判例検索β > 令和2年(ワ)第25127号
「オーサグラフ世界地図」の共同著作権確認請求事件 著作権 民事訴訟
事件番号令和2(ワ)25127
事件名「オーサグラフ世界地図」の共同著作権確認請求事件
裁判年月日令和3年6月4日
裁判所名東京地方裁判所
権利種別著作権
訴訟類型民事訴訟
裁判日:西暦2021-06-04
情報公開日2021-06-25 12:02:18
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令和3年6月4日判決言渡

同日原本領収

裁判所書記官

令和2年(ワ)第25127号オーサグラフ世界地図の共同著作権確認請求事件口頭弁論終結日

令和3年4月5日
判原決A山根二郎被告慶應義塾
同訴訟代理人弁護士

出縄正人同鈴木一夫同告
同訴訟代理人弁護士

中村主閑文1
本件訴えを却下する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1請求
原告と被告の間において,慶應義塾大学SFCB研究室の公式ホ

ームページに掲載されている別紙3の①記載のAuthaGraphMap世界地図が,原告及びBの両名を発明者とする共同著作物であることを確認する。
第2事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,別紙3の①記載のAuthaGraphMap世界地図(以下本件地図という。)が原告及び被告の設置する慶應義塾大学大学院の准教授であるB(以下Bという。)の両名を発明者とする作成原理・作成方法を用いて作成された共同著作物であることの確認を求める事案である。
1
前提事実(後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事
実並びに当裁判所に顕著な事実)
(1)ア

原告は,新しい幾何学分野(シナジェティクス)の研究並びに研究者,
学生及び各種企業に対する指導を行う者である。

被告は,慶應義塾大学,慶應義塾大学大学院等を設置する法人である。

Bは,慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の准教授である(甲
2)。
(2)

Bは,自らが管理運営するBFCBLaboratory研究室と題するウェブサイト(http://
慶應義塾大学S
以下省略。以

下本件ウェブサイトという。)内に,本件地図を掲載した(甲3,乙B1の1ないし3,2)。
(3)

別紙1の①及び②並びに別紙2の①及び②記載の各地図(以下別件各地図という。)並びに本件地図は,いずれもオーサグラフ図法という手法に基づき作成された地図であるところ,原告は,令和2年10月5日,B及び被告に対し,Bとの関係において,別件各地図が原告及びBの両名を発明者とする共同著作物であることの確認を,被告との関係において,前記第1のとおりの確認をそれぞれ求める訴えを提起した。
Bは,別件各地図はBが単独で作成したものであり,原告はこれに何ら関与していないと主張して,原告のBに対する上記請求の棄却を求めた。上記訴訟の口頭弁論は,令和3年4月5日の第2回口頭弁論期日において,
原告のBに対する請求と本件とに分離された(以下,分離後の原告とBとの間の訴訟を別件訴訟という。)。
2本件訴えの適法性に関する争点
本件訴えに確認の利益が認められるか
3争点に関する当事者の主張

(原告の主張)
被告は,被用者であるBに対し,被告の設置する慶應義塾大学においてオーサグラフ世界地図はBが発明したものであるという講義をさせ,このような内容のBの論文を慶應義塾大学湘南藤沢学会が発行する学術論文誌に掲載し,本件ウェブサイト内に本件地図とともに本件地図はBが発明したものである旨の説明文を掲載した。
被告が自ら積極的に上記各行為を行っておらず,Bがこれらを行っていたとしても,被告とBは雇用関係にあり,Bが本件ウェブサイトにおいて行っていることが慶應義塾大学の学生に対する講義の内容となっている以上,これをBの私的な行為として扱うことはできない。本件ウェブサイトや講義の内容に重大な誤りがあり,他者の権利を侵害するものであった場合,雇用者である被告
は,被用者であるBに対し,これを是正するよう注意すべき義務があり,本件地図の発明ないし創作に関する事実関係を全く知らないから関係がないと主張することは許されない。
したがって,原告が被告に対して本件地図に係る著作権の帰属の確認を求めることについて,確認の利益が認められる。

(被告の主張)
確認の訴えは,即時確定の利益がある場合,換言すれば,現に,原告の有する権利または法律的地位に危険または不安が存在し,これを除去するため被告に対し確認判決を得ることが必要かつ適切な場合に限り,許される(最高裁昭和27年(オ)第683号同30年12月26日第三小法廷判決・民集9
巻14号2082頁)と解される。
被告は,Bに対して本件地図はBが発明したものであるという講義をさせたことはないし,このような内容のBの論文を掲載した学術論文誌を発行したこともない。被告は,過去及び現在において,本件地図に関して何らの行為も行っておらず,今後も行う予定はない。

また,本件ウェブサイトはBが個人的に管理運営するものであり,被告は本件ウェブサイトの管理権限を有さないから,この内容を修正することはできな
い。一般論として,被告が雇用者として被用者の行為を是正するよう注意しなければならないことがあるとしても,原告に本件地図に係る権利又は法律的地位について危険や不安があるのであれば,Bに対して提訴すれば足り,被告に対して確認を求めたところで紛争を解決することはできない。
さらに,被告は,本件地図の作成に関与しておらず,原告及びBがどのよう
に発明ないし創作に携わったのか全く知らないから,いずれの当事者にいかなる権利が帰属するかを判断し得る地位にない。
したがって,本件訴えには即時確定の利益がなく,確認の利益が認められない。
第3当裁判所の判断
1
原告は,本件地図が原告及びBの両名を発明者とする共同著作物であることの確認を求めるが,確認の訴えは,原則として,法律関係の存否を目的とするものに限り許され,事実関係については訴訟法上特に認められた場合(民訴法134条)のほかはこれを提起することはできないと解される(最高裁昭和30年(オ)第95号同31年10月4日第一小法廷判決・民集10巻10号1229頁参照)。
そこで,原告の請求を合理的に解釈すると,原告及びBが本件地図に係る著作権及び著作者人格権を有することの確認を求めるものと解することができるので,以下,これを前提に判断する。

2
確認の訴えは,即時確定の利益がある場合,すなわち,現に,原告の有する
権利又は法的地位に危険又は不安が存在し,これを除去するため,被告に対して確認判決を得ることが必要かつ適切な場合に限り許される。したがって,それが許されるためには,仮に原告の権利又は法的地位に危険又は不安が存在するとしても,その危険又は不安が被告に起因し,かつ,対象となる権利又は法的地位について確認判決をすることでその危険又は不安が解消されなければならないというべきである。

しかし,本件においては,Bによる講義の内容がオーサグラフ世界地図はBが発明したものであるというものとなったこと,上記講義と同内容の論文が学術論文誌に掲載されたこと,本件ウェブサイト内に本件地図とともに本件地図はBが発明したものである旨の説明文が掲載されたことについて,それらが被告に起因するものであることを認めるに足りる証拠はない。また,被告は,本件地図に係る著作権又は著作者人格権が自らにあるとは主張しておらず,今後,被告がこのような主張をすることをうかがわせる事情も認められない。そうすると,原告の有する権利又は法的地位に存在する危険又は不安が被告に起因するものであるとはいえない。

さらに,被告が,自らは本件地図の作成に関与しておらず,本件地図に関して原告及びBのいずれかにいかなる権利が帰属するかを判断し得ないとも主張していることに照らせば,そのような被告に対して確認判決を得ることにより,原告の有する権利又は法的地位への危険又は不安を取り除くことができるとは考え難い。そして,前記前提事実(3)のとおり,原告は,別件訴訟において,B
に対し,本件地図と同じくオーサグラフ図法により作成された別件各地図が原告及びBを発明者とする共同著作物であることの確認を求め(本件と同様に,原告及びBが別件各地図に係る著作権及び著作者人格権を有することの確認を求めるものと解される。),これに対して,Bは,別件各地図はBが単独で作成したものであると主張して争っているが,原告と被告との間で本件地図に係
る著作権及び著作者人格権の帰属を確定したところで,原告とBとの間において別件各地図に係る著作権及び著作者人格権の帰属を確定することはできない。このことは,Bが被告の設置する慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授であり(前記前提事実(1)イ),被告とBは雇用関係にあると認められることを考慮しても変わりはない。さらに,前記前提事実(2)のとおり,本件ウェブ
サイトはBが管理運営しており,被告が本件ウェブサイトの内容を変更することができるとは認められないから,被告に対して確認判決を得たとしても,本
件ウェブサイト内において,本件地図につき当該判決に従った取扱いがされることが期待できるとはいえない。そうすると,本件において原告の権利又は法的地位について確認判決をすることにより,原告の権利又は法的地位に存在する危険又は不安が解消されるとは認められないというべきである。そのほかに,原告と被告との間で,本件地図に係る原告の権利又は法的地位に危険又は不安が存在し,これを除去するために被告に対して確認判決を得ることが必要かつ適切であることをうかがわせる事情は認められない。したがって,原告と被告との間で原告及びBが本件地図に係る著作権及び著作者人格権を有することを確認することについては即時確定の利益が認められ
ないから,本件においては確認の利益が認められない。
第4結論
以上のとおり,本件訴えは確認の利益が認められず不適法であるから,これを却下することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部

裁判長裁判官

國分小川隆文
裁判官


裁判官


別紙1の①省略
別紙1の②省略
別紙2の①省略
別紙2の②省略
別紙3の①省略

野紀夫
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