判例検索β > 令和2年(ネ)第16号
損害賠償等請求控訴事件、同附帯控訴事件
事件番号令和2(ネ)16
事件名損害賠償等請求控訴事件,同附帯控訴事件
裁判年月日令和3年7月12日
裁判所名・部福岡高等裁判所  第4民事部
原審裁判所名佐賀地方裁判所
原審事件番号平成27(ワ)50
裁判日:西暦2021-07-12
情報公開日2021-08-27 16:00:21
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主1文
一審原告Aの控訴に基づき,原判決主文第1項及び第2項のうち,一審被告G,一審被告J,一審被告M,一審被告O,一審被告R及び一審被告Uに対する請求に関する部分を次のとおり変更する。


一審被告G,一審被告J,一審被告M,一審被告O,一審被告R及び一審被告Uは,一審原告Aに対し,別紙2認容額一覧表の各一審被告の総額欄記載の金額及びこれに対する平成24年10月23日
から支払済みまで年5分の割合による金員を,各一審被告の連帯債務額元金欄記載の金額及びこれに対する同日から支払済みまで年5
分の割合による金員の限度で,これに対応する連帯債務者欄記載

の者と連帯して支払え。


一審原告Aの一審被告G,一審被告J,一審被告M,一審被告O,一審被告R及び一審被告Uに対するその余の請求をいずれも棄却する。

2
一審被告Aの控訴及び一審被告Dの附帯控訴に基づき,原判決主文第1項及び第2項のうち,一審被告A及び一審被告Dに対する請求に関する部分を次のとおり変更する。


一審被告A及び一審被告Dは,一審原告Aに対し,別紙2認容額一覧表の各一審被告の総額欄記載の金額及びこれに対する平成24
年10月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を,各一審
被告の連帯債務額元金欄記載の金額及びこれに対する同日から支
払済みまで年5分の割合による金員の限度で,これに対応する連帯債務者欄記載の者と連帯して支払え。⑵

一審原告Aの一審被告A及び一審被告Dに対するその余の請求を
いずれも棄却する。

3
一審原告Aの一審被告鳥栖市,
一審被告A,
一審被告B,
一審被告C,
一審被告D,一審被告E,一審被告F,一審被告H,一審被告I,一審被告K,一審被告L,一審被告N,一審被告P,一審被告Q,一審被告S,一審被告T,一審被告V及び一審被告Wに対する控訴並びに一審原告B,一審原告C及び一審原告Dの控訴をいずれも棄却する。
4
訴訟費用の負担は,別紙3のとおりとする。

5
この判決は,第1項⑴及び第2項⑴に限り,仮に執行することができ
る。
事実及び理由
第1控訴及び附帯控訴の趣旨
1一審原告らの控訴の趣旨
⑴ア

原判決中,一審原告Aの損害賠償請求に関する部分を次のとおり変更す
る。

一審被告らは,一審原告Aに対し,連帯して,1億1123万6078円及びこれに対する平成24年10月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

⑵ア

原判決中,一審原告B,一審原告C及び一審原告Dの損害賠償請求に関する部分をいずれも取り消す。


一審被告らは,一審原告Bに対し,連帯して,550万円及びこれに対する平成24年10月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。


一審被告らは,一審原告Cに対し,連帯して,880万円及びこれに対する平成24年10月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。


一審被告らは,一審原告Dに対し,連帯して,220万円及びこれに対する平成24年10月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2一審被告Aの控訴の趣旨


原判決中,一審被告A敗訴部分を取り消す。



前項の部分につき,一審原告Aの請求を棄却する。

3一審被告Dの附帯控訴の趣旨


原判決中,一審被告D敗訴部分を取り消す。



前項の部分につき,一審原告Aの請求を棄却する。

第2事案の概要(略称等は,特に断らない限り,原判決の表記による。また,以下,平成24年の月日の表記においては年の表記を省略することがある。)1本件は,⑴一審被告鳥栖市の設置した中学校の生徒であった一審原告Aが,①同じ学校の生徒であった一審被告A,一審被告D,一審被告G,一審被告J,一審被告M,一審被告O,一審被告R及び一審被告U(以下,これらの8名を一審被告生徒らと総称する。)が,一連一体となって一審原告Aに対するいじめを行い,これにより一審原告Aは精神的苦痛を受け,後遺障害が生じ,かつ,金銭を喝取されたことなどによって経済的損害を被った,②当時一審被告生徒らの
親権者であった一審被告B,一審被告C,一審被告E,一審被告F,一審被告H,一審被告I,一審被告K,一審被告L,一審被告N,一審被告P,一審被告Q,一審被告S,一審被告T,一審被告V及び一審被告W(以下,これらの15名を一審被告保護者らと総称する。)は,一審被告生徒らが上記いじめ行為に及んだことに関して監督義務違反があり,また,仮に一審被告生徒らの中に,上記
いじめ行為に及んだ時点で責任無能力者であった者がいる場合,その生徒の親権者は民法714条1項本文に基づく責任を負う,③一審被告生徒らによる上記いじめ行為が発生したこと及び発生後の対応に関し,上記中学校の教諭及び校長並びに鳥栖市教育委員会に安全配慮義務違反等の義務違反があり,これらの義務違反と一審原告Aが上記いじめ行為により被った損害との間には相当因果関係が
あるから,
一審被告鳥栖市は国家賠償法1条1項に基づき損害賠償責任を負うと主張し,一審被告生徒らに対しては民法719条1項,709条に基づき,一審被告保護者らに対しては同法709条又は714条1項本文に基づき,一審被告鳥栖市に対しては国家賠償法1条1項に基づき,連帯して,損害の一部である1億1123万6078円及びこれに対する平成24年5月1日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,⑵一審原告Aの父である一審原告B,母である一審原告C及び妹である一審原告D(以下,これらの3名を一審原告家族と総称する。)が,それぞれ,一審原告Aがいじめを受けたことにより,独自の損害を被ったと主張し,被告生徒らに対しては民法719条1項,709条に基づき,
一審被告保護者らに対しては同法709条又は714条1項本文に
一審原告Bにおいて,
550万円及びこれに対する同日から支払済みまで民法所
定の年5分の割合による遅延損害金

Cにおいて,880万

円及びこれに対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延Dにおいて,220万円及びこれに対する同日から
支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,それぞれ求め,⑶一審原告らが,一審被告生徒ら及び一審被告保護者らに対し,一審原告Aの人格権に基づき一審原告らへの接触等の行為の禁止を求めた事案である。原判決は,一審原告Aの請求のうち,一審被告生徒らに対し,原判決別紙認容額一覧表の総額欄記載の金額及びうち原判決別紙遅延損害金起算日一覧表記載
の金員に対する同一覧表の遅延損害金起算日欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で請求を認容し,一審原告Aのその余の請求並びに一審原告家族の請求をいずれも棄却した。一審原告A及び一審被告Aがそれぞれ原判決中敗訴部分を不服として控訴し,一審原告家族が原判決を不服として控訴し,一審被告Dが原判決中敗訴部分を不服として附帯控訴し
た。なお,一審原告らは,原判決が前記⑶の請求を棄却した部分については不服申立てをしなかった。また,一審原告らは,当審において,遅延損害金の起算日を平成24年10月23日とする内容の請求の減縮をした。
2前提事実は,次のとおり補正するほか,原判決事実及び理由第2の1に記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決4頁13行目の自宅では,の後に知人であるを加える。



原判決4頁20行目の

担当科目は保健体育である。

同年度における担当科目は保健体育であった。

に改める。


原判決4頁22行目の平成24年4月当時,を平成24年度においてに,同頁24行目の同月当時,本件中学校の教頭であり,を同年度において本件中学校の教頭を務め,に,それぞれ改める。


原判決5頁10行目の小学校5~6年生時は,を小学5年生及び6年生の時にはに改める。


原判決6頁21行目の末尾に(乙チ1)を加え,同頁24行目の小学校6年生時は,を小学5年生及び6年生の時にはに改める。


原判決9頁6行目冒頭から同頁7行目の「診断した。」までを

A医師は,平成25年4月9日,一審原告AがPTSDにより同月1日から3か月間の休学が必要であると診断し,同年7月24日,一審原告AがPTSDにより同月1日から3か月間の休学が必要であると診断した。

に改める。⑺

原判決9頁16行目の「入学した。」から同行目末尾までを

入学し,高校卒業後,専門学校に入学した。

に改める。
3争点及びこれに対する当事者の主張


一審被告生徒らの一審原告Aに対する責任(争点1)
以下に摘示する主張のほか,一審被告生徒らの個別の行為に関する一審原告らの主張は原判決別紙行為一覧表の
原告らの主張
欄に記載のとおりであり,
これに関する一審被告ら(一審被告鳥栖市を除く。)の主張は,同表の各一審
被告らの主張欄に記載のとおりである。
(一審原告らの主張)

一審原告Aは,本件中学校入学前の春休み中である4月上旬ころ,一審被告Aがエアガンで幼女を撃っているのを見て,これを注意し,幼女の母親に状況を説明した。一審被告Aは,上記行為が学校に発覚したこともあり,一審原告Aに対して恨みをもち,本件中学校入学後,教室やターザン広場などでエアガンを一審原告Aに当てて金銭の要求をするようになった。一審原告
Aは,怖さに耐えきれず,後記ウの集団恐喝の発生までの間に,二,三回,二,三千円を一審被告Aに渡した。

一審原告Aは,本件中学校の入学式後,一審被告A,一審被告D,一審被告G,一審被告M,一審被告O,一審被告R等の生徒が1年2組の他の生徒をいじめていたのを注意した。その後,この生徒に対するいじめは収まった
が,一審原告Aが暴行の対象となった。一審被告Dは,一審原告Aへの暴行を開始し,一審被告Aが一審原告Aをエアガンで攻撃していることを知ると,その暴行を激化させた。また,一審被告Dは,学校からの帰宅途中や,一審原告ら宅から一審原告Aを連れ出した際などに,一審原告Aから金銭を喝取し,一審被告Gはいつも一審被告Dに同行していた。


一審被告Dは,一審原告Aに対する恐喝を開始してから約1週間後,一審原告Aに対し,一審被告Dに9000円,一審被告Gに3000円,合計1万2000円をターザン広場に持ってくるよう要求した。ターザン広場には,一審被告D,一審被告Gのほか,一審被告Rほか2人の者がおり,一審被告Aも来た。一審被告Dは,一審原告Aが持って行った1万2000円を
その場にいる者の間で分配した。この集団による恐喝の後,一審被告Dは,一審原告Aをトライアルに連れて行き,一審被告D及び一審被告Aが,一審原告Aから喝取した金銭でエアガンを購入し,帰り道において一審原告Aに対してエアガンを撃った。

ターザン広場での集団恐喝の後,一審被告A,一審被告D及び一審被告Gによる複数での暴行,脅迫,暴言,いやがらせ等のいじめ行為が始まり,これに一審被告J,一審被告M,一審被告O,一審被告R及び一審被告Uも加わっていった。
一審原告Aは,
一審被告生徒らから学校の内外で連日のように暴行や恐喝
を受け続けた。5月13日から15日までに行われた宿泊研修では,一審原告Aは,
逃げ場のない状態で一審被告生徒らからの暴行や嫌がらせを受け続
け,食事も睡眠もほとんどとれない状態であった。この宿泊研修後,一審原告Aに対する暴行及び恐喝は,集団性を帯び,一層激しくなり,学校内(授業中を含む。),学校外を問わず,苛烈な加害行為が続き,これは一審被告生徒らによる一審原告Aに対する拷問というべき行為であった。
また,一審被告A,一審被告D,一審被告G,一審被告Oなどは,一審原
告ら宅にも頻繁に押し掛けて来た。
土曜日及び日曜日は,午前中から午後8時過ぎ頃まで解放されず,トライアルやフレスポにおいて金銭を要求された。

夏休みは,
毎日のように,
朝から連れ出され,
フレスポに連れて行かれて,
一審被告生徒らから金銭を喝取されていた。夏休みの後半には,一審被告生
徒ら1人につき1万円ないし1万5000円の金銭を渡すよう要求され,七,八万円を持って行ったこともあった。一審原告Aは,自分の貯金が底を尽き,一審原告家族などのお金に手を出すようになった。一審被告生徒らがコンビニエンスストアやスーパーマーケットで菓子等を買う際にも,一審原告Aが代金を負担した。

フレスポの行き帰りには,エアガンの乱射を受ける,自転車をぶつけられるといった暴力を受けた。また,フレスポが閉まった後などには,儀徳グラウンド等の場所において暴力を受けた。

2学期に入ると,
一審被告生徒らによる一審原告Aに対する暴力は更に日
常化し,エスカレートしていった。教室内での集団でのプロレス技等による暴力の程度,頻度も増加し,1年2組のクラス全員が一審原告Aに対して暴力を振るうような状況になった。
土曜日及び日曜日には,ほとんど全ての日において,朝から夜までフレスポに連れて行かれ,金銭を要求された。要求される金額も更に増え,一審原告Aが10万円を持って行ったこともあった。一審被告生徒らによる行き帰りのエアガンでの攻撃,儀徳グラウンド等での暴力,一審原告Aの金銭を使
っての菓子等の購入も引き続き行われた。

以上のとおり,一審被告生徒らは,毎日のように,学校の内外を問わず,拷問ともいうべき暴力を一審原告Aに与え続け,かつ,金銭の喝取を続けたものであり,これは一審原告Aに対するいじめ行為であって,これは一審原告Aに対する不法行為である。

そして,一審被告生徒らの一審原告Aに対するいじめ行為は,一審被告生徒らが,いじめ行為により一審原告Aが継続的に被害を受け,恐怖により心理的に支配されて抵抗することができなくなっていることを知った上で,それに便乗する形で日々行われたものである。一審被告生徒らと一審原告Aとの間で,心理的支配関係,いじめる側といじめられる側という固定化された
関係性があり,一審被告生徒らにおいてこのような関係性を認識し,利用する意思があったことは明らかであり,一審原告Aに対する一連一体の加害行為について,一審被告生徒ら全員の共同不法行為が成立する。

一審被告生徒らの行為は,継続かつ連続してなされた一審原告Aに対するいじめ行為であり,
各行為自体が個々的には不法行為とならない場合であっ
ても,全体として違法ないじめとなることは当然にあり得る。しかし,原判決は,
集団による一連かつ連続するいじめ行為を個別の行為にぶつ切りにして,全体的評価をすることなく,個別に不法行為の成否を判定し,不法行為とならないものは判断対象から捨象し,個別行為としても加害行為として成
立するもののみを共同不法行為の成否の対象としており,判断として不当である。
(一審被告Aらの主張)

一審被告Aその他の一審被告生徒らについて,
一審原告Aに対する一定の
身体的接触や不適切な言葉はあったものの,これらはいずれも社会通念上相当な行為として許容される限度内のものであった。
一審被告Aが,
本件中学校の入学式の日に一審原告Aを脅迫したことはな

く,エアガンは親に没収されており,入学当時所持していなかったから,入学式の頃にエアガンで一審原告Aを恐喝したこともない。
一審被告Aが一審原告Aに金銭を求めたことはあるが,その態様は任意での支払を求めるものであり,一審原告Aの意思を抑圧するものではなかった。

一審被告Aによる一審原告Aに対する直接身体が接触する行為は,はたくなどじゃれ合いといえる程度の態様であり,痛みがあったとしても中学生のふざけ合いでは通常起こり得ることである。エアガンの発砲は,一審原告Aが一方的に撃たれていたわけではなく,ルールを決め,一審原告Aもエアガンを持った状態で行われていたのであり,エアガン遊びの域を超えない。暴
言にしてもふざけ合いの域を超えるものではない。
したがって,
一審被告Aの行為が一審原告Aに対する不法行為となるとは
認められず,一審被告Aは一審原告Aに対して不法行為責任を負わない。また,一審被告A以外の一審被告生徒らの行為についても,不法行為責任は発生しない。


一審被告生徒らの一審原告Aに対する有形力の行使等については,各人が共同の意思の下に行っていた事実はない。また,一審被告生徒らの行為の中に不法行為責任を発生させるものがあったとしても,いつ,どこで,誰が,どのような具体的行為をしたかが不明であるし,一審被告生徒らにおいて,
一審原告Aが集団的いじめの対象になっているとの共通認識もなく,相互の利用補充のつながりもない。したがって,一審原告らが主張する一連のいじめ行為について,一審被告生徒らに関連共同性は認められず,一審被告生徒らが共同不法行為責任を負うことはない。
(一審被告Dらの主張)

一審被告Dは,一審原告Aと小学校時代はクラスが異なり,本件中学校に入学して初めて言葉を交わすようになった。

一審原告Aは,一審被告Dとジェイボードという遊具で遊んでいる時,一審被告Dに対し,自分の通帳に三,四十万円入っていることを話し,一審被告Dがうらやましがったところ,一審被告Dと仲良くしようとして,1万円くらいならあげてもいいと自ら申し出た。一審被告Dが一審被告G及び一審被告Aにこのことを話すと,一審被告A及び一審被告Gもお金を欲しいと言
い出し,一審原告Aはこれらの者にもお金をあげてもいいと述べた。後日,一審原告Aは,一審被告A,一審被告D及び一審被告Gに2000円ずつ渡した。
その後,一審被告D,一審被告G及び一審被告Aは,一審原告Aに対し,遊ぶ約束をするたびにお金を持ってくるよう頼むようになり,一審被告D
は,
次第に金銭目的で一審原告Aと遊ぶようになった。
また,
一審被告Dは,
6月以降,一審原告Aに対し,暴力を振るうようになった。これは一審被告A,一審被告G,一審被告M及び一審被告Rも同様であった。しかし,一審被告Dが,一審原告らが主張するような拷問,虐待行為を日常的に繰り返したことはない。


一審被告Dが他の一審被告生徒らの行為について共同不法行為責任を負うことはない。

(一審被告Gらの主張)
一審被告Gは,4月下旬,一審原告Aから初めてお金を受け取った。一審原告Aは,
一審被告Dに,
通帳に何十万円も入っているからお金をあげると述べ,
一審被告Gに対しても尋ねてきたので,一審被告Gは,もらえるならもらうと述べ,一審原告Aから2000円をもらった。その後,一審被告Gが一審原告Aからお金をもらった回数は10回に及ばない程度であり,一審原告Aと遊ぶ時に必ずお金をもらっていたわけではない。
一審被告Gは,一審原告Aに対し,一,二回軽く蹴ったり,殴るふりをしたことや,プロレスごっこの中でふざけ合ったことはあるが,それは決して過激なものではなかった。プロレスごっこでは,一審原告Aも抵抗していたし,一審被告Gが他の生徒からプロレス技をかけられるなどしたこともあった。(一審被告Jらの主張)
一審被告Jが一審原告Aにした行為は,ちょっかいの域を出るようなもので
はなかった。
一審被告Jが一審原告Aに金銭を出してもらったのはわずか数百
円にすぎない。また,一審被告Jは,部活をしていたこともあり,学校外で一審原告Aや他の一審被告生徒らと交友することがほとんどなく,一審原告らが主張するような行為に加担した事実がない。
したがって,一審被告Jの行為は一審原告Aに対する不法行為とならない。
また,一審被告Jが,他の一審被告生徒らと一体になって一審原告Aに対する行為に関与していたことはないから,他の一審被告生徒らとの共同不法行為の成立は認められず,
他の一審被告生徒らと連帯して損害賠償責任を負うこと
はない。
(一審被告Mらの主張)

一審被告Mが一審原告Aに対して暴行や恐喝等を行ったことはない。一審被告Mは,9月にフレスポのゲームコーナーに行ったところ,一審原告Aが仲間に現金を分配しており,一審被告Mにもお金を分配する用意があると述べた。一審被告Mは,最初は要らないと答えたものの,それでも一審原告Aがお金をあげると言ってきたので,2000円程度のゲーム代を受け取った。その後,
一審被告Mは,9月から10月にかけてフレスポでゲームをした際,一審原告Aから合計一,二万円程度を受け取ったが,脅迫や暴行を加えて現金を取得したことはない。したがって,一審被告Mは,一審原告Aに対して不法行為責任を負わない。
(一審被告Oらの主張)

一審被告Oの一審原告Aに対する物理的な行為としては,主なものは首ロック,腰をつかんで持ち上げて落とすというものだけである。当時プロレス
ごっこがはやっており,一審被告Oも,その中で一審原告Aやその他の生徒らとの間でプロレス技をかけたり,かけられたりしていた。
一審被告Oは,9月30日,一審原告Aをエアガンで撃ったが,一審被告Dらもその場におり,一審原告Aも一審被告Oが貸したエアガンを持ち,撃ち合いをしていたのであって,その中で当てたものである。また,一審原告
Aが一審被告Oの自宅に遊びに来た際に,エアガンを撃ったことはあるが,一審原告Aに対して撃ってはいない。
一審被告Oが一審原告Aから金銭等を受け取ったのは,一度300円をもらったのと,
コンビニエンスストアでおごってもらったことがあるだけであ
る。一審被告Oは,一審原告Aとトライアルやフレスポのゲームセンターに
行ったことがない。
以上のとおり,一審被告Oの一審原告Aに対する行為は,友人同士のふざけ合いや遊びの域を出るものではなく,不法行為とならない。

共同不法行為の成立には,客観的関連共同性が必要であるところ,一審原告らからこの点に関する具体的な主張立証はなく,一審被告Oは,他の一審
被告生徒らが一審原告Aからお金を受け取っていたことは知らず,他の一審被告生徒らによる暴行の事実も見聞きしたことはなかったから,客観的関連共同性は認められず,共同不法行為は成立しない。
(一審被告Rらの主張)

一審被告Rは,中学1年生当時責任能力がなかったから,仮に一審被告Rの行為について不法行為となるものがあり,又は他の一審被告生徒らとの共同不法行為が成立する場合でも,民法712条により一審被告Rは損害賠償責任を負わない。

一審被告Rは,一審原告Aに対して違法ないじめ行為をしたことはない。一審被告Rが一審原告Aの指を曲げたのは,ほんの数秒間,1回だけ曲げたにすぎず,三角定規で首と背中との間を引いたのは,三角定規が触れるか触
れないかくらいの強さで軽く横に引っ張った程度であり,三角定規を押し付けて摩擦熱が生じるくらい強くこすったことはない。また,首ロックにみえるような行為も,一審原告Aの首を絞めるような行為ではなかった。このように,一審被告Rの行為は,ふざけ合いの域を出ないものであった。一審被告Rは,一審原告Aから直接現金を受け取ったことはなく,他の一
審被告生徒らを介して受け取っていたにすぎない。他の一審被告生徒らがどのような経緯で一審原告Aから現金を受け取っているのかは知らされておらず,一審原告Aの現金であるとの認識もなかった。

共同不法行為が成立するためには,加害者それぞれに不法行為が成立する必要があるところ,上記イのとおり,一審被告Rの行為は一審原告Aに対する不法行為とならないから,一審被告Rと他の一審被告生徒らとの間で共同不法行為が成立する余地はない。
仮に,一審被告Rの行為に不法行為となるものがあるとしても,一審被告Rと他の一審被告生徒らとの客観的関連共同性は認められない。他の一審被
告生徒らが一審原告Aを恐喝して金銭を受領していたとしても,恐喝終了後に,
恐喝のことを認識していない一審被告Rが他の一審被告生徒らから上記金銭を受領すること自体は不法行為とならず,一審被告Rが他の一審被告生徒らと恐喝について共謀したこともない。また,金銭授受以外の場面で,一審被告Rが,
一審原告Aをいじめている他の一審被告生徒らと一緒にいたこ

とはない。
(一審被告Uらの主張)

一審被告Uは,中学校1年生当時,事理弁識能力を欠いていたから,一定の違法性がある行為についても不法行為責任を負わない。


一審被告Uは,
本件中学校において一審原告Aと別のクラスに所属してい
たから,
一審原告らが主張するような一審原告Aに対する暴力や金銭要求行為のうち1年2組の教室でされたものについては,仮にそのような行為があ
ったとしても,一審被告Uがこれに参加したことはない。また,宿泊研修もクラス単位での行動であり,宿泊研修での出来事にも関与していない。一審被告Uは,2学期に,一審原告Aの首に右腕を回して右わきに抱え込む行為(ヘッドロック)や,膝カックンをしたことが数回あるが,じゃれ合いの範疇である。

また,一審被告Uは,他の一審被告生徒らの一部の者が一審原告Aから金銭を受け取っていることを知り,一審原告Aにお金をくれるように言ったところ,一審原告Aはさほど抵抗せずに金員を交付したのであり,恐喝には当たらない。

一審被告Uを含む一審被告生徒らの一審原告Aに対する行為として,一定の身体的な接触と数回の金員交付があるが,前者は子どもの正常な社会的接触の範囲内であって違法性はない。後者は一定の違法性があるとしても,損害は交付された金員の金額に尽きる。


共同不法行為に相互の通謀のような主観的要件が必要であるとすれば,一審被告Uについて共同不法行為は成立しない。
共同不法行為には客観的関連共同性があれば足りるとしても,一審被告Uについて他の一審被告生徒らと客観的関連共同性がある行為はほとんどない。また,この場合,客観的関連共同性のある行為のうち自らの行為と相当因果関係のある範囲でのみ損害賠償責任を負うと解されるところ,一審原告
Aに生じたと一審原告らが主張する損害のうち,一審被告U自身の行為と相当因果関係を有するものは,一審被告Uが現実に交付を受けた金員に限られる。一審被告Uは,二,三十万円持っているからお金をあげるなどと一審原告Aが言っていたと一審被告D等が述べたことを信じ込んだのであり,金銭の交付を受けたとしても,他の一審被告生徒らと関与の性質が異なり,他の一審被告生徒らの行為と関連共同性がない。


一審被告保護者らの一審原告Aに対する責任の有無(争点2)

(一審原告らの主張)

一審被告保護者らは,一審被告生徒らの親権者であり,一審被告生徒らのうち自らの子に対する監督義務を負う。一審被告保護者らがこの監督義務を懈怠したために,
一審被告生徒らによる一審原告Aに対する加害行為が惹起
され,これにより一審原告Aが損害を被ったのであるから,一審被告保護者
らは一審原告Aに対して不法行為に基づく損害賠償責任を負う。
そして,
一審被告保護者らの過失や損害との因果関係の具体的な認定にお
いては,
必ずしも一般の不法行為と同程度の厳格なものが常に要求されるわけではなく,非行の原因,発展過程,メカニズムを検討し,未成年者の日頃の非行性,問題性からより重大な,あるいは異質な加害行為に発展,進行す
ることも予見可能であったか,未成年者の動静を日頃からきめ細かく継続的に観察していれば問題性に気付き,予見可能であったのか,早期に問題性に気付き,その改善に努めていれば加害行為を防止できたのではないか,問題性の延長上で加害行為が生じたと評価できるか否かなどの観点を十分に考慮し,加えて,損害の公平,被害者救済,保護の観点を考慮して,これらの
検討の結果導かれる過失及び因果関係が認められれば足りるというべきである。

仮に,一審被告生徒らの中に,責任能力が認められない者がいる場合は,その者の親権者は民法714条1項本文に基づき監督者責任を負う。

一審被告生徒らは共同不法行為責任を負うから,その親権者である一審被告保護者らも共同不法行為責任を負う。
(一審被告Aらの主張)

一審被告A両親においては,一審被告Aに問題行動や非行傾向があったことを窺わせる事実について認識がなかった。エアガンについては,一審被告Aが本件中学校入学前に女の子に向かって撃っていた事件が発覚した際,一審被告Bはこれを没収して処分した。その後,一審被告Aがエアガンを入手
することはあったが,
一審被告A両親に悟られないよう自宅外で保管するな
どしていたため,一審被告A両親がその所持を認識することはできなかった。また,一審被告A両親は,一審原告Aの存在や,一審原告らがいじめと主張する行動について窺い知る機会もなく,学校や警察から一審被告Aの問題行動について情報を受けることもない中で,一審被告Aの一審原告Aに対
する加害行為を予見することはできなかった。
したがって,一審被告A両親に過失はなく,民法709条に基づく損害賠償責任を負わない。

一審被告Aについて,本件中学校入学後において責任能力が欠けていたことはなく,一審被告A両親は民法714条に基づく責任を負わない。
(一審被告Dらの主張)
一審被告生徒らの一審原告Aに対する行為が発覚する前,一審被告Eは,一審被告Dに対し,午後6時の門限を守らせ,小遣いも決まった額しか渡さないなど,一審被告Dへの監督を適切に行っていた。一審被告Eは,夏休み中に,家の中でエアガンを発見し,一審被告Dに問いただしたところ,一審被告Aのものを預かっているとの説明であったので,一審被告Aに返すように言い,エアガンが無くなったことを確認した。一審被告Dは,家庭での生活態度に問題はなく,学校からも行動面での注意や指導を受けていない。したがって,一審被告Eの管理監督に過失はない。

(一審被告Fの主張)

一審被告Dについて,少なくとも小学校時代に他の生徒とトラブル等の問題を起こした事実はない。一審被告Fのみならず,一審被告Eの視点でも,一審被告Dが中学校に進学して態度や性格が変わったとの認識はなく,一審被告Dの一審原告Aに対する問題行動を予見,認識していなかった。一審被告Fは,一審被告Dの部屋にエアガンがあったことを認識したが,一審原告らが主張するような暴行,傷害にまで達する態様で使用することまで予見す
ることは不可能であるし,一審被告Dに対し,どのように入手したのかを問いただし,友人から借りた旨の回答を得ると,返却するように指示した。また,
一審被告Fの家庭内の言動と一審被告Dの行為との間には相当因果関係がない。一審被告Fは,8月下旬,家を出る形で一審被告D及び一審被告Eと別居したが,一審被告Fが家を出て行った前後で,一審原告らが主張
する一審被告Dの問題行動に質的変化があったとは認められない。したがって,一審被告Fに過失はなく,一審被告Fの行為と結果との間の相当因果関係も認められない。

一審被告Dについては,責任能力が欠けていたとは認められないから,一審被告Fが民法714条に基づく責任を負うことはない。

(一審被告Gらの主張)
一審被告Hが学校から連絡を受けたのは10月半ば頃である。一審被告G両親において,それ以前に,一審被告Gに問題があるとの事実の指摘を受けたことはなく,金銭授受のことも全く知らなかった。したがって,一審被告G両親に対する請求は失当である。
(一審被告Jらの主張)
一審被告Jが一審原告Aに対して損害賠償責任を負わないのであるから,一審被告J両親が損害賠償責任を負うことはない。
(一審被告Mらの主張)

一審被告Mは,
一審原告らが主張するような一審原告Aに対する暴行等をし
ていないから,一審被告Nに監督義務違反はない。
(一審被告Oらの主張)
一審被告O両親が損害賠償責任を負うとの一審原告らの主張は争う。(一審被告Rらの主張)

本件で問題とされている行為がされた時点で,一審被告Rは責任能力を欠いていたが,一審被告Rの行為は不法行為とならず,他の一審被告生徒らと
の間で共同不法行為が成立することもないから,一審被告R両親が監督義務者としての責任を負うことはない。
仮に,
一審被告Rの行為に違法性が認められるとしても,
下記イのとおり,
一審被告R両親には監督義務違反が認められないから,民法714条1項ただし書により,一審被告R両親は監督義務者としての責任を負わない。

一審被告Rに責任能力が認められる場合,一審被告R両親は民法709条に基づく不法行為責任は負わない。
すなわち,責任能力のある未成年者の不法行為について,民法709条により当該未成年者の監督義務者の義務違反を認めるためには,一般的な監督
教育義務違反の懈怠があるだけでは足りず,未成年者の具体的な加害行為の予見可能性を前提とした具体的かつ高度な義務違反が必要である。一審被告Rは,一審原告らの主張するいじめの問題が起きるまでの間,学校や家庭内で問題行動を起こしたり,けんかや暴力を振るったりしたことはなく,学校からの呼び出しや,補導歴,非行歴,検挙歴もなく,まじめに学
生生活を送っていた。
一審被告Rが一審原告Aと対立関係にあったとの事情
もなく,一審被告R両親において,一審被告Rが,一審原告らの主張するいじめに他の一審被告生徒らと一緒になって加害者として関与することを予見することは不可能であった。したがって,一審被告R両親に対し,一審被告Rの具体的な加害行為の予見可能性を前提とする具体的かつ高度な監督
義務を課すことはできないから,一審被告R両親に監督義務違反を問う余地はない。
(一審被告Uらの主張)
一審被告U両親が一審被告Uの行動に不信を持つことは不可能であった。一審被告Wは,夏休みにおいて,一審被告Uからフレスポに行くとの話は聞いていた。しかし,フレスポにはゲームコーナー以外の場所もあるから,一審被告Wが,一審被告Uがフレスポのゲームコーナーに行き,その都度渡していた少
額のジュース代では足りず,一審原告Aから金員の交付を受けているとは思いも至らなかった。
また,一審被告Vは,当時ダブルワークで極めて多忙であり,一審被告Wに一審被告Uの監督を任せていたから,監督義務を負わない。
したがって,一審被告U両親に監督義務違反はないから,民法709条に基
づく責任及び同法714条1項に基づく責任のいずれも負わない。⑶

一審被告鳥栖市の一審原告Aに対する責任の有無(争点3)

(一審原告らの主張)

教育活動及びこれに密接に関連する生活関係によって,市立中学校の生徒の生命,身体,健康に対する安全に影響がある場合,一審被告鳥栖市には,公法上の法律関係である市立中学校の在学関係に基づく付随的義務として,信義則上,生徒の生命,身体等に対する安全に配慮すべき義務がある。そして,市立中学校の教員は,学校における教育活動及びこれに密接に関連する生活関係によって生ずるおそれのある危険から生徒を保護し,安全の
確保に配慮すべき義務を負っており,特に,生徒の生命,身体,精神,財産等に大きな悪影響又は危害が及ぶおそれがあるような場合には,そのような悪影響又は危害の現実化を未然に防止するため,その事態に応じた適切な措置を講ずべき一般的な安全配慮義務を負っている。
この安全配慮義務違反の有無の判断においては,学校管理職及び現場教諭
の予見可能性及び結果回避可能性が問題となるが,学校事故で過失責任が問われる際に問題となる予見可能性の有無は,いじめを含む生徒間事故を防止すべき安全配慮義務を負担し,かつ,専門職業的な判断能力をもって,有機的な組織体を構成している学校関係者を基準として判断されるべきであり,当該学校の教諭らの問題意識が教育専門家に対してその当時期待されている水準に照らして適切なものであったといえるかどうかが決定的に重要である。

いじめ問題に関しては,文部科学省等の通知通達,研究会等の提言,マニュアル,国立教育政策研究所の研究結果,市教委の指導研修内容,いじめに関する報道内容等に基づき,教職員が有すべき知見を判断すべきである。イ
10月23日以前のB教諭の安全配慮義務違反について
上記アの通知通達等による本件当時の知見に基づき,予見義務及び結果
回避義務という観点から,B教諭を含む本件中学校の教諭らに課される安全配慮義務の内容を整理すると,以下のとおりとなる。
a
予見義務(いじめ発見義務)
いじめの兆候を把握した際,生徒の言動,生活態度の変化への注視,他の教員,被害生徒の家庭,加害生徒の家庭と情報交換をすることによ
り,いじめの実態を予見,把握すべき義務
b
結果回避義務(いじめ対応義務)
上記aのいじめ発見義務によりいじめの実態を予見,把握した上で,被害者を保護するための措置,加害者への指導教育,他の教諭,各家庭との連携,被害者及び加害者らの継続観察等を行うことにより,被害拡
大を防ぎつつ,被害回復を図るべく対応する義務
B教諭は,以下のとおり,遅くとも1学期中には,一審原告Aに対するいじめの一部又は少なくともいじめの兆候を把握していた。
a
一審被告A及び一審被告Dは,入学後の早いうちから1年2組の教室内にエアガンを持ち込み,教室内にはエアガンの弾(BB弾)が散らばっていた。B教諭は,早くからBB弾に気付いていたが,クラスの生徒を前にしてBB弾が落ちていたと述べただけで,それ以上の追及をせず放置した。
一審被告生徒らが授業中に一審原告Aに対し輪ゴムで紙を飛
ばし,輪ゴムと紙が床に落ちていたのを発見した時も,B教諭は追及せずに放置した。
こうした凶器の痕跡以外にも,
教室内での暴行の後には,
机や椅子の乱れが生じていたはずであり,4月上旬には1年2組の教室
内に暴行の痕跡が残されていた。
b
各生徒は,
帰りのホームルームの時間の最後に担任からジャンプアッ
プノートを返され,帰宅の準備をしながらその必要箇所に記入することとなっていたが,
一審原告Aは,
一審被告A,
一審被告D,
一審被告G,
一審被告J,
一審被告M及び一審被告O等の生徒からひっきりなしに嫌

がらせを受け,記入することができず,繰り返し白紙で提出し,B教諭はこれを認識していた。
c
4月26日以降,入院中の一審原告Cが入院先から自分自身でB教諭に電話をかけ,又は一審原告Cから頼まれたCがB教諭に電話をして,一審原告Aの様子の変化について相談したり,学校の様子を尋ねてきた
りしたことが複数回あった。
d
教壇から見て教室内には死角が存在しないから,B教諭は,一審被告生徒らによる継続的な暴行,恐喝行為の一部を現認していた。暴行の現場を現認したB教諭は,複数回にわたり口頭で注意したが,それ以上の追及をせず,その場限りの注意に終わり,何も注意することなく放置さ
れることも多かった。また,B教諭は,給食の時間,教室内で生徒らと共に給食を食べており,その際,一審被告生徒らが一審原告Aの給食を奪う行為を繰り返しているのを現認した。
B教諭は,
5月末又は6月末,
あるいは少なくとも1学期中には,一審被告生徒らによるこれらの行為を現認し,少なくとも10回ないし20回は注意した。

e
一審原告Aは,体育の時間,一審被告M等の生徒から,繰り返し暴行や嫌がらせを受けており,B教諭は,これを現認していたが,注意したり止めたりすることはなかった。また,一審原告Aは,体育の授業のときに体操着を隠されることを繰り返され,ほとんどの体育の授業を制服で出ていた。この異常な状況を目にすれば,通常の教諭であれば,一審原告Aから事情を聴いたり,一審原告両親に連絡したりといった対応を
するはずであるが,B教諭はこのような対応をとらなかった。
f
水泳の授業中,一審被告D及び一審被告Oは,一審原告Aの後ろから手をかけて水中に押し込んで沈め,一審原告Aの背中に乗って浮き上がれないようにする行為に及び,このような行為を繰り返した。一審原告
Aは,1学期の水泳の授業において,初めの一,二回参加した以外は,具合が悪いと言ってほとんどの授業を見学した。これは,一審被告生徒らによる暴行によってできた身体の傷を見せたくなかったのと,水泳の授業における上記の体験があったためである。しかし,見学中,一審被告A,一審被告D及び一審被告Gが,一審原告Aの前を通るたびに水を
かけてきて,一審原告Aの服はびしょ濡れとなり,制服で見学していたときは濡れたままその後の授業を受けた。B教諭ほか,水泳の授業の指導を担当した教諭らは,一審原告Aが水泳の授業の大部分を見学していることの不自然さに気付いたはずであるが,誰も一審原告Aにその理由を尋ねることはなかった。
また,
教諭らは,
一審原告Aが沈められたり,

見学中に水をかけられたりしているのを目にしたはずであるが,誰も注意せずに放置した。さらに,B教諭を含む教諭らは,一審原告Aが濡れた制服を着ている姿を見ても,誰も事情を聴くなどしなかった。
B教諭は,
以上のようないじめの一部又はいじめの兆候を把握したこと
から,一審原告A及び一審被告生徒らの言動,生活態度の変化への注視,
他の教員,一審原告Aの家庭,一審被告生徒らの家庭と情報交換をすることにより,いじめの実態を予見,把握すべき義務(いじめ発見義務)が生じたのであり,
かつ,
被害者を保護するための措置,
加害者への指導教育,
他の教員,各家庭との連携,被害者加害者らの継続観察等を行うことにより,被害拡大を防ぎつつ,被害回復を図るべく対応する義務(いじめ対応義務)を負っていた。しかし,B教諭は,いずれの対応をとることもなく漫然と見過ごしたのであり,その安全配慮義務違反は明らかである。

10月23日以前の本件中学校のB教諭以外の教諭ら及びD教頭の安全配慮義務違反
B教諭以外の複数の教諭らが,
一審原告Aに対するいじめの端緒を認識し
ていたにもかかわらず,これらの教諭らは,そのことを1年2組の担任であるB教諭に報告せず,互いに情報共有することもなかったのであり,上記教
諭らは,いじめ発見義務(生徒の言動,生活態度の変化への注視,他の教員及び家庭との情報共有)を怠っていた。
また,B教諭以外にも,実際に一審原告Aに対するいじめ行為を現認した教諭らもいるが,これらの教諭は,何も対応しなかったか,生徒に注意をしただけで,
それ以上に事情を聴くことも指導を行うこともなかったのであり,
上記教諭らは,いじめ端緒発見後の対応義務(事実確認,被害者保護,他の教諭ら及び家庭との情報共有)にも違反した。
さらに,D教頭及び学年主任であったE教諭は,1年2組におけるB教諭の指導が不十分であることを複数の教諭が認識したにもかかわらず,B教諭
から実情を聴取するとか,どのような支援が必要かなどを討議せず,B教諭
に一切を委ねてしまった。F教諭や,副担任であったG教諭も,B教諭との協力や他の教諭らとの情報共有をして対応することを怠った。

10月23日以前のH校長の義務違反
前記アの通知通達等による本件当時の知見に基づく校長の安全配慮義務
は,①いじめ発見,いじめ対応を可能とするための体制整備義務,②いじめ発見,いじめ対応を可能とするための教職員への研修,教育義務に整理される。
校長に求められる上記①及び②の義務については,いじめ問題の深刻さ,
重大さを認識すれば,
これらの必要性を認識し,
具体的措置を執り得るから,
当該学校における具体的な事案発生の認識までは不要である。
しかし,
以下のとおり,
H校長は,
上記①及び②の義務をいずれも怠った。本件中学校のB教諭以外の教諭らは,一審原告Aに対する暴行,恐喝,嫌がらせ等のいじめ行為又はその端緒を認識しながら,漫然と見過ごしてきた。これは,本件中学校において,いじめ発見及びいじめ対応を可能とするための体制整備,教育研修が全く行われていなかったことに起因する。本件訴訟で行われたD教頭の証人尋問におけるプロレスごっこに関する
供述からは,D教頭が,いじめの実態として優位・劣位(支配・被支配)の関係や継続性・反復性といった構造があること,及びプロレスごっこは教職員が注意すべきいじめの端緒であることを理解していないことが明らかになっており,
本件中学校においてプロレスごっこに対する統一した
認識や指導方針が存在していなかったと認められる。また,B教諭は,給
食のおかずの交換といういじめの温床となり得る行為を認めていたが,D教頭は,これについても別段の疑問を抱かず是認していた。このようなD教頭の意識の欠落は,本件中学校におけるいじめに関する教育研修がされていなかったことの証左である。
本件中学校で行われていたアンケートは記名式であり,教室で生徒に記
載させ,後ろの席から回収する方法を採っており,アンケートへの記入内容が教諭だけでなく他の生徒にも知られる可能性が高く,
いじめや嫌がら
せを受けている者がその事実を記載することは不可能であった。また,本件中学校においては,一審原告Aに対するいじめ以外にもいじめが存在し,かつ,そのいじめは放置されていた。これらのことからすると,本件中学
校内において,いじめを早期発見し,早期対応する体制が全く整備されていなかったことは明らかである。

10月23日以前の市教委の義務違反
前記アの通知通達等による本件当時の知見に基づく市教委の安全配慮義務は,以下のとおり整理することができる。
a
教育研修義務
いじめ問題や対応方法について,教職員を対象とした研修を実施し又
は学校に実施させる。文部科学省の通知又はいじめ対策緊急会議が作成したいじめ問題の解決のために当面取るべき方策についての報告書等,最新の知見についての資料を収集し,各学校,教職員への周知徹底を行う。
b
実態調査義務
管下の学校におけるいじめの問題の状況について,学校訪問や調査の実施などを通じて実態の的確な把握に努める。いじめ問題に関する国や教育委員会の通知などの資料が,具体的に学校でどのように活用されたか,その趣旨がどのように周知徹底されたのかなど,学校の取組状況を点検する。

c
指導助言義務
管下の学校等に対し,いじめの問題に関する教育委員会の指導の方針などを明らかにし,積極的な指導を行う。特に,上記bの実態調査によっていじめの問題について指導上困難な課題を抱えることが判明した
学校に対して,
指導主事や教育センターの専門家の派遣などによる重点
的な指導,助言,援助を行う。
鳥栖市においては,平成19年度から平成24年度までの間に,市内の教員を対象とするいじめに関する研修を一度も実施してこなかった。また,
においては,
いじめの実態把握を困難にする方法での調査が行われていた
が,市教委はこれを放置していた。このように,実態調査が行われていなかったことから,これを前提とする指導助言も行われなかった。

である。その結果,一審原告Aに対するいじめ行為の端緒や暴行現場の一部をB教諭その他の教諭らが認識しながら,漫然と見過ごされることとなった。


10月23日以降の安全配慮義務違反
学校や教育委員会は,いじめの事案を認知,把握したときは,被害を受けた児童生徒が安全に学校生活を送り,安心して教育を受けられる環境を整備し,回復させる義務があり,そのために,具体的には,①迅速かつ正
確に事案の究明を図り,被害児童生徒側に適切に情報提供し,②加害児童生徒に対する徹底した指導を行い,③被害を受けた児童生徒を受け入れるための体制づくりを行わなければならない義務がある。
しかし,本件中学校においては,一審原告Aに対するいじめの事案について究明するという積極的姿勢は全くなかった。本件中学校は,事案の内
容が全く明らかでない段階から,単に一審原告らに勘弁してもらい,事態を鎮静化させることだけを目的として,一審被告生徒らに形式的な謝罪をさせることを繰り返し,主体的に一審被告生徒らから聴取を行って事案の内容を把握しようとしなかった。その後,一審原告Cからの要望を受け,聴取を実施するようになったものの,市教委と情報共有して真摯に事案を
究明しようとはしなかった。市教委は平成25年3月21日に記者会見をしたが,その時点でも,一審被告生徒らが一審原告Aに暴行や恐喝をした動機やきっかけという重要な事実を把握しておらず,市教委も事案の究明を行う姿勢を欠いていた。さらに,本件中学校は,一審被告生徒らに対する聴取は実施したが,他の生徒らからの聴取等は行っていない。

このように,本件中学校及び市教委には,事案を究明する姿勢がなく,このため,事案の具体的内容や原因,背景等について一審原告らに対して報告,説明又は情報提供がされたこともない。
本件中学校及び市教委は,一審被告生徒らに対し,出席停止の措置を執ることや,いじめに特化した専門的指導を行うことはしなかった。本件中学校は,一審被告生徒らに対し,一審原告らから勘弁してもらうためにその親と共に謝罪のため一審原告ら宅を訪問するよう求めたが,そのこと自体が,
一審被告生徒らに真の反省を求める姿勢を欠くものであっ
た。
一審被告生徒らに部活動への参加を停止させて草むしりをさせたことはあるが,
そのような表面的な制裁によっていじめの問題性を真に理解さ
せることにはならない。また,平成25年4月以降,一審被告生徒らに更
生プログラムを実施し,奉仕活動をさせたようではあるものの,その内容はいじめが許されないことを認識させる内容ではなかった。
以上のとおり,本件中学校及び市教委は,一審被告生徒らに対する徹底した指導を行うべき義務を怠った。
一審被告生徒らによる行為が発覚した後,1年2組において話合いや報
告,指導が行われたのか不明であり,行われなかったと考えられる。そして,
B教諭が作成した学級通信の最終号に掲載されたB教諭の言葉の内容や,一審原告Aのいない集合写真の掲載,一審被告生徒らの反省のないコメントの掲載からすると,B教諭にとって,一審原告Aは1年2組から消し去られていたとしかいえず,少なくとも一審原告Aがそのように感じる
には十分な無神経さであり,一審原告Aの本件中学校への復帰の気持ちを阻害する内容である。
平成25年6月頃から,一審原告Aに関するケース会議が開かれるようになったが,内容は形式的なものに終始し,一審原告Aの本件中学校への復帰に向けての提案を積極的に取り挙げることもなかった。

反した。

以上によれば,一審被告鳥栖市は,一審原告Aに対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償義務を負う。
一審被告鳥栖市の責任は,一審被告生徒ら及び一審被告保護者らの責任と密接に関連するものとして,これらの者の責任と不真正連帯の関係となる。
(一審被告鳥栖市の主張)

一審被告生徒らの行為は,その動機,回数,金額,行為内容,態様,程度などにおいて,一審原告らが主張するようなものではなく,悪ふざけ,ちょっかいに当たる軽微なものであって,違法なものであるとは認められない。このことは,一審原告Aに欠席,遅刻,早退,授業中の退出,保健室の来室,相談などの状況の異常が認められないことからも明らかである。一審原告ら
は,一審原告Aが授業中にされたという出来事も主張しているが,授業中に一審被告生徒らの違法な行為がされた事実はない。
上記のような事実関係に反する一審被告生徒らの謝罪文やメモ類,教諭らの聴き取りの結果,それに基づく本件中学校の報告書,教育委員会の資料等が存在する。これは,一審被告生徒らの行為の発覚後における本件中学校の
教諭らの聴き取りが,一審被告生徒らに謝罪をさせ,教育的指導により反省をさせて,被害弁償により和解することに主たる目的があったため,一審原告Aの保護者(特に一審原告C)の要請や主張に対する最大限の配慮と譲歩がされていったところ,
一審原告Cらは,
当初から,
一審被告生徒らの説明,
謝罪文や加害者メモ作成について厳しい要請を繰り返し,その求める内容で
の文書の提出や文書の書き直しを一審被告生徒ら及び教諭らに要求し,その結果,教諭らによる一審被告生徒らからの聴き取りの内容が,一審原告Cの要請,誘導,誤導のとおりとなっていき,一審被告生徒らによる謝罪文等もそのとおりの内容になったことによるものである。

生徒間の行為について教諭や学校の安全配慮義務違反が成立するためには,
①学校における教育活動及びこれと密接に関連する学校生活関係において,②教諭の認識できる状況において,③その行為が動機・目的,回数・金額,行為内容,態様,程度において,損害を発生させるような行為であることが認識できるようなものであったことが必要である。また,このような生徒間の行為は,被害生徒,その保護者及び家庭,級友からの報告,申告,相談,保健室での休息,相談,定時のアンケートへの回答及び報告,欠席,遅刻,早退などの体調異常,外傷,学校生活での異常等によって把握される。一審原告Aは,一審原告両親,友人,教師,学校等に一審被告生徒らから受けた行為や被害について申告,報告,相談をしておらず,本件中学校の教諭らは,一審原告A,一審原告両親又は友人から,一審原告Aが受けた行為
について報告や相談を受けなかった。
また,一審原告Aと一審被告生徒らは友人関係にあり,特に一審被告生徒らのうちの数人は一審原告Aと親しい関係を有しており,本件中学校の教諭ら及び一審原告両親は,一緒に遊んでいるグループと認識していた。一審原告両親においても,
一審被告生徒らの具体的な行動や一審原告Aの被害など

に気付いていなかった。
上記の事情からすれば,一審被告生徒らの行為は,一審原告両親ですら気付かないほど,グループ内で,外部に分かりにくい方法,態様で行われていたものであるとしか考えられない。仮に,教諭らの前でされた行為があったとしても,前記のとおり,一審被告生徒らの行為の態様や程度は重大とはい
えず,ふざけ合い,悪ふざけと判断するのが自然なものであった。以上のとおり,一審被告生徒らの行為の客観面,申告,報告,相談がされなかった点,一審原告A及び一審被告生徒らの生活面のいずれにおいても,本件中学校の教諭らにおいて,一審被告生徒らの行為により一審原告Aの生命,身体,精神,財産等に重大な危害が及ぶことを予期するための基礎情報
はなく,その情報取得の契機もなかった。
したがって,本件中学校及びその教諭ら並びに市教委に予見義務違反はなかった。教諭らの責任が認められるかのような資料が作成されたのは,前記アの経緯により,
作成された資料の内容が一審原告Cの主張を反映したもの
となったためである。
また,
本件中学校及びその教諭ら並びに市教委に上記予見義務違反が認められないことから,結果回避義務違反も認められない。


本件中学校及びその教諭らは,10月23日以降,市教委と連絡を取り合い,一審被告生徒らからの事情聴取,一審原告Cの要請に従った謝罪文等の作成と一審原告Cへの提出などを行った。また,本件中学校,その教諭ら及び市教委は,本件の解決及び一審原告Aの復学のために,学習支援,会議の開催,一審被告生徒らへの対応などの措置を執った。このように,本件中学
校,その教諭ら及び市教委は,事態の発覚後,全力で真摯な対応を続けており,事後的な対応についても義務違反はない。


一審原告Aの損害(争点4)

(一審原告らの主張)

一審原告AがPTSDに罹患したことについて
一審原告Aは,4月から10月までの約7か月間,一審被告生徒らから一方的で継続的な暴力,威迫,金銭奪取にさらされ,これにより,PTSDを発症した。
一審原告Aを診察したA医師,I医師及びJ医師(以下J医師とい
う。のいずれも,

一審原告AがPTSDを発症していると診断している。
一審原告Aには,再体験,回避,過覚醒等のPTSDの中核的症状に加え,重度の解離症状,持続的虚無感,無力感,無価値感といった認知面の変化,対人関係困難,人への不信感,孤立等のパーソナリティの変化,怒りや暴力の爆発,危険行為,頻回な自傷行為といった感情制御困難の症状
が認められ,現在でも続いている。
一審原告Aは,現在も治療を受けているが,フラッシュバック,解離症状,自殺企図などが頻繁にみられる。このため,就労することは難しく,いつ自立した生活ができるようになるかは全く不明であり,症状が長期化する可能性がある。

財産的損害
喝取された金額

合計100万円

一審原告Aが一審被告生徒らから暴行,脅迫を受けるなどしてその意に反して交付した金銭の出所は,一審原告Aが保管していた金銭のみならず,一審原告家族が所持,保管していた金銭及び一審原告Aの祖母の自宅において保管されていた現金があり,これらの金銭等の合計額は130万円弱となる。また,一審被告生徒らは,近所のコンビニエンスストアで一審原告Aの金銭で買い食いをしたり,フレスポ等に一審原告Aを連れて行き,金銭を出させて分配してゲームをしたりしているところ,このような実態からすれば,
一審原告Aが交付した金額が原判決の認定額をはるかに超え
る多額に及ぶことは明らかである。

しかし,
本件のように,
複数の加害者が,
その人数の変動を伴いながら,
4月から10月までの間金銭の奪取行為を継続した事案では,その都度奪われた金額を特定することは不可能であり,証拠によって積算していって正確に全体の被害額を明示することも不可能である。このような本件事案の特殊性に照らせば,一審原告Aが喝取されたことによる財産的損害につ
いては民事訴訟法248条の適用又は準用をすべきであり,上記のとおり,一審原告ら側において失われた金額が100万円を超えることは明らかであるから,
少なくとも100万円を下らない金額の損害があったと認定
されるべきである。
通学不能に伴う通塾費用・教材費等

合計30万7924円

一審原告Aは,学習の遅れを防ぐために塾に通うなどした。それに要した費用は原判決別紙
原告Aが本件中学校に通えなかったために必要になった費用に記載のとおりである。私立学校進学による費用の増額

合計123万7050円

一審原告Aは,
一審被告生徒らからの脅威から逃れるために私立高校に
進学せざるを得なかった。その結果,高校進学に伴う費用の増額を余儀なくされた。その増額分(公立高校に入学した場合の費用との差)は合計1
23万7050円である。

慰謝料
暴行等による身体的精神的苦痛によるもの

1000万円

一審原告Aは,4月から10月までの約7か月間にわたり,連日のように一審被告生徒らから,暴行,脅迫,自宅への押し掛け,連れ回し,エアガンの乱射等を受け,甚大な身体的精神的苦痛を受けた。その慰謝料は1000万円を下らない。
学習権及び成長発達権の侵害によるもの
a
4月から10月23日までの分

合計2500万円

500万円

一審原告Aは,標記期間中,深刻な精神的ストレスを受けたことによ
り,勉学は手につかず,例えば夏休みには全く宿題をすることができなかった。一審原告Aの学習権侵害による損害を金銭に評価すると500万円である。
b
10月24日以降分

1000万円

一審原告Aは,一審被告生徒らによる加害の恐怖,一審被告鳥栖市の
不十分な対応等により,中学校での勉学の機会を奪われた。これによる損害を金銭に評価すると,1000万円である。
c
人として成長発達する権利の侵害分

1000万円

一審原告Aは,
一審被告生徒らの行為により自尊心をずたずたにされ,
中学生の3年間にわたり,同世代の子供との健全な交流や自信を得るための経験の機会を奪われ,真の自分を形成していく機会を奪われた。この損害を金銭に評価すると,1000万円を下らない。

PTSDに罹患したことによる損害
通院費

67万7280円

一審原告Aは,
平成24年11月6日から平成30年4月28日までの
間に,K病院にタクシーで249回通院した。片道のタクシー代金は最低でも1360円であるから,通院交通費は67万7280円(1360×249×2)を下回らない。
付添看護費

1024万円

付添看護費に係る一審原告Aの損害は,1日当たり1万円の1024日分として,1024万円が認められるべきである。
このうち,一審原告Aの通院に関する付添看護費については,一審原告Aは,PTSDの重篤な諸症状の継続によって,解離症状や,通院途中に遭遇する出来事又は出会う人物によってパニックを起こして生命身体に危険が及ぶ行動をとる可能性があるために,通院付添いが必要であり,初
診から今日まで,
自宅からK病院まで一審原告Cが通院の都度付添をした
ものである。
通院慰謝料
逸失利益

600万円
1115万4511円

一審原告AはPTSDを発症し,頻回なフラッシュバック,それに伴う解離症状,自殺企図,極度の人間不信,同世代や中学校時代を想起する者との遭遇等に対する極度の恐怖感,急性反応等が続くという後遺障害が残存しており,就労の実現性は乏しく,100%の労働能力喪失か,少なくとも自動車損害賠償保障法施行令(以下自賠法施行令という。)別表第2の第5級2号精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないものに該当する。逸失利益の金額としては,労働能力喪失率を自賠法施行令別表第2の第9級相当の35%,
労働能力喪失期間を18歳から28歳までの10年間
とし,ライプニッツ係数は,13歳から28歳まで15年のライプニッツ係数10.3797から,13歳から18歳まで5年のライプニッツ係数4.3295を引いた6.0502とし,基礎収入を賃金センサス男性学歴計全年齢平均賃金に基づき526万7600円とすると,1115万4
511円(5,267,600×0.35×6.0502)となる。後遺障害慰謝料

800万円

将来の付添看護費用

2818万4205円

一審原告Aの付添看護費用は1日当たり1万円が相当であり,一審原告Aの将来における症状の推移は不透明であるため,付添看護が必要な期間
を10年間
(ライプニッツ係数は7.7217)
とすると,
将来の付添看護
費用は2818万4205円(10,000×365×7.7217)となる。オ
弁護士費用


合計

1011万2370円

1億1191万3340円

本件訴訟では,一部請求として,1億1123万6078円の支払を求め
ている。
(一審被告らの主張)
一審原告AがPTSDを発症したとは認められない。
一審原告Aが主張する損害は否認する。


一審被告らの一審原告家族に対する責任の有無(争点5)

(一審原告らの主張)
一審原告家族は,一審原告Aが一審被告生徒らから暴行や脅迫等を受け続け,PTSDを発症し,多数回にわたって自殺企図行為を繰り返していることなどにより,以下のとおりの損害を被った。一審被告らは,連帯して一審原告家族の以下の損害を賠償する責任を負う。

一審原告Cの損害
一審原告AがPTSDを発症したこと自体の損害

500万円

一審原告Aは,一審被告生徒らの加害行為により,本来の優しく穏やかな性格を奪われた上,PTSDを発症したことにより,多数回にわたって自殺企図を繰り返し,原告Cはその現場を目撃した。こうした事態は,一審原告Cに,子が死亡したと同程度の精神的苦痛を生じさせる。これを金
銭評価すると500万円を下らない。
一審原告Aの見守りに係る損害

300万円

一審原告Aは,10月23日以降,一審被告生徒らによる仕返しの恐怖などから学校に行けなくなった。また,PTSDの症状が顕在化し,日夜時間を問わず,突然一審被告生徒らの暴行の場面が浮かび上がり,自殺を
企図し実行しようとした。そのため,一審原告Cは,一審原告Aが起きている限りは同人を見守り,ようやく寝入ったと同時に寝入るという毎日を過ごし,夜間にとれる睡眠時間は長くても3時間であった。これによる一審原告Cの身体的及び精神的苦痛は,一審被告生徒らの不法行為による損害であるところ,その金銭評価は300万円を下らない。

弁護士費用
合計

80万円

880万円

一審原告Bの損害
一審原告AがPTSDに罹患したこと自体の損害

一審原告Cの損害のうちア

400万円

と同様の損害である。

家庭内の平穏を害されたことによる損害

100万円

一審原告Bは,会社員であるところ,一審原告Cが
審原告Aのために時間と労力を費やし慢性的な疲労困憊状態に陥っていたことにより,家庭内で平穏に過ごすことができず,むしろ家庭内で一審原告Aを支え,一審原告Cを手助けするなどした。これによる損害は,100万円である。
弁護士費用
合計

50万円

550万円

原告Dの損害
家庭内の平穏を害されたことによる損害

200万円

一審原告Dは,中学受験を目指していたが,一審原告両親が本件の対応
に労力を割かざるを得なかったため,一審原告両親と過ごす十分な時間も取れず,勉強に集中できなかった。また,一審原告両親に気兼ねするようになり,
平成25年4月に交通事故に遭遇したことにより生じた左下肢全
体の麻痺の症状についても申告することができなかった。この損害を金銭評価すると,200万円である。

弁護士費用
合計

20万円

220万円

(一審被告らの主張)
一審被告らが一審原告家族に対して不法行為責任を負うことはない。一審原告家族の主張する損害は否認する。



過失相殺(争点6)

(一審被告らの主張)
仮に,一審被告らが一審原告らに対して損害賠償責任を負うとしても,過失相殺又はその類推がされるべきである。

仮に,
一審原告Aが暴行等の被害を受けたことによりPTSD罹患という被害を受けたとしても,一審原告家族又は教師らに対してその被害を申告,報告していれば,
PTSD罹患を含む被害結果の発生又は被害の拡大を回避
することができた。しかし,そのような被害申告はされなかった。

仮に,一審原告らが主張している連日のように学校内外で行われた拷問行為及び恐喝行為が認められるのであれば,一審原告Aの親権者である一審原告両親は,
一審原告Aに持たせていたというICレコーダーで録音され
た内容,自宅から現金が無くなっていたこと,自宅前に遊びに来ていた一審被告生徒らの存在やそれを録画した防犯カメラ映像,Cからの情報提供,一審原告Aの学校内外での日常生活の在り様,一審原告Aの小遣いの使途,一審原告Aがトライアルやフレスポに連日長時間入り浸っている事実等から,早い段階で,拷問行為及び恐喝行為を認識していたか,又は容易に認識
することができたといえる。したがって,仮に一審原告らが主張する拷問行為及び恐喝行為が認められ,それにより一審原告らに損害が生じたとしても,その損害の発生には,一審原告両親が拷問行為及び恐喝行為を認識し又は容易に認識することができたにもかかわらず,何も対応しなかった過失が寄与しており,
一審原告両親の過失は被害者側の過失として過失相殺

において斟酌されるべきである。
また,
一審原告Aが万単位のお金を持ちだすことができたこと,
すなわち,
一審原告両親の金銭の管理がずさんであったことは,被害を生じさせた原因の1つである。

PTSDの発症については,発症原因として,①出来事のストレッサーとしての強度だけでなく,②性別,③遺伝子的要素,④精神疾患の既往,⑤性格傾向,⑥過去の心的外傷歴,⑦養育環境と知的レベル,⑧心的外傷体験時の精神麻痺と解離体験,⑨防御因子などの要因があるとされている。仮に一審原告AがPTSDを発症しているとしても,③から⑨までの要因の関与が認められるから,過失相殺を類推して,損害賠償額について減額が認められ
るべきである。

上記アからウまでの事情を考慮すれば,本件については過失相殺又はその類推により少なくとも3割の減額がされるべきである。

(一審被告Dらの主張)
一審原告Cは,
事実経過や一審原告Aの被害の態様を実際よりも極端かつ過
大に見てしまっている。
このように一審原告Aの被害が実際よりも極端かつ過
大なものとされたため,11月初旬,一審被告Eの勤務先の保育園に対し,いじめ加害者の親を雇っているとのクレームがあり,一審被告Eは退職勧奨を受けて退職を余儀なくされ,経済的苦境に陥った。この事情からしても,本件では過失相殺がされるべきである。
(一審原告らの主張)

一審原告Aに対する一審被告生徒らの行為は故意による不法行為であり,故意の不法行為については過失相殺の主張は許されない。


一審被告鳥栖市の安全配慮義務違反及び一審被告保護者らの監督義務違反はいずれもその程度が著しいものであるから,過失相殺を認めることは,損害の公平な分担あるいは正義に反する結果をもたらす。


過酷ないじめ被害に遭った生徒は学校や親にいじめの事実を申告することができない。まして,担任から見て見ぬふりをされ,一審被告生徒らから家族への危害を伝えられ,実際に家まで再三訪問されている本件で,一審原告Aが一審原告両親に申告をすることは期待できない。


一審原告家族は,
一審原告Aがいじめの被害に遭っているとは認識してい
なかった。また,一審原告Cは,不審な点があればB教諭に問い合わせをしてきた。したがって,一審原告家族に関し,一審被告らの損害賠償責任の軽減を正当化する過失は認められない。

第3当裁判所の判断
1認定事実
前記第2の2の補正の上で引用した原判決の前提事実
(以下,
単に
前提事実
という。),後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。⑴

本件中学校入学前の事情

一審原告Aは,平成24年3月に旭小学校を卒業した。一審被告A,一審被告D,一審被告G,一審被告O,一審被告J及び一審被告Uも旭小学校に通っており,一審被告A及び一審被告Uは,小学5年生及び6年生の時に一審原告Aと同じクラスであった。一審被告M及び一審被告Rは別の小学校に通っていた。(前提事実⑴)

一審原告Cは,2月19日に脳梗塞の発作により救急搬送され,そのまま病院に入院した。この入院は7月中旬まで続いた。
Cは,一審原告Cの知人であり,かねてから一審原告らの自宅において家
事の手伝いをすることがあり,一審原告Cの入院期間中も,しばしば一審原告らの自宅において,家事をするなどした。
(前提事実⑴ア,甲202,308,証人C)

一審被告Aは,本件中学校入学の少し前の頃,一審原告らの自宅付近で遊んでいた際,近くにいた三,四歳の女児に向けて,所持していたエアガンを
向け,これを撃った。このエアガンは,一審被告Aが100円又は200円程度で購入したもので,それほど威力の強いものではなかったが,女児は泣き出した。このとき,その場にいた一審原告Aは一審被告Aの行為を止めようとしたが,一審被告Aはエアガンを撃つのをやめなかった。
女児の泣き声を聞いた女児の母親がその場に来て,一審被告Aを問いただ
したが,一審被告Aは何も述べず,代わりに一審原告Aが事情を説明した。女児の母親は,一審被告Aを注意し,その後,旭小学校に対して一審被告Aが上記行為に及んだことを伝えた。旭小学校は一審被告Cに一審被告Aの上記行為について連絡した。事情を知った一審被告Bは,一審被告Aを連れて女児の家を訪れて謝罪し,一審被告Aを叱責し,一審被告Aにエアガンを出
すように告げ,一審被告Aが出したエアガン1丁を捨てた。
(一審原告A本人,一審被告A本人,一審被告B本人)


本件中学校入学後に一審原告Aが受けた行為等

一審原告Aは,平成24年4月に本件中学校に入学し,1年2組に所属した。一審被告Uを除く一審被告生徒らも1年2組となった。一審被告Uは1年1組であった。(前提事実⑴)

4月中旬又は下旬頃,一審原告A,一審被告A,一審被告D,一審被告G,一審被告R及び他の2人の生徒は,ターザン広場に集まり,その後トライアルに行った。このとき,一審原告Aは,1万2000円を持って行き,一審被告Dが,
この1万2000円を一審原告A以外の6人で2000円ずつ分
配しようとした。一審被告A,一審被告G及び一審被告Rは,一審被告Dか
ら2000円を受け取った。他の2人の生徒は2000円を受け取ることを拒んだが,一審被告Dが,2人の生徒のうち1人に対し,お金を受け取るよう述べ,その生徒は500円だけ受領した。一審被告Dは,2000円以外に,上記2人の生徒が受領しなかった金員合計3500円も受領した。一審被告A及び一審被告Dは,一審原告Aから受領した金員でそれぞれエアガン
1丁を購入した。一審被告Dは,トライアルにおいて,一審原告Aから受け取った金銭のうち500円を,ゲームをするためのお金として一審原告Aに渡し,一審原告Aはこのお金を使ってゲームをした。トライアルからの帰り道において,一審被告A及び一審被告Dは,一審原告A及び一審被告Gをエアガンで撃った。
(甲18の5,25の1・2,26の1,一審原告A本人,

一審被告A本人,一審被告D本人,一審被告G本人,一審被告R本人)ウ
上記イの金銭授受以降,一審被告A,一審被告D及び一審被告Gは,しばしば,金銭を交付するよう一審原告Aに要求した。一審原告Aは,この要求を拒むことができず,上記の者らとトライアルやフレスポ等に行き,その場
で金員を交付することが何度もあった。
一審被告Dは,
5月上旬頃,
一審原告Aに対し金銭を交付するよう要求し,
一審原告Aが家からお金を持ってくる旨述べたにもかかわらず,お金を持ってこなかった際,
腹を立て,
一審原告Aをエアガンで撃った。
一審原告Aは,
エアガンで撃たれた後,家からお金を持ってきて一審被告Dに交付した。
一審被告A及び一審被告Dは,トライアルなどに行く前に,一審原告Aに対して金銭の交付を要求したが,一審原告Aが金銭を持ってこなかった場合に,一審原告Aに対して殴る,蹴るなどの暴力を振るうこともあった。また,一審被告A,一審被告D及び一審被告Gは,一審原告Aから金銭を受領した後,平和条約と称し,一審原告Aに何かする奴がいたら阻止するなどと述べた上で,
守ってやったからという理由でまた一審原告Aに金銭
の支払を要求したこともあった。

(甲18の1から5まで,19の1から3まで,20の1から5まで,一審原告A本人,一審被告A本人,一審被告D本人)

1学期が始まってしばらく経った頃から,1年2組の教室内等の場所において,一審原告Aが他の生徒から暴力を振るわれたり,嫌がらせ行為をされたりするようになった。

また,1年2組の男子生徒の間では,プロレスごっこと称して,男子生徒が他の男子生徒にプロレスの技をかけることや,これに類する有形力の行使をすることがしばしば行われ,一審原告Aに対してもプロレスごっことしてこのような有形力の行使がされたが,遊びやじゃれ合いの範疇を超え,一審原告Aが苦痛を感じる程度の暴力というべき有形力の行使がされることも
多かった。一審被告生徒らは,いずれも,プロレスごっことして,一審原告Aにプロレスの技やこれに類する有形力の行使をしたことがある。一審被告Mは,時に,カンフーごっこと称して,一審原告Aを叩いたり蹴ったりした。
(証人B,一審原告A本人,一審被告A本人,一審被告D本人,一審被告G
本人,一審被告J本人,一審被告M本人,一審被告O本人,一審被告R本人,一審被告U本人)

一審被告生徒らが本件中学校内でした一審原告Aに対する具体的行為として認定することができるものは以下のとおりである(ただし,一審被告生
徒らが一審原告Aに対してした行為が以下のもののみであることを意味しない。)。以下の各行為がされた時期は,一審原告Aの本件中学校入学時から10月23日までの間であるが,具体的な日時は明らかでない。一審被告Dは,複数回にわたり,カッターナイフを手にして,カチカチと音を立てながら,
一審原告Aに対して現金を持ってくるよう要求する行
為や,一審原告Aの腕をつかんで,カッターナイフの刃を出したまま振り下ろし,腕に当たる直前で止める行為に及んだ。(一審被告D本人)一審被告A及び一審被告Dは,1年2組の教室内にエアガンを持ち込んで,教室内で一審原告Aをエアガンで撃った。(一審原告A本人,一審被告A本人,一審被告D本人)
一審被告Mは,1学期の技術の授業中,のこぎりを剣道の竹刀のように
持って振り回し,一審原告A及び一審被告Rに向けた。(甲21の2,40,一審原告A本人,一審被告A本人,一審被告R本人)
一審被告Dは,1年2組の教室内で,黒板消しを一審原告Aの顔の前ではたき,一審原告Aの顔にチョークの粉をかけた。(一審被告D本人)一審被告Aは,1年2組の教室内で,一審原告Aの椅子を引いたり,足
をかけたり,手をひねる関節技をかけたりした。(一審被告A本人)一審被告Rは,一審原告Aに対し,一審原告Aの手の指を手首に付くくらい曲げたり,ゲーム(バイオハザード)の真似と称して三角定規で一審原告Aの首と背中の間をこすったりした。また,一審被告Rは,一審原告Aに対し,相手の首に自分の腕を回して抱え込む首ロックという名称のプ
ロレス技(以下,単に首ロックという。首ロックの行為態様につき,一審原告A[1回目の11頁],乙チ1[4頁],弁論の全趣旨)をかけた。(一審被告R本人)
一審被告Oは,プロレスごっことして,一審原告Aに対し,首ロックをかけたり,
立った状態の一審原告Aの腰のあたりを抱えて持ち上げた後に

落とす(持ち上げた状態から元の立った状態に勢いよく戻す)行為に及んだりした。(甲22の1,一審被告O本人)
一審被告Uは,
一審原告Aに対し,
首ロックをかけたり,
膝カックン
(他
の者の後ろに立ち,その者の膝の裏側に自分の膝を入れる行為。一審被告U本人[12頁],弁論の全趣旨)を行ったりした。(一審被告U本人)一審被告Jは,本件中学校における掃除の時間に,しばしば,チャンバラごっこと称して,
ほうきを振り回すなど,
掃除用具を用いて遊んでおり,

このとき,
一審原告Aをほうきで叩いたことがある。
なお,
一審被告Jは,
他の生徒にも同様の行為に及んでいた。また,一審被告Jは,一審原告Aに首ロックをかけたことがある。
(甲37の2,乙ニ2,一審被告J本人)

一審被告A,一審被告D及び一審被告Gは,1学期又は夏休みの間に,儀徳神社において,エアガンで撃ち合うサバイバルゲームを数回行い,一審原
告Aをこれに参加させた。このとき,一審被告A,一審被告D及び一審被告Gが一審原告Aを集中的にエアガンで撃つことがあった。
また,これ以外にも,一審被告A及び一審被告Dは,トライアルからの帰りなどに,何度か一審原告Aをエアガンで撃った。
(一審原告A本人,一審被告A本人,一審被告G本人)


一審原告Aは,何回か一審被告Dの自宅を訪れたが,一審被告Dは,この訪問の際,一審原告Aに対し,包丁を向けたことが1回あり,顔に殺虫剤のスプレーをかけたことも1回ある。(一審被告D本人)


一審被告Dは,7月16日,エアガンを持って自転車で一審原告らの自宅前に来て,同自宅前でエアガンを発射した。その後,一審被告A及び一審被
告Uが一審原告らの自宅前に来て,一審被告A及び一審被告Dが一審原告らの自宅の閉じられていた門扉を開け,一審被告A,一審被告D及び一審被告Uが一審原告らの自宅の敷地内に入ったが,一審原告Aが不在であることを告げられ,門扉をそのままにして立ち去った。
(甲267,288,乙チ4)

一審被告D及び一審被告Gは,7月21日,自転車で一審原告らの自宅前に来た。このとき,一審被告Dはエアガンを持って来ていた。一審被告D及び一審被告Gは,自転車に乗って一審原告らの自宅前にとどまり,その間,一審被告Dが一審被告Gをエアガンで1回撃った。その後,一審被告Dは,開いていた門扉から一審原告らの自宅の敷地内に入り,停めてあった一審原告Aの自転車を倒し,スタンドを曲げ,自転車に付けられていたワイヤーキーを抜いてその番号を勝手に変えようとした。一審原告らの自宅から出てき
たCが,一審被告D及び一審被告Gに対して帰るよう求めたが,一審被告D及び一審被告Gは帰らなかった。
その後,
一審原告Aが,
一審被告Dに対し,
もともと一審原告Aの自転車についており,一審被告Dが奪っていた反射板を返すよう求めたところ,一審被告Dは,自らの自転車から反射板を外し,これを一審原告Aに対して投げつけた。一審原告Aは,投げつけられた反射
板をCと共に探して拾い,自らの自転車に装着した。
一審原告Cは,
一審被告D及び一審被告Gが自宅前に長時間とどまってい
ることを認識し,B教諭に電話をかけ,自宅前に生徒がとどまっていることを伝え,偶然を装って一審原告らの自宅前を通りかかり,生徒らに指導するよう求め,
一審原告CがB教諭に連絡した事実は伝えないでほしいとも求め

た。B教諭は,一審原告Cの求めに応じ,一審原告らの自宅前に来て,一審被告D及び一審被告Gに対して帰宅するよう話したが,
同人らが立ち去るの
を確認することなく一審原告らの自宅前を離れた。B教諭が立ち去った数分後,一審原告Aが,一審被告D及び一審被告Gとともに自転車で外出した。(甲267,290,308,317,乙イ5,証人B)


夏休み期間において,一審被告生徒らの一部の者と一審原告Aがフレスポに行くことがしばしばあった。一審被告D及び一審被告Gはこれに参加することが多く,一審被告A,一審被告R及び一審被告Uも参加することがあった。一審被告D及び一審被告Gは,フレスポに行った際,一審原告Aから金
銭を受領し,この金員でゲームをすることが多く,一審被告A,一審被告R及び一審被告Uも一審原告Aから,直接に又は一審被告D等から分配を受ける方法で,金銭を受領することがあった。一審被告Dは,一審原告Aに金銭の交付を要求し,お金がないと一審原告Aが述べた際,親の財布からとればよいと一審原告Aに述べた。(一審原告A本人,一審被告D本人,一審被告R本人,一審被告U本人)

一審被告Jは,9月初旬頃,体育の授業中,一審原告Aが自分のことを笑ったと思い込み,一審原告Aの腕を強く握り,一審原告Aは泣き出した。一審被告Jは,この授業を担当していた教諭から注意を受け,一審原告Aに謝罪するよう指導され,一審原告Aに謝罪した。
また,一審被告Jは,9月中旬頃,いらいらしていた時に,一審原告Aの頭を平手で叩いた。

(乙ニ2,一審被告J本人)

一審被告Mは,9月頃から,他の一審被告生徒らの一部の者とともに,一審原告Aとフレスポに行くようになり,次のとおり,一審原告Aから金銭を受領することが複数回あった。

一審被告M,一審被告D,一審被告G及び一審被告Rは,9月10日,一審原告Aとフレスポに行き,一審原告Aからそれぞれ2000円を受け取り,同月15日にも,一審原告Aとフレスポに行き,一審原告Aからそれぞれ3000円を受け取った。
一審被告Mは,9月下旬頃,一審原告Aに対し,ショッピングモールに
行く予定があるとして,5000円を渡すよう要求し,一審原告Aは,その翌日,1年2組の教室において,一審被告Mに5000円を渡した。一審被告Mは,10月上旬頃,一審原告Aとフレスポに行き,3000円を受け取った。
一審被告M,一審被告D,一審被告G,一審被告Rは,10月頃,一審
原告Aとフレスポに行き,二度にわたって金銭を受領した。一度は,上記各生徒が一審原告Aから3000円ずつ受け取り,もう一度は2000円ずつ受け取った。
一審被告Mは,10月中旬頃,一審原告Aに対し,5000円を渡すよう要求したが,一審原告Aが,その後2日間にわたって5000円を持ってこなかったため,一審原告Aに対して押すなどの暴行を加えた。一審原告Aは,その翌日,一審被告Mに5000円を交付した。

(甲21,27,85,87,111,145,一審原告A本人,一審被告M本人)

一審被告Oは,9月頃,一審原告の自宅前において,一審原告Aから300円を受け取り,領得した。(甲22の1,乙ヘ2)
一審被告D及び一審被告Gは,9月下旬頃,スーパーマーケットにおい
て,一審原告Aの所持していた現金500円で菓子を購入した。(甲20の1・2,122,一審被告D本人)
一審被告Jは,10月頃,コンビニエンスストアで一審原告Aから150円を受け取って領得し,これとは別の日に,本件中学校外において,一審原告Aから300円を受け取って領得した。(甲23,27,86,9
2,乙ニ2,一審被告J本人)
一審被告D,一審被告G及び一審被告Uは,10月5日,一審原告Aとともに,つるやという店に行き,その後めぐみ幼稚園(お月見会)に行き,いずれかの場所で,一審原告Aから,一審被告Dは5000円,一審被告G及び一審被告Uは1500円を受け取って領得した。
(甲9の8,

20,24の1,乙チ1,乙リ1)

一審原告A,一審被告D及び一審被告Oは,9月30日,運動会を開催していた旭小学校に行った。一審被告Oは,同日,旭小学校において,一審原告A及び一審被告Dに向けて電動エアガンを撃ち,弾が何発か一審原告Aに当たった。(乙ヘ1,2)


10月13日の午後,一審被告D,一審被告G及び一審被告Oが一審原告らの自宅前に来て,
一審被告D及び一審被告Gが一審原告Aとともに自転車
で出かけた。その後,一審被告Oも合流し,同日の夕方頃に一審原告らの自宅に戻ってきたが,このとき,一審被告D及び一審被告Oはエアガンで一審原告Aを撃った。
一審被告Dは一審被告Gに対してもエアガンを撃った。
(甲
298の1・2,乙ヘ1,一審被告O本人)


10月19日,一審原告Aは,本件中学校で,一審被告Mに1万円を渡した。この1万円は,一審被告A,一審被告D,一審被告G及び一審被告Uの間で分配することとなっていたが,一審被告Mはこの分配をせずに帰宅した。一審原告A,一審被告A,一審被告D,一審被告G及び一審被告Uは,上記1万円を受け取るために一審被告Mの住居を訪れ,一審被告Mから1万
円を受領した。一審原告A,一審被告A,一審被告D,一審被告G及び一審被告Uは,
新鳥栖駅前のコンビニエンスストア
(ファミリーマート)
に行き,
その場で,上記1万円の中から,一審被告Uが5000円,一審被告Dが2400円,一審被告Aが1000円を受領した。一審原告Aは,一審被告Uに対し,3000円は返してほしいと述べ,一審被告Uは,これを受け,上
記5000円のうち3000円を一審原告Aに返した。その後,一審被告A及び一審被告Gは,一審原告Aとともにお宝発見という店に行き,中古のゲーム機を買おうとしたが,代金が足りなかったため購入せず,代わりに一審原告Aの所持していた金銭のうち4200円を使ってゲームをした。(甲20の1・2,24の1・2,135,145,乙ホ1,乙チ1,乙リ
1,一審被告M本人,一審被告U本人)

一審被告Dは,10月20日,コンビニエンスストア(ローソン)で,おにぎりとカードゲーム用のカードを購入し,この代金として少なくとも750円を一審原告Aに支払わせた。


前記認定のものを含め,本件の証拠により,一審原告Aが,本件中学校入学時から10月23日までの間に,一審被告生徒らに交付したと認定することができる金銭の金額,交付の時期及び場所は,別紙4金銭交付等一覧表の時期,
場所及び各生徒の受領額の各欄に記載のとおりである(前
記認定のもの以外の金銭交付については,同一覧表の認定に用いた証拠及び補足説明の欄に,認定に用いた証拠及び事実認定に関する補足説明を挙げた。また,場所の欄が空欄となっている行為は,当該行為がされた場
所が不明である。)。

一審原告Aは,何者かによって,自らの生徒手帳に,①バカ死ね死
の文字を書かれ,
②車にはねられそうになった人物の絵の箇所に
A
と書かれ,③一審原告Aの誕生日の欄に記入されていた自分の誕生日との文字の誕生日を消して死ねと書かれ,④住所録の欄にされていた
一審原告Cの氏名の記載の箇所にバカしねと書かれ,⑤手帳内のカレンダーの一審原告Aの誕生日の箇所にバツ印を記載して死と書かれるなどした。(甲258)

10月23日以前の一審原告Aの状況,本件中学校の教諭らにおける一審原告Aに関する認識及び対応,一審原告両親と本件中学校とのやり取り等ア
一審原告Aは,本件中学校入学時から10月23日までの間に,本件中学校の教諭らに対し,いじめを受けていることや,暴行,恐喝をされているなどの申告や相談をしたことはなかった。
本件中学校においては,平成24年度の1学期及び2学期(10月23日より前)に,生徒を対象に,いじめに関する項目も含む生活に関する記名式
のアンケートを複数回実施していたが,一審原告Aは,このアンケートにおいても,自らがいじめを受けていることを記載しなかった。また,他の生徒も,このアンケートに,一審原告Aがいじめを受けているとの記載をしなかった。
(甲163,166,210,212,217,乙イ6)


一審原告Aが本件中学校に通学していた当時,本件中学校においては,各生徒が,毎日の生活及び学習の記録として,ジャンプアップノートという名称のノートに各自記載し,これをクラス担任の教諭等に提出していた。生徒は,ジャンプアップノートに,毎日の授業の内容,準備,課題,提出物を記載するとともに,1日の記録の欄に,1日の生活を振り返り,頑張ったこと,嬉しかったこと,感じたこと,つらかったことなど,静かに自分を見
つめ,自由に記載することとされていた。一審原告Aは,本件中学校に入学した直後から,
1日の記録の欄に何も記載しないことが多く,B教諭は,
一審原告Aのジャンプアップノートに,何か記載するようにとのコメントを頻繁に記入していた。一審原告Aが,自らがいじめを受けていることをジャンプアップノートに記載したことはなかった。(甲254,証人B)

一審原告Aは,本件中学校で1学期の終わりに作成した自分を見つめて~1学期の反省~という書面の中の学級の反省の箇所で,

クラスや学年のことを振り返り,2学期はどんなクラス・学年にしていきたいのか具体的に書いてみよう。

との問いに対し,いったん

いやだった。

と書いたが,これを消し,

けんかのないクラスにしたいです。

と記載した。(甲

256の1・2)

B教諭は,一審原告Aが本件中学校に入学した平成24年4月から,10月23日までの間に,以下の内容の行為を現認し,あるいは一審被告生徒らに関する認識を有していた。

B教諭は,1年2組の教室内で,生徒が他の生徒の首に腕を巻き付けているのを見たことが複数回ある。B教諭は,これについて,プロレスごっこあるいはじゃれ合いであると認識していた。
B教諭は,一審被告A及び一審被告Dが,一審原告Aに対して,首ロックをかけるなどの有形力の行使をしたことを複数回現認した。B教諭は,
一審原告Aにちょっかいを出しているものと認識して,
一審被告A及び一
審被告Dに対し,
一審原告Aが嫌がっているのでちょっかいを出さないよ
うにと注意した。
B教諭は,一審被告Aが,給食の時間に,一審原告Aに対してちょうだいと言って,一審原告Aの給食の食べ物を取っているのを現認し,一審被告Aを注意した。
B教諭は,一審被告Mにつき,言葉遣いが悪いとか,叩いたり蹴ったり
することがよくあるとして,1学期から注意をすることがあった。B教諭は,1年2組の教室内にBB弾(エアガンの弾)が落ちているのを発見したことがあり,このときはクラスの生徒全員に向けて注意をした。また,B教諭は,生徒らが輪ゴムで紙を飛ばした後に,床に落ちた紙と輪ゴムを発見し,
こんなことをするのは誰なのかとクラス全員に向けて

言った。
(甲111,乙イ5,証人B,一審被告A本人,一審被告D本人)オ
B教諭は,
4月26日,
家庭訪問で一審原告ら宅を訪れた。
一審原告Cは,
2月19日に発症した脳梗塞の治療のため入院中であったが,医師から外出許可を得て,上記家庭訪問に対応した。このとき,一審原告Cは,B教諭に
対し,一審原告Aに関して,異変や心配な状況があるなどといった懸念を述べなかった。(前提事実⑶ウ,甲308,乙イ5)カ
B教諭は,8月21日,一審原告Aが夏休みの宿題を全くしていないことを認識し,一審原告Cに電話でこのことを伝えた。一審原告Aは,夏休み期
間中,朝から日中にかけて外出していることが多く,帰宅が夜8時過ぎ頃になることもあり,
一審原告両親は一審原告Aに対し帰宅が遅いことなどにつ
いて注意をすることがあった。しかし,一審原告両親は,B教諭から伝えられるまで,一審原告Aが宿題を全くしていないことは認識していなかった。一審原告Cが一審原告Aに確認したところ,一審原告Aは宿題をしていない
ことを認め,一審原告Cは一審原告Aに注意した。(甲308,321,乙イ5,証人B)

10月,本件中学校において放課後に合唱コンクールの練習をしていた時,参加していた一審原告Aの顔が真っ青になった。他の生徒がこれに気付いてB教諭に伝え,
B教諭は一審原告Aを保健室に連れて行った。
B教諭は,
一審原告Aの体調が悪くなったことを電話で一審原告Cに伝えた。このとき,
一審原告Cは,
一審原告Aが家でふらつくことがあるとB教諭に述べた。

(甲224,乙イ5)

B教諭は,10月19日,1年2組のLという生徒が,一審原告Aの胸倉をつかんでいるのを発見し,Lを一審原告Aから引き離し,Lに対し,胸倉をつかむような行為をしてはいけないと注意した。Lは,一審原告Aから笑われたと述べ,同様の説明をする他の生徒もいたため,B教諭は,一審原告
Aにも悪いところがあるとして,Lに対して謝るよう一審原告Aを指導した。(甲224)

一審原告Cは,
一審原告Aが本件中学校に入学してから10月23日まで
の間に,数度にわたり,B教諭に対し,自ら電話をかけ,又はCに依頼してCから電話をかけてもらい,本件中学校における一審原告Aの状況について
尋ねた。このとき,B教諭は,一審原告Aには問題がないとの趣旨の回答をした。10月23日より前に,一審原告両親が,本件中学校に対し,一審原告Aがいじめを受けている又はその懸念があると伝えたことはなかった。(甲308,321,乙イ5,証人B,証人C)


10月23日の事情

一審被告Jは,10月23日の朝,1年2組の教室内において,一審被告A,一審被告D,一審原告Aらが集まっており,その場で一審被告Aが一審原告Aに対して5000円を持ってくるよう要求しているのを耳にして,B教諭に対し,
一審原告Aが他の生徒からお金を持ってくるよう要求されてい

たことを告げた。
B教諭は,同日,一審被告Aから事情を聴取し,物品の購入代金を一審原告Aに出させるなどの金銭のやり取りが行われていたことを把握した。B教諭は学年主任であるE教諭に報告した。
その後,
生徒指導主事であるM教諭,
D教頭,さらにH校長にも情報が伝えられ,同日中に,1年生を担当する複数の教諭らで分担して,一審原告A,関与が考えられる生徒として一審被告A,一審被告D,一審被告G,一審被告M及び一審被告Uから,事情を確認
する生徒として一審被告Jから,それぞれ事情を聴取することとなった。(甲16の2,224,321,乙イ5,6,7,乙ニ7,証人B,証人D,一審被告A本人,一審被告J本人)

10月23日に教諭が行った事情聴取における一審原告Aの説明の内容は次のとおりである。
金銭のやりとりは9月の終わりから始まった。一審被告Aが,昼休みに今度遊ぶときにお金ちょうだいと言ってきた。断ったが,9月の終わり頃の日曜日に遊びに行った時に,返すからと言われて50円貸した。まだ返してもらっていない。

10月に入ってからの土曜日に,一審被告A,一審被告D及び一審被告Gと4人で遊んでいる際,一審被告Dから,一審被告Aにお金を渡したことを指摘され,一審被告Dにお金を渡すよう要求された。嫌だと言ったらエアガンを向けられ,財布の中身を確認された。
コンビニエンスストアに行っている間に,財布から500円ほどなくな
っていた。一審被告Dが取ったと一審被告Gから教えてもらい,一審被告Dに返すように求めたところ,取っていないと言われ,またエアガンを向けられた。その後,一審被告Dは,いつか返すと述べた。
合唱コンクールのリハーサルの少し前に,教室で,一審被告Mから今度遊ぶときに5000円ちょうだいと言われた。
嫌だと言ったが,
何でかやん
絶対持ってこいよと言われた。翌日,持って行かなかったとこ
ろ,一審被告Mから押され,
明日持ってこいと言われた。その翌日も持
って行かなかったところ,
何で持ってこんと
と言われ,
腕をつねられた
り,蹴られたりした上で明日絶対持ってこいよと言われた。翌日に5000円を持ってきて一審被告Mに渡した。
10月17日にローソンで遊んだ際,一審被告Dから,
Uが5000円ちょうだいと言っている
という話があり,
一審被告Uも
ちょうだい

と言った。嫌だと言ったところ,一審被告Dからエアガンを向けられ,一審被告Uにお金をやれと言われた。再度嫌だと言ったところ,腕を1発エアガンで撃たれた。
10月19日に,
新鳥栖駅にあるファミリーマートで,
一審被告Dから例のブツは?と言われたので,一審被告Uに5000円を渡した。一審被告Dは,
これを最後にするから2400円ちょうだいと言ったので,これを渡した。一審被告Aも俺も1000円だけちょうだいと言ったため,渡した。(甲16の2,145,231,乙イ5,証人B)

教諭らは,同日,一審被告A,一審被告D,一審被告M及び一審被告Uからも事情聴取し,これらの者が,一審原告Aが出したお金を使ってゲームセ
ンターで遊んだことや,一審原告Aが渡したお金の分配を受けたことがあることを把握した。また,一審被告A及び一審被告Dが一審原告Aに対してエアガンを向けたことがあることも把握した。
教諭らは,午後7時30分頃,事情聴取をした生徒らを帰宅させることとした。その際,M教諭等の教諭が,金銭の受渡しはいけないことであると生
徒らを指導し,B教諭も,エアガンを生徒らに向ける恰好をして,このようなことをされたら怖いだろうなどと指導した。
(甲16の2,177,231,乙イ5,6,証人B,証人D)

B教諭は,同日,一審原告両親に電話で連絡し,一審原告Aが他の生徒からお金を取られていた旨報告した。一審原告両親は,同日午後8時30分頃に本件中学校を訪れ,被害額が10万円を超えている,家に置いてあったお金がその程度無くなっていることに気付いていた,暴言や暴力も受けているはずである,一審原告AにICレコーダーを持たせており,確認しているなどと述べ,警察に届けるよう本件中学校側に求めた。H校長は,学校の責任で調査や支援をするので,まずは学校へ預けてほしいと説明した。(甲16
の2,177,231,乙イ5,7,証人D)



10月24日以降における一審被告生徒らからの事情聴取,一審被告生徒ら及び一審被告保護者らの一審原告両親に対する謝罪等

一審原告Cは,10月24日午前8時頃にB教諭に電話をかけ,一審原告Aから聴取したところによると被害額は30万円を超える,自殺の心配があるため学校には行かせられないなどと述べた。

D教頭は,同日午前,一審原告Aに関してそれまでに本件中学校として把握していた事情を市教委に報告した。このとき,市教委から,お金が絡んでいるので,
一審原告A側から警察に被害届を出してもらう方がよいとの話が
あり,H校長は,一審原告Cに電話で連絡し,警察に被害届を出すことを勧めた。また,D教頭及びM教諭は,同日午後,一審原告ら宅を訪問し,一審
原告Aから現状等について聴取するとともに,一審原告Cの話を聴いた。一審原告Cは,同日午後6時30分頃,C他1名とともに本件中学校を訪れ,H校長,D教頭らが対応した。一審原告Cは,一審原告Aから聴き取ったとする内容を説明するとともに,生徒らによる謝罪や弁償を求めた。(甲16の2,177,乙イ6,7,証人D)


一審原告Cは,
10月25日,
鳥栖警察署に対して調査依頼をした。
(甲1
6の2,177)


D教頭は,同日,市教委に,いじめ事案が発生した旨の事故報告書を提出し,同月23日及び24日の経緯を報告した。
(甲8,16の2,乙イ6)


本件中学校においては,同月24日以降も,引き続き,複数の教諭らによる一審被告生徒らからの事情聴取を継続した。同日の聴取では,一審原告Aに対する金品の強要が行われていたこと,一審被告生徒らの一部の者が一審原告Aに対してエアガンを撃った行為や暴力,暴言があったことを把握した。(甲16の2,乙イ6)

本件中学校は,一審被告生徒ら及び一審被告保護者らが,一審原告A及び一審原告両親に早期に謝罪し,この謝罪を一審原告A及び一審原告両親に受け入れてもらい,
その上で被害弁償をして問題を解決するとの方針を採るこ
ととし,一審被告生徒らからの事情聴取は完了していなかったが,一審被告生徒ら及び一審被告保護者らに対し,早期の謝罪を勧めた。
同月25日,一審被告Aらが,H校長及びM教諭とともに,謝罪のため一
審原告ら宅を訪れた。この訪問において,訪問者らは一審原告Aに会えなかった。一審原告Cは,一審被告Aらの謝罪及び説明に対し,金額が一審原告ら側の認識と異なる,この謝罪で終わりにはならないとの認識を示した。10月26日には,一審被告Dらが,H校長及びM教諭とともに,謝罪のため一審原告ら宅を訪れた。この訪問においても,訪問者らが一審原告Aに
会うことはできず,一審原告Cは,一審被告Dらの謝罪及び説明に対し,金額が一審原告ら側の認識と異なる,この謝罪で終わりにはならないとの認識を示した。
その後も,一審被告生徒らが,その保護者等とともに,順次謝罪のため一審原告ら宅を訪問し,これにH校長又は本件中学校の教諭が同行した。いず
れの訪問に際しても,訪問者らが一審原告Aに会うことはできず,一審原告Cは,しばしば,一審被告生徒ら及び一審被告保護者らの説明内容や謝罪に納得することができない旨の姿勢を示し,
一審原告Cの認識に沿った事実が
あった旨の回答があるまで一審被告生徒らに対して質問を繰り返すこともあった。このように,暴行の事実や交付を受けた金銭の額等に関する一審被
告生徒らの説明が一審原告Cの認識と一致しないこともあって,
一審原告両
親が一審被告生徒らの謝罪を受け入れることがなかったため,一審被告生徒らの多くは複数回一審原告ら宅を訪れることとなり,11月中旬までの間だけでも,一審被告Aと一審被告Oは3回,一審被告Dと一審被告Gは2回,それぞれ一審原告ら宅を訪問した。
(乙イ1,2,6,7,証人D,一審被告B本人,一審被告E本人)カ
本件中学校においては,一審被告生徒らによる謝罪のための一審原告ら宅の訪問と並行して,一審被告生徒らからの聴取を継続したが,一審被告生徒らの訪問時における一審原告Cの対応からして,一審被告生徒らの言い分を一審原告Cに伝えても,一審原告Cが納得せず,一審原告両親が一審被告生徒らの謝罪を受け入れないとの認識をもつようになり,一審原告Cが述べた事情を一審被告生徒らに確認する方法で事情聴取を行うようになった。(乙

イ2,6,7,証人B[31頁]
,証人D)

一審原告両親らは,11月中旬頃,本件中学校に対し,一審原告Cの体調が不良であるとの理由により,今後は一審被告生徒らに直接会わないことを伝え,
一審被告生徒らにおいて謝罪文を作成して一審原告ら宅に持参するよう求めた。それ以降,一審被告生徒らが謝罪文やメモを作成し,本件中学校
の教諭が一審原告ら宅に持参したが,一審原告Cがこの謝罪文やメモの内容が事実と異なるとして,受け取らないとの意向を伝えてきたり,書き直しを求めたりすることがあり,そのような場合,本件中学校の教諭らが,一審被告生徒らに対し,
一審原告Cの述べる事情がなかったかどうかを確認した上
で,
新たな謝罪文やメモの作成を指示した。
これにより,
一審被告生徒らは,

複数の謝罪文やメモを作成した。
(乙イ2,6,7,乙トA6,証人B,証人
D,一審被告A本人[15,59頁]
,一審被告M本人[18頁]
,一審被告
R本人[17頁]
,一審被告K本人[6頁]


医師による一審原告Aの診察(甲11,15[枝番含む。],306,証人A)

一審原告Aは,11月6日にK病院精神科を受診した。病院には一審原告Cも同行し,A医師が一審原告Aを診察した。一審原告Aは,診察の最中,落ち着きなく周りを見渡し,体は硬直した感じで,ささいな音にも反応する状態であり,A医師は過覚醒症状があると判断した。A医師は,一審原告Aに質問をしたが,一審原告Aは質問に答えず,一審原告Cが,一審原告Aの受けた行為等について説明した。

A医師は,同日,一審原告Aの病名がPTSDであり,同日から平成25年3月31日まで休学する必要があるとの診断書を作成した。

一審原告Aは11月9日にもK病院精神科を受診した。同日,心理士であるN(以下N心理士という。)により,心理検査として,IES-Rの
検査と,バウムテストが実施された。
IES-Rの結果は,
カットオフの25点を上回る41点であり,
内訳は,
侵入症状12点,
回避症状13点,
過覚醒症状16点であった。
N心理士は,
A医師に対する報告書において,上記結果につき,上記のいずれの項目も高い得点となっている,得点が高かった項目は,侵入症状ではどんなきっかけでも,そのことを思い出すと,そのときの気もちがぶりかえしてくるその時の場面がいきなり頭にうかんでくる,回避症状ではそのことを何とか忘れようとしているそのことは考えないようにしている,過覚醒症状では神経が敏感になってちょっとしたことでドキッとする寝つきが悪いであり,どの症状も高く,非常につらい状態であるようだとの見解を
記載した。
バウムテストは,
枠の記載のない用紙と枠の記載された用紙それぞれに木
の絵を描く内容である。一審原告Aは,どちらもりんごの木を描いた。N心理士は,上記報告書において,

枠なしの木では,体裁は整えられている

が,非常にシンプルに描かれており,樹幹の中には9個の実が描かれているが,地面は描かれず,やや左に寄っており,これらのことから,精神的に不安定な状態であることが示唆され,些細なことでも敏感に反応することがうかがわれる,実の描き方からは退行した状態であると思われ,受動的,内向的になっていることが推察されるが,なんとか自分の中の多くの葛藤や不安を隠そうと努力する力や,体裁を整える力がある,

枠ありの木は,用

紙に収まり切れておらず,根本も収まっていない木の一部分のようであり,一審原告Aは現在の感情(混乱や恐怖など)に支配されているので,物事を
現実的,客観的に判断する余裕がないことが示唆される,

角ばった枝は,

自分の考えや感情の向きを強制的に変えられたことを象徴すると言われており,
外界からの圧力で自分を変えざるを得なかったのではないかと思われ
感を強く感じていることが示唆され,心が乱される要因が多少なりとも現在
A本
人は,死にたいとは思わないと話していたが,衝動性が高いことが示唆されているので,しばらく注意して見守っていただければと思うと記載した。ウ
一審原告Aは,その後,毎月数回程度の頻度でK病院に通院し,A医師の診察を受けた。一審原告Aは,12月頃からは若干自らの認識を話すように
なったものの,
診察の際の説明やA医師の問いに対する回答の大半は一審原
告Cが行った。


本件中学校による一審被告生徒らに対する指導等

本件中学校は,一審被告生徒らの一部の者について,10月末頃から12月末頃までの間,部活動に参加することを停止させて,草むしりや石拾い等の奉仕活動を行わせた。平成25年2月及び3月には,一審被告保護者らを個別に学校に呼び出し,H校長から一審原告Aの思いや現在の状況などを伝えた。市教委のO教育長は,同月下旬,一審被告生徒らに対して説諭を行った。

また,同年4月10日から同月12日までの3日間,一審被告A,一審被告D,一審被告G,一審被告M及び一審被告Oについて,出席停止に準じた措置として別室登校とした。別室登校期間中は,校長,教頭,主幹教諭,市教委の担当者,鳥栖警察署生活安全課の担当者等が指導を行った。(甲160,212,265の3,320,乙イ6)

本件中学校は,一審被告生徒らに対し,冷静に自分を見つめ直させ反省を促すこと,個々の状況を把握すること等を目的として,平成25年度の1学
期の間,更生プログラムを実施した。更生プログラムには,①上記アの別室登校,②週1回程度の中庭管理,③教育相談推進委員による週1回程度の面談を通じての生活の様子や精神の状況の把握,④担任とのジャンプアップノートの交換による1日の生活目標設定とその評価,⑤1か月に1回の校長,教頭との面談を通じて,精神状態を探るとともに一審原告らの気持ちを伝え
ること,⑥関係機関による観察と情報交換,⑦担任による定期教育相談,⑧1か月に1回程度,様々な立場の職員から話を聞くこと,⑨スクールカウンセラーによる授業等の巡回及び⑩勤労体験であった。
(甲181,263の
8,265の1・3,320)

本件中学校は,一審被告生徒らが有していたエアガン5丁(電動エアガンを含む。
)を提出させた。これらのエアガンは,子供向けのもの(対象年齢10歳以上)
であり,
BB弾を20ないし30m程度飛ばす能力を有していた。
弾倉には,1度に30発のBB弾を入れることが可能であった。BB弾を発射するためには,その都度,銃身部分に当たるスライドを手で手前に引くことでバネを操作する必要がある。電動エアガンは,この操作が電動で行われ
る。どちらのエアガンも,威力は,体に直接銃口を付けられて撃たれたような場合には痛みを感じるが,痛みが数日残るようなことはない。上記5丁のエアガンのうち,一審被告Aが提出したエアガンは3丁あり,BB弾を射出するためのバネを追加する改造をしたものも1丁あった。
(甲10,
227,
315,乙イ3,被告G本人,被告A本人)


B教諭は,平成24年度において,1年2組の学級通信わだちを定期的に作成して生徒に配布していた。B教諭は,同年度の最後に作成したわだちにおいて,

みんなとにかく元気で,人の話は聞かず,みんなそれぞれ自分の話をして先生方に毎日怒られていましたね。私も,毎日毎日怒っていました。「みんなに私の思いは,伝わっていたのでしょうか?ここがみんな

の短所ですね。でも,長所でもあります。何かあっても怒られてもすぐに明
るく元気なクラスに戻ります。この元気さはすごい長所です。これからも明るく元気なみんなでいてください。
」などと書き,一審原告Aが写っていな
い1年2組のクラス写真を掲載し,一審原告Aのことについては何も触れず,いじめをしてはいけないという趣旨の記載もしなかった。B教諭は,一審原告Aには上記内容のわだちを見せない方がよいと考え,これを一審原告
ら宅に持参又は送付することはしなかった。
(甲7の1から3まで,
224)


平成25年における本件中学校及び市教委の対応等

一審原告両親は,平成25年2月頃まで,一審原告Aを学校に戻すことを優先するためとして,本件中学校に対し,一審原告Aが被害を受けたことを
対外的に明らかにしないよう求めていた。そのため,本件中学校及び市教委は,
本件中学校の保護者に対する説明会及びマスコミに対する記者会見を開かないでいたが,
同年3月中に上記説明会及び記者会見を開催する方針を決
め,これについて一審原告両親の承諾を得て,その開催日を同月21日と決めた。

一審原告両親は,一審被告生徒らの謝罪や説明が一審原告両親の意に沿うものでないことや,
一審被告生徒らが停学や出席停止にならず本件中学校へ
の通学を続けていることなどの状況に,次第に不満を募らせ,本件中学校や市教委に対する不信も生じ,上記説明会及び記者会見と同日に,独自の記者会見を実施することを決めた。一審原告両親は,この記者会見の実施の決定
に際し,本件中学校や市教委に対して事前に連絡や協議をしなかった。(甲207から213まで,320)

本件中学校は,同日,一審原告両親らが記者会見をした後に,市教委の関係者も出席の下で,本件中学校の1年生の保護者向けの説明会を開催し,同月25日には2年生の保護者向けの説明会を開催した。
いずれの説明会においても,D教頭が,発生したいじめの内容の説明として,金銭要求に係る被害額は数十万円であり,身体的な暴力としては,エア
ガンで撃つ,プロレス技を掛ける,叩く,蹴るがあり,言葉による暴力としては,
脅し,
ちょっとしたことで文句を言うというものがあり,
その他にも,
持ち物を壊す,自転車で追い回す,カッターナイフの刃を見せる,殺虫剤をかける,包丁を向ける,ノコギリを竹刀のように振る等の行為があった,犯罪と捉えていると説明した。

また,本件中学校は,同年4月17日,同月に入学した新1年生の保護者に対する説明会を実施した。
(甲16の2,206から208まで,214,215)

市教委は,
同年3月21日,
前記イの1年生の保護者向け説明会の終了後,
鳥栖市役所において記者会見を行った。O教育長は,本件はいじめではなく
犯罪であると考えていると述べた。
(甲210,211)

D教頭(当時校長)
,E教諭及びB教諭は,同年4月3日,約半年間いじめ
を発見できなかったことにつき,市教委教育長から厳重注意を受けた。(甲
265の1)



一審原告Aに対する本件中学校等の措置や働きかけ等

一審原告Aは,平成24年10月24日以降,学習塾に1週間に1回程度通っていた。
学習塾においては,
講師から一対一で指導を受けていた。
(甲1
5,320)


D教頭は,同年11月9日時点で,一審原告Aが鳥栖市の学校適応指導教室みらいに通うこととする方策を検討していたが,同日,H校長とD教頭がA医師と面談したところ,A医師は,2か月間は一審原告Aを家で休ませるべきであって,
みらい
に通わせることもまだ早いとの意見であった。
(甲15,180,320)

平成25年度の一審原告Aの学級担任教諭など,本件中学校の教諭らは,同年4月下旬頃から,一審原告Aの学習支援として,一審原告ら宅を訪問して,国語,数学,理科,社会の教科指導を開始した。学習支援の対象は,平
成26年2月頃までには,英語や音楽など合計6教科に広げられた。(甲1
6の2,216,222,乙イ8)

平成25年2月21日以降,一審原告両親,本件中学校の関係者,市教委の関係者等が参加して,一審原告Aへの支援についての会議(支援会議)が行われ,平成26年4月まで7回開催された。この支援会議では,一審原告
Aに対する支援方法として,
みらい
で個別指導することのほか,
緊急の一
時避難として,
鳥栖市内の他の中学校への登校又は県立中学校における学習
を行うこと,本件中学校へのスクールカウンセラーの重点配置,被告鳥栖市が費用を負担してNPO法人による訪問支援を行うことなどが提案された。(甲150,205,222,225,乙イ8)


一審原告Aは,同年1月9日から,
みらいに通うようになり,同年2月
4日までに13回みらいへ行き,本や漫画を読んだり,トランプ,サッカーなどをしたりして過ごした。しかし,同年3月以降はみらいに通う回数が少なくなった。
(甲15,222)


同年2月から3月にかけて,西九州大学大学院の教授や大学院生が本件中学校を訪れ,生徒たちと気軽に触れ合いを持ちながら,話し相手になったり悩みの相談に乗ったりすることで,生徒の不安の解消に当たるとともに,いじめなどの生徒指導上の問題の早期発見に努める心の支援員配置事業が行われた。
(甲226)


B教諭,D教頭(当時校長)
,E教諭,M教諭は,同年3月29日,一審原
告らの自宅を訪問した。この訪問では,約3時間30分にわたって,一審原告Cの質問に回答した。(甲224,321)

一審原告ら代理人らによる事情聴取(甲35から43まで,乙ニ5)一審原告両親は,平成25年11月頃,一審被告保護者らに宛てて,現在の一審被告生徒ら及び一審被告保護者らの気持ちや今後の考えを聞きたいとして,指定の時間に一審原告らの自宅に来るよう求める文書を送付した。一審被
告生徒ら及び一審被告D両親を除く一審被告保護者らがこの要請に応じ,平成25年12月下旬,
個別に一審原告らの自宅を訪れた。
一審原告らの自宅には,
複数名の弁護士(全て本件訴訟において一審原告ら訴訟代理人を務める弁護士である。
)も同席していたが,このことは,上記文書には記載されておらず,一審被告生徒ら及び一審被告保護者らは弁護士が同席することを認識していな
かった。この訪問においては,上記弁護士らが一審被告生徒らに対して多数の質問をし,その回答が弁護士らの納得する内容でなかった場合や,一審原告Cから聴取していた同人の認識と異なるものであった場合には,
上記弁護士らが
一審被告生徒らに更に追及するなどした。
2争点1(一審被告生徒らの一審原告Aに対する責任の有無)について⑴

本件で問題とされている一審被告生徒らの行為は,一審被告生徒らが中学1年生の時にされたものであるところ,公立中学校に通う中学1年生(12歳又は13歳)
であった一審被告生徒らは,
他人の身体や財産等を害してはならず,
これを害した場合にはその行為の責任を負わなければならないことについて判断能力を有していたと認められるから,本件において民事上の責任能力を有
すると認められ,これに反する証拠はない。
一審被告Rらは,一審被告Rに当時責任能力がなかったと主張し,一審被告Uらは,一審被告Uに当時責任能力がなかったと主張するが,いずれも採用することができない。


本件の証拠から行為者及び具体的な行為の態様を認定することのできる一審被告生徒らの行為(認定事実⑵),一審原告Aの一審被告生徒らに対する金銭の交付の頻度や金額(認定事実⑵ツ,別紙4金銭交付等一覧表),10月24日以降,一審原告Aが本件中学校に通学しなかったこと(前提事実⑷),一審原告AがK病院精神科への通院を継続していること及び同病院での診察の結果(認定事実⑹。なお,一審原告AのPTSD発症が認められるか否かは,後記5⑴で検討する。)を総合すれば,一審原告Aは,認定事実⑵において具体的に認定された行為のみならず,本件中学校入学後のある時点から10月23日までの間に,他の生徒から,肉体的,精神的苦痛を与える加害行為を継続的に受けたと認められる。
後記4⑵のとおり,
平成24年当時において文部科学省が調査等において用

いていたいじめの定義は

当該児童生徒が,一定の人間関係のある者から,心理的,物理的な攻撃を受けたことにより,精神的な苦痛を感じているもの。なお,起こった場所は学校の内外を問わない。

というものである。また,同年当時はいじめ防止対策推進法の施行前であるが,同法2条1項で定義されているいじめは,児童等に対して,当該児童等が在籍する学校に在籍してい
る等当該児童等と一定の人間関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為であって,当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいうとされている。これらのいずれのいじめの定義に照らしても,一審原告Aは,上記の期間において,他の生徒からいじめを継続的に受けていたと認めることができる。

この点,一審被告生徒らは,一審被告生徒ら全ての者について一審原告Aに対する不法行為があったと認められない,あるいは,少なくとも自らの一審原告Aに対する不法行為は認められないと主張する。
しかし,
認定事実⑵ツ及び別紙4金銭交付等一覧表のとおり,一審原告Aは,
一審被告生徒らから,長期間にわたって頻繁に金銭の交付を要求され,自らの
意に反して金銭を交付せざるを得ない状況に追い込まれ,金銭をたびたび交付しており,交付した金銭の合計額は高額なものとなったことが認められる。このような事実がありながら,
これと同時期に一審原告Aに対して加えられた有
形力の行使等が,悪ふざけ,ちょっかいに当たる軽微なものしかなかったとは考え難い。
また,一審原告Aが他の生徒からされた個々の行為について,それだけが行われたとすれば不法行為とならないとしても,そのような行為が継続的に一審
原告Aに加えられれば,それは全体として一審原告Aに対する不法行為(いじめ)となり得るといえる。
有形力の行使がプロレスごっこの名目でされたものであるとしても,そのことによって,
一審原告Aに加えられた当該有形力の行使が,
全て悪ふざけ,
いたずら,
遊びのたぐいの行為であることとなって,
社会通念上許されるとか,

不法行為が成立しないことになるとは解されない。


一審原告らは,
一審被告生徒らのいじめ行為は一連一体の加害行為であるか
ら,一審被告生徒ら全員の共同不法行為が成立すると主張する。
しかし,一審被告生徒らは,その行為の全てにつき互いに意を通じていたも
のではなく,
一審被告生徒ら各自の加害行為の内容やその継続性等は一様では
ないので,これらを個別に見て不法行為責任を判断する必要がある。そこで,以下,一審被告生徒らそれぞれにつき,一審原告Aに対する加害行為(いじめ)への関与や,一審原告Aに対する不法行為責任の有無及び程度について検討する。


一審被告Aについて
認定事実⑵によれば,一審被告Aは,4月中旬又は下旬以降,しばしば金銭の交付を一審原告Aに要求し,一審原告Aが金銭をもってこなかったときに殴る,蹴るなどの暴行を加えたこともあり,一審原告Aから受領したと証拠から認定することのできる金銭の金額は11万5300円にものぼる。ま
た,一審被告Aは,教室内や屋外で一審原告Aをエアガンで撃ったことがあると認められる。一審原告Aがお金を要求されていることをB教諭が認識した10月23日も,一審被告Aは,教室内で一審原告Aに対して金銭の要求をしていた。
一審原告Aは,その本人尋問において,一審被告Aから,上記認定の行為のほかにも,教室内で暴行を受けたとか,屋外においてエアガンで撃たれたり,自転車でぶつかられたりする暴行を受けた旨供述するところ,一審被告
Aの上記行為の態様に照らせば,一審原告Aの供述は信用することができ,一審被告Aは,認定事実⑵に認定した行為以外にも,1年2組の教室内や,屋外等において,4月中旬又は下旬以降,10月23日に至るまで,継続的に,一審原告Aに対して,肉体的及び精神的苦痛を与える有形力の行使や嫌がらせ行為に及んだと認められ,上記の継続的な有形力の行使及び嫌がらせ
行為は,前記⑵のいじめに該当し,一審原告Aに対する不法行為となると認められる。
一審被告Aの供述及び陳述のうち,上記認定に反する内容の供述及び陳述は信用することができない。

一審被告Dについて
認定事実⑵によれば,一審被告Dは,4月中旬又は下旬以降,しばしば金銭の交付を一審原告Aに要求し,一審原告Aが金銭をもってこなかったときに殴る,蹴るなどの暴行を加えたこともあり,一審原告Aから受領したと証拠から認定することのできる金銭の金額は10万9800円にものぼる。ま
た,一審被告Dについては,教室内や屋外で一審原告Aをエアガンで撃ったこと,一審原告らの自宅前でエアガンを撃ったことや,一審被告Gと一審原告ら自宅前に来て帰ろうとしなかったこと,カッターナイフの刃を出したまま振り下ろし,
腕に当たる直前で止める行為に及んだことなどがあると認め
られる。

一審原告Aは,その本人尋問において,一審被告Dから,上記認定の行為のほかにも,
学校からの帰宅に際して一審被告Dの帰宅する経路を通らされ
て,逃げようとすると暴行されたなど,1年2組の教室や屋外などで暴行を受けた旨供述するところ,一審被告Dの上記行為の態様に照らせば,一審原告Aの供述は信用することができ,一審被告Dは,認定事実⑵に認定した行為以外にも,
1年2組の教室内や,
屋外等において,
4月中旬又は下旬以降,
10月23日に至るまで,継続的に,一審原告Aに対して,肉体的及び精神
的苦痛を与える有形力の行使や嫌がらせ行為に及んだと認められ,上記の継続的な有形力の行使及び嫌がらせ行為は,前記⑵のいじめに該当し,一審原告Aに対する不法行為となると認められる。
一審被告Dの供述及び陳述のうち,上記認定に反する内容の供述及び陳述は信用することができない。


一審被告Gについて
認定事実⑵によれば,一審被告Gは,4月中旬又は下旬以降,しばしば金銭の交付を一審原告Aに要求し,一審原告Aから受領したと証拠から認定することのできる金銭の金額は5万4050円にものぼり,金銭を受領した回
数も16回にのぼる。また,認定事実⑵の各事実及び証拠(一審原告A,一審被告G)によれば,一審被告Gは,本件中学校入学時から10月23日までの間,一審被告Dと共に行動することがしばしばあったと認められ,7月21日には,一審被告Dとともに一審原告らの自宅前に来て,なかなか帰ろうとせず,一審原告CがB教諭を呼んで対応を依頼する事態となった。これ
らの事実によれば,一審被告Gは,一審原告Aから金銭を受領した際に,一審被告Dが暴力等によって一審原告Aの意思を抑圧させ,一審原告Aが要求に応じて金銭を交付せざるを得ない状況を作出していることを認識しつつ,自らも一審原告Aに対して金銭を要求していたものと推認することができる。

また,一審被告Gは,一審被告A及び一審被告Dとともに,一審原告Aを参加させたサバイバルゲームを何回か行い,一審原告Aをエアガンで撃っている(認定事実⑵カ)。この点,一審被告G,一審被告A及び一審被告Dは,サバイバルゲームをしたことは認めつつ,一審原告Aもエアガンを持って,相互に撃ち合うゲームをしたにすぎない旨主張し,一審被告Gはこの主張に沿う陳述をしており,一審被告Aはこの主張に沿う供述及び陳述をしている(乙ロ1,乙ハ1,一審被告A本人)。しかし,一審被告A及び一審被告Dが一審原告Aに対して前記ア及びイに挙げたような行為に及んでおり,かつ,一審被告A,一審被告D及び一審被告Gが一審原告Aに対して継続的に金銭を要求して交付させていた状況がありながら,サバイバルゲームは一審原告Aが一審被告A,
一審被告D及び一審被告Gと対等の関係で行っていた

とは考え難い。一審原告Aは,サバイバルゲームにおいて,的にされたり,撃ち合いしている時のガードや盾にされたり,逃げるところを3人で撃たれたりしたと供述しており(一審原告A本人),この供述は信用することができ,
一審被告A及び一審被告Gの上記供述及び陳述は信用することができない。

一審原告Aは,その本人尋問において,一審被告Gが,上記認定の行為のほかにも,一審被告Aや一審被告Dと一緒にいるときに,一審原告Aに対して暴行を加えた旨供述するところ,一審被告Gの上記行為の態様に照らせば,一審原告Aの供述は信用することができ,一審被告Gは,一審被告A及び一審被告Dほどではないとしても,認定事実⑵に認定した行為以外にも,
1年2組の教室内等において,4月中旬又は下旬以降,10月23日に至るまで,一審原告Aに対して,継続的に暴行を加えたと認められる。以上に認定した一審被告Gの一審原告Aに対する継続的な金銭要求や有形力の行使は,前記⑵のいじめに該当し,一審原告Aに対する不法行為となると認められる。

一審被告Gの供述及び陳述のうち,上記認定に反する内容の供述及び陳述は信用することができない。
なお,認定事実⑵イ,ケ,ソ,証拠(一審被告G)及び弁論の全趣旨によれば,
一審被告Gが一審被告Dからエアガンで撃たれるなどの有形力の行使をされることがあったと認められる。しかし,この事実によって,一審被告Gが一審原告Aに対して前記認定の行為に及んだと認められないとか,一審被告Gの行為が一審原告Aに対する不法行為を構成しないことにはならな
い。

一審被告Mについて
認定事実⑵によれば,一審被告Mは,一審原告Aに対し,プロレスごっこと称して有形力の行使をしたほか,カンフーごっこと称して叩いたり蹴ったりしたこと,
授業中にのこぎりを竹刀のように振り回して一審原告Aに向け

たこと,9月頃からではあるが,他の一審被告生徒らと一緒にたびたび一審原告Aとフレスポに行くようになり,一審原告Aから金銭を受領し,それ以外の場所でも一審原告Aに金銭を要求し,一審原告Aが金銭を持ってこなかったときに暴行を加えたことが認められる。
一審原告Aは,その本人尋問において,一審被告Mから,上記認定の行為
のほかにも,教室内等で暴力を受けた旨供述するところ,一審被告Mの上記行為の態様に照らせば,一審原告Aの供述は信用することができる。そうすると,一審被告Mは,2学期になってから複数回にわたって一審原告Aに金銭の要求をして,金銭を交付させたほか,時期は不明であるが,認定事実⑵に認定した行為以外にも,1年2組の教室内や,屋外等において,
一審原告Aに対して,プロレスごっこやカンフーごっこと称して行われたものも含め,
しばしば暴力を振るったと認められ,
これらの行為は前記⑵の
いじめに該当し,一審原告Aに対する不法行為となると認められる。一審被告Mの供述及び陳述のうち,上記認定に反する内容の供述及び陳述は信用することができない。


一審被告Oについて
認定事実⑵によれば,一審被告Oは,プロレスごっことして,一審原告Aに対し,首ロックをかけ,立った状態の一審原告Aの腰のあたりを抱えて持ち上げた後落とすなどしたこと,9月30日には旭小学校において,10月13日には一審原告らの自宅前において,それぞれ一審原告Aをエアガンで撃ったことが認められる。

一審原告Aは,その本人尋問において,一審被告Oから,教室において,首ロックや,持ち上げて落とすといった行為を頻繁にされた旨供述するところ,一審被告Oの上記行為の態様に照らせば,一審原告Aの供述は信用することができ,一審被告Oは,認定事実⑵に認定した行為以外にも,1年2組の教室内等において,4月中旬又は下旬以降,10月23日に至るまで,継
続的に,プロレスごっこと称するものも含め,一審原告Aに対して,肉体的及び精神的苦痛を与える有形力の行使や嫌がらせ行為に及んだと認められ,上記の継続的な有形力の行使及び嫌がらせ行為は,前記⑵のいじめに該当し,一審原告Aに対する不法行為となると認められる。
一審被告Oの供述及び陳述のうち,上記認定に反する内容の供述及び陳述
は信用することができない。

一審被告Jについて
認定事実⑵によれば,一審被告Jは,掃除の時間に,チャンバラごっこと称して,ほうきを振り回すなどして,その際に一審原告Aをほうきで叩いた
こと,首ロックをかけたこと,体育の授業中に一審原告Aの腕を強く握り,一審原告Aを泣かせたこと,いらいらしていたときに一審原告Aの頭を平手で叩いたことが認められる。
しかし,一審被告Jについては,上記の各事実以外には本件証拠から認定することのできる一審原告Aに対する具体的な行為はない。また,上記各行
為については,これらの行為に及んだ頻度が明らかでなく,上記各行為に及んだ事実から,一審被告Jが,一審原告Aに対し,本件中学校入学時から10月23日までの間に継続的な加害行為に及んだと推認することはできない。
一審原告Aは,
その本人尋問において,
一審被告Jから暴行を受けたとか,
宿泊研修の後に一審被告Jの暴行が頻繁になったと供述するものの,その供述内容は具体性を欠き,有形力の行使があったとしてもその程度や頻度は明らかでない。
また,一審原告Aは,5月頃から,毎日のように給食をほとんど取られるようになり,
一審原告Aの給食を取った者の中に一審被告Jが含まれる旨の
供述をする。しかし,給食の時間にはB教諭も教室内で食事をしており(証
人B),そのような状況において,一審被告Jその他の生徒らが毎日のように一審原告Aの給食を取る行為に及んだというのは疑問があり,一審原告Aの上記供述は信用することができず,一審被告Jが一審原告Aの給食の中から食べ物を取ったことがあるとしても,それが継続的な不法行為と評価すべきほどの頻度で繰り返されたと認めるに足りない。

そして,本件の証拠から,一審被告Jが一審原告Aから金銭の交付を受けたと認められるのは2回,合計450円のみである。また,一審被告Jは,10月23日,
一審被告Aが教室内で一審原告Aに金銭を要求しているのを
見て,B教諭に告げている。
以上によれば,一審被告Jについては,一審原告Aに対し本件中学校入学
時から10月23日までの間に継続的な加害行為に及んだとは認められず,一審原告Aが継続的ないじめ行為を受けたことにより生じた損害について不法行為責任を負うとは認められない。
他方,一審原告Aをほうきで叩いたこと,首ロックをかけたこと,体育の授業中に一審原告Aの腕を強く握ったこと,一審原告Aの頭を平手で叩いた
ことについては,一審原告Aに対する加害行為(いじめ)に当たり,これによって一審原告Aが苦痛を受けたと認められる。したがって,一審被告Jの上記各行為は一審原告Aに対する不法行為となり,これによって一審原告Aが被った苦痛に関し損害賠償責任を負うと認められる。
また,一審被告Jが一審原告Aから金銭の交付を受けたことも,後記⑸のとおり,一審原告Aに対する不法行為となると認められる。

一審被告Rについて
認定事実⑵によれば,一審被告Rは,一審原告Aに対し,一審原告Aの手の指を手首に付く程度に曲げた行為や,ゲームの真似と称して三角定規で一審原告Aの首と背中の間を擦る行為に及んでおり,プロレス技である首ロックをかけたこともあると認められる。
また,
一審被告Rは,
複数回にわたり,

フレスポ等の場所で,一審原告Aから金銭の交付を受けており,その金額は1万円を超える。
しかし,一審被告Rについては,上記の各事実以外には本件証拠から認定することのできる一審原告Aに対する具体的な行為はない。また,一審原告Aの手の指を手首に付く程度に曲げた行為,三角定規で一審原告Aの首と背
中の間を擦る行為及び首ロックをかけた行為については,これらの行為に及んだ頻度が明らかでなく,上記各行為に及んだ事実から,一審被告Rが,一審原告Aに対し,本件中学校入学時から10月23日までの間に継続的な加害行為に及んだと推認することはできない。
一審原告Aは,その本人尋問において,一審被告Rからエアガンを撃たれ
たことがあると供述する。しかし,一審被告Rは,一審原告Aをエアガンで撃ったことはないと供述しており,一審原告Aの上記供述は,いつ,どのような状況で一審被告Rからエアガンで撃たれたのかについて具体性を欠いており,これを信用することはできず,他に,一審被告Rが一審原告Aをエアガンで撃ったと認めるに足りる証拠はない。また,一審原告Aは,その本
人尋問において,一審被告Rから首ロックをされたと供述するが,それ以外に一審被告Rからされた暴行や嫌がらせ行為については具体的に供述しておらず,一審被告Rから頻繁に暴行等を受けたとの供述もしていない。以上によれば,一審被告Rについては,一審原告Aに対し本件中学校入学時から10月23日までの間に継続的な加害行為に及んだとは認められず,一審原告Aが継続的ないじめ行為を受けたことにより生じた損害について不法行為責任を負うとは認められない。

他方,一審原告Aの手の指を手首に付くくらい曲げた行為や,ゲームの真似と称して三角定規で一審原告Aの首と背中の間を擦る行為,首ロックをかけた行為は,一審原告Aに対する加害行為(いじめ)に当たり,これによって一審原告Aが苦痛を受けたと認められる。したがって,一審被告Rの上記各行為は一審原告Aに対する不法行為となり,これによって一審原告Aが被
った苦痛に関し損害賠償責任を負うと認められる。
また,一審被告Rが一審原告Aから金銭の交付を受けたことも,後記⑸のとおり,一審原告Aに対する不法行為となると認められる。

一審被告Uについて
認定事実⑵によれば,
一審被告Uは,
一審原告Aに対し,
首ロックをかけ,
膝カックンをしたこと,複数回にわたり,フレスポ等の場所で,一審原告Aから金銭の交付を受けており,その金額は1万円を超えることが認められる。
しかし,一審被告Uについては,上記の各事実以外には本件証拠から認定
することのできる一審原告Aに対する具体的な行為はない。また,首ロックや膝カックンといった行為は,これらの行為に及んだ頻度が明らかでなく,上記各行為に及んだ事実から,一審被告Uが,一審原告Aに対し,本件中学校入学時から10月23日までの間に継続的な加害行為に及んだと推認することはできない。

一審原告Aは,その本人尋問において,5月までに一審原告Aに対して暴力を加えた者の1人として一審被告Uを述べているものの,行為の内容や頻度については具体的供述をしていない。
そして,
一審被告Uが中学1年生の時点で一審原告Aと異なるクラスに所
属していたことも考慮すれば,一審被告Uについては,一審原告Aに対し本件中学校入学時から10月23日までの間に継続的な加害行為に及んだとは認められず,一審原告Aが継続的ないじめ行為を受けたことにより生じた
損害について不法行為責任を負うとは認められない。
他方,
膝カックンが一審原告Aに肉体的又は精神的苦痛を与えたとは認めるに足りないものの,
首ロックについては,
一審原告Aに対する加害行為
(い
じめ)に当たり,これによって一審原告Aが苦痛を受けたと認められる。したがって,一審被告Uの上記行為は一審原告Aに対する不法行為となり,こ
れによって一審原告Aが被った苦痛に関し損害賠償責任を負うと認められる。
また,金銭の交付を受けたことは,後記⑸のとおり,一審原告Aに対する不法行為となると認められる。


上記⑶の説示のとおり,金銭の交付を受けたことを除く行為については,一審被告A,一審被告D,一審被告G,一審被告M及び一審被告O(以下,これらの5名を併せて一審被告Aら5名という。)が,一審原告Aに対し,本件中学校入学後のある時点から,
10月23日までの間,
継続的に加害行為
(暴
行及び嫌がらせ行為)を加えており,これが一審原告Aに対する不法行為とな
ると認められる。
そして,認定事実⑵及び上記⑶アからオまでの説示によれば,一審被告Aら5名による継続的な加害行為(いじめ行為)は,プロレスごっこなどとして1年2組の教室内でも行われていたと認められ,一審被告Aら5名は,一審原告Aが他の複数の生徒からも継続的に加害行為を受けていることを認識し,この
ような認識を持ちながら,自らも継続的に加害行為に及んだと推認することができる。
以上によれば,一審被告Aら5名の継続的ないじめ行為は,後記認定のとおり継続的ないじめ行為によって一審原告Aが被った損害(金銭の交付による財産的損害を除く。)の全体と相当因果関係を有しており,かつ,一審被告Aら5名の一審原告Aに対するいじめ行為は,数人が共同の不法行為によって一審原告Aに損害を加えたものとして,一審原告Aに対する共同不法行為となると認められ,一審被告Aら5名は,上記損害全体について連帯して責任を負うと認められる。
一審被告J,一審被告R及び一審被告U(以下,これらの3名を併せて一審被告Jら3名という。)については,一審原告Aが継続的ないじめ行為に
よって被った損害全体について責任を負うとは認められないが,それぞれの行為に,一審原告Aに対する不法行為となるものがあると認められ,これと相当因果関係のある一審原告Aの損害について損害賠償責任を負う。
⑸ア

一審被告生徒らが,
一審原告Aに金銭を交付させ,
これを受領した行為は,
学校内等で一審原告Aに暴行等の加害行為が加えられていた状況下において行われたものであり,個別の金銭の交付の要求に際して暴行や脅迫的な言
辞がなく,
あるいは金銭を受領した一審被告生徒らの中に自らは暴行や脅迫
的言辞に及んでいない者がいたとしても,金銭を受領した一審被告生徒らは,一審原告Aが,金銭交付の要求を拒絶することができない状況にあり,その意に反して金銭を交付していることを知りながら金銭を受領したと認められ,
これらの金銭の受領は一審原告Aに対する不法行為となると認めら
れる。

そして,4月中旬又は下旬頃,一審被告A,一審被告D,一審被告G及び一審被告Rが,ターザン広場又はトライアルにおいて,一審原告Aから合計1万2000円の金銭を受領したこと(認定事実⑵イ,別紙4金銭交付等一
覧表番号1)につき,一審原告Aは,その本人尋問において,一審被告Dから1万2000円をターザン広場に持ってくるよう言われたと供述し,任意ではなかった旨の供述をしているところ,一審原告Aが交付した金額が大きいこと,
一審原告Aにおいて上記生徒らと友人になるため等の目的で任意に金銭を交付するというのが考え難いことからすれば,一審原告Aの上記供述は信用することができ,上記の合計1万2000円の金銭交付も,一審原告Aの意に反するものであったと認められる。
そして,
前記アの説示のとおり,

上記生徒らの中に自らは一審原告Aに対して暴行や脅迫的言辞を述べなかった者がいるとしても,この生徒も一審原告Aが自らの意思に反して金銭を交付していると認識していたと認められる。

一審原告Aからの金銭の受領については,複数の生徒が同じ機会に一審原告Aから金銭を受領したと認められる場合
(別紙4金銭交付等一覧表の番号

1,7,21,22,25,28,37,39,40,45及び46の行為)は,その機会に一審原告Aから金銭を受けた生徒ら全員が,その機会に一審原告Aが交付した金額全体について,一審原告Aに対して共同不法行為責任を負うと認められる。
これに対し,一審被告生徒らは,自らが一審原告Aから金銭を受領したと
認められない機会に,他の生徒が一審原告Aから金銭を受領したとしても,当該金銭の受領について共同不法行為責任を負うとは認められない。また,同一覧表の番号1,7,21,22,25,28,37,39,40,45及び46以外の行為については,本件の全証拠によっても,複数の生徒が同じ機会に一審原告Aから金銭を受領したとは認められない。
⑹ア

一審原告らは,一審原告Aが,一審被告Jら3名を含む一審被告生徒らから,継続的に拷問行為ともいうべきいじめ行為を加えられていたと主張する。
一審被告Aら5名については,前記⑶及び⑷の説示のとおり,一審原告A
に対する継続的な加害行為
(いじめ)
に係る不法行為が成立すると認められ,
かつ,共同不法行為責任として一審原告Aの損害(金銭交付による財産的損害を除く。)全体について連帯して責任を負うと認められるから,以下,一審被告Jら3名も一審原告Aに対して継続的ないじめ行為に及んでいたとの主張について検討する。

まず,
一審原告Aの本人尋問における一審被告Jら3名に関する供述についての検討は,前記⑶カ,キ,クのとおりであり,上記供述によって一審被
告Jら3名の具体的な加害行為を認定することができないか,又はその供述を信用することができず,上記本人尋問における供述によって上記生徒らが一審原告Aに対する継続的ないじめ行為に及んでいたとは認められない。ウ
一審原告Aの陳述書(甲307,324)には,認定事実及び前記⑶カ,キ,クで認定した事実以外にも,一審原告Aが一審被告Jら3名から,暴行や嫌がらせ行為を受けていた旨の記述が存在する。
しかし,
上記陳述書の記述が一審被告生徒らの行為について極めて具体的
かつ詳細であるのに比べ,一審原告Aの本人尋問における一審被告生徒らの行為に関する供述は,具体的に述べている部分もあるものの,全体的には具
体性を欠くものが多い。
また,甲第307号証の陳述書には,10月中旬頃,一審原告Cが,一審原告Aの体にICレコーダーを付けて学校に行かせた,
一審被告Oと一審被
告Aから怒鳴られてお金の要求をされたが,その声が録音されていたようである,とうとう親にばれてしまった,これで一審被告Dたちからいよいよ殺
されると思っていた,
このためにこれまで以上に学校に行くのが怖くなった
との記述がある(48頁)。しかし,実際には,一審原告Aは,当時ICレコーダー又はボイスレコーダーを付けて学校に行ったとの認識をもっておらず,後になってその事実を聞かされたにすぎない(一審原告A本人[2回目の15項])。そうすると,上記記述内容は一審原告Aの認識をそのまま
記載したものではなく,かつ,親にばれてしまったとか,一審被告Dなどの生徒から殺されると思い学校に行くのが怖くなったと一審原告Aが感じたとの記述は虚偽であるといわざるを得ない。
これらの事情に照らせば,上記各陳述書の内容には,一審原告A自身が認識したものでない内容が含まれていると認めることができる。そして,これらの陳述書の記述につき,一審原告A自身が自らの認識を陳述した内容とそれ以外の内容に区別することはできないから,これらの陳述書は,全体として信用性に乏しいといわざるを得ない。
したがって,上記各陳述書をもって,一審被告Jら3名の一審原告Aに対する行為として,認定事実及び前記⑶カ,キ,クで認定したもの以外の行為を認定することはできない。

一審被告Jら3名を含む一審被告生徒らは,10月23日以降,謝罪文やメモを作成している(一審被告Jにつき甲23の1から4まで,91,92,187,188,一審被告Rにつき甲26の1から4まで,89,186,一審被告Uにつき甲24の1から3まで)。一審被告生徒らは,11月中旬以降,一審原告両親らの本件中学校に対する要求により,一審
原告両親らに渡すものとして謝罪文やメモを作成したが
(認定事実⑸キ)

一審被告生徒らが作成した謝罪文やメモには,11月中旬以前に作成されたものもあると考えられる。また,認定事実⑸オ,カ,キの事実によれば,謝罪文やメモの中には,一審原告両親らに渡す目的ではなく,当該生徒が一審原告ら宅に謝罪に行く前などに,本件中学校の教諭らの指示に基づい
て作成されたものもあると認められる。
そして,このような謝罪文やメモには,当該生徒による一審原告Aに対する行為に関する記述が存在する。
一審被告生徒らは,このような謝罪文やメモとして複数の文書を作成しており(一審被告Jら3名について上記のとおり。),内容として大部分
が同じであるものの異なる箇所が若干ある複数のメモが存在する場合もある(一審被告Jについて甲23の1と92,一審被告Rについて甲26の2,89と186。)。

の事実を総合すれば,一審被告生徒らがその保護者や本件中学校の教諭らとともに一審原告ら宅に謝罪に行った際,一審原告Cから,一審被告生徒ら及びその保護者の説明内容等に納得することができないとの姿勢を示
され,謝罪を受け入れてもらえず,繰り返し質問されることもあり,本件中学校において,一審被告生徒らに対し,一審原告Cが述べた事情を確認する方法で事情聴取をするようになり,謝罪文やメモについても,そうした方法による事情聴取がされる中で,改めて一審被告生徒らに作成を指示して,
従前のものと内容の異なる新たな文書が作成されていったものと認
められる。
一審被告Jら3名を含む一審被告生徒らが作成
した謝罪文やメモは,これを作成した生徒自身の認識と異なる内容が含まれている可能性を否定することができない。
そうすると,上記謝罪文やメモに記載された内容のうち,本件訴訟にお
いて一審被告生徒らがその内容を認める旨の主張をしているなど弁論の全趣旨によって認められるもの,
及び本人尋問又は陳述書でその内容を認
める供述又は陳述をしたもの以外は,その内容のとおりの事実を認定することはできない。
これを前提に一審被告Jら3名の行為について検討すると,一審被告J
ら3名が作成した謝罪文やメモをもって,一審原告Aに対する行為として,認定事実及び前記⑶カ,キ,クで認定したもの以外の行為を認定することはできない。

一審原告らは,証拠として,本件中学校の教諭らが一審被告生徒らからの事情聴取に際して作成したメモと窺われる書面を証拠として多数提出している。
しかし,これらの書面は,作成された際の事情聴取がどのように行われたかが明らかでなく,作成日も不明なものがほとんどである。そして,認定事実⑸カ及び前記エのとおり,本件中学校において,一審被告生徒らに対し,一審原告Cが述べた事情を確認する方法で事情聴取をするようになった経緯が認められることも考え併せれば,本件中学校の教諭らが作成したメモと
窺われる上記書面をもって,
一審被告Jら3名の一審原告Aに対する行為と
して,認定事実及び前記⑶カ,キ,クで認定したもの以外の行為を認定することはできない。

認定事実⑽のとおり,一審被告Jら3名を含む一審被告生徒らに対し,一審原告代理人らが事情聴取をしている。
これらの事情聴取は,複数の弁護士が中学2年生の一審被告生徒らに対して多数の質問をする態様で行われており,一審原告代理人のうちのP弁護士が,一審被告Jに対する事情聴取において,

嘘を言うとまずいよ。

本当にAさん,A君,怒るよ。誠意を示さないと。

あなたくらいよ。


述べている(甲37の2)など,単に一審被告生徒らの認識を聴取するという内容ではなく,回答が一審原告ら代理人の納得する内容でなかった場合や,一審原告Cの認識と異なるものであった場合に,更に追及するなどの対応がされたものであった(認定事実⑽)。
上記のような事情聴取の態様に加え,この事情聴取の前に,一審被告生徒
らにおいて,
一審原告Cの対応を踏まえて謝罪文やメモを作成し直す経験を
していること(前記エ)も考慮すれば,上記事情聴取において一審被告生徒らが述べた内容が,
当該生徒の認識をそのまま述べたものであるのかについ
ては疑問がある。
したがって,上記事情聴取において一審被告生徒らが述べた内容をもっ
て,一審被告Jら3名の一審原告Aに対する行為として,認定事実及び前記⑶カ,キ,クで認定したもの以外の行為を認定することはできない。キ
そして,一審原告家族の陳述書(1の2,308,309,314,316,370),一審原告Cの日記(甲270),Cの陳述書(甲310),Cの日記(甲259,347),証人Cの証人尋問の結果及び一審原告Cの本人尋問の結果を含む本件の全証拠を精査しても,一審被告Jら3名の一審原告Aに対する行為として,認定事実及び前記⑶カ,キ,クで認定したもの
以外の行為を認定することはできない。
したがって,一審被告Jら3名が一審原告Aに対して継続的ないじめ行為に及んでいたとの一審原告らの主張は,採用することができない。ク
なお,前記ウからカまでの説示に照らせば,一審被告Aら5名の一審原告Aに対する行為の認定に関しても,一審原告Aの陳述書は信用することがで
きず,一審被告Aら5名の謝罪文及びメモ,本件中学校の教諭らのメモと窺われる書面,並びに一審原告ら代理人弁護士の事情聴取の内容によって,認定事実及び前記⑶アからオまでに認定したもの以外の行為を認定することができない。
3争点2(一審被告保護者らの一審原告Aに対する責任の有無)について⑴

未成年者が責任能力を有する場合であっても,その監督義務者に監督義務違反があり,
これと当該未成年者の不法行為によって生じた損害との間に相当因果関係を認め得るときは,監督義務者が民法709条に基づき損害賠償責任を負う(最高裁昭和49年3月22日第二小法廷判決・民集28巻2号347頁参照)。

そこで,以下,一審被告保護者らに監督義務違反があり,監督義務違反とその子の不法行為によって一審原告Aに生じた損害との間に相当因果関係を認め得るか否かについて検討する。

一審被告A両親について
認定事実⑴ウのとおり,一審被告Aは,本件中学校に入学する前に,三,四歳の女児をエアガンで撃っているが,後にこの事実を知った一審被告Bは,一審被告Aを連れて女児の家を訪れて謝罪し,一審被告Aを叱責し,一審被告Aにエアガンを出すよう告げ,一審被告Aが提出したエアガンを処分し,一緒に被害者宅を訪問して謝罪をさせている。前提事実⑴エ及び証拠(乙ハ2,一審被告B本人)によれば,一審被告A両親は,一審被告Aの門限を午後8時と定め,帰宅が遅くなった場合には理由を尋ねており,サッカー部に所属していた
同人から,サッカーの自主練習という回答を得ていたこと,一審被告Cは,一審被告Aの部屋に入って持ち物を確認していたが,エアガンを見つけたことはないこと,一審被告A両親は,一審被告Aが友人と遊びに行くときは,必要に応じて500円ないし1000円程度の小遣いを渡していたことが認められる。そして,10月23日以前に,一審被告Aの素行に問題があるなどとの理
由で,
本件中学校から一審被告A両親に対して注意や連絡があったとは認められない。
そうすると,一審被告A両親において,一審被告Aの問題行動を認識することが可能であったにもかかわらず,監督義務を怠ったと認めることはできず,本件の全証拠によっても,この結論を覆すに足る事実は認められない。したが
って,
一審被告A両親が一審原告Aに対して民法709条に基づく損害賠償責任を負うとは認められない。


一審被告D両親について
前提事実⑴コ及び証拠(乙リ1,2,一審被告D本人,一審被告E本人,一
審被告F本人)によれば,一審被告D両親及び一審被告Dは,8月下旬頃までは同居して生活していたが,その後,一審被告Dらは一審被告Fと別居して生活するようになったこと,一審被告Eは,一審被告Dの門限を午後6時と定めており,一審被告Dはこの門限を概ね守っていたこと,一審被告D両親は,平成24年夏頃,一審被告Dが部屋にエアガンを隠し持っていたのを見つけ,一
審被告Dを問いただし,一審被告Aのものであるとの説明を受けると,同人に返すよう指示し,その後も一審被告Dの机の中を確認していたこと,一審被告Dが友人と遊びに行くときは,必要に応じて小遣いが渡されていたことが認められる。そして,10月23日以前に,一審被告Dの素行に問題があるなどとの理由で,
本件中学校から一審被告D両親に対して注意や連絡があったとは認められない。一審被告Dは,夏休み期間中,外出していたことが多く,一審被告Eは一審被告Dの外出先を把握していないことが多かったが(一審被告E本
人),このことをもって,一審被告D両親に監督義務違反があると認めることはできない。また,上記別居の頃,一審被告Fによる家庭内暴力があったが,一審被告Dがこの影響を受けて,家庭内で暴力的な態度を見せることはなかった(一審被告E本人)。
そうすると,一審被告D両親において,一審被告Dの問題行動を認識するこ
とが可能であったにもかかわらず,監督義務を怠ったと認めることはできず,本件の全証拠によっても,この結論を覆すに足る事実は認められない。したがって,
一審被告D両親が一審原告Aに対して民法709条に基づく損害賠償責任を負うとは認められない。


一審被告G両親について
前提事実⑴ウ及び証拠(一審被告G本人,一審被告H本人)によれば,一審被告Gは,サッカー部に所属し,放課後と土曜日の午前中はサッカー部の練習に参加しており,週末に試合があることもあったと認められる。したがって,放課後の帰宅が遅くなることや,週末外出していたことを一審被告G両親が認
識していたとしても,そのことをもって,一審被告Gの素行に問題があると認識することができたとはいえない。そして,10月23日以前に,一審被告Gの素行に問題があるなどとの理由で,本件中学校から一審被告G両親に対して注意や連絡があったとは認められない。
そうすると,一審被告G両親において,一審被告Gの問題行動を認識するこ
とが可能であったにもかかわらず,監督義務を怠ったと認めることはできず,本件の全証拠によっても,この結論を覆すに足る事実は認められない。したがって,
一審被告G両親が一審原告Aに対して民法709条に基づく損害賠償責任を負うとは認められない。


一審被告J両親について
前提事実⑴オ及び証拠(一審被告K本人)によれば,一審被告Jは,本件中学校に入学後,野球部に所属し,放課後も週末も野球部の活動に参加し,平日
は週2回の塾通いをしており,一審被告J両親から見て,一審被告Jの生活状況に問題がないと認識していたことが認められる。そして,10月23日以前に,一審被告Jの素行に問題があるなどとの理由で,本件中学校から一審被告J両親に対して注意や連絡があったとは認められない。
そうすると,一審被告J両親において,一審被告Jの問題行動を認識するこ
とが可能であったにもかかわらず,監督義務を怠ったと認めることはできず,本件の全証拠によっても,この結論を覆すに足る事実は認められない。したがって,
一審被告J両親が一審原告Aに対して民法709条に基づく損害賠償責任を負うとは認められない。


一審被告Nについて
前提事実⑴カ及び証拠(乙ホ2,一審被告N本人)によれば,平成24年当時,一審被告Mは一審被告Nの両親と同居しており,一審被告Nは,一審被告Mと同居していなかったものの,両親を通じて,あるいは実家を訪れた際に本人と直接話をして,生活状況を確認し,物や金銭の貸し借りをしてはいけない
と言い付けるなどしていたこと,一審被告Mは,放課後と土曜日の午前中はサッカー部の練習に参加しており,週末に試合があることもあったところ,一審被告Nは,
一審被告Mがサッカー部の活動に熱心に取り組んでいると認識していたことが認められる。そして,10月23日以前に,一審被告Mの素行に問題があるなどとの理由で,本件中学校から一審被告N又はその両親に対して注
意や連絡があったとは認められない。
そうすると,一審被告Nにおいて,一審被告Mの問題行動を認識することが可能であったにもかかわらず,監督義務を怠ったと認めることはできず,本件の全証拠によっても,
この結論を覆すに足る事実は認められない。
したがって,
一審被告Nが一審原告Aに対して民法709条に基づく損害賠償責任を負うとは認められない。


一審被告O両親について
前提事実⑴キ及び証拠(乙ヘ3,一審被告Q本人)によれば,一審被告O両親は,一審被告Oが好んでいたテレビゲームであるバイオハザードにおいて,銃で相手を撃つ場面があることから,一審被告Oに対し,エアガンを人に向けるようなことをしてはいけないと注意していたこと,ゲームをする時間は1時間にすると一審被告Oと約束していたこと,被告Oは,放課後も週末もバスケ
ットボール部の活動に参加し,平日には週2回の塾通いをしており,一審被告O両親から見て,
一審被告Oの生活状況に問題がないと認識していたことが認
められる。一審被告O両親が一審被告Oに上記注意をしていたことをもって,一審被告Oがエアガンを所持していることを一審被告O両親が認識し,容認していたとは認められない。また,一審被告O両親が,上記のような場面のある
ゲームを一審被告Oがすることを禁じなかったことをもって,監督義務違反があることにはならない。そして,10月23日以前に,一審被告Oの素行に問題があるなどとの理由で,本件中学校から一審被告O両親に対して注意や連絡があったとは認められない。
そうすると,一審被告O両親において,一審被告Oの問題行動を認識するこ
とが可能であったにもかかわらず,監督義務を怠ったと認めることはできず,本件の全証拠によっても,この結論を覆すに足る事実は認められない。したがって,
一審被告O両親が一審原告Aに対して民法709条に基づく損害賠償責任を負うとは認められない。


一審被告R両親について
前提事実⑴ク及び証拠
(乙トA7,
B7,
一審被告S本人,
一審被告T本人)
によれば,一審被告Sは,大人の同伴がなければ一審被告Rがゲームセンターに行くことを認めていなかったこと,一審被告Rは,バスケットボール部に所属し,学校も部活動もほとんど休むことがなかったこと,一審被告R両親が,一審被告Rの部屋においてエアガンを見つけたことはなく,一審被告R両親から見て,一審被告Rの生活状況に問題がないと認識していたこと,一審被告S
と一審被告Tは,平成24年7月22日に離婚したが,平成25年5月頃までは同居して生活しており,一審被告Rには同月頃まで離婚について伝えていなかったことが認められる。そして,10月23日以前に,一審被告Rの素行に問題があるなどとの理由で,本件中学校から一審被告R両親に対して注意や連絡があったとは認められない。

そうすると,一審被告R両親において,一審被告Rの問題行動を認識することが可能であったにもかかわらず,監督義務を怠ったと認めることはできず,本件の全証拠によっても,この結論を覆すに足る事実は認められない。したがって,
一審被告R両親が一審原告Aに対して民法709条に基づく損害賠償責任を負うとは認められない。



一審被告U両親について
前提事実⑴ケ及び証拠(乙チ2,一審被告W本人)によれば,一審被告U両親は,一審被告Uに対し,他の生徒との金銭の貸し借り及びやり取りをしないよう指導していたこと,一審被告U両親は,平成24年当時,一審被告Uに決
まった小遣いを与えておらず,一審被告Uが,一審被告Wに対し,外出する際に,誰とどこに行くかを告げ,必要に応じて一審被告Wから金銭を受け取っていたことが認められる。そして,10月23日以前に,一審被告Uの素行に問題があるなどとの理由で,本件中学校から一審被告U両親に対して注意や連絡があったとは認められない。

そうすると,一審被告U両親において,一審被告Uの問題行動を認識することが可能であったにもかかわらず,監督義務を怠ったと認めることはできず,本件の全証拠によっても,この結論を覆すに足る事実は認められない。したがって,
一審被告U両親が一審原告Aに対して民法709条に基づく損害賠償責任を負うとは認められない。

以上によれば,一審被告保護者らのいずれの者についても,一審原告Aに対して民法709条に基づく損害賠償責任を負うとは認められない。争点2に関
する一審原告らの主張は採用することができない。
4争点3(一審被告鳥栖市の一審原告Aに対する責任の有無)について⑴

一般に,公立中学校の設置者である地方公共団体と,当該中学校に在学する生徒との間には,
公法上の法律関係である公立中学校の在学関係が存在してい
ると解される。公立中学校の設置者は,上記在学関係に基づく義務として,学
校における教育活動及びこれに密接に関連する生活関係における生徒の安全の確保に配慮すべき義務があり,生徒の生命,身体,財産等に危害が及ぶおそれがあるときには,そのような危害の現実化を未然に防止するため,その事態に応じた適切な措置を講じる一般的な安全配慮義務を負っているというべきである。

そして,公立中学校の教職員は,公立中学校の設置者が負う上記安全配慮義務の履行補助者として,学校における教育活動及びこれに密接に関連する生活関係における生徒の安全を確保するため,生徒の生命,身体,財産等に危害が及ぶおそれがあるときには,そのような危害の現実化を未然に防止するため,その事態に応じた適切な措置を講じるべき職務上の義務を負うと解される。


本件中学校において,一審原告Aに対するいじめが発生したのは,平成24年であり,いじめ防止対策推進法の施行前である。
しかし,平成24年より前の時点で,文部省又は文部科学省の初等中等教育局長による都道府県教育委員会教育長,都道府県知事等宛てのいじめ問題に関
する通知が複数発せられている(甲233,234,237,239,326等)。
例えば,平成18年10月19日付けの通知(甲239)では,いじめにより児童生徒が自らその命を絶つ痛ましい事件が相次いで発生していることは極めて遺憾であり,深刻に受け止めている,これらの事件では,子どもを守るべき学校及び教職員の認識や対応に問題がある例や,自殺という最悪の事態に至った後の教育委員会の対応が不適切であった例が見られるとして,学校教育に携わる全ての関係者一人一人が改めてこの問題の重大性を認識し,いじめの兆候をいち早く把握して,迅速に対応する必要があり,いじめの問題が生じたときは,その問題を隠さず,学校及び教育委員会と家庭及び地域が連携して対処していくべきものと考えており,各学校及び教育委員会においては,いま一
度総点検を実施するとともに,いじめへの取組について更なる徹底を図るように求めている。そして,特に留意すべき事項を列挙しており,その中には,①いじめは,
どの学校でも,
どの子にも起こり得る問題であることを十分認識し,
日頃から,児童生徒等が発する危険信号を見逃さないようにして,いじめの早期発見に努めること,②いじめが生じた際には,学級担任等の特定の教員が抱
え込むことなく,学校全体で組織的に対応することが重要であること,③事実関係の究明に当たっては,当事者だけでなく,保護者や友人関係等からの情報収集等を通じ,
事実関係の把握を正確かつ迅速に行う必要があることなどが含
まれている。
また,文部科学省が行う調査等において用いるいじめの定義は,かつて

①自分よりも弱い者に対して一方的に,②身体的・心理的な攻撃を継続的に加え,③相手が深刻な苦痛を感じているもの。なお,起こった場所は学校の内外を問わない。

というものであったが,平成18年度の児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査以降は

当該児童生徒が,一定の人間関係のある者から,心理的,物理的な攻撃を受けたことにより,精神的な苦痛を感じているもの。なお,起こった場所は学校の内外を問わない。

とされ,このことは,前記平成18年10月19日付け通知でも言及されている(甲239,326)。一審原告Aが受けた継続的な加害行為は,上記のいずれの定義によっても,いじめであったと認められる。
本件中学校の教諭らや校長,市教委等の注意義務違反の有無については,これらの教諭ら,校長,市教委等が,上記通知等により,いじめに関する知見を有していたことを前提に判断する必要がある。
他方,前記のとおり,公立中学校の設置者や教職員が負う安全配慮義務は,生徒の生命,身体,財産等に危害が及ぶおそれがあるときに,そのような危害の現実化を未然に防止するため,その事態に応じた適切な措置を講じるべき職務上の義務であって,いじめについては,ある生徒がいじめを受けている又は
そのおそれがあると認識し又は認識することができた場合に,公立中学校の設置者や教職員の作為又は不作為について安全配慮義務違反が問題となり得るといえる。
⑶アB教諭は,10月23日より前に,認定事実⑶エの各事実を認識していたと認められる。

B教諭は,
一審被告A及び一審被告Dの一審原告Aに対する首ロック等の有形
っこの名目でされたものであるとしても,その有形力の行使が全て悪ふざけ,いたずら,遊びであると認められるわけではない(前記2⑵,⑶)ものの,本件の全証拠によっても,B教諭が現認した一審被告A及び一審被告Dの一審原告Aに対する有形力の行使が,
一審原告Aが苦痛を受けるほどの力でされていたとは認
められず,その頻度も明らかでない。
B教諭は,1年2組の教室内で,生徒が他の生徒の首に腕を巻き付けているのB教諭が現認
したプロレス技その他の有形力の行使の程度は明らかでなく,かつ,上記の一審
被告A及び一審被告Dの行為以外に,一審原告Aに対して加えられた有形力の行使を現認したと認めるに足りる証拠もない。
また,B教諭は,一審被告Aが一審原告Aに対してちょうだいと言って,一審原告Aの給食の食べ物を取っているのを現認してこれを注意しているが(認B,証人D)によれば,B教諭は,1年2組におい
て,
給食又は生徒が持参した弁当の中身を生徒同士が交換することを許容していたものの,
生徒が他の生徒に対し一方的に給食又は弁当の中身を与えるよう求めることは許容していなかったところ,一審被告Aの上記行為を現認してこれを注意したと認められ,その後,B教諭が,一審被告Aその他の生徒が,一審原告Aの給食の食べ物を取る行為や,一審原告Aに対して給食の食べ物を与えるよう求めたのを現認したとは認められない。この点,一審原告Aは,一審被告A,一審
被告D,一審被告M及び一審被告Jが,毎日のように一審原告Aの給食の食べ物を取っており,B教諭が数回この行為を止めたことがあるとも供述するが(一審原告A[1回目の45,46頁]),上記生徒らが毎日のように一審原告Aの給食の食べ物を取ったとの一審原告Aの供述を信用することができないのは,前記2⑶カの説示のとおりであり,この事情の下では,B教諭が一審原告Aの給食の
食べ物を取る行為を数回止めたとの供述も信用することができない。一審被告Mが暴力等に及ぶことがあるとの認識をB教諭が有していたこと(認
は,これらの事実が一審原告Aに対するいじめが行われている
ことを窺わせる事実であるということはできない。
イB教諭は,7月21日,一審原告Cから,一審原告らの自宅前に生徒がとどまっているので,同自宅前に来て生徒らを指導してほしいと依頼され,同自宅前に行ったところ,一審被告D及び一審被告Gがおり,同人らに帰るよう話している(認定事実⑵ケ)。
しかし,一審原告Cが,上記依頼の際に,B教諭に対し,一審原告らの自宅前
にいる生徒が一審原告Aをいじめていると伝えたとは認められず,一審原告Aに関する懸念を伝えたとも認められない。また,B教諭が一審原告ら自宅前に到着した際,一審被告D及び一審被告Gが,一審原告Aに対していじめを加えていることを窺わせる行為に及んでいたとも認められない。
ウB教諭は,一審原告Aが,ジャンプアップノートに何も記入せずに提出することが多かった事実を認識しているが(認定事実⑶イ),この事実自体が一審原告Aに対するいじめが行われていることを窺わせる事実であるということはできない。
エ上記アからウまでの事情に加え,①10月23日より前に,一審原告AがB教諭を含む本件中学校の教諭らに対していじめを受けていることを告げておらず,一審原告A以外の生徒からも,一審原告Aがいじめを受けているとの申告はされ
ていなかったこと(認定事実⑶ア,イ)
,②同日より前に,一審原告両親が,本件
中学校に対し,
一審原告Aがいじめを受けている又はその懸念があると伝えたこ
とがないこと(認定事実⑶ケ)
,③一審原告Aの同日までの言動に明らかな異変
があったとは認められないこと,④B教諭は,一審原告Aが夏休みの宿題をしていなかったのを認識したときには一審原告両親にその事実を連絡しており(認定
事実⑶カ),同日,一審被告Jから,一審原告Aが他の生徒からお金を持ってくるよう要求されていることを告げられると,自らはその場面を現認してはいなかったが,一審被告Aから事情を聴取し,一審原告Aとの間で金銭のやり取りがあった事実を把握すると,
学年主任であるE教諭に報告するなどの対応をしたこと
(認定事実⑷ア)も考慮すれば,B教諭が,いじめについて前記⑵のとおりの知
見を有していたことを前提として,上記アからウまでに挙げた事実を認識していたことを総合考慮しても,B教諭が,10月23日までに,一審原告Aがいじめを受けている又はそのおそれがあると認識し,又は認識することができたとは認められない。
したがって,同日までの時点で,B教諭に安全配慮義務違反があったとは認め
られない。
オ一審原告らは,B教諭が,

aからf
までに挙げた事実を認識しており,このことからすれば,B教諭が,遅くとも1学期中には,
一審原告Aに対するいじめの一部又はいじめの兆候を把握していたと主張する。
一審原告らが主張する事実に関連し,一審原告Aは,その本人尋問において,一審原告Aが暴力を受けていた場面をB教諭が現認していた旨の供述をするが(一審原告A[1回目の30,31,36,37頁]),B教諭が現認した場面についての供述が具体性を欠いている上,B教諭が気付いているはずであるとのあいまいな供述もしており(一審原告A[30頁]),一審原告Aが暴力を受けていた場面をB教諭が現認していたとの上記供述は信用することができない。
また,一審原告Aは,その本人尋問において,体育の授業のうち七,八割は制服で参加したと供述するが(一審原告A本人[1回目の49頁]),屋外における体育に制服で参加すると,泥だらけ,汗だらけになるが,親から注意されたことはないとも供述する
(同
[1回目の50,51頁])ところ,体育の授業の七,
八割に制服で参加し,制服が泥だらけ,汗だらけになったとすれば,一審原告両
親において,一審原告Aから事情を聴いたり,本件中学校に連絡を取ったりすると考えられるものの,このような聴取や連絡がされたとは認められず,一審原告Aの上記供述は信用することができない。このことからすれば,水泳の授業のうち最初の一,二回以外は見学したとの一審原告Aの供述も,同様に信用することができない。

そして,
その他本件の全証拠を精査しても,
安全配慮義務違反の有無に関連し,
B教諭が認識していたと認められる事実は,前記アからウまでに挙げた事実に限られ,それ以外に一審原告らが主張する事実を認めることはできない。一審原告らの主張は採用することができない。
⑷ア

D教頭及びB教諭以外の本件中学校の教諭らについては,1年2組が騒がしい,落ち着きのないクラスであると認識していたことは認められるが(証人B,一審原告A本人,弁論の全趣旨),それを超えて,10月23日までに,一審原告Aがいじめを受けている又はそのおそれがあると認識し,又は認識することができたとは認められない。
なお,1年2組の体育の授業を担当したB教諭以外の教諭らが,一審原告Aが体育の授業に制服で参加したことや,水泳の授業を見学することが多かったことから,一審原告Aがいじめを受けている,又はそのおそれがあると
認識し,又は認識することができたとは認められないことは,B教諭の場合(前記⑶オ)と同様である。
また,前記⑶の説示によれば,D教頭及び本件中学校の教諭らが,B教諭の指導が不十分であることを前提とした対応や支援を行う義務があったとは認められず,
本件の全証拠によっても,
D教頭及び本件中学校の教諭らが,

いじめ防止に必要な協力や情報共有を怠ったとも認められない。

H校長につき,一審原告らは,B教諭その他の教諭らが,一審原告Aに対するいじめ行為又はその端緒を認識しながらこれを見過ごしてきた事実が認められ,このことから,H校長が,教職員に対していじめに関する研修及
び教育をすべき義務を怠ったと認められると主張する。しかし,前記⑶及び前記アの説示によれば,B教諭その他の教諭らが,一審原告Aに対するいじめ行為又はその端緒を認識しながらこれを見過ごしてきたとは認められない。
一審原告らは,本件訴訟の証人尋問においてD教頭が述べた内容や,給食
のおかずの交換をB教諭が許容し,D教頭がそのことを是認した事実から,H校長の上記義務違反が認められると主張するが,一審原告らが主張する上記事情をもって,H校長が上記義務に違反したと認めることはできない。証拠(一審原告A本人)及び弁論の全趣旨によれば,4月から10月23日までの間に本件中学校で生徒らに対して実施されていた,いじめに関する
項目を含むアンケート(認定事実⑶ア)は,回答者が自らの氏名を記入する体裁であり,かつ,1年2組においては,教室内の後ろの席の者が前の者に用紙を渡していく方法で回収していたと認められる。しかし,上記アンケートが,記名式であったとしても,いじめの有無の申告の機会を生徒らに与えていたといえるし,本件中学校の生徒らにおいては,他の生徒に見られない方法で教諭にいじめの事実を申告する手段として,毎日提出することとされていたジャンプアップノート(甲254)に書くなどの方法を用いることも
可能であったと認められる。したがって,いじめに関する項目を含むアンケートが記名式とされ,かつ,B教諭が上記回収方法をとっていたことをもって,H校長にいじめ発見,いじめ対応を可能とするための体制整備義務の違反があったとは認められない。
その他,H校長につき,10月23日以前に,いじめ発見,いじめ対応を
可能とするための体制整備義務や,教職員に対するいじめ問題に関する研修及び教育義務の違反,その他の安全配慮義務違反があったとは認められない。

市教委につき,一審原告らは,市教委には①いじめ問題や対応方法について,教職員を対象とした研修を実施し又は学校に実施させる教育研修義務,
②管下の学校におけるいじめの問題の状況について実態の的確な把握に努める実態調査義務及び③管下の学校等に対し,いじめの問題に関する教育委員会の指導の方針などを明らかにし,積極的な指導を行い,特に,いじめの問題について困難な課題を抱える学校に対して,指導主事や教育センターの専門家の派遣などによる重点的な指導,助言,援助を行う指導助言義務を負
っているところ,市教委はこれらの義務を怠ったと主張する。
しかし,
本件中学校において一審原告Aに対するいじめが発生したことか
ら,
市教委が10月23日以前に上記各義務を怠ったと認められることにはならず,本件で認められる事実を考慮し,本件の全証拠を検討しても,市教委が上記各義務に違反したとは認めることはできない。

⑸ア

認定事実⑷,⑸,⑺,⑻及び⑼によれば,①10月23日にB教諭が一審原告Aに対する金銭要求がされている事実を認識し,すぐに他の教諭らと情報共有し,D教頭及びH校長にも情報が伝わり,本件中学校においてその日のうちに一審被告生徒らに対する事情聴取を開始し,一審原告Aからも聴取をしたこと,②本件中学校は,10月24日以降も,一審被告生徒らからの事情聴取を継続し,これと並行して,一審被告生徒ら及び一審被告保護者ら
に対し,一審原告らの自宅を訪れて謝罪することを勧め,一審被告生徒ら及び一審被告保護者らが一審原告らの自宅を訪れた際には,H校長又は本件中学校の教諭が同行しており,この訪問に際して,一審原告家族が,一審被告生徒ら及び一審被告保護者らの認識について説明を受け,質問等をすることができたこと,③一審原告両親が,一審原告Cの体調不良を理由に,一審被
告生徒らが謝罪文を作成して一審原告らの自宅に持参するよう求めたときは,本件中学校においてこれに対応し,一審被告生徒らに一審原告らの自宅に持参する文書を作成させたこと,④一審被告生徒らにつき,一時期部活動に参加することを停止させて,奉仕活動を行わせ,一審被告Aら5名について3日間にわたって別室登校として特別の指導を行い,平成25年度の1学
期において一審被告生徒らに更生プログラムを実施したこと,⑤平成25年2月以降,一審原告Aへの支援に関する支援会議を複数回開催したこと,⑥同年4月から,本件中学校の教諭らが,一審原告Aの学習支援として,一審原告ら宅を訪れて,教科指導を行ったこと,⑦一審被告鳥栖市の学校適応指導教室みらいに通うことが可能な体制をとり,一審原告Aが平成26年
1月以降みらいに通ったことが認められる。
上記事実に現れた10月23日以降の本件中学校及び市教委の対応の内容からすれば,
一審原告Aに対するいじめが発生していたことを認識した後
の対応として,
一審原告Aに対する安全配慮義務その他の義務違反があった
とは認められない。


一審原告らは,前記第2の3⑶(一審原告らの主張)カのとおり,本件中学校及び市教委には,迅速かつ正確に事案の究明を図り,一審原告A側に適切に情報提供し,加害児童生徒に対する徹底した指導を行い,被害を受けた一審原告Aを受け入れるための体制づくりを行わなければならない義務があったところ,これらの義務に違反したと主張する。
しかし,
本件中学校は一審被告生徒らから継続的に事情聴取を実施してお

り,その結果は,一審被告生徒らが作成したメモ等として一審原告両親に交付されたり,
一審被告生徒ら及び一審被告保護者らの訪問に際して一審原告
Cが質問したりすることによって,一審原告らに提供されたといえるから,本件中学校及び市教委が事情聴取や情報提供を怠ったとはいえない。また,一審原告らは,一審被告生徒らに対して出席停止の措置を執らなか
ったことが問題である旨の主張をするが,出席停止の措置を執らなかったことにより,
本件中学校及び市教委が一審被告生徒らに対する適切な指導を怠
ったことになるものではなく,本件中学校が行った指導の内容(前記ア④,認定事実⑺ア,イ)が不適切,不十分であったとは認められない。B教諭が平成24年度の最後に作成した学級通信(認定事実⑺エ)につい
ては,
1年2組において一審原告Aに対するいじめが発生した事実を直視する姿勢を欠いていたといえるものの,この学級通信が作成されたことをもって,
本件中学校において一審原告Aを受け入れる体制を整えなかったとはいえず,その他の義務違反が認められるとも解されない。
その他,前記第2の3⑶(一審原告らの主張)カの主張を検討しても,前
記アの結論は左右されない。


以上によれば,一審被告鳥栖市及びその履行補助者において,一審原告Aがいじめを受けたことに関し,安全配慮義務その他の注意義務に違反したとは認められないから,一審被告鳥栖市が,一審原告Aに対し,国家賠償法1条1項
に基づく責任を負うとは認められない。
争点3に関する一審原告らの主張は採用することができない。
5争点4(一審原告Aの損害)について
⑴ア

一審原告らは,一審原告Aの損害に関し,一審原告Aが,一審被告生徒らによるいじめを受けたことによってPTSDを発症したと主張しているので,まずこの点について検討する。


一審原告らは,上記主張に沿う証拠として,A医師作成の陳述書(甲318。以下A陳述書という。),I医師作成の報告及び依頼書と題する書面(甲303の1。以下I報告書という。)及び診断書(甲303の2。以下I診断書という。)並びにJ医師作成の意見書(甲359。以下J意見書という。)を提出する。また,A医師は,その証人尋問において,一審原告らの上記主張に沿う供述をする。


A医師は,A陳述書において,一審原告Aに対してPTSDの症状評価尺度(IES-R)による検査を実施しており,11月9日の結果はカットオフ25点を大きく上回る41点であり,PTSDの症状として重症であることを示しており,平成25年2月,同年12月,平成26年6月及び同年1
2月の検査の結果は,それぞれ58点,74点,57点,61点と,高い数値の範囲内での変動とその継続が認められると述べ,この結果と,後記エのI医師の検査結果及び評価から,一審原告Aが重度のPTSDの症状を呈していると考えるとの意見を述べている。
しかし,まず,IES-Rは,PTSD症状に関する評価尺度であり,横
断調査,症状経過観察,スクリーニング目的などに使用される検査であるが(甲365),対象者が用紙に記載された質問を読み回答を記入する方法で行われるところ(甲15の2の1から4まで,361,365),このような方法を用いる評価尺度(自記式質問紙尺度)は,面接による診断に比べ,診断の精度を上げることには限界があり,診断の妥当性に一定の問題がある
とされており(甲361),IES-RのみでPTSDの発症の有無を確定的に診断することができるとは解されない。
PTSDの発症の有無の診断に際して一般的に用いられる診断基準には,DSM-5とICD-10があるところ(乙トA3,A4,甲365,証人A),A医師は,その証人尋問において,一審原告Aに対し,これらの2つの診断基準の該当性を検討したと供述する(証人A[27頁])。しかし,A陳述書には,
一審原告AがDSM-5及びICD-10の基準が定める要
件に該当するか否かの検討に関して記載されておらず,A医師は,一審原告Aに侵入,過覚醒,回避の症状及び否定的認知が明らかにあったことから,上記各基準に該当すると判断したにすぎないのであって
(証人A
[27頁],

A医師が,
一審原告Aが上記各基準の定める個々の要件に該当するか否かを

検討したとは認められない。
そして,DSM-5及びICD-10は,いずれも,患者の症状だけでなく,患者がどのような出来事に曝露されたのかも診断の基準(要件)の1つとしている(乙トA3,A4,甲365)。A医師による一審原告Aの診察において,
一審原告Aが一審被告生徒らからどのような行為を受けたかに関

する説明の多くは,一審原告Aではなく一審原告Cがしたと認められるが(認定事実⑹ア,ウ,証人A[27,28頁]),一審原告Cは,一審被告生徒らが謝罪に訪れた際にどのような行為をしたかの説明を受けたが,その説明に納得しないときには,自らの認識に沿った事実があった旨の回答があるまで質問を繰り返したり,一審被告生徒らの謝罪を受け入れない態度をと
ったりしており(認定事実⑸オ,カ,キ),かつ,一審原告CのA医師に対する説明が,いかなる情報に基づくものか明らかでない。これらの事情によれば,一審原告Aが一審被告生徒らから受けた行為が,一審原告CがA医師にした説明の内容どおりであると認めることはできない。
A医師は,A陳述書において,一審原告Aが複雑性PTSDに該当すると
の意見も述べている。しかし,複雑性PTSDは,現時点ではPTSDの診断基準に導入されていない概念であり(証人A[29頁]),A医師の上記意見をもって,
一審原告AがPTSDを発症していると認めることはできな
い。
以上によれば,A医師が,自身の診察及び検査に基づき,一審原告AがPTSDを発症していると判断した意見をもって,一審原告AがPTSDを発症したと認めることはできない。


I医師は平成30年3月6日に一審原告Aを診察している(前提事実⑸イ)。そして,I報告書には,DSM-Ⅳ版UCLA外傷後ストレス障害インデックス,IES-R,CDC,解離体験尺度A-DES及びDES-Ⅱ,LSAS及びLSAS-CAの各検査結果が記載され,一審原告Aに
ついてPTSD及び社交不安障害との診断名を記載している。
このうち,DSM-Ⅳ版UCLA外傷後ストレス障害インデックスについては,診断基準の1つに外傷的出来事が含まれるとした上で,いじめ被害への曝露を認めと記載し,これによって外傷的出来事の基準を満たしている旨の記載がされている。しかし,PTSDの診断基準である
DSM-Ⅳ(乙トA1,2)において,いじめ被害に遭ったことのみで外傷的出来事の基準を満たすと判断することはできない。そして,I報告書の記載からは,I医師が,一審原告Aがどのようないじめ行為を受けた事実があることを前提として上記診断をしたのか明らかでない。
その余の検査は,その検査結果に関する記載内容に照らし,診察当時の一
審原告Aの状態を判断するためのものであり,一審原告Aがどのような出来事に曝露されたかを考慮していないと認められるから,これらの検査結果をもって,一審原告AがPTSDを発症したと認定することはできない。I診断書は,PTSD及び社交不安障害との診断名のほか,中学1年生のときから特定の友達に暴力を振るわれ,今でもトラウマがあるとの主訴で平
成30年3月に初診となった,診察及び検査結果を含め上記診断をしたとの記載が存在するが(甲303の2),この記載をもって,I医師によるPTSDに関する診断が相当であったと認めるに足りない。
以上によれば,I報告書及びI診断書をもって,一審原告AがPTSDを発症したと認めることはできない。
また,A医師は,A陳述書において,自らの診察及び検査の結果と,I医師の検査結果及び評価から,一審原告Aが重度のPTSDの症状を呈してい
ると考えるとの意見を述べているが,A医師の診断及びI医師の診断のいずれによっても一審原告AがPTSDを発症したと認めることができないのであり,A医師の上記意見を採用することはできない。

J意見書によれば,J医師は,令和2年11月4日に一審原告Aに対する診察を行ったことが認められる。そして,J意見書には,一審原告AについてDSM-5のPTSD診断基準を全て満たしているとの意見が記載されている。
しかし,J意見書の記載によれば,J医師は,上記診察において,一審原告Aがどのような行為を受けたのかについて,一審原告Aに詳細に尋ねなか
ったと認められる。これについて,J医師は,J意見書において,心的外傷体験を語ることを求めることで恐慌状態や解離状態に陥り,その日に行うべき面接が成立しないことを避けるためであるが,一審原告Aの体験については既に他の医療機関で聴取できているとの事情も加味したとの説明を記載した上で,得た情報からは,一審原告Aが心的外傷的出来事を直接体験して
おり,
DSM-5によるPTSD診断の基準Aを満たしていると考えられたとの意見を述べている。しかし,J意見書の記載からは,一審原告Aが受けた行為について,J医師自らが一審原告Aから聴取した内容がどのようなものであり,
J医師が他の医療機関から取得したとされる情報がどのような内
容であったのかに関して何も記載がなく,J医師が一審原告Aの体験した出
来事に関して得た情報が何であるのか不明である。そして,J医師が他の医療機関の情報として取得したものがA医師から得たものである可能性があるところ,
一審原告Aの体験した事実に関してA医師が受けた説明の多
くは一審原告Cによるものであり,その説明内容どおりの行為を一審原告Aが受けたと認められないことは前記ウのとおりである。
これらの事情の下においては,J意見書の記載をもって,一審原告Aについて,DSM-5の基準A(実際に又は危うく死ぬ,重傷を負う,性的暴力
を受ける出来事(心的外傷的出来事)への曝露。甲365,乙トA3)を満たすと認めるに足りず,一審原告AがPTSDを発症したと認めることはできない。

そして,認定事実を検討し,本件の全証拠によっても,一審原告Aについて,
DSM-5の基準Aを満たすとは認められず,
ICD-10の基準A
(ほ

とんど誰にでも大きな苦悩を引き起こすような,例外的に著しく脅威を与える,
又は破局的な性質をもった,
ストレス性の強い出来事又は状況への曝露。
文献では,自然災害又は人工災害,激しい事故,他人の変死の目撃,拷問,テロリズム,強姦又は他の犯罪の犠牲になることが挙げられている。乙トA4,5)を満たすとも認められないから,一審原告AがPTSDを発症した
とは認められない。

ただし,一審原告Aについて,PTSDを発症したと認められないとしても,
認定事実⑵及び前記2⑶に認定したような継続的ないじめ行為を受けたことによって,精神的苦痛を受け,精神症状を発症して通院を余儀なくされ
たことは,認定事実,前記2の説示及び上記各医師の意見等から明らかに認められる。これを前提に,以下,一審原告Aの損害について検討する。⑵ア

一審原告Aが一審被告生徒らに交付したと証拠から認定することのでき
る金銭については,
その交付した金額が一審原告Aの財産的損害であると認
められ,その金額の合計は,別紙4金銭交付等一覧表の合計額欄記載のとおり,32万8400円である。
前記2⑸の説示のとおり,複数の生徒が同じ機会に一審原告Aから金銭を受領した場合には,
これらの生徒は一審原告Aが当該機会に交付した金銭の
全額について共同不法行為責任を負い,一審被告生徒らそれぞれは,自らが受領した金銭のほか,
上記共同不法行為責任を負う金額について一審原告A
に対して損害賠償義務を負う。そうすると,一審被告生徒らは,一審原告Aから金銭の交付を受けたことに関し,一審原告Aに対し,不法行為に基づく
損害賠償義務として,別紙4金銭交付等一覧表の各生徒の不法行為(円)欄の合計(円)の箇所に記載の金額の損害賠償義務を負うと認められる。また,同一覧表の番号1,7,21,22,25,28,37,39,40,45及び46の行為については,複数の生徒が共同不法行為者として,各欄における不法行為(円)欄に記載の金額につき連帯して損害賠償義務を
負う。
一審原告らは,本件のように,複数の加害者が,その人数の変動を伴いながら,4月から10月までの間金銭の奪取行為を継続した事案では,その都度奪われた金額を特定することは不可能であり,証拠によって正確に全体の被害額を示すことも不可能であるから,一審原告Aが一審被告生徒らに金銭
を交付したことによる財産的損害について民事訴訟法248条の適用又は準用をすべきであり,
一審原告Aが持ち出した自らの金銭及び一審原告家族
等の金銭の合計額は100万円を超えるから,少なくとも100万円を下らない金額の損害があったと認定されるべきであると主張する。しかし,金銭を交付したことによる損害について,その性質上その額を立証することが極
めて困難であると解することはできず,上記財産的損害の認定において同条の適用又は準用をすることは相当でない。

一審原告らは,
一審原告Aが学習の遅れを防ぐために通った塾に関する通
塾費用及び教材費が,
一審被告生徒らのいじめ行為による一審原告Aの損害

であると主張する。
しかし,
一審原告Aが塾に通い始めた時期や経緯を認定するに足りる証拠
はなく,
本件中学校の教諭らが平成25年4月以降に一審原告Aに対して教科指導を行ったこと(認定事実⑼ウ)も考慮すれば,一審被告生徒らのいじめ行為と,
一審原告Aが塾に通ったこととの間に相当因果関係を認めること
はできない。
また,一審原告らは,一審原告Aが一審被告生徒らからいじめを受けたこ
とにより私立高校に入学せざるを得ず,これにより公立高校に入学した場合より高校進学に係る費用が増大したとして,その増大した費用が,一審被告生徒らのいじめ行為による一審原告Aの損害であると主張する。
しかし,本件の全証拠によっても,一審原告Aが一審被告生徒らからいじめ行為を受けたことにより,公立高校に入学することが不可能となり,高校
に入学するのであれば私立高校に入学する以外になかったと認めることはできず,一審被告生徒らのいじめ行為と,一審原告Aが私立高校に入学したことにより公立高校に入学した場合より増大した費用との間に,相当因果関係を認めることはできない。
⑶ア

前記⑴の説示のとおり,一審原告Aは,PTSDを発症したとは認められないものの,
認定事実⑵及び前記2⑶に認定したような継続的ないじめ行為を受け,これにより多大な精神的苦痛を受け,精神症状を発症して通院を余儀なくされたことが認められる。
そして,一審原告Aに対するいじめ行為については,本件の全証拠によっ
ても,個々の行為の内容及び程度,行為の頻度は明らかでない面があるものの,一審被告Aら5名からいじめ行為を受けた期間が長期にわたる事実や,認定事実⑵及び前記2⑶に認定のいじめ行為の内容に照らせば,一審被告Aら5名の継続的ないじめ行為によって一審原告Aが受けた苦痛を慰謝するための慰謝料は300万円が相当と認める。

一審原告らは,
暴行等による身体的精神的苦痛に対する慰謝料1000万
円,学習権及び成長権の侵害に対する慰謝料2500万円,人として成長発達する権利の侵害に対する慰謝料1000万円が認められると主張するが,上記のとおり,
一審原告Aが受けた苦痛全体に対する慰謝料として300万
円を認めるのが相当である。

前記2⑶カ,
キ,
ク及び⑷の説示のとおり,
一審被告Jら3名については,
一審原告Aが継続的ないじめ行為を受けたことによって被った損害全体に
ついての責任は負わないものの,それぞれの個別のいじめ行為によって一審原告Aに与えた苦痛に関する慰謝料の損害賠償義務を負うと認められる。そして,認定事実⑵及び前記2⑶カ,キ,クに認定した,上記各生徒の行為の内容に照らせば,
上記各生徒の行為によって一審原告Aが受けた苦痛に
対する慰謝料としては,それぞれ5万円と認めるのが相当である。
したがって,一審被告Jら3名は,それぞれ,一審原告Aに対して5万円の慰謝料に係る損害賠償義務を負う。


一審原告らは,一審原告AがPTSDに罹患したことにより,通院に関する損害及び後遺障害による損害を被ったと主張するところ,一審原告AがPTS
Dを発症したとは認められないものの,継続的ないじめ行為を受けたことによって精神症状を発症したことは認められるから,精神症状を発症したことによる通院に関する損害及び後遺障害による損害が認められるかを検討する。ア
一審原告らは,
一審原告Aが平成24年11月6日から平成30年4月2
8日までK病院に通院した際に利用したタクシーの代金が合計67万7280円を下回らず,これが一審原告Aの損害であると主張する。

しかし,本件の全証拠によっても,一審原告AがK病院への通院の際にタクシーを利用する必要があったこと,及び上記通院の際にタクシーを利用したことのいずれについても認定するに足りず,上記タクシー代金が一審被告A5名の継続的ないじめ行為と相当因果関係のある一審原告Aの損害であるとは認められない。


一審原告Aが継続的ないじめ行為を受けて多大な精神的苦痛を受けたこと,一審原告Aの年齢等を考慮すれば,一審原告Aが初めてK病院を受診した11月6日から,一審原告Aが中学校を卒業した平成27年3月までの間について,一審原告AがK病院に通院した際に一審原告B,一審原告C又は一審原告Aの祖父母が付き添ったことに係る付添看護費が,一審被告Aら5名の継続的ないじめ行為と相当因果関係のある損害であると認められる。K病院の診療録(甲15)には,各診察日に関する記述の冒頭にPtmotherなどの記載が存在することが多い。これらの記載は,当該診察日にA医師が面会した者に関する記載であると推認される(Ptは患者(patient)を意味し,一審原告Aを指すと認められる。)。

そこで,11月6日から平成27年3月までの間について,上記診療録において,一審原告B,一審原告C又は一審原告Aの祖父母を指す記載がある受診日については,その記載された者が,一審原告AのK病院への通院に付き添ったと認める。他方,一審原告B,一審原告C又は一審原告Aの祖父母を指す記載がない受診日(A医師が面会した者に関する記載がされていない
日を含む。)については,これらの者のいずれかが一審原告Aの通院に付き添ったと認められない。ただし,11月9日については,A医師が面会した者に関する記載が存在しないものの(甲15),同日は一審原告AによるK病院の2回目の通院日であること,一審原告Aが通院当初はほとんどA医師に話をせず,12月頃からようやく語り始めた状態であったこと(認定事実
⑹ア,ウ,証人A)からすると,同日の通院は上記親族のいずれかの者が付き添ったと認めることができる。
以上を前提に診療録(甲15)の記載を検討すると,11月6日から平成27年3月までの間に,一審原告AがK病院に通院した日(119日)のうち,一審原告B,一審原告C又は一審原告Aの祖父母が付き添ったと認めら
れる日数は103日となる。
1日当たりの通院付添費は3300円が相当であると認める。
一審原告らは,一審原告AがK病院に通院した日以外についても,一審原告Cその他の親族が一審原告Aに付き添うことが必要であり,子の付添いに係る付添看護費も一審原告Aの損害であると主張しているものと解される。しかし,本件の全証拠によっても,一審原告AがK病院に通院した日以外について親族の付添いが必要であったとは認められない。

以上によれば,
一審被告Aら5名の継続的ないじめ行為と相当因果関係の
ある一審原告Aの損害として認められる付添看護費は,33万9900円(3300円×103日)であると認められる。

一審原告らは,一審原告Aの損害として通院慰謝料600万円が認められるべきであると主張する。

しかし,
一審被告Aら5名の継続的ないじめ行為によって一審原告Aが被
った精神的苦痛を慰謝するための慰謝料としては,前記⑶のとおり300万円が相当であり,
一審原告Aが精神的症状を発症して通院したことに関する
慰謝料もこれに含まれるものと解するのが相当である。

一審原告らは,
一審原告AはPTSDを発症し,
頻回なフラッシュバック,
それに伴う解離症状,自殺企図,極度の人間不信,同世代や中学校時代を想起する者との遭遇等に対する極度の恐怖感,急性反応等が続く後遺障害が残存しており,就労の実現性は乏しく,100%の労働能力喪失か,少なくとも自賠法施行令別表第2の第5級2号精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないものに該当し,一審原告Aに後遺障害による逸失利益の損害が生じたと主張する(ただし,一審原告らは,逸失利益の金額の算出において用いる労働能力喪失率については,訴え提起段階のまま,同別表第2の第9級相当の35%としている。)。
しかし,
一審原告AにPTSDが発症したと認められないことは前記⑴の
とおりである。
A医師は,
その証人尋問において,
一審原告Aにフラッシュバック,
回避,
解離等のPTSDの症状が続いていると供述するものの
(証人A
[17頁],

上記のとおり一審原告AにPTSDが発症したとは認められず,かつ,A医師は,
一審原告Aの就労の実現性については予想がつかないとも供述しており(証人A[17頁]),A医師の供述をもって,一審原告Aに後遺障害が残存していると認定することはできない。

そして,一審原告Aが,高校を卒業し,福祉関係の専門学校に進学していること(前提事実⑹,一審原告A本人[2回目の12頁])も考慮すれば,一審原告Aに後遺障害が残存していると認めることはできず,本件の全証拠を精査しても,上記結論は左右されない。
したがって,
一審原告Aに後遺障害による逸失利益の損害が生じたとは認

められない。

一審原告らは,一審原告Aの損害として後遺障害慰謝料を主張するが,前記エの説示のとおり,
一審原告Aに後遺障害が残存しているとは認められな
いから,後遺障害慰謝料を一審原告Aの損害として認めることはできない。

一審原告らは,
一審原告Aの損害として一審原告Aの将来の付添看護費用
を主張するが,前記エの説示のとおり,一審原告Aに後遺障害が残存しているとは認められず,本件の全証拠によっても,将来の付添看護費を損害として認めるべき根拠となる事実は認められない。


前記⑴から⑷までの説示によれば,一審被告Aら5名の継続的ないじめ行為による一審原告Aの損害と認められる金額(金銭の交付による損害及び弁護士費用を除く。)は333万9900円であり,その他本件で認められる事実関係も考慮すれば,
一審被告Aら5名の不法行為と相当因果関係のある一審原告
Aの弁護士費用を34万円と認めるのが相当である。
一審被告Jら3名については,これらの生徒が一審原告Aに対して継続的な
いじめ行為をしたと認められないこと,これらの生徒が一審原告Aに対して負う損害賠償義務の金額が一審被告Aら5名の負う損害賠償義務の金額に比して少額であることから,
一審原告Aの損害としての弁護士費用の賠償義務を負
わないものとすることが相当である。
6争点5(一審被告らの一審原告家族に対する責任の有無)について一審原告らは,一審原告家族それぞれに損害が生じており,一審被告らが,連帯して,一審原告家族に対する損害賠償義務を負うと主張する。
しかし,一審原告両親については,一審被告生徒らの一審原告Aに対する加害行為の結果,子が死亡したのと同程度の精神的苦痛を被ったと主張しているが,本件の全証拠によってもそのような事実は認められない。一審原告Aの見守りに係る損害及び家庭内の平穏を害されたことによる損害については,一審被告生徒
らの行為が一審原告家族に対する不法行為となることを根拠付ける事実は認められない。
また,一審被告鳥栖市及び一審被告保護者らは,一審原告Aに対する損害賠償義務を負うと認められず,このことからすれば,これらの者が一審原告家族に対して損害賠償義務を負うとは認められない。
争点5に関する一審原告らの主張は,いずれも採用することができない。
7争点6(過失相殺)について


一審被告らは,①一審原告Aが一審原告家族又は教諭らに暴行等の被害を報告すれば,
一審原告Aに生じた結果の発生又は被害の拡大を回避することができたのに,一審原告Aがこれをしなかったこと,②一審原告Aの損害の発生に
は,
一審原告両親が一審原告Aに対する暴行等の存在を認識し又は容易に認識することができたにもかかわらず,何も対応しなかった過失が寄与していること,③一審原告Aが多額の金銭を持ち出すことができたこと,すなわち,一審原告両親の金銭の管理がずさんであったことによって,一審原告Aに被害が生じたことから,過失相殺又はその類推適用がされるべきであると主張する。
しかし,
①については,
いじめの被害者が,
いじめを認めることを恥じたり,
仕返しを恐れたりする結果,いじめを受けていることを他人に打ち明けられず悩みを抱え込むことがあることは,文部省又は文部科学省の初等中等教育局長による都道府県教育委員会教育長,都道府県知事等宛てのいじめ問題に関する通知でも指摘されているところである(甲233,234等)。一審原告Aについても,一審被告生徒らによる仕返しを恐れていたことが認められ(一審原告A本人),一審原告Aが一審原告家族又は本件中学校の教諭らにいじめを受
けていることを話さなかったことをもって,一審原告Aの一審被告生徒らに対する損害賠償請求に関し,過失相殺又はその類推適用を認めるべきであるとは解されない。
②及び③については,本件の全証拠によっても,一審原告両親が一審原告Aに対する暴行等のいじめの存在を認識し又は容易に認識することができたこ
と,
及び一審原告両親の金銭の管理がずさんであったために一審原告Aに被害が生じた又は被害が拡大したことは認められない。


一審被告Dらは,一審原告Cが,事実経過や一審原告Aの被害の態様を実際よりも極端かつ過大なものと見たため,一審被告Eの勤務先の保育園に対し,いじめ加害者の親を雇っているとのクレームがあり,一審被告Eは退職勧奨を
受けて退職を余儀なくされ,経済的苦境に陥っており,この事情から過失相殺がされるべきであると主張する。しかし,仮に,一審被告Dらが主張する上記事実が生じたとしても,これをもって,一審原告Aの一審被告生徒らに対する損害賠償請求につき,過失相殺が認められるべきであるとは解されない。⑶

そして,本件の全証拠によっても,本件に関し,過失相殺又はその類推適用を認めるべきことを根拠付ける事実は認められない。争点6に関する一審被告らの主張は採用することができない。

8まとめ
以上検討したところによれば,一審被告生徒らがそれぞれ一審原告Aに対して損害賠償義務を負う金額(元金)は,一審被告Aら5名については,367万9900円(慰謝料300万円,付添看護費33万9900円及び弁護士費用34万円の合計)に,別紙4金銭交付等一覧表の各生徒の不法行為(円)欄の合計(円)の箇所に記載の金額を加えた額となり,一審被告Jら3名については,
5万円(慰謝料)に,同一覧表の各生徒の不法行為(円)欄の合計(円)の箇所に記載の金額を加えた額となると認められ,これらの金額を計算すると,別紙2認容額一覧表の総額欄記載の金額となり,また,支払義務の連帯関係は,同一覧表の連帯部分欄記載のとおりとなる。
その他,原審及び当審における当事者双方の主張に鑑み,証拠の内容を検討しても,当審における上記認定判断(原判決引用部分を含む。
)を左右しない。
第4結論

以上によれば,一審原告Aの一審被告生徒らに対する請求については,別紙2認容額一覧表の各一審被告の総額欄記載の金額及びこれに対する不法行為の後である平成24年10月23日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払(ただし,各一審被告らの連帯債務額元金欄記載の金額及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の限度で,これに
対応する連帯債務者欄記載の者と連帯して)を求める限度で理由があるから認容し,その余の請求は理由がないから棄却すべきであるところ,これと異なる原判決は一部不当であり,一審原告Aの一審被告G,一審被告J,一審被告M,一審被告O,
一審被告R及び一審被告Uに対する控訴並びに一審被告Aの控訴及び一審被告Dの附帯控訴は一部理由があり,一審原告Aの一審被告A及び一審被
告Dに対する控訴は理由がなく,一審原告Aの一審被告鳥栖市及び一審被告保護者らに対する請求並びに一審原告家族の請求はいずれも理由がないから棄却すべきであるところ,これと同旨の原判決は相当であり,一審原告Aの一審被告鳥栖市及び一審被告保護者らに対する控訴並びに一審原告家族の控訴はいずれも理由がない。

よって,主文のとおり判決する。
福岡高等裁判所第4民事部
裁判長裁判官

増田
裁判官

水野
裁判官

矢﨑稔正則豊
別紙2 認容額一覧表
一審被告

A
連帯部分

総額

3,816,100円

連帯債務者

DGMO
連帯債務額元金

D
3,834,350円

連帯債務者

3,679,900円
AGMO
連帯債務額元金

GJM
3,787,200円

50,450円

3,732,900円

連帯債務者

O
3,680,200円

連帯債務者

ADGOR
101,000円

73,400円

連帯債務者
連帯債務額元金

40,000円

A
D
G
M
3,679,900円

連帯債務額元金

U
11,000円

D
G
M
11,000円

DG
40,000円
AD
8,000円

5,400円

DU
10,200円
GMR
3,600円
ADDGRADG
3,600円

11,000円

3,679,900円

GAG
A
D
R
3,679,900円

連帯債務額元金
連帯債務者

11,000円

3,679,900円

連帯債務額元金

DGAGRADMO
連帯債務額元金
連帯債務者
連帯債務額元金
連帯債務者

DGR
40,000円
DMR
3,600円

5,400円
GGU
500円

8,000円
AD
40,000円

AU
500円

5,400円
DU
10,200円

8,000円

別紙3

1一審原告Aと一審被告A,一審被告D,一審被告G,一審被告M及び一審被告Oとの間における訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを100分し,その3を一審被告A,一審被告D,一審被告G,一審被告M及び一審被告Oの負担とし,その余
を一審原告Aの負担とする。
2
一審原告Aと一審被告J,一審被告R及び一審被告Uとの間における訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを200分し,その1を一審被告J,一審被告R及び一審被告Uの負担とし,その余を一審原告Aの負担とする。

3一審原告Aの一審被告鳥栖市,一審被告B,一審被告C,一審被告E,一審被告F,一審被告H,一審被告I,一審被告K,一審被告L,一審被告N,一審被告P,一審被告Q,一審被告S,一審被告T,一審被告V及び一審被告Wに対する控訴並びに一審原告B,
一審原告C及び一審原告Dの控訴に係る控訴費用は,
一審原告A,
一審原告B,一審原告C及び一審原告Dの負担とする。

別紙4

金銭交付等一覧表

番号

時期

場所

一審被告A
一審被告D
一審被告G
一審被告J
一審被告M
一審被告O
一審被告R
一審被告U
受領額不法行為受領額不法行為受領額不法行為受領額不法行為受領額不法行為受領額不法行為受領額不法行為受領額不法行為(円)
(円)
(円)
(円)
(円)
(円)
(円)
(円)
(円)
(円)
(円)
(円)
(円)
(円)
(円)
(円)

合計
(円)

4月中旬又は下旬頃
35
5月中
5月中
5月中
6月中
6月中

ターザン広場又
はトライアル
フレスポ
フレスポ
儀徳グラウンド
フレスポ
儀徳グラウンド

7月中

トライアル
911131517
7月中
7月中
7月中
夏休み
8月中
8月中
8月中
8月中
時期不明(6月~8月)
時期不明(7月~8月)
時期不明(7月~8月)

フレスポ
フレスポ
儀徳グラウンド
フレスポ
フレスポ
フレスポ
トライアル
儀徳グラウンド
一審被告D宅

時期不明(7月~8月)
2123
時期不明(7月~8月)
9月10日
9月15日
9月下旬頃
9月中

9月下旬頃
2729

9月中
9月中
9月中
9月中

時期不明(5月~9月)フレスポ

10,000

10,000

10,000

時期不明(5月~9月)フレスポ

33,000

33,000

33,000
33353739

時期不明(5月~9月)
時期不明(5月~9月)
時期不明(5月~9月)
時期不明(5月~9月)
時期不明(8月,9月)
10月5日
10月初旬頃
10月19日

フレスポ
フレスポ
フレスポ
フレスポ
儀徳グラウンド
めぐみ幼稚園
フレスポ
ファミリーマート

8,000
2,500
2,800
3,000
2,000
5,000

8,000
2,500
2,800
3,000
2,000
8,000

1,000

5,400

10月19日

店舗(お宝発見)

2,100

4,200
42444648

10月中旬頃
10月中旬頃
10月20日
10月頃
10月頃
10月頃
10月
10月
時期不明(4月~10
月)
時期不詳
合計(円)

旭のローソン
50

2,000

11,000

11,000

3,000
2,000

3,000
2,000
9,000
11,000
15,000

1,200

3,600

3,600

8,000

3,600

11,000

2,000

11,000

11,000判決本文の認定事実(以下,単に認定事実という。)⑵イ
8,000

9,000
11,000
15,000

1,200

11,000

2,000
3,000
2,000

9,000
11,000
15,000

5,000

11,000

1,200

3,600

4,000
8,000
2,000
6,000

6,000

1,500
2,000
3,000

1,500
8,000
12,000

15,000

8,000

11,000
8,000
15,000
10,000
8,000
10,000
2,000
9,000
4,000
8,000
2,000

6,000
フレスポ
フレスポ
学校
一審原告ら宅前
スーパーマーケッ

フレスポ
フレスポ
儀徳グラウンド
儀徳グラウンド

4,000
8,000
2,000

15,000

8,000

10,000
10,000
2,000
9,000

10,000
2,000

8,000
12,000

2,000
3,000
5,000

8,000
12,000
5,000

2,000
3,000
1,500
8,000
12,000
5,000
8,000
12,000

9,000

3,000

11,000
6,000
6,000
9,000

11,000
3,000
6,000

6,000

9,000
11,000
6,000
6,000

1,500

8,000

1,500

2,400

1,400

3,000
2,000

12,000
8,000

1,000

4,200

1,400

1,000

10,000

3,000
2,000

12,000
8,000

12,000
8,000

3,000
2,000

12,000
8,000

1,000
10,000
136,200

甲20の1・2
甲20の1・2
甲27の約3000円×3回との記述により認めた。
甲27の2000円+約3000円×3回との記述により認めた。甲27の約3000円×5回との記述により認めた。
証拠(甲18,20,27)によれば,4700円のうち3600円を一審被告D,一審被告G,一審被告Aが取得したものと認められる。
甲27
甲20,27
甲27の約3000円×5回との記述により認めた。
甲24,27
甲27
甲20,27
甲20,27
甲27の約3000円×3回との記述により認めた。
甲18の3
甲18の3の1000円×8との記述により認めた。
甲18の3の2000円との記述により認めた。
食べ物やカードの購入代金を出させたもの。甲18の3の500円×12との記述により認めた。甲18の3の1500円との記述により認めた。

は,菓子購入額500円を案分した金額としている。
甲20
甲27
甲27
甲27
2000円×7(甲18-3)から番号21及び46の各2000円の受領を除いたもの。
3000円×13回(甲18-3)から番号22及び45の各3000円の受領を除いたもの。
甲18の3の4000円×2との記述により認めた。
甲18の3の2000+500円との記述により認めた。
甲18の3の2000+800円との記述により認めた。
甲18の3の2000+1000円との記述により認めた。
甲18の3

8,000
2,500
2,800
3,000
2,000
8,000
3,000
5,400認定事実⑵タ
認定事実⑵タ。なお,一審被告A及び一審被告Gが一審原告Aに4,200
支払わせたゲーム代4,200円は,上記2名で案分した。
1,400甲116,弁論の全趣旨
5,000
750認定事実⑵チ12,000
8,000
1,000甲27
1,000甲18
10,000飲食代を出させたもの。甲27により認めた。

学校帰り
115,300

5,000

3,000
2,000

1,000

5,400

3,000

5,400
2,100

8,000

2,000

3,000

5,000
ローソン
ローソン
フレスポ
フレスポ
儀徳グラウンド
新鳥栖駅前

10,000

9,000

2,000
3,000

認定に用いた証拠及び補足説明

109,800

154,45054,050

107,300
450
450

23,000

53,000

12,000

51,000

13,500
23,400328,400

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