判例検索β > 令和2年(行コ)第1号
各原爆症認定申請却下処分取消等請求控訴事件
事件番号令和2(行コ)1
事件名各原爆症認定申請却下処分取消等請求控訴事件
裁判年月日令和3年5月13日
裁判所名・部大阪高等裁判所  第12民事部
結果その他
原審裁判所名大阪地方裁判所
原審事件番号平成25(行ウ)1
裁判日:西暦2021-05-13
情報公開日2021-08-03 18:00:54
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主文1
原判決中控訴人関係部分を次のとおり変更する。

2
厚生労働大臣が平成23年10月28日付けで控訴人に対してした原子爆弾被爆者に対する擁護に関する法律11条1項に基づく認定の申請を却下する旨の処分を取り消す。

3
控訴人のその余の請求を棄却する。

4
訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを2分し,それぞれを各自の負担とする。
事実及び理由

第1

控訴の趣旨

1
主文1項,2項と同旨

2
被控訴人は,控訴人に対し,300万円及びこれに対する平成25年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2
1
事案の概要等
本件は,原子爆弾被爆者に対する擁護に関する法律(平成6年法律第117号。以下法という。)1条に規定する被爆者(以下,単に被爆者という。)である控訴人が,法11条1項に基づく認定(以下原爆症認定という。)の申請(本件α申請)をしたところ,厚生労働大臣から本件α申請を却下する旨の処分(本件α却下処分)を受けたことから,控訴人が,被控訴人に
対し,①本件α却下処分の取消しを求めるとともに,②(a)厚生労働大臣が,本件α申請について原爆症認定の要件を充足していたにもかかわらず,本件α却下処分をしたこと及び(b)厚生労働大臣が,本件α申請に対する審査を合理的な期間を優に超えて行わなかったことは違法である旨主張して,国家賠償法(以下国賠法という。)1条1項に基づき,それらの不法行為によって生
じた損害(慰謝料及び弁護士費用)合計300万円及びこれに対する不法行為後の日である平成25年1月31日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで
民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したため,これらを不服として控訴人が控訴した。
当裁判所は,控訴人の請求のうち本件α却下処分の取消しを求める部分は理
由があるからこれを認容すべきであるが,国賠法1条1項に基づく請求は理由がないからこれを棄却すべきであると判断する。
なお,原審では,併合審理された大阪地方裁判所平成25年(行ウ)第1号事件の原告であるβが,被控訴人に対し,国賠法1条1項に基づき,不法行為によって生じた損害300万円及びこれに対する不法行為後の日から上記同旨
の遅延損害金の支払を求めたが,
原審はその請求を棄却し,
同人が控訴しなかっ
たため,同部分は当審において審判の対象とならない。
2
関係法令等の定めは,
原判決の
事実及び理由第2章のの「第1事案の概要等

関係法令等の定め」(原判決2頁18行目~7頁7行目)に記載の
とおりであるから,これを引用する。

3
前提事実は,次のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由の第2章事案の概要等の第2前提事実(原判決7頁8行目~10頁13
行目)に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,βのみに関する部分を除く。以下同じ。)。


4
原判決8頁26行目の物質透過中を物質通過中に改める。



原判決9頁15行目から16行目にかけての
傷害障害

に改める。
争点及びこれに関する当事者の主張の要旨は,次のとおり補正し,後記5の
とおり当審における原爆症認定要件該当性(争点2)に関する当事者の補充主張を付加するほかは,原判決の事実及び理由の第2章の「第3事案の概要等
争点及びこれに関する当事者の主張の要旨」(別紙2ないし4を含
む。原判決10頁14行目~同頁22行目,70頁~93頁)に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,本件各申請とあるのを本件α申請に,本件各却下処分とあるのを本件α却下処分に,原告らとあるのを控訴人にそれぞれ読み替える。以下同じ。)。


原判決72頁25行目から26行目にかけての広島原爆傷害対策協議会健康管理・増進センターを広島原爆障害対策協議会健康管理・増進センターに改める。⑵

原判決77頁10行目のICRP2012年(平成24年)勧告(乙A523)においても,の次に清水論文などの記載も取り上げた上でを加える。



原判決80頁22行目から23行目にかけての佐々木英夫ら「原爆被爆者の血圧に対する加齢および放射線被曝の影響(」の次に以下「佐々木論文という。」を加える。


原判決81頁1行目から3行目にかけてのF.LennieWongらの「原爆被爆者の血清総コレステロール値の経時的変化における放射線の影響(」の次に以下「Wong論文という。」を加える。



原判決81頁22行目の

更新している可能性が示唆されている。を

亢進している可能性を示唆している。

に改める。
5
当審における当事者の補充主張(控訴人に係る原爆症認定要件該当性について)



控訴人の主張

次の報告等に照らせば,好中球機能低下は放射線に起因する健康被害の一つとして国際的に認められているというべきである。
UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)2006年報告書第2巻の科学的附属書D(乙A578)は,原爆被爆者の免
疫系への影響について詳しく明らかにし,チェルノブイリ原発事故の除染労働者と汚染地区の住民の免疫系への影響について述べているほか,テチャ川流域の住民については被曝により免疫系への影響が発生しており,顆粒球系(好中球系と同じ意味)の機能障害が長期にわたって起きていることなどを指摘している。
ICRP(国際放射線防護委員会)2012年報告書(ICRP
ublication

P
118)正常な組織・臓器における放射線の早期影響と晩発影響-放射線防護の視点から見た組織反応のしきい線量-(以下ICRP報告118という。甲C12,乙A579)は,
内部被曝等により累積放射線量が増えれば一度に高線量の放射線を浴びなくても免疫系へ影響を与え得ることや,高線量での慢性全身照射によって免疫抑制が引き起こされることが被曝後長期間観察されることを
指摘しているほか,テチャ川沿岸の住民については,骨髄線量が0.3~0.
4Gy/年を上回り始めてから数年後に血中好中球の貪食能低下,循環NK
(ナチュラルキラー)
細胞数の減少や,
唾液中のリゾチーム
(細
菌が人体への侵入を防ぐ働きをする酵素)
含有量の減少が認められ,
チェ
ルノブイリ原発事故後の汚染地域住民については,NK(ナチュラルキ
ラー)細胞の減少,原発事故の除染労働者については好中球IFNの生成減少とC3補体の成分レベルの減少が認められたことを明らかにしている。
1957年マヤーク核技術施設での放射線事故『キシュテム事故』の後遺症(甲C13)は,核燃料冷却故障によるキシュテム事故に関
し,急性期症状が陰性であるにもかかわらず,その後の白血球貪食能の低下が認められたことや,
爆発事故の周辺住民に対する医学検査の結果,
血小板数,白血球数,好中球数は被曝群で非被曝群に比べて低下していたこと等を示している。

そして,次のとおりの控訴人の被爆後の症状等を考慮すれば,控訴人には好中球等の機能低下が認められるから,健康被害に影響を及ぼす相当量の放射線被曝があったというべきである。
すなわち,γ医師作成の意見書(甲C7,15)は,①控訴人は被爆前(4歳当時)までは健康状態に特段問題がなかったこと,②控訴人は26歳ないし27歳頃に結膜炎が重症化して眼球
(右眼)
を摘出されたところ,
若年者についてこのような経緯をたどることは稀であることからすれば,
上記の結果は,感染性の結膜炎のうち,最も原因が多い黄色ブドウ状球菌に対する抵抗力(好中球機能ないしマクロファージの機能)が著明に低下したことが原因と考えられること,③幼少期から予防接種の度に骨が見える程に皮膚が化膿したとの控訴人の症状は予防接種の副反応としてほとんど報告がないこと等に照らせば,かかる症状も,細菌感染に対する抵抗
力の著明な低下に起因するとしている。
そうすると,上記アの報告等に示された知見を併せて考慮すれば,控訴人に生じた上記の各症状は被爆による好中球等の機能低下に起因しているといえるから,このような控訴人の被爆後の症状や入市の状況を踏まえると,控訴人には健康被害に影響を及ぼす相当量の放射線被曝があったと
いうべきである。

疾病の発症には通常複数の要因が複合的に関与するものであるから,控訴人の申請疾病である心筋梗塞についても,放射線被曝が唯一無二の要因である必要はなく,申請者に危険因子が存在する場合は,他の危険因子と
相まって当該被爆者の申請疾病の発症を促進したといえるときには放射線起因性が認められるべきである。
控訴人には心筋梗塞の危険因子である脂質異常症及び高血圧症が認められるものの,①控訴人が平成3年又は4年に高血圧症と診断されて入院した事実や,平成9年頃に高血圧症の治療のために入院した事実はないこと,
②心筋梗塞発症当時,血圧の数値は抑制されていたこと,③脂質異常症及び高血圧症と放射線被曝との関連性が認められるところ,控訴人には健康被害に影響を及ぼす相当量の放射線被曝があったことからすれば,上記各症状が放射線被曝とは関係のない独立した要因であるとはいえないことに照らせば,脂質異常症及び高血圧症が認められるからといって,放射線起因性が否定されるべきではない。


被控訴人の主張

好中球機能低下が放射線起因性健康被害の一つとして国際的に認められる根拠として控訴人が主張する次の各報告等は,いずれも控訴人が好中球機能低下を来したことの根拠となるものではない。
UNSCEAR2006年報告書第2巻の科学的附属書Dについて
同附属書は,著者らは作業者には,免疫疾患の臨床的徴候は全くなかったと述べている。自然免疫及び獲得免疫応答いずれを評価する上でも,選んだ指標が不適切であるように思われる。これらのデータの生物学的意味については容易には見つけられず,従ってこれらの結果については結論を出すことができない。としており,報告書の本体が放射線
被曝による免疫系への影響を示しているとはいえない。また,テチャ川の事例は,テチャ川沿岸の住民が原子力施設から河川に排出された放射性物質を飲料水や食物連鎖を通じて長期にわたり摂取し続けた慢性被曝の事例であり,かかる調査結果から慢性被曝による免疫系への影響が示唆されるとしても,直ちに原爆による放射線被曝の場合も同様であると
考えることはできない。
ICRP報告118について
同報告は,長期にわたる慢性的な放射線被曝による免疫応答への影響について記載したものにすぎず,慢性被曝において前提とされている放射被曝の態様や期間は,原爆による放射線被曝とは異なる。また,全身
に高線量を慢性被曝した後,長期間経過後に免疫応答の抑制が観察されることもあるとの同報告の記載は,全身に高線量を被曝していない控訴人には当てはまらない。
1957年のキシュテム事故に関する報告について
同報告が,放射線被曝により一時的に好中球数が低下したとしても,被曝後1,2年で好中球数が回復することを示唆していること等からすれば,原爆投下から20年余りが経過した昭和43年頃に罹患した結膜
炎の経過を根拠に控訴人が被曝により好中球機能不全に陥ったとはいえない。

控訴人の被爆後の症状等を検討するに,①一般に,結膜炎は,感染性のものとアレルギー性のものに大別され,感染性のものは更に細菌性のものとウイルス性のものに分類され,ウイルス性結膜疾患の主たるものがアデ
ノウイルスによる流行性角結膜炎であるところ,30年前,流行性結膜炎悪化にて右眼ope義眼(甲C14),23才流行性結膜炎・・・右眼義眼(乙C11)との入院診療録や看護記録の記載に照らせば,控訴人が罹患した結膜炎は細菌性ではなくウイルス性の流行性結膜炎であったといえるから,控訴人が細菌である黄色ブドウ状球菌に対する抵抗
力(好中球機能)が著明に低下したことはない,②予防接種後の副反応に関しても,化膿の態様がひどくなった時期やその程度のほか,化膿の原因となった怪我の状態や経緯等の詳細は具体的に明らかではない,③被爆前の健康状態については,2~3才(甲C14),「2才両下肢に注射したため化膿してop
両大腿(筋肉)の炎症にてope」(乙C11)との

入院診療録や看護記録の記載に照らせば,控訴人は被爆した4歳1か月より前から化膿しやすい体質であったことがうかがえるから,被爆前の健康状態に問題がなかったことを前提とする控訴人の主張には理由がない。以上のとおり,控訴人が被爆後に好中球機能が低下したことを前提とする控訴人の主張は理由がない。

第3

当裁判所の判断
1
争点1(放射線起因性の判断基準)について
次のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由の第3章所の判断の第1当裁判争点1(放射線起因性の判断基準)について(原判決
10頁24行目~36頁21行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。


原判決11頁20行目の不認定処分の取り消しを不認定処分の取消しに改める。


原判決30頁4行目の90%信頼区間は0.06~0.20を90%信頼区間は-0.06~0.20に改める。


原判決30頁9行目の

指摘している。

指摘しているほか,このような影響に関する機序が解明されていないからといって,機序が存在しないという意味ではないと考えているとしている。

に改める。


原判決31頁25行目末尾に,改行して次のとおり加える。
佐々木論文は,昭和33年から2年ごとにされたAHS集団における血
圧の測定結果を解析した結果,収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP)の横断的変化のいずれにも,小さいが統計的に有意な電離放射線の影響が認められたこと,この現象は電離放射線が血管の変性に影響を与えることを示唆しているとしている。
Wong論文は,昭和35年から同61年のAHS集団のデータに基づき,
原爆被爆者の血清総コレステロール値(TC値)の経時的変化に関する放射線の影響について研究したところ,被爆者群は非被爆者群に比べて高値を示し,被爆者群と非被爆者群の平均的成長曲線には統計的に有意な差があったこと,被爆に伴うコレステロール値の上昇は被爆者にみられる冠動脈性心疾患の増加について部分的に説明していることなどとしている。
1999年(平成11年)のLSS第12報(放影研の清水由紀子らによるがん以外の死亡率:1950-1990年(甲A502))は,昭和25年から平成2年までの原爆被爆者のがん以外の疾患による死亡者について解析を行ったところ,放射線量との統計的に有意な関係は,がん以外の複数の疾病(心臓病,脳卒中,消化器疾患,呼吸器疾患及び造血器系疾患)に見られること,低線量,例えば約0.5シーベルトにおいてどの程度の関連性があるかはいまだ不明だが,高い線量域に達しなければ
影響がないとはいえないこと,はっきりした線量反応関係が爆心地から900mから1200mの地点で被爆した対象者にもみられるので,上記の関連性を偏りや交絡因子によるものとは説明できず,寿命調査(LSS)で得られた線量と死亡率との関連性を解析してもこの結論は裏付けられること,放影研臨床追跡調査の対象者において,心筋梗塞,脳梗塞,アテ
ローム性動脈硬化症及び高血圧症の発症との間に有意な線量反応関係が観察されていること,このような影響に関する機序が解明されていないからといって,機序が存在しないという意味ではないと考えていることなどとされていた。」


原判決3



」に改める。

原判決35頁2行目及び9行目の各
カテゴリ
をいずれも
カテゴリー
に改める。



原判決35頁24行目から25行目にかけての清水論文などの最近の研究結果等も踏まえた上で,を削る。


原判決36頁1行目から2行目にかけてのICRP2012年(平成24年)勧告(乙A523)においても,の次に清水論文などの最近の研究結果等も踏まえた上で,を加える。
2
争点2(控訴人に係る原爆症認定要件該当性について)


認定事実及びその補足説明
次のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由の第3章判所の判断の第2当裁争点2(原告αに係る原爆症認定要件該当性)についての1認定事実及び2事実認定の補足説明(原判決36頁
23行目~44頁4行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。ア
原判決37頁14行目の行くことから,の次に母と別れて,を,
同頁19行目の末尾に

なお,自宅跡から三菱造船船型試験場に行くには,爆心地の近くを通るのが最短距離となる。

をそれぞれ加える。

原判決38頁4行目の
結膜炎として治療を受けていたが,の次に
眼球を摘出するに至り,を加える。


原判決38頁9行目冒頭から11行目の「入院した。」までを次のとおり改める。

オ控訴人は,平成3年又は平成4年(当時49歳ないし51歳)の時には高血圧症と診断されて投薬治療を受けたほか,平成6年から平成7年(当時52歳ないし54歳)にかけての頃に,急性腰痛症を理由に約1か月間入院した際に高血圧症と診断されて投薬治療を受けた。

原判決38頁20行目の(甲C1,の次に14,を加える。


原判決40頁12行目末尾に,改行して次のとおり加える。

⑷免疫機能と放射性被曝との関連性について好中球を含む免疫機能の低下と放射性被曝との関連性につき次の知見等があることが認められる。アUNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)2006年報告書第2巻の科学的附属書D(乙A578)は,次のとおり報告している。職場でトリチウムに被曝した作業者54名を対象に,低線量又は低線量率のトリチウム被曝による白血球亜集団の総数と割合を調査したところ,白血球総数は対照群と比べて違わなかったが,リンパ球及び好酸球数は放射線作業者の方が多かった,白血球の機能状態に関してはアルカリホスファターゼ及びミエロペルオキシダーゼ活性は被曝した作業者で低かった。チェルノブイリの原発事故の作業者のうち,急性放射線症候群(ARS)を発症しなかった作業者で総外部被曝線量が0.1-0.5Gyであった第一集団と,ARSから回復した作業者で総外部被曝線量0.5-9Gyであった第二集団について事故後5年目にT細胞亜分画の障害を評価したところ,CD3陽性T細胞の割合と絶対数の低下が両グループ共に観察されたほか,CD8陽性T細胞の割合と絶対数の低下は前者のみで観察され,CD4陽性T細胞の割合と絶対数の低下は後者の特に大量に被曝した人々でのみ明白であった。テチャ川流域村の住民については,①マヤック原子力施設から放出された高レベル及び中レベルの核分裂生成物による外部ガンマ線に被曝し,飲料水と食物連鎖を通じて短寿命と長寿命の核分裂生成物を摂取して内部汚染による曝露をした,②免疫系の早期影響には,白血球減少症,好中球減少症,自然免疫の抑制及び自己免疫異常などが含まれる,③免疫系の長期的影響には,細胞性免疫障害とNK細胞の低下が含まれる,④上記住民には長期間にわたり顆粒球の成熟と分化の遅延が観察されており,被曝が開始してから約30年間にわたり白血球減少症と好中球減少症が続いた,⑤取り込まれた長寿命放射性核種による連続被曝がこの長期に持続する影響の原因であるかもしれない。イICRP報告118(甲C12,乙A579)は,次のとおり報告している。免疫系に対する放射線の影響に関する詳細な解説は上記アによって刊行されている。放射線被曝における免疫反応の様々な変化は,総線量と被曝の均一性,線量率,被曝後の期間及び患者の年齢による違いを反映しているかもしれない。ただし,放射線が誘発する免疫の変化は総線量に大きく依存し,線量率にはそれほど依存しないことを示唆するデータが存在する。免疫応答の抑制は,高線量を全身に慢性被曝した後で起こるが,照射後,長期間経過後に免疫応答の抑制が観察されることもあるし,局所的な照射が体系的な免疫応答の抑制を引き起こすこともある。テチャ川沿岸の村落の住民には骨髄線量が年間0.3~0.4Gyを上回り始めてから数年後に血中好中球の食細胞活性の抑制,循環するナチュラルキラー細胞数の減少及び唾液内のリゾチーム含有量の減少が見られた。C3及びC4補体の成分レベルの減少は年間0.0035Sv以下の線量率で5年以上の期間にわたって被曝した放射線医療従事者の間でも観察された。チェルノブイリ原子力発電所の事故から8年後,汚染された地域の住民ではナチュラルキラー細胞の低下が見られ,0.1~3Svの線量に被曝した除染作業従事者では,白血球性のインターフェロンの合成と補体のC3成分が線量に依存して減少する症状が進行した。ウ「1957年マヤーク核技術施設での放射線事故『キシュテム事故』の後遺症(甲C13)は,マヤック生産工場での放射線事故の周辺住民に対する調査の結果,急性放射線障害が残った者は一人もいなかったものの,被曝群の血小板数,白血球数,好中球数は非被曝群のそれより低下していたことが把握されたほか,何人かはリンパ球の絶
対数が低下していた。棒状白血球比率の増加が末梢血細胞分類で記録され,放射線に対する造血反応と認められた症例もあった。」

原判決40頁18行目の証拠(甲C1,4,原告本人)を証拠(甲C1,4,控訴人本人[原審])に改める。

原判決41頁13行目から14行目にかけての被爆者健康手帳交付台帳(乙C5)の記載のとおりを被爆者健康手帳交付台帳(乙C5)に記載のとおりに改める。

原判決41頁15行目のδ町○丁目をδ「○丁目」に改める。


原判決42頁9行目から10行目にかけての○丁目(23.1.11長崎市に○○)を○丁目(23.1.11.長崎市に○○)に改める。


原判決42頁18行目の前記台帳に,から同頁22行目末尾までを次のとおり改める。
前記台帳の「被爆地・入市場所欄にδ町3丁目と記載されたこと
のみを根拠に,控訴人が昭和20年8月12日~13日に爆心地から1.4㎞以内の場所に立ち入っていないということはできない。」



控訴人の放射線被曝の程度について
次のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由の第3章判所の判断の第2いての3当裁争点2(原告αに係る原爆症認定要件該当性)につ放射線起因性についての⑴原告αの放射線被曝の程度について(原判決44頁6行目~48頁3行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決45頁24行目から25行目にかけての結膜炎として治療を受けていたが,の次に眼球摘出を受けてを加える。

原判決46頁6行目冒頭から48頁3行目末尾までを次のとおり改める。そこで検討すると,前記認定事実⑶アのとおり,控訴人は,入市後にすり傷程度の怪我で化膿したほか,予防接種を受けるたびに化膿し,酷い場合にはその化膿が骨まで見えるほどに至っていたことが認められるところ,証拠(甲C7,9,11,15,乙C31)及び弁論の全趣旨によれば,①食細胞である好中球等は,細菌が体内の組織に進入したときは,進入部位に向かって遊走して細胞外で増殖する細菌を貪食して酵素により殺菌することにより免疫機能を発揮すること,②好中球の数が減少する場合はもちろん,好中球自体の接着能,遊走能,貪食能又は殺菌能のいずれかが低下すれば,細菌を殺傷する免疫機能が低下すること,③化膿は,細菌を貪食する過程で死骸となった好中球や好中球の死骸から放出された酵素により組織融解などが肉眼的に認められる所見であることが認められる。これらの事実によれば,好中球の数が減少するか,その機能が低下したときは,細菌を殺傷する免疫機能が低下して,細菌による感染症を発症しやすくなるほか重篤化しやすくなること,好中球の機能が低下すれば,細菌を貪食する過程で死骸となる可能性が高くなり,化膿が進みやすくなることが認められる。こうしたことに,予防接種後に骨が見えるほどに化膿が進んで重篤化する症例はほとんど報告がないこと(甲C9)を併せて考えれば,予防接種後に生じた化膿が骨の見えるほどに重篤化したとの控訴人の症状は,好中球等の機能が著しく低下したことが原因になっていることが推認される。また,前記認定事実⑶ウのとおり,控訴人は26歳又は27歳当時,結膜炎の治療を受けていた右眼を摘出され,義眼となっているところ,証拠(甲C7,8,15,乙C33)及び弁論の全趣旨によれば,①眼科治療においては,できる限り眼球を温存し,眼球摘出は可能な限り避けるべきものとされ,眼球温存が困難と考えられる悪性腫瘍が原因疾患である場合や外傷により眼球が破壊された場合などに限って眼球摘出術の適応となるとされていること,②結膜炎は,結膜に細菌,ウイルス,花粉などの抗原が接触して炎症反応を生ずる疾患であること,③免疫機能が低下していないとされる20代の若さで外傷を伴わない結膜炎が眼球摘出を要するほどに重篤化することは稀であるとされていることが認められる。こうしたことに,前記認定のとおりの好中球の機能に照らせば,好中球等の機能が著明に低下している控訴人の右眼の結膜に細菌が進入したことが原因になって右眼を温存することができないほどに結膜炎が悪化したものと考えても矛盾がないものと考えられる。そして,前記認定事実⑵のとおり,控訴人が原爆投下から100時間以内に爆心地から約1.1~1.2㎞の地点に入って2日間滞在したり,同地点の公園内で一夜を過ごしたほか,公園内の水を飲み,野いちごを食べたりしていたことからすれば,残留放射線による外部被曝のみならず,空気中に浮遊する土地埃や水中内等に含まれる放射性物質を吸引することにより相当の内部被曝をした可能性があること,予防接種による副反応の重篤化や結膜炎による眼球摘出は控訴人の幼少期から20代にかけて生じたものであり,老化による免疫機能の低下によるものとは考え難いこと,控訴人が被爆した4歳1か月よりも前に免疫不全に陥っていたことをうかがわせる事情やこれを認めるに足りる的確な証拠もないこと,その機序は必ずしも明確にされていないが,放射線被曝が長期にわたり好中球等の機能低下を引き起こすことを示唆する複数の報告が存在すること(前記認定事実⑷アないしウ(当審補正部分))に,被曝による好中球等の機能低下により免疫不全に陥ったこと以外に通常は生じることのない重篤な症状が控訴人に繰り返し生じた原因が見当たらないことも併せて考慮すれば,控訴人の上記の各症状は,放射線被曝の影響により抵抗力(好中球機能)が低下したことにより生じたものと推認することができるというべきである。このような控訴人の被爆後の健康状態に,上記で説示した控訴人の入市の状況も考慮すれば,控訴人は,誘導放射化物質及び放射性降下物から発せられる放射線による外部被曝及び内部被曝により健康に影響を及ぼす程度の放射線被曝を受けたというべきである。⑶

申請疾病(心筋梗塞)の危険因子について
次のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由の第3章判所の判断の第2て)の3当裁争点2(原告αに係る原爆症認定要件該当性につい放射線起因性についての⑵本件α申請に係る申請疾病(心筋梗塞)の危険因子について(原判決48頁4行目~56頁16行目)
に記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決48頁19行目の二次線量の次に反応関係を加える。


原判決50頁3行目のTC値をTC値(総コレステロール値)
に改める。


原判決50頁22行目及び51頁12行目の各急激にをいずれも削る。


原判決51頁16行目末尾に,改行して次のとおり加える。
もっとも,心筋梗塞や動脈硬化の危険因子である脂質異常症と放射線被曝との関連性を報告する知見も複数存在していること(前記第1の3⑵ア,(当審補正部分を含む。))からすれば,控訴人の脂質異常症について放射線被曝が寄与している可能性を否定することはできない。オ
原判決52頁14行目の心血管死亡ハザード比を心血管病死亡ハザード比に改める。

原判決53頁4行目から6行目にかけての原告αは,その約6~7年前の平成3年又は4年には,高血圧症と診断されて入院までしており(前記認定事実⑶オ)を次のとおり改める。控訴人は,その約6~7年前の平成3年又は平成4年には,高血圧症と診断されて入院したほか,その約3~4年前の平成6年から平成7年には,急性腰痛症を理由に入院した際に,高血圧症と診断されて投薬治療を受けており(前記認定事実⑶オ(当審補正部分を含む。))キ
原判決53頁9行目末尾に,改行して次のとおり加える。
もっとも,心筋梗塞や動脈硬化の危険因子である高血圧症と放射線被曝との関連性を報告する知見も複数存在していること(前記第1の3⑵ア(当審補正部分を含む。))からすれば,控訴人の高血圧症について放射線被曝が寄与している可能性を否定することはできない。



原判決53頁26行目から56頁16行目までを削る。
原爆症認定要件該当性について


原判決の引用に係る前記関係法令等の定めの4⑴及び第3の1で説示したとおり,疾病の発症に関する放射線起因性については,放射線と疾病の発症との間に通常の因果関係があることが要件とされていると解するの
が相当であるところ,疾病の発症においては,一般に,複数の要素が複合的に関与するものであるから,他の疾病要因が認められたとしても,原爆の放射線によって当該疾病の発症が促進されたと認められる場合には,放射線の影響がなくても当該疾病が発症していたといえるような特段の事情がなければ,放射線起因性が否定されることはなく,放射線起因性を肯
定するのが相当というべきである。

そして,これを控訴人について検討するに,前記⑴で説示した控訴人の入市の状況や入市後の控訴人の健康状態等に照らせば,控訴人は健康に影響を及ぼす程度の線量の被曝をしたと認めるのが相当であること,控訴人
は被爆当時4歳1か月と放射線被曝による影響を受けやすい年齢であったこと,控訴人の申請疾病は放射線被曝との関連性が認められるとされている心筋梗塞であることからすれば,放射線被曝によって当該疾病の発症が促進されたことが認められる。控訴人が健康に影響を及ぼす程度の線量の被曝をしたと認められる以上,その放射線被曝量が具体的・定量的に認
定できないことによって,上記認定が妨げられるものではない。
他方,控訴人は心筋梗塞の診断当時,心筋梗塞の好発年齢とされる45歳を超える56歳であったこと,脂質異常症及び高血圧症の程度が高いといった危険因子が複数認められることからすれば,これらの危険因子が相乗的に心筋梗塞発症の危険性を高めたこと自体は否定し難いものの,加齢については65歳以上の高齢者には至っていない年齢であること,脂質異常症及び高血圧症については,原判決の引用に係る前記第3章の第1の3
⑵ア

(当審補正部分を含む。)において認定したとお

り,放射線被曝との関連性を肯定する報告がいずれも複数存在していることに,放射線被曝による影響を受けやすい年齢であった控訴人が健康に影響を及ぼす程度の線量の被曝をしたことも考慮すれば,これらの危険因子は,放射線の影響がなくとも当該疾病が発症していたことを裏付けるもの
とまでいえるものではない。
そうすると,これらの危険因子により放射線の影響がなくとも当該疾病が発症していたといえるような特段の事情があるとはいい難いから,控訴人の心筋梗塞については放射性起因性を肯定すべきである。


要医療性について
原判決の引用に係る前記認定事実⑶オのとおり,控訴人は平成10年4月頃に心筋梗塞を発症し,その治療のため冠動脈の狭窄部分にステントを留置する手術等を受け,
その後も繰り返し狭窄部分にバルーンを入れて膨らませ,
血管を広げるバルーン血管形成術を受けるなどしたほか,平成16年11月17日には僧帽弁狭窄症,陳旧性心筋梗塞の治療のため僧帽弁置換術,冠動
脈バイパス手術を受け,平成30年にも心筋梗塞を理由に2,3回入院していることに照らせば,申請疾病である心筋梗塞について要医療性は優に認められるというべきである。

以上の検討によれば,控訴人の申請疾病である心筋梗塞には放射線起因性及び要医療性が認められるから,本件α却下処分は違法というべきであり,控訴人の同処分の取消請求には理由がある。


当審における当事者の補充主張に対する判断

被控訴人は,①UNSCEAR2006年報告書第2巻の科学的附属書Dには,疫学的研究において選択した指標が不適切であった旨の記載があること等に照らせば,報告書の本体は放射線被曝による免疫系への影響を
示すものとはいえない,②ICRP報告118は,原爆による放射線被曝とは異なり,長期にわたる慢性的な放射線被曝による免疫応答への影響について記載したものにすぎず,被曝後,長期間経過後に免疫応答の抑制が観察されることもあるとの同報告の記載は全身に高線量を被曝していない控訴人には当てはまらない,③1957年のキシュテム事故に関する報
告は,
放射線被曝により一時的に好中球数が低下したとしても,
被曝後1,
2年で好中球数が回復する旨を示唆していること等からすれば,原爆投下から相当期間経過後の結膜炎の経過を根拠に控訴人が被曝により好中球機能不全に陥ったとはいえない旨主張する。
しかしながら,前記①については,UNSCEAR2006年報告書を
引用するICRP報告118(乙A579)も,免疫系に対する放射線の影響に関する詳細な解説は,UNSCEARによって刊行されている(UNSCEAR,2006)としていること,同報告書第2巻の科学的附属書D(乙A578)は,低線量,低線量率のトリチウム5年の被曝により,好中球機能のうち殺菌能を反映するアルカリホスファターゼ及び
ミエロペルオキシダーゼの活性を測定し,これらの活性は低線量被曝で有意に低下している旨を報告したトリチウム汚染による白血球の変化と題する文献(甲C17)を引用していること,被控訴人の指摘する記載が同報告書第2巻の科学的附属書Dにされたのは,同文献がトリチウム汚染の健康被害の早期発見を目的としたために被曝期間を5年としており,臨
床症状も出ていない報告内容であることを踏まえたものと考えられること(甲C15)に照らせば,同報告書が放射線被曝による免疫系への影響を示すものではないとはいい難い。
前記②については,ICRP報告118(乙A579)によれば,

放射線被ばくにおける免疫反応の様々な変化は,総線量と被ばくの均一性(中略),線量率,被ばく後の期間,および患者の年齢による違いを反映しているのかもしれない。

との記載に続けてただし,放射線が誘発する免疫の変化は総線量に大きく依存し,総量率にはそれほど依存しないことを示唆するデータが存在するとされていることからすれば,同報告が長期にわたる慢性被曝のみについて記載しているとはいい難いほか,原判で
説示したとおり,控訴人は,放射線による外部被曝及び内部被曝により健
康に影響を及ぼす程度の放射線被曝を受けたことが認められるから,この点からも同報告が控訴人に妥当しないとはいえない。
前記③については,好中球の機能として,接着能,遊走能,貪食能,殺菌能(細菌を殺傷する能力)があり,好中球の数の減少のみならず,その機能自体が低下した場合には感染症を発症しやすくなるとされているこ
と(甲C11),UNSCEAR2006年報告書第2巻の科学的附属書D
(乙A578)被曝者において殺菌能を有するアルカリホスファターも,
ゼ及びミエロペルオキシダーゼの活性を測定し,これらの活性は低線量被曝で有意に低下しているとする一方,白血球総数は,対照群と比べて違わなかった旨報告していることに照らせば,好中球による免疫力は,その数
のみに左右されるものではない。キシュテム事故に関する報告に時間の経過により好中球の数が回復したとの記載があるからといって,期間の経過をもって好中球機能が回復することを意味しているということはできない。
被控訴人の主張は採用できない。


被控訴人は,右眼摘出に関し,診療録等の記載に照らせば,控訴人の結膜炎はウイルス性の流行性結膜炎であって細菌性結膜炎ではないから,眼球摘出は,被曝による抵抗力(好中球機能)低下に起因するものではない旨主張する。
しかしながら,被控訴人が指摘する診療録等(甲C14,乙C11)は,控訴人の右眼を直接診断した医師により記載されたものではなく,眼球摘
出を受けてから約20年又は30年後に控訴人から既往歴を聴取した医師や看護師により記載されたものにすぎないものであるところ,当時の主治医が医学的な知識を有しない控訴人に対し,結膜炎の原因についてどの程度正確な説明をしたのかは必ずしも明らかではないほか,控訴人が主治医から受けた結膜炎の原因についてどの程度正確に理解し,記憶していた
のかも必ずしも明らかでないことに照らせば,診療録等に流行性結膜炎との記載があるからといって,結膜炎がウイルス性の流行性結膜炎であったと認めるのは困難である。この点をおくとしても,ウイルス性の流行性結膜炎は細菌性結膜炎を併発することもあり得ること
(甲C15,
乙C33)
からすれば,控訴人がウイルス性の流行性結膜炎と診断されたからといっ
て,控訴人が細菌性結膜炎に罹患したことは否定されるものではない。また,原判決を引用して説示したとおり(当審補正部分を含む。),好中球等の機能低下による免疫不全以外に眼球摘出や予防接種の副反応の重篤化といった通常は生じることのない症状が控訴人に繰り返し生じた原因が見当たらないことからすれば,診療録等の記載を踏まえても,被曝
による免疫不全に起因して眼球摘出に至ったとの上記説示が左右されるものではない。
被控訴人の主張は採用できない。

被控訴人は,控訴人が2歳ないし3歳当時に注射により両肢が化膿した旨が診療録等に記載されていること等に照らせば,控訴人は先天的な免疫不全であった可能性がある旨主張する。
しかしながら,
前記イで述べたとおり,
被控訴人が指摘する診療録等は,
予防接種の副反応が生じた幼少期から相当期間経過後に控訴人から既往歴を聴取した医師や看護師により記載されたものにすぎないこと,2歳ないし3歳当時の控訴人が注射によって両肢が化膿して手術に至った旨を記憶しているとは考え難いことに照らせば,診療録等に記載された年齢が
正確なものであるのかは疑義がある。
また,証拠(甲C1,10,乙C31,控訴人本人[原審])及び弁論の全趣旨によれば,原発性(先天性)免疫不全症候群は,日本国内の患者数が約2900名,有病率は人口10万人あたり2.3人という稀な疾患とされていること(平成20年当時),乳児,小児期の感染症の反復,遷延
化,重症化等といった先天性免疫不全症候群の兆候が控訴人の乳児,小児期に認められたことをうかがわせる的確な証拠はないことも考慮すれば,診療録等に上記の記載があるからといって,控訴人が先天的な免疫不全であったと認めることは困難であり,放射線被曝の影響により抵抗力が低下したとの上記説示が左右されるものではない。

被控訴人の主張は採用できない。
3
争点3(国家賠償責任の成否について)
次のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由の第3章所の判断の第3当裁判争点3(国家賠償責任の成否)について(原判決57
頁22行目~65頁2行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。⑴

原判決63頁7行目冒頭から同頁10行目末尾までを次のとおり改める。原判決の引用に係る前記前提事実2⑵によれば,本件α却下処分については,厚生労働大臣が疾病・障害認定審査会の意見を聴いた上,その意見に従ってされたものと認められ,原判決の引用に係る前記第2の3(当審補正部分を含む。)で説示した内容等に照らしても,その意見が関係資料に照らし明らかに誤りであるなど,答申された意見を尊重すべきでない特段の事情が存在したとまでは認められず,本件α却下処分が国賠法1条1項の適用上違法であると認めることはできない。⑵

原判決63頁26行目の本件β却下処分及びを削る。



原判決64頁17行目の本件β申請から同頁18行目の約2年11箇月,までを削る。

第4

原判決64頁20行目のそれぞれを削る。
結論
以上によれば,控訴人の請求のうち本件α却下処分の取消しを求める部分は
理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却すべきであるが,これらを全部棄却した原判決はその結論を同じくする部分は相当であるが,異なる部分は不当である。よって,原判決の全部取消しを求める本件控訴は一部理由があるから原判決を変更して主文のとおり判決する。

大阪高等裁判所第12民事部
裁判長裁判官


裁判官


裁判官

河賢久二田斉野申二郎
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