判例検索β > 令和2年(わ)第889号
殺人被告事件
事件番号令和2(わ)889
事件名殺人被告事件
裁判年月日令和3年4月23日
裁判所名・部札幌地方裁判所
裁判日:西暦2021-04-23
情報公開日2021-06-02 16:00:37
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令和3年4月23日宣告
令和2年(わ)第889号
判決
上記の者に対する殺人被告事件について,当裁判所は,裁判員の参加する合議体により,検察官大友隆,同中田和暉,国選弁護人中島圭太朗(主任)及び同田頭理各出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役18年に処する
未決勾留日数中90日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,令和2年1月頃からAと交際を開始し,同年3月頃にはA及びその子と3人で同居して生活するようになったところ,Aの自らに対する態度や接し方に不満を抱くことがあり,同年11月12日,けんかとなってAから会話に応じてもらえなくなり,同月14日夜,他の男性との親密なメッセージがAの携帯電話機に表示されたことや,Aの自らに対する態度等に怒りを募らせるなどし,Aと別れるくらいなら殺害して独占することを考えるようになり,同日午後10時56分頃,上記男性との交際をうかがわせるメッセージがAの携帯電話機に表示されたのを目撃して,Aの殺害を決意し,その頃から同月15日午前0時頃までの間に,北海道江別市所在のA方において,A(当時33歳)に対し,殺意をもって,複数回にわたり,眠っていたAの頸部に腕を巻き付けて絞め付けるなどの暴行を加え,よって,その頃,同所において,Aを頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した。(証拠の標目)省略
(法令の適用)
罰条
刑種の選択

刑法199条
有期懲役刑を選択

未決勾留日数

刑法21条(90日を刑に算入)


刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)

訟費用
(自首の成否について)
被告人は,令和2年11月15日午前8時頃,119番通報をして,消防職員に対し,自らがAの首を絞めて殺害した旨とともに,Aと自らの氏名やA方の住所等を伝え,そのままA方にとどまり,同職員からの通報を受けた警察官が駆け付けた同日午前8時19分頃,同警察官に対して本件犯行の事実を申告した。その上で検討すると,前記申告時点までに捜査機関が得ていた本件犯行に関する情報は全て被告人自身による前記119番通報に基づいており,また,同通報時に被告人が自己の犯罪を申告する意識を抱いていたことは否定できない。そして,同通報による本件捜査への貢献が大きいことにも照らすと,被告人による前記申告は,捜査機関に発覚する前に自発的に自首したものと評価することができ,法律上の自首が成立すると判断した。
(量刑の理由)
本件犯行に至る経緯,犯行動機は判示のとおりであり,被告人が,被害者が他の男性と親密なメッセージをやり取りしていたことに怒りを募らせたこと,成育歴等の影響から女性に対する独占欲が強いと考えられることなどには,理解できる部分もある。しかし,だからといって,被告人が,被害者の命を奪って独占するという考えに至ることは理解できず,ゆがんだ支配欲であって身勝手である上,被告人は,更に時機を待って被害者と話し合うなどすることなく,短期間で被害者の殺害を決意しており,短絡的であるから,強い非難に値し,酌量の余地は少ない。被告人は,自殺を図ったことも認められるが,被害者の殺害後に自暴自棄となって自殺を試みたにすぎず,無理心中を図った事案とは異なっており,酌量できる事情とはいえない。
本件犯行態様は,凶器を用いていないものの,強固な殺意をうかがわせる。被害者は,思いがけず命を奪われ,我が子の成長を見届ける機会を奪われており,その
無念は計り知れない上,その死後にも被告人から姦淫され,その尊厳を著しく傷付けられている。被害者の両親は,当然ながら被告人に対し厳しい処罰感情を示している。
これらの犯情を踏まえると,本件は,男女関係(DVを除く)を動機とする殺人の単独犯1件という事案の中で,重い部類に位置付けられる。
その上で,他の一般情状についてみると,被告人が,事実を認めるとともに,被告人なりの謝罪の言葉を述べており,今後の反省の深まりを期待できること,犯行後に自首をしていること,被告人の妹や元雇用主が社会復帰後に被告人の支援をする意向を示していること,交際相手に対する脅迫罪による罰金前科がある一方,他に前科はないことなどの事情もある。
以上の事情を加味して,主文の刑期が相当であると判断した。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑

懲役20年)

令和3年5月6日
札幌地方裁判所刑事第3部
裁判長裁判官


裁判官
裁判官

田英樹山下智史後下藤紺
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