判例検索β > 令和2年(ワ)第3840号
損害賠償請求事件
事件番号令和2(ワ)3840
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日令和3年11月25日
法廷名福岡地方裁判所
全文全文
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2021-11-25
情報公開日2022-02-06 19:20:05
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主文
1被告は,原告らに対し,それぞれ1400万円及びこれに対する令和3年9月7日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。2原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は被告の負担とする。
4この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告らに対し,それぞれ1400万円及びこれに対する令和元年12月27日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,学校法人ⓐが開設するⓑ高等学校(以下本件学校という。)在学中に自殺した亡ⓒの保護者である原告らが,被告に対し,ⓒの死亡が学校の管理下において発生した事件に起因する死亡に当たると主張して,独立行
政法人日本スポーツ振興センター法(以下センター法という。)15条1項7号に規定する災害共済給付金各1400万円(独立行政法人日本スポーツ振興センター法施行令〔平成15年政令第369号。以下センター法施行令という。〕3条1項3号〔ただし,平成31年政令第161号による改正前のもの。〕所定の死亡見舞金2800万円の2分の1)及びこれに対する災
害共済給付金支払請求後である令和元年12月27日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)



当事者等

原告ⓓ及び原告ⓔは,ⓒ(平成▲年▲月▲日生の女性。)の両親である。なお,原告らの間には,長女であるⓒ以外に,平成15年生の二女がいる。
(甲1,18①~⑥)



被告は,センター法に基づき設立された独立行政法人である。
関係法令の定め等


いじめ防止対策推進法,センター法,センター法施行令,文部科学省が定める独立行政法人日本スポーツ振興センターに関する省令(以下「本件省令という。)及び被告が定める独立行政法人日本スポーツ振興センター災害共済給付の基準に関する規程(以下本件規程という。乙
1)は,別紙関係法令等(以下,単に別紙という。)記載の内容
を規定している。
災害共済給付金支払請求権の発生要件に関して,センター法は,

学校の管理下における児童生徒等(児童,生徒,学生又は幼児。同法3条)の災害(死亡等)

につき,当該児童生徒等の保護者(学校教育法16条に
規定する保護者等)等に対し,災害共済給付(死亡見舞金等の支給)を行うこと(15条1項7号),学校の管理下における児童生徒等の災害の範囲については政令で定めること(16条2項)を定めているところ,これを受けて,センター法施行令は,災害共済給付契約に係る生徒等が故意に死亡したとき等は,当該死亡に係る災害共済給付を行わないこと(3
条7項本文),ただし,当該生徒等が,いじめ(いじめ防止対策推進法2条1項に規定するいじめ〔学校に在籍する生徒等に対して,当該生徒等が在籍する学校に在籍している等当該生徒等と一定の人的関係にある他の生徒等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為であって,当該行為の対象となった生徒等が心身の苦痛を感じているもの〕をいう。)その他の当
該生徒等の責めに帰することができない事由により生じた強い心理的な負担により故意に死亡したとき等はこの限りでないこと(同項ただし書),災害共済給付に係る災害は,児童生徒等の死亡でその原因である事由が学校の管理下において生じたもののうち,文部科学省令で定めるもの等とすること(5条1項4号)を定め,さらにこれを受けて,本件省令は,上記災害として,学校の管理下において発生した事件に起因する死亡(24条3号)等を定める。

そして,被告は,本件規程により,事件とは,児童生徒等の安全な学校生活を妨げる特別な事実(いじめ,体罰等をいい,児童生徒
の学校生活における通常の対人関係による不和は含まない。)をいうこと,学校の管理下において発生した事件に起因する死亡とは,事件が原因であることが明らかであると認められる死亡をいい,死亡は学校の外で起きているが,原因となった事件は学校の管理下で起きていることが明らかであると認められる場合を含むことを規定している。

被告は,学校法人ⓐとの間で,センター法16条1項所定の災害共済給付契約を締結している。



本件学校への進学等

ⓒは,平成28年4月,本件学校に進学し,1年E組(生徒数39名。うち女子生徒は13名。)に所属するとともに,同学校のバレーボール部に入部した。なお,本件学校のバレーボール部は女子部員の数が少なく,ⓒは,練習時には男子部員と共に選手として参加していたが,男子の試合
時には選手ではなくマネージャーを務めていた。

ⓒは,平成29年4月,本件学校の2学年に進級し,2年D組に所属した。


ⓒの自殺
ⓒは,平成29年▲月▲日午前10時20分頃,北九州市甲区所在のⓕ霊園で自殺を図り,その後,心肺停止状態で病院に搬送されたものの,同日,死亡した(以下本件自殺という。)。(甲4,乙4)


本件自殺に関する調査等

本件学校は,平成29年▲月▲日から同年5月6日にかけて,ⓒと仲が良かったⓖ,ⓗ,ⓘ及びⓙを含む生徒等12名から,ⓒの友人関係について聴き取る背景調査を実施したほか,ⓒが所属していた2年D組の生徒等
に対し,いじめの有無等についてのアンケートを実施した。
また,本件学校は,同年6月7日から同月23日にかけて,ⓒの人間関係等について全校生徒を対象とするアンケートを実施するとともに,同月28日から同年7月13日にかけて,一部の生徒から同アンケートの回答を踏まえた聴き取り調査を行った。

(甲7から10)

本件学校は,平成29年7月31日,福岡県いじめ防止基本方針に基づき,本件自殺について,ⓒに対するいじめの有無や本件自殺の原因等を調査する目的で,学校法人ⓐⓑ高等学校第三者委員会(以下第三者委員会という。)を設置した。
第三者委員会は,ⓒと仲が良かった生徒や担任教諭から聴き取りを行う等した上で,本件学校長に対し,平成30年6月28日,調査報告書(以下報告書①という。甲3)を提出した。
第三者委員会は,報告書①において,○ⓖがⓒに対し,男子生徒との交ⅰ
際が嘘であったと告げなかったこと,○ⓖ,ⓗ,ⓘ及びⓙが,平成29年ⅱ
3月17日の終業式の際にⓒを除外して4人で写真を撮影したこと,○ⅲ
ⓖ,ⓗ,ⓘ及びⓙが,同年▲月▲日にⓒと一緒に昼食をとらなかったことはいずれもいじめ防止対策推進法上のいじめに該当すると認められるが,これらのいじめと本件自殺には因果関係がない等と判断した。

福岡県知事は,平成30年11月1日,本件自殺について再調査を決定し,同月2日に福岡県いじめによる重大事態再調査委員会(以下再調査委員会という。)に対して再調査実施を諮問した。再調査委員会は,上記ア及びイの調査で収集された資料を参照したほか,ⓒの保護者である原告ら,本件学校関係者,第三者委員会委員長,関係生徒等への聴き取りを実施した上で,福岡県知事に対し,令和元年8月16日,重大事態に関する再調査報告書(以下報告書②という。甲
4)を提出した。
再調査委員会は,報告書②において,上記イ記載の○○○に加え,○ⓖⅰⅱⅲ

が,平成29年▲月▲日,同人の教室前の廊下でⓒと言い合いをしたこと,○ⓗが,同月▲日から同月▲日にかけて,ⓒとのLINE上のやり取ⅴ
りにおいてⓖ,ⓘ及びⓙがⓗの悪口を本当に言っていたのか等について言
い合いをしたことは,いずれもいじめ防止対策推進法上のいじめに該当すると認められるが,本件自殺については友人関係のトラブル以外に家庭問題や部活動における悩み等の複合的な要因が考えられ,いじめが本件自殺の主原因とは断定できない等と判断した。


被告に対する災害共済給付金支払請求等

本件学校は,被告に対し,令和元年9月26日,本件自殺について主たる理由は不明である等とした事件調査報告書(以下報告書③という。乙4),報告書①及び報告書②を資料として添付した上で,災害共済給付金(死亡見舞金)の請求を行い,被告は,同請求に係る死亡見舞金支払請求書を同月30日に受領した。

被告は,令和2年1月29日,本件自殺が本件省令24条3号に規定する学校の管理下において発生した事件に起因する死亡に該当するとは認められない等として,災害共済給付金の不支給決定をした。

被告は,原告らが令和2年4月24日に上記ア記載の不支給決定に対して不服審査請求を申し立てたのに対し,同年8月14日,同不支給決定を変更しない旨の決定をした。
(甲11から13)
2争点


本件自殺が学校の管理下において発生した事件に起因する死亡(本件省令24条3号)に該当するか否か



災害共済給付金支払請求権の発生時期及び遅延損害金の起算点

3争点に関する当事者の主張


本件自殺が学校の管理下において発生した事件に起因する死亡に該当
するか否かについて
(原告らの主張)
ⓒは,報告書①及び同②で認定されたいじめを含め,それまで親しくしていたⓖらのグループから仲間外れにされる(はぶかれる)ことによって強い心理的苦痛を受けていた。ⓒは,本件自殺に近接した時期に複数回いじめを受け,原告ⓔや担任教諭にその旨を相談していたほか,自殺の直前にはⓗに対して

あたしになんかあったらⓗとⓖとⓘのせいやけね。後悔してもしらんけ。

という内容のメッセージを送信している(以下本件メッセージという。甲2〔p7〕)のであるから,本件自殺の原因が学校の管理下において発生したいじめであることは明らかである。
これに対し,原告らは平成29年4月10日には離婚しない旨をⓒに伝えており,家庭問題が本件自殺の原因になったとは考えられない。

また,部活動において男子部員らとのトラブルも,本件自殺の主たる原因となるものではないし,仮に本件自殺に何らかの影響を与えていたとしても,それ自体もⓒに対するいじめとして事件(センター法16条2項,センター法施行令5条1項4号,本件省令24条3号)に当たるから,災害共済給付金の支払を否定する事情にはならない。

それゆえ,本件自殺は学校の管理下において発生した事件に起因する死亡と認められる。(被告の主張)
争う。報告書①及び同②でいじめと認定された事実が存在し,それらが事件に該当するとしても,これらの報告書は本件自殺の原因は複合的な要因が考えられる等の見解を示し(前記前提事実⑸イウ参照),本件学校も被告に対し本件自殺の主たる原因は不明であるとの報告書③を提出している
ことからすると,本件自殺の原因が認定されたいじめであることが明らかとはいえない。
ⓒの精神状態が家庭問題を原因として不安定な状態であったことは否定できず,部活動に関する悩みは,いじめや体罰と異なり本件規程上の特別な事実とはいえない(事件に含まれない)ことを踏まえると,本件自殺
が学校の管理下において発生した事件に起因する死亡に該当するとは認められない。


災害共済給付金支払請求権の発生時期及び遅延損害金の起算点について(原告らの主張)

センター法に基づく災害共済給付金の支払請求権は,被告の支給決定によって発生するものではなく,当該事件がセンター法及び関係法令所定の要件を充足する場合には当然に発生するものであり,その履行期は,給付金の支払請求を受けてから,当該請求の審査をするための相当の期間を経過した日であると解される。

本件においては,令和元年9月26日に死亡見舞金の請求が行われているところ,被告が当該請求の審査をするための相当期間は長くとも3か月であるから,原告らが被告に対して有する支払請求権の履行期は同年12月26日とすべきであり,被告はその翌日(同月27日)から遅滞の責任を負う。(被告の主張)

センター法に基づく災害給付金の支払請求権は,被告の支給決定があってはじめて確定的に発生するものであり,その履行期は,判決で支払が命じられる場合には当該判決の確定日とすべきである。
本件においても,遅延損害金の起算点は判決確定の日とすべきである。第3争点に対する判断
1認定事実等
当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認めら
れる事実を総合すると,本件の事実経過は以下のとおりである。


高校1年次の出来事等

1学期
本件学校の1年E組においては,平成28年4月以降,仲の良い女子生徒同士でいくつかのグループが形成されていき,ⓒは,同年夏頃までに,
同クラスの女子生徒であるⓖ,ⓗ,ⓘ及びⓙと仲良くなり,5人で昼食をとる等するようになった。(甲3,4,6から10,原告ⓔ本人)イ
2学期
(ア)ⓒは,遅くとも2学期頃までには,上記ア記載の5人のグループのう
ち,ⓖと共に行動することが多くなった。
(イ)a

ⓖはⓒに対し他校に所属する男子生徒A(報告書①及び報告書②の
表記による。後出の男子生徒E及び男子生徒Fについても同じ。)と交際している旨の嘘をついていたところ,ⓒは,平成28年11月頃に行われたバレーボールの県大会会場においてバレーボール部員として試合に臨んでいた男子生徒Aと遭遇し,同生徒に対しⓖと付き合ってるんでしょと声を掛け,同生徒がこれを否定したにもかかわらず,周囲に聞こえるような大声で何度も同様の質問をした。
b
ⓒは,上記県大会の翌日,ⓖに対し,男子生徒Aと会ってⓖとの交
際について尋ねた旨を述べた。
c
ⓖは,その後,男子生徒Aが所属する他校のバレーボール部は恋愛
が禁止されている旨の情報に接したため,ⓒに対し,真実ではないにもかかわらず,恋愛禁止の規則に違反したために,男子生徒Aが部活動を辞めさせられそうになった旨の話をした。ⓒはⓖの話を聞き,同人と男子生徒Aの交際に支障が生じることを懸念して,ⓖに対して何度も謝罪した。ⓖは,うん,いいよと答
えるにとどまり,ⓒに対し,男子生徒Aとの交際が嘘であること及び
男子生徒Aが部活動を辞めさせられそうになった事実もないことを告げなかった。
(ウ)ⓒは,上記(イ)記載の出来事の後も引き続き5人で昼食をとっていたが,移動教室の際にⓖではなくⓗを誘うようになり,ⓗと2人で行動することが増えた。

(甲3,4,6から10,17,原告ⓔ本人)

3学期
(ア)ⓒは,3学期に入ると,毎朝,ⓗとともに自転車で登校するようになった。

(イ)a

原告ⓓと原告ⓔは,3学期頃から,原告ⓓが不貞行為に及んでいる
のではないかという疑いをめぐって口論となることが増え,原告ⓔは,平成29年2月頃,原告ⓓと離婚する旨をⓒに伝えていたほか,原告ⓓもⓒに対して同月16日には離婚について言及したLINEメッセージを送信していた。
b
ⓒは,同月22日頃,緊急の話があるとしてⓗに架電し,泣きなが
ら両親の離婚について話をした。
c
ⓒは,同月27日頃,泣きながら本件学校の教室から出ていき,同
人を探しに来たⓖ及びⓘに対し,トイレに籠って泣きながら本当に両親が離婚しそうである旨を述べた。
(ウ)本件学校は,平成29年3月2日に生活実態アンケート調査を実施し,ⓒは,同調査において,あなたの『3学期の高校生活』はどうでしたか?という質問に対して楽しいに丸を付け,あなたの今の高校生活で何か『心配事』はありますか?という質問及びあなたの学級で『いじめ』はありますか?という質問に対して,いずれもいいえに丸を付けて回答した。(エ)ⓒは,平成29年3月中旬頃,バレーボールの部活動に関し,顧問教諭の依頼により男子部員に練習メニューを伝達したところ,男子部員から悪口を言われた旨を同教諭に報告した。ⓒから事情を聞いた顧問教諭は,部員を集めて説明,注意を行った(なお,その後の調査においても男子生徒がⓒの悪口を言った事実は確認されなかった。)。

(オ)a

本件学校においては,平成29年3月17日に終業式が行われ,1
年E組の担任は,出席番号の順番に従って生徒を廊下に呼び出し,廊下において通知表を交付していた。
b
1年E組の女子生徒らは,本件学校では携帯電話の使用が禁止され
ていたことに鑑み,教室内で担任に隠れて携帯電話を使用して多数の記念写真を撮影していたところ,ⓖ,ⓗ,ⓘ及びⓙは,ⓒが廊下で通知表の交付を受けている間に,同人を除外して4人で記念撮影を行い,ⓒが教室に戻ってきた際に撮影に使用していた携帯電話を隠す行動をとった(なお,その後,ⓒはⓖと2人で写真を撮影する等し
た。)。

c
ⓒは,上記bの後,当日の部活動において,バレーボール部員で仲
の良かった男子生徒Fに対し,うち,はぶかれとんのかなと話し
た。
d
ⓒは,同日,Twitterにおいて,E組のみんな1年間楽しかったです,最高の思い出をありがとうとツイートし,写真等を投稿した。
(カ)ⓙは,平成29年3月25日,ⓒから春休み中にⓖと連絡をとっているかと尋ねられたことについて,ⓒとLINE上で行ったやり取りのスクリーンショットを撮影してⓖに送信した。ⓖは,ⓒとⓙのやり取りを見て,だるまじで,もうほんとやめてほしい…,あの人すぐ調子乗るけんそーとLINEしつこかったらもう『あんま関係ない話せんどって』って言ったほうがいいと思うよあの人言わんとまじで分からんけ等と記載したメッセージをⓙに送信した。(キ)ⓒは,男子生徒Fに対し,平成29年3月28日,原告らの離婚問題について,引っ越しの準備をする早めに出ていくらしい明日と明後日で,お母さんの身体,こわれていきよんのよね,私は早く終わらせたいこの家におりたくないんよねと記載したメッセージを
送信した。
(甲3,4,6から10,17,原告ⓔ本人)


高校2年次の出来事等

平成29年4月6日から同月10日まで
(ア)本件学校においては,平成29年4月6日に始業式が行われ,進級に伴うクラス替えにより,ⓒ,ⓗ及びⓙは2年D組に,ⓖ及びⓘは2年E組に所属することとなった。
(イ)a

原告ⓔは,平成29年4月8日又は9日,原告ⓓと離婚した場合の
新居を探すため,ⓒとともに不動産屋を訪れ,物件の見学を行った。b
ⓒは,同月9日,男子生徒Fに対し,部活動について

今まで休んどったのは,引っ越しの準備や不動産屋に行っとっただけで,さぼっとる訳やないんよ。やけ,これからも引っ越しとかで休まないけんけど,私はやめるつもりないんやけど,今はどうしてもいけんのよ。

と記載したLINEメッセージを送信した。
c
原告らは,同月9日,離婚について協議を行い,同月10日朝には
離婚しないという結論に至り,原告ⓔは,同日夜にⓒに対して離婚はなくなった旨を伝えた。
(甲3,4,6,9,17,原告ⓔ本人)

平成29年▲月▲日
(ア)a

ⓒは,同日,2年生に進級してから初めて本件学校で昼食をとるこ
ととなり,ⓗに一緒にお昼食べようと声を掛けたが,ⓗは,ⓖ,
○及びⓙら5人と食堂で昼食をとる約束をしていたため,ⓒの誘いをi
断った(なお,ⓖ,ⓘ及びⓙは,ⓒを昼食に誘っていなかった。)。b
ⓒは,教室に1人でいたところを同クラスの生徒から声を掛けら

れ,同生徒ら4人で昼食をとった。
c
ⓗが,教室に戻った際に一緒に昼食をとれなかったことを謝罪した
のに対し,ⓒは私のことはぶいたやろと述べ,ⓗはⓒを仲間外れ
にしていない旨回答した。
(イ)ⓒは,同日の放課後,2年D組の担任との間で教育相談(個人面談)を行い,これに先立ち作成した自己紹介・個人面接シートには,学校・家庭・人間関係・進路・その他の悩みにこのまま部活を続けていいのかと記載する等した。ⓒは,教育相談において,①家庭の問題についてバレーボール部の2年生の男子生徒には相談しているが,両親からは口外することを止められている,②部活について

辞めるか辞めないか悩んでいる。女子部員が少なくサポートにまわることが多いが,自分はプレーがしたい。

,③友人関係の問題について上記(ア)記載の昼食時の出来事にも言及しつつ,

1年生のときはⓖ,ⓗ,ⓘ及びⓙと仲が良かったが,最近は仲間外れにされていると思う。

旨をそれぞれ述べた。ⓒは,担任が上記③について,ⓖと話をして真意を確かめるよう勧め
るとともに,担任が間に入って話合いの場を設けることを提案したのに対し,大丈夫,自分で言えますと回答した。
(ウ)ⓒは,上記(イ)記載の教育相談後,バレーボール部の顧問に対し,家庭の事情で練習に出られないことがある旨を述べ,同顧問からは参加できるときに参加すればよい旨の回答を得た。
(エ)ⓒは,同日夜,ⓗが明日は一緒に(昼食を)食べようという連絡したのに対し,わかったとしてこれに応じる旨返答した。

(甲3,4,6から10,原告ⓔ本人)

平成29年▲月▲日
(ア)ⓒは,同日,ⓗとともに昼食をとり,前日の教育相談(上記イ(イ)参照)の内容を話したほか,いじめと言ったらⓖが学校を辞めさせられると思うから先生に言う,1年生の3学期に担任の先生にⓖとけんかしていることを伝えたら,クラスが離れるよう配慮してくれたから,またⓖとけんかしていることを言う旨を述べ,ⓗにたしなめられる等した。
(イ)ⓒは,同日午後4時30分頃,ⓖに対し,あたしの事はぶいとるやろ?,言いたいことがあるんやったら言ってくれん?等と記載し
たメッセージを送信した。ⓖは,これを受けて同日午後6時頃にⓒに架電したが,通話はできなかった。
(ウ)ⓒは,同日午後9時23分頃,本件学校の教員に対し,

家庭の件なんですけどなんか急にもぉ離婚しなくてよくなったとゆう話になって,このまま家族4人で暮らせるようになりました。相談にのってくれてありがとうございました。

と記載したLINEメッセージを送信した。(エ)ⓒは,同日,バレーボール部に所属し仲の良かった男子生徒Eとの間で,LINE上で電車につっこんだら何円くらいかかるんかね,
わからんとのやり取りを行った。
(甲3,4,6から9)


平成29年▲月▲日
(ア)ⓖは,同日午前中の休み時間において,前日のLINE上のやり取り(上記ウ(イ)参照)について話をしようと考え,2年E組教室前の廊下でⓒに話しかけ,同人を仲間外れにしていない旨述べたところ,ⓒは1年生のときにはみんなで昼食を食べていたのに2年生になってから急に食べなくなっており,仲間外れにされている旨主張した。これに対
し,ⓖは,1年生の後半からⓒのことを良く思っておらず,2年生になってクラスが別々になり,一緒に食べる約束もしていないため昼食をともにとらなくていいと思った旨を述べた。また,ⓖは,ⓒからⓗの悪口を言っていないか尋ねられたのに対し,これを否定する回答をしたが,その後も同様のやり取りが繰り返され,
口論となった。最終的に,ⓒは,ⓖに「絶交する。」と述べ,ⓖは,ⓒに(ⓗの)悪口を言っていることで良い,最近ⓗは八方美人だと思う,ⓘもⓒのことが嫌いと言っていた旨を述べるに至った。(イ)ⓒは,上記(ア)記載のやり取りの後,ⓗに対し,ⓖらがⓗの悪口を言っているみたい,八方美人,うざい,関わりたくないと言っていた旨を告げた。(ウ)ⓒは,同日,ⓗとともに昼食をとった。
(甲3,4,6から10)

平成29年▲月▲日
(ア)ⓒは,同日,ⓗとともに昼食をとった。

(イ)ⓗは,同日夜から翌日(同月▲日)朝にかけて,男子生徒E及びⓖにLINEで連絡し,ⓖ,ⓘ及びⓙがⓗの悪口を言っていたかどうか確認した。
(甲3,4,6から10)

平成29年▲月▲日
(ア)ⓖは,同日朝,ⓗとの間でLINE上のやり取りを行い,ⓒとの口論(上記エ(ア)参照)の内容を説明しつつ,ⓗのことをうざいとは言っていない旨を伝えた。
(イ)本件学校においては,同日,当時北九州市に所在したテーマパークスペースワールドへの遠足が企画されていたところ,園内での行動は生徒達に委ねられており,ⓒはⓗほか3人と行動した(ⓖ,ⓘ及びⓙ
とは一緒に行動しなかった。)。
ⓙは,同日のイベントにおいて,ⓗから,ⓖ,ⓘとともにⓗの悪口を言っていたか尋ねられたのに対し,これを否定した。
(ウ)ⓗは,ⓒに対し,同日午後4時頃,ⓒがⓖらがⓗの悪口を言っていると述べていたこと(前記エ(イ)参照)について,ⓖとⓙはこれを否定
していた(上記(ア)(イ)参照)として,ⓒが嘘をついたのではないかと問い質す旨のLINEメッセージを送信した。
ⓒが嘘ではないがあまり覚えていない旨述べた上で,ⓗのなかであたしは嘘つきになっとると?と尋ねたのに対し,ⓗは今なっとるねと回答した。ⓒは,これを踏まえ,わかったも一緒におらんでいいよならもぉ学校でⓖたちとおった方が楽しいやろうしと述
べ,ⓗは了解と応じた。
(甲2から4,6から10,原告ⓔ本人)

平成29年▲月▲日及び同月▲日
(ア)両日は土曜日及び日曜日であったが,いずれもバレーボール部の練習
試合があり,ⓒはマネージャーとして部活動に参加した。
(イ)ⓒは,男子生徒Eに対し,同月▲日,私がいなくなった方が良いのかなという旨のLINEメッセージを送信し,同生徒は勝手にしたらと返事をした。(甲3,4,9,原告ⓔ本人)


平成29年▲月▲日(本件自殺当日)
(ア)ⓒは,同日朝,本件学校に行きたくない旨を述べたが,原告ⓔに諭され,同日午前8時20分頃には自宅を出発した。
(イ)ⓒは,ⓗに対し,同日午前9時17分,

あたしになんかあったらⓗとⓖとⓘのせいやけね。後悔してもしらんけ。

と記載したメッセージ(本件メッセージ)を送信した。

また,ⓒは,原告ⓔに対し,同時刻頃,

お母さんごめんね。

と記載したLINEメッセージを送信し,その後携帯電話のLINE履歴を全て削除した。
原告ⓔは,ⓒから上記メッセージを受信し,直後にⓒに架電及び返信したものの,ⓒからの応答はなかった。

(ウ)その後,ⓒはⓕ霊園で自殺を図ったところを発見され,心肺停止状態で病院に救急搬送されたものの,死亡した(前記前提事実⑷参照)。(甲2から4,8,9,乙4,原告ⓔ本人)
2本件自殺が学校の管理下において発生した事件に起因する死亡に該当するか否かについて


ⓖらのⓒに対する行為の事件該当性について
前記認定事実等記載のとおり,ⓒは,本件学校の同級生であるⓖ,ⓗ,ⓘ及びⓙとの友人関係についてトラブルを抱えていたところ,ⓖらがⓒに対してした行為が,いじめ防止対策推進法2条1項(センター法施行令3条7項ただし書)所定のいじめ(前記前提事実⑵ア,別紙参照)であ
って,本件省令24条3号の学校の管理下において発生した事件と認められるかについて,以下検討する。

前記認定事実等⑴イ(イ)記載のとおり,○ⓖは,平成28年11月頃,ⓒⅰ
から男子生徒Aとの交際について尋ねられた際に虚偽の説明をし,その
後も,ⓒに対し,男子生徒Aとⓖが交際していること及び同生徒が部活動をやめさせられそうになったことがいずれも嘘であることを告げなかった。ⓒは,ⓖの説明を受けて,ⓖと男子生徒Aの交際に支障が生じたら自分のせいであると感じていたのであり(同上),ⓖが真実を告げないことは,ⓒにおいて,ⓖ及び男子生徒Aに対する罪悪感を抱かせるものであったと認められる。
また,ⓒがⓖとの間で男子生徒Aとの交際について話をした後頃か
ら,ⓒとⓖの関係は従前ほど円満ではなくなっていたと推認される(前記認定事実等⑴イ(イ)及び(ウ)参照)ところ,このような中で,○ⓖ,ⓗ,ⓘⅱ
及びⓙが,高校1年次の終業式の際にⓒを除外して4人で写真を撮影したこと(同ウ(オ)参照)及び○高校2年に進級した後である平成29年▲月ⅲ
▲日に,ⓖらがⓒを交えずに昼食をとったこと(同⑵イ(ア)参照)は,ⓒにおいて,仲の良いグループからも除外されたと感じさせるものといえる。さらに,○ⓒは,同月▲日のⓖとの口論において,ⓖやⓘがⓒのことⅳ
を良く思っていないことを改めて突きつけられ,ⓖと絶交する旨を述べるに至ったり(同エ(ア)参照),○同月▲日から▲日にかけてのⓗとのLIⅴ
NEのやりとりにおいては,ⓒが特に仲の良い友人と思っていたⓗからも信用されず,交友関係を断絶する旨を述べたりしている(同カ(ウ)参照)ところ,これらのやり取りは,同一の学校に在籍するⓖらがⓒに対して行った心理的な影響を与える行為であって,ⓒの若年ゆえの未熟な対応と相まって悪循環に陥っている面はあるものの,ⓒに疎外感や孤独感
を強く感じさせるものといえる。

ⓒは,上記一連の事実経過の中で,ⓖらとの交友関係についてたびた
び原告ⓔに相談をしたり,男子生徒Fに対してうち,はぶかれとんのかなとの心情を吐露したりしており,本件自殺の6日前から自殺をほのめかす発言をする(前記認定事実等⑵ウ(エ),キ(イ)参照)など,強い心身の苦痛を感じていたと認められる。そして,ⓖにおいては,ⓒを疎外する意図を有していたともみられること(前記認定事実等⑴ウ(カ)参照)に照らせば,ⓖらによる上記一連の行為は,通常の対人関係による不和(本件規程参照)にとどまらず,いじめに当たると認められ,本件省令24条3号に定める事件に該当すると認められる。⑵
本件自殺の原因について

ⓒに対するいじめ

(ア)前記⑴判示のⓒに対するいじめは,いずれも仲の良かった女子生徒5人グループ内での出来事であるが,ⓒを除く4人の間にはいじめに該当するようなトラブルがあったことはうかがわれない。ⓒは,上記いじめにより,身近な友人と自分だけが上手くいっていない疎外感・孤立感等を覚えたほか,本件学校は相対的に女子生徒の数が少なく,そのグループ化が進んでいたこと(前記前提事実⑶,認定事実等⑴ア参照)に照らせば,学校生活自体についても強い不安感等を覚えていたと解される。(イ)そして,上記いじめは,おおむね半年の間に行われたものであるけれども,ⓒにおいて,グループ全員(4人)から仲間外れにされると感じ
る出来事があり,ⓖ及びⓗから相次いで不信感等を打ち明けられ,同人らとの交友関係を断絶するに至った出来事は,本件自殺に接着した時期(本件自殺から1か月以内)に連続して生じたものであり,これらの出来事によってⓒの疎外感や孤立感等が高まっていたものと推認される。加えて,ⓒが本件自殺に及んだ平成29年▲月▲日は,直近までⓒと一
緒に昼食をとる等して特に仲が良かったⓗとの不和が決定的になってから最初の登校日であり,ⓒは,進級に伴うクラス替え等により環境も変化していた中で,友人関係をめぐって特に強いストレスを受けていたと認められる。
また,ⓒからⓗに送信された本件メッセージは,自殺直前のⓒの心理
状況を示すものとして極めて重要な意味を有する徴表であるところ,そこで本件自殺に責任がある者として特定されたⓖ,ⓘ及びⓗは,いずれも本件自殺に接着した時期の上記各出来事に関与した当事者であり,いじめ以外にあえてⓒが当該3人を名指しするような事情はうかがわれない。本件メッセージの存在及び内容は,いじめが本件自殺の主たる要因であることを示すものとして,上記理解と整合する。
(ウ)上記検討したところを踏まえると,ⓒは,ⓖ,ⓗ,ⓘ及びⓙからのいじめにより孤立感等が高まっていったことと併行して,上記のとおり,遅くとも本件自殺の6日前から自殺をほのめかす言動を繰り返するようになっていたことに照らすと,同日頃から精神的に不安定な日々が続いていたものと推認される。ⓒは,同月▲日,ⓗとの不和が決定的になった中で本件学校へ登校することに特に強いストレスを感じ,同日以降の学校生活(友
人関係を含む。)についても絶望感を募らせて,そのような人間関係から逃避し,また,自らが受けたいじめに対する抗議等の意を示すために本件メッセージを残しつつ,自殺を図ったものと考えられる。

その他の要因について

(ア)前記認定事実等によれば,原告ⓓと原告ⓔは,平成28年度の3学期以降,離婚についての協議等を行っており,ⓒは両親の離婚について時には涙を流す等して真剣に思い悩み,周囲の友人等に相談する等していたことが認められる(前記認定事実等⑴ウ(イ)(キ),⑵ア(イ)・イ(イ)参照)。しかしながら,原告らは平成29年4月10日には離婚しない結
論に至り,同日夜には原告ⓔからⓒにその旨が伝えられていた(同ア(イ)c参照)ほか,ⓒ自身も同月▲日には担任に対して離婚がなくなった旨報告しており(同ウ(ウ)参照),同日以降にも引き続き離婚について思い悩んでいた痕跡はない。ⓒは,本件自殺直前に原告ⓔに対するメッセージを送信しているが,同時刻に送信された本件メッセージと異なり,そ
こでは自殺の原因に関する記載はなく,原告ⓔに対する謝罪の意だけが示されていたこと(同ク(イ)参照)を併せ考慮すると,両親の離婚問題が本件自殺の原因となったとは考えられない。
(イ)また,ⓒは,両親の離婚以外にも,バレーボール部の部活動につき選手として活動したいという考えを背景に,活動を継続するか否か悩んでいたことが認められる(前記認定事実等⑵イ(イ)参照)が,部員との間の具体的なトラブルは確認されておらず(同⑴ウ(エ)参照),いじめ防止対
策推進法2条1項所定のいじめとして事件に該当する具体的行為の存在を認めるに足りる証拠はない。ⓒは,顧問とも練習参加について直接やり取りを行うことができており(同⑵イ(ウ)参照),上記悩みにより自殺につながるような強度の心理的負担を受けていたといえるか疑問であるし,ⓒには本件自殺に近接した時期にもLINE上のやり取りを行
っていた仲の良い部員がおり(同⑵ア(イ)・ウ(エ)・キ(イ)参照),部活動の人間関係に悩んでいた事実はうかがわれない。ⓒは,本件自殺の前々日及び前日は部活動に参加しているところ,その際に特に心理的な影響が生じ得るエピソードも認められず,本件自殺当日も部活動と自殺に関連性があることを示す言動はないことからすると,部活動における問題
が本件自殺の原因となったとは考えられない。


以上によれば,前記⑴記載のいじめ以外にⓒが自殺する原因はうかがわれ
ず,本件自殺は専ら上記いじめが主たる原因となって生じたものと認められる。
本件自殺は,本件規程が定める事件が原因であることが明らかであると認められる死亡に当たり,本件省令24条3号所定の学校の管理下において発生した事件に起因する死亡に該当すると認められる。被告は,報告書①,報告書②及び報告書③がⓒに対するいじめと本件自殺の因果関係を認めていないことを根拠に,本件自殺は学校の管理下において発生した事件に起因する死亡に該当しない旨主張するが,上記⑵で判示したⓒに対するいじめの内容及び程度,本件自殺までの具体的事実経過等に鑑みれば,いじめと自殺との間には因果関係があるというべきであり,これらの報告書の存在は上記結論を左右しない。
3災害共済給付金支払請求権の発生時期及び遅延損害金の起算点について⑴
上記2判示のとおり,本件自殺は本件省令24条3号所定の学校の管理下において発生した事件に起因する死亡に該当し,被告は,原告らに対し,センター法16条1項及び2項,センター法施行令4条2項に基づき,災害共済給付金として平成31年政令第161号による改正前の施行令3条1項3号所定の死亡見舞金2800万円を支払うべき義務を負う。原告らは,ⓒに対して親権を行う者としてセンター法15条1項7号所定
の保護者に該当し,上記給付金の支払請求権は,各原告に2分の1ずつ帰属しているものと解される。
⑵ア

センター法に基づく災害共済給付金の支払請求権は,被告の支給決定によって生じるものではなく,当該事件がセンター法及びその関係法令等が定める要件を客観的に充足する場合に,当然に発生するものと解される。また,センター法施行令4条4項及び5項において,被告が給付金の支
払請求を受けた場合には,審査によりその支払額を決定し,速やかに給付金を支払う旨規定していること(別紙参照)からすると,その履行期は給付金の支払請求を受けてから,当該請求内容が適正であるか否かを審査するための相当の期間を経過した日であると解するのが相当である。イ
そして,被告は独自の調査機関を有していない組織であるところ,前記前提事実⑹記載の給付金支払請求につき被告がアクセス可能であった資料の範囲は判然とせず,請求と併せて少なくとも報告書①,報告書②及び報告書③を受領していたと認められる(前記前提事実⑹ア参照)ものの,これらのみで適切な審査を行うことは相当困難であったと認められる。他
方,本件訴訟においては,原告らによる書証提出や原告ⓔの本人尋問等が実施されており,被告は,遅くとも本件口頭弁論終結時には原告らによる給付金支払請求の適否を審査するために必要となる情報を全て入手していたと認められる。
そうすると,上記⑴記載の原告らの給付金支払請求権の履行期は,被告が給付金支払請求の適否を自らの審査によって決定することとしたセンター法施行令4条4項の趣旨に鑑み,本件口頭弁論終結時である令和3年9月6日と認めるのが相当であり,被告は,その翌日である同月7日から遅滞に陥ったものとして平成29年法第44号による改正後の民法所定の割合による遅延損害金を支払うべき義務を負う。
第4結論

以上のとおりであるから,原告らの請求は,それぞれ1400万円及びこれに対する令和3年9月7日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却することし,訴訟費用の負担について民訴法64条ただし書,61条を,仮執行の宣言につき同法259条1項を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。
福岡地方裁判所第6民事部

裁判長裁判官


裁判官


裁判官

田川毅雅中子悠
別紙

関係法令等

第1

いじめ防止対策推進法
2条
1項

この法律においていじめとは,児童等(学校に在籍する児
童又は生徒)に対して,当該児童等が在籍する学校に在籍してい
る等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理
的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行
われるものを含む。であって,当該行為の対象となった児童等

が心身の苦痛を感じているものをいう。

第2
1
独立行政法人日本スポーツ振興センター法(センター法)
3条
被告は,スポーツの振興及び児童,生徒,学生又は幼児(以下児童生徒等という。の健康の保持増進を図るため,その設置するスポー)
ツ施設の適切かつ効率的な運営,スポーツの振興のために必要な援助,小学校,中学校,義務教育学校,高等学校,中等教育学校,高等専門学校,特別支援学校,幼稚園,幼保連携型認定こども園又は専修学校(以下学校と総称する。の管理下における児童生徒等の災害に関する

必要な給付その他スポーツ及び児童生徒等の健康の保持増進に関する調査研究並びに資料の収集及び提供等を行い,もって国民の心身の健全な発達に寄与することを目的とする。
2
15条
1項

被告は,3条の目的を達成するため,次の業務を行う。

7号

学校の管理下における児童生徒等の災害(負傷,疾病,障
害又は死亡をいう。以下同じ。
)につき,当該児童生徒等の保
護者(学校教育法16条に規定する保護者…をいう。
)…に対
し,災害共済給付(医療費,障害見舞金又は死亡見舞金の支
給をいう。以下同じ。を行うこと。以下略)



3
16条
1項

災害共済給付は,学校の管理下における児童生徒等の災害に
つき,学校の設置者が,児童生徒等の保護者の同意を得て,当
該児童生徒等について被告との間に締結する災害共済給付契約
により行うものとする。

2項

前項の災害共済給付契約に係る災害共済給付の給付基準,給
付金の支払の請求及びその支払並びに学校の管理下における児
童生徒等の災害の範囲については,政令で定める。

第3

独立行政法人日本スポーツ振興センター法施行令(センター法施行令)

1
3条
1項

センター法15条1項7号に規定する災害共済給付(以下こ
の章において単に災害共済給付という。の給付金の額は,

次の各号に掲げる給付の種類ごとに,当該各号に定める額とす
る。

3号

死亡見舞金

2800万円(ただし,平成31年政令第1

61号による改正前のもの。

7項

被告は,高等学校の災害共済給付については,災害共済給付
契約に係る生徒又は学生が自己の故意の犯罪行為により,は

故意に,負傷し,疾病にかかり,又は死亡したときは,当該負

傷,疾病若しくは死亡又は当該負傷をし,若しくは疾病にかか
ったことによる障害若しくは死亡に係る災害共済給付を行わ
ない。ただし,当該生徒又は学生が,いじめ(いじめ防止対策
推進法2条1項に規定するいじめをいう。,罰その他の当該
)体
生徒又は学生の責めに帰することができない事由により生じ
た強い心理的な負担により,故意に負傷し,疾病にかかり,又
は死亡したときは,この限りでない。
2
4条
1項

災害共済給付の給付金の支払の請求は,災害共済給付契約に
係る学校の設置者が行うものとする。

2項

前項の規定にかかわらず,災害共済給付契約に係る児童生徒
等の保護者(法第15条1項7号に規定する保護者をいう。以
下同じ。又は当該児童生徒等のうち生徒若しくは学生が成年に

達している場合にあっては当該生徒若しくは学生は,自ら前項
の請求をすることができる。この場合において,当該請求は,
当該災害共済給付契約に係る学校の設置者を経由して行うもの
とする。

3項


4項

被告は,1項又は2項の規定による給付金の支払の請求があ
ったときは,該請求の内容が適正であるかどうかを審査して,

前条に規定するところにより,その支払額を決定するものとす
る。

5項被告は,項の規定により支払額を決定したときは,やかに,


…給付金の支払を行うものとする。
3
5条
1項

災害共済給付に係る災害は,次に掲げるものとする。

4号

児童生徒等の死亡でその原因である事由が学校の管理下に
おいて生じたもののうち,文部科学省令で定めるもの

第4

独立行政法人日本スポーツ振興センターに関する省令(本件省令)24条
センター法施行令第5条1項4号の児童生徒等の死亡でその原因である事由が学校の管理下において生じたもののうち文部科学省令で定めるものは,次に掲げるものとする。
3号

前2号に掲げるもののほか,学校の管理下において発生し
た事件に起因する死亡

第5

独立行政法人日本スポーツ振興センター災害共済給付の基準に関する規程(本件規程,乙1)
本件省令24条3号に規定する学校の管理下において発生した事件に起因する死亡を災害共済給付の基準として次のように定める。1
事件とは,児童生徒等の安全な学校生活を妨げる特別な事実をい
い,急激な事実であるか,継続性のある事実であるかは問わない。注(
特別な事実とは,いじめ」体罰等をいい,教師の適正な指導,

,児童生徒の成績不振及び児童生徒の学校生活における通常の対人関係による不和は含まない。)ただし,自他の故意が認められない事実である「事故

も含まれる。
2学校の管理下において発生した事件に起因する死亡は,事件」
とが原因であることが明らかであると認められる「死亡をいう。
この場合において,死亡」は,学校の外で起きているが,原因となった「事件は学校の管理下で起きていることが明らかであると認められる場合を含む。

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