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現住建造物等放火被告事件
事件番号令和2(わ)740
事件名現住建造物等放火被告事件
裁判年月日令和3年3月5日
裁判所名・部札幌地方裁判所
裁判日:西暦2021-03-05
情報公開日2021-04-19 14:00:52
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令和3年3月5日宣告
令和2年(わ)第740号

現住建造物等放火被告事件
主文
被告人を懲役3年に処する
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
被告人をその猶予の期間中保護観察に付する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,実母であるAが現に住居に使用している札幌市a区b条c丁目d番e号所在の共同住宅(鉄筋コンクリート造5階建)f号室(床面積合計約63.5平方メートル)同人方に放火して自殺しようと考え,令和2年7月23日午後8時4分頃,同人方室内の寝室において,室内に敷かれた布団に灯油をまいた上,同所付近に火のついたたばこを落として放火し,その火を同室の柱等に燃え移らせ,よって,同人方の一部を焼損(焼損面積合計約3.2745平方メートル)した。なお,被告人は,犯行後直ちに110番通報をし,警察官の指示に従って警察の通報を受けた消防隊員が臨場するまで隣室のベランダにとどまり,自首した。(証拠の標目)省略
(法令の適用)
1
構成要件及び法定刑を示す規定
被告人の判示所為は刑法108条に該当する。

2
刑種の選択
有期懲役刑を選択する。

3
法律上の減軽
被告人は自首したものであるから,刑法42条1項,68条3号を適用して法律上の減軽をする。

4
宣告刑の決定

以上の刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処する。
5
刑の執行猶予
情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。

6
保護観察
刑法25条の2第1項前段を適用して被告人をその猶予の期間中保護観察に付する。

7
訴訟費用の不負担
訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させない。

(量刑の理由)
本件は,被告人が,集合住宅内の実母方である自宅内において,布団に灯油をまいた上で火を放ったという事案である。その場所や方法等に照らすと,その犯行は,広範囲に延焼する危険性を十分に有する悪質な態様であった。焼損面積は必ずしも大きくなかったが,約699万円にも及ぶ修復費用や隣人らに与えた不安感をも考慮すると,被害結果を軽視することはできない。犯行動機をみると,被告人は,けんかの際に実母に暴力を振るってしまい,同人が家を出たまま数日間帰らず,犯行直前には利用していた作業所の職員らとも連絡が取れなかったことから孤独感が高まり,自殺を図ろうとして本件に及んだという。被告人がこのような状況を招いて犯行を決意したことは,被告人自身の後天的に形成されたパーソナリティの偏りに由来するところが大きく,身勝手な考えとの非難を免れない。しかし,被告人が孤立を感じる要因としては,他者とのコミュニケーションが不得手という生来性の自閉スペクトラム症があったと考えられる。その障害がこのような形で本件犯行に影響を与えていたことは,被告人の責任を考える上で一定程度考慮に値する。これらの犯情を踏まえ,類似の現住建造物等放火事案の量刑傾向に照らすと,実刑を選択することも十分に考えられるものの,直ちに実刑を科すべき事案であると
まではいい難い。
その上で一般情状についてみると,炎の大きさや警報器の音にうろたえたことが直接のきっかけとはいえ,被告人が自ら放火直後に110番通報をし,これにより被害が前記の程度にとどまる結果につながったことは評価できる。加えて,被告人は,事実を認めて反省や謝罪の言葉を述べ,不十分ながらも,自らの問題性と向き合う姿勢の芽生えがみられる。さらに,社会福祉法人が被告人の受入れの準備を進めており,その支援・監督が見込めること,これまでに前科がないことなどの事情もある。
そこで,以上の事情を総合的に考慮して,自首による減軽をした上で刑の執行を猶予するが,猶予期間は法律上最も長い5年間と定めつつ,確実な更生を期して,前記の福祉的支援とは別に公的な枠組みによる補導援護をも与えるべく,猶予期間中保護観察に付するのが相当であると判断した。
検察官南部崇徳,国選弁護人小笠原洋介(主任),同末長宏章
(求刑

懲役5年,弁護人の科刑意見

執行猶予付き判決)

令和3年3月5日
札幌地方裁判所刑事第3部

裁判長裁判官

駒田秀和
裁判官

山下智史
裁判官

後藤紺
各公判出席

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