判例検索β > 令和2年(行ケ)第10015号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号令和2(行ケ)10015
事件名審決取消請求事件
裁判年月日令和3年5月17日
裁判所名知的財産高等裁判所
権利種別特許権
訴訟類型行政訴訟
裁判日:西暦2021-05-17
情報公開日2021-05-27 14:02:15
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令和3年5月17日判決言渡

令和2年(行ケ)第10015号

審決取消請求事件

口頭弁論終結日令和3年3月10日

原告


メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーション

同訴訟代理人弁護士

今井浩人同柿内瑞絵同窪田同乾同今同
英一郎
介井優仁中岡
起代子

弁理士

矢野
恵美子

弁護士

本阿弥

友同鈴木
佑一郎


被告

裕堀内一成飯村敏明同高橋聖史
弁理士

小野
新次郎

同泉谷玲
弁護士

森下子
ワイス・エルエルシー

同訴訟代理人弁護士
子梓
弁理士

四本能尚同龍田美幸同池田理愛同宮澤純子同佐藤眞紀主文1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は原告の負担とする。

3
原告のため,この判決に対する上告及び上告受理申立てのための附加期間を30日と定める。
事実及び理由

第1請求
特許庁が無効2018-800090号事件について令和元年10月3日にした審決を取り消す。
第2事案の概要
1
特許庁における手続の経緯等


被告は,発明の名称を免疫原性組成物を安定化させ,沈殿を阻害する新規製剤とする特許第6192115号(以下本件特許という。)の特許権者である。
本件特許は,2007年(平成19年)4月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理

2006年4月26日

米国)を国際出願日とする特願

2009-507900号の一部を平成26年7月14日に新たな特許出願とする特願2014-144436号に係るものであって,平成29年8月18日に設定登録がなされた。


平成30年7月13日,原告は,本件特許の全ての請求項について無効審判を請求した(無効2018-800090号)。
令和元年10月3日,請求不成立の審決(以下本件審決という。)がなされ,その謄本は,同年10月11日,原告に送達された。なお,出訴期間として90日が附加された。

2
令和2年2月7日,原告は,本件審決の取消しを求めて訴訟を提起した。
特許請求の範囲の記載
本件特許は22の請求項から成り,請求項2~22はいずれも請求項1の従属請求項である。
請求項1の記載は次のとおりである(以下本件発明という。)。

【請求項1】
シリコーン処理された容器中に含まれる多糖類-タンパク質コンジュゲートの,シリコーンにより誘発される凝集を阻害する,シリコーン処理された容器に入れられている製剤であって,
(ⅰ)pH緩衝塩溶液,ここで該緩衝液は,約3.5から約7.5のpKaを有する,(ⅱ)アルミニウム塩および
(ⅲ)CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ(S.pneumoniae)血清型4多糖類,
CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型6B多糖類,
CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型9V多糖類,
CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型14多糖類,
CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型18C多糖類,
CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型19F多糖類,
CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型23F多糖類,
CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型1多糖類,
CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型3多糖類,
CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型5多糖類,
CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型6A多糖類,
CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型7F多糖類および
CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型19A多糖類
を含む多糖類-タンパク質コンジュゲート,
を含む製剤。
3
審決の理由の要旨
本件訴訟において原告が主張する審決取消事由は,本件発明の進歩性に関する本件審決の判断の誤りである。そこで,以下,当該判断の要旨を示す。⑴

引用発明
次の発明(以下公知発明1という。)が,本件特許の優先日前に外国において公然実施をされていた。なお,公知発明1は,プレベナーの商品名で上市されていたワクチン製剤から認定される発明であり,同製剤は7種類の肺炎球菌に対応していることから,以下7価プレベナーということがある。
ブチルゴム栓付きガラスバイアル又はプランジャー棒付きガラス製のプレフィルドシリンジ中に含まれる肺炎球菌多糖類-タンパク質コンジュゲートの,ブチルゴム栓付きガラスバイアル又はプランジャー棒付きガラス製のプレフィルドシリンジに入れられているワクチン製剤であって,(ⅰ)塩化ナトリウム溶液,(ⅱ)リン酸アルミニウム,並びに,(ⅲ)CRM197キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型42μg,CRM197キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型6B4μg,CRM197キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型9V2μg,CRM197キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型142μg,CRM197キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型18C2μg,CRM197キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型19F2μg,CRM197キャリアタンパク質にコンジュゲートした肺炎球菌多糖類血清型23F2μg,を含む多糖類-タンパク質コンジュゲート,を含むワクチン製剤。⑵

一致点
容器中に含まれる多糖類-タンパク質コンジュゲートの,容器に入れられている製剤であって,(ⅱ)アルミニウム塩,並びに(ⅲ)CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ(S.pneumoniae)血清型4多糖類,CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型6B多糖類,CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型9V多糖類,CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型14多糖類,CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型18C多糖類,CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型19F多糖類,CRM197ポリペプチドとコンジュゲートしたエス・ニューモニエ血清型23F多糖類,を含む多糖類-タンパク質コンジュゲート,を含む製剤。⑶

相違点
(相違点1)
肺炎球菌多糖類-タンパク質コンジュゲート(以下,単に肺炎球菌コンジュゲートという。)について,本件発明は上記2の13種類(13価)の肺炎球菌コンジュゲートを含むのに対し,公知発明1は上記⑴の7種類(7価)の肺炎球菌コンジュゲートを含むワクチン製剤である。(相違点2)
本件発明は(ⅰ)pH緩衝塩溶液,ここで該緩衝液は,約3.5から約7.5のpKaを有するを含むのに対し,公知発明1はこれを含まない。(相違点3)
容器について,本件発明は,シリコーン処理された容器であるのに対し,公知発明1は,ブチルゴム栓付きガラスバイアル又はプランジャー棒付きガラス製プレフィルドシリンジがシリコーン処理されたものであるかが明らかではない。
(相違点4)
製剤について,本件発明は,シリコーン処理された容器中に含まれる多糖類-タンパク質コンジュゲートの,シリコーンにより誘発される凝集を阻害するものであるのに対し,公知発明1は,このような特定がない。⑷

相違点1について

13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンは,7価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンに血清型1,3,5,6A,7F,19Aを追加した,血清型1,3,4,5,6A,6B,7F,9V,14,18C,19A,19F,23Fからなるものであることは,当業者に知られていたと認められる。
そうすると,公知発明1の7価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンに,血清型1,3,5,6A,7F,19Aを加えた13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンを開発しようとすること自体は,その動機付けがあったものといえる。


しかしながら,以下の点も踏まえると,製剤(ワクチン)として使用できることを期待して,13価の肺炎球菌多糖類に結合させるキャリアタンパク質としてCRM197(以下,単にCRMという。)のみを選択することはむしろ避けられることであり,当業者が容易に想到することはなかったといえる。
(ア)

公知文献には,13価の肺炎球菌多糖類をCRMに結合させたコンジュゲート(以下,単に肺炎球菌CRMコンジュゲートという。)を含む組成物が実際にワクチン製剤として使用し得ることを示唆する記載はない。また,多価コンジュゲートワクチンのキャリアタンパク質となり得るタンパク質としては,複数のタンパク質が周知であり,それらの2種以上を組み合わせて使用することも周知であることからすれば,13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンのキャリアタンパク質の候補となるタンパク質の種類は多数に及ぶものであるから,各公知文献の記載から,13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンを得るためのキャリアタンパク質としてCRMのみを選択することが当業者に示唆されているともいえない。
なお,9価の肺炎球菌CRMコンジュゲートを含む組成物が第Ⅲ相試験の段階にあること,あるいは該組成物が免疫原性を有することが記載された公知文献はあったが,低い価数のコンジュゲートワクチンで採用されたキャリアタンパク質と同じキャリアタンパク質をより高い価数のコンジュゲート組成物に採用するのが常套手段であったとは認められないし,同じキャリアタンパク質を採用すれば高い価数のコンジュゲート組成物においても製剤(ワクチン)としての効果が期待できるということが技術常識であったわけでもないから,上記公知文献の記載から13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンにおけるキャリアタンパク質としてCRMのみを選択することが当業者に示唆されていたとはいえない。また,11価の肺炎球菌CRMコンジュゲートワクチンが前臨床の段階にあることが記載された公知文献もあったが,前臨床との記載ではワクチン製剤としての有用性が不明であるから,11価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンが開示されているとはいえない。
(イ)

公知文献には,肺炎球菌コンジュゲートワクチンにおいて血清の保護範囲を拡大するに当たって,単一のキャリアタンパク質を使用することはキャリアの過重量を起こし,免疫応答を低下させるかもしれないとの問題意識を開示し,その解決のために11価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンにおいて,2種類のキャリアタンパク質(DT及びTT)を用いたことを開示する記載がある。この記載からは,価数の高い肺炎球菌コンジュゲートワクチンにおいては,単一のキャリアタンパク質を用いた場合には免疫低下が起きるおそれがあるため,複数のキャリアタンパク質を用いるのが当業者の理解であったことがうかがえる。


相違点4について
当業者が,13価の肺炎球菌CRMコンジュゲートに,シリコーンによる凝集の可能性があることを認識し得たと認めるべき証拠は全くない。そうすると,仮に,当業者が,7価の肺炎球菌CRMコンジュゲートから13価の肺炎球菌CRMコンジュゲートを想到したとしても,当該13価の肺炎球菌CRMコンジュゲートのワクチン製剤を製造するに当たって,これをシリコーンにより誘発される凝集を阻害するものとすること,すなわち,7価を13価に変更するのと併せてシリコーンによる凝集を阻害するための手段を適用することなど,およそ想到し得ない。
なお,公知文献には,免疫グロブリンの沈殿を加速する因子の一つとしてシリコーン油の存在を挙げる記載があるが,免疫グロブリンと肺炎球菌CRMコンジュゲートとは,タンパク質部分を有する点で共通するとはいえ,全く異なる物質であるから,上記記載からでは,13価の肺炎球菌CRMコンジュゲートの沈殿(凝集)がシリコーン油によって加速されると当業者が認識し得るとはいえない。



本件発明の効果について
本件発明は,13価の肺炎球菌CRMコンジュゲートを含む製剤に,リン酸アルミニウム塩と,約3.5~7.5のpKaを有するpH緩衝塩溶液とを配合することにより,シリコーン処理された容器に入れても該製剤における沈殿を阻害できるとの効果を奏するものである。
そして,そのような効果は,シリコーンにより誘発される肺炎球菌コンジュゲートの凝集について何ら示唆しない公知発明1から予測できるものではないし,また,いずれの公知文献にも,肺炎球菌コンジュゲートに対するシリコーンの影響やその解決手段について何も記載されていないから,それらの公知文献から本件発明の効果を予測することも困難であった。


小括
以上のとおりであるから,相違点2・3について検討するまでもなく,本件発明は,公知発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。



相違点3について(補足)
原告は,公知発明1の容器(シリンジ又はバイアル栓)がシリコーン処理されていたか,少なくとも当業者はそう理解するから,相違点3は存在しない旨主張する。
しかしながら,公知発明1の容器がシリコーン処理されていたことを認めるに足りる証拠はない。また,公知文献によれば,シリンジやバイアル栓などが潤滑化のためシリコーン処理されることが少なくなかったことは理解できるが,必ずシリコーン処理されると記載されているわけではないし,潤滑化のための方法はシリコーン処理以外にもあったから,当業者が原告主張のように理解するわけでもない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。

第3当事者の主張
1
取消事由1(相違点3の認定誤り)について

〔原告の主張〕
ワクチン製剤の容器をシリコーン処理により潤滑化することは,業界の標準的な慣習であり必要条件であり,公知発明1のような多糖類-タンパク質コンジュゲート製剤でも不可避であった。
また,本件特許の筆頭発明者自身が,公知発明1のワクチン製剤の容器がシリコーン処理されていたことを認めている。
したがって,審決が相違点3を認定したことは誤りである。
〔被告の主張〕
原告の主張は争う。
なお,公知発明1の容器がシリコーン処理されていたとしても,公知発明1においては凝集が生じずにワクチンとして有効に利用されており,シリコーン誘発凝集という課題が認識されていなかったため,凝集防止のための構成(相違点4)を採用することへの動機付けがない。したがって,相違点3の存否は,進歩性の判断に影響しない。
2
取消事由2(相違点1の判断誤り)について

〔原告の主張〕


肺炎球菌ワクチンの研究開発の経緯
一般に,多価ワクチンは,最も初期のバージョンでは,最も一般的な菌の多糖類血清型を利用したワクチンを製造し,後のバージョンで,血清型を追加したワクチンを開発する。肺炎球菌CRMコンジュゲートワクチンの開発もこのような経過をたどっており,被告又はそのグループ会社は,2価,5価,7価,9価,11価の肺炎球菌CRMコンジュゲートワクチンを順次公表してきた。
被告が13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンの臨床試験を開始したことは,本件優先日に既に知られており,当業者は,被告の研究開発の上記経過により,13価のワクチンもCRMにコンジュゲートしていると理解した。


相違点1に係る構成の容易想到性
当業者にとって,13価のコンジュゲートワクチンを開発しようとする動機付けがあったことは審決も認めている。
多価の肺炎球菌CRMコンジュゲートワクチンが良好な効果を示していたことからすれば,当業者にとって,複数のキャリアタンパク質を採用するのではなく,単一のCRMをキャリアタンパク質として採用した方が,①より単純である上,②効率性,③コスト,④安全性の面でも明らかな利点を有していた。


審決の誤り
審決は,単一のキャリアタンパク質を採用することは,免疫干渉等のおそれがあることから避けられていた旨認定したが,その根拠とされた公知文献の記載は,何の裏付けも伴っていない。
また,本件発明は,免疫原性組成物における安定性に関わる凝集の防止を課題とするものであり,免疫原性に関するものではないから,仮に単一キャリアタンパク質の採用が免疫応答を低減させる可能性があるとしても,そのことが,単一キャリアタンパク質を採用することの阻害要因になるものではない。
したがって,審決の上記認定は誤りである。

〔被告の主張〕


本件優先日当時,価数の高い肺炎球菌コンジュゲートワクチンの開発においては,免疫干渉(ある抗原に対する免疫応答が他の抗原に対する免疫応答を抑制する現象)が問題となっており,これを避けるためには,個々のキャリアタンパク質の総量を減少させ,その作用を低減するように,少なくとも2つのキャリアタンパク質を混合して使用することが好ましいと考えられていた。また,熱安定性の見地から,キャリアタンパク質としてはCRMよりもTTが望ましいとの知見もあった。このため,被告以外の製薬企業や研究者は,10価以上の肺炎球菌コンジュゲートワクチンの開発に当たって,CRM以外の複数のキャリアタンパク質を用いていた。
したがって,当業者は,13価肺炎球菌コンジュゲートワクチンの開発に当たり,CRMを単独でキャリアタンパク質として採用することを容易に想到しない。



被告は,13価肺炎球菌CRMコンジュゲートワクチンの組成物特許である特許第4472770号とは別に,製剤化にあたってのシリコーン誘発凝集という課題を解決したことに基づき,更に本件特許を取得したものであり,組成物だけでは特許が取得できなかったことから,製剤化にあたっての工夫を更に追加して特許を取得したというわけではない。相違点1は,それ自体十分に進歩性が肯定されるべき相違点である。
3
取消事由3(相違点4の判断誤り)について

〔原告の主張〕


相違点4の不存在
公知発明1に係るワクチン製剤プレベナーの製品情報には,粒子状物質が目に見える場合は使用してはならない旨の指示があるから,凝集が生じる可能性は認識されていたといえるが,そのような可能性にもかかわらずプレベナーが認可されていたのは,通常は凝集が生じないからである。かかる事実によれば,当業者は,公知発明1においても何らかの理由によりシリコーン誘発凝集が阻害されていたと理解する。
公知発明1においても,本件発明と同様に,肺炎球菌CRMコンジュゲートの凝集が成分中のリン酸アルミニウムによって抑制されていたが,そのことが当業者に理解されていたか否かにかかわりなく,公知発明1と本件発明とは,リン酸アルミニウムによって肺炎球菌CRMコンジュゲートのシリコーン誘発凝縮が抑制されていた点において一致する。
したがって,相違点4は存在しない。



相違点4の容易想到性

課題の認識の容易性
本件優先日前に,タンパク質製剤においてシリコーン誘発凝集が生ずることは技術常識であった(このことは,本件明細書にも,本件発明の背景技術及び課題等を説明する中で記載されている。)。そのため,構成要素としてタンパク質を含む多糖類-タンパク質コンジュゲートの製剤化においても,シリコーン誘発凝集が技術課題となることを当業者は認識した。公知発明1(7価の肺炎球菌CRMコンジュゲートワクチン製剤)では通常はシリコーン誘発凝集が生じていなかったが,当業者は,上記認識に基づき,更に6種のコンジュゲートを追加することによりタンパク質含量が増える13価の製剤ではシリコーン誘発凝集が生じる可能性を想定した。したがって,当業者は,13価の肺炎球菌CRMコンジュゲートワクチン製剤を開発するに当たって,タンパク質製剤のシリコーン誘発凝集及びその解決手段に関する知見を適用するよう動機付けられた。

課題解決手段の発見の容易性
公知文献には,ワクチン製剤においてタンパク質が疎水性表面に吸着することにより凝集が生じる可能性があること,疎水性表面への吸着はアルミニウム粒子によって防止できることを開示するものがあった。また,シリコーンが疎水性界面を有することは本件優先日当時の技術常識であった。したがって,当業者は,13価の肺炎球菌CRMコンジュゲートワクチン製剤におけるシリコーンによる凝集も,アジュバントとしてアルミニウム塩を選択することによって防止できると理解し得た。


相違点4は進歩性を基礎付ける構成たり得ないこと(予備的主張)ワクチン製剤の分野において,ワクチンを安定化させてその効果を高めるために,アジュバントとしてアルミニウム塩を選択することは,周知慣用技術であり,公知発明1においても行われていたことであった。本件明細書には,実施例として,アルミニウム塩がシリコーン誘発凝集を抑制しているとの分析結果が開示されているが,その機序は,アルミニウム塩を含みシリコーン容器に入れられた7価の肺炎球菌CRMコンジュゲート(公知発明1)でも同様に働いていたはずのものである。また,アルミニウム塩のアジュバントが凝集を阻害することも,本件優先日当時に知られていた。本件特許の発明者らは,シリコーン誘発凝集がアルミニウム塩のアジュバントによって阻害されるという,公知発明1でも生じていたメカニズムを解明したにすぎず,このような単なる発見によって本件発明の進歩性が基礎付けられることはない。
本件発明に特許権を与えることは,単なる発見に基づき,コンジュゲートワクチン製剤のアジュバントとしてアルミニウム塩を使用するという自由技術に独占権を与えることに外ならず,不当である。
〔被告の主張〕


相違点4は実質的な相違点であること
公知発明1のリン酸アルミニウムはアジュバントとして含まれているにすぎず,そのメカニズムの理解も不十分なままに,ワクチン抗原が必要とする機能を発揮できるという理由に基づいて選択されているだけである。公知発明1においてはシリコーン誘発凝集という課題が生じていないので,シリコーン誘発凝集が抑制されていたかどうかについて,公知発明1から読み取ることはできない。
したがって,本件発明がシリコーン誘発凝集の抑制を構成に含むことは,公知発明1との相違点である。



相違点4の非容易想到性

課題の認識の非容易性
本件発明の課題(13価肺炎球菌CRMコンジュゲート製剤におけるシリコーン誘発凝集の抑制)は,新たな技術的状況,つまり,被告が価数を13に増加させた肺炎球菌CRMコンジュゲートを開発するに当たり,肺炎球菌CRMコンジュゲートの量を増加させ,これにシリコーン処理された容器を用いた際に,アルミニウムを含まない製剤では凝集が生じたことを契機として,予想外に見出された。つまり,かかる課題は,13価の肺炎球菌CRMコンジュゲートの存在を前提として被告が初めて見出し得たるものである。
本件優先日当時,そもそも13価肺炎球菌コンジュゲートワクチンは公知でなかったし,先行技術(公知発明1を含む)では,(肺炎球菌コンジュゲートに限らず一般的に)コンジュゲートワクチンのシリコーン誘発凝集についても知られていなかったから,本件発明の課題は当業者にとっては新規な課題である。
なお,タンパク質製剤においてシリコーン誘発凝集が生じることを開示する公知文献はあったが,多糖類-タンパク質コンジュゲートワクチンは,タンパク質に多糖類が結合したことによりタンパク質そのものとは全く構造が異なるため,両者の凝集の挙動が異なることも理解されていた。したがって,上記開示は,本件発明の課題が新規であって認識困難であったことを左右しない。

課題解決手段の発見の非容易性
13価肺炎球菌CRMコンジュゲートをシリコーン容器と組み合わせて製剤化するに当たっては,凝集が生じた際には,原因について特別な原因調査を行い,シリコーンの関与を明らかにする必要があり,かつ,シリコーンの関与が明らかになったとしても,当該凝集が製剤化に当たっての現実の課題であるのかについて,保存や貯蔵に関する条件を適切に模倣した複数の試験を実施する必要があった。そして,更に進んで,当該課題(シリコーン誘発凝集の抑制)を解決するために,先行技術文献には全く記載も示唆もないpH緩衝塩溶液とアルミニウム塩との組合せという手段を採用し,本件発明の構成に至ることは,当業者にはおよそ不可能というべきである。
公知発明1(7価プレベナー)のリン酸アルミニウムはアジュバントとして含まれているにすぎず,そのメカニズムの理解も不十分なままに,ワクチン抗原が必要とする機能を発揮できるという理由に基づいて選択されているだけである。また,同じ肺炎球菌であっても,血清型によって莢膜多糖の構造や特性が異なるから,公知発明1(7価の肺炎球菌コンジュゲートワクチン)のアジュバントとしてリン酸アルミニウムが採用されているからといって,13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンにもアルミニウム塩を添加するとは限らない。
また,pH緩衝塩溶液はpHを一定にするために用いられることがあるが,ワクチン製剤に必須ではなく,実際,公知発明1の7価プレベナーにはpH緩衝塩溶液は含まれていない。肺炎球菌CRMコンジュゲート製剤におけるシリコーン誘発凝集の抑制という課題は当業者に知られていなかったことから,シリコーン誘発凝集の阻害にpH緩衝塩溶液を利用することも,当業者には全く予測不可能であった。
4
取消事由4(本件発明の効果についての判断誤り)について

〔原告の主張〕


公知発明1の効果との比較
シリコーン誘発凝集阻害におけるメカニズムの発見
本件明細書では,7価の肺炎球菌CRMコンジュゲートを含む公知発明1でシリコーン誘発凝集が起きなかったメカニズムを検討し,リン酸アルミニウムへの吸着によって遊離の肺炎球菌CRMコンジュゲートがなくなることにより,シリコーン誘発凝集を阻害していたというメカニズムを発見したことが記載されている。この,リン酸アルミニウムによるシリコーン誘発凝集抑制という効果は,公知発明1においてアジュバントとして添加されたリン酸アルミニウムの本質的な性質にすぎないし,本件発明が公知発明1に比較して優れた効果を示したことが本件明細書に開示されているわけでもない。


他の手段による効果との比較
本件明細書の実施例から当業者が理解するのは,公知発明1においてシリコーン誘発凝集を抑制していたメカニズムが肺炎球菌CRMコンジュゲートのリン酸アルミニウムへの吸着であったこと,13価の肺炎球菌CRMコンジュゲートにおいても,不十分ではあるものの,部分的にリン酸アルミニウムアジュバントがシリコーン誘発凝集を阻害する効果を示すこと,である。本件明細書の図2によれば,本件発明の構成を有する製剤について,シリコーン誘発凝集により抗原性が喪失した程度を測定したところ,抗原性喪失は部分的に阻害されたかもしれないが,完全に阻害されてはいないことが示されている。また,被告が上市した13価の肺炎球菌CRMコンジュゲート製剤においては,界面活性剤であるポリソルベート80が添加されており,このことは,本件発明の構成のみでは,13価の肺炎球菌CRMコンジュゲート製剤において十分な程度のシリコーン誘発凝集抑制ができていないことを示している。
このように,本件発明は,シリコーン誘発凝集を十分に抑制する効果を有しておらず,公知であったポリソルベート80の添加という課題解決手段より優れているわけでもない。


以上によれば,審決が,本件発明は予測できない顕著な効果を有するとしてこれを進歩性の理由付けに含めたことは,誤りである。

〔被告の主張〕
本件発明は,その構成により,13価の肺炎球菌CRMコンジュゲート製剤のシリコーン誘発凝集を阻害できるとの格別顕著な効果を奏するものである。本件発明のかかる知見は,13価の肺炎球菌CRMコンジュゲート製剤にしか適用できないというものではない。更に別の血清型が追加された場合であっても,コンジュゲートの量に合わせてアルミニウム塩とpH緩衝塩溶液の量を適宜変更することなどにより,シリコーン誘発凝集を防ぐことができる。
本件明細書の図2は,極めてシリコーン濃度の高い場合の抗原性損失を示したものであるから,抗原性損失が高いことは当然であり,この結果をもって,シリコーン誘発凝集の抑制という効果が不十分であるとはいえない。むしろ,極めてシリコーン濃度が高い場合であっても,抗原性損失を部分的には抑制できていることを示している。
また,ポリソルベート80の添加によるシリコーン誘発凝集抑制の効果は,タンパク質製剤については公知であったとしても,これと凝集メカニズムが異なる多糖類-タンパク質コンジュゲート製剤についても知られていたとはいえない。
第4当裁判所の判断
1
取消事由1(相違点3の認定誤り)について
原告は,相違点3を認定したのは誤りであると主張するが,審決は,他の相違点1,4が容易想到でないことをもって本件発明は進歩性を欠如しないとの結論を導いている。他方,相違点3については,その存在は傍論として認めたものの,その容易想到性を判断していないため,この点は,審決の結論に結びついていない。
そうすると,相違点3を認定したことの当否は,審決の結論に影響を及ぼさないので,取消事由1については判断する必要がない。

2
取消事由2(相違点1の判断誤り)について


肺炎球菌ワクチンの開発について論じた公知文献(甲5の2等)には,本件優先日当時,13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンの研究が行われていることが記載され,また,別の公知文献(甲7,8)には,11価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンについて,キャリアタンパク質としてCRMを採用したものが開発中であることが記載されている。
13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンは,11価のそれに対して血清型6A及び19Aを追加するものであるところ,それらの血清型の構造や性質等が,11価までの肺炎球菌コンジュゲートワクチンに含まれる11種の血清型と相違するというような特段の事情は見当たらないから,13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンについても,11価のそれと同様に,キャリアタンパク質としてCRMを採用して開発を行うこと自体は,当業者にとってさしたる困難はなかったといえる。


被告の主張(非容易想到性を基礎付ける事情)について

11価,13価の開発をめぐる状況について
被告は,甲5の2等には,13価肺炎球菌コンジュゲートワクチンの研究開発や臨床試験について記載されているのみであり,また,甲7,8には,11価ワクチンが前臨床であると記載されているにすぎず,ワクチンの技術的思想が開示されていると言うことはできないから,これらの文献によって本件発明の相違点1に係る構成に至ることはできないと主張する。
しかし,本件発明は,免疫原性組成物の安定性を向上させ,その沈殿を阻害する製剤に関するものであるところ(本件明細書【0007】),このような医薬製剤を提供するために必要な安定性等,製剤化のための検討は,臨床試験のような医薬としての有効性の検討とは別になされ得るものであるから,たとえ11価及び13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンそのものは研究中又は臨床試験段階であったにとどまるとしても,当業者がそれらを製剤化の検討等の対象とすることを想到することは妨げられない。
したがって,被告の主張は採用することができない。


キャリアタンパク質の選択について
被告は,免疫干渉による免疫応答抑制への懸念から,7価よりも価数を増加させた場合にもCRMを単独で用いるのは相当ではなく,むしろ,免疫干渉を避けるために,複数のキャリアタンパク質を用いることが好ましいとし(甲48,乙24,25),また,CRMについても,単一のキャリアタンパク質として用いることは免疫干渉の点から好ましくないとする(乙28,29)のが技術常識であり,かかる技術常識に基づき,製薬企業や研究者は,複数のキャリアタンパク質を用いた肺炎球菌コンジュゲートワクチンの開発を進めていたこと(甲36等),熱安定性の見地から,キャリアタンパク質としてはCRMよりも破傷風毒素(TT)が望ましいとの知見もあったこと(甲71)を挙げて,公知発明1から本件発明の相違点1に係る構成に至るのには阻害事由がある旨主張する。
しかし,免疫干渉による免疫応答低下の有無やその低下の程度は,抗原として用いる多糖類,コンジュゲートワクチンの価数,各コンジュゲートの製剤中の濃度等に依存するから,13価の肺炎球菌CRMコンジュゲートを含む製剤で単一のキャリアタンパク質を用いたとしても,それによる免疫低下の有無やその低下の程度を他のコンジュゲートのデータから予測することはできないし,免疫干渉による免疫低下が生じても臨床的に重要な問題とならない場合もあるから(甲85),免疫干渉による免疫低下が起こり得ることから直ちに,13価の肺炎球菌CRMコンジュゲートを用いることが相当ではないとはいえない。加えて,ワクチンの製剤化における検討は有効性の検討とは別になされ得る。そして,免疫干渉による免疫低下が起こり得ることや,ある観点から好ましいとされる他のキャリアタンパク質が知られていることは,製剤の有効性のレベルにおける考慮要素にとどまるのであるから,これらの事由があるからといって製剤化のレベルにおいて,13価の肺炎球菌CRMコンジュゲートを採用することが妨げられるとまではいえない。
したがって,被告の主張は採用することができない。


小括
以上によれば,公知発明1に6種の肺炎球菌CRMコンジュゲートを加えて13価の肺炎球菌コンジュゲートワクチンとすることにより,本件発明の相違点1の構成に至ることは,当業者にとって容易であったといえる。したがって,相違点1が容易想到でないとした審決の判断は相当でない。3
取消事由3(相違点4の判断誤り)について


相違点4の発明特定事項の構成に関わる本件明細書の記載についてア
本件明細書には,多糖類-タンパク質コンジュゲートの,シリコーンにより誘発される凝集を阻害することについての定義や具体的な説明の記載はないので,関連する本件明細書の記載を検討する。


発明の課題及びその解決手段について
本件明細書には,次の内容を開示する記載がある。
(ア)(技術分野)
本件発明は,免疫原性組成物の沈殿を阻害する新規製剤に関するものである(【0001】)。
(イ)(発明の課題)
免疫原性組成物の安定性は,キャリアタンパク質,コンジュゲート化学,コンジュゲート部位の数,多糖類鎖の長さ,pH,貯蔵緩衝液,貯蔵温度および凍結/解凍サイクルなどの多くの因子を考慮しなければならない(【0003】【0004】)。また,シリコーン処理されたシリンジを使用したインシュリン製剤において,シリコーン油の混入のためにインシュリンが凝集し,不活化したことが知られているが,シリンジにおけるゴム栓の潤滑化,タンパク質吸着を抑えるため,シリンジの表面をシリコーン処理することは不可欠である(【0005】【0006】)。
本件発明は,シリコーン油の相互作用等に対して免疫原性組成物を安定化させ,沈殿を阻害する製剤を提供することを目的とする(【0007】【0008】)。
(ウ)(課題解決のための手段)
本件発明の製剤は,シリコーン処理された容器中に含まれる多糖類-タンパク質コンジュゲートのシリコーンにより誘発される沈殿を阻害する製剤である(【0022】)。
(エ)(発明の効果)
本件発明に係る製剤によれば,容器で,加工,開発,製剤,製造および/または貯蔵される免疫原性組成物を安定化させ,その微粒子形成(例えば,凝集,沈殿)を阻害することができる(【0051】)。ウ
13価肺炎球菌CRMコンジュゲート(13vPnC)におけるアルミニウム塩とシリコーン誘発凝集との関係について
(ア)

本件明細書の開示事項
発明の実施形態の一つとして,(i)pH緩衝塩溶液が5mMコハク酸塩緩衝液(pH5.8)であり,(ⅱ)アルミニウム塩として0.25mg/mlの濃度のリン酸アルミニウムを含む13価肺炎球菌CRMコンジュゲート免疫原性組成物(以下実施例13vPnC組成物という。)が記載され(【0022】【0023】【0029】【0057】),実施例3として,実施例13vPnC組成物からなる製剤及びこれからリン酸アルミニウムを除いた製剤につき,シリコーン処理されたシリンジ中における微粒子形成(凝集)の生成についての実験が行われている(【0117】~【0124】)。
ここで,実施例13vPnC組成物に含まれる13価肺炎球菌CRMコンジュゲート(以下13vPnCということがある。)は,本件発明の製剤の(ⅲ)の13価の肺炎球菌コンジュゲートに相当する。また,本件明細書には,これ以外に,組成に関する本件発明の構成を充たす具体的な製剤の記載はない。
そして,実験の結果によれば,リン酸アルミニウムを除いた組成物をシリコーン処理された容器に充填した際には,13vPnC粒子が容易に観察可能に生成したのに対して,リン酸アルミニウムを含む実施例13vPnC組成物をシリコーン処理された容器に充填した際には,13vPnC粒子の生成は有意に減少した(【0117】)。また,リン酸アルミニウムを除いた組成物を容器の部品(ストッパー等)と接触させた別の実験において,シリコーン処理されていない部品と接触させた際は粒子が検出されなかったのに対して,シリコーン処理された部品と接触させた際は粒子形成が誘発された(【0118】~【0124】)。(イ)

上記(ア)の本件明細書の開示からは,本件発明の製剤が,(i)~(ⅲ)の組成からなり,その組成中に(ⅱ)のアルミニウム塩を含むことによって,肺炎球菌コンジュゲートのシリコーン誘発凝集が阻害された製剤である旨を理解できる。


遊離13vPnCとシリコーン誘発凝集との関係について
(ア)

本件明細書の開示事項
実施例13vPnC組成物には,リン酸アルミニウムと結合した13vPnCが約85%,遊離の(リン酸アルミニウムと結合しない)13vPnCが約15%存在する(【0128】)。そして,実施例13vPnC組成物を遠心分離して得た上清をシリコーン処理された容器の部品と接触させると,凝集が生じる(【0129】)。
これに対し,7価の肺炎球菌CRMコンジュゲート免疫原性組成物(実施例13vPnC組成物から6種類の血清型を除いた組成物。以下対照例7vPnC組成物という。)では,すべての7価肺炎球菌CRMコンジュゲート(以下7vPnCという。)がリン酸アルミニウムと結合し,遊離7vPnCが存在しない(【0128】)。そして,対照例7vPnC組成物を遠心分離して得た上清をシリコーン処理された容器の部品と接触させても,凝集は生じない(【0129】)。この実験からは,遊離の(リン酸アルミニウムと結合していない)13vPnCの存在が,シリコーン誘発凝集に関与したことが示唆される(【0129】)。
(イ)

上記(ア)の本件明細書の開示からは,本件発明の製剤において,組成物中にアルミニウム塩を含有させることによってシリコーン誘発凝集が阻害される(上記ウ(イ))のは,13vPnCのうちの大部分(上記(ア)の例でいえば85%)がリン酸アルミニウムと結合することにより,遊離13vPnCの量が顕著に(上記(ア)の例でいえば15%に)減少したことの結果である旨を理解できる。
すなわち,本件発明の製剤では,上記の(ⅰ)~(ⅲ)の組成を採用したことによって,アルミニウム塩と13vPnCとが結合し,遊離の13vPnCが所期の量に減少した状態にあり,その効果としてシリコーン誘発凝集が阻害されている。


1価の肺炎球菌CRMコンジュゲートにおけるアルミニウム塩とシリコーン誘発凝集との関係について
(ア)

本件明細書の開示事項
リン酸アルミニウムを含まず,13vPnC(各血清型のPnCの合計濃度約61μg/ml)に代えて同じ濃度(61μg/ml)の1価のPnC(血清型は6B)を含む製剤を調製し,2ppm~100ppmの濃度でシリコーンを添加した実験では,すべてのシリコーン濃度で凝集が生じた(【0125】【0126】)。
また,1価の肺炎球菌CRMコンジュゲート(血清型4又は6B)を用い,リン酸アルミニウムを含む製剤と含まない製剤との間で,シリコーン処理された容器の部品と接触させたときの凝集の有無を調べた実験を行った。その結果,血清型4又は6Bのいずれであっても,リン酸アルミニウムを含まない製剤ではタンパク質濃度が低くても凝集が生じたのに対して,リン酸アルミニウムを含む製剤ではタンパク質濃度が一定以上に高くなったときにのみ凝集が生じた。また,血清型4と6Bとではアルミニウムに対する結合性が異なり,リン酸アルミニウムを含む製剤のタンパク質濃度を上げていったときに凝集が生じ始める濃度は,血清型4と6Bとで異なっていた(【0130】【0131】)。
(イ)

上記(ア)の本件明細書の開示からは,たとえ1価であっても,肺炎球菌CRMコンジュゲートの濃度(タンパク質濃度)が増加すれば,アルミニウム塩が添加されていない製剤ではシリコーン誘発凝集が生じる旨を理解できる。
すなわち,本件発明において,アルミニウム塩の含有によってシリコーン誘発凝集が阻害されていること(上記ウ(イ))は,肺炎球菌CRMコンジュゲートが13価であることに特有の効果ではなく,肺炎球菌CRMコンジュゲートの価数にかかわりなく得られる効果であって,その効果の程度は,製剤中の肺炎球菌コンジュゲートの量とリン酸アルミニウムの量との相対的な関係によって定まる。また,かかる効果の程度は,肺炎球菌CRMコンジュゲートの血清型によっても異なる。


pH調整緩衝液とシリコーン誘発凝集との関係について
本件明細書には,pH緩衝塩溶液がシリコーン誘発凝集やアルミニウム塩と肺炎球菌CRMコンジュゲートとの結合に及ぼす影響等についての記載はなく,また,5mMのコハク酸塩緩衝液と異なるpH緩衝塩溶液を用いた13vPnC免疫原性組成物の開示もない。このため,本件発明が特定する組成のうち(i)のpH緩衝塩溶液が,シリコーン誘発凝集の阻害という効果にどのように関連するかは,本件明細書の開示からは不明である。もっとも,本件明細書には,本件発明の13vPnCの代わりに,別のタンパク質を用い,界面活性剤も配合した製剤の,当該タンパク質とリン酸アルミニウムとの結合を調べた実験において,異なるpH緩衝塩溶液を用いると全タンパク質に対するリン酸アルミニウム結合タンパク質の割合が変化することが開示されているので(【0144】~【0146】),本件発明の製剤においても,(ⅱ)のアルミニウム塩と(ⅲ)の肺炎球菌CRMコンジュゲートとの結合に(i)のpH緩衝塩溶液が影響を及ぼし得ることは推認できる。


相違点4に係る発明特定事項の技術的意義について
本件明細書の上記⑴の開示事項を踏まえると,本件発明の製剤がシリコーン誘発凝集の阻害という効果を奏するという発明特定事項の技術的意義は,次のように理解される。


シリコーン誘発凝集には,肺炎球菌の血清型を問わず,遊離肺炎球菌コンジュゲートが関与している。



本件発明の製剤が(i)~(ⅲ)の組成を備えることにより,溶液中においては,肺炎球菌CRMコンジュゲートとアルミニウム塩とが結合し,遊離の肺炎球菌CRMコンジュゲートの量が相対的に減少した状態にある。



上記②の状態にあることにより,上記①の原理によるシリコーン誘発凝集が阻害される。



公知発明1の技術的意義
公知発明1は,7価プレベナーから認定されるものであるが,7価プレベナーが上市された医薬品であることにかんがみると,公知発明1の技術的意義を理解するに当たっては,7価プレベナーの製品情報等の書面を参酌することが許されるといえる。
甲1の別紙Bは,欧州医薬品評価庁(TheEuropeanAgencyfortheEvaluationofMedicalProducts,EMEA)が発行した7価プレベナーの欧州公的評価報告書(EuropeanPublicAssessmentReport,EPAR)であり,甲1の本文(インターネットアーカイブの検索結果に関する宣誓供述書)によれば,本件優先日以前に公衆に利用可能となった刊行物である。
同報告書には,公知発明1の組成が記載されているほかに,7種の肺炎球菌はCRM197キャリアタンパク質にコンジュゲートされ,リン酸アルミニウム(0.5mg)に吸着されている旨の記載がある。ただし,同報告書には,7価の肺炎球菌CRMコンジュゲートがリン酸アルミニウムに吸着されていることの技術的意義について開示又は示唆する記載はなく,本件証拠中の文献を精査しても,当該技術的意義に関する記載は見出せない。⑷

相違点4の容易想到性
上記⑵のとおり,相違点4に係る本件発明の発明特定事項,すなわちシリコーン処理された容器中に含まれる多糖類-タンパク質コンジュゲートの,シリコーンにより誘発される凝集を阻害するは,肺炎球菌CRMコンジュゲートとアルミニウム塩が結合して,溶液中の遊離肺炎球菌CRMコンジュゲートの量が所期の量まで減少した状態であることにより,遊離肺炎球菌CRMコンジュゲートが関与するシリコーン誘発凝集が阻害されることを意味する。
これに対し,上記⑶によれば,公知発明1に接する当業者は,リン酸アルミニウムに吸着された肺炎球菌CRMコンジュゲートが公知発明1の製剤に含まれることを認識するにとどまり,公知発明1の製剤溶液中における遊離肺炎球菌コンジュゲートの有無及び量を,遊離肺炎球菌コンジュゲートが関与するシリコーン凝集という課題との関係で認識することは容易ではなかったといえる。また,本件発明の製剤中における遊離肺炎球菌CRMコンジュゲートの量は,公知発明1の7vPnCに対して追加する6種の血清型の肺炎球菌CRMコンジュゲートの量によって変わり得るし,追加する各血清型それぞれのアルミニウム塩への吸着しやすさによっても異なるから,当業者は,本件発明の組成を有する製剤の溶液中に遊離肺炎球菌CRMコンジュゲートが存在するかどうかさえ公知発明1から予測できず,その結果,遊離肺炎球菌CRMコンジュゲートが関与するシリコーン誘発凝集が本件発明の組成の製剤において阻害されるか否かも予測できない。
以上によれば,相違点4に係る発明特定事項,すなわち,シリコーン処理された容器中において肺炎球菌CRMコンジュゲートのシリコーン誘発凝集を阻害するために,製剤が(ⅰ)~(ⅲ)の組成を備えることは,当業者にとって,公知発明1から容易に想到し得るものではない。


原告の主張について

実質的相違点ではない旨の主張について
原告は,7価プレベナーの製品情報に接した当業者は,7価プレベナーにおいてもシリコーン誘発凝集が何らかの理由により阻害されていると理解したこと,7価プレベナーにおいて生じていたリン酸アルミニウムによるシリコーン誘発凝集の阻害は,13vPnCにおいても,程度はともかくおのずと生ずること,からすれば,相違点4は実質的には一致点であり,相違点とはならない旨主張する。
しかしながら,7価プレベナーの製品情報(甲1の別紙B)における"(t)hevaccineshould……beinspectedvisuallyforanyparticulatematterand/orvariationofphysicalaspectpriortoadministration."(ワクチンは……投与の前に視覚的に物理面のいかなる粒子状物質や変化も詳しく調べられなければならない)との記載は,注射用薬剤の使用に先立っての一般的な注意事項として,製造上や保管上の不具合により変質が生じていないか確かめるべきことの指示としても理解できる記載であるから,多糖類-タンパク質コンジュゲート製剤のシリコーン凝集についての知見が存在しなかった本件優先日当時の当業者は,上記記載に接して,原告主張のように,凝集が生じ得るけれども通常はそれが阻害されていることを理解し得るとは必ずしもいえないし,ましてや,その凝集がシリコーンにより誘発されるものであるかどうかは断定し難いものといわざるを得ない。これに対し,本件発明は,13vPnCの凝集の原因をシリコーン誘発凝集であると明確に特定した上で,その凝集を阻害することを発明特定事項としているのであるから,この点において,公知発明1とは相違が存するものといえる。
したがって,審決が相違点4を認定したことに誤りはなく,原告の上記主張は採用できない。

シリコーン誘発凝集阻害という課題の発見の容易性について
原告は,タンパク質製剤におけるシリコーン誘発凝集は知られており,タンパク質の凝集が多糖類-タンパク質コンジュゲート凝集の原動力であることを当業者は理解していたから,公知発明1に6種の肺炎球菌CRMコンジュゲートを追加することによりタンパク質含量が増える13価の肺炎球菌CRMコンジュゲート製剤でシリコーン誘発凝集が生じることは予見可能であった旨主張する。
しかし,原告がその主張の根拠とする公知文献(甲25,26,71)は,キャリアタンパク質がCRM又は破傷風毒素(TT)である多糖類-タンパク質コンジュゲートの構造的不安定性に関連する凝集について記載するのみであるから,これらの公知文献からは,多糖類-タンパク質コンジュゲートのシリコーン誘発凝集が本件優先日当時に課題として当業者に認識されていたとはいえない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。


課題の解決手段の適用の容易性について
上記イで述べたとおり,当業者は本件発明の課題を認識できないから,既にこの点において容易想到性は否定されることになるが,念のため,課題解決手段適用の容易想到性に関する原告の主張についても検討しておく。(ア)

タンパク質製剤のシリコーン誘発凝集の解決手段に関する知見につき原告は,当該課題の解決のために,当業者は,タンパク質製剤におけるシリコーン誘発凝集の解決手段に関する知見を採用し得た旨主張する。しかしながら,原告がその主張の根拠とする公知文献(甲3,69)には,タンパク質医薬品のシリコーン誘発凝集についての記載はあるが,多糖類-タンパク質コンジュゲートのシリコーン誘発凝集についての記載はない。他方,多糖類-タンパク質コンジュゲートの構造的不安定性や凝集は,タンパク質部分のみでなく多糖類部分の影響も受けることが知られていたところ(甲25,50),多糖類とタンパク質は構造や性質が異なるから,両者の挙動は異なることが当然に予想される。そうすると上記公知文献(甲3,69)に記載されたタンパク質医薬品のシリコーン誘発凝集についての知見が,多糖類-タンパク質コンジュゲートのシリコーン誘発凝集にも直ちに妥当するものとは認められない。また,上記公知文献は,タンパク質医薬品のシリコーン誘発凝集の問題を解決する手段として,それぞれ,界面活性剤の添加又はシリコーン含有量の低減を開示するのみであって,本件発明の構成であるアルミニウム塩の添加には触れていないから,公知発明1にタンパク質製剤のシリコーン誘発凝集の解決手段に関する上記公知文献記載の知見を適用しても,本件発明の構成には至らない。
したがって,原告の上記主張は採用できない。
(イ)

アルミニウム塩の発揮する効果に関する知見につき
原告は,凝集体の発生に関連するタンパク質の疎水性表面への吸着はアルミニウム粒子で防ぐことができるとの知見(甲81の3,76)があったから,疎水性界面を示すシリコーンによるワクチンの凝集も,アルミニウム塩をアジュバントとすることにより防ぐことができると当業者は理解したと主張する。
しかし,上記知見においては,容器の疎水性表面へのタンパク質の吸着は,液体(製剤)と固体(容器)との界面における容器表面とタンパク質分子との相互作用に関連すると理解されていたのに対し(甲81の3),タンパク質医薬品のシリコーン誘発凝集は,微量のシリコーンの存在と空気-液体界面におけるタンパク質の変性や(甲3),タンパク質結合に関与する分子間相互作用へのシリコーンの影響(甲69)に関連すると考えられており,シリコーン誘発凝集がタンパク質のシリコーンへの吸着によって生じると考えられていたとは認められないから,疎水性表面へのタンパク質の吸着をアルミニウム粒子により阻害する旨の上記知見を,直ちに肺炎球菌CRMコンジュゲートのシリコーン誘発凝集の阻害のために適用することは困難であったといえる。
したがって,原告の上記主張は採用できない。

単なる発見にすぎないとの予備的主張について
原告は,相違点4に係る発明特定事項は,ワクチン製剤のアジュバントとしてアルミニウム塩を選択するという周知慣用技術を採用したとき,アルミニウム塩が肺炎球菌CRMコンジュゲートワクチン製剤においてはシリコーン凝集阻害という効果を示すという,公知発明1(7価プレベナー)でも生じていたメカニズムを発見したにすぎないから,相違点4を根拠に本件発明の進歩性を認めることは,自由技術に独占権を与えることになって不当である旨主張する。
しかし,この主張は,本件発明と公知発明1とは実質的には同一であるという前記の主張と本質を同じくするものであるといえるところ(すなわち,本件発明と公知発明1とは実質的には同一であって,発明の構成において違いはないという前提があって初めて,本件発明の独自性は,凝集のメカニズムを発見したにすぎないという議論が成り立ち得ることになるはずである。),この主張を採用することができないことは既に説示したとおりである。
したがって,原告の上記予備的主張は採用することができない。

4
取消事由4(本件発明の効果についての判断誤り)について
相違点4自体が本件発明の効果に関する発明特定事項であるから,上記3のとおりこれが容易想到でないとの審決の判断に誤りがない以上,更に本件発明の作用効果の顕著性について検討する必要はなかったといえる。したがって,顕著な作用効果についての審決の判断の当否は,審決の結論の当否に影響するものでなく,検討を要しない。
5
結論
以上によれば,審決の結論に誤りはないから,原告の請求を棄却すべきである。
知的財産高等裁判所第3部

裁判長裁判官
鶴岡稔彦上田卓哉都野道紀
裁判官

裁判官
別紙
引用した書証の書誌事項(初出の順による。)
甲5の2
C.delaPeñaetal.,"PresenteyFuturodelaVacunaciónAntineumocócica"Pediátrika,2004,Vol.24,No.4,pp.147-155甲7
G.D.Overturf"PneumococcalVaccinationofChildren"SeminarsinPediatricInfectiousDiseases,2002,Vol.13,No.3,pp.155-164甲8
K.L.O'Brienetal.,"PotentialImpactofConjugatePneumococcalVaccinesonPediatricPneumococcalDiseases",AmericanJournalofEpidemiology,2004,Vol.159,No.7,pp.634-644,甲48
T.Wuorimaaetal,"TolerabilityandImmunogenicityofanEleven-valentPneumococcalConjugateVaccineinHealthyToddlers",ThePediatricInfectiousDiseaseJournal,2001,Vol.20,No.3,pp.272-277乙24
A.Fattometal.,"EpitopicOverloadattheSiteofInjectionmayResultinSuppressionoftheImmuneResponsetoCombinedCapsularPolysaccharideConjugateVaccines",Vaccine,1999,Vol.17,pp.126-133乙25
R.Daganetal.,"ReducedResponsetoMultipleVaccinesSharingCommonProteinEpitopesThatAreAdministeredSimultaneouslytoInfants",InfectionandImmunity,1998,Vol.66,No.5,pp.2093-2098乙28
J.Butteryetal.,"ImmunogenicityandSafetyofaCombinationPneumococcal-MeningococcalVaccineinInfants",JournalofAmericanMedicalAssociation,2005,Vol.293,No.14,pp.1751-1758乙29
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甲71
MeiM.Hoetal.,"Physico-ChemicalandImmunologicalExaminationoftheThermalStabilityofTetanusToxoidConjugateVaccines",Vaccine2002,Vol.20,pp.3509-3522
甲85
S.Chooetal.,"ImmunogenicityandReactogenicityofaPneumococcalConjugateVaccineAdministeredCombinedwithaHaemophilusInfluenzaeTypebConjugateVaccineinUnitedKingdomInfants"PediatricInfectiousDiseaseJournal,2000,Vol.19,No.9,pp.854-862甲25
MeiM.Hoetal.,"SolutionStabilityStudiesoftheSubunitComponentsofMeningococcalColigosaccharide-CRM197ConjugateVaccines",Biotechnol.Appl.Biochem.,2001,Vol.33,pp.91-98甲26
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WO2004/071439A2
甲69
L.S.Jonesetal.,"SiliconeOilInducedAggregationofProteins",JournalofPharmaceuticalSciences,2005,Vol.94,No.4,pp.918-927甲50
F.Bertietal.,"WaterAccessibility,Aggregation,andMotionalFeaturesofPolysaccharide-ProteinConjugateVaccines",BiophysicalJournal,2004,Vol.86,No.1,pp.3-9甲81の3
M.J.Newmanetal.,"ImmunologicalandFormulationDesignConsiderationsforSubunitVaccines",PharmaceuticalBiotechnology・Volume6VaccineDesign,1995,pp.1-42甲76
ExpertReportofDrGeertVandenBossche,DistrictCourtoftheHagueDocketnumberC/09/587447(WyethvsMSD)以上
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