判例検索β > 令和2年(ネ)第973号
地位確認等請求控訴事件
事件番号令和2(ネ)973
事件名地位確認等請求控訴事件
裁判年月日令和3年11月4日
法廷名大阪高等裁判所
結果その他
原審裁判所名神戸地方裁判所
原審事件番号平成29(ワ)2030
全文全文添付文書1
最高裁判所〒102-8651 東京都千代田区隼町4番2号 Map
裁判日:西暦2021-11-04
情報公開日2022-02-06 19:25:11
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主文1
原判決を取り消す。

2
控訴人らが,被控訴人に対し,当判決別紙1労働契約一覧記載の各労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

3
被控訴人は,控訴人A,控訴人B,控訴人C及び控訴人Dに対し,平成29年4月1日から本判決確定の日まで,毎月末日限り,当判決別紙2賃金一覧記載の各金員をそれぞれ支払え。
4
被控訴人は,控訴人Eに対し,平成29年8月25日から本判決確定の日まで,毎月末日限り,当判決別紙2賃金一覧記載の金員を支払え。
5
控訴人Eのその余の請求を棄却する。

6
訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。

7
この判決は,第3項及び第4項に限り,仮に執行することができる。事
第1

実及び理由
控訴の趣旨

1
原判決を取り消す。

2
控訴人らが,被控訴人に対し,当判決別紙1労働契約一覧記載の各労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

3
被控訴人は,
控訴人らに対し,
平成29年4月1日から本判決確定の日まで,
毎月末日限り,当判決別紙1労働契約一覧の各賃金欄記載の金員をそれぞれ支払え。

第2

事案の概要

1
事案の骨子
本件は,被控訴人(原審被告)との間で業務請負契約を締結した会社の労働者として被控訴人の工場で製品の製造業務に従事していた控訴人(原審原告)らが,被控訴人に対し,被控訴人は労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下労働者派遣法という。)40条の6第1項5号(平成24年法律第27号による改正後(平成27年10月1日施行)のもの。以下同じ。)に該当する行為を行い,同項柱書本文により労働契約の申込みをしたものとみなされ,これに対して控訴人らが承諾する旨の意思表示をしたから,控訴人らと被控訴人との間に,原判決別紙1労働契約一覧記載の各労働契約が成立したとして,それらが存在することの確認及び同契約に基づき平成29年4月1日から本判決確定の日まで,毎月末日限り,原判決別紙1労働契約一覧の各賃金欄記載の賃金の支払を求めた事案である。
原判決は,控訴人らの請求をいずれも棄却した。これに対し,控訴人らが控訴した。控訴人らは,当審において,確認を求める労働契約の内容及び支払を求める賃金を当判決別紙1
労働契約一覧
のとおりそれぞれ変更した。
2
前提となる事実,争点及び争点に対する当事者の主張
原判決の引用
前提となる事実,争点及び争点に対する当事者の主張は,当審における当事者の主張を踏まえ,後記

のとおり原判決を補正し,後記3のとおり当審

における追加主張を付加するほかは,原判決事実及び理由中第2の1から3まで(2頁20行目から25頁6行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。なお,引用文中,別紙とあるのは原判決別紙と読み替える。また,引用証拠中,人証はいずれも原審におけるものである。原判決の補正

3頁18行目のライフ社に入社しの次に,平成13年9月に退職し,平成15年10月に復職し平成17年3月まで,平成18年8月に復職し平成20年4月まで,平成21年5月に復職しを加える。

5頁16行目及び18行目の各労働者の役務をいずれも労働者派遣の役務に,26行目の役務提供を労働者派遣の役務の提供に,それぞれ改める。ウ

6頁1行目の同条の6から2行目の

施行された。

までを

労働者派遣法40条の6の規定は,平成24年法律第27号2条(平成27年10月1日施行)により新設された。

に改め,15行目の21日から23行目末尾までを次のとおり改める。
17日,被控訴人に対し,本件業務請負契約1が労働者派遣法40条の6第1項5号に該当するとして,被控訴人からの直接雇用の申込みを承諾する旨の書面(甲20の1)を発送し,同書面は,同月21日,被控訴人に到達した。(甲20の1・2)控訴人Eは,連合兵庫ユニオンⅬ.I.A労働組合(以下「ライフ社労組という。)の執行委員長として,被控訴人に対し,直接雇用の見なし規定に対応して承諾通知を行っている従業員らについて雇用契約が成立しているものとして扱うことを要求事項の一つとして掲げる同月24日付け団体交渉要求書(甲99)を発した後,同年8月25日,被控訴人に対し,本件業務請負契約2が労働者派遣法40条の6第1項5号に該当し,控訴人Eも,控訴人A,控訴人B,控訴人C及び控訴人Dと同様,労働組合を通じて直接雇用後の労働条件に対する団体交渉を求めていたこと等から,既に直接雇用の申込みを承諾する旨の通知をしたと考えているが,同年3月17日付けの前記通知(甲20の1)には控訴人Eの氏名が明記されていなかったので,念のため承諾の通知を行う旨記載した書面(甲21の1)を発送し,同書面は,同年8月28日,被控訴人に到達した。(甲21の1・2,99。なお,控訴人らの労働条件の内容,控訴人Eの承諾する旨の意思表示の時期については,後記のとおり争いがある。)」


6頁25行目の連合兵庫から26行目「という。)」までをライフ社労組に改め,7頁6行目の末尾に改行の上,次のとおり加える。
ライフ社労組は,平成29年3月24日頃,前記団体交渉要求書(甲99)により,被控訴人に対し,伊丹工場で就労中のライフ社の従業員全員を被控訴人において直接雇用することや,労働者派遣法40条の6に基づき直接雇用の申込みに対し承諾通知を行っている従業員らについて雇用契約が成立したと扱うことなどを求めて,団体交渉を申し入れたが,被控訴人は,同月28日,被控訴人はライフ社の従業員につき労働組合法7条の使用者には該当しないとして団体交渉をすることを拒んだ。オ
7頁12行目の甲22の次に,28,99を加える。


24頁18行目冒頭から23行目末尾までを偽装請負が組織的かつ恒常的に繰り返されている場合には,「免れる目的が認められるというべきであり,上記

で主張した事実に加え,製造業について労働者派遣が解

禁される前から被控訴人が伊丹工場でライフ社の従業員を請負形式で受け入れ,被控訴人従業員と混在する現場で指揮命令をし,労働者派遣法の適用を回避していた経緯等を踏まえれば,被控訴人の免れる目的は容易に認定することができるというべきである。」に改める。

25頁3行目の免れる目的から6行目末尾までを同号が「免れる目的を要件としたのは,客観的に違反行為があるというだけでは,派遣先にその責めを負わせることが公平を欠く場合があるからである。自らの指揮命令により役務の提供を受けていることや労働者派遣以外の形式で契約をしているからといって,直ちに派遣先に免れる目的があることを推認することはできない。また,
免れる目的は法人の代表者又は契約締結
権限を授権されている者の認識としてこれがあると認められることが必要である。しかるところ,平成28年当時,被控訴人伊丹工場では,労働者派遣契約を締結している工程も存在しており,偽装請負を行う必要などなかったこと,
請負契約を締結していた工程は外注に馴染む工程であったこと,
被控訴人が,平成29年3月1日,巾木工程について労働者派遣契約を締結したのはライフ社やシグマ社の申出に基づくものであったこと等に鑑みれば,被控訴人とライフ社との間の業務請負契約の締結権者であったF工場長において,労働者派遣法の規制を回避する意図を有していなかったことは明らかである。」に改める。
3
当審における追加主張
争点3(控訴人らの労働条件)
(控訴人らの主張)

次のとおり,控訴人らとライフ社との労働契約に期間の定めはなく,労働者派遣法40条の6の規定により派遣先との間で成立する労働契約の労働条件は,当判決別紙1労働契約一覧のとおりである。
控訴人Dは,平成10年11月20日から平成29年3月30日まで契約が継続していたが,控訴人Dが署名押印したのは,入社当初の日給月給時の契約書(甲167)と平成19年4月頃の雇用期間平成19年4月1日から平成20年3月31日までの契約書
(甲168)
しかなく,
平成28年1月にライフ社から一方的に契約書(甲3の3)を交付されたが,署名押印していない。控訴人Dに契約の更新手続などなかった。控訴人Eは,平成11年1月19日,L社長からうちは請負でやっていて,派遣と違い期間の定めがないので,ずっと同じ職場で働ける旨言われ,同日から就労を開始し,平成29年3月30日まで契約が継続していたが,控訴人Eが署名押印したのは,入社当初の契約書と平成19年4月頃の契約書しかなく,平成28年1月にライフ社から一方的に契約書(甲3の4)を交付されたが,署名押印していない。控訴人Eにも契約の更新手続などなかった。
控訴人Aは,平成12年7月頃から就労を開始しているが,雇用期間の説明を受けていない。控訴人Aは,平成29年3月30日までの間,4回ライフ社を退職しているが,いずれも自己都合である。また,控訴人Aも署名押印したのは,入社当初の契約書と平成19年4月頃の契約書しかなく,
平成28年1月にライフ社から一方的に契約書
(甲3の1)
を交付されたが,署名押印していない。控訴人Aが,平成19年4月以降,2回自己都合退職し,平成21年5月頃と平成27年5月11日に復職した際,いずれも契約手続は一切なかった。控訴人Aにも契約の更新手続などなかった。
控訴人Bも,L社長からうちは請負でやっていて,派遣と違い期間の定めがないので,ずっと同じ職場で働けるという旨を言われて就労を開始し,平成12年8月1日から平成29年3月30日まで契約が継続していたが,控訴人Bも署名押印したのは,入社当初の日給月給時の契約書と平成19年4月頃の契約書しかなく,平成28年1月にライフ社から一方的に契約書を交付されたが,署名押印していない。控訴人Bにも契約の更新手続などなかった。
控訴人Cは,平成25年9月13日から平成29年3月30日まで契約が継続していたが,契約書を交わしたことはなく,入社面接時に雇用期間に定めがない旨の説明を受けた。控訴人Cにも契約の更新手続などなかった。

仮に,控訴人Cを除く控訴人ら4名とライフ社との間の各契約が1年の有期自動更新契約であった場合であったとしても,何らの手続もなく10年間にわたって自動更新されていたから,実質,期間の定めのないものと同視することができる1年有期の自動更新契約であった。


被控訴人の後記イの主張は争う。被控訴人の主張は労働者派遣法40条の6の規定の制定過程や制度趣旨から導かれる同規定の解釈としては誤っている。同規定は,派遣労働者の雇用の安定を図るための規定であり,同規定によって派遣先との間で成立する労働契約は,当該派遣労働者の労働契約が有期契約であった場合には,当該有期契約の残存期間がそのまま移転するのではなく,その成立(承諾)時点を契約の始期として,当該労働契約の労働条件と同じ内容のものとして成立すると解すべきである。また,当該労働契約が終了しているか否かにかかわらず,同規定の定める1年間の期間内は,労働者の選択による派遣先との労働契約の成立を認めるのが,派遣労働者の雇用の安定という制度趣旨に沿った解釈というべきである。
(被控訴人の主張)

控訴人らの主張は,いずれも否認ないし争う。
ライフ社と控訴人らとの労働契約は,4か月単位の契約期間となっているから(甲3の1から4),平成29年当時の契約期間は,平成28年12月15日から平成29年4月15日までである。


労働者派遣法40条の6の規定により派遣先との間で労働契約が成立する場合の契約期間は,派遣労働者に係る元の労働契約に含まれる内容がそのまま適用されるのであり,当該労働契約の契約期間を超えて,派遣先との間に労働契約が成立することはない。したがって,仮に,同規定により,控訴人らと被控訴人との間に労働契約が成立するとしても,契約期間は最長でも平成29年4月15日までのものになる。さらに,ライフ社と控訴人らとの労働契約は同年3月30日限り終了したことは争いがなく,仮に控訴人らと被控訴人との間に労働契約が成立するとしても,契約期間は最長でも同日までのものとならざるを得ない。また,派遣労働者に係る労働契約が終了している場合には,同規定により派遣先との間で労働契約が成立する余地はない。
争点4(控訴人Eの承諾の意思表示の時期)

(控訴人Eの主張)
控訴人Eについては,ライフ社労組の執行委員長として,平成29年3月24日に被控訴人に対し直接雇用を求める団体交渉要求書を発し,被控訴人の申込みに対して承諾しているから,同日には労働契約が成立している。また,念のため,同年8月25日に承諾通知を発しているから,遅くとも同日に労働契約が成立している。
(被控訴人の主張)
争う。控訴人Eとライフ社との間の労働契約は,平成29年3月30日限りで終了しているところ,控訴人Eが承諾の意思表示を発信したのは,同年8月25日であり,前記

(被控訴人の主張イ)のとおり,派遣元との間で

労働契約が終了している場合には,労働者派遣法40条の6の規定により派遣先との間で労働契約が成立する余地はなく,労働契約の期間内に承諾の意思表示がなされていないから,控訴人Eと被控訴人との間には労働契約は成立していない。
第3
1
当裁判所の判断
認定事実
前記補正の上引用した原判決の前提となる事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
伊丹工場,巾木工程,化成品工程の作業場所及び作業内容等

伊丹工場
伊丹工場の全体図は,原判決別紙4の1伊丹工場全体図のとおりであり,平成29年2月28日当時の伊丹工場の組織は,当判決別紙3伊丹工場組織図のとおりである。伊丹工場には,化成品工程及び巾木工程のほかに,MV工程(ビニール床タイルの製造),SF工程,CF工程(クッションフロアの製造),プリント巾木工程(巾木工程で製造された巾木にプリント加工する工程),RS工程(壁紙や床材のクッションフロアの柄の印刷),IS工程(インディードシードの製造)があり,被控訴人は,F工場長が伊丹工場の製造課課長として着任した平成23年頃には,化成品工程及び巾木工程を除き,ライフ社を含め複数社との間で労働者派遣契約を結び,派遣労働者を受け入れていた。(甲55の1,乙13,35,原審証人F)

巾木工程について
作業場所等
巾木工程の作業場所は,
原判決別紙4の2
伊丹工場巾木工場周辺図
の巾木工場巾木旧工場部分の1階及び2階である。(甲55の
2)
巾木工程は,プリント巾木工程と隣接しているが,製造過程はこれと区分されている。
巾木工程には,1号機から5号機まで5台の製造機械(5ライン)があり,ラインの長さは概ね25メートル程度,半製品の数は2種類,被控訴人の品質基準では12項目の検査項目があり,品種は4種である。(甲55の2,56,57,乙16,19,22)
作業時間等
3班(各4名構成で,うち1名が主任)を構成し,7時~15時(被控訴人及び控訴人らはこの勤務を1直と呼ぶ。),15時~23時(被控訴人及び控訴人らはこの勤務を2直と呼ぶ。),23時~7時(被控訴人及び控訴人らはこの勤務を3直と呼ぶ。)のシフトを組んで,月曜日から土曜日の早朝まで,24時間3交代勤務であり,各班1週間ずつ交代で1直から3直までの勤務をする。そのほか,常勤主任がいる。通常,3台の製造機械(3ライン)を稼働させているが,繁忙期には4台(4ライン)稼働することもある。
(甲58,92,95,
141,弁論の全趣旨)
作業内容等
巾木工程の作業内容は,①巾木工程の資材置場から原材料の搬入,②スーパーミキサーによる原材料の撹拌,③ジェットカラーでの顔料と原料の撹拌(製品の色の決定),④加熱加圧による板状への成型とトップチップによる塗膜の形成(成型金型であるリップからの押出し),⑤水冷却後,切断・検品・梱包,⑥納入である。
巾木工程の作業は,大別すると,①サンプル担当(2時間おきに各機械の巾木サンプルを採取して,外観を確認,各種測定器で規格に合致しているかを調査し,製造日報,工程管理表,製造明細等の書類に必要事項を記載する。),②2階作業担当(顔料の変更,ダイスやリップ(ダイスは押出機の先頭部分の金型で,リップはダイスの先端部分に付ける金型である。)の取替え,ライン替え(製造ラインを変更し,ラインを停止して,押出機やダイス内部の材料を除去し,清掃する。)),③1号機の巻取り担当(巻き取った製品を箱詰し,パレット上に並べる。)に分かれ,それぞれ1名が担当する。主任は,各作業者が休憩に入るときにそのポジションを代行したりする。
(甲58,85,乙16,弁論の全趣旨)

化成品工程について
作業場所
化成品工程の作業場所は,原判決別紙4の1
伊丹工場全体図の
化成品工場の1階から3階までである。
化成品工程は,作業場所の建物自体が独立しており,他の工程と隣接していない。
ラインの長さは,概ね12メートルであり,半製品の数は9種類,被控訴人の品質基準では10項目の検査項目があり,品種は7種である。(甲55の1,59,60,乙17,19,22)
作業時間等
作業時間は,月曜日から金曜日までの8時30分から16時30分までであり,通常は主任と作業員の2名体制であるが,溶剤系を調合するときや充填・缶積作業があるときに,1,2名の応援が必要となる。(甲
96)
作業内容等
接着剤には,水系(原料に水が含まれるもので,これのみで接着剤としての効用を発揮するもの)と溶剤系(2種類の異なる液体を混合することにより,初めて接着剤として効用を発揮するもの)がある。
水系の作業内容は,原料をミキサーで撹拌し,容器に封函し,倉庫に搬送するものである。溶剤系の作業内容は,原料を別々のミキサーで撹拌混合し,別々に容器に封函し,倉庫に搬送するものである。
1名が1階でライン作業,1名が2階で調合作業を行う。
(甲61,96,乙17)
平成26年頃までの被控訴人の従業員の巾木工程及び化成品工程への関与等
ライフ社は,平成11年頃から,被控訴人と業務請負契約を締結し,巾木工程において,ライフ社の従業員が稼働するようになった。当時の巾木工程には,常勤主任及び各班の主任は被控訴人の従業員が務め,被控訴人の従業員がほかに1名いる班もあった。平成13年頃までには,被控訴人の従業員が抜け,ライフ社の従業員が主任も務めるようになり,巾木工程の3班12名と常勤主任1名がすべてライフ社の従業員となったが,被控訴人の従業員で巾木工程の熟練労働者であるSが常勤主任として残り,常勤主任2名体制となった。Sは,巾木工程における仕事のやり方についてライフ社の従業員を指導,教育していた。ライフ社の従業員は,夜勤時にトラブルがあったときは,Sの自宅の電話番号に架電して指示を仰いでいた。平成22年頃,Sがプリント巾木工程へ異動し,被控訴人の従業員の常勤主任がいなくなり,巾木工程は全員ライフ社の従業員のみとなった。しかし,その後も,Sが巾木工程のライフ社の従業員に対し,巾木の製品の仕様について直接指示することがあり,被控訴人は,Sの行為が越権行為であり,請負契約における指揮命令権の観点からも問題があると考え,平成26年頃,被控訴人は,Sをプリント巾木工程から異動させた。なお,控訴人らは,いずれもSから指導を受けている。化成品工程においても,平成22年頃までは,同様にライフ社の従業員と被控訴人の従業員が混在して稼働していたことが認められ,これに反する証拠はない。(甲89~93,95,96,乙20,原審控訴人E本人)
平成26年頃以降の巾木工程及び化成品工程の人員体制等

巾木工程について
H常勤主任のほか,R,N及び控訴人Aを主任として,3班(各4名構成)を構成し,3班で1直から3直までシフトを組んで3交代勤務をしていた。控訴人Aの班の構成員は,控訴人A,控訴人D,控訴人C及び控訴人Bであった。(甲65,66,94,原審控訴人D本人,原審控訴人A本人,弁論の全趣旨)
被控訴人には,
被控訴人本社の一部門である生産管理部
(以下,
単に
生産管理部という。)から発注されたものが工程で作れるかどうか確認する技術スタッフがおり,Gは,伊丹工場の製造課に所属する被控訴人の従業員で巾木工程を担当する技術スタッフであった。
(乙35,
原審証人F)
巾木工程の常勤主任は,本件業務請負契約1(乙1)の4条に定めるライフ社の遂行責任者であるとされており,被控訴人の技術スタッフとの間で連絡確認をとる窓口の役割がある。(甲69)


化成品工程
M主任のほか,控訴人Eが配置されていた。化成品工程の就業時間は,8時30分から16時30分までであった。(弁論の全趣旨)
Kは,製造課に所属する被控訴人の従業員で化成品工程を担当する技術スタッフであった。(乙35)化成品工程の主任は,本件業務請負契約2(甲15)の4条に定めるライフ社の遂行責任者であるとされており,被控訴人の技術スタッフとの間で連絡確認をとる窓口の役割がある。(弁論の全趣旨)

他の工程
ライフ社は,被控訴人との間で,平成19年4月1日に労働者派遣基本契約を,平成28年4月1日に労働者派遣個別契約をそれぞれ締結し,少なくとも平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間,伊丹工場MV工程製造作業に派遣労働者3名を,伊丹工場品質管理課製品検査作業及びパソコンの操作業務に派遣労働者各1名を派遣していた。乙13,(
14の1~3)
平成26年頃以降の控訴人らの業務遂行の状況等


巾木工程及び化成品工程の服装等
ライフ社の従業員の作業着及びヘルメットは,被控訴人の従業員と同じものであったが,ライフ社の従業員のヘルメットには緑色のテープが貼られていた。これらは被控訴人が用意し,貸与していたものである。(弁論の全趣旨)


巾木工程及び化成品工程の業務の流れ等
基本的な手順
生産管理部が1週間ごとに巾木工程及び化成品工程の製造依頼書
を作成し,伊丹工場製造課がこれを確認の上,巾木工程及び化成品工程に交付し,巾木工程ではH常勤主任が,化成品工程ではM主任が,それぞれ製品の製造予定日を記載した週間製造日程表を作成し,巾木工程ではG,化成品工程ではKの確認を得た上で,伊丹工場製造課に提出していた。巾木工程の週間製造日程表(乙4)は,毎日どの製造機械で,どの製品をどれだけ製造するかが詳細に記載されていた。Gは,週間製造日程表を修正し,これをH常勤主任宛にメールで送信することもあった(甲68)。なお,このような週間製造日程表は,被控訴人が定めた書式に従って作成されており,巾木工程及び化成品工程に限らず,伊丹工場のそれぞれの工程において,各工程の責任者が作成することになっていた。このほか,被控訴人は,毎月,伊丹工場の全工程の製造日程を一覧表にまとめた製造日程表
(甲81)
を作成しており,
同製造日程表には,巾木工程や化成品工程も他の工程と並んで記載されていた。
(甲68,81,乙2~5,20,28,35,弁論の全趣旨)
そして,
製品製造後,
巾木工程及び化成品工程のライフ社の従業員は,
被控訴人の管理するコンピュータの端末に,日付,指図書番号,ロット番号,出来高を入力し,プリントアウトされた受入伝票及び製品カードを製品とともに所定の場所に置いていた。もっとも,巾木工程で製造された巾木のうち,被控訴人においてプリント巾木に加工する場合には,製品カードの代わりに,プリントベース製品カードが
使用されることがあった。なお,
受入伝票,
製品カード及びプリントベース製品カードは,被控訴人が定めた書式に従って作成された。
なお,巾木工程及び化成品工程で製造された各製品について,ライフ社が独自に品質検査や検品をした上で,被控訴人に引き渡していたことを認めるに足りる証拠はない。(乙6~8,弁論の全趣旨)
変更の手順
在庫状況や受注状況に合わせて事後的に製造依頼の内容が変更されることがあり,生産管理部から,品種や数量を変更するために,巾木ライン変更・追加依頼書や化成品ライン変更・追加依頼書が発出され,巾木工程及び化成品工程は上記書面に従って品種や数量を変更していた。乙(
9,10,弁論の全趣旨)
また,伊丹工場製造課は,製品の仕様を変更する場合,巾木工程に対し,製造課指図書により,具体的に材料の量を指定するなどして製造条件等の変更を連絡していた。
これらの追加依頼書や製造課指図書は,巾木工程及び化成品工程に限らず,伊丹工場のすべての工程で用いられており,内容は各工程毎に異なるが,書式は共通のものが用いられていた。(甲11の1~3,乙20,原審証人F)

原材料の発注及び在庫管理等
被控訴人では,購買部がグループ会社を含めて原材料メーカーから原材料を購入しており,巾木工程及び化成品工程の原材料は,被控訴人がライフ社に供給していた。原材料は,巾木工程及び化成品工程ともに,H常勤主任及びM主任が週間製造日程表を作成する際,
被控訴人に対し,
材料発注書を提出していた。(弁論の全趣旨)
また,
巾木工程では,
原材料の在庫管理は,
H常勤主任が主に担当し,
月末に被控訴人のコンピュータシステムから在庫表をプリントアウトし,品目ごとの終了を在庫表に記入し,これをGに交付し,Gにおいて棚卸結果を精査していた。(甲63の1・2,乙20,22,原審控訴人A本人,弁論の全趣旨)


伊丹工場製造課及び品質管理課(以下,両課を併せて製造課等という。)と巾木工程及び化成品工程との間の連絡等
製造課等から巾木工程に対する日常的な連絡は,伊丹工場巾木工程の名称で登録されたメールアドレス宛に,化成品工程に対する連絡はM主任の名称で登録されたメールアドレス宛に,被控訴人の社内一斉メールによりなされていた。
平成28年3月15日から平成29年3月までの間,H常勤主任は,伊丹工場製造課に対し,
巾木の製造状況を継続的にメールで報告した。
また,
平成28年7月4日から平成29年3月29日までの間,伊丹工場品質管理課は,巾木工程及び化成品工程を含む伊丹工場の各工程に対し,継続的に製品検査の結果等を社内一斉メールで連絡した。
巾木工程及び化成品工程から製造課等に対する日常的な連絡も,上記各メールアドレスからなされており,製造課等からライフ社の従業員個人宛に,また,ライフ社の従業員個人から製造課等にメールが送信されることはなかった。
(甲10の1・2,36~39,49~53,71~75)

週報の送付等
Gは,1週間の工程管理上のトラブルや巾木工程の製作状況等について週報を作成し,伊丹工場製造課及び巾木工程に対し,社内メールで送信していた。(甲45)


伝達事項による連絡
巾木工程についてGが,化成品工程についてKが,各製造工程における
不具合や留意事項をまとめた伝達事項と題する書面を作成し,H常勤主任及びM主任に交付し,巾木工程及び化成品工程の掲示板に貼付されていた。
伝達事項の作成名義人はG又はKであり,その内容は,接着剤製
造時の混練異常停止時にとるべき具体的処置を示すもの(甲12),不良品削減のための検査体制の見直し(甲13の5),ワイド巾木の製作スピードアップをするに当たっての速度(6.0m/min)の指定(甲13の4),巾木の比重管理の狙い値を具体的に示すもの(甲30の1),製作開始時の上層の回転数を指示するもの(甲30の3),品管提出サンプル回収時に3枚以上重ねて切らないこと(甲70)など作業手順や留意事項を具体的に定めたり,作業に必要な設備の調査のため巾木工程作業者全員に対し記入を求めたりするもの(甲77)であった。このほか,Gは,H常勤主任に対し,平成27年7月,
巾木工程品質好感度アップについてと題する書
面(甲69)により,平成26年下期からの品質管理課による指摘に言及し,現場検査レベルの低下が懸念されているとして,職制を通じた報連相の徹底と検査体制の見直しを行うための具体的提案をしたこともあった。(甲12,13の1~5,30の1~3,32,34,40~42,62,69,70,77,原審証人F)

連絡ノート
巾木工程には,連絡ノートが置かれ,伝達事項とは別に,①H常勤主任が控訴人らを含む巾木工程に従事するライフ社の従業員宛に,②H常勤主任や控訴人AがG宛に,③GがH常勤主任,特定の主任が属する班の構成員,控訴人らを含む巾木工程に従事するライフ社の従業員宛に,それぞれ留意事項やそれに対する対応等を記載していた。(甲31の1・2,32~35)


巾木リップ会議(巾木工程会議)
リップは巾木を成型する金型であり,長期使用により,メッキ加工部に摩耗や劣化が生じ,巾木に筋が発生するなどの不具合が生じるため,定期的に交換やメッキ化等のメンテナンスが必要となる。
巾木工程では,
1か月に1回程度,リップのメンテナンス等に関する会議(以下リップ会議という。)が開かれていた。ライフ社の従業員からは,巾木工程3班のうちの1班が交代で出席することとなっており,1直の勤務時間後に,巾木工程のある建物とは別の建物にある被控訴人の工程会議室で行われていた。被控訴人からはGが出席して議事録を作成し,ほかに伊丹工場品質管理課や製造課の従業員も出席したことがあり,リップのメンテナンス等や製品のクレーム等について被控訴人から説明や指示があった。リップ会議の日程はGが設定し,Gは,リップ会議終了後,リップ会議に出席したライフ社の従業員に残業時間を伝えていた。ライフ社がリップ会議の議事録を作成したことはなかった。甲14の1~3,(
66,76の1・2,78,89,94,141,149,乙32,原審及び当審控訴人A本人)この点に関し,被控訴人は,リップ会議はライフ社の要請により,ライフ社が集積したリップの損耗状況に関する情報を被控訴人との間でも共有するために開催されたものである旨主張する。しかしながら,後記のとおり,平成28年9月28日,控訴人AがL社長に対してリップ会議の残業について連絡した際,L社長は,リップ会議が行われているか否か疑い,リップ会議の議事録の提出を求めたこと,そのため,H常勤主任,控訴人DがGに対し議事録の提出を依頼し,Gがライフ社にリップ会議の議事録を交付するようになったことが認められる(なお,被控訴人は,ライフ社の従業員がリップ会議の議事録を作成していたことを示すものとして,
控訴人Aの同月30日のメール(乙32)
を提出してい
るが,同メールには前日開催されたリップ会議について

議事録は出来上がり次第お渡しします。

と記載されているにすぎないから,Gが作成した議事録以外にライフ社独自の議事録が作成されていたことを認めるに足りるものではない。)。このことから,リップ会議は,L社長の指示で開催されたものではないものと推認することができるのであり,これに加え,リップ会議が巾木工程のある建物とは別の建物にある被控訴人の工程会議室で行われていたこと,リップ会議の議事録はGが作成しており,ライフ社では作成していないこと,リップ会議の日程はGが設定していたこと,Gがリップ会議終了後,リップ会議に出席したライフ社の従業員に残業時間を伝えていたことからすると,リップ会議は被控訴人の指示により開催されていたものと推認することができるというべきである。被控訴人の前記主張は採用することができない。

ダイスの分解掃除
ダイスは月に1回程度分解して掃除しないと,製品不良の原因となるものであり,当時,その技術を有するのが控訴人Dしかいなかったため,平成27年5月以降,控訴人Dが担当していた。控訴人Dは,主任を降格となった同年8月以降も,Gから,ダイスの分解掃除の指示を受けていた。(甲31の1・2,92,原審控訴人D本人)

クレームや異常があった場合の報告等
被控訴人は,巾木工程の製品に関し,その製品の利用者からクレームが寄せられたとき,巾木工程の常勤主任に対し,クレーム品の原因調査と再発防止策の検討を求め,その結果をGがクレーム品報告書としてまとめていた。また,そのクレーム品についての苦情処理完了報告書(甲128の3)の損失見積報告欄には,被控訴人が被る損失の見積額が記載されている。(甲5の1~3,63の1,127の1・3・4,128の1~3)
また,巾木工程及び化成品工程で異常が発生した場合,巾木工程ではG又はH常勤主任が,化成品工程では伊丹工場製造課の担当者が異常報告書(甲6,
7)
を作成し,
被控訴人に提出していた。
異常報告書
には,材料ロス及び工数ロスとして,被控訴人が被る損金が記載されている。なお,
異常報告書は,被控訴人が定めた書式に従って作成され
ている。(甲6の1~3,7の1~3,63の1)
この点に関し,これらのクレームや異常がL社長に報告されていたことをうかがわせる証拠はなく,被控訴人がライフ社に対して損失の補償等を求めたことをうかがわせる証拠もない。


巾木工程とプリント巾木工程との連動
プリント巾木のプリントベースとなる巾木は,巾木工程で生産されている。平成28年12月1日,プリント巾木工程で大量の不良品が発生し,プリント巾木を作り直すため,
巾木工程でも巾木を作り直す必要が生じた。
その際,控訴人Aは,Gからの直接の指示に基づき,既に決定済みの次週の生産予定を前提に,次週に追加可能な生産可能数を算出し,Gは,これに基づき,生産管理部と共に,次週の予定に入れ込む作り直し分の品種数量を決め,週間製造日程表に追加した。この生産予定の変更の過程において,
H常勤主任やL社長が関与することはなかった。
(甲141,
142,
当審控訴人A本人)
平成26年頃以降のライフ社の労働時間の管理や勤務評定等

ライフ社の従業員の労働時間の管理等
勤怠管理
被控訴人の従業員の勤怠管理は,タイムカードではなく,ICカードによるシステムによりなされていた。(原審証人F)
ライフ社の従業員は,被控訴人が以前に使用していたタイムカードの用紙を用いて出退勤時間を打刻していたが,その打刻を失念した場合には,出退勤時間を手書きした上で,H常勤主任やM主任が承認印を押していた。ライフ社が,同タイムカード以外の勤怠管理システムを有していたことを認めるに足りる証拠はない。(甲4の1~6,63の1,171,乙23)
時間外労働
ライフ社では,
平成28年4月11日までは,
従業員が残業する場合,
L社長への事前申告と許可が徹底されていなかったが,同日以降,L社長は,従業員が残業する際には現場事務所に設置したメール可能な携帯電話を用いて事前の連絡と許可を求めるよう指示をした。
控訴人AがL社長に対してリップ会議の残業について連絡した際,L社長は,リップ会議が行われているか否か疑い,リップ会議の議事録の提出を求めた。そこで,H常勤主任,控訴人Dが,Gに平成28年9月29日のリップ会議の議事録の提出を依頼し,Gは,ライフ社にリップ会議の議事録を交付するようになった。
また,L社長は,平成28年10月に控訴人らを含むライフ社の従業員から残業代の支払を求める内容証明郵便を受けた後,同年11月に被控訴人の製造課長と打ち合わせをした。同打ち合わせにおいて,被控訴人の製造課長は,L社長に対し,化成品工程の残業について,必要のない残業を減らすよう指導していること,控訴人Eの午前6時以前の出勤について,被控訴人内で話題になり,やめるよう指導していること等を述べていた。
(甲65,66,89,94,103,114,123,乙12,31~34,原審控訴人D本人,当審控訴人A本人)

ライフ社の従業員に対する勤務評定等
ライフ社の従業員の賃金は,平成11年10月以降,基本給が月額23万円になり,平成18年4月以降に勤続手当(勤続年数×1500円)が支給されるようになり,平成21年4月から基本給が月額24万円になったが,L社長は,平成24年6月から平成27年8月までの間,複数の従業員の勤続手当,主任手当,常勤主任手当の支給を停止したり,有給休暇を認めなかったりすることがあった。
控訴人Dは,平成12年5月,主任に昇格したが,平成25年6月から平成27年8月までの間,勤続手当及び主任手当の支給を停止され,同月に主任から降格され,代わりに控訴人Aが主任に昇格した。
また,L社長は,平成28年1月,ライフ社の従業員の賃金を基本給について1万円を,勤続手当(能力手当)について半額を減額した。(甲92,95,原審控訴人D本人)
被控訴人のライフ社の従業員に対する安全確保等に関する指示,報告やラ
イフ社の従業員の配置等

事故が発生した場合の対応等
控訴人Eは,平成28年10月20日,フォークリフトをシャッターに接触させる事故を起こし,控訴人E及びM主任は,フォークリフトによる事故届出書及びフォークリフトによる事故対策届を作成して被控訴人に提出した。同対策届には,フォークリフト管理者であるM主任が控訴人Eに対して基本操作を厳守するよう指導した旨の記載がある。控訴人Eは,前記事故について,伊丹工場安全衛生事務局宛にヒヤリ・ハット報告書を提出した。同報告書には,J係長の上司コメントとして,フォークリフトの基本操作の徹底と材料倉庫シャッターの確認を指示した旨の記載がある。(甲8の2,9の1,弁論の全趣旨)
また,控訴人Cは,平成29年1月26日,フォークリフトを鉄骨に衝突させる事故を起こした。控訴人C及びH常勤主任は,フォークリフトによる事故届出書及びフォークリフトによる事故対策届を作成して被控訴人に提出した。同対策届には,フォークリフト管理者であるH常勤主任が控訴人Cに対し,通路が狭くなっているときは,前後左右の確認を一層注意深くし,リフトを止めサイドブレーキを使用するよう指導した旨の記載がある。(甲8の1)
このほか,控訴人らとは別のライフ社の従業員が平成27年12月10日にフォークリフトによる事故を起こした際,伊丹工場安全衛生事務局宛に提出したヒヤリ・ハット報告書には,H常勤主任の上司コメントの記載がある。(甲9の2)
なお,フォークリフトによる事故届出書及びフォークリフトによる事故対策届,ヒヤリ・ハット報告書は,いずれも被控訴人が定めた書式に従って作成されている。(弁論の全趣旨)
なお,これらの事故がL社長に報告されていたことをうかがわせる証拠はない。

被控訴人が開催する安全講習へのライフ社の従業員の出席等
被控訴人は,平成28年6月,伊丹工場内の各工程及び各課に対し,同年8月31日及び同年9月7日に安全講習を実施する旨を通知し,化成品工程から2名,巾木工程から合計12名の出席を求めた。(甲64の1・2)
また,平成28年当時,伊丹工場では,カエルカエル作戦(工場内を整理整頓し,清潔に保つための活動)が行われており,巾木工程もその活動を求められた。(甲80)

配置等
巾木工程においてライフ社の従業員が有給休暇を取得する場合などの補充と連絡は主にH常勤主任が行っており,補充や変更は3班のなかでなされていた。(甲63の1,乙12)
化成品工程で,月1,2回溶剤系を調合するときには,ライフ社からMV工程へ派遣されている派遣労働者1名が,充填・缶積作業があるときには,ライフ社からMV工程へ派遣されている派遣労働者1名と巾木工程から1名の応援が,それぞれ来ていた。また,化成品工程の従業員が有給休暇を取得する場合,控訴人Eは,事前にL社長ではなく,被控訴人の従業員であるMV工程のJ係長に連絡し,応援の手配を依頼していた。(甲96,原審控訴人E本人)
巾木工程及び化成品工程の原材料,使用していた機械,設備,本件業務請
負契約1・2の請負金額

原材料及びその費用
本件業務請負契約1・2では,原材料の調達は被控訴人からの支給又はライフ社の材料持ちとされているところ(5条1項),被控訴人では,購買部が購入単価を下げるために,グループ会社での使用分を含めて製品の製造に必要な原材料を一括購入しており,巾木工程及び化成品工程にも原材料を支給していた。被控訴人とライフ社との間では,巾木工程及び化成品工程の原材料の価格等について交渉されたことはなく,請負代金とは別に,
被控訴人が支給した原材料の費用について清算等がされたことはない。(甲15,乙1,19,20,弁論の全趣旨)イ
使用していた機械,設備等
被控訴人は,平成18年10月2日,ライフ社との間で,伊丹工場内の被控訴人が所有する建物について,被控訴人から依頼を受ける業務が終了するまでの間,ライフ社の現場事務所として貸し渡す旨の使用貸借契約を締結した。(甲19)
被控訴人は,ライフ社との間で,平成19年4月1日,巾木製造・成型ライン一式の月額使用料を2万円とする旨の,平成22年8月1日,接着剤製造・加工ライン一式の月間使用料を2万円とする旨の各機械設備賃貸借契約を締結した。当該契約には,ライフ社の善管注意義務に関する定めはあるが(第3条),修理費の負担についての約定はない。なお,
月額使用料が2万円となった理由は不明である。
(甲16,
乙24)
機械に不具合があった場合,ライフ社の従業員が,伊丹工場工務課保全係に連絡し,同係が修理等をしていた。(甲29の1・2,甲94)また,前記リップやダイスも賃貸借契約の対象である製造機械の一部であるが,リップの補修(メッキ化)については,Gが工務課保全係に依頼し,そこから外部業者に出される。(甲33)
ダイスの分解掃除は,前記のとおり,控訴人Dが行っていた。
ライフ社が,これらの機械の修理費やリップの費用等を負担したことはない。


本件業務請負契約1・2の請負金額
平成28年4月1日から平成29年3月31日までの請負金額は,本件業務請負契約1について月額543万2000円(消費税別),本件業務請負契約2について月額125万6000円(消費税別)と定額であり,製造した製品の数量や出来高による増減をしないものであった。ライフ社は,被控訴人に対し,本件業務請負契約1・2につき,巾木製造・成型ライン一式及び接着剤製造・加工ライン一式の月間使用料各2万円を控除して,毎月同額を請求していた。(甲101の2・4・6・8・10・12・14)
請負代金に関する補足説明
被控訴人は,請負代金について,
前年度上半期の実績値と当該年度上
半期の生産計画に基づいて,標準原価法に基づく標準原価を還元する方式に基づき,①被控訴人において標準原価(総原価)を割り出し,②当該総原価からライフ社に請負で外注していない工程費用を控除して,請負で外注している部分の原価を割り出した上で,③当該外注部分の原価を月数で除して1か月当たりの金額を割り出し,④当該1か月当たりの金額からライフ社の負担とする原材料費・間接費用(光熱費等)を控除した金額を算出し,他方,⑤ライフ社は,ライフ社として受注できる金額を被控訴人に提示し,⑥上記⑤の金額が上記④の金額以下であれば,両者間において,請負代金を決定するというプロセスであり,請負代金を決定する過程で,原材料費が控除されることにより,ライフ社が原材料費を実質的に負担している旨主張する。
しかしながら,仮にそのようなプロセスで請負代金額が決定されているとしても,前年度の実績により算定されるから,当該年度において,ライフ社が使用した原材料費が高騰したり,使用量が増加したりして原材料費が増えたとしても,当該年度にその清算がされることはない。翌年度もライフ社が受注することになれば,結果的にライフ社が前年度の原材料費を負担したといえないこともないが,ライフ社が翌年度も受注するとは限らない。
それのみならず,被控訴人の主張するようなプロセスで被控訴人において請負代金額を決定していたのであれば,
前記④で算出される金額は,
結局,ほぼ人件費に相当する部分で,被控訴人が想定する最大額ということとなり,他方,ライフ社が前記⑤で提示する金額は,ライフ社が原材料費・間接費用(光熱費等)を負担しない前提で代金を算定することとなるので,ライフ社が負担するライフ社の従業員への賃金,製造機械の使用料月額2万円とライフ社の利益を考慮した額ということになる。すなわち,被控訴人の主張する計算においてライフ社の負担とされている原材料費の金額の当否についてライフ社に交渉の余地があったことを認めるに足りる証拠はないから,当該原材料費は,被控訴人が自ら原材料費を支出し,その余を外注した場合の妥当な発注額を決定するために用いられている被控訴人内部の計算上の数値にすぎないのであり,ライフ社は,被控訴人内部の計算とは関係なく自らは原材料費やその変動リスクを負担しない前提で人件費等を考慮し受注額を提示するのであるから,ライフ社が請負代金の中から原材料費を負担しているということはできない。被控訴人の前記主張に従えば,原材料費を被控訴人が支出し,負担しているにもかかわらず,被控訴人の内部計算上,妥当な外注額を決める際,製造原価から原材料費相当額を控除する分だけ外注額が少なくなる(受注者からみれば,受注額が少なくなる。)ことを理由に,常に実質的にみれば原材料費は受注者が負担することになるという説明をすることになるのであって,不合理である。同主張は採用することができない。
本件業務請負契約1・2によりライフ社が負うべき責任について
本件業務請負契約1・2には,ライフ社が被控訴人に引き渡した製品に瑕疵があったとき,ライフ社は自らの責任と費用負担をもって被控訴人の指定する期日までにこれを修復する旨の定め(8条5項),ライフ社において,被控訴人の要求する品質検査基準に適合しない場合には,被控訴人は,契約を解除することができる旨の定め(15条)がある。
しかし,ライフ社が独自に品質検査等をしていたことを認めるに足りる証拠がないことは前記のとおりであり,巾木工程及び化成品工程で製造した製品に不具合があった場合に,ライフ社の従業員が被控訴人に対しその原因に関する報告等をしたり,被控訴人から製品の作り直しを指示されることがあったことは認められるが,請負代金が減額されたり,原材料が増加した分について負担を求められたことをうかがわせる証拠もない。
ライフ社の従業員教育について
ライフ社は,独自に従業員の募集を行っていた。ライフ社の従業員教育については,平成26年頃までは,巾木工程では被控訴人の従業員から指導を受けたことがあったが,主任を中心にライフ社の従業員が工程内教育・指導を行っていた。(甲63の1・2,弁論の全趣旨)
控訴人Eは,化成品工程に異動となってから約1年間,ライフ社からMV工程へ派遣されている派遣労働者から指導を受けた。(甲96)

被控訴人が平成29年3月にライフ社と労働者派遣契約を締結した経緯ア
巾木工程においては,通常,1,2月頃に,被控訴人から増産を要請されることがあり,その繁忙期にはライン稼働を3ラインから4ラインにして対応することがあった。当初,ライフ社は,短期で臨時に人を雇い,各班5名体制にして対応していたが,平成20年頃から,増産期間が短くなり,工程作業も複雑化し,多品種少量生産になったこともあり,短期で作業を覚えることも難しくなり,短期の採用に応募する人も少なくなったため,繁忙期に限り,4名3交代制から6名2交代制の12時間勤務制で対応していた。(甲89,94)


L社長は,平成28年1月,被控訴人から同年2月以降の巾木の増産を要請されたことから,ライフ社の従業員に対し,巾木工程について従前の3交代制(8時間勤務)から2交代制(12時間勤務)に応じるよう,ライフ社労組との間で団体交渉をし,同年1月25日,ライフ社労組とライフ社との間で三六協定が締結された。(甲89,94~96)。ウ
L社長は,平成29年1月,被控訴人から同年2月以降の巾木の増産を要請された。その頃,ライフ社労組に対し,三六協定の更新を求めていたが,合意することができず,ライフ社とライフ社労組との間の三六協定は同年1月25日に失効したため,L社長は,ライフ社の従業員に対し,時間外労働をしないよう指示した(甲89,94,乙22)。


L社長は,平成29年2月,被控訴人の増産要請に対応するため,外部から派遣労働者3名を受け入れて増員することを企図したが,巾木工程の現場から,1週間の教育期間ではかえって足手まといになるとの苦情が出され,実現しなかった。(甲89,94)
L社長は,F工場長に対し,同月22日,同月限りで本件業務請負契約1を解消する意向を伝え,同年3月から労働者派遣として,ライフ社の従業員に対して直接指示をして増産対応をしてほしい,同月中には別の業者に引き継ぎ,同月末をもって伊丹工場から撤退する意向を伝え,F工場長は,この申し出を受け入れた。(甲89,94,乙22)

被控訴人とシグマ社の労働者派遣契約
シグマ社は,平成29年3月20日,同月21日にライフ社の従業員19名と採用面接を実施した。その後,ライフ社労組の組合員16名のうち,控訴人らを除く11名がライフ社労組を脱退した。シグマ社は,ライフ社の従業員19名のうち,ライフ社労組から脱退しなかった控訴人らを除く14名を採用した。被控訴人は,シグマ社との間で労働者派遣契約を締結し,同年4月1日以降,シグマ社が採用した元ライフ社の従業員をそのまま巾木工程及び化成品工程に派遣労働者として受け入れ,被控訴人の従業員とともに作業をしている。(甲97,98,乙21,弁論の全趣旨)


労働者派遣契約下における巾木工程及び化成品工程の業務の流れ
生産管理部が,1週間ごとに巾木工程及び化成品工程の製造依頼書を作成し,
伊丹工場製造課に発行する。
製造課製作係において生産計画を立て,週間製造日程表を作成し,巾木工程及び化成品工程は,週間製造日程表に基づき製品を製造する。なお,製造依頼書は,本件業務請負契約1・2の際においてライフ社に交付していたものと同じ書式であり,週間製造日程表は,ライフ社が作成していたものと同じ書式である。また,製造された製品を搬入・搬出するために,本件業務請負契約1の際にライフ社が使用していた書式と同じ受入伝票と製品カードを使用している。
労働者派遣契約に切り替えられた後も,巾木工程における伝達事項は,本件請負契約1の際と同様,主任であるライフ社の従業員を通じて,他のライフ社の従業員に伝達されており,被控訴人が,個々のライフ社の従業員に直接伝達事項を伝えることはなかった。なお,被控訴人は,Gが製造課のJ係長らに平成29年3月1日以降の巾木工程のシフトの変更(3班4名体制から2班6名体制になった後の班のメンバー変更)
を連絡したメール
(甲47)
は,労働者派遣契約に切り替え後は被控訴人がライフ社の従業員のシフト決定に関与することができるようになったことを示すものである旨主張するが,同メールの内容はGが巾木工程の班のメンバーの変更を被控訴人の他の部署に連絡するものにすぎず,Gが班のメンバーを決定していたことを示すものということはできない。同主張は採用することができない。
(原審証人F,弁論の全趣旨)
2
争点1(巾木工程及び化成品工程は,遅くとも平成29年3月頃には偽装請負等の状態にあったか)について
労働者派遣法2条1号は,労働者派遣の意義について,自己の雇用する労働者を,当該雇用関係の下に,かつ,他人の指揮命令を受けて,当該他人のために労働に従事させることをいい,当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとすると定めている。一方,請負は,当事者の一方がある仕事を完成することを約し,相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約するものであり(民法632条),請負人に雇用されている労働者に対する指揮命令は請負人に委ねられている。
よって,請負人による労働者に対する指揮命令がなく,注文者がその場屋内において労働者に直接具体的な指揮命令をして作業を行わせているような場合には,請負人と注文者との間において請負契約という法形式が採られていたとしても,これを請負契約と評価することができない。労働者派遣と請負との区別については,当判決別紙4の労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準を定める告示(昭和61年労働省告示第37号。平成24年厚生労働省告示第518号による改正後のもの。以下本件区分基準という。)が公表されている(乙25参照)。本件区分基準は,労働者派遣法の適正な運用を確保するためには労働者派遣事業に該当するか否かの判断を的確に行う必要があるという観点から同法の行政解釈を示したものであり,その内容には合理性が認められるから,本件においても,これを参照するのが相当である。
本件での検討

ライフ社が自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであるか否かについて
前記認定事実のとおり,平成26年頃以降,ライフ社の遂行責任者として,巾木工程にはH常勤主任が,化成品工程にはM主任が配置されていたこと,
被控訴人は,
巾木工程及び化成品工程に製造依頼書を交付し,
巾木工程のH常勤主任及び化成品工程のM主任が週間製造日程表を作成していたこと,伊丹工場製造課等と巾木工程及び化成品工程との日常的な連絡は,巾木工程では伊丹工場巾木工程の名称のアドレスを,化成品工程ではM主任の名称のアドレスを使用し,製造課等とH常勤主任及びM主任との間でメールの送受信がされており,製造課等とライフ社の従業員個人との間でメールの送受信がされることはなかったこと,伊丹工場製造課の担当従業員は,巾木工程及び化成品工程の製造過程における留意点等をまとめた伝達事項を作成してH常勤主任及びM主任に交付し,これが各作業場の掲示板に掲載されていたことが認められる。これらの点をみれば,ライフ社と被控訴人による本件業務請負契約1・2により定めた方法により,被控訴人のライフ社に対する業務遂行上の指示が遂行責任者を通じてなされていたようにも見える。
しかしながら,伊丹工場において,主任を通じて現場の各従業員に情報が伝達するという方法が,巾木工程及び化成品工程に限られていたことを認めるに足りる証拠はない。組織において,業務に関する情報が職制を通じ,上長から伝達されることは通常のことであり,被控訴人が,巾木工程及び化成品工程において,H常勤主任やM主任との間で情報をやり取りし,その配下のライフ社の従業員とは直接やりとりをしていなかったからといって,被控訴人がライフ社の従業員に対し指示を行っていなかったことになるわけではない。むしろ,伝達された情報の内容をみれば,被控訴人の技術スタッフの作成した伝達事項の内容は,具体的な作業手順の指示であったと認められる(被控訴人は,伝達事項は被控訴人とライフ社との間で協議し,確定した事項について,書面によりライフ社に通知しているものにすぎない旨主張するが,巾木工程及び化成品工程において,被控訴人からの伝達事項とは別にライフ社が独自のノウハウや専門的知見に基づき具体的な作業手順を検討し,考案するなどしていた形跡はないから,形式的に協議という形をとっていたとしても,その実態は被控訴人による具体的な業務遂行上の指示であったと評価するほかはない。)。さらに,リップ会議の開催やダイスの分解掃除については,被控訴人の従業員から,直接,ライフ社の従業員に対する具体的な指示がされていたことは明らかである。被控訴人は,生産管理部からの製造依頼書の交付とライフ社による週間製造日程表の作成が請負契約の受発注のプロセスである旨主張する。しかし,製造依頼書の交付及び週間製造日程表の作成は,巾木工程及び化成品工程に固有のものではなく,業務請負ではない伊丹工場の他の工程でも行われていたのであり,平成29年3月に巾木工程が業務請負から労働者派遣に切り替えられた後も,巾木工程における製造依頼書の交付及び週間製造日程表の作成は切り替え前と同じ方法で行われていたことが認められる。また,ライフ社が被控訴人からの製造依頼に対し,その変更を求めたり,内容について交渉したりしていたことをうかがわせるような証拠はない一方,ライフ社が作成し,被控訴人の技術スタッフが確認していた週間製造日程表は,現場において毎日製造すべき製品の型番及び数量を記載した詳細なものであり,被控訴人の技術スタッフから修正を受けることもあったから,ライフ社が週間製造日程表を作成するに当たり,その作業遂行の速度,作業の割り付け,順序を自らの判断で自由に決定することができたと認めることはできない。さらに,ライフ社が各工程において製造した製品を被控訴人に引き渡す前に,ライフ社独自の品質検査や検品を行っていたことを認めるに足りる証拠がないことは,前記したとおりである。したがって,製造依頼書の交付及び週間製造日程表の作成をもって,請負契約の受発注のプロセスであると評価することは困難である。むしろ,週間製造日程表の作成は,被控訴人が,他の工程と同様,巾木工程及び化成品工程においても現場の労働力を直接支配していたことを示すものということができる。
したがって,ライフ社は,巾木工程及び化成品工程において,業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行っていたと認めることはできないから,本件区分基準2条一イに定める請負の要件は満たされていない。次に,前記認定事実によれば,労働者の始業及び終業の時刻,休憩時間,休日,休暇等に関しては,ライフ社の従業員との労働契約の条件に従って行われており,ライフ社の従業員の勤怠管理は,被控訴人とは別に,ライフ社が行っていたことが認められるほか,ライフ社の従業員の時間外労働については,平成28年4月頃以降,L社長は事前の許可を求めていたことが認められる。しかしながら,L社長がリップ会議の開催に疑問を持っていたことからうかがわれるように,ライフ社が管理支配していないリップ会議にライフ社の従業員が出席していたこと,リップ会議後,Gがライフ社の従業員に対し残業時間を伝えていたこと,平成28年12月1日,プリント巾木工程で大量の不良品が発生し,巾木工程の生産予定を変更する必要が生じた際,L社長やH常勤主任がこれに関与していた事実は認められないこと,これらに加え,化成品工程の残業に関し,平成28年11月にL社長と被控訴人の製造課長が行った打ち合わせの内容(甲123)に照らすと,L社長は,ライフ社の従業員の労働実態を把握,管理しておらず,不要な残業をなくすことについても,一般的・抽象的な呼びかけをすること以外にライフ社として現場の実態や個々の従業員の稼働状況に即した具体的な指導を行っていたとは認められない。したがって,ライフ社は,単に労働者の労働時間を形式的に把握していたにすぎず,労働時間を管理していたとは認めることはできないから,本件区分基準2条一ロに定める請負の要件も満たされていない。
さらに,前記認定事実のとおり,ライフ社の従業員が事故を惹起した場合には,ライフ社の常勤主任又は主任が被控訴人に対して報告するとともに,当該従業員を指導していたことが認められるが,L社長に伝えられたことや,これに基づき,ライフ社として,従業員の服務規律に関する指示が行われていたことを認めるに足りる証拠はない。また,請負であれば,ライフ社の従業員が有給休暇をとる場合において仕事の完成を確保するための応援者を手配することはライフ社の責任で行うべき事項であると考えられるが,2名しか配属されていない化成品工程において控訴人Eが有給休暇をとる場合の応援者の手配は,被控訴人の従業員であるJ係長に連絡することにより行われており,L社長が関与していた形跡はない。これらの点に照らすと,本件区分基準2条一ハに定める請負の要件も満たされているとはいえない。

ライフ社が請負契約により請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであるか否かについて
前提となる事実及び前記認定事実のとおり,本件業務請負契約1・2の請負代金は,巾木工程及び化成品工程ともに定額であり,製品に不具合が生じた場合,ライフ社から被控訴人に対して報告等がされていたが,本件業務請負契約1・2に基づきライフ社が一度でも被控訴人から請負人としての法的責任の履行を求められた形跡はないから,実態として,ライフ社が請負契約に基づく請負人としての法律上の責任を負っていたとは認められない。
また,巾木工程及び化成品工程の製品の原材料をライフ社が自ら調達していたということができないことは,前記請負代金についての補足説明において判示したとおりである。また,ライフ社は,被控訴人から現場事務所を無償で貸与され,巾木工程及び化成品工程の製造ラインを月額使用料2万円として被控訴人から賃借していたが,月額使用料2万円の根拠は不明であり,製造機械の貸与について,修理費の負担については何ら定めがなく,その負担について何ら協議された形跡はなく,被控訴人が修理費の一切を負担していたと認められ,これに反する証拠はない。したがって,ライフ社が,原材料や製造機械を自己の責任や負担で準備し,調達したと評価することはできない。さらに,ライフ社の従業員は,巾木工程でライフ社の従業員だけになった後は,主任を中心に工程内教育・指導を行っていたが,平成29年2月,被控訴人から増産要請があり,L社長が派遣労働者3名を増員することを企図した際に,巾木工程の現場から,1週間の教育期間では対応できないことを理由に反対があり,実現しなかったことからすると,ライフ社には独自に巾木工程や化成品工程で必要な社員教育を行う能力やノウハウがあったとは認められない。そもそも,控訴人らが巾木工程で稼働するために必要となる知識や技量は,被控訴人の従業員であったSが控訴人らをオンザジョブで指導したことにより得られたものであったことが認められるのであり,ライフ社から教育や研修を受けたことによるものではない。
これらの事情を考慮すると,ライフ社は,被控訴人から請負契約により請け負った業務を自らの業務として被控訴人から独立して処理していたものということができないから,本件区分基準2条二の請負の要件も満たされていない。

以上によれば,ライフ社が本件業務請負契約1・2に基づいて被控訴人の伊丹工場の巾木工程及び化成品工程で行っていた業務は,本件区分基準にいう請負の要件を満たすものということはできない。もともと,平成15年法律第82号による労働者派遣法附則4項の改正(平成16年3月1日施行。以下平成16年改正という。)がされる前は,製造業において産休産後休業等の場合を除き労働者派遣事業を行うことは禁止されていたが,ライフ社の従業員は,平成11年頃からライフ社と被控訴人との間の業務請負契約に基づき,伊丹工場の巾木工程で稼働しており,当時の巾木工程においては,ライフ社の従業員と被控訴人の従業員とが混在し,ともに被控訴人の指揮監督下で労務を提供していたことが認められるから,当該業務請負契約が請負としての実態がなく製造業における労働者派遣禁止を免れるための脱法的行為であったことは明らかである。その後,平成16年改正により製造業における労働者派遣が認められた後も,平成22年頃までは巾木工程や化成品工程でライフ社の従業員と被控訴人の従業員が混在しており,同年頃,被控訴人の従業員Sがプリント巾木工程に異動し,混在が解消された後も,控訴人らは,他の被控訴人の工程における労働者と同様,その製造の詳細な手順や方法について被控訴人から指示を受け,被控訴人の製造計画に従って製品を製造していたのであり,その労働時間を実質的に管理していたのも被控訴人であったことが認められるのであるから,本件業務請負契約1・2について,独立の業務請負契約としての実態があったとは認められない。したがって,巾木工程及び化成品工程は,遅くとも本件業務請負契約1・2が締結された平成28年4月1日以降,巾木工程については本件業務請負契約1が終了した平成29年2月28日まで,化成品工程については本件業務請負契約2に基づき役務の提供を受けた同年3月30日まで,いずれも偽装請負等の状態にあったものというべきである。
3
争点2(被控訴人には偽装請負等の目的があったか)について
労働者派遣法40条の6の規定は,平成24年法律第27号2条(平成27年10月1日施行)により新設された規定である。同規定の制度趣旨は,違法派遣の是正に当たって,派遣労働者の希望を踏まえつつ雇用の安定を図ることができるようにするため,違法派遣を受け入れた者に対する民事的な制裁として,当該者が違反行為を行った時点において,派遣労働者に対し労働契約の申込みをしたものとみなすことにより,労働者派遣法の規制の実効性を確保することである(甲136)。しかるところ,同項1号(禁止業務違反),同項2号(無許可事業主からの派遣受け入れ),同項3号及び4号(派遣の期間制限違反)とは異なり,同項5号(偽装請負)の場合には,労働者派遣の役務の提供を受ける者に偽装請負等の目的があることが要件とされている。これは,同項1号から4号までは,違反事実が比較的明らかであるのに対し,同項5号の場合には,労働者派遣の指揮命令と請負の注文者による指図等の区別は微妙な場合があり,請負契約を締結した者が労働者派遣におけるような指揮命令を行ったというだけで,直ちに前記民事的な制裁を与えることが相当ではないと考えられることから,特に偽装請負等の目的という主観的要件を付加したものと解される。このような主観的要件は,労働者派遣の役務の提供を受ける者が自らこれを認めるような場合を除き,通常,客観的な事実から推認することになると考えられるが,偽装請負等の目的という主観的要件が特に付加された趣旨に照らし,偽装請負等の状態が発生したというだけで,直ちに偽装請負等の目的があったことを推認することは相当ではない。しかしながら,日常的かつ継続的に偽装請負等の状態を続けていたことが認められる場合には,特段の事情がない限り,労働者派遣の役務の提供を受けている法人の代表者又は当該労働者派遣の役務に関する契約の契約締結権限を有する者は,偽装請負等の状態にあることを認識しながら,組織的に偽装請負等の目的で当該役務の提供を受けていたものと推認するのが相当である。
これを本件についてみると,前記のとおり,ライフ社が被控訴人と業務請負契約を締結して巾木工程に関与を始めた平成11年頃のライフ社の被控訴人に対する役務の提供が偽装請負であったことは明らかであり,そのことを被控訴人も認識していたことは優に認められる。そして,平成16年改正により製造業が労働者派遣の対象業務として認められた後も,伊丹工場の巾木工程におけるライフ社の従業員の労務提供の在り方が直ちに変更されることはなく,平成22年頃までは,巾木工程では被控訴人の従業員Sがライフ社の従業員と共に稼働していたことが認められ,化成品工程でも被控訴人の従業員とライフ社の従業員が混在していたことが認められる。確かに,平成26年頃,被控訴人は,プリント巾木工程のSが巾木工程のライフ社の従業員を指導したことが請負契約における指揮命令権の観点から問題があると考え,Sをプリント巾木工程から異動させたことが認められるが,このことは,逆にいえば,被控訴人において本件業務請負契約1・2が偽装請負とされる可能性を意識していたことを示すものである。そして,前記検討したところによれば,被控訴人は,従業員の混在がなくなった後も巾木工程及び化成品工程におけるライフ社の従業員に対する業務遂行上の具体的な指示を続けるなど,偽装請負等の状態を解消することなく,日常的かつ継続的に偽装請負等の状態を続けていたのであるから,本件業務請負契約1・2が解消されるまでの間,被控訴人には,偽装請負等の目的があったものと推認することができる。
これに対し,被控訴人は,①平成28年当時,被控訴人伊丹工場では,労働者派遣契約を締結している工程も存在しており,偽装請負を行う必要などなかったこと,②請負契約を締結していた工程は外注に馴染む工程であったこと,③被控訴人が,平成29年3月1日,巾木工程について労働者派遣契約を締結したのはライフ社やシグマ社の申出に基づくものであったこと等に鑑みれば,被控訴人とライフ社との間の業務請負契約の締結権者であったF工場長において,労働者派遣法の規制を回避する意図を有していなかったことは明らかである旨主張する。
しかしながら,前記のとおり,現に巾木工程及び化成品工程における労働実態が,偽装請負等の状態に該当し,これが日常的かつ継続的に行われていたことが認められる以上,被控訴人の主張する①及び②の点は,偽装請負等の目的についての前記推認を覆すに足りるものではない。また,③の点については,ライフ社やシグマ社の申出に基づくものか否かにかかわらず,被控訴人が,平成29年3月1日,巾木工程を業務請負契約から労働者派遣契約に切り替えることを承諾し,切り替え後も切り替え前と同じ態様で製造を継続することができたことは,むしろ,切り替え前において,被控訴人が偽装請負等の状態を認識しながら,これを改善することなく組織的に偽装請負等の状態を継続していたことを推認させるものということができる。したがって,被控訴人の主張はいずれも採用することができず,他に,被控訴人が偽装請負等の目的を有していた旨の前記認定を覆すに足りる特段の事情は見当たらない。そして,このように偽装請負等の目的があったことが認められる以上,被控訴人に労働者派遣法40条の6第1項ただし書の善意無過失が認められる余地はないというべきである。
しかるところ,同項本文の規定により,労働契約の申込みをしたとみなされる場合には,違法行為がされている日ごとに労働契約の申込みをしたとみなされることになる(甲136)。したがって,被控訴人は,同項5号に基づき,巾木工程のライフ社の従業員に対しては,本件業務請負契約1が終了した平成29年2月28日まで,化成品工程のライフ社の従業員に対しては,本件業務請負契約2に基づき役務の提供を受けた同年3月30日まで,毎労働日に労働契約の申込みをしたものとみなされるというべきである。4
争点3(控訴人らの労働条件)について
期間の定めについて

控訴人Cについて
前記補正の上引用した原判決の前提となる事実のとおり,控訴人Cとライフ社との労働契約は,平成25年9月13日から平成29年3月30日(ライフ社から整理解雇された日。以下同じ。)まで契約が継続していたことが認められる。しかるところ,証拠(甲159,162の1・2)によれば,この間,控訴人Cとライフ社は労働契約書を交わしたことがないこと,平成28年3月26日に行われたライフ社労組とライフ社との団体交渉において,
L社長が

そもそも,だってウチは有期雇用じゃないから,元々。

と述べていることが認められるから,控訴人Cとライフ社との間の労働契約は期間の定めがなかったものと認めるのが相当である。なお,雇用期間平成27年12月16日から平成28年4月15日までとの記載のある労働契約書(継続)(甲3の2)については,控訴人Cの署名押印はないから,ライフ社が控訴人Cに対して一方的に交付したものであると推認するのが相当であり,控訴人Cとライフ社との間の労働条件を認定するための証拠としては採用することができない。また,被控訴人は,前記団体交渉の際に,ライフ社労組が読み上げたライフ社の回答内容からすると,ライフ社と控訴人らとの労働契約は期間の定めのあるものであることは明らかである旨主張するが,証拠(甲162の1・2,175,乙36)によれば,ライフ社の回答は労働者に対して就業規則に基づく労働契約の更改を求めているにすぎず,就業規則(甲172)には雇用期間に関する定めはないから,前記回答は何ら雇用期間の定めの有無とは関係がないというべきであり,この点の被控訴人の主張は採用することができない。イ
控訴人Aについて
前記補正の上引用した原判決の前提となる事実のとおり,控訴人Aは,
平成12年7月末頃,ライフ社に入社した後,平成13年9月に退職,平成15年10月に復職,平成17年3月に退職,平成18年8月に復職,平成20年4月に退職,平成21年5月に復職,平成23年9月退職し,平成27年5月11日の復職以降は,平成29年3月30日までライフ社との労働契約が継続していたことが認められる。しかるところ,証拠(甲157)によれば,平成27年5月11日から平成29年3月30日までの間,控訴人Aはライフ社と労働契約書を交わしたことがないこと,前記のとおり,
L社長が

そもそも,だってウチは有期雇用じゃないから,元々。

と述べていることが認められるから,控訴人Aとライフ社との間の労働契約は期間の定めがなかったものと認めるのが相当である。なお,雇用期間平成27年12月16日から平成28年4月15日までとの記載のある労働契約書(継続)(甲3の1)については,控訴人Aとライフ社との間の労
働条件を認定するための証拠として採用することができないのは,控訴人Cの場合と同じである。

控訴人Dについて
前記前提となる事実のとおり,
控訴人Dとライフ社との間の労働契約は,
平成10年11月20日から平成29年3月30日まで継続していたことが認められるところ,証拠(甲167,168)及び弁論の全趣旨によれば,この間,控訴人Dが署名押印したのは,平成10年11月20日付けの労働契約書(新規)と,控訴人D署名押印はないが,控訴人Dが署名押印したことを自認している平成19年4月頃の雇用期間平成19年4月1日から平成20年3月31日まで(自動更新とする)旨の記載がある労働契約書(継続)(甲168)しかない。なお,雇用期間平成27年12月16日から平成28年4月15日までとの記載のある労働契約書(継続)(甲3の3)については,控訴人Dとライフ社との間の労働条件を認定するための証拠として採用することができないのは,控訴人Cの場合と同じである。
控訴人Dの労働契約は,平成10年以降18年以上継続しており,その間,甲168の労働契約書等が作成されたことがあったというだけで,有期雇用契約であったと認めるのは,その労働実態と合致しない上,更新手続が行われていたことを認めるに足りる証拠もない。そして,前記のとおり,L社長が

そもそも,だってウチは有期雇用じゃないから,元々。

と述べていることや控訴人Dよりもライフ社における勤務期間の短い控訴人Cや控訴人Aの労働契約については期間の定めがないものであったと認められることに照らすと,控訴人Dについてもライフ社との間の労働契約は期間の定めがなかったものと認めるのが相当である。


控訴人E及び控訴人Bについて控訴人Eとライフ社との間の労働契約は平成11年1月19日から平成29年3月30日まで約18年以上,控訴人Bとライフ社との間の労働契約は平成12年8月1日から平成29年3月30日まで約16年以上,それぞれ継続しており,各労働契約が有期雇用契約であったと認めるのは,その労働実態と合致しない上,証拠(甲158,161)及び弁論の全趣旨によれば,この間,控訴人E及び控訴人Bが署名押印した契約書は,入社当初の契約書と平成19年4月頃の契約書しかないことが認められ,更新手続が行われていたことを認めるに足りる証拠はない。そうすると,控訴人E及び控訴人Bについても,控訴人Dと同様な理由により,ライフ社との間の各労働契約は期間の定めがなかったものと認めるのが相当である。賃金,その他の労働条件について
証拠(甲163,164の5,169~172)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人らの賃金は,当判決別紙1労働契約一覧の各賃金欄,その他の労働条件は,同別紙の仕事内容欄,就労時間欄,休日欄に各記載のとおり認められる。
労働契約の成立について
前記補正の上引用した原判決の前提となる事実のとおり,控訴人E以外の控訴人らは,被控訴人に対し,平成29年3月17日,被控訴人の雇用の申込みを承諾する旨の意思表示を発し,同月21日に到達したことが認められるから,平成29年法律第44号附則19条1項の規定によりなお従前の例によることとされる場合における同法による改正前の民法(以下旧民法という。)526条により,同月17日に当判決別紙1労働契約一覧の1から4までのとおり,労働契約が成立したものと認めることができる。被控訴人は,控訴人らの労働契約が有期雇用契約であったことを前提に,各労働契約は最長でも平成29年4月15日までのものになる旨主張するが,前記のとおり,控訴人らの労働契約は,いずれも期間の定めのないものであったと認められるから,同主張は採用することができない。また,被控訴人は,ライフ社と控訴人らとの労働契約は,同年3月30日に整理解雇により終了しているから,被控訴人との間で成立する労働契約も同日までのものにならざるを得ないとも主張する。しかしながら,ライフ社との間で期間の定めのない労働契約を締結していた控訴人らが,労働者派遣法40条の6第2項の期間内に同条3項の承諾する旨の意思表示をしたときは,当該承諾する旨の意思表示をした同月17日の時点で被控訴人との間では期間の定めがない労働契約が成立することになるはずであるから,その後,同月30日にライフ社が控訴人らを整理解雇したからといって,既に被控訴人との間で成立した期間の定めのない労働契約の内容や効力に影響を与えることはないというべきである。したがって,被控訴人の同主張も採用することができない。5
争点4(控訴人Eの承諾の意思表示の時期)について
控訴人Eは,ライフ社労組の執行委員長として,平成29年3月24日に被控訴人に対し直接雇用を求める団体交渉要求書を発し,被控訴人の申込みに対して承諾しているから,同日には労働契約が成立している旨主張する。しかしながら,控訴人Eは,ほかの控訴人らが承諾通知を発した際には,そのときには家族の同意が得られなかったため,一緒に承諾通知を発しなかった旨述べていることが認められ(甲84),また,前記補正の上引用した原判決の前提となる事実のとおり,ライフ社労組は,被控訴人に対し,労働者派遣法40条の6に基づき直接雇用の申込みに対し承諾通知を行っている従業員らについて雇用契約が成立したと扱うことなどを求めて団体交渉を行っており,承諾通知を行っている従業員らに控訴人Eは含まれていないことは明らかであるから,この点の控訴人Eの主張は採用することができない。しかしながら,控訴人Eは,同年8月25日に承諾通知を発しているから,旧民法526条により,同日に当判決別紙1労働契約一覧記載5の労働契約が成立したものと認められる。被控訴人は,控訴人Eについては,ライフ社との労働契約の期間内に承諾する旨の意思表示がされておらず,また,派遣労働者に係る労働契約が終了している場合には,労働者派遣法40条の6の規定により派遣先である被控訴人との間で労働契約が成立する余地はないと主張する。
しかし,労働者派遣法40条の6第2項の文言上,同条3項の承諾する旨の意思表示は同条1項に規定する行為が終了した日から1年を経過する日までの期間以内になされなければならないこと以外の要件は定められていない。同条は,違法派遣を是正するに当たり,派遣労働者の希望を踏まえつつ雇用の安定を図ることができるようにすることを制度趣旨とする規定であるから,同条1項により派遣先が労働契約の申込みをしたとみなされる場合には,その後,
当該派遣労働者の労働契約が終了したとしても,
同条2項の期間内は,
当該派遣労働者は,その希望により派遣先との間で労働契約を成立させることができると解するのが制度趣旨に合致する。また,被控訴人の主張が,同条の規定の効果に関し,同条により派遣先との間で成立する労働契約の存続期間については,
派遣労働者に係る元の労働契約に含まれる内容
(残存期間)
がそのまま適用されるとの考え方を前提とするものであれば,
本件において,
控訴人Eが平成29年3月30日に整理解雇されたという事実は期間の定めのない労働契約を終了させた具体的事実ではあっても,労働契約において定められていた労働条件ではないから,同条1項にいう同一の労働条件に含まれると解することには疑問がある。
それのみならず,
被控訴人の主張は,
同条と同趣旨の規定の新設を提言した平成21年12月28日労働政策審議会答申(甲154)の直前である同月22日に開催された第141回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会(甲153)におけるT公益委員の説明(申込みの内容につきましては,派遣元との契約と同じものでありますが,派遣先との雇用契約が例えば1年間の雇用契約であった場合,派遣元との契約の残り期間や派遣先との契約がすでに終了している否かにかかわらず,労働者の受諾の時点から1年間の雇用契約となります。)とも整合しない。これに加え,前記した同条の制度趣旨を踏まえると,被控訴人の同主張は採用することができない。
6
まとめ
したがって,被控訴人は,労働者派遣法40条の6第1項5号に該当する行為を行い,遅くとも平成29年2月28日(控訴人Eについては同年3月30日)に同項柱書本文により労働契約の申込みをしたものとみなされ,これに対して,控訴人Eを除く控訴人らは,同条第2項の期間内である同月17日に承諾する旨の意思表示を発したから,旧民法526条により,同日,控訴人Eを除く控訴人らと被控訴人との間に,当判決別紙1労働契約一覧記載1から4までの各労働契約が成立したと認められ,控訴人Eを除く控訴人らには,被控訴人に対し,契約成立後の日である同年4月1日から当判決別紙1労働契約一覧記載1から4まで各労働契約に係る賃金(当判決別紙2賃金一覧各記載のとおり)の支払を求める権利が認められる。
また,控訴人Eも労働者派遣法40条の6第2項の期間内である同年8月25日に承諾する旨の意思表示をしたから,同日,
控訴人Eと被控訴人との間に,
当判決別紙1労働契約一覧記載5の労働契約が成立したと認められ,控訴人Eには,被控訴人に対し,同日から当判決別紙1労働契約一覧記載5の労働契約に係る賃金(当判決別紙2賃金一覧記載のとおり)の支払を求める権利が認められる。

第4

結論
以上と異なり,控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は相当ではないから,原判決を取り消し,主文のとおり判決する。

大阪高等裁判所第2民事部
裁判長裁判官

清水川畑響
裁判官

正文
裁判官


47頁及び別紙3は記載省略
々木愛彦
別紙2
1
賃金一覧

控訴人A
平成29年4月から平成30年3月まで

月額24万6500円

平成30年4月から平成31年3月まで

月額24万8000円

平成31年4月から令和2年3月まで

月額24万9500円

令和2年4月から令和3年3月まで

月額25万1000円

令和3年4月から令和4年3月まで

月額25万2500円

以降毎年4月に1500円増額した金額
2
控訴人B
平成29年4月から平成30年3月まで

月額26万4000円

平成30年4月から平成31年3月まで

月額26万5500円

平成31年4月から令和2年3月まで

月額26万7000円

令和2年4月から令和3年3月まで

月額26万8500円

令和3年4月から令和4年3月まで

月額27万0000円

以降毎年4月に1500円増額した金額
3
控訴人C
平成29年4月から平成30年3月まで

月額23万6500円

平成30年4月から平成31年3月まで

月額23万8000円

平成31年4月から令和2年3月まで

月額23万9500円

令和2年4月から令和3年3月まで

月額24万1000円

令和3年4月から令和4年3月まで

月額24万2500円

以降毎年4月に1500円増額した金額
4
控訴人D
平成29年4月から平成30年3月まで

月額26万7000円

平成30年4月から平成31年3月まで

月額26万8500円

平成31年4月から令和2年3月まで

月額27万0000円

令和2年4月から令和3年3月まで

月額27万1500円

令和3年4月から令和4年3月まで

月額27万3000円

以降毎年4月に1500円増額した金額
5
控訴人E
平成29年8月から平成30年3月まで

月額26万7000円

平成30年4月から平成31年3月まで

月額26万8500円

平成31年4月から令和2年3月まで

月額27万0000円

令和2年4月から令和3年3月まで

月額27万1500円

令和3年4月から令和4年3月まで

月額27万3000円

以降毎年4月に1500円増額した金額

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