判例検索β > 令和2年(ネ)第10055号
商標権侵害行為差止等請求控訴事件 商標権 民事訴訟
事件番号令和2(ネ)10055
事件名商標権侵害行為差止等請求控訴事件
裁判年月日令和3年4月21日
裁判所名知的財産高等裁判所
権利種別商標権
訴訟類型民事訴訟
裁判日:西暦2021-04-21
情報公開日2021-05-27 16:03:04
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令和3年4月21日判決言渡
令和2年(ネ)第10055号

商標権侵害行為差止等請求控訴事件

(原審・東京地方裁判所平成29年(ワ)第11462号)
口頭弁論終結日

令和3年2月15日
判決
控訴人兼被控訴人

株式会社コマリヨー
(以下一審原告という。)

同訴訟代理人弁護士

伊藤真平井佑希丸田憲和
同訴訟代理人弁理士

齋藤晴男
同補佐人弁理士

齋藤貴広
被控訴人兼控訴人

西田通商株式会社
(以下一審被告という。)

同訴訟代理人弁護士

小村剛大部康弘藤1夫河沼光太瀧主幸木
同補佐人弁理士

林野文雄文
一審被告の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。


一審被告は,一審原告に対し,195万6000円及びこれに対する平成29年4月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。


2
一審原告のその余の請求を棄却する。
一審原告の控訴を棄却する。

3
訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを30分し,その29を一審原告の負担とし,その余を一審被告の負担とする。

4
この判決の第1項⑴は,仮に執行することができる。事
第1

実及び理由
控訴の趣旨

1
一審原告


原判決を次のとおり変更する。



一審被告は,一審原告に対し,1319万0860円及びこれに対する平成29年4月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2
一審被告



第2
1
原判決中,一審被告敗訴部分を取り消す。
前項の部分につき,一審原告の請求を棄却する。
事案の概要(略称は,特に断りのない限り,原判決に従う。

事案の要旨
本件は,別紙商標権目録1及び2記載の各商標権(以下,同目録1記載の商
標権を原告商標権1
,同目録2記載の商標権を原告商標権2
,これらを
併せて原告各商標権といい,また,原告商標権1に係る登録商標を原告商標1,原告商標権2に係る登録商標を原告商標2
,これらを併せて原告各商標という。
)を有する一審原告が,一審被告による原判決別紙2被告標
章目録記載の各標章を付したスニーカーの輸入及び販売が原告各商標権の侵害(商標法37条1号)に該当する旨主張して,一審被告に対し,商標権侵害の不法行為に基づく損害賠償として6140万円及びこれに対する平成29年4月15日(不法行為の後である訴状送達の日の翌日)から支払済みまで同年法律第44号による改正前の民法(以下,単に民法という。
)所定の年5分の
割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原審は,一審原告の請求のうち,466万4168円及びこれに対する同日
から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で一部認容し,その余の請求を棄却した。
一審原告は,一審原告敗訴部分のうち,控訴の趣旨の限度で,原判決を不服として控訴を提起し,
また,
一審被告は,
一審被告敗訴部分を全部不服として,
控訴を提起した。
2
前提事実
以下のとおり訂正するほか,原判決の事実及び理由の第2の2記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)

原判決3頁3行目の

有している。を

有している(甲1ないし4)。と,

同頁5行目の対象期間中にを平成26年2月3日から平成29年4月6日までの間(以下「対象期間という場合がある。」と改める。)


原判決3頁9行目から21行目までを次のとおり改める。
イ一審被告は,原判決別紙3被告商品販売一覧表記載のとおり,対象期間中に,ミュニック社から,「標章番号欄記載の被告標章1ないし18(枝番を含む。以下同じ。
)が付された商品名及び品番欄記載の
スニーカーについて,
合計(足数)欄記載の数量を輸入し,
販売価格
欄記載の価格で販売数量欄記載の数量を販売し,その売上高の合計は売上高欄記載の●●●●●●●●●円,その仕入額の合計は仕入額欄記載の●●●●●●●●●円であった。

被告標章1ないし18(以下被告各標章と総称する。
)は,別紙被
告標章目録記載の構成からなり,いずれもミュニック社商品のスニーカーの甲の側面において,側方から見て概ね中央の位置に付されている。被告各標章が付された上記スニーカー
(以下
被告商品
と総称する。

は,原告各商標の指定商品中の履物に含まれる。


3
争点


原告各商標と被告各標章の類否(争点1)



被告各標章の商標法26条1項6号該当性(争点2)



一審原告の損害額(争点3)

第3

争点に関する当事者の主張

1
争点1(原告各商標と被告各標章の類否)について
以下のとおり訂正するほか,原判決の事実及び理由の第3の1記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)
原判決5頁15行目末尾に次のとおり加える。靴はファッションアイテムの一つであり,そのデザインの良し悪しが購入するか否かを左右するから,このような靴におけるデザインの重要性を考慮すると,需要者は,靴を購入するに際し,側面も含めデザインを細部まで観察するのが通常である。
(2)

原判決5頁24行目末尾に行を改めて次のとおり加える。このことは,帯の重なりの有無,重なりの方向,先端の形状,円弧の方向等細部の違いにより「X

型十字の商標が併存登録されている状況(乙42,120,121)があることからも裏付けられる。




原判決6頁2行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
そして,被告各標章と原告各商標は,2つの幅広線が対角線状に「X型十字に描かれ,それらの線が中央部分で交差するものであり,図形商標としての構成要素が極めて少ないものであるため,外観の類似性の判断においては,その細部まで観察する必要がある。」



原判決6頁5行目の19を18と改め,同頁12行目から13行
目までを次のとおり改める。
さらに,被告各標章は,①右上から左下に伸びる帯が左上から右下に伸びる帯の上に重なっている点,②各帯の輪郭線に沿って,その内側にステッチがそれぞれ2本施されている点で原告各商標と相違するほか,③原告各商標は輪郭を一筆書きで表示しているが,被告各標章は帯が重なるように表されており,一筆書きでは表せない点,④原告各商標の鋸歯状の輪郭線は歯が細かいのに対し,被告各標章の輪郭線は歯が粗い点においても原告各商標と相違する。そうすると,被告各標章は,相違点①ないし④により,需要者に対し原告各商標と異なる印象を与えるから(乙111,120ないし125),被告各標章と原告各商標は,外観において類似しない。2
争点2(被告各標章の商標法26条1項6号該当性)について
以下のとおり当審における一審被告の補充主張を付加するほか,原判決の事実及び理由の第3の2記載のとおりであるから,これを引用する。【当審における一審被告の補充主張】


靴の側面に商標を付しているメーカーにおいては,常に統一した図形を靴の側面に配しているわけではない。
例えば,
リーボック,
モーブス,
トッズ,
プラダなどの有名ブランドにおいては,商品ごとに靴の側面に自らのブランドのロゴとは異なる様々なデザインを付している(乙102ないし105)。
このことは,被告商品でも同様であり,被告商品の側面に付された標章も,太さや長さ,
角の形状など商品によって異なるデザインとなっており,
また,
ミュニック社商品の中には,
X型十字を付していない商品(乙15,10
6)や,被告各標章とは全く異なるX型十字を付した商品(乙16の1,2,107ないし117)も存在する。
このように靴の側面は,商品の外観を構成する全体のデザインの一要素にすぎず,側面に付されている標章も,その形状や位置について,同一メーカー内でも商品ごとに変化を加えているから,靴において,商標として機能する部分は,通常は,変化のないタンやタグ等に付されたロゴマークである。
(2)

そして,原告各商標の指定商品の需要者である消費者は,靴の側面のデザ
イン等に注目してインターネット上の通信販売サイトで商品購入を検討しており,その際,靴の側面に付された図形を特定の出所に係る表示として認識
しているわけではなく,あえて言えば,当該サイトのトップページ等に表示されたメーカー名等を確認することで,どこの商品かを判断するものと思われる。
そうすると,靴の側面に付された図形は,必ずしも特定の出所に係るものと認識させる表示として機能するものではないから,商標としての出所表示機能を持たせるためには,最低限標章が画一的なデザインとなっていることが必須であると解すべきである。
しかるところ,被告各標章は,前記⑴のとおり,被告商品において画一的なデザインとなっていないから,被告各標章に触れた需要者は,被告商品を含むミュニック社商品では,シリーズごとに靴の側面に様々なデザインが施されていると認識するにすぎず,被告各標章を何人かの業務に係る出所識別標識として認識するものではない。
また,ミュニック社が運動靴の側面中央部に付されたX形状の図形よりなる位置商標についてした商標登録出願について拒絶査定(乙118,119)がされたことも,これを裏付けるものである。
したがって,被告各標章は,商標法26条1項6号に該当するから,原告各商標権の効力は,被告各標章に及ばない。
3
争点3(一審原告の損害額)について
以下のとおり訂正するほか,原判決の事実及び理由の第3の3記載のとおりであるから,これを引用する。


原判決8頁7行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
この点に関し一審被告は,一審原告は,対象期間のうち,平成27年10月25日までの期間については,原告各商標を付したスニーカーの販売を行っていないから,上記期間の損害については商標法38条2項の適用はない旨主張する。しかし,同項を適用する前提としては,商標権者において侵害者による商標権侵害がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合であれば足りるのであって,商標権者が登録商標を付した商品を販売等していることまでは必要とされていない。また,甲183の1,2(枝番を含む。以下,単に「甲183という場合がある。,205の1ないし4によれば,一審原告は,対象期間の全)
期間を通じて,スニーカーを販売したこと,一審原告は,2014年(平成26年)から2017年(平成29年)までの間,帯状線の輪郭が鋸歯状のX型十字が付されたNEXONX037のスニーカーを継

続して販売したことは,明らかである。
したがって,一審原告は,対象期間中に,原告各商標と同一又は類似する商標を付したスニーカーを販売していたから,一審被告の上記主張は失当である。



原判決8頁10行目から9頁1行目までを次のとおり改める。
一審被告が対象期間中に販売した被告商品の売上高は,原判決別紙3被告商品販売一覧表の「売上高欄記載のとおりであり,その合計額は●●●●●●●●●円である。




原判決9頁3行目から4行目までを次のとおり改める。
一審被告が対象期間中に販売した被告商品の仕入額は,原判決別紙3被告商品販売一覧表の「仕入額欄記載のとおりであり,その合計額は●●●●●●●●●円である。




原判決12頁9行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
(シ)原判決における仕入額以外の経費認定の誤り原判決は,被告商品の輸入販売に係る限界利益額の算定に当たり,仕入額以外の経費として,(外注費)広告費,諸掛,運賃,荷造梱包費,火災保険料,損害保険料及び輸入保険料について割合的な認定(合計●●●●●●●●円)をし,売上高からの控除を認めた。しかし,原判決がこのような認定をしたのは,一審被告において,商品別又は品番別の経費の管理はしていなかったという事情によるものであるが,一審被告の経費の管理が杜撰であることの不利益は一審被告自身が負うべきものであって,これを一審原告に転嫁する理由はない。そして,一審被告による立証によっては,どの商品に関する経費かが明らかでない以上,一審被告主張の仕入額以外の経費が被告商品の販売に直接関連して追加的に必要となった経費であることの立証がされていないことに帰するから,原判決の上記認定は誤りである。エ限界利益額したがって,一審被告が対象期間における被告商品の輸入販売により受けた限界利益の額は,前記アの被告商品の売上高●●●●●●●●●円から,前記イの被告商品の仕入額●●●●●●●●●円を控除した●●●●●●●●●円である。


原判決12頁10行目の⑷を⑶と改め,同頁23行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
エこの点に関し原判決は,原告各商標と同一ないし類似する商標を付したスニーカーと被告商品との販売態様や販売価格の違い及び一足当たりの限界利益の違いを商標法38条2項の推定を覆滅すべき事情として考慮し,上記推定の覆滅割合を2割と認定した。しかしながら,一審原告は,インターネット上の通信販売サイトのほか,百貨店や靴の量販店などの実店舗でも一審原告の商品を提供しており,その販売経路は広く,一審被告の販売経路を包含している関係にあるから,被告商品と販売態様に相違はなく,需要者層も異ならない。次に,スニーカーなどのファッションアイテムにおいては,需要者は,価格帯が多少異なっても気に入ったものを購入するものであり,例えば,同じブランドでも1500円~1万7280円という10倍以上の幅広い価格の商品が販売されている例(甲195)があるように,この程度の価格差をもって需要者層が異なるとはいえない。加えて,一審原告が被告商品の価格帯である1万5000円~2万1000円のスニーカーを現実には販売していないとしても,このようなスニーカーを販売する潜在的な能力を保有していることからすると,一審原告の商品と被告商品との販売価格の違い及び一足当たりの限界利益の違いは,同項の推定を覆滅すべき事由として考慮すべきではない。したがって,原判決の上記認定は誤りである。⑷小括以上によれば,一審被告による被告商品の輸入販売に係る一審原告の商標法38条2項に基づく損害額は,●●●●●●●●●円(前記⑵エ)となる。したがって,一審原告は,一審被告に対し,原告各商標権侵害の不法行為に基づく損害賠償として,上記損害額●●●●●●●●●円及びこれに対する平成29年4月15日(不法行為の後である訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。


原判決13頁2行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
この点に関し原判決は,証拠(甲183)及び弁論の全趣旨によれば,一審原告は,対象期間を通じて,英文字の「X型十字が左側(反時計回り方向)に傾いた形で組み合わされた2本の帯状線からなり,帯状線の輪郭が鋸歯状であるという特徴を持つ,原告各商標と同一又は類似する標章
を甲の側面部分に付したスニーカーを販売していたものと認められると判断した。
しかし,原判決が判断の根拠とした甲183のNEXOシリーズ販売実績と題する書面(甲183の1)は,帳簿等ではなく,単に一審原告がエクセル又はワードで作成した書面にすぎず,陳述書と同レベルの証明力しかない。また,甲183の1記載の販売額によれば,一審原告の商品は,4年間にわたって同一価格で販売されているが(例えば,
NEXONX003の1足当たりの平均価格は,2014年度につき67万9650円÷197足=3450円,2015年度につき45万1950円÷131足=3450円,2016年度につき33万4650円÷97足=3450円,
2017年度につき18万9750円÷55足=3450円)

靴のようなファッションアイテムは年を追うごとにデザインが陳腐化されて値下げを余儀なくされるのが通常であることや,まとめて購入した場合には割引することからすると,4年間もの長期にわたって全くの同一価格で販売されるのは不自然である。
したがって,甲183の1の記載は著しく不自然であり,その内容は信用できないから,原判決の上記判断は誤りである。
また,一審原告が当審で追加提出した甲205の1ないし4は,宛先がマスキングされ,社店コードや取引先コード等が空欄であり,保管状況の立証もないから,かかる証拠の証拠価値はない。



原判決13頁4行目から6行目まで及び同頁12行目から16行目までを削る。



原判決14頁10行目から22行目までを次のとおり改める。
一審被告が対象期間中に販売した被告商品の仕入額の合計は,原判決別紙3被告商品販売一覧表の「仕入額欄記載のとおり,●●●●●●●●●円である。




原判決17頁3行目の基づいて,の後にCREDITS株式会社(以下「CREDITS社という。)に委託して」を加え,同頁4行目の
派遣会社をCREDITS社と改め,同頁5行目末尾に次のとお
り加える。

CREDITS社は,ミュニック社以外の商品を販売していないから,かかる「販売手数料は,被告商品を含むミュニック社商品の販売に係る費用であり,被告商品の販売に直接関連する費用である。



原判決18頁8行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
例えば,乙28の1から,ミュニック社商品の展示会用のサンプルセレクト及び納期の確認,伊勢丹プロモーションキャンペーン用のサンプル依頼,2015年秋冬物のミュニック社商品の納期の確認のための海外出張であること,乙28の3から,ミュニック社本社における2016年秋冬物の展示会向けの商品ラインの確認や品質改善のミーティングのための海外出張であることを理解できる。このように,乙28の1ないし8から,海外出張費が被告商品を含むミュニック社商品の仕入販売に直接関連する費用であることが裏付けられる。

原判決20頁12行目の付されておらず,の次にまた,原告各商標が一審原告の商品を示す表示として周知とはいえないから,を加える。

原判決21頁1行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
オこの点に関し原判決は,被告商品の輸入販売に係る商標法38条2項に基づく一審原告の損害額の推定の覆滅割合を2割と認定したが,以下のとおり,原判決の認定には誤りである。(ア)商標法38条2項の推定規定は,需要者が商標の顧客吸引力を原因として商品を購入することを前提とする規定である。甲183の記載によれば,一審原告の商品の価格は3000円程度であるのに対し,被告商品の価格は,小売価格が1万5000円から2万1000円,卸売価格が5600円から1万1550円であるから,被告商品の価格は,一審原告の商品の価格の約2倍から4倍である。そして,需要者が,原告各商標と同一又は類似の標章を付した「NEXOシリーズのスニーカーを知っていれば,一審原告の商品の価格帯が3000円程度であること,一審原告の商品は,定価より高い価格で購入しなければ入手できないような人気ブランドではないことも知っているといえるから,約2倍から4倍の価格の被告商品を購入することはない。
このように一審原告の商品と被告商品とでは大きな価格差があり,安価のスニーカーを求める一審原告の需要者と高級志向のスニーカーを求める被告商品の需要者とでは,需要者層が異なること,一審原告の商品はインターネット上で販売されるのに対し,被告商品は高級デパートの店頭で販売され,販売態様においても差があることに照らすと,被告商品の販売がされなかったとしても,被告商品の需要者が,安価で大衆向けの一審原告の商品を購入することはあり得ない。
そうすると,需要者による一審原告の商品よりはるかに高額な被告商品の購入は,一審原告のブランドと間違えて購入したものといえないから,同項を適用する前提を欠き,同項の推定は全て覆滅するというべきである。
(イ)

また,仮に一審被告による被告商品の販売に係る限界利益率を一

審原告が訴状で主張していた販売価格の10パーセントとすると,一審原告の商品の1足当たりの限界利益は300円(前記(ア)の販売価格の10パーセント)となるのに対し,被告商品の1足当たりの限界利益は,560円から1155円(前記(ア)の卸売価格の10パーセント)となる。

そして,商標法38条2項に基づく損害額の推定の覆滅割合を2割とすると,同項の損害額は,1足当たり448円から924円(上記限界利益額×0.8)となり,一審原告の商品の1足当たりの限界利益額300円を上回るところ,かかる上回る部分については,一審被告の行為と相当因果関係がないから,同項の推定が覆滅されるというべきである。
したがって,上記覆滅割合を2割のみとした原判決の認定には誤りがある。

第4

当裁判所の判断

1
争点1(原告各商標と被告各標章の類否)について
以下のとおり訂正するほか,原判決の事実及び理由の第4の1記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決23頁6行目末尾に行を改めて次のとおり加える。また,一審被告は,靴はファッションアイテムの一つであり,そのデザインの良し悪しが購入するか否かを左右するから,このような靴におけるデザインの重要性を考慮すると,需要者は,靴を購入するに際し,側面も含めデザインを細部まで観察するのが通常であり,被告各標章と原告各商標は,2つの幅広線が対角線状に「X型十字に描かれ,それらの線が中央部分で交差するものであり,図形商標としての構成要素が極めて少ないものであるため,外観の類似性の判断においては,その細部まで観察する必要があるところ,被告各標章は,①右上から左下に伸びる帯が左上から右下に伸びる帯の上に重なっている点,②各帯の輪郭線に沿って,その内側にステッチがそれぞれ2本施されている点,③原告各商標は輪郭を一筆書きで表示しているが,被告各標章は帯が重なるように表されており,一筆書きでは表せない点,④原告各商標の鋸歯状の輪郭線は歯が細かいのに対し,被告各標章の輪郭線は歯が粗い点において原告各商標と相違し,被
告各標章は,相違点①ないし④により,需要者に対し原告各商標と異なる印象を与えるから(乙111,120ないし125)
,被告各標章と原告各
商標は,外観において類似しない旨主張する。
しかしながら,靴を購入するに際し,側面も含めデザインを細部まで観察するのが通常であるとしても,原告各商標と被告各標章とは,いずれも英文字のX型十字が左側(反時計回り方向)に傾いた形で組み合わされた2本の帯からなり,帯状線の輪郭が鋸歯状であるという点において共通し,かかる構成態様は,需要者に対して商品の出所識別標識として強い印象を与えるものと認められ,識別力の強い特徴的部分であるといえるのに対し,相違点①ないし④に係る被告各標章の構成態様は,いずれも一見して目立つ特徴であるとまではいえず,需要者に対して商品の出所識別標識として強い印象を与えるものとはいえない。
そうすると,被告各標章と原告各商標は,相違点①ないし④を勘案しても,外観において類似するというべきであるから,一審被告の上記主張は採用することができない。



原判決23頁13行目の被告商品のから17行目末尾までを次のとおり改める。
ウ以上によれば,原告各商標と被告各標章は,いずれも特定の称呼及び観念は生じないが,英文字の「X型十字が左側(反時計回り方向)に傾いた形で組み合わされた2本の帯状線からなり,帯状線の輪郭が鋸歯状であるという特徴的部分が共通し,外観において類似することに鑑みると,
原告各商標及び被告各標章が原告各商標の指定商品である
履物
に使用された場合には,その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものと認められるから,被告各標章は,原告各商標に類似する商標であるものと認められる。


2
争点2(被告各標章の商標法26条1項6号該当性)について

以下のとおり訂正するほか,原判決の事実及び理由の第4の2記載のとおりであるから,これを引用する。


原判決24頁4行目の(2)を(2)アと改め,同頁19行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
イまた,一審被告は,当審において,①靴の側面に商標を付しているメーカーにおいては,常に統一した図形を靴の側面に配しているわけではなく,靴の側面は,商品の外観を構成する全体のデザインの一要素にすぎず,側面に付されている標章も,その形状や位置について,同一メーカー内でも商品ごとに変化を加えているから(乙102ないし105等),靴において,商標として機能する部分は,通常は,変化のないタンやタグ等に付されたロゴマークである,②原告各商標の指定商品の需要者である消費者は,靴の側面のデザイン等に注目してインターネット上の通信販売サイトで商品購入を検討しているが,その際,靴の側面に付された図形を特定の出所に係る表示として認識しているわけではないから,靴の側面に付された図形に商標としての出所表示機能を持たせるためには,最低限標章が画一的なデザインとなっていることが必須であるところ,被告各標章は,太さや長さ,角の形状など商品によってデザインが異なり,被告商品において画一的なデザインとなっていないから,被告各標章に触れた需要者は,被告商品を含むミュニック社商品では,シリーズごとに靴の側面に様々なデザインが施されていると認識するにすぎず,被告各標章を何人かの業務に係る出所識別標識として認識するものではない,③ミュニック社が「運動靴の側面中央部に付されたX形状の図形よりなる位置商標についてした商標登録出願について拒絶査定
(乙
118,119)がされたことも,これを裏付けるものであるとして,被告商品に付された被告各標章は,
商標法26条1項6号需要者が何(人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていない商標)に該当するから,原告各商標権の効力は,被告各
標章に及ばない旨主張する。
しかしながら,①及び②については,先に説示したとおり,被告各標章は,別紙被告標章目録のとおり,いずれも被告商品の靴の甲の側面において,側方から見て概ね中央の位置に付されており,上記位置は,靴の外観において特に目立つ部分であること,靴において,上記位置に商標を付すことは一般的に行われていることからすると,上記位置に目立つ大きさで付されている被告各標章は,被告商品の出所識別機能を果たす態様で使用されていることが認められる。
また,靴の側面に付されている標章の形状や位置が同一のメーカー内でも商品ごとに変化を加えているからといって,靴において,商標としての出所識別機能を有する部分は,タンやタグ等に付されたロゴマークに限定されるものと解すべき合理的理由はないし,靴の側面に付された図形が,画一的なデザインでなければ,出所識別機能を果たさないとする合理的理由もない。
③については,ミュニック社が運動靴の側面中央部に付されたX形状の図形よりなる位置商標についてした商標登録出願について拒絶査定を受けたからといって,被告商品に付された被告各標章が需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていないことの根拠となるものではない。
したがって,一審被告の上記主張は採用することができない。



原判決24頁23行目の
3
から24行目の
以上によれば,までを
⑷以上によれば,と改める。

-3

原判決25頁2行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
そして,一審被告には,過失があったものと推定されるから(商標法39条,特許法103条),一審被告は,一審原告に対し,上記侵害行為(同法37条1号)につき,不法行為に基づく損害賠償責任を負うものである。3
争点3(一審原告の損害額)について
以下のとおり訂正するほか,原判決の事実及び理由の第4の3記載のとおりであるから,これを引用する。


原判決25頁5行目の被告は,をア一審被告は,と改め,同頁8

行目から12行目までを次のとおり改める。
そこで検討するに,①一審原告作成の「NEXOシリーズ販売実績と題する書面
(甲183の1)
には,
NEXONX037BLK/WHT

の商品について,2014年度の販売額が846,650円(販売数287)
,2015年度の販売額が533,950円(販売数181)
,201
6年度の販売額が300,900円(販売数102)
,2017年度の販売
額が230,100円(販売数78)である旨の記載があり,他の13種類のNEXOシリーズの商品についても,2014年度ないし2017年度の各販売額の記載があること,②NEXONX037BLK/WHTに係る写真(甲183の2の6)には,スニーカーの甲の側面に帯状線の輪郭が鋸歯状のX型十字が付されており,他の12種類の商品の写真(甲183の2の1ないし5,7,8)についてもこれと同様のX型十字が付されていること,③一審原告作成の納品書(控)(甲205の1
ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,
NEXONX037の商品に

つき,
2014年
(平成26年)
3月19日に3足
(原価金額8850円)

2015年(平成27年)6月16日に4足(原価金額1万1800円),
2016年(平成28年)9月8日に3足(原価金額8850円),201
7年(平成29年)6月14日に4足(原価金額1万1800円)がそれぞれ取引先に納品されたことが認められることを総合すると,一審原告は,対象期間(平成26年2月3日から平成29年4月6日までの間)を通じて,甲の側面に帯状線の輪郭が鋸歯状のX型十字が付されたスニーカ
ーを販売していたものと認めるのが相当である。
そして,上記スニーカーの甲の側面に付された帯状線の輪郭が鋸歯状のX型十字は,英文字のX型十字が左側(反時計回り方向)に傾い
た形で組み合わされた2本の帯状線からなり,帯状線の輪郭が鋸歯状であるという特徴を持つ,原告各商標と類似する標章であることが認められるから,一審原告は,対象期間中に被告各標章が付された被告商品と競合する商品を販売していたことが認められる。



原判決25頁13行目のこのようにをイこのようにと改め,同

頁16行目末尾に

これと異なる一審被告の主張は,理由がない。を加える。



原判決26頁2行目の靴流通問屋やの後に株式会社三越伊勢丹(以下「三越伊勢丹という。)及びその系列の」を加え,同頁3行目末尾に行を
改めて次のとおり加える。
一審被告は,平成27年8月頃,CREDITS社との間で業務委託契約を締結し,以後,CREDITS社が三越伊勢丹及びその系列の百貨店における被告商品の販売活動を行った(乙78,126,130)。また,一審被告は,平成28年4月25日,Aとの間で業務委託契約を締結し,以後,Aがセレクトショップ向けの被告商品の営業活動を行った(乙27)。



原判決29頁1行目の
また,から同頁3行目末尾までを次のとおり改め
る。
また,一審被告は,ミュニック社商品の販売活動等に関し,CREDITS社及びAとの間でそれぞれ業務委託契約を締結していた(乙27,126,130)。



原判決30頁8行目から24行目までを削り,
同頁25行目の
エウ

と改める。



原判決31頁8行目の運賃,の後に前記イ(ケ)の販売手数料,を加
え,
同頁15行目から16行目にかけての
合計●●●●●●●●円合を計●●●●●●●●●円と改める。


原判決32頁6行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
⒟販売手数料については,証拠(乙27,56,59,78の1ないし9,126,130)及び弁論の全趣旨によれば,①一審被告は,CREDITS社との間では平成27年8月頃,Aとの間では平成28年4月25日付けでそれぞれ業務委託契約を締結し,CREDITS社及びAが,上記各業務委託契約に基づき,対象期間中に,被告商品を含むミュニック社商品の販売活動等を行ったこと,②一審被告は,上記各業務委託契約に基づき,販売代行費,業務委託費又は業務委託料として,CREDITS社及びAに対し,合計●●●●●●●●●円を支払ったことが認められる。そして,前掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,一審被告が支払った上記●●●●●●●●●円中には,被告商品の販売数量に対応する部分が含まれていることが認められるから,当該部分については,被告商品の輸入販売に直接関連する経費に当たるものと認められる。加えて,前記(a)認定のとおり,一審被告は,ミュニック社商品の経費について商品別又は品番別に管理しておらず,各経費を直接的に示す資料はないこと,ミュニック社商品全体の販売総額に占める被告商品の販売総額の割合が約27パーセントであることなどを総合考慮すると,販売手数料についての被告商品の輸入販売に係る費用の額は,上記金額の15%に当たる●●●●●●●●円と認めるのが相当である。


原判決32頁7行目の⒟を(e)と,同頁9行目の(e)を⒡
と改め,同頁14行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
⒢以上のとおり,その他控除すべき経費の合計額は,●●●●●●●●●円(前記(a)ないし⒡の合計額)となる。これに対し一審原告は,被告商品の販売に係る限界利益額の算定に当たり,仕入額以外の各経費について割合的な認定をして売上高からの控除を認めることは妥当でなく,一審被告による立証によっては,どの商品に関する経費かが明らかでない以上,一審被告主張の仕入額以外の経費は,被告商品の販売に直接関連して追加的に必要となった経費であることの立証がされていないことに帰するから,控除すべきではない旨主張する。しかしながら,一審被告において,商品別又は品番別の経費の管理はされておらず,上記各費用の被告商品に係る部分を直接的に示す資料は存在しないという事実関係の下においては,これを経費として全く認定しないというのは相当ではなく,割合的認定をすることにも,合理性があるというべきである。したがって,一審原告の上記主張は採用することができない。⑼

原判決32頁17行目から21行目までを削り,同頁18行目の⒝を(a)と改め,同頁末行から33頁5行目までを次のとおり改める。⒝前記イ(シ)の旅費交通費のうち,交通費及び国内出張費は,その支出と被告商品の販売との関連性について具体的な主張立証はなく,控除すべき経費には該当しない。海外出張費については,被告が提出する出張報告書等(乙28)によっても,これらの海外出張が特に被告商品の輸入販売のために必要となったことを認めるに足りず,被告商品の輸入販売に直接関連して追加的に必要となった経費とはいえない。この点に関し一審被告は,特に海外出張費について,一審被告の従業員が作成した出張報告書(乙28の1ないし5)及び海外出張精算書(乙28の6ないし8)を挙げて,海外出張費が被告商品を含むミュニック社商品の仕入販売に直接関連する費用である旨主張する。しかしながら,上記出張報告書及び海外出張精算書によれば,海外出張がミュニック社商品の輸入販売と関連して行われていたことが認められるものの,その記載内容からは,未だ不確定な事前商談であることもうかがわれること,納期の確認等は海外にまで出向かなくとも可能なものも含まれることなどに照らすと,これらの海外出張が被告商品の輸入販売に直接関連して必要となったことを認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって,一審被告の上記主張は,採用することができない。⑽
原判決33頁6行目の⒟を⒞と,同頁9行目の(e)を⒟と,
同頁11行目の⒡を(e)と改め,同頁17行目から21行目までを次のとおり改める。
(ウ)限界利益の額以上によれば,対象期間における被告商品の輸入販売により,一審被告が受けた限界利益の額は,被告商品の売上高●●●●●●●●●円(前記(ア))から,被告商品の仕入額●●●●●●●●●円(前記(イ)a)及びその他控除すべき経費●●●●●●●●●円(前記(イ)b⒢)を控除した244万5001円であると認められる。そうすると,一審被告が受けた上記限界利益の額は,商標法38条2項により,一審原告の受けた損害額と推定される(以下,この推定を「本件推定という。」)

原判決33頁22行目から35頁23行目までを次のとおり改める。⑶推定覆滅事由について一審被告は,①一審原告の商品と被告商品との価格差及び限界利益額の差,需要者層の相違,販売態様の相違,②一審原告が原告各商標を使用しない商品を販売していたこと,③競合品の存在,④一審被告の営業努力,ブランド力の差等は,本件推定を覆す事情に該当し,かかる事情を考慮すると,本件推定は覆滅される旨主張するので,以下において判断する。ア一審原告の商品と被告商品との価格差及び限界利益額の差,需要者層の相違,販売態様の相違について一審被告は,①被告商品の価格は,一審原告の商品の価格の約2倍から4倍であり,一審原告の商品と被告商品とでは大きな価格差があり,安価のスニーカーを求める一審原告の需要者と高級志向のスニーカーを求める被告商品の需要者とでは,需要者層が異なること,一審原告の商品はインターネット上で販売されるのに対し,被告商品は高級デパートの店頭で販売され,販売態様においても差があることに照らすと,被告商品が販売されなかったとしても,被告商品の需要者が,安価で大衆向けの一審原告の商品を購入することはあり得ないこと,②仮に一審被告による被告商品の販売に係る限界利益率を一審原告が訴状で主張していた販売価格の10パーセントとすると,一審原告の商品の1足当たりの限界利益は300円となるのに対し,被告商品の1足当たりの限界利益は,560円から1155円となり,限界利益の額に差があることから,これらの事情は本件推定を覆す事情に該当する旨主張する。(ア)そこで検討するに,証拠(甲68ないし77,183ないし186)及び弁論の全趣旨によれば,一審原告は,自社の商品を,主に靴の量販店やインターネット上の通信販売サイトを通じて販売し,その小売価格は2000円から6000円程度の商品が中心であり,一審原告が対象期間中に原告各商標と類似する商標を付したスニーカーを販売した際の販売価格は1足当たり3000円程度であったことが認められる。一方で,証拠(乙19)及び弁論の全趣旨によれば,被告商品は主に百貨店等の店頭で販売されたものであり,原判決別紙3被告商品販売一覧表記載のとおり,その小売価格は1万5000円から2万1000円,被告が百貨店等に販売する際の卸売価格は5600円から1万1550円であったことが認められる。上記認定事実によれば,一審原告の商品と被告商品の販売価格は,1足当たりの小売価格で5倍から7倍程度の差があり,被告商品が高額であることが認められる。そして,商標権が,特許権等の他の工業所有権とは異なり,それ自体に創作的価値があるものではなく,商品又は役務の出所である事業者の営業上の信用等と結びつくことによってはじめて一定の価値が生ずるという性質を有するため,商標権が侵害された場合に,侵害者の得た利益が当該商標権に係る登録商標の顧客誘引力のみによって得られたものとはいえない場合が多く,スニーカーにおいても,価格,全体のデザイン,アッパー及びソールの素材,履き心地等も考慮されて購買動機が形成されることに照らすと,一審原告の商品と被告商品との販売価格の上記違いは,原告各商標と類似する被告各標章が購買動機の形成に寄与した程度を低く評価すべき事情に当たるものと認めるのが相当である。したがって,一審原告の商品と被告商品との販売価格の上記違いは,本件推定を覆す事情に該当するものと認められる。一方で,一審被告が主張する一審原告の商品と被告商品との1足当たりの限界利益の額の差については,一般に,需要者が限界利益の額を認識し得るものではなく,限界利益の額の差が購買動機の形成に直接影響するものとはいえなから,本件推定を覆す事情に該当するものと認めることはできない。また,一審被告が主張する一審原告の商品と被告商品との販売態様の差についても,被告商品がデパート等でのみ限定販売されていたとする事情は認められないから,本件推定を覆す事情に該当するものと認めることはできない。(イ)これに対し一審原告は,スニーカーなどのファッションアイテムにおいては,需要者は,価格帯が多少異なっても気に入ったものを購入するものであり,例えば,同じブランドでも1500円~1万7280円という10倍以上の幅広い価格の商品が販売されている例(甲195)があるように,この程度の価格差をもって需要者層が異なるとはいえないこと,一審原告が被告商品の価格帯である1万5000円~2万1000円のスニーカーを現実には販売していないとしても,このようなスニーカーを販売する潜在的な能力を保有していることからすると,一審原告の商品と被告商品との販売価格の違いは,本件推定を覆滅すべき事情に該当しない旨主張する。しかしながら,一審原告の上記主張は,前記(ア)で説示したところに照らし,採用することができない。イ一審原告が原告各商標を使用しない商品を販売していたことについて一審被告は,原告が販売していた商品の多くに,原告各商標と同一又は類似の標章が付されていなかったから,被告商品の販売によって一審原告の売上げが減少したという関係にないことは,本件推定を覆す事情に該当する旨主張する。しかしながら,一審被告による被告商品の輸入販売行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が一審原告に認められることは,前記⑴イ認定のとおりであり,一審原告が原告各商標と類似する標章が付されていないスニーカーも販売していたことを指摘するのみでは,本件推定を覆滅すべき事情があるものということはできない。したがって,一審被告の上記主張は,採用することができない。ウ競合品の存在について一審被告は,側面に「X型十字が付された大人用スニーカーは,被告商品の他にも市場に多数存在していることは,本件推定を覆す事情に該当する旨主張する。
しかしながら,乙1によれば,一審被告が他のスニーカーに付されていると指摘するX型十字は,その形状が被告各標章や原告各商
標とは大きく異なるものであり,このほか,原告各商標と同一又は類似の標章が付された他社のスニーカーの存在及びそのシェアについての具体的な主張立証はされていないから,一審被告の上記主張は採用することができない。


一審被告の営業努力,ブランド力の差等について
一審被告は,被告商品を販売するための営業努力,一審原告と一審被告とのブランド力の差,原告各商標の訴求力の程度等からすれば,原告各商標の被告商品の売上げへの寄与は著しく低いから,かかる事情は本件推定を覆す事情に該当する旨主張する。
しかしながら,一審被告が作成した展示会の資料においてミュニック社商品については2014年日本デビューとの記載がされ,一
審被告が広告宣伝活動を行ったこと(前記⑵イ(キ))を考慮しても,対象期間中の日本国内におけるミュニック社商品に係るブランドの知名度の程度を裏付ける証拠はない。
他方で,証拠(甲170ないし176,180ないし182)及び弁論の全趣旨によれば,原告各商標に関する販売,広告宣伝状況については,平成14年頃から原告各商標と類似の標章が付されたスニーカーが,原告が許諾した業者によって販売されており,歌手のBがこれを着用した雑誌広告が掲載されたこともあったとの事情も認められ,
これらの点からすれば,一審被告の主張する上記各点をもって,本件推定を覆滅すべき事情に該当するものと認めることはできない。
したがって,一審被告の上記主張は,採用することができない。

まとめ
以上を前提に検討するに,①前記ア(ア)認定の本件推定を覆す事情の内容,②前記ア(ア)認定のとおり,商標権が侵害された場合に,侵害者の得た利益が当該商標権に係る登録商標の顧客誘引力のみによって得られたものとはいえない場合が多く,スニーカーにおいても,価格,全体のデザイン,アッパー及びソールの素材,履き心地等も考慮されて購買動機が形成されること等を総合考慮すると,被告商品の限界利益の額に対する原告各商標の寄与割合は,8割と認めるのが相当であり,上記寄与割合を超える部分については被告商品の限界利益の額と一審原告の受けた損害額との間に相当因果関係がないものと認められる。
したがって,本件推定は上記限度で覆滅されるから,商標法38条2項に基づく一審原告の損害額は,被告商品の限界利益の額(前記⑵ウ(ウ)の244万5001円)の8割に相当する195万6000円と認められる。」


原判決35頁24行目から37頁末行までを次のとおり改める。
⑷小括以上によれば,一審原告は,一審被告に対し,原告各商標権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき,195万6000円(前記⑶オ)及びこれに対する平成29年4月15日(不法行為の後である訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。
第5

結論

以上によれば,一審原告の請求は,195万6000円及びこれに対する平成29年4月15日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないから棄却すべきものである。したがって,これと異なる原判決は失当であって,一審被告の控訴は一部理由があるから,原判決を上記のとおり変更し,一審原告の控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第1部

裁判長裁判官

大鷹一郎
裁判官

小林康彦
裁判官高橋彩は,転補のため署名押印することができない。

裁判長裁判官

大鷹一郎
(別紙)

1
商標権目録

登録第4616840号商標
商標の構成

登録出願日

平成14年1月22日

設定登録日

平成14年11月1日

更新登録日

平成24年10月16日

指定商品

第25類被服,ガーター,靴下止め,ズボつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服
2
登録第5348806号商標
商標の構成

登録出願日

平成22年4月15日

設定登録日

平成22年8月27日

指定商品

第25類被服,ガーター,靴下止め,ズボつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服
(別紙)

被告標章目録

被告標章1の1

※スニーカー左足外側面に表示されている写真赤色直線によって囲まれた部分内のX字形部分が被告標章1の1であり,被告標章1の1と同一部分に表示されている写真表示の色彩のX字形部分が被告標章1の2である。

被告標章1の2

被告標章2の1

※スニーカー左足外側面に表示されている写真赤色直線によって囲まれた部分内のX字形部分が被告標章2の1であり,被告標章2の1と同一部分に表示されている写真表示の色彩のX字形部分が被告標章2の2~4である。

被告標章2の2

被告標章2の3

被告標章2の4

被告標章3の1

※スニーカー左足外側面に表示されている写真赤色直線によって囲まれた部分内のX字形部分が被告標章3の1であり,被告標章3の1と同一部分に表示されている写真表示の色彩のX字形部分が被告標章3の2~9である。

被告標章3の2

被告標章3の3

被告標章3の4

被告標章3の5

被告標章3の6

被告標章3の7

被告標章3の8

被告標章3の9

被告標章4の1

※スニーカー左足外側面に表示されている写真赤色直線によって囲まれた部分内のX字形部分が被告標章4の1であり,被告標章4の1と同一部分に表示されている写真表示の色彩のX字形部分が被告標章4の2~4である。

被告標章4の2

被告標章4の3

被告標章4の4

被告標章5

※スニーカー左足外側面に表示されている写真赤色直線によって囲まれた部分内のX字形部分が被告標章5の1であり,被告標章5の1と同一部分に表示されている写真表示の色彩のX字形部分が被告標章5の2である。

被告標章5の2

被告標章6の1

※スニーカー左足外側面に表示されている写真赤色直線によって囲まれた部分内のX字形部分が被告標章6の1であり,被告標章6の1と同一部分に表示されている写真表示の色彩のX字形部分が被告標章6の2である。

被告標章6の2

被告標章7の1

※スニーカー左足外側面に表示されている写真赤色直線によって囲まれた部分内のX字形部分が被告標章7の1であり,被告標章7の1と同一部分に表示されている写真表示の色彩のX字形部分が被告標章7の2~4である。

被告標章7の2

被告標章7の3

被告標章7の4

被告標章8の1

※スニーカー左足外側面に表示されている写真赤色直線によって囲まれた部分内のX字形部分が被告標章8の1であり,被告標章8の1と同一部分に表示されている写真表示の色彩のX字形部分が被告標章8の2~10である。

被告標章8の2

被告標章8の3

被告標章8の4

被告標章8の5

被告標章8の6

被告標章8の7

被告標章8の8

被告標章8の9

被告標章8の10

被告標章9

・赤枠部分が被告標章である。
・同標章が付された被告商品として以下のものがある。
OSAKA840100(ブラウン。上記図のもの。

OSAKA840101(ダークグリーン)
OSAKA840102(ワインレッド)
OSAKA840104(ブラウン)
OSAKA840107(ブラック)

被告標章10

・赤枠部分が被告標章である。
・同標章が付された被告商品として以下のものがある。
OSAKALEATHER840094(ブルー。上記図のもの。)
OSAKALEATHER840099(ブラック)

被告標章11

・赤枠部分が被告標章である。
・同標章が付された被告商品として以下のものがある。
MASSANA862099

被告標章12

・赤枠部分が被告標章である。
・同標章が付された被告商品として以下のものがある。
MASSANA862100

被告標章13

・赤枠部分が被告標章である。
・同標章が付された被告商品として以下のものがある。
OSAKA840172

被告標章14

・赤枠部分が被告標章である。
・同標章が付された被告商品として以下のものがある。
OSAKA840122

被告標章15

・赤枠部分が被告標章である。
・同標章が付された被告商品として以下のものがある。
OSAKA840124

被告標章16

・黄枠部分が被告標章である。
・同標章が付された被告商品として以下のものがある。
OSAKA840125

被告標章17

・赤枠部分が被告標章である。
・同標章が付された被告商品として以下のものがある。
OSAKA840069

被告標章18

・赤枠部分が被告標章である。
・同標章が付された被告商品として以下のものがある。
OSAKA840070

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