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損害賠償請求事件
事件番号令和2(ワ)21000
事件名損害賠償請求事件
裁判年月日令和3年6月10日
裁判所名・部東京地方裁判所
裁判日:西暦2021-06-10
情報公開日2021-07-21 18:00:27
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令和3年6月10日判決言渡
令和2年(ワ)第21000号

同日原本領収

裁判所書記官

損害賠償請求事件

口頭弁論終結日令和3年3月18日
判主1決文
被告は,原告に対し,323万9500円及びこれに対する平成30年10
月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2原告のその余の請求を棄却する。
3
訴訟費用はこれを4分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担と
する。
4この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,448万円及びこれに対する平成30年10月30日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,作家である原告が,被告に対し,被告がインターネットに開設された電子掲示板又はブログに,原告を脅迫し又はその名誉を毀損する内容の記事を投稿したとして,不法行為に基づく損害賠償請求として,448万円及びこ
れに対する不法行為日の後である平成30年10月30日(最後の投稿があった日の翌日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。
)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。1
前提事実(争いのない事実以外は,各項掲記の証拠又は弁論の全趣旨により
認める。



当事者
原告は,Cの筆名で

わたくし率イン歯ー、または世界

乳と卵,


ヘヴン等の著作を発表している作家である(甲1,2)

被告は,平成30年当時,インターネット上のブログサービスYahoo!ブログを利用し,不特定多数の者が閲覧可能なベランダでラベンダーと題するブログ(以下本件ブログという。)を開設していた。
なお,原告と被告に直接の面識はない。



被告による投稿記事の投稿

被告は,平成30年10月17日及び25日,インターネットに開設さ
れ,不特定多数の者が閲覧可能な電子掲示板5ちゃんねる
(以下本件掲示板という。
)上の,【助成号】C【屁ヴン】
と題するスレッド(以
下本件スレッドという。
)に,被告の氏名を記載せず,別紙投稿記事目

録①(以下目録①という。
)記載の投稿記事1及び2を投稿した。

被告は,平成30年8月28日,同年9月23日及び同月24日,本件
ブログにおいて,被告の氏名を記載せず,別紙投稿記事目録②(以下目録②という。)記載の投稿記事1ないし4を掲載し,また,同年10月2
0日及び同月29日,別紙投稿記事目録③(以下目録③という。)記載

の投稿記事1及び2を掲載した。
上記各投稿記事は,令和元年12月15日に本件ブログが閉鎖されるまでインターネット上で公開されていた。


本件投稿後,原告がイベント出演を取り止めた経緯
原告は,平成30年11月18日,青山ブックセンターにおいて開催され
る公開対談イベント(以下本件イベントという。
)に出演予定であり,そ
の旨は原告のホームページ等で告知されていた。
原告は,目録①及び③記載の各記事の投稿を受けて,警視庁玉川警察署に対応を相談したところ,対応した警察官から,本件イベントの出演を取り止めるよう要請を受け,出演を取り止めた。
(以上,甲4,弁論の全趣旨)



原告による発信者情報開示に係る手続等

原告は,原告訴訟代理人らに対し,目録①ないし③記載の各記事の投稿
について発信者情報開示の手続をとることを委任し,その費用として,別紙主張整理表争点⑷
原告の損害
発信者情報の取得に要した費用
原告の主張欄記載の費用合計100万円(税込み108万円)の支払を約した(甲16,弁論の全趣旨)



原告訴訟代理人らは,原告を代理して,本件掲示板を設置,運営及び管理するロキテクノロジーインコーポレイテッドを債務者として,目録①の投稿記事1及び2の投稿に用いられたIPアドレス等の発信者情報の開示を求める仮処分を申し立て,仮処分決定を得た。
その後,原告は,同社から上記各記事の投稿に用いられた発信者情報の
開示を受けた。
(以上,甲11,弁論の全趣旨)

原告訴訟代理人らは,原告を代理して,本件ブログを設置,運営及び管
理するヤフー株式会社に対し,同社を債務者として,目録②の投稿記事1ないし4の投稿に用いられたIPアドレス等の発信者情報の開示を求める仮処分を申し立て,仮処分決定を得た。
その後,原告は,同社から上記各記事の投稿に用いられた発信者情報の開示を受けた。
(以上,甲12,弁論の全趣旨)

原告訴訟代理人らは,原告を代理して,目録①及び②の各記事の投稿に
当たって利用された経由プロバイダであるニフティ株式会社に対し,同記事のアクセスログを保全するよう求め,さらに,発信者情報の開示を求める訴訟を提起したところ,同社から,目録①及び②の投稿者情報の開示を受けた(甲13の1・2,甲14)

2争点及び争点に関する当事者の主張
本件の争点は次のとおりであり,各争点に対する当事者の主張は,別紙主張
整理表の各争点欄に対応する原告の主張欄及び被告の主張欄に記載のとおりである。


目録①の投稿記事1及び2が原告に対する害悪の告知として違法であるか否か。



目録②の投稿記事1ないし4について違法性阻却事由があるか。


目録③の投稿記事1及び2が原告に対する害悪の告知として違法であるか否か。



原告の損害
アイ
名誉毀損による損害


発信者情報の取得に要した費用


脅迫行為による損害

弁護士費用

第3当裁判所の判断
1
争点⑴(目録①の投稿記事1及び2が原告に対する害悪の告知として違法で
あるか否か。
)について
本件スレッドが原告の話題を扱うものであることは,本件スレッドのタイトル名に原告の筆名や経歴に係る記載があることから明らかである。そして,目録①の投稿記事1及び2の内容に照らせば,目録①の投稿記事1及び2は,原告に向けられたものと認められる。そして,上記投稿記事には,
ほんとにレんでしまえと思っている
やるっきゃない,さすしか
(投稿記事1)11月,18日やろうと思えばやれる
いつも研ぎ澄まして準備しておく
(投稿記事

2)との記載があるところ,これは投稿者である被告において,本件イベントその他の機会において,原告を殺傷する行為に及ぶ意思を有しており,又はその準備をしていることを示唆するものであって,その生命・身体に危害を加える旨を表示するものといえる。
以上からすれば,被告が本件スレッドに目録①の投稿記事1及び2を投稿し
たことは違法であり,原告に対する不法行為を構成するというべきである。被告は,脅迫するつもりで目録①の投稿記事1及び2を投稿したのではないなどと主張するが,被告の主観的な事情であって,客観的に見て殺傷する行為に及ぶ意思を示す記事であることは上記のとおりであるから,目録①の投稿記事1及び2の違法性に直接影響するものではなく,上記判断を左右するに足りない。
2
争点⑵(目録②の投稿記事1ないし4について違法性阻却事由があるか。)に

ついて


目録②の投稿記事1ないし4が原告の社会的評価を低下させるか。ア
目録②の投稿記事1について
目録②の投稿記事1には,

Cの常である盗作です。

と記載されており,これは原告が被告の投稿内容を剽窃し,原告の作品として発表したとの事
実を摘示するものと認められ,このような内容は,原告が作家として不適切な行為をする人物であるとの印象を与えるものであって,原告の社会的評価を低下させる記事である。また,上記投稿記事1には,

Cは私のストーカーです。

との記載があるところ,これは,上記の記述と併せて読めば,犯罪行為であるストーカーという用語を用いて,盗作のために原告が被告
の著作物を常にチェックして回っているとの印象を与える記事であって,社会的評価を低下させるものといえる。

目録②の投稿記事2について
目録②の投稿記事2には,
Cが行った,私の生原稿のくすね方

第一作はヤフー掲示板『歯とその治療』私の書き込み流用でした。「剽窃で始


まった作家です。
」と記載されており,これは原告が被告のインターネット
掲示板への書き込みを流用,剽窃して,原告の作品として発表したとの事実を摘示するものである。このような内容は,原告が作家として不適切な行為をする人物であるとの印象を与えるものであって,原告の社会的評価を低下させる記事である。


目録②の投稿記事3について
目録②の投稿記事3Cの初期2作の実作者について盗作疑惑女性作家との記載があるが,これは原告の作品の一部が盗作であるとの事実を摘示するものである。このような内容は,原告が作家として不適切な行為をする人物であるとの印象を与えるものであって,原告の社会的評価を低下させる記事である。


目録②の投稿記事4について
目録②の投稿記事4には,
Cのような剽窃・ゴースト三昧の作家との
記載があるが,これは原告が他人の著作を剽窃したり,他人に作成させた著作を原告の名前で発表する行為を繰り返しているとの事実を摘示するものである。このような内容は,原告が作家として不適切な行為をする人物
であるとの印象を与えるものであるから,原告の社会的評価を低下させる記事である。


被告の主張について
被告は,被告が過去にインターネット上で発信した思考や内容等を繰り返
し流用している,インターネット上に原告が盗作をしているとの疑惑を示す記事が存在したなど,その答弁書において縷々記載した内容をもって,目録②の投稿記事1ないし4の内容が真実であると主張する。しかし,原告が,被告の著作物等を盗作したものと認めるに足りる証拠はない。また,インターネット上に原告が盗作しているとの疑惑を示す記事が
存在したとしても,これによって原告が著作を発表する過程で実際に被告を含めた第三者の著作ないし発信内容を剽窃したことまでを裏付けるものとはいえない。そうすると,本件全証拠によっても,上記被告の主張内容を認めることはできない。また,上記に照らし,被告が,原告による盗作の事実を真実と信じたとしても,それについて相当な事情があったとも認められない。
他に被告が主張する内容について,上記⑴の判断に反するものは全て採用できない。


以上からすれば,被告が目録②の投稿記事1ないし4を投稿したことは違
法であり,原告に対する不法行為を構成するというべきである。
3
争点⑶(目録③の投稿記事1及び2が原告に対する害悪の告知として違法で
あるか否か。
)について


目録③の投稿記事1について
目録③の投稿記事1は,
エコノミストにインタビュー載せるなんて涙と
の題名であり,原告のインタビュー記事がエコノミストの平成30年(2018年)10月9日に掲載されていること(甲18)からすれば,目録③の投稿記事1は原告に関する記事であると認められる。原告は,本件ブ
ログには原告に対する悪感情を露わにした一連の投稿記事が投稿されており,目録③の投稿記事1はこれらに引き続いて投稿されたものであることなどに照らせば,目録③の投稿記事1における実行は危害を加えることを,予告は殺害等危害を加えることの予告であると読み取るのが自然かつ合理的であると主張する。確かに,目録③の投稿記事1には,それをいつ実行するかそうですね,これは予告でしょうねとの記載があり,,
次のイベントに出たくなるころだろうと本件イベントとの関連を示唆する記載もあることからすれば,原告が上記主張する趣旨とみることがおよそ不可能とまではいえない。しかし,
それをいつ実行するかの前に何をどう扱うかと,
原告に対する加害行為を想起し難い記載があるほか,目録③の投稿記事1は,

私のんびりしすぎてますね。(改行)もっと行動的にならなくっちゃ!(改行)支度さえしていない・・・

という文章に続くものであって(甲9),原
告の投稿内容を全体としてみれば,
実行や予告の意味は判然としない。
また,上記投稿内容において,それ以前に本件ブログに投稿された記事の内容との関係を示唆する具体的な記載は見当たらず(甲9)
,本件投稿記事1の

読者がそれ以前の記事の内容を直ちに想起するものともいえない。さらに,目録②の1ないし4の記事を含めたそれ以前の記事自体も,被告の原告に対する悪感情が記載されてはいるものの,原告に対する害悪の告知など,実行
に該当するような事柄の記載はない。目録③の投稿記事1と目録①の投稿記事1及び2はおおよそ同時期に記載されたものであるが,これらの記事の相互の関係を示す記載はなく,また,同じ人物の作成に係ることの表示もない。そうすると,被告が,その内心において原告に対する脅迫と受け取られる可
能性を認識しつつ,原告に向けて目録③の投稿記事1を投稿したとしても,目録③の投稿記事1の文面から見て,客観的に原告に対する加害行為の実行又はその予告の趣旨を表示したものとは認められない。他に,目録③の投稿記事1が原告との関係で違法であることを認めるに足りる主張立証はない。⑵

目録③の投稿記事2について
目録③の投稿記事2が原告に向けられたものであり,被告が原告に向けてこれを投稿したことは,当事者間に争いがない。そして,目録③の投稿記事2には恨みを晴らす直接的な行動と記載があり,これらは生命,身,
体に対する加害行為を行うことを示唆する表現ということができ,上記投稿記事2を全体としてみれば,原告の生命,身体に対する加害行為を実行する
旨を表示したものと認められる。そうすると,被告が本件ブログに目録③の投稿記事2を投稿したことは違法であり,原告に対する不法行為を構成するというべきである。
被告は,原告に対する加害行為を実行するつもりはなかったと主張するが,被告の主観的な事情であって,目録③の投稿記事2の違法性に直接影響する
ものではなく,上記判断を左右するに足りない。
4争点⑷(原告の損害)について


脅迫行為による損害について
目録①の投稿記事1及び2並びに目録③の投稿記事2は,原告の生命,身
体に対する加害行為の意思等を表示するものであること,これによって原告が本件イベントへの出演を取り止めるに至ったこと(前記前提事実⑶)のほか,上記各記事が掲載されていた期間等,本件において認められる一切の事情を考慮し,慰謝料として100万円を相当と認める。


名誉毀損による損害について
原告は作家であり,その作品の創作性によって社会的評価を受けると考えられるが,目録②の投稿記事1ないし4は,原告の作品がその創作によるも
のでないとの断定的な記載を繰り返すものであって,原告の社会的評価に相当程度影響を与えかねないといえること,被告が4回にわたり投稿を繰り返したこと等,本件において認められる一切の事情を考慮し,慰謝料として100万円を相当と認める。


発信者情報の取得に要した費用について
被告は,目録①の投稿記事1及び2,目録②の投稿記事1ないし4,目録③の投稿記事1及び2をいずれも匿名で投稿していること,原告が,上記各投稿記事の投稿者に関する発信者情報開示請求に係る手続をすることは,発信者に対する損害賠償請求をするのに必要と認められること,原告が上記手続を原告訴訟代理人弁護士に委任し,その着手金及び報酬として消費税相当
額を含めて108万円の支払義務を負ったこと,原告訴訟代理人らは,上記各投稿に係る発信者情報開示に係る手続を行ったことがそれぞれ認められる。もっとも,目録③の投稿記事1の投稿については,原告に対する不法行為とは認められない。以上を考慮して,被告の不法行為と相当因果関係のある,発信者情報の取得に要した費用相当額の損害として,94万5000円の限
度で相当と認める。


本件訴訟の弁護士費用相当額
本件事案の難易,請求額,認容額その他諸般の事情を考慮すれば,被告の不法行為と相当因果関係の認められる原告の本件訴訟の弁護士費用として,29万4500円を相当と認める。



損害額合計
上記⑴ないし⑷のとおり,被告の不法行為による原告の損害額は,合計323万9500円である。
5結論
よって,原告の請求は主文の限度で理由があるから当該限度で認容し,その余の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第31部

裁判長裁判官

金澤秀樹

裁判官

裁判官

若山哲朗

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