判例検索β > 令和1年(行コ)第62号
在留特別許可義務付け請求控訴事件
事件番号令和1(行コ)62
事件名在留特別許可義務付け請求控訴事件
裁判年月日令和3年6月10日
裁判所名・部名古屋高等裁判所  民事第1部
原審裁判所名名古屋地方裁判所
原審事件番号平成27(行ウ)122
判示事項の要旨外国籍を有する控訴人らが,入管法所定の退去強制対象者に該当する旨の認定及びこれに誤りがない旨の判定を受け,異議の申出には理由がない旨の裁決並びに退去強制令書発付処分を受け,その取消しを求める訴えの棄却判決が確定した後に,控訴人らに有利な事情が生じたとして,主位的に在留特別許可の義務付けのみを,予備的に裁決の撤回及び在留特別許可の各義務付けを求めたのに対し,在留特別許可の義務付けのみを求める控訴人らの主位的請求を却下した部分,控訴人父,控訴人母及び控訴人長男の予備的請求のうち在留特別許可の義務付け請求に係る部分を却下した部分並びにその余の請求を棄却した部分に対する控訴をいずれも棄却したものの,18歳に達した控訴人長女と16歳に達した控訴人二女については,本邦への定着性が高まり,本国において社会生活を営んでいくことには著しい支障がある状態になり,控訴人父母の監護養育なしに本邦において自立的な社会生活を送ることが可能になったから,特に顕著な事情の変化があるとして,控訴人長女と控訴人二女の予備的請求に係る原判決を取り消し,裁決の撤回及び在留特別許可の義務付けを求める訴えを認容した事例
裁判日:西暦2021-06-10
情報公開日2021-08-25 18:00:25
裁判所の詳細 / 戻る / PDF版
主1文
原判決中控訴人らの主位的請求を却下した部分,控訴人父,控訴人母及び控訴人長男の予備的請求のうち在留特別許可の義務付け請求に係る部分を却下した部分並びにその余の請求を棄却した部分に対する控訴をいずれも棄却する
2
原判決中控訴人長女及び控訴人二女の予備的請求のうち在留特別許可の義務付け請求に係る部分を却下した部分並びにその余の請求を棄却した部分を取り消す。

3
名古屋出入国在留管理局長は,控訴人長女及び控訴人二女につき平成21年1月13日付けでされた出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決を撤回せよ。

4
法務大臣は,控訴人長女及び控訴人二女に対し,本邦における在留を特別に許可せよ。

5
訴訟費用は,控訴人父,控訴人母及び控訴人長男と被控訴人との関係では,控訴費用は控訴人父,控訴人母及び控訴人長男の負担とし,控訴人長女及び控訴人二女と被控訴人との関係では,第1,2審を通じてこれを2分し,その1
を控訴人長女及び控訴人二女の負担とし,その余を被控訴人の負担とする。事実及び理由
第1

控訴の趣旨

1
原判決を取り消す。

2⑴

主位的請求
法務大臣又は名古屋出入国在留管理局長は,控訴人らに対し,本邦における在留を特別に許可せよ。



予備的請求

名古屋出入国在留管理局長は,平成21年1月13日付けで控訴人らに対してされた出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決を撤回せよ。

法務大臣又は名古屋出入国在留管理局長は,控訴人らに対し,本邦における在留を特別に許可せよ。

第2
1
事案の概要
L国の国籍を有する外国人である控訴人らは,
出入国管理及び難民認定法
(以
下入管法という。
)所定の退去強制の手続において,入管法所定の退去強制
対象者に該当する旨の認定及びこれに誤りがない旨の判定を受け,法務大臣から権限の委任を受けた名古屋入国管理局長(以下名古屋入管局長という。)
から,平成21年1月13日付けで入管法49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決
(以下,
個別には
控訴人父に係る本件裁決
などといい,

そのうちの複数又は全部を併せて本件各裁決という。
)を受け,引き続き,
名古屋入国管理局(以下名古屋入管という。
)主任審査官から,同日付けで
退去強制令書を発付する旨の処分(以下本件各退令発付処分という。)を受
けたことから,本件各裁決及び本件各退令発付処分の取消しを求める訴え(以下前回訴訟という。
)を提起したが,控訴人らの請求をいずれも棄却する旨

の判決(以下前回判決という。
)が確定した。
本件は,控訴人らが,本件各裁決後に控訴人らに有利な事情が生じたと主張して,行政事件訴訟法(以下行訴法という。
)3条6項1号のいわゆる非申
請型の義務付けの訴えとして,①主位的に,法務大臣又は名古屋出入国在留管理局長に対して在留特別許可の義務付けを求め(以下,この訴えを本件在特義務付けの訴え1という。,②予備的に,名古屋入管局長事務承継者である)
名古屋出入国在留管理局長に対して本件各裁決の撤回の義務付けを求める(以下,この訴えを本件各裁決撤回義務付けの訴えという。
)とともに,法務大
臣又は名古屋出入国在留管理局長に対して在留特別許可の義務付けを求める(以下,この訴えを本件在特義務付けの訴え2という。
)事案である。

原審は,控訴人らの訴えのうち,主位的請求(本件在特義務付けの訴え1)及び予備的請求のうち本件在特義務付けの訴え2に係る部分をいずれも却下し,その余の訴えに係る請求をいずれも棄却したところ,控訴人らが控訴した。2
前提事実,主たる争点及び主たる争点に関する当事者の主張の要旨は,次のとおり補正し,3のとおり控訴人らの当審における補充主張を加えるほかは,原判決の事実及び理由中の第2事案の概要の2ないし4に記載のと
おりであるから,これを引用する。


原判決5頁4行目の乙42を甲1,乙42と改める。



原判決6頁11行目から12行目にかけての口頭審理を審査と改
める。



原判決6頁15行目の平成20年1月24日,の後に控訴人父に対する口頭審理を実施した結果,を加える。


原判決6頁24行目の名古屋入管入国審査官は,平成20年5月9日,を名古屋入管入国審査官は,平成20年4月30日に控訴人母に対し,同年5月9日に控訴人母子に対し,審査を実施した結果,同日,と改める。


原判決12頁25行目の原告長女は16歳,原告二女は14歳であり,を控訴人長女は18歳,控訴人二女は16歳であり,と改める。



原判決12頁26行目から13頁1行目にかけての原告長女及び原告二女は,それぞれ高等学校,中学校に在籍しており,を控訴人長女は大学に,控訴人二女は高等学校にそれぞれ在籍しており,と改める。


原判決13頁7行目から8行目にかけての

いずれも大学への進学を希望している。

控訴人二女も,大学への進学を希望している。

と改める。


原判決13頁17行目から18行目にかけての
現在は11歳であり,を
現在は13歳であり,と改める。



原判決13頁18行目から19行目にかけての原告長男は,小学校に在籍しており,を控訴人長男は,中学校に在籍しており,と改める。

原判決14頁17行目から18行目にかけての原告子らは,未成年者であって自活することは困難であることを控訴人子らは,未成年者であることと改める。3
控訴人らの当審における補充主張


控訴人らの当審における補充主張
児童の最善の利益に重要な位置付けを与えている児童の権利条約は,法務大臣等の裁量を羈束すると解すべきであるところ,抽象的な出入国管理行政
上の利益に控訴人子らの在留に関する利益を劣後させるべきではない。また,ガイドラインは,在留特別許可の許否の判断における方向性を示す趣旨のものにとどまるものではなく,ガイドラインにおける積極要素と消極要素を比較衡量して明らかに積極要素が上回る事案では,ガイドラインに反する判断が比例原則違反として違法となると解すべきであるところ,控訴人
らには特に考慮すべき積極要素が複数あり,消極要素を上回る。
よって,控訴人らについて本件各裁決が撤回され,在留特別許可が認められるべきである。

控訴人父母及び控訴人長男の当審における補充主張
控訴人長男は,現在13歳であり,中学校に在籍し,本邦への定着性が高まっている上,自閉症及び知的障害を有していることから,今後も慣れ親しんだ地域で特別支援教育を受ければ,将来的に軽作業も可能となる見込みであるが,L国に送還されれば,医療と教育の機会を奪われることになる。また,控訴人長男は,令和元年6月23日に意識消失発作を起こし,後に焦点
てんかんとの診断を受けたところ,L国ではてんかん発作に対して適切な医療を受けられない可能性が高く,控訴人長男の生命身体に危険な結果を招来する可能性があるから,控訴人長男に係る本件裁決が撤回され,在留特別許可が認められるべきである。
また,控訴人子らが控訴人父母によって監護養育されることがその福祉に
かない,特に,控訴人長男は入浴中や就寝中にてんかん発作を起こす可能性があり,控訴人父母による常時の見守りが必要であるから,控訴人父母に係る本件各裁決が撤回され,在留特別許可が認められるべきである。⑶

控訴人長女及び控訴人二女の当審における補充主張
控訴人長女は,現在18歳であり,令和3年3月に高等学校を卒業し,同年4月から大学1年生となり,控訴人二女は,現在16歳であり,同月から高等学校2年生となり,いずれも本邦への定着性及び大学に進学する必要性
がさらに高まっている。また,控訴人長女は,一般に両親から独立して生活することもあり得る年齢に達しており,在留特別許可が付与されれば,新たに付与される在留資格の範囲内で一定の就労をして収入を得ることも可能であるし,控訴人二女も,控訴人長女と同居して助け合って生活していくことができ,特定非営利活動法人Aの支援や,本邦に在留する資格のある叔父に
よる生活費の援助を受けることも可能であるから,控訴人父母の監護養育がなくても自立的な社会生活を送ることが可能である。さらに,控訴人長女及び控訴人二女には,本件各裁決後も本邦での滞在を継続したことについての責任がない。よって,控訴人長女及び控訴人二女に係る本件各裁決が撤回され,在留特別許可が認められるべきである。

第3

当裁判所の判断

1
当裁判所は,控訴人らの訴えのうち,主位的請求並びに控訴人父母及び控訴人長男の予備的請求のうち在留特別許可の義務付けを求める部分は不適法であるから却下すべきであり,控訴人父母及び控訴人長男の予備的請求のうちそ
の余の請求は理由がないから棄却すべきであるが,控訴人長女及び控訴人二女の予備的請求はいずれも理由があるから認容すべきであると判断する。その理由は,次のとおり補正し,2のとおり控訴人らの当審における補充主張に対する判断を加えるほかは,原判決の事実及び理由中の第3当裁判所の判断の1ないし5に記載のとおりであるから,これを引用する。⑴

原判決19頁5行目の原告らは,を控訴人父母,控訴人長女及び控訴人二女は,と改め,入管法違反で摘発され,の後に控訴人らは,を加
える。


原判決19頁23行目の

入学した。から25行目末尾までを次のとおり

改める。

入学し,令和3年3月に同高等学校を卒業した。控訴人長女は,同年4月にB大学に入学し,現在,同大学1年生である。控訴人長女は,これまでの就学状況に問題はなく,日本語の会話及び読み書きをすることができる。⑶

原判決19頁26行目の59,の後に丙1,4~6,13,14,19,25,26を加える。


原判決20頁4行目の「入学した。」から7行目の

希望している。

までを次のとおり改める。

入学し,令和2年4月に愛知県立C高等学校に入学した。控訴人二女は,現在,同高等学校2年生であり,これまでの就学状況に問題はなく,日本語の会話及び読み書きをすることができ,日本の大学に進学することを希望している。⑸

原判決20頁8行目の
60,の後に
丙2,7~9,15~17,20,24,を加える。



原判決20頁16行目,17行目及び21行目のD1をいずれもD2と改める。



原判決21頁10行の末尾を改行し,次のとおり加える。

原判決20頁20行目の「25を25,26と改める。

また,同医師は,令和3年3月23日付け診断書において,控訴人長男について,約3か月に1度の診察と言語訓練を行ってきており,今後も定期的な診察等を要すると述べている。
(甲82)




原判決21頁13行目から14行目にかけての

入学しており,現在,小学校5年生である。

を「入学した。」と改める。

原判決22頁4行目の発達状況になく,の後に小学校においては,を加える。

原判決22頁6行目から7行目にかけての

支援している。

支援していた。

と改める。

原判決22頁7行目末尾を改行し,次のとおり加える。

d控訴人長男は,令和2年4月,E中学校に入学し,特別支援学級に在籍し,現在,中学校2年生である。(甲73,74)



原判決22頁13行目末尾を改行し,次のとおり加える。
控訴人長男のてんかんの状況
控訴人長男は,
令和元年6月23日,
涎を多量に出し,
視線が定まらず,
四肢は脱力し,
呼びかけに反応しない状態となり,
F病院に救急搬送され,

てんかん発作の疑いと診断された。その後,同院において,令和2年1月31日に焦点てんかん(BECTS(良性小児てんかん)の疑い)と診断され,全身けいれん発作が30分以上持続するけいれん重積状態になった場合には生命に関わったり脳障害を残したりするおそれがあり,思春期以降も引き続き両親等の監護者による監護が必要であるとされた。また,控
訴人長男は,令和2年4月14日,流涎と四肢の脱力が認められたため,他院に救急搬送された後,F病院を受診したところ,けいれん重積状態ではなく,経過観察とされ,同院において,同年6月16日及び同年9月28日,焦点てんかん(BECTS(良性小児てんかん)の疑い)と診断された。
(甲65~67,75,78,81,83)



原判決22頁17行目の
原告長女及び原告二女は,から19行目から2
0行目にかけての

全く理解することができない。

までを

控訴人子らは,そのベンガル語の単語の意味を理解できる程度で,ベンガル語の読み書きや会話はほとんどできない。

と改める。

原判決22頁20行目の
甲58ないし60,を甲37,58~60,
と改める。

原判決24頁15行目の末尾を改行し,次のとおり加える。

⑹控訴人長女及び控訴人二女の意向控訴人長女及び控訴人二女は,L国での生活は考えられないので,控訴人長女と控訴人二女の二人だけでも本邦に残り,二人で協力して生活していくことを希望している。(丙1,2)⑺控訴人長女及び控訴人二女に対する支援態勢全ての女性の人権の尊重と自立を目指す特定非営利活動法人Aは,控訴人長女及び控訴人二女に対し,高等学校卒業までの生活保護の申請,住居の確保,大学進学の際の奨学金の確保の支援をする意向を示している。また,在留資格を有して本邦に在留している控訴人長女及び控訴人二女の叔父は,控訴人長女及び控訴人二女のみに在留特別許可が認められた場合には,控訴人長女と控訴人二女が経済的に困らないように生活の援助をしていく意向を示している。(丙11,21)⒄
原判決25頁13行目の入管法50条1項を入管法49条1項と
改める。


原判決27頁1行目の現在まで約10年間にもわたりを現在まで約12年間にもわたりと改める。

原判決27頁2行目の原告長女は高等学校1年生に,を控訴人長女は大学1年生に,と改める。

原判決27頁3行目の原告二女は中学校2年生に,を控訴人二女は高等学校2年生に,と改める。原判決27頁4行目の原告長男は小学校5年生になり,を控訴人長男は中学校2年生になり,と改める。原判決27頁7行目のその後,の後に主障害は自閉症及び知的障害であるとされ,を加える。原判決31頁21行目冒頭から32頁16行目末尾までを削除する。原判決32頁17行目冒頭から34頁7行目末尾までを次のとおり改める。ア控訴人長女及び控訴人二女について控訴人長女は,本件各裁決の後,本邦において就学及び順次進学し,現在,大学1年生になっており,これまでの就学状況に問題はなく,日本語の会話及び読み書きをすることができる(前記認定事実⑵ア(補正後)。また,控訴人二女は,本件各裁決の後,本邦において就学及び順)次進学し,現在,高等学校2年生になっており,これまでの就学状況に問題はなく,日本語の会話及び読み書きをすることができ,日本の大学に進学することを希望している(前記認定事実⑵イ(補正後)。)さらに,控訴人長女は,原審における本人尋問においては,L国に帰国する控訴人父母と離れて日本での生活を続けることはできないと供述していたが(尋問調書9,10頁)控訴人長女及び控訴人二女は,,当審においては,L国での生活は考えられないので,控訴人長女と控訴人二女の二人だけでも本邦に残り,二人で協力して生活していくことを希望している(前記認定事実⑹(補正後)。このように,控訴人長女及び控訴人二女は,)本邦において順調に勉学を重ねて成長し,控訴人父母と離れても本邦で暮らしていくことを希望するほど,本邦への定着性が高まっているといえる。そして,控訴人長女及び控訴人二女は,家庭でも日本語を使用し,控訴人父母が話すベンガル語の単語の意味を理解できる程度で,ベンガル語の読み書きや会話はほとんどできない(前記認定事実⑶(補正後)。)しかも,現在,控訴人長女は18歳,控訴人二女は16歳に達しているところ,L国では,義務教育は初等教育の5年間で,初等教育及び中等教育では毎年行われる学年末試験に合格しないと進級できない上,大学入学資格を取得するためには,2度の国家統一試験に合格する必要がある(前記認定事実⑷ア)。そうすると,控訴人長女及び控訴人二女が,本国において,ベンガル語を習得し,生活環境等にも適応した上,本邦に在留していれば修了したものと同等の教育課程を修了するには,相当な困難があるということができるから,控訴人長女及び控訴人二女は,本邦を離れてL国において社会生活を営んでいくことには著しい支障がある状態になっているといえる。そして,控訴人長女は,18歳に達しており,大学1年生になっているから,一般には両親から離れて生活することもあり得る年齢になっている上,控訴人長女に係る本件裁決が撤回され,在留特別許可が付与されれば,新たに付与される在留資格に伴う制約の範囲内で,一定の労働をして収入を得ることも可能であると考えられる。控訴人二女は,16歳に達しており,高等学校在学中であるために自ら収入を得ることはできなくても,自分の身の回りのことは自力でできる年齢に達している上,控訴人長女と協力し合えば,控訴人父母の監護養育なしに生活することも可能であると考えられる。また,控訴人長女及び控訴人二女に対しては,特定非営利活動法人Aが,住居の確保,大学進学の際の奨学金の確保の支援をする意向を示している上,在留資格を有して本邦に在留している控訴人長女及び控訴人二女の叔父が,控訴人長女と控訴人二女が経済的に困らないように生活の援助をしていく意向を示している(前記認定事実⑺(補正後)。)そうすると,控訴人二女において生活保護を受給せずとも,控訴人長女及び控訴人二女が控訴人父母の監護養育なしに本邦において自立的な社会生活を送ることが可能であると考えられる。他方で,前回訴訟において本件各裁決及び本件各退令発付処分はいずれも適法であるとの判断が確定している以上,控訴人長女及び控訴人二女は,本来,本件各裁決後速やかに本国に送還されるべき地位にあり,仮放免も当該地位を前提としつつ一時的にその収容を解くにとどまるものにすぎないのに,控訴人長女及び控訴人二女が本件各裁決後も約12年間違法に本邦に在留したことにより,前記のような本邦への定着性が生じたとも評価し得るところではあり,これを追認することが相当であるかという疑問も生じ得る。しかし,本件各裁決当時,控訴人長女は6歳であり,控訴人二女は4歳であったことからすれば(前記認定事実⑴イ(補正後),控訴人長女)及び控訴人二女が本件各裁決後も本邦での滞在を継続したことは控訴人父母の選択によるものであり,控訴人長女及び控訴人二女に本件各裁決後に本邦への滞在を継続したことについての責任があるとはいえない。以上の諸点を総合すると,控訴人長女及び控訴人二女については,本邦における在留に係る利益の要保護性の程度につき在留特別許可の許否の判断を見直すべき特に顕著な事情の変化があるというべきであって,名古屋出入国在留管理局長が控訴人長女及び控訴人二女に係る本件各裁決を撤回しないことは,社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであり,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものであるというべきである。原判決34頁8行目のウをイと改める。

ていた。
控訴人長男は,
中学校においても,
特別支援学級に在籍している
(前
」と改める。

原判決35頁5行目の11歳を13歳と改める。
原判決36頁7行目末尾を改行して次のとおり加える。
また,控訴人長男は,令和元年6月23日及び令和2年4月14日にてんかん発作様の症状があり,焦点てんかん(BECTS(良性小児てんかん)の疑い)と診断され,全身けいれん発作が30分以上持続するけいれん重積状態になった場合には生命に関わったり脳障害を残したりするおそれがあり,思春期以降も引き続き両親等の監護者による監護が必要であるとされたが,現在まで経過観察が続き,けいれん重積状態になったことも窺えないから,本邦において高度な治療を継続して行わなければ直ちに控訴人長男の生命に危険が及ぶとまでは認められない。原判決36頁8行目の原告長男について,の後に控訴人長女及び控訴人二女同様にを加える。原判決36頁13行目のエをウと改める。
原判決36頁17行目冒頭から20行目末尾までを次のとおり改める。前記アに説示したとおり,控訴人長女及び控訴人二女について,在留特別許可の許否の判断を見直すべき特に顕著な事情の変化があるとして,控訴人長女及び控訴人二女に係る本件各裁決が撤回され,在留特別許可が付与されるべきであるとしても,控訴人長女及び控訴人二女は控訴人父母の監護養育なしに本邦において自立的な社会生活を送ることが可能であると考えられるから,控訴人長女及び控訴人二女の監護養育を理由に控訴人父母に在留特別許可の許否の判断を見直すべき特に顕著な事情の変化があるとはいえないし,前記イに説示したとおり,控訴人長男についてはそもそも在留特別許可の許否の判断を見直すべき特に顕著な事情の変化があるとはいえないから,控訴人長男の監護養育を理由に控訴人父母に在留特別許可の許否の判断を見直すべき特に顕著な事情の変化があるともいえない。原判決36頁23行目冒頭から37頁1行目末尾までを次のとおり改め
る。
エまとめ以上によれば,名古屋出入国在留管理局長が控訴人長女及び控訴人二女に係る本件各裁決を撤回しないことは,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものであるというべきであるから,控訴人長女及び控訴人二女に係る本件各裁決撤回義務付けの訴えに係る請求は,いずれも理由がある。他方,名古屋出入国在留管理局長が控訴人父母及び控訴人長男に係る本件各裁決を撤回しないことが裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものであるとは認められないから,控訴人父母及び控訴人長男に係る本件各裁決撤回義務付けの訴えに係る請求は,本案要件(行訴法37条の2第5項)を満たしておらず,いずれも理由がないものというべきである。
原判決37頁2行目の本件在特義務付けの訴え2の適法性についてを本件在特義務付けの訴え2についてと改める。
原判決37頁10行目冒頭から15行目末尾までを次のとおり改める。本件においては,前記4⑵ア及びエ(いずれも補正後)のとおり,控訴人長女及び控訴人二女に係る本件各裁決撤回義務付けの訴えに係る請求はいずれも理由があり,控訴人長女及び控訴人二女に係る本件各裁決が撤回される以上,法務大臣は在留特別許可をする法令上の権限を有するところ,法務大臣において在留特別許可を付与しないことについても,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものであるというべきであるから,控訴人長女及び控訴人二女に係る本件在特義務付けの訴え2に係る請求はいずれも理由がある。他方,前記4⑵イないしエ(いずれも補正後)のとおり,控訴人父母及び控訴人長男に係る本件各裁決撤回義務付けの訴えに係る請求はいずれも理由がないから,控訴人父母及び控訴人長男に係る本件各裁決の効力が存続している以上,法務大臣等は,控訴人父母及び控訴人長男に対し,在留特別許可をする法令上の権限を有しないものというべきである。したがって,控訴人父母及び控訴人長男に係る本件在特義務付けの訴え2は,法務大臣等が在留特別許可をする法令上の権限を有しないにもかかわらず,その処分の義務付けを求めるものであるから,その余の点につき判断するまでもなく,不適法である。
2
控訴人らの当審における補充主張に対する判断


控訴人らの当審における補充主張について

控訴人らは,児童の最善の利益に重要な位置付けを与えている児童の権利条約は,法務大臣等の裁量を羈束すると解すべきであるところ,抽象的な出入国管理行政上の利益に控訴人子らの在留に関する利益を劣後させるべきではないと主張する。

おり,児童の権利条約の規定が当初裁決を撤回するか否かの判断に関する法務大臣等の裁量権を具体的に羈束するものではないというべきであるから,控訴人らの上記主張は採用できない。

控訴人らは,ガイドラインは,在留特別許可の許否の判断における方向性を示す趣旨のものにとどまるものではなく,ガイドラインにおける積極要素と消極要素を比較衡量して明らかに積極要素が上回る事案では,ガイドラインに反する判断が比例原則違反として違法となると解すべきであるところ,控訴人らには特に考慮すべき積極要素が複数あり,消極要素を上回ると主張する。

おり,ガイドラインは,その内容や文言,性質等に照らすと,在留特別許可の許否の判断における法務大臣等の裁量権を前提とした上で,在留特別許可の許否の判断において積極要素又は消極要素として考慮される事項を類型化して例示的に示すとともに,積極要素及び消極要素の基本的な検討
の方向性を示す趣旨のものにとどまると解され,当初裁決を撤回するか否かの判断に関する法務大臣等の裁量権を拘束する趣旨を含むものではないと解するのが相当であるから,控訴人らの上記主張は採用できない。⑵
控訴人父母及び控訴人長男の当審における補充主張について

控訴人父母及び控訴人長男は,控訴人長男は現在13歳であり,中学校に在籍し,本邦への定着性が高まっている上,自閉症及び知的障害を有していることから,今後も慣れ親しんだ地域で特別支援教育を受ければ,将来的に軽作業も可能となる見込みであるが,L国に送還されれば,医療と教育の機会を奪われることになる上,令和元年6月23日に意識消失発作を起こし,後に焦点てんかんとの診断を受けたところ,L国ではてんかん発作に対して適切な医療を受けられない可能性が高く,控訴人長男の生命
身体に危険な結果を招来する可能性があるから,控訴人長男に係る本件裁決が撤回され,在留特別許可が認められるべきであると主張する。しかし,引用に係る原判決の事実及び理由中の第3の2,4⑵イ及び5(いずれも補正後)のとおり,本件在特義務付けの訴え1は不適法であり,控訴人長男が控訴人父母の監護養育なしに生活することができない
以上,控訴人父母とともに生活することがその福祉にかなうといえることや,控訴人長男の障害やてんかんが本邦において高度な治療を継続して行わなければ直ちにその生命に危険が及ぶようなものではないことなどからすると,控訴人長男について在留特別許可の許否の判断を見直すべき特に顕著な事情の変化があるとはいえないから,控訴人長男に係る本件裁決を
撤回しないことが裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものとはいえず,そうである以上,控訴人長男に係る本件在特義務付けの訴え2も不適法であるから,控訴人父母及び控訴人長男の上記主張は採用できない。イ
控訴人父母及び控訴人長男は,控訴人子らが控訴人父母によって監護養育されることがその福祉にかない,特に,控訴人長男は入浴中や就寝中にてんかん発作を起こす可能性があり,控訴人父母による常時の見守りが必要であるから,控訴人父母に係る本件各裁決が撤回され,在留特別許可が認められるべきであると主張する。
しかし,引用に係る原判決の事実及び理由中の第3の2(補正後)
のとおり,本件在特義務付けの訴え1は不適法である。
また,前回訴訟において本件各裁決及び本件各退令発付処分はいずれも適法であるとの判断が確定している以上,控訴人父母は,本来,本件各裁決後速やかに本国に送還されるべき地位にあり,仮放免も当該地位を前提としつつ一時的にその収容を解くにとどまるものにすぎないのに,控訴人父母がその責任において約12年間違法に本邦に在留したことをもって特に顕著な事情の変化と認めることは相当でない上,
引用に係る原判決の
事実及び理由中の第3の4⑵ウ(補正後)及び5(補正後)のとおり,控訴人長女及び控訴人二女は控訴人父母の監護養育なしに本邦において自立的な社会生活を送ることが可能であると考えられるから,控訴人長女及び控訴人二女の監護養育を理由に控訴人父母に在留特別許可の許否の判断を見直すべき特に顕著な事情の変化があるとはいえないし,控訴人長男につ
いてはそもそも在留特別許可の許否の判断を見直すべき特に顕著な事情の変化があるとはいえないから,控訴人長男の監護養育を理由に控訴人父母に在留特別許可の許否の判断を見直すべき特に顕著な事情の変化があるともいえないため,控訴人父母に係る本件各裁決を撤回しないことが裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものとはいえず,そうである以上,
控訴人父母に係る本件在特義務付けの訴え2も不適法であるから,控訴人父母及び控訴人長男の上記主張は採用できない。
第4

結論
以上のとおり,控訴人長女及び控訴人二女の本件控訴はいずれも一部理由が
あり,控訴人父母及び控訴人長男の本件控訴はいずれも理由がないから,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第1部

裁判長裁判官
倉田慎也
裁判官

永山倫代
裁判官

溝口理佳
トップに戻る

saiban.in