判例検索β > 令和2年(う)第851号
業務上横領被告事件
事件番号令和2(う)851
事件名業務上横領被告事件
裁判年月日令和3年5月21日
法廷名東京高等裁判所
結果破棄自判
判例集等巻・号・頁第73巻1号1頁
原審裁判所名東京地方裁判所
原審事件番号令和1刑(わ)1255
判示事項業務上占有者の身分を有しない被告人が,会社の預金を業務上占有する身分を有する共犯者と共謀して会社の預金を横領した場合の公訴時効
裁判要旨業務上占有者の身分を有しない被告人が,会社の預金を業務上占有する身分を有する共犯者と共謀して会社の預金を横領した場合において,公訴時効の基準となる刑は,成立する業務上横領罪(刑法253条)の刑であり,科すべき単純横領罪(同法252条1項)の刑ではない。
全文全文
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2021-05-21
情報公開日2022-02-06 19:19:38
裁判所の詳細 / 戻る / PDF版
令和2年

第851号

令和3年5月21日

業務上横領被告事件
東京高等裁判所第8刑事部判決

主文
原判決を破棄する
被告人を懲役2年に処する
理1由
本件控訴の趣意及び論旨等
本件控訴の趣意は,検察官齋藤隆博作成の控訴趣意書に,これに対する答弁は,弁護人野島梨恵作成の控訴答弁書,同補充書にそれぞれ記載されたとおりである。論旨は,業務上占有者の身分を有しない被告人に業務上横領罪(刑法253条)が成立する場合の公訴時効の基準となる刑は同罪の刑と解すべきであるのに,単純横領罪(同法252条1項)の刑により公訴時効が完成しているとして被告人に免訴を言い渡した原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の解釈・適用の誤りがある,というのである。

2


当裁判所の判断
原判決が免訴の言渡しをする前提として認定した本件犯罪事実は,被告人は,株式会社B(以下「Bという。)の取締役兼総務経理部長として同社の経理業務を統括していたC(以下Cという。)と共謀の上,平成24年7月5日,東京都豊島区(以下省略)株式会社D銀行E支店に開設されたB名義の普通預金口座の預金をCにおいて同社のために業務上預かり保管中,東京都豊島区(以下省略)Fビル6階B事務所において,自己の用途に費消する目的で,Cにおいて,情を知らない同社経理担当職員G(以下Gという。)に指示して,インターネットバンキングを介し,上記口座から,Cらが管理する東京都豊島区(以下省略)株式会社D銀行H支店に開設されたI株式会社名義の普通預金口座に,現金2415万2933円を振込入金させ(以下本件振込という。),もってこれを横領した。」というものである。これによれば,被告人は,Bの預金を業務上占有する身分を有していた共犯者Cと共謀し,同社の預金を横領したものであるから,業務上占有者の身分を有しない被告人については,共同正犯として,刑法65条1項,60条により業務上横領罪が成立し,同法65条2項により単純横領罪の刑を科すべきである,とするのが確定した判例である(最高裁昭和32年11月19日判決・刑集11巻12号3073頁)。


ところで,法は,人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く)とそれ以外の罪とに対象犯罪を分けた上で,当該犯罪の法定刑を基準として公訴時効期間を定め(刑訴法250条1項,2項),また,刑法による加重減軽が行われる場合であっても,そのような加重減軽をしない刑に従って公訴時効期間の規定を適用すべき旨定めている(同法252条)のであるから,公訴時効における時効期間は,その犯罪事実自体の罪種及び法定刑による軽重を基準にして定められていることは明らかである。したがって,公訴時効期間の基準となる犯罪事実とは,成立する犯罪事実であって,科刑の基準となる犯罪事実ではないと解すべきこととなる。そして,このような解釈は,時の経過がもたらす犯罪の社会的影響の希薄化という公訴時効制度の中核的趣旨に合致するものと解される。また,共犯の場合の公訴時効は,最終の行為が終わった時から,すべての共犯に対して時効の期間を起算する(同法253条2項)とされ,共犯者の一人に対してした公訴提起による時効の停止は他の共犯者に対してもその効力が及ぶ(同法254条2項)とされているところ,これらは,公訴時効の適用に関し,共犯者間の不公平を避け,すべての共犯者を統一的に取り扱うための規定であると解され,上記解釈は,これらの規定の趣旨にも沿うものといえる。


これを本件についてみると,前記のとおり,業務上占有者の身分を有しない被告人が,その身分を有する共犯者の犯罪行為に加功したため,被告人につき,刑法65条1項,60条により業務上横領罪が成立すると解される以上,公訴時効の成否は,成立した犯罪である業務上横領罪の法定刑(10年以下の懲役刑)を基準とすべきところ,その罪の公訴時効期間は7年であるから(刑訴法250条2項4号),本件公訴提起がされた令和元年5月22日の時点において公訴時効は完成していないと認められる。



しかるに,原判決は,公訴時効は各被告人ごとに適用される法定刑を基準とするという解釈を示した上で,業務上占有者の身分を有しない被告人に対しては,刑法65条2項により同法252条1項の単純横領罪の刑が科されるのであるから,同罪の法定刑を基準として公訴時効の成否を判断すべきであり,被告人に対する時効期間は5年であるから,本件公訴提起の時点において,既に公訴時効は完成していた旨判断した。しかし,原判決のかかる判断は,既に述べたところから明らかなとおり,刑訴法250条等の解釈,適用を誤るものであって,是認できない。



この点に関し,原判決は,業務上占有者の身分を有しない被告人については業務上横領罪の共同正犯が成立すると説示する一方,前記昭和32年の最高裁判例が,その法令適用において,当該被告人の所為が刑法253条,60条,65条,252条1項に…該当すると判断しているのは,業務上占有者の身分を有しない被告人に成立する罪の法定刑を刑法252条1項のそれとする趣旨と解される,と説示しているが,このような説示は,前記最高裁判例を正解しないものといわざるを得ない。
また,原判決が挙げる裁判例(名古屋高裁昭和45年7月29日判決)は,原判決と同旨と解されるものの,同裁判例は,参照判例として,最高裁昭和35年12月21日判決・刑集14巻14号2162頁を引用しているところ,同判例は,両罰規定が適用される事案において,違反行為者とその事業主たる法人又は人は別個の刑事責任を負うとの理解に立った上で,その公訴時効を,それぞれに対して定められた法定刑により決することが罪刑法定主義の要請に適合することなどを判示したものであるから,業務上占有者の身分を有しない者が,その身分を有する共犯者の犯罪行為に加功し,業務上横領罪の共同正犯が成立する場合とは事案を異にしており,参照判例として引用することが適切であったとは解されず,上記裁判例を挙げる原判決の説示も適切ではない。
なお,原判決は,前記昭和32年の最高裁判例の示す規範の構造によれば,

二人以上共同して,いずれかの者が業務上占有する他人の物を横領したときは,業務上横領の罪とし,その物を業務上占有する者については10年以下の懲役に処し,その身分なき者は5年以下の懲役に処する。

との条文と同じになるとして,身分者に対する法定刑と,非身分者に対する法定刑が異なる場合であって,一つの罪名の下に,それぞれ身分に応じた法定刑が規定された罪が成立しているとの解釈を示しているが,このような解釈も,前記最高裁判例を正解しないものであって,採用することはできない。
以上のとおりであり,その他弁護人の主張を踏まえて検討しても,原判決が認定した前記の犯罪事実によれば,被告人に成立する犯罪事実(業務上横領罪)の公訴時効期間は7年(刑訴法250条2項4号)であるから,本件犯罪行為が既遂となって終了した平成24年7月5日から起算し,本件公訴提起がなされた令和元年5月22日当時は時効が完成していなかったにもかわらず,既に公訴時効が完成しているとして被告人に免訴の言渡しをした原判決は,法令の適用を誤ったものであり,その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるから,破棄を免れない。論旨は理由がある。
3
破棄自判
よって,刑訴法397条1項,380条により原判決を破棄し,同法400条ただし書を適用して被告事件につき更に判決することとする(なお,原審において,弁護人及び被告人は,共謀の事実等を争って無罪を主張し,証拠調べが遂げられ,一旦結審された後,弁論が再開され,この段階で初めて公訴時効の成否が争点化され,原判決書においては,公訴時効の成否の判断の前提として,犯罪事実の成否についての判断が示されている。)。

(罪となるべき事実)
原判決が免訴の言渡しをする前提として認定した本件犯罪事実(前記2⑴)のとおり(ただし,Cの役職について,取締役兼総務経理部長とあるのを取締役兼財務経理部長と訂正する。)である。
(証拠の標目)省略
(補足説明)
弁護人は,被告人がCと横領を共謀した事実はなく,被告人は無罪である旨主張し,被告人も原審及び当審公判廷においてこれに沿う供述をするので,検討する。
1
関係証拠によれば,以下の事実が認められる。



被告人は,平成21年11月2日から平成24年6月30日までの間,Bの代表取締役を,Cは,平成20年から平成24年7月23日までの間,Bの取締役兼財務経理部長をそれぞれ務めていた(原審甲第14号証〔以下,単に甲14などと表記する。〕等)。



被告人及びCは,平成23年夏頃,Bの本社で,東京都千代田区(以下省略)を本店所在地とし,Nを代表者とするI株式会社(以下Iという。)の営業員と面談し,Bが所有している店舗や設備等を一旦Iに売却し,その物件を同社がリース会社に売却し,リース会社がその物件をBにリースし,Bがリース料をリース会社に支払うという方法で,Bが資金を有効に使うというセール&リースバック契約に関する商談を行ったが,成約には至らなかった(甲10,11)。


被告人及びCは,平成23年9月頃,Bのグループ企業の役員が出席するグループ会議において,Bの店舗や備品をIに売却し,リースバックする方法により資金調達を行うことを提案し,出席者の了解を得たが,後記⑸の支払委託契約に関する説明はしなかった(甲1,2)。


Bの元従業員であったJ(以下Jという。)は,平成23年9月8日頃,被告人から,I株式会社という名称の会社を設立するので,その会社の代表取締役に就任してはどうかという話を持ち掛けられ,その際,Jの役割については,預金口座の名義人になることのみであって,契約は別の人が行う旨などが説明されて,これを承諾し,その後,Cから同社名義の口座を作るよう指示を受けた(甲9)。被告人及びCは,平成23年9月13日,東京都豊島区(以下省略)を本店所在地とし,Jを名目上の代表取締役とするI株式会社(以下偽Iという。)を設立した(甲15)。なお,同社に活動実態はなく,その預金通帳,キャッシュカード,届出印はCが管理していた(甲9)。



Bが株式会社Pに対する債務の支払をIに委託し,Bは,Iが
出捐する支払委託金額,事務処理費用及び利息合計を分割してIに支払う旨の支払委託契約書2通(2000万円の支払を委託し,2415万円を分割返済する旨の平成23年10月25日付けのもの及び1000万円の支払を委託し,1175万円を分割返済する旨の平成24年4月9日付けのもの)が作成された。各契約書の当事者甲欄には,B代表取締役として被告人の氏名と代表者印が記名捺印され,当事者乙欄には,I代表取締役社長Q(Iの代表取締役のNが,一時名刺等で利用した名前であるが,契約書等では使用したことはないもの)と表記され,代表者印が押捺されているが,乙欄の記名捺印は偽造されたものであり,Bが株式会社Pに債務を負担していた事実もなかった。また,前記各契約書にはIに対する上記分割金の振込先口座として,偽Iの預金口座が記載されていた(甲10)。


平成23年10月27日,Bの関連会社であるRを経由してB関連の資金2000万円が偽Iに集められ,翌28日,偽IからBの口座に2000万円が振り込まれた。被告人の手帳の同日の欄には,I2000万円入金との記載がある(甲20,22)。また,平成24年4月9日,B関連の資金が偽Iに集められ,翌10日,偽IからBに1000万円が振り込まれた(甲19,20)。さらに,Gは,Cの指示を受け,平成23年11月から平成24年6月にかけ,前記各支払委託契約書の約定どおり,Bの預金口座から偽Iに合計703万0400円の分割金を支払った(甲2,5,6)。



Gは,同年6月下旬頃,Cから,被告人が同月末日にB代表取締役を辞任するに当たり,被告人が個人保証していた債務を一括して返済をする必要がある旨の説明を受けた上で,同年7月5日,残債務額から未経過利息額を差し引いた残金を偽Iの口座へ振り込むよう指示を受け,本件振込(2415万2933円)を行った(甲2,5,6)。

2
Cは,原審公判において,大要,以下のとおり供述する。
Bの資金を調達するため,Bの設備等を担保にしてリースバックするという形で融資を受けるべく,被告人の指示で,Iの担当者との面談に同席したが,契約には至らなかった。その後,被告人と共に,RがBから徴収した資金を新たに設立する偽Iに流し,これをBに貸し出した上,高めの金利でBから返済を受け,毎月Rに20万円を返済した残りを被告人と折半して小遣い稼ぎをするということを企て,偽Iを設立した。被告人がBの代表取締役を退任するに際し,Bの債務について個人保証しているので一括返済して欲しいとの被告人の意向を受け,経理担当のGに指示して本件振込を行わせた。その前に,被告人から,Bから送金される金員のうち1200万円を渡して欲しい旨を言われ,偽Iの通帳と印鑑を被告人に渡した。本件振込がされる前日,被告人に対し,あらかじめ銀行に現金の引き出しを伝えておくとスムーズに引き出せることを伝えた。
3
以上のCの原審供述は,活動実態のない,Iと全く同じ名称の偽Iが設立された経緯をよく説明するものであって,Jの検察官調書(甲9)の内容とも符合しており,Bから偽Iに対する金員の振込を根拠付ける偽造された各支払委託契約書にBの被告人の代表者印が押捺されていることや,Bから偽Iへの振込送金状況及び同社からの出金状況,特に,Bからの入金の都度,Cと被告人とで小遣い稼ぎをしようとしていたという供述内容に沿う各金額がATMから入金当日に引き下ろされている状況によく整合しており(甲19),また,被告人方から,Cの作成に係る支払委託等のスキーム(Bから偽Iへの返済金の一部をRの口座に振り込み,残余を被告人とCで折半する旨記載されたもの)に関するメモ(甲22)及び偽Iに対する一括支払額が明示された株式会社I支払明細
と題するメモ(甲23)が,被告人の2011年(平成23年)及び2012年(平成24年)の手帳に在中された状態で発見・押収されていることによっても裏付けられている。
さらに補足すると,Cの原審供述中,被告人から1200万円を渡すように言われ,偽Iの預金通帳と印鑑をあらかじめ被告人に渡し,スムーズな現金引き出しのため,銀行に連絡するよう伝えたとの点も,被告人の2012年(平成24年)の手帳(甲23)の6月26日の欄にCTEL(Iの件),7月3日の欄にI,Factory通帳引継ぎ引出し,J同行,代表印鑑,同月4日の欄に¥1200万DTEL(C)とある各記載によりよく裏付けられている。なお,Jが,同月5日,偽Iの預金口座から1200万円の現金を引き出したことは,払戻請求書の記載から明らかであるが,同人の記憶は曖昧であるものの,同人は,自らの判断で払戻しを行うことはあり得ず,被告人かCの指示を受けて手続をし,払い戻した現金は被告人かCに渡していると思う旨供述(甲9)しているところ,この供述内容にCの上記供述と矛盾するところはない。
以上によれば,Cの原審公判における供述内容は,日時や事実関係の詳細,特に他の第三者供述と齟齬する部分についての正確性までは認められないものの,本件振込の事実及びその経緯に関する大筋(Cには本件振込額の払戻しについての権限がないにもかかわらず,被告人との間で共謀を遂げ,CがGに指示し,業務上預かり保管中であったBの預金を,被告人及びCが自己の用途に費消する目的で本件振込をさせて横領したこと)については,客観的証拠等によって裏付けられており,十分に信用することができる。そして,前記(補足説明)1の事実及び信用することのできるCの原審供述によれば,被告人は,遅くとも,GがCの指示により本件振込を行った平成24年7月5日までにCと共謀を遂げた上,前記罪となるべき事実記載の本件横領行為に及んだものと十分に認定することができる。
4
これに対し,被告人は,原審及び当審公判廷において,偽Iは,Bを退職させられる従業員の受け皿とするために作ったもので,Bの関連会社の資金をBに流し,同社を救済するためのものでもあり,Iという名称にしたことに格別の理由はなく,Cから提案されるままに決めたのかもしれない,支払委託契約書に見覚えはなく,内容を確認しないまま押捺したものかもしれないが,すべてはCに任せていたことであり,本件振込に関しても,Bを退職するに際して,自身が個人保証している債務の解消を依頼したにすぎず,Bから偽Iに対する本件振込がなされたことはあずかり知らないことであるなどと供述する。
しかし,まず,既存のIという会社があることを承知し,同社の営業員とリースバックに関する契約を検討し,その件について,グループ会議で提案までしたにもかかわらず,それと近接した時期において,会社設立に当たり,同社と全く同一の名称を用いることについて,格別の理由がなく,名称決定についての記憶もないなどということは,不自然極まりなく,到底信用することができない。そして,Iとのリースバックの方法による資金調達については,グループ会議で了承をされたにもかかわらず,実際には,その方法によらず,偽Iの銀行口座を振込先とする偽造された支払委託契約書(被告人の代表者印が押捺されたもの)が作成され,被告人はこれに自ら押印をし,これに沿ったBから偽Iに対する入金が繰り返されていた上に,その内容に沿う支払明細メモ(甲23)を自ら所持するとともに,偽IとB(グループ企業を含む。)間の資金移動(平成23年10月27日,同年11月18日)について,Cから報告を受け(被告人も原審において自認している。),その旨手帳に記載もしていた(甲22)というのに,これらの経緯について記憶が定かでなく,説明はできないなどというのも,不自然,不合理である。さらに,本件振込額のおよそ二分の一に当たる1200万円を引き下ろすことについて,これに沿う記載が手帳にあるにもかかわらず,すべてはCが行ったことで,その内容はあずかり知らないなどというのは,時間の経過による記憶の減退等を考慮しても,なお不自然というほかはなく,被告人の原審及び当審供述は信用することができない。したがって,被告人の上記供述を踏まえても,前記認定に合理的疑いを入れるものではない。
弁護人の主張は採用できない。
(法令の適用)
被告人の判示所為は,刑法65条1項,60条,253条に該当するが,被告人には業務上占有者の身分がないので同法65条2項により同法252条1項の刑を科することとし,その所定刑期の範囲内で被告人を主文掲記の刑に処し,原審における訴訟費用を被告人に負担させないことにつき刑訴法181条1項ただし書を適用して主文のとおり判決する。
(量刑の理由)
本件は,被害会社の代表取締役を務めていた被告人が,同社を退職した後,同社の経理業務を統括していた共犯者と共謀の上,共犯者が経理担当職員に指示して,被害会社の預金約2415万円を横領したという事案である。実在する会社と同じ名称の仮装会社を設立し,架空の契約書に基づき,共犯者が被害会社の経理責任者であるという立場を利用して行われたという犯行態様は,計画的かつ巧妙であり,犯行に至る経緯及び動機に酌むべき事情は見当たらず,被害額も高額に及んでいるところ,被告人自身,被害額の約半分を手にしたものであり,犯情は悪い。したがって,被告人の刑事責任には重いものがある上に,被害弁償はなされておらず,反省の情も見受けられないが,犯行当時,被告人は,業務上占有者の身分を有していなかったこと,前科がないことなどをも考慮し,主文のとおりの刑を量定した。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑・懲役4年)
(裁判長裁判官

近藤宏子

裁判官

藤井俊郎
裁判官

三上孝浩)

トップに戻る

saiban.in