判例検索β > 令和2年(わ)第528号
大麻取締法違反(変更後の訴因 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律違反、大麻取締法違反)、消費税法違反、地方税法違反被告事件
事件番号令和2(わ)528
事件名大麻取締法違反(変更後の訴因 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律違反,大麻取締法違反),消費税法違反,地方税法違反被告事件
裁判年月日令和3年5月14日
裁判所名・部札幌地方裁判所
判示事項の要旨被告人が,大麻草合計1110本を栽培し,また,共犯者と共謀の上,大麻合計約4942グラムを有償譲渡したこと等について麻薬特例法違反,自己が実質的に設立して経営する3つの合同会社における消費税等の不正受還付及びほ脱について消費税法違反及び地方税法違反が成立した事案で,被告人に対し懲役9年及び罰金600万円を言い渡した事例
裁判日:西暦2021-05-14
情報公開日2021-07-08 16:00:33
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判決主文
被告人を懲役9年及び罰金600万円に処する
未決勾留日数中200日をその懲役刑に算入する。
その罰金を完納することができないときは,金2万円を1日に換算した期
間被告人を労役場に留置する。
別紙1記載の金銭債権並びに別紙2記載の札幌地方検察庁で保管中の大麻草及び大麻を含有する植物片を没収する。
被告人から金1658万5371円を追徴する。
理由
(罪となるべき事実)
第1被告人は,
1(1)営利の目的で,みだりに,

令和元年11月頃から令和2年6月24日までの間,札幌市a区内のbマンションc号室において,切断した大麻草の枝を挿し木して,照明器具で光
を照射しながら水や発根促進剤を与え,又は,鉢に植えた大麻草に水や肥料を与えながら照明器具で光を照射するなどして大麻草269本(別紙2・番号1)を育成し,

同年5月頃から同年6月24日までの間,前記bマンションd号室におい
て,鉢に植えた大麻草に水と肥料を与えながら照明器具で光を照射するなどして大麻草236本(別紙2・番号2)を育成し,

同年5月頃から同年6月24日までの間,札幌市e区内のfマンションg
号室において,鉢に植えた大麻草に水と肥料を与えながら照明器具で光を照射するなどして大麻草378本(別紙2・番号3)を育成し,

同月初旬頃から同月24日までの間,前記bマンションh号室において,
鉢に植えた大麻草に水と肥料を与えながら照明器具で光を照射するなどして大麻草227本(別紙2・番号4)を育成し,
もってみだりに営利の目的で大麻を栽培する行為を業とし,
(2)アAと共謀の上,営利の目的で,みだりに,同年3月9日頃,札幌市a区内から,Bに対し,大麻を含有する植物片約30グラムを,代金9万円で,北海道旭川市(以下,住所省略)C方宛てにレターパックで発送し,同月11日,情を知らない配達員に同所に配達させてBの依頼を受けていたCに受領させたほか,大麻をみだりに譲り渡す意思をもって,令和元年11月25日頃から令和2年6月12日までの間,多数回にわたり,札幌市a区内又はその周辺から,多数人に対し,大麻様のものを大麻として,レター
パックで発送して受領させる方法により有償で譲り渡し,
イ大麻をみだりに譲り渡す意思をもって,別表記載のとおり,令和元年11月25日頃から令和2年6月11日頃までの間,14回にわたり,札幌市a区内又はその周辺から,Aに対し,大麻様のもの合計約300グラムを大麻として代金合計68万円で,大阪府寝屋川市(以下,住所省略)A方
ほか2か所にレターパックで発送し,令和元年11月27日頃から令和2年6月12日までの間,大阪府内において,情を知らない郵便局員らを介してAに受領させ,
もって大麻を譲り渡す行為と薬物犯罪を犯す意思をもって薬物その他の物品を規制薬物として譲り渡す行為を併せてすることを業とし,

2同月24日,前記bマンションc号室において,
(1)営利の目的で,みだりに,大麻を含有する植物片約147.7グラム(別紙2・番号5はその鑑定残量)を所持し,
(2)みだりに,大麻を含有する植物片約123.3グラム(別紙2・番号6はその鑑定残量)を所持した。

第2部分判決の(罪となるべき事実)第1に記載のとおり。
第3部分判決の(罪となるべき事実)第2に記載のとおり。
第4部分判決の(罪となるべき事実)第3に記載のとおり。
(証拠の標目)省略
(法令の適用)


判示第1の所為

包括して麻薬特例法5条2号(そのうち1(1)の所為は,麻薬特例法5条2号〔大麻取締法24条2項,1項〕に,1(2)の所為は,麻薬特例法5条2号〔大麻取締法24条の2第2項,1項,麻薬特例法8条2項〕に(1(2)アについては更に刑法60条),2(1)の所為は,大麻取締法24条の2第2項,1項に,2(2)の所為は,同法24条の2第1項にそれぞれ当たるところ,これらは包括
して麻薬特例法5条2号に該当する。)
判示第2及び第3の各所為
消費税法違反の点

いずれも消費税法64条1項2号,67条1項

地方税法違反の点

いずれも地方税法72条の95第1項2号,6項

判示第4の所為

消費税法違反の点

消費税法64条1項1号,67条1項

地方税法違反の点

地方税法72条の95第1項1号,6項

科刑上一罪の処理
判示第2ないし第4について
いずれも刑法54条1項前段,10条(消費税法違反と地方税法違反は,1
個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,1罪として犯情の重い消費税法違反の罪の刑でそれぞれ処断する。)
刑種の選択
判示第1の罪については有期懲役刑及び罰金刑を,判示
第2ないし第4の罪についてはいずれも懲役刑及び罰金刑
をそれぞれ選択する。

併合罪の処理

刑法45条前段,懲役刑については同法47条本文,1
0条により最も重い判示第1の罪の刑に法定の加重をし,
罰金刑については同法48条2項により判示第1ないし第
4の各罪所定の罰金の多額を合計する。
未決勾留日数算入
刑法21条


刑法18条(金2万円を1日に換算する。)

役場留没置収
別紙2記載の大麻
大麻取締法24条の5第1項本文(いずれも判示第1の罪に係る大麻で,被告人の所有するものである。)
別紙1記載の金銭債権

麻薬特例法11条1項1号,2号(判示第1の1(2)イの罪により得た薬物犯罪収益及び薬物犯罪収益に由来する財産である。)
(なお,AがD銀行に対して有するA名義の普通預金債権(省略)のうち金321円に相当する部分及びこれに対する令和2年6月25日以降の利息債権並びにAがE銀行に対して有するF名義の普通預金債権(省略)のうち金14
4円に相当する部分及びこれに対する令和2年6月18日以降の利息債権は,判示第1の1(2)アの罪により得た薬物犯罪収益及び薬物犯罪収益に由来する財産であるが,いずれもAに対する有罪判決で没収の裁判が言い渡され,同裁判は既に確定しているため,本件において没収はしない。)
追徴
麻薬特例法13条1項前段(犯人が判示第1の1(2)アの
犯行により得た金1590万6000円及び判示第1の1
(2)イの犯行により得た金68万円は,それぞれ同法11条
1項1号の薬物犯罪収益に該当するが,そのうち1658
万5371円は既に費消して没収することができないので,
その価額を被告人から追徴する。)

(量刑の理由)
1まず,本件量刑の中心となる麻薬特例法違反等の罪について,検討する。(1)

大麻の栽培についてみると,被告人は,マンション4室にそれぞれ照明器
具などの設備をそろえて,大麻草合計1110本を栽培していたのであって,その犯行の規模は大きい。この点について,弁護人は,栽培していた大麻草の本数だけでは最終的に何グラム相当の乾燥大麻が収穫できるか判断できず,栽培の規模は判断できない旨主張する。しかし,被告人の供述によっても大麻草から収穫できる大麻の量は主として栽培方法の巧拙の問題であって,収穫量はその結果に過ぎない上,後記密売量からしても実際に定期的に多量の大麻を収穫することができており,そのために必要な本数を栽培していたと
もいえることから,大麻草のなかに収穫できない大麻草が一定程度含まれていたとしてもこれを考慮するのは相当でない。
(2)次に,大麻を譲渡した点についてみると,被告人は,Aと共謀の上,約6か月半の間に,166回にわたり,合計約4942グラムの大麻を密売した。大麻の密売による売上額は1590万6000円に達しており,そのうち,
被告人は,Aの取り分を控除した1115万7500円を取得している。この点について,弁護人は,大麻を栽培するための経費として約961万円を要しており,多額の利益を得たとはいえない旨主張する。しかし,この経費には初期投資の費用などが含まれており,大麻の栽培を継続してより多くの利益を得るための費用だったことなどからすれば,経費がかかっていること
を大きく考慮すべきではない。
被告人が大麻を譲渡した相手は約100人にも及んでおり,また,1人の密売相手に譲渡した大麻の量が50グラム程度であったことが多数回みられるところ,その密売相手から大麻がさらに拡散していた可能性も十分に考えられる。このように,大麻が社会に広く拡散したのは,AがSNSを使用し
て集客を行ったことに起因する点もあるが,そもそも,概ね1週間に,多い時には300グラム,少ない時でも135グラムを譲渡するに足りる量の大麻を栽培していたのは被告人であり,これに加えて,大麻の収穫予想量をAに伝えていたのである。したがって,被告人は,大麻を拡散した点について,主導的な役割を果たしていたとはいえないものの,Aと同等の責任を負うというべきである。
さらに,被告人は,Aに対しても,大麻を譲渡し,68万円の売上げを取
得している。
(3)他方,被告人は,当初から密売等によって利益を上げることを計画して大麻を栽培したものではなく,被告人の大麻の栽培や譲渡に組織的な背景は認められない。
(4)以上の大麻の栽培や譲渡に関する事実を踏まえれば,被告人の刑事責任は,
前科のない者が行った同種事案の中でも特に重いものといえるが,懲役10年を超えるほどに重いとまではいえない。
2
次に,消費税法違反等の罪についてみると,確かに,被告人は,国税局に勤
める職員であったところ,このような立場にある被告人が,不正に消費税等の還付を受けたり納付を免れたりしたことは強い非難に値する。しかし,不正受
還付及びほ脱の合計額や,部分判決の罪となるべき事実に関連する情状に関する事実についてで認定した事実に照らせば,懲役刑については,麻薬特例法違反等の罪において考えられる量刑の大枠の中で考慮されるべきものと判断した。
3
本件各犯行に関する事実は以上のとおりであるが,これに加えて,被告人が
本件各事実を認めて反省していること,前妻が被告人の出所後も一緒に生活をして,その更生を支援することを約束しており,家族のサポートが期待できることといった被告人のために酌むべき事情も考慮して,主文のとおりの懲役刑をもって臨むこととした。なお,罰金刑については,麻薬特例法違反等については大麻の栽培や密売の規模等,消費税法違反等については,不正受還付額及びほ脱額等に鑑み,被告人に対し,検察官が求刑するとおりの罰金額を科するのが相当と判断した。
(求刑-懲役13年及び罰金600万円,主文同旨の没収,追徴)令和3年5月14日
札幌地方裁判所刑事第2部
裁判長裁判官

中川

正隆

裁判官
宇野

遥子

裁判官
豊富


(別紙及び別表省略)
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