが配置されているものが記載されているといえるから,周知技術の例示に該当するものといえる。また,乙5ないし乙8の各文献によれば,塞栓コイル上に別部材として放射線不透過マーカーを取り付ける態様も,周知技術であるといえる。

第4
1
当裁判所の判断
本件補正発明の認定について
(1)

特許請求の範囲
本件補正発明の特許請求の範囲(本件請求項1)の記載は,前記第2の2
(2)のとおりである。
(2)

本願明細書の記載
本願明細書には,次のとおりの記載がある(甲12。図1ないし4につい
ては,別紙本願明細書図面目録記載のとおりである。。


技術分野

本開示は一般的に,ステント,塞栓装置および頭蓋内の動脈瘤の治療でそれらを使用する方法に関する。特に本開示は,光子活性化ゲルで少なくとも部分的に覆われた外壁を有する頭蓋内ステントに関する。(段落

【0002】


背景技術
脳動脈瘤の血管内治療は現在,コイルまたは液体塞栓剤のような塞栓物質または動脈瘤の内部に送達される装置のどちらかを用いて,またはオリフィスにわたって血管内ステントを取り付けることによりそのような動脈瘤のオリフィスから血液を迂回させることにより行われる。前者のケースでは,可能な限り動脈瘤内部の空間を占め,同時に血液を除き血栓形成を促進する装置または物質の採用が望ましい。後者のケースでは,血管壁を模倣または再建し,そうする中で正常な血管内腔内の血液がステントに侵入し,目標の動脈瘤のオリフィスに入るのを最も効果的に防ぐ装置の使用が望ましい。この目標は穿孔がより小さい,または所定の表面領域について金属密度がより高いステントの使用により達成される。(段落【0003】


発明が解決しようとする課題
極めて脆弱で複雑で知られる頭蓋内血管の場合,そのような血管のきわめて高感度な内皮への損傷を最小化するため,可能な最高の柔軟性および操縦可能性を有するステントの使用もまた望ましい。(血管壁の単位領域あたりのより小さい穿孔またはより大きい金属密度により達成される)血流の迂回の特性と,(血管壁面領域:柔軟な素材およびより大きい穿孔,または少ない金属で通常達成される)非外傷性の操縦可能性/柔軟性は対立するので,血流の迂回または頭蓋内血管再建の目的のために,柔軟性および操縦可能性の特徴を持ち,その後適切な位置にあると,化学的処理によりより小さい穿孔およびより少ない透過性に変換するステントを採用するのが望ましいだろう。(段落【0004】)


課題を解決するための手段

脳動脈瘤の治療のコイル塞栓処置において,頭蓋内ステント,塞栓コイルおよびそのような装置を使用する方法が開示される。(段落【000

5】


頭蓋内ステントは,近位端部,遠位端部,およびそれらの間を伸びるチューブ状の側壁と,頭蓋内動脈瘤の頸部を通る血流を迂回させることが可能である,側壁の少なくとも一部を覆うパッチを有してもよい。パッチを,光子活性化素材,または側壁自身の密度より大きい密度で密に織られた金属素材で構成またはコーティングしてもよい。パッチが光子活性化ゲルに覆われたとき,それを発光ダイオード(LED),石英,タングステン-ハロゲン,キセノン-プラズマ,X線光子などからなる群から選択された源により活性化してもよい。1つの実施形態では,光子活性化ゲルをX線光子により活性化してもよい。活性化されると,光子活性化ゲルは,動脈瘤の頸部を通る血流の完全な迂回が達成されるような方法で,それが動脈瘤オリフィスを覆いうる程度に拡張してもよい。しかしゲルの半径方向の拡張は,近接した正常な血管壁の大きさを大幅に変化させなくてもよい。よってこの実施形態の光子活性化ゲルでコーティングされたステントは,脳動脈瘤のコイル塞栓に適切でありうる。(段落【0006】)
別の実施形態では,動脈瘤の空洞内への送達に適切な塞栓コイルを,光子活性化ゲルパッチで完全にまたは部分的に覆ってもよい。この実施形態では,光子活性化ゲルがX線のような光子源により活性化されたとき,塞栓コイルはそのままで物理的変換を経てもよい。変換はまた,化学的で,組織の刺激物または毒性の物質になって局所的および区域的損傷を引き起こし,よって動脈瘤の空洞の完全または部分的な閉鎖につながる熱または光化学的放出を伴ってもよい。結果として,動脈瘤の空洞を,元のおよび生来の循環から完全に分離してもよい。(段落【0007】)


発明を実施するための形態
図1に示されたように,1つの実施形態では,ステント10は遠位端部12,近位端部14,およびそれらの間を伸びるチューブ状の側壁16を有してもよい。通常ステント10はチューブ状,有窓または編組であり,それらが意図する血管の解剖学的構造によって大きさが変わってもよい。・・・(段落【0012】

再び図1を参照すると,ステント10の側壁16を,光子活性化ゲル素材によりわずか一部を覆い,ゲルパッチ18を形成してもよい。あらゆる生体適合性素材,または,光子源により活性化しうるまたはそうでなければ化学的に活性化される素材の組み合わせが,ゲルパッチ18を形成するステントの側壁部分のコーティングに適切と考えられる。ゲルパッチ18の拡張は,よってステント10の物理的変換を示す。当業者は,ゲルパッチ18の拡張が隙間を閉じることがあり,ゲルパッチ18により覆われたそれぞれの穿孔のサイズを効果的に減少しうることを理解しうる。よって,ゲル活性化前はより多孔性が高くありうるステント10は,ゲルパッチ18の活性化後,より多孔性が少ない装置に変わりうる。多くの他の頭蓋内ステントと異なり,ゲルパッチ18はステント10の側壁16の一部のみを覆い,動脈瘤20の頸部を通る血流を完全に迂回させるのに十分な厚さまたは密度を提供しうる。側壁16の一部のみのコーティングにより,ステント10の残りをゆるく織られた素材で構成してもよく,柔軟性および繊細な血管を通る操縦性能を促進しうる。また,一部のみ,望ましくはステントの中間部分の光子活性化ゲルでのコーティングにより,その近接した正常血管壁との実際の接触を最小化しうる。従って活性化されたとき,ステントのコーティング部分は正常血流から動脈瘤を除外するよう機能し,ステントを正確な血流迂回装置として機能させる。ステントが製造されるとき,コーティングの幅を変更してもよく,動脈瘤オリフィスの与えられたサイズの予想される周波数によってステントを供給してもよい。動脈瘤オリフィスの幅と比較してこの中央領域が上回ることは,最小の影響を有すると予想されるであろう。従って,正常な血管壁との小範囲の重なり(2~4mm)は,許容可能であろう。血流迂回ステントにより引き起こされるあらゆる小さな乱流は前に破裂していない動脈瘤の高破裂率に潜在的につながりかねないので,いくつかの実施形態では,そのような重なりは,動脈瘤付近の接合部の不一致の血流力学的影響を最小化するのに望ましい。(段落【0013】)
図2に示されたように,血管24内に取り付けられると,バルーンまたは他の適切な装置により,ステント10を「閉鎖または圧縮された状態から開放または拡張された状態へ展開してもよい。
開放ステント

10を,光子活性化ゲルパッチ18が動脈瘤22の頸部20にわたって伸び,動脈瘤オリフィスの幅をほぼ覆うような方法で,血管の目標部位に位置決めされてもよい。血管造影を用いて,動脈瘤オリフィスの大きさのデジタル測定を実行してもよい。動脈瘤オリフィスにわたるゲルパッチ18の正確な配置を判断するよう,放射線不透過マーカー26をパッチ18に,またはパッチ18の境界線に沿って配置してもよい。ステント10を送達マイクロカテーテルから押すことにより目標領域にそれが配置され展開された後,それから光子活性化ゲルパッチ18を,発光ダイオード(LED)
,または石英-タングステン-ハロゲンまたはキセノンプラズマまた
はX線光子のような他の光源に曝露することにより,それを活性化してもよい。
・・・」
(段落【0014】

図3に示されたように,別の実施形態では,光子活性化ゲルで作られたパッチの代わりに,側壁16の個別の領域内の金属製織の密度を増加することにより,パッチ28を製作してもよい。(図1,図2および図4に示された)光子活性化ゲルパッチ18のように,内科医が動脈瘤の頸部にパッチ28を取り付けるのを可能にするよう,織りパッチ28はそれに,またはその境界線に沿った放射線不透過マーカー30を有してもよい。・・・(段落【0017】

別の実施形態では,図4に示されたように,内科医はさらに塞栓コイル28と組み合わせてステントを使用してもよい。ステント10と同様に,塞栓コイル28を光子活性化ゲル物質で完全にまたは部分的にコーティングし,公知の処置を用いて動脈瘤の空洞内に取り付けてもよい。光子活性化ゲルでコーティングした塞栓コイルの配置をステントの壁を通して達成してもよく,その場合ステントはわずかに(高い金属対血管壁比で)穿孔され,またはその場合コイルを無孔ステント10の壁内のスロットを通して動脈瘤内に押してもよい。動脈瘤の空洞内のコイル配置の視覚化は,コイル28上に放射線不透過マーカーを取り付けることにより達成しうる。動脈瘤の空洞内のゲルでコーティングしたコイル28の配置の後,ゲルを光子源で活性化してもよい。活性化すると,ゲル物質はコイルの拡張を引き起こし,および/またはそのままで化学的または光化学的変換を促進し,最終的に動脈瘤内の凝固および固まりの形成を引き起こす。血管からの動脈瘤の即時の分離を確実にするよう,およびコイルが広い動脈瘤嚢を外れないことを確実にするよう,一般的な頭蓋内ステントをコイルの配置直後または前に配置してもよい。(段落【0018】)
予測例
(段落【0021】


予測例1:広頸脳動脈瘤の治療
(段落【0022】

患者に,偶然発見した内頸動脈の脳動脈瘤の診断の医学的な注意が見つかる。患者の血管造影図は,動脈瘤が親動脈へ広頸部またはオリフィスを有することを示す。従って,動脈瘤内へ取り付けられたコイルが親動脈内へ脱出する恐れがあるため,単純なコイル塞栓は適していない。患者はまた,他の理由で開頭およびクリッピングに理想的な対象ではない。この患者に関する1つの選択肢は,ステント/コイル技術であろう。それによってコイルが動脈瘤頸部にわたり取り付けられた頭蓋内ステントを通して広頸動脈瘤内へ置かれる。有効ではあるが,この技術は2つの処置(頭蓋内ステントの配置,続いてコイルの配置)を必要とし,この事実は自動的に処置の外科的リスクを2倍にする。また,ステントが配置された後にマイクロカテーテルと交差可能であること,およびそのときステントを越えて動脈瘤内へコイルを送れることは,ステントが第2の操作により何かの事情で移動されるかもしれず,ステントの隙間の角形成がマイクロカテーテルによる交差に好ましくないかもしれないので,可能と保証されない。これらの問題は,動脈瘤のオリフィスを覆うよう構成され,動脈壁の欠陥部分を原則的に再建するよう構成された光子活性化ゲルでコーティングされたパッチ18を有する本開示の単一の再建装置またはステント10の使用によって避けることが可能である。(段落【0023】)
本開示の光子活性化ゲルでコーティングされたステントは,さらなるコイルの必要なしに脳循環から動脈瘤を除くことを可能にするであろう。この目的のために頭蓋内ステントは配置されてきたが,過度の多孔性のため,動脈瘤から血流を除くことにおいて,それらは通常効果的でない。この同じ多孔性は,極めて脆弱で複雑な脳血管を操縦するのに固有の困難さゆえに必要である。ステントを動脈瘤の頭蓋内の位置に安全に送達するため,それは柔軟でなければならない。しかし,効果的に動脈瘤または損傷された動脈壁の区間から血流を除くために,多孔性を最小化しなければならない。この問題は,配置時に多孔性および柔軟性を有し,その後光子エネルギーにより多孔性が低い装置に変換され光子活性化ゲルでコーティングされたステント10により解決される。これは,ステントを,光子エネルギーへ暴露されると活性化され拡張するゲルでコーティングすることで達成される。そのようなエネルギーを提供する1つの方法は,血管内処置に通常使用される血管造影X線装置を使用することである。送達マイクロカテーテルの端部に短い区間の放射線遮蔽物が配置されているので,目標へ血管内を操縦中のゲルコーティングの速すぎる活性化は防がれる。ステントは,それがマイクロカテーテルからその動脈内の最終位置へ押し出されるまで,放射線から隠蔽されたままである。従って,単純なコイル塞栓,クリッピングまたはステント/コイル技術に理想的に適していない患者に,光子活性化ゲルでコーティングされたステント10で,第4の選択肢を現在実施可能である。(段落【0024】)
(3)

本件補正発明の技術的意義
上記(1)及び(2)によれば,本件補正発明の技術的意義は,次のとおりであると認められる。

(ア)

本件補正発明は,脳動脈瘤の治療に使用される頭蓋内ステントに関
する発明である。(段落【0002】)
(イ)

脳動脈瘤の血管内治療は,コイル等の塞栓物質又は動脈瘤の内部に
送達される装置のいずれかを用いる方法や,動脈瘤のオリフィスにわたって血管内ステントを取り付けることによって血液を迂回させる方法
により行われており,後者の方法においては,ステントによって血管壁を模倣又は再建し,正常な血管内腔内の血液が動脈瘤のオリフィスに入るのを防ぐことが目標とされる。
(段落【0003】

(ウ)

上記のステントを用いた治療方法においては,極めて脆弱で複雑で
ある頭蓋内血管の極めて高感度な内皮への損傷を最小化するために,可
能な限り最高の柔軟性及び操縦可能性を有するステントの使用が望ましく,柔軟な素材で構成され,かつ,より大きな穿孔又はより少ない金属によるステントが必要とされる。他方で,ステントによる血流の迂回及び血管壁の再建を達成するためには,血管壁の単位領域当たりのより小さな穿孔又はより大きな金属密度のステントが必要とされる。そこで,
これらの特徴を両立させた頭蓋内ステントを構成することが課題とされている。(段落【0004】)
(エ)

本件補正発明は,頭蓋内ステントを本件請求項1に記載された構成
を備えたものとすることにより,上記の課題を解決しようとするものである。
(段落【0006】【0013】【0014】及び【0018】




(オ)

本件請求項1に記載された構成を備えた頭蓋内ステントは,脳動脈
瘤の血管内治療において,頭蓋内血管内皮の損傷を最小化しつつ,血流の迂回及び血管壁の再建を達成することが可能となるという効果を奏する。
(段落【0004】


上記アのとおり,本件補正発明は,頭蓋内ステントの発明であり,発明の課題を解決するために,本件請求項1に記載された構成を備えるもので
ある。
したがって,本件補正発明は,本件請求項1に記載されたとおり認定すべきであり,本件請求項1に記載されていない構成要件Kを付加して認定するのは相当でないというべきである。
(4)

原告の主張に対する判断
原告は,本件補正発明について,本件請求項1に記載された構成に構成要件Kを付加して認定すべきであるとして,
縷々主張する
(前記第3の
〔原
告の主張〕1)


イ(ア)
そこで検討するに,特許出願に係る発明の要旨の認定は,特段の事
情がない限り,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであり,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは,一見してその記載が誤記であることが発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌
することが許されるにすぎないところ(最高裁昭和62年(行ツ)第3号平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁参照)本,
件補正発明は物の発明であって,本件請求項1は,単に頭蓋内ステントがパッチ及び塞栓コイルを備えると規定するのみであり,その記載上,経時的要素を含むものではなく,いつの時点で頭蓋内ステントがパ
ッチ及び塞栓コイルを備えるかが特定されていないことは明らかであるから,本件請求項1は,その特許請求の範囲の記載に基づいてその記載のとおりに本件補正発明の有する技術的事項を一義的に明確に理解することができるものである。
そうすると,本件請求項1の文言解釈としては,パッチ及び塞栓コイ
ルが頭蓋内ステントに備えられる時期は特定されていないとみるのが自然である。

(イ)

また,仮に,そのように理解することができない特段の事情が

あるとしても,本願明細書には,頭蓋内ステントがいつの時点でパッチ又は塞栓コイルを備えるかによって異なる効果を奏する旨の記載は存しないことからすれば,頭蓋内ステントがパッチ又は塞栓コイルを備える時期は,本件補正発明の技術的意義に含まれるものではないとみるのが
相当である。さらに,本願明細書には,頭蓋内ステントが頭蓋内に送達された後にパッチ又は塞栓コイルを備える態様を排除する旨の記載は見当たらず,かえって,頭蓋内ステント及び塞栓コイルが頭蓋内において組み合わされる実施態様が記載されている(段落【0018】及び【0023】。


以上の各事情からすれば,本願明細書の記載を参酌しても,パッチ及び塞栓コイルが頭蓋内ステントに備えられる時期が特定されているとみるべき記載は存しないというべきである。
(ウ)

以上のとおりの本件請求項1及び本願明細書の各記載内容を考慮

すると,本件補正発明は,パッチ及び塞栓コイルが頭蓋内ステントに備
えられる時期に関する構成を発明特定事項として含むものではないというべきである。
そうすると,本件補正発明は,本件請求項1に記載されたとおり認定すべきであり,これに構成要件Kを付加して認定するのは相当でないというべきである。


したがって,本件補正発明の認定に関する原告の主張はいずれも採用することができない。

(5)

小括
以上検討したところによれば,本件補正発明について,本件請求項1に記
載されたとおり認定した本件審決の判断に誤りはない。

2
甲1発明の認定について

(1)

甲1公報の記載
甲1公報には,
発明の名称を
動脈瘤を閉塞させるための血管内システム

とする発明に関し,発明の詳細な説明として,次のとおりの記載がある(甲1。
図1ないし3については,
別紙甲1公報図面目録記載のとおりである。。

本発明は,動脈瘤を処置するためのシステムに関する。より詳細には,本発明は動脈瘤のある血管系内で展開される閉塞システムに関する。(段落

【0001】

動脈瘤を処置するための方法はこれまで幾つか試みられてきたが,その成功の度合いは様々である。例えば,開放性開頭術は,動脈瘤が血管外で位置を確認され,処置される手技である。このタイプの手技には重大な短所がある。例えば,開放性開頭術を受ける患者は全身麻酔を受けなければならない。さらに,外科医が動脈瘤に到達するために種々の組織を切断しなければならないという事実によって,患者は動脈瘤の領域に相当に大きな外傷を被る。例えば,脳動脈瘤を血管外で処置する場合は,外科医は典型的には患者の頭蓋骨の一部分を除去しなければならず,さらに動脈瘤に到達するために脳組織に外傷を負わせなければならない。(段落【0002】)
動脈瘤を処置するときに使用されるその他の技術は血管内で実施される。この技術には,典型的には動脈瘤嚢内で塊(mass)の形成を試みることが含まれる。典型的には,マイクロカテーテルを使用して,動脈瘤嚢にアクセスする。マイクロカテーテルの遠位端が動脈瘤嚢内に挿入され,そのマイクロカテーテルを使用して動脈瘤嚢内に塞栓材が注入される。塞栓材には,例えば抜去できるコイルまたは液性ポリマーのような塞栓剤が含まれる。これらのタイプの塞栓材の注入には欠点があるが,それらのほとんどは塞栓材が動脈瘤から出て親動脈内に移動することに関連する。これは親動脈の永久的かつ不可逆性閉塞を惹起することがある。(段落【0003】)
例えば,取外しできるコイルを使用して明確に限定された頚部領域のない動脈瘤を閉塞させると,取外しできるコイルが動脈瘤嚢から出て親動脈内へ移動することがある。さらに,時には,取外しできるコイルが注入された場合には,動脈瘤嚢がどの程度満たされているのかを正確に測るのが困難である。このため,動脈瘤を充填し過ぎる危険性が発生し,その場合には取外しできるコイルもまた親動脈内へ溢れ出てしまう。(段落【0004】)
取外しできるコイルの別の欠点には,時間の経過に伴うコイル圧縮が含まれる。動脈瘤を充填した後,コイル間には空間が残っている。循環からの持続性の血行力学的な力が作用してコイルの塊を圧縮し,動脈瘤頚部に空洞を作り出す。従って,動脈瘤が再疎通(recanalize)することがある。(段落
【0005】

塞栓剤の移動もまた問題である。例えば,液性ポリマーが動脈瘤嚢内に注入された場合は,血管系の血行力学のために動脈瘤嚢から出て移動することがある。これはさらに,親血管の不可逆性閉塞を引き起こすことがある。(段落【0006】


親血管への塞栓材の移動に関連する欠点を改善するために様々な技術が試みられてきた。一般には血流停止法と呼ばれるそうした技術の一部は,典型的には,動脈瘤嚢から塞栓材が出て移動する傾向を低下させるのに役立つ血栓性塊が動脈瘤嚢内に形成されるまで,親血管を通過する血流が発生しないように,動脈瘤の近くの親血管を一時的に閉塞させることを含んでいる。しかし,血栓性塊は正常な血液溶解によって溶解してしまうことがある。さらに特定の場合には,たとえ一時的であっても親血管を閉塞させることは極めて望ましくない。このため,この技術は処置オプションとして利用することができないことがある。さらに,たとえ親血管を閉塞させても,塞栓材の親血管内への移動を完全に防止することはできない可能性がある。段落(
【0

007】

動脈瘤を処置するためのもう1つの血管内技術には,マイクロカテーテルを用いて動脈瘤嚢内へ取外しできるバルーンを挿入することが含まれている。取外しできるバルーンはその後,生理食塩液及び/または造影剤を用いて膨張させられる。バルーンはその後マイクロカテーテルから外され,動脈瘤嚢を充填する目的で動脈瘤嚢内に残される。しかし,取外しできるバルーンにもまた欠点がある。例えば,取外しできるバルーンは,膨張された場合に,典型的には動脈瘤嚢の内部形状に順応しないであろう。それどころか,取外しできるバルーンは動脈瘤嚢が取外しできるバルーンの外面に順応することを要求する。従って,取外しできるバルーンが動脈瘤嚢を破裂させる危険性が高まる。さらに,取外しできるバルーンは,破裂し,動脈瘤から出て移動する可能性がある。(段落【0008】)
閉塞システムは親血管中の動脈瘤を治療する。・・・前記閉塞システムには,親血管内で展開するように構成されたステント(stent)が含まれている。前記ステントは少なくとも第1部分と第2部分とを有する。第1部分は血流に対して透過性であり,ステントが展開されたときに第1部分が動脈瘤の頚部から距離を置くように配置される。第2部分は第1部分に比べて血流に対して透過性が小さく,ステントが展開されたときに動脈瘤の頚部上に第2部分が横たわるように配置される。(段落【0009】)
図1A及び1Bは,動脈瘤16の近位で血管14の管腔12内において展開された閉塞デバイス10を示している。好ましい実施態様では,閉塞デバイス10は親血管14の管腔12内の動脈瘤16の部位に送達される形状記憶メッシュ製デバイスである。デバイス10は動脈瘤16の頚部18の上方に位置するように置かれる。(段落【0010】)
デバイス10は,好ましい実施態様では,その材料が血流に対して実質的に透過性となるようにその中に孔を有する材料から形成された第1部分20を有する。閉塞デバイス10はさらに又,好ましくは第1部分20より血流に対して透過性が小さい第2部分22を有する。閉塞デバイス10は,第2部分22が動脈瘤16の頚部18の上方に配置され,さらにこれを実質的に被覆するように血管12内で展開させられる。閉塞デバイス10を挿入すると,管腔12を通る血流が有意な量で動脈瘤16の嚢内に進入しないように閉塞デバイス10に近位の血管系の血行動態が変化させられる。或いは又,閉塞デバイス10は親血管14の管腔12内の血流を実質的に収容する流路変更器として機能する。動脈瘤嚢内の血液は主血流と一緒に循環しないので,うっ血領域が作り出され,動脈瘤16の嚢内の血液は血栓を形成する。(段落【0011】

閉塞デバイス10は図5~6Dにおいて詳細に説明されているものを含む適切な方法のいずれかで親血管14の管腔12内で展開させることができる。・・・デバイス10はカテーテルを通して送達される。(段落【0013】

図2A~2Cは,本発明による閉塞デバイス10の3つの好ましい実施態様を示している。図2Aでは,閉塞デバイス10は図1Aに示されたデバイスに類似しており,第1部分20と第2部分22とを有している。図2Aに示された実施態様では,第2部分22は例えば適切なポリマー材料のような実質的に血流に対して不透過性である材料から形成される。第2部分22は,閉塞デバイス10の第1部分20の撚り合せ内に織り込むことができる,又は閉塞デバイス10の内面若しくは外面に付着させることができる,又は他の適切な付着機構を使用して付着させることができる。段落(
【0017】

これまでに説明された実施態様のすべてにおいて,閉塞デバイスの残りの部分より血流に対する透過性が小さい領域を動脈瘤16の頚部18の上に当てがうことによって,血流は動脈瘤16から離れた方向へ向きが変えられ,動脈瘤16の嚢内でうっ血領域が作り出される。従って血液は動脈瘤16の嚢内で血栓を形成し,閉塞デバイスの表面に沿って動脈瘤16の頚部18の上方で細胞増殖が促進される。図1A~2Cに示された実施態様では,動脈瘤16は閉塞デバイスを展開させる前にまず最初に塞栓物質が満たされてもよい。しかし,好ましい実施態様では,閉塞デバイスは動脈瘤16の嚢内を満たさずに使用され,動脈瘤16を満たす必要を回避して単純に流路変更器として使用される。(段落【0020】)
図3A~3Dは,本発明の別の好ましい実施態様による閉塞デバイス36の展開を示している。図3Aに示された実施態様では,親血管14は動脈瘤16に近位の領域でそれと連通している複数の貫通血管38を有している。閉塞デバイス36が例えば腹部血管系のような血管系の中で展開させられた場合は,動脈瘤16の近くの貫通血管の数は頭蓋内動脈瘤に近位の貫通血管よりはるかに少ない可能性がある。そうした貫通血管は,それらが脳の遠位領域に血液を供給しているためにしばしば重要である。従って,血流に対して実質的に不透過性である部分を有している閉塞デバイスは,閉塞デバイスの被覆領域が動脈瘤の頚部上だけに配置されて貫通血管の上方には配置されないことを保証するために,血管系の中で展開する前に,閉塞デバイスが極めて正確に方向付けられなければならないという意味で閉塞手技がより困難になる。閉塞デバイスの位置決めに関するこのレベルの制御は,器械類が頭蓋内療法に必要とされるサイズ範囲である場合には特に困難である。(段落【0021】

そこで,図3A~3Dは,動脈瘤の頚部上方にとどまる閉塞デバイスの部分が,閉塞デバイスが親血管中で展開された後に閉塞デバイスの残りの部分より血流に対する透過性が小さくされた本発明による実施態様を示している。図3Aは,閉塞デバイス36がその全長を通して血流に対して有意に透過性であるように構成されていることを示している。・・・(段落【002
2】


図3Aはさらに又,デバイス36の展開に続くステップを実施する前に塞栓物質を動脈瘤16の嚢内に満たす任意のステップを示している。例えば,マイクロカテーテル40を任意に管腔12内に挿入し,閉塞デバイス36内の孔を通し,動脈瘤16の頚部18を通過させ,動脈瘤16の嚢内に導くことができる。その後マイクロカテーテル40を使用して塞栓剤,又は他の塞栓物質(例えば,コイル,液性ポリマー材料,又は他の塞栓物質)を動脈瘤16の嚢内に注入して血栓形成を促進することができる,又は動脈瘤16内で塊を形成させることができる。(段落【0023】)
次に図3Bを参照すると,膨張可能部材42は折畳まれた姿勢で動脈瘤16の近位領域へ管腔12を通して挿入される。膨張可能部材42は,好ましくはその外部に解放可能に固定されている,膨張可能部材42と一緒に拡開可能及び収縮可能である閉塞材料又は閉塞物質(被覆材料44)を有している。(段落【0024】)
被覆材料44は,閉塞デバイス36の内面へ適用するために適した適切な被覆材料若しくは物質であるのがよい。例えば,被覆材料44はその外面上に付着特性を有する,又はそこに適用された接着剤を有する適切なポリマー材料スリーブを用いることができる。いずれの場合においても,膨張可能部材42は被覆材料44と一緒に閉塞デバイス36内に挿入される。(段落【0025】

図3Cは,閉塞デバイス36がいったん内側に挿入された後,膨張可能部材42が閉塞デバイス36の内径に近い外径を有する形状に膨張させられることを示している。これによって被覆材料44は閉塞デバイス36の内面に接触するようになる。さらに,被覆材料44は,好ましくは閉塞デバイス36の内面に付着する特性を有している。(段落【0026】)
図3Dは,被覆材料44がいったん閉塞デバイス36の内側で展開すると,膨張可能部材42は,被覆材料44を閉塞デバイス36の内面上に残して被覆材料44から離れるように収縮することを示している。膨張可能部材42は,その後動脈瘤16の頚部18に近位の領域でのみ被覆された閉塞デバイス36を残して管腔12から抜去される。(段落【0027】)
上記に説明された方法を用いて管腔12内に被覆部材44を縦方向に位置決めすることは,展開前に被覆材料で被覆されている拡張可能閉塞デバイスの正確な位置決めより実質的に複雑ではないことは理解されるであろう。これによって被覆材料44は,動脈瘤16の領域において親血管14を貫通する重要な貫通血管38を被覆することなく注意深く位置決めされることができる。さらに,この方法によって被覆材料44の縦方向の長さを挿入前に容易に調整することができる。(段落【0028】)
図5に示された実施態様では,閉塞デバイス52は第1部分66と第2部分68とを有している。第1部分66は,血流に対して実質的に透過性となるのに十分な大きさの孔をその中に有している材料,撚り合せ(ブレード),メッシュ又はその他の物質から形成されている図1Aにおいて示された閉塞デバイス10の第1部分20に類似している。他方,部分68は,部分66に比較して血流に対する透過性が小さく,実質的に血流に対して不透過性であってよい。ある実施態様では,部分68は閉塞デバイス52の展開前に閉塞デバイス52の部分68上に被覆部分が存在するときに動脈瘤62の頚部64を実質的に被覆するために閉塞デバイス52に取り付けられている被覆材料を含んでいる。図3A~3Dに示された実施態様と同様に,被覆部分68もまた閉塞デバイス52が管腔54内で展開された後に閉塞デバイス52に適用することもできる。被覆部分68が閉塞デバイス52の内面に適用される例では,好ましくは分岐した拡張可能素子(若しくはバルーン)が動脈瘤62の頚部64を被覆するために適用されるようにその適切な領域に取り付けられた被覆部分と一緒に使用される。(段落【0035】)
ここで説明された閉塞デバイスの他の実施態様と同様に,閉塞デバイス52は動脈瘤62に塞栓物質が満たされる場合の治療において使用できるが,或いは又単に流路変更器として単独で使用することもできる。いずれの場合も,血流は動脈瘤からそらされ,血液は動脈瘤内で血栓を形成する。さらに,細胞増殖は閉塞デバイス52の表面に沿って動脈瘤の頚部上方で促進される。(段落【0044】)
(2)

甲1発明の内容
上記(1)によれば,甲1発明の内容は,本件審決が認定したとおり(前記第
2の3(2))であると認められる。
(3)

原告の主張に対する判断
原告は,甲1発明について,本件審決が認定した内容に加えて,塞栓デバイスが頭蓋内に送達される前には被覆材料及び塞栓物質であるコイルを有していないとの構成を認定すべきであるとして,縷々主張する(前記
第3の〔原告の主張〕2)

しかしながら,原告が主張する上記構成は,被覆材料及び塞栓物質であるコイルが塞栓デバイスに備えられる時期をその内容とするものであり,本件補正発明に係る構成要件Kに対応する構成であるといえるところ,前記1で検討したとおり,本件補正発明は,パッチ及び塞栓コイルが頭蓋内
ステントに備えられる時期に関する構成を発明特定事項として含むものではないというべきである。
そして,一般に,進歩性判断における引用発明の認定は,出願に係る発明の発明特定事項に相当する事項を過不足なく認定すれば足り,当該発明特定事項との対応関係を離れて必要以上に限定して認定する必要はない
というべきである。
そうすると,本件補正発明と対比される甲1発明について,原告が主張する上記構成を認定する必要はないというべきである。

(4)

以上によれば,原告の主張はいずれも採用することができない。
小括
以上検討したところによれば,甲1発明の認定について,本件審決の判断
に誤りはない。
3
本件補正発明と甲1発明との一致点及び相違点の認定について
(1)

原告は,
本件補正発明と甲1発明との一致点及び相違点について,
相違点

aないしcを認定すべきであると主張する(前記第3の〔原告の主張〕3)が,前記1及び2で検討したところによれば,上記一致点及び相違点は,本
件審決が認定したとおり(前記第2の3(3))であると認められる。(2)

したがって,
本件補正発明と甲1発明との一致点及び相違点の認定につい

て,本件審決の判断に誤りはない。
4
容易想到性について
(1)

周知技術
甲2公報に記載の技術的事項
甲2公報には,発明の名称を動脈瘤治療システム,デバイスおよび方法とする発明に関し,発明の詳細な説明として,次のとおりの記載がある(甲2)


動脈瘤を治療する他の血管内技術として,動脈瘤のネックを通る血流を制限するデバイスの使用がある。・・・血管に近接する形態の動脈瘤は,この方法で動脈瘤を治療することにより塞栓される。したがって,デバイスを正確に配置できることは,治療が成功を収めるために重要である。(段落【0004】


このような血管内デバイスは,動脈瘤のみをカバーするように正確に配備され,目標動脈瘤に隣接する血管または副枝血管に与える干渉を制限することが有利である。(段落【0006】


簡単にいえば一態様では,本発明は円筒状の血管内動脈瘤治療デバイスに関する。本発明のデバイスは,流体流制限部分すなわちパッチを備えた拡大可能なスリーブすなわちスカフォードを有し,パッチは,スリーブが血管内に配備されたときにスリーブの少なくとも一部を通る流体流を阻止するようにスリーブ上に配置される。またデバイスは,スリーブ上に配置された1つまたは複数の放射線不透過性マーカを有し,該マーカは,血管系内にスリーブを配備すると例えばX線透視装置によりマーカを観察する間にパッチの正確な方向を決定できるように,パッチに対して一定の関係を有している。(段落【0007】)

デバイス10は,スカフォード12と,流体流制限領域すなわちパッチ14と,放射線不透過性マーカ16とを有している。

(段落
【0017】

頭蓋内血管系は非常にデリケートである。・・・血管開口すなわち動脈瘤のアクセスポートへのパッチ14の正確な配置が,X線透視装置を介して視認される放射線不透過性マーカ16により案内される現場回転(in-siturotation)により達成される。・・・(段落【0020】

動脈瘤治療デバイス10の近位端26および遠位端28には,1対の放射線不透過性マーカ16が配置されている。マーカ16は,配備中の膜14の回転位置を表示すべく,デバイス10に配置される。・・・マーカ16は,デバイス10の対向端部26,28および対向側部30,32に配置される。遠位側マーカ16は頂側30に配置され,一方,近位側マーカ16は底側32に配置される。マーカ16の配置は,パッチ14に対して定められた関係を有し,血管系内にスリーブ10を配備したときにパッチ14の位置を決定する。他の放射線不透過性構造を考えることもでき,それらの幾つかをより完全に後述する。(段落【0025】)
デバイス10の配備により,隣接血管38への血流を阻止することなく動脈瘤の治療が行われる。フレームの遠位端および近位端に配置された放射線不透過性マーカ16(図1A,図3A,図4A,図5Aおよび図6参照)は,動脈瘤嚢36に対するデバイス10(したがってパッチ12)の軸線方向位置を医者に表示することができる。これは,デバイスが頭蓋内に配備される場合に特に重要である。頭蓋内血管内の血流が好ましくなく制限されると,患者に重大な破壊的作用を及ぼすため,デバイス10の適正な配置を行うことは重大である。・・・(段落【0028】

ここで図10-図17を参照すると,種々の形態の放射線不透過性マーカ16を備えたデバイス10の幾つかの実施形態が示されている。・・・

(段落【0029】


・・・別の構成として,放射線不透過性マーカ16はパッチ14上に配置できる。パッチ14の輪郭を含む種々のパターンが考えられる(図14A参照)図14Bおよび図14Cには,。図14Aに示した実施形態の正しい現場配置が示されている。・・・(段落【0032】


甲3公報に記載の技術的事項
甲3公報には,発明の名称を医療用デバイスとする発明に関し,発明の詳細な説明として,次のとおりの記載がある(甲3)

少なくとも1つの放射線不透過性マーカーが上記機械的に拡大可能なデバイス上に提供され得,挿入の間またはその後に上記デバイスの可視性を改善する。・・・

(段落【0033】

1つの実施形態では,上記移植可能な医療用デバイスは,狭窄症損傷および動脈瘤201のための頭蓋内ステント202および送達システムである。・・・この頭蓋内ステントの放射線不透過性は,金または白金から作製される放射線不透過性マーカー205を含むこと,またはステント202を白金/イリジウム/タングステン合金から作製することにより提供され得る。動脈瘤201を処置するためのステント202は,それらの本体の中央に特別のタイプの白金「スターマーカー204を有し,動脈瘤頸部201に対するステント202の正確な指標および整列を支援し,そして動脈瘤201とのさらなる操作を可能にする。

(段落
【0048】


図3Aに示されるように,頭蓋内ステント202は,動脈瘤201の位置に配置される。膜203はステント202を部分的に被覆し,そして動脈瘤201の頸部をシールするように位置決めされる。放射線不透過性マーカー204は,ステント202の中央に位置され,操作および操作後の検査の間にステント202の可視性を提供する。・・・(段落【004
9】


甲4公報に記載の技術的事項
甲4公報には,
発明の名称を
多層血管閉塞コイル
とする発明に関し,
発明の詳細な説明として,次のとおりの記載がある(甲4)

血管閉塞部材(100)に使用される材料は,任意の広範な種類の材料であり得る;好ましくは,ワイヤは,金属またはポリマーのような放射線不透過性材料である。一次コイル(102)を構成するワイヤに適する金属および合金としては,白金族の金属,特に白金,ロジウム,パラジウム,レニウム,ならびにタングステン,金,銀,タンタル,およびこれらの金属の合金が挙げられる。これらの金属は顕著な放射線不透過性を有し,そしてそれらの合金では,可撓性と剛直性とが適切に混じり合うように構成され得る。・・・(段落【0022】


コイルは,ダクロン(Dacron)(ポリエステル),ポリグリコール酸,ポリ乳酸,フルオロポリマー(ポリテトラフルオロエチレン),ナイロン(Nylon)(ポリアミド),またはさらに絹のような,放射線透過性の繊維またはポリマー(または,放射線透過性または放射線不透過性の繊維で被覆された金属糸)から作製され得る。・・・(段落【0026】



甲5公報に記載の技術的事項
甲5公報には,
発明の名称を
動脈瘤治療デバイス
とする発明に関し,
発明の詳細な説明として,次のとおりの記載がある(甲5)

・・・典型的な血管閉塞デバイス及び材料は,白金マイクロコイル,ブタの毛,マイクロフィブリルコラーゲン,種々の高分子剤,材料懸濁液及びその他の空間充填材料を含む。・・・

(段落【0004】


・・・図2及び3は,動脈瘤内又は動脈瘤近傍に塞栓を人工的に作ることによって,動脈瘤を修復するために使用される従来技術のデバイスを示す。・・・図2は血管14と連通する動脈瘤10を示す。図示されるように,血管閉塞デバイス20は,動脈瘤窩洞18内に配置される。典型的には,マイクロカテーテル又はその他のデバイスを使用して,血管閉塞デバイス20が動脈瘤窩洞18内へ導入又は挿入され,それによって,血管14から血液を受けることのできる動脈瘤の容積が減少させられる。・・・(段落【0021】

・・・図21に示されるように,動脈瘤内頚部ブリッジ構造94の適用の前後において,材料104を動脈瘤に挿入することができる。そのような材料104としては,例えば,ヒドロゲル,ブタの毛,マイクロフィブリルコラーゲン,種々の高分子剤,材料懸濁液,金属又は放射線不透性材料及びその他の空間充填材料などの複数の材料が含まれる。(段落【0030】


甲6公報に記載の技術的事項
甲6公報には,発明の名称を活性化可能で生体活性の移植可能な医療装置およびその使用方法とする発明に関し,発明の詳細な説明として,次のとおりの記載がある(甲6)

種々のコイルの形態を採る閉塞装置は螺旋状に巻かれているコイル,不規則に巻かれているコイル,コイルの中に巻かれているコイルまたはその他の類似のコイルの形態にすることができる。・・・これらのコイルは一般にプラチナ,金,タングステンまたはこれらの金属の合金等のような種々の放射線不透過性の金属材料により形成されている。多くの場合に,一定の脈管または動脈瘤の中の血流をさらに完全に閉塞するか部分的に閉塞するために,幾つかのコイルがその脈管の中またはその動脈瘤の中の所定の場所に配置される。さらに,これらのコイルにおける血栓の成長はそれらのコイルの閉塞作用をさらに高める。(段落【0005】)
これまでに,幾つかの塞栓コイルが一定の配給カテーテルの先端部の中に配置されて,このカテーテルの先端部が適当に位置決めされた後に,上記コイルを,例えば,一定のガイドワイヤ等により上記カテーテルの先端部から押し出すことが可能になり,これにより,そのコイルが所望の場所に放出される。このような塞栓コイルの配置の処置はそのコイルの移動がモニター可能になり,そのコイルが一定の所望の場所に配置可能になるようにX線透視による可視化により行なわれる。(段落【0006】)
図4A乃至図4Cは本発明を利用している一定の方法を概略的に示している。・・・また,図4Bは動脈瘤26の中に一定の最終の塞栓コイル28を含む多数個の脈管閉塞コイルを位置決めするために用いられている配給カテーテル24を示している。(段落【0024】)

乙5の文献に記載の技術的事項
乙5の米国特許公報(米国特許出願公開第2007/0142859号
明細書)には,次のとおりの記載がある(乙5)

図1A~図1Dに,塞栓コイル本体12と,塞栓コイル本体12に取り付けられた繊維束18およびコーティング20を含む塞栓コイル10の基本形状を示す。塞栓コイル本体12は,ワイヤ17(例えば,白金ワイヤ)の巻線(例えば,巻線14,15,16)で形成されている。繊維束18は,繊維22(例えば,ポリエステル繊維)で形成されている。コーティング20は,コイル本体12の外側表面24上に配置され,繊維束18を封入している。塞栓コイル10は,例えば,塞栓術に使用されてもよく,および/または1つまたはそれ以上の治療薬を標的部位に送達するために使用されてもよい。・・・。(段落[0066])

ある実施形態において,コーティング20は,1つまたはそれ以上の放射線不透過性材料を含むことができる。本明細書では,放射線不透過性材料は,約10g/cm3またはそれ以上(例えば,約25グラム/cm3以上,約50g/cm3以上)の密度を有する材料を指す。コーティング20が1つまたはそれ以上の放射線不透過性材料を含むいくつかの実施形態では,塞栓コイル10が被検体内にあるようなときに,X線透視下での向上された視認性を示すことができる。ある実施形態では,放射線不透過性造影剤を使用することなしにX線透視を行うことができる。放射線不透過性材料は,例えば,2004年5月27日に公開され,発明の名称が「塞栓術であり,Riouxほかによる米国特許出願公開第2004/0101564号に記載されており,参照することにより本明細書に組み込まれる。(段落[0088]



さらなる例として,いくつかの実施形態において,塞栓コイルは,1つまたはそれ以上の放射線不透過性マーカーを含むことができる。放射線不透過性マーカーは,例えば,塞栓コイルの1つまたはそれ以上の巻線に取り付けられることができる。(段落[0179])

乙6の文献に記載の技術的事項
乙6の公表特許公報(特表2009-509661号公報)には,発明の名称を被覆された血管閉塞装置とする発明に関し,発明の詳細な説明として,次のとおりの記載がある。
図1Aは,代表的な血管閉塞装置10を示しており,閉塞要素は,コイル又は糸を束ねた形状のコイル状に巻いた空間充填構造要素14を含んでいる。図1Bは,図1Aの空間充填構造要素14の糸部分(斜線領域)の断面を示しており,空間充填構造要素14の表面22が複数の穴26を有するポリマー材料18で被覆されている状態を示している。被覆されている空間充填構造要素14は,少なくとも1つのバイオ活性剤が部分的に詰められている。・・・。(段落【0031】)
血管閉塞装置は,更に,血管造影による可視化を容易にするための放射線不透過性及び/又はMRI適合性マーカー材料を含んでいてもよい。放射線不透過性マーカー材料は,任意の態様の血管閉塞装置及び/又は多孔性ポリマー材料18に組み込むことができる。放射線不透過性マーカー材料は,血管閉塞装置のどの部分にでも物理的又は化学的に取り付けることができる。マーカー材料は,例えば,コイルなどの閉塞要素18の一部であってもよいし,その上又は中に外生的に組み込んでもよい。それらは,液体形態,粉末形態(例えば,硫酸バリウム),又は閉塞装置を放射線不透過性にするのに適した任意の他の形態に組込み又は導入することができる。(段落【0087】)

乙7の文献に記載の技術的事項
乙7の米国特許公報(米国特許出願公開第2013/0035665号明細書)には,次のとおりの記載がある(乙7)

ここで図6を参照すると,細長要素60上の1つのまたは複数のビーズ64も使用してよい。好ましい実施形態において,ビーズ64は,当該技術分野において公知の通りの「塗装により形成された(painted-on)ポリマービーズである。本発明の一実施形態によると,1つまたは複数のビーズ64は,X線不透過性または音波発生添加物を含むポリマーでコーティングされている。(段落【0049】


より広義では,細長要素の任意の部分(あるいはそれに対して加えられた任意の構造的修正)が,全ての目的のために参照により本明細書に援用されている特許文献5中で開示されているものなどの,移植中および移植後の細長要素の画像処理または検出を増強させるX線不透過性または音波発生要素を含んでいてよい。好ましいX線不透過性マーカーは,タングステン,金,白金などのうちの1つ以上で構成されてよい。細長要素が移植後に除去可能であってよい本発明の利用分野にいては,X線不透過性要素がきわめて有利であるかもしれない。(段落【0050】)

図7Bに示されているように,カテーテル75は,ステント76を通って送られるのではなく,むしろ血管71の壁とステント76の間に位置づけされてよい。細長要素70は,カテーテル75の先端部または遠位端部ではなくむしろ,カテーテル75の側壁アパーチャ73を介してカテーテル75から退出してよい。カテーテル75は,側壁アパーチャ73を介して一般に半径方向にカテーテル75から退出するように細長要素70を漸進的に導くために内部傾斜路構造(図示せず)を含んでいてよい。X線不透過性マーカーを,(内部傾斜路を含めた)カテーテル75上および細長要素70上のさまざまな場所に位置設定して,動脈瘤頸部74との関係におけるカテーテルアパーチャ72/73の位置特定を補助することができる。(段落【0055】)

乙8の文献に記載の技術的事項
乙8の公開特許公報(特開2004-223268号公報)には,発明の名称を生物吸収性重合体ベースのコイルによる血管内炎症性応答法
とする発明に関し,
発明の詳細な説明として,
次のとおりの記載がある
(乙
8)

脳の動脈瘤は,成人の重大な致命的疾患である非外傷性くも膜下出血(SAH)の最も一般的な原因である。北米では,小のう状動脈瘤の破裂が一年間でSAHのうちの25000の新しい症例を占めている。動脈瘤は,顕微外科手術によって切除することが,この疾患の治療法の第一級の基準と考えられてきた。最近,動脈瘤を血管内で治療する方法が別法として容認されてきた。頭蓋内循環系にアクセスできるマイクロカテーテルが入手できるようになったので,動脈瘤に白金製の柔軟な取外し可能なコイル(グーリエルミの取外し可能なコイル(GuglielmiDetachableCoils)GDC)を充填することによって動脈瘤を取り除くことが可能になった。)GDCシステムを使用すると白金製コイルの動脈瘤内への送達と取外しを制御することができる。(段落【0003】)
本発明は,少なくとも1種の生物適合性でかつ吸収性の重合体で少なくとも一部が構成された分離可能なコイルと,該分離可能なコイルと連結されて同コイルを選択された身体内腔中に配置する配置装置を使用して,増減する生物的細胞応答性を調節する血管内炎症性応答法の発明である。すなわち,この発明は,制御された刺激を細胞に与えることにより,細胞の創傷治癒作用を促し,器質化と瘢痕形成を生じさせて,動脈瘤の治癒を達成しようとするものである。上記の生物適合性で吸収性の重合体は,動脈瘤内の炎症性応答と動脈瘤の治癒を促進する。この血管内炎症性応答法においては,血管内皮細胞成長因子,塩基性繊維芽細胞成長因子若しくはいくつもの成長因子の混合物などの成長因子またはサイトカイン類を保持してもよい。(段落【0012】)
一つの実施態様において,上記のコイルは,生物適合性でかつ吸収性の重合体で構成され,その上に放射線不透過性材料が配置されている。あるいは,上記のコイルは放射線不透過性材料で構成され,その上に生物適合性でかつ吸収性の重合体が配置されている。(段落【0014】)
放射線不透過性を達成するため,上記生物吸収性重合体のコイルは,タンタルまたは白金のような放射線不透過性材料で被覆したりまたはこれら材料と混合してもよい。上記生物吸収性の重合体自体は白金またはニトノール(nitonol)などの金属製のコイルまたはワイヤ上に付着させたりまたは被覆してもよい。(段落【0021】)

認定される周知技術
上記アないしケの各文献によれば,次の各事項は,本件優先日当時,血管内ステントを用いた脳動脈瘤の治療の技術分野における周知技術であ
ったと認められる。
(ア)

医師がX線等により動脈瘤の頸部をシールする膜の位置を確認する
ことができるように,膜の部分に放射線不透過マーカーを配置すること(上記ア及びイ)
(イ)

医師がX線等により動脈瘤の嚢内に埋める塞栓コイルの位置を確認
することができるように,塞栓コイルを放射線不透過のものとすること(上記ウないしオ)

(ウ)

上記(イ)と同様の目的を達するための方法として,
塞栓コイル上に別

部材として放射線不透過マーカーを取り付ける方法があること(上記カないしケ)
(2)

容易想到性
前記3のとおりの相違点に係る本件補正発明の構成は,①パッチ又はパッチの境界線に沿って配置された放射線不透過マーカー(第1の放射線不透過マーカー)及び②塞栓コイル上に配置された放射線不透過マーカー(第2の放射線不透過マーカー)である。


甲1公報の段落【0004】及び【0028】の記載内容によれば,甲1発明においては,医師が血管内ステントを用いて脳動脈瘤を治療する際に,動脈瘤の領域と被覆材料(パッチ)との位置関係や,脳動脈瘤内に挿入された塞栓物質であるコイルの位置関係を正確に把握することが,技術的課題とされているものと認められる。そうすると,甲1公報に接した当業者は,甲1発明において,上記の各位置関係を正確に把握するための構
成を採用することを動機付けられるものといえる。
そして,上記(1)コ(ア)によれば,本件優先日当時,医師が脳動脈瘤の頸部を塞ぐパッチの位置関係を正確に把握するために,パッチに放射線不透過マーカーを配置することは,血管内ステントを用いた脳動脈瘤の治療の技術分野における周知技術であったと認められる。そうすると,上記当業
者は,上記①の構成を採ることを容易に想到し得たものといえる。また,上記(1)コ(イ)によれば,本件優先日当時,医師が脳動脈瘤内に挿
入された塞栓コイルの位置関係を正確に把握するために,塞栓コイル自体を放射線不透過のものとすることは,血管内ステントを用いた脳動脈瘤の治療の技術分野における周知技術であったと認められる。そして,塞栓コイル自体が放射線不透過のものであれば,塞栓コイルの表面上に放射線不透過マーカーとして機能する材料が配置されていると認めることがで
きるし,仮にそうでないとしても,塞栓コイルの位置関係を正確に把握するという技術的課題は,塞栓コイル自体を放射線不透過のものとする構成を採るのではなく,塞栓コイル上に放射線不透過マーカーを配置するという上記②の構成を採ることによっても解決することが可能であるといえるにすぎないところ,これらの構成は態様が大きく異なるものではない上,
上記(1)コ(ウ)のとおり,上記②の構成も周知技術であったと認められることからすれば,当業者は,上記のいずれの構成も適宜選択し得たものというべきである。そうすると,上記当業者は,上記②の構成を採ることを容易に想到し得たものといえる。

以上によれば,甲1公報に接した本件優先日当時の当業者は,甲1発明及び上記の各周知技術に基づいて,前記3のとおりの相違点に係る本件補正発明の構成を容易に想到し得たものと認められる。

(3)

原告の主張に対する判断
原告は,甲4公報ないし甲6公報のほか,甲1公報ないし甲3公報においても,上記②の構成は記載も示唆もされていない,配置との用語の意
味からすれば,塞栓コイル自体を放射線不透過のものとすることは上記②の構成には当たらない旨主張する(前記第3の〔原告の主張〕4(2)ア及びイ)

しかしながら,上記(2)で検討したとおり,当業者は,甲4公報ないし甲
6公報の記載から周知技術であると認められる塞栓コイル自体を放射線不透過のものとする構成によって塞栓コイルの表面上に放射線不透過マ
ーカーとして機能する材料が配置されていると認識することができるし,仮にそうでないとしても,これと態様が大きく異なるものではない上記②の構成も適宜選択し得たものといえる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。

原告は,被告が乙5ないし乙8の各文献を基に塞栓コイル上に放射線不透過マーカーを取り付ける方法が周知技術であったと主張することは許されない旨主張する(前記第3の〔原告の主張〕4(2)ウ)

しかしながら,原告が指摘する裁判例は,拒絶理由通知において何ら摘示されなかった周知技術を審決において当然に引用発明として用いることはできない旨を説示するものであるところ,上記(2)で検討したところ
に照らせば,本件とは事案を異にするというべきである。そして,審決取消訴訟においては,審判手続において表れなかった資料を新たに証拠として提出することは原則として許されないが,いかなる例外もなく絶対に許されないというわけではなく,例えば,当業者にとっては,刊行物をいちいち挙げるまでもないほどの周知慣用の事項について,審決取消訴訟の段
階で,これを立証するために補充的に新たな資料を提出することは許されると解すべきところ,前記⑵イで認定したとおり,乙5ないし乙8の各文献は被告の主張を立証するために補充として提出された証拠と認められるから,本件において,被告が乙5ないし乙8の各文献を周知技術の立証のために本件訴訟において新たに証拠として提出したことが許されない
というべき事情は存しない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(4)

小括
以上検討したところによれば,甲1公報に接した本件優先日当時の当業者
は,前記3のとおりの相違点に係る本件補正発明の構成を容易に想到し得たものと認められる。

したがって,本件補正発明について,進歩性を欠くことを理由に独立特許要件を満たさないとした本件審決の判断に誤りはない。
5
結論
以上によれば,原告が主張する取消事由は,理由がない。

よって,原告の請求は,理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部

裁判長裁判官
東海林保中平健都野
裁判官

裁判官

道紀
(別

紙)
本願明細書図面目録

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

(別

紙)
甲1公報図面目録

【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

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