判例検索β > 平成30年(行ウ)第184号
環境影響評価書確定通知取消等請求事件
事件番号平成30(行ウ)184
事件名環境影響評価書確定通知取消等請求事件
裁判年月日令和3年3月15日
裁判所名大阪地方裁判所
裁判日:西暦2021-03-15
情報公開日2021-06-21 16:01:08
裁判所の詳細 / 戻る / PDF版
主文1
本件各訴えのうち,確認の訴えに係る部分をいずれも却下する。

2
原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

3
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由

第1
1
請求
経済産業大臣が平成30年5月22日付けで株式会社コベルコパワー神戸第二に対してした,下記の火力発電所に係る環境影響評価書を変更すべきことを命ずる旨の電気事業法46条の17第1項の規定による命令をする必要がないと認める旨の同条2項に基づく通知を取り消す。


発電所名

神戸製鉄所火力発電所(仮称)(計画中)


石炭


発電規模
発電方式

微粉炭火力・超々臨界圧発電

供給開始時期

130万kW(65万kW×2)

3号機(新設1号機):2021年度稼働予定
4号機(新設2号機):2022年度稼働予定

計2画地
神戸市灘区灘浜東町2番地

経済産業大臣が,電気事業法39条1項に基づく主務省令において,火力発電所からの二酸化炭素の排出規制に係る,パリ協定に整合する規定を定めてい
ないことが違法であることを確認する。
第2

事案の概要
本件は,
株式会社コベルコパワー神戸第二
(以下
コベルコパワー
という。

が石炭火力発電所(以下本件発電所という。
)の設置を計画している神戸市

灘区及びその周辺地域の住民である原告らが,①コベルコパワーが環境影響評価法21条2項の規定により作成した環境影響評価書
(以下
評価書
という。
)を経済産業大臣に届け出たところ
(電気事業法46条の16)経済産業大臣が,

同法46条の17第2項に基づき,コベルコパワーに対して,同条1項の規定による命令をする必要がない旨を通知したこと
(以下
本件確定通知
という。

について,本件確定通知は違法であると主張して,その取消しを求めるとともに,②行政事件訴訟法4条の当事者訴訟として,経済産業大臣が,電気事業法
39条1項に基づく主務省令において,火力発電所からの二酸化炭素の排出規制に係る,パリ協定に整合する規定を定めていないことが違法であることの確認を求める事案である
(以下,
上記①の請求に係る訴えを
本件取消しの訴え
といい,同②の請求に係る訴えを本件確認の訴えという。。)
1
関係法令の定め
関係法令の定めは,別紙2関係法令の定め記載のとおりである(同別紙中で定めた略称は,以下においても同様に用いる。)。

2
前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)

(1)

原告ら等
原告らは,神戸市,芦屋市,大阪市又は吹田市に居住する者である(弁論の全趣旨)。


コベルコパワーは,平成30年5月11日,株式会社神戸製鋼所(以下神戸製鋼という。)からの会社の分割により成立した,電気供給事業等を目的とする株式会社である(甲D2)。

(2)

本件発電所の設置の工事の事業(以下本件事業という。)に係る計画神戸製鋼は,その運営する神戸製鉄所内に石炭火力発電所2基(発電規模
は70万kW×2。以下既設発電所という。)を建設し,平成14年及び平成16年から稼働させていた。
関西電力株式会社(以下関西電力という。)は,火力発電の高経年化への対応及び燃料費の削減による経済性向上の観点から,中長期的に最新鋭の火力発電所の開発・導入に取り組んでおり,平成26年7月,平成33年4月1日から平成35年7月1日までに供給開始する火力電源150万kWを入札により募集した。神戸製鋼は,神戸市灘区灘浜東町2番地(既設発電所の隣)
に本件発電所
(原動力の種類は汽力,
発電規模は約65万kW×2,
発電方式は微粉炭火力超々臨界圧発電)を設置することを計画し,これを前提に上記入札を落札して,平成27年3月,関西電力との間で,平成33年から30年間全量売電する旨の電力受給契約を締結した。
(甲A4,甲D5,7,12,弁論の全趣旨)
(3)

本件事業に関する環境影響評価その他の手続


(ア)

配慮書の手続
神戸製鋼は,本件事業に関する配慮書(以下本件配慮書という。)を作成し,
平成26年12月15日,
これを経済産業大臣に送付した
(甲
A5,10,23,乙14)。

(イ)

神戸製鋼は,関係地方公共団体の長として兵庫県知事に環境の保全の見地からの意見を求め,同知事は,平成27年2月20日,神戸製鋼に
対し,
a施設の供用に伴う大気中の微小粒子状物質
(以下
PM2.5
ということがある。)への影響について,最新の知見を収集するなど実態の把握を進め,環境影響評価の実施について検討すること,b①施設の供用に伴う二酸化炭素の排出について,発電電力量当たりの二酸化炭素排出量及び二酸化炭素総排出量を明らかにすること等,②施設の供用
に伴う二酸化炭素総排出量が増加しないよう,事業計画の決定に当たり最良の発電技術を導入するとともに,総排出量に対する削減方策を売電先の対策を含めて定量的に明らかにし,方法書以降に記載すること等を含む本件配慮書についての環境の保全の見地からの意見を述べた(甲A21)。

(ウ)

経済産業大臣は,平成27年3月9日,神戸製鋼に対し,環境影響評価法3条の6に基づき,本件配慮書について環境の保全の見地からの意見を述べた。この意見は,温室効果ガスに関して,東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議取りまとめ(平成25年4月25日経済産業省・環境省。以下局長級会議取りまとめという。)を踏まえ,本件事業が国の二酸化炭素排出削減の目標・計画との整合性が確保された
ものと整理するために一定の取組を講ずることを求めることなどを内容とするものであった。(甲A19)

(ア)

方法書の手続
神戸製鋼は,本件事業に関する方法書(以下本件方法書という。)を作成し,平成27年6月30日,これを経済産業大臣に届け出た(甲
A5,25,乙16,31)。
(イ)

神戸製鋼は,平成27年8月31日,経済産業大臣に対し,本件方法書についての意見(環境の保全の見地からの意見)の概要を届け出た。この意見の中には,①PM2.5についても評価項目とし,その排出量や削減対策について検討されるべきである,②本件発電所の二酸化炭素
排出量は最新の液化天然ガス(以下LNGという。)火力発電所の約2倍に及び,膨大な二酸化炭素による影響への配慮が全く見られないことは問題である,仮に石炭を燃料として選択するのであれば,最新型のLNG火力発電と比較し,超過する分の排出削減を具体的にどのように実現させるのかについても検討する必要がある旨のものなどがあった。
(乙17)
(ウ)

兵庫県知事は,平成27年11月24日,経済産業大臣に対し,a温室効果ガスについて,本件事業による二酸化炭素総排出量の削減対策が十分に説明されているとはいい難く,また,兵庫県では本件事業と同規
模の石炭火力発電所が複数計画されており,これらによる二酸化炭素総排出量の増加が国の目標達成に支障を及ぼす懸念がある,
このことから,発電施設の導入時点において採用可能な最も高効率で二酸化炭素排出量の少ない発電技術を導入するとともに,二酸化炭素総排出量の増加に見合う削減方策を行い,施設の稼働に伴う二酸化炭素総排出量を増加させないことなどについて検討するとともに,その内容を準備書に記載すること等,
bPM2.
5について,
原因物質の排出抑制に努めるとともに,

予測手法等に関する最新の知見を継続的に収集するなどの実態把握に努め,可能な範囲で調査,予測及び評価を行うこと等を含む本件方法書についての環境の保全の見地からの意見を述べた(甲A11,弁論の全趣旨)。
(エ)

経済産業大臣は,電気事業法46条の8第1項に基づき,本件方法書を審査し,
①温室効果ガスに関する前記(ウ)aの意見については,同項の
規定による勧告事項である環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法に該当しない,②PM2.5に関する同bの意見については,PM2.5の環境基準に係る中央環境審議会の答申において,

微小粒子状物質による大気汚染の状況を的確に把握するため監視測定体制の整備を促進するとともに,微小粒子状物質が様々な成分で構成されていることを踏まえ,体系的に成分分析を行う必要がある。

などの環境基準の設定に伴う課題が示されており,発電所の環境影響評価におけるPM2.5の取扱いについては今後検討を要すると考えられるなどと判断して,同項の規定に基づく勧告をする必要がないと認め,平成27年
12月4日,
神戸製鋼に対し,同条2項に基づき,その旨を通知した(乙
18,19)。

(ア)
準備書の手続等
神戸製鋼は,本件事業に関する環境影響評価を実施した上,本件事業に関する準備書(以下本件準備書という。)を作成し,平成29年7月10日,これを経済産業大臣に届け出た(甲A6,乙20,32)。(イ)
神戸製鋼は,平成29年9月15日,経済産業大臣に対し,本件準備書についての意見(環境の保全の見地からの意見)の概要を届け出た。この意見の中には,
①パリ協定が発効し世界が脱石炭に向かっている中,莫大な二酸化炭素を排出する石炭火力発電所計画は認められない,石炭火力発電は最新型でもLNG火力発電の2倍の二酸化炭素を排出する,
②PM2.
5の環境影響評価をすべきである旨のものなどがあった。
(乙
21,22)
(ウ)

兵庫県知事は,平成30年3月16日,経済産業大臣に対し,a温室効果ガス等について,発電施設の導入時点において採用可能な最も高効率で二酸化炭素排出量の少ない発電施設を導入し,適切な維持管理を図
ることにより,二酸化炭素排出量を抑制すること,また,二酸化炭素総排出量の増加に見合う削減方策について,評価書に個別具体的,定量的に記載すること等,bPM2.5について,原因物質の排出抑制を行うとともに,削減対策等に関する最新の知見を収集し,必要に応じて更なる環境保全措置を検討すること等を含む本件準備書についての環境の保
全の見地からの意見を述べた
(以下
本件知事意見という。甲A13,
弁論の全趣旨)。
(エ)

環境大臣は,平成30年3月23日,経済産業大臣に対し,a総論として,①石炭火力発電をめぐる環境保全に係る国内外の状況を十分認識
し,本件事業を検討すること,②このような国内外の状況を踏まえた上でなお本件事業を実施する場合には,神戸製鋼に加え,共同実施を予定しているグループ会社等を含む事業者全体が所有及び計画している火力発電所の適切な運用等により,ベンチマーク指標の目標を確実に達成するとともに,2030年以降に向けて,更なる二酸化炭素排出削減を実
現する見通しをもって,計画的に実施すること等,b温室効果ガスについて,
①現状では,
エネルギーの使用の合理化等に関する法律(以下
省エネ法という。)に基づくベンチマーク指標の目標達成が見込まれる状況であるが,神戸製鋼がベンチマーク指標の目標を達成できないと判断した場合には,本件事業の見直しを検討すること,②パリ協定に基づき中長期的には世界全体でより一層の温室効果ガスの排出削減が求められる中で,商用化を前提に,2030年までに石炭火力発電に二酸化炭
素回収・貯留(工場や発電所等から発生する二酸化炭素を大気放散前に回収し,貯留に適した地層へ圧入し,長期的,安定的に貯留する技術。以下CCSという。)を導入することを検討することとしていることを踏まえ,本件事業を検討すること等,cPM2.5について,最新の知見を踏まえて,必要に応じて追加の環境保全措置を含めた適切な対
応を行うこと等を含む本件準備書についての環境の保全の見地からの意見を述べた(以下本件環境大臣意見という。甲A14の1・2,弁論の全趣旨)。
(オ)

経済産業大臣は,電気事業法46条の14第1項に基づき,本件準備書を審査し,本件事業につき,環境の保全についての適正な配慮がなさ
れることを確保するために必要があると認め,神戸製鋼に対し,本件環境大臣意見と同旨の措置を講じ,その旨を評価書に記載することを勧告した(以下本件勧告という。甲A15)。

コベルコパワーは,平成30年5月11日,会社の分割により,神戸製鋼から本件事業に関する権利義務を承継した(甲D2,3)。


コベルコパワーは,平成30年5月11日付けで,本件事業に関する評価書(以下本件評価書という。)を経済産業大臣に届け出た(甲A16,18,20,28,29,34(枝番を含む。),乙9,23,37)。本件評価書には,本件勧告を踏まえて,a温室効果ガス等について,①
超々臨界圧(USC)発電設備を導入すること,②省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標達成に向けて計画的に取り組み,2030年度に向けて確実に遵守するとともに,ベンチマーク指標の目標を達成できないと判断した場合には,本件事業の見直しを検討すること,③自主的枠組み参加事業者である関西電力に電力を全量供給すること,④毎年度二酸化炭素排出量を適切に把握すること,⑤将来の二酸化炭素回収・貯留(CCS)の導入に向けて,所要の検討を継続的に行うこと,⑥長期的な二酸化炭素排
出削減対策について,今後の国内外の動向を踏まえ,所要の検討を行い,適切な範囲で必要な措置を講ずること,bPM2.5について,最新の知見を踏まえて,必要に応じて追加の環境保全措置を含めた適切な対応を行うことなどが記載されている(甲A16,18)。
(4)

本件確定通知
経済産業大臣は,本件評価書には本件勧告の内容が反映されており,本件
事業につき,環境の保全についての適正な配慮がなされるものと判断し,平成30年5月22日付けで,コベルコパワーに対し,本件評価書について変更命令をする必要がない旨を通知した(本件確定通知。甲A1,17)。(5)

本件発電所の設置の工事計画の届出
コベルコパワーは,平成30年8月30日,経済産業大臣に対し,本件発
電所の設置について工事の計画の届出をした。
(6)

本件訴訟の提起
原告らは,
平成30年11月19日,本件訴訟を提起した。
(顕著な事実)

3
争点
(1)

本件取消しの訴えに関する争点

アイ
本件取消しの訴えの原告適格(争点2)


確定通知が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか(争点1)

本件確定通知の違法性(争点3)

(2)

本件確認の訴えに関する争点
本件確認の訴えの適法性(争点4)イ

経済産業大臣が,電気事業法39条1項に基づく主務省令において,火力発電所からの二酸化炭素の排出規制に係る,パリ協定に整合する規定を定めていないことの違法性(争点5)

4
争点に関する当事者の主張の要旨
(1)

争点1(確定通知が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか)

(原告らの主張の要旨)

火力発電所の設置の工事をしようとする者は,その工事の計画の届出をするに当たり,工事計画書に,確定通知に係る評価書に従っている環境の保全のための措置を記載しなければならないほか(電気事業法施行規則66条3項,別表第三)
,上記措置に関する説明書を工事計画(変更)届出書

に添付しなければならないものとされている(同規則66条1項2号,別表第三)

そして,主務大臣は,上記の届出のあった工事の計画が確定通知に係る評価書に従っているものでないと認めるときは,
その工事の計画を変更し,
又は廃止すべきことを命ずることができる
(電気事業法48条4項,
3項,

47条3項3号)

すなわち,火力発電所の設置の工事をしようとする者が工事の計画を届け出てその工事に着手するためには,確定通知を受けていることが不可欠の前提になっていることからすると,確定通知は,火力発電所の設置の工事をしようとする者に対し,電気事業法に基づき,工事の計画を届け出て
その工事に着手することができる地位を与えるものである。また,確定通知は,工事の計画,すなわち火力発電所の設置の工事をしようとする者が遵守すべき基準の内容を確定するものであるほか,当該火力発電所の運営上の環境配慮義務の内容を定める意味も有する。

電気事業法46条の16が,事業者は評価書を経済産業大臣に届け出なければならない旨を定め,同法46条の17が,経済産業大臣は,環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するため特に必要があり,かつ,適切であると認めるときは,事業者に対し,変更命令をすることができ(1項)
,変更命令をする必要がないと認めたときは,確定通知をしな
ければならない(2項)旨を定めていることからして,経済産業大臣は,評価書について,環境の保全についての適正な配慮がなされているかどう
かの認定判断をする権限があり,評価書の届出に対してその認定判断の結果を告知して応答すべき義務を負っているものというべきである。ウ
したがって,確定通知は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
(被告の主張の要旨)
確定通知は,評価書について変更命令を必要としない旨の経済産業大臣の
判断を通知するものにすぎず,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定するものではないから,
抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
なお,①確定通知が発せられた場合,事業者は,確定通知に係る評価書を公告するところ,
その公告を行うまでは,
対象事業の実施はできない。
また,
②火力発電所の設置の工事に当たっては,その届出が受理された日から30日を経過しなければ,工事を開始できないところ,上記届出をするに当たっては,工事計画書に,確定通知に係る評価書に従っている環境の保全のための措置を記載しなければならないほか,上記措置に関する説明書を工事計画(変更)届出書に添付しなければならないものとされているから,確定通知
がない場合,事実上,上記届出をすることができない。しかし,これらは確定通知に係る事実上の効果というべきであり,確定通知により直接権利義務が形成され又はその範囲が確定するものではないから,このことをもって,確定通知が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるというべきではない。(2)

争点2(本件取消しの訴えの原告適格)

(原告らの主張の要旨)

確定通知は電気事業法に基づいてされた処分であるところ,同法は,電気事業の適正化・合理化による電気の使用者の利益保護等だけでなく,電気工作物の工事,維持及び運用を規制することによって,公共の安全を確保し,及び環境の保全を図ることを目的としている(同法1条)
。そして,
事業用電気工作物を設置する者は,事業用電気工作物を主務省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならない(同法39条1項)とされ,火力発電所技術基準省令は,事業用電気工作物が人体に危害を及ぼさないようにするために
(同法39条2項1号)大気汚染防止法やダイオ

キシン類対策特別措置法の規制を遵守することを求めている(4条)この。
ことからすると,電気事業法の定める電気工作物の設置に係る規制は,周
辺住民等の生命,健康,生活環境利益等を個別的利益として保護することを目的とするものと解される。
また,環境影響評価法は,環境影響評価の結果をその事業に係る環境の保全のための措置その他のその事業の内容に関する決定に反映させるための措置をとること等により,その事業に係る環境の保全について適正な配
慮がなされることを確保し,もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的としている(1条)
。そして,同法に基づき
定められた主務省令である発電所アセス省令は,火力発電所の設置・稼働による環境影響を予測・評価すべき環境要素として,
大気質
(硫黄酸化物,
窒素酸化物,浮遊粒子状物質等)等,人の健康等に直接的に関係するもの
を定めるほか,計画段階配慮事項についての検討に当たって,関係地方公共団体からの聴取やその長の意見を求めるべきことなど,環境影響の最小化により住民の健康等への被害の防止を図る趣旨の規定を設けている。そのほか,電気事業法46条の20は,事業者は,環境影響評価法38条1項の規定により,環境の保全についての適正な配慮をして火力発電所
事業を実施するとともに,確定通知に係る評価書に記載されているところにより,環境の保全についての適正な配慮をして当該事業に係る事業用電気工作物を維持し,及び運用しなければならない旨定めている。そして,前記(1)(原告らの主張の要旨)アのとおり,電気事業法及び同法施行規則により,工事の計画の届出の際には,確定通知に係る評価書に従っている環境の保全のための措置の記載及びこの措置に関する説明書の添付が求められており,確定通知に係る評価書に従わない工事の計画についてはその変更の命令がされる(確定通知に係る評価書に記載された環境保全措置の内容は,設置される事業用電気工作物の内容等及びその維持・運用に当たっての環境保全措置の内容を画するものとなる。。

これらの電気事業法及び環境影響評価法の規定の趣旨・目的及び環境影
響評価その他の手続の内容等からすれば,電気事業法は,評価書の確定に至るまでの環境影響評価その他の手続を通じて,火力発電所事業に起因する環境影響(大気汚染)により健康・生活環境に係る被害を受けるおそれのある住民に対して,そのような被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むといえる。また,世界
的な二酸化炭素濃度の上昇とこれによる地球温暖化の進行,ひいては気候変動に起因する災害の多発等に伴い,人々の生命,身体,健康,生活及び財産に著しい被害が生ずること(地球温暖化による影響として,①気温上昇等,②降水量の変化,③洪水の発生,④台風の強大化,⑤海面上昇ないし高潮,⑥熱帯性感染症の増加,⑦熱中症の増加,⑧一次産業への影響が
あり,
世界全体,
日本全体,
神戸市ないし兵庫県,
原告らに被害が生ずる。,

上記各法は,事業の実施に伴う地球温暖化への影響についても環境影響評価その他の手続の対象としていることに鑑みて,上記各法は,火力発電所の稼働により排出される大量の二酸化炭素により,気候変動の進行を通じて生命等に被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護
すべきものとする趣旨を含むといえる。
したがって,当該事業による環境影響を受ける住民は,確定通知の取消訴訟について原告適格を有するものというべきである。イ
環境影響評価法15条にいう対象事業に係る環境影響を受ける範囲であると認められる地域(関係地域)に居住する者は,当該事業による環境
影響を受ける住民であるから,確定通知の取消訴訟について原告適格を有
するところ,火力発電所事業については,関係地域は,少なくとも火力発電所が設置される場所から周囲20㎞の範囲の地域を超える。なぜなら,発電所アセス省令16条は,火力発電所事業について,第一種事業より規模の小さい第二種事業に関し,①火力発電所が設置される場所の周囲20㎞に住宅地等がある場合で環境基準違反があるとき(12号,9号)や,
②上記の範囲内に二酸化硫黄,二酸化窒素又は浮遊粒子状物質の大気の汚染に係る環境基準が確保されていない大気の測定点が存在する場合であって,当該発電所の発電設備からばい煙が排出されることにより大気の汚染に係る環境基準が確保されていない二酸化硫黄,二酸化窒素又は浮遊粒子状物質のいずれかの量が現状よりも増加するとき(23号)等に環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあると認めるものとすると定めているからである。
また,火力発電所事業による環境影響は,大気汚染及び地球温暖化のいずれについても,
関係地域とは無関係に広い地域に及ぶものである。
特に,
地球温暖化については,発電所の近隣地域だけでなく全世界的な被害をも
たらすものであり,電気事業法及び環境影響評価法は,関係地域に居住していない原告らを含めて,新設発電所からの二酸化炭素の排出により生命・健康・生活環境に係る被害を受けないという利益を個別的に保護していると解すべきである。また,地球温暖化の影響として,局所的な豪雨や猛烈な台風が発生し,これにより被害が人命にまで及んでいるところ,この
ような災害による被害(個々人の生命,健康及び財産に対する被害)の内容及び性質並びに被害の態様及び程度からして,少なくとも,発電所が設置される場所から20㎞の範囲の地域に居住する者は,原告適格を有するものというべきである。

原告X11及び原告X12を除く原告らは,神戸製鋼及びコベルコパワーが本件の環境影響評価その他の手続において関係地域であるとした神戸市又は芦屋市に居住している。

原告X11は,本件発電所から20㎞の範囲にその一部が含まれる大阪市大正区に居住している。
原告X12は,本件発電所から20㎞圏内にかかる大阪府の北摂地域に含まれる大阪府吹田市に居住している。
したがって,原告らは原告適格を有するものというべきである。

(被告の主張の要旨)

環境法令は,良好な環境の保持という一般的公益としての環境の保全にとどまらず,人の健康等の個人的利益を保護するために必要がある場合には,環境基本法21条を受けた大気汚染防止法等の法令により規制措置を
講ずることが予定されている。これに対し,環境基本法20条を受けた環境影響評価法は,環境影響評価その他の手続を定めるものであり,事業者がその手続を履行することによって当該事業が環境に配慮されたものとなり,
その結果,
間接的に人の健康が保護されることも期待されるとはいえ,
更に進んで,人の健康等を個々人の個別的利益として保護することまでを
も目的とするものではない。
また,発電所アセス省令は,火力発電所に関する環境影響評価の項目の選定に当たって勘案すべき環境要素として,健康等の個人的利益とは直接に関連しない生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全や環境への負荷の量の程度の観点から評価等がされるべき環境要素を多く挙げ
るほか,大気環境や水環境等の個人的利益に関わり得る環境要素についても,
環境の自然的構成要素の良好な状態の保持を旨として,すなわち健康被害等を回避するための規制基準の水準を超える良好な状態を保持することを旨として評価等がされるべきものとしている(21条1項2号,別表第二)
。そして,環境影響評価法は,地域住民に環境の保全の見地からの意見を述べる機会を与えているものの,この意見は,都道府県知事等が意見を述べるなどするに当たって配意されるにとどまるし,同法は,計画段
階配慮事項についての検討に当たり,関係地方公共団体からの聴取やその長の意見を求める旨の規定等を設けているが,これらの規定の趣旨は,環境に関する有益な知見や資料を有する者から適切に情報を収集することを求めるところなどにあるのであって,同法は,地域住民の個別的な利益を確保するための制度を設けていない。そうすると,同法は,一般的公益と
しての環境の保全を目的とするものであると解される。
さらに,電気事業法39条1項の主務省令(火力発電所技術基準省令,電気設備技術基準省令)において健康等の個々人の個別的利益を保護するための技術基準が定められており,主務大臣は,届出に係る工事の計画がこれらの技術基準に適合しない場合には,その工事の計画を変更し,又は
廃止すべきことを命ずることができる。
そうすると,
評価書への適合性は,
一般的公益としての環境保全の観点から求められるものであって,個々人の個別的利益を保護しようとする趣旨のものではないというべきである。以上によれば,確定通知は,個々人の個別的利益をも保護すべきものとして位置付けられておらず,また,火力発電所の設置工事に関して生じ得
る健康被害等の支障については,技術基準適合性の確保が要求されることによって回避されるべきものであるから,原告らにおいて,確定通知(本件確定通知)により利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあるものではない。
したがって,原告らは原告適格を有しないものというべきである。

原告らの指摘(前記(原告らの主張の要旨)イ)に係る発電所アセス省令16条の規定は,飽くまで第二種事業について環境影響評価をするか否かを判定するための基準であり,事業による環境影響を受ける地域を特定し,環境影響を調査,予測及び評価する範囲等を画するものではないし,発電所の周囲20㎞の地域をすべからく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある地域であるとするものでもない。

したがって,本件発電所の周囲20㎞の範囲の地域(神戸市及び芦屋市を除く。
)に居住する者は原告適格を有しないものというべきである。

原告X11及び原告X12は,いずれも本件に係る関係地域にさえ居住していないから,原告適格を有しない。

(3)

争点3(本件確定通知の違法性)

(原告らの主張の要旨)

経済産業大臣は,事業者の届出に係る評価書を基に,①環境の保全についての適正な配慮がなされているかを検討,判断し,適正な配慮がなされていないと判断する場合においては,②変更命令をすることが適正な配慮
がなされることを確保するため特に必要があり,かつ,適切であるかを検討,判断し,③変更命令をするか否かを検討,判断するものである。上記①についていえば,事業者において,適切な構造等に関する複数案(対象事業による環境負荷の回避・低減を図るという観点からみて本質的な代替案)の検討がされ,また可能な限り環境負荷を低減し,最善の措置
を講ずることがされて初めて,電気事業法46条の17にいう適正な配慮がなされているということができる。そして,環境影響を十分に低減できない場合においては,事業の中止,立地地点の変更,規模の縮小等の変更を行うことが検討されなければならない。
したがって,事業者の届出に係る評価書において環境の保全について適
正な配慮がなされているとの経済産業大臣の判断について,その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考慮すべき事項を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合,又は環境影響評価その他の手続が適切に履行されていない場合においては,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となる。その際,経済産業大臣は,そ
の時点での最新の科学的知見,技術や国内外の対応状況等を踏まえて検討・判断をしなければならない。
また,電気事業法及び環境影響評価法は,事業者が,事業を進めようとするあまり,環境影響の調査・予測・評価の範囲や環境保全措置の検討内容を狭く限定したり,環境影響を過小に評価したりすることを防止し,可
能な限り環境負荷を低減し,最善の措置をとるというベスト追求型の環境影響評価がされることを担保するために,環境の保全の見地からの意見を有する者,都道府県知事等,環境大臣の意見提出手続を設けたものである。そうすると,環境影響評価その他の手続について瑕疵があると認められる場合には,評価書において環境の保全について適正な配慮がな
されているという判断に基づいてされた確定通知は違法というべきである。なお,上記②,③について,本件において問題となる環境影響は,大気汚染や地球温暖化といった,周辺地域等に居住する者の生命,身体及び健康に直接の影響を与える事項であるから,環境の保全についての適正な配慮がなされていない場合において,経済産業大臣に変更命令をしないとい
う裁量はないというべきである。

(ア)

大気汚染に係る検討の欠落等
PM2.5について
大気中のPM2.5は,呼吸器疾患,循環器疾患及び肺がんの発症の
原因となることから,これについて環境基準が設定されているところ,石炭火力発電所は,石炭の燃焼に伴い,PM2.5(一次生成粒子)を含んだばいじんを排出する。また,石炭火力発電所は,硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)を排出するところ,これらのガス状の大気汚染物質は,
大気中の光やオゾンと化学反応することにより粒子化し,
PM2.5(二次生成粒子)が生成され,これらが発電所周辺住民の生活領域に到達する。
世界における知見によれば,
PM2.
5については,
健康に対する悪影響をもたらすための最小濃度すなわち閾値はない,あるいは閾値があるとの証拠がないとされている。
米国では,PM2.5について二次生成も含めて規制対象とされており,環境影響評価が実施され,二次生成も含めた予測及び評価の手法が
存在している。また,英国でも,計画される石炭火力発電所からの予想される排出による大気質への影響の予測について,PM2.5の二次生成をも含めたモデルによるシミュレーションが要求されている。
そして,
我が国でも,PM2.5の環境基準が設定され,大規模排出源の新増設の際にPM2.
5に係る環境影響評価を行うことが強く求められている。

以上によれば,発電所アセス省令や経済産業大臣による方法書,準備書及び評価書の審査基準である環境影響評価方法書,環境影響評価準備書及び環境影響評価書の審査指針において,PM2.5を予測及び評価の対象項目とすべきであり,これがされていないこと自体が違法である。

また,①石炭火力発電所である本件発電所から大量のPM2.5が排出されることが当然に予想されること(エネルギー・クリーンエア研究センターの主席アナリスト作成の報告書によれば,本件発電所が稼働することにより,PM2.5へのばく露による死亡者数が更に52人増加するなどと推定されている。,②神戸市内におけるPM2.5の排出に)

ついては神戸製鋼及びコベルコパワーの寄与が極めて大きいこと,③本件発電所の稼働による影響が想定される近隣地域について,本件事業に係る配慮書の手続の時点では,相当数の一般局(一般環境大気測定局。地域内を代表する測定値が得られるように,特定の発生源の影響を直接受けない場所を選定して,大気環境の汚染状況を常時監視する測定局)及び年間有効測定日数未満の1局を除く全ての自排局(自動車排出ガス測定局。自動車走行による排出物質に起因する大気汚染の考えられる交
差点・道路・道路端付近の大気を対象にした汚染状況を常時監視する測定局)においてPM2.5の環境基準を充足していなかったこと,④兵庫県知事が,本件方法書に対する意見として,PM2.5に係る調査・予測・評価の実施を求めていたことに照らすと,神戸製鋼は,本件事業に係る環境影響評価において,PM2.5を予測及び評価の対象とすべ
きであったのに,これをしなかった。
しかるに,経済産業大臣は,判断の過程において考慮すべきPM2.5の影響を考慮せずに,本件確定通知をしたものであり,その内容は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くから,本件確定通知をした判断は,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法である。
(イ)

その他
a
環境影響評価制度の趣旨からすると,
現状の汚染に,新たな汚染源となる石炭火力発電所の影響がどの程度上乗せされるかを調査することが要請されるのであり,大気汚染に関する調査・予測・評価地点には,一般局のみならず,自排局も加えなければならない。

しかるに,本件準備書における大気汚染に関する調査・予測・評価地点は全て一般局であった。
したがって,本件評価書は,大気汚染物質による環境影響の評価の前提となる手法が誤っていたものである。
b
本件評価書は,大気汚染物質の濃度の年平均値及び日平均値の影響予測が本件発電所の立地地域の複雑な地形の影響を反映していないこと,日平均値等の予測が本件発電所の影響のみについてしかされていないことなどといった点で極めて不十分であり,その結果,周辺住民の健康に対する影響を著しく過小評価したものとなっている。

二酸化炭素の排出に関する環境影響評価の誤り及び環境の保全についての適正な配慮の欠如

(ア)

気候変動が人の生命,健康,生活基盤,経済活動基盤にもたらす影響は重大かつ深刻であり,かつ,今後,確実に増悪していく。さらに,突然に不可逆的変化をもたらす
ティッピング・ポイント
が迫っている。

(イ)
我が国は,平成28年,2050年までに温室効果ガス排出量の80%削減を目指し,2030年度に2013年度(平成25年度)比で温室効果ガス排出量を26%削減するという目標とそのための措置を地球温暖化対策計画として策定し,
パリ協定を批准した。
そうであるところ,
石炭火力発電は,高効率の発電設備であっても,LNG火力発電の2倍の二酸化炭素を排出することから,パリ協定の下では,石炭火力発電所
の新設を回避し,既設の石炭火力発電所も,少なくとも2030年までに段階的に廃止していく必要性が指摘されている(国連環境計画の2019年の排出ギャップレポートは,日本について,石炭火力発電の新設計画を中止し,既設石炭火力発電所を段階的に廃止することを求めている。。


また,我が国は,平成27年7月,上記の2030年度の削減目標の前提となる長期エネルギー需給見通しにおいて,同年度の電源構成において,石炭火力発電が26%程度を占めるものとしており,その場合,石炭火力発電の二酸化炭素排出量は約2.
2~2.
3億tとされていた。
しかるに,我が国の2016年度(平成28年度)の石炭火力発電の二
酸化炭素排出量は約2.8億tであり,その上に本件発電所等の石炭火力発電所が新設されれば,上記の削減目標は到底達成できない。したがって,石炭火力発電所を新設すること自体が,我が国の温室効果ガス排出削減の目標や計画と整合しない。
(ウ)

本件発電所からの二酸化炭素排出量は年間692万t,二酸化炭素排出原単位は0.
760㎏-CO2/kWhであるとされている。
これは,
日本のエネルギー起源二酸化炭素排出量11億1100万t(平成29
年)の0.62%,事業用発電からの二酸化炭素排出量4億5366万t(同年)の1.5%に相当する。
そうであるところ,本件評価書に記載された環境保全措置の内容は,二酸化炭素の排出削減に具体的に結び付くものではなく,実行可能な範囲で二酸化炭素の排出を削減するものとなっていない(本件発電所の発
電方式である超々臨界圧発電は,発電効率及び二酸化炭素排出原単位において,石炭ガス化複合発電に劣るのであり,石炭火力発電の中で最も効率的であるともいえない。。

(エ)

局長級会議取りまとめは,パリ協定が採択される以前に行政内部でまとめられたものであり,パリ協定の採択等によって2050年頃には二
酸化炭素の排出実質零の実現が求められることになったことを踏まえたものに改定されるべきものであり,国の目標と整合せず,火力発電所の環境影響評価の判断基準として合理性を欠いている。
(オ)

以上によれば,本件評価書において環境の保全について適正な配慮がなされているとの経済産業大臣の判断は,本件発電所からの二酸化炭素
の排出に関し,我が国の目標や計画との整合性に係る事実に対する評価を誤っており,実行可能な範囲で二酸化炭素の排出を削減するものとなっていないことについて,
考慮すべき事実を考慮していないものであり,
社会通念上著しく妥当性を欠くから,裁量権の範囲を逸脱するものとして違法である。


燃料種の検討の欠如(ア)

石炭火力発電所については,一般的に,温室効果ガス等を計画段階配慮事項にすべきである。それに加えて,本件発電所は,その規模と事業期間の長さからして,莫大な二酸化炭素を排出するものであること等に照らせば,本件事業については,温室効果ガス等を計画段階配慮事項にすべきであった(環境省から経済産業省に対して,温室効果ガス等を計
画段階配慮事項にすべき旨の指摘もされていた。。また,PM2.5が)
人体に重大な影響を与えることについては知見が確立していたところ,本件事業に係る配慮書の手続の時点において,一般局18局の中で環境基準の短期基準に適合していたのは1局のみであり,自排局14局全てで上記基準に適合していなかったものであるから,PM2.5を計画段
階配慮事項にすべきであった。
したがって,本件事業に係る配慮書の手続において,温室効果ガス等及びPM2.5を計画段階配慮事項にしなかったことは,違法である。(イ)
環境影響評価法及び同法に基づく環境大臣の告示である環境影響評価法の規定による主務大臣が定めるべき指針等に関する基本的事項平(
成24年環境省告示第63号。以下基本的事項告示という。
)によれ
ば,事業者は,配慮書の手続の段階において,原則として,当該事業の事業特性や地域特性等を踏まえて,事業の位置・規模又は建造物等の構造・配置に関する適切な複数案を検討しなければならない。ここにいう
適切な複数案としては,事業により重大な影響を受ける環境要素に着目し,事業による環境影響を回避・低減するという観点から,実質的意味のある複数案を検討することが要請されている。また,複数案の検討に当たっては,現実的であると認められる場合には,当該事業を実施しない案(いわゆるゼロ・オプション)を含めるよう努めることとされてい
る。
火力発電所事業により重大な影響を与える環境要素のうち,温室効果ガス等について,実質的意味のある複数案としては,まず,事業を実施しない案や,再生可能エネルギー発電事業を実施する案を検討すべきであった。百歩譲って,火力発電所事業の枠内で検討するとしても,LNG火力発電所における発電量当たりの二酸化炭素排出量は,石炭火力発電所の半分以下であることからすると,実質的意味のある複数案としては,燃料種に係る複数案(具体的には,石炭火力とLNG火力)を設定する以外に選択肢はない。これに対して,石炭火力の枠内で発電方式を比較したとしても,既設発電所の発電効率が41%弱であるのに対し,本件発電所の発電効率は43%にすぎないから,実質的意味のある複数
案とはならない。
また,火力発電所事業により重大な影響を与える環境要素のうち,大気環境について,本件事業に係る事業実施想定区域内においては,大気汚染物質の到達濃度の低減のみならず,その排出量の低減が強く求められていたところ,LNGを燃料とする場合には,ばいじん及び硫黄酸化
物は排出されず,窒素酸化物の最大排出濃度は石炭を燃料とする場合の4分の1になる。また,PM2.5の排出・生成量も,石炭を燃料とする場合とLNGを燃料とする場合とでは大きく異なる。そうすると,大気汚染物質の排出量及び濃度との関係でも,
実質的意味のある複数案は,
上記と同様の燃料種に係る複数案である。
これに対して,
煙突の高さは,

到達濃度に影響し得るものではあるが,排出量とは無関係である。以上によれば,本件事業について,実質的意味のある複数案は,燃料種に係る複数案(具体的には,石炭火力とLNG火力)以外に考えられない。
しかるに,神戸製鋼は,本件事業に係る配慮書の手続において,上記
の複数案を検討しなかったものであり,
これは違法である(以上につき甲
A37参照)。(ウ)

前記(ア),(イ)のとおり,本件事業に係る配慮書の手続には重大な違法があるから,本件事業に係る環境影響評価その他の手続には手続の重大な瑕疵があるものとして,本件確定通知は違法となる。
また,本件評価書には燃料種に係る複数案の検討結果が記載されていないことから,変更命令の要否の検討に際して経済産業大臣が考慮すべ
き事実(他の燃料種による場合に比べて石炭によることが著しく重大な環境影響を及ぼすこと)が適切に示されていない。そのため,本件確定通知をした経済産業大臣の判断は,重要な事実の基礎を欠き,判断の過程において考慮すべき事項を考慮しないことによりその内容が社会通念上著しく妥当性を欠くものであるから,裁量権の範囲を逸脱するものと
して違法である。

環境保全措置の履行可能性がないこと
確定通知を受けた事業者は,環境の保全についての適正な配慮をして事業を実施するとともに,確定通知に係る評価書に記載されているところにより,環境の保全についての適正な配慮をして当該事業に係る事業用電気
工作物を維持し,
及び運用しなければならない
(電気事業法46条の20)

しかるに,
本件発電所の諸元等から本件発電所の発電単価を推計すると,
関西電力が市場で電力を調達し得る単価よりも高くなるのであり,今後我が国においてカーボンプライシングが採用される可能性も考慮すると,本件事業は経済性,事業性を欠いている。

したがって,コベルコパワーが多額の費用や多大な労力を投じて環境保全措置を履行する可能性は極めて低い。
経済産業大臣は,本件事業が経済性,事業性を欠き,環境保全措置の履行可能性がないことを認識していたにもかかわらず,本件確定通知をしたものであり,裁量権の範囲を逸脱したものとして違法である。


環境影響評価その他の手続の瑕疵等(ア)

準備書への記載の欠落等
準備書に記載すべき事項が記載されないことなどにより,準備書の手続の段階において市民及び知事等に対して不適切かつ不十分な情報しか提供されなかった場合,環境保全の見地からの的確な意見が出されず,その結果として,
経済産業大臣からも適切な勧告がされないこととなり,

市民,知事及び環境大臣等の意見について配意・勘案していないことになるから,評価書の内容にも瑕疵があることとなる。
しかるに,本件準備書には,燃料種の比較検討の結果が記載されていないから,本件評価書の内容には瑕疵がある。
また,本件準備書には,本件事業による汚染物質の排出量の増減が記
載されていなかった上,市民は,神戸製鋼の説明によって,本件事業により環境負荷が低減すると意図的に誤信させられ,本件準備書に対して正当な評価を行うことができなかった。
さらに,本件準備書には,接地逆転層が形成された場合の二酸化硫黄及び二酸化窒素の測定濃度が記載されていなかった。

そのほか,二酸化窒素の環境基準は,1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.
06ppmまでのゾーン内又はそれ以下とされ,ゾーン内に
あっては,原則としてこのゾーン内において現状程度の水準を維持し,又はこれを大きく上回ることとならないよう努めるものとすると規定されている。しかるに,本件準備書には,本件発電所の予定地が,二酸化
窒素について1時間値の1日平均値が0.
04ppmから0.06ppmまで
のゾーン内であり,現状より汚染を悪化させてはならない地域であることが記載されていなかった。
(イ)
環境影響評価法18条所定の意見(以下市民意見という。,本件

知事意見,本件環境大臣意見及び本件勧告の不考慮
a
市民意見1199通の大部分が,大気汚染や水銀の排出による地域環境の悪化や大量の二酸化炭素の排出による温暖化への寄与を懸念し,石炭を燃料とする火力発電所の設置に反対の立場をとるものであったが,神戸製鋼及びコベルコパワーは,これらの意見に何ら配意せずに本件評価書を作成した。
b
本件知事意見は,①微小粒子状物質について,原因物質の排出抑制を行うとともに,削減対策等に関する最新の知見を収集し,必要に応じて更なる環境保全措置を検討することとしているが,神戸製鋼及びコベルコパワーは,これをしなかった。また,本件知事意見は,②二酸化炭素を多量に排出する施設の設置者として,発電施設の導入時点において採用可能な最も高効率で二酸化炭素排出量の少ない発電技術を導入するとともに,二酸化炭素総排出量を施設の供用によって増加させないこととしているが,
神戸製鋼及びコベルコパワーは,
本件評価書の作成に当たり,この点を勘案しなかった。
c
本件環境大臣意見は,2030年度及びそれ以降に向けた本事業に係るCO2排出削減の取組への対応の道筋が描けない場合には,事業実施を再検討することを含め,事業の実施についてあらゆる選択肢を勘案して検討することとしているが,経済産業大臣はこれを勘案しなかった。
d
本件勧告は,水銀の大気への排出について,必要に応じて追加の環境保全措置を含めた対応を求めているが,本件評価書においてその点について検討された形跡すらない。
本件勧告は,
微小粒子状物質について,原因物質の排出抑制を行うとともに,削減対策等に関する最新の知見を収集し,必要に応じて更なる環境保全措置を検討することとしているが,神戸製鋼及びコベ
ルコパワーは,これをしなかった。
本件勧告は,
2030年以降に向けて,更なる二酸化炭素排出削減を実現する見通しをもって,計画的に実施することとしているが,本件評価書においては,削減の具体的な見通しも削減策を計画的に実施することについても示されていない。
本件勧告は,
本事業は,人口密集地であり,かつ,既存の製鉄所及び発電所が存在する地域において,環境負荷を増大させる事業であること等から,関係する地方公共団体の意見を十分勘案するとともに,地域住民等の関係者の理解・納得が得られるよう,誠意を持って丁寧かつ十分な説明を行うことを求めているが,神戸製鋼及びコベルコパワーは,これを踏まえた対応をとらなかった。
(ウ)

環境大臣の意見の修正
次のとおり,環境省は,環境大臣が本件配慮書についての意見や本件準備書についての意見を述べるのに先立ち,経済産業省に意見書の案を送っており,同省の反対等を受けて,環境大臣の意見は大幅に後退したものとなった。これは,環境影響評価法及び電気事業法が環境大臣の意
見を求める趣旨を没却するものであって,本件事業に係る環境影響評価その他の手続は違法なものというべきである上,本件確定通知をした経済産業大臣の判断は,誤った内容の環境大臣の意見を考慮してされたものであるから,実体的にも違法である。
a
本件配慮書について
意見書の案においては,温室効果ガスについて,石炭による場合と
LNGによる場合との対比が明確に記載されるなどしていたが,経済産業省の強い反対により削除されるなどした。また,大気汚染物質について,PM2.5の予測・評価をすべきことが明記されるなどしていたが,経済産業省の強い反対により,予測も評価も求めないような内容に修正されるなどした。

b
本件準備書について意見書の案においては,温室効果ガスについて,事後調査等により毎年度二酸化炭素排出量を適切に把握するとともに,当該二酸化炭素排出量の増加分に見合う削減方策を関西電力において確実に実施しているか継続的に確認することを指摘されるなどしていたが,経済産業省の強い反発により,二酸化炭素排出量を毎年度適切に把握すること
の指摘に修正されるなどした。また,大気汚染物質について,
事業者は,当該地域の継続的な大気環境の改善に向け,所有する高炉を廃止することによる大気汚染物質の排出量の減少を本事業の実施による増加で反故にすることのないよう,本事業の見直しを含め最大限排出量を押さえる不断の姿勢と努力が必要である。と記載されるなどしてい
たが,経済産業省の強い反対により,事業の見直しという文言が削除され,
事業者は,(中略)当該地域の継続的な大気環境の改善に向け,所有する高炉の廃止により大気汚染物質の排出量が減少している中で,新たに大気汚染物質を排出することとなる本事業については,最大限,その排出量を抑える不断の姿勢と努力が必要である。と修正されるな
どした。

以上によれば,本件確定通知をした経済産業大臣の判断は,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法である。

(被告の主張の要旨)

(ア)

大気汚染について
発電所アセス省令は,PM2.5を環境影響評価の項目を選定するに当たっての参考項目としていない。この点について,環境影響評価の項目は,主務省令(本件においては発電所アセス省令)で定めるところによって選定するものであり
(環境影響評価法11条1項)
,この主務省令

は,
環境基本法14条各号に掲げる事項の確保を旨として,
既に得られている科学的知見に基づき主務大臣が環境大臣に協議して定めるもの,とされている(環境影響評価法11条4項)

そして,PM2.5については,平成21年9月9日に環境基本法16条1項の規定による環境基準が定められており,環境基準は,同法14条各号に掲げる事項の確保の指針となるものであるから,主務省令である発電所アセス省令において,PM2.5を環境影響評価の項目を選定するに当たっての参考項目とすることについて,検討を要するものといえる。
しかし,PM2.5については,現在においても,予測・調査手法が確立しておらず,
技術手法の開発を進めるべきとされる段階にあり,
既に得られている科学的知見に基づき上記の主務省令を定めるべき状況にない。すなわち,上記の主務省令で定めるべき環境影響評価の項目等を選定するための指針に関する基本的事項について,環境大臣がこれを定めて公表することとされており(環境影響評価法3条の8,13条),
環境影響評価法に基づく基本的事項等に関する技術検討委員会(平成3
0年に設置された際の名称は,環境影響評価法に基づく基本的事項に関する技術検討委員会。以下,名称のいかんにかかわらず技術検討委員会という。)が,この基本的事項の内容全般の点検を行い,その結果に
基づいてその改正が行われてきた。しかるに,PM2.5について,技術検討委員会は,平成24年及び平成30年の検討において,現状にお
いても調査は可能であるが,予測・評価は困難な面があり,環境影響評価に係る技術手法の開発を進めるべきであるとするにとどめ,環境影響評価の項目を選定するに当たっての参考項目とすべきであるとはしなかった。
したがって,発電所アセス省令等において,PM2.5が環境影響評
価の項目を選定するに当たっての参考項目とされていないことは,違法ではない。(イ)

電気事業法46条の8第1項が,経済産業大臣が,方法書について,環境影響評価の項目等について必要な勧告をすることができると定めていることに照らすと,どの環境要素を環境影響評価の項目とすべきものとして勧告を行うかについては経済産業大臣の裁量に委ねられてい
ることが明らかである。また,同法46条の17の文言に照らすと,評価書が環境の保全についての適正な配慮を欠くかどうかの判断や変更命令をするか確定通知をするかについての判断も,経済産業大臣の裁量に委ねられている。したがって,確定通知をした経済産業大臣の判断が違法と評価されるのは,その裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用した場
合に限られるというべきである。
そうであるところ,PM2.5については,前記(ア)のとおり平成21年9月9日に環境基準が定められたものであるが,その際,微小粒子状物質の大気中の挙動や大気中の光化学反応等による二次生成粒子の生成機構の解明等,化学的知見の集積を実施し,その上で,大気汚染の状況
を踏まえながら,より効果的な対策について検討する必要があるなどと指摘されていた。また,中央環境審議会が設置した微小粒子状物質等専門委員会がPM2.5の国内における当面の排出抑制策の在り方について平成27年3月に取りまとめた微小粒子状物質の国内における排出抑制策の在り方について(中間取りまとめ)においては,国内における
排出抑制対策の着実な推進が必要としつつも,その推進に当たっては,PM2.5の生成機構や発生源の寄与割合について科学的に解明すべき課題が残されていることが指摘されていた。さらに,前記(ア)のとおり,PM2.5について,技術検討委員会は,平成24年及び平成30年の検討において,現状においても調査は可能であるが,予測・評価は困難
な面があり,環境影響評価に係る技術手法の開発を進めるべきであるとするにとどめていた。以上によれば,本件方法書について,PM2.5を環境影響評価の項目とするには時期尚早である旨の判断の下,PM2.5を環境影響評価の項目とするよう勧告せず,本件準備書について,将来における知見の進展を踏まえ,必要に応じて追加の環境保全措置を講ずるなどの対応を求めるにとどめた経済産業大臣の判断について,裁量権の範囲の逸脱又は濫用はない。
そして,本件評価書は,経済産業大臣の上記勧告において求められた対応を行う旨をいうものである上,国内最高レベルのばい煙処理施設を導入する計画とし,PM2.5の原因物質の一部である硫黄酸化物,窒
素酸化物,ばいじんの濃度及び排出量を可能な限り低減するとしていたものであるから,
PM2.
5に関し,環境の保全についての適正な配慮」
がされていないなどというものではなく,確定通知をした経済産業大臣の判断について,裁量権の範囲の逸脱又は濫用はない。(ウ)a発電所アセス省令においては,調査,予測及び評価を行う地点として,自排局を選定すべきとは定められておらず,環境影響の予測及び評価のために適切かつ効果的な地点を調査地点とすることが求められる(23条1項2号,別表第七(いずれも令和2年経済産業省令第17号による改正前のもの。以下同じ。))。そして,発電所の稼働による大気汚染物質の環境影響の評価は,交差点や道路といった特定の地点ではなく,発電所周辺の一定の地域につき,発電所の稼働によって,住宅地等の一般的な生活環境にどのような影響が及ぶかを評価するものであるから,調査,予測及び評価を行う地点としては,一定地域における大気汚染状況の継続的把握,発生源からの排出による汚染への寄与等を監視することを目的として設置される一般局を選定するのが適切である。これに対して,自排局を評価地点とした場合には,自排局における自動車の排気ガスによる大気汚染物質の状況が自動車の交通量等の要素により変動し,発電所の稼働後における大気質への影響評価を行うに当たっても,自動車の交通量等による影響を受けることから,発電所の稼働による純粋な影響を的確に把握することが困難になるため適切ではない。b神戸製鋼及びコベルコパワーは,大気汚染物質の濃度について,電力中央研究所が開発した合理的な方法により地形の影響を予測した。また,環境影響評価法,電気事業法,基本的事項告示及び発電所アセス省令によれば,環境影響評価における「予測は,飽くまで対象事業自体の実施が環境に及ぼす影響を明らかにすることであって,それ以外の事業活動等によりもたらされる地域の環境の状態は,対象事業
自体の実施が環境に及ぼす影響を明らかにするに当たって勘案すべきものにとどまる。そして,神戸製鋼及びコベルコパワーは,本件事業の実施が環境に及ぼす影響を明らかにするに当たって,既設設備の運転による影響を含んだ値として硫黄酸化物等のバックグラウンド濃度を設定しており,本件事業以外の事業活動等によりもたらされる地域
の環境の状態を適切に勘案したものである。

(ア)

二酸化炭素の排出について
前記ア(イ)のとおり,評価書が環境の保全についての適正な配慮を欠くかどうかの判断や変更命令をするか確定通知をするかについての判断は,経済産業大臣の裁量に委ねられており,確定通知をした経済産業
大臣の判断が違法と評価されるのは,その裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用した場合に限られるというべきである。そして,具体的には,①経済産業大臣の判断に用いた基準が不合理であるか,②その基準に適合するとした経済産業大臣の判断に看過し難い過誤や欠落がある場合に,裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるものといえる。

(イ)

本件確定通知は,経済産業大臣が,局長級会議取りまとめの基準に基づいてしたものであるところ,局長級会議取りまとめは,事業者に利用可能な最良の技術
(BestAvailableTechnology。BAT
以下
という。

の採用を求めるものであり,このことによって,事業者は,火力発電所の設置に当たり,実行可能な範囲において,発電効率を高めるなどして二酸化炭素の排出を低減し得る技術を導入することになり,環境への負
荷の低減につながることになる。
また,
政府は,
温室効果ガスを削減し,
環境負荷を低減すべく設定された中期目標(我が国がパリ協定締約に先立って日本の約束草案で示した目標)を達成し得るものとして地球温暖化対策計画を策定しているところ,局長級会議取りまとめは,事業者の事業計画が同計画と整合するよう,
電力業界の自主的枠組みへの取組や,

省エネ法が求める発電効率やベンチマーク指標の達成等を求めることによって,中期目標の実現可能性を高めることにつながる。
したがって,局長級会議取りまとめの基準は,火力発電所に係る環境影響評価において,二酸化炭素について環境の保全についての適正な配慮がされているか否かを判断するための基準として,合理的なもの
である。
(ウ)

本件評価書に記載された環境保全措置は,次のとおり,局長級会議取りまとめに適合するものである。


発電方式として,局長級会議取りまとめが採用を求めるBATの参考表に記載された高効率の発電方式であるUSC(超々臨界圧発電設
備)を採用する。



自主的枠組み参加事業者である関西電力に電力を全量供給する。


省エネ法のベンチマーク指標の目標達成に向けた取組を行う。

毎年度二酸化炭素排出量を適切に把握する。



将来のCCSの導入に向けて,所要の検討を継続的に行う。



長期的な二酸化炭素排出削減対策について,今後の国内外の動向を踏まえ,所要の検討を行い,適切な範囲で必要な措置を講ずる。(エ)

以上によれば,
本件評価書について,
環境の保全についての適正な配慮がなされており,変更命令の必要がないとした経済産業大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用はない。


燃料種の選択について

(ア)

発電所アセス省令5条1項によれば,
当該一般的な事業の内容によって行われる特定対象事業に伴う当該環境要因について当該別表においてその影響を受けるおそれがあるとされる環境要素に係る項目発電所(
アセス省令21条参照)
であっても,
配慮書事業特性及び配慮書地域特性に関する情報を踏まえ
た結果,
重大な影響を受けるおそれがある環境要素
に当たらなければ,
これを計画段階配慮事項にする必要はない。
そして,神戸製鋼は,エネルギー効率がより良い超々臨界圧(USC)発電設備を導入することにより温室効果ガスが低減されることから,温室効果ガス等を計画段階配慮事項にしなかったものであるから,このような選定に不合理な点はない。

(イ)

発電所アセス省令3条1項が構造等に関する複数案として検討を求める項目は発電設備等の構造若しくは配置であり,
燃料種について
複数案を検討すべきものとはされていない。したがって,燃料種をLNGとする案を検討していないことをもって,同項に違反するものではなく,
環境の保全についての適正な配慮がされていないともいえない。


環境保全措置の履行可能性について
石炭火力発電所について,一般に経済性,事業性を欠くものと解することが困難であることは,営利企業であるコベルコパワーが本件事業を実施しようとしていることのみからも明らかである。しかも,本件準備書の段
階まで事業主体であった神戸製鋼は,資本金2500億円超の我が国有数の大手製鋼メーカーであり,合計250社を超える子会社及び関連会社を有するグループ企業であることに鑑みると,環境保全措置の履行可能性がないといえないことは容易にうかがわれる。

(ア)
環境影響評価その他の手続の瑕疵等について
準備書の記載等について
前記ウのとおり,燃料種について複数案を示すことは求められていないから,燃料種を石炭ではなくLNGとする案を示し,その場合についての調査,予測及び評価を行うことも求められておらず,その結果を準備書に記載する必要はない。
発電所アセス省令23条1項2号,別表第七は,大気環境に係る環境
影響の調査及び予測の手法として,二酸化硫黄等の濃度の状況に着目するものとし,発電所から排出される二酸化硫黄等の総排出量を把握する手法によるものとはしていない。これは,発電所等から排出される大気汚染物質が環境や人体に与える影響を評価するに当たっては,排出量の多寡ではなく,実際に人が呼吸する地上の地点の大気における大気
汚染物質の濃度が,発電所の稼働によってどのように変化するかという観点から評価することが必要かつ適切であるためである。そして,本件準備書には,二酸化硫黄等の濃度に着目して行った調査,予測及び評価の結果が適切に記載されている。なお,神戸製鋼が環境保全対策の概要として周辺環境への影響を現状より低減します等の説明を行っ
てきたのは,平成29年10月31日をもって,既設製鉄所における上工程設備(高炉から連続鋳造,一部の分塊圧延設備)を廃止し,加古川製鉄所への集約を完了すること,本件発電所に国内最高レベルの排煙処理施設を導入するとともに,既設発電所においても排出濃度を低減することにより,本件発電所の稼働後においても,設備仕様値や運用上の最
大値を基に算定する神戸製鉄所全体(既設製鉄所,既設発電所及び本件発電所)のばい煙の時間当たり排出量が現状よりも減少することから,現状よりも周辺環境への影響が低減されることが見込まれていたためである。したがって,神戸製鋼の説明に何ら誤りや矛盾はなく,市民が意図的に誤信させられた事実はない。
本件準備書には,接地逆転層が形成された場合の二酸化硫黄及び二酸化炭素についての予測及び評価の結果が記載されている。逆転層形成時
の測定濃度等については,準備書への記載が求められるものではない。本件準備書には,二酸化窒素に係る調査及び予測の結果と環境基準との間の整合性が適切に記載されている。環境影響評価において調査及び予測の結果との整合性を検討することが求められる環境基準とは,飽くまで1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内又はそれ以下であることである。(イ)

市民意見,本件知事意見,本件環境大臣意見及び本件勧告についてa環境の保全の見地からの意見
(環境影響評価法18条1項)を提
出する手続は,有益な環境情報を収集する目的で設けられたものであり,事業に対する単なる反対あるいは賛成をいう意見は配意すべき対
象とならない。また,
配意
(同項)とは,様々な立場からの多様な
方向性を持った幅広い国民一般の意見について,
これに意を配りつつ,
その中から有用な環境情報を事業計画に反映させていくものであって,事業者が一般の意見を事業計画に反映させなければ配意をしてい
ないことになるものではない。

神戸製鋼及びコベルコパワーは,本来は配意の対象とはならな
い意見を含めた一般の意見について,有用な環境情報があれば,これを事業計画に反映すべく検討し,その検討の結果を本件評価書において事業者の見解として示しており,一般の意見に配意している。
b
神戸製鋼及びコベルコパワーは,本件知事意見を検討した上,前記(原告らの主張の要旨)カ(イ)b①の意見(PM2.5)について,本計画においては,施設の稼働に伴う排ガスについては,国内最高レベルのばい煙処理施設を導入する計画とし,微小粒子状物質(PM2.5)の原因物質の一部である硫黄酸化物,窒素酸化物,ばいじんの濃度及び排出量を可能な限り低減します。また,PM2.5の環境影響及び対策に関する今後の動向を踏まえて,必要に応じて追加の環境保全措置を検討する等,適切に対応してまいります。との見解を示し,実際に,排煙脱硫装置,排煙脱硝装置及び集じん装置を採用して排ガス中の硫黄酸化物等の濃度及び排出量を低減する環境保全措置を講ずるものとしているほか,PM2.5については,最新の知見を踏まえて,必要に応じて追加の環境保全措置を含めた適切な対応を行うもの
とし,現在及び将来の事業計画への反映を検討することにより,本件知事意見を勘案している。
また,
神戸製鋼及びコベルコパワーは,(原告らの主張の要旨)
前記
カ(イ)b②の意見(二酸化炭素)について,超々臨界圧(USC)発電設備を採用して発電効率を高めることなどにより二酸化炭素排出量を
抑制するほか,神戸製鋼の鉄鋼事業の集約・効率化等により二酸化炭素排出量を削減することや,送電先である関西電力において高コストの既設発電所の稼働の抑制が想定されることで,総体として,二酸化炭素総排出量を現状より低減することを計画し,本件知事意見を勘案している。

c
本件環境大臣意見のうち前記
(原告らの主張の要旨)カ(イ)cの部分
は,将来的に,中長期的には世界全体でより一層の温室効果ガスの排出削減が求められる状況の下で,地球温暖化対策が不十分な石炭火力発電は是認できなくなるおそれもあることなどから,二酸化炭素排出
削減の取組への対応の道筋が描けないのであれば,事業実施の再検討を含め,あらゆる選択肢を勘案して検討することが重要となることを述べたものであって,本件評価書の作成に当たっての事業の再検討を求めたものではない。
d
本件勧告のうち前記(原告らの主張の要旨)カ(イ)dの部分は,いずれも,本件発電所の供用開始後の将来において,その時点の状況に応じて必要とされる環境保全措置を講ずることや,将来に向けた二酸化
炭素排出削減の計画的実施,地域住民等の理解を得るための説明等の継続的実施を求めたものであって,神戸製鋼及びコベルコパワーに対し,本件評価書の作成に当たり,これらの勧告に対応した具体的な措置等を検討し,記載することを求めたものではない。
(ウ)

環境大臣の意見の修正について
経済産業大臣が配慮書や準備書の手続の段階において勘案又は聴取しなければならない環境大臣の意見とは,環境大臣の意見として経済産業大臣に対して正式に発出されたものを意味することは明らかであり,その意思形成過程にすぎない環境省の内部手続(事務担当者の各決裁過程等)の段階における担当者の見解等が意見とされることはあり得ない。
そうであるところ,原告らが指摘する意見書の案は,飽くまで,意見書の成案を得る前の環境大臣の意見の案にすぎないから,この段階における担当者の見解の内容を勘案等することは,環境影響評価その他の手続の制度上予定されていないし許容されるものともいえない。
したがって,
成案を得る前の環境大臣の意見の案の段階において,経済産業省の担当
者との間で事務レベルの意見交換が行われ,同省からの意見等があったことをもって本件事業に係る環境影響評価その他の手続が違法なものとなる旨の原告らの主張は理由がない。
(4)
争点4(本件確認の訴えの適法性)

(原告らの主張の要旨)

原告らは,電気事業法39条1項に基づく主務省令に二酸化炭素の排出規制が定められていないことにより,同規制がされないまま新設発電所が設置,運営され,新設発電所からの二酸化炭素の大量排出を通じて異常気象や災害の発生により生命,身体,健康及び財産を侵害されることを主張しており,具体的な権利侵害行為から具体的な権利利益を保護するために本件確認の訴えを提起している。

したがって,本件確認の訴えは,法律上の争訟に当たる。

電気事業法39条1項に基づく主務省令において,火力発電所からの二酸化炭素の排出規制に係る,パリ協定に整合する規定が定められた場合,コベルコパワーは本件発電所を上記規定に適合するように改造等しなければならなくなり,本件発電所からの二酸化炭素排出量は大幅に減少し,又
は零になる。そうすると,原告らが本件発電所からの二酸化炭素排出に伴う気候変動によって受ける被害の程度が減少し,原告らの生命・身体等に対する被害が軽減される。
パリ協定に基づく日本国政府の温室効果ガス削減目標及び我が国の電力分野における取組状況の遅れに鑑みると,二酸化炭素の排出規制をしない
という裁量はないというべきである。本件確認の訴えは,経済産業大臣の行政立法裁量を前提としつつ,上記規制をしないことは違法であるとの確認を求めるものであり,請求の特定を欠くものであるとはいえない(上記規制の内容については,例えば,新設石炭火力発電所の二酸化炭素排出原単位規制が,英国では0.45㎏-CO2/kWh,カナダでは0.42
㎏-CO2/kWhかつCCS付帯とされていることが参考になる。。)
したがって,原告らには,本件確認の訴えについて確認の利益がある。(被告の主張の要旨)

本件確認の訴えは,公法上の法律関係の確認を求めるものではなく,省令制定の不作為そのものの違法確認を求める訴えであり,このような訴えは,権利義務や法律関係に係る具体的紛争を離れて,行政行為(不作為)の違法の確認を求めるものであるから,法律上の争訟に当たらない。イ
パリ協定は,締約国に温室効果ガスの削減やそのための国内措置の遂行を求めているものの,そのための個別的措置については,締約国にこれを委ねている。また,我が国は,パリ協定に対応した中長期目標を定めているが,これを達成するためには,電力分野等の特定の産業部門における排
出削減の取組のみならず,温室効果ガスの排出削減対策及び吸収源対策として,多面的かつ総合的な施策を動員しなければならない。そのため,どのような経済産業省令であればパリ協定に整合する規定であるかを特定することはできず,仮に,パリ協定に整合する規定がないことが違法であるとしても,経済産業大臣に経済産業省令を定めるべき具体的な行為規範が
与えられることはない。
そうすると,仮に本件確認の訴えに係る請求が認容されたとしても,これにより経済産業大臣に省令を定めるべき具体的な行為規範が与えられることはなく,
経済産業大臣において省令を定めるべきことにならないから,
本件確認の訴えは,紛争の解決に何ら資するものでなく,確認の利益を欠
き,不適法である。
(5)

争点5
(経済産業大臣が,電気事業法39条1項に基づく主務省令におい
て,火力発電所からの二酸化炭素の排出規制に係る,パリ協定に整合する規定を定めていないことの違法性)
(原告らの主張の要旨)
電気事業法は公共の安全を確保することのみでなく環境の保全を
も旨としている。また,同法39条2項1号は,同条1項に基づく主務省令で定める技術基準が事業用電気工作物は,人体に危害を及ぼし,又は物件に損傷を与えないようにするものでなければならない旨を定めている。地
球温暖化をめぐる現在の地球環境の状況と,エネルギー政策基本法及びパリ協定の下では,ここにいう人体に危害には温暖化による健康被害も含めて解釈しなければならないから,上記技術基準は二酸化炭素の排出を規制する内容でなければならない。しかるに,上記技術基準に当たる火力発電所技術基準省令には,そのような内容の規定がない。
経済産業大臣は,パリ協定の下,電気事業法39条1項に基づく主務省令において,火力発電所の技術基準として,一定の二酸化炭素排出原単位を達
成することなど,二酸化炭素の排出規制に係るパリ協定に整合する規定を定めるべき義務を負っており,これを怠る不作為は違法となるというべきである。
(被告の主張の要旨)
争う。

第3
1
当裁判所の判断
認定事実
前記前提事実に掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。

(1)

微小粒子状物質(PM2.5)に関する知見等
環境大気中に存在する粒子状物質のうち,その粒径が2.5μm以下のものを微小粒子状物質(PM2.5)という。
PM2.5の化学組成は,無機成分(硫酸塩,硝酸塩及び塩化物等),炭素成分(元素状炭素等)及び金属成分等に分類される。発生源は,人為
起源と自然起源に大別され,人為起源には,固定発生源(ボイラー,焼却炉等のばい煙を発生する施設等)及び移動発生源(自動車,船舶及び航空機等)がある。
粒子状物質は,
呼吸器系を通じて体内に吸入され,
呼吸器部位に沈着
(気
道粘膜又は肺胞に接着し,再び気流に戻ることがない状態)する。微小粒
子(PM2.5)は,粗大粒子と比較して,大気中に長期間滞留し,屋内にも侵入しやすく,生体内に吸入された粒子は肺胞領域にまで侵入しやすいなどの特徴を有する。PM2.5を含む粒子状物質は,呼吸器に沈着し,気道や肺に炎症反応を誘導し,より高濃度なばく露の場合,肺障害を発現させ,気道の抗原反応性を増強し,
ぜんそくやアレルギー性鼻炎を悪化させ得るとされている。
また,PM2.5のばく露によって徐脈等心機能に明瞭な変化を示す根拠が多く存在するとされるほか,動物実験の結果から,血液成分に影響が発現するとする報告が多い。このような血液性状の変化は,冠動脈閉塞や肺塞栓症を起こしやすくし,末梢血管抵抗を増大することで心臓への圧負荷を高める可能性があるとされる。

PM2.5による健康影響についての疫学調査として,①平成27年国勢調査で人口20万以上だった110都市のうち100都市を対象に調査を行った結果,PM2.5濃度が10μg/㎥上昇するごとに外因性を除く総死亡が1.3%(95%信頼区間0.9~1.6%)増加するというもの(甲B2,20の2),②平成14年から平成25年の間に東京都2
3区で死亡した65歳以上の高齢者約66万人を対象に調査を行った結果,PM2.5濃度が10μg/㎥上昇することにより当日の全死因死亡,心血管系死亡,呼吸器系死亡の死亡率がそれぞれ0.6%,0.8%,1%増加することが観察され,このような健康影響は,我が国の環境基準値以下の濃度でも観察されたというもの(甲B3),③宮城県,愛知県及び大
阪府において,それぞれ都市地区と対照地区を選定して,40歳以上の男女計約10万人を対象とした10年間,15年間の追跡調査の結果,肺がんについて,PM2.5濃度との間に有意な正の関連がみられたというもの(甲B1)等がある。
(甲B1から4まで,5の2,甲B20の2)

イ(ア)

環境大臣の平成20年12月9日付けの諮問により,中央環境審議
会の大気環境部会に微小粒子状物質環境基準専門委員会及び微小粒子状物質測定法専門委員会が設置され,両委員会で検討が行われた。
その
結果を踏まえた中央環境審議会の答申を受けて,平成21年9月9日,PM2.
5についての環境基本法16条1項の規定による環境基準とし
て,
微小粒子状物質による大気の汚染に係る環境基準について
(平
成21年環境省告示第33号)が定められた。その内容は,次のとおり
である。(甲B1,6,乙24)
a
環境基準


PM2.5に係る環境基準は,1年平均値が15μg/㎥以下で
あり,かつ,1日平均値が35μg/㎥以下であることとする。



①の環境基準は,PM2.5による大気の汚染の状況を的確に把握することができると認められる場所において,ろ過捕集による質量濃度測定方法又はこの方法により測定した場合における測定値
によるものとする。



①の環境基準は,工業専用地域,車道その他一般公衆が通常生活していない地域又は場所については,適用しない。



PM2.5とは,大気中に浮遊する粒子状物質であって,粒径が
2.5μmの粒子を50%の割合で分離できる分粒装置を用いて,より粒径の大きい粒子を除去した後に採取される粒子をいう。

b
達成期間
PM2.5による大気の汚染に係る環境基準は,維持され又は早期
達成に努めるものとする。
(イ)

中央環境審議会の前記(ア)の答申においては,環境基準の設定に伴う課題は次のとおりであるとされた(乙24)。


PM2.
5による大気汚染の状況を的確に把握するため監視測定体
制の整備を促進するとともに,PM2.
5が様々な成分で構成されて
いることを踏まえ,体系的に成分分析を行う必要がある。②
PM2.
5の削減対策については,固定発生源や移動発生源に対し
てこれまで実施してきた粒子状物質全体の削減対策を着実に進めることがまず重要である。



PM2.
5は,
発生源から直接排出される一次生成粒子のみならず,
大気中の光化学反応,
中和反応等によって生ずる二次生成粒子で構成

される。また,我が国では,都市地域のみならず人為発生源由来粒子の影響が少ないと考えられる地域においても硫酸塩や土壌粒子等の粒子が相当程度含まれており,
海外からの移流分も影響していると推
察されるなど,PM2.5の発生源は多岐にわたり,大気中の挙動も複雑である。

このため,
PM2.
5やその原因物質の排出状況の把握及び排出イ
ンベントリ
(各発生源から排出される物質の排出量を物質別に産業別
・燃料別等,各発生源の種類ごとに整理したデータであり,どこからどれだけPM2.
5やその原因物質が排出されているか
(発生源情報)
を把握することができるもの)の作成,
大気中の挙動や二次生成機構

の解明等,科学的知見の集積について,地方公共団体,研究機関と連携を取りながら,関係事業者の協力を得つつ,実施する必要がある。その上で,
大気汚染の状況を踏まえながら,
より効果的な対策につい
て検討する必要がある。


国内の施策に加えて,
近隣諸国等との間で,大気汚染メカニズム等
に係る共通理解の形成を進めつつ,
汚染物質削減に係る技術協力を推
進する必要がある。


環境影響評価法13条の規定に基づく環境庁告示(環境影響評価法第四条第九項の規定により主務大臣及び国土交通大臣が定めるべき基準並びに同法第十一条第三項及び第十二条第二項の規定により主務大臣が定めるべき指針に関する基本的事項(平成9年環境庁告示第87号))については,その内容全般について,5年程度ごとを目途に点検し,その結果を公表することとされていた。そこで,環境省総合環境政策局長の委嘱により,平成23年6月,技術検討委員会が発足し,上記告示の改正等に必要となる具体的な検討を行い,平成24年3月に報告書を取りまとめた(この報告書を基に,基本的事項告示が定められ,これにより上記環境庁告示
が全部改正された。)。
上記報告書においては,個別の環境要素・環境影響評価技術要素に関する課題として,PM2.5について,次のような指摘がされたが,参考項目にPM2.5を加えるなどの提案はされなかった。
PM2.5については,我が国においても平成21年9月に大気環境基
準が設定され,
大気環境中濃度の測定法が公的に定められたことなどから,
現状においても調査は可能。しかし,シミュレーション方法が開発途上であるなど技術的な制約から,予測・評価は困難な面もある。固定発生源からの排ガス中の測定方法のISO化・JIS化等,関係する技術動向を見極めつつ,引き続き調査・予測・評価の技術の開発を進め,対応
を検討する必要がある。その際,PM2.5の排出源側での測定法は一次粒子のみを対象としており二次粒子は捕捉できないことや,二次粒子については大気中での挙動が複雑であり,シミュレーションでも十分な予測精度が確保されていないことに留意すべき。なお,米国においても,環境影響評価制度の中で二次粒子は取り扱われていない。

(乙26)

環境省は,平成24年3月,PM2.5に関する先行的な環境アセスメントのための手法と課題(以下PM2.5に関する手法と課題という。)を取りまとめた。PM2.5に関する手法と課題は,我が国にお
いては平成21年9月にPM2.5の大気環境基準が設定され,その環境基準は維持され又は早期達成に努めるものとするとされていること,欧米においてPM2.5の環境影響評価の実施事例が報告されること等を踏まえると,現状で実施可能な環境影響評価技術を用いてPM2.5の環境影響評価を行うことが,大気環境の保全上極めて重要であるとの認識の下,現状において実施可能なPM2.5の環境影響評価技術を示すとともに,それらの留意点,今後の課題を取りまとめたものである。PM2.5に関する手法と課題は,
今後の課題として,
要旨次のような点を指摘している。
(甲B14)
(ア)

二次生成粒子の生成メカニズムの解明
硫黄酸化物,窒素酸化物,塩化水素等の酸化ガスとアンモニアガスとの化学反応や揮発性有機化合物と窒素酸化物等との光化学反応の反応速
度等に関する研究,
及び関係する前駆物質について解明する必要がある。
(イ)

現況調査方法の検討
環境中のPM2.5濃度は時系列に変動するため,測定時期・期間等について目安を得ておく必要があることから,今後,常時監視局等のデータを解析して必要な調査方法を検討する必要がある。

(ウ)

発生源の排出インベントリの整備
発生源の排出インベントリを系統的に整備する必要がある。特に,環境保全設備の効果についてのデータや,PM2.5,前駆物質及び予測に用いる成分の排出量について整備する必要がある。

(エ)

シミュレーションモデルの開発
PM2.5では,非常に広い範囲で二次生成粒子の生成反応が進むため,他の発生源からの前駆物質との影響を考慮したシミュレーションモデルを開発する必要がある。

(オ)
PM2.5に係る対策の検討
現状において,多くの常時監視局で環境基準を満足していないことからも,PM2.5に係る適切な対策を検討する必要がある。(カ)
環境保全技術の情報整理
排出源カテゴリ,利用方法・場所,主な対象物質,導入効果,技術所有者に加えて,費用対効果及び実現可能性等の情報を集約したデータベースを整備する必要がある。

(キ)

特異現象への対応
黄砂や火山の噴火や山火事など特異現象によって環境基準を超過する場合があることから,バックグラウンド濃度に対するそれらの事象の寄与を区別する方法について検討する必要がある。


環境省の中央環境審議会大気・騒音振動部会の微小粒子状物質等専門委員会は,平成27年3月,PM2.5の国内における当面の排出抑制策の在り方について,中間取りまとめを行った。この中間取りまとめにおいては,要旨次の内容を含む指摘がされた。(乙25)

(ア)

大気環境濃度の状況
PM2.5の年平均濃度はおおむね減少傾向にあるが,平成24年度の環境基準達成率は,一般局で43.3%,自排局で33.3%となっ
ている。
PM2.5の測定局数は,平成26年度末に約1000局となる見込みであり,1300局を目標に更に監視体制の整備に努めている。(イ)
既存の施策の評価と排出抑制策の在り方
越境汚染の寄与割合は西日本等で比較的高く,越境汚染対策は重要である一方,国内発生源についても年平均濃度において一定の寄与割合を占めていることなどから,国内における排出抑制対策を着実に進めることが必要である。
その際,PM2.5の生成機構や発生源の寄与割合について科学的に
解明すべき課題が残されていることや,PM2.5を構成する成分が多く種々の対策が必要であることを踏まえ,現時点の知見に基づき既存の大気汚染防止施策をPM2.5対策の観点を加味して更に推進していく短期的課題と,調査研究等による知見の集積を図りつつ総合的に取り組む中長期的課題を整理し,段階的に対策を検討していくことが適当と考えられる。


短期的課題の基本的方針
PM2.5の削減に確実に寄与する一次生成粒子(ばいじん,ディーゼル微粒子等)並びにPM2.5及び光化学オキシダントの前駆物質(窒素酸化物,揮発性有機化合物)について,排出規制等の取組状況,排出実態や排出抑制技術の状況等を踏まえ,対策強化の可能性を検討する。

また,PM2.5の削減を進める上で重要であるが,大気汚染防止法に基づく規制等が行われていない物質等(アンモニア,野焼き)について,取組を検討する。


中長期的課題の基本的方針
短期的課題と並行して,総合的な対策に取り組む上での基礎となる
現象解明や情報整備,対策効果の定量的予測・評価を可能とするシミュレーションの高度化等に関する次の課題に取り組み,その進捗状況に応じて追加的な対策を検討する。


二次生成粒子(特に,二次生成有機粒子)の生成能に関する科学
的知見の充実を踏まえ,PM2.5やオキシダント生成能の高い揮
発性有機化合物を対象とした排出抑制対策を検討する。


固定発生源からの一次生成粒子について,凝縮性ダストを考慮し
た適切な測定方法の開発や排出実態の解明を進め,排出抑制対策を検討する。



発生源情報を整備し,観測データを用いたレセプターモデルの解
析や高度化されたシミュレーションモデルの解析に利用して,寄与割合の高い発生源を推定し,効果的な対策を検討する。(ウ)

今後の検討課題
PM2.5の排出抑制策を進める上での基礎となる常時監視体制の整備,
排出インベントリの整備・更新,
シミュレーションモデルの精緻化,
二次生成粒子の生成機構の解明,凝縮性ダストの測定方法の開発,越境
汚染の解明等の科学的知見の充実に取り組む必要がある。
その際,
中国,
韓国を始めとする東アジア地域において,大気環境モニタリングデータや発生源情報等を集積・共有していくことが重要である。
PM2.5の排出抑制対策については,排出インベントリの整備・更新を通じて,その実施状況をフォローしていくとともに,高度化したシ
ミュレーションモデル等を用いてPM2.5の削減効果をできる限り定量的に評価・検証していくことが求められる。

前記ウと同様に,基本的事項告示の点検を目的として,環境省総合環境政策統括官の委嘱により,平成30年6月,技術検討委員会が設置され,
その検討の結果,同年11月に報告書が取りまとめられた。
上記報告書の取りまとめの過程においては,地方公共団体から,環境影響評価項目の範囲について,光化学オキシダントやPM2.5に関して予測・評価手法を確立した上で,参考項目として盛り込むことが必要との意見があった。しかしながら,上記報告書においては,環境影響評価制度の円滑な実施に向けてとの項目の下,環境影響評価の技術手法等に関する情報収集等について,事業者により環境影響評価が適切になされるよう,微小粒子状物質(PM2.5)の取扱い,風力発電設備による鳥類・コウモリへの影響,生態系影響の把握に当たっての生物種の選定,海域の環境情報の整備,海域生態系への影響等のテーマについて,環境影響評価に係る技術手法の開発を進めるべきである。と記載されるにとどまり,PM2.
5を参考項目に加える旨の提案はされなかった。
(乙27,
28)キ

本件事業に係る事業実施想定区域を中心とする半径20㎞の範囲内には,平成25年度末の時点で,大気汚染常時測定局が56局(一般局33局及び自排局23局)あり,そのうちの32局(一般局18局及び自排局14局)においてPM2.5の測定が行われていた。同年度の測定結果によると,一般局のうち年間有効測定日数未満の5局を除く13局中6局におい
て環境基準の長期基準(1年平均値が15μg/㎥以下)に適合していたが,年間有効測定日数未満の1局を除く全ての自排局において同基準に適合していなかった。また,一般局のうち上記13局中1局において環境基準の短期基準(1日平均値の年間98%値が35μg/㎥以下)に適合していたが,年間有効測定日数未満の1局を除く全ての自排局において同基
準に適合していなかった。(甲A10)
平成27年度末の時点で,上記の範囲内には,大気汚染常時測定局が55局(一般局32局及び自排局23局)あり,そのうちの35局(一般局19局及び自排局16局)においてPM2.5の測定が行われていた。同年度の測定結果によると,一般局19局中17局において環境基準の長期
基準に適合していたが,自排局のうち年間有効測定日数未満の1局を除く15局中6局において同基準に適合していなかった。また,一般局中13局において環境基準の短期基準に適合していたが,自排局のうち上記15局中10局において同基準に適合していなかった。(甲A34の4の2)(2)

我が国の地球温暖化対策等
東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議取りまとめ(局長級会議取りまとめ。甲C36)
東京電力株式会社(以下東京電力という。)が実施した平成24年度電力卸供給入札において,石炭火力発電設備を採用する事業者が落札す
る可能性があったが,石炭火力発電は安定供給・経済性に資するものの環境面に課題があることから,経済産業省及び環境省は,平成25年2月7日に東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議を設置し,電力の安定供給の確保,燃料コストの削減,環境保全に取り組むための対応について議論を進め,同年4月25日,局長級会議取りまとめについて合意した。局長級会議取りまとめには,要旨次の内容が含まれる。
(ア)

東京電力の電力需給の状況及び見通し
原子力損害賠償支援機構及び東京電力が策定した計画によれば,同計画に記載された全ての発電能力の強化を行っても,2021年(平成33年)の東京電力管内の最大需要時の供給予備率は,2.8ないし7.3%の水準である。この計画においては,今後の省エネルギー・再生エネルギー政策の効果が織り込まれていない。電気事業者は,自らはもと
より,需要側を含めた省エネルギーや再生エネルギーの導入等に努めることとしており,国の政策と併せて,今後,その効果が現れてくれば,その実績をベースに事業者の需要予測等も見直しが行われる。
(イ)

今次の入札電源の必要性
前記(ア)の省エネルギーや再生エネルギーの導入等に努めてもなお,安
定供給確保のために本入札電源は必要である。安価なベース電源の確保をすることで燃料コスト削減にも効果がある。
(ウ)

電気事業分野における実効性ある地球温暖化対策のあり方
エネルギー政策の検討を踏まえた国の地球温暖化対策の計画・目標の
策定と併せて,特に電気事業分野については,環境アセスメントにおける二酸化炭素の扱いの明確化の観点も踏まえ,上記目標と整合的な形で電力業界全体の実効性のある取組が確保されることが必要であり,以下を内容とする電力業界全体の枠組みの構築を促す。


国の計画と整合的な目標(排出係数を想定)が定められていること


対策を実効あらしめるため,新電力を含む主要事業者が参加すること(環境アセスメント対象となる新増設石炭火力発電所から電力調達を予定する電気事業者は確実に参加することを想定)③

枠組み全体の目標達成に向けた責任主体が明確なこと(従前と同様に,需要家に電力を販売する小売段階に着目することを想定。この場合,小売段階が調達する電力を通じて発電段階等における低炭素化が確保される)



目標達成について参加事業者が全体として明確にコミットしていること(目標達成の手段として,二国間オフセット・クレジット(途上国への優れた低炭素技術等の普及を通じ,地球規模での温暖化対策に貢献するとともに,我が国の削減目標の達成に活用するクレジットの獲得を目指すもの)やCDM(先進国が途上国において共同で温室効
果ガス削減プロジェクトを実施し,そこで得られた吸収分あるいは削減分を先進国がクレジットとして獲得し,自国の温室効果ガス削減量に充当できる仕組み)の取得など我が国の優れた発電技術等の国際展開による排出削減等の取組も可能)


新規参入者等に対しても開かれており,かつ事業者の予見可能性の高い枠組みとすること(参加手続を含め,競争制限的・参入抑制的・不公平な枠組みとしない)

(エ)

環境アセスメントにおける二酸化炭素の取扱い
地球温暖化問題の性格上,全体で管理する枠組みにより対策の実効性
を確保することが基本となるが,二酸化炭素排出量が非常に大きい火力発電所の個々の建設に係る環境アセスメントにおいて,事業者が利用可能な最良の技術(BAT)の採用等により可能な限り環境負荷低減に努めているかどうか,また,国の二酸化炭素排出削減の目標・計画と整合性を持っているかどうかについて,今次入札を含め,次の観点により必
要かつ合理的な範囲で国が審査する。
(I)BATa

発電設備の導入に当たっては,競争を通じて,常に発電技術の進歩を促し,発電事業における我が国の技術優位を維持・向上させ,国際競争力の向上と環境貢献を行うことが重要である。
この考え方に立ち,今後の発電技術の開発動向も勘案して,発電技術を次の三つに分類し,事業者がBATの採用を検討する際の参考と
なるよう,最新鋭の発電技術の商用化及び開発状況(以下BATの参考表という。)を規模や燃料種に応じて国が整理し,公表する。


経済性・信頼性において問題なく商用プラントとして既に運転開
始をしている最新鋭の発電技術



商用プラントとして着工済みの発電技術及び商用プラントとして
の採用が決定し環境アセスメント手続に入っている発電技術


b
前記①,②以外の開発・実証段階の発電技術事業者は,竣工に至るスケジュール等も勘案しながら,前記aの②
についても採用の可能性を検討した上で,同①以上のものとするよう
努める。
国は,
このような事業者の検討の内容を確認することにより,
審査を行うものとする。
一方,前記aの③については,メーカー等がなお一層の技術開発を進めたり,国が政策支援を検討したり,信頼性等があると判断した事業者が自主的に採用を判断する参考情報となるものである。

なお,国においては,主に前記aの③段階における新技術の開発や同①,②段階における導入促進に対して的確に政策支援等を行うことで,新たな技術が着実に実用化・導入されていくよう努める。
c
BATの参考表は,客観性を確保するために,発電設備メーカーや電気事業者等からのヒアリングを基に,必要に応じ外部有識者等の意見も聴き,策定・更新する。なお,BATの参考表は,原則として毎年度見直し,必要に応じ随時更新する。(Ⅱ)国の目標・計画との整合性
a
中期目標(当時,2020年(平成32年)までに1990年比で25%の温室効果ガスを排出削減するとの中期目標が掲げられていた。弁論の全趣旨)との関係

少なくとも次の場合においては,発電所アセス省令に照らし,事業者が国の目標・計画の達成に努めることを目的として環境保全措置を検討していると判断できることから,国の目標・計画との整合性は確保されているものと整理する。


前記(ウ)の枠組みに事業者が参加し,
当該枠組みの下で二酸化炭素
排出削減に取り組んでいくこととしている場合



前記(ウ)の枠組みが構築されるまでの間においては,
事業者が,

れが構築された後に遅滞なく参加し,当該枠組みの下で計画的に二酸化炭素排出削減の取組を行うこととしている場合であって,その間は,事業者(入札を行う場合は入札実施者)が自主的な取組とし
てLNG火力を超過する分に相当する純増分について海外での削
減に係る取組を行うなどの環境保全措置を講ずることとしている
とき
b
2050年目標との関係
国は,当面は,火力発電設備の一層の高効率化,2020年頃のCCSの商用化を目指したCCS等の技術開発の加速化を図るとともに,CCS導入の前提となる貯留適地調査についても早期に結果が得られるよう取り組む。
商用化を前提に,2030年までに石炭火力にCCSを導入するこ
とを検討する。また,貯留適地の調査や,商用化の目処も考慮しつつCCS

Ready(CCSの導入に向けて,必要な設備のための用地確保や採用される技術の内容に応じた準備を,大規模排出源の設計・建設の段階からあらかじめ行うこと。甲C33)において求める内容の整理を行った上で,できる限り早期にCCS

Readyの導入を検討す

る。この検討状況については,随時,事業者に対し情報を提供する。2050年までに温室効果ガス排出量80%削減を目指すために,
2050年までの稼働が想定される発電設備については,事業者に対し,二酸化炭素分離回収設備の実用化に向けた技術開発を含め,今後の革新的な二酸化炭素排出削減対策についても継続的に検討を進めることを求める。

長期エネルギー需給見通し
経済産業省は,エネルギー政策基本法に基づいて平成26年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画を踏まえて,平成27年7月,長期エネルギー需給見通しを策定し,公表した。長期エネルギー需給見通しは,要旨次の内容を含むものである(甲C26)。

(ア)

長期エネルギー需給見通しの位置付け
長期エネルギー需給見通しは,安全性を前提とした上で,エネルギーの安定供給を第一とし,経済効率性の向上による低コストでのエネルギー供給を実現し,同時に,環境への適合を図るというエネルギー政策の基本的視点を踏まえ,これらの点について達成すべき政策目標を想定した上で,施策を講じたときに実現されるであろう将来のエネルギー需給
構造の見通しを,あるべき姿として示すものである。
今般の長期エネルギー需給見通しは,エネルギー基本計画を踏まえ,中長期的な視点から,2030年度のエネルギー需給構造の見通しを策定する。
(イ)

長期エネルギー需給見通し策定の基本方針
エネルギー政策の基本的視点である安全性,安定供給,経済効率性及び環境適合について達成すべき政策目標を具体化すると,次のとおりである。
a
安全性
東京電力福島第一原子力発電所事故により,原子力への信頼が低下している。また,石油・ガス等の他の燃料の供給設備や風力発電設備
等についても自然災害等への耐性の意識が高まっている。
以上を踏まえ,
原子力については,
世界最高水準の規制基準に加え,
自主的安全性の向上,安全性確保に必要な技術・人材の維持・発展を図る。また,石油,ガス等の設備についても安全性の向上に向けて取り組んでいく。

b
安定供給
エネルギー自給率の改善は長年にわたる我が国のエネルギー政策
の大目標であるが,
東日本大震災以降,
我が国のエネルギー自給率は,
原子力発電所の停止に伴い,僅か6%程度まで落ち込み,極端に低い水準となっている。

以上を踏まえ,エネルギー調達先国の多角化や国産資源の開発を進め,調達リスクを低減しつつ,自給率については,東日本大震災以前を更に上回る水準
(おおむね25%程度)
まで改善することを目指す。
c
経済効率性
電力コストを現状よりも引き下げることを目指す。

d
環境適合
東日本大震災以降,原子力発電所の停止による火力発電所の焚き増し等により,温室効果ガス排出量の増加が継続しており,地球温暖化対策に積極的に取り組む必要が一層高まっている。そのような中,本
年(平成27年)12月にCOP21を控え,我が国も先進国の一員として野心的な目標を示し,国際的な地球温暖化対策をリードしていくことが求められている。以上を踏まえ,欧米に遜色ない温室効果ガス削減目標を掲げ世界をリードすることに資する長期エネルギー需給見通しを示すことを目指す。
e
エネルギー基本計画においては,徹底した省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電の効率化等を進めつつ,原発依存度を可能な限り低減させる等の政策の基本的な方向性を定めているが,これらを以上のとおり想定した政策目標を同時達成する中で進めていった場合の将来のエネルギー需給構造の見通しを策定することを基本方針とする。

(ウ)

2030年度のエネルギー需給構造の見通し
a
エネルギー需要及び一次エネルギー供給構造
徹底した省エネルギーの推進により,2030年度のエネルギー需要を3億2600万kl程度(同年度にかけて35%の大幅なエネルギー効率の改善が実現される水準。
うち電力は28%程度)
と見込み,

同年度の一次エネルギー供給構造の見通しを立てる。これによって,エネルギー起源二酸化炭素排出量は,2013年度総排出量比21.9%減となり,そのほか温室効果ガス排出削減量や吸収源対策等を合計すると,我が国の温室効果ガス排出削減量は,2013年度比で26.0%減となる。

b
電源構成
電力の需給構造については,安全性,安定供給,経済効率性及び環境適合に関する政策目標を同時達成する中で,徹底した省エネルギー(節電)の推進,再生可能エネルギーの最大限の導入,火力発電の効
率化等を進めつつ,原発依存度を可能な限り低減することが基本方針となっている。例えば,自給率向上,二酸化炭素排出抑制のためには,再生可能エネルギーを拡大し,石炭火力を抑制することが必要であり,電力コスト低下のためには,例えば,再生可能エネルギーを抑制し,石炭火力を拡大する必要があることから,安全性,安定供給,経済効率性及び環境適合を同時達成するためには,バランスの取れた電源構成とする
必要がある。
具体的には,火力発電については,石炭火力,LNG火力の高効率化を進めつつ環境負荷の低減と両立しながら活用するとともに,石油火力については緊急時のバックアップ利用も踏まえ,必要最小限を見込む。

結果として,2030年度の電力の需給構造について,電力需要を9808億kWh程度(対策前比17%減)と見込み,電源構成を,再生可能エネルギー22~24%程度,原子力22~20%程度,LNG27%程度,石炭26%程度,石油3%程度と見込む。
(エ)

各分野の主な取組
a
化石エネルギーについては,石炭火力発電及びLNG火力発電の高効率化を図り,環境負荷の低減と両立しながら,その有効活用を促進する。石油火力については緊急時のバックアップ利用も踏まえ,必要な最小限の量を確保する。
こうした観点から,石炭火力を始めとする火力発電について,非効
率な設備の導入を抑制することが可能な仕組みを導入するとともに,電気事業者による自主的な枠組みの早期構築を促す等低炭素化に向けた取組等を推進する。
b
2030年度以降を見据えて,革新的な蓄電池,水素社会の実現に向けた技術,次世代型再生可能エネルギー,二酸化炭素の回収・貯留(CCS)及び利用に関する技術を始めとする新たな技術の開発・利用の推進,メタンハイドレート等我が国の排他的経済水域内に眠る資源の活用に向けた取組も推進する。

電気事業者による低炭素社会の実現に向けた自主的枠組み等
電気事業連合会加盟10社,電源開発株式会社,日本原子力発電株式会
社及び特定規模電気事業者(新電力)有志23社は,平成27年7月17日,低炭素社会の実現に向けた新たな自主的枠組み(以下自主的枠組みという。)を構築するとともに,電気事業における低炭素社会実行計画(以下事業者実行計画という。)を策定した。その内容等は,要旨次のとおりである。(甲C32)

(ア)

自主的枠組み


自主的枠組みの参加者23社の販売電力量でのカバー率は99%超であり,今後参加を希望する会社に対しても開かれた枠組みとする。


政府の示す長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)が実現される姿(2030年度排出係数)を目標とする。



火力発電所の新設等におけるBAT活用等の取組を定量的に評価する。



目標は電気事業全体で目指すものであり,地球温暖化対策の実施状況を毎年フォローアップし,結果等を翌年度以降の取組に反映すること
(PDCAサイクルの推進)
により,
目標達成の確度を高めていく。



目標達成に向けた実効性ある仕組みを充実できるよう,今後も引き続き参加事業者の中で協議を進めていく。

(イ)

事業者実行計画


2030年度に排出係数0.
37㎏-CO2/kWh程度
(使用端。
使用端とは,一般の需要に応じて供給される電力量のことをいう。)
を目指す。
なお,この排出係数は,政府の長期エネルギー需給見通しで示されたエネルギーミックスから算出される国全体の排出係数であり,2013年度比35%減相当程度と試算される。


火力発電所の新設等に当たり,プラント規模に応じて,BATを活用すること等により,最大削減ポテンシャルとして約1100万t-CO2の排出削減を見込む。


パリ協定及び日本の約束草案
パリ協定(甲C18)は,平成27年12月,フランス共和国のパリで開催されたCOP21(気候変動枠組条約締約国会議)において採択された協定(条約)である。パリ協定は,世界全体の平均気温の上昇を工業化
以前よりも摂氏2度高い水準を十分に下回るものに抑えること並びに世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏1.5度高い水準までのものに制限するための努力を継続して行うこと等を目標とし
(2条1項(a))

この目標を達成するため,今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成するために,開発途
上締約国の温室効果ガスの排出量がピークに達するまでには一層長い期間を要することを認識しつつ,世界全体の温室効果ガスの排出量ができる限り速やかにピークに達すること及びその後は利用可能な最良の科学に基づいて迅速な削減に取り組むこと等を目的とする(4条1項)。そして,パリ協定の締約国には,上記目標を達成するため,自国が達成する意図を有
する累次の国が決定する貢献(NationallyDeterminedContribution。以下NDCという。)を作成し,通報し,及び維持すること,当該国が決定するNDCの目的を達成するため,緩和に関する国内措置を遂行すること等が求められる(4条2項)。
我が国は,パリ協定に先立ち,平成27年(2015年)7月17日,
2030年度の温室効果ガスの削減目標を,2013年度比で26.0%減(2005年度比で25.4%減)とする日本の約束草案
(乙44)を決定し,同日付けで国連気候変動枠組条約事務局に提出した(この削減目標は,
長期エネルギー需給見通しにおけるそれと同じである。
前記イ(ウ)
a参照)。この目標(中期目標)は,パリ協定上の我が国のNDCとみなされている。(弁論の全趣旨)
パリ協定は,平成28年11月4日に発効し,我が国は,同月8日,パ
リ協定を締結した(弁論の全趣旨)。

自主的枠組み及び事業者実行計画を踏まえた政策的対応

(ア)

経済産業大臣と環境大臣は,平成28年2月,今後の電気事業分野における地球温暖化対策について,次の事項を含め,引き続き局長級会議
取りまとめに沿って実効性のある対策に取り組むことを合意した(乙10,弁論の全趣旨)。
a
経済産業省は,電力業界に対し,自主的枠組みについて,引き続き実効性・透明性の向上や加入社の拡大に取り組むとともに,2030年度に排出係数0.37㎏-CO2/kWhという目標達成に向け真摯に取り組むことを促す。

b
経済産業省は,政策的な対応として,①省エネ法に基づき,電気事業法上の全ての発電事業者に対し,石炭火力発電所等の新設基準や火力発電の運転時の発電効率のベンチマーク指標を設定する,②エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(以下高度化法という。)

に基づき,非化石電源の割合についてエネルギーミックスと整合的な数値を設定するといった措置を講じつつ,指導・助言,勧告・命令を含め適切に運用することにより,エネルギーミックス達成に向け責任をもって取り組む。
c
当面,前記a,bの取組等により電力業界全体の取組の実効性を確保することとするが,2030年度の削減目標やエネルギーミックスと整合する同年度に排出係数0.37㎏-CO2/kWhという目標を確実に達成するために,これらの取組が継続的に実効を上げているか,毎年度,その進捗状況をレビューし,省エネ法及び高度化法に基づき,必要に応じて指導を行い,取組が著しく不十分と判断される場合には指示・勧告等を行う。

(イ)

経済産業大臣は,前記(ア)bの政策的な対応として,次のとおり,省エネ法及び高度化法に基づく各告示の改正をした。
a
省エネ法5条1項は,経済産業大臣は,工場等におけるエネルギーの使用の合理化の適切かつ有効な実施を図るため,同項各号所定の事
項並びにエネルギーの使用の合理化の目標及び当該目標を達成するために計画的に取り組むべき措置に関し,工場等においてエネルギーを使用して事業を行う者の判断の基準となるべき事項を定め,これを公表するものとする旨規定するところ,経済産業大臣は,平成28年3月,同項に基づく告示(工場等におけるエネルギーの使用の合理化に
関する事業者の判断の基準。平成21年経済産業省告示第66号)について,次の内容を含む改正をした(乙11,12)。


工場等(専ら事務所その他これに類する用途に供する工場等を除
く。)におけるエネルギーの使用の合理化に関する事項として,発電専用設備の新設に当たっての措置について,従前,一定の電力供
給業に使用する発電専用設備を新設する場合には,

汎用機の中で最高水準の発電端効率のものとすること。

とされていたものを,

別表第2の2に掲げる発電効率以上のものとすること。

と改め,別表第2の2を新設し,同表において,石炭による火力発電については,基準発電効率を42.0%と定めた。この数値は,エネルギ
ーミックスにおいて,石炭火力発電については,全体としてUSC(超々臨界圧)相当の発電効率を目指すため,BATの参考表に準じて,経済性・信頼性において問題なく商用プラントとして既に運転開始をしているUSCの中で,全ての発電方式で達成可能性のある値とされているものである。


事業者が,技術的かつ経済的に可能な範囲内において,中長期的
に所定の指標(ベンチマーク指標)が所定の水準となることを目指
すものとして定められた別表第6(現行の別表第5)について,従前,電力供給業の場合,火力発電設備における定格出力の性能試験により得られた発電端熱効率を定格出力の設計効率で除した値を
各工場の定格出力によって加重平均した値(熱効率標準化指標)が100.3%以上となることを目指すものとされていたものを,定
格出力状態における性能ではなく,実際の運転時の発電効率(実績効率)を評価できるように,新たな指標(火力発電効率A指標及び火力発電効率B指標)を定めた。これらの指標においては,既設火力発電所の設計効率と実績効率の差分が1%程度であることから,石炭火力発電の効率の目標値は41.0%と定められた。

b
高度化法5条1項は,経済産業大臣は,特定エネルギー供給事業者(高度化法2条7項)による非化石エネルギー源の利用の適切かつ有効な実施を図るため,非化石エネルギー源の利用の目標等に関する判断の基準となるべき事項を定め,これを公表するものとする旨規定す
るところ,経済産業大臣は,平成28年3月,高度化法5条1項に基づく告示(非化石エネルギー源の利用に関する一般電気事業者等の判断の基準(平成21年経済産業省告示第278号))を全文改正する告示を定めた(非化石エネルギー源の利用に関する電気事業者の判断の基準(平成28年経済産業省告示第112号))。

上記告示においては,電気事業者が平成42年度(2030年度)において供給する非化石電源(非化石エネルギー源を利用する電源)に係る電気の量等の,供給する全ての電源による発電量に対する比率を44%以上(前記a②の新たな指標の目指すべき水準の達成と併せて,結果として,電気事業(電気事業者の行う小売供給に係る事業をいう。)全体として0.37㎏-CO2/kWhに相当するもの)とすることを目標とし,既に当該比率の目標を達成した電気事業者であ
っても,
当該比率の更なる向上への努力を求めること等が定められた。
(乙13)

地球温暖化対策計画
政府は,平成28年5月13日,地球温暖化対策の推進に関する法律8
条1項等に基づき,地球温暖化対策計画を策定した。その内容は,要旨次の内容を含むものである。(甲C27,乙7)
(ア)

温室効果ガス別その他の区分ごとの排出抑制・吸収の量に関する目標二酸化炭素のうちエネルギー起源二酸化炭素(我が国の温室効果ガス排出量の約9割を占める。)について,2013年度実績12億3500万t-CO2を2030年度において9億2700万t-CO2まで
削減(約25.0%削減)することを目標とする。そのうち,発電所を含むエネルギー転換部門においては,2013年度実績1億0100万t-CO2を2030年度において7300万t-CO2まで削減(約27.7%削減)することを目標とする。
(イ)

温室効果ガスの排出削減対策・施策
エネルギー転換部門の取組として,
産業界における自主的取組の推進,
再生可能エネルギーの最大限の導入,電力分野の二酸化炭素排出原単位の低減,石油製品製造分野における省エネルギー対策の推進が挙げられる。このうち,電力分野の二酸化炭素排出原単位の低減には,火力発電の高効率化等(後記(ウ))が含まれる。

(ウ)

火力発電の高効率化等a

電力業界の低炭素化の取組
自主的枠組みの目標達成に向けた取組を促すため,省エネ法及び高度化法に基づく政策的対応を行うことにより,電力自由化の下で,電力業界全体の取組の実効性を確保していく。具体的には,次の事項を含め,引き続き局長級会議取りまとめに沿って実効性ある対策に取り
組む。
<自主的枠組みについて>


引き続き実効性・透明性の向上を促すとともに,掲げた目標の達成に真摯に取り組むことを促す。



国の審議会においても電力業界の自主的枠組みにおける取組等をフォローアップする。

<政策的対応>


省エネ法に基づき,発電事業者に,新設の発電設備について,発電設備単位で,エネルギーミックスで想定する発電効率の基準を満たすこと(石炭については42.0%以上)を求める。



高度化法に基づき,小売電気事業者に,販売する電力のうち,非化石電源が占める割合を44%以上とすることを求める。



地球温暖化対策推進法政省令に基づき,全ての小売電気事業者に,温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度のための排出係数の実績の
報告の協力を要請し,公表する(さらに,報告対象に前々年度の実績等を追加し,報告内容の充実を図る。)。
当面,以上により取り組んでいくことにより,電力業界全体の取組の実効性・透明性を確保する。また,2030年度の削減目標やエネルギーミックスと整合する同年度に排出係数0.37㎏-CO2/k
Whという目標を確実に達成していくために,これらの取組が継続的に実効を上げているか,毎年度,その進捗状況を評価する。b

火力発電における最新鋭の発電技術の導入促進
発電設備の導入に当たっては,競争を通じて,常に発電技術の進歩を促し,発電事業における我が国の技術優位を維持・向上させ,国際競争力の向上と環境貢献を行うことが重要である。
この考え方に立ち,
今後の発電技術の開発動向も勘案して,BATの採用を促す。

c
二酸化炭素回収・貯留(CCS)
2030年以降を見据えて,CCSについては,局長級会議取りまとめやエネルギー基本計画等を踏まえて取り組む。

d
小規模火力発電への対応
環境影響評価法の対象規模未満,特に,規模要件を僅かに下回る程
度の小規模火力発電所の建設計画が増加している。このような小規模火力発電所を建設しようとする発電事業者に対しては,エネルギーミックスの実現に資する高い発電効率の基準を満たすことを求めていくため,省エネ法等の措置を講ずる。

BATの参考表
平成29年2月時点のBATの参考表の内容は,別紙3BATの参考表【平成29年2月時点】記載のとおりである(弁論の全趣旨)。

電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価
環境省は,2030年度の削減目標やエネルギーミックスと整合する排
出係数0.
37㎏-CO2/kWhという目標の達成に向けて,前記オ(ア)の合意に基づく取組が継続的に実効を上げているか,毎年度進捗状況を評価しているところ,平成30年3月,平成29年度の進捗状況についての評価を公表した。その内容は,要旨次の内容を含むものである。(甲C34)

(ア)

背景及び評価の目的
a
電力の低炭素化をめぐる世界の潮流火力発電所は長期的な稼働が見込まれる大規模排出源であり,このような施設に効果的な温室効果ガス削減対策を行わないまま建設・稼働していけば,二酸化炭素排出量の高止まりを招くおそれがある。火力発電の中でも二酸化炭素排出量が多いのが石炭火力発電であり,その排出係数は,最新鋭のものでもLNG火力発電の約2倍である。
このため,諸外国では石炭火力発電及びそれからの二酸化炭素排出を抑制する流れがある。また,国際機関の報告書等においても,パリ協定の目標達成のためには石炭火力発電の段階的廃止が必要であるとの指摘がある。国連環境計画(UNEP)の報告書によれば,世界全体の石炭火力発電所の新増設計画や建設中の案件の大半が集中してい
る国として,発展途上国等と共に我が国も挙げられている。
b
評価の視点
以上のような背景を踏まえて,電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価においては,2030年度の削減目標やエネルギ
ーミックスと整合する同年度までに排出係数0.37㎏-CO2/kWhという目標の達成に向けた取組が進捗しているか否かを評価するため,二酸化炭素排出量の増減や排出係数の改善・悪化の状況とその要因を分析する必要がある。また,足元の状況のみならず,同年度の目標達成に向けた達成の見通しも評価する必要がある。さらに,パリ
協定では,NDCは従来からの前進を示すこととされており,地球温暖化対策の後退はあり得ない。
これらの考え方を踏まえると,地球温暖化対策計画に定められた2030年度の削減目標の確実な達成はもとより,2050年及びその後を視野に入れた脱炭素化の取組が不可欠である。特に,電力部門の
排出量は我が国の二酸化炭素排出量の約4割を占める最大の排出源であることなどから,
電力部門の低炭素化の取組は,
脱炭素化に向けて,非常に重要である。加えて,とりわけ石炭火力発電は,事業者にとっては一旦投資判断・建設を実行すれば投資回収のために高稼働させるインセンティブが働くことから,電力の脱炭素化の道筋を描くに当たっては,石炭火力による長期的な排出のロックインの可能性を十分に考慮する必要がある。

(イ)

進捗状況の評価等
a
我が国における火力発電所の新増設計画
我が国における石炭火力発電の発電電力量は3498億kWh(2016年度(平成28年度))であり,二酸化炭素排出量は約2.74億t(同年度)である。2030年度の削減目標や電源構成に照ら
せば,
同年度には石炭火力発電からの二酸化炭素排出量を2.
2~2.
3億t程度に削減する必要がある。しかしながら,現在,全国に石炭火力発電所の新設・増設計画が多数存在し,環境省の調べによると,その合計は平成30年3月時点で約1850万kWに上る。これらの計画が全て実行され,原子力発電所が長期停止し,再生可能エネルギ
ーの導入が低調である等の場合において,稼働率70%で稼働し,かつ,既存の老朽石炭火力発電所が稼働から45年で一律に廃止されると仮定すると,石炭火力発電からの二酸化炭素排出量は,2030年度の削減目標や電源構成と整合する上記の排出量を6800万t程度(同年度の排出量全体の約7%に相当)超過してしまう。

こうした中,現在の計画どおりに石炭火力発電所が建設されると,各設備の稼働率を相当程度低くしなければ,2030年度の削減目標・エネルギーミックスを達成できない可能性がある。
b
二酸化炭素排出量及び二酸化炭素排出係数の状況
平成28年度の二酸化炭素排出実績をみると,排出係数は0.516㎏-CO2/kWh,二酸化炭素排出量は4.30億tであり,平成27年度の排出係数0.531㎏-CO2/kWh,二酸化炭素排出量4.41億tからは低減している。
(ウ)

総括-今後の課題
今回の評価の結果,前記オ(ア)の合意の枠組みに関し,
幾つかの懸念や
課題があることが明らかとなった。

上記合意の柱の一つは電力業界の自主的枠組みであるが,電力システム改革で電気事業者を取り巻く環境が激変し,会員が相互に競争関係にある中,電気事業者有志が設立した電気事業低炭素社会協議会のPDCAには,各社に取組を促していくという履行担保の実効性の観点で様々な課題があるといわざるを得ない。

また,もう一つの柱である政策的対応のうち,省エネ法のベンチマーク指標については,これによって二酸化炭素排出削減を担保する制度設計には課題がある。また,高度化法については,現時点で入手可能な情報からは2030年度に向けた取組が進捗していると評価することは難しい。

2
争点1(確定通知が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか)について抗告訴訟の対象となる行政処分とは,行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為,すなわち公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法
律上認められているものをいうと解される(最高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。そこで検討すると,火力発電所事業を実施しようとする者(事業者)が評価書を届け出た場合,経済産業大臣は,変更命令をするか確定通知をするかしなければならないのであり(電気事業法46条の17),事業者に対し,変更命
令の要否(環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するために特に変更命令をする必要があり,かつ,変更命令をすることが適切であると認められるか否か)についての判断の結果を告知し,評価書の届出に応答すべきこととされている。その趣旨は,次のとおりであると解される。すなわち,発電所については,民間事業者が立案する個別の発電所計画が国において策定する電源開発の将来見通しに影響するという特殊な事業であり,国は,個別の発電所計画に対して深い関心を有するものの,許認可等の規制監督の手段によっ
て初めてこれに関与できるという他の事業にはみられない性格を有する。そこで,電気事業法は,環境影響評価に関する特例(第3章第2節第3款)を定めており,評価書については,国の意見を受けて事業者が自主的にその内容を確定するという環境影響評価法が定める手続ではなく,国が評価書の変更命令又は確定通知をするとともに,確定通知に係る評価書のとおりに工事計画認可の
申請や工事計画の届出がされれば,その認可等をする仕組みとしたものである。そして,確定通知がされ,事業者が当該確定通知に係る評価書を作成した旨等を公告した場合,事業者は,上記評価書に従った火力発電所の設置の工事の計画を主務大臣(経済産業大臣)に届け出れば,当該火力発電所が電気事業法39条1項の主務省令で定める技術基準に適合しないなどとしてその工事の
計画の変更又は廃止を命ぜられない限り,上記の届出から30日を経過した後にその届出に係る工事をすることができるものである(同法48条4項)。したがって,確定通知は,上記のように,届出に係る火力発電所の設置の工事計画どおりの工事をすることができるという地位を付与する法的効力を有するものであって,それによって直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲
を確定することが法律上認められているものであるといえるから,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解するのが相当である。
3
争点2(本件取消しの訴えの原告適格)について
(1)

行政事件訴訟法9条は,
取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1

項にいう当該処分の取消しを求めるにつき
法律上の利益を有する者とは,
当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。
そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみに
よることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害され
ることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(行政事件訴訟法9条2項,最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁参照)。
(2)

前記(1)の見地に立って,原告らが本件確定通知の取消しを求める原告適
格を有するか否かについて検討する。
ア(ア)

電気事業法は,
電気工作物の工事,維持及び運用を規制することによ
って,公共の安全を確保し,及び環境の保全を図ることを目的とし(1条),前記2で説示したとおり,環境影響評価に関する特例を定めている。

(イ)a

火力発電所事業に係る環境影響評価その他の手続については,電
気事業法の環境影響評価に関する特例のほか,
環境影響評価法が適用されるところ(電気事業法46条の2),環境影響評価法は,工作物の新設等の事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保し,
もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保
に資することを目的とする(1条)。
b
環境影響評価法は,事業者が,主務省令で定めるところにより,環境影響評価の項目並びに調査,
予測及び評価の手法を選定しなければ
ならないものとするところ(11条1項),この主務省令は,環境基本法14条各号に掲げる事項の確保を旨として,
既に得られている科
学的知見に基づき,
環境影響評価を適切に行うために必要であると認

められる環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査,
予測及び評
価を合理的に行うための手法を選定するための指針につき主務大臣が環境大臣に協議して定めるものとされる
(環境影響評価法11条4
項)。
そして,
環境大臣は,主務大臣が定めるべき上記指針に関する基本

的事項を定めて公表するものとされるところ(環境影響評価法13条),この規定に基づいて定められた基本的事項告示は,環境影響評価の項目を,環境要素(環境の構成要素)と影響要因(当該事業に伴う環境影響を及ぼすおそれがある要因)で区分し,環境要素を,a環境の自然的構成要素の良好な状態の保持,
b生物の多様性の確保及び

自然環境の体系的保全,c人と自然との豊かな触れ合い,d環境への負荷
(人の活動により環境に加えられる影響であって,環境の保全上
の支障の原因となるおそれのあるもの。環境基本法2条1項),e一般環境中の放射性物質の五つに大きく区分する。
このうちaは,
大気
環境(さらに,大気質等に区分される。),水環境(さらに,水質等
に区分される。),土壌環境・その他の環境(さらに,地形・地質等に区分される。)に区分され,dは,廃棄物等と温室効果ガス等に区分される(第四の一(2),別表)。基本的事項告示は,このような環境要素の区分ごとの調査,予測及び評価の基本的な方針について,次のとおり定めている。
すなわち,
①環境の自然的構成要素の良好な
状態の保持(上記a)に区分される選定項目(選定された環境影響評価の項目。以下同じ。)については,環境基本法14条1号に掲げる事項(人の健康が保護され,及び生活環境が保全され,並びに自然環境が適正に保全されるよう,大気,水,土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること)の確保を旨として,当該選定項目に係る環境要素に含まれる汚染物質の濃度その他の指標により
測られる当該環境要素の汚染の程度及び広がり又は当該環境要素の状態の変化(構成要素そのものの量的な変化を含む。)の程度及び広がりについて,
これらが人の健康,生活環境及び自然環境に及ぼす影
響を把握するため,調査,予測及び評価を行うものとする(第四の二(1))。他方,②環境への負荷(上記d)に区分される選定項目に
ついては,
同法2条2項の地球環境保全(人の活動による地球全体の
温暖化又はオゾン層の破壊の進行,海洋の汚染,
野生生物の種の減少
その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって,
人類の福祉に貢献するとともに国民の健
康で文化的な生活の確保に寄与するもの)
に係る環境への影響のうち

温室効果ガスの排出量等環境への負荷量の程度を把握することが適当な項目に関してはそれらの発生量等を,
廃棄物等に関してはそれら
の発生量,最終処分量等を把握することにより,調査,予測及び評価を行うものとする(第四の二(4))。
発電所の設置又は変更の工事の事業については,
基本的事項告示を

踏まえて,
上記の主務省令として発電所アセス省令が定められている。
発電所アセス省令は,
火力発電所事業に係る環境影響評価の項目の選定は,
火力発電所における一般的な事業の内容によって行われる火力
発電所事業に伴う当該影響要因について,
その影響を受けるおそれが
あるとされる環境要素に係る項目
(参考項目)
を勘案しつつ行うもの
とし(21条1項2号),施設の稼働による排ガスという影響要因についての参考項目として,
①環境の自然的構成要素の良好な状態の保

持を旨として調査,予測及び評価されるべき環境要素のうち,
大気質
に関するものとして,
硫黄酸化物,
窒素酸化物及び浮遊粒子状物質を,
②環境への負荷の量の程度により予測及び評価されるべき環境要素のうち,
温室効果ガス等に関するものとして,
二酸化炭素を定める
(発
電所アセス省令21条2項,3項,5条3項,別表第二)。

(ウ)

火力発電所事業に係る環境影響評価その他の手続に関する電気事業
法及び環境影響評価法の規定をみると,
方法書の手続及び準備書の手続
において,
事業者は,火力発電所事業に係る環境影響を受ける範囲であ
ると認められる地域を管轄する都道府県知事及び市町村長に対し,方法
書等や準備書等を送付しなければならず(同法6条,15条),同地域内において,
方法書や準備書の記載事項を周知させるための説明会を開
催しなければならないものとしている
(同法7条の2,
17条)また,

方法書や準備書について環境の保全の見地からの意見を有する者は,事
業者に対し,意見書の提出により,これを述べることができるほか(同
法8条,18条),上記の都道府県知事及び市町村長は,経済産業大臣に対し,
方法書や準備書について環境保全の見地からの意見を書面によ
り述べるものとし(同法10条,20条,電気事業法46条の7,46条の13),経済産業大臣は,この意見を勘案するとともに,環境影響評価法8条及び18条所定の意見の概要並びにこれらについての事業
者の見解に配意して,方法書や準備書を審査し,環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するために必要があると認めるときは,事業者に対し,必要な勧告をすることができるものとしている(電気事業法46条の8第1項,46条の14第1項)。このような手続を経て環境影響評価がされ,
評価書について確定通知がされた場合,
主務
大臣は,
届出のあった火力発電所の設置の工事の計画が上記評価書に従
っていないと認めるときは,その工事の計画を変更し,又は廃止すべきことを命ずることができる旨規定している(48条4項,3項,47条3項3号)。
(エ)a

前記(ア),(イ)の電気事業法及び環境影響評価法等の規定に加えて,同(ウ)のとおり,火力発電所事業に係る環境影響を受ける範囲である
と認められる地域を管轄する都道府県知事及び市町村長に方法書や準備書について環境の保全の見地からの意見を述べる機会が与えられ,
事業者は同地域内の住民に対する説明会を開催しなければならな
いとされており,
主務大臣は,火力発電所の設置の工事の計画が確定
通知に係る評価書に従っていないと認めるときは,
その工事の計画を

変更し,
又は廃止すべきことを命ずることができることなどに照らす
と,
確定通知及び変更命令に関する電気事業法の規定は,火力発電所
の稼働に伴う硫黄酸化物,
窒素酸化物及び浮遊粒子状物質等の排出に
よる大気汚染によって,当該火力発電所事業が実施されるべき区域(以下対象事業実施区域という。)の周辺地域に居住する住民に

健康又は生活環境の被害が発生することを防止し,
もって環境を保全
し,
健康で文化的な生活の確保に資することを,
その趣旨及び目的と
するものと解される
(甲A36もこれと同趣旨を指摘するものと解さ
れる。)。
他方,
前記(イ)の環境影響評価法等の規定が,
二酸化炭素について,

人の健康,
生活環境及び自然環境に及ぼす影響を把握するためではな
く,
地球環境保全
(地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全)の見地から,飽くまで環境の保全上の支
障の原因となるおそれのあるものとして,
その発生量等を把握するこ
とにより,
調査,予測及び評価を行うものとしていることなどに照ら
すと,
確定通知及び変更命令に関する電気事業法の規定が,上記のよ
うな我が国全体の環境保全を超えて,
特定の地域に居住する具体的な

個々人の利益のために二酸化炭素排出量の増加を抑制することなどをその趣旨及び目的とするものとは解し難い。
b
これに対して,被告は,①発電所アセス省令は,火力発電所に関する環境影響評価の項目の選定に当たって勘案すべき環境要素として,
健康等の個人的利益とは直接に関連しない観点から評価等がされるべき環境要素を多く挙げるほか,
大気環境や水環境等の個人的利益に
関わり得る環境要素についても,
環境の自然的構成要素の良好な状態の保持
を旨として,
すなわち健康被害等を回避するための規制基
準の水準を超える良好な状態を保持することを旨として評価等がさ
れるべきものとしている,
②環境影響評価法は,
地域住民に環境の保
全の見地からの意見を述べる機会を与える旨の規定等を設けているが,
これらの規定の趣旨は,
環境に関する有益な知見や資料を有する
者から適切に情報を収集することを求めるところなどにあるのであって,
同法は,
地域住民の個別的な利益を確保するための制度を設け

ていないなどとして,
確定通知等に関する規定は個々人の個別的利益
を保護しようとする趣旨のものではない旨主張する。
しかしながら,
上記①についていえば,環境の自然的構成要素の良好な状態の保持を旨として調査,
予測及び評価されるべき環境要素に
ついては,前記(イ)bで説示したとおり,環境基本法14条1号に掲
げる事項(人の健康が保護され,及び生活環境が保全され,並びに自然環境が適正に保全されるよう,大気,水,土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること)の確保を旨として,
当該
環境要素の汚染の程度及び広がり等について,
これらが人の健康,

活環境及び自然環境に及ぼす影響を把握するため,調査,予測及び評価を行うものとされている。
そうすると,環境の自然的構成要素の良
好な状態の保持が健康被害等を回避するための水準を超える良好な
状態の保持をも含んでいるからといって,
確定通知等に関する規定が
個々人の健康等の個別的利益を保護する趣旨を含むことが否定されるものではない。また,上記②についていえば,もとより,都道府県知事や環境の保全の見地からの意見を有する者等が意見を述べることができる旨の規定が,
事業者において当該意見を受け入れなければ

ならないという趣旨を含むものではないし,
これらの規定が,環境に
関する有益な知見や資料を有する者から適切に情報を収集することを求めるなどの趣旨を有することが否定されるものではないが,
そう
であるからといって,
これらの規定が,
関係する諸規定と相まって火
力発電所の周辺住民の個別的利益を保護する趣旨を有することが否
定されるものとは解し難い。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
イ(ア)

電気事業法に違反した違法な確定通知がされた場合に,当該確定通
知に係る評価書に関する火力発電所事業に起因する大気汚染による被害を直接的に受けるのは,
対象事業実施区域の周辺の一定範囲の地域に
居住する住民に限られ,
その被害の程度は,
居住地が対象事業実施区域
に接近するにつれて増大するものと考えられる。また,
このような事業
に係る対象事業実施区域の周辺地域に居住する住民が,
当該地域に居住
し続けることにより上記の被害を反復,継続して受けた場合,
その被害

は,
これらの住民の健康や生活環境に係る著しい被害にも至りかねないものである。
そして,確定通知及び変更命令に関する電気事業法の規定は,
その趣旨及び目的に鑑みれば,対象事業実施区域の周辺地域に居住する住民に対し,
違法な確定通知に係る評価書に関する火力発電所事業
に起因する大気汚染によってこのような健康又は生活環境に係る著しい被害を受けないという具体的利益を保護しようとするものと解されるところ,上記のような被害の内容,性質,程度等に照らせば,この具
体的利益は,
一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものといわ
ざるを得ない。
(イ)

他方,
温室効果ガス等である二酸化炭素の排出に関していえば,
二酸
化炭素の排出に起因する地球温暖化によって健康等に係る被害を受けるのが対象事業実施区域の周辺地域に居住する住民に限られるとか,そ
の被害の程度が,
居住地が対象事業実施区域に接近するにつれて増大す
るなどとは考えられない。
すなわち,上記被害を受けないという利益は
不特定多数の者が等しく享受するものであり,
特定の個人において他か
ら区別される程度に個別的にこれを享受しているとはいえないのであって(原告ら自身,地球温暖化については,発電所の近隣地域だけでな
く全世界的な被害をもたらすものである旨主張している。),上記利益(二酸化炭素の排出に起因する地球温暖化によって健康等に係る被害を受けないという利益)
は,
一般的公益に属する利益として政策全体の
中で追求されるべきものであって,
各人が個人的利益として自己の判断
のみによって追求すべき性質のものではないから,
原告適格を基礎付け

るには足りないものであるというべきである。
甲C102を始めとする
各証拠によれば,
地球温暖化の影響は大きいと推察されるものの,
原告
適格を基礎付けるのは法的利益の個別性であって,
個々人に対する影響
の大きさではないから,
そのことによって結論が左右される性質のもの
ではない。


以上のような確定通知及び変更命令に関する電気事業法の規定の趣旨及び目的,この規定が確定通知の制度を通して保護しようとしている利益の内容及び性質等を考慮すれば,同法は,この規定を通じて,環境の保全を図るという公益的見地から電気工作物の工事等を規制するとともに,大気汚染によって健康又は生活環境に著しい被害を直接的に受けるおそれのある個々の住民に対して,そのような被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解するのが相当である。したがって,火力発電所事業の対象事業実施区域の周辺に居住する住民のうち当該事業が実施されることにより大気汚染による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は,当該事業
に関する評価書に係る確定通知の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として,その取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。
他方,電気事業法が,二酸化炭素の排出に起因する地球温暖化によって健康等に係る被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保
護する趣旨を含むものと解することはできない。したがって,火力発電所事業が実施されることにより二酸化炭素の排出に起因する地球温暖化によって健康等に係る被害を受けると主張するにとどまる者は,当該事業に関する評価書に係る確定通知の取消しを求める原告適格を有しないものと解される。

エ(ア)

これを本件についてみると,証拠(甲A25,乙17)及び弁論の全趣旨によれば,神戸製鋼及びコベルコパワーは,神戸市及び芦屋市が,環境影響評価法15条所定の対象事業に係る環境影響を受ける範囲であると認められる地域(関係地域)に当たるものとして,本件事業に係る環境影響評価その他の手続をした事実が認められるところ,
原告X1

1及び原告X12を除く原告らは,
上記の関係地域内にある別紙1当事
者目録記載の住所地に居住している(前記前提事実(1)ア)。これらの住所地と本件事業の対象事業実施区域との距離関係をも考慮すれば,上
記の原告らは,
本件事業が実施されることにより大気汚染による健康又
は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に当たると認められるから,
本件確定通知の取消しを求める原告適格を有する
ものと解するのが相当である。
(イ)

また,発電所アセス省令16条は,出力が11万2500kW以上
15万kW未満である火力発電所(地熱を利用するものを除く。)の設置の工事の事業
(環境影響評価法施行令別表第一の五ホの第三欄)
に係
る環境影響評価法4条3項の判定
(環境影響の程度が著しいものとなる
おそれがあるか否かの判定)について,
①学校教育法1条に規定する学
校等が当該火力発電所を設置する場所の周囲20㎞の範囲内に存在する場合であって,
当該発電所の発電設備から排出される硫黄酸化物,窒
素酸化物又はばいじんの最大着地濃度の予測値に一定の値を加えた結果が環境基本法16条1項の規定による大気の汚染
(二酸化硫黄,
二酸

化窒素及び浮遊粒子状物質に関するものに限る。
)に係る環境上の条件
についての基準を超えるとき(9号)や,②当該火力発電所を設置する場所の周囲20㎞の範囲内に二酸化硫黄,
二酸化窒素又は浮遊粒子状物
質の大気の汚染に係る上記基準が確保されていない大気の測定点が存在する場合であって,
当該発電所の発電設備からばい煙が排出されるこ

とにより大気の汚染に係る上記基準が確保されていない二酸化硫黄,二
酸化窒素又は浮遊粒子状物質のいずれかの量が現状よりも増加するとき(23号)等には,環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあると認めるものとする旨規定する。
そうであるところ,証拠(甲D26,27,30)及び弁論の全趣旨
によれば,
原告X11は,
本件発電所の設置予定地の周囲20㎞の範囲
内にその一部が含まれる大阪市大正区に居住しており,原告X12も,本件発電所の設置予定地の周囲20㎞の範囲内に近い場所に居住している事実が認められるのであり,
本件発電所の発電規模が約130万k
Wであること(前記前提事実(2))をも考慮すれば,原告X11及び原告X12は,
本件事業が実施されることにより大気汚染による健康又は
生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に当たる
と認められるから,
本件確定通知の取消しを求める原告適格を有するも
のと解するのが相当である。
(ウ)

したがって,原告らは,いずれも,本件確定通知の取消しを求める原告適格を有する。

4
争点3(本件確定通知の違法性)について
(1)

判断枠組み
電気事業法46条の17によれば,経済産業大臣は,事業者が届け出た評
価書に係る火力発電所事業につき,環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するため特に必要があり,
かつ,
適切であると認めるときは,
変更命令をすることができ(1項),変更命令をする必要がないと認めたときは,確定通知をしなければならない(2項)。
変更命令の要件は,環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するため「特に必要があり,かつ,適切と認めるとき」という抽象的なものであって,電気事業法にも発電所アセス省令にもその要件該当性につ
いての具体的な基準は定められていない。そして,この要件該当性の審査においては,科学的,専門技術的知見に基づく総合的判断が必要とされることが明らかである。そこで,変更命令をするか確定通知をするかの判断,すなわち,変更命令をすることが,当該事業につき環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するため特に必要があり,かつ,適切であると認
められるか否かについての判断は,経済産業大臣の合理的な裁量に委ねられるものというべきである。したがって,裁判所が上記判断の適否を審査するに当たっては,その判断が裁量権の行使としてされたことを前提として,その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,又は,
事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考慮すべき事項を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となるとすべきものと解するのが相当である。なお,原告らは,変更命令をするか確定通知をするかについての経済産業大臣の判断を,①環境の保全についての適正な配慮がなされているか,②環
境の保全についての適正な配慮がなされていないと判断する場合に,変更命令をすることが適正な配慮がなされることを確保するため特に必要があり,かつ,適切であるか,③変更命令をするか否かという三つの検討,判断の段階に区分した上で,本件確定通知について裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるか否かの判断を上記①の問題として位置付ける。しかしながら,電気事業
法46条の17の文言及び上記のとおりの変更命令の要件該当性の審査の性格に照らして,上記①から③までの検討,判断をばらばらに審査すべきではなく,変更命令をすることが,上記事業につき環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するため特に必要があり,かつ,適切であると認められるか否かについての判断を全体として審査すべきものと解される。以下においては,上記の判断枠組みを前提に,本件確定通知をした経済産
業大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるかについて検討する。
(2)

大気汚染に係る検討の欠落等について
原告らは,米国等では,PM2.5の環境影響評価が実施され,その予測及び評価の手法が存在しており,我が国でも,PM2.5の環境基準が設定され,大規模排出源の新増設の際にPM2.5に係る環境影響評価を行うことが強く求められていることなどから,発電所アセス省令や経済産業大臣による方法書,準備書及び評価書の審査基準である環境影響評価方法書,環境影響評価準備書及び環境影響評価書の審査指針において,PM2.5を予測及び評価の対象項目とすべきであり,これがされていないこと自体が違法である旨主張する。
そこで検討すると,環境影響評価の項目は,主務省令(本件においては発電所アセス省令)
で定めるところによって選定するものであるところ
(環
境影響評価法11条1項),発電所アセス省令には,PM2.5を予測及び評価の対象項目とすべき旨の規定はない。したがって,上記の審査指針
等において,
PM2.
5が予測及び評価の対象項目とされていないことが,
発電所アセス省令に反して違法であるとはいえない。
また,上記主務省令は,環境基本法14条各号に掲げる事項の確保を旨として,既に得られている科学的知見に基づき,主務大臣が環境大臣に協議して定めるものとされている(環境影響評価法11条4項)。そう
であるところ,前記認定事実(1)ウ,カのとおり,基本的事項告示の制定及び点検に当たり,環境省総合環境政策局長の委嘱により組織された技術検討委員会において,PM2.5の取扱いについて検討されたが,シミュレーション方法が開発途上であるなど技術的な制約から,予測・評価が困難な面もあること,PM2.5の排出源側での測定法は一次粒子のみを対象
としており二次粒子は捕捉できないこと,二次粒子については大気中での挙動が複雑であり,シミュレーションでも十分な予測精度が確保されていないこと等の問題点が指摘されており,本件確定通知の後である平成30年11月の時点においても,環境影響評価に係る技術手法の開発を進めるべきであるとされるにとどまっているというのである。なお,この間,前
記認定事実(1)エのとおり,環境省は,平成24年3月にPM2.5に関する手法と課題を取りまとめたものであるが,この中においても,大気環境中のPM2.5濃度低減のためには二次生成粒子の削減が不可欠であるが,
二次生成粒子については大気中での挙動が複雑であること,原因物質の排出源が多様であることなどにより,その予測手法が確立されていないことなどが指摘されている(甲B14)。同月に取りまとめられた前記認定事実(1)ウの報告書にも同旨の指摘等があるところであり,環境省は,このよ

うな点も踏まえて,基本的事項告示制定の際,PM2.5を予測及び評価の対象に加えなかったものと考えられる。この点について,証拠(甲B23の2)及び弁論の全趣旨によれば,米国等において,現在,PM2.5について,二次生成を含めたモデルを使用して環境影響評価がされている事実が認められるから,これを参考にPM2.5を予測及び評価の対象に
加える方向で発電所アセス省令等を見直す余地があるものということはできる。しかし,そうであるからといって,本件確定通知がされた平成30年5月当時,我が国において,PM2.5を予測及び評価の対象に加える前に,環境影響評価に係る技術手法の開発を更に進めるものとしていたことが直ちに不合理であるとまではいえない。

そうすると,発電所アセス省令等においてPM2.5が予測及び評価の対象項目とされていないことが,環境影響評価法の委任の趣旨に反して違法であるとはいえない。

原告らは,①石炭火力発電所である本件発電所から大量のPM2.5が排出されることが当然に予想されること,②神戸市内におけるPM2.5の排出については神戸製鋼及びコベルコパワーの寄与が極めて大きいこと,③本件発電所の稼働による影響が想定される近隣地域について,本件事業に係る配慮書の手続の時点では,相当数の一般局及び年間有効測定日数未満の1局を除く全ての自排局においてPM2.5の環境基準を充足してい
なかったこと,
④兵庫県知事が,
本件方法書に対する意見として,
PM2.
5に係る調査・予測・評価の実施を求めていたことに照らすと,神戸製鋼は,本件事業に係る環境影響評価において,PM2.5を予測及び評価の対象とすべきであったのに,これをしなかった旨主張する(甲B24及び25の各1及び2は,これらの点を指摘する趣旨であると解される。)。そして,原告らは,経済産業大臣は,判断の過程において考慮すべきPM2.5の影響を考慮せずに,本件確定通知をしたものであり,その内容は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くから,本件確定通知をした判断は,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法である旨主張する。
そこで検討すると,確かに,上記①,②について,証拠(甲A9,34
の12,甲A35,甲B9,10)によれば,PM2.5の生成に関連し得る硫黄酸化物等の排出について,(ア)平成26年度の兵庫県における硫黄酸化物,窒素酸化物,ばいじんの各排出量は,順に,7988t/年,2万7120t/年,1756t/年であり,神戸市におけるばいじんの排出量は127t/年であったのに対し,神戸製鋼の既設製鉄所及び既設
発電所に係る硫黄酸化物,窒素酸化物,ばいじんの各排出量(平成19年から平成28年まで)は,順に,426~520t/年,936~1334t/年,45~142t/年であったこと,(イ)神戸製鋼は,本件発電所に係る上記各排出量
(いずれも利用率を最大の80%と想定した場合)
を,
順に,289t/年,601t/年,80t/年と予想する一方,既設製
鉄所の設備の一部休止により,既設製鉄所に係る上記各排出量が減少することから,既設製鉄所,既設発電所及び本件発電所を合わせた上記各排出量を,706t/年,1457t/年,199t/年と予想していることが認められるのであり,神戸製鋼は,従前,神戸市内におけるばいじんの排出に相当程度の寄与をしており,本件発電所の稼働により相当量の硫黄
酸化物,窒素酸化物及びばいじんが排出され,それに伴って相当量のPM2.5が生成されることが見込まれるといえる。この点に関しては,原告らが提出するエネルギー・クリーンエア研究センターの主席アナリスト作成の報告書(甲B24の1,2)に,本件評価書における予測に用いられたモデルとは異なる大気拡散モデルを用いた場合,二酸化硫黄,二酸化窒素及び浮遊粒子状物質の地上濃度の年平均値(最大着地濃度)が3.0倍~9.5倍となり,地形影響を予測した最大着地濃度が1.3倍~4.3倍となる旨の記載があるところでもある。また,本件事業に係る配慮書の手続の時点(平成25年度末)において上記③の事情があり(前記認定事実(1)キ),前記前提事実(3)イ(ウ)のとおり,上記④の事情もあったものである。これらの事情に加えて前記アで説示したような米国の状況等をも考
慮すれば,神戸製鋼又はコベルコパワーにおいて,PM2.5を予測及び評価の対象とすることも十分考えられたものということができる。しかしながら,他方,①前記アで説示したところに加えて,前記認定事実(1)イ,
オのとおり,
中央環境審議会やその下の委員会において,
PM2.
5の生成機構や発生源の寄与割合について科学的に解明すべき課題が残さ
れている,PM2.5の削減対策については,固定発生源や移動発生源に対してこれまで実施してきた粒子状物質全体の削減対策を着実に進めることがまず重要であるとされているといった指摘がされていること,②本件評価書においては,排煙処理設備の改善を図ること(甲A9)を前提に,二酸化硫黄,二酸化窒素及び浮遊粒子状物質のいずれについても,本件発
電所の寄与濃度の年平均値がバックグラウンド濃度(予測地点の平成23年度から平成27年度における濃度の年平均値の平均値)の2%以下(後2者については1%未満)になる旨が予測されており(甲A34の11の2),上記報告書の記載を踏まえても,その予測が特に不合理であると直ちにはいえないこと
(本件準備書においても同様の予測がされているが
(乙

32),本件環境大臣意見においてもその予測が不合理である旨の指摘はされていない(甲A14の1,2。環境大臣の意見書の案(甲A49の1から4まで)においても同様である。)。),③本件発電所の稼働による影響が想定される近隣地域におけるPM2.5の排出状況は,平成27年度末の時点では相当程度改善していたこと
(前記認定事実(1)キ)
等に照ら
すと,本件確定通知がされた平成30年5月の時点においては,本件評価書のように,PM2.5を直接環境影響評価の項目とするのではなく,こ
れと関連し得る二酸化硫黄,二酸化窒素及び浮遊粒子状物質を環境影響評価の項目とすることが一概に不合理であったとまではいい難い。
そうすると,PM2.5を環境影響評価の項目に加えていない点をもって変更命令をすべきであるとはしなかった経済産業大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとは認
められない。

原告らは,大気汚染に関する調査・予測・評価地点には,一般局のみならず自排局も加えなければならないのに,本件準備書における大気汚染に関する調査・予測・評価地点は全て一般局であったから,本件評価書は,
大気汚染物質による環境影響の評価の前提となる手法が誤っていたものである旨主張する。
そこで検討すると,発電所アセス省令23条1項2号,別表第七は,火力発電所についての環境影響評価の参考となる調査及び予測の手法として,施設の稼働による排ガスに関し,硫黄酸化物,窒素酸化物及び浮遊粒子状
物質のいずれについても,各物質の拡散の特性を踏まえ,当該物質に係る環境影響を受けるおそれがある地域における当該物質に係る環境影響を予測し,及び評価するために適切かつ効果的な地点を調査地点とすることを定めている。そして,証拠によれば,①一般局は,一定地域における大気汚染状況の継続的把握,発生源からの排出による汚染への寄与及び高濃度
地域の特定,汚染防止対策の効果の把握といった,常時監視の目的が効率的に達せられるよう配置されるのに対し,自排局は,自動車排出ガスによる大気汚染の状況が効率的に監視できるよう,道路,交通量等の状況を勘案した配置地点の類型化を行い設置されること(乙35),②一般社団法人日本環境アセスメント協会が環境省の平成27年度環境影響評価技術手法調査検討業務報告書として作成した環境アセスメント技術ガイド大気環境・水環境・土壌環境・環境負荷においては,大気質の状況につ
いて,住宅地等の一般的な生活空間における大気汚染の状況を把握するためには,事業実施区域に最も近隣の一般局のデータを基本として収集し,道路沿道における大気汚染の状況については,対象事業により影響を及ぼすと考えられる路線沿線の自排局のデータの収集を基本とすることとされていること(乙36)が認められる。

火力発電所の稼働による大気汚染物質の環境影響評価は,交差点や道路といった特定の地点ではなく,発電所周辺の一定の地域につき,発電所の稼働によって,住宅地等の一般的な生活環境にどのような影響が及ぶかを評価するものであるから,調査,予測及び評価を行う地点としては,一定地域における大気汚染状況の継続的把握,発生源からの排出による汚染へ
の寄与等を監視することを目的として設置される一般局を選定するのが適切かつ効果的であるといえる。他方,自排局は,自動車排出ガスによる大気汚染の状況を効率的に監視するという観点から配置されるものであり,自排局における大気汚染物質の状況は自動車の交通量等により変動すると考えられることからすると,火力発電所の稼働による環境影響の調査,予
測及び評価を行う地点として自排局を選定することが必ずしも適切かつ効果的であるとまではいえない。
そうすると,大気汚染に関する調査・予測・評価地点に自排局を加えないことが誤りであるとは認められず,原告の上記主張は採用することができない。


原告らは,本件評価書は,大気汚染物質の濃度の年平均値及び日平均値の影響予測が本件発電所の立地地域の複雑な地形の影響を反映していないこと,日平均値等の予測が本件発電所の影響のみについてしかされていないことなどといった点で極めて不十分であり,その結果,周辺住民の健康に対する影響を著しく過小評価したものとなっている旨主張する。そこで検討すると,証拠(甲A34の11の2,乙48,49)によれ
ば,本件評価書においては,大気汚染物質の濃度の年平均値及び日平均値を予測した上で,更に地形影響の予測もされている事実,この地形影響の予測手法は,財団法人電力中央研究所が開発した数値モデルによるものである事実が認められるのであり,このような予測の手法が不合理であるとはいえない。また,上記証拠によれば,上記の年平均値及び日平均値の予
測において,神戸製鋼所の既設製鉄所及び既設発電所の運転による影響を含んだ大気汚染物質の濃度がバックグラウンド濃度として設定された上で予測が行われている事実が認められるのであり,日平均値等の予測が本件発電所の影響のみについてしかされていないという原告らの上記主張は前提を欠く。そして,そのほかに原告らの上記主張を裏付ける的確な証拠は
ない。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。

以上によれば,大気汚染に係る検討の欠落等をいう原告らの主張はいずれも採用することができず,これらの主張を前提として,本件確定通知をした経済産業大臣の判断が重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照
らし著しく妥当性を欠くものと認めることはできない。
(3)

二酸化炭素の排出に関する環境影響評価の誤り及び環境の保全について
の適正な配慮の欠如について

原告らは,本件確定通知の違法性を根拠付ける事情として,二酸化炭素の排出に関する環境影響評価の誤り及び環境の保全についての適正な配慮の欠如を主張する(前記第2の4(3)(原告らの主張の要旨)ウ)。しかしながら,前記3で説示したとおり,確定通知及び変更命令に関する電気事業法の規定は,具体的な特定の地域における二酸化炭素排出量の増加を抑制することなどをその趣旨及び目的とするものではないから,原告らの上記主張は,自己の法律上の利益に関係のない違法を主張するものであって,その点において採用することができない(行政事件訴訟法10
条1項)。
ただし,審理の経過に鑑み,念のため,原告らの上記主張についても検討する。

経済産業大臣と環境大臣は,我が国が日本の約束草案を提出し,パリ協定が採択された後の平成28年2月に,引き続き,局長級会議取りまとめに沿って,電気事業分野における地球温暖化対策に取り組むことを合意している(前記認定事実(2)オ(ア))。局長級会議取りまとめは,環境アセスメント(環境影響評価その他の手続。以下同じ。)における二酸化炭素の取扱いについて,地球温暖化問題の性格上,全体で管理する枠組みにより
対策の実効性を確保することが基本となるとしつつ,二酸化炭素排出量が非常に大きい火力発電所の個々の建設に係る環境アセスメントにおいて,事業者が利用可能な最良の技術(BAT)の採用等により可能な限り環境負荷低減に努めているかどうか,また,国の二酸化炭素排出削減の目標・計画と整合性を持っているかどうかについて,必要かつ合理的な範囲で国
が審査するとして,その観点を定めている(同ア(エ))。
そこで,まず,上記の合意がされた平成28年の時点における局長級会議取りまとめの合理性について検討する。局長級会議取りまとめは,パリ協定が採択される前の平成25年に合意されたものであるが,上記の平成28年2月の合意は,長期エネルギー需給見通しが策定され,我が国が日
本の約束草案を提出し,パリ協定が採択された後にされたものであることから,経済産業大臣と環境大臣は,局長級会議取りまとめに沿った対策を講ずることにより,温室効果ガスの排出削減に関する国の目標を達成することができるとの見通しに立っていたものであると解される(政府が同年5月に策定した地球温暖化対策計画においても,火力発電における最新鋭の発電技術の導入促進が温室効果ガスの排出削減対策・施策として定められている(前記認定事実(2)カ(イ),(ウ)b)。)。そして,局長級会議取りまとめは,個別の火力発電所における二酸化炭素の排出削減に関する合意ではなく,省エネルギー,再生エネルギーの導入,二国間オフセット・クレジット等の総合的な対策に関する合意であるところ,本件全証拠によっても,局長級会議取りまとめの内容が,平成28年の時点で不合理であっ
たものと認めることはできない。仮に,局長級会議取りまとめの内容とは異なり,石炭火力発電所の新設・増設を一切しないこととすれば,その限りで二酸化炭素排出量の増加が抑制されることになるが,電力需要が大幅に減少せず,既存の発電所が稼働を継続できない状況に至った場合,その電力需要に見合う電力をどのようにして供給するかという問題が生ずる。
その場合に,再生可能エネルギー,原子力,LNG火力のほかに,石炭火力という選択肢を一定の条件付きで残す旨の政策判断をしたことが,平成28年の時点において,一概に不合理であったとまではいい切れない。次に,本件確定通知がされた平成30年5月の時点における局長級会議取りまとめの合理性について検討する。この点に関連して,環境省は,同
年3月の時点において,電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価として,我が国の2030年度の削減目標等に照らせば,石炭火力発電からの二酸化炭素排出量を2.2~2.3億t程度に削減する必要があるのに対し,石炭火力発電所の新設・増設計画が多数存在しており,これらの計画が全て実行された場合には,石炭火力発電からの二酸化炭素排
出量が上記の排出量を6800万t程度超過する可能性があるとの懸念を示していた(前記認定事実(2)ク)。しかしながら,上記の超過する可能性は,石炭火力発電所の新設・増設計画が全て実行されるということに加えて,再生可能エネルギーの導入が低調である,既存の老朽石炭火力発電所が稼働から45年で一律に廃止される等の仮定が重なった場合のものとして指摘されたものである。また,環境省による上記の評価においては,電力の低炭素化をめぐる世界の潮流として,石炭火力発電の排出係数が最新
鋭のものでもLNG火力発電の約2倍であり,国際機関の報告書等においても,パリ協定の目標達成のためには石炭火力発電の段階的廃止が必要であるとの指摘があることなどを踏まえながらもなお,石炭火力発電所の新設・増設を一切すべきでないとはされていないし,局長級会議取りまとめが合理性を失ったものともされていない(甲C34)。そうすると,本件
確定通知がされた平成30年5月の時点においても,局長級会議取りまとめが一概に合理性を失っていたものとまでいうことはできず,これに準拠してされた個々の火力発電所の設置に関する判断が,政策の当否はともかくとして,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法と評価されるまでには至らない。


前記前提事実(3)オのとおり,本件評価書には,①超々臨界圧(USC)発電設備を導入すること,②省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標達成に向けて計画的に取り組み,2030年度に向けて確実に遵守するとともに,ベンチマーク指標の目標を達成できないと判断した場合には,本件
事業の見直しを検討すること,③自主的枠組み参加事業者である関西電力に電力を全量供給すること,④毎年度二酸化炭素排出量を適切に把握すること,⑤将来の二酸化炭素回収・貯留(CCS)の導入に向けて,所要の検討を継続的に行うこと,⑥長期的な二酸化炭素排出削減対策について,今後の国内外の動向を踏まえ,所要の検討を行い,適切な範囲で必要な措
置を講ずることなどが記載されている。
局長級会議取りまとめにおいては,発電設備の導入に当たって,事業者は,BATの参考表に掲載された商用プラントとして着工済みの発電技術及び商用プラントとしての採用が決定し環境アセスメント手続に入っている発電技術(まだ運転開始をしていない最新鋭の発電技術)についても採用の可能性を検討した上で,経済性・信頼性において問題なく商用プラントとして既に運転開始をしている最新鋭の発電技術以上のものとするように努めるべきものとされているところ(前記認定事実(2)ア(エ)(I)),上記①の超々臨界圧(USC)発電設備は,BATの参考表に掲載されている商用プラントとして着工済み(試運転期間等を含む)の発電技術及び商用プラントとしての採用が決定し環境アセスメント手続に入っている発電技術に相当するものである。そして,上記②から⑥までの記載も,いずれも局長級会議取りまとめや地球温暖化対策計画の内容に沿ったものである。このうち,上記③について,原告らは,関西電力は,別件の民事訴訟において,必ずしも全量供給を受けるわけではない旨主張しているなどというが,本件全証拠によっても,本件確定通知の時点で上
記③に反する客観的事実があったとか,経済産業大臣においてその事実を認識することができたなどといった事情まではうかわがわれない。また,上記⑤の検討の内容は明らかにされていないが,平成30年3月時点において,二酸化炭素回収・貯留(CCS)は,我が国では商用化に至っておらず,開発・実証等が進められている段階であったこと(甲C34)に照
らすと,本件評価書に具体的な検討の内容が記載されていないのはやむを得ないものといわざるを得ない。CCSを導入する際にはコストが発生することは当然に予想されるが,そうであるからといって,神戸製鋼及びコベルコパワーが,CCSを導入する意思が全くないのに本件評価書に上記⑤の記載をしたものとまでは認めるに足りない。さらに,上記⑥の検討や
措置の内容も明らかにされていないが,これは事柄の性質上当然のことである(二酸化炭素の排出削減対策は,石炭火力発電所の設置段階にとどまらず,稼働段階も含めて総合的に検討・実施されるべきものであり,
また,
技術の進展等に応じてその対策の内容も変化すべきものである。)。以上のとおり,二酸化炭素排出削減等に関する本件評価書の内容が局長級会議取りまとめや地球温暖化対策計画の内容に沿ったものであることなどに鑑みると,本件確定通知をした経済産業大臣の判断,すなわち,変更
命令をすることが,本件事業につき環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するため特に必要があり,かつ,適切であるとは認められないとの判断が,
本件確定通知がされた平成30年5月の時点において,
重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認めることはできない。


(ア)

原告らの主張について
原告らは,石炭火力発電所を新設すること自体が,我が国の温室効果ガス排出削減の目標や計画と整合しない旨主張するほか,局長級会議取りまとめは,パリ協定の採択等によって2050年頃には二酸化炭素の
排出実質零の実現が求められることになったことを踏まえたものに改定されるべきものであり,国の目標と整合せず,火力発電所の環境影響評価の判断基準として合理性を欠いている旨主張する。
しかしながら,我が国が日本の約束草案を提出し,パリ協定が採択された後の平成28年5月に政府が策定した地球温暖化対策計画において
は,電力業界の低炭素化の取組についての政策的対応として,省エネ法に基づき,発電事業者に,新設の発電設備について,発電設備単位で,エネルギーミックスで想定する発電効率の基準を満たすこと(石炭については42.0%以上)を求めることとされていたものである(前記認定事実(2)カ(ウ)a)。すなわち,地球温暖化対策計画において,石炭火
力発電所の新設が一概に否定されていないことは明らかであるから,本件確定通知がされた平成30年5月の時点において,石炭火力発電所を新設すること自体が,我が国の当時の温室効果ガス排出削減の目標や計画と整合しないものとはいえない。
また,原告らの上記主張は,要するに,局長級会議取りまとめ,長期エネルギー需給見通し,自主的枠組み,地球温暖化対策計画等は,いずれも石炭火力発電所の新設を容認するものである以上,これによっては我が国の2030年度及び2050年度の削減目標を達成することができないという趣旨をいうものとも解される(地球温暖化に関する基本的認識について述べる甲C102等も同趣旨を指摘するものと解される。。)
しかしながら,前記イで説示したとおり,電気事業分野における地球
温暖化対策の進捗状況の評価として,石炭火力発電所の新設・増設計画が全て実行された場合には,石炭火力発電からの二酸化炭素排出量が目標達成のためのそれを超過する可能性があるとの懸念を示した環境省も,石炭火力発電所の新設・増設を一切すべきでないとはしていない。そうすると,石炭火力発電所の新設が一概に否定されるべきものではないこ
とを前提に,
本件発電所における二酸化炭素の排出削減対策に着目して,
事業者に利用可能な最良の技術(BAT)が採用されることなどを踏まえて,本件確定通知をした経済産業大臣の判断が,平成30年5月の時点において,地球温暖化対策としての政策の当否を超えて,重要な事実の基礎を欠くとか,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認める
ことはできない。原告らの主張によれば,たとえBATが採用されるとしても,本件発電所が石炭火力発電所である以上,本件事業の中止や燃料種をLNG等に変更すること等を内容とする変更命令をしない限り,経済産業大臣の判断が違法であるということになる。この主張は,結局石炭火力発電所の新設・増設は一切許されないというのに等しいが,以
上説示したところに照らして,採用することができない。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。なお,上記のような環境省の懸念については,火力発電所の無秩序な新設・増設計画を抑制することで対処するしかないものの,現行の電気事業法では火力発電所の設置又は変更の工事が届出制であることから,そのような対処が困難であることは否めない。火力発電所の設置又は変更の工事を届出制から許可制に改めるなどすればともかく,そうでなけ
れば,現行法の範囲内で採り得る手段は限られており,原告らの主張を採用することは困難といわざるを得ない。
(イ)

原告らは,本件評価書に記載された環境保全措置の内容は,二酸化炭素の排出削減に具体的に結び付くものではなく,実行可能な範囲で二酸化炭素の排出を削減するものとなっていない旨主張するが,前記ウで説
示したところに照らして採用することができない。
なお,原告らは,本件発電所の発電方式である超々臨界圧発電は,発電効率及び二酸化炭素排出原単位において,石炭ガス化複合発電に劣るのであり,石炭火力発電の中で最も効率的であるともいえない旨も主張する。
しかしながら,
石炭ガス化複合発電は,
BATの参考表において,

開発・実証段階の発電技術とされており,現時点において,これを採用しなければならないとはいえない。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
(4)

燃料種の検討の欠如について
原告らは,①神戸製鋼が,本件事業に係る配慮書の手続において,温室効果ガス等及びPM2.5を計画段階配慮事項にしなかったこと,及び燃料種に係る複数案を検討しなかったことは違法であり,本件事業に係る配慮書の手続には重大な違法があるから,本件事業に係る環境影響評価その他の手続には手続の重大な瑕疵があるものとして,本件確定通知は違法と
なる,②本件評価書には燃料種に係る複数案の検討結果が記載されていないことから,変更命令の要否の検討に際して経済産業大臣が考慮すべき事実が適切に示されていないのであり,本件確定通知をした経済産業大臣の判断は,重要な事実の基礎を欠き,判断の過程において考慮すべき事項を考慮しないことによりその内容が社会通念上著しく妥当性を欠くものであるから,裁量権の範囲を逸脱するものとして違法である旨主張する。イ
原告の前記アの主張のうち,温室効果ガス等を計画段階配慮事項にすべき点をいうものや温室効果ガス等の観点から燃料種に係る複数案を検討すべき点をいうものは,自己の法律上の利益に関係のない違法を主張するものであって,その点において採用することができないが(行政事件訴訟法10条1項),この点を措いて,以下検討する。

(ア)

環境影響評価法3条の2第1項は,第一種事業(火力発電所事業はこれに当たる。同法2条2項1号ホ)を実施しようとする者は,当該事業に係る計画の立案の段階において,当該事業が実施されるべき区域その他の主務省令で定める事項を決定するに当たっては,当該主務省令で定めるところにより,1又は2以上の事業実施想定区域における当該事業
に係る環境の保全のために配慮すべき事項(計画段階配慮事項)についての検討を行わなければならない旨を定める。これを受けて,当該主務省令である発電所アセス省令3条は,①計画段階配慮事項についての検討に当たっては,構造等に関する複数案を適切に示すものとする(ただし,構造等に関する複数案の設定が現実的でないと認められることその
他の理由により構造等に関する複数案を設定しない場合は,その理由を明らかにした上で,単一案を設定するものとする。)旨,及び②構造等に関する複数案の設定に当たっては,事業を実施しない案を含めた検討が現実的であると認められる場合には,当該案を含めるよう努めるものとする旨を定める。また,発電所アセス省令5条は,計画段階配慮事項
の選定は,当該事業に伴う環境影響を及ぼすおそれがある要因(影響要因)により重大な影響を受けるおそれがある環境要素に関し,当該影響要因が及ぼす影響の重大性について客観的かつ科学的に検討するものとする旨などを定め(1項),その環境要素の中には,大気質や温室効果ガス等が含まれる(3項)。他方,発電所アセス省令には,特定の環境要素を必ず計画段階配慮事項にしなければならない旨の規定や,火力発電所事業について燃料種に関する複数の案を設定すべき旨の規定はない。
そうすると,神戸製鋼が,本件事業に係る配慮書の手続において,温室効果ガス等及びPM2.5を計画段階配慮事項にしなかったこと,及び燃料種に係る複数案を検討しなかったことが,環境影響評価法及び発電所アセス省令に違反して違法であるとはいえない。
甲A37は,計画段階配慮事項の検討に当たり,当該事業により重大
な影響を受ける環境要素に着目し,事業による環境影響を回避・低減するという観点から,実質的に意味のある複数案が選定されることが要請されているところ,本件事業における最も重大な環境影響の1つである温室効果ガス排出量の最大限の削減という観点から意味のある複数案(燃料種に関する複数案)が設定されていたとはいえないから,配慮書
の手続には違法があると指摘する。その指摘は傾聴に値するが,発電所アセス省令が上記のとおりの定めを置くにとどまることを踏まえると,燃料種に関する複数案を設定していないことが直ちに違法とまではいい難い。
したがって,本件事業に係る環境影響評価その他の手続には手続の重
大な瑕疵があるものとして,本件確定通知は違法となる旨の原告らの主張(前記ア①)は,採用することができない。
(イ)

前記(2)で説示したとおり,
PM2.5を環境影響評価の項目に加えて
いない点をもって変更命令をすべきであるとはしなかった経済産業大臣
が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとは認められないのであるから,PM2.5の影響に関して,本件評価書に燃料種に係る複数案の検討結果が記載されていないからといって,本件確定通知をした経済産業大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は判断の過程において考慮すべき事項を考慮しないことによりその内容が社会通念上著しく妥当性を欠くものとは認められない。また,
前記(3)で説示したとおり,
石炭を燃料とする場合を前提として

も,本件確定通知をした経済産業大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとは認められないから,二酸化炭素の影響に関して,本件評価書に燃料種に係る複数案の検討結果が記載されていないからといって,本件確定通知をした経済産業大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠き,又は判断の過程において考慮
すべき事項を考慮しないことによりその内容が社会通念上著しく妥当性を欠くものとは認められない。
したがって,本件評価書に燃料種に係る複数案の検討結果が記載されていないことから,本件確定通知をした経済産業大臣の判断は,重要な事実の基礎を欠き,判断の過程において考慮すべき事項を考慮しないこ
とによりその内容が社会通念上著しく妥当性を欠くものとなる旨の原告らの主張(前記ア②)は,採用することができない。(5)

環境保全措置の履行可能性について
原告らは,経済産業大臣は,本件事業が経済性,事業性を欠き,環境保全
措置の履行可能性がないこと(甲Ⅾ11参照)を認識していたにもかかわらず,本件確定通知をしたものであり,裁量権の範囲を逸脱したものとして違法である旨主張する。
しかしながら,そもそも,環境影響評価法及び電気事業法において,経済産業大臣が変更命令をするか確定通知をするかを判断するに当たり,対象と
なっている事業の経済性,事業性を審査すべき旨の規定は存在しない。当該発電所が設置される前の環境影響評価その他の手続の段階において,経済産業大臣が,当該発電所が設置された後に行われる発電事業の経済性,事業性を予測・評価すること自体が極めて困難であると考えられること,上記段階において当該発電事業の経済性,
事業性がないことが見込まれるのであれば,
事業者は当該発電事業を実施しないものと考えられるのであり,事業者が当該発電事業を実施するものとして評価書を提出した以上,通常は当該発電事業に経済性,事業性がないとはいい難いことからすると,経済産業大臣が上記の判断をするに当たり,対象となっている事業の経済性,事業性を審査すべきものであるとまでは解し難い。
したがって,原告らの上記主張は前提を欠き,採用することができない。
(6)

環境影響評価その他の手続の瑕疵等について


(ア)

準備書の記載等について
原告らは,本件準備書には,燃料種の比較検討の結果が記載されていないから,本件評価書の内容には瑕疵がある旨主張する。
しかしながら,
前記(4)で説示したところに照らせば,
本件準備書に上
記の記載がないからといって,本件評価書の内容に瑕疵があるものとは
いえない。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
(イ)

原告らは,本件準備書には,本件事業による汚染物質の排出量の増減が記載されていなかった上,市民は,神戸製鋼の説明によって,本件事
業により環境負荷が低減すると意図的に誤信させられ,本件準備書に対して正当な評価を行うことができなかった旨主張する。
しかしながら,発電所アセス省令23条1項2号は,火力発電所事業に係る環境影響評価の調査,予測及び評価の手法の選定における参考項目に係る調査及び予測の手法の選定について,同令別表第七に掲げる参
考となる調査及び予測の手法を勘案して行う旨を定めるところ,同別表は,参考項目のうち,硫黄酸化物,窒素酸化物及び浮遊粒子状物質で施設の稼働による排ガスを影響要因とするものの調査すべき情報として,それぞれの濃度の状況を挙げているが,排出量を調査すべきものとはしていない。そして,環境影響評価法及び電気事業法等の関係法令において,ほかに上記各物質の排出量の増減を調査し,準備書に記載すべき旨を定めた規定は見当たらない。そうすると,本件準備書に上記各物質の排出量の増減を記載すべきものであったということはできない。
また,本件全証拠によっても,市民が,神戸製鋼の説明によって,本件事業により環境負荷が低減すると意図的に誤信させられた事実を認めるに足りない。

なお,この点について,証拠(甲A26)によれば,神戸製鋼が平成27年に配布した神戸製鉄所火力発電所(仮称)設置計画の概要-地域と共生する都市型発電所-と題する資料に,大気保全対策として,
(1)新設発電所における対策
(本件発電所における対策),
(2)既設製鉄所における低減が記載され,後者の見出しの下に,

製鉄上工程集約により,高炉,製鋼工場,自家用発電設備の一部を休止します。

と記載され,その下に

周辺環境への影響を現状より低減します。

との記載があり,更にその下に,硫黄酸化物,窒素酸化物及びばいじんについて,最大着地濃度の予測結果と発電所周辺の一般局の状況として,現状と将来の濃度を記載したグラフが掲載されている事実が認めら
れる。これらの記載は,その内容等に照らして,本件事業のみならず,神戸製鋼の既設製鉄所における対策等も合わせた結果,硫黄酸化物及び窒素酸化物等の濃度が減少することを指すものと解される。そして,本件全証拠によっても,
このことが虚偽であるものとは認めるに足りない。
したがって,神戸製鋼が上記記載のある資料を配布したり,上記記載に
類する説明をしたりしたからといって,市民を意図的に誤信させたということはできない。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。(ウ)

原告らは,本件準備書には,接地逆転層が形成された場合の二酸化硫黄及び二酸化窒素の測定濃度が記載されていなかった旨主張する。しかしながら,
環境影響評価法及び電気事業法等の関係法令において,
原告らの主張する事実を記載すべき旨の規定は見当たらない。

したがって,原告らの主張する事実が本件準備書に記載されていないことから,環境影響評価その他の手続に瑕疵がある旨をいう原告らの上記主張は採用することができない。
(エ)
原告らは,本件準備書には,本件発電所の予定地が,二酸化窒素について1時間値の1日平均値が0.
04ppmから0.
06ppmまでのゾーン
内であり,現状より汚染を悪化させてはならない地域であることが記載されていなかった旨主張する。
しかしながら,
環境影響評価法及び電気事業法等の関係法令において,
原告らの主張する事実を記載すべき旨の規定は見当たらない。

なお,証拠(甲B11)によれば,二酸化窒素に係る環境基準は,1時間値の1日平均値が0.
04ppmから0.
06ppmまでのゾーン内又は
それ以下であることであるから,
環境基準との関連性という観点からも,
原告らの主張する事実を記載すべきであるとはいえない。上記の環境基準等を定める
二酸化窒素に係る環境基準について
(昭和53年環境庁

告示第38号)
においては,
環境基準に加えて,
その達成期間等として,
1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内にある地域にあっては,原則として,このゾーン内において,現状程度の水準を維持し,又はこれを大きく上回ることとならないよう努めるものとする。と定められている(甲B11)。この定めが環境基準ではな

くその達成期間等に関するものであること,これが努力目標であることは明らかであり,この定めについて準備書に記載すべきであるとはいえない。また,この定めは現状程度の水準を維持し,又はこれを大きく上回ることとならないよう努めるとしており,僅かでも現状より汚染を悪化させてはならないという趣旨でないことは明らかであるから(乙34号証も参照)この定めがあるからといって原告らの主張する事実を,
準備書に記載すべきであるとはいえない。

したがって,原告らの主張する事実が本件準備書に記載されていないことから,環境影響評価その他の手続に瑕疵がある旨をいう原告らの上記主張は採用することができない。

(ア)

市民意見,本件知事意見,本件環境大臣意見及び本件勧告について原告らは,市民意見1199通の大部分が,大気汚染や水銀の排出による地域環境の悪化や大量の二酸化炭素の排出による温暖化への寄与を懸念し,石炭を燃料とする火力発電所の設置に反対の立場をとるものであったが,神戸製鋼及びコベルコパワーは,これらの意見に何ら配意せずに本件評価書を作成したから,その内容には瑕疵がある旨主張する。しかしながら,そもそも,環境影響評価法21条1項は,事業者が同
法18条1項の意見に配意して準備書の記載事項について検討
を加え,当該事項の修正を必要とすると認めるときは,同法21条1項各号所定の措置をとらなければならない旨を定めているものであって,当該意見を当然に受け入れて準備書の記載事項を修正することが義務付けられているものでないことは文理上明らかである。そうすると,多数
の市民意見が石炭を燃料とする火力発電所の設置に反対の立場をとるものであったとしても,石炭を燃料とする火力発電所の設置を行うことを前提とする評価書を作成することが同項に反するものであるとはいえない。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。

(イ)

原告らは,本件知事意見は,①微小粒子状物質について,原因物質の排出抑制を行うとともに,削減対策等に関する最新の知見を収集し,必要に応じて更なる環境保全措置を検討すること②二酸化炭素を多,量に排出する施設の設置者として,発電施設の導入時点において採用可能な最も高効率で二酸化炭素排出量の少ない発電技術を導入するとともに,二酸化炭素総排出量を施設の供用によって増加させないこととしているが,
神戸製鋼及びコベルコパワーは,
本件評価書の作成に当たり,
この点を勘案しなかったから,その内容には瑕疵がある旨主張する。そこで検討すると,証拠(甲A16,乙37)によれば,コベルコパワーは,本件評価書において,a本件知事意見のうち上記①の点に対し
て,
本計画においては,施設の稼働に伴う排ガスについては,国内最高レベルのばい煙処理施設を導入する計画とし,微小粒子状物質(PM2.5)の原因物質の一部である硫黄酸化物,窒素酸化物,ばいじんの濃度及び排出量を可能な限り低減します。また,PM2.5の環境影響及び対策に関する今後の動向を踏まえて,必要に応じて追加の環境保全措置を検討する等,適切に対応してまいります。との見解を示し,b大気環境の保全について,排煙脱硫装置,排煙脱硝装置及び集じん装置を採用することにより,排ガス中の硫黄酸化物,窒素酸化物,ばいじん及び重金属等の微量物質の濃度及び排出量を低減する計画とした上で,
さらに,
PM2.5に係る最新の知見を踏まえて,必要に応じて追加の環境保全
措置を含めた適切な対応(この点は,事柄の性質上本件評価書を作成した時点では具体的に明らかにならないものである。を行うとの考え方を)
示した事実が認められる。
また,証拠(乙37)によれば,コベルコパワーは,本件評価書において,
a本件知事意見のうち上記②の点に対して,
本件事業の計画では,

BATの参考表(平成26年4月時点)の経済性・信頼性において問題なく商用プラントとして既に運転開始をしている最新鋭の発電技術である超々臨界圧(USC)
発電設備を採用するが,
設計発電端効率は,
BATの参考表(平成29年2月時点)の商用プラントとして着工済み(試運転期間等を含む)の発電技術及び商用プラントとしての採用が決定し環境アセスメント手続きに入っている発電技術に相当する43%を採用する旨や設備の適切な維持管理を図ることにより,二酸化炭素
排出量の抑制に努めるとともに,施設の供用による二酸化炭素総排出量を増加させないようにする旨などの見解を示し,b本件発電所から関西電力への送電に伴い,関西電力において従来稼働していたコストの高い既存の石油及びLNG火力発電所の稼働が抑制されると想定されることや,神戸製鋼の鉄鋼事業の上工程を集約することに伴う効率化等により
二酸化炭素排出量が低減されることなどから,二酸化炭素排出量は総体として現状より低減する旨を具体的な数値を踏まえて示した事実が認められる。
以上によれば,神戸製鋼及びコベルコパワーは,本件知事意見のうち原告らの指摘に係る部分をいずれも勘案したものというべきであるから,
原告らの上記主張は採用することができない。
(ウ)

原告らは,
本件環境大臣意見は,
2030年度及びそれ以降に向けた本事業に係るCO2排出削減の取組への対応の道筋が描けない場合には,事業実施を再検討することを含め,事業の実施についてあらゆる選択肢を勘案して検討することとしているが,経済産業大臣はこれを勘案しなかったから,本件評価書の内容には瑕疵がある旨主張する。
しかしながら,そもそも,証拠(甲A14の1,2)によれば,本件環境大臣意見は,上記部分のほかに,本件事業を実施することを前提とする温室効果ガス削減への取組(例えば,二酸化炭素排出量を毎年度適
切に把握すること等)
,大気環境,水環境,廃棄物等についての各論に関
する部分等を含むものである事実が認められる。原告らの上記主張に係る部分は,その記載内容自体に照らしても,総論的に,また将来的に,2030年度及びそれ以降の二酸化炭素排出削減の取組への対応が描けない場合には,事業実施の再検討を含め,あらゆる選択肢を勘案して検討することが重要である旨をいうものにすぎず,本件評価書の作成に当たり直ちに事業を再検討すべき旨をいうものであるとは解されない。また,証拠(甲A15)によれば,経済産業大臣は,本件環境大臣意見を踏まえて,本件勧告において,温室効果ガスについて,現状では省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標達成が見込まれる状況であるが,自らがベンチマーク指標の目標を達成できないと判断した場合には,本件
事業の見直しを検討することを勧告した事実が認められる。
したがって,経済産業大臣は,本件環境大臣意見のうち上記部分を勘案したものというべきであり,原告らの上記主張は採用することができない。
(エ)a

原告らは,次のとおり,神戸製鋼及びコベルコパワーは本件勧告に対応しなかったから,本件評価書の内容には瑕疵がある旨主張する。①

本件勧告は,水銀の大気への排出について,必要に応じて追加の
環境保全措置を含めた対応を求めているが,本件評価書においてその点について検討された形跡すらない。



本件勧告は,
微小粒子状物質について,原因物質の排出抑制を行うとともに,削減対策等に関する最新の知見を収集し,必要に応じて更なる環境保全措置を検討することとしているが,神戸製鋼及びコベルコパワーは,これをしなかった。


本件勧告は,
2030年以降に向けて,更なる二酸化炭素排出削減を実現する見通しをもって,計画的に実施することとしている
が,本件評価書においては,削減の具体的な見通しも削減策を計画的に実施することについても示されていない。④

本件勧告は,
本事業は,人口密集地であり,かつ,既存の製鉄所及び発電所が存在する地域において,環境負荷を増大させる事業であること等から,関係する地方公共団体の意見を十分勘案するとともに,地域住民等の関係者の理解・納得が得られるよう,誠意を持って丁寧かつ十分な説明を行うことを求めているが,神戸製鋼及
びコベルコパワーは,これを踏まえた対応をとらなかった。
b
しかしながら,本件勧告のうち前記aの①ないし④で引用された部分は,その内容自体からして,いずれも,本件発電所の供用開始後の将来において,その時点の状況に応じて必要とされる環境保全措置を講ずることや,将来に向けた二酸化炭素排出削減の計画的実施,地域
住民等の理解を得るための説明等の継続的実施を求めたものであって,神戸製鋼及びコベルコパワーに対し,本件評価書の作成に当たり,これらの勧告に対応した具体的な措置等を検討し,記載することを求めたものではない。
したがって,原告らの前記aの主張は採用することができない。


環境大臣の意見の修正について
原告らは,環境省は,環境大臣が本件配慮書についての意見や本件準備書についての意見を述べるのに先立ち,経済産業省に意見書の案を送っており,同省の反対等を受けて,環境大臣の意見は大幅に後退したものとなった。これは,環境影響評価法及び電気事業法が環境大臣の意見を求める趣旨を没却するものであって,本件事業に係る環境影響評価その他の手続は違法なものというべきである上,本件確定通知をした経済産業大臣の判断は,誤った内容の環境大臣の意見を考慮してされたものであるから,実体的にも違法である。旨主張する。そして,証拠(甲A43から45
まで,48,49。枝番を含む。)によれば,環境大臣が本件配慮書や本件準備書に対する意見を述べるのに先立ち,環境省が経済産業省に意見書の案を送付しており,その内容について上記両省の担当者の間で意見交換がされた結果,本件配慮書や本件準備書に対する環境大臣の意見は,上記の案とは一部異なる内容のものになった事実が認められる。
しかしながら,環境大臣が,環境影響評価法及び電気事業法に基づいて配慮書や準備書について意見を述べるに当たり,環境省の担当者において
経済産業省の担当者の意見を聴くことは,当該の配慮書や準備書及び当該事業そのものの趣旨及び内容を正確に理解した上で適切な意見を述べることに資する面があるものであって,上記各法が環境大臣の意見について規定する趣旨に反するものとは必ずしもいえない。環境大臣は,自らの意見の案について経済産業省からどのような意見が述べられたとしても,自ら
の意見を修正することを強いられるものではなく,飽くまで自らの責任において意見を述べるものである。経緯はどうあれ,環境大臣が最終的かつ公式に述べた意見が環境影響評価法上の意見として位置付けられるべきものである。
したがって,上記認定の事実があるからといって,本件事業に係る環境
影響評価その他の手続が違法なものであるとはいえない。
また,
前記(2)か
ら(5)までで説示したところに照らして,
上記のとおり当初の案とは一部異
なる内容の環境大臣の意見を考慮したからといって,本件確定通知をした経済産業大臣の判断が,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとはいえない。

(7)

まとめ
以上によれば,本件確定通知をした経済産業大臣の判断が,重要な事実の
基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認めることはできず,そのほか本件確定通知が違法である旨をいう原告らの主張はいずれも採用することができないから,
本件確定通知が違法であるとはいえない。

5
争点4(本件確認の訴えの適法性)について本件確認の訴えは,行政事件訴訟法4条の当事者訴訟として,経済産業大臣が,電気事業法39条1項に基づく主務省令において,火力発電所からの二酸化炭素の排出規制に係る,パリ協定に整合する規定を定めていないことが違法であることの確認を求めるものであるところ,一般的な法規範である主務省令(経済産業省令)の規定の内容それ自体やその違法性の有無が,原告らと被告
(国)との間の法律関係(行政事件訴訟法4条)に当たるものとはいえない。
また,本件確認の訴えにおける確認の対象は,上記のとおり原告らと被告との間の法律関係でないから,確認の対象としての適格を欠く上,本件全証拠によっても,上記主務省令において,原告らが主張するような規定(その内容自
体,一定の二酸化炭素排出原単位を達成することを定めるなどという以上に特定されていない。)を定めていないことが違法であることが確認されたからといって,原告らの法律上の地位に現に生じている不安ないし危険が除去されるという事情(即時確定の利益)は認められない。
したがって,本件確認の訴えについては,行政事件訴訟法4条の当事者訴訟
として許される訴訟類型に該当せず,その点を措くとしても,確認の利益(即時確定の利益)が認められないから,本件確認の訴えは不適法である。第4

結論
よって,その余の争点(争点5)について判断するまでもなく,本件確認の
訴えはいずれも不適法であるからこれを却下し,原告らのその余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官
森鍵一齋藤毅野幹
裁判官

裁判官
日比
(別紙1)当事者目録(省略)
(別紙2)関係法令の定め

1
環境影響評価法の目的及び環境影響評価の意義等
(1)

環境影響評価法は,
土地の形状の変更,
工作物の新設等の事業を行う事業

者がその事業の実施に当たりあらかじめ環境影響評価を行うことが環境の保全上極めて重要であることに鑑み,環境影響評価について国等の責務を明らかにするとともに,規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価が適切かつ円滑に行われるための手続その他所要の事項を定め,その手続等によって行われた環境影響評価の結果
をその事業に係る環境の保全のための措置その他のその事業の内容に関する決定に反映させるための措置をとること等により,その事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保し,もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的とする(同法1条)。(2)

環境影響評価とは,
事業
(特定の目的のために行われる一連の土地の形状

の変更(これと併せて行うしゅんせつを含む。)並びに工作物の新設及び増改築をいう。以下同じ。)の実施が環境に及ぼす影響(当該事業の実施後の土地又は工作物において行われることが予定される事業活動その他の人の活動が当該事業の目的に含まれる場合には,これらの活動に伴って生ずる影響を含む。以下環境影響という。)について環境の構成要素に係る項目
ごとに調査,予測及び評価を行うとともに,これらを行う過程においてその事業に係る環境の保全のための措置を検討し,この措置が講じられた場合における環境影響を総合的に評価することをいう
(環境影響評価法2条1項)。
(3)

事業者は,
主務省令で定めるところにより,
対象事業に係る環境影響評価

の項目並びに調査,予測及び評価の手法を選定しなければならない(環境影響評価法11条1項)。
上記主務省令は,環境基本法14条各号に掲げる事項の確保を旨として,既に得られている科学的知見に基づき,対象事業に係る環境影響評価を適切に行うために必要であると認められる環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査,予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針につき主務大臣が環境大臣に協議して定めるものとする(環境影響評価法11条4項)。環境大臣は,関係する行政機関の長に協議して,上記のとおり主
務大臣が定めるべき指針に関する基本的事項を定めて公表するものとする(同法13条)。
2
出力が15万kW以上である火力発電所(地熱を利用するものを除く。環境影響評価法2条2項1号ホ,同法施行令1条本文,別表第一の五ホ。以下火力発電所という。)の設置の工事の事業(以下火力発電所事業という。同法にいう第一種事業に該当し,電気事業法46条の4にいう特定対象事業に該当する。)に関する環境影響評価その他の手続(1)

計画段階環境配慮書(以下配慮書という。)の手続
火力発電所事業を実施しようとする者(以下事業者という。)は,火
力発電所事業に係る計画の立案の段階において,当該事業に係る発電設備等の構造若しくは配置,当該事業を実施する位置又は当該事業の規模に関する事項
(当該事業の実施が想定される区域
(以下
事業実施想定区域
という。

及びその面積,
当該事業に係る電気工作物その他の設備に係る事項を含む。)
を決定するに当たっては,1又は2以上の事業実施想定区域における当該事
業に係る環境の保全のために配慮すべき事項(以下計画段階配慮事項という。)についての検討を行わなければならない(環境影響評価法3条の2第1項,発電所の設置又は変更の工事の事業に係る計画段階配慮事項の選定並びに当該計画段階配慮事項に係る調査,
予測及び評価の手法に関する指針,
環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査,予測及び評価を合理的に行
うための手法を選定するための指針並びに環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令(以下発電所アセス省令という。)1条)。計画段階配慮事項についての検討に当たっては,火力発電所事業に係る発電設備等の構造若しくは配置,火力発電所事業を実施する位置又は火力発電所事業の規模に関する複数の案(以下構造等に関する複数案という。)を適切に示すものとするが,構造等に関する複数案の設定が現実的でないと認められることその他の理由により構造等に関する複数案を設定しない場合は,その理由を明らかにした上で,単一案を設定するものとする(発電所アセス省令3条1項)。構造等に関する複数案の設定に当たっては,火力発電所事業を実施しない案を含めた検討が現実的であると認められる場合には,当該案を含めるよう努めるものとする(同条2項)。

事業者は,計画段階配慮事項についての検討を行った結果について,計画段階配慮事項ごとに調査,予測及び評価の結果をとりまとめたもの等を記載した配慮書を作成し,
速やかに,
これを主務大臣,
すなわち経済産業大臣
(環
境影響評価法58条1項1号,2条2項2号イ,同法施行令3条,別表第一の五ホ,電気事業法48条1項,113条の2第1項2号)に送付するとと
もに,当該配慮書及びこれを要約した書類を公表しなければならない(環境影響評価法3条の3第1項,3条の4第1項)。
経済産業大臣は,配慮書の送付を受けた後,速やかに,環境大臣に当該配慮書の写しを送付して意見を求めなければならず,
環境大臣は,
必要に応じ,
経済産業大臣に対し,配慮書について環境の保全の見地からの意見を書面に
より述べることができる(環境影響評価法3条の4第2項,3条の5)。経済産業大臣は,必要に応じ,事業者に対し,配慮書について環境の保全の見地からの意見を書面により述べることができる。この場合において,上記の環境大臣の意見があるときは,これを勘案しなければならない(同法3条の6)。

事業者は,計画段階配慮事項についての検討に当たっては,配慮書の案又は配慮書について関係地方公共団体(①事業実施想定区域及びその周囲1㎞の範囲内の地域及び②既に入手している情報によって,1以上の環境の構成要素(以下環境要素という。)に係る環境影響を受けるおそれがあると判断される地域の管轄に係る地方公共団体。発電所アセス省令4条2項。以下同じ。)の長及び一般の環境の保全の見地からの意見を求めるものとする(ただし,これらの者の意見を求めない理由を明らかにする場合は,この限りでない。環境影響評価法3条の7第1項,発電所アセス省令12条1項)。(2)

環境影響評価方法書(以下方法書という。)の手続
事業者は,配慮書の内容を踏まえるとともに,配慮書について環境の保全
の見地からの経済産業大臣の意見が述べられたときはこれを勘案して,事業実施想定区域及びその面積並びに火力発電所事業に係る電気工作物その他の設備に関する事項を決定し,
当該事業に係る環境影響評価を行う方法(調査,
予測及び評価に係るものに限る。)について,①計画段階配慮事項ごとに調査,
予測及び評価の結果をとりまとめたもの,
②上記の経済産業大臣の意見,
③②の意見に対する事業者の見解,④当該事業に係る環境影響評価の項目並
びに調査,予測及び評価の手法等を記載した方法書を作成し,火力発電所事業に係る環境影響を受ける範囲であると認められる地域(前記(1)①,②の地
域に準ずるもの。発電所アセス省令18条)を管轄する都道府県知事及び市町村長に対し,方法書及びこれを要約した書類(以下方法書等と総称する。)を送付し,併せて方法書等を経済産業大臣に届け出なければならない
(環境影響評価法5条1項,
6条1項,
電気事業法46条の4,
46条の5)

また,事業者は,環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法について環境の保全の見地からの意見を求めるため,方法書を作成した旨等を公告し,方法書等を上記の地域内において縦覧に供するとともに,インターネットの利用その他の方法により公表しなければならない(環境影響評価法7
条)。さらに,事業者は,上記の地域内において,方法書の記載事項を周知させるための説明会を開催しなければならない(同法7条の2)。方法書について環境の保全の見地からの意見を有する者は,事業者に対し,
意見書の提出により,これを述べることができる(環境影響評価法8条)。事業者は,上記の地域を管轄する都道府県知事及び市町村長に対し,上記意見の概要及びこの意見についての事業者の見解を記載した書類を送付し,併せてこれを経済産業大臣に届け出なければならない(同法9条,電気事業法46条の6)。この書類の送付を受けた都道府県知事等は,経済産業大臣に対し,方法書について環境の保全の見地からの意見を書面により述べるものとする(環境影響評価法10条,電気事業法46条の7)。経済産業大臣は,上記の都道府県知事等の意見がある場合にはこれを勘案するとともに,環境
影響評価法8条所定の意見の概要及びこれについての事業者の見解に配意して,方法書を審査し,その方法書に係る火力発電所事業につき,環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するため必要があると認めるときは,事業者に対し,その火力発電所事業に係る環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法について必要な勧告をすることができる(電気事
業法46条の8第1項)。経済産業大臣は,この勧告をする必要がないと認めたときは,遅滞なく,その旨を事業者に通知しなければならない(同条2項)。
(3)

環境影響評価の実施等
事業者は,
前記(2)の都道府県知事等の意見が述べられたときはこれを勘案
するとともに,環境影響評価法8条所定の意見に配意して火力発電所事業に係る環境影響評価の項目並びに調査,予測及び評価の手法に検討を加え,これを選定しなければならない(同法11条1項)。また,前記(2)の経済産業大臣の勧告があったときは,これを踏まえて,当該検討を加えなければならない(電気事業法46条の9)。

火力発電所事業に係る環境影響評価の項目の選定は,火力発電所における一般的な事業の内容によって行われる火力発電所事業に伴う当該影響要因について,その影響を受けるおそれがあるとされる環境要素に係る項目(以下参考項目という。)を勘案しつつ行う(発電所アセス省令21条1項2号)。火力発電所事業における影響要因は,工事の実施と土地又は工作物の存在及び供用とに大別され,
後者には施設の稼働による排ガスが含まれる
(発
電所アセス省令別表第二)。施設の稼働による排ガスという影響要因についての参考項目には,ア

環境の自然的構成要素の良好な状態の保持を旨とし

て調査,予測及び評価されるべき環境要素のうち,大気質に関するものとして,硫黄酸化物,窒素酸化物及び浮遊粒子状物質が,イ

環境への負荷の量

の程度により予測及び評価されるべき環境要素のうち,温室効果ガス等(排出又は使用が地球環境の保全上の支障の原因となるおそれがあるものをいう。)に関するものとして,二酸化炭素がある(発電所アセス省令21条2項,3項,5条3項,別表第二)。
事業者は,上記のとおり選定した項目及び手法に基づいて,火力発電所事業に係る環境影響評価を行わなければならない(環境影響評価法12条1
項)。
(4)

環境影響評価準備書(以下準備書という。)の手続
事業者は,環境影響評価を行った後,当該環境影響評価の結果について環
境の保全の見地からの意見を聴くための準備として,環境影響評価の結果のうち,①調査の結果の概要並びに予測及び評価の結果を環境影響評価の項目ごとにとりまとめたもの,②環境の保全のための措置,③火力発電所事業に係る環境影響の総合的な評価等を記載した準備書を作成し,火力発電所事業に係る環境影響を受ける範囲であると認められる地域
(前記(2)の意見や環境
影響評価の結果に鑑み,
前記(2)の地域に追加すべきものと認められる地域を
含む。以下関係地域という。)を管轄する都道府県知事(以下関係都道府県知事という。)及び関係地域を管轄する市町村長(以下関係市町村長という。)に対し,準備書及びこれを要約した書類(以下準備書等と総称する。)を送付し,併せて準備書等を経済産業大臣に届け出なければならない(環境影響評価法14条1項,15条,電気事業法46条の11)。また,事業者は,準備書に係る環境影響評価の結果について環境の保全の見地からの意見を求めるため,準備書を作成した旨等を公告し,準備書等を関係地域内において縦覧に供するとともに,インターネットの利用その他の方法により公表しなければならない(環境影響評価法16条)。さらに,事業者は,関係地域内において,準備書の記載事項を周知させるための説明会を開催しなければならない(同法17条)。
準備書について環境の保全の見地からの意見を有する者は,
事業者に対し,

意見書の提出により,これを述べることができる(環境影響評価法18条)。事業者は,関係都道府県知事及び関係市町村長に対し,上記の意見の概要及びこの意見についての事業者の見解を記載した書類を送付し,併せてこれを経済産業大臣に届け出なければならない(同法19条,電気事業法46条の12)。関係都道府県知事等は,経済産業大臣に対し,準備書について環境
の保全の見地からの意見を書面により述べるものとする(環境影響評価法20条,電気事業法46条の13)。経済産業大臣は,準備書の届出があった場合において,関係都道府県知事等の意見がある場合にはこれを勘案するとともに,環境影響評価法18条所定の意見の概要及びこれについての事業者の見解に配意して,その準備書を審査し,その準備書に係る火力発電所事業
につき,環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するため必要があると認めるときは,事業者に対し,その火力発電所事業に係る環境影響評価について必要な勧告をすることができる(電気事業法46条の14第1項)。経済産業大臣は,上記の審査をするときは,環境大臣の環境の保全の見地からの意見を聴かなければならない(同条2項)。経済産業大臣は,
上記勧告をする必要がないと認めたときは,遅滞なく,その旨を事業者に通知しなければならない(同条3項)。(5)

環境影響評価書(評価書)の手続
事業者は,
前記(4)の関係都道府県知事等の意見が述べられたときはこれ
を勘案するとともに,環境影響評価法18条所定の意見に配意して準備書の記載事項について検討を加え
(前記(4)の経済産業大臣の勧告があったと
きは,
この勧告を踏まえて当該検討を加える。
電気事業法46条の15)


当該事項の修正を必要とすると認めるときは,当該修正に係る部分について火力発電所事業に係る環境影響評価を行うなどの措置をとる(環境影響評価法21条1項)。そして,事業者は,準備書に係る環境影響評価の結果(上記修正に係る部分について環境影響評価を行った場合にはその結果も加える。)に係る,①前記(4)の準備書の記載事項,②同法18条所定の
意見の概要,③関係都道府県知事等の意見,④②,③についての事業者の見解を記載した評価書を作成し,これを経済産業大臣に届け出なければならない(同法21条2項,電気事業法46条の16前段)。

経済産業大臣は,前記アの評価書に係る火力発電所事業につき,環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するため特に必要があり,
かつ,適切であると認めるときは,評価書の届出を受理した日から30日内に限り,事業者に対し,相当の期限を定め,その届出に係る評価書を変更すべきことを命ずることができる(以下,この命令を変更命令という。電気事業法46条の17第1項,同法施行規則61条の10)。変更命令があった場合において,事業者が評価書を変更したときは,その評価
書を経済産業大臣に届け出なければならない(電気事業法46条の16後段)。

経済産業大臣は,
変更命令をする必要がないと認めたときは,
遅滞なく,
その旨を事業者に通知しなければならない
(以下,
この通知を
確定通知

という。電気事業法46条の17第2項)。
経済産業大臣は,確定通知をしたときは,その確定通知に係る評価書の写しを環境大臣に送付しなければならない(電気事業法46条の18第1項)。事業者は,確定通知を受けたときは,速やかに,関係都道府県知事及び関係市町村長に対し,その確定通知に係る評価書,これを要約した書類,及びその前に変更命令を受けたことがあったときはその変更命令の内容を記載した書類を送付しなければならない(同条2項)。

事業者は,確定通知を受けたときは,当該確定通知に係る評価書を作成した旨等を公告し,当該確定通知に係る評価書,これを要約した書類,及びその前に変更命令を受けたことがあったときはその変更命令の内容を記載した書類を関係地域内において縦覧に供するとともに,インターネットの利用その他の方法により公表しなければならない(電気事業法46条の
19,環境影響評価法27条)。
事業者は,上記の公告を行うまでは,火力発電所事業を実施してはならない(環境影響評価法31条1項)。
3
火力発電所の設置の工事計画の届出
(1)

火力発電所の設置の工事をしようとする者は,その工事の計画を主務大
臣(経済産業大臣。電気事業法113条の2第1項2号。以下同じ。)に届け出なければならない(電気事業法48条1項,同法施行規則65条1項1号,別表第二)。この届出をしようとする者は,工事計画(変更)届出書に,①確定通知に係る評価書に従っている環境の保全のための措置等を記載した工事計画書,②上記措置に関する説明書及び③工事工程表等を添付しなければならない(同規則66条1項,3項,別表第三)。
(2)

前記(1)の届出をした者は,その届出が受理された日から30日を経過し
た後でなければ,その届出に係る工事を開始してはならない(電気事業法48条2項)。
(3)

主務大臣は,前記(1)の届出のあった工事の計画が,①当該火力発電所が
同法39条1項の主務省令(発電用火力設備に関する技術基準を定める省令(以下火力発電所技術基準省令という。),電気設備に関する技術基準を定める省令(以下電気設備技術基準省令という。))で定める技術基準に適合しないものであると認めるときや,②確定通知に係る評価書に従っているものでないと認めるときなどには,その届出をした者に対し,その工事の計画を変更し,又は廃止すべきことを命ずることができる(電気事業法48条4項,3項,47条3項)。
以上
(別紙3)BATの参考表【平成29年2月時点】(被告第3準備書面別紙1の2枚目)(省略)
トップに戻る

saiban.in