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過誤納付金還付等請求事件
事件番号令和2(行ヒ)337
事件名過誤納付金還付等請求事件
裁判年月日令和3年6月22日
法廷名最高裁判所第三小法廷
裁判種別判決
結果破棄差戻
原審裁判所名札幌高等裁判所
原審事件番号令和1(行コ)25
原審裁判年月日令和2年9月10日
判示事項複数年度分の住民税を差押えに係る地方税とする滞納処分における配当金であって,後の減額賦課決定により配当時に存在しなかったこととなる年度分の住民税に充当されていたものは,配当時に存在する他の年度分の住民税に法定充当がされる
裁判日:西暦2021-06-22
情報公開日2021-06-22 18:00:05
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令和2年(行ヒ)第337号
令和3年6月22日

過誤納付金還付等請求事件

第三小法廷判決

主文
原判決を破棄する
本件を札幌高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人坂口唯彦ほかの上告受理申立て理由について
1
稚内市長(以下市長という。)は,上告人の市民税及び道民税(普通徴
収に係るもの。以下市道民税という。)のうち平成21年度分から同23年度分までのもの(以下本件市道民税という。)並びにその延滞金等につき,順次,納付を受け又は滞納処分により徴収したが,その後,本件市道民税の税額を減少させる各賦課決定(以下本件各減額賦課決定という。)をするとともに,これにより過納金が生じたとして,上告人に対し,過納金の還付及び還付加算金の支払をした。本件は,上告人が,市長による上記過納金の額の計算に誤りがあるとして,被上告人に対し,不足分の過納金の還付及び還付加算金の支払を求めるとともに,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求める事案である。
2
原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
個人の道府県民税の賦課徴収は,原則として,当該道府県の区域内の市町村
が,当該市町村の個人の市町村民税の賦課徴収の例により,これと併せて行うものとされ(地方税法41条1項前段,319条2項),この場合において,還付加算金,延滞金等の計算については,道府県民税及び市町村民税の額の合算額によって行うものとされている(同法41条1項後段)。そして,市町村民税に係る地方団体の徴収金の滞納処分については,国税徴収法に規定する滞納処分の例によるものとされている(地方税法331条6項)。
上告人の平成20年分から同22年分までの所得税について,上告人が確定申告をしたところ,所轄税務署長は,平成23年3月14日付け及び同月30日付けで,それぞれ総所得金額及び納付すべき税額を増加させる各更正処分(以下本件各増額更正処分という。)をした。これを受けて,市長は,本件市道民税につき,平成23年4月25日付けで,平成21年度分の税額を0円から1931万6300円に,同22年度分の税額を0円から2561万6300円にそれぞれ増加させる各賦課決定(納期限をいずれも同23年5月20日とするもの)をし,同年6月10日付けで,同23年度分の税額を1192万8700円とする賦課決定(納期限を同月30日以降の日とするもの)をした。
市長は,本件市道民税につき,第1審判決別紙1のとおり,平成23年7月7日から同29年12月26日までの間に,上告人から納付を受け又は滞納処分による徴収を行い,これらの納付又は徴収に係る金銭(合計6468万9760円)は,同別紙の充当内訳欄のとおり,本件市道民税及びその延滞金等に順次充当された。
このうち市長がした滞納処分(以下本件各滞納処分という。)の概要は,次の①~④のとおりであり,本件各滞納処分における換価代金等は,差押えに係る地方税等に配当された(以下,滞納処分において配当された金銭を配当金ということがある。)。


平成23年7月19日付け債権差押え

差押えに係る地方税
差押債権


上告人が有する普通預金の払戻請求権

平成23年7月19日付け債権差押え

差押えに係る地方税
差押債権


平成21年度分及び同22年度分の市道民税

平成21年度分及び同22年度分の市道民税

上告人が有する普通預金の払戻請求権

平成23年10月4日付け債権差押え

差押えに係る地方税

平成21年度分から同23年度分までの市道民税差押債権

上告人が支払を受けるべき平成23年10月以降の毎月の給与等の支
払請求権


平成28年4月1日付け債権差押え

差押えに係る地方税
差押債権

平成21年度分及び同23年度分の市道民税

上告人が支払を受けるべき平成28年4月以降の毎月の給与等の支払
請求権
上告人は,本件各増額更正処分の取消訴訟を提起していたところ,平成29年12月15日,総所得金額及び納付すべき税額の計算の誤りを理由に,本件各増額更正処分のうち確定申告額を超える部分を取り消す旨の判決が確定した。これを受けて,市長は,平成29年12月27日付けで,本件市道民税につき,平成21年度分の税額を1054万5700円に,同22年度分の税額を2079万2200円に,同23年度分の税額を556万5000円に,それぞれ減少させる本件各減額賦課決定をした。
市長は,本件各減額賦課決定により過納金が生じたとして,平成29年12月27日付けで,上告人に対し,過納金1995万8400円及び還付加算金77万2600円を支払った。
市長は,上記過納金の額の計算に当たり,第1審判決別紙2のとおり,本件各滞納処分において差押えに係る地方税に配当された金銭であって,本件各減額賦課決定がされた結果配当時に存在しなかったこととなる年度分の市道民税に充当されていたものにつき,それぞれ直ちにその金額に相当する過納金が生じたものとして扱い,これを当該差押えに係る地方税のうちその配当時に存在していた他の年度分の市道民税に充当されたものとして扱うことなく算定した各年度分の滞納税額を基礎として,同別紙3~5のとおり,本件各減額賦課決定による減額後の本件市道民税に係る延滞金の額を算出した。
本件訴訟において,上告人は,第1審判決別紙6のとおり,本件各滞納処分において差押えに係る地方税に配当された金銭であって,本件各減額賦課決定がされた結果配当時に存在しなかったこととなる年度分の市道民税に充当されていたものについては,当該差押えに係る地方税のうちその配当時に存在していた他の年度分の市道民税に充当されるべきであり,本件各減額賦課決定による減額後の本件市道民税に係る延滞金の額については,同別紙7~9のとおり,その充当後の滞納税
ては,延滞金の額が過大に算出された結果,上告人に還付すべき過納金の額が過少に算出されている旨主張している。
3
市長の計算に誤りはないとして,上告人の請求をいずれも棄却すべきものとした。地方税の賦課決定に基づき滞納処分による徴収がされ,徴収された金銭が当該地方税に充当された後,当該地方税について減額賦課決定がされた場合,当該減額賦課決定に係る税額を超えて徴収された金銭については,徴収の時点から法律上の原因を欠いていたものであるから,そのまま過納金として還付されるべきであり,その徴収当時他に滞納税が存在したときであっても,当該他の滞納税に充当されたものとして延滞金等を計算する法的根拠は存在しない。
4
しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
普通徴収に係る個人の市町村民税及び道府県民税(以下個人住民税という。)について賦課決定がされた後,当初から当該賦課決定における税額等の計算に誤りがあったことを理由に減額賦課決定がされた場合,当初の賦課決定のうち減額賦課決定により減少した税額に係る部分は当初の賦課決定時に遡って効力を失い,当該部分の個人住民税は当初から存在しなかったこととなる。そのため,当初の賦課決定に基づく個人住民税を差押えに係る地方税とする滞納処分における配当金であって,上記減額賦課決定がされた結果存在しなかったこととなる個人住民税に充当されていたものについては,当該充当は対象債権を欠いていたものとしてその効力を有しないこととなる。ところで,複数の地方税を差押えに係る地方税とする滞納処分において,当該差押えに係る地方税に配当された金銭は,当該複数の地方税のいずれかに滞納分が存在する限り,法律上の原因を欠いて徴収されたものとなるのではなく,当該滞納分に充当されるべきものである。滞納処分制度が地方税等の滞納状態の解消を目的とするものであることに照らせば,このことは,上記のように当初の充当が効力を有しないこととなった配当金についても同様に妥当し,当該配当金は,その配当時において差押えに係る地方税のうちに他に滞納分が存在する場合には,これに充当されるべきものである。仮に,当該配当金が直ちに法律上の原因を欠いて徴収された過納金に当たるものとして還付されるとすれば,その配当時において当該差押えに係る地方税に滞納分が存在したにもかかわらず,その滞納状態を解消する効果が生じず,当該滞納状態を基礎とする延滞金が生ずることにもなって,滞納処分制度の上記目的に反するものといわざるを得ない。そして,滞納処分制度が設けられている趣旨に照らせば,上記のように当初の充当が効力を有しないこととなった配当金について他に充当されるべき差押えに係る地方税が存在する場合には,債務の弁済に係る画一的かつ最も公平,妥当な充当方法である民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)489条の規定に従った充当(以下法定充当という。)がされるものと解すべきである。
以上によれば,複数年度分の個人住民税を差押えに係る地方税とする滞納処分において,当該差押えに係る地方税に配当された金銭であって,その後に減額賦課決定がされた結果配当時に存在しなかったこととなる年度分の個人住民税に充当されていたものは,その配当時において当該差押えに係る地方税のうち他の年度分の個人住民税が存在する場合には,当該個人住民税に法定充当がされるものと解すべきである。
これを本件についてみると,市長は,複数年度分の市道民税を差押えに係る地方税とする本件各滞納処分において,当該差押えに係る地方税に配当された金銭であって,本件各減額賦課決定がされた結果配当時に存在しなかったこととなる年度分の市道民税に充当されていたものにつき,当該差押えに係る地方税のうちその配当時に存在していた他の年度分の市道民税に充当されたものとせず,それぞれ直ちにその金額に相当する過納金が生じたものとして,本件各減額賦課決定により生じた過納金の額を計算したものであるから,市長の当該計算には誤りがある。5
以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違
反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,被上告人が上告人に還付すべき過納金の額等について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官

道晴

宮崎裕子

裁判官

裁判官

戸倉三郎

長嶺安政)
裁判官

宇賀克也

裁判官

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