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生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求事件
事件番号平成27(行ウ)13
事件名生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求事件
裁判年月日令和3年5月12日
裁判所名・部福岡地方裁判所
裁判日:西暦2021-05-12
情報公開日2021-05-27 12:00:40
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令和3年5月12日判決言渡

同日原本領収

裁判所書記官

平成27年(行ウ)第13号

生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求事件(第1

事件)
平成28年(行ウ)第79号
生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求事件(第2

事件)
平成29年(行ウ)第50号

生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求事件(第3

事件)
口頭弁論終結の日

令和2年11月18日
判決
当事者の表示

別紙1当事者目録記載のとおり

(以下,第1事件ないし第3事件の各原告らを併せて原告らと
いい,第1事件ないし第3事件被告国を被告国という。)
主1文
別紙1当事者目録記載の原告番号17,18,61及び62の訴えのうち,別紙2-1第1事件処分一覧表の処分行政庁欄記載の各行政庁が
処分日欄記載の各年月日付けで上記原告らに対してした各保護変更決定処分の取消しを求める部分をいずれも却下する。
2
別紙1当事者目録記載の原告番号17,18,61及び62のその余の請求並びにその余の原告らの請求をいずれも棄却する。

3
訴訟費用は原告らの負担とする。

第1
1実及び理由
請求
第1事件

(1)別紙2-1第1事件処分一覧表の処分行政庁欄記載の各処分行政庁が処分日欄記載の各年月日付けで処分の名宛人欄記載の各原告に対してした各保護変更決定処分を取り消す。
(2)被告国は,第1事件原告ら各自に対し,10万円及びこれに対する平成25年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。2
第2事件

(1)別紙2-2第2事件処分一覧表の処分行政庁欄記載の各処分行政庁が処分日欄記載の各年月日付けで処分の名宛人欄記載の各原告に対し
てした各保護変更決定処分を取り消す。
(2)被告国は,第2事件原告ら各自に対し,10万円及びこれに対する平成26年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。3
第3事件

(1)別紙2-3第3事件処分一覧表の処分行政庁欄記載の各処分行政庁が処分日欄記載の各年月日付けで処分の名宛人欄記載の各原告に対してした各保護変更決定処分を取り消す。
(2)被告国は,第2事件原告ら各自に対し,10万円及びこれに対する平成27年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2

事案の概要
本件は,生活保護受給者である原告らが,第1事件については,平成25年5月16日付け厚生労働省告示第174号による生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生労働省告示第158号。以下保護基準という。)の改定(以下平成25年改定という。)に,第2事件については,平成26
年3月31日付け厚生労働省告示第136号による保護基準の改定(以下平成26年改定という。)に,第3事件については,平成27年3月31日付け厚生労働省告示第227号による保護基準の改定(以下平成27年改定といい,これと平成25年改定及び平成26年改定を併せて本件各改定という。)にそれぞれ基づいてされた,各原告の生活扶助費を減額する旨の保護
変更決定(以下本件各決定という。)は,憲法25条並びに生活保護法3条及び8条等に違反する違憲,違法なものであるなどとして,その取消しを求
めるとともに,上記保護基準を改定した厚生労働大臣の行為が国家賠償法上違法であるとして,各10万円の慰謝料及びこれに対する第1事件原告らについては平成25年8月1日から,第2事件原告らについては平成26年4月1日から,第3事件原告らについては平成27年4月1日(いずれも各原告の保護変更日又はそれ以降の日)から各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1
生活保護制度の概要

(1)基本原理

無差別平等の原理
すべて国民は,生活保護法の定める要件を満たす限り,同法による保護
(以下保護という。)を,無差別平等に受けることができる(生活保護法2条)。

最低生活の原理
生活保護法により保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水
準を維持することができるものでなければならない(生活保護法3条)。ウ
補足性の原理
保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆ
るものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる(生活保護法4条1項)。
(2)保護の原則

基準及び程度の原則
保護は,厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基
とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする(生活保護法8条1項)。また,上記基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種
類に応じて必要な事項を考慮した最低限度の生活の需要を満たす十分なものであって,
かつ,
これを超えないものでなければならない
(同条2項)


必要即応の原則
保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際
の必要の相違を考慮して有効かつ適切に行うものとする
(生活保護法9条)


世帯単位の原則
保護は,原則として,世帯を単位としてその要否及び程度を定めるもの
とする(生活保護法10条本文)。
(3)保護の種類及び内容

種類
保護には,生活扶助,教育扶助,住宅扶助,医療扶助,介護扶助,出産
扶助,生業扶助及び葬祭扶助の8種類がある(生活保護法11条)。イ
生活扶助
生活扶助は,困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に
対して,①衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの及び②移送の範囲内において行う
(生活保護法12条)生活扶助は,原則として,

金銭給付によって行う(同法31条1項本文)。
(4)保護基準の体系(乙A1,5,10,21)

保護の要否は,厚生労働大臣が定める保護基準(乙A1)に基づき,そ
の者の属する世帯の最低生活費を算定し,この最低生活費と当該世帯の収入との比較により判定し,世帯の収入が最低生活費を下回る場合に,当該不足分を補う程度において保護が行われる(生活保護法8条)。

級地について
保護基準は,全国の市町村を1級地-1,1級地-2,2級地-1,2
級地-2,3級地-1及び3級地-2の6区分の級地に分類した上で,各級地に応じて定められ,当該市町村内に居住する各被保護世帯に適用され
る。

生活扶助基準
生活扶助基準は,保護基準のうち日常生活に必要な基本的かつ経常的経
費についての最低生活費を定めたものであり,基準生活費と加算に大別されている。基準生活費は,個人単位に消費される経費に対応する基準として年齢別に定められた第1類の表に定める個人別の額を合算した額(第1類費)と,世帯全体としてまとめて支出される経費に対応する基準として世帯人員数別に定められた第2類の表に定める世帯別の額(第2類費)の合計額である。


生活扶助基準の設定方法

(ア)現行の生活扶助基準は,世帯員の年齢,世帯構成及び所在地域によって,基準額が決定されるが,これら相互の関係の基軸となるのは,標準3人世帯(33歳,29歳,4歳。以下標準世帯という。)の基準額である。具体的には,まずは標準世帯の生活扶助基準額を定め,これを一般世帯の消費実態の第1類費と第2類費の構成割合を参考として,第1類費と第2類費に一定の割合で分けた上で,第1類費は,標準世帯について,年齢階級別に定められた数値に一定の割合(指数)を掛けて1人当たりの基準額に分解し,これを基に,標準世帯とは異なる他の年齢階級の基準額を算出し,一方で,第2類費も,標準世帯(3人世帯)
について定められた基準額に一定割合(指数)を掛けて,標準世帯とは異なる世帯人員の基準額を算出する。また,級地による地域差についても,1級地-1の基準額に一定割合(指数)を掛けて,他の級地の基準額を設定する(以下,標準世帯を基軸として他の年齢階級及び世帯人員の額を定めること及び1級地-1を基軸として他の級地の基準額を定め
ることを,基準の展開又は単に展開といい,展開に相当する部
分を展開部分という。)。

(イ)生活扶助基準の過去の改定率については,1級地-1における標準世帯で表されるのが通常である。
2
前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。
なお,
証拠番号は特記なき限り枝番号を含む。


(1)原告ら(甲C個17,18,G個56,57,61,62)ア
原告らは,いずれも福岡県内の福岡市,遠賀郡水巻町,同郡岡垣町,古
賀市,福津市,北九州市又は飯塚市に居住する者である。
原告らの居住する市町村のうち,福岡市及び北九州市の級地は1級地-2であり,飯塚市,古賀市,福津市,遠賀郡水巻町及び同郡岡垣町の級地は2級地-2である。

別紙1当事者目録記載の原告番号17(以下原告17といい,その
余の原告らも原告番号を用いて同様に表記する。)及び18(以下原告17らという。),原告56及び57(以下原告56らという。)並びに原告61及び62(以下原告61らという。)は,それぞれ同一世帯に属する者である。
(2)平成25年改定に至る経緯等(乙A6)

平成23年2月,厚生労働省の審議会である社会保障審議会の下に常設
部会として生活保護基準部会(以下基準部会という。)が設置され,平成21年全国消費実態調査(以下平成21年全消調査という。)の個票データを用いて,国民の消費動向,特に一般低所得世帯の生活実態を勘案しながら,生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が図られているか否か等について検証が行われた(以下平成25年検証という。)。
基準部会は,平成25年1月,上記検証の結果を,社会保障審議会生活保護基準部会報告書(甲A3,乙A6。以下平成25年報告書という。)として取りまとめた。

(3)平成25年改定の概要(甲A3,63,242,乙A6,18,27,28)
厚生労働大臣は,社会経済状況が変化している中で,①基準部会における検証結果に基づき,年間収入階級第1・十分位層(第1・十分位とは,全世帯を所得階級に応じて10等分し,10等分したうちの所得が1番低い世帯をいう。以下,上記と同じような意味において年間収入階級を表すときは,単に第○・○分位という。)の世帯の消費実態と生活扶助基準の年齢,世帯人員,居住地域別の較差を是正するとともに(以下ゆがみ調整という。),②近年デフレ傾向が続いてきた中,生活扶助基準額が据え置かれて
きたことを踏まえ,消費者物価指数の近年の動向を勘案して(以下デフレ調整という。),生活扶助基準の見直しを行うこととし,③その際,生活保護受給世帯及び一般低所得者世帯に及ぼす影響を考慮して,3年間をかけて段階的に実施するとともに,平成25年改定前の生活扶助基準からの増減幅がプラスマイナス10%を超えないように調整する激変緩和措置,及び,
他制度への影響を最小限のものとするための対応を採ることといった方策を講じた上で,平成25年改定を行った。
厚生労働大臣は,デフレ調整を行うに当たって,総務省が公表している消費者物価指数(全国・年平均のもの。以下総務省CPIという)のデータを使用しているところ,物価指数は,品目と呼ばれる最小単位の
価格指数を,各品目のウエイト(家計の消費支出全体に占める各品目の支出金額の割合)で加重平均することによって,求めることができる。そして,デフレ調整では,総務省CPIの全ての消費品目から,①生活扶助以外の他扶助で賄われる品目(家賃,教育費,医療費等)及び②原則として保有が認められておらず又は免除されるため生活保護受給世帯において支出すること
が想定されていない品目(自動車関係費,NHK受信料等)(以下,①及び②を併せて非生活扶助相当品目という。)を除いた品目(以下生活扶助相当品目という。)を対象として算出した消費者物価指数(全国・年平均のもの。以下生活扶助相当CPIという。)を用いた上で,平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIを算出し,それを用いて平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率(マイナス4.78%)を算定して,これを基に生活扶助基準の見直しが行われた。
(4)平成25年改定に基づく保護変更決定(第1事件原告らに対するもの。以下平成25年決定という。甲C17~22,24,26,D1~4,6~9,12~14,E28~33,F34~38,G40~47,50,5
2,54,56~62,64~66,68,69,71~90,H91~96)

厚生労働大臣は,平成25年5月16日付け厚生労働省告示第174号
により,生活扶助基準を改定した(平成25年改定)。

第1事件原告らは,別紙2-1第1事件処分一覧表のとおり,平成25
年決定を受け,生活扶助費を減額された。第1事件原告らは,平成25年決定を不服として,福岡県知事に対し,それぞれ審査請求を行ったが,いずれも棄却された。
なお,第1事件原告らのうち,原告17ら,原告56ら及び原告61らは,それぞれ同一世帯に属しているため,いずれも世帯主(原告17,5
6及び62)に対して保護変更決定がされている。
(5)平成26年改定に基づく保護変更決定(第2事件原告らに対するもの。以下平成26年決定という。甲E98~101,G97)

厚生労働大臣は,平成26年3月31日付け厚生労働省告示第136号
により,生活扶助基準を改定した(平成26年改定)。

第2事件原告らは,別紙2-2第2事件処分一覧表のとおり,平成26
年決定を受け,生活扶助費を減額された。第2事件原告らは,平成26年
決定を不服として,福岡県知事に対し,それぞれ審査請求を行ったが,いずれも棄却された。
(6)平成27年改定に基づく保護変更決定(第3事件原告らに対するもの。以下平成27年決定という。甲G102~106,108~111)ア
厚生労働大臣は,平成27年3月31日付け厚生労働省告示第227号
により,生活扶助基準を改定した(平成27年改定)。

第3事件原告らは,別紙2-3第3事件処分一覧表のとおり,平成27
年決定を受け,生活扶助費を減額された。第3事件原告らは,平成27年決定を不服として,福岡県知事に対し,それぞれ審査請求を行ったが,いずれも棄却された。

(7)本件訴えの提起
第1事件原告らは,平成27年3月16日,平成25年決定の取消し等を求める訴えを提起し,第2事件原告らは,平成28年12月9日,平成26年決定の取消し等を求める訴えを提起し,第3事件原告らは,平成29年12月6日,平成27年決定の取消し等を求める訴えを提起した。第2事件及
び第3事件は,いずれも第1事件に弁論併合された。
3
主たる争点

(1)審査請求前置の有無(原告17ら及び原告61らの訴えに係る本案前の争点)
(2)本件各改定の合憲性及び適法性(本件各改定が厚生労働大臣の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものといえるか)
アイ
ゆがみ調整の適否


判断枠組み等(裁量権の範囲,審査方法,制度後退禁止原則等)

デフレ調整の適否


ゆがみ調整及びデフレ調整を併せて行ったことの適否


本件各改定後の生活扶助基準の適否等

(3)本件各改定の国家賠償法上の違法性,慰謝料額
4
主たる争点に関する当事者の主張
主たる争点に関する当事者の主張は,原告らにつき別紙3-1記載のとおり
であり,被告らにつき別紙3-2記載のとおりである。
第3

当裁判所の判断

1
認定事実
前提事実に加え,各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が
認められる。
(1)本件各改定に至る経緯等

水準均衡方式が採用されるに至るまでの経緯等

(ア)生活扶助基準の改定方式については変遷があり,昭和23年度ないし昭和35年度はマーケットバスケット方式(最低生活を営むために必要な飲食物費や衣類,家具什器,入浴料といった個々の品目を一つ一つ積み上げて最低生活費を算出する方式),昭和36年度ないし昭和39年度はエンゲル方式(栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて計算し,別に低所得世帯の実態調査から,
この飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め,これから逆算して総生活費を算出する方式),昭和40年度ないし昭和58年度は格差縮小方式(一般国民の消費水準の伸び率以上に生活
扶助基準を引き上げ,結果的に一般国民と被保護世帯との消費水準の格差を縮小させようとする方式)がそれぞれ採用された(甲A161,201,206,乙A7の2,10)。
(イ)格差縮小方式が採用されたことに伴い,被保護世帯の消費支出が一般国民の消費支出の60%を超えたことを受けて,厚生省(当時)の審議
会である中央社会福祉審議会は,昭和58年12月23日,生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)(以下昭和58年意見具申という。)を作成した。昭和58年意見具申には,概要,以下の内容が記載されている。(乙A8,9)
a
生活扶助基準の評価

(a)生活保護において保障すべき最低生活の水準は,一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであることは,
既に認められているところである。
(b)総理府(現在の内閣府)作成の家計調査を所得階層別に詳細に分析検討した結果,現在の生活扶助基準は,一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとの所見を得た。
しかし,国民の生活水準は,今後も向上すると見込まれるので,

生活保護受給世帯及び低所得世帯の生活実態を常時把握しておくことはもちろんのこと,生活扶助基準の妥当性についての検証を定期的に行う必要がある。
b
生活扶助基準改定方式

(a)生活保護において保障すべき最低生活の水準は,一般国民生活における消費水準との比較における相対的なものとして設定すべきものであり,生活扶助基準の改定に当たっては,当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に,前年度までの一般国民の消費水準との調整が図られるよう適切な措置を採ることが必要で
ある。
(b)当該年度に予想される国民の消費動向に対応する見地から,政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠することが妥当である。なお,賃金や物価は,そのままでは消費水準を示すものではない
ので,その伸びは,参考資料にとどめるべきである。

(ウ)昭和58年意見具申を受け,昭和59年4月から現在に至るまで,生活扶助基準の改定方式については,当該年度に想定される一般国民の消
費動向を踏まえると同時に,前年度までの一般国民の消費実態との調整を図るという水準均衡方式が採用されている。水準均衡方式では,政府経済見通しの民間最終消費支出の伸び率を基礎とし,国民の消費動向や社会経済情勢を総合的に勘案して,生活扶助基準の改定を決定することとされている。


生活保護制度の在り方に関する専門委員会における生活扶助基準の検証
(ア)社会保障審議会は,平成15年6月16日,今後の社会保障改革の方向性に関する意見において,生活保護については,(中略)今後その在り方についてより専門的に検討していく必要がある旨指摘した(乙A12の1)。
(イ)内閣は,平成15年6月27日,経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003を閣議決定した。そこでは,

生活保護においても,物価,賃金動向,社会経済情勢の変化,年金制度改革などとの関係を踏まえ,老齢加算等の扶助基準など制度,運営の両面にわたる見直しが必要である。

とされた(乙A12)。(ウ)上記(ア)及び(イ)等を踏まえ,平成15年に,保護基準の在り方等の生活保護制度全般について議論するため,社会保障審議会福祉部会の下に生活保護制度の在り方に関する専門委員会(以下専門委員会と
いう。)が設置された。

専門委員会は,平成15年8月から同年12月に至るまで合計6回にわたり開催され,保護基準の在り方等を始めとする生活保護制度全般について,検証が行われた(以下平成15年検証という。)。
(以上につき,乙A12,42,76)
(エ)専門委員会は,平成15年12月16日,生活扶助基準の考え方を示
すものとして,
生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ
(甲
A102,乙A13。以下平成15年中間取りまとめという。)を
公表した。平成15年中間取りまとめには,生活扶助基準の改定方式の在り方について,概要,以下の内容が記載されている。(甲A75,102,乙A13)
a
生活保護において保障すべき最低生活の水準は,一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであり,
具体的には,

第1・十分位の世帯の消費水準に着目することが適当である。
b
水準均衡方式については概ね妥当であると認められてきたが,最近の経済情勢はこの方式を採用した当時と異なることから,例えば5年間に一度の頻度で,生活扶助基準の水準について定期的に検証を行うことが必要である。

c
定期的な検証を行うまでの毎年の改定については,近年,民間最終消費支出の伸びの見通しがプラス,実績がマイナスとなるなど安定しておらず,また,実績の確定も遅いため,これによる被保護世帯への影響が懸念されることから,改定の指標の在り方についても検討が必要である。この場合,国民にとって分かりやすいものとすることが必
要なので,例えば,年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。
d
なお,急激な経済変動があった場合には,機械的に改定率を設定するのではなく,最低生活水準確保の見地から別途対応することが必要である。

(オ)専門委員会は,平成15年中間取りまとめを公表した後も,生活扶助基準の検証を行い,平成16年12月15日,生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書(甲A6,乙A4。以下平成16年報告書という。)を公表した。平成16年報告書には,概要,以下の内容が記載されている。(甲A6,A103,乙A4)
a
生活保護制度の見直しの方向性について

平成16年報告書は,平成15年中間取りまとめ以降引き続き行った保護基準の妥当性の検証・評価及び自立支援等生活保護の制度・運用の在り方に関する検討を踏まえ,その改善の方向を示したものである。
b
保護基準の在り方について

(a)生活扶助基準の評価・検証等について


評価・検証
水準均衡方式を前提とする手法により,勤労3人世帯の生活扶
助基準について,
低所得世帯の消費支出額との比較において検証

評価した結果,その水準は基本的に妥当であったが,今後,生活

扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られて
いるか否かを定期的に見極めるため,全国消費実態調査等を基に
5年に一度の頻度で検証を行う必要がある。なお,生活扶助基準
の検証に当たっては,平均的にみれば,勤労基礎控除も含めた生
活扶助基準額が一般低所得世帯の消費における生活扶助相当額よ

りも高くなっていること,また,各種控除が実質的な生活水準に
影響することも考慮する必要がある。
また,これらの検証に際しては,地域別,世帯類型別等に分け
るとともに,調査方法及び評価手法についても専門家の知見を踏
まえることが妥当である。同時に,捕捉率(生活保護の受給要件

を満たす世帯がどれだけ実際に生活保護を受けているか)につい
ても検証を行う必要があるとの指摘があった。


設定及び算定方法
現行の生活扶助基準の設定は3人世帯を基軸としており,
また,

算定については,世帯人員数分を単純に足しあげて算定される第
1類費(個人消費部分)と,世帯規模の経済性,いわゆるスケー

ルメリットを考慮し,世帯人員数に応じて設定されている第2類
費(世帯共同消費部分)とを合算する仕組みとされているため,
世帯人員別にみると,必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映
したものとなっていない。このため,特に次の点について改善が
図られるよう,設定及び算定方法について見直しを検討する必要
がある。


多人数世帯基準の是正
かねてより,生活扶助基準は多人数になるほど割高になると
の指摘がなされているが,これは人数が増すにつれ第1類費の
比重が高くなり,スケールメリット効果が薄れるためである。

このため,平成15年中間取りまとめにおいて指摘した第2類
費の構成割合及び多人数世帯の換算率に関する見直しのほか,
世帯規模の経済性を高めるような設定等について検討する必要
がある。


単身世帯基準の設定
平成15年中間取りまとめで指摘したとおり,単身世帯の生
活扶助基準についても,多人数世帯の基準と同様,必ずしも一
般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていない。
また,
被保護世帯の7割は単身世帯が占めていること,近年,高齢化

の進展や扶養意識の変化に伴って高齢単身世帯の増加が顕著と
なっており,今後もさらにその傾向が進むと見込まれる。これ
らの事情に鑑み,単身世帯については,一般低所得世帯との均
衡を踏まえて別途の生活扶助基準を設定することについて検討
することが必要である。



第1類費の年齢別設定の見直し
平成15年中間取りまとめにおいても指摘したとおり,人工

栄養費の在り方も含めた0歳児の第1類費や,第1類費の年齢
区分の幅の拡大などについて見直しが必要である。
(b)級地
現行級地制度については,
昭和62年度から最大格差22.
5%,
6区分制とされているが,現在の一般世帯の生活扶助相当消費支出
額をみると,地域差が縮小する傾向が認められたところである。このため,市町村合併の動向にも配慮しつつ,さらに今後詳細なデータによる検証を行った上,級地制度全般について見直しを検討することが必要である。
(c)その他

なお,
前記(a)①の定期的な評価を行う際には,
今回行われた基準
の見直しに係る事情についても評価の対象とし,専門家による委員会等において詳細な分析や検証を行い,被保護世帯の生活への影響等も十分調査の上,必要な見直しを検討することが求められる。
c
制度の実施体制(財源の確保)について
生活保護制度は国が国民の最低生活を保障する制度である。このため,いかなる突発的な事情や経済的・社会的環境の変化に際しても,財政事情等によって給付水準や保護の認定・運用のばらつきを生じさせることなく,憲法上保障された生存権を保障する機能を果たし,社会的不安定が生じることを防ぐ必要がある。


生活扶助基準に関する検討会による検証等

(ア)内閣は,平成18年7月,経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006を閣議決定した。上記閣議決定では,生活保護(扶助)の見直しに関して以下のとおりの指摘があった。(乙A14の2)
a
以下の内容について,早急に見直しに着手し,可能な限り平成19年度に実施し,間に合わないものについても平成20年度には確実に
実施する。
(a)生活扶助基準について,低所得世帯の消費実態等を踏まえた見直しを行う。
(b)級地の見直しを行う。
b
現行の生活保護制度は抜本的改革が迫られており,早急に総合的な検討に着手し,改革を実施する。

(イ)平成16年報告書及び上記(ア)の閣議決定を受けて,
平成19年に,

生労働省社会・援護局長の下部組織として,学識経験者5名を委員とする生活扶助基準に関する検討会(以下検討会という。)が設置
された。
検討会は,同年10月19日ないし同年11月30日,合計5回にわたり開催され,直近の全国消費実態調査等に基づき,①生活扶助基準の水準の妥当性(生活扶助基準の水準が保護を受給していない低所得世帯における消費実態との均衡が適切に図られているかどうかに関する評価・

検証),②生活扶助基準の体系の妥当性(第1類費及び第2類費の合算によって算出される基準額が消費実態を反映しているかどうかに関する評価・検証),③地域差の妥当性(現行の級地制度においては,最も高い級地と最も低い級地の基準額の較差が22.5%となっているが,これが地域間における生活水準の差を反映しているかどうかに関する評価・

検証)及び④その他について,評価及び検証を行った(以下平成19年検証という。)。(以上につき,甲A7-1,乙A5,14の1)
(ウ)検討会は,
平成19年11月30日,
平成19年検証の結果に基づき,
生活扶助基準に関する検討会報告書(以下平成19年報告書と

いう。)を作成し,公表した。平成19年報告書には,概要,以下の内容が記載されている。(甲A7,乙A5,14の1)

a
検討会の趣旨・目的等
検討会では,
前記(イ)の①ないし④の検討項目について,直近の全国
消費実態調査の結果等を用いて,
主に統計的な分析をもとに,
専門的,
かつ,客観的に評価・検証を実施した。
厚生労働省において生活扶助基準の見直しを行う場合には,平成1
9年報告書の評価・検証の結果を参考とされるよう期待するものである。
b
生活扶助基準の評価・検証

(a)評価・検証の方法
生活扶助基準の評価・検証を適切に行うためには,国民の消費実

態を詳細に分析する必要があり,そのためには,全国消費実態調査を基本とし,収入階級別,世帯人員別,年齢階級別及び地域別等の様々な角度から詳細分析することが適当である。
(b)生活扶助基準の水準


生活扶助基準の水準は,健康で文化的な最低限度の生活を維持
することができるものでなければならないが,
その具体的内容は,
その時代の経済的・文化的な発達の程度のほか,国民の公平感や
社会通念等に照らして総合的に決まるものである。実際の生活扶
助基準の設定に当たっては,水準均衡方式が採用されていること

から,その水準は,国民の消費実態との関係,あるいは本人の過
去の消費水準との関係で相対的に決まるものと認識されている。
したがって,生活扶助基準の水準に関する評価・検証に当たって
は,これらの点を総合的にみて妥当な水準となっているかという
観点から行うことが必要である。

検討会では,被保護世帯のうち標準世帯のほか,単身世帯にも
着目して,同様に評価・検証を実施した。



夫婦子1人(有業者あり)世帯の第1・十分位における生活扶
助相当支出額(消費支出額から生活扶助に相当しないものを除い
たもの。以下同じ。)は,世帯当たり14万8781円であった
のに対し,それらの世帯の平均の生活扶助基準額は,世帯当たり

15万0408円であり,生活扶助基準額がやや高めとなってい
る。
なお,
第1・五分位で比較すると,前者が15万3607円,
後者が15万0840円であり,やや低めとなっている。
単身世帯(60歳以上)の第1・十分位における生活扶助相当
支出額は,世帯当たり6万2831円であったのに対して,それ

らの世帯の平均の生活扶助基準額は,世帯当たり7万1209円
であり,生活扶助基準額が高めとなっている。なお,第1・五分
位で比較すると,前者が7万1007円,後者が7万1193円
であり,均衡した水準となっている。
生活扶助基準額は,これまで第1・十分位の消費水準と比較す

ることが適当とされてきたが,①第1・十分位の消費水準は,平均的な世帯の消費水準に照らして相当程度に達していること,②第1・十分位に属する世帯における必需的な耐久消費財の普及状
況は,平均的な世帯と比べて大きな差はなく,また,必需的な消
費品目の購入頻度は,平均的な世帯と比較しても概ね遜色ない状

況にあることから,今回,これを変更する理由は特段ないと考え
る(ただし,これまで比較の対象としてきた夫婦子1人世帯の第
1・十分位の消費水準は,第3・五分位の7割に達しているが,
単身世帯〔60歳以上〕については,その割合が5割〔第1・五
分位でみると約6割〕
にとどまっている点に留意する必要がある。。


なお,これまでの給付水準との比較も考慮する必要がある。
(c)生活扶助基準の体系



世帯人員別の基準額の水準
世帯人員別に設定された生活扶助基準額の評価・検証を行うた
め,第1・五分位における世帯人員別の生活扶助相当支出額と比
較すると,仮に世帯人員が1人の世帯の生活扶助基準額及び生活
扶助相当支出額を,それぞれ1とした場合,4人世帯は生活扶助

基準額は2.27であり,生活扶助相当支出額の1.99に比べ
て相対的にやや高め,5人世帯でも生活扶助基準額は2.54で
あり,生活扶助相当支出額の2.14に比べて相対的にやや高め
となっており,世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であり,世
帯人員が少ない世帯に不利になっている実態がみられる。



年齢階級別の基準額の水準
年齢階級別に設定された生活扶助基準額の評価・検証を行うた
め,単身世帯の第1ないし第3・五分位における年齢階級別の生
活扶助相当支出額と比較すると,仮に60歳代の生活扶助基準額

及び生活扶助相当支出額を,それぞれ1とした場合,20歳ない
し39歳では生活扶助基準額は1.05であり,生活扶助相当支
出額の1.09に比べて相対的にやや低め,40歳ないし59歳
では生活扶助基準額は1.
03であり,
生活扶助相当支出額の1.
08に比べて相対的にやや低めになっている。一方,70歳以上

では生活扶助基準額は0.
95であり,
生活扶助相当支出額の0.
88より相対的にやや高めであるなど消費実態からややかい離し
ている。
(d)生活扶助基準の地域差
現行の級地制度における地域差を設定した当時(昭和59年)の

消費実態と直近(平成16年)の消費実態を比較すると,地域差が縮小している傾向がみられる。

(エ)検討会の委員5名は,平成19年12月11日,平成19年報告書の内容を国民に正確に理解してもらうことを目的として,『生活扶助基準に関する検討会報告書』が正しく読まれるためにと題する書面(甲A8。以下平成19年報告書追加書面という。)を連名で作成し,公表した。平成19年報告書追加書面では,平成19年報告書における
これまでの給付水準との比較も考慮する必要がある旨の記載について,生活扶助基準額の引き下げについては,慎重であるべきとの考えを意図したものであるとされ,ただし,こうした政策判断は検討会の目的の範囲を超えており,今後,行政当局あるいは政治の場において,総合的に判断されるべきものとされた。(甲A8,50)


基準部会による検証等

(ア)平成23年2月,
前提事実(2)アのとおり,
社会保障審議会の下に常設
部会として基準部会が設置され,生活扶助基準等について検証が行われた。基準部会は,保護基準について,5年に一度実施される全国消費実態調査の特別集計データ等を用いて,専門的かつ客観的に評価・検証を行うために設置されたものであり,
駒村康平慶應義塾大学教授を部会長,
岩田正美日本女子大学名誉教授(以下岩田教授という。)を部会長代理,その他に6名の社会保障等の専門家を委員とする審議会である。同年4月19日,第1回基準部会が実施され,その後,月1回程度のペ
ースで,複数回会合が行われ,保護基準について評価・検証が行われた(平成25年検証)。(甲A3,78,79,82,89,104,105,178,182,乙A6,22,24)
(イ)平成24年10月5日に第10回基準部会が開催された。この会合では,生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と均衡しているか否かを
検証することが基準部会の主たる目的であるといった意見が出された。(甲A83,乙A23)

(ウ)平成24年11月9日に第11回基準部会が開催された。同部会において,第1・十分位の消費実態と生活扶助基準を回帰分析の方法で比較するという検討方針が示された。(甲A84,乙A44)
(エ)平成25年1月16日に第12回基準部会が開催された。同部会においては,平成25年報告書の原案(甲A70の3)が示された上,以下のような意見が出された(なお,平成25年報告書の原案には,

厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には,本報告書の評価・検証の結果を考慮した上で,他に合理的説明が可能な経済指標などがあれば,それらについても根拠を明確にして改定されたい。

全ての要素については分析・説明に至らなかったが,合理的説明がつく要素については,それを勘案することは一つの考え方である。

との記載がある。)。
すなわち,厚生労働省の職員は,基準部会の委員からの平成25年報告書(原案)における上記の記載内容に関する質問に対し,政府が発表
する経済指標,例えば,消費者物価指数や賃金の動向などの誰がみても数字として固まっているものを生活扶助基準の水準を決めるに当たって考慮することは,正当化できるのではないかという回答をした。これに対し,基準部会の委員らからは,基準部会で行ってきた検証手法の特徴を混乱させるような書き方をなるべくしないでいただきたい,保護基準
の改定に当たって,物価指数を考慮することは非常に慎重に考えなくてはいけない,基準部会では,年齢,世帯人員,級地という3要素しか議論しておらず,消費者物価指数や賃金の動向については何も議論していないことを明確にして欲しい,改定されたいとの文言は訂正して欲しいといった意見が出された。

(以上につき,甲A70,乙A25,45,73)
(オ)平成25年1月18日に第13回基準部会が開催され,
上記(エ)の平成

25年報告書の原案を修正した上で,基準部会における検証結果を取りまとめた平成25年報告書が公表された。
平成25年報告書には,
概要,
以下のとおりの記載がある。(甲A3,80,201,乙A6)
a
基準部会の役割と検証概要

(a)基準部会の役割
基準部会としては,年齢階級別,世帯人員別,級地別に生活扶助
基準額と消費実態のかい離を詳細に分析し,様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行った。
(b)検証方針と検証概要



平成25年検証においては,生活保護において保障すべき健康
で文化的な最低限度の生活水準は,一般国民の生活水準との関連
において捉えられるべき相対的なものとされてきたことから,生
活扶助基準と対比する一般低所得世帯として,第1・十分位を設
定した。
その上で,様々な世帯構成の基準額を算出する際に基本となる

年齢,世帯人員及び地域別の基準額が第1・十分位の消費実態を
十分反映しているかについて,
より詳細な検証を行うことにした。
その際,仮に第1・十分位の全ての世帯が生活保護を受給した場
合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして,(年
体系
齢,世帯人員)及び級地の基準額の水準への影響を評価する方法

を採用した。


平成25年検証では,一部統計的分析手法である回帰分析を採
用した。その理由は,第一は,平成19年検証では,各年齢階級
の単身世帯のデータを用いて各年齢階級別の平均消費水準を分析

したが,全国消費実態調査の調査客体にはそもそも10代以下の
単身世帯がほとんどいないため,10代以下の消費を正確に計測

できないという限界があった点を考慮したこと,第二は,今回の
検証結果の妥当性を補強するため,回帰分析を用いた結果と概ね
遜色がないかどうかを確認することとしたことである。
b
検証に使用した統計データ
今回の検証では国民の消費実態を世帯構成別に細かく分析する必要があるため,平成21年全消調査の個票データを用いた。
今回の検証は,様々な世帯構成に対する基準の展開の妥当性を指数によって把握しようとするものである。この指数は,第1・十分位の世帯の生活扶助相当支出を用いて算出した。第1・十分位の世帯を用
いた理由は以下のとおりである。
(a)生活扶助基準を国民の健康で文化的な最低限度の生活水準として考えた場合,指数を全方位の所得階層(全世帯)あるいは中位所得階層(第3・五分位)等から算出することも可能だが,これまでの検証に倣い,生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実
態を用いることが今回の検証では現実的であると判断したこと
(b)第1・十分位の平均消費水準は,中位の所得階層の約6割に達していること
(c)国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について,第1・十分位に属する世帯における普及状況は,中位所得階
層と比べて概ね遜色なく充足されている状況にあること
(d)全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向であるものの,高所得階層を除くその他の十分位の傾向をみても等しく減少しており,特に第1・十分位が減少しているわけではないこと

(e)OECDの国際基準によれば,等価可処分所得(世帯の可処分所得について,スケールメリットを考慮して世帯人員数の平方根で除
したもの)の中央値(全データの真中の値)の半分に満たない世帯は相対的貧困層であるとされる。今回の検証に用いた平成21年全消調査での等価可処分所得の中央値は約270万円であるが,・
第1
十分位の等価可処分所得の平均は92万円,最大では135万円となっている。これは,第1・十分位に属する世帯の大分部分はOE
CDの基準では相対的貧困線以下にあることを示していること
(f)分散分析等の統計的手法により検証したところ,各十分位間のうち,第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており,他の十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なると考えられること

c
検証手法

(a)生活扶助基準の体系(年齢・世帯人員)


年齢階級別の基準額の水準
年齢階級別に設定されている生活扶助基準の第1類費について,
異なる年齢階級間の比率(指数)が,消費実態と比べてどれほど

のかい離があるかを検証した。その際,今回の検証では,10代
以下の者がいる複数人世帯のデータも用いて,10代以下の者も
含めた各年齢階級の消費水準を計測できるよう統計的分析手法で
ある回帰分析を採用した。
分析に際しては,スケールメリットが最大に働く場合(単純に

世帯年収に着目)と最少に働く場合(1人当たりの世帯年収に着
目)のそれぞれの想定に応じた2種類の第1・十分位を設定し,
それぞれを用いて算出された指数の平均値を採用した。

世帯人員別の基準額の水準
平成25年検証では,第1類費相当支出及び第2類費相当支出
ごとに,各世帯人員別の平均消費水準を指数化し(単身世帯を1

とする。),現行の基準額を同様に指数化したものと比較した。
なお,第1類費相当支出のスケールメリットについては,①で求められた年齢階級に応じた消費の指数を用いて世帯人員全員が実
際の年齢にかかわらず,平均並みの消費をする状態に補正するこ
とにより年齢の影響を除去し,世帯人員による影響のみを評価で

きるようにした。なお,生活扶助基準額の世帯人員体系の検証に
おいて世帯人員別の平均消費を評価する際には,直接的な評価手
法として回帰分析を用いてはいないが,上記のとおり各世帯人員
別の平均消費水準を指数化したものと回帰式に基づき算出したも
のとの比較が行われた。

(b)生活扶助基準の地域差
平成25年検証では,世帯人員別の検証と同様に,平均19年報
告書の考え方を用いて集計データより平均値を求め,各級地別に1人当たり生活扶助相当の平均消費水準を指数化したもの(1級地-1を1とする。)と,現行の基準額を同様に指数化したものとを比
較した。なお,指数化に当たっては,第1類費相当支出部分については世帯人員体系の検証と同様に年齢の影響を除去するとともに,(a)②の過程で求められる世帯人員に応じた消費の指数で第1類費相当支出及び第2類費相当支出の合計の消費を調整することにより世帯人員数による消費水準の相違の影響を除去し,地域差による影響
のみを評価できるようにした。生活扶助基準額の級地間較差の検証において級地別の平均消費を評価する際には,直接的な評価手法として回帰分析を用いてはいないが,上記のとおり各級地別に1人当たり生活扶助相当の平均消費水準を指数化したものと回帰式に基づき算出したものとの比較が行われた。

d
検証結果と留意事項

(a)検証結果


年齢階級別(第1類費)の基準額の水準
0ないし2歳の生活扶助相当支出額を1としたときの各年齢階
級別の指数は,生活扶助基準額では0ないし2歳が0.69,3
ないし5歳が0.86,6ないし11歳が1.12,12ないし

19歳が1.37,20ないし40歳が1.31,41ないし5
9歳が1.
26,60ないし69歳が1.19,
70歳以上が1.
06となっている。他方,生活扶助相当支出額は,上記同様の順
番に,1.00,1.03,1.06,1.10,1.12,1.23,1.28,1.08となっている。このように,年齢階級

別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による
指数を比べると,各年齢階級間の指数にかい離が認められる。


世帯人員別(第1類費及び第2類費)の基準額の水準
第1類費の場合,単身世帯の生活扶助相当支出額を1としたと

きの各世帯人員別の指数は,生活扶助基準額では単身世帯が0.
88,2人世帯が1.76,3人世帯が2.63,4人世帯が3.34,5人世帯が3.95となっている。他方,生活扶助相当支
出額では上記同様の順番に,1.00,1.54,2.01,2.34,2.64となっている。このように第1類費における世帯

人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態に
よる指数を比べると,世帯人員が増えるにつれてかい離が拡大す
る傾向が認められた。
同様に,第2類費の場合,単身世帯の生活扶助相当支出額を1
としたときの各世帯人員別の指数は,生活扶助基準額では単身世

帯が1.06,2人世帯が1.18,3人世帯が1.31,4人
世帯が1.35,5人世帯が1.36となっている。他方,生活

扶助相当支出額では上記同様の順番に1.00,1.34,1.
67,1.75,1.93となっている。このように第2類費に
おける世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の
消費実態による指数を比べると,世帯人員が増えるにつれてかい
離が拡大する傾向が認められた。



級地別の基準額の水準
1級地-1の生活扶助相当支出額を1としたときの各級地別の
指数は,生活扶助基準額では1級地-1が1.02,1級地-2
が0.97,2級地-1が0.93,2級地-2が0.88,3
級地-1が0.
84,3級地-2が0.79となっている。他方,

生活扶助相当支出額では,
上記同様の順番に1.
00,
0.96,
0.90,0.90,0.87,0.84となっている。このよ
うに,級地別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費
実態による指数を比べると,消費実態の地域差の方が小さくなっ
ている。



年齢・世帯人員・地域の影響を考慮した場合の水準


上記①ないし③の検証結果を踏まえ,年齢階級別,世帯人員別,級地別の指数を反映した場合の影響は,以下のとおりであ
る。

例えば,現行の生活扶助基準額(加算部分を含む。)と検証
結果を完全に反映した場合の平均値を個々の世帯構成ごとにみ
ると,夫婦と18歳未満の子1人世帯では,年齢による影響が
現行の基準額に比べてマイナス2.9%,世帯人員による影響
がマイナス5.8%,地域による影響が0.1%,これらを合

計した影響がマイナス8.5%となった。上記同様に夫婦と1
8歳未満の子2人世帯では順番にマイナス3.6%,マイナス

11.2%,0.2%,合計マイナス14.2%となった。6
0歳以上の単身世帯では上記同様の順番に,0%,7%,
2.
2.
マイナス0.2%,合計4.5%となり,60歳以上の高齢夫
婦世帯では上記同様の順番に2.
7%,
マイナス1.9%,0.
7%,合計1.6%となり,20歳ないし50歳代の若年単身

世帯では上記同様の順番にマイナス3.9%,2.8%,マイ
ナス0.4%,合計マイナス1.7%となり,母親と18歳未
満の子1人の母子世帯では上記同様の順番にマイナス4.
3%,
マイナス1.2%,0.3%,合計マイナス5.2%となった。
このように世帯員の年齢,世帯人員,居住する地域の組合せに

より,各世帯への影響は様々である。
・厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には,
平成25年報告書の評価・検証の結果を考慮し,その上で他に
合理的説明が可能な経済指標等を総合的に勘案する場合は,そ
れらの根拠についても明確に示されたい。なお,その際には現

在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯への見直し
が及ぼす影響についても慎重に配慮されたい。
(b)検証結果に関する留意事項

今回試みた検証手法は,平成19年報告書において指摘があっ
た年齢階級別,世帯人員別,級地別に,生活扶助基準の展開と一
般低所得世帯の消費実態の間にどの程度かい離が生じているかを
詳細に分析したものである。これにより,個々の生活保護受給世
帯を構成する世帯員の年齢,世帯人員,居住する地域の様々な組
合せによる生活扶助基準の妥当性について,よりきめ細やかな検

証が行われたことになる。
しかし,年齢,世帯人員の体系,居住する地域の組合せによる

基準の展開の相違を消費実態に基づく指数に合わせたとしても,
なお,その値と一般低所得世帯の消費実態との間には,世帯構成
によって様々に異なる差が生じ得る。こうした差は金銭的価値観
や将来見込みなど,個々人や個々の世帯により異なりかつ消費に
影響を及ぼす極めて多様な要因により生ずると考えられるが,こ

の検証では,
全ての要素について分析及び説明には至らなかった。


基準部会で採用した年齢,世帯人員及び地域の影響を検証する
手法についても委員による専門的議論の結果得られた透明性の高
い一つの妥当な手法である一方,
これまでの検証手法との継続性,
整合性にも配慮したものであることから,これが唯一の手法とい

うことでもない。さらに,基準部会の議論においては,国際的な
動向も踏まえた新たな最低基準についての探索的な研究成果の報
告もあり,将来の基準の検証手法を開発していくことが求められ
る。今後,政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際
には,今回の検証結果を考慮しつつ,同時に検証方法について一

定の限界があることに留意する必要がある。


全所得階層における年間収入総額に占める各所得五分位及び十
分位の年間収入総額の構成割合の推移をみると,中位所得階層で
ある第3・五分位の占める割合及び第1・十分位の占める割合が

共に減少傾向にあり,その動向に留意しつつ,これまで生活扶助
基準の検証の際に参照されてきた一般低所得世帯の消費実態につ
いては,なお今後の検証が必要である。特に,第1・十分位の者
にとっては,全所得階層における年間収入総額に占める当該分位
の年間収入総額の構成割合にわずかな減少があっても,その影響

は相対的に大きいと考えられることに留意すべきである。また,
現実には,第1・十分位の階層には保護基準以下の所得水準で生

活している者も含まれることが想定される点についても留意が必
要である。


今後,生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には,現在
生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯,特に貧困の世
代間連鎖を防止する観点から,子どものいる世帯への影響にも配

慮する必要がある。

生活扶助基準の見直しに至る経緯

(ア)厚生労働省は,平成25年1月27日,生活扶助基準等の見直しについてと題する書面を作成し,公表した。上記書面には,概要,以下の内容が記載されている。(甲A63)
a
生活扶助基準の見直しの考え方と影響額
①基準部会における検証結果を踏まえた年齢・世帯人員・地域差による影響の調整,②前回見直し(平成20年)以降の物価の動向(マイナス4.
78%)
を考慮し,
3年程度かけて生活扶助基準を見直す。
これにより,①について,約90億円,②について,本体分約510
億円,加算分約70億円(①及び②の合計約670億円),6.5%程度の財政効果が生じる。
b
個々の世帯に着目した見直しの概要
デフレ調整については,受給者全員に影響するが,デフレ調整及びゆがみ調整による生活扶助基準額の変化をみると,該当世帯の25%
が5%ないし10%の減額となり(このうち9%ないし10%の減額となる世帯は2%),該当世帯の71%が0%ないし5%の減額となり,該当世帯の3%が0%ないし2%の増額となる。
c
生活扶助に係る物価の動向について
生活扶助は,食費や水道光熱費といった基礎的な日常生活費を賄うものであり,生活扶助に係る物価の動向については,生活扶助に相当
する消費品目のCPI(物価指数)をみる必要がある。具体的には,品目別の消費者物価指数のうち,①家賃,教育費及び医療費等の生活扶助以外の他扶助で賄われる品目,②自動車関係費及びNHK受信料等の原則生活保護受給世帯には生じない品目を除いた品目を用いて,生活扶助相当CPIを算出した。これに基づき算出した生活扶助相当
CPIを用いて,平成20年(104.5)ないし平成23年(99.5)
の生活扶助相当CPIの変化率を算定すると,
マイナス4.
78%
であった。
d
平成20年からの物価を勘案することについて
平成25年検証は,平成21年全消調査を用いて,年齢・世帯人・級地ごとに現行の基準額と一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態を比較し,そのゆがみを検証したものである。具体的には,調査対象となった一般低所得世帯が現行の生活扶助基準額で生活扶助を受給した場合の受給額の平均と,仮に一般低所得世帯の消費実態に即した
生活扶助基準額を設定したとして,それに基づいて受給した場合の受給額の平均が等しくなるという前提を置くことにより,基準額と消費実態のかい離について,指数を用いて相対的に比較した。このため,今回の検証結果を反映させたとしても,基準と一般低所得世帯との消費の年齢,世帯人員,級地によるかい離が調整されるのみであり,デ
フレ等による金額の絶対水準の調整がなされるものではない。
また,今回物価を勘案した考え方は,平成19年検証の結果を踏まえた上で,平成20年度の基準額が定められ,以後もその基準額が据え置かれてきた経緯に鑑み,平成20年から勘案することとしたものである。

(イ)内閣は,平成25年1月29日,平成25年度の政府予算案を閣議決定した(乙A49)。

(ウ)厚生労働省は,平成25年2月19日,全国厚生労働関係部局長会議を実施した。その際,前記(ア)と同趣旨の書面の他に,以下の内容の資料が配布された。(甲A9,10,47,乙A18)
a
生活扶助基準の検証結果
平成25年検証では,平成21年全消調査等のデータを用いて,生
活扶助基準額と第1
・十分位の世帯の消費実態について,
年齢階級間,
世帯人員間,級地間の相対関係について指数によって比較を行い,そのかい離について検証を行った。
これによると,年齢階級別でみると現行基準の想定している相対的な指数と消費実態による指数の間にかい離が認められ,同様に世帯人
員別に指数の状態をみても,現行基準と消費実態の間に世帯人員が増えるにつれてかい離が拡大する傾向が認められた。また,級地別についても比較対照したところ,現行基準が想定している地域差より消費実態の地域差の方が小さくなっていることが認められた。
なお,平成25年報告書では,厚生労働省において生活扶助基準の
見直しを検討する際には,平成25年報告書の評価・検証の結果を考慮し,その上で他に合理的説明が可能な経済指標等を総合的に勘案する場合は,それらの根拠についても明確に示すよう指摘された。
b
生活扶助基準等の見直し
今回の生活扶助基準等の見直しでは,
平成25年検証結果に基づき,
ゆがみ調整を行うとともに,近年デフレ傾向が続いているにもかかわらず,生活扶助基準額が据え置かれてきたことを踏まえ,平成19年検証の結果を考慮して,平成20年の基準が定められたことから,それ以降の物価動向を勘案することとした。今回の見直しはこうした合
理的な考え方に基づく適正化を図るものである。また,各種加算についても同様に物価動向を勘案することとしている。

なお,激変緩和の観点から見直しの影響を一定程度に抑えるため,現行基準から増減幅がプラスマイナス10%を超えないように調整することとし,さらに3年間の経過措置を設け,見直しを段階的に行うこととする。
c
生活扶助基準の見直しに伴う他制度への影響
今回の生活扶助基準の見直しに伴う他制度への影響については,それぞれの趣旨や目的・実態を十分考慮しながら,できる限りその影響が及ばないよう,政府全体として対応する。

(エ)内閣は,平成25年2月28日,前記(イ)の政府予算案を国会に提出した(乙A49)。

(オ)厚生労働省は,平成25年3月11日,社会・援護局関係主管課長会議を実施し,上記(ア)及び(ウ)と同旨の資料を配布した(乙A16)。(カ)平成25年5月15日,
前記(イ)の政府案のとおり平成25年度政府予
算案が成立した(乙A49)。
(キ)厚生労働事務次官は,平成25年5月16日,都道府県知事,指定都市市長,中核市市長に対し,上記(ア)と同旨の資料を添付した上で,生活扶助基準の見直しに伴い他制度に生じる影響についてと題する通知を発出した(甲A4,乙A19)。
(ク)厚生労働省は,平成25年5月20日,生活保護関係全国係長会議を開催し,上記(ア),(ウ)及び(オ)と同旨の資料が配布された(乙A17)。
(ケ)厚生労働大臣は,前提事実(4)ア,(5)ア及び(6)アのとおり,平成25年5月16日付けで平成25年改定を,平成26年3月31日付けで平成26年改定を,平成27年3月31日付けで平成27年改定をそれぞれ実施した。
(2)消費支出並びに生活扶助基準額及び改定率の推移等

民間最終消費支出の前年度比の割合は以下のとおり推移した。

すなわち,
平成16年度が100.
0%,平成17年度が101.
4%,
平成18年度が100.3%,平成19年度が100.5%,平成20年度が97.
8%,
平成21年度が98.
6%,
平成22年度が100.
1%,
平成23年度が100.7%,平成24年度が100.7%,平成25年度が102.5%,平成26年度が99.2%,平成27年度が100.9%,平成28年度が103.0%である。
(以上につき,甲A215,221,乙A72)

厚生労働大臣は,昭和59年度以降,水準均衡方式に基づいて生活扶助
基準の改定を行っており,同年度から平成12年度までは増額改定,平成13年度及び平成14年度は据え置き,平成15年度及び平成16年度は減額改定を行った。標準世帯(1級地-1)の生活扶助基準額及び改定率(本件各改定分を除く。は,

別紙4
生活扶助基準額及び改定率の推移
のとおりである。
なお,平成25年度以降の改定率(本件各改定分を除く。)は,平成2
5年度が0%,平成26年度が2.9%,平成27年度ないし平成29年度がいずれも0%である。
(以上につき,甲A221,乙A10,72)

厚生労働省社会・援護局保護課は,平成17年度から本件各改定に至る
まで生活扶助基準額及び改定率を据え置いた理由につき,各年度の生活と福祉5月号において,以下のとおり説明している。平成17年度から平成19年度までは,(当該)年度の政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸び率を基礎とし,前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果,据え置くと説明されている。これに対し,平成20年度は,平成19年報告書において,夫婦子一人
(標準世帯)及び単身高齢世帯(60歳以上)の生活扶助基準が第1・十分位における生活扶助相当支出額よりも高めとなっているなどの結果が示
されていたが,
この検証結果(注:平成19年報告書)を基礎としつつ,現下の原油価格の高騰が消費に与える影響等を見極めるため,据え置くと説明されており,平成21年度は,生活扶助基準については,平成19年度に,全国消費実態調査等の結果を基に専門家による検証を行った結果,現行基準は一般の低所得世帯の消費実態と比べて高いという結果が得られました。しかし,平成20年度は,原油価格の高騰が消費に与える影響等を見極めるため,据え置くこととし,平成21年度予算編成過程で適切に対処することとしました。その後の物価,家計消費の動向を見ると,昨年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇は,国民への家計へ大きな影響を与えており,また,『百年に一度』と言われる昨年9月以降の世界的な金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼしており,国民の将来不安が高まっている状況にあると考えられます。

このような現下の社会経済情勢に鑑み,平成21年度は,昨年度に引き続き生活扶助基準の見直しを行わないこととし,据え置くこととしました。

と説明されてい
る。
その後,平成22年度は,完全失業率が高水準で推移するなど,現下の厳しい経済・雇用状況を踏まえ,国民生活の安心が確保されるべき状況にあることにかんがみ,据え置くとされ,平成23年度及び平成24年度は,現在の経済,雇用情勢等を総合的に勘案した上で,据え置くと
された。
(以上につき,甲A221,乙A10,15,72,74~81)エ
平成17年から平成24年までの経済指標をみると,完全失業率は,平
成17年が4.4%,平成18年が4.1%,平成19年が3.8%,平成20年が4.0%,平成21年が5.1%,平成22年が5.0%,平成23年が4.6%,平成24年が4.3%となっている。
また,一般勤労世帯の賃金(事業者規模5人以上の調査産業計の1人平
均月間現金給与総額)の前年比は,平成17年が0.6%,平成18年が0.3%,平成19年が-1.0%,平成20年が-0.3%,平成21年が-3.9%,平成22年が0.5%,平成23年が-0.2%,平成24年が-0.7%となっている。
消費者物価上昇率の前年比は,平成17年が-0.3%,平成18年が
0.3%,平成19年が0.0%,平成20年が1.4%,平成21年が-1.4%,平成22年が-0.7%,平成23年が-0.3%,平成24年が0.0%となっている。
全国勤労者世帯家計収支のうち家計消費支出(名目)の前年比は,平成17年が-0.6%,平成18年が-2.8%,平成19年が1.0%,平成20年が0.
5%,
平成21年が-1.
8%,
平成22年が-0.
2%,
平成23年が-3.0%,平成24年が1.6%となっている。
(以上につき,乙A11)
(3)消費者物価指数の内容とその推移等


各物価指数の算式とその特徴について(甲A123,124,129,
131,乙A26,55,85)
物価指数とは,ある基準となる時点の物価(財・サービスの価格を総合的・平均的にみたもの)を100(又は1)として,その時点から比較する時点までの物価の変動を指数値で示したものである。物価指数の代表的な指数等は以下のとおりである。
(ア)ロウ指数
ロウ指数は,一般的な指数算式の一つであり,比較される時点間において,買い物かごといわれる一定量の数量を購入するために要する全費用の割合の変化として指数を定義することで得られる。ラスパイレ
ス指数やパーシェ指数等はロウ指数の特殊ケースとして位置付けられる。価格をp,数量をq,基準時点(物価算定の基準となる時点であり,原
則として,価格が指数計算の分母として使われる価格参照時点及び指数が100に設定される指数参照時点を指す。以下同じ。)を0,比較時点をt,ウエイト参照時点(当該指数計算に用いる品目のウエイトを参照する時点を指す。以下同じ。)をbとした場合,ロウ指数(P)は次のように定義される。
∑n𝑝𝑖𝑡𝒒𝒊𝒃
P=i=1𝟎𝒃
∑𝒑𝒊𝒒𝒊
なお,指数が価格参照時点(0)より後に計算されるならば,ウエイト参照時点(b)は価格参照時点(0)と比較時点(t)の間のどの時点でもよいとされている。

(イ)ラスパイレス指数
ラスパイレス指数は,基準時点(期首)のウエイトを用いた算術平均指数である。上記(ア)の数式において,b=0とした場合,すなわち,ウエイト参照時点を基準時点(価格参照時点)とした場合,ラスパイレス指数が得られる。ラスパイレス指数は,総務省CPI等において採用さ
れている。ラスパイレス指数の算定には,比較時点において数量情報を調査する必要がないため,速報性に優れるとされている。また,ラスパイレス指数には,物価上昇率を過大評価する上方バイアスがあるとされている。
(ウ)パーシェ指数

パーシェ指数は,比較時点(期末)のウエイトを用いた調和平均指数である。上記(ア)の数式において,b=tとした場合,すなわち,ウエイト参照時点を比較時点とした場合,パーシェ指数が得られる。連鎖方式のパーシェ指数は,GDPデフレーター等において採用されている。パーシェ指数の算定には,経済の変化に応じて常に最新のウエイトが反映
されるが,そのための調査コストが大きいとされている。また,パーシ
ェ指数には,物価下落率を過大評価する下方バイアスがあるとされている。
(エ)フィッシャー指数
フィッシャー指数は,ラスパイレス指数とパーシェ指数を幾何平均した指数であり,財務省の貿易価格指数等に採用されている。

(オ)固定基準年方式・連鎖方式について
固定基準年方式は,ある年にウエイトを固定して,物価の変化をみる方法であり,総務省CPIでは,固定基準年方式のラスパイレス指数が採用されており,ウエイトは5年ごとに更新されている。
一方,基準時点と比較時点のウエイトの差が大きいほど,各種の指数
算式から得られる物価指数と正しい物価指数との間のかい離
(バイアス)
が大きくなるため,物価指数の算定には,基準時点を毎年更新することにより比較時点とウエイトの差を小さくする連鎖方式が採用されることがある。例えば,GDPデフレーターにおいては,連鎖方式のパーシェ指数が採用されている。


総務省CPIについて(甲A107,
117~119,
123,124,

148,202,乙A26~28,35,48,50,55,87,91,93)
(ア)総務省CPIの概要
総務省CPIは,全国の世帯が購入する財及びサービスの価格変動を総合的に測定し,物価の変動を時系列的に測定するものであり,具体的には,基準時点における家計の消費構造(品目及びウエイト)を一定の指数(100)に固定し,これに要する費用が物価の変動によってどう変化するかを指数値で示すものである。総務省CPIの算定には,上記
ア(イ)のラスパイレス指数が用いられているが,
これによって算定された
ものに100を乗じたものが総務省CPIである。

(イ)総務省CPIの品目及びウエイト
総務省CPIで採用されている品目は,家計調査に基づき,世帯の消費支出上,
一定の割合を占める重要なものを選択し,
決定されるところ,
平成22年の総務省CPIの品目は,合計588品目である。これらの品目は,10大費目(食料,住居,光熱・水道,家具・家事用品,被服及び履物,保健医療,交通・通信,教育,教養娯楽,諸雑費)に分類され,それぞれの費目内においてさらに中分類に分類され(例えば,費目が食料の場合,穀類,魚介類,肉類等に分類すること
ができる。),中分類からさらに小分類に分類される(例えば,中分類
が穀類の場合,米類,パン等に分類することができる。)。
なお,10大費目のうち教養娯楽の費目の中には,中分類として,教養娯楽用耐久財があり,教養娯楽用耐久財の中には,小分類
として,テレビ,パソコン(デスクトップ型),パソコン(ノート型),カメラ等の品目がある。
総務省CPIの作成に当たっては,各品目について,その品目を代表すると考えられる銘柄(スペック)を基本銘柄として指定し,毎月,原則としてこの基本銘柄に該当する商品の価格を調査している。
総務省CPIにおいて採用される品目とウエイトは,国民の消費構造の変化を反映させるために,
西暦年の末尾が0と5の年を基準年として,

5年ごとに見直しが行われており(以下指数基準改定という。),平成25年改定の前の指数基準改定は平成22年に行われており,さらにその前の指数基準改定は平成17年に行われている。
また,総務省CPIの計算に用いるウエイトは,原則として家計調査における品目ごとの消費支出金額の割合に応じて算定されている。ウエ
イトは,1万分比で表されており,平成22年の総務省CPIの10大分類のウエイトをみると,食料が2525,住居が2122,光熱・水
道が704,家具・家事用品が345,被服及び履物が405,保健医療が428,
交通・通信1421,
教育が334,
教養娯楽が1145,
諸雑費が569である(なお,端数処理の関係で,これらのウエイトを単純に合計しても1万にはならない。)。
(ウ)総務省CPIの公表時期
総務省は,毎月,総務省CPIを作成・公表しているが,全国年平均の総務省CPIについては,当該年の翌年の1月26日を含む週の金曜日に公表している。
平成23年の全国年平均の総務省CPIについては,
平成24年1月27日に公表され,平成24年の全国年平均の総務省C
PIについては,平成25年1月25日に公表された。
(エ)指数の接続について
総務省CPIにおいては,指数基準改定が行われる場合にも,指数基準改定の前後の指数の比較が可能となるように,指数基準改定前の指数を指数基準改定が行われた年の指数で除した結果を100倍するという
方法(以下指数の接続という。)が採用されている。
(オ)調査ができない品目の一般的な処理方法について
ある品目がある調査市町村において一時的に出回りが途切れるなど,比較時点の価格がやむを得ず調査できなくなった場合には,その品目の指数及びウエイトを除外して計算する。

比較時点において価格が調査できなくなった品目の価格変動は,類似した品目の集まりである

レベル
(上記(イ)における中分類や小分類)
の同一のグループの他の財の価格比で代替されることとなる。
(カ)品質調整について
総務省CPIは,純粋な価格の変動を測定することを目的としている
ため,同一の商品の価格を継続して追跡することを原則とするが,調査商品の銘柄の見直しを適時適切に行う必要がある。このとき,新旧の商
品の間にある機能・特性などの品質やパッケージ容量の違いによって生じる価格差が指数に入り込まないようにする必要があり,そのために旧商品と新商品の品質の差を定量的に評価し,消費者物価指数に反映させており,これを品質調整という。
品質調整の手法には,様々な手法があるが,品質向上が著しく,製品
サイクルが極めて短いパソコン類及びカメラについては,ヘドニック法という方法が採用されている。ヘドニック法は,各製品の品質がこれを構成する複数の特性(性能)に分解でき,価格は性能によって決定されると考え,これらの諸特性と各製品の価格との関係を重回帰分析という統計的手法で解決することにより,製品間の価格差のうち品質に起因す
る部分を計量的に把握しようとする手法である。
(キ)変化率等について
ある時点の指数をA,それより前の時点の指数をBとした場合,それら二時点間の変化率を次の計算式によって求めることができる。
変化率(%)=

A-B
B
A
×100=(-1)×100
B
また,各項目のウエイトを加味して,各項目の動きが物価全体の変化率に対して,どう影響しているかを示す寄与度については,次の計算式によって求めることができる。全品目の寄与度の合計は,総合指数の変化率となる。
項目αの寄与度=

(

当記の項目𝛂の指数
×ウエイト

前期の項目𝛂の指数
)-(
)
×ウエイト

前記の総合指数にウエイトを乗じたもの

×100

総務省CPIの推移(甲A107,148,乙A11,29)

(ア)平成22年の総務省CPIを100とした場合における,総務省CP
Iの推移は,次のとおりである。
総合

食料

光熱・水道

教養娯楽

平成16年

100.7

97.7

93.7

108.8

平成17年

100.4

96.8

94.4

107.9

平成18年

100.7

97.3

97.8

106.3

平成19年

100.7

97.6

98.6

104.9

平成20年

102.1

100.1

104.5

104.3

平成21年

100.7

100.3

100.2

101.7

平成22年

100.0

100.0

100.0

100.0

平成23年

99.7

99.6

103.3

96.0

また,平成24年以降の総務省CPI(総合)をみると,平成24年が99.7,平成26年が102.8,平成27年が103.6である。なお,平成20年から平成23年にかけての総務省CPI(総合)の変化率は,マイナス2.35%(=(99.7÷102.1-1)×100)である。
(イ)総務省が作成した平成23年平均消費者物価指数の動向と題する書面(甲A107)には,平成20年度から平成23年度までの総務省CPIの動向に関し,概要,以下のとおりの記載がある。

平成20年は,世界的な原油価格や穀物価格の高騰を受けて,石油製品を始め,多くの食料品目が上昇したことにより,11年ぶりに1%を超える上昇となった。平成21年は,平成20年に高騰した原油価格が下落したため,ガソリン及び灯油が大きく下落,耐久消費財が引き続き下落したことなどにより,1.4%の下落と,比較可能な昭和46年以
降最大の下落幅となった。平成22年は,ガソリン,灯油,たばこ等が上昇したものの,公立高校授業料及び私立高校授業料が大幅に下落したこと,
耐久消費財が引き続き下落したこと等により,
総務省CPIは0.
7%の下落となった。食料(酒類を除く。)及びエネルギーを除く総合指数は1.2%の下落と比較可能な昭和46年以降最大の下落幅となった。平成23年は,原油価格の値上がり等により,ガソリン,電気代等が上昇したものの,耐久消費財について,地上デジタル放送への移行で需要が減ったことなどにより,テレビは30.9%の下落,技術革新や
性能向上などにより,パソコン(デスクトップ型)は39.9%,パソコン(ノート型)は24.0%,カメラは28.0%が引き続き下落したこと等により,総合指数は0.3%の下落となった。
(4)家計調査及び社会保障生計調査の概要

家計調査について(甲A112,115,203,乙A88,89)家計調査は,総務省統計局が実施する基幹統計調査(国勢調査など重要
な統計調査である基幹統計の作成を目的とする調査のこと。統計法2条4項,6項)であり,国民生活における家計収支の実態を把握し,国の経済政策・社会政策の立案のための基礎資料を提供することを目的とするものである。家計調査は,一部の世帯を除き全国の一般世帯を調査対象とする標本調査であり,具体的には,特性に応じて全国の市町村を168のグループに分け,その中から1市町村ずつ抽出し,抽出された市町村から選定された約9000世帯を対象に調査票を配布し,それを回収,集計する方法により行われている。上記調査票においては,支出品目ごとに支出数量
及び金額等を記載するよう求められている(例えば,アジ(生),430グラム,330円,豚肉,400グラム,626円などと記載することが求められている。)。したがって,大分類(例えば食費)や中分類(例えば魚介類)の他に,小分類(例えばサバ)の支出数量や
支出金額まで明らかになる。


社会保障生計調査について(甲A113,115,134,203,乙
A90)

(ア)社会保障生計調査は,厚生労働省が実施する一般統計調査(行政機関が行う統計調査のうち基幹統計調査以外のもの。統計法2条7項)であり,生活保護受給世帯の生活実態を明らかにすることによって,保護基準の改定等,生活保護制度の企画運営のために必要な基礎資料を得るとともに,厚生労働行政の企画運営に必要な基礎資料を得ることを目的とするものである。社会保障生計調査は,全国の生活保護受給世帯を対象として全国を地域別に10ブロックに分け,ブロックごとに都道府県・指定都市中核市のうち1ないし3か所を調査対象自治体として選定し,・
そこから1110世帯を抽出している。社会保障生計調査では,生活保
護受給世帯から収支の状況を記載した家計簿の提出を求めるなどの方法により,生活保護受給世帯の家計収支の状況,消費品目の種類及び購入数量等を調査しているが,個別品目の消費支出の割合等を詳細に記載させるための措置が講じられていないため,大分類や中分類の支出金額は明らかになるものの,
小分類の支出数量や支出金額は明らかにならない。

(イ)平成22年度(平成22年4月1日から平成23年3月31日まで)の社会保障生計調査に基づく2人以上の生活保護受給世帯(総数)の10大費目別の消費支出(実数)及び構成割合は,以下のとおりである。消費支出(実数)

構成割合

食料

5万1912円

29.9%

住居

3万0766円

17.7%

光熱・水道

1万7718円

10.2%

家具・家事用品

8511円

4.9%

被服及び履物

8333円

4.8%

保健医療

3602円

2.1%

交通・通信

1万6700円

9.6%

教育

5838円

3.4%

教養娯楽

1万1030円

6.4%

諸雑費

1万9210円

11.1%

合計

17万1986円

100%

(5)本件各改定の内容

ゆがみ調整の内容(甲A3,63,乙A6,18)

(ア)前記(1)エ(オ)のとおり,基準部会は,平成21年全消調査を用いて,生活扶助基準と第1・十分位の消費実態に関して,年齢階級別,世帯人員別及び級地別に指数を用いて相対比較することにより,展開部分におけるかい離の有無及びその程度を詳細に検証し,その結果を平成25年報告書にまとめたところ,厚生労働大臣は,平成25年検証の結果を生活扶助基準の展開部分に反映させることにより,生活扶助基準を改定した(ゆがみ調整)。具体的には,年齢階級別,世帯人員別及び級地別の
区分ごとに改定率(後記(イ)のとおり,激変緩和措置として,平成25年検証の結果の反映比率を2分の1にしたもの)を算出し,その改定率をデフレ調整後の生活扶助基準額に乗じて,生活扶助基準額を算出した。なお,平成25年検証では,生活扶助基準額の比較の対象として,平成21年全消調査の第1・十分位の世帯を用いたが,ゆがみ調整は,こ
のような第1・十分位のサンプル世帯の全てが生活保護を受給した場合を想定し,その1世帯当たりの平均受給額と上記サンプル世帯の生活扶助相当支出額の平均額が同額になるようにした上で,上記消費実態とのかい離を是正する基準改定を行ったものであり,上記第1・十分位のサンプル世帯と実際の生活保護受給世帯とで,年齢階級,世帯人員及び級
地の分布が完全に一致する場合は,生活扶助基準額の総額に変動は生じないが,実際には,両者の間で年齢階級,世帯人員及び級地について違いが生じるため,
生活扶助基準額の合計額に変動が生じることとなった。

(イ)厚生労働大臣は,ゆがみ調整により,生活扶助基準が減額される世帯への影響が大きいことを踏まえ,激変緩和措置として,平成25年検証の反映比率を2分の1とした。

デフレ調整の内容(甲A63,157,158,乙A18,27,28,
30,51,52,54)
(ア)概要
厚生労働大臣は,平成20年以降,一般国民の消費水準が下落する一方で,同年以降の物価下落(デフレ)によって,生活保護受給世帯の可処分所得が相対的,実質的に増加したという経済状況に鑑み,同年以降
の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的,実質的な増加による一般国民との間の不均衡を是正するため,生活扶助相当CPIを用いて平成20年と平成23年の物価下落率を算定し,この数値を根拠に,生活扶助基準の見直しを行うというデフレ調整を行った。
(イ)生活扶助相当CPIについて

生活扶助相当CPIとは,生活扶助に相当する品目を対象とする消費者物価指数であり,具体的には,総務省CPIの全ての指数品目から,非生活扶助相当品目を除いた生活扶助相当品目について,品目ごとに総務省CPIのウエイトを乗じた数値を,総務省CPIのウエイトの合計値で除して算出したものである。

(ウ)基準時点及びウエイト参照時点について
厚生労働大臣は,平成20年及び平成23年の各時点間の生活扶助相当CPIの変化率を算定することとし,平成22年を基準時点(価格参照時点及び指数参照時点)及びウエイト参照時点とした上で,平成20年及び平成23年を比較時点として,生活扶助相当CPIをそれぞれ算
定した。
(エ)生活扶助相当CPIの品目及びウエイトについて

a
平成23年の生活扶助相当CPIの指数品目の数は,平成22年の指数基準改定後における総務省CPIの指数品目(588品目)から上記(イ)のとおり非生活扶助相当品目(71品目)を控除した,517品目である。一方,平成20年の生活扶助相当CPIの指数品目の数は,この517品目から平成22年の指数基準改定の際に追加された
32品目を控除した485品目である(すなわち,平成20年の生活扶助相当CPIの算定においては,上記32品目を計算上除外して行われたことになる。)。
b
生活扶助相当CPIは,
後記(オ)のとおり,
ウエイト参照時点が平成
22年とされたため,平成20年及び平成23年の各生活保護相当CPIの算定においては,いずれも平成22年の家計調査の結果に基づきウエイトが算定されている。10大費目ごとの平成22年基準改定時の総務省CPIのウエイト(前記(3)イ(イ))並びに平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIのウエイトを表にすると,以下のと
おりである。
費目

総務省CPI

平成20年の

平成23年の

生活扶助相当生活扶助相当
CPI

CPI

食料

2525

2415

2498

住居

2122

10

10

光熱・水道

704

704

704

家具・家事用品345

329

345

被服及び履物

405

378

395

保健医療

428

189

199

交通・通信

1421

538

543

教育

106

106

教養娯楽

1145

1024

1091

諸雑費

569

500

506

合計
c
334

10000

6189

6393

上記bの教養娯楽の費目のうち,テレビ,パソコン(デスクトップ型),パソコン(ノート型)の品目の①ウエイト,②平成20年の価格指数,③平成23年の価格指数,④①に②を乗じたもの,⑤①に③を乗じたものは,次のとおりである。すなわち,テレビは,①が97,②が205.8,③が69.1,④が19962.6,
⑤が6702.7であり,パソコン(デスクトップ型)は,①が10,②が237.2,③が60.1,④が2372,⑤が601であり,パソコン(ノート型)は,①が20,②が281.6,③が76,④が5632,⑤が1520である。
また,生活扶助相当CPI(総合)に係る上記④及び⑤の数値は,
④が646627.9であり,⑤が635973.1である。(オ)生活扶助相当CPIによる物価下落率の算出
以上に基づき,総務省CPIと同じ方法で(上記(3)イ(キ)),生活扶助相当CPIの変化率を算定すると,平成20年の生活扶助相当CPIが104.5,平成23年の生活扶助相当CPIが99.5となり,平
成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率は,以下の計算式のとおりマイナス4.78%となった。
(99.5-104.5)÷104.5×100=-4.78%
厚生労働大臣は,上記物価下落率を生活扶助基準額に一律に乗じることにより,デフレ調整を実施した。


激変緩和措置等の内容(甲A63,乙A1,16,18,31,95)厚生労働大臣は,ゆがみ調整及びデフレ調整に基づき,平成25年度か
ら生活扶助基準を減額改定することとしたが,生活保護受給世帯に対する激変緩和措置として,ゆがみ調整につき平成25年検証の反映比率を2分の1としたほか(上記ア(イ)),①平成25年度から3年間をかけて段階的に実施し(1年ごとに見直し後の影響が3分の1ずつ増えるようにし,3年間で段階的に改定する仕組みとなっている。),②見直しの影響を一定
程度に抑える観点から,現行の生活扶助基準からの増減幅を10%以内に抑える措置を採った。
2
審査請求前置の有無(争点(1))について

(1)生活保護法69条は,同法に基づき保護の実施機関又は支給機関がした処分の取消しの訴えは,当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ,提起することができない旨規定し,いわゆる審査請求前置主義を採用している。また,行政不服審査法(平成26年法律第68号による改正前のもの。以下同じ。)は,当該処分に係る審査請求は,原則として,処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内に行わなければなら
ない旨規定する(同法14条1項)。
そして,審査請求前置主義を採用する処分につき,審査請求が不適法であった場合には,審査請求を前置したとはいえないから,当該処分の取消しを求める訴えは不適法となる(最高裁昭和30年1月28日第二小法廷判決・民集9巻1号60頁参照)。

(2)各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。ア
原告17らについて

(ア)福岡県粕屋保健福祉事務所長は,平成25年8月1日,原告17らに対し,平成25年決定をした。原告17らは,同日,平成25年決定を受けたことを知った。(甲C17-1,18-1,乙C17の1)(イ)原告17は,上記(ア)の平成25年決定を不服として,平成25年10月7日,世帯を代表して,福岡県福祉労働部・援護課に審査請求書を持
参して提出する方法により,福岡県知事に対する審査請求をした(乙C17の1)。
(ウ)福岡県知事は,平成26年9月24日付けで,原告17らの審査請求を棄却する旨の裁決をした
(甲C17-2,
18-2,
乙C17の2)


原告61らについて

(ア)北九州市小倉南福祉事務所長は,平成25年7月22日,原告61らに対し,平成25年決定をした。原告61らは,同月25日,平成25年決定を受けたことを知った。(甲G61-1,62-1,乙G62の1)
(イ)原告62は,
上記(ア)の平成25年決定を不服として,
平成25年9月
26日,世帯を代表して,福岡県福祉労働部保護・援護課に審査請求書を持参して提出する方法により,
福岡県知事に対する審査請求をした
(乙
G65の1)。
(ウ)福岡県知事は,平成26年9月16日付けで,原告61らの審査請求を棄却する旨の裁決をした
(甲G61-2,
62-2,
乙G62の2)


(3)検討

原告17らについて
前記(2)ア(ア)のとおり,原告17らは,平成25年8月1日に原告17
らに対する平成25年決定が行われたこと知ったと認められるから,これに対する審査請求期間の満了日は,その翌日から起算して60日後の同年9月30日であるところ,原告17らは,同年10月7日に審査請求を行っている。したがって,原告17らが,審査請求期間内に審査請求を行ったということはできない。

原告61らについて
前記(2)イ(ア)のとおり,原告61らは,平成25年7月25日に原告6
1らに対する平成25年決定が行われたことを知ったと認められるから,
これに対する審査請求期間の満了日は,その翌日から起算して60日後の同年9月23日が祝日に当るため,行政機関の休日に関する法律2条により,その翌日である同月24日であると解されるところ,原告61らは,同月26日に審査請求を行っている。したがって,原告61らが,審査請求期間内に審査請求を行ったということはできない。

以上によれば,原告17ら及び原告61らの各審査請求は,いずれも審
査請求期間を徒過しており,これを徒過したことにつきやむを得ない理由(行政不服審査法14条1項ただし書)も認められないから,原告17ら及び原告61らは,平成25年決定につき,適法な審査請求を経たとは認められない。
(4)原告らの主張
原告らは,原告17ら及び原告61らの各審査請求については,いずれも実体審理を経て棄却の裁決を受けている以上,審査請求期間徒過に係る瑕疵は治癒された旨主張する。

しかし,不適法な審査請求に対し,行政庁が実体審理を行い棄却の裁決をしたとしても,これにより審査請求前置の要件が充足されたとすると,不適法な不服申立てが却下された場合との均衡を失することになるし,不適法な審査請求は本来却下されるべきものであり,行政庁の過誤により特別の利益を付与すべきではないから,これをもって,不適法な審査請求の瑕疵が治癒
されたということはできない
(最高裁昭和48年6月21日第一小法廷判決

集民109号403頁参照)。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
(5)小括
以上によれば,原告17ら及び原告61らの訴えのうち平成25年決定の
取消しを求める部分は,いずれも審査請求前置の要件を満たさない不適法なものであるから,却下すべきである。

3
本件各改定の合憲性及び適法性(争点(2))について

(1)判断枠組み等(争点(2)ア)について

判断枠組み

(ア)生活保護法3条によれば,同法により保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないところ,同法8条2項によれば,保護基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであるのみならず,これを超えないものでなければならない。そして,これらの規定にいう
最低限度の生活は,抽象的かつ相対的な概念であって,その時々における経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断・決定されるべきものであり,これを保護基準において具体化するに当たっては,国の財政事情を含めた多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする
ものである(最高裁昭和57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁参照)。したがって,保護基準のうち生活扶助基準の減額改定を行うに際し,このような改定を行う必要性があるか否かや改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては,厚生労働大臣に上記のような
専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである。
(イ)また,生活扶助基準の減額改定は,従前の生活扶助費が支給されることを前提として現に生活設計を立てていた被保護者の期待的利益の喪失を来す側面があることも否定し得ないから,厚生労働大臣は,被保護者
のこのような期待的利益にも可及的に配慮するため,その減額改定の具体的な方法等について,激変緩和措置の要否等を含め,前記のような専
門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているというべきである。(ウ)したがって,本件各改定は,①ゆがみ調整及びデフレ調整による生活扶助基準の減額改定に係る厚生労働大臣の判断に上記(ア)の見地からの裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合,あるいは,②その激変緩和措置に係る厚生労働大臣の判断に上記(イ)の見地からの裁量
権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に,生活保護法3条及び8条2項に違反して違法となり,本件各改定に基づく本件各決定も違法となるものというべきである。
そして,生活扶助基準の減額改定の前提となる最低限度の生活の需要に係る評価が前記のような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であ
ることや,基準生活費の額等については各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて生活扶助基準と一般国民の消費実態との比較検討等がされてきた経緯等に鑑みると,厚生労働大臣の上記①の裁量判断の適否に係る裁判所の審査においては,主としてゆがみ調整及びデフレ調整による生活扶助基準の減額改定に至る判断の過程及び手続に過誤,欠落が
あるか否か等の観点から,統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等について審査されるべきものと解される(最高裁平成24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁,最高裁平成24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁参照)。


原告らの主張

(ア)原告らは,憲法25条は,同条1項において,国民に健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障し,同条2項において,被告国に社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努める義務を課しているところ,同条で保障された生存権が生活保護法によって具体化された場合には,その保障内容は憲法で保障されたものとなるから,こ
れを正当な理由なく後退させることは違憲であって許されず,仮に,憲法25条から直ちに制度後退禁止原則を導けないにしても,上記規定の内容に照らせば,保護基準の引下げに関する厚生労働大臣の裁量権の範囲は極めて限定的であると解すべきである旨主張する。
しかし,憲法25条の規定は,国権の作用に対し,一定の目的を設定しその実現のための積極的な発動を期待するという性質のものである。しかも,上記規定にいう健康で文化的な最低限度の生活は,抽象的かつ相対的な概念であって,その具体的内容は,その時々における文化の発達の程度,経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相
関関係において判断決定されるべきものであるから(前掲最高裁昭和57年7月7日大法廷判決参照),憲法25条が,我が国における経済情勢等により,同条が定める健康で文化的な最低限度の生活の具体的な水準が後退することがあり得ることも予定しているというべきである。そうすると,憲法25条が生活保護法に基づき定められた生活扶助基準
の引下げを行うことを一律に禁止しているということはできないし,これを行う場合に,厚生労働大臣の裁量権の範囲が限定されるということもできない。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
(イ)また,原告らは,憲法98条2項の日本国が締結した条約及び確立された国際法規は,これを誠実に遵守することを必要とするとの規定が,
司法においても適用されることを前提に,
我が国が批准した経済的,
社会的及び文化的権利に関する国際規約(昭和54年条約第6号。以下社会権規約という。)においては,権利の完全な実現に向けて行動を採ることを締約国に義務付けており(社会権規約2条1項),社会権
規約や経済的,社会的及び文化的権利に関する委員会の一般的意見(甲A53)等は,社会保障に対する権利の後退を原則的に禁止してい
ることから,本件各改定は,これらの規定等に反し,許されない旨主張する。
しかし,社会権規約9条は,

この規約の締約国は,社会保険その他の社会保障についてのすべての者の権利を認める。と規定するところ,

これは,締約国において,社会保障についての権利が国の社会的政策により保護されるに値するものであることを確認し,上記権利の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものであって,個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない。このことは,社会権規約2条1項が,締約国において
立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成することを求めていることからも明らかである。したがって,社会権規約を根拠に,生活扶助基準の改定に係る厚生労働大臣の裁量権が制約されるということはできないし,生活扶助基準の引下げが原則として禁止されるということもできない(最

高裁平成元年3月2日第一小法廷判決・集民156号271頁参照)。また,上記一般的意見についても,我が国に対して直ちに法的拘束力を有すると解すべき根拠はない。
以上によれば,原告らが主張する社会権規約等は,生活扶助基準の改定に係る厚生労働大臣の裁量権を制約するものということはできない。
原告らの上記主張は採用することができない。
(ウ)さらに,原告らは,生活保護法8条及び9条が掲げている保護基準の内容を決める際の考慮要素は,要保護者の生活上の属性に関わる事項であるから,
生活扶助基準を定めるに当たって,
国の財政事情,
国民感情,
政権与党の公約等の生活外的要素を考慮することは許されない旨主
張する。
しかし,前記ア(ア)のとおり,生活保護法8条2項における最低限度の
生活は,抽象的かつ相対的な概念であって,その時々における経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断・決定されるべきものであるから,厚生労働大臣は,保護基準を決めるに当たって,要保護者の生活上の属性に関わる事項だけではなく,国の財政事情等を含む複雑多様な要素を考慮した上での専門技術的かつ政策的な
判断を行う必要がある。したがって,厚生労働大臣は,生活扶助基準を改定するに当たって,生活保護法8条及び9条が掲げる考慮要素以外の事情を考慮してはならないものではなく,国の財政事情や国民感情,国民の多数の支持を得た政党の公約等の様々な要素を考慮することが許されるというべきである(最高裁昭和42年5月24日大法廷判決・民集
21巻5号1043頁の裁判所意見参照)。
したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
(2)ゆがみ調整の適否(争点(2)イ)について

ゆがみ調整の必要性等について

(ア)ゆがみ調整に至る経緯等
a
平成25年検証に至る経緯をみると,専門委員会は,平成15年,生活保護全般につき検証を実施し(平成15年検証),その結果を平成16年報告書にまとめたが,平成16年報告書では,勤労3人世帯の生活扶助基準について,低所得世帯の消費支出額と比較した結果,
その水準は基本的に妥当であるが,それが均衡しているかどうかを定期的に見極めるために全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要があるとされた(認定事実(1)イ)。これを受け,検討会は,平成19年,生活扶助基準の水準及び体系並びに地域差の妥当性等について,検証を実施し(平成19年検証),その結果を平成1
9年報告書にまとめたところ,平成19年報告書では,生活扶助基準の展開部分を第1・十分位の世帯の消費実態と比較した場合,年齢階
級別の基準額の水準については,20歳ないし39歳及び40歳ないし59歳では生活扶助基準額が相対的にやや低めとなっている一方で,70歳以上では相対的にやや高めであるなど消費実態とかい離しており,世帯人員別の生活扶助基準額の水準について,世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であり,世帯人員が少ない世帯に不利になってい
る実態がみられ,地域別にみると,地域間の消費水準の差は縮小してきているとされた(認定事実(1)ウ)。このような平成15年検証及び平成19年検証を踏まえ,平成21年全消調査の個票データ等を用いて,生活扶助基準の展開部分の適正化を図ることを目的として,年齢階級別,世帯人員別,級地別に生活扶助基準額と消費実態のかい離を
詳細に分析し,専門的かつ客観的な評価・検証を行うために基準部会が設置された(認定事実(1)エ(ア))。
b
次に,基準部会が行った平成25年検証の内容をみると,基準部会では,①平成15年検証及び平成19年検証に倣い,生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが現実的である
こと,②第1・十分位の平均消費水準は,中位所得階層の約6割に達していること,③必需的な耐久消費財の普及状況は,第1・十分位と中位所得階層とで概ね遜色ないこと,④全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合が,他の階層と比べて特別に減少しているわけではないこと,⑤第1・十分位世帯の
大部分がOECDが定める相対的貧困線以下に属すること,⑥第1十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており,他の十分位の世帯に比べて消費動向が大きく異なることを理由に,第1・十分位の世帯を用いて,展開部分に係る生活扶助基準額と消費実態のかい離を分析した(認定事実(1)エ(オ)a~c)。

c
そして,基準部会の検証結果をみると,年齢階級別の生活扶助基準
額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比較した場合,各年齢階級間の指数にかい離があること,第1類費及び第2類費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比較した場合,世帯人員が増えるにつれてかい離が拡大する傾向があること,級地別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数を比較した場合,消費実態の地域差の方が小さくなっていることが認められた(認定事実(1)エ(オ)d)。厚生労働大臣は,このような平成25年検証に基づき,その結果を生活扶助基準の展開部分に反映させることにより,平成25年度から
3年かけて生活扶助基準額の改定を実施し,併せて激変緩和措置として,
平成25年検証の反映比率を2分の1とした
(認定事実(5)アウ)

(イ)ゆがみ調整を行う目的ないし必要性等
以上のように,平成25年検証は,平成15年検証及び平成19年検証の結果を踏まえ,生活扶助基準の展開部分の適正化を図ることを目的
として行われたものであり,平成25年検証に基づくゆがみ調整も,上記展開部分の適正化を図ることを目的とするものであって,
その目的
(必
要性)
において不合理なものとはいえない。
そして,
平成25年検証は,
社会保障等の専門家を委員とする基準部会により実施されたものであり,その内容は,年齢階級,世帯人員及び級地を指数化し,展開部分に関す
る低所得世帯(第1・十分位)の消費実態と生活扶助基準額とのかい離を詳細に分析し,そのかい離の有無や程度を具体的に明らかにしたものであり,その検証過程において特段不合理な点は認められない。また,上記のゆがみ調整に至る経緯等の事情から直ちに,ゆがみ調整を行った厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠落があるというべき事情
は見当たらない。
(ウ)そこで,以下,ゆがみ調整を行った厚生労働大臣の判断の過程及び手
続に過誤,欠落があるか否か,その激変緩和措置(平成25年検証の反映比率を2分の1とした措置)が著しく不合理であるか否かといった観点から,ゆがみ調整及びその激変緩和措置の問題点に係る原告らの主張につき,順に検討を加える。

平成25年検証において用いられた検証方法について

(ア)原告らは,平成25年検証において基準部会が採用した検証方法は,単純に第1・十分位の消費支出と生活扶助基準とを比較したものにすぎず,これまで生活扶助基準の改定方式として採用されてきた水準均衡方式の考え方に反し,不合理である旨主張する。
しかし,水準均衡方式は,昭和58年意見具申を踏まえ,昭和59年度から現在に至るまで採用されている改定方式であり,その内容は,当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に,前年度までの一般国民の消費実態との調整を図るというものである。他方で,平成25年検証は,単純に第1・十分位の消費支出と生活扶助基準額を比
較して,
生活扶助基準の絶対的な水準の調整を図るというものではなく,
年齢階級別,世帯人員別,級地別に生活扶助基準額による各指数の分布と一般低所得世帯の消費実態による各指数の分布とのかい離を詳細に分析することにより,展開部分の妥当性を検証しようとしたものである。したがって,平成25年検証で用いられた手法は,水準均衡方式の考え
方と矛盾するものではないし,むしろ,生活扶助基準の展開部分に一般国民の消費実態を反映させるという意味において,一般国民の消費実態により相対的に生活扶助基準が決まるという水準均衡方式の考え方に沿うものであるということができる。
なお,原告らは,平成25年検証における認定事実(1)エ(オ)cのとお
りの検証手法は,統計学辞典にも掲載されていない独自の方式であるなどと主張するが,上記検証手法は,専門家で構成される基準部会の検証
を経て採用されたものであり,このような手法を用いることにつき,基準部会の審議の中で強い異論や反対意見が表明されたこともうかがわれないのであり,これまでに用いられてこなかった新たな方式であるからといって,これを用いることが不合理であるとは認められない。
(イ)さらに,原告らは,昭和58年意見具申が,①平均的一般世帯の消費支出,②低所得世帯(第1・五分位及び第2・五分位)の消費支出及び③生活保護受給世帯の消費支出の3つの間の格差の均衡に留意する必要がある旨言及していることを踏まえ,平成25年検証と水準均衡方式が全く異なる方式である旨主張する。
しかし,昭和58年意見具申の中に,原告らが言及するような記載は
見当たらない。
この点を措くとしても,
平成25年検証は,
年齢階級別,
世帯人員別,級地別に生活扶助基準額と第1・十分位の消費実態のかい離を詳細に分析し,展開部分に関する検証を行ったものであり,第1・十分位の消費支出と生活扶助基準額とを比較して,生活扶助基準額の絶対水準の調整を図ろうとするものではないから(認定事実(1)エ(オ)a,
甲A201〔14頁〕),平成25年検証と原告らが主張する上記①ないし③の均衡に留意するという考え方とが直ちに矛盾するものではない。(ウ)以上によれば,平成25年検証において用いられた検証方法が水準均衡方式の考え方に反するという原告らの主張は,採用することができない。


第1・十分位と比較したことについて

(ア)原告らは,第1・十分位という最下位層の消費水準との比較を根拠に保護基準の引下げを許容すれば,保護基準の際限ない引下げにつながる可能性がある旨主張する。
しかし,
前記のとおり,
平成25年検証は,
年齢階級別,
世帯人員別,
級地別に生活扶助基準額と第1・十分位の消費実態とのかい離を詳細に
分析し,展開部分に関する検証を行ったものであり,第1・十分位の消費支出と生活扶助基準額とを比較して,生活扶助基準額の絶対水準の調整を図ろうとするものではない。したがって,平成25年検証に基づいて生活扶助基準を改定したとしても,必ずしも生活扶助基準の引下げにつながるわけではなく(実際にも,高齢者世帯のように,ゆがみ調整によって生活扶助基準額が増額となる世帯も存在する。認定事実(1)エ(オ)d④参照),保護基準の際限ない引下げにつながる可能性がある旨の原告らの主張は採用することができない。
(イ)原告らは,第1・十分位との比較・検証という手法は,厚生労働省が
主導・誘導したものであって,基準部会の委員らが発案したものではなく,むしろ,基準部会の委員は,第1・十分位との比較による保護基準の引下げに消極的であり,実際,平成25年報告書においても,生活扶助基準の引下げに対する懸念が示されている旨主張する。
しかし,保護基準の改定については,平成15年検証及び平成19年
検証を経た後に,平成25年検証が実施されているが,平成15年検証及び平成19年検証のいずれにおいても,第1・十分位の消費水準との比較により検証が実施されている(認定事実(1)イ(エ),ウ(イ)(ウ))。このような経緯等を踏まえ,基準部会は,第1・十分位の消費実態を比較することにしたものであり(認定事実(1)エ(オ)),他方で,第1・十分
位を比較対象としたことにつき,厚生労働省が主導・誘導したという原告らの主張を裏付けるよう事実は認められない。
確かに,平成25年報告書には,原告らが指摘するとおり第1・十分位の者にとっては,全所得階層における年間総収入額に占める当該分位の年間収入総額の構成割合にわずかな減少があっても,その影響は相対的に大きいと考えられることに留意すべきである,生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には,現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯,とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から,子どものいる世帯への影響に配慮する必要がある旨の記載がある(認定事実(1)エ(オ)d(b)③④)。しかし,平成25年報告書では,平成25年検証により個々の生活保護受給世帯を構成する世帯員の年齢,世帯人員,居住する地域の様々な組合せによる生活扶助基準の妥当性について,よりきめ細やかな検証が行われたことになる,基準部会で採用した年齢,世帯人員及び地域の影響を検証する手法についても委員による専門的議論の結果得られた透明性の高い一つの妥当な手法であるとの考えも示されていることからすると(認定事実(1)エ(オ)d(b)①②),
基準部会は,平成25年検証に基づき,生活扶助基準を改定することを容認していたものといえる。そうすると,基準部会は,生活扶助基準の引下げにおける留意点を示しているものの,平成25年検証に基づく生活扶助基準の改定に反対する趣旨の意見を示しているとはいえず,平成25年検証に基づき行われたゆがみ調整が基準部会の意見に反するとい
うことはできない。
(ウ)平成25年報告書は,第1・十分位の世帯の平均消費水準を比較対象とした理由について,①これまでの検証にならい,生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが今回の検証では現実的であると判断したこと,②必需的な耐久消費財について,第1・十分
位に属する世帯における普及状況が,中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されている状況にあること,③第1・十分位に属する世帯の大部分がOECDの基準では相対的貧困層以下にあることを示していること等を挙げる。
これに対し,原告らは,①の理由については,格差縮小方式における
比較対象は一般勤労者世帯の消費水準であり,水準均衡方式における比較対象は一般国民生活における消費水準であったのであり,具
体的には,一般勤労者世帯の平均と第1・5分位ないし第2・5分位の低所得者勤労世帯であるから,これまでの検証にならって,第1・十分位の世帯の消費水準と比較することは明白な事実誤認であり,②の理由については,厚生労働省保護課が実施した平成22年家庭の生活実態及び生活意識に関する調査(甲A43,91。以下平成22年調査という。)によれば,必需的な耐久消費財の普及率について,第1・十分位と第3・五分位を比較すると,第3・五分位では,完全に普及している項目でも,第1・十分位では完全に普及していない項目が数多くあり,
特に文化や教養に関わる項目及び社会生活に関わる項目において,
その差が顕著であるから,平成22年調査と整合しておらず,③の理由については,OECD基準による相対的貧困線以下の世帯は,あってはならない状況にあるものと考えられており,これを理由に挙げることは許されないなどと主張する。
しかし,①の理由に関する原告らの主張については,まず,保護基準
の見直しに関しては,平成15年検証及び平成19年検証を経て,平成25年検証が実施されているところ,平成15年検証においては,生活保護において保障すべき最低生活の水準は,一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであり,具体的には,第1・十分位の世帯の消費水準に着目することが適当であるとされた上で
(平

成15年中間取りまとめ),第1・十分位を比較対象として,生活扶助基準の評価・検証が実施され(認定事実(1)イ(エ)a),平成19年検証においても,第1・十分位を比較対象として,生活扶助基準の水準の評価・検証が実施されたのである(認定事実(1)ウ(ウ)b(b))から,平成25年検証の以前にも,第1・十分位を比較対象として,生活扶助基準の
検証が行われていたといえる。そして,平成25年報告書がいうこれまでの検証とは,平成15年検証及び平成19年検証を指すものと解
されるから,原告らが主張するような事実誤認があるとはいえない。また,②の理由に関する原告らの主張については,確かに,必需的な耐久消費財の普及率を調査した平成22年調査によれば,第1・十分位と第3・五分位とを比較した場合,原告らが生活必需的な耐久消費財と主張するもの
(冷蔵庫,
エアコン,
携帯電話,
自動車等の合計12項目)
の普及率には差がみられるものの,このうち自動車を除く項目では,第1・十分位の普及率は,第3・五分位の普及率のおよそ9割ないしそれ以上に達している(甲A43,91,92)。そうすると,必需的な耐久消費財に係る第1・十分位の普及率が,中位所得階層と比べ,概ね遜
色なく充足されているとの基準部会の評価が誤りであるとはいえない。さらに,③の理由に関する原告らの主張については,OECD基準における相対的貧困層とは,等価可処分所得の中央値の半分である相対的貧困線(例えば,平成24年では122万円)に満たない世帯をいうところ(甲A14),前記(ア)bのとおり,平成25年検証は,生活扶助基
準額と一般低所得世帯の消費実態を比較・検証することにより,生活扶助基準の展開部分に現実の消費実態を反映させようというものであるから,むしろ,比較の対象となる一般低所得世帯は,生活保護受給世帯と消費実態が類似している方が望ましいという考え方も不合理とはいえない。そして,生活保護受給世帯が,相対的貧困線を大きく上回る金額の
金銭給付を受けているとは考え難いことからすれば,生活保護受給世帯と第1・十分位とでは,消費実態にある程度の共通性が認められるものと解される。そうすると,基準部会が,相対的貧困線以下にあることを理由に,第1・十分位を比較の対象としたことが,不合理であるとはいえない。

原告らは,基準部会が第1・十分位を比較対象とした上記以外の理由についても,不合理である旨縷々主張するが,いずれも採用することが
できない。
(エ)以上によれば,第1・十分位との比較に合理性がないとする原告らの主張は,いずれも採用することができない。

上藤教授の意見書に基づく主張について
原告らは,上藤一郎静岡大学学術院人文社会科学領域教授(以下上藤教授という。)が作成した意見書(甲A150。以下上藤ゆがみ意見書という。)等を根拠に,平成25年検証で用いられたデータや回帰分析の手法について,以下の問題点がある旨主張する。
(ア)統計データの問題
a
原告らは,平成25年検証で用いられたデータと,公表されている平成21年全消調査の集計データを照合すると,平成25年検証で用いられたデータのサンプル世帯数が平成21年全消調査の世帯数の10%でないなど,整合しない点がある旨主張する。
この点について,証拠(甲A3,乙A6,58~61)及び弁論の
全趣旨によれば,平成21年全消調査及び平成25年検証で使用したデータについて,以下の事実が認められる。すなわち,平成21年全消調査は,平成17年国勢調査を基に推計した世帯を母集団とし,その中から二人以上世帯5万2404世帯,単身世帯4402世帯(総世帯数5万6806世帯)
を抽出して行われた抽出調査であるところ,

調査対象世帯の集計に当たっては,回収して回答が得られた個票データに抽出率(調査対象である市町村の人口密度や分布等によって決められた割合)
の逆数等で算出される集計用乗率を乗じることによって,
全国規模の消費実態の推計が行われる。なお,上記集計用乗率は個票データごとに抽出率が異なるため,
個票データごとに設定されている。

そして,平成21年全消調査のデータにおける集計用乗率は,単身世帯と2人以上世帯とで大きな差異があり,単身世帯の集計用乗率は,
2人以上世帯の集計用乗率よりも大きいとされる。また,平成25年検証で用いたデータは,
平成21年全消調査の個票データのうち,
年間収入が低い世帯から順に並べた第1・十分位の世帯(以下データ①という。)及び世帯員1人当たりの年間収入が低い世帯から順に並べた第1・十分位の世帯(以下データ②という。)であり,データ①及び②については,下位の世帯から個票データを順番に並べ,それぞれの個票データに集計用乗率を乗じた実際の世帯数の累計が全体の実際の世帯数の下位10%となるところまでの個票データの集団をそれぞれ第1・十分位の世帯としている。データ①のサ
ンプル世帯数は3125世帯,データ②のサンプル世帯数は6697世帯である。
以上を前提に平成25年検証のデータと平成21年全消調査の整合性を検討すると,データ①及びデータ②のサンプル世帯数が,平成21年全消調査において抽出された世帯の合計の10分の1でないのは,
各十分位に含まれる二人以上世帯と単身世帯の構成割合と,二人以上世帯と単身世帯の集計用乗率の差に起因するものと考えられる。すなわち,世帯年収が下位の世帯から個票データを並べた場合(データ①を構成する個票データから選定する場合)には,下位の世帯には相対的に単身世帯が多く含まれ,他方,世帯員1人当たりの年収が下位の
世帯から個票データを並べた場合(データ②を構成する個票データから選定する場合)には,下位の世帯には相対的に2人以上の世帯が多く含まれると考えられるところ,集計用乗率が,単身世帯の方が2人以上世帯よりも相当大きな数値になるため,下位に単身世帯が多く含まれるデータ①の方が,データ②よりもサンプル数が少なくなる。そ
うすると,平成25年検証のデータのサンプル数と平成21年全消調査の世帯数の10%の数が一致しないことは,上記の抽出過程から生
じる当然の帰結であり,これをもって,両者が整合していないということはできない。
また,原告らが主張するその他の点を踏まえても,平成25年検証のデータが平成21年全消調査と整合性を欠くとは認められない。原告らの上記主張は採用することができない。

b
また,原告らは,第1・十分位の消費支出との比較で生活扶助基準のゆがみを検証するのであれば,
生活保護受給世帯の平均世帯人員数,
世帯人員の平均年齢,生活保護受給額の平均と,第1・十分位の平均世帯人員数,世帯人員の平均年齢,年間可処分所得額の平均等の点で等質的な集団かどうかについて事前に検討が必要であるが,そのよう
な検討がなされていない旨主張する。
しかし,平成25年検証は,平成21年全消調査の第1・十分位のデータを使用し,その消費実態の年齢階級,世帯人員及び級地別の各指数の分布と,それらの全ての世帯が生活保護を受給した場合の生活扶助基準額の年齢階級,世帯人員及び級地別の各指数の分布を比較し
たものである(認定事実(1)エ(オ)a(b)①)。したがって,平成25年検証は,異なる集団を比較したものではなく,等質的な集団かどうかという問題はそもそも生じないから,原告らの上記主張は採用することができない。
c
さらに,原告らは,平成25年検証は,生活保護受給世帯と生活保護を受給していない一般低所得世帯の消費支出分布を比較することが目的であったにもかかわらず,
使用したデータには,
比較する集団
(実
験群・生活保護受給世帯)のみならず,比較される集団(対照群・一般低所得者世帯)においても生活保護受給世帯が含まれており,統計
学上重大な問題がある旨主張する。
しかし,前記bのとおり,平成25年検証は,第1・十分位の消費
実態の各指数とそれらの全ての世帯が生活保護を受給した場合の生活扶助基準額の各指数を比較したものであり,一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態の各指数と実際の生活保護受給世帯の生活扶助基準額の各指数を比較したものではないから,第1・十分位から生活保護受給世帯が除外されていなかったとしても,原告らが主張するよう
な統計学上の問題が生じるとはいえない。
(イ)回帰分析の手法の問題
a
原告らは,定式化された回帰モデル(回帰直線の方程式)から得られる説明変数(予測値)の良さ(精度)を示す数値である決定係数(R
2

について,
平成25年報告書で示された回帰モデルの決定係数は,

いずれも0.4未満と低い数値であり,一連の分析結果は統計学的にみた場合,あくまで参考程度の域を超えるものではない旨主張する。証拠(甲A150,乙A56,62,63)及び弁論の全趣旨によれば,決定係数は,以下のとおりの性質を有する。すなわち,決定係数は,理論上,0≦R2≦1の範囲をとり,R2=1であれば,回帰モデルから算定される予測値と現実のデータ(実測値)が完全に一致していることを意味し,
反対にR2=0であれば,
回帰モデルから算定さ
れる予測値に一致する実測値が存在せず,当該回帰モデルが実測値の変動の説明に全く役に立たないことを意味する。
このことから,2は
R
1に近いほど当てはまりが良いと考えられ,一般的には,R2が0.8以上であれば,ある程度の当てはまりが実現され,0.3以下では,当てはまりが悪いとされている。
もっとも,2がどの程度の値であれ
R
ば良いかといった一般的な基準はなく,
クロス・セクション
(横断面)
データの分析では,0.3程度の値しか得られない場合も多い。

以上を前提に,平成25年報告書が示す回帰式を検討するに,平成21年全消調査の個票データは,個々の家計のデータを用いており,
統計学上,クロス・セクションデータと解されており(乙A62〔16頁〕),平成25年報告書で示された回帰式のうち年齢階級別(第1類費)の検証に係るものの決定係数は,データ①が0.28,データ②が0.
36であるところ
(甲A3
〔13頁〕乙A6

〔13頁〕,

上記のとおり,クロス・セクションデータの分析では,0.3程度の
値しか得られないこともあるし,平成25年報告書においても,消費実態については,多様な要因により影響するものと考えられるとされているから(認定事実(1)エ(オ)d(b)①),上記回帰式の決定係数の値が0.3前後であるからといって,この回帰式を用いて指数を算出することが統計学的に誤りであるということはできない。なお,原告ら
は,
平成25年報告書で示された上記以外の回帰式
(世帯人員,
級地)
の決定係数の低さも問題視するが,これらの回帰式は,直接指数を算出するために用いられたものではないから,これらの回帰式の決定係数の値が低いからといって,平成25年検証の不合理性を基礎付けるものではない。

b
また,原告らは,回帰係数の統計的検定を行うために必要となるt値と呼ばれる検定統計量(t検定)について,平成25年報告書で示されている回帰モデルをみると,有意水準が5%では有意な差が認められなかった変数が多くあるが,平成25年報告書で示された全ての
回帰分析においては,そのような変数を除外しておらず,t検定の結果を全く反映していない信頼できないものである旨主張する。
証拠(甲A150,乙A56,57,64)及び弁論の全趣旨によれば,回帰分析におけるt検定については,以下のとおりの統計
的手法であることが認められる。すなわち,統計学においては,対立
仮説(帰無仮説の反対側の効果がある(有効)や異なっている(異質)を主張する仮説)を直接肯定することは難しいため,帰無
仮説(効果がない(無効)や異なっていない(同質)を主張
する仮説)を否定することで間接的に対立仮説を肯定するという手続が採られる。t検定とは,このような帰無仮説を用いた検定手法の一つであり,(推定係数をその標準誤差で割ることで求められる。
t値

という数値を用いて,一定の有意水準を設定した上で,それを前提に
帰無仮説を検定し,それが否定されることで対立仮説を採択するものである。有意水準は,その値が低いほど,対立仮説が正しいこと(統計的に有意であること)を根拠付けることになり,実際には,5%や1%の値が使われることが多い。そして,有意水準に応じて棄却域が設定されるが,t値が棄却域の中に入った場合には,帰無仮説は棄却
され,対立仮説が正しいということになるが,逆に帰無仮説が棄却されなかったからといって,帰無仮説が積極的に支持されるわけではなく,結果が帰無仮説と矛盾しないことを意味するにすぎない。
以上を踏まえ,原告らの上記主張を検討すると,確かに平成25年報告書で示された回帰式の中には,有意水準5%に設定した場合に帰
無仮説を棄却できない(統計的に有意であるとはいえない)説明変数が複数含まれているが,上記のとおりt検定によって帰無仮説が棄却されなかったとしても,その説明変数につき,有意性がないこと
を意味するものではなく,有意性があるとはいえないことを意味
するにすぎないから,このような説明変数を除外せずに,当該回帰分
析を用いて生活扶助相当支出額の推計等のために用いたとしても,統計学的に誤りであるとはいえない。
c
原告らは,その他にも,上藤ゆがみ意見書を根拠に,平成25年報告書で示された回帰式の問題点を縷々主張するが,いずれも,平成2
5年検証で示された回帰式が統計学的に誤りであることを基礎付けるものとはいえず,採用することができない。

(ウ)以上によれば,上藤ゆがみ意見書に基づく原告らの主張は,いずれも採用することができない。

岩田教授の意見書に基づく主張について
原告らは,
岩田教授が作成した意見書
(甲A201。
以下
岩田意見書

という。)等を根拠に,平成25年検証やその際に用いられた全国消費実態調査のデータにつき,以下の問題点がある旨主張する。
(ア)平成25年検証の問題について
a
原告らは,平成25年検証においては,従来行われていた標準世帯からの展開という手法を採用しなかった結果,具体的な一般低所得世帯の消費水準を示すという生活扶助基準の分かりやすさが大幅に減じ
られた旨主張する。
しかし,ゆがみ調整を行うに当たっては,厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるところ,原告らの上記主張は,平成25年検証の方法の当不当を争うものにすぎないから,本件各改定の適否に影響を及ぼすものではない。

b
また,原告らは,①平成25年検証における一般低所得世帯の消費実態は統計的分析を駆使して得られた予測値であり,格差縮小方
式以降の単純な相対比較が変質していることに留意する必要があるし,②第1・十分位を用いたのは,体系・級地のゆがみと水準の検証
を一体化して行うためであり,体系と級地の指数だけであれば,低所得層に限定する必要はなく,より上位の2つの位を除いた全階層で行う方法もあった旨主張する。
しかし,上記いずれの点も,平成25年検証の結果を用いて生活扶助基準を改定する際の留意点や,平成25年検証で用いられた方法以
外の方法があることを指摘するにとどまり,ゆがみ調整や平成25年検証の方法の当不当を争うものにすぎない。この点を措くとしても,
①の点については,平成25年検証では,回帰分析の手法を用いて第1・十分位の年齢階級別(第1類費)の指数を算定しているが(甲A3〔12頁〕,乙A6〔12頁〕),統計的分析の手法を用いる以上,それによって算定された指数が予測値となることは当然であり,予測値を用いたことが平成25年検証の信用性に影響を与えるとはいえな
いし,平成25年報告書では,このように年齢階級別の指数を算定する際に統計的手法を用いた理由について,平成19年検証では,各年齢階級の単身世帯のデータを用いて各年齢階級別の平均消費水準を分析したが,全国消費実態調査の調査客体にはそもそも10代以下の単身世帯がほとんどいないため,10代以下の消費を正確に計測できないという限界があった点を考慮した旨説明しているから(認定事実(1)エ(オ)a(b)②)基準部会が回帰分析によって得られた,
予測値
を用いて平成25年検証を行ったとしても,不合理であるとはいえない。また,②の点については,第1・十分位を比較対象とすることに合理性が認められることは,前記イのとおりである。

以上によれば,原告らの上記主張は採用することができない。
c
さらに,原告らは,消費水準に依拠して,体系と級地のゆがみの是正を行うことは問題である旨主張する。
この点に関し,
岩田意見書は,
平成25年検証で採用された方法は,

消費水準の差異が純粋に体系と級地の格差を示しているとはいえないのではないかとの指摘が基準部会であったとした上で,基準を見直す場合,この方法にも限界があることに留意すべきであるとしている(甲A201〔17頁〕)。そうすると,岩田意見書は,原告らが主張する点につき,平成25年検証を用いて生活扶助基準を見直
す際の留意点として指摘するにとどまり,平成25年検証を生活扶助基準の改定に用いるべきでないとしているわけではない。原告らの主
張は採用することができない。
(イ)全国消費実態調査のデータを用いたことの問題点
原告らは,全国消費実態調査について,①消費には季節性があるところ,特定の季節に限定された調査であるにもかかわらず,季節性を補正する調整がされておらず,②単身世帯では協力世帯の確保が困難である
等の事情があるにもかかわらず,サンプルのばらつきを考慮した補正が行われておらず,③全国消費実態調査のデータからは,個人別収支(こづかい)が漏れている可能性が少なくない等の問題点を指摘する。しかし,
岩田意見書は,
平成21年全消調査を使用する留意点として,
上記①ないし③の点を指摘するにすぎず,平成21年全消調査を平成2
5年検証に用いることを否定する趣旨で上記①ないし③を挙げているわけではない。むしろ,岩田意見書は,生活保護基準を検証するためには,多様な世帯類型の消費実態を見ることが可能な全国消費実態調査が妥当とされてきたなどとした上で,家計簿記帳の難しさから,完璧な消費サンプルを得ることは今後も容易ではな(い)と指摘しており
(甲A201〔19,21頁〕),平成25年検証に当たり,平成21年全消調査を用いることを容認しているものと解されるから,原告らが主張する点を踏まえても,平成21年全消調査の個票データを用いたことが不合理であるとはいえない。
(ウ)以上によれば,岩田意見書に基づく原告らの主張は,いずれも採用することができない。

反映比率を2分の1にしたことの適否について
原告らは,厚生労働大臣は,平成25年検証の反映比率を2分の1にし
たことにより,約90億円の財政効果を得たと主張し,具体的には,①0歳ないし5歳の幼児と60歳以上の高齢者は,平成25年検証のとおりゆがみ調整を実施していれば,
生活扶助基準額が増額されるはずであったが,

その反映比率を2分の1にしたことにより,増額分が2分の1となり,この結果,約440億円の減額効果となった,②平成25年検証により,第2類費が増額される世帯もあったが,平成25年検証の反映比率を2分の1にしたことにより,増額分が2分の1となり,この結果,約9億円の減額効果となったとし,③上記①及び②の結果,反映比率を2分の1にしたことにより一定の範囲の被保護者につき生活扶助基準額の減額幅が抑制されたことを差し引いても,全体で約90億円の減額効果が発生した旨主張する。
原告らの上記主張は,平成25年検証の反映比率をそのまま用いれば財
政効果はプラスマイナスゼロであったのに,反映比率を2分の1にしたことにより約90億円の削減効果が生じたという趣旨をいうものと思われるが,平成25年検証におけるサンプル世帯と実際の被保護世帯との年齢・世帯人員・級地別の分布が異なることによる影響もあり得るため,原告らによる財政効果の検証とその説明をみてもなお,上記の削減効果が反映比
率を2分の1にしたことに基づくものであるという上記主張の前提が正しいのかどうか,疑問の余地がある。
また,仮に財政効果の試算に係る原告らの主張を前提にしたとしても,厚生労働大臣は,生活扶助基準を減額改定するに当たり,激変緩和措置の実施の有無やその内容について専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権
を有しているところ,平成25年報告書では,平成25年検証の留意点として,第1・十分位の者にとっては,全所得階層における年間収入総額に占める当該分位の年間収入総額の構成割合にわずかな減少があっても,その影響は相対的に大きいと考えられること,生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には,現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯,特に貧困の世代間連鎖を防止する観点から,子どものいる世帯への影響にも配慮する必要があること等が指摘されており(認定事実(1)
エ(オ)d(b)③④),このような指摘を踏まえると,ゆがみ調整による変動幅を少なくし,生活保護受給世帯への影響をできる限り抑制するために,平成25年検証の結果(かい離率)を2分の1にして反映することが,激変緩和措置の在り方として不合理なものとはいえない。なお,原告らは,激変緩和措置であれば,減額幅を2分の1にすればよく,増額幅まで2分の1にする必要はない旨主張するが,この点は正に厚生労働大臣の政策的な判断に係る当不当の問題といわざるを得ず,また,増額幅を含めて2分の1にすることが著しく不合理なものともいえない。
以上によれば,ゆがみ調整の激変緩和措置として,平成25年検証の反
映比率を2分の1にしてゆがみ調整を行った厚生労働大臣の判断に,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。

まとめ
以上によれば,平成25年検証に基づいてゆがみ調整を行った厚生労働
大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠落があるとはいえず,また,その激変緩和措置(平成25年検証の結果の反映比率を2分の1にしたこと)が著しく不合理であるともいえない。
したがって,ゆがみ調整及びその激変緩和措置を行った厚生労働大臣の判断について,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。(3)デフレ調整の適否(争点(2)ウ)について


デフレ調整の必要性等

(ア)デフレ調整に至る経緯等
a
厚生労働大臣は,昭和59年度以降,水準均衡方式に基づいて生活扶助基準の改定を行っており,昭和59年度から平成12年度までは増額改定をし,平成13年度及び平成14年度は据え置き,平成15
年度及び平成16年度は減額改定をした(認定事実(2)イ)。
その後,専門委員会の検証に基づく平成16年報告書において,水
準均衡方式を前提とする手法により,勤労3人世帯の生活扶助基準について,低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価した結果,その水準は基本的に妥当であるとされた(認定事実(1)イ(オ),乙A4)。そこで,厚生労働大臣は,平成17年度の生活扶助基準を据え置き,平成18年度及び平成19年度についても,平成17年度と
同様,当該年度の政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸び率を基礎とし,前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果として,生活扶助基準を据え置くこととした(認定事実(2)ウ,乙A74~76)。
b
平成19年に検討会が設置され,直近の全国消費実態調査等に基づき,生活扶助基準の水準の妥当性等につき平成19年検証が行われ,平成19年報告書が作成,公表された(認定事実(1)ウ(イ)(ウ))。平成19年報告書においては,夫婦子一人(標準世帯)及び単身高齢世帯(60歳以上)の生活扶助基準が第1・十分位における生活扶助相当
支出額よりも高めとなっているとの結果が示されていたが,厚生労働大臣は,平成20年度の予算編成当時(平成19年12月当時),原油価格の高騰等が消費に与える影響等を見極める必要があったことから,平成19年検証に基づく減額改定を行わないこととし,消費等の動向を基礎とした改定を行わなかった(認定事実(2)ウ,乙A77)。
その後,平成21年度の改定においても,平成20年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民の家計へ大きな影響を与えていたことに加え,平成20年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼしており,国民の将来不安が高まっている状況にあったことから,厚生労働大臣は,消費等の動
向を基礎とした改定を行わず,生活扶助基準を据え置いた(認定事実(2)ウ,乙A78)。さらに,厚生労働大臣は,平成22年度ないし平
成24年度についても,その時々の経済や雇用情勢等を総合的に勘案した上で,いずれの年度においても消費等の動向を基礎とした改定を行わず,生活扶助基準を据え置くこととした(認定事実(2)ウ,乙A79~81)。
c
平成20年以降,物価に係る総務省CPI(総合)は,平成22年を100とした場合,
平成20年が102.平成21年が100.
1,
7,平成22年が100.0,平成23年が99.7,平成24年が99.7とほぼ一貫して下落したほか(認定事実(3)ウ),リーマンショック(平成20年9月)後の平成21年には完全失業率が5%を超え,賃金や家計消費についても,平成21年に大きく下落し,平成2
3年頃まではその下落傾向が継続した(認定事実(3)エ)。
d
厚生労働大臣は,平成20年以降,一般国民の消費水準が下落する一方で,同年以降の物価下落(デフレ)によって,生活保護受給世帯の可処分所得が相対的,実質的に増加したという経済状況に鑑み,同
年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的,実質的な増加による一般国民との間の不均衡を是正するため,生活扶助相当CPIを用いて平成20年と平成23年の物価下落率を算定し,この数値を根拠に,生活扶助基準の見直しを行うというデフレ調整を行った(認定事実(5)イ(ア))。

厚生労働大臣は,
平成20年以降の物価の動きを把握するに当たり,
生活扶助による支出が想定される品目のデータである生活扶助相当CPI(総務省CPIの全ての指数品目から,非生活扶助相当品目を除いた生活扶助相当品目について,品目ごとに総務省CPIのウエイトを乗じた数値を,総務省CPIのウエイトの合計値で除して算出した
もの)を用いることとした。また,厚生労働大臣は,平成20年及び平成23年の各時点間の変化率を算定することとし,平成22年を基
準時点(価格参照時点及び指数参照時点)及びウエイト参照時点とした上で,平成20年及び平成23年を比較時点として,生活扶助相当CPIをそれぞれ算定した(認定事実(5)イ(イ)(ウ))。
その結果,生活扶助相当CPIに基づく平成20年から平成23年までの物価下落率が4.78%と算出されたことから,厚生労働大臣は,この数値が,平成20年以降の生活保護受給世帯の可処分所得の相対的,実質的な増加による一般国民との不均衡を是正するのに相当なものと評価し,その数値分を減額する旨の改定(デフレ調整)を行った(認定事実(5)イ(オ))。

(イ)デフレ調整を行う目的ないし必要性等
厚生労働大臣がデフレ調整を行った理由は,被告の説明によれば,要旨,生活扶助基準の水準は,平成19年検証によって一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという結果が得られており,その後のリーマンショックに端を発する世界金融危機の影響で,平成20年以降,消費,
物価,賃金等がいずれも下落する経済情勢にあったにもかかわらず,このような経済動向が生活扶助基準に反映されてこなかった結果,一般低所得世帯との均衡が崩れた状況(生活保護受給世帯の基準額が相対的に高い状態)にあり,基準を減額して不均衡を是正すべき状況になっていたが,
平成25年検証では生活保護基準の水準の評価,
検証が行われず,

平成20年以降のデフレ傾向によって,生活保護受給世帯の可処分所得が相対的,実質的に増加した(基準額が実質的に引き上げられた)と評価できる状況にあったため,一般国民との間の不均衡を是正(調整)するために行ったというのである。
以上のようなデフレ調整の目的ないし必要性に関する説明は,それ自
体として特に不合理なものではなく,また,上記(ア)のデフレ調整に至る経緯等に照らし,その基礎となる事実関係に誤りがあるとか,その事実
の評価に著しく不合理な点があるとはいえず,平成20年以降のデフレ傾向によって,生活保護受給世帯の可処分所得が相対的,実質的に増加した(基準額が実質的に引き上げられた)と評価できる状況があったとみることは十分可能であるから,デフレ調整の目的ないし必要性に関する厚生労働大臣の判断が不合理ということはできない。また,上記のデ
フレ調整に至る経緯等の事情から直ちに,デフレ調整を行った厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠落があるというべき事情は見当たらない。
(ウ)そこで,以下,デフレ調整を行った厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠落があるか否かという観点から,デフレ調整の問題点に係
る原告らの主張につき,順に検討を加える。

基準部会による検討がされていないことについて

(ア)原告らは,生活扶助基準の改定において物価指数を考慮することは,水準均衡方式を逸脱する新たな改定方式であり,そもそも消費者物価指数を指標として考慮して良いのか否か,考慮して良いとすればどのように考慮すべきであるのか等について,専門家による慎重な検証を経るべきであったのに,厚生労働大臣は,基準部会など専門家を構成員とする会議体等(以下基準部会等という。)による検討を経ないままデフレ調整を行っており,本件各改定は違法であるなどと主張する。

確かに,デフレ調整を行うに当たって,消費者物価指数の変動を生活扶助基準の改定の根拠とすることにつき,基準部会等において具体的に検討されたことはなく,
かえって,
基準部会においては,
委員の中から,
消費者物価指数の動向を根拠に生活扶助基準を改定することについて慎重な意見が出されていたことも認められる(認定事実(1)エ(エ))。
しかし,生活保護法は,生活扶助基準の改定に当たり,基準部会等の意見を聴取することを要件としているわけではなく,また,基準部会等
やその委員の意見は,厚生労働大臣の判断を法的に拘束するものではなく,生活扶助基準の改定に当たっての考慮要素として位置付けられるものである(前掲最高裁平成24年4月2日第二小法廷判決参照)。そうすると,基準部会等の検証を経ていないからといって,本件各改定が直ちに違法となるものではなく,また,その判断の過程及び手続に過誤,欠落があるとか,統計等の客観的数値等の合理的関連性や専門的知見との整合性が欠けると推認されるものでもない。
したがって,デフレ調整を行うに当たり基準部会等の検討を経ていないことをもって直ちに,デフレ調整が違法であるとか,デフレ調整に係
る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。
(イ)原告らは,生活保護法の立法過程において,保護基準の設定及び改定は,審議会における専門的観点からの適正かつ慎重な検討が行われることが大前提となっていた旨主張する。

確かに,
証拠
(甲A66)
によれば,
生活保護法の立法過程において,
保護基準の設定及び改定に当たり,特別の審議会を関与させるべきである旨の意見が述べられたことは認められるものの,保護基準の設定及び改定に当たり,専門家による審議会等への諮問を経ることが法令上の要件とはされなかったのであるから,これを経なかったからといって違法
であるということはできないし,上記のような立法過程における意見をもって直ちに,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。
(ウ)また,原告らは,現在採用されている保護基準の改定方式である水準均衡方式は,水準均衡という考え方そのものから,専門家による検
証を不可欠の要素とする方式である旨主張する。
確かに,水準均衡方式の契機となった昭和58年意見具申(乙A8)
には,生活保護世帯及び低所得世帯の生活実態を常時把握しておくことはもちろんのこと,生活扶助基準の妥当性についての検証を定期的に行う必要がある旨記載されており(認定事実(1)ア(イ)a(b)),水準均衡方式は,その性質上,専門家による定期的な検証を経ることが望ましいものと解される。しかし,生活扶助基準の改定において,水準均衡方式以外の方式を用いることができないものではなく,現にデフレ調整は水準均衡方式による改定を行ったものではないのであり,水準均衡方式に係る昭和58年意見具申の上記記載が,デフレ調整にそのまま妥当するものとはいえない。原告らの上記主張は採用することができない。
(エ)原告らは,専門委員会や基準部会における議論では,仮に物価を考慮するのであれば,基準部会等での審議を経ることを当然の前提として議論がなされており,このような専門委員会や基準部会における議論の経過等に照らすと,デフレ調整を行うに当たっては,専門家による検証が強く要求されていた旨主張する。

しかし,基準部会等の意見は,生活扶助基準の改定に当たっての考慮要素として位置付けられるものであって,基準部会等の審議を経ることを強く要求する意見や議論があったとしても,厚生労働大臣がそのような意見に法的に拘束されるものではない。また,専門委員会の議論状況をまとめた平成15年中間取りまとめでは,生活扶助基準の改定につい
て,改定の指標の在り方についても検討が必要である。この場合,国民にとって分かりやすいものとすることが必要なので,例えば,年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる旨の指摘がされており
(認定事実(1)イ(エ)c)

基準部会の検証結果を取りまとめた平成25年報告書には,生活扶助基
準を改定する際の指標について,他に合理的説明が可能な経済指標等を総合的に勘案する場合は,それらの根拠についても明確に示されたい
旨の指摘がある(認定事実(1)エ(オ)d(a)④)ところ,平成15年中間取りまとめ及び平成25年報告書のいずれにおいても,物価指数を考慮するに当たっては,基準部会等による検証が必要不可欠であるなどといった記載はみられない。そうすると,専門委員会や基準部会の議論状況に照らしても,デフレ調整を行うに当たって,専門家による検証が必要で
あったということはできない。
(オ)以上によれば,基準部会等による検討を経ることなくデフレ調整を行った厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠落があったということはできず,その判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。

なお,原告らは,基準部会等による検討を経ていない場合には,裁判所において厳格に審査すべきであるなどと主張するが,これまでに述べたとおり,基準部会等の意見は,生活扶助基準の改定に当たっての考慮要素として位置付けられるものであって,厚生労働大臣の裁量権を直接制約するものではないし,その判断の過程及び手続に過誤,欠落がある
こと等を推認させるものでもないから,上記主張は採用することができない。

物価の動向を生活扶助基準の改定根拠としたことについて

(ア)原告らは,昭和58年意見具申の記載内容(賃金や物価は,そのままでは消費水準を示すものではないので,その伸びは参考資料にとどめるべきである旨の記載。認定事実(1)ア(イ)b(b))等を根拠に,生活扶助基準と一般国民の消費実態との均衡を図る水準均衡方式の下では,物価は参考程度にとどまるから,これを生活扶助基準の改定の根拠とすることは,水準均衡方式の本質と矛盾する旨主張する。

しかし,保護基準の設定,改定については,厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められ,改定方式について法令上
の定めはないのであるから,昭和58年意見具申以降採用されている水準均衡方式についても,法的にその使用が義務付けられているものではなく,厚生労働大臣が消費以外の指標を用いて生活扶助基準の改定を行うことが許されない理由はないし,物価は,水準均衡方式が導入された昭和59年以降,生活扶助の母子加算や障害者加算等の各種加算の改定等において用いられてきた経済指標であり(乙A83),生活扶助基準の改定において物価を考慮することが不合理とはいえない。また,昭和58年意見具申の上記記載は,一般国民の消費水準に依拠する水準均衡方式により生活扶助基準を改定する場合には,物価等を参考資料にとど
めるべき旨を指摘するものであるが,デフレ調整のように水準均衡方式以外の改定方式による場合にまで,物価動向を根拠とすることを否定する趣旨ではないと解される。原告らの上記主張は採用することができない。
(イ)原告らは,水準均衡方式が妥当性の根拠とする一般低所得世帯の消費
実態との均衡は,デフレ調整において生活扶助相当CPIの変化率を算定した期間も含めて検証されているところ,水準均衡方式により検証された消費実態には,デフレの影響が含まれていると考えられるから,これとは別に物価を考慮してデフレ調整を行うことは,物価を二重に計算することになり許されない旨主張する。

しかし,厚生労働大臣は,平成17年度から平成24年度までの間,生活扶助基準を据え置いているが(認定事実(2)イ),平成17年度から平成19年度までは,
当該年度の民間最終消費支出の伸び率を基礎とし,
前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果として,水準が据え置かれてきたのに対し,平成20年度から平成24年度までは,い
ずれの年度においても当時の消費等を基礎とした改定が行われず,平成20年以降の消費や物価の経済状況については,生活扶助基準の水準に
反映される趣旨の改定が行われなかったことが認められる
(前記(1)ア(ア)
b)。このように,平成20年以降の消費や物価変動については,デフレ調整が行われるまで,生活扶助基準に反映されてこなかったのであるから,平成20年から平成23年までの物価下落率を基礎とするデフレ調整が,物価を二重に計算することになるとはいえない。原告らの上記
主張は採用することができない。
(ウ)以上によれば,生活扶助基準の改定に当たり,物価の動向を考慮した厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠落があったということはできず,その判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。


平成20年と平成23年をデフレ調整の始点及び終点としたことについ

(ア)原告らは,デフレ調整において物価下落率を算定する始点とされた平成20年は,一時的に物価が上昇した年であり,この年を物価下落率の算定の始点にするのは相当でなく,平成25年改定の前に生活扶助基準の改定が行われたのは平成16年であるから,同年を始点として物価下落率を算定すべきであると主張する。
しかし,保護基準の設定,改定については,厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるのであり,デフレ調整を
行うに当たっても,その物価下落率の算出方法については,専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められる。そして,前述のとおり,厚生労働大臣は,平成17年度から平成24年度までの間,生活扶助基準を据え置いているが(認定事実(2)イ),平成17年度から平成19年度までは,当該年度の民間最終消費支出の伸び率を基礎とし,前年度ま
での一般国民の消費水準との調整を行った結果として水準が据え置かれてきたのに対し,平成20年度から平成24年度までは,いずれの年度
においても,当時の消費等を基礎とした改定が行われず,平成20年以降の消費や物価の経済状況については,デフレ調整が行われるまで,生活扶助基準の水準に反映される趣旨の改定が行われてこなかったことが認められる(前記(1)ア(ア)b)。このように,デフレ調整は,平成20年以降,デフレ傾向にあったにもかかわらず,消費等の動向を基礎とした改定が行われなかったことにより,生活保護受給世帯の可処分所得が相対的,実質的に増加した(基準額が実質的に引き上げられた)と評価できる状況にあったため,一般国民との間の不均衡を是正するために行われたものというのであるから,物価下落率を算定する始点を平成20
年とすることについては,デフレ調整の目的に照らして,相応の合理的な理由があるということができる。また,平成16年から平成19年までの総務省CPIの上昇率は,前年比で平成16年が0.0%,平成17年が-0.3%,平成18年が0.3%,平成19年が0.0%であり,
必ずしもデフレ傾向が生じているとはいえないこと
(認定事実(3)ウ,

乙A11)や,平成20年9月に発生したリーマンショックの影響により,その後数年間にわたり,賃金,物価,消費等の経済指標が下落していることも(認定事実(3)エ),平成20年を始点とすることの合理性を支える事情ということができる。他方,原告らが主張する平成16年を始点とする場合には,平成17年度から平成19年度まで,一般国民の
消費水準との調整を行った結果として水準が据え置かれてきたこととの関係で,その期間の経済動向を再度考慮することになるから,平成16年を始点とすることが,平成20年を始点とする場合と比較して,前述のデフレ調整の目的に照らしてより合理的なものとは断じ難い。
原告らは,平成20年が原油価格の高騰等により大きく物価が上がっ
た年であることを捉えて,物価の下落幅が大きくなるように意図的かつ恣意的に平成20年が始点として選択されたなどと主張するが,上記の
とおり,平成20年を始点とすることについては,デフレ調整に至る経緯等(平成20年度以降に消費等の動向を基礎とした改定が行われなかったこと等)に照らし,相応の合理的な理由があると認められ,物価の下落幅が大きくなるように意図的かつ恣意的に平成20年が始点として選択されたとは認められない。
(イ)原告らは,デフレ調整において物価下落率を算定する終点とされたのは平成23年であるが,デフレ調整を行う時点で,平成24年の総務省CPIのデータを使用することができたから,これを基に生活扶助相当CPIの物価下落率を算定すべきであったとか,厚生労働大臣は,平成
24年の総務省CPIの費目のうち食料及び光熱・水道費の指
数が上昇しているため,見かけ上の物価下落率を大きくするために,敢えて平成23年の総務省CPIを用いて物価下落率を算定したなどと主張する。そして,この点につき,池田和彦筑紫女学園大学人間科学部教授(以下池田教授という。)は,総務省CPIのうち光熱・水道費の指数については,平成23年と平成24年とで決定的な違いがあることから,厚生労働省は,敢えて平成23年の総務省CPIのデータを使用したものと推測している(証人池田和彦3頁)。
しかし,生活扶助相当CPIの算定には,総務省CPIのデータが使用されているところ,平成24年の総務省CPIは,平成25年1月2
5日に公表されており(認定事実(3)イ(ウ)),他方,厚生労働省の生活保護基準等の見直しについては同月27日に公表され,平成25年度の政府予算案は同月29日に閣議決定されている
(認定事実(1)オ(ア)(イ))

このように,平成24年の総務省CPIのデータの公表から平成25年度の政府予算案の閣議決定までの期間は,わずか4日間しかなく,平成
24年の総務省CPIのデータを平成25年度の政府予算案に反映させることは現実的に困難であったと認められるから,平成25年度の予算
編成時に現実的に使用可能な平成23年の総務省CPIを使用することは,やむを得なかったということができ,これをもって不合理であるということはできない。また,上記の点に加え,平成23年と平成24年の総務省CPIの内容を比較する十分な時間的余裕があったとは考え難いことも考慮すると,厚生労働大臣が,物価の下落幅が大きくなるよう
に意図的かつ恣意的に平成23年の総務省CPIのデータを使用したとは認められない。
(ウ)小括
以上によれば,厚生労働大臣が,平成20年を始点,平成23年を終点とした上で,その間の物価下落率を算定したことについて,その判断
の過程及び手続に過誤,欠落があったということはできず,その判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。

生活扶助相当CPIの算定方式(特に理論的根拠の有無等)について
(ア)原告らは,生活扶助相当CPIの算定方式は,学術的に認められていないものであって,理論的に誤りであるなどと主張する。
そこで検討するに,前記認定事実(3)ア並びに消費者物価指数マニュアル理論と実践(甲A129,乙A55,86,91。以下CPIマニュアルという。)及び宇南山卓一橋大学教授作成の意見書(乙A85。以下宇南山意見書という。)等によれば,平成22年を基準時点及びウエイト参照時点とした場合,比較時点を平成20年とする同年の生活扶助相当CPIの計算式は,

P=

𝒏
∑𝒊=𝟏𝒑𝒊𝟐𝟎𝒒𝒊𝟐𝟐
∑𝒑𝒊𝟐𝟐𝒒𝒊𝟐𝟐

と定義することができ,比較時点を平成23年とする同年の生活扶助相当CPIの計算式は,

𝒏
∑𝒊=𝟏𝒑𝒊𝟐𝟑𝒒𝒊𝟐𝟐
P=
∑𝒑𝒊𝟐𝟐𝒒𝒊𝟐𝟐

と定義することができる。
認定事実(3)イ(キ)に基づき,これらの指数の平成20年から平成23年までの変化率を算定した場合,その計算式(以下本件計算式という。)は,
𝐧
∑𝐢=𝟏𝒑𝒊𝟐𝟑𝒒𝒊𝟐𝟐
×100
∑𝒑𝒊𝟐𝟐𝒒𝒊𝟐𝟐
-1×100
𝐧
∑𝐢=𝟏𝒑𝒊𝟐𝟎𝒒𝒊𝟐𝟐
𝟐𝟐𝟐𝟐×100
(∑𝒑𝒊𝒒𝒊
)

となるが,品目が異なるという点を捨象すれば,上記分数の分母と分子を約分することが可能であり,これを約分すると,
(
𝐧
∑𝐢=𝟏𝒑𝒊𝟐𝟑𝒒𝒊𝟐𝟐
-1)×100
∑𝒑𝒊𝟐𝟎𝒒𝒊𝟐𝟐

となる。デフレ調整においては,上記計算式に基づき,物価下落率が算定されたものと考えられる。
他方で,平成20年を基準時点,平成23年を比較時点,平成22年をウエイト参照時点とした場合は,その計算式は,
𝐧
∑𝐢=𝟏𝒑𝒊𝟐𝟑𝒒𝒊𝟐𝟐
P=
∑𝒑𝒊𝟐𝟎𝒒𝒊𝟐𝟐

となり,これは,認定事実(3)ア(ア)のとおりロウ指数と呼ばれる算式に該当する(乙A85〔3頁〕。以下本件ロウ指数という。)。そして,これを基に平成20年から平成23年までの変化率を算定すると,その計算式は,
𝐧
∑𝐢=𝟏𝒑𝒊𝟐𝟑𝒒𝒊𝟐𝟐
×100
∑𝒑𝒊𝟐𝟎𝒒𝒊𝟐𝟐

100
(

𝐧
∑𝐢=𝟏𝒑𝒊𝟐𝟑𝒒𝒊𝟐𝟐
×100=(
-1)×100
∑𝒑𝒊𝟐𝟎𝒒𝒊𝟐𝟐

-1
)

となる。この計算式は,厚生労働大臣がデフレ調整の変化率の算定の際に用いた本件計算式と同一であるといえる(なお,原告らは,平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIとで,品目数が異なるため,両者は同一でない旨主張するが,この点については後述する。)。
そうすると,本件計算式は,ロウ指数によって算出した計算式と,最終的に同一の計算式で算定されたものであるといえるから,生活扶助相当CPIの算定方式が,理論的に誤りであるとは認められない。
(イ)原告らは,上藤教授作成の意見書(甲A126。以下上藤デフレ意見書という。)等に基づき,①基準時は比較時よりも過去の時点でなければならないとする国際規準(以下国際規準1という。)があるにもかかわらず,平成20年の生活扶助相当CPIは,基準時を平成22年とした上で,比較時を平成20年として算定されており,②基準時の指数値は100であるという国際規準(以下
国際規準2という。


があるにもかかわらず,平成20年の生活扶助相当CPIは,平成22年の指数値を100とし,本来基準時とすべき平成20年の指数値を100としていないから,生活扶助相当CPIの算定方法は国際規準1及び国際規準2に反する旨主張する。
しかし,価格参照時点又はウエイト参照時点が,比較時点よりも過去
の時点でなければならないという国際的な基準(国際規準1)があることを認めるに足りる的確な証拠はない。かえって,消費者物価指数の国際的なルールを定めたCPIマニュアルによれば,ウエイト参照時点につき,比較時点のウエイトを使用するパーシェ指数や,ウエイト参照時点を任意に設定することができるロウ指数なども認められているし(甲
A129〔4~5頁〕),価格参照時点についても,理論上,期首でなくてもよいことは上藤教授自身が認めている(乙A91,204〔47
~51頁〕)。
また,基準時の指数値は100でなければならないという国際的な基準(国際規準2)があることを認めるに足りる的確な証拠はない。かえって,CPIマニュアルにおいては,指数を100とする時点(指数参照時点)について,

指数系列は,当該指数の数値によって単に割ることによって,指数の変化率を変えることなく,別の参照時点に変えることができる。

とされており(甲A129〔292頁〕),指数を100とする時点(指数参照時点)を置き換える方法が説明されている。したがって,上藤デフレ意見書にいう国際規準1及び国際規準2はい
ずれも国際的な基準とは認められないから,原告らの主張はその前提を欠くものであって採用することができない。
(ウ)また,原告らは,厚生労働大臣は,平成20年の生活扶助相当CPIについてはパーシェ指数,平成23年の生活扶助相当CPIについてはラスパイレス指数を用いた上で,物価の変化率を算出しており,比較で
きない数字を比較した点で理論的に誤りである旨主張し,上藤デフレ意見書にいう国際規準5ないし8(甲A126〔9頁〕)も,上記の趣旨をいうものと理解することができる。
確かに,生活扶助相当CPIの算定方法については,平成20年の生活扶助相当CPIはパーシェ指数を,平成23年の生活扶助相当CPI
はラスパイレス指数を用いた上で,その変化率を算定したものと評価することができるが,全体として一つのロウ指数とみることができることは前述のとおりである。また,CPIマニュアルにおいては,買い物かごは,比較される2時点のいずれかで購入される数量に限られる必要はなく,実際いつの時点でもよいb(注:ウエイト参照時点)は0とtの間(注:比較される2時点)を含むいつの時点でもよい(乙A55〔4頁〕)とされているように,比較される2時点の中間にウエイ
ト参照時点を設定することは,ロウ指数の一つの在り方として理論上許されているというべきであり,生活扶助相当CPIの算定方法が理論的に誤りであるとは認められない。
(エ)原告らは,総務省が用いているラスパイレス方式が公式の計算方法であるとか,消費者の家計を対象とした物価指数(消費者物価指数)の算定においてラスパイレス指数以外の物価指数が用いられている実例はないなどとして,生活扶助相当CPIの算定方法は前例のない独自のものであり不適切であるなどと主張する。
しかし,物価指数として,ラスパイレス指数以外の物価指数が全く許
されないとか,理論的に誤りであるとは認められないし,ラスパイレス指数以外の物価指数が,消費者物価指数として明らかに不適切なものと認識されているとも認められない。かえって,物価指数の算定に際しては,ラスパイレス指数の他にも,パーシェ指数やフィッシャー指数といった様々な指数が存在し,政策目標に応じて様々な計算方法が採用され
ており,ラスパイレス指数においては上方バイアスが,パーシェ指数においては下方バイアスが生ずるなど(認定事実(3)ア),実務的,学術的に正解となる唯一の方式というものは存在しないのであるから,その計算方法の選択は,正に厚生労働大臣の専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権に委ねられているというべきであり,原告らが指摘する上記の
事情は,いずれも厚生労働大臣の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用を基礎付けるものではないというべきである。原告らの主張は採用することができない。
(オ)以上によれば,デフレ調整を行うに当たって用いられた生活扶助相当CPIの算定方式については,ロウ指数の算定方式として理論的に説明
可能なものであって,国際的な基準に反する誤った手法であるとか,理論的な根拠を欠くものとはいえないし,著しく不適切なものともいえな
い。したがって,この点につき厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠落があったということはできず,その判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。

平成22年をウエイト参照時点としたこと(平成17年をウエイト参照
時点としなかったこと)について
(ア)認定事実(5)イ(ウ)によれば,厚生労働大臣は,平成20年及び平成23年の各生活扶助相当CPIの算定に際し,平成22年をウエイト参照時点として設定したことが認められる。
原告らは,平成20年の生活扶助相当CPIは,固定基準年方式パー
シェ指数と同様の変化率を示すが,固定基準年方式パーシェ指数は,下方バイアスが強く,平成20年の生活扶助相当CPIは,その計算方法が物価の大きな下落率を示す要因となっており,不合理である旨主張する。そして,この点に関し,フリーライターの白井康彦は,その意見書等(甲A133,148の1,228,248。以下,併せて白井意見書等という。)において,パーシェ指数には下方バイアスがあることを前提に,厚生労働大臣は,平成20年の生活扶助相当CPIの数値を104.5としているが,この数値は,実質的にパーシェ指数を用いた結果として過大に評価されたものであり,平成20年の生活扶助相当CPIを総務省CPIと同様にラスパイレス指数を用いて計算し直した
場合,その数値は101.8となり,これに基づき平成20年から平成23年まで生活扶助相当CPIの変化率を算定するとマイナス2.26%
にとどまる旨指摘する。
しかし,前述のとおり,保護基準の設定,改定については,厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるのであり,
デフレ調整を行うに当たっても,
その物価下落率の算出方法については,
専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められる。そして,総務
省CPIにおいて採用される品目とウエイトは,国民の消費構造の変化を反映させるため5年ごとに見直しが行われており,本件各改定前には平成22年に指数基準改定が行われ,その前には平成17年に指数基準改定が行われているところ(認定事実(3)イ(イ)),ウエイト参照時点から離れれば離れるほど,
現実の国民の消費構造とかい離することになり,

各指数のバイアスによる影響も大きくなるから,平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIの算定の際に,平成17年のウエイトではなく,平成20年及び平成23年により近い平成22年のウエイトを使用することは,原告らが主張するようにパーシェ指数には下方バイアスがあること(さらには,その当時のテレビやパソコンの価格低下の影響が
大きくなること)を考慮してもなお,デフレ調整の目的に照らして不合理なものとはいえない。むしろ,平成17年のウエイトを使用した場合には,平成20年については3年前の,平成23年については6年前の時点の消費構造(ウエイト)を基礎として生活扶助CPIを算出することになるから,その間の国民の消費構造の変化による物価指数への影響
が避けられないのであり,デフレ調整の目的に照らしてより合理的な方法であるとはいえない。
(イ)以上によれば,厚生労働大臣が,平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIの算定に際し,それぞれ平成22年をウエイト参照時点としたことについて,その判断の過程及び手続に過誤,欠落があったとい
うことはできず,その判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。

平成20年及び平成23年の各生活扶助相当CPIの品目が異なること
について
(ア)原告らは,平成20年及び平成23年の各生活扶助相当CPIの品目が異なることにつき,ロウ指数とは基準時と比較時の物価を固定買い物
かご方式で比較するものであるから,これを固定していない生活扶助相当CPIの算定方法はロウ指数ではなく,理論的に誤りであるなどと主張する。
確かに,認定事実(5)イ(エ)によれば,平成23年の生活扶助相当CPIの指数品目の数は,平成22年の指数基準改定後における総務省CPIの指数品目(588品目)から非生活扶助相当品目(71品目)を控除した517品目であるのに対し,平成20年の生活扶助相当CPIの指数品目の数は,この517品目から平成22年の指数基準改定の際に追加された32品目を控除した485品目であり,計算の基礎とされた
品目数が異なる。
しかし,平成20年及び平成23年の各生活扶助相当CPIを算出するに当たり,基礎となる品目(買い物かご)を同一にするため,平成22年に新たに加わった32品目を除外して計算した場合には,物価下落率は4.88%と算出されることが認められ(乙A54),デフレ調整
において用いられた4.78%よりも物価下落率が大きくなるのであるから,平成23年の生活扶助相当CPIの指数品目として上記32品目を除外しなかったことは,結果として原告らに有利に作用したものであり,
品目数が異なることにより理論的に誤りとなるか否かにかかわらず,デフレ調整の違法性を基礎付けるものとはいえない。

また,上記の点をひとまず措くとしても,上記32品目のように,一部の品目の価格が観察できないという状況(欠価格の問題)は,物価指数の作成実務において発生することが予定されており,現に,CPIマニュアルにおいても,上記のような問題が生じ得ることを前提に,その処理方法の例が示されているし(乙A86),総務省統計局の消費者物価指数の解説においても,

一時的に出回りが途切れるなど,比較時価格がやむを得ず『欠』となった場合は,その品目の指数(比較時価格が『欠』になっているので計算できない。)及びウエイトは除外して計算する

とされている(乙A87)。このように,一部の品目の価格が観察できない状況(欠価格)の下においても,物価指数を作成することは可能であることが認められ(乙A85),このことは,欠価格が生じている時点が生じていない時点より前である場合においても,理論的に異なるものではないと解される。
(イ)もっとも,上記消費者物価指数の解説においては,上記の記載に続けて,

比較時価格が『欠』となった品目の価格変動は,品目から類への合算段階では,結果として類内の他の品目より求められた類指数によって代替されることとなる。

とされており,総務省CPIにおいては,欠価格の場合,類レベルの同一のグループの他の財の価格比で代替する方法が採用されているが(認定事実(3)イ(オ)),厚生労働大臣が採用した方法は,平成20年の生活扶助相当CPIの算定において上記32品目を除外するという方法であって,上記の総務省の方法とは異
なるものである(乙A85〔8頁〕)。
しかし,
厚生労働大臣が採用した方法は,
上記32品目
(欠価格品目)
の平均的な価格動向を,価格が観察できた既存の品目の平均的な価格動向と同じと仮定していることと同じであると認められ
(乙A85,
86)

固定買い物かご方式で比較するロウ指数であることと,理論的に矛盾す
るとは認められない。しかも,宇南山意見書にあるとおり,生活扶助相当CPIの算定においては,総務省CPIと異なり,非生活扶助相当品目を除外しているため,
同じ類に属する他の品目の特定が難しいことや,
平成23年の生活扶助相当CPIのウエイトに占める上記32品目の支出割合は約3%(204/6393)にすぎず,その影響は限定的であ
ると予想されることなどに照らすと,総務省の方法と異なるとはいえ,厚生労働大臣の採用した上記の方法には一定の合理性があるといえる(乙

A85〔8頁〕)。
そうすると,平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIとで品目数が異なることにつき,算定方法として理論的に誤りであるとか,著しく不合理であるということはできない。
(ウ)上藤教授は,上藤デフレ意見書(甲A126)等において,消費者物価指数を作成する際には,マーケットバスケット方式によって消費者物価指数は作成されなければならず(以下国際規準3という。),国際規準3の必然的結果として,基準時と比較時において,対象とする品目は完全に同一でなければならない(以下国際規準4という。)と
ころ,生活扶助相当CPIは国際規準3及び国際規準4に反する旨指摘し,原告らも上藤デフレ意見書に基づく主張をする。
しかし,上記のとおり,厚生労働大臣が採用した方法について,欠価格の処理が行われたと理解すれば,国際規準3が国際的な基準として現に存在するかはともかく,固定買い物かご方式(マーケットバスケット
方式)と理論的に矛盾するものではないから,国際規準3に反するものともいえない。
また,前述のとおり,総務省CPIやCPIマニュアルにおいて,物価変動を比較する2つの時点において品目数が異なる場合(欠価格)があることは予定されており,その場合の処理方法も明示されていること
からすれば,基準時と比較時において,対象とする品目が完全に同一でなければならないという国際的基準(国際規準4)があるとは認められない。
そうすると,厚生労働大臣が採用した方法は,国際規準3に反するものではなく,国際規準4はそもそも存在するとは認められないから,上
藤教授の上記指摘及びこれに基づく原告らの主張は採用することができない。

(エ)また,
原告らは,
平成20年と平成23年の生活扶助相当CPIとで,
品目数が異なるにもかかわらず,指数の接続を行わずに両者を比較していることが不合理である旨主張し,上藤デフレ意見書においても同旨の指摘がある(甲A126〔17頁〕)。
しかし,指数の接続は,指数基準改定が行われる前後の指数の比較を
可能にするために,指数基準改定が行われる前の指数を指数基準改定が行われた年の指数で除した結果を100倍するという方法であり(認定事実(3)イ(エ)),そもそも基準時点と比較時点の品目数の違い等を是正するものではない。そして,平成20年と平成23年の生活扶助相当CPIはいずれも平成22年を基準時点(価格参照時点・指数参照時点)
とするものであるから,指数の接続を行わなくても比較することが可能であるといえる。したがって,指数の接続を行わなかったからといって不合理であるということはできない。
(オ)以上によれば,厚生労働大臣が,品目が異なる平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIとを比較して物価下落率
を算出したことが,理論的に誤りであるとか,著しく不合理であるとはいえない。したがって,この点につき厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠落があったということはできず,その判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。

生活扶助相当CPIのウエイトの問題(非生活扶助相当品目を除外した
こと等)について
(ア)原告らは,上藤デフレ意見書等に基づき,生活扶助相当品目には価格の下落幅が大きくかつウエイトの大きい品目が含まれるが,総務省CPIの品目から非生活扶助相当品目が除外されるなどした結果,物価下落が過大に評価されているなどとして,生活扶助相当CPIの算定方法は不合理であると主張する。

しかし,前述のとおり,保護基準の設定,改定については,厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるのであり,デフレ調整を行うに当たっても,
その物価下落率の算出方法については,
専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められる。そして,デフレ調整の目的が,平成20年以降のデフレの影響により相対的,実質的に増加した生活保護受給世帯の可処分所得を調整しようとするものであることからすれば,デフレ調整を行うに際し,生活保護受給世帯が現に生活扶助により支出することが想定される品目に限定して物価下落の程度を量ることは,合理的な方法の一つであるといえ,総務省CPIの品
目の中から生活扶助により支出することが想定されない品目(非生活扶助相当品目)を除外して指数を算出することが,デフレ調整の目的に照らして不合理なものとはいえない。
また,生活扶助相当CPIを算出するに当たっては,非生活保護相当品目が除外されているのであるから,各品目の全体に占める割合が除外
前と異なるのは当然であるし,生活扶助相当品目には,物価が下落する品目だけでなく,物価が上昇する品目も含まれているのであるから,価格の下落幅が大きくウエイトの割合が大きい品目が含まれることをもって直ちに,物価下落が過大に評価されたということはできない。非生活扶助相当品目が除外された結果,それが除外される前よりも物価下落率
が大きくなったとしても,それは,生活扶助により支出することが想定される生活扶助相当品目において物価の下落が大きかったことを意味するのであって,このことをもって,非生活扶助相当品目を除外したことにより物価下落が過大に評価されたとか,そのような方法が不合理であるということはできない。

(イ)原告らは,生活扶助相当CPIの品目において,家電製品が大きなウエイトを占めているところ,平成20年から平成22年にかけて,特に
テレビやノートパソコンの価格が大きく下落し,家電エコポイント制度や品質調整(対象品目の品質の向上を物価指数に反映させること)等の影響によりその購入量は増加し又は増加したものとみなされ,これらが生活扶助相当CPIの物価下落に与えた影響は大きいところ,生活保護受給世帯は,テレビやノートパソコン等を新品で購入する金銭的余裕がないため,その価格下落の恩恵を受ける割合は極めて小さく,生活扶助相当CPIの算定方法は生活保護受給世帯の生活実態を無視するものであり,貧富の差を無視した誤った計算方法であるなどと主張し,白井意見書においても,
これに沿う内容の詳細な説明や意見が記載されている。

しかし,前述のとおり,厚生労働大臣は,物価下落率の算出方法について,専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しており,デフレ調整の基礎となる生活扶助相当CPIを算定するに当たって,どのような品目をどのような根拠で除外するかについても,その合目的的な裁量に委ねられているものと解される。そして,デフレ調整の必要性や総務
省CPIを利用する合理性(後述)が認められる以上,原告らの上記主張は,生活扶助相当CPIの算出において,総務省CPIの品目からどの範囲の品目を除外し又は除外すべきでないかという,除外品目の選択の合理性やその当不当に帰着する問題といわざるを得ない。しかるに,前述のとおり,生活保護受給世帯が現に生活扶助により支出することが
想定される品目(生活扶助相当品目)に限定して物価下落の程度を量ることは,基準として明確であり,デフレ調整の目的に照らして合理的な方法の一つであると解される以上,原告らの上記主張は,厚生労働大臣の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用を基礎付けるものとは解し難い。上記の点を措くとしても,生活保護受給世帯のうちほとんどの世帯が
テレビを所有しており,4割近い世帯がパソコンを所有し,5割近い世帯がカメラを所有していること(乙A37。なお,原告14本人)など
に鑑みると,平成20年から平成22年にかけて,テレビの価格が下落し,パソコンやカメラの品質が向上したことなどにより,生活保護受給世帯が全く恩恵を受けなかったということはできないし,テレビやパソコン等は,生活扶助により購入することがあり得る品目であって,生活扶助により支出することが想定されない非生活扶助相当品目(医療費,NHK受診料等)
とは明らかに性質を異にするというべきである。
また,
仮に,生活保護受給世帯の消費実態や価格下落の大きさ(物価下落率の算定に与える影響)等を考慮してテレビやパソコン等を除外するとすれば,他の品目についても同様の考慮を行う必要がないか否かが当然に問
題となる上,たばこなどの嗜好品をどう考えるかといったように,その除外品目の客観的な線引きは困難なものとなりかねないし,その線引きの基準によっては,かえって客観性を欠く恣意的なものとなるおそれもある。
したがって,平成20年から平成22年にかけてのテレビやパソコン
等の価格下落や品質向上等が,デフレ調整における物価下落率の算定において相当程度影響していることは否定し難いが,非生活扶助相当品目を除外すること及びその除外品目の選定(線引き)につき一定の合理的な理由が認められる以上,厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠落があったとは認め難く,原告らの指摘する点を踏まえてもなお,厚
生労働大臣の判断がその裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとは認められない。
(ウ)以上によれば,生活扶助相当CPIの算定において,非生活扶助相当品目を除外したことや,テレビやパソコン等を除外しなかったことについて,厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠落があったという
ことはできず,その判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。


家計調査に基づくウエイトを用いたこと(社会保障生計調査のウエイト
を用いなかったこと)等について
(ア)総務省CPIは,家計調査における一般世帯(全世帯平均)の消費支出金額を基に算定されたウエイトを用いているところ,原告らは,一般世帯と生活保護受給世帯とでは消費実態が大きく異なるから,家計調査ではなく,生活保護受給世帯を対象とする社会保障生計調査のウエイトを用いるべきであった旨主張し,山田壮志郎日本福祉大学准教授(以下山田教授という。)が作成した意見書(甲A115)や白井意見書等においても,これに沿う内容の詳細な説明や意見が記載されている。
しかし,前述のとおり,保護基準の設定,改定については,厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるのであり,デフレ調整を行うに当たってどの統計資料を用いるかについても,厚生労働大臣の裁量権が認められるというべきである。
そして,
家計調査は,
総務省統計局が実施する基幹統計調査であり,全国の一般世帯を対象と
する標本調査であって,サンプル世帯に偏りが生じないように全国の市町村を特性に応じて細かくグループ分けをした上で,抽出された市町村から選定された約9000世帯を対象に調査票を配布し,それを回収して集計する方法により,各世帯の支出品目(小分類)ごとの支出数量及び金額等を明らかにするものであり(認定事実(4)ア),このような家計
調査は,その調査目的,調査対象,調査方法等に照らし,支出品目に係るウエイト(品目ごとの消費支出の割合)を把握するのに適した,客観的かつ信頼性の高い統計資料といえる。
これに対し,社会保障生計調査は,厚生労働省が実施する一般統計調査であり,全国の生活保護受給世帯を対象として全国を地域別に10ブ
ロックに分け,ブロックごとに都道府県,指定都市,中核市から1ないし3自治体を選定し,その選定された自治体から1110世帯を抽出す
ることによって行われるものであり,個別品目の消費支出の割合等を詳細に記載させるための措置が講じられていないため,大分類や中分類の支出金額は明らかになるものの,小分類の支出数量や支出金額は明らかにならない(認定事実(4)イ)。このような社会保障統計調査は,生活保護受給世帯の消費実態に近いものと推測される反面,調査世帯の選定における偏りやサンプル数の少なさから,調査の精度に一定の限界があるほか,小分類の支出数量や支出金額が明らかでなく,詳細なウエイトを把握することができないという統計上の問題もある。
このように,家計調査は,それ自体客観的かつ信頼性の高い統計資料
である上,社会保障生計調査との比較においても,それぞれ一長一短があり,家計調査に基づく支出割合(ウエイト)を使用することが明らかに合理性を欠くものとはいえない。したがって,厚生労働大臣が,生活扶助相当CPIを算出するに当たり,社会保障生計調査ではなく家計調査に基づくウエイトを用いたことが,著しく不合理とはいえない。
(イ)原告らは,生活保護受給世帯の消費実態は平均的な世帯とはかなり異なっているとして,仮に家計調査を用いるのであれば,第1・五分位のウエイトを使用して算出すべきであるなどと主張する。そして,この点に関し,池田教授の論文や意見書(甲A64,152~155)には,家計調査に基づき第1・五分位のウエイトを算出し,これを用いて平成
20年及び平成23年の生活扶助相当品目の物価指数を算出し,これを基に変化率を算定すると,およそマイナス2.81%となること,食料及び光熱・水道に費目を限定して,平成20年から平成23年までの変化率を算定すると,およそマイナス0.89%となること等の指摘がある。

しかし,
前述のとおり,
厚生労働大臣は,
デフレ調整を行うに当たり,
選択し得る統計資料のうちどれを用いるかについて裁量権を有している
と解されるのであるから,家計調査のウエイトをそのまま利用する方法と,家計調査に基づいて第1・五分位のウエイトを算出しこれを利用する方法との選択は,正に厚生労働大臣の裁量権の範囲内の事柄というべきである。したがって,第1・五分位のウエイトを算出しこれを使用しなかったからといって,厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠
落があったということはできず,その判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないというべきである。
(ウ)以上によれば,
厚生労働大臣が,
社会保障生計調査のウエイトや第1・
五分位のウエイトを用いず,家計調査に基づくウエイトを用いて生活扶助相当CPIを算出したことについて,厚生労働大臣の判断の過程及び
手続に過誤,欠落があったということはできず,その判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。

その他の主張

(ア)原告らは,厚生労働大臣は,平成23年から平成27年にかけて,生活扶助相当CPIが上昇したにもかかわらず,生活扶助費の引上げを行わないと判断しており,生活扶助基準の改定に当たり,物価動向と民間最終消費支出の伸びを恣意的に使い分けている旨主張する。
確かに,証拠(甲A64,155,証人池田和彦)によれば,平成23年から平成27年にかけて,生活扶助相当CPIが5.78%程度上
昇したことがうかがわれる。しかし,デフレ調整は,前述のとおり,平成20年以降,消費,物価,賃金等がいずれも下落する経済情勢にあったにもかかわらず,このような経済動向が生活扶助基準に反映されてこなかった結果,一般低所得世帯との均衡が崩れた状況にあったため,このような不均衡を是正するために行われたものであり,その後も物価の
動向を根拠として継続的に生活扶助基準を改定する趣旨(今後は水準均衡方式ではなく物価変動による改定方式を採用する趣旨)のものではな
い。かえって,毎年度の生活扶助基準の改定については,引き続き水準均衡方式により行われることが予定されているものと認められ,水準均衡方式と併せて物価の動向を反映させることは,物価を二重に反映させることになりかねないというべきである。原告らの主張は採用することができない。
(イ)また,原告らは,平成20年から平成23年までのデフレの影響をある時点(平成25年ないし平成28年)の生活保護受給世帯へ押し付けることは不公平であるとも主張するが,統計データに基づく検証を行う場合,検証に用いる調査対象時期と検証結果の反映時期には時間的な隔
たりが生じるのが通常であるし,このような政策的な判断に係る当不当の議論をもって,厚生労働大臣の判断に裁量権の逸脱又はその濫用があるということはできない
(ウ)原告らは,①総務省CPIの平成20年から平成23年までの物価下落率は2.35%であり,上藤教授の試算によれば,生活扶助相当CP
I
(接続指数)
による物価下落率は2.
26%となること
(甲A109)

②生活扶助相当品目につき,
社会保障生計調査を基礎として計算すると,
平成20年から平成23年までの物価下落率は0.64%にしかならないこと(甲A148),③家計調査に基づく第1・五分位の世帯の消費構造で検討しても,その期間の物価下落率は2.
81%にとどまり,
食料・光熱・水道に限るとわずか0.89%であること(甲A154)などから,生活扶助相当CPIに基づく物価下落率4.78%という数値はあり得ない数値であり,生活保護受給世帯にとって4.78%もの物価下落はなかったなどと主張する。
しかし,これらの主張は,デフレ調整を行うに当たり,厚生労働大臣
が選択し得る複数の方法において,平成20年から平成23年までの物価下落率ないしその試算結果が上記のとおり算定されたということにす
ぎず,上記の各種数値の比較をもって直ちに,生活保護相当CPI及びこれに基づく物価下落率の算定に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠落があったということはできないし,統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるとか,その判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。


まとめ
以上によれば,デフレ調整につき,厚生労働大臣の判断の過程及び手続
に過誤,欠落があるということはできず,統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるということはできないから,デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断が,裁量権の範囲の逸脱又はその濫
用により違法であるとは認められない。
(4)ゆがみ調整及びデフレ調整を併せて行ったことの適否(争点(2)エ)について

原告らは,ゆがみ調整とデフレ調整を同時に行うことで,ゆがみ調整に
おける年齢別,世帯人員別及び級地別の改定率が無意味になり,ゆがみ調整の趣旨を没却する旨主張する。
しかし,認定事実(5)ア(ア),イ(ア)によれば,ゆがみ調整は,生活扶助基準と一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態とを比較・検証し,これを生活扶助基準の展開部分に反映させようとするものであり,他方,デフ
レ調整は,デフレ傾向が続いたことにより,生活保護受給世帯の可処分所得が相対的,実質的に増加し,一般国民との間で不均衡が生じたことにより,これを是正するために平成20年から平成23年までの物価下落率を算定し,
この数値に基づき生活扶助基準の改定を行おうとするものである。そして,ゆがみ調整は,生活扶助基準額の絶対水準の調整を図るものでは
なく,展開部分のゆがみを是正しようとしたものであり,上記ゆがみを是正するために用いられる改定率の内容は,絶対水準の調整を図るデフレ調
整を行うかどうかによって変化するものではないから,ゆがみ調整とデフレ調整を併せて実施しても,ゆがみ調整の改定率が無意味になるとか,ゆがみ調整の趣旨が没却されるとはいえない。

原告らは,消費支出と消費者物価指数は相互に影響し合うものであるか
ら,ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことは,物価の二重評価となり許されない旨主張する。
しかし,ゆがみ調整は,第1・十分位の世帯の消費実態と相対比較することにより,生活扶助基準の展開部分のゆがみを是正するために行われたものであり(認定事実(5)ア(ア)),一定期間における物価変動や消費支出
の変化を考慮して行われたものではない。したがって,ゆがみ調整とデフレ調整を重複して行ったとしても,物価の二重評価になるとはいえない。ウ
以上によれば,ゆがみ調整及びデフレ調整を併せて行ったことにより,
ゆがみ調整の趣旨が没却されるとか,物価を二重に評価することになるとはいえないから,この点につき,厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。
(5)本件各改定後の生活扶助基準の適否等(争点(2)オ)についてア
激変緩和措置の適否について
厚生労働大臣は,ゆがみ調整及びデフレ調整に基づき,本件各改定を行
うに当たって,平成25年検証の反映比率を2分の1とし(認定事実(5)ア(イ)),増減額の幅について,プラスマイナス10%を超えないようにし,生活扶助基準への反映を3年間にわたって段階的に行う
(認定事実(5)ウ)
といった激変緩和措置を採ったことが認められる。そして,上記の激変緩和措置を採った上で,ゆがみ調整及びデフレ調整を実施した結果,生活保護受給世帯のうち約25%の世帯が5%ないし10%の減額となり(この
うち9%ないし10%の減額となる世帯は2%),約71%が0%ないし5%の減額となり,約3%が0%ないし2%の増額となったことが認めら
れる(認定事実(1)オ(ア)b)。
そうすると,上記の激変緩和措置を講じた結果,ゆがみ調整及びデフレ調整による生活保護受給世帯に対する影響はある程度緩和されたものと評価することができ,実際,多くの生活保護受給世帯は,5%以下の減額にとどまっていることなどからすれば(なお,平成25年検証の反映比率を2分の1とした点の適否については,
前記2(2)カ参照)厚生労働大臣が,

ゆがみ調整及びデフレ調整を実施するに当たり,上記の激変緩和措置を講じたことにつき,被保護者の生活への影響等の観点からみて,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。


原告らの主張

(ア)原告らは,山田教授の意見書(甲132)に基づき,本件各改定により保護基準が引き下げられたことによって,憲法25条が保障する健康で文化的な最低限度の生活の根幹が揺らぎ,被保護者である原告らが深刻な被害を受けた旨主張し,本件各改定が原告らの生活に与えた影響等を記載した原告らの陳述書(甲C個19-3,20-3,D個1-3,3-3,8-3,12-3,14-3,E個29-3,30-3,31-3,32-3,33-3,F個37-3,G個41-3,43-3,65-3,66-3,69-3,71-3,75-3,76-3,77-3,78-3,80-3,81-3,82-3,85-3,87
-3,88-3,104-3,105-3,108-3,H個92-3,93-3,95-3)を提出し,原告らの一部(原告14,37,71,77)は,上記影響等について当法廷で供述する。
しかし,生活保護法8条2項にいう最低限度の生活は,抽象的かつ相対的な概念であって,その時々における経済的,社会的条件,一般的な
国民生活の状況等との相関関係において判断・決定されるべきものであり
(前掲最高裁昭和57年7月7日大法廷判決)また,

上記のとおり,

本件各改定においては,激変緩和措置として,増減額の幅がプラスマイナス10%を超えないようにされ,生活扶助基準への反映も3年間にわたって段階的に行われたこと,9ないし10%の減額となるのは全体の2%程度にとどまり,7割以上の世帯は5%未満の減額にとどまることなども考慮すると,上記意見書や原告らの陳述書等を斟酌してもなお,本件各改定を行った厚生労働大臣の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとは認められないし,本件各改定が行われたことにより,原告らが受領する生活扶助の水準が,憲法25条に違反する状態に至っているとも認められない。

したがって,原告らの上記主張は採用することができない。
(イ)原告らは,貧困の概念は時代と共に変遷しており,我が国における貧困概念も,2000年代以降,相対的貧困概念から社会的排除概念に変化しつつあるところ,社会的排除概念を踏まえた場合,現在の生活扶助基準は低く,むしろ引き上げなければならなったにもかかわらず,厚生
労働大臣は,本件各改定により生活扶助基準を引下げており許されない旨主張する。
しかし,
前述のとおり,
生活保護法8条2項にいう最低限度の生活は,
抽象的かつ相対的な概念であって,その時々における経済的,社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断・決定される
べきものであり,これを保護基準において具体化するに当たっては,国の財政事情を含めた多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであり(前掲最高裁昭和57年7月7日大法廷判決),相対的貧困概念から社会的排除概念への変化を踏まえることによって直ちに,現在の生活扶助基準が最
低限度の生活を下回るということになるものではないし,本件各改定が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとして違法となるものと
もいえない。原告らの上記主張は採用することができない。

まとめ
以上によれば,厚生労働大臣が,ゆがみ調整及びデフレ調整を実施する
に当たり,上記の激変緩和措置を講じたことにつき,被保護者の生活への影響の観点からみて,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認めるこ
とはできない。また,本件各改定による生活扶助基準の改定により,原告らの生活が,憲法25条の健康で文化的な最低限度の生活を下回る状態に至っているとは認められない。
4
本件各改定の国家賠償法上の違法性,慰謝料額(争点(3))について前記3のとおり,本件各改定は適法であり,これに基づく本件各決定も適法
というべきであるから,
本件各改定を行ったことが国家賠償法1条1項上違法
であるとは認められない。
第4

結論
以上によれば,原告17ら及び原告61らの訴えのうち平成25年決定の取
消しを求める部分はいずれも不適法であるからこれを却下し,原告17ら及び原告61らのその余の請求並びにその余の原告らの請求は,いずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。

福岡地方裁判所第1民事部
裁判長裁判官

徳地
裁判官

渡邉淳隆浩
裁判官野上幸久は,転補につき署名押印することができない。

裁判長裁判官

徳地淳
別紙4
生活扶助基準額及び改定率の推移
実施年月日

生活扶助基準額

改定率

昭和59年4月1日

15万2960円

102.9%

昭和60年4月1日

15万7396円

102.9%

(12万4487円)
昭和61年4月1日

12万6977円

102.0%

昭和62年4月1日

12万9136円

101.7%

昭和63年4月1日

13万0944円

101.4%

平成元年4月1日

13万6444円

104.2%

平成2年4月1日

14万0674円

103.1%

平成3年4月1日

14万5457円

103.4%

平成4年4月1日

14万9966円

103.1%

平成5年4月1日

15万3265円

102.2%

平成6年4月1日

15万5717円

101.6%

平成7年4月1日

15万7274円

101.0%

平成8年4月1日

15万8375円

100.7%

平成9年4月1日

16万1859円

102.2%

平成10年4月1日

16万3316円

100.9%

平成11年4月1日

16万3806円

100.3%

平成12年4月1日

16万3970円

100.1%

平成13年4月1日

16万3970円

100.0%

平成14年4月1日

16万3970円

100.0%

平成15年4月1日

16万2490円

99.1%

平成16年4月1日

16万2170円

99.8%

平成17年4月1日

16万2170円

100.0%

平成18年4月1日

16万2170円

100.0%

平成19年4月1日

16万2170円

100.0%

平成20年4月1日

16万2170円

100.0%

平成21年4月1日

16万2170円

100.0%

平成22年4月1日

16万2170円

100.0%

平成23年4月1日

16万2170円

100.0%

平成24年4月1日

16万2170円

100.0%

平成25年4月1日

16万2170円

100.0%

別紙1当事者目録は掲載省略
別紙2-1第1事件処分一覧表は掲載省略
別紙2-2第2事件処分一覧表は掲載省略
別紙2-3第3事件処分一覧表は掲載省略
別紙3-1原告らの最終準備書面は掲載省略
別紙3-2被告らの最終準備書面は掲載省略

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