判例検索β > 令和3年(行ケ)第10010号
審決取消請求事件 商標権 行政訴訟
事件番号令和3(行ケ)10010
事件名審決取消請求事件
裁判年月日令和3年6月30日
裁判所名知的財産高等裁判所
権利種別商標権
訴訟類型行政訴訟
裁判日:西暦2021-06-30
情報公開日2021-07-12 18:00:47
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令和3年6月30日判決言渡
令和3年(行ケ)第10010号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

令和3年5月26日
判決原告
炭プラスラボ株式会社

同訴訟代理人弁理士

福被
御木本製薬株式会社


同訴訟代理人弁理士

地武雄中知公前田大輔伊藤孝朝主村倉美郎知文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

第1

太実及び理由
請求
特許庁が無効2020-890052号事件について令和2年12月15日
にした審決を取り消す。
第2

事案の概要

1
特許庁における手続の経緯等


被告は,以下のとおりの登録第5387228号商標(以下本件商標という。)の商標権者である(甲1,2)。
商標の構成

パールアパタイト(標準文字)

登録出願日

平成22年10月7日

登録査定日

平成23年1月6日

設定登録日

平成23年1月28日

指定商品

第1類化学品
第3類化粧品,せっけん類,香料類,つけづめ,つけまつ毛



原告は,令和2年6月19日,本件商標の指定商品中,第1類化学品及び第3類化粧品,せっけん類の商標登録について,商標登録無効審判を請求した(甲19)。
特許庁は,上記請求を無効2020-890052号事件として審理を行い,令和2年12月15日,

本件審判の請求は,成り立たない。

との審決(以下本件審決という。)をし,その謄本は,同月24日,原告に送達された。



原告は,令和3年1月21日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。

2
本件審決の理由の要旨
本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。その要旨は,①本件商標は,
パールアパタイト
の文字を標準文字で表してなり,
パール
の片仮名とアパタイトの片仮名を結合した構成からなるものと理解されるところ,このうちパールの文字は,
真珠の意味を有する語として,一般
に広く親しまれているのに対し,
アパタイトの文字は,特定の意味合いを理
解させるとはいえないものである,②このように真珠の意味を有するパールの文字と,特定の意味合いを理解させるとはいえないアパタイトの文字を結合させたパールアパタイトからなる本件商標は,構成全体をもって一体不可分の一種の造語として認識,把握されるものであり,特定の商品又は商品の品質,用途等を具体的に表示するものとして直ちに理解されるものとはいい難く,商品の品質を認識させるものとはいえない,③したがって,本件商標を本件審判の請求に係るいずれの指定商品に使用しても商品の品質の誤認を生ずるおそれはないというべきであるから,本件商標は,商標法4条1項16号に該当せず,同号に違反して登録されたものではないというものである。
3
取消事由
本件商標の商標法4条1項16号該当性の判断の誤り

第3

当事者の主張

1
原告の主張


パールアパタイトの語の意味の認定の誤り
本件審決は,本件商標は,
真珠の意味を有するパールの文字と,特
定の意味合いを理解させるとはいえないアパタイトの文字を結合させた構成からなるから,構成全体をもって一体不可分の一種の造語として認識,把握されるものであり,商品の品質を認識させるものとはいえない旨認定したが,
以下のとおり,
アパタイト
の語は,
本件商標の登録査定時において,
取引者,需要者の間で,特定の意味合いを有する語として,一般的に広く知られていたから,本件審決の上記認定は,その前提において誤りがある。ア
甲23の1ないし145の2のウェブサイトの記事等は,本件商標の登録査定時において,歯科の分野,化粧品の分野,せっけんの分野等において,
アパタイトの語が,特定の化学物質ハイドロキシアパタイトを
意味する語として使用されてきたことを示している。


甲146ないし205の新聞記事,雑誌等から,本件商標の登録査定時において,①薬用ハイドロキシアパタイトが配合された歯磨き剤(商品名アパガードM
)が,歯垢を吸着し,歯を白くする効用があると一般
的に認識されており,歯磨き剤の取引者,需要者の間で,アパタイトの語が,歯の再石灰化を促し美白効果のあるハイドロキシアパタイトを意味すると認識されていたこと,②アパタイトが光触媒として有用であることが一般的に認識されており,化学品の取引者,需要者の間で,アパタイトの語が,光触媒応用製品に適用可能なアパタイトを意
味すると認識されていたことが理解される。


前記ア及びイによれば,本件商標の登録査定時において,
アパタイト

の語が,取引者,需要者の間で,歯の再石灰化を促し美白効果のあるハイドロキシアパタイト又は光触媒応用製品に適用可能なアパタイトを意味する語として,一般的に広く認識されており,
アパタイトという
成分に着目して商品の購入に及ぶといった取引の実情があったものといえる。
したがって,本件商標の構成中のアパタイトの文字が特定の意味合いを理解させるとはいえないとした本件審決の認定は誤りである。そして,
このような取引の実情を考慮すると,
パールアパタイト

とが結合した
パールアパタイト
の語から構成される本件商標は,
真珠
及びアパタイト(ハイドロキシアパタイト)という物質(化学物質)を想起させるものであるから,
真珠及びアパタイト(ハイドロキシアパタイト)を含有するという商品の品質を表示するものである。⑵

商品の品質の誤認を生ずるおそれの判断の誤り
前記⑴のとおり,本件商標は,
真珠及びアパタイト(ハイドロキシアパタイト)を含有するという商品の品質を表示するものである。そうすると,本件商標を真珠及びアパタイト(ハイドロキシアパタイト)を含有しない化学品又は化粧品,せっけん類に使用した場合,取引者,需要者において,
真珠及びアパタイト(ハイドロキシアパタイト)を含有する商品であるとの商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるから,本件商標は,商標法4条1項16号に該当するというべきである。これを否定した本件審決の判断は誤りである。


小括
以上のとおり,本件審決における本件商標の商標法4条1項16号該当性の判断に誤りがあるから,本件審決は取り消されるべきである。

2
被告の主張


パールアパタイトの語の意味の認定の誤りの主張に対し


パールアパタイトの語は,辞書に掲載されていない,被告による造語である。
パールの語は,英単語PEARLの音訳として認識されるもの
であり,当該英単語から即座に認識できる意味合いは,一般的に真珠である。
しかし,
パール
の語は,
真珠が持つ色合いや光沢感などにより,
色彩の名称としてパールホワイト
,化粧品に用いられる顔料としてパール剤
など,
多様な意味合いで使用されているから
(甲11ないし13)

パールの語から,特定の商品の品質に関する具体的かつ単一の特性を理解できない。
次に,
アパタイトの語は,英単語apatite又はappetite
のいずれかの語に通じることから,
燐灰石本能的欲望,又は(特に)食欲等の意味合いを有する(甲14ないし18)。また,
アパタイトは,リン酸カルシウム類の一般名称(総称)であり(甲45,48,114等)
,これには,水酸アパタイトやチタンアパタイトなど様々な
アパタイトが含まれ,必ずしもハイドロキシアパタイトその他の
具体的なリン酸カルシウム化合物と同一視されるものではない。
そうすると,
アパタイトの語から,特定の商品の品質に関する具体的
な特性を理解できない。
このようにパール及びアパタイトのそれぞれの文字からは,商
品の品質に関係する特定の意味合いは生じないから,これらの語を結合した構成からなる造語である本件商標パールアパタイトは,特定の商品の特性を表示するものとはいえない。
したがって,本件商標は,取引者,需要者において,特定の商品の品質を認識させるものとはいえないとした本件審決の認定に誤りはない。

原告が挙げる甲号各証は,
歯磨き粉など歯科に関するものや,
触媒化学,
生化学,地質学,分析化学,物理化学等,アパタイトの中の特定の物質に
関連する研究に関する論文等であり,本件審判の請求に係る指定商品とは異なる分野の情報である。また,これらの文献は,歯科医業など特定分野の専門的な知識を有しないと理解が困難な内容で,高度かつ専門性が非常に高いものであるから,上記指定商品の一般的な取引者,需要者が,これらの文献に接し,当該内容についての知識を有することは通常ではない。また,これらの文献のほとんどは,ヒドロキシアパタイトやフッ素アパタイト,
チタンアパタイト等,
リン酸カルシウム類としての
アパタイト
に含まれる個別の物質名についてのものであり,中にはリン酸カルシウム類の総称としてのアパタイトの解説も含まれるが,
アパタイトが上
記指定商品との関係で特定の意味合いを持つことを示すものではない。したがって,原告が挙げる甲号各証から,本件商標の登録査定時において,
アパタイトが上記指定商品との関係で特定の意味合いを持ち,その意味合いに通じる特性が,取引者,需要者において商品の特定の品質に関するものとして理解されていたとはいえない。


商品の品質の誤認を生ずるおそれの判断の誤りの主張に対し
前記-1のとおり,本件商標は,特定の商品の特性を表示するものとはいえず,取引者,需要者において,特定の商品の品質を認識させるものとはいえないから,
本件商標を本件審判の請求に係る指定商品のいずれに使用しても,商品の品質について誤認を生ずるおそれはない。
したがって,本件商標は商標法4条1項16号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはない。



小括
以上のとおり,本件審決における本件商標の商標法4条1項16号該当性の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由は理由がない。
仮に原告が主張するように本件商標が真珠及びアパタイト(ハイドロキシアパタイト)を含有するという商品の品質を表示するとしても,本件

審判の請求に係る指定商品中,
真珠及びアパタイト(ハイドロキシアパタイト)を含有する化学品,真珠及びアパタイト(ハイドロキシアパタイト)を含有する化粧品,せっけん類については,商品の品質の誤認を生ずるおそれはないから,本件審決中,これらの指定商品に係る部分は維持されるべきである。
第4

当裁判所の判断

1
本件商標の商標法4条1項16号該当性について
商標法4条1項16号が商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標について商標登録を受けることができないと規定している趣旨は,商標を構成する文字,図形等が直接的に特定の商品の品質を表示するものであるため,当該商標が特定の商品以外の商品に使用された場合に,取引者,需要者が商品の品質を誤認して,商品を購入することがないように取引者,需要者の保護を図ることにあるものと解される。
そうすると,本件商標が同号に該当するというためには,本件商標の登録査定時である平成23年1月6日の時点において,本件商標の構成が直接的に表示する品質を有する特定の商品と指定商品とが関連し,かつ,本件商標の構成が表示する特定の商品の品質と指定商品が有する品質が異なるため,指定商品の取引者又は需要者において,本件商標を指定商品に使用した場合に,商品の品質の誤認を生ずるおそれがあることを要するものと解される。
以上を前提に,本件商標が同号に該当するかどうかについて判断する。


本件商標の構成
本件商標は,パールアパタイトの文字を標準文字で表してなり,パールの文字部分とアパタイトの文字部分とから構成される結合商標である。
本件商標を構成する各文字は,外観上まとまりよく一体的に表されており,その構成全体から,パールアパタイトの称呼が自然に生じる。

本件商標の構成が表示する商品の品質について

(2)

パールアパタイトの語が,一般の辞書等に掲載されていることを認めるに足りる証拠はない。
一方で,本件商標を構成するパールの文字部分は,真珠の意味
を有するものと認められる(甲3,11,12)。


原告は,本件商標の登録査定時において,アパタイトの語が,取引者,需要者の間で,歯の再石灰化を促し美白効果のあるハイドロキシアパタイト又は光触媒応用製品に適用可能なアパタイトを意味する語として,一般的に広く認識されていた旨主張するので,以下において判断する。
(ア)

証拠(甲23ないし205(枝番のあるものは枝番を含む。特に断
りのない限り,以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
a
株式会社サンギ(以下サンギという。)は,平成5年2月,歯
を白くする美白効果のある歯磨き剤として,薬用ハイドロキシアパタイトを含有するアパガードMを発売した。アパガードMは,1995年(平成7年)に放映を開始した芸能人は歯が命のキャッチコピーのテレビCMの効果等によって,ヒット商品となり,1996年(平成8年)には,年間売上げが140億円を記録した。
アパガードMの発売後,同年中には,歯磨き業界大手の他の事
業者(サンスター,ライオン)も,美白効果のある歯磨き剤として,ハイドロキシアパタイト又はフルオロアパタイトを配合する
歯磨き剤を製造,販売するようになった(甲146ないし155)。また,アパガードMは,FRIDAY,プレジデント,WED
GE等の雑誌(甲175ないし181)において,薬用ハイドロキシアパタイト配合のヒット商品として,取り上げられた。このほか,アパガードM及びその後発品に関する記事が,平成
17年6月14日付けの読売新聞(甲160),平成21年9月14日付け及び平成22年5月3日付けの日経流通新聞(甲169,170),同年6月5日付けの朝日新聞(甲171)や,週刊東洋経済,日経ヘルス等の雑誌(甲182,183等)に掲載された。
b
ハイドロキシアパタイトの語の意義に関し,平成21年7月2
7日付けの朝日新聞(甲27)に,ハイドロキシアパタイトは,

骨や歯,貝殻などの成分。人体への害が少なく,なじみやすいことから,人工骨や人工歯根などの医用材料に使われている。

,平成22年5月29日付けの加藤歯科医院のウェブサイト
(甲29)

ハに,イドロキシアパタイトとはリン酸カルシウムでできた歯や骨を構成する成分のことで,エナメル質は97%,象牙質の70%がハイドロキシアパタイトで構成されています。

などと掲載された。また,香粧品科学研究開発専門誌フレグランスジャーナル2008年(平成20年)6月号(甲204)に,ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)は,リン酸カルシウムの一種であり,歯牙や骨といった硬組織の主成分であって,化学合成品においても生体に対する安全性の高い化合物である。…工業的には,…広範囲な用途に利用されている。化学合成したハイドロキシアパタイトがそのような用途に利用されるのは,生体硬組織と直接結合するといった高い生体親和性やタンパク質,核酸および配糖体との吸着特性を有するためである。(20頁右欄)などと掲載された。さらに,日本化粧品工業連合会作成の医薬部外品の成分表示名称リストにおいて,成分名ヒドロキシアパタイト,別名ハイドロキシアパタイト本品は,,主としてヒドロキシアパタイト(…)

と記載されている(甲139,140)。
c
アパタイトの語の意義に関し,材料開発・応用専門誌ニューセラミックス1990年(平成2年)7月号(甲59)に,アパタイトはアパタイト構造(六方晶系…)をもつ結晶群の総称であるか,単にアパタイトといった場合は最も代表的なリン酸カルシウムを意味することが多い。水酸アパタイト(以下,単にアパタイトと略称する。)といえば,Ca10(PO4)6(OH)2であり,生体アパタイトのモデル物質である。フッ素アパタイトはCa10(PO4)6(PO4)F2となる。(96頁左欄),PHOSPHORUSLETTER2000年6月第38号(甲135)に,
アパタイトはM10(ZO4)6X2の組成を持つ結晶鉱物の総称であり,次の各元素が単独あるいは複数M,ZO4,Xの位置に入る。M:Ca,Ba,Sr,Mg,Na…,ZO4:PO4,AsO4…,X:F,OH,Cl…このようにアパタイト構造には多くの種類の元素が入り得るために,さまざまな固溶体が生成する。(8頁左欄),PHOSPHORUSLETTER2010年2月第67号(甲138)に,

アパタイトはカルシウムヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2:Hap)に代表される塩基性金属リン酸塩の一種である。(22頁左欄)

などと掲載されている。
d
応用化学,環境化学,触媒化学,生化学等の各種化学分野の文献等において,
アパタイトを含む用語が,ハイドロキシアパタイト(ヒ
ドロキシアパタイト)のほかに,フッ化アパタイト二酸化チタン光触媒(甲35),可視光応答型アパタイト被覆二酸化チタンハーフメタル
(甲39)
,水酸アパタイト(甲47,58,64,71,111),
フッ素アパタイト(甲50),ハロゲン固溶アパタイト(甲53),Pb2+~Ag+交換水酸アパタイト(甲56),フッ素アパタイト結晶(甲60),チタンアパタイト(甲86),カルシウムヒドロキシ
アパタイト粒子(甲88)などと使用されている。
(イ)

前記(ア)の認定事実によれば,①歯を白くする美白効果のある歯磨
き剤として広告宣伝された,薬用ハイドロキシアパタイトを含有するアパガードMがヒット商品となり,新聞,雑誌等で取り上げられた結果,
薬用ハイドロキシアパタイト又はハイドロキシアパタイト
の語は,一般消費者の間でも,歯や骨を構成する成分であることはある程度知られるようになったこと,②ハイドロキシアパタイトは,Ca10

(PO4)6(OH)2の化学式で表される,
リン酸カルシウムの一種である

こと,③アパタイトは,M10(ZO4)6X2の組成をもつ結晶鉱物の総称であり,M,Z及びXには複数の種類の元素が入り得るため,特定の化合物を指すものではなく,
ハイドロキシアパタイトは,アパタイトの
一種(Mがカルシウム(Ca),Zがリン(P),Xが水酸基(OH)のもの)ではあるが,アパタイトそのものを意味するものではないことが認められる。
加えて,
アパタイトの文字は,その称呼から,英単語appetite(本能的欲望,(特に)食欲)(甲17)又はapatite(

燐灰石。ハイドロキシアパタイト

)(甲16)に通じるものである。
以上の認定事実に照らすと,前記(ア)の冒頭掲記の証拠(甲23ないし205)から,アパタイトの語が,本件商標の登録査定時において,取引者,需要者の間で,歯の再石灰化を促し美白効果のあるハイドロキシアパタイト又は光触媒応用製品に適用可能なアパタイトを意味する語として,一般的に広く認識されていたものと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。かえって,
アパタイト
は,M10(ZO4)6X2の組成をもつ結晶鉱物の総称であって,具体的な特定の物質を表するものではなく,このことからしてもアパタイトが特
定の意味合いを理解させるものとはいえない。
したがって,原告の前記主張は,採用することができない。

前記ア及びイによれば,本件商標は,
真珠の意味を有するパール
の文字と,特定の意味合いを理解させるものとはいえないアパタイトの文字とからなる結合商標であり,その構成全体から,特定の意味合いを認識することはできないから,特定の商品の品質を直接的に表示するものと認めることはできない。
したがって,これと同旨の本件審決の認定に誤りはない。


これに対し原告は,本件商標の登録査定時において,アパタイトの語が,取引者,需要者の間で,歯の再石灰化を促し美白効果のあるハイドロキシアパタイト又は光触媒応用製品に適用可能なアパタイトを意味する語として,一般的に広く認識されており,アパタイトという成分に着目して商品の購入に及ぶといった取引の実情があったことを考慮すると,
パールとアパタイトとが結合したパールアパタイト
の語から構成される本件商標は,真珠及びアパタイト(ハイドロキシアパタイト)という物質(化学物質)を想起させるものであるから,真珠及びアパタイト(ハイドロキシアパタイト)を含有するとい
う商品の品質を表示する旨主張する。
しかしながら,前記イで説示したとおり,アパタイトの語が,取引者,需要者の間で,歯の再石灰化を促し美白効果のあるハイドロキシアパタイト又は光触媒応用製品に適用可能なアパタイトを意味する語として,一般的に広く認識されていたものと認めることはできない。また,パールアパタイトの語は,一般の辞書等に掲載されていない造語であって,具体的な特定の商品を示すことを認めるに足りる証拠はないのみならず,パールアパタイトの語から,真珠そのものとアパタイト(ハイドロキシアパタイト)とを成分に含有する具体的な商品
を一般に想起することを認めるに足りる証拠はない。
したがって,本件商標の構成が直接的に特定の商品の品質を表示するものと認めることはできないから,原告の上記主張は採用することができない。
商品の品質の誤認を生ずるおそれについて

(3)

前記(2)ウのとおり,
本件商標の構成が直接的に特定の商品の品質を表示
するものと認めることはできないから,本件商標は,取引者,需要者において,特定の商品の品質を認識させるものとはいえない。
したがって,本件商標を本件審判の請求に係る指定商品のいずれに使用しても,商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるものと認められないから,本件商標は商標法4条1項16号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはない。


これに対し原告は,本件商標は,真珠及びアパタイト(ハイドロキシアパタイト)を含有するという商品の品質を表示するものであることからすると,本件商標を真珠及びアパタイト(ハイドロキシアパタイト)を含有しない化学品又は化粧品,せっけん類に使用した場合,取引者,需要者において,真珠及びアパタイト(ハイドロキシアパタイト)を含有する商品であるとの商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるから,本件商標は,商標法4条1項16号に該当する旨主張する。
しかしながら,
前記(2)ウのとおり,
本件商標の構成が,
真珠
及び
アパタイト(ハイドロキシアパタイト)を含有するという商品の品質を直接的に表示するものと認めることはできないから,原告の上記主張は,その前提において採用することができない。

(4)

小括
以上のとおり,本件商標が商標法4条1項16号に該当しないとした本件
審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由は理由がない。2
結論
以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がなく,本件審決にこれを取り消
すべき違法は認められない。
したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。

知的財産高等裁判所第1部

裁判長裁判官

大鷹一郎
裁判官

小林康彦
裁判官

小川卓逸
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