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報酬等請求本訴、不当利得返還請求反訴、民訴法260条2項の申立て事件
事件番号令和2(受)205
事件名報酬等請求本訴,不当利得返還請求反訴,民訴法260条2項の申立て事件
裁判年月日令和3年6月29日
法廷名最高裁判所第三小法廷
裁判種別判決
結果破棄差戻
原審裁判所名東京高等裁判所
原審事件番号平成31(ネ)52
原審裁判年月日令和元年9月26日
判示事項無免許者が宅地建物取引業を営むために宅地建物取引業者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は,公序良俗に反し,無効である
裁判日:西暦2021-06-29
情報公開日2021-06-29 14:00:03
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令和2年(受)第205号,同3年(オ)第577号
報酬等請求本訴,不当利得返還請求反訴,民訴法260条2項の申立て事件令和3年6月29日

第三小法廷判決
主文1
原判決中,上告人敗訴部分を破棄する

2
前項の部分及び上告人の民訴法260条2項の裁判
を求める申立てにつき,本件を東京高等裁判所に差
し戻す。
理由
上告代理人清水俊彦,同菅原滉平の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
1
原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
被上告人は,平成28年10月頃,Aと共に,不動産取引に係る事業を行う
旨の計画を立てた。
上記計画においては,被上告人は,自らを専任の宅地建物取引士とする会社での勤務を続けつつ,その人脈等を活用して,新たに設立する会社において不動産取引を継続的に行うことが予定されていた。
その後,宅地建物取引士の資格を有するyが上記計画に加わり,同人を新たに設立する会社の専任の宅地建物取引士とすることになった。
yは,平成29年1月,上記計画に従って上告人を設立してその代表取締役に就任し,上告人は,同年2月,yを専任の宅地建物取引士として宅地建物取引業の免許を受けた。
被上告人は,平成29年2月頃までに,不動産仲介業者である株式会社Bから,C株式会社の所有する土地建物(以下本件不動産という。)の紹介を受けた。被上告人は,上記計画に基づく事業の一環として本件不動産に係る取引を行うことにしたが,yに対する不信感から,本件不動産に係る取引に限って上告人の名義を使用し,その後は上告人及びyを上記事業に関与させないことにしようと考え,Aを通じてyと協議した。その結果,同年3月7日,被上告人と上告人との間で,要旨次のとおりの合意(以下本件合意という。)が成立した。ア
本件不動産の購入及び売却については上告人の名義を用いるが,被上告人が
売却先を選定した上で売買に必要な一切の事務を行い,本件不動産の売却に伴って生ずる責任も被上告人が負う。

本件不動産の売却代金は被上告人が取得し,その中から,本件不動産の購入
代金及び費用等を賄い,上告人に対して名義貸し料として300万円を分配する。上告人は,本件不動産の売却先から売却代金の送金を受け,同売却代金から上記購入代金,費用等及び名義貸し料を控除した残額を被上告人に対して支払う。ウ
本件不動産に係る取引の終了後,被上告人と上告人は共同して不動産取引を
行わない。
本件不動産については,平成29年3月,Cを売主,上告人を買主とし,代金を1億3000万円とする売買契約が締結され,同年4月,上告人を売主,Dを買主とし,代金を1億6200万円とする売買契約が締結された。これらの売買契約については,被上告人が売却先の選定,Bとのやり取り,契約書案及び重要事項説明書案の作成等を行った。
被上告人は,平成29年4月26日,上告人に対し,本件不動産の売却代金からその購入代金,費用等及び名義貸し料を控除した残額が2319万円余りとなるとして,同売却代金の送金を受け次第,本件合意に基づき同額を支払うよう求めた。
上告人は,平成29年4月27日,上記売却代金の送金を受けたが,自らの取り分が300万円とされたことなどに納得していないとして上記の求めに応じず,上記計画に基づく事業への関与の継続を希望するなどしたものの,同年5月,被上告人に対し,本件合意に基づく支払の一部として1000万円を支払った。2
本件本訴は,被上告人が,上告人に対し,本件合意に基づいて被上告人に支払われるべき金員の残額として1319万円余りの支払を求めるなどするものであり,本件反訴は,上告人が,被上告人に対する1000万円の支払は法律上の原因のないものであったと主張して,不当利得返還請求権に基づき,その返還等を求めるものである。
3
原審は,前記事実関係等の下において,本件合意の効力を否定すべき事情は
なく,本件合意の効力が認められると判断して,被上告人の本訴請求を認容し,上告人の反訴請求を棄却すべきものとした。
4
しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
宅地建物取引業法は,第2章において,宅地建物取引業を営む者について免許制度を採用して,欠格要件に該当する者には免許を付与しないものとし,第6章において,免許を受けて宅地建物取引業を営む者(以下宅建業者という。)に対する知事等の監督処分を定めている。そして,同法は,免許を受けない者(以下無免許者という。)が宅地建物取引業を営むことを禁じた上で(12条1項),宅建業者が自己の名義をもって他人に宅地建物取引業を営ませることを禁止しており(13条1項),これらの違反について刑事罰を定めている(79条2号,3号)。同法が宅地建物取引業を営む者について上記のような免許制度を採用しているのは,その者の業務の適正な運営と宅地建物取引の公正とを確保するとともに,宅地建物取引業の健全な発達を促進し,これにより購入者等の利益の保護等を図ることを目的とするものと解される(同法1条参照)。
以上に鑑みると,宅建業者が無免許者にその名義を貸し,無免許者が当該名義を用いて宅地建物取引業を営む行為は,同法12条1項及び13条1項に違反し,同法の採用する免許制度を潜脱するものであって,反社会性の強いものというべきである。そうすると,無免許者が宅地建物取引業を営むために宅建業者との間でするその名義を借りる旨の合意は,同法12条1項及び13条1項の趣旨に反し,公序良俗に反するものであり,これと併せて,宅建業者の名義を借りてされた取引による利益を分配する旨の合意がされた場合,当該合意は,名義を借りる旨の合意と一体のものとみるべきである。
したがって,無免許者が宅地建物取引業を営むために宅建業者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は,同法12条1項及び13条1項の趣旨に反するものとして,公序良俗に反し,無効であるというべきである。
前記事実関係等によれば,本件合意は,無免許者である被上告人が宅建業者である上告人からその名義を借りて本件不動産に係る取引を行い,これによる利益を被上告人と上告人で分配する旨を含むものである。そして,被上告人は本件合意の前後を通じて宅地建物取引業を営むことを計画していたことがうかがわれる。これらの事情によれば,本件合意は上記計画の一環としてされたものとして宅地建物取引業法12条1項及び13条1項の趣旨に反するものである疑いがある。上告人は,原審において,本件合意の内容は同法に違反する旨を主張していたものであるところ,原審は,上記事情を十分考慮せず,同主張について審理判断することなく本件合意の効力を認めたものであり,この判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由がある。5
以上によれば,原判決中,上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして,本件
合意の効力等について更に審理を尽くさせるため,上記部分及び上告人の民訴法260条2項の裁判を求める申立てにつき,本件を原審に差し戻すこととする。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官

戸倉三郎

裁判官

宮崎裕子

道晴)
裁判官

宇賀克也

裁判官

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