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住居侵入、強盗致死、強盗殺人
事件番号令和2(わ)50
事件名住居侵入,強盗致死,強盗殺人
裁判年月日令和3年3月9日
裁判所名・部名古屋地方裁判所  岡崎支部
裁判日:西暦2021-03-09
情報公開日2021-05-14 10:01:09
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令和2年(わ)第50号

被告人Aに対する住居侵入強盗致死,被告人Bに対す

住居侵入強盗殺人被告事件
主文
被告人Aを懲役29年に,被告人Bを無期懲役に処する
被告人らに対し,未決勾留日数中各180日を,それぞれその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人両名は,Cの不在時に同人方に侵入して金品を窃取し,また,仮に物色中に同人が帰宅した場合には,同人から金品を強取し,又は金品を取り返されることを防ぎ若しくは逮捕を免れるために暴行脅迫を加えることも想定し,共謀の上,令和元年11月14日午後6時38分頃から同日午後9時9分頃までの間に,被告人Bが,愛知県岡崎市a町b番地cdマンションe号C方に,北側洋室掃出し窓の施錠を外して侵入し,その頃,同所において,帰宅した同人(当時49歳)に対し,殺意をもって,刃物様のものでその右頸部,後頸部及び背面上部等を突き刺すなどし,よって,その頃,同所において,同人を右頸部刺切創及び内頸静脈切破による出血性ショックにより死亡させて殺害した上,同人所有又は管理の財布1個,鍵複数本等を強取し,さらに,前記dマンション敷地内において,同人所有の普通乗用自動車1台(時価約90万円相当)を強取したが,被告人Aには殺意はなかったものである。
(争点に対する判断)
本件では,被告人両名が被害者方に侵入して金品を盗み出すことを合意したこと,本件当日,その合意に基づき被告人Bが被害者方に侵入し,被告人Aが被害者方付近で待機していたこと,被告人Bが被害者方で被害者を殺害し,財布や自動車を奪ったことに争いはなく,争点は,被告人両名が,場合によっては強盗することを事前に合意したかである。

当裁判所は,判示のとおり,被告人両名には,事前に強盗の合意があったと判断したので,以下その理由を説明する。
第1

前提事実
関係証拠によると,以下の事実を認めることができ,これらの事実については概ね争いがない。

1
被告人Aと被告人Bは,古くからの友人であり,また,被告人Bは,被告人Aが営む事業の従業員でもあった。被告人Aは,令和元年10月(以下の日時は,同年を示す。),知人のDに対し,事業の資金繰りが悪化したとして,誰か金を貸してくれる人がいないかなどと相談をした。その相談をしている中で,被告人Aは,Dの知人のEからの情報として,自宅に表に出せない金を保管している闇金の人がおり,過去に二度空き巣に入られたが被害届を出していないことなどを聞くとともに,盗んでしまえばいいのではないかという話も聞いた。被告人Aは,Dに対し,更に詳しい話を聞くためにEに会いたいと言い,その後,実際にD,Eと共に被害者方を見に行くことになった。

2
被告人Aは,10月27日,Eの案内で,Dと共に,被害者方を見に行った際,Eから,被害者方の北側洋室にある机の中に多額の現金があること,被害者は定職についておらず生活が不規則であること,空き巣被害の後セコムと契約したことなどを聞いた。

3
被告人Aは,10月31日,Dの仲介により,同人を保証人とし,返済期限を11月29日,返済金額を650万円として,Fから500万円を借り受けた。

4
被告人Aは,11月初旬頃,被告人Bを被害者方へ侵入して現金を盗むことに誘ったが,被告人Bは,最初はこれを断った。しかし,その後も,被告人Aが何度も誘ってきたため,被告人Bは,これに協力することを決め,被告人Aと共に被害者方マンションを訪れ,侵入方法を考えるなどした。被告人らは,被告人Aが見張りをし,被告人Bが被害者方マンション階段の踊り場から被害
者方ベランダに飛び移って侵入すること,その侵入の際には,ガラス飛散防止のためにガムテープを貼って窓ガラスをハンマーで割ること,侵入後は,防犯カメラのコードを切断し,その記録媒体を持ち帰ること,犯行中は携帯電話を常に通話状態にしておくこと,自動車内に現金が保管されている可能性もあるので,あれば自動車の鍵も盗むことなどを話し合った。被告人Aは,被害者方の下見を時間帯を変えたりしながら複数回行うとともに,自動車を盗んだ場合に車内を物色する場所の下見などを行ったが,被害者がいつ不在となるかなど被害者の行動パターンを把握することはできず,被害者の人相等も確認していなかった。また,本件犯行の時間帯と同じ時間帯に被害者方を下見した際には,被害者方の電気は消えていることもあれば,点いていることもあった。5
被告人らは,11月14日午後6時過ぎに被害者方マンションを訪れ,それぞれの携帯電話を通話状態にした。被告人Aは,同マンション前で被告人Bを降ろし,しばらくその場で待機した。被告人Bが被害者方にベランダから窓を割って侵入したが,事前情報とは異なり,被害者はセコムと契約をしておらず,警報が鳴ることはなかった。被告人Bは,現金があると聞いていた北側洋室の机を物色したが,現金は見つからなかったため,被告人Aに対し,セコムの警報が鳴っていないこと,部屋には誰もいないこと,あると聞いていた場所で現金が見つからないことを電話で伝えたところ,被告人Aは,被告人Bに対し,引き続き探すよう指示した。被告人Bが物色を続けていると,被害者が帰宅し,被告人Bともみ合いとなり,被告人Bは,刃物様のもので被害者を刺した。
6
被告人Bは,その後,少なくとも金庫を物色し,防犯カメラの記録媒体や車の鍵等を持ち去った。その後,被告人らは,いったんその場を離れ,奪ってきたものを確認したが,被害者の車を奪うため,再度被害者方マンションに戻り,被告人Bが被害者の車を運転し,あらかじめ下見していた公園に移動し,車内を物色した。

第2

検討

1
被告人らの窃盗の計画等について
被告人らは,被害者が闇金であるため,自宅に置いている現金を盗まれても被害届は出さないことを前提に被害者方から現金を盗むことを決めた。被告人らは,被害者方における現金の在り処を聞いていたことから,セコムの警報装置が作動して警備員が来る前に逃げられる程度の短時間で犯行を終えることができるであろうと考えた。前記のとおり,被害者の行動パターンは把握できていなかったが,被告人Aは,資金繰りに切羽詰まっていたことから,被告人Bに対し,犯行の実行を迫った。被告人らは,本件当日,被害者方マンションまで行ったところ,被害者の車は駐車されていたものの,被害者方の電気が点いていなかったことから,被害者が不在と考えて侵入することとした。
2
被告人らは被害者が帰宅する可能性を想定していたか


前記のとおり,被告人らは,被害者の行動パターンを把握しておらず,下見の際には,本件犯行時間帯に被害者方の電気が点いていたこともあったことからすると,被害者が夜間には必ず不在であると認識していたわけではない。本件当日も,前記のような事情から被害者は不在であると判断したにすぎず,被害者がいつ外出したのかという点やその外出理由,帰宅の見込み時間については把握していなかった。
以上からすると,いくら短時間で犯行を終えるつもりだったとはいえ,被害者が帰宅する可能性を考えるのが普通である。



これに対し,被告人Aは,公判で,被害者が帰宅する可能性は考えていなかったと供述する。しかし,前記のとおり,被告人らは,被害者の普段の行動パターンはおろか本件当日の行動すら把握していなかったのであるから,被害者が帰宅する可能性がないと考える根拠はない。被告人Aは,マンションに出入りする人を見張ることになっていたというのであるから,被害者の人相を知らないにしても,この出入りする人から被害者のみが除外されていたとも考えられない。また,被告人Bは,被害者が帰宅することも考えたが,
被告人Aが被害者を見張ると言っていたのでこれを信じた旨も述べており,被害者が帰宅する可能性があることを前提とした供述をしている。被告人Aの上記公判供述は信用できない。


以上によれば,被告人らは,被害者方に侵入するに当たり,被害者が帰宅する可能性を想定していたものと認めることができる。

3
被害者が帰宅した場合に備えて,護身用に刃物を持っていくことを話したかについて


被告人らは,被害者について,どのような人相風体であるか把握していなかった上,闇金の怖い人物であるというイメージを共有し,少なくとも,一度は,制圧するにはスタンガンや護身用の刃物が必要だという話をしたことがあった。これに加え,前記のとおり,被告人らが被害者の帰宅を想定していたことからすると,あらかじめ護身用として刃物を持っていこうという話が出るのは自然な流れといえる。被告人Aは,捜査段階で,被告人Bと話した犯行計画の内容について,被害者方への侵入方法や被告人Aが被害者が帰ってこないか監視をすることなどのほか,被告人Bとの間で,

護身用のナイフを持っていった方がいいよね。

という話も出たと供述するが,その供述内容は,これまで検討した事実関係と整合する自然な内容であり信用性が高いといえる。

⑵ア

これに対し,被告人Aは,公判では,被告人Bとの間で,スタンガンや刃物を持っていくという話は出たが,これは,当初,被害者からセコムの解除キーを奪うという計画を検討していた際に出たものであり,セコムの解除キーを奪うという計画は無理であるという話になった後は,短時間で空き巣ができることを前提にしていたので,被害者が帰宅することは全く考えておらず,護身用に刃物を持っていくという話が出たこともない,などと供述する。この被告人Aの公判供述のとおり,解除キーを奪うという話が立ち消え,空き巣の計画に変わっていたとしても,前記のとおり,被
告人らが前記のような被害者像を共有し,被害者が帰宅することもあると想定していたのに,被害者が帰宅した場合の対策について全く考えていなかったというのは不合理である。

また,被告人Aの弁護人は,被告人Aの捜査段階の供述は,時系列に沿って聴取されたわけではないし,逮捕されて極度の緊張状態の中で録取されたものであるから信用できないなどと主張する。
この取調べについて,被告人Aは,強盗ではなく空き巣の計画だったという点にこだわっていたと述べる。そうだとすれば,スタンガンや刃物の話は解除キーを奪う話の中でしか出ておらず,解除キーを奪う話が消えた時点で一緒になくなったというのは,被告人Aにとって非常に重要な部分だったはずである。このことに全く触れることなく,スタンガンや刃物の話だけをしたというのは不自然である。したがって,上記の被告人Aの公判供述は信用できず,捜査段階の供述の信用性を左右するものではない。


以上によれば,被告人らは,空き巣の計画の中で護身用に刃物を持っていくという話をしていたことが認められる。

4
被告人Bが刃物を持参したかについて
被害者が帰宅したことに気付き,もみ合いになってから被告人Bが現場で刃物を探す余裕があったとはいえないこと等からすると,被害者に発見される前に,被告人Bが刃物を携帯していたと認められる。これに加えて,被告人らの間で,前記のとおり,護身用として刃物を持っていくという話がされていたにもかかわらず,これに反してあえて刃物を持って行かずに,被害者方に侵入した後に刃物を探す理由はないことからすると,被告人Bがあらかじめ刃物を持参して被害者方に侵入したものと推認することができる。
被告人Bは,公判で,被害者方で刃物を見つけて手に取ったような気がする旨供述する。しかし,被告人B自身,その刃物で刺したとまでは供述していないし,そもそも,被告人Bの刃物に関する供述は,公判の中でも大きく変遷し
ており,これを前提とすることはできない。
以上によれば,被告人Bは,被害者方に侵入するに当たり,刃物を持参したものと認められる。
5
仮に被害者が帰宅した場合の対応に関する合意内容
被告人らは,被害者が帰宅した場合に備えて,護身用に刃物を持っていくと
いう話をしていたのであるから,仮に被害者が帰宅して,被害者と対面した場合に,この刃物を何らかの方法で使用することは,被告人らの間で当然に想定していたといえる。被告人Aの資金繰りのために金が必要であったこと,可能であれば自動車の鍵を盗むことも予定していたところ,自動車の鍵は被害者本人が携帯していることも予想できること,結果的に被害者と遭遇した際に,被告人Bは,刃物を使用してその場から逃げるのではなく,被害者を刺してからも物色行為を続けていることなどからすると,被害者が帰宅した場合に,成り行きによっては,刃物を示して逃走したり,既に確保した金品を取り返されることを防いだり,金品を強取したりするということも,被告人らが共通して想定していた範囲内にあったといえる。
6
結論

以上からすれば,被告人らは,空き巣を行うに当たり,被害者が帰宅した場合に備えて護身用に刃物を持って行くこととし,被害者が帰宅した場合には,これを示して逃げたり,金品の取り返しを防いだり,奪ったりすることを合意していたと認められる。
したがって,被告人らには,強盗についての共謀があったと認められる。(量刑の理由)
1
犯罪行為全体に関する事情
被告人らは,被害者の情報を得ると,被害者方に狙いをつけ,複数回下見をするなどして侵入方法等を考えた上,発覚を免れるために防犯カメラの記録媒体を持ち去ることも考えるなど,空き巣に関しては相当の計画をしていたといえる。
しかし,刃物を持参したとはいえ,あくまで空き巣が主目的であって,強盗の計画性は高くない。殺害行為の態様は,頸部付近を中心に9回以上刺すなどしており,その危険性は大きく,殺意にも強いものがある。また,被害者を刺した後も,最も重要な救命には目もくれず,金品を奪うことに執着して物色を続けるなど,自らの欲求を優先し,人命を軽視する態度が明らかである。被害者は,安心できるはずの自宅で突然その命を奪われたものであり,遺族である被害者の母親が極刑を望むと述べるのも当然である。
被告人Aは,自らの資金繰りのため安易に犯行を計画したのであり,被告人Bも,結局は,被告人Aの計画に安易に加担したのであって,いずれの動機にも特に酌むべき点はない。
2
被告人両名の役割の大きさ等
被告人Aは,本件犯行の発案者であり,被告人Aの資金繰りのための犯行であるのに,嫌がる被告人Bを引き入れた上で,被告人Bに危険な役を全て任せたのであり,被告人Aが主導的立場であったといえる。他方,被告人Bは,引き込まれたとはいえ,本件犯行に協力することを自ら決断した上,実際に被害者方に侵入して被害者を殺害したのであるから,その役割は大きい。以上からすると,被告人両名の役割の大きさはほぼ同等であるが,被告人Aに殺意がなかったという点に関しては差があると見なければならない。

3
その他の事情
被告人Aは,真摯に事件に向き合っているとは言い難いものの,自らが発案した計画で被害者が死亡する重大な結果が生じたことについては後悔する気持ちを示している。また,被告人Aの妻が今後も離婚せず被告人Aを支える旨述べており,そのような家族の存在は被告人Aの今後の更生の一助になり得ると考えられる。被告人Bは,殺害の記憶がなく,実感がないため罪に向き合えているとはいえないが,自身の罪を認め,刑罰を受け入れると述べており,その身を案じてくれる母もいる。

4
結論
そこで,これらの事情を併せて考慮し,過去の強盗致死及び強盗殺人の事案も参考に検討した結果,被告人Aについては酌量減軽を行い,被告人らに対し,それぞれ主文の刑を科すのが相当であると判断した。

(求刑

いずれも無期懲役)

令和3年3月16日
名古屋地方裁判所岡崎支部刑事部

裁判長裁判官

石井
裁判官

溝田泰之
裁判官

田中香里寛
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