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執行判決請求、民訴法260条2項の申立て事件
事件番号令和2(受)170
事件名執行判決請求,民訴法260条2項の申立て事件
裁判年月日令和3年5月25日
法廷名最高裁判所第三小法廷
裁判種別判決
結果その他
原審裁判所名大阪高等裁判所
原審事件番号平成31(ネ)277
原審裁判年月日令和元年10月4日
判示事項民訴法118条3号の要件を具備しない懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分が含まれる外国裁判所の判決に係る債権について弁済がされた場合,その弁済が上記部分に係る債権に充当されたものとして執行判決をすることはできない
裁判日:西暦2021-05-25
情報公開日2021-05-25 16:00:05
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令和2年(受)第170号,同年(オ)第135号
執行判決請求,民訴法260条2項の申立て事件
令和3年5月25日

第三小法廷判決
主文1
原判決中,主文第1項及び第2項を破棄する

2
被上告人らの控訴を棄却する。

3
上告人のその余の上告を棄却する。

4
被上告人らは,上告人に対し,1435万0507
円及びこれに対する令和元年11月1日から支払済
みまで年5分の割合による金員を支払え。

5
上告人のその余の民訴法260条2項の裁判を求め
る申立てを棄却する。

6
控訴費用,上告費用及び上告人の民訴法260条2
項の裁判を求める申立てに関して生じた費用は,こ
れを3分し,その1を上告人の負担とし,その余を
被上告人らの負担とする。

第1
1由
上告代理人山口孝司ほかの上告受理申立て理由第3について
本件は,被上告人らが,上告人に対して損害賠償を命じた米国カリフォルニ
ア州の裁判所の判決について,民事執行法24条に基づいて提起した執行判決を求める訴えである。
2
原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
被上告人ホンダヤインコーポレイテッド(以下被上告人会社という。)
は,被上告人X1及び同X2によって設立されたカリフォルニア州所在の会社である。
被上告人らは,平成25年(2013年)3月,上告人が被上告人会社のビジネスモデル,企業秘密等を領得したなどと主張して,上告人外数名に対して損害賠償を求める訴えをカリフォルニア州オレンジ郡上位裁判所(以下本件外国裁判所という。)に提起した。本件外国裁判所は,平成27年(2015年)3月20日,上記訴えについて,上告人に対し,補償的損害賠償として18万4990米国ドル及び訴訟費用として519.50米国ドル並びにこれらに対する年10%の割合による利息を被上告人らに支払うよう命ずるとともに,見せしめと制裁のためにカリフォルニア州民法典の定める懲罰的損害賠償として9万米国ドル及びこれに対する上記割合による利息を被上告人らに支払うよう命ずる判決(以下本件外国判決という。)を言い渡し,本件外国判決は,その後確定した。
本件外国裁判所は,同年5月,被上告人らの申立てにより,本件外国判決に基づく強制執行として,上告人がその関連会社に対して有する債権等を被上告人らに転付する旨の命令(以下本件転付命令という。)を発付した。
被上告人らは,同年12月,本件転付命令に基づき,13万4873.96米国ドルの弁済(以下本件弁済という。)を受けた。なお,被上告人らは,本件弁済が本件外国判決に係る債権の元本に充当されたものとして,上記元本からこれを控除することを認めている。
3
原審は,上記事実関係の下において,要旨次のとおり判断し,本件外国判決
のうち上告人に対して14万0635.54米国ドル及びこれに対する本件外国判決の言渡し日の翌日である平成27年3月21日から支払済みまでの利息の支払を命じた部分についての執行判決を求める被上告人らの請求を認容した。本件外国判決のうち懲罰的損害賠償として9万米国ドル及びこれに対する利息の支払を命じた部分(以下本件懲罰的損害賠償部分という。)は,民訴法118条3号にいう公の秩序に反するものであるが,カリフォルニア州において本件懲罰的損害賠償部分に係る債権が存在することまで否定されるものではないから,本件外国裁判所の強制執行手続においてされた本件弁済は,同州においては,上記債権を含む本件外国判決に係る債権の全体に充当されたとみるほかない。そして,本件外国判決の認容額(27万5509.50米国ドル)から本件弁済の額を差し引いた残額(14万0635.54米国ドル)は,本件外国判決のうち本件懲罰的損害賠償部分を除く部分に係る債権の額(18万5509.50米国ドル)を超えないから,上記残額の債権の行使を認めても公の秩序に反しない。したがって,本件外国判決のうち上記残額に係る部分についての執行判決をすることができる。4
しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
民訴法118条3号の要件を具備しない懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分(以下懲罰的損害賠償部分という。)が含まれる外国裁判所の判決に係る債権について弁済がされた場合,その弁済が上記外国裁判所の強制執行手続においてされたものであっても,これが懲罰的損害賠償部分に係る債権に充当されたものとして上記判決についての執行判決をすることはできないというべきである。
なぜなら,上記の場合,懲罰的損害賠償部分は我が国において効力を有しないのであり,そうである以上,上記弁済の効力を判断するに当たり懲罰的損害賠償部分に係る債権が存在するとみることはできず,上記弁済が懲罰的損害賠償部分に係る債権に充当されることはないというべきであって,上記弁済が上記外国裁判所の強制執行手続においてされたものであっても,これと別異に解すべき理由はないからである。
前記事実関係によれば,本件弁済は,本件外国判決に係る債権につき,本件外国裁判所の強制執行手続においてされたものであるが,本件懲罰的損害賠償部分は,見せしめと制裁のためにカリフォルニア州民法典の定める懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じたものであり,民訴法118条3号の要件を具備しないというべきであるから(最高裁平成5年(オ)第1762号同9年7月11日第二小法廷判決・民集51巻6号2573頁参照),本件弁済が本件懲罰的損害賠償部分に係る債権に充当されたものとして本件外国判決についての執行判決をすることはできない。そして,本件外国判決のうち本件懲罰的損害賠償部分を除く部分は同条各号に掲げる要件を具備すると認められるから,本件外国判決については,本件弁済により本件外国判決のうち本件懲罰的損害賠償部分を除く部分に係る債権が本件弁済の額の限度で消滅したものとして,その残額である5万0635.54米国ドル及びこれに対する利息の支払を命じた部分に限り執行判決をすべきである。5
以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違
反がある。論旨は理由があり,原判決中,主文第1項及び第2項は破棄を免れない。そして,以上に説示したところによれば,本件外国判決のうち5万0635.54米国ドル及びこれに対する平成27年3月21日から支払済みまで年10%の割合による利息の支払を命じた部分について執行判決を求める限度で被上告人らの請求を認容した第1審判決は正当であるから,被上告人らの控訴を棄却すべきである。
なお,上告人のその余の上告については,上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので,棄却することとする。
第2

上告人の民訴法260条2項の裁判を求める申立てについて

上告人が上記申立ての理由として主張する事実関係は,別紙仮執行の原状回復及び損害賠償を命ずる裁判の申立書第2の1記載のとおりであり,被上告人らは,これを争わない。上記事実関係によれば,上告人は,令和元年10月31日,被上告人らに対し,原判決に付された仮執行の宣言に基づき,2242万4347円を給付したものというべきである。そして,原判決中主文第1項及び第2項が破棄を免れないことは前記説示のとおりであるから,原判決に付された仮執行の宣言は,その限度でその効力を失うことになる。そうすると,被上告人らに対し,1435万0507円(2242万4347円から,5万0635.54米国ドル及びこれに対する平成27年3月21日から令和元年10月31日まで年10%の割合による利息2万3361.71米国ドルの合計7万3997.25米国ドルを同日の外国為替相場により邦貨に換算した額である807万3840円を差し引いた額)及びこれに対する給付の日の翌日である同年11月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める上告人の申立ては,正当として認容すべきであり,その余の部分の申立ては,理由がないからこれを棄却すべきである。なお,上告人は,米国通貨による支払を求めているが,上告人が邦貨により給付をしたことからすれば,邦貨による支払を被上告人らに命ずるのが相当である。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官

戸倉三郎

裁判官

宮崎裕子

道晴)

(別紙省略)
裁判官

宇賀克也

裁判官

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