判例検索β > 令和2特年(わ)第3262号
金融商品取引法違反
事件番号令和2特(わ)3262
事件名金融商品取引法違反
裁判年月日令和3年4月27日
裁判所名・部東京地方裁判所  刑事第1部
裁判日:西暦2021-04-27
情報公開日2021-06-24 16:01:02
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令和3年4月27日
令和2年

東京地方裁判所刑事第1部宣告
金融商品取引法違反被告事件

主文
被告人を懲役2年に処する
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。

理由
【犯罪事実】
被告人は,株式会社東京証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場していた株式会社Aの代表取締役社長兼最高経営責任者を務めていたものであるが,平成30年8月7日頃,その職務に関し,B株式会社代表取締役社長Cからの伝達により,同社の業務執行を決定する機関が株式会社Aの株券(以下A株という。)の公開買付けを行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実を知るとともに,株式会社Aの業務執行を決定する機関が子会社の異動を伴うD株式会社の株券の取得をすることについての決定をした旨の株式会社Aの業務等に関する重要事実を知り,知人であるEにあらかじめA株を買い付けさせて利益を得させる目的をもって,前記各事実の公表前である同年9月上旬頃から同月下旬頃までの間,東京都内又は千葉県内において,前記Eに対し,3回にわたり,電話により,A株の買付けを勧めたものであり,これにより買付けを勧められた同人が,法定の除外事由がないのに,前記各事実の公表前である同月6日から同年10月9日までの間,F株式会社を介し,東京都中央区日本橋兜町2番1号所在の前記東京証券取引所において,A株合計7万6500株を代金合計4億3279万8000円で買い付けた。
【量刑の理由】
被告人は,株式会社Aの代表取締役社長の立場にあったことで,判示のような公開買付けや完全子会社化の事実を知りながら,これらがA株の価格の上昇要因にな
る可能性が高いと考え,公私ともに親交のあった知人に売買差益を得させるため,3回にわたって同株の買付けや買い増しを推奨した。その態様は,これらの事実への具体的言及は避けながらも,相応の根拠があることを暗に示し,知人が買い付けた株数が5000株にとどまることを知ると,買付けの具体的な期限をも示唆して買増しを推奨しており,悪質である。このような積極的な取引推奨により,上記知人が合計7万6500株を代金合計約4億3279万円で買い付け,合計約6900万円の売買差益を得るなど,大きな規模での取引を招来し,金融商品市場における公平性,公正性やこれに対する一般投資家の信頼を大きく害した。被告人は,上記知人の尊敬や信頼を得るために本件に及んだとか,法改正により取引推奨行為が規制対象となったことは知らなかったなどと述べているが,無思慮で短絡的な犯行というほかなく,社内のコンプライアンスを徹底すべき立場にあった被告人が,そのような動機で安易に犯行に及んだことは強い非難に値する。
以上によれば,被告人の刑事責任を軽視することはできないが,他方で,被告人自身は本件犯行によって経済的利益を得ておらず,これを得る目的があったとも認められないこと,被告人は罪を認め二度と法律違反になるようなことはしないなどと反省の弁を述べていること,交通事犯による罰金前科以外の前科がないことなどをも考慮し,被告人を主文の刑に処した上,その執行を猶予するのが相当であると判断した。
(求刑

懲役2年)

令和3年4月27日
東京地方裁判所刑事第1部

裁判長裁判官

守下実
裁判官

家入美香
裁判官

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