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殺人未遂被告事件
事件番号令和2(わ)875
事件名殺人未遂被告事件
裁判年月日令和3年3月22日
裁判所名・部札幌地方裁判所
裁判日:西暦2021-03-22
情報公開日2021-04-19 14:00:37
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令和3年3月22日宣告
令和2年(わ)第875号

殺人未遂被告事件
主文
被告人を懲役6年に処する
未決勾留日数中60日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,令和2年11月2日午前8時30分頃から同日午前8時55分頃までの間,北海道千歳市内のA方において,元妻である同人(当時35歳)に対し,その顔面を拳で多数回殴るなどの暴行を加えた上,床に座っていた同人の背後からその左肩付近を左腕で押さえ込みながら,殺意をもって,その上腹部を右手に持っていた三徳包丁(刃体の長さ約17.1センチメートル・札幌地方検察庁令和2年領第1271号符号1-1)で1回突き刺したが,同人に全治約1か月間を要する上腹部刺創,外傷性肝損傷等の傷害を負わせたにとどまり,殺害するに至らなかった。(証拠の標目)省略
(事実認定の補足説明)
判示刺創等は,包丁の刃をAの右胸向き,峰を左腹向きにして,右第5ないし第7肋軟骨を切断するほどの非常に強い力で,Aの上腹部を斜め上方向に突き刺したことによって生じたものと認められる。そこで,この状況と整合し,相互に合致して信用できるA及び目撃者Bの証言により判示刺突態様を認定した。他方,被告人は,仰向けに寝て上体をやや起こしたAと正対し,包丁を料理のときの握り方で持ってこれを前に突き出して刺した旨述べるが,前記刺創の形状等と整合せず,Aの体勢に変化がなかったとする点などに不自然さもあるから,信用できない。(法令の適用)
1
構成要件及び法定刑を示す規定

被告人の判示所為は刑法203条,199条に該当する。

2
刑種の選択

有期懲役刑を選択する。
3
宣告刑の決定

所定刑期の範囲内で被告人を懲役6年に処する。
4
未決勾留日数の算入

刑法21条を適用して未決勾留日数中60日をその刑に算入する。5
訴訟費用の不負担

訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させない。(量刑の理由)
本件の行為態様は,被告人が,被害者の身体を背後から押さえ込みながら,その上腹部に,3本の肋軟骨を断ち切るほどに非常に強い力で,約17センチメートルある刃体の半分以上の深さまで包丁を突き刺したというもので,刺突行為は1回のみであるとはいえ,強固な殺意に基づく,生命を失わせる危険性が相当に高い悪質なものというほかない。被害者は,幸いにも一命をとりとめているが,全治約1か月間という傷害結果は十分に重い。加えて,被害者は,刺突行為の前に顔面を拳で多数回殴られる強度の暴行も受けるなどして強い恐怖心を短くない時間感じており,身体的被害のみならず精神的被害は甚大であって,厳罰を望むのも当然である。一方,本件に至る経緯をみると,被告人は,被害者との2度目の離婚後も約1年半,被害者とその子らの住む家を頻繁に訪れ,共に旅行に出かけるなどの交流を続け,被害者との肉体関係も継続し,被害者が被告人の給与口座を管理していた。しかし,被害者は,別の男性と交際を開始した本件約2か月前から,被告人との交流を拒むようになり,本件約半月前には被告人に転居先を告げずに引っ越した。その後,被害者の転居先を把握した被告人は,被害者が前記男性と一緒にいる場面を目撃するなどし,本件当日,被害者方を訪れ,前記男性も居合わせる中で本件に及んだ。被告人の立場からすると,新たな交際相手の存在が疑いから確信へと変わる中で被害者に裏切られたとの思いを爆発させたことには無理からぬ面がある。もとよ
り,被告人が被害者の殺害を図ったことを正当化できるものではおよそないが,被害者に怒りを抱いたことは理解できないものではなく,被告人のために考慮する余地もある。
以上の犯情を踏まえると,被告人の刑事責任は,相当に重く,背景に男女関係があり,刃物を用いて相手を殺害しようとした他の多くの殺人未遂事案に比肩し得るものと評価でき,被告人は相応の期間の実刑を免れない。
その上で,被告人が反省し謝罪する意思を示していること,これまでに前科まではないこと,被告人の父ら親族が社会復帰後の生活を支援する意向を示していることなどを併せ考慮して,主文の刑期が相当であると判断した。
検察官南部崇徳,国選弁護人今橋直(主任),同清水彰
(求刑

懲役8年,弁護人の科刑意見

各公判出席

懲役3年6月)

令和3年3月22日
札幌地方裁判所刑事第3部

裁判長裁判官

駒田秀和
裁判官

山下智史
裁判官

宮原翔子
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