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児童扶養手当支給停止処分取消請求事件
事件番号令和1(行ウ)12
事件名児童扶養手当支給停止処分取消請求事件
裁判年月日令和3年4月16日
裁判所名・部京都地方裁判所  第3民事部
裁判日:西暦2021-04-16
情報公開日2021-06-01 14:00:57
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令和3年4月16日判決言渡
令和元年(行ウ)第12号
口頭弁論終結日

同日原本領収

裁判所書記官

児童扶養手当支給停止処分取消請求事件

令和2年12月24日
判決
京都府乙訓郡(以下略)

原告A
同訴訟代理人弁護士

別紙1原告代理人目録記載のとおり

京都市(以下略)
被京
同代表者兼処分行政庁

告都京都府府知事B指定代理人
別紙2指定代理人目録記載のとおり

主文
1
原告の請求をいずれも棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求
京都府知事が原告に対してした,下記1ないし4の各処分のうち,それぞれ別紙3差額計算書記載の部分をいずれも取り消す。

1
平成30年1月4日付の平成29年2月分から同年7月分の児童扶養手当に関する児童扶養手当支給停止処分(以下本件処分1という。)

2
令和元年7月30日付の平成29年8月分から平成30年3月分の児童扶養手当に関する児童扶養手当支給停止処分(以下本件処分2という。)
3
同日付の平成30年4月分から平成31年3月分の児童扶養手当に関する児童扶養手当支給停止処分(以下本件処分3という。)

4
同日付の平成31年4月分から令和元年7月分の児童扶養手当に関する児童扶養手当支給停止処分(以下本件処分4という。)第2

事案の概要
本件は,第1級身体障害者であり,ひとり親(子を養育している父又は母であって配偶者のない者をいう。以下同じ)として4人の子どもを養育して児童扶養手当を受給していた原告が,京都府知事から,原告が平成29年4月20
日に障害基礎年金の給付決定を受けたことを理由として,児童扶養手当の支給を停止する旨の処分(本件処分1ないし4。以下併せて本件各処分という。)を受けたことから,児童扶養手当法施行令(令和2年政令318号による改正前のもの)6条の4のうち,障害基礎年金の子加算部分だけでなく本体部分についても併給調整の対象として児童扶養手当の支給を停止する旨を定め
た部分(以下本件併給調整規定という。)は,①

児童扶養手当法(令和

2年法律第40号による改正前のもの)13条の2第2項の委任の範囲を逸脱して違法であるから無効である,②

憲法14条,25条及び国際人権規約に

反して無効であると主張して,本件併給調整規定に基づいてされた本件各処分のうち,それぞれ別紙3差額計算書記載の部分(障害基礎年金の子加算部
分に相当する部分を除く部分)の取消しを求める事案である。
1
関係法令等の定め
以下,児童扶養手当法を単に法という。


平成26年法律第28号による改正(以下平成26年改正という。)までの法の定め

制定時法(昭和36年法律第238号)から平成26年改正までの法の定めのうち,本件と関連を有する部分は,別紙4各改正法の定め1~4項記載のとおりである。

令和2年法律第40号による改正(以下令和2年改正という。)前の法(本件各処分時に適用される法。以下平成26年改正法ともいう。)の定め(以下,法の条文は,特に断らない限り,平成26年改正法のものを指す。)ア
目的等
法は,父又は母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため,当該児童について児童扶養手当を支給し,もって児童の福祉の増進を図ることを目的とするものであり(1
条),児童扶養手当は,児童の心身の健やかな成長に寄与することを趣旨として支給されるものである(2条1項)。

支給対象者,支給要件
児童扶養手当は,児童を監護ないし養育する児童の父母又は養育者に対して支給されるものであり,父母が婚姻を解消した児童にあっては当該児
童を監護しかつ生計を同じくする父又は監護する母に支給されるほか,父が死亡した,又は,身体の機能に労働することを不能ならしめかつ常時の介護を必要とする程度の障害を有する等の状態(以下死亡等の状態という。)にある児童にあっては,当該児童を監護する母に,母が死亡等の状態にある児童にあっては当該児童を監護しかつ生計を同じくする父に,
支給される(4条1項)。

併給調整の定め
ふたり親世帯(児童扶養手当の受給資格者と受給資格者以外の障害のある配偶者〔以下非受給配偶者という。〕とで子を養育している世
帯をいう。以下同じ)に適用される併給調整の定め
a
法13条の2第1項2号(3号)
母(父)に対する児童扶養手当は,児童が父(母)に支給される公的年金給付の額の加算の対象となっているときは,政令で定めるところにより,その全部又は一部を支給しない。

b
法施行令(令和2年政令318号による改正前のもの。以下,特に断らない限り同じ。)6条の3(以下,同条による併給調整をふたり親併給調整規定という。)上記aの規定による支給の制限(児童が非受給配偶者に支給される公的年金給付の加算の対象となっている場合)については,①受給資格者に支給される児童扶養手当の額と,②非受給配偶者に支給される公的年金給付のうち児童に係る加算が行われた部分(以下子加算部分という。)の額を比較し,児童扶養手当の方が低額である場合は児童扶養手当の全部が支給されず,児童扶養手当の方が高額である場合はその差額が支給される。
ひとり親世帯に適用される併給調整の定め
a
法13条の2第2項
児童扶養手当は,受給資格者が公的年金給付(老齢福祉年金を除く。以下本項について同じ。)を受けることができるときは,政令で定めるところにより,その全部又は一部を支給しない(同項1号)。

b
法施行令6条の4(本件併給調整規定)
上記aの規定による支給の制限(受給資格者が公的年金給付を受給
している場合)については,①受給資格者に支給される児童扶養手当の額と,②受給資格者に支給される公的年金給付の本体部分及び子加算部分の合計額を比較し,児童扶養手当の方が低額である場合は児童扶養手当の全部が支給されず,児童扶養手当の方が高額である場合はその差額が支給される。



令和2年改正による法令の定め
令和2年改正後の併給調整に関する法令の定めは,別紙4各改正法の定め5項記載のとおりである。2
前提事実(争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)


当事者等ア

原告は,昭和59年12月26日生まれの女性であり,線維筋痛症等による障害により,身体障害者一級の認定を受けている。


原告は,平成21年9月に当時の配偶者と離婚し,現在はひとり親として4人の子(それぞれ平成15年生,平成17年生,平成19年生,平成22年生。以下併せて子らという。)を養育している。



本件各処分に至る経緯

原告及び子らは,平成29年1月6日,三重県伊賀市から現住所(京都府乙訓郡)に転入し,被告から,同年2月分以降の児童扶養手当を受給していた。


原告は,平成29年4月20日,厚生労働大臣から,受給権取得年月を平成27年10月として,障害基礎年金(国民年金法15条2号)の支給を行う旨の決定を受け,同年11月分から基礎年金額78万0100円,子加算59万8600円(いずれも年額)の支給を受けることになった(甲2)。平成27年11月分から平成29年3月分までの障害基礎年金等合計195万3158円は,平成29年6月に支払われた(乙7の1な
いし3)。

原告は,平成29年7月28日,被告に対し,平成27年11月から公的年金給付を受けるようになった旨を記載した公的年金給付等受給状況届を提出した(乙8)。
これを受けて,被告は,平成30年1月4日付けで,原告に対し,法1
3条の2第2項に基づき,本件併給調整規定を適用して,平成29年2月分から同年7月分の児童扶養手当の全部について支給を停止し,その旨通知した(甲3。本件処分1)。

原告は,平成30年4月4日,京都府知事に対し,本件処分1に係る審査請求をしたが,平成31年2月21日,同審査請求を棄却する旨の決定がされた(甲4,乙10)。オ

京都府知事は,令和元年7月30日付けで,原告に対し,法13条の2第2項に基づき,本件併給調整規定を適用して,平成29年8月分から平成30年3月分まで(本件処分2),同年4月分から平成31年3月分まで(本件処分3)及び平成31年4月分から令和元年7月分まで(本件処分4)の各児童扶養手当の全部について支給を停止し,その旨通知した
(甲6ないし8)。

原告について,本件併給調整規定に基づく支給停止額の算定内容は,別紙5本件併給調整規定の適用結果に記載したとおりである。


原告は,令和元年7月31日,本件各処分のうち,ふたり親併給調整規定を適用した場合に支給されるべき児童扶養手当の額(別紙3差額計算書参照)に相当する額についても支給を停止した部分を取り消すことを求め,本件訴訟を提起した。原告は,後記3の争点に関する部分を除き,本件各処分の根拠及び適法性を争っていない。


本件各処分後,原告が受けている給付の額は,概ね以下のとおりである。ア
児童手当

ウ3
生活保護費


月額約18万5000円

障害基礎年金

月額4万円
年額137万8700円(月額約11万4891円)

争点及び争点に関する当事者の主張
本件の争点は,法施行令6条の4のうち,障害基礎年金の子加算部分だけで
なく本体部分についても児童扶養手当の併給調整をする旨を定めた部分(本件併給調整規定)が,法による委任の範囲を逸脱するか否か,又は,憲法もしくは国際人権規約に違反するか否かであり,具体的には,以下のとおりである。⑴

本件併給調整規定が法による委任の範囲を逸脱するか(争点⑴)
(原告の主張)

法律の委任の範囲を決するに当たっては,法改正の変遷を踏まえた法の趣旨,目的及び併給調整の均衡を考慮して決すべきである。法は,制定以来,児童扶養手当の支給要件を徐々に緩和することで保障を手厚くしてきた。平成26年改正では,従前,法4条2項(平成26年改正前のもの)において,同項各号に該当する場合には支給しないとして併給の余地を認めていなかったのを改め,公的年金給付との併給調整規定として,法13条の2第1項及び第2項を新設し,各項各号に該当する場合には,政令で定めるところにより,その全部又は一部を支給しないとして,併給調整の具体的内容については政令に委任する形で,一部について併給を可能とした。上記のとおり,法は,公的年金の趣旨,目的を個別具体的に検討した上で,可能な限り併給を行うこととして,その調
整を政令に委任したものである。

障害基礎年金の本体部分は,障害による稼得能力の喪失,低下に対応す
る所得補償としての性格を有するが,障害基礎年金の子加算部分は,障害を有する受給資格者に養育すべき子がある場合に当該児童の生活の安定のために支給されるものである。他方,児童扶養手当は,ひとり親として子どもの養育を行うことによる経済的負担(養育に伴う支出)について補償することで,当該児童の生活の安定を図るものである。したがって,障害基礎年金の子加算部分と児童扶養手当とは,当該児童の生活の安定のために支給されるものであり,その給付の目的を同じくするが,障害基礎年金(本体)と児童扶養手当は,その目的及び機能を異にしており,両者は重
複しないから,併給調整の対象とすべきものではない。このことは,以下の法改正の経緯等からも明らかである。
昭和48年改正により,障害福祉年金と児童扶養手当との併給が認められたことは,国が,障害事由と児童養育事由に対する給付は同一の目的でないことを認めたことを意味する。

さらに,昭和60年改正により,児童扶養手当は,年金制度から切り離され,児童の健全育成を図ることを目的とする純粋の福祉制度へと変更され,独自の制度として展開されることになった。すなわち,昭和60年改正以降,児童扶養手当は,ひとり親(又はそれに準じる状態)として子どもの養育を行うことによる経済的負担(支出増等)に対する補填として児童の養育を保障する制度となったのであり,稼得能力の喪失に対応する障害基礎年金をはじめとする年金給付とは,目的及び機能を
異にし,両者は重複しないものとなった。
そして,平成26年改正により,障害基礎年金と児童扶養手当の併給を全面的に認めないこととされていた規定は改められ,ふたり親世帯については,ふたり親併給調整規定により,障害基礎年金本体と児童扶養手当の併給が認められることとされた。


また,併給調整に関する規定をひとり親世帯とふたり親世帯とで比較す
ると,①

ひとり親世帯については,本件併給調整規定により,児童扶養

手当全部の支給が停止されるのに対し(規定上は,障害基礎年金本体と子加算の合計額よりも児童扶養手当の額が高くなる場合のみその差額が児童扶養手当として支給されることとなっているが,現行制度上,障害基礎年金本体と子加算の合計額が児童扶養手当の額を下回ることはあり得ない。),②

ふたり親世帯では,障害のない親に対し,児童扶養手当のう

ち障害基礎年金の子加算部分との差額が支給されることとなる(規定上は,障害基礎年金の子加算部分よりも児童扶養手当の額が高くなる場合のみその差額が児童扶養手当として支給されることとなっているが,現行制度上,障害基礎年金の子加算部分より児童扶養手当の額の方が高い。)。その結果,障害のあるひとり親世帯と,障害のある配偶者がいるふたり親世帯とを比較すると,配偶者がいる場合にのみ児童扶養手当の一部が支給されることになるという不均衡が生じる。実質的に見ても,ふたり親世帯では障
害のない親による稼得が期待でき,より世帯の生活が安定しているにもかかわらず,家庭の生活の安定等のために支給されるはずの児童扶養手当は,ふたり親世帯に対してのみ支給され,ひとり親世帯には支給されないこととなり,不合理である。法による委任は,このように均衡を失するような形での併給調整の方法を許容する趣旨でないことは明らかである。エ
上記のとおり,本件併給調整規定は,①

児童扶養手当及び障害基礎年

金(本体)の趣旨,目的を個別具体的に検討することなく,異なる目的を
有しており併給調整の対象とすべきでない両者を併給調整の対象としている点,また,②

ひとり親世帯とふたり親世帯とで均衡を失するような形

で併給調整の方法を定めている点において,法による委任の範囲を逸脱し,違法である。
(被告の主張)

法13条の2第2項1号は,公的年金が支給されているときには児
童扶養手当を支給しないことを定めており,その内容に特段の制限は加えていないから,障害基礎年金の本体部分及び国民年金法所定の加算額(子加算部分)のいずれもが併給調整の対象に含まれると解するのが法の文言に整合する。

法が定める児童扶養手当の制度は,児童の養育に伴う支出についての補
償である児童手当とはその性質を異にし,離婚等により独力で子の養育と生計の維持を行わなければならなくなったひとり親(ないしそれに準じる母又は父)に対する所得補償を行うため,そうした稼得能力の低下した母又は父に給付を行うことを趣旨,目的とする法律であって,稼得能力の低下に対応するという意味で障害基礎年金と機能,目的を同じくするものである。
以下に述べるとおり,法が,制定時から,同一の目的を有する公的年金給付との間で,老齢福祉年金及び障害福祉年金に関する例外的取扱いがさ
れたことはあるものの,基本的に,受給資格者が公的年金給付を受給し又は児童が公的年金給付の加算の対象となっている場合には児童扶養手当の全部又は一部を支給しないという取扱い(併給調整)を行ってきたのは,一般に,社会保障法制上,いわゆる複数事故において,支給原因である稼得能力の喪失又は低下の程度が必ずしも事故の数に比例して増加するとはいえないから,稼得能力の喪失等に対する所得補償という同一の機能,目的を有する公的年金給付と児童扶養手当とを完全に重ねて支給するのは適当でないと考えられたことによる。公的年金給付(本体部分と加算部分とを合算した額)と児童扶養手当との併給調整を行う本件併給調整規定は,上記の基本的な考え方に整合するものである。
原告は,昭和48年改正によって児童扶養手当と障害福祉年金の併給
が認められたことをもって,両給付が同一の目的でないことを国が認めたものであるなどと主張するが,同改正により併給が認められたのは,障害福祉年金の支給額が拠出制の障害年金等と比較して低額であることや,受給者が一般に低所得であるという生活実態を考慮した例外的な取扱いにすぎない。その後,障害福祉年金が障害基礎年金に統一され,支
給額の水準が引き上げられたことから,昭和60年改正により,児童扶養手当と障害基礎年金の併給は認めないこととされたのであり,原告の主張は誤りである。
昭和60年改正により,児童扶養手当の制度は,母子福祉年金の補完的制度という位置づけから,母子世帯(ないしひとり親世帯)の生活の
安定と自立の促進を通じて児童の健全育成を図ることを目的とする福祉制度に改められたが,所得補償を行うための制度であるとの趣旨・目的は,同改正後も現在に至るまで変更されていない。
平成26年改正により法13条の2の規定が新設され,一定の場合には,受給資格者が公的年金給付を受給しあるいは児童が公的年金給付の
加算の対象となっていても児童扶養手当の一部が支給され得ることとされたが,公的年金給付と児童扶養手当がいずれも稼得能力の喪失,低下に対する所得補償として同一の性格を有するという理解に変更がないことは,法改正の審議の経過に照らしても明らかである(乙23の1,乙23の2,乙24)。

原告は,ひとり親が障害を有している場合は障害基礎年金(本体)及び子加算と児童扶養手当との間で併給調整が行われる結果,児童扶養手当は支給されないのに対し(本件併給調整規定),ふたり親世帯の場合には,障害を有する親の障害基礎年金(子加算部分)と児童扶養手当との間で併給調整が行われ,その差額が障害を有しない配偶者に支給されることになるのは均衡を失すると主張するが,①

を維持している世帯と,②

障害のあるひとり親が児童の生計

児童扶養手当の受給資格者と障害のある非受

給配偶者の2人の親がいる世帯(ふたり親世帯)とでは,その生活の安定と自立のために必要な費用が異なるのであるから,年金及び児童扶養手当の支給について,これらの世帯を別異に取り扱うことは,合理的な理由に基づくものである。
すなわち,①

障害のあるひとり親が児童の生計を維持している世帯で

は,同一人が障害基礎年金と児童扶養手当の受給資格を有しているところ,両給付は,いずれも稼得能力の低下に対する所得補償の性質を有する給付であるから,これらの給付を同一人に対して併給することは,同一の性格を有する給付を二重に行うことになり,適当でないと考えられる。これに対し,②

児童扶養手当の受給資格者と障害のある非受給配偶者の2人の

親がいる世帯(ふたり親世帯)では,児童扶養手当の受給者には配偶者の不在等(重度の障害を含む。)による稼得能力の低下が,障害基礎年金の受給者には障害という理由による稼得能力の低下が,それぞれ生じているから,各自が有していた稼得能力が低下したことに対応する保障として,児童扶養手当と障害基礎年金を各受給者に支給したとしても,二重に給付を行うことにはならないため,基本的にいずれも支給されるものである(もっとも,障害基礎年金のうち子加算部分と児童扶養手当は,いずれも同一の子がいることに着目した同一の性格(所得保障)の給付であり,これらが二重に行われることは適当でないため,併給調整がされる。)。以上のとおり,本件調整規定は,原告が主張するように配偶者の有無等により給付に差異を設けているものではなく,飽くまで障害基礎年金と児
童扶養手当の目的,性質及び併給調整の趣旨に照らした結果,取扱いを異にしているにすぎない。このことに加えて,原告が比較する二つの世帯は,世帯の構成人数が異なり,その生活の安定と自立のために必要な費用が異なるため,そもそも世帯の生活の実情に応じた差異があることをも考慮すれば,本件併給調整規定の適用に係る別異の取扱いは,合理的な理由に基
づくものというべきである。

よって,本件併給調整規定は,法の文言に整合するほか,併給調整を行
うものとした法の趣旨にも適合し,また,世帯間に生じる差異についても合理性があり,法の許容しない不合理な差別的取扱いではないから,法13条の2第2項の委任の範囲を逸脱していない。



本件併給調整規定が憲法25条に違反するか(争点⑵)(原告の主張)

上記⑴(原告の主張)イのとおり,児童扶養手当は,ひとり親として子
どもの養育を行うことによる経済的負担に対する補填として児童の養育を保障する福祉制度であり,稼働能力の喪失に対応する障害基礎年金を初めとする年金給付とは,目的及び機能を異にし,両者は重複しない。それにもかかわらず,障害基礎年金の子加算部分だけでなく本体部分を併給調整の対象とし,その結果,障害のあるひとり親世帯に対して児童扶養手当全額を支給しないこと(障害基礎年金本体と子加算しか支給しない
こと)は,ひとり親であることという事故(ひとり親として子どもを養育することについての経済的負担)を考慮していないことになる。障害基礎年金の支給額の点からは稼得能力の喪失・低下に対する補てんとして不足することに加え,本件併給調整規定により児童扶養手当が支給されないことになると,障害があることと子がいることという複数事故に対する所得保障としては不十分である。

したがって,本件併給調整規定は,健康で文化的な最低限度の生活を営
む権利を侵害するものとして,憲法25条に違反する。
(被告の主張)

憲法25条の定める健康で文化的な最低限度の生活は,単に公的年
金給付又は児童扶養手当のみによって実現されるべきものではなく,生活保護法その他の社会保障法制全体を通じて確保されるべき性質のものであるから,児童扶養手当制度の在り方のみを取り出して,その憲法適合性を論じることはできない。
行政立法(政令,省令)の専門性,技術性等に鑑みると,委任を受けた行政機関が,どの時点において,いかなる内容の政令等を制定するかにつ
いては,法律の委任の趣旨を逸脱しない範囲において,その専門的,技術的な判断に委ねられているものであって,行政機関には政令等の制定について一定の裁量権が与えられているというべきである。とりわけ,憲法25条の規定の趣旨に応えて社会保障法制を具体的にどのような制度とするかは,その時々における経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等
との相関関係において判断決定されるべきものであり,高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであるから,行政機関には,社会保障に関する法律から委任を受けた政令等を制定するに当たって,このような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるというべきである(最高裁昭和57年7月7日大法廷判決・民集36巻7
号1235頁,最高裁平成24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁)。イ

原告は,児童扶養手当と障害基礎年金の本体部分とは性格ないし目的が異なることを前提に,本件併給調整規定が憲法25条に違反すると主張するが,上記⑴(被告の主張)イのとおり,その前提が誤っている。

社会保障法制上,同一人に同一の性格を有する二以上の公的給付が支給されることとなるべきいわゆる複数事故において,同一人に事故が二以上
重なったからといって稼得能力の喪失又は低下の程度が必ずしも事故の数に比例して増加するとはいえないから,稼得能力の喪失等に対する所得補償という同一の機能,目的を有する障害基礎年金(本体及び子加算部分)と児童扶養手当とで併給調整を行うことには合理性があることなどを踏まえれば,原告のような障害のあるひとり親世帯の稼得能力の喪失等に対す
る所得補償は,障害基礎年金及び子加算の支給によってひとまず実現されたものとして,児童扶養手当の支給(併給)を行わないものとしても,これが専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権の範囲を逸脱するものとはいえない。



したがって,本件併給調整規定は,憲法25条に違反しない。
本件併給調整規定が憲法14条に違反するか(争点⑶)
(原告の主張)
前記⑴(原告の主張)ウのとおり,①障害のあるひとり親世帯と,②障害のある配偶者がいるふたり親世帯とを比較すると,①ひとり親世帯では,本件併給調整規定が適用されて児童扶養手当が支給されないこととなる一方,②ふたり親世帯では,障害のない父(母)に対し,児童扶養手当のうち障害基礎年金の子加算部分との差額分が支給されるという差異が生じる。これは,公的年金の受給者と児童扶養手当の受給者が同一であるという形式的理由のみによって,ひとり親世帯に対して差別的な取扱いをしているものであり,
不合理な差別である。実質的に見ても,ふたり親世帯では障害のない親による稼得が期待でき,より世帯の生活が安定しているにもかかわらず,家庭の生活の安定等のために支給されるはずの児童扶養手当は,ふたり親世帯に対してのみ支給され,ひとり親世帯には支給されないこととなり,不合理である。
したがって,本件併給調整規定は,ひとり親世帯に対して不合理な差別を生じさせるものであるから,憲法14条に違反する。

(被告の主張)
前記⑴(被告の主張)ウのとおり,年金及び児童扶養手当の支給(併給調整)について,①障害のあるひとり親が児童の生計を維持している世帯と,②児童扶養手当の受給資格者と障害のある非受給配偶者の2人の親がいる世帯(ふたり親世帯)とで別異に取り扱うことは,合理的な理由に基づくもの
である。
したがって,本件併給調整規定により上記の世帯間に差異が生じるとしても,そのような差異が生じることには合理的な理由があり,本件併給調整規定が憲法14条に違反するとはいえない。


本件併給調整規定が国際人権規約に違反するか(争点⑷)(原告の主張)
経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下社会権規約という。)9条は,社会保険その他の社会保障についての全ての者の権利を認める旨規定しており,これは子どもに対する不十分な生活扶助から保護され
る権利を含むものである。そして,社会権規約2条2項は,同権利の実施において差別があってはならないことを定めており,市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下自由権規約という。)26条は,一般的な差別禁止原則を定めているところ,いずれも,締約国に対し差別の禁止について即時実施を求めていると解釈すべきであり,裁判規範性を有する。そして,法
施行令6条の4(本件併給調整規定)は,障害のあるひとり親世帯と障害のある親と障害のない親がいるふたり親世帯とを正当な理由なく別異に取り扱うものであるから,社会権規約2条2項及び自由権規約26条に規定する差別禁止原則に違反し,無効である。
(被告の主張)
社会権規約2条2項及び自由権規約26条は,個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない。このことを措くとしても,本件
併給調整規定が合理的な理由なく差別的な取扱いをするものでないことは,上記⑶(被告の主張)のとおりであるから,本件併給調整規定は,上記各規約に違反しない。
第3
当裁判所の判断

1
認定事実
前提事実に加え,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。


児童扶養手当制度の創設に係る経緯等
昭和36年に児童扶養手当制度が創設される以前においては,夫が死亡した場合に,妻と義務教育終了前の子が生計を同じくするときは,国民年金法
に基づき,無拠出制の母子福祉年金を支給されることが定められていた一方で,子を養育する妻が,離婚等により夫と生別した場合にその経済的な支援をする制度がなかった。そのため,死別母子世帯との均衡を図る趣旨で,生別母子世帯にも母子福祉年金と同様の社会保障制度を設けるべきであるとの議論が起こり,母子福祉年金とは別個にこれを補完する制度として,児童扶
養手当制度が創設されることとなり,法が制定された。


制定時法の定め等
制定時法は,国が,父と生計を同じくしていない児童について児童扶養手当を支給することにより,児童の福祉の増進を図ることを目的とする
(制定時法1条)と定め,児童扶養手当は児童の心身の健やかな成長に寄与することを趣旨として支給される(同2条)ものとされた。また,児童扶養手当は,母子福祉年金の補完的制度であり,年金その他の社会保障制度による給付を受けることができない母子世帯に対する給付という位置付けであったことから,二重の社会保障給付を避けるため,児童が父に支給される公的年金給付の額の加算の対象になっているとき(同4条2項5号),又は母(及び養育者)が公的年金給付を受けることができるときは,
児童扶養手当を支給しないものとされていた(同条3項3号)。
なお,当時はまだ障害基礎年金の制度がなく,障害年金又は障害福祉年金について子がいることを理由とする加算(子加算)の制度もなかった。⑶
昭和48年改正の経緯,内容等

上記⑵のとおり,制定時法では,児童が父に支給される公的年金給付の加算の対象となっているとき,母(及び養育者)が公的年金給付(種類を問わない)を受けることができる場合には,一律に児童扶養手当を支給しないこととされていた。
その後,昭和48年改正により,国民年金法に基づく年金給付のうち老齢福祉年金又は障害福祉年金(いずれも無拠出制)を受給している母等に
対しては,児童扶養手当が支給されることになった(昭和48年改正法4条3項3号。乙19)。一方,母等が国民年金法に基づくそれ以外の年金給付その他の公的年金給付(拠出制の老齢年金,障害年金や無拠出制の母子福祉年金等。なお,当時は障害基礎年金の制度及び障害に係る年金給付について子がいることを理由とする加算の制度はなかった。)を受給して
いる場合及び児童が父に支給される公的年金給付の加算の対象となっている場合に児童扶養手当を併給しないという取扱いは維持された(同4条2項5号)。

厚生大臣(当時)は,同改正の趣旨について,福祉の充実が課題となっている今日,母子家庭に対する福祉施策の向上をはかる必要性は一段と高まっていることから,児童扶養手当額を大幅に引き上げるとともに,公的年金給付との併給制限を大幅に緩和することにより,制度の充実を図ろうとするものである旨を述べた(甲12)。厚生省児童家庭局長(当時)は,同改正の趣旨について,

障害というハンディを負いながら,なおかつ子どもを養育していくという生活実態を考慮した場合に,放ってはおけないということから障害福祉年金と児童扶養手当との併給を認めることになった。

と述べる一方で,児童扶養手当と国民年金(拠出制)の併給に関しては,そもそも児童扶養手当制度は,稼得能力の低下に対応する所得補償としての制度であり,拠出制年金も所得補償の機能を持っているから,両者は目的及び機能の大半について同一である。拠出制年金は年々内容が充実しており,社会保障全体の中で考えると,児童扶養手当と拠出制の国民年金は併給すべきではない。との見解を述べた(乙19)。


昭和60年改正の経緯,内容等

国民年金法が昭和60年に改正されたことに伴い(同年法律第34号),障害福祉年金(無拠出制)は廃止されたが,障害福祉年金を受ける権利を有していた者のうち所定の障害の状態にある者については障害基礎年金(拠出制)を支給するものとされ,併せて,障害基礎年金の受給権者がその権利を取得した当時その者によって生計を維持していた子がある場合には,年金額に所定の加算(子加算)がされることとなった。

国民年金法の上記改正に対応して,法についても昭和60年改正が行われ,児童扶養手当と公的年金給付(老齢福祉年金を除く。)の併給はされないこととなった。これにより,母が障害基礎年金(拠出制)の支給を受けることができるときには児童扶養手当が支給されないこととなった(昭和60年改正法4条3項2号)。児童が父に支給される公的年金給付の加
算の対象となっている場合,母に対して児童扶養手当を支給しないとの取扱いは維持された(同条2項4号)。イ

厚生大臣(当時)は,昭和60年改正に際し,児童扶養手当制度は,死別母子世帯に対する年金制度の補完として発足したものであるが,今や母子家庭のほとんどは離婚による母子家庭で占められるに至っていること,社会保障施策全般について,根本的な制度の再編,見直しを行うことが急務とされていること等の諸事情にかんがみ,現行制度を基本的に見直し,
従来からの福祉年金の補完的制度から,母子家庭の生活安定と自立促進を通じて児童の健全育成を図ることを目的とする純粋の福祉制度に改めるべく改正案を提出した旨述べた(甲13,乙20)。
厚生省児童家庭局長(当時)は,同改正に際し,今回,障害福祉年金がなくなって障害基礎年金に代わるということにより,年金の金額は大幅に引き上がることになる。これまで児童扶養手当と障害福祉年金と併給されていた場合の金額よりも,障害基礎年金に子加算を加えた額の方が受給額としては多くなるため,障害基礎年金と児童扶養手当の併給が禁じられたとしても,従来よりも受給額が低くなるということは決してない。(甲14〔4頁〕),かつて障害福祉年金と児童扶養手当の併給を認める改正(昭和48年改正を指す)もあったが,これは当時かなり低い額であった障害福祉年金を前提に併給を考えたのであって,今回の改正によって障害基礎年金という相当の水準の年金になり,障害者の所得保障についても一応の水準に達したことから,児童扶養手当の併給は行わないことにした。(甲14〔8頁〕),

従来から所得補償を目的とする拠出制年金と児童扶養手当は併給をしないという扱いをしていた。

(乙21),

改正前後で法の趣旨及び目的は変わっていない。

(乙20)旨を述べた。

平成22年改正の経緯,内容等
児童扶養手当は,従前は児童を監護する母又は養育者に対してのみ支給されていたが,父子世帯における経済的な安定を図る必要性から,支給対象に父を加えることを内容とする平成22年改正が行われた。平成22年改正により,従前の母子家庭と同様の取扱いを父子家庭にも及ぼすこととし,児童が児童扶養手当の受給資格者でない父(母)に支給される公的年金給付の加算の対象となっているときは,受給資格者である母(父)には児童扶養手当が支給されず(平成22年改正法4条2項5号(10
号)),児童扶養手当の受給資格者が公的年金給付(老齢年金を除く。)を受けることができるときには児童扶養手当を支給しない(同条3項2号)旨が定められた。


平成23年以降の取扱いについて
従前,障害基礎年金の子加算は,受給権発生時に生計を維持している子が
ある場合にのみ行われるとされていたところ,平成23年の国民年金法の改正により,障害基礎年金の受給権発生後に子を持ち,その子の生計を維持している場合にも子加算が行われることとされた。そして,父(母)が受給する障害基礎年金の子加算の対象となっている子については,母(父)に対する児童扶養手当が支給されないため(上記⑸),障害基礎年金の受給権発生後に子ができた場合,従前は子加算の対象とならないため児童扶養手当を受給できていたところ,同改正により,障害基礎年金の子加算の対象となることから児童扶養手当を受給できなくなるという事態が生じることとなった。そこで,児童扶養手当の額が障害基礎年金の子加算の額を上回る場合には,
当該子と障害基礎年金の受給権者との間には生計維持関係がないものと取り扱って差し支えないものとされ(年金局長通知平成22年9月14日年発0914第1号),これを踏まえて以下のとおり年金等受給事務に係る取扱い(以下平成23年取扱いという。)が定められた(乙32,33)。①

母(又は父)が受給する児童扶養手当額が当該子に係る父(又は母)の障害基礎年金の子加算の額を上回る場合においては,当該子と障害基礎年金の受給権者である父(又は母)との間には生計維持関係はないものと取り扱って差し支えないものとし,障害基礎年金の子加算の対象とせず,児童扶養手当を母(又は父)に支給する。


障害基礎年金の子加算の額が児童扶養手当額を上回る場合には,従来通り,障害基礎年金の子加算のみを支給し,児童扶養手当は支給しない。


平成26年改正の経緯,内容等

昭和60年改正以降,児童が児童扶養手当の受給資格者でない父又は母(非受給配偶者)に支給される公的年金給付の加算(子加算)の対象となっている場合及び児童扶養手当の受給資格者が公的年金給付(老齢福祉年金を除く。)を受けている場合は,一律に児童扶養手当を支給しないこととされていた。すなわち,児童扶養手当の受給資格者でない父又は母が受
給している公的年金給付の子加算の額又は児童扶養手当の受給資格者が受給している公的年金給付(老齢福祉年金を除く。)の額が児童扶養手当より低額であっても,一切児童扶養手当を受給することはできなかった。そこで,平成26年改正においては,実際に支給される額が児童扶養手当の額を下回ることを防止する目的で,公的年金給付との併給調整を行う規定
(ふたり親併給調整規定及び本件併給調整規定)が設けられた(規定の内容は,前記第2の1⑵ウ記載のとおり。)。

厚生労働大臣及び厚生労働省児童家庭局長(いずれも当時)は,同改正に際し,児童扶養手当と公的年金は,稼得能力の低下に対する所得保障と
いう同一の性格を有していることから,完全に併給することは避けつつ,全く併給が行われないことに伴う不合理を改善することとして,児童扶養手当より低額の年金を受給する場合にはその差分について児童扶養手当を支給することにしたものである旨を述べた(乙23の1)。
厚生労働大臣(当時)は,同改正に関し,平成23年運用を見直し,保
険給付である障害基礎年金を優先して支給し,障害基礎年金の児童に係る加算額(子加算)が児童扶養手当額を下回る場合にその差額を支給するようにするものである旨述べた(乙34)。⑻

令和2年改正の経緯,内容等

令和2年改正により,本件併給調整規定が廃止され,児童扶養手当の受給資格者が障害基礎年金を受けることができるときは,障害基礎年金の子加算部分の額に相当する額についてのみ併給調整を行い,児童扶養手当の
額と障害基礎年金の子加算部分の額の差額については支給されることとされた。

厚生労働省子ども家庭局長(当時)は,同改正に際し,児童扶養手当の性格が稼得能力の低下に対する所得保障であることから,障害年金と併給はしないという枠組みは維持しつつ,障害年金を受給するひとり親につい
ては就労が難しく非常に厳しい状況に置かれていることも踏まえ,併給調整の方法をきめ細かくしていくような改正である旨を述べた(乙35)。内閣総理大臣(当時)は,同改正に際し,児童扶養手当と公的年金の併給調整のあり方については,社会保障審議会の専門委員会において検討を進めてきた結果,障害年金を受給するひとり親家庭は厳しい状況に置かれ
ていることを踏まえ,更に調整方法の見直しを図ることの必要性が示されたことから,併給調整の方法について見直しを行うこととし,児童扶養手当の額と障害年金の子加算部分の額との差額を児童扶養手当として受給することができるようにした旨を述べた(甲38)。
2
争点に対する判断


争点⑴(本件併給調整規定が法13条の2第2項による委任の範囲を逸脱しているか)について

原告は,本件併給調整規定が,児童扶養手当及び障害基礎年金(本体)
の趣旨,目的を個別具体的に検討することなく,異なる目的を有し併給調整の対象とすべきでない両者を併給調整の対象としている点で法による委任の範囲を逸脱すると主張するので,この点について検討する。原告は,障害基礎年金の本体部分は,障害による稼得能力の喪失,低下に対応する所得補償としての性格を有するのに対し,児童扶養手当は,ひとり親として子どもの養育を行うことによる経済的負担(養育に伴う支出)について補償することで当該児童の生活の安定を図ることを目的としており,両者は給付の目的,性格を異にすると主張する。
しかしながら,上記1に認定した法改正の経緯,内容等に照らせば,児童扶養手当は,もともと国民年金法所定の母子福祉年金を補完する制度として設けられたものであり,児童の養育者に対する養育に伴う支出についての保障であることが明らかな児童手当法所定の児童手当とはそ
の性格を異にし,受給者に対する所得保障である点において,障害基礎年金を含む公的年金と基本的に同一の性格を有するものと解するのが相当である(最高裁昭和51年(行ウ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁参照)。
これに対し,原告は,法の昭和48年改正により,児童扶養手当と障
害福祉年金の給付が同一の目的でないことが明確にされ,昭和60年改正により児童扶養手当制度は年金制度から切り離され,児童の健全育成を図ることを目的とする純粋な福祉制度に性格が変わった等と主張する。しかし,上記1の法改正の経過等によれば,昭和48年改正は,障害を有しながら子を養育している母子家庭について,障害福祉年金の支給
額が拠出制の障害年金等と比較して低額であることや,受給者が一般に低所得であるという生活実態を考慮して,福祉施策の向上を図る目的で児童扶養手当と障害福祉年金の併給を認めることとしたものであること,当時も児童扶養手当と国民年金(拠出制)との併給は認められておらず,そのことに関して,厚生省児童家庭局長(当時)から,児童扶養手当制
度は,稼得能力の低下に対応する所得補償としての制度であり,拠出制年金も所得補償の機能を持っているから,両者は目的及び機能の大半について同一であるとの見解が示されていたことが認められ,これらの事情に鑑みると,昭和48年改正は,児童扶養手当制度が障害福祉年金と同様に稼得能力の低下に対する所得補償を目的とする制度であることを踏まえつつ,障害福祉年金の支給額が低額であることなどを考慮して特に児童扶養手当との併給を認めることとしたものと解するのが相当であるから,同改正により児童扶養手当が年金給付と同一の目的でないことが明確にされたなどということはできない。
また,昭和60年改正は,国民年金法の改正によって障害福祉年金の制度が廃止され,拠出制の障害基礎年金の制度が設けられたことにより
年金支給額が大幅に増加したことを受けて,他の拠出制の年金と同様に,児童扶養手当と障害基礎年金の併給を認めないこととしたものであるから,児童扶養手当が年金給付と同様に所得保障としての性格を有するとの理解は,同改正前と異なるところはなく,引き続き前提とされていたというべきである。なお,昭和60年改正に際し,児童扶養手当制度は,
福祉年金の補完的制度という位置付けから,母子世帯等の生活の安定と自立の促進を通じて児童の健全育成を図ることを目的とする福祉制度に改められたとされているけれども(認定事実⑷イ),このことをもって,児童扶養手当が所得補償としての性格を有しないものに変化したと解することはできない。

そして,その後の法改正の経緯を踏まえても,児童扶養手当制度が,離婚等により独力で子の養育と生計の維持を行わなければならなくなった母又は父に対し,その所得補償として支給されるものであるという基本的な性格に変容を来したと解すべき事情が存在するとは認めることができない。なお,令和2年改正は,児童扶養手当と障害年金がいずれも
所得保障の趣旨で支給されるものであるという枠組み自体は維持しつつ,障害年金を受給するひとり親について就労が困難であって非常に厳しい状況に置かれていることなどを踏まえ,本件併給調整規定を将来に向かって廃止し,子加算部分との差額の支給を可能としたものであって,立法府ないしその委任を受けた行政府の裁量の範囲内の改訂措置とみるべきであるから,令和2年改正により本件併給調整規定が廃止されたことをもって,本件併給調整規定の内容が不合理であったとか,法による委任の範囲を逸脱したものであったとかいうことはできない。
上記のとおり,児童扶養手当が,離婚等により稼得能力が低下したひとり親(ないしこれに準ずる状態にある親)に対し,その所得を補う(所得保障)趣旨で制定された制度であることは,各改正を経て本件各
処分時まで変わるところはないというべきである。一方,障害基礎年金(本体部分)は,障害により稼得能力が低下(ないし喪失)したことに対し,所得補償の趣旨で給付されるものである。そうすると,児童扶養手当と障害基礎年金(本体部分)とは,稼得能力の低下等に対する所得補償という趣旨において基本的に同一の性格を有するものということが
できる。そして,一般に,同一人に複数の稼得能力の喪失ないし低下をもたらす事由が生じた場合において,稼得能力の喪失ないし低下の程度が事由の数に比例するとは必ずしもいえないから,児童扶養手当と障害基礎年金(本体部分)との間で併給調整を行うことに合理性がないとはいえない。

また,法の文言及び改正の経緯に鑑みれば,平成26年改正により新設された法13条の2第2項が

児童扶養手当は,受給資格者が公的年金給付(老齢年金給付を除く。)を受けることができるときは,政令で定めるところにより,その全部又は一部を支給しない。

と規定する趣旨は,同改正前は児童扶養手当全額について拠出制年金とは併給しない
とされていたところ,実際に支給される額が児童扶養手当の額を下回ることがないようにする目的で,受給する公的年金給付の額に応じ,児童扶養手当の全部又は一部を支給しないこととして,具体的な併給調整の方法は政令に委ねたものと解するのが相当であり,原告が主張するように,公的年金の趣旨,目的を個別具体的に検討して可能な限り併給を行うよう調整することを政令に委任する趣旨と解することはできない。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。


原告は,また,①

障害のある母がひとりで児童の生計を維持している

世帯(ひとり親世帯)については,本件併給調整規定により,障害基礎年金(本体部分)の額が児童扶養手当の額を上回ることから,児童扶養手当の全額が支給されないのに対し,②
児童扶養手当の受給資格を有する母

が,障害のある配偶者(非受給配偶者)と共同して児童の生計を維持している世帯(ふたり親世帯)については,ふたり親併給調整規定により,児童扶養手当のうち障害基礎年金の子加算部分との差額部分が母に支給される扱いとなっており,法の許容しない不均衡が生じている旨主張する。しかしながら,そもそも,本件併給調整規定は,児童扶養手当の受給者
と障害基礎年金の受給者が同一人である場合に適用される規定であるのに対し,ふたり親併給調整規定は,児童扶養手当の受給者と障害基礎年金の受給者が異なる場合に適用される規定であって,世帯の構成人数及び受給者が異なるのであるから,両者を単純に比較して配偶者の有無による差別ないし不均衡があるなどということはできない。この点を措くとしても,
上記のとおり,児童扶養手当と障害基礎年金はいずれも稼得能力の低下ないし喪失に対する所得補償としての性格を有するところ,一般に,同一人に複数の稼得能力の喪失ないし低下をもたらす事由が生じた場合において,稼得能力の喪失ないし低下の程度が事由の数に比例するとは必ずしもいえないから,各事由に対して所得保障の目的で支給される各給付について併
給調整を行うかどうか,どのような内容で行うかといった事項は,立法府ないしその委任を受けた行政府の裁量に属する事柄とみるべきである。そして,所得補償として同一の性格を有する障害基礎年金の本体部分と子加算部分を合算した額と児童扶養手当の額を比較する(現行制度上,障害基礎年金の本体部分と子加算部分の合計額が支給上限とする)という形で併給調整を行うことが著しく合理性を欠き裁量の逸脱・濫用に当たるということはできない。そうすると,本件併給調整規定を適用した結果,ひとり
親世帯とふたり親世帯とを比較した場合に原告の主張するような差異が生じるとしても,これが合理的理由のない差別的取扱いであり,法の許容しない不均衡であるとはいえない。
したがって,原告の上記主張も,採用することができない。

よって,本件併給調整規定(法施行令6条の4)が法の委任の範囲を逸
脱する違法な政令であるということはできない。争点⑴に関する原告の主張は,理由がない。


争点⑵(本件併給調整規定が憲法25条に反するか)についてア
憲法25条の規定にいう健康で文化的な最低限度の生活というもの
は,極めて抽象的・相対的な概念であって,その具体的内容は,その時々における文化の発達の程度,経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに,同規定を現実の立法として具体化するに当たっては,国の財政事情を無視することができず,また,多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術
的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。したがって,憲法25条の趣旨に応えて具体的にどのような立法措置を講じるかの選択決定は,立法府ないしその委任を受けた行政府の広い裁量に委ねられており,それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用とみられるような場合を除き,同条に違反するということはできないものというべき
である。
これを本件についてみるに,上記⑴のとおり,本件併給調整規定は,複数の稼得能力の低下(ないし喪失)事由が発生した支給対象者に対し,同一の目的(所得保障)の複数の給付を給付し得る場合に,これらの併給を調整しようとするものであり,このような場合に併給調整を行うかどうかは,立法府ないしその委任を受けた行政府の裁量の範囲に属する事柄とみるべきであるところ,本件併給調整規定による併給調整の内容,方法が著
しく合理性を欠くとはいえない。このことに加えて,本件併給調整規定の適用を前提としても,原告に対しては,生活保護費及び障害基礎年金として1か月約30万円の給付がされることをも勘案すれば,本件併給調整規定が著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用とみられるような場合に当たるとはいえない。


よって,法による委任に基づいて制定された本件併給調整規定が憲法2
5条に違反するということはできない。争点⑵に関する原告の主張は,理由がない。

争点⑶(本件併給調整規定が憲法14条に反するか)についてア
原告は,①

障害のある母がひとりで児童の生計を維持している世帯

(ひとり親世帯)については,本件併給調整規定により,障害基礎年金(本体部分)の額が児童扶養手当の額を上回ることから,児童扶養手当の全額が支給されないのに対し,②

児童扶養手当の受給資格を有する母が,

障害のある配偶者(非受給配偶者)と共同して児童の生計を維持している世帯(ふたり親世帯)については,ふたり親併給調整規定により,児童扶養手当のうち障害基礎年金の子加算部分との差額部分が支給される扱いとなっており,これは配偶者の有無による合理的理由のない不当な差別的取扱いに当たる旨主張する。
しかし,前記⑴イに判示したところに照らせば,ひとり親世帯について
本件併給調整規定が適用される結果,ひとり親世帯とふたり親世帯との間で原告が主張するような差異が生じているとしても,これをもって合理的理由のない不当な差別的取扱いであるとはいえない。イ
よって,法による委任に基づいて制定された本件併給調整規定が憲法14条に違反するということはできない。争点⑶に関する原告の主張は,理由がない。



争点⑷(本件併給調整規定が国際人権規約に反するか)について上記⑶に判示したとおり,本件併給調整規定をもって,配偶者がなく,障害基礎年金を受給している母(ひとり親世帯)と,障害基礎年金を受給している配偶者がある母(ふたり親世帯)とを合理的な理由なく不当に差別するものということはできないから,法による委任に基づいて制定された本件併給調整規定が社会権規約2条2項又は自由権規約26条に違反しているとは
いえない。
よって,争点⑷に関する原告の主張は,理由がない。3
まとめ
以上によれば,本件併給調整規定は適法であり,これを適用してされた本件各処分はいずれも適法である。原告の請求は,いずれも理由がない。
第4

結論
以上の次第で,原告の請求は理由がないから,これらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
京都地方裁判所第3民事部

裁判長裁判官

増森珠
裁判官

藤野真美歩子
裁判官中田克之は,転補のため,署名押印できない。

裁判長裁判官

増森珠美
(別紙1)
原告代理人目録

田中俊,藤原精吾,大杉光子,大谷智恵,大橋さゆり,岡田康平,上村優貴,川﨑真陽,北本純子,佐野就平,清水亮宏,谷文彰,辻川圭乃,仲尾育哉,中西基,和田浩,江藤深
以上
(別紙2)
指定代理人目録

田中浩司,辻守,池内潤一郎,山本智子,河井恒祐,富田勲,齋藤貫匡,野木孝洋,髙尾浩之,村上広志,中川麻衣子
以上
(別紙3)
差額計算書

12
平成29年4月分から平成30年3月分まで

それぞれ月額4万7030円

3
平成30年4月分から平成31年3月分まで

それぞれ月額4万7350円

4
平成29年2月分及び3月分

それぞれ月額4万7100円

平成31年4月分から令和元年7月分まで

それぞれ月額4万7980円

以上(別紙4)
各改正法の定め

1
制定時法(昭和36年法律第238号)


1条
この法律は,国が,父と生計を同じくしていない児童について児童扶養手当を支給することにより,児童の福祉の増進を図ることを目的とする。


2条
児童扶養手当は,児童の心身の健やかな成長に寄与することを趣旨として支給されるものであって,その支給を受けた者は,これをその趣旨に従って用い
なければならない。


3条
1項

この法律において児童とは,義務教育終了前(15歳に達した日の
属する学年の末日以前をいい,同日以後引き続いて中学校又は盲学校,聾学校若しくは養護学校の中学部に在学する場合には,その在学する間を含む。)
の者をいう。
2項

この法律において公的年金給付とは,次の各号に掲げる給付をいう。国民年金法(括弧内省略)に基づく年金たる給付

(2号ないし15号省略)
(3項省略)


4条

1項

国は,次の各号のいずれかに該当する児童の母がその児童を監護すると
き,又は母がないか若しくは母が監護をしない場合において,当該児童の母以外の者がその児童を養育するときは,その母又はその養育者に対し,児童扶養手当を支給する。

父母が婚姻を解消した児童二

父が死亡した児童


父が別表に定める程度の廃疾の状態にある児童


父の生死が明らかでない児童


その他前各号に準ずる状態にある児童で政令で定めるもの

2項

前項の規定にかかわらず,児童扶養手当は,児童が次の各号のいずれか
に該当するときは,当該児童については,支給しない。
(1号ないし4号,6号ないし8号省略)

父に支給される公的年金給付の額の加算の対象となっているとき。
3項

第1項の規定にかかわらず,児童扶養手当は,母に対する児童扶養手当
にあっては当該母が,養育者に対する児童扶養手当にあっては当該養育者が,
次の各号のいずれかに該当するときは,支給しない。
(1,2号省略)

公的年金給付を受けることができるとき。ただし,その全額につきその支給が停止されているときを除く。

2
昭和48年改正法(昭和48年法律第93号による改正後,昭和60年法律第48号による改正前の法)


4条

1項

国は,次の各号のいずれかに該当する児童の母がその児童を監護すると
き,又は母がないか若しくは母が監護をしない場合において,当該児童の母以外の者がその児童を養育する(その児童と同居して,これを監護し,かつ,その生計を維持することをいう。以下同じ。)ときは,その母又はその養育者に対し,児童扶養手当を支給する。
一二
父母が婚姻を解消した児童
父が死亡した児童


父が別表に定める程度の廃疾の状態にある児童


父の生死が明らかでない児童五

その他前各号に準ずる状態にある児童で政令で定めるもの

2項

前項の規定にかかわらず,児童扶養手当は,児童が次の各号のいずれか
に該当するときは,当該児童については,支給しない。
(1号ないし4号,6号ないし8号省略)

父に支給される公的年金給付の額の加算の対象となっているとき。
3項

第1項の規定にかかわらず,児童扶養手当は,母に対する児童扶養手当
にあっては当該母が,養育者に対する児童扶養手当にあっては当該養育者が,次の各号のいずれかに該当するときは,支給しない。
(1,2号省略)

国民年金法に基づく障害福祉年金及び老齢福祉年金以外の公的年金給付を受けることができるとき。ただし,その全額につきその支給が停止されているときを除く。

3
昭和60年改正法(昭和60年法律第48号による改正後,平成22年法律第40号による改正前の法)



1条
この法律は,父と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため,当該児童について児童扶養手当を支給し,もつて児童の福祉の増進を図ることを目的とする。


2条

1項

児童扶養手当は,児童の心身の健やかな成長に寄与することを趣旨とし
て支給されるものであって,その支給を受けた者は,これをその趣旨に従って用いなければならない。
(2項省略)

3条

1項

この法律において児童とは,18歳未満の者又は20歳未満で政令
で定める程度の障害の状態にある者をいう。2項

この法律において公的年金給付とは,次の各号に掲げる給付をいう。国民年金法(括弧内省略)に基づく年金たる給付

(2号ないし18号省略)
(3項省略)


4条

1項

都道府県知事は,次の各号のいずれかに該当する児童の母がその児童を
監護するとき,又は母がないか若しくは母が監護をしない場合において,当該児童の母以外の者がその児童を養育する(その児童と同居して,これを監護し,かつ,その生計を維持することをいう。以下同じ。)ときは,その母又はその養育者に対し,児童扶養手当を支給する。
一二
父が死亡した児童


父が政令で定める程度の障害の状態にある児童


父母が婚姻を解消した児童

父の生死が明らかでない児童


その他前各号に準ずる状態にある児童で政令で定めるもの

2項

前項の規定にかかわらず,児童扶養手当は,児童が次の各号のいずれか
に該当するときは,当該児童については,支給しない。
(1号ないし3号,5号ないし8号省略)

父に支給される公的年金給付の額の加算の対象となっているとき。
3項

第1項の規定にかかわらず,児童扶養手当は,母に対する児童扶養手当
にあっては当該母が,養育者に対する児童扶養手当にあっては当該養育者が,次の各号のいずれかに該当するときは,支給しない。
(1号省略)

国民年金法等の一部を改正する法律(括弧内省略)附則第32条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法第1条による改正前の国民年金法に基づく老齢福祉年金以外の公的年金給付を受けることができるとき。ただし,その全額につきその支給が停止されているときを除く。(4,5項省略)
4
平成22年改正法(平成22年法律第40号による改正後,平成26年法律第28号による改正前の法)

4条1項

都道府県知事,市長(特別区の区長を含む。以下同じ。)及び福祉
事務所(社会福祉法(括弧内省略)に定める福祉に関する事務所をいう。以下同じ。)を管理する町村長(以下都道府県知事等という。)は,次の各号に掲げる場合の区分に応じ,それぞれ当該各号に定める者に対し,児童扶養手当を支給する。

次のイからホまでのいずれかに該当する児童の母が当該児童を監護する場合

当該母

イロ
父が死亡した児童


父が政令で定める程度の障害の状態にある児童


父の生死が明らかでない児童


父母が婚姻を解消した児童

その他イからニまでに準ずる状態にある児童で政令で定めるもの


次のイからホまでのいずれかに該当する児童の父が当該児童を監護し,かつ,これと生計を同じくする場合

当該父

イロ
母の生死が明らかでない児童


母が前号ハの政令で定める程度の障害の状態にある児童

ニ三
母が死亡した児童


父母が婚姻を解消した児童

その他イからニまでに準ずる状態にある児童で政令で定めるもの
第1号イからホまでのいずれかに該当する児童を母が監護しない場合若
しくは同号イからホまでのいずれかに該当する児童(同号ロに該当するものを除く。)の母がない場合であって,当該母以外の者が当該児童を養育する(児童と同居して,これを監護し,かつ,その生計を維持することをいう。以下同じ。)とき,前号イからホまでのいずれかに該当する児童を父が監護しないか,若しくはこれと生計を同じくしない場合(父がない場合を除く。)若しくは同号イからホまでのいずれかに該当する児童(同号ロに該当するものを除く。)の父がない場合であって,当該父以外の者が
当該児童を養育するとき,又は父母がない場合であって,当該父母以外の者が当該児童を養育するとき
2項

当該養育者

前項の規定にかかわらず,児童扶養手当は,母に対する児童扶養手当に
あっては児童が第1号から第8号までのいずれかに該当するとき,父に対する児童扶養手当にあっては児童が第1号から第4号まで又は第10号から第13号までのいずれかに該当するとき,養育者に対する児童扶養手当にあっては児童が第1号から第7号まで又は第9号のいずれかに該当するときは,当該児童については,支給しない。
(1号,3号,4号,6号ないし9号,11号ないし13号省略)

父又は母の死亡について支給される公的年金給付を受けることができるとき。ただし,その全額につきその支給が停止されているときを除く。

父に支給される公的年金給付の額の加算の対象となっているとき。

母に支給される公的年金給付の額の加算の対象となっているとき。
3項
第1項の規定にかかわらず,児童扶養手当は,母に対する児童扶養手当
にあっては当該母が,父に対する児童扶養手当にあっては当該父が,養育者に対する児童扶養手当にあっては当該養育者が,次の各号のいずれかに該当するときは,支給しない。
(1号省略)

国民年金法等の一部を改正する法律(括弧内省略)附則第32条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法第1条による改正前の国民年金法に基づく老齢福祉年金以外の公的年金給付を受けることができるとき。ただし,その全額につきその支給が停止されているときを除く。5
令和2年法律第40号による改正後の法(併給調整の定め)


13条の2第3項
児童扶養手当は,受給資格者が障害基礎年金等の給付を受けることができるとき(その全額につきその支給が停止されているときを除く。)は,政令で
定めるところにより,当該障害基礎年金等の給付(子を有する者に係る加算に係る部分に限る。)の額に相当する額を支給しない。


法施行令6条の6
上記支給の制限は,①受給資格者に支給される児童扶養手当の額と,②受給
資格者に支給される障害基礎年金の子加算部分の額を比較し,児童扶養手当が低額である場合は児童扶養手当の全部が支給されず,児童扶養手当が高額である場合は,障害基礎年金の子加算部分の額と児童扶養手当との差額が支給される。
以上
(別紙5)
本件併給調整規定の適用結果



児童扶養手当の支給額

平成29年2月及び同年3月

(基本額)
(加算額)

4万2330円
2人目

1万円

3人目以降6000円

同年4月から平成30年3月まで

(基本額)
(加算額)

4万2290円
2人目

9990円

3人目以降5990円


平成30年4月から平成31年3月まで(基本額)

4万2500円

(加算額)2人目1万0040円
3人目以降6020円

平成31年3月から令和元年7月まで

(基本額)

4万2910円

(加算額)2人目1万0140円

3人目以降6080円


原告に支給される児童扶養手当の額
原告は,4人の子を監護していることから,原告に対し支給される児童扶養手当の金額は,以下のとおりとなる。


平成29年2月及び3月
(計算式)

(基本額)
42,330円


(基本額)
42,290円


(2人目)
+10,000円

(3人目以降)
+6,000円×2名

平成29年4月ないし平成30年3月まで
(計算式)

月額6万4330円

(2人目)
+9,990円

月額6万4260円

(3人目以降)
+5,990円×2名

平成30年4月ないし平成31年3月まで=64,330円

=64,260円

月額6万4580円

(計算式)

(基本額)
42,500円


(基本額)
42,910円



+10,040円

(3人目以降)
+6,020円×2名

平成31年4月から令和元年7月まで
(計算式)

(2人目)

(2人目)
+10,140円

=64,580円

月額6万5210円
(3人目以降)
+6,080円×2名

=65,210円

原告に支給される障害基礎年金及び子加算の額
原告は,基礎年金額78万0100円,子加算59万8600円の障害基礎年金及び子加算の支給を受けている。
その合計は年額137万8700円であり,これを12で除すると,11万4891円(1円未満切捨て)となる。



本件併給調整の適用
原告に対して支給される児童扶養手当は,月額6万4260円から6万5210円であり,原告が受給している障害基礎年金及び子加算の月額相当額11万4891円よりも低額である。

したがって,児童扶養手当法13の2第2項1号,法施行令6条の4により,原告に対しては,児童扶養手当の全額が支給されないことになる。
以上
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