判例検索β > 令和2年(行ケ)第10054号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号令和2(行ケ)10054
事件名審決取消請求事件
裁判年月日令和3年7月20日
裁判所名知的財産高等裁判所
権利種別特許権
訴訟類型行政訴訟
裁判日:西暦2021-07-20
情報公開日2021-07-21 16:01:17
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令和3年7月20日判決言渡
令和2年(行ケ)第10054号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

令和3年6月10日
判決原告
株式会社ウィングターフ

同訴訟代理人弁理士

実被
株式会社シーライブ


同訴訟代理人弁理士

河主1広野信貴哉明文
特許庁が無効2017-800004号事件について令和2年3月17日にした審決のうち,

特許第5463378号の請求項2ないし4に係る発明についての審判請求は,成り立たない。

との部分を取り消す。
2
訴訟費用は被告の負担とする。

第1

実及び理由
請求
主文同旨

第2

事案の概要

(以下,書証については,単に甲1などと略記する。)
1
特許庁における手続等(当事者間に争いがない)
(1)

被告及び株式会社ノベルト(以下ノベルトという。
)は,平成24年3

月19日,発明の名称を核酸分解処理装置とする発明について特許出願
(特願2012-62880号。以下本件出願という。
)をし,平成26
年1月24日,特許権の設定登録を受けた(特許番号第5463378号。請求項の数4。以下,この設定登録を受けた特許を本件特許という。。)
(2)
原告は,平成29年1月17日,本件特許の請求項1ないし4に係る発明
についての特許を無効とすることを求める特許無効審判(無効2017-800004号事件)を請求した。
被告及びノベルトは,同年11月30日付けの審決の予告を受けたため,同年12月27日付けで,
請求項1ないし4からなる一群の請求項について,
請求項2ないし4を訂正し,請求項1を削除し,本件出願の願書に添付した
明細書(以下,図面を含めて本件明細書という。
)について訂正する旨の
訂正(以下,この一連の訂正を一次訂正という。
)を請求した。
その後,特許庁は,平成30年3月27日,上記訂正を認めた上で,本件審判の請求は,成り立たないとの審決(以下一次審決という。)をし,
その謄本は,同年4月5日,原告に送達された。
この間に,被告は,ノベルトから,本件特許に係る特許権の持分の譲渡を
受け,その旨の移転登録(受付日平成30年1月5日)を受けた。(3)

原告は,
平成30年5月2日,
一次審決の取消しを求める審決取消訴訟
(知

的財産高等裁判所平成30年(行ケ)第10064号)を提起した。同裁判所は,平成31年2月28日,一次審決を取り消す旨の判決(以下一次判決という。
)をし,同判決は,その後確定した。
(4)

その後,特許庁は,上記無効審判について更に審理を行った。
被告は,令和元年9月4日付けの審決の予告を受け,同年11月8日付け
で請求項1ないし4からなる一群の請求項について,請求項2ないし4を訂正し,請求項1を削除し,本件明細書について訂正する旨の訂正(以下本件訂正という。)を請求した。
特許庁は,令和2年3月17日,本件訂正を認めた上で,

特許第5463378号の請求項2ないし4に係る発明についての審判請求は,成り立たない。同請求項1に係る発明についての審判請求を却下する。

旨の審決(以下本件審決という。
)をし,その謄本は,同月26日,原告に送達された。
(5)

原告は,同年4月24日,本件審決のうち,本件特許のうち請求項2ない
し4に係る部分について取消しを求める本件訴訟を提起した。

2
特許請求の範囲
本件訂正後の本件特許の請求項2ないし4の記載は,以下のとおりである(以下,本件訂正後の請求項2に係る発明を訂正発明2などといい,訂正発明2ないし4を訂正発明という。また,一次訂正後本件訂正前の請求項
2に係る発明を一次訂正発明2という。なお,本件訂正箇所のうち一次訂正箇所と同内容の部分は下線で,一次訂正と異なる部分は二重線で示す。。)
【請求項2】
メタノールタンクから供給されたメタノールを霧状に噴射するノズルを備え,該ノズルを介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させ
るメタノールガス発生部と,上記メタノールガス発生部の上方に位置して,熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり,該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており,該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに,上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で
混合させる筒体部と,上記筒体部の上方に位置し,該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを有し,上記触媒部は,金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され,該ラジカル反応触媒を複数積層してなり,空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して少なくともメタノールに
由来する活性種を含み生成される複合ガス(以下バイオガスという)を発生するバイオガス発生部と,

上記バイオガス発生部における生成ガス量を供給空気量とメタノール量で制御する生成ガス量制御手段と,
上記バイオガス発生部により発生したバイオガスが供給される暴露部と,上記暴露部の暴露空間内の温度を制御する温度制御手段と,
上記暴露部の暴露空間内の湿度を制御する湿度制御手段と,
上記暴露部に供給されたバイオガスを排気する排気処理部と,
上記排気処理部により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御するバイオガスの排気量制御手段と,
上記暴露部におけるバイオガスのホルムアルデヒド成分の濃度を測定するホ
ルムアルデヒド成分濃度測定手段と,
臭いを検出又は測定する手段を備え,
上記ホルムアルデヒド成分濃度測定手段による測定結果として得られるガス濃度情報が上記生成ガス量制御手段に帰還され,上記バイオガス発生部において,一定の触媒の自己反応温度と濃度のバイオガスとなるように,上記生成ガ
ス量制御手段により上記バイオガス発生部における生成ガス量が供給空気量とメタノール量で制御されるとともに,上記排気量制御手段により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより,上記暴露部の庫内ガス濃度を一定にし,
上記排気量制御手段により制御される排気処理手段による上記暴露部の暴露
空間内のバイオガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出する庫内差圧検出手段を備え,
上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差圧情報が上記排気量制御手段に帰還され,上記排気量制御手段により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより,上記暴露部の庫内差圧を陰圧で一定
にすることを特徴とする核酸分解処理装置。
【請求項3】

上記バイオガス発生部は,メタノール,ホルムアルデヒド,一酸化炭素,二酸化炭素,水素,酸素の成分を少なくとも含有した活性酸素とフリーラジカルからなる複合ラジカルガスを発生することを特徴とする請求項2に記載の核酸分解処理装置。
【請求項4】

上記バイオガス発生部は,上記自己反応温度が400℃~500℃の範囲内に制御されることを特徴とする請求項3記載の核酸分解処理装置。3
一次審決及び一次判決の要旨
(1)


一次審決
一次審決が認定した甲1(特開2010-51692号公報。公開日平成22年3月11日)に記載された発明(以下甲1発明という。
)は,
後記4(2)アのとおりであり,
甲1発明と一次訂正発明2との一致点及び相
違点は,以下のとおりである。

(一致点)
メタノールタンクから供給されたメタノールを霧状に噴射するノズルを備え,該ノズルを介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と,上記メタノールガス発生部の上方に位置して,熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり,該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており,上記メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに,上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で混合させる筒体部と,上記筒体部の上方に位置し,該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを有し,上記触媒部は,金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され,該ラジカル反応触媒を複数積層してなり,空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して,MRガスを発生するMRガス発生装置と,上記MRガス発生装置における生成MRガス量を供給空気量とメタノール量で制御する生成MRガス量制御手段と,上記MRガス発生装置から発生したMRガスが供給される滅菌タンクを備えたDNA破壊処理装置。である点。
(相違点1)
一次訂正発明2は,滅菌タンク内の温度を制御する温度制御手段と,滅菌タンク内の湿度を制御する湿度制御手段と,滅菌タンクに供給されたMRガスを排気する排気処理部と,上記排気処理部により滅菌タンクから排
気するMRガスの排気量を制御するMRガスの排気量制御手段と,滅菌タンクにおけるMRガスのホルムアルデヒド成分の濃度を測定するホルムアルデヒド成分濃度測定手段と,臭いを検出又は測定する手段を備え,上記ホルムアルデヒド成分濃度測定手段による測定結果として得られるガス濃度情報が生成MRガス量制御手段に帰還され,MRガス発生装置にお
いて,一定の触媒の自己反応温度と濃度のMRガスとなるように,生成MRガス量制御手段によりMRガス発生装置における生成MRガス量が供給空気量とメタノール量で制御されるとともに,上記排気量制御手段により滅菌タンクから排気するMRガスの排気量を制御することにより,滅菌タンクの庫内ガス濃度を一定にするという構成を備えるのに対し,甲1発
明は,かかる構成について記載されていない点。
(相違点2)
一次訂正発明2は,上記排気量制御手段により制御される排気処理手段による滅菌タンク内のMRガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出する庫内差圧検出手段を備え,上記庫内差圧検出手段による検出結果
から得られる庫内差圧情報が上記排気量制御手段に帰還され,上記排気量制御手段により滅菌タンクから排気するMRガスの排気量を制御するこ
とにより,滅菌タンクの庫内差圧を一定にするという構成を備えるのに対し,甲1発明は,かかる構成について記載されていない点。

一次審決の要旨(ただし,無効理由1(甲1を主引用例とする一次訂正発明2の進歩性の判断の誤り)に限る。

(ア)

一次訂正発明2は,相違点1の容易想到性は認められるが,相違点
2の容易想到性は認められない。
(イ)

一次審決の相違点2の容易想到性に関する判断の要旨は,以下のと
おりである。
①本件明細書の
【0143】
ないし
【0147】
の記載事項によれば,
一次訂正発明2の庫内差圧検出手段は,
滅菌タンク内がタンク外よりも陰圧であることを検出する庫内差圧手段であって,滅菌タンク内のMRガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出するものであると認められる,②滅菌タンク内の圧力は,一次訂正発明2では,陰圧で維持するように制御されるのに対して,甲2(国際公開第01/026697号の再公表公報(平成15年5月7日発行)
)には,陽圧を維持す

るように制御することが記載されており,滅菌タンク内の圧力を陰圧に維持するように滅菌タンクからのMRガスの排気量を制御して,滅菌タンク内の庫内差圧を一定にしようとすることは,甲2の記載事項から導き出せる事項ではないから,甲1発明に甲2に記載された発明及び周知技術を組み合わせても,相違点2に係る一次訂正発明2の庫内差圧検出手段の構成を当業者が容易に想到することができない。(2)

一次判決の要旨
①一次訂正後の特許請求の範囲(請求項2)の記載及び本件明細書の記載
に鑑みると,
一次訂正発明2の
庫内差圧検出手段
の検出の対象となる
庫内差圧は,
庫内
(暴露部の暴露空間内)の圧力と暴露空間外の圧力との
差圧であれば,特定の数値範囲のものに限定されるものではなく,陰圧の数
値範囲のものに限定されるものでもないと解すべきである,②甲2における本発明の第2の実施の形態の微差圧検出器56コントロールユニ,ット58及び排気量調整電磁弁74及び送風機82は,それぞれ,一次訂正発明2における庫内差圧検出手段上記庫内差圧検出手段による,検出結果から得られる庫内差圧情報が・・・帰還され上記排気量制御手段る
及び上記排気量制御手段により制御される排気処理手段に相当するものと認められるから,甲2には,相違点2に係る一次訂正発明2の構成が開示されているものと認められる,③甲1及び甲2に接した当業者は,甲1発明において安定した濃度の滅菌ガスを発生させるとともに,十分に保証可能な殺菌効果を得るために,甲2記載の被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃
度,湿度,温度をそれぞれ所定の値に制御し,かつ,被殺菌空間の室圧を一定に保つための構成を適用する動機づけがあるものと認められる,④したがって,当業者は,甲1及び甲2に基づいて,甲1発明に甲2記載の上記構成を適用して相違点2に係る一次訂正発明2の構成を容易に想到することができたものと認められる。

4
本件審決の要旨
(1)

本件審決の要旨は,①訂正発明2は,本件出願前に頒布された刊行物であ
る甲1に記載された発明(甲1発明)及び甲2発明及び技術常識を組み合わせることにより当業者が容易に発明することができたものとはいえず,また,
訂正発明3は訂正発明2の発明特定事項を全て有する発明であり,また,訂正発明4は訂正発明3の発明特定事項を全て有する発明であり,訂正発明2について当業者が容易に発明することができたものとはいえないので,訂正発明3及び4についても当業者が容易に発明することができたものとはいえないから,訂正発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることが
できないということはできない,②本件訂正後の特許請求の範囲は,特許法36条6項1項に規定する要件(以下サポート要件という。
)を満たして

いるといえる,③本件訂正後の本件明細書(以下訂正明細書という。)の
記載は,同条4項1号に規定する要件(以下実施可能要件という。)を満
たしている,というものである。
(2)
本件審決が認定した甲1発明,訂正発明2と甲1発明の一致点及び相違点
は,以下のとおりである。

甲1発明
メタノールタンクから供給されたメタノールを霧状に噴射するノズルを備え,該ノズルを介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と,上記メタノールガス発生部の上方に位置して,熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり,該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており,該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに,上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で混合させる筒体部と,上記筒体部の上方に位置し,該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを有し,上記触媒部は,金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され,該ラジカル反応触媒を複数積層してなり,空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して,MRガスを発生するMRガス発生装置と,上記MRガス発生装置における生成MRガス濃度を供給空気量とメタノール量で制御する生成MRガス濃度制御手段と,上記MRガス発生装置から発生したMRガスによって滅菌処理を施す滅菌タンクを備えた滅菌処理装置であって,DNAを破壊することが可能な滅菌処理装置。イ
一致点及び相違点

【一致点】
メタノールタンクから供給されたメタノールを霧状に噴射するノズルを備え,該ノズルを介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と,上記メタノールガス発生部の上方に位置して,熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり,該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており,該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに,上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で混合させる筒体部と,上記筒体部の上方に位置し,該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを有し,上記触媒部は,金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され,該ラジカル反応触媒を複数積層してなり,空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して少なくともメタノールに由来する活性種を含み生成される複合ガス(以下「バイオガスという。)を発生するバ
イオガス発生部と,上記バイオガス発生部における生成ガス量を供給空気
量とメタノール量で制御する生成ガス量制御手段と,上記バイオガス発生部により発生したバイオガスが供給される暴露部を備えた核酸分解処理装置。

【相違点1】
訂正発明2は,暴露部の暴露空間内の温度を制御する温度制御手段と,
暴露部の暴露空間内の湿度を制御する湿度制御手段と,暴露部に供給されたバイオガスを排気する排気処理部と,上記排気処理部により暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御するバイオガスの排気量制御手段と,暴露部におけるバイオガスのホルムアルデヒド成分の濃度を測定するホルムアルデヒド成分濃度測定手段とを備え,上記ホルムアルデヒド成分濃
度測定手段による測定結果として得られるガス濃度情報が上記生成ガス量制御手段に帰還され,上記バイオガス発生部において,一定の触媒の自
己反応温度と濃度のバイオガスとなるように,上記生成ガス量制御手段により上記バイオガス発生部における生成ガス量が供給空気量とメタノール量で制御されるとともに,上記排気量制御手段により暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより,上記暴露部の庫内ガス濃度を一定にし,上記排気量制御手段により制御される排気処理手段による暴
露部の暴露空間内のバイオガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出する庫内差圧検出手段を備え,上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差圧情報が上記排気量制御手段に帰還され,上記排気量制御手段により暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより,上記暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にすることを特徴とするのに
対して,甲1発明は,かかる構成について記載されていない点。
【相違点2】
訂正発明2は,
臭いを検出又は測定する手段を備えるのに対し,
甲1発明
は,かかる構成について記載されていない点。
(3)

原告の主張に関連する本件審決の理由の要旨は,以下のとおりである。無効理由1(特許法123条1項2号)について
①甲1及び甲2に接した当業者は,甲1発明において安定した濃度の滅菌ガスを発生させるとともに,十分に保証可能な殺菌効果を得るために,甲2記載の被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度,湿度,温度をそれ
ぞれ所定の値に制御し,かつ,被殺菌空間の室圧を一定に保つための構成を適用する動機づけがある,②しかし,甲2には,相違点1に係る訂正発明2の構成のうち,
暴露部の暴露空間内の温度を制御する温度制御手段と,暴露部の暴露空間内の湿度を制御する湿度制御手段と,暴露部に供給されたバイオガスを排気する排気処理部と,上記排気処理部により暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御するバイオガスの排気量制御手段と,暴露部におけるバイオガスのホルムアルデヒド成分の濃度を測定するホルムアルデヒド成分濃度測定手段とを備え,上記ホルムアルデヒド成分濃度測定手段による測定結果として得られるガス濃度情報が上記生成ガス量制御手段に帰還され,上記バイオガス発生部において,一定の触媒の自己反応温度と濃度のバイオガスとなるように,上記生成ガス量制御手段により上記バイオガス発生部における生成ガス量が供給空気量とメタノール量で制御されるとともに,上記排気量制御手段により暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより,上記暴露部の庫内ガス濃度を一定にし,上記排気量制御手段により制御される排気処理手段による暴露部の暴露空間内のバイオガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出する庫内差圧検出手段を備え,上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差圧情報が上記排気量制御手段に帰還され,上記排気量制御手段により暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより,上記暴露部の庫内差圧を一定にすることを特徴とすることは開示されていると認められるものの,
上記暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にすることは開示されていないから,甲2には,相違点1に係る訂正発明2の構成が開示されておらず,仮に,甲1発明に甲2に記載の構成を適用しても,当業者は,相違点1に係る訂正発明2の構成を想到し得ない,③請求人(原告)は,MRガス等を処理室内で使用するに当たり,処理室内の圧力を処理室外の圧力に対して陰圧とした状態で使用する場合
があることは技術常識であったから,甲1発明において甲2の記載に鑑みると,庫内差圧の制御を行うに当たり,陰圧で制御を行うことは容易であった旨主張するが,MRガス等を使用する処理室内の圧力を処理室外の圧力に対して陰圧に制御することは,その主張する文献(甲23ないし27)のいずれにも開示されていないから,上記各文献から,上記の点が技
術常識であったとはいえず,甲1発明において,甲2の記載に鑑みて庫内差圧の制御を行うに当たり,陰圧で制御を行うことを当業者は容易に想到
し得ない。

無効理由2(特許法123条1項4号)について
訂正明細書の図19B及び図19Cにおける90minのスペクトル図が図18に示された評価基準のいずれのスペクトルにも該当せず,請求人(原告)の指摘するスペクトル図からは,これらのサンプル量におい
て暴露時間が90分の場合に核酸を完全に分解することができたかが不明であるとしても,図19B及び図19Cに示された他のスペクトル図からは,いずれのサンプル量の場合も,90分よりも短い時間で核酸を完全に分解できると理解できることから,訂正発明は,その課題を解決し得るといえるものであり,
訂正明細書の記載は,
サポート要件を満たしている。


無効理由3(特許法123条1項4号)について
請求人(原告)の主張は,訂正発明では処理開始から90分経過後でも核酸を完全に分解することができない場合があることを前提とするものであるが,その前提に誤りがあることは前記イのとおりであり,訂正明細書の記載は,実施可能要件を満たしている。

第3
1
当事者の主張
取消事由1-1(甲1を主引用例とする訂正発明2の進歩性の判断の誤り)について
(1)

原告の主張
本件審決は,前記第2の4(3)アのとおり判断したが,以下のとおり誤りで
ある。

訂正発明2において暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にすることに格別の技術的意義はないこと
(ア)

訂正明細書の【0021】には,

本発明に係る核酸分解装置では,フィードバック制御により暴露部の暴露空間内における温度,湿度,濃度の定量的制御を行うことができ,検体の種類によっての短時間で高効能を発揮する条件を定義することができる。

と記載されているように,訂正発明の技術的意義は,フィードバック制御により暴露部の暴露空間内の温度,湿度及びMRガスの濃度の定量的制御を行うことにあり,暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にすることについては格別の技術的意義はない。そして,訂正明細書には,暴露部の暴露空間内を陽圧とすることに対して,暴露部の暴露空間内を陰圧とすることによって何らかの顕著な効果を奏することを示す記載もない。そうすると,訂正発明2において,暴露部の暴露空間内を陰圧とする必然性はなく,訂正発明2の暴露部の暴露空間内を陰圧とするか陽圧とするかは当業者が適宜決定し得る
事項であるにすぎない。
本件審決は,前記第2の4(3)ア②のとおり,甲2には暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にするとの記載がないことから,相違点1の容易想到性を否定するが,上記のとおり,訂正発明2において暴露部の暴露空間内を陰圧で一定にすることについての技術的意義はないから,本
件出願日当時,滅菌,殺菌のためのMRガス等を処理室内で使用するに当たり,処理室内の圧力を陰圧とした状態で使用することが技術常識であったか否かにかかわらず,相違点1の容易想到性は明らかである。(イ)

なお,被告は,後記(2)ア(ア)のとおり,訂正発明2は,バイオガスの
暴露部としてはチャンバーのような狭い空間を想定している旨主張するが,本件訂正後の請求項2には,バイオガス(MRガス)による処理を受ける空間については,単に暴露部暴露空間庫内等と記


載されているにとどまり,当該空間が狭いものである旨の規定は存在せず,被告の上記主張は,訂正発明2に基づかないものであるし,また,具体的にどの程度の容積の空間が狭い空間であるか不明であり,
狭い空間を客観的に特定することはできないから,被告の上記主張は失当である。


訂正発明2で暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にすることは,周知技術に基づいて容易に想到し得ること
前記アのとおり,訂正発明2の暴露部の暴露空間を陰圧とする目的は,訂正明細書に記載も示唆もなく,不明であるが,仮に,訂正発明2において暴露部の庫内差圧を陰圧とする目的として,MRガスは人体に有害なホ
ルムアルデヒドを含むものであるため,MRガスの暴露部外への漏えいを防止することにあるとしても,室内に存在する人体に有害な物質が室内から室外へ漏えいすることがないように,室内を室外に対して陰圧に制御することは周知である(甲82の【0004】
,甲23の【0020】
,甲8
3の【0064】
,甲84の請求項1,
【0013】【0030】。



そうすると,甲1発明に甲2発明を組み合わせてフィードバック制御を行うにしても,暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にすることは,このような周知技術に基づいて当業者であれば容易に想到する。

滅菌・殺菌のためにMRガス等を処理室内で使用するに当たり,処理室内の圧力を陰圧とした状態で使用する場合があることは技術常識であること
(ア)

本件出願日前に刊行された各文献(甲7,24,26,85,86,
88ないし90,94,95)によれば,滅菌・殺菌のためにMRガス等を処理室内で使用するに当たり,処理室の圧力に対して陰圧とした状態で使用する場合があることは,本件出願日当時の技術常識であり,本件審決が,前記第2の4(3)ア③のとおり,これに反する判断をしたのは誤りである。
そうすると,甲1発明に甲2の記載を組み合わせてフィードバック制御を行うに当たり,暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にすることは,本件
出願日当時の技術常識を踏まえると,当業者が適宜になし得る事項にすぎない。

(イ)

被告は,
後記(2)ウ(ア)のとおり,
フィードバック制御が開示されてい

るのは甲2のみであるから,相違点1の容易想到性についてはあくまでも相違点1が甲2に示されているか否かにより判断されるべきであるとも主張する。
しかし,
甲2の請求項3には,
…前記室内の圧力を調整する室圧調整装置とを備え・・・
と記載されており,
室内の圧力を調整するに当たり陽
圧制御としなければならないと記載されておらず,大気圧を基準とすれば,陽圧制御のほかには陰圧制御しかあり得ないから,甲2には文言として記載はないものの,最良の形態として推奨されている陽圧制御のほかに陰圧制御の態様についても実質的に開示されているといえる。そし
て,当業者は,甲1発明に甲2に開示されている構成を適用することはできるから,相違点1の構成は容易に想到するものといえるし,さらにいえば,上記のとおり,甲2には陰圧制御が実質的に開示されているから,相違点1の構成のうち庫内差圧を陰圧で制御するとの点は,実質的な相違点ではない。

したがって,被告の上記主張は理由がない。

甲2の陽圧制御を陰圧制御とすることに阻害要因があるとの点について被告は,後記(2)エのとおり,甲2の陽圧制御を陰圧制御とすることについて阻害要因がある旨主張する。

確かに,甲2の発明の詳細な説明には,
ここで所定時間,室内の温度,湿度,ホルムアルデヒドガスの濃度がそれぞれ温度20~40℃の範囲,湿度50~90%(相対湿度)の範囲,ホルムアルデヒドガス濃度160ppm以上を維持している間,室圧調整装置により室内の圧力を陽圧力に維持する。との記載があるが,これはあくまで発明を実施するための最良

の形態の例として記載されているのであって,甲2発明を実施するに当たって必ず陽圧制御としなければならないというわけではないから,陰圧制
御が積極的に排除され,否定され,回避すべき,あるいは適用があり得ないといった事情は存在しない。

小括
以上によれば,本件審決における相違点1の容易想到性の判断には誤りがあるから,本件審決は取り消されるべきである。

(2)

被告の主張
訂正発明2の技術的意義の認定判断の誤りについて
(ア)

訂正発明2は,バイオガスの暴露部はチャンバーのような狭い空間
を想定している(例えば,
【0077】では1㎥以内。狭い空間であるこ
とは『庫内』差圧という用語からも読み取ることができる。。バイオ)
ガス発生部では,安定した自己反応(メタノールガスの触媒燃焼反応)により反応温度を維持している(
【0051】【0052】【0072】


等)ところ,暴露対象は,検体や精密機器等であり(
【0201】【02

11】,暴露部の温度,湿度,バイオガス濃度,庫内差圧については細)

かな制御が必要となる。
そこで,訂正発明2では,フィードバック制御を行っており,庫内ガス濃度情報及び庫内差圧情報という2つの情報を基に,生成ガス量及び排気量を調整し,庫内ガス濃度と庫内差圧の両者を一定にするという制御を行い,このフィードバック制御により暴露部の暴露空間内における
温度,湿度,濃度,庫内差圧の定量的制御を行うことができ,検体の種類によって短時間で高効能を発揮する条件を定義することができる(
【0021】【0162】。


(イ)

原告は,前記(1)アのとおり,訂正発明2の構成要件のうち,
暴露部の庫内差圧を陰圧で一定という部分のみを取り上げてその技術的意義を主張しているが,訂正発明2は,前記(ア)のとおりフィードバック制御を行うことによって暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にしている構成
を採用しており,その点に技術的意義が存在するから,原告の主張は理由がない。

訂正発明2で暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にすることは,周知技術に基づいて容易に想到し得るとの点について
原告は,前記(1)イのとおり主張するが,訂正発明2における暴露部の庫内差圧を陰圧で一定との技術的意義は,フィードバック制御を行う構成と一体として判断されるべきであり,フィードバック制御により暴露部の暴露空間内における温度,湿度,濃度,庫内差圧の定量的制御を行うことができ,検体の種類によって短時間で高効能を発揮する条件を定義することができるものであることは,前記アのとおりである。

そして,原告が挙げる甲23及び82は,バイオハザードやケミカルハザード対策施設で室内を陰圧にしてバイオハザード源やケミカルハザード源の外部漏洩を防止するものであり,甲83及び84は,オゾン等の滅菌性ガスにより室内を滅菌する際に対象室内を陰圧にすることのみを目的とするものであって,訂正発明2のようにフィードバック制御により暴
露部の暴露空間内における庫内差圧を定量的に制御することによって,短時間で高効能を発揮する条件を定義するものではなく,庫内ガス濃度情報及び庫内差圧情報という2つの情報を基に生成ガス量及び排気量を調整し,庫内ガス濃度と庫内差圧の両者を一定にする構成については,これらの文献には記載も示唆もない。

そうすると,訂正発明2は,ガスの暴露部からの漏えい防止のためという目的にとどまらないから,原告の挙げる各文献(甲23,82ないし84)から,訂正発明2の構成を当業者が容易に想到し得たとはいえない。ウ
滅菌・殺菌のためにMRガス等を処理室内で使用するに当たり,処理室内の圧力を陰圧とした状態で使用する場合があることは技術常識であるとの点について

(ア)

前記アのとおり,訂正発明2の容易想到性の判断に当たっては,
暴露部の庫内差圧を陰圧で一定という部分のみで判断するのではなく,フィードバック制御を行う構成によって暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にし(同時にバイオガス濃度も一定に制御する。,暴露部内の反応)
環境を一定に制御するという技術思想の容易想到性で判断されるべきで
ある。そして,こうしたフィードバック制御が開示されているのは甲2のみであり,相違点1の容易想到性についてはあくまでも相違点1が甲2に示されているか否かにより判断されるべきであるところ,甲2は陽圧制御であって陰圧制御に変更することに阻害要因があることは後記エのとおりであるから,相違点1の構成について当業者は容易に想到し得
ない。
原告の挙げる文献(甲7,85,86,88ないし90)は,いずれも処理室内の圧力を処理室外の圧力に対して陰圧とした状態で使用することは記載されているが,フィードバック制御を行う構成については記載も示唆もないから,これらの記載から訂正発明2が容易想到である
とはいえない。
(イ)

なお,
甲24について,
原告が指摘する箇所
(請求項2,0014】



【0018】【0019】

)は,ホルマリンガス供給前であり,ガス供給
時の状態に関する記載はなく,また,ガスの供給量がガスの排気量を上回れば処理室内の差圧は陽圧となる傾向があり,必ずしも陰圧となるわ
けではなく,同文献がMRガスを陰圧下で使用して滅菌を行うことを示すものではない。また,甲26について,原告が指摘する箇所(請求項9,
【0024】【0025】【0027】【0029】



)は,減圧・M
Rガス発生モードに関する記載であり,滅菌モードではなく,また,陰圧に制御すると記載されているわけでもない。


甲2に記載された室圧調整装置における庫内差圧を陰圧に制御すること
には阻害要因があること
甲2には,
ここで所定時間,室内の温度,湿度,ホルムアルデヒドガスの濃度がそれぞれ温度20~40℃の範囲,湿度50~90%(相対湿度)の範囲,ホルムアルデヒドガス濃度160ppm以上を維持している間,室内調整装置により室内の圧力を陽圧力に維持する。即ち,図3に示すフローチャートに示す処理により,室内を陽圧力(10~20Pa)に維持する。なお,このフローチャートに基づく制御は,コントロールユニット58により微小時間間隔ごとに繰り返して行われる。また,陽圧力とは,(室内圧力)-(室外圧力)が正の値を示す場合をいう。(15頁26行
~16頁3行)と記載されている。このように,甲2には,

室内の圧力を陽圧力に維持する。と断定的に記載されていることから,

甲2は陽圧に制
御することを目的とするものである。
また,フィードバック制御は,訂正発明2の圧力制御に関していえば,庫内差圧を検出して,制御手段に帰還(フィードバック)し,その情報に
基づいて暴露部内の庫内差圧をバイオガスの排気量を制御することにより,陰圧で一定にするように厳密に細かく制御することである。このように,フィードバック制御を行う場合には,通常の圧力制御よりも厳密で細かい制御を行うことから,その制御される圧力値が陽圧でも陰圧でもよいということはあり得ないところ,上記のとおり,甲2には,陽圧(10~
20Pa)で制御すると記載されており,その技術的意義は,本件審決で認定されたとおり,滅菌処理中の処理室内への室外空気の侵入を防止して処理室内の清浄度を維持することある。そして,甲2に記載された陽圧制御を陰圧制御とすると,甲2の被殺菌空間100への室外空気の侵入を防止することができないことになり,処理室内の清浄度を維持するという上
記技術的意義を損なうことになるから,甲2に記載された室圧調整装置における庫内差圧の陽圧制御を陰圧制御に変更することには阻害要因があ
る。

小括
以上によれば,訂正発明2は,甲1発明,甲2に記載された発明及び周知技術ないし技術常識から容易に想到し得たものではないから,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。

したがって,原告主張の取消事由1-1は理由がない。
2
取消事由1-2(甲1を主引用例とする訂正発明3及び4の進歩性の判断の誤り)について
(1)


原告の主張
訂正発明3は,訂正発明2のバイオガス発生部から発生するガスを,メタノール,ホルムアルデヒド,一酸化炭素,二酸化炭素,水素,酸素の成分を少なくとも含有した活性酸素とフリーラジカルからなる複合ラジカルガスと特定するものであるところ,甲12には,メタノールを気化させて触媒と接触させることにより,メタノール,ホルムアルデヒド,一酸化炭素,二酸化炭素,酸素,過酸化水素や各種ラジカルガスが発生すること
が記載されており(
【0006】ないし【0009】,訂正発明2において

空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して生成するガスを,訂正発明3のように特定することは,当業者であれば格別の創意を要する事項であるとはいえない。
したがって,訂正発明3は,甲1発明に甲2及び甲12に記載された発
明(必要に応じて技術常識)を組み合わせることにより当業者が容易に想到することができたものである。

また,訂正発明4は,訂正発明における触媒の自己反応速度が400℃~500℃の範囲内に制御されることを特定するものであるところ,甲1
には,

ラジカル化触媒反応の温度を約450~500℃の範囲で変化させることが可能である。(

【0042】)と記載されているから,このよう

な特定は訂正発明4と甲1発明の相違点とはならない。
したがって,訂正発明4は,甲1発明に甲2に記載された発明(必要に応じて技術常識)を組み合わせることにより,当業者であれば容易に想到することができたものである。

以上によれば,訂正発明3及び4は当業者が容易に発明することができたということはできないとした本件審決の判断は誤りであるから,本件審決は取り消されるべきである。

(2)

被告の主張
訂正発明3は訂正発明2を引用する発明であり,訂正発明4は訂正発明3
を引用する発明であるところ,前記1(2)のとおり,訂正発明2は当業者が容
易に発明することができたということはできないから,訂正発明3及び4も当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由1-2は理由がない。
3
取消事由2(サポート要件違反の判断の誤り)について
(1)

原告の主張
訂正発明は,暴露部の空間内における温度,湿度及びバイオガス(MRガ
ス)濃度の3つの要素をフィードバック制御することによって,短時間で効率的な核酸分解処理を行うという課題の解決を意図するものである。しかし,訂正明細書においては,訂正発明に係る核酸分解処理装置の試験結果を示す図19B及び19Cに,
90min
の時点で核酸の分解が目的
とするレベルまで進んでいない状態が示されており,短時間で効率的な核酸分解処理を行うという課題が実現できない場合がある以上,訂正明細書の記載に基づいて,訂正発明の課題を解決できるとは直ちに認識することができ
ない。
したがって,訂正発明は,訂正明細書の発明の詳細な説明に記載したもの
であるとはいえないから,訂正発明は,サポート要件に反するものではないとした本件審決の判断は誤りである。
(2)

被告の主張
訂正明細書の図19B及び図19Cの90min時点のスペクトル図
は,核酸の分解が目的とするレベルまで進んでいない状態や外部空間に漂う
核酸が暴露空間内に混入している状態に相当するのではなく,何らかの理由により測定がうまくいっていないか,あるいはノイズが生じているものといえる。
図19B及び図19Cの他の時間のスペクトル図を見れば明らかなように,図19Bの45℃,2μlの場合には,
1minのスペクトル図から核酸

が完全分解されており,図19Cの37℃,2μlの場合でも,
5min
のスペクトル図から核酸が完全分解されていることを見て取ることができる。上記のとおり,
1minと5minのスペクトル図において,核酸
が完全分解されている状態が観測されている以上,その後,2μlという少ないサンプル量で90minという長時間後のスペクトル図の1条件で
正確に測定することができなかったとしても,
それは測定条件の問題であり,
訂正発明が短時間で効率的な核酸分解処理を実現することができないということにはならない。
以上によれば,訂正発明は,訂正明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから,訂正発明がサポート要件に違反するものではないと
した本件審決の判断に誤りはない。
したがって,原告主張の取消事由2は理由がない。
4
取消事由3(実施可能要件違反の判断の誤り)について
(1)

原告の主張
前記3(1)のとおり,訂正発明には,
短時間で効率的な核酸分解を実現

できない場合があるため,訂正発明を用いて核酸分解処理を行うには,何ら
かの所定の処理条件を満たすことが必要であるが,訂正明細書にはそのような条件の記載がないから,
当業者は過度の試行錯誤を強いられることになる。
そうすると,訂正明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が訂正発明を実現可能な程度に明確かつ十分なものとはいえないから,実施可能要件に適合しない。

したがって,これと異なる本件審決の判断は誤りである。
(2)

被告の主張
前記3(2)のとおり,訂正明細書の図19B及び図19Cの1minと
5minのスペクトル図において,核酸が完全分解されている状態が観測されている以上,
その後に2μlという少ないサンプル量で
90min

という長時間後のスペクトル図の1条件で正確に測定することができなかったとしても,それは測定条件の問題であって,訂正発明が短時間で効率的な核酸分解を実現できないことを示すものではない。したがって,本件審決の実施可能要件の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由3は理由がない。

第4
1
当裁判所の判断
訂正明細書の記載事項について
訂正明細書には,別紙1のとおりの記載があり,この記載事項によれば,訂正明細書には,
訂正発明に関し,
次の事項が開示されているものと認められる。

(1)

ラジカル種メタノール由来の気相物質(MRガス)を用いて核酸分解処理
を行う従来の方法には,50℃以上の温度領域において,60分以上の暴露時間を要し,かつ,ホルムアルデヒド成分の濃度が2000ppm以上での効果効能が発揮されるものがあったが,現実的な実用としては,常温から体温領域が求められており,かつ,検体の種類に対応した短時間での効果効能を発揮することが求められていたという課題があった【0009】(

【001
1】【0012】。



(2)本発明は,検体の種類に対応した短時間で高効能を発揮する条件を定義することが可能な核酸分解処理装置を提供することを目的とするものであり(
【0013】,前記課題を解決するための手段として,メタノールガス発)
生部と,空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して少なくともメタノールに由来する活性種を含み生成される複合ガスを発生するバイオガス発生部と,バイオガス発生部における生成ガス量を供給空気量とメタノール量で制御する生成ガス量制御手段と,バイオガス発生部により発生したバイオガスが供給される暴露部と,暴露空間内の温度を制御する手段と,暴露空間内の湿度を制御する手段と,暴露部に供給されたバイオガスを
排気する排気処理部と,
暴露部からのバイオガスの排気量を制御する手段と,
暴露部におけるバイオガスのホルムアルデヒド成分の濃度を測定する手段と,臭いを検出又は測定する手段を備え,ホルムアルデヒド成分濃度測定手段による測定結果として得られるガス濃度情報が生成ガス量制御手段に帰還され,バイオガス発生部において,生成ガス量制御手段により生成ガス量が供給空
気量とメタノール量で制御されるとともに,排気量制御手段により暴露部からのバイオガスの排気量を制御することにより,暴露部の庫内ガス濃度を一定にし,上記排気量制御手段により制御される排気処理手段による暴露空間内のバイオガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出する手段を備え,庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差圧情報が上記排気量制
御手段に帰還され,上記排気量制御手段により暴露部からのバイオガスの排気量を制御することにより,暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にする構成(訂正発明2の構成)を採用した(
【0016】【0017】。


この構成により,
本発明は,フィードバック制御により暴露部の暴露空
間内における温度,湿度,濃度の定量的制御を行うことができ,検体の種類
に対応した短時間で高効能を発揮する条件を定義することができるという効果を奏する(
【0021】【0196】。



2
甲1の記載事項について
甲1には,別紙2のとおりの記載があり,この記載によれば,甲1発明に関し,次のような事項が開示されているものと認められる。
(1)

150~180mm程度の大きさを有する触媒部を備えた従来のMRガ
ス発生装置では,メタノールガスのラジカル化反応に必要な温度を一定に維
持させることが難しく,一定の濃度を有するMRガスを発生させることができなかったため,加熱用の電熱ヒータを備える必要があったが,触媒部は必然的に大きくなってしまい,利便性を高めるためのMRガス発生装置自体の小型化を困難にしていたという問題点があった(
【0006】【0007】。


(2)

本発明は,このような従来の問題点に鑑みて提案されたものであり,
ラジカル化のための触媒反応温度を一定に保ち,安定した濃度の滅菌ガスを発生させるとともに,小型化が可能な滅菌ガス発生装置を提供することを目的とする(
【0008】。

本件発明者らは,ハニカム構造を有する触媒を使用することにより,ラジカル化のための触媒反応温度を一定に維持することが可能になることを見出
し,
本発明を完成するに至った(
【0009】。

本発明は,金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒を使用する構成を採用したことにより,触媒部における表面積が増加して反応効率が向上し,触媒反応温度を一定に維持した自己反応を生じさせることができ,安定した濃度のMRガスを発生させることができ,さらには,触媒
部における反応効率の向上により,触媒部を小型化することができるとともに,滅菌処理装置自体を小型化することを可能にし,利便性を高めるという効果を奏する(
【0013】。

3
甲2の記載事項について
甲2には,別紙3のとおりの記載があり,この記載事項によれば,甲2に関し,次のような事項が開示されているものと認められる。

(1)

ホルムアルデヒドガス殺菌装置において,十分に保証可能な殺菌効果を
得るためには,被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度,湿度,温度を制御し,また,被殺菌空間は密閉された空間(室)となるため,室内圧力を制御する必要も生じる(別紙3の2(2))

本発明は,上記課題を解決するための手段として,密閉された室内にホルムアルデヒドガスを供給すると共に排出するホルムアルデヒドガス供給排出装置と,室内の圧力を調整する室圧調整装置とを備え,ホルムアルデヒドガス供給排出装置は,ホルムアルデヒドガスの発生器と,ホルムアルデヒドガスの湿度調節器と,ホルムアルデヒドガスの温度調節器と,ホルムアル
デヒドガスを室内へ搬送して導入するガス搬送器と,室内からの排ガスを処理する排ガス処理器と,排ガスの排出器と,室内のホルムアルデヒドガスの濃度,
湿度及び温度を所定の濃度,
湿度及び温度に制御する制御部とを有し,
室圧調整装置は,室内に室外の空気を給気するユニットと,室内の空気を室外に排気するユニットと,室内と室外との圧力差を検出する圧力差検出手段
と,これによる検出値に基づいて給気ユニット及び排気ユニットを制御する手段と,前記検出値に基づいて前記室圧の制御状況を出力する手段とを有する構成を採用した。
この構成により,本発明」被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度,は,湿度,温度をそれぞれ所定の値に制御し,かつ,室内温度の上昇により室内の空気が膨張したような場合においても室圧を一定に保つことができるので,十分に保証可能な殺菌効果を得られるという効果を奏する(以上,別紙3の2(3),(4))。(2)「本発明の第2の実施の形態(図2)は,ホルムアルデヒドガス供給排出装置4及び室圧調整装置6を備えて構成されるホルムアルデヒドガス殺菌
装置であり,ホルムアルデヒドガス供給排出装置4は,濃度センサ12,湿度センサ14,温度センサ16により得られた被殺菌空間100内のホルム
アルデヒドガス濃度,湿度,温度の値に基づいて,ホルムアルデヒドガス発生器36,温度調節器34,湿度調節器32,ポンプ26及び28を制御する制御器24を備え,また,室圧調整装置6は,室内と室外との圧力差を検出する微差圧検出器56により検出された検出値に基づいて給気ユニット52及び排気ユニット54を制御するコントロールユニット58を備えている
(別紙3の2(5),(7))

第2の実施の形態に係るホルムアルデヒドガス殺菌装置は,
所定時間,室内の温度,湿度,ホルムアルデヒドガスの濃度がそれぞれ温度20~40℃の範囲,湿度50~90%(相対湿度)の範囲,ホルムアルデヒドガス濃度160ppm以上を維持している間,室圧調整装置6のコントロールユニ

ット58により室内の圧力を陽圧力に維持している(別紙3の2(9))。
4
本件出願日当時の技術常識等について
(1)ア

本件出願日前に頒布された甲23,
甲82ないし84には,
それぞれ別

紙4のような記載がある。

上記アの各文献における記載を総合すると,本件出願日当時,バイオハザード施設やケミカルハザード施設等,人体に有害な物質が室内に存在する場合には,室内から室外へその物質が漏えいすることがないように,室内を室外に対して陰圧に制御することや,人体に有害なオゾンガスを用いて室内の滅菌を行う場合には,オゾンガスが室内から室外へ漏洩することがないように,室内を室外に対して陰圧に制御することは,周知の技術
であったものと認められる。
(2)ア

本件出願日前に頒布された甲81,甲85,甲88,甲94及び甲95
には,それぞれ別紙5のような記載がある。

上記アの各文献における記載を総合すると,本件出願日当時,ホルムアルデヒドガスは,人体に有毒であることは周知であり,また,滅菌・殺菌のためにホルムアルデヒドガスを処理室内で使用するに当たり,処理室内
の圧力を処理室外の圧力に対して陰圧とした状態で使用する場合があることは,本件出願日当時の技術常識であったと認められる。
5
取消事由1-1(甲1を主引用例とする訂正発明2の進歩性の判断の誤り)について

(1)

特許無効審判事件についての審決の取消訴訟において審決取消しの判決
が確定したときは,審判官は特許法181条2項の規定に従い当該審判事件について更に審理を行い,審決をすることとなるが,審決取消訴訟は行政事件訴訟法の適用を受けるから,再度の審理ないし審決には,同法33条1項の規定により,上記取消判決の拘束力が及び,この拘束力は,判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものであるから,取消判決の上記認定判断に抵触する認定判断をすることは許されず(最高裁第三小法廷判決平成4年4月28日判決・民集46巻4号245頁参照)その審,
判を不服とする審決取消訴訟においても,これを前提に判断されるべきことになる。

前記第2の3(2)のとおり,一次判決は,①甲2における本発明の第2の実施の形態の
微差圧検出器56

コントロールユニット58
及び
排気量調整電磁弁74及び送風機82は,それぞれ,訂正前発明2における庫内差圧手段上記庫内差圧検出手段による検出結果による検出結果か,ら得られる庫内差圧情報が・・・帰還される上記排気量制御手段及び上記排気量制御手段により制御される排気処理手段に相当するものと認められるから,甲2には,相違点2に係る本件訂正前の請求項2の発明の構成が開示されているといえる,②甲1及び甲2に接した当業者は,甲1発明において安定した濃度の滅菌ガスを発生させるとともに,十分に保証可能な殺菌効果を得るために甲2に記載の被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度,
湿度,温度をそれぞれ所定の値に制御し,かつ,被殺菌空間の室圧を一定に保つための構成を適用する動機づけがあると認められる,③したがって,当
業者は,甲1及び甲2に基づいて,甲1発明に甲2に記載の上記構成を適用して相違点2に係る本件訂正前の請求項2に係る発明の構成を容易に想到し得たものと判断した。
そして,被告は,一次判決の確定後の審判手続において,前記第2の2のとおり,一次訂正の内容に加えて更に請求項2に上記暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にする(二重下線は本件訂正箇所を示す。
)との訂正を行い,本
件審決は,前記第2の4(2)イのとおり,一次審決の相違点1(ただし,本件審決が認定した相違点2を除く。及び2の構成を合わせて相違点1とし,)

件訂正により訂正発明2に加わった構成である暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にすることを特徴とする点を同相違点に加えた。以上の経緯を踏まえると,訂正発明2の進歩性の判断に関しては,甲2には,
一次審決が認定した相違点2の構成が開示されていることを前提として,さらに,
暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にする
という訂正発明2の構成が
容易想到といえるかについて判断されるべきことになる。
以下,これを前提として,検討する。

(2)

甲2の開示事項について
甲2の発明の詳細な説明には,①甲2発明のホルムアルデヒドガス殺菌装
置は,室内と室外との圧力差を検出する圧力差検出手段と,圧力差検出手段により検出された検出値に基づいて給気ユニットと排気ユニットを制御する制御手段を有しており,こうした室内調整装置を備えるため,室内温度の上昇により室内の空気が膨張したような場合においても,室内を一定に保つことができる(別紙3の2(4))との記載があり,②発明を実施するための最良の形態の1つである第2の実施の形態として,室内と室外との圧力差を検出する微差圧検出器56,微差圧検出器56により検出された検出値
に基づいて給気ユニット52及び排気ユニット54を制御するコントロールユニット58を備え,コントロールユニット58は,微差圧検出器56によ
り検出された検出値に基づいて,給気量調整電磁弁62,送風機66,排気量調整電磁弁74及び送風機82等の制御を行う構成が開示され,さらに,湿度センサ14,温度センサ16により得られた室内の温度及び湿度がそれぞれ所定の温度20~40℃,湿度の範囲50~90%(相対湿度)の範囲になるように制御器24で湿度調整器32及び温度調整器34で調整し,ホルムアルデヒドガス濃度が160ppm以上で維持するようにホルムアルデヒドガス発生器36及びポンプ26で調整して所定の時間を維持し,さらに,
所定の時間,室内の温度,湿度,ホルムアルデヒドガスの濃度を上記の数値で維持している間,室圧調整装置により室内の圧力を陽圧力(10~20P
a)に維持する態様が開示され,その上で,室圧制御装置6により室内と室外の圧力差を常時10~20Paに維持することができるため,ホルムアルデヒドガスを用いて室内の殺菌を行う場合に,室内温度の上昇により室内空気の体積が増加した場合においても,ホルムアルデヒドガスがエアー処理装置76で処理された後に排出されるため,ホルムアルデヒドガスが未処理の
まま室外に漏れ出すことを防止することができる
(別紙3の2(7)ないし(9))
旨の記載がある。
このように,甲2において開示されている,被殺菌空間である室内を室圧調整装置により陽圧に維持する構成は,あくまで第2の実施の形態についてのものであることに加え,甲2の特許請求の範囲(請求項3)には,室内の
圧力を調整する室内調整装置について,室内と室外の圧力差を検出する圧力差検出手段と前記圧力差検出手段により検出された検出値に基づいて制御手段を介して室圧を調整するとの発明特定事項を有するに止まり,被殺菌空間を陽圧で制御するとは特定されていないことからすると,甲2発明の技術的意義は,前記3(1)のとおり,被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度,湿
度,温度をそれぞれ所定の値に制御し,かつ,室内温度の上昇により室内の空気が膨張した場合においても室圧を一定に保つことができ,十分に保証可
能な殺菌効果が得られるという効果を奏することにあって,室圧調整装置により室内の圧力を陽圧力(10~20Pa)に維持する態様は,あくまで実施形態の1つであるにすぎないというべきである。
そして,甲2における本発明の第2の実施の形態の微差圧検出器56コントロールユニット58及び排気量調整電磁弁74及び送風機,82は,それぞれ,訂正前発明2における庫内差圧手段上記庫内差,圧検出手段による検出結果による検出結果から得られる庫内差圧情報が・・・帰還される上記排気量制御手段及び上記排気量制御手段により制御される排気処理手段に相当するとの一次判決の説示を踏まえると,甲2に
は,庫内差圧を検出する庫内差圧検出手段を備えており,庫内差圧検出手段による検出結果から得られる上記庫内差圧情報が排気量制御手段に帰還され,上記排気量制御手段により被殺菌空間から排気するホルムアルデヒドガスの排気量を制御することにより,被殺菌空間(庫内)の圧力を一定に維持することが開示されているものと認められる。

(3)

相違点1の容易想到性について
前記2(2)のとおり,
甲1には,
ラジカル化のための触媒反応温度を一定に

保ち,安定した濃度のMRガスを発生させる滅菌ガス発生装置を提供することを目的とすることについての開示があり,また,前記3(1)のとおり,甲2には,甲2発明のホルムアルデヒドガス殺菌装置の構成を採用することにより,被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度,湿度,温度をそれぞれ所定の値に制御し,かつ,室内温度の上昇により室内の空気が膨張したような場合においても室圧を一定に保つことができるので,十分に保証可能な殺菌効果が得られるという効果を奏することの開示がある。そうすると,甲1及び甲2に接した当業者は,甲1発明において安定した濃度の殺菌ガスを発生さ
せるとともに,十分に保証可能な殺菌効果を得るために,甲2記載の被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度,湿度,温度をそれぞれ所定の値に制御
し,かつ,被殺菌空間の室圧を一定に保つための構成を適用する動機づけがある。
そうすると,本件出願日当時,バイオハザード施設やケミカルハザード施設等,人体に有害な物質が室内に存在する場合には,室内から室外へその物質が漏えいすることがないように,室内を室外に対して陰圧に制御することや,人体に有害なオゾンガスを用いて室内の滅菌を行う場合には,オゾンガスが室内から室外へ漏洩することがないように,室内を室外に対して陰圧に制御することは,周知の技術であり(前記4(1))
,また,滅菌・殺菌のため
にホルムアルデヒドガスを使用するに当たり,処理室内を処理室外の圧力に
対して陰圧とした状態で使用する場合もあることは技術常識である(同(2))から,甲1発明に甲2に開示された事項を適用するに当たり,被殺菌空間の状況や目的を踏まえ,こうした周知技術ないし技術常識を参酌して,甲2の被殺菌空間内の圧力を陰圧で維持することも当業者であれば容易に想到し得たものということができる。そして,甲1発明と甲2に開示された事項に周
知技術ないし技術常識を参酌して適用した結果,被殺菌空間内を庫内差圧を陰圧で維持する構成としたことによって,当業者が予測し得ない顕著な効果を奏すると認めるに足りる証拠はない。
したがって,甲1及び甲2に記載された事項と周知技術ないし技術常識を踏まえれば,相違点1のうち暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にするとい
う訂正発明2の構成についても,進歩性を認めることはできない。(4)

被告の主張について
被告は,前記第3の1(2)アないしウのとおり,訂正発明2においては,バイオガスの暴露部はチャンバーのような狭い空間を想定しており,暴露部の温度,湿度,バイオガス濃度,庫内差圧については細かな制御が必要
であるところ,庫内ガス濃度情報及び庫内差圧情報という2つの情報を基に,生成ガス及び排気量を調整し,庫内ガス濃度と庫内差圧の両者を一定
にするという制御を行い,このフィードバック制御により暴露部の暴露空間内における温度,
湿度,
濃度,
庫内差圧の定量的制御を行うことができ,
こうしたフィードバック制御によって暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にしている構成を採用しているから,
暴露部の庫内差圧を陰圧で一定
にす
ることの技術的意義は,こうしたフィードバック制御を行う構成と一体として判断されるべきであり,原告の挙げる文献には,オゾン等の滅菌性ガスにより室内を滅菌する際に対象室内を陰圧にすることや,滅菌・殺菌のためにMRガス等を処理室内で使用するに当たり処理室内の圧力を室外の圧力に対して陰圧とした状態にすることが記載されているにすぎず,訂
正発明2のようにフィードバック制御を行う旨の記載も示唆もない旨主張する。
しかし,甲2には,訂正発明2の構成のうち一次審決が認定した相違点2の構成(すなわち,上記排気量制御手段により制御される排気処理手段による滅菌タンク内のMRガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を
検出する庫内差圧検出手段を備え,上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差圧情報が上記排気制御処理手段に帰還され,上記排気量制御手段により滅菌タンク内から排気するMRガスの排気量を制御することにより,滅菌タンク内の庫内差圧を一定にするという構成)が開示されていることは,一次判決が認定するとおりであり,この点の判断に拘
束力が生じることは前記(1)のとおりである。そして,甲2には,訂正発明2の技術的意義として被告が主張するところのフィードバック制御が開示されていることは,
被告も認めるところ
(前記第3の1(2)ウ(ア)参照)

前記(2)のとおり,甲2には被殺菌空間(庫内)の圧力を一定に維持する制御が開示されており,周知技術(前記4(1))ないし技術常識(同(2))を
参酌してその圧力制御を陰圧で一定に維持する制御として甲1発明に適用すれば,相違点1の庫内差圧を陰圧で一定に制御する構成に想到す
ることは前記(3)のとおりである。
したがって,被告の上記主張は理由がない。

被告は,前記第3の1(2)エのとおり,甲2は,陽圧に制御することを目的とするものであり,その技術的意義は,本件審決で認定されたとおり,
滅菌処理中の処理室内への室外空気の侵入を防止して処理室内の清浄度を維持することにあり,甲2に記載された陽圧制御を陰圧制御とすると,甲2の被殺菌空間内の清浄度を維持するという技術的意義を損なうから,甲2における庫内差圧を陽圧制御から陰圧制御とすることには阻害要因がある旨主張する。

しかし,甲2には,室圧調整装置により室内の圧力を陽圧力(10~20Pa)に維持する態様についての記載はあるものの,それはあくまで発明の実施形態の1つとして記載されているにすぎず,甲2に係る装置の技術的意義は,被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度,湿度,温度をそれぞれ所定の値に制御し,かつ,室内温度の上昇により室内の空気が膨張
した場合においても室圧を一定に保つことができ,十分に保証可能な殺菌効果が得られるという効果を奏することにあることは前記(2)のとおりであるから,こうした技術的意義からすると,甲2の室圧調整装置において庫内差圧を陰圧に制御することに阻害要因はない。
なお,本件審決は,
甲第23号証は,その出願日が甲2に係る特許出願の優先日と一致する,同一発明者の別の特許出願に係る公開公報であり,両者は,ホルマリンガス等を滅菌に利用する装置の処理室内の圧力を陽圧に制御しているため,その基本的な着想が共通していると強く推認できると判断するが,人体に有害なオゾンガスを利用して殺菌する場合にはオゾンガスが室内から室外へ漏えいすることがないように,室内を室外に対し
て陰圧に制御することは周知技術である(前記4(1)イ)ところ,同じく人体に有害なホルムアルデヒドガス(ホルマリンガス)を用いた殺菌装置に
関して,甲2自体には,室内調整装置を陽圧に制御する技術的意義について記載も示唆もないにもかかわらず,甲2と同一発明者による甲2の優先日と同日の出願であるという理由で,別の特許出願に係る甲23に記載された陽圧制御の技術的意義をもって甲2の陽圧制御の技術的意義であると認定することはできないから,甲23の室圧制御装置が陽圧制御装置を
している場合における技術的意義をもって甲2の装置に係る技術的意義であると認定した本件審決の判断は誤りというほかない。
したがって,本件審決が認定した甲2発明の技術的意義を論拠として,甲2発明の陽圧制御を陰圧制御とすることに阻害要因があるとする被告の上記主張は理由がない。

(5)

小括
以上によれば,相違点1に係る訂正発明2の構成は,当業者が容易に想到
することができたものと認められる。
したがって,本件審決の判断は誤りであるから,原告主張の取消事由1-1は理由がある。

6
取消事由1-2(甲1を主引用例とする訂正発明3及び4の進歩性の判断の誤り)について
本件審決は,訂正発明3は訂正発明2を引用する発明であり,また,訂正発明4は訂正発明3を引用する発明であるところ,訂正発明2について当業者が
容易に発明をすることができたということはできないので,訂正発明3及び4についても当業者が容易に発明をすることができたということはできない旨判断した。
しかしながら,前記5のとおり,本件審決のした訂正発明2の容易想到性の判断に誤りがあるところ,訂正発明2につき容易想到性が認められる以上は,
同容易想到性が認められないことのみを理由として訂正発明3及び4の容易想到性を否定した本件審決の上記判断は,誤りである。

したがって,原告主張の取消事由1-2は理由がある。
7
結論
以上によれば,原告主張の取消事由1-1及び1-2は理由があるから,その他の点について判断するまでもなく,本件審決は取り消されるべきである。
よって,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官
菅野中村岡山雅之
裁判官

裁判官

忠広
(別紙1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,メタノールに由来する活性種を含むバイオガスにより核酸分解処理を行う核酸分解処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学等に係る試験研究等を行うに当り,水に難溶性の高分子である核酸が,用
いている容器等の固体の表面に不必要に付着していたり反応液等の液体中に不必要に混入していたり,また,細胞が,容器等の固体や反応等の液体の表面に不必要に付着していたり,反応液等の液体中に不必要に混入していたりすれば,それが,試験研究等に重大な悪影響を及ぼすおそれがある。
【0003】

メタノールから触媒反応により発生するラジカル性
(メタノールラジカルMR)

ガスを利用した滅菌システムは,これまで医療器具等の滅菌に用いるガスとして多用されていたエチレンオキサイドガス(EOG)やオゾン等以上の殺菌力を持ち,残留性,腐食性がないことが確認されており,浸透性や拡散性も優れていることから現在多くの分野において注目されている。

【0004】
バイオガスとは,メタノールから触媒により生じた強力な殺菌効果をもつラジカル性複合ガスのことであり,浸透性が高く,大気圧のままでも被滅菌物の内部まで殺菌ができる。接触性殺菌のミストでないことから,金属の腐食やプラスチック等の劣化(腐食性)が無く,非滅菌物の素材を選ばず,さらに,被滅菌物に残留しな
い(残留性)などの優れた特質があり,拡散性も広く隅々まで満遍なく暴露が可能であり,細かな隙間まで浸透し,精密機器や電子機器等の通電稼動状態においても
暴露が可能であり,高い安全性を有する。
【0009】
また,
液相以外の状態
(非ウェット状態)
で,
核酸を有効に分解する方法として,
ヒドロキシメチルラジカル,ヒドロペルオキシラジカル,水素ラジカル,ヒドロキシルラジカルを少なくとも含むラジカル種メタノール由来の気相物質(MRガス)を用いて,核酸が存続可能な温度条件下において,非可逆的に核酸を分解し,不活化する方法が提案されている(例えば,特許文献3参照)

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】

【0011】
しかしながら,特許文献3で提案されている非ウエット型の核酸分解剤を用いて核酸を分解する従来の方法では,50℃以上の温度領域において,60分以上の暴露時間を要し,且つ,ホルムアルデヒド成分の濃度が2000ppm以上での効果効能が発揮されるものであった。

【0012】
しかし,現実的な実用としては,常温~体温領域が求められており,且つ,短時間での効果効能を発揮することが求められていた。
【0013】
そこで,上述の如き従来の実情に鑑み,本発明の目的は,検体の種類によっての
短時間で高効能を発揮する条件を定義することが可能な核酸分解処理装置を提供することにある。
【0014】
この核酸分解処理装置は,空間に漂う核酸(DNA・RNA)もコンタミネーションとして暴露対象とする。

【課題を解決するための手段】
【0017】

本発明は,核酸分解処理装置であって,メタノールタンクから供給されたメタノールを霧状に噴射するノズルを備え,該ノズルを介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と,上記メタノールガス発生部の上方に位置して,熱反射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり,該上部には空気を供給する空気供給部が連結されており,該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに,上記メタノールガスに該空気供給部から供給された空気を所定の割合で混合させる筒体部と,上記筒体部の上方に位置し,該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触
媒部とを有し,上記触媒部は,金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され,該ラジカル反応触媒を複数積層してなり,空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して少なくともメタノールに由来する活性種を含み生成される複合ガス(以下バイオガスという)を発生するバイオガス発生部と,上記バイオガス発生部における生成ガス量を供給空気量とメタノール
量で制御する生成ガス量制御手段と,上記バイオガス発生部により発生したバイオガスが供給される暴露部と,上記暴露部の暴露空間内の温度を制御する温度制御手段と,上記暴露部の暴露空間内の湿度を制御する湿度制御手段と,上記暴露部に供給されたバイオガスを排気する排気処理部と,上記排気処理部により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御するバイオガスの排気量制御手段と,上記暴
露部におけるバイオガスのホルムアルデヒド成分の濃度を測定するホルムアルデヒド成分濃度測定手段と,臭いを検出又は測定する手段を備え,上記ホルムアルデヒド成分濃度測定手段による測定結果として得られるガス濃度情報が上記生成ガス量制御手段に帰還され,上記バイオガス発生部において,一定の触媒の自己反応温度と濃度のバイオガスとなるように,上記生成ガス量制御手段により上記バイオガス
発生部における生成ガス量が供給空気量とメタノール量で制御されるとともに,上記排気量制御手段により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御するこ
とにより,上記暴露部の庫内ガス濃度を一定にし,上記排気量制御手段により制御される排気処理手段による上記暴露部の暴露空間内のバイオガスの排気処理に起因して生じる庫内差圧を検出する庫内差圧検出手段を備え,上記庫内差圧検出手段による検出結果から得られる庫内差圧情報が上記排気量制御手段に帰還され,上記排気量制御手段により上記暴露部から排気するバイオガスの排気量を制御することにより,上記暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にするものとすることができる。【0019】
また,本発明に係る核酸分解処理装置において,上記バイオガス発生部は,メタノール,ホルムアルデヒド,一酸化炭素,二酸化炭素,水素,酸素の成分を少なく
とも含有した活性酸素とフリーラジカルからなる複合ラジカルガスを発生するものとすることができる。
【0020】
さらに,本発明に係る核酸分解処理装置において,上記バイオガス発生部は,例えば,上記自己反応温度が400℃~500℃の範囲内に制御されるものとするこ
とができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る核酸分解処理装置では,フィードバック制御により暴露部の暴露空間内における温度,湿度,濃度の定量的制御を行うことができ,検体の種類によっ
ての短時間で高効能を発揮する条件を定義することができる。
【0022】
この核酸分解処理装置は,核酸分解の効果効能を発揮する環境温度を37℃の体温域とし,15分以内の短時間で,且つ,ホルムアルデヒド成分濃度100ppm以内において,
二重螺旋のDNA核酸を有効に分解
(10bp以下のバラバラ状態)

する能力を有し,気相の核酸分解法として核酸分解99.99%~100%を達成することができる。

【0023】
また,この核酸分解処理装置では,非ウエットで99.99%,ウエット(100μl)で95%の効能を発揮する。
【0024】
この発明を基にした応用技術により高度先端的医療(細胞治療,遺伝子治療,再生医療)分野や海洋研究分野,航空宇宙分野の他,危機管理分野(防衛,消防,警察等)
,医療,介護等におけるDNA・RNAフリー(バイオ系核酸レベルのコンタミネーションの除去・除染)を必要とする分野や効果効能レベルのコントロールによって滅菌,殺菌,除菌の分野への適用が可能である。

【発明を実施するための形態】
【0026】
以下,本発明の実施の形態について,図面を参照して詳細に説明する。なお,本発明は以下の例に限定されるものではなく,本発明の要旨を逸脱しない範囲で,任意に変更可能であることは言うまでもない。

【0027】
本発明は,
例えば図1に示すような構成の核酸分解処理装置100に適用される。【0028】
この核酸分解処理装置100は,メタノールに由来する活性種を含むバイオガスにより核酸分解処理を行うものであって,
バイオガス発生部110,
暴露部120,

排気処理部140及び,これら各部の動作を制御する制御部150を備える。【0029】
この核酸分解処理装置100において,バイオガス発生部110は,空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化して少なくともメタノールに由来する活性種を含むバイオガスを発生するものである。

【0030】
このバイオガス発生部110は,例えば,図2に示すように,原料となるメタノ
ールを供給する着脱式のメタノール供給タンク1にソレノイドバルブからなる直動式オンオフ弁2を介して接続されたメタノールサブタンク3からメタノールがメタノールポンプ7により吸い上げられてメタノール制御弁17を介して供給される気化器10が内筒体12Aの下部に設けられ,上部に触媒カートリッジ18が装着されたメタノールガス発生部11を外筒体12B内に設けてなる。
【0042】
上記バイオガス発生部110におけるバイオガスの生成ガス量は,上記メタノールガス発生部11に供給する空気量(エアポンプ9)とメタノール量(燃料ポンプ7)で制御することができる。

【0044】
すなわち,上記バイオガス発生部110は,図3に示すように,上記メタノールサブタンク3から供給されたメタノールを霧状に噴射するノズル23を備え,該ノズル23を介して噴射されたメタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部11の気化器10と,上記気化器10の上方に位置して,熱反
射可能な多孔質金属材料で互いに隔てられた上部と下部とからなり,該上部には空気を供給する上記エアポンプ9が連結されており,該メタノールガス発生部11から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに,上記メタノールガスに該エアポンプ9から供給された空気を所定の割合で混合させる上記内筒体12Aと,上記内筒体12Aの上方に位置し,該内筒体12Aにおい
て上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部を有し,上記触媒部は,金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成され,該ラジカル反応触媒を複数積層した触媒カートリッジ18からなる。
【0049】

より具体的に説明すると,気化器ヒータ20への通電が開始され,上記メタノールサブタンク3から図4のメタノール供給用連通管24を通って供給されたメタノ
ールを導通する熱媒体21がその気化器ヒータ20からの熱によって100~200℃に加熱され始める。そして,上記メタノールサブタンク3から供給されたメタノールが熱媒体21を通過すると,メタノールは熱媒体21に生じている熱によって温められて気化し,メタノールガスが発生する。このようにしてメタノールガスが発生すると,メタノールガスは気化ノズル22及び図3の気化カバー14を通って分散し,内筒体12A中を自然対流を利用して,触媒カートリッジ18へと移行する。
【0059】
ここで,従来のMRガス滅菌処理と比較して,滅菌環境を所定の湿度に保つ必要
は無く,従来温度50℃以上,湿度75%で60分暴露を要した核酸分解効能が,温度37℃以上,湿度30%~45%以上,15分発生暴露にて核酸の分解効能を得ることができる。したがって,滅菌環境(核酸分解)における湿度制御は厳格でなくても良く,温度制御を中心としたバイオガス発生環境において,湿度制御は結露状態の発生のない制御で運用すれば良い。

【0063】
なお,バイオガス発生部11における温度を制御し,安定的にバイオガスを生成して供給するために,図2の異常温度センサ14Aが上記内筒体12Aの下部に設けられているとともに,触媒温度センサ15が上記内筒体12Aの下部に設けられている。上記異常温度センサ14A及び触媒温度センサ15により得られる各温度
情報を上記制御部150に供給することにより,
温度を管理制御することにより,

メタノールの着火等を防止して,安全性を向上させることができる。【0077】
例えば,暴露部120の容積が1立方メートル以内の場合の割合は,メタノール量3cc/分の場合の空気供給量は4.5L/分,容積が0.5立方メートル以下
の容積の場合は5.0L/分,或いはメタノールの量を少なくして空気量を下げるなど,濃度測定により目的に応じた最適化が実現できる構造を有している。
【0080】
このバイオガス発生部110では,空気の供給量を変化させることによりラジカル化触媒反応の温度を制御できる。メタノールガスのラジカル化触媒反応に必要な反応温度は約400~500℃であり,このバイオガス発生部110では,約3.0ccのメタノール供給量に対して,筒体上部12aから供給される空気の供給量を約3.5~6.0L/minの範囲で変化させる。これにより,ラジカル化触媒反応の温度を約400~500℃の範囲で変化させることが可能となる。したがって,上記エアポンプ9からの空気の供給量を変化させることにより,容易にラジカル化触媒反応の温度を制御することができる。

【0081】
このように,このバイオガス発生部110によれば,ラジカル化触媒反応温度を維持させるための随時の加熱を必要とせず,安定した自己反応によりラジカル化反応を起こすことができることから,空気の供給量を変化させるだけで,容易にラジカル化反応温度を制御することができる。また,発生するバイオガスの濃度はラジ
カル化触媒反応温度に依存することから,上述のように空気の供給量を変化させて反応温度を制御することで,バイオガスの濃度を容易に制御することができる。これにより,
暴露対象によって容易にバイオガスの濃度を変化させることができ,種々
の暴露対象に対して滅菌処理を施すことが可能となる。
【0097】

また,この核酸分解処理装置100において,上記暴露部120は,例えば,図8に示すように,庫内ヒータ130Aと庫内冷却器130Bとにより温度と湿度の制御が可能な恒温恒湿槽からなる。
【0101】
また,この暴露部120には,外気導入バルブ125からヘパフィルタ124を
介して外気(空気)が導入され,また,外部ガス導入バルブ131を介して窒素N2や炭酸ガスCO2等の外部ガスが導入できる。上記ヘパフィルタ124を介して
上記暴露部120に導入される外気(空気)は,空気加熱ヒータ24Aにより加熱できるようになっている。
【0103】
また,この暴露部120には,ガス濃度センサ129,庫内圧力センサ132,湿度センサ133,温度センサ134,暴露センサ(核酸センサ)135,臭いセンサ136A,136B,などの各種センサが設けられている。上記ガス濃度センサ129,庫内圧力センサ132,湿度センサ133,温度センサ134,暴露センサ135,臭いセンサ136A,136Bにより得られる暴露空間内のガス濃度情報,圧力情報,湿度情報,温度情報,暴露(核酸への効果効能など)情報,臭い
情報(内外)が上記制御部150に供給されるようになっている。当然に暴露部120の外の温度(室温)情報も制御部150に供給する。
【0104】
さらに,上記暴露部120に供給されたバイオガスは,排出側開閉バルブ128を開くことにより排気することができるようになっている。

【0107】
また,この核酸分解処理装置100において,上記排気処理部140は,上記暴露部120に供給されたバイオガスを排気するものであって,例えば,図9に示すように,ガス導入管アタッチメント141を介して上記暴露部120の排出側開閉バルブ128に接続される排気ブロア143,上記排気ブロア143により上記暴
露部120から排気ガスがガス整流槽144を介して送られてくる排気ガスを分解する排気分解触媒部145を備え,上記排気分解触媒部145において排気ガスを触媒反応により無害化して排気管149から排気する。
【0108】
この排気処理部140は,上記外気導入バルブ142を介して外気(空気)を導
入できるようになっている。
【0111】

そして,この核酸分解処理装置100において,上記制御部150は,図10に示す制御系により,上記バイオガス発生部110,暴露部120,排気処理部140を次のように制御する。
【0140】
暴露部120の庫内の圧力を監視しながら,庫内が陰圧(-0~-0.01MPa)になるように排気処理部140により排気吸引する。
【0141】
その後,庫内圧力センサ132にて陰圧を確認の後に,上記制御部150は,上記バイオガス発生部110,暴露部120の庫内温度,排気処理部140の各温度
が規定値に達し起動準備が整った時に,上記バイオガス発生部110に対してメタノール供給ポンプ7の起動を指示する。
【0142】
暴露部120の庫内は,ガス導入,撹拌,排気状態を維持する。
【0143】

そして,暴露部120の庫内の濃度が一定になるように,ガス濃度センサ129により得られるガス濃度情報に基づいてバイオガス発生部110の制御を以下のように行う。
【0144】
上記バイオガス発生部110におけるバイオガスすなわち核酸分解ガスの発生量
は,上記バイオガス発生部110のエア量とメタノール量の混合割合で決まる。エア供給量は,暴露部120の庫内の容積と発生時間の兼ね合いで定める。また,暴露部120の庫内が陰圧になる吸気と排気のバランス範囲で定める。また,メタノール量は,触媒の自己反応温度の適正範囲内で定める。
【0145】

また,暴露部120の陰圧制御において,供給エア量と排気ブロアの吸引量のバランスは-0~-0.01MPaの範囲とする。試料のパラメータ(濃度,時間,
温度,湿度)により最適な陰圧バランスに調整する。
【0146】
暴露部120の庫内のガス濃度制御では,暴露対象のパラメータ情報にて濃度が一定になるように陰圧バランスを調整する。
【0147】
排気処理部140の排気ブロア143の吸入量を減らすと濃度は上昇し,吸入量を増やすと濃度は低下する。上記排気ブロア143の吸引量は,暴露部の120の庫内の陰圧範囲で制限する。陰圧バランス範囲内で調整できない場合は,メタノール供給量を制御する。バイオガス発生部110におけるメタノール供給量を増やす
と濃度が上昇し,減らすと低下する。この範囲は,触媒の自己反応温度域で制限する
【0148】
例えば,上記暴露部120の庫内のガス濃度制御では,ガス濃度センサ129により得られるガス濃度情報をプロセス値PVとし,庫内濃度の閾値SPと上記プロ
セス値PVを用いて,図12に示すような制御系により,暴露部120の庫内の濃度を一定にする制御を行う。
【0150】
そして,上記メタノールポンプ7によるメタノールの供給量GP1とエアポンプ9による空気の供給量に決まるガス濃度が暴露部120における外乱要素とともに
ガス濃度センサ129により検出され,このガス濃度センサ129により得られるガス濃度情報GFが上記プロセス値PVとして帰還されることにより,暴露部120の庫内の濃度を一定にする制御が行われる。
【0153】
例えば,暴露部120の庫内の湿度制御では,湿度センサ134により得られる
庫内湿度情報をプロセス値PVとし,庫内湿度の閾値SPと上記プロセス値PVを用いて,図13に示すような制御系により,暴露部120の庫内湿度を一定にする
制御を行う。
【0155】
そして,上記冷却ゾーン121又は庫内冷却器130Bによる除湿機能により制御される暴露部120の庫内湿度が外乱要素とともに温度センサ134により検出され,この温度センサ134により得られる庫内湿度情報GFが上記プロセス値PVとし帰還されることにより,暴露部120の庫内湿度を一定にする制御が行われる。
【0157】
また,暴露部120の庫内温度制御では,温度センサ134により得られる庫内
温度情報をプロセス値PVとし,庫内温度の閾値SPと上記プロセス値PVを用いて,図14に示すような制御系により,暴露部120の庫内の温度を一定にする制御を行う。
【0159】
そして,上記庫内ヒータ130Aと庫内冷却器130Bの制御に応じた庫内温度
が暴露部120における外乱要素とともに温度センサ134により検出され,この温度センサ314により得られる庫内温度GFが上記プロセス値PVとし帰還されることにより,暴露部120の庫内温度を一定にする制御が行われる。【0161】
また,暴露部120の庫内気圧制御では,庫内気圧又は差圧及び排気反応温度の
目標値への追従運転を行う。この庫内気圧制御では,比例(P)制御と積分(I)の組み合わせによるPI制御により排気量を制御する。陰圧範囲内を目標値とした庫内気圧制御を行う。目標値は排気反応温度により自動的に定める。【0162】
例えば,暴露部120の庫内差圧制御では,差圧センサ134により得られる庫
内差圧情報をプロセス値PVとし,庫内差圧の閾値SPと上記プロセス値PVを用いて,図15に示すような制御系により,暴露部120の庫内差圧を一定にする制
御を行う。
【0163】
すなわち,庫内差圧の閾値SPに応じた第1の制御量C11と上記庫内差圧の閾値SPと上記プロセス値PVとの差分を第2の制御量C12として加算した第3の制御量C13で排気処理部140の外気導入バルブ142の開閉度を制御するとともに,上記庫内差圧の閾値SPに応じた第4の制御量C21と上記庫内差圧の閾値SPと上記プロセス値PVとの差分を第5の制御量C22として加算した第6の制御量C23で上記排気処理部140の排気ブロア143の回転数を制御する。【0164】

そして,上記排気処理部140の外気導入バルブ142の開閉度と排気ブロア143の回転数の制御に応じた庫内差圧が暴露部120における外乱要素とともに庫内差圧センサ132により検出され,この庫内差圧センサ132により得られる庫内差圧GFが上記プロセス値PVとし帰還されることにより,暴露部120の庫内差圧を一定にする制御が行われる。

【0182】
また,上記制御部150は,上記バイオガス発生部110によるバイオガス発生時に,排気処理部140を次のように制御する。
【0183】
すなわち,上記制御部150は,バイオガス発生時には,上記暴露部120の庫
内圧力センサ132により得られる庫内圧力情報により示される庫内圧圧力より陰圧になるよう排気ブロア143の回転を制御する。また,排気触媒温度センサ147により得られる排気触媒温度情報に基づいて,排気触媒ヒータ温度が規定値(300℃)に達しているように排気触媒ヒータ146を制御する。
【0196】

このような構成の核酸分解処理装置100では,フィードバック制御により暴露部110の暴露空間内における温度,湿度,濃度の定量的制御を行うことができ,
暴露対象の種類によっての短時間で高効能を発揮する条件を定義することができる。【0198】
この核酸分解処理装置100において,上記バイオガス発生部110は,メタノール,ホルムアルデヒド,一酸化炭素,二酸化炭素,水素,酸素の反応成分を少なくとも含有し,ラジカル種としてはフリーラジカル成分(スーパーオキシドアニオンO2・-,ヒドロキシルラジカル・OH,水素ラジカルH・,スーパーオキシド(O2
-

)を少なくとも含む)複合ラジカルガスを発生する。

【0201】
この核酸分解処理装置100の暴露部110において暴露される暴露対象は,細長い管を有するもの(内視鏡等)や複雑な形状をした物体或いは精密機器などであってもよい。
【0211】
また,この核酸分解処理装置100では,運転途中でガスのサンプリングや検体の途中サンプリング(任意取り出し)が可能である。また,運転環境の確認や状態確
認が自動検出のほか手動でも可能であることから,自動運転途中で人が任意に判断し対処できるシステムである。すなわち,排気処理後のサンプリングにて庫内環境を確認することにより,
暴露部120庫内への出入り条件を判定することができる。
【実施例】
【0216】

以下,本発明に係る核酸分解処理装置100を用いた具体的な実施例を示す。なお,
下記の実施例及び実験例によって詳しく説明される内容は単なる実施であって,本発明を限定するものではなく,また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
【0217】

<1.サンプル調整>
HumanHeLacell(humancervicalcancer)から2本鎖DNA(doublestrandDNA:
dsDNA),RNA,および1本鎖DNA(singlestrandDNA:ssDNA)の調整を行った。
【0221】
<2.バイオガス暴露試験>
上記1.で調整されたサンプルを用いて,本発明に係る核酸分解処理装置100により,図17に示しように,暴露時間,暴露温度,サンプル容量各々のパラメーターを変えた条件下で暴露を行い,バイオガスの核酸分解能の評価を行った。各サンプルは0.2mlPCRチューブに調整しバイオガス暴露試験を実施した。【0226】

<3.結果>
<3-1.dsDNAの結果>
表1~表3に,
それぞれサンプル量2μl,
20μl,
100μlのBioanalyzer
による結果を示す。なお,各表中のCは核酸が完全に分解した(complete)ことを示し,
+++は高度な部分分解が生じたことを示し,
++は中程度の部

分分解が生じたことを示し,
+は軽度な部分分解が生じたことを示す。また,図
18に,dsDNAのBioanalyzerによる核酸分解能評価基準を示し,図19~図21に,Bioanalyzerによる核酸分解能の試験結果を表すスペクトル図を示す。【0234】
以上のことから,核酸分解処理装置100を用いたバイオガスによる核酸分解処
理によって,常温程度の温度条件で,しかも短時間で高度に核酸を分解できることが分かった。また,このバイオガスによるdsDNA分解能効果は,温度依存性(高温で効果増強)かつ容量依存性(湿性条件)であることが示唆された。【0238】
一方で,核酸分解処理装置100を用いたバイオガスによる核酸分解処理を行っ
た場合,
2μlのRNAサンプルへのバイオガス暴露により,
37℃,45℃,50℃
いずれの温度条件においても15min暴露からGAPDHの核酸増幅は見られず,R
NAの完全分解効果を示し,120minでも同様であった。
【0241】
一方で,核酸分解処理装置100を用いたバイオガスによる核酸分解処理を行った場合,2μlのssDNAサンプルへのバイオガス暴露により,37℃,45℃,50℃いずれの温度条件においても60min暴露からGAPDHの核酸増幅は見られず,ssDNAの完全分解効果を示し,120minでも同様であった。
【図1】

【図2】

【図3】

【図8】

【図9】

【図10】

【図18】

【図19A】

【図19B】

【図19C】

(別紙2)
【技術分野】
【0001】
本発明は,
メタノールから触媒反応により発生するラジカル性のメタノールラジカルガス(以下,
MRガスという。
)により対象物を滅菌する滅菌処理装置に適
用される,滅菌ガス発生装置及びその滅菌ガス発生装置に交換可能に設けられる触媒カートリッジ,並びに滅菌処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】

メタノールから触媒反応により発生するラジカル性
(メタノールラジカルMR)

ガスを利用した滅菌システムは,これまで医療器具等の滅菌に用いるガスとして多用されていたエチレンオキサイドガス(EOG)やオゾン等以上の殺菌力を持ち,残留性,腐食性がないことが確認されており,現在多くの分野において注目されている。

【0003】
MRガスとは,
メタノールから触媒により生じた強力な殺菌効果をもつラジカル
ガスのことであり,浸透性が高く,大気圧のままでも被滅菌物の内部まで殺菌ができる。
金属の腐食やプラスチックの劣化が無く,
非滅菌物の素材を選ばず,
さらに,
被滅菌物に残留しないなどの優れた特質があり,高い安全性を有する。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,従来のMRガス発生装置においては,直径方向の大きさとして,例えば150~180mm程度もの大きさを有する触媒部を備えていたため,この触媒部においては,メタノールガスのラジカル化反応に必要な温度を一定に維持さ
せることは難しく,電熱ヒータを触媒内部に備えるようにし,ラジカル化反応に必要な温度を維持するために随時加熱しながら温度を制御することが必要となってい
た。
【0007】
このような従来のMRガス発生装置では,触媒反応時における温度の変動が激しく,その結果,一定の濃度を有するMRガスを発生させることができなかった。さらに,150~180mm程度もの大きさを有する触媒部を備えるとともに,さらに上述したように加熱用の電熱ヒータを備える必要があったため,触媒部は必然的に大きくなってしまい,利便性を高めるためのMRガス発生装置自体の小型化を困難にしていた。
【0008】

本発明は,このような従来の問題点に鑑みて提案されたものであり,ラジカル化のための触媒反応温度を一定に保ち,安定した濃度の滅菌ガスを発生させるとともに,小型化が可能な滅菌ガス発生装置,その滅菌ガス発生装置に用いられる触媒カートリッジ,並びに滅菌処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】

【0009】
本件発明者らは,上述した課題を解決するために,様々な観点から鋭意研究を重ねてきた結果,ハニカム構造を有する触媒を使用することにより,ラジカル化のための触媒反応温度を一定に維持することが可能になることを見出し,本発明を完成するに至った。

【0010】
すなわち,本発明に係る滅菌ガス発生装置は,メタノールを気化してメタノールガスを発生させるメタノールガス発生部と,上記メタノールガス発生部の上方に位置し,該メタノールガス発生部から発生したメタノールガスを自然対流により上方に移行させる流路となるとともに,上記メタノールガスに所定の割合で空気を混合
させる筒体部と,上記筒体部の上部の上方に位置し,該筒体部において上記所定の割合で空気が混合したメタノールガスを触媒反応によりラジカル化する触媒部とを
備え,上記触媒部は,金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒より構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば,金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒を使用しているので,触媒部における表面積が増加して反応効率が向上し,触媒反応温度を一定に維持した自己反応を生じさせることができ,安定した濃度のMRガスを発生させることができる。また,触媒部における反応効率の向上により,触媒部を小型化することができるとともに,
滅菌処理装置自体を小型化することを可能にし,

利便性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は,本実施の形態に係るMRガス発生装置を概略的に示した模式図である。この図1に示すように,本実施の形態に係るMRガス発生装置10は,メタノール
タンク(図示せず)からメタノールが供給され,そのメタノールを気化することによってメタノールガスを発生させるメタノールガス発生装置11と,そのメタノールガス発生装置11の上方に位置してメタノールガス発生装置11から発生したメタノールガスを空気と混合させるとともに,発生したメタノールガスを自然対流を利用して上方に案内する流路を形成するために設けられた筒体12と,メタノール
ガスの流路上方に取り外し可能な状態で筒体12に連続して設けられ,メタノールガスを触媒反応によりラジカル化してMRガスを発生させる触媒カートリッジ13とから構成されている。以下,各構成について具体的に説明していく。【0016】
先ず,本実施の形態に係るMRガス発生装置10を構成するメタノールガス発生
装置11について説明する。メタノールガス発生装置11は,メタノールを気化することによって,ラジカル化反応の反応物質であるメタノールガスを発生させ,筒
体12へと供給する。
【0017】
図2は,メタノールガス発生装置11を概略的に示す模式図である。この図2に示すように,メタノールガス発生装置11は,原料となるメタノールを収容するメタノールタンク(図示せず)が連結されており,少なくとも,メタノールを加熱気化させる電熱ヒータ20と,メタノールタンクから供給されたメタノールを気化するに際して温度を制御する焼結金属等の温度安定化金属からなる熱媒体21と,気化したメタノールをMRガス発生装置10の上方部に導通させる気化ノズル22と,さらにメタノールタンクから供給されるメタノールを霧状に噴射して熱媒体21の
方へ移行させるノズル23とから構成されている。
【0018】
このメタノールガス発生装置11では,メタノールタンクから供給されたメタノールが,熱媒体21による温度制御の下,電熱ヒータ20によって加熱されて気化され,気化して生成したメタノールガスが気化ノズル22から発生する。発生した
メタノールガスは,気化カバー14を通り,自然対流を利用してMRガス発生装置10の上方,すなわち触媒カートリッジ13へ分散して移行する。【0023】
また,このメタノールガス発生装置11は,メタノールタンクからメタノール供給用連通管24を通って供給されるメタノールを,ポンプ等を利用して霧状にして
熱媒体21の方へ噴射させるノズル23を備えている。メタノールタンクから供給されたメタノールをノズル23より霧状にして噴射し,霧状のメタノールを上述した電熱ヒータ20によって熱媒体21を介して加熱させることで,温度を一定に保ち,安定した状態でメタノールを気化させることができる。
【0024】

このように,
温度一定の安定した状態でメタノールガスを発生させることにより,メタノールガス発生装置11における温度のふらつきを抑制して,上述したように,

以下で詳述する触媒カートリッジ13における触媒反応の温度変動をより効果的に抑制し,安定したMRガスの発生を可能にしている。
【0026】
ここで,滅菌処理においては,滅菌環境を所定の湿度に保った状態とすることが必要なことが知られており,例えばウイルス等のDNAを破壊してDNAフリーの環境とする場合には,約75%程度の湿度を維持した滅菌環境で滅菌処理を行わなければならない。しかしながら,MRガス滅菌処理を行うにあたって,そのようにMRガスの暴露環境を所定の湿度条件
(例えば約75%程度)
に整えようとすると,
ある程度の環境調整時間が必要となるとともに,所定の湿度環境を一定に管理する
ことも必要となり,また一定の湿度環境を維持することは極めて難しい。【0027】
そこで,上述したように,メタノールガスを発生させる段階において,メタノールタンクから供給されたメタノールに所定の水を混合させて,所定の割合で水を含有したメタノールを生成し,このメタノールからメタノールガスを発生させてMR
ガスを生成させる。これにより,滅菌環境の湿度を事前に調整しなくとも,効果的な滅菌処理を行うことが可能となる。このとき,上述した他の実施形態におけるメタノールガス発生装置11によれば,メタノールと水とを混合し,所定の割合で水を含有させたメタノールを霧状にして供給することができる混合ノズル23’を備えているので,所定の湿度を保持した最適なメタノールガスを効率的に生成させて
触媒カートリッジ13に供給することができる。そして,このメタノールガスから触媒反応によって発生したMRガスを使用することで,効果的な滅菌処理を行うことができ,所定の湿度環境を一定に管理維持させる必要もなくなる。【0028】
このように,メタノールガス発生装置11は,ノズル23を備えているので,メ
タノールを霧状に噴射して,温度のふらつきのない一定範囲の温度条件でメタノールを気化することができるとともに,触媒カートリッジ13において安定したラジ
カル化触媒反応を生じさせることができる。また,このノズル23は,例えばメタノールと水とを混合させて,所定の割合で水を含有させたメタノールを霧状に供給することができる混合ノズル23’として構成することもできるので,所定の湿度を保ったメタノールガスを効率的に生成させるとともに,効果的な滅菌処理が可能なMRガスを発生させることができる。
【0031】
次に,本実施の形態に係るMRガス発生装置10を構成する筒体12について説明する。筒体12は,メタノールガス発生装置11から供給されたメタノールガスのラジカル化触媒反応の場となる触媒カートリッジ13に案内する流路になるとと
もに,メタノールガスに所定の割合の空気を混合させる。
【0037】
ここで,この筒体上部12aにおける空気の供給について詳細に説明する。本実施の形態に係るMRガス発生装置10では,筒体上部12aにおける空気の供給量を変化させることにより,後述する触媒カートリッジ13での自己反応によるラジ
カル化触媒反応の温度を制御することができる。
【0038】
このMRガス発生装置10における触媒カートリッジ13は,
詳細は後述するが,
金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒30から構成され,メタノールガスとの接触表面積を増やして反応効率を向上させるようにしている。これ
により,触媒カートリッジ13では,作動開始直後十数分間の230~250℃程度の加熱のみで,その後は安定した自己反応(メタノールガスの触媒燃焼反応)によってラジカル化反応に必要な450~500℃まで温度を高め,その反応温度を維持させることができ,従来の装置とは異なり随時反応温度を維持させるために加熱し続けることを要しない。このように,このMRガス発生装置10によれば,反
応温度維持のための継続的な加熱を必要とせず,安定した自己反応により必要な温度に高めるとともに一定に維持できることから,そのラジカル化反応に必要な温度
を,筒体上部12aにおける空気の供給量を変化させることによって容易に制御することができる。
【0039】
また,金属パイプと珪藻土等を無秩序に混合させて形成した触媒を備えた従来のMRガス発生装置とは異なり,本実施の形態に係るMRガス発生装置10では,金属薄板をハニカム構造体に成形した触媒カートリッジ13にメタノールガスを通過させてラジカル化触媒反応を起こすようにしているので,メタノールガスの触媒反応にばらつきを生じさせず,供給する空気量を変化させることで,容易に触媒反応温度を制御することができる。

【0040】
具体的には,ラジカル化触媒反応に必要な450℃程度の温度を自己反応により発生させる場合には,上述したように,メタノールの供給量に対して略正比例するように空気を供給する。具体的には,メタノール供給量を3ccとした場合には,空気の供給量を約3.5L/minとする割合で供給する。

【0041】
一方,ラジカル化触媒反応に必要な450℃より高めの,約500℃近い温度を自己反応により発生させる場合には,空気の供給量をメタノールの供給量に対して正比例する量よりも多く供給する。
これにより,
自己反応による燃焼温度が高まり,
ラジカル化反応において500℃近い温度とすることができる。具体的には,上述
の450℃程度の温度を発生させる場合の空気の供給量の割合(メタノール供給量を3ccとしたときに,空気の供給量を約3.5L/minとする割合)よりも多い量の空気を供給する。
【0042】
図5は,本実施の形態に係るMRガス発生装置10において,空気の供給量を変
化させることによりラジカル化触媒反応の温度を制御できることを説明するためのグラフである。メタノールガスのラジカル化触媒反応に必要な反応温度は約450
~500℃であり,この図5のグラフに示すように,このMRガス発生装置10では,約3.0ccのメタノール供給量に対して,筒体上部12aから供給される空気の供給量を約3.5~6.0L/minの範囲で変化させる。これにより,ラジカル化触媒反応の温度を約450~500℃の範囲で変化させることが可能となる。したがって,空気供給部からの空気の供給量を変化させることにより,容易にラジカル化触媒反応の温度を制御することができる。
【0043】
このように,本実施の形態に係るMRガス発生装置10によれば,ラジカル化触媒反応温度を維持させるための随時の加熱を必要とせず,安定した自己反応により
ラジカル化反応を起こすことができることから,
空気の供給量を変化させるだけで,
容易にラジカル化反応温度を制御することができる。また,発生するMRガスの濃度はラジカル化触媒反応温度に依存することから,上述のように空気の供給量を変化させて反応温度を制御することで,MRガスの濃度を容易に制御することができる。
これにより,
滅菌対象によって容易にMRガスの濃度を変化させることができ,
種々の対象に対して滅菌処理を施すことが可能となる。
【0056】
そこで,
本実施の形態に係るMRガス発生装置10においては,
上述したように,
触媒カートリッジ13を,金属薄板をハニカム構造に成形してなるラジカル反応触媒30によって構成し,メタノールガスとラジカル反応触媒30との接触表面積を
増加させるとともに,メタノールガスが一定の通路を通過するようにしている。【0057】
このようにしてラジカル反応触媒30をハニカム構造に成形してメタノールガスとの接触表面積を増加させることによって,触媒反応の反応効率を高め,ラジカル化反応に必要な触媒カートリッジ13の大きさを最小限に抑えることを可能にして
いる。具体的に,触媒カートリッジ13におけるラジカル反応触媒30の直径方向の大きさを,50~70mm程度の大きさにすることができ,この大きさで反応効
率の高いラジカル化反応を起こすことができる。そして,触媒カートリッジ13の大きさを最小限に抑えることで,容易に交換が可能な形態とすることが可能となっている。また,一定の通路をメタノールガスが通過するようにすることで,ラジカル化反応のばらつきを抑えて一定にし,反応温度の変動を抑制させることを可能にしている。
【0077】
そしてまた,上述のように,この触媒カートリッジ13では,安定した自己反応によるラジカル化触媒反応を可能していることから,筒体12に接続された空気供給部からの空気の供給量を任意に制御することにより,自己反応によるラジカル化
触媒反応温度を容易に変動制御することができ,発生させるMRガスの濃度を容易に変化させることが可能となる。これにより,メタノールガスに混合させる空気に供給量を変化させるだけで,滅菌対象によって適した濃度のMRガスを簡単に発生させることができ,種々の対象に対して効率的な滅菌処理を行うことができる。また,
このように,
適した濃度のMRガスを任意に発生させることができることから,
メタノールの供給量を必要最小限に抑えることが可能となり,より安全に装置を使用することができるだけでなく,
環境にも適した滅菌処理を実現することができる。
【0079】
図13は,本実施の形態に係るMRガス発生装置10を適用した滅菌処理装置40の一例を概略的に示した模式図である。この図13に示すように,滅菌処理装置
40は,メタノールタンク41と,MRガス発生装置10’と,滅菌対象物を保持してMRガス発生装置10’から発生したMRガスによって滅菌処理を施す場となる滅菌タンク42とから構成されている。
【0085】
また,
上述した本実施の形態に係るMRガス発生装置10を適用することにより,
上述した図13に例示する滅菌処理装置40に示されるような滅菌対象物43を滅菌処理装置40内に静置させて処理する形態としない滅菌処理装置とすることもで
きる。すなわち,小型化が可能となった本実施の形態に係るMRガス発生装置10を適用した滅菌処理装置を,閉じられた空間に静置し,ラジカル化触媒反応によって発生したMRガスをその閉じられた空間に充満させて,その空間を滅菌させることもできる。このようにすることで,病室等の室内や車内等,従来のMRガス発生装置を用いた滅菌処理装置では実現することができなかった空間に対して滅菌処理を施すことが可能となる。
【0088】
例えば,本実施の形態に係るMRガス発生装置を適用することによって,感染病を患った患者を搬送した救急車を滅菌対象として処理することができる。従来のM
Rガスを用いた滅菌処理装置では,その装置自体が大型であったため,持ち運びも困難で,処理に時間がかかり,数の限られた救急車等を手早く滅菌処理することができなかった。しかしながら,本実施の形態に係る,反応効率を向上させて反応触媒の小型化を実現したMRガス発生装置を適用した滅菌処理装置によれば,容易に持ち運ぶことが可能となり,容易に滅菌処理を施すことが可能となる。
【0089】
また,本実施の形態に係るMRガス発生装置10によれば,筒体上部12aにおける空気の供給量を変化させることにより,触媒の自己反応によるラジカル化反応温度を容易に制御することができるので,発生するMRガスの濃度を容易に変化させることができる。これにより,例えばウイルス等のDNAを破壊することを目的
としてMRガスを暴露させる場合には,空気の供給量を増やしてラジカル化反応温度を高め,濃度の高いMRガスを発生させるといったように,滅菌対象によって空気の供給量を変化させて,発生させるMRガスの濃度を変化させることができる。【0090】
なお,本発明は,上述の実施形態に限られるものではなく,この発明の要旨を逸
脱しない範囲での設計変更等があっても本発明に含まれる。

【図1】

【図2】

【図13】

(別紙3)
1
【特許請求の範囲】
【請求項3】密閉された室内にホルムアルデヒドガスを供給すると共に排出するホルムアルデヒドガス供給排出装置と,
前記室内の圧力を調整する室圧調整装置とを備え,

前記ホルムアルデヒドガス供給排出装置は,前記ホルムアルデヒドガスを発生するホルムアルデヒドガス発生器と,前記ホルムアルデヒドガスの湿度を調節する湿度調節器と,前記ホルムアルデヒドガスの温度を調節する温度調節器と,前記ホルムアルデヒドガスを室内へ搬送して導入するガス搬送器と,前記室内からの排ガスを処理する排ガス処理器と,前記排ガスを排出するガス排出器と,前
記室内のホルムアルデヒドガスの濃度,湿度及び温度を所定の濃度,湿度及び温度に制御する制御部とを有し,
前記室圧調整装置は,前記室内に室外の空気を給気する給気ユニットと,前記室内の空気を前記室外に排気する排気ユニッ卜と,前記室内と前記室外との圧力差を検出する圧力差検出手段と,前記圧力差検出手段により検出された検出値
に基づいて前記給気ユニット及び前記排気ユニットを制御する制御手段と,前記圧力差検出手段による前記検出値に基づいて前記室圧の制御状況を出力する制御状況出力手段とを有することを特徴とするホルムアルデヒドガス殺菌装置。2
【発明の詳細な説明】
(1)

技術分野本発明は,ホルムアルデヒドガスにより被殺菌空間の殺菌を行うホルムアルデヒドガス殺菌装置に関するものである。(4頁2行~4行)

(2)

技術背景従来,バイオクリーンルームや手術室等の空間内を殺菌処理する目的でホルムアルデヒドガスを用いる方法は,この被殺菌空間を閉空間とし,その中にホルムアルデヒドガス発生器を設置してホルムアルデヒドガスを発生させるものが知られている。しかし,ホルムアルデヒドガスによる殺菌(以下,本明細書では「滅菌をも意味する)効果は,被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度,湿度,温度により大きく依存することから,十分保証可能な殺菌効果を得るためには,単にホルムアルデヒドガスを特定の時間被殺菌空間に充満させるということでは十分ではない。
・・・また,被殺菌空間内は,密閉された空間(室)となることから室内圧力を制御する必要も生じる。(4頁5行~21行)

(3)

発明の開示・・・また,この発明のホルムアルデヒドガス殺菌装置は,ホルムアルデヒドガスを発生させるホルムアルデヒドガス発生器と,前記ホルムアルデヒドガスの湿度を調節する湿度調節器と,前記ホルムアルデヒドガスの温度を調節する温度調節器と,前記ホルムアルデヒドガスを被殺菌空間内へ搬送して導入するガス搬送器と,前記被殺菌空間内からの排ガスを処理する排ガス処理器と,前記排ガスを排出するガス排出器と,前記ホルムアルデヒドガス発生器において前記ホルムアルデヒドガスを所定の範囲の濃度で発生させ,前記湿度調節器により前記ホルムアルデヒドガスの湿度を所定の範囲に制御し,前記温度調節器により前記ホルムアルデヒドガスの温度を所定の範囲に制御し,前記ガス搬送器によるガス搬送量を所定の範囲に制御し,前記排ガス処理器による排ガス中のホルムアルデヒドの量を所定の範囲に制御し,前記ガス排出器による排ガス排出量を制御する制御器を有する。この発明のホルムアルデヒドガス殺菌装置によれば,制御器により被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度,湿度,温度をそれぞれ,所定の濃度,所定の湿度,所定の温度に制御するため,十分に保証可能な殺菌効果を得ることができる。(4頁22行,5頁17行~6頁3行)(4)また,この発明のホルムアルデヒドガス殺菌装置は,密閉された室内にホルムアルデヒドガスを供給すると共に排出するホルムアルデヒドガス供給排出装置と,前記室内の圧力を調整する室圧調整装置とを備え,前記ホルムアルデヒドガス供給排出装置は,前記ホルムアルデヒドガスを発生するホルムアルデヒドガス発生器と,前記ホルムアルデヒドガスの湿度を調節する湿度調節器と,前記ホルムアルデヒドガスの温度を調節する温度調節器と,前記ホルムアルデヒドガスを室内へ搬送して導入するガス搬送器と,前記室内からの排ガスを処理する排ガス処理器と,前記排ガスを排出するガス排出器と,前記室内のホルムアルデヒドガスの濃度,湿度及び温度を所定の濃度,湿度及び温度に制御する制御部とを有し,前記室圧調整装置は,前記室内に室外の空気を給気する給気ユニットと,前記室内の空気を前記室外に排気する排気ユニットと,前記室内と前記室外との圧力差を検出する圧力差検出手段と,前記圧力差検出手段により検出された検出値に基づいて前記給気ユニット及び前記排気ユニットを制御する制御手段と,前記圧力差検出手段による前記検出値に基づいて前記室圧の制御状況を出力する制御状況出力手段とを有することを特徴とする。・・・この発明のホルムアルデヒドガス殺菌装置によれば,室圧調整装置を備えるため,室内温度の上昇により室内の空気が膨張したような場合においても室圧を一定に保つことができる。また,この発明ホルムアルデヒドガス殺菌装置は,前記排気ユニットが前記室内から排気される空気を処理する処理装置を備える。この発明のホルムアルデヒドガス殺菌装置によれば,室圧を調整するために室内の空気の排気を行った場合においても,処理装置により室内の空気に含まれるホルムアルデヒドガス等を処理するため,ホルムアルデヒドガスを処理した後に室外に排出することができる。(6頁4行~7頁6行)(5)
発明を実施するための最良の形態以下,図1を参照して,本発明の第1の実施の形態の説明を行う。図1は,第1の実施の形態にかかるホルムアルデヒドガス殺菌装置2の構成図である。このホルムアルデヒドガス殺菌装置2は,ハウジング10を有しバイオハザード安全キャビネットの外側に取り付けて容易にキャビネット内の空間(以下被殺菌空間100とする)を殺菌することができるものである。この際,キャビネット内はダンパ等を閉じて閉空間とする。キャビネットには,ホルムアルデヒドガス殺菌装置2からホルムアルデヒドガスを供給するためのホルムアルデヒドガス入口102と,ホルムアルデヒドガスを排出するための排気ガス出口104が設けられている。被殺菌空間100には,ホルムアルデヒドガス濃度センサ12,湿度センサ14,温度センサ16が設けられ,それぞれモニタされた値は制御ライン18,20,22を介して制御器24へ伝達される。ポンプ26により外気をホルムアルデヒドガス入口102より被殺菌空間100内に導入し,さらに排ガス出口104よりポンプ28を通じて外気へ排気する。または,ポンプ28から出た排気ガスを環流通路30を介して再びポンプ26に導入することで,被殺菌空間100内の空気を循環させる。(7頁7
行~23行)
…このため濃度センサ12,湿度センサ14,温度センサ16により被殺菌空間100内のホルムアルデヒドガス濃度,湿度,温度のそれぞれをモニタし,得られた値に基づいて制御器24で必要な計算を行い,制御ライン38,40,42,44を通じてホルムアルデヒドガス発生器36,温度調節器34,湿度調節器32,ポンプ26を制御する。・・・所定の時間経過後,ホルムアルデヒドガス発生器36を停止し,排ガス処理器46による処理を被殺菌空間100内のホルムアルデヒド濃度が所定の値より低くなるまで実施する。即ち,ポンプ28から出たガスを還流通路30を介して再びポンプ26に導入し,被殺菌空間100内の空気を循環させることにより,ホルムアルデヒド濃度を徐々に低下させ所定の濃度よりも低くする。(8頁1行~12行)

(6)

本発明において使用可能なホルムアルデヒドガス発生器には特に限定はないが,湿度,温度の制御の下で高い濃度のホルムアルデヒドガスを発生可能であればよい。(8頁19行~21行)

ホルムアルデヒドの発生量の制御については,触媒の温度の制御,及び供給するメタノールの量,又は気化量に依存する。反応条件の最適化は,実際にホルムアルデヒドを発生させ,かつ適当なホルムアルデヒド濃度測定を行うことにより可能である。(9頁4行~7行)本発明において,適当な濃度のホルムアルデヒドガス濃度を,適当な温度の範囲内で長時間維持するために,被殺菌空間内の温度を調節することが好ましい。この目的で設けられる温度調節手段は特には,制限はなく,通常公知の加熱,または冷却装置が使用可能である。(9頁27行~10頁1行)本発明において,適当な濃度のホルムアルデヒドガス濃度を,適当な湿度の範囲内で長時間維持するために,この閉空間内の湿度を調節することが好ましい。この目的で設けられる湿度調節手段は特に制限はなく,通常公知の加湿,または除湿装置が使用可能である。(10頁6行~9行)本発明においては,被殺菌空間内の温度,湿度及びホルムアルデヒド濃度を所定の範囲で,所定の時間維持する必要がある。被殺菌空間内ホルムアルデヒドガスの濃度は,被殺菌空間内で殺菌反応などの種々の反応により減少する。従って,ホルムアルデヒドガスの濃度を一定に維持するためには,設定時間内において,温度,湿度,ホルムアルデヒド濃度データを取込み,かつ特定範囲になるように,ホルムアルデヒド発生手段を制御する必要がある。この目的のための制御方法,制御器については特に制限はないが,手動による方法,又はコンピュータプログラムを用いた制御器が挙げられる。本発明においては,高いホルムアルデヒド濃度を長時間維持する必要があることから,オンタイムに最適化しつつホルムアルデヒド発生装置,ポンプ,温度調節器,湿度調節器に信号を送り,制御する機能を有するものが好ましい。(11頁19行~末行)
(7)次に,図2,図3を参照して,本発明の第2の実施の形態にかかるホルムアルデヒドガス殺菌装置ついて説明する。この第2の実施の形態にかかるホルムアルデヒドガス殺菌装置は,第1の実施の形態にかかるホルムアルデヒドガス殺菌装置2と同一の構成であるホルムアルデヒドガス供給排出装置4に,更に密閉された室として形成された被殺菌空間内の圧力を調整する室圧調整装置6を備えるものである。図2は,第2の実施の形態にかかるホルムアルデヒドガス供給排出装置4及び室圧調整装置6を備えて構成されるホルムアルデヒドガス殺菌装置の構成図である。ここで室圧調整装置6は,室壁50に接した状態で設けられ,室壁50により密閉された室内の圧力を調整するものである。室圧調整装置6は,室内に室外の空気を給気する給気ユニット52,室内の空気を室外に排気する排気ユニット54,室内と室外との圧力差を検出する微差圧検出器56,微差圧検出器56により検出された検出値に基づいて給気ユニット52及び排気ユニット54を制御するコントロールユニット58を備えて構成されている。給気ユニット52は,室外の空気を取り込むための給気グリル60を有し,この給気グリル60の下流側に,室外から室内に供給される空気量を調整するための給気量調整電磁弁62が3つ設けられている。また,給気量調整電磁弁62の下流側の空気通路64内には,送風機66,HEPA(highficiencyparticulateefair)フィルタ68が順次設けられている。排気ユニット54は,給気通路70内にHEPAフィルタ72を有し,HEPAフィルタ72の下流側に室内から室外に排気される空気量を調整するための排気量調整電磁弁74が3つ設けられている。また,排気量調整電磁弁74の下流側には,白金触媒およびヒータを備えて構成されるエアー処理装置76が設けられている。ここで,このエアー処理装置76には,電磁弁78を介して室外の空気が供給される。この室外の空気の供給により触媒の温度を一定に保つことができる。更に,排気量調整電磁弁74の下流側には,エアー処理装置76を通過した空気および給気グリル80から取込んだ空気を室圧調整装置6外に排気するための送風機82が設けられている。(13頁末行~14頁末行)(8)微差圧検出器56は,室壁50に設けられ,信号線を介してコントロールユニット58に接続されており,この微差圧検出器56により検出された室内と室外との圧力差がコントロールユニット58に入力される。コントロールユニット58は,信号線を介して給気ユニット52の給気量調整電磁弁62及び送風機66に接続されていると共に,排気ユニット54の排気量調整電磁弁74,電磁弁78及び送風機82に接続されている。コントロールユニット58は,微差圧検出器56の検出値に基づいて,給気量調整電磁弁62,送風機66,排気量調整電磁弁74及び送風機82等の制御を行う。なお,コントロールユニット58には,微差圧検出器56による検出値を常時記憶する記憶装置84及び記憶装置84に記憶されている検出値を出力するプリンタ等の出力装置86が接続されている。(15頁1行~11行)このホルムアルデヒドガス殺菌装置においては,ホルムアルデヒドガス供給排出装置4のポンプ26により外気をホルムアルデヒドガス入口102より室内に導入し,さらに排ガス出口104よりポンプ28を通じて外気へ排気する。湿度センサ14,温度センサ16により得られた室内の温度及び湿度がそれぞれ所定の温度20~40℃,および湿度の範囲50~90%(相対湿度)の範囲になるように制御器24にて湿度調節器32及び温度調節器34で調節する。さらに,ホルムアルデヒドガス発生器36およびポンプ26にて所定のホルムアルデヒドガス濃度160ppm以上を維持するように調節し所定の時間維持する。このため濃度センサ12,湿度センサ14,温度センサ16によりホルムアルデヒドガス濃度,湿度,温度のそれぞれをモニタし,得られた値に基づいて制御器24で必要な計算を行い,制御ライン38,40,42,44を通じてホルムアルデヒドガス発生器36,温度調節器34,湿度調節器32,ポンプ26を制御する。(15頁12行~23行)(9)ここで所定時間,室内の温度,湿度,ホルムアルデヒドガスの濃度がそれぞれ温度20~40℃の範囲,湿度50~90%(相対湿度)の範囲,ホルムアルデヒドガス濃度160ppm以上を維持している間,室圧調整装置により室内の圧力を陽圧力に維持する。即ち,図3に示すフローチャートに示す処理により,室内を陽圧力(10~20Pa)に維持する。なお,このフローチャートに基づく制御は,コントロールユニット58により微小時間間隔ごとに繰り返して行われる。(15頁26行~16頁3行)
まず,コントロールユニット58は,微差圧検出器56により検出された室内と室外との圧力差を取得し(ステップS10),記憶装置84に記憶する(ステップS11)。次に,圧力差が10~20Paの場合には(ステップS12)正常な圧力であることから,ステップS10の処理に戻って,圧力差検出(ステップS10),検出値記憶(ステップS11)等の処理を続行する。一方,微差圧検出器56により検出された室内と室外との圧力差が10Pa以下の場合には(ステップS12)室圧が低すぎることから室内への給気を行う(ステップS14)。即ち,給気量調整電磁弁62及び送風機66に制御信号を送り給気量調整電磁弁62を所定時間開くと共に送風機66の運転を行う。これにより室外の空気が・・・室内に供給され,室内の圧力が給気量調整電磁弁62の開時間に対応する値だけ上昇する。・・・また,微差圧検出器56により検出された室内と室外との圧力差が20Pa以上の場合には(ステップS12)室圧が高すぎることから室外への排気を行う(ステップS13)。即ち,排気量調整電磁弁74及び送風機82に制御信号を送り排気量調整電磁弁74を所定時間開くと共に送風機82の運転を行う。これにより室内の空気がHEPAフィルタ72,排気量調整電磁弁74,エアー処理装置76を介して室外に排気され,室内の圧力が排気量調整電磁弁74の開時間に対応する値だけ降下する。(16頁4行~24行)この室圧制御装置6によれば,室内と室外との圧力差を常時10~20Paに維持することができるため,ホルムアルデヒドガスを用いて室内の殺菌を行う場合に,室内温度の上昇により室内空気の体積が増加した場合においても,ホルムアルデヒドガスがエアー処理装置76で処理された後に排出されるため,ホルムアルデヒドガスが未処理のまま室外に漏れ出すのを防止することができる。また検出された室内と室外の圧力差は時系列的に記憶装置84に記憶されていることから,記憶装置84に記憶されている検出値を出力装置86により出力することにより,この出力結果に基づいて室内の圧力が常に所定の陽圧に維持できていたことを保証することができる。従って,ホルムアルデヒドガスが未処理のまま室外の漏れ出していないことの保証を行うことが可能になる。(16頁27行~17頁7行)
(10)

なお,上述の第2の実施の形態においては,室圧調整装置6にエアー処理装置76が設けられているが,ホルムアルデヒドガス供給排出装置4の排ガス処理器46を用いてホルムアルデヒドガスの処理を行うことも可能である。(17頁13行~15行)
本発明の装置は,一体型のハウジング構造を有するものであり,被殺菌空間の外に設けて,ホルムアルデヒドガスを被殺菌空間内に導入し,かつ被殺菌空間内からの排ガスを処理してクリーン排気が可能となる。また,取り外すことも容易である。さらに,本発明にかかる装置は,容易に被殺菌空間のある場所へ移動することが可能であり,救急車の室内,移動型(テントを含む)手術室やバイオクリーンルーム内を容易に保証可能とするに十分な殺菌を行うことができる。(17頁16~21行)(11)また,本発明にかかる装置によれば,室内温度の上昇により室内の空気の体積が増加したような場合においてもホルムアルデヒドガスが未処理のまま室外に漏れるのを防止することができ,また十分に保証可能な殺菌効果を得ることができる。(17頁28行~18頁2行)(12)

産業上の利用可能性以上のように,この発明のホルムアルデヒドガス殺菌装置は被殺菌空間を十分に保証可能な程度に殺菌することに適している。(18頁3行~5行)

【図1】

(別紙4)
1
甲23
(特開2001-349586号公報。
公開日平成13年12月21日)
【請求項1】

密閉された室内の圧力を調整する室圧調整装置であって,

前記室内に室外の空気を給気する給気ユニットと,
前記室内の空気を前記室外に排気する排気ユニットと,
前記室内と前記室外との圧力差を検出する圧力差検出手段と,
前記圧力差検出手段により検出された検出値に基づいて前記給気ユニット及び前記排気ユニットを制御する制御手段と,
前記圧力差検出手段による前記検出値に基づいて前記室圧の制御状況を出力す
る制御状況出力手段とを備えることを特徴とする室圧調整装置。
【請求項2】

前記制御装置は,前記室内の圧力を前記室外の圧力に対して陽圧

に制御することを特徴とする請求項1記載の室圧調整装置。
【請求項3】

前記制御装置は,前記室内の圧力を前記室外の圧力に対して陰圧

に制御することを特徴とする請求項1記載の室圧調整装置。
【0002】
【従来の技術】…また,バイオハザードルーム等においては,汚染されている恐れのある空気が室外に漏れることのないように室内の圧力を室外の圧力よりも低く維持することが望まれる。
【0007】また,請求項3記載の室圧調整装置は,前記制御装置が前記室内の
圧力を前記室外の圧力に対して陰圧に制御することを特徴とする。この請求項3記載の室圧調整装置によれば,室内が汚染されている恐れがある場合において,常時室内を陰圧に維持することにより室内の汚染された恐れのある空気が室外に排出されるのを防止することができる。
【0019】また,給気ユニット12の空気通路24内にHEPAフィルタ28
が設けられているため,室内を滅菌する場合等において,室圧が低くなりすぎた場合等室内に給気を行う必要が生じた場合においても室内に室外の空気に存在
する微細粒子が侵入するのを防止することができる。なお,上述の実施の形態においては,室内の圧力を陽圧力に維持する制御を行っているが,室内の圧力を陰圧力に維持する制御を行うようにすることも可能である。なお,陰圧力とは,(室内圧力)-(室外圧力)が負の値を示す場合をいう。
【0020】バイオハザードルーム,ケミカルハザードルーム等においては,室
内の空気が汚染されている可能性があることから室内の空気が室外に漏れるのを防止する必要がある。この室圧制御装置2によれば,室内と室外との圧力差を常時10~20Pa(室内の圧力を室外の圧力に対して-10~-20Pa)に維持することができ,また検出された圧力差は時系列的に記憶装置44に記憶されていることから,記憶装置44に記憶されている検出値を出力装置46により出
力することにより,この出力結果に基づいて室内の圧力が常に陰圧に維持できていたことを保証することができる。従って,バイオハザードルーム等の空気が室外に漏れていないことを保証することにより室外の汚染がないことを保証することができる。
2
甲82(特開平10-132346号公報。公開日平成10年5月22日)【0004】…バイオハザード対策施設は,人体にとって無害とは断言できない微生物,例えば一般病原体,腫瘍ビールス,組換えDNA操作による組換え体等を取り扱っている。そこで,バイオハザード対策施設では,バイオハザード,即ち人間が微生物感染により直接または間接に受ける災害を防止する対策が講じ
られていて,バイオハザードが対象となる実験室等の室内を陰圧にして,空気の流れを隙間からの漏洩も含めて室外から室内への一方向の流れに維持し,室内のバイオハザード源の外部漏洩を防止している。また,ケミカルハザード対策施設は,環境を汚染し,人体にとって有害な化学物質を取り扱っているので,バイオハザード対策施設と同じく,実験室等の室内を陰圧にして,空気の流れを隙間か
らの漏洩も含めて室外から室内への一方向の流れに維持し,室内のケミカルハザード源の外部漏洩を防止している。

3
甲83(特開平11-347106号公報。公開日平成11年12月21日)【0008】
【課題を解決するための手段】本方法発明は,滅菌処理を行う滅菌対象物を収納した滅菌処理庫に対し,減圧及びオゾンガスの導入を交互に行い,前記滅菌対象物を滅菌するものである。

【0064】すなわち,滅菌処理庫5内をオゾンガス4供給時にも大気圧により低い圧力に保つことにより,滅菌処理庫5から外部へのオゾンガス4のリークを防止することができる。
4
甲84(特開平4-64846号公報。公開日平成4年12月17日)【請求項1】

大略的に直方体であって,ベッドを収納するベッド収納空間を有

し,少なくとも2つの側壁にベッド収納空間と連通する開口端を有するベッドルームユニットと,ベッドルームユニットの少なくとも1つの開口端に着脱可能であり,その開口端に清浄空気を供給する清浄空気供給源と,ベッドルームユニットのもう1つの開口端に着脱可能であり,開閉扉を有し,またはベッド収納空間に連通する空間を形成する補助ユニットとを含み,ベッドルームユニットに滅菌性ガス供給接続口と,内圧調整用排気接続口を設け,前者より滅菌性ガスを供給しベッドルーム内部を消毒する一方,後者を通じてベッドルーム内部が常に負圧になるように排気量を調節し,さらに排気ラインに滅菌性ガスを無害化する手段を介して排出することにより,無菌ベッド装置外部への滅菌性ガスの漏洩をなく
すことを特徴とする無菌ベッド装置。
【0013】ベッドルームユニットおよび補助ユニットには,オゾン等の滅菌性ガスを供給する接続口と,内圧調整用排気接続口とを設ける。供給接続口からオゾンなどの滅菌性ガスを供給してベッドルームユニット内部と補助ユニット内部となどを消毒することができる。また内圧調整用排気接続口を通じてベッドル
ームユニット内部および補助ユニット内部などを常に負圧になるように排気量を調節し,これによってオゾンが外部に漏洩することが防がれる。内圧調整用排
気接続口から排出されるガスの排気ラインに,無害化手段であるデオゾナイザを設けて,滅菌性ガスであるたとえばオゾンの一部を酸素にして無害化し,こうして無害化したガスを大気に放散して排出する。・・・
【0030】図10は,本発明の一実施例の全体の系統図である。ベッドルームユニット2またはこの図10の実施例では,扉ユニット4に,滅菌性ガスであるオゾンを供給する供給接続口71を設け,ベッドルームユニット2には内圧調整用排気接続口72を設ける。供給接続口71には,オゾナイザ73からの外部からの空気もしくは酸素または管路79からの循環ガスから得られるオゾンを管路74を介して,流量制御弁である可変オリフィス75を介して供給する。これ
によって,ベッドルームユニット2および扉ユニット4内の内部を消毒することができる。排気接続口72からのガスの一部は,誘引ファン76を介してデオゾナイザ77に導いて,オゾンを酸素として無害化し,大気放散する。誘引ファン76を用いることによって,ベッドルームユニット2および扉ユニット4内を常に負圧とし,これによってオゾンが外部に漏洩することを防ぐ。ベッドルームユ
ニット2内の圧力は,圧力検出器78によって検出し,調節計79によって可変オリフィス75の開度を変化させ,このベッドルームユニット2内の圧力を負圧の予め定める一定値に保つことができる。
・・・こうして,
ベッドルームユニット2
および扉ユニット4内を,患者がいない状態で消毒を行い,その消毒中におけるオゾンの外部への漏洩を防ぐことができ,しかもこのような消毒作業は簡便に行
うことができる。・・・

(別紙5)
1
甲81(
化学大辞典
(第1版)
(大木道則ほか編集/株式会社東京化学同人。
1989年10月20日発行)

ホルムアルデヒド[formaldehyde]…鋭い刺激臭を有する無色の可燃性気体。石炭や木を燃やした煙の中に存在し,粘膜に対し非常に刺激的で発がん性がある。


(2261頁右欄23行~28行)
2
甲85(JIST7328:2005ホルムアルデヒドガス消毒器)(日本規格協会/日
本医療機器工業会。2005年)
ホルムアルデヒドガス消毒器…1.適用範囲この規格は,医療機器(被消毒物)の消毒に用いるホルムアルデヒドガス消毒器(以下,消毒器という。)のうち使用圧力が常圧及び大気圧以下の消毒器の,安全性,性能,試験及び表示に関する要求事項について規定する。(3頁3行~7行)4.2消毒器の安全性4.2.1扉又はふたのインターロック消毒器は必ず,通常の動作条件においてチャンバの扉又はふたがロックされていないときにガスがチャンバ内に供給されないよう設計された自動インターロック機構を備えなければならない。4.2.2作業者へのホルムアルデヒド暴露防止消毒器は作業者の暴露防止のためにIEC61010-2-042:1997の13.1.101に適合しなければならない。ガス漏れが発生したとき,別に設けたガス漏れ警報器などと連動してガスの供給停止,チャンバ内の減圧,警報表示などを,自動的に行う構造とする。ただし,ガス供給が大気圧より陰圧で実施される消毒器は除く。(5頁20行
~31行)
3
甲88(特許第2690518号公報。公開日平成9年8月29日)

第1~2図は,本発明を説明する為の図で,・・・,第2図は滅菌作業の進行に伴なう滅菌容器内の圧力の変化と構成要素の状態との関係を時間の経過と共に示す線図である。(2頁左欄36行~39行)

滅菌作業を行なう場合,先ず滅菌容器1内に被滅菌物を収納した後滅菌容器1の蓋2を閉じ,真空ポンプ3を運転して,滅菌容器1内を負圧にし,被滅菌物内の空気を排出する真空行程を行なって,この被滅菌物の内部に迄滅菌ガスが進入し易い状態とする。この真空行程の後,加湿弁4を適当な時間だけ開き,上記被滅菌物を加湿する加湿行程を行なって,後から滅菌容器1内に送り込まれる滅菌ガスと被滅菌物との馴染み性を良くする。この加湿行程の後,加湿真空行程を経てから,ホルマリン移送用の定量ポンプ5の運転と,電磁弁6の開放と,ホルマリンを加熱し気化させる為の気化タイマのONと,気化により生じたホルムアルデヒドを滅菌容器1に送り込む為の電磁弁7の開放とを適宜繰り返し,滅菌用のホルムアルデヒドを発生すると共に,比較的少量のホルムアルデヒドを滅菌容器1内に送り込む作業を繰り返し行なうホルマリンパルス行程を行なって,後から多量に送り込まれるホルムアルデヒドと被滅菌物との馴染性を一層良くする。これら,真空,加湿,加湿真空,ホルマリンパルスの各行程を終了した後,滅菌容器1内に比較的多量のホルムアルデヒドを送り込み,この滅菌容器1内に収納された被滅菌物の滅菌処理(消毒)を行なう。(2頁左欄第42行~同頁右欄第13行)

第2図は滅菌作業の進行に伴なう滅菌容器内の圧力の変化と構成要素の状態との関係を時間の経過と共に示す線図である。(3頁左欄第4行~同頁右欄第

1行)

【第2図】

4
甲94ヘルスケア製品の滅菌及び滅菌保証

(2011年4月25日発行)財
団法人日本規格協会)

7.6.1.2プロセスの特性低温蒸気ホルムアルデヒド滅菌(LowTemperatureSteamandFormaldehydesterilizer,以下,LTSFと呼ぶ)のプロセスには以下を含まなければならない。これらを,滅菌器内での圧力変化の様子と一緒に表すと,図7.3のようになる。①②コンディショニング③滅菌剤注入④平衡時間と保持時間⑤脱離⑥空気除去空気の注入により大気圧への復圧LTSFの滅菌プロセスを達成するためには,まず使用するホルムアルデヒド濃度を2~38%の間で選択し,その濃度に合わせた滅菌プロセスを定義する必要がある。使用するホルムアルデヒド濃度によって滅菌プロセスを形成する各パラメータの設定が異なり,滅菌性能や乾燥性能に違いが発生する。(3
08頁右欄)
(2)滅菌動作-10kPaにおいて12%ホルムアルデヒド水溶液を入れてから-80kPaまで減圧し,加熱して気化させる。10分間その状態を保持後,フィルターを通した空気をチャンバに入れ,圧力を-10kPaまで復圧させる。そのときの圧力の上昇により被滅菌物の滅菌が困難な内腔まで滅菌剤を曝露させる。その圧力を5分間保持してから再び12%ホルムアルデヒド水溶液を入れる動作とその後の一連の減圧・加熱気化・空気導入による復圧を12回繰り返す。作用時間:180分12%ホルムアルデヒド水溶液の使用量:90mL(317頁左欄)
5
甲95
ホルムアルデヒドガス滅菌の特性と実機材の概要
(感染制御第7巻第
2号。平成23年4月25日発行)

ホルムアルデヒドは,・・・蒸気は,一定濃度を超えると粘膜,気道に対し刺激性があり,いわゆるシックハウス症候群の原因物質のひとつとされている。本邦では労働安全衛生法施行令及び特定化学物質障害予防規則等が一部施行され,ホルムアルデヒドが特定化学物質の第3類物質から第2類物質に位置づけれている・・・。また,WHOの国際がん研究機関(IARC;InternationalAgencyforResearchonCancer)では,ホルムアルデヒドを「ヒトに発がん性があるグループ1に分類している。(119頁左欄下から5行から右欄下から7行)」
HS6610TURBOLTSFの処理方法は低温蒸気ホルムアルデヒド滅菌である。すなわち,搭載された気化器を通して蒸気とホルマリンを陰圧にしたチャンバ内にある被滅菌物に均一にいきわたるよう数回に分けて注入する。これに対し,PS140Rはプレバキューム方式をとっている。ポンプでチャンバ内を陰圧にし,ホルマリン液を気化させて被滅菌物に作用させる。(120頁右欄下から13行から6行)

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