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強盗致傷、犯人隠避教唆、犯人蔵匿教唆被告事件
事件番号令和3(あ)54
事件名強盗致傷,犯人隠避教唆,犯人蔵匿教唆被告事件
裁判年月日令和3年6月9日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別決定
結果棄却
原審裁判所名大阪高等裁判所
原審事件番号令和2(う)929
原審裁判年月日令和2年12月4日
判示事項犯人が他人を教唆して自己を蔵匿させ又は隠避させる行為と刑法103条の罪の教唆犯の成否
裁判日:西暦2021-06-09
情報公開日2021-06-14 12:00:08
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令和3年(あ)第54号
令和3年6月9日

強盗致傷,犯人隠避教唆,犯人蔵匿教唆被告事件

第一小法廷決定

主文
本件上告を棄却する
当審における未決勾留日数中60日を本刑に算入する。
理由
弁護人黒澤雅臣の上告趣意は,単なる法令違反,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,犯人が他人を教唆して自己を蔵匿させ又は隠避させたときは,刑法103条の罪の教唆犯が成立すると解するのが相当である(最高裁昭和35年(あ)第98号同年7月18日第二小法廷決定・刑集14巻9号1189頁参照)。被告人について同条の罪の教唆犯の成立を認めた第1審判決を是認した原判断は正当である。
よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項ただし書,刑法21条により,裁判官山口厚の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
裁判官山口厚の反対意見は,次のとおりである。
私は,被告人に犯人隠避・蔵匿罪の教唆犯の成立を認めることは相当でないと考える。
刑法103条は,罰金以上の刑に当たる罪を犯した者(以下犯人という。)が自ら行う蔵匿・隠避行為を処罰の対象としていない。それは,犯人が自ら逃げ隠れしても蔵匿したとはいわないし,隠避させたという要件は犯人隠避罪に該当する行為を行う者が犯人以外の者であることを前提としていると理解できるからである。このように,犯人による自己蔵匿・隠避行為は同条が定める構成要件に該当していない。この理由として,原判決のように,それらの行為も同条の規定が保護する刑事司法作用に侵害を与え得るものではあるものの,犯人の刑事手続における当事者性を考慮して政策的に処罰を限定したものであるなどと説明されることがあるが,このような処罰の政策的な限定を理論的に表現したものが,

犯人には期待可能性が認められない。

とする説明である。当審判例は,犯人が他人を教唆して,自らを蔵匿・隠避させた場合は,処罰を限定する上記立法政策の射程外であり,教唆犯として処罰の対象となるとしてきた。それを支える根拠・理由として幾つかのことが指摘されているが,犯人が一人で逃げ隠れするより,他人を巻き込んだ方が法益侵害性が高まるとの指摘がされることがある。このこと自体には理由があると考えられるが,他人の関与により高められた法益侵害性は,教唆された正犯者を処罰することによって対応し得るものであり,法益侵害性の高まりから犯人を教唆犯として処罰すべきことが直ちに導かれるわけではない。結局,正犯としてではなく,教唆者としては犯人を処罰の対象とし得ると解することは,正犯としては処罰できないが,教唆犯としては処罰できることを認めるものであり,この背後には,

正犯は罪を犯したことを理由として処罰され,教唆犯は犯罪者を生み出したことを理由として処罰される。

といういわゆる責任共犯論の考え方が含まれ,犯罪の成否を左右する極めて重要な意義がそれに与えられているように思われる。このような共犯理解は,他人を巻き込んだことを独自の犯罪性として捉え,正犯と教唆犯とで犯罪としての性格に重要な差異を認めるものであり,相当な理解とはいえないであろう。なぜなら,正犯も教唆犯も,犯罪結果(法益侵害)と因果性を持つがゆえに処罰されるという意味で同質の犯罪であると解されるからである。このような共犯理解によれば,正犯が処罰されないのに,それよりも因果性が間接的で弱く,それゆえ犯罪性が相対的に軽い関与形態である教唆犯は処罰されると解するのは背理であるといわざるを得ない。以上から,私は,犯人による犯人蔵匿・隠避罪の教唆犯の成立は否定されるべきだと考えるものである。
(裁判長裁判官

小池


裁判官

池上政幸裁判官

木澤克之

裁判官

山口


裁判官

深山卓也)
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