判例検索β > 令和1年(行ケ)第10159号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号令和1(行ケ)10159
事件名審決取消請求事件
裁判年月日令和3年4月15日
裁判所名知的財産高等裁判所
権利種別特許権
訴訟類型行政訴訟
裁判日:西暦2021-04-15
情報公開日2021-04-19 12:01:52
裁判所の詳細 / 戻る / PDF版
令和3年4月15日判決言渡
令和元年(行ケ)第10159号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

令和3年3月2日
判決原告
株式会社島津製作所

同訴訟代理人弁理士

江同口阿久裕之津好二被特
同指定代理人

福島同三崎同樋口同告森主1許庁長浩官司仁宗彦竜介文
特許庁が不服2018-14114号事件について令和元年10月16日にした審決を取り消す。

2
訴訟費用は被告の負担とする。

第1

実及び理由
請求
主文同旨

第2
1
事案の概要
特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。

(1)

原告は,発明の名称をX線透視撮影装置とする発明について,平成2
6年10月29日に特許出願(特願2014-220371。以下本願
という。
)をした。
(2)

原告は,
平成29年1月5日付けで特許請求の範囲及び明細書の記載事項

について手続補正をし,同年9月7日付けで拒絶理由通知を受けたため,同年11月17日付けで特許請求の範囲及び明細書の記載事項について手続補正(以下本件補正という。
)をし,平成30年2月16日付けで拒絶理由

通知を受けたため,同年4月19日付けで特許請求の範囲及び明細書の記載事項について手続補正をしたが,同年7月19日付けで,補正の却下の決定がされた上で,同日付けで拒絶査定を受けた。
(3)

原告は,平成30年10月24日付けで,拒絶査定不服審判(不服201
8-14114号事件)を請求した。

特許庁は,令和元年10月16日,本件審判の請求は成り立たない旨の審決(以下本件審決という。
)をし,その謄本は,同月29日,原告に送達
された。
(4)

原告は,令和元年11月25日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提
起した。

2
特許請求の範囲の記載
本件補正によって補正した特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである
(以下,
本件補正後の請求項1に係る発明を
本願発明
という。
甲5)

【請求項1】

X線管と,
前記X線管から照射され被検者を通過したX線を検出するX線検出部と,前記X線管と前記X線検出部とを支持するアームと,
移動機構を備え,前記アームを支持する本体と,前記本体に配設され前記X線検出部により検出したX線に基づいてX線画像を表示する表示部と,
前記X線検出部により検出したX線に基づいてX線画像を表示する前記表示部とは異なる第2表示部を備えたモニタ台車と,

を備えたX線透視撮影装置において,
前記表示部と前記第2表示部には,手術中に透視された同一のX線画像が表示され,
前記X線画像のうち,前記表示部に表示されるX線画像のみを回転させる画像回転機構を備えるX線透視撮影装置。

3
本件審決の理由の要旨
(1)

本件審決は,本願発明は,本願の出願前に頒布された刊行物である甲第1
号証(特開2006-122448号。以下引用文献1という。また,書証については,
以下,
単に
甲1
などと略記する。に記載された発明

(以

引用発明
という。及び甲2

(特開2009-022602号。
以下
引用文献2という。
)に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をす
ることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができず,本願は拒絶されるべきものであると判断した。
(2)

本件審決が認定した引用発明,本願発明と引用発明の一致点及び相違点
は,次のとおりである。

引用発明
操作者が手押しで移動させる台車41と,
台車41上に保持されたポジショニングを手動で行うC型アーム42と,C型アーム42の端部のそれぞれに取り付けられた,X線管11とコリ
メータ12,およびイメージインテンシファイア14とTVカメラ15とを組み合わせ,被検者のX線画像信号が得られる撮像装置と,
台車41とは別体に構成されたキャビネット43上に設置された診断用画像モニタ装置17と,
台車41の上面に設けられたタッチパネル装置22付き操作用液晶デ
ィスプレイ装置21とを有する,外科用X線映像装置において
TVカメラ15からカメラ制御ユニット16を経て出力される映像信
号は診断用画像モニタ装置17に送られてX線透視像が表示されるとともに,制御ユニット18を経て操作用液晶ディスプレイ装置21に送られ,操作用液晶ディスプレイ装置21においてもX線透視像が表示される外科用X線映像装置。

本願発明と引用発明の一致点及び相違点
(一致点)
X線管と,
前記X線管から照射され被検者を通過したX線を検出するX線検出部と,前記X線管と前記X線検出部とを支持するアームと,
移動機構を備え,前記アームを支持する本体と,前記本体に配設され前
記X線検出部により検出したX線に基づいてX線画像を表示する表示部と,
前記X線検出部により検出したX線に基づいてX線画像を表示する前記表示部とは異なる第2表示部を備えたモニタ台車と,
を備えたX線透視撮影装置において,

前記表示部と前記第2表示部には,手術中に透視された同一のX線画像が表示されるX線透視撮影装置。
(相違点)
本願発明は,
前記X線画像のうち,前記表示部に表示されるX線画像のみを回転させる画像回転機構を備えているのに対し,引用発明は,その
ような特定がない点。
4
取消事由
本願発明の容易想到性の判断の誤り

第3
1
当事者の主張
原告の主張
本件審決は,
①引用文献2には,
術者の位置情報に基づいてX線画像302の回転処理を行いこのような処理により,術者によるX線画像と実際の患者の患部の位置把握が容易となる技術事項が記載されており,この技術事項において,
術者は,
X線画像を見ている者であるから,引用文献2には,
X線画像を見る者によるX線画像と実際の患者の位置把握を容易にするために,X線画像を見る者の位置情報に基づいてX線画像302の回転処理を行うという技術事項(以下技術事項2という。
)が記載されているといえる,②
引用発明のC型アーム42は,
ポジショニングを手動で行うものである
ことから,引用発明において,
操作用液晶ディスプレイ装置21を見て操作
する操作者は,
被検者に対し,いろいろな位置に移動しなければならな

いことは明らかであり,
この場合において,操作用液晶ディスプレイ装置21」
を見て操作する「操作者の被検者の視認方向が,
診断用画像モニタ装置17を見る術者と一致しないことは明らかであるから,操作用液晶ディスプレイ装置21を見る操作者の位置情報に基づいて,操作用液晶ディスプレイ装置21及び診断用画像モニタ装置17のX線透視像を共
に回転処理した場合,診断用画像モニタ装置17」
に表示される「X線透視像
の方向が,
診断用画像モニタ装置17を見る術者の被検者の視認方
向と一致しない(以下,この下線部について課題B2という。,③すると,)
診断用画像モニタ装置17を見る術者のX線透視像と実際の被検者の患部の位置把握が難しくなるから,操作用液晶ディスプレイ装置21」を見る「操作者の位置情報に基づいて回転処理するX線透視像は,操作用液晶ディスプレイ装置21のみとしなければならないといえ,技術事項2を引用発明の
操作用液晶ディスプレイ装置21
に表示された
X線透視像
のみに適用し,本願発明のごとく構成することは,当業者にとって容易に想到できたことであると判断したが,以下のとおり誤りである。

(1)

引用発明の技術的思想は,X線を曝射しない状態において,コリメータの
開閉・回転操作及びTVカメラの回転操作を行う際,当該操作に対応した画
像を表示するのに大掛かりな画像処理を必要とせず,簡単・安価な処理で済み,さらには操作者の手元で表示することができるようにしたX線映像装置を提供するとの課題を解決するために(
【0004】ないし【0006】,X

線照射停止直前の画像を操作用画像表示手段に表示するとともに,この画像に重ねてマーカ画像を表示し,このマーカ画像の表示位置・角度を実際のコリメータ位置・角度及び撮像手段の回転角度に対応したものとする構成【0(
007】【0009】【0015】ないし【0019】


)を採用することで,
操作者が,X線照射を停止した状態で操作用画像表示手段の表示を観察しながら,視覚的にX線コリメーションや撮像画像回転の調整作業を容易に行う
ことができるとの作用効果(
【0009】【0023】

)を奏する点にある。
そして,
本願の出願日当時,
外科用X線撮影装置の分野においては,術者」
の希望する方向にX線透視像の表示方向を補正するために,操作者は,術者の指示に基づいてTVカメラを回転させることは技術常識であり(甲15(特開2013-017569号公報)の段落【0003】,甲16(特開2010-063586号公報)の段落【0005】【0006】,,甲17(特開平9-298687号公報)の段落【0004】ないし【0007】,乙2(特開2013-017759号公報)の段落【0002】【0003】,術者,)と操作者との間には主従の関係がある。したがって,このような技術常識を把握した当業者は,引用文献1においても,操作者は「操作用液晶ディスプレイ装置21を見ながら,術者の指示に基づいてTVカメラを回転操作することにより,術者の所望する方向にX線透視像の表示方向を補正するという役割を担うのであり,そのために操作用液晶ディスプレイ装置21には診断用画像モニタ装置17と同一のX線透視像が同一の向きに表示されるという前提が存在し,操作者は,
操作用液晶ディスプレイ21を見な

がら,術者の指示に基づいてTVカメラを回転操作することにより,術者の所望する方向にX線透視像の表示方向を補正し,
操作用液晶ディスプレイ21と診断用画像モニタ装置17とが同一の向きに表示されるように構成されていると理解するのが当然である。
引用文献1には,
操作用ディスプレイ装置21を見て操作する操作者の視認方向が,診断用画像モニタ装置17を見る術者と一致しないという本件審決が認定した課題B2について記載も示唆もないし,前述したところに照らせば,手術中に被検者の患部を表示する画像表示装置において,異なる方向から被検者に対向する場合,
各々が見る画像表示装置の画像の向きを各々が被検者を見る向き
(視
認方向)に一致させるという課題が,操作者において,本願の出願日当時,周知の課題であるともいえない。
よって,このような課題があることを前提として,相違点の構成,すなわ
ち,
前記画像X線画像のうち,前記表示部に表示されるX線画像のみを回転させる画像回転機構を備える構成にする動機づけが当業者にあったとはいえない。
なお,被告は,後記2(1)において,乙3及び4によれば,手術中に被検者の患部を表示する画像表示装置において,異なる方向から被検者に対向する場合,各々の被検者を見る向き(視認方向)に一致させるという課題は当業者にとって周知である旨主張するが,これらの文献は,引用発明における術者の課題を提示するものといえても,引用発明における操作者の課題を提供するものではなく,そこで示されている課題は,あくまで画像中に手技が映
り込む術者の視認方向と画像の表示方向とをそろえることにより,手技とその手技が映り込む画像の方向を一致させるということであり,手術を行わない操作者にとって,被告の主張する周知課題を適用して,操作者から見た患部の方向と操作用ディスプレイの患部画像の見え方とを一致させる必要はない。

(2)

仮に,前記(1)記載のような課題があるとしても,引用文献2の技術的思想
は,従来の循環器診断装置のCアームを専門の技師が操作室で制御する方法
では,術者と技師との間で連絡が困難なことから,術者の所望する位置に迅速にCアームを移動させることができないとの問題に鑑み【0006】(

【0
009】,術者が人手を介することなく所望する位置に迅速にCアームを移)
動させることで,容易に所望のX線画像を得られるようにすることを目的として,術者にHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着させ,術者の位置情報に基づいてX線画像の方向と実際の患者の方向とが一致するように回転処理されたX線画像をHMD上に重畳表示し,当該X線画像に対する術者の視線移動に応じてCアームを移動させるとの構成(
【0010】【002

0】【0022】【0023】【0026】【0033】【0040】,




)を採

用することで,術者が人手を介することなく,容易に所望のX線画像を得ることができるとの作用効果を奏する(
【0012】【0043】

)というもの
であり,
X線画像を回転させる基となる位置情報はHMDを装着した術者の位置情報であって,術者とは別の操作者の位置情報は含まれな
いと解するのが自然である。
したがって,
術者によるX線画像と実際の患者の患部の位置把握を容易にするために術者の位置情報に基づいてX線画像302の回転処理を行うという技術事項から,
X線画像を見る者によるX線画像と実際の患者の患部の位置把握を容易にするために,X線画像を見る者の位置情報に基づいてX線画像302の回転処理を行うという技術事項
(技
術事項2)を導き出すことは,本願の出願日当時の技術常識を参酌しても当
業者が導き出せる事項とはいえず,技術事項2が引用文献2に記載されているに等しい事項であるとはいえないから,引用発明において,術者とは別の操作者の位置情報に基づいて,当該操作者が見る操作用液晶ディスプレイ21に表示されたX線画像のみを回転させるという相違点の構成に至ることは困難である。

(3)

仮に,技術事項2を引用発明に適用すると,
X線画像を見る者である操作者による操作用液晶ディスプレイ装置21に表示されたX線透視像と実際の患者の患部の位置把握を容易にするために,X線画像を見る者である操作者の位置情報に基づいて操作用液晶ディスプレイ装置21に表示されたX線透視像の回転処理を行うことになる。しかし,
このようにしてしまうと,
①前記(1)のとおり,
本願の出願日当時,
外科用X線撮影装置の分野においては,
術者
の希望する方向にX線透視像

の表示方向を補正するために,操作者は,術者の指示に基づいてTVカメラを回転させることが技術常識であるところ,操作者が見るX線透視像が術者の意図する方向とは異なることとなる結果,術者の指示に基づいて術者の意図する角度にX線透視像を調整することが困難となり,操作者本来の役割を果たすことができなくなるし,②引用発明の外科用X線撮影装置の分野にお
いて,操作者は,術者の指示に従ってC型アームの位置合わせをする役割も担っているところ,C型アームの移動方向と操作者用ディスプレイに表示された患部画像の移動する方向とが一致せず,C型アームを移動させて関心領域を画面の中心に合わせるという操作者本来の役割を果たせなくなる。したがって,引用発明における操作者に技術事項2を適用することについ
ては,阻害要因がある。
(4)

以上によれば,技術事項2を引用発明の操作用液晶ディスプレイ装置21に表示されたX線透視像のみに適用し,本願発明のごとく構成することは,当業者にとって容易に想到することができたとした本件審決の判断は誤りである。

2
被告の主張
(1)

①Cアームを備えたX線診断装置であって,
術者専用のX線画像表示手段

である別置きモニタのほかに,診断装置の筐体側にもX線画像を表示するタッチパネル付きのモニタが設けられたX線診断装置においては,操作者がX線画像を見ながらCアームの操作や位置決めをすること(乙1の段落【0042】
。以下,
操作者がC型アーム側の操作用モニタを見ながらアームを操作することを技術常識1という。,②操作者(オペレータ)がC型ア)
ームを移動させて手術中の患部のX線透視像を撮影する際,操作者(オペレータ)は医師や補助者(以下医師等という。
)の邪魔にならない位置でX
線撮影装置の操作を行う必要があること,
医師等の位置に応じて,
操作者
(オ
ペレータ)が医師等の邪魔にならないよう,被検者に対して様々な位置でX線撮影装置の操作を行うこと(乙1の段落【0015】【0016】,
,図1,
図2,乙2の段落【0025】【0026】

,図3,図4。以下,
操作者は医師の邪魔にならない様々な位置に移動してアームの操作を行うこと技を術常識2という。,③手術中のX線撮影装置の分野においては,)
術者が

見る診断用画像モニタ装置の患部の画像の角度と術者が見る手術中の患部の方向とを一致させると,術者にとって見やすくなること(甲15の段落【0003】
。以下,
手術中は,画像中の角度と患部の目視方向とが一致すると見やすいことを技術常識3という。)は,本願の出願日
当時の技術常識であった。

技術常識1及び2からすると,当業者は,引用文献1の装置においても,操作者が操作用液晶ディスプレイ装置21に表示されるX線透視像を見てC型アームのポジショニングを行っており,その際,医師の邪魔にならないように様々な位置に移動してアームの操作を行うものと理解する。そして,技術常識3により,当業者であれば,引用発明において被検者に対し
ていろいろな位置でX線撮影装置の操作を行わなければならない操作者が,医師等の術者が被検者を見る方向とは異なる方向から被検者を見ることにより,操作者が被検者を見る方向と操作者用の画像表示装置に表示される患部の方向とが一致しない状況になる場合がある
(課題B2)
と理解する
(別
紙被告作成図面1参照)


そして,手術中に被検者の患部を表示する画像表示装置において,異なる方向から被検者に対向する場合,各々が見る画像表示装置の画像の向きを
各々の被検者を見る向き(視認方向)に一致させるという課題は,本願の出願日当時,当業者にとって周知であった(乙3の段落【0007】【002,
2】
,乙4の段落【0022】【0025】

,図1,図10)から,当業者で
あれば,手術中に被検者の患部を表示する画像表示装置である引用発明において,医師等の術者が被検者を見る方向とは異なる方向から被検者を見ることにより,被検者を見る方向と画像表示装置に表示される被検者の患部の方向とが一致しない状況になっている操作者に対して,上記の周知課題を参照し,異なる方向から被検者に対向する操作者が見る操作用液晶ディスプレイ21の画像の向きを,操作者が被検者を見る向き(視認方向)に一致さ
せるという課題を当然に把握する。
(2)

引用発明と引用文献2に記載された技術事項2は,
共に操作者が患部を見

る方向が操作者の移動に応じて変化し,操作者に提示されるX線画像がそのまま(角度が固定された状態)では,操作者の移動に応じて操作者が患部を見る像の角度と,操作者が見えるX線画像の角度との関係が変化するという前提において共通するから,引用発明に技術事項2を適用する動機付けはあり,引用発明における操作者の都合に着目して,引用文献2の術者が操作者として振る舞う場合に着目した技術事項2を上記の動機付けに基づいて適用するに際には,操作者とは都合の異なる術者用のモニタに対し操作用ディスプレイと同様の画像回転を施すことが動機付けられることは技術常識3
に照らしてあり得ないから,
操作用液晶ディスプレイ21に表示される
X線透視像のみを操作者の立ち位置,都合に合わせて回転することが動機付けられ,当該構成に想い至るものといえる。
(3)

したがって,引用発明において,上記周知課題を解決するために,被検者
を見る方向と操作者用の画像表示装置に表示される被検者の患部の方向とが一致しない状況にある操作者が見る操作用液晶ディスプレイ21に表示されたX線透視像のみに対して技術事項2を適用することにより,
操作用ディスプレイ21に表示されるX線透視像のみを回転させる画像回転機構を備えるようにすることは,当業者が容易に想到し得るのであり,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
なお,原告は,引用文献2は,X線画像を回転させる位置情報は,HMDを装着した術者の位置情報であって,術者とは別の操作者の位置情報は含まれないから,本件審決が認定した技術事項2は誤りである旨主張するが,引用文献2の【0014】には,
・術者の頭部に装着しX線画像と実際の患者の様子を観察することができるとともに,得られたX線画像を表示するための表示部を提供する・・・ヘッドマウントディスプレイ(HMD110)と記
載されているのであるから,引用文献2の術者は,
X線画像を観察する者である。そして,
術者とは,同【0016】に

術者は・・・X線画像の一部を注視したり,・・・所望の照射部位Cアーム103を移動することを可能とする。

と記載されているのであるから,患者に手術を行う医師として患部を観察する者との立場に加え,
オペレータ
(本件明細書)
又は
操作者
(引用文献1)に当たる,Cアームのポジショニング(位置決め操作)等を担う者としてX線撮影対象である患部を観察する者としての立場も備えるものである。そうすると,引用文献2の位置情報には,操作者の位置情報も含まれるから,本件審決が認定した技術事項2に誤りはない。
また,原告は,前記1(3)のとおり,引用発明における操作者に技術事項2
を適用することについては,阻害要因がある旨主張するが,操作者が術者の意図する角度にX線透視像を調整するために,術者の指示に基づいてX線透視像を回転させる役割を担うことは技術常識であるところ,引用文献1の【0019】に記載があるように,操作用液晶ディスプレイ装置において診断用画像モニタ装置のX線透視像の正立位置,すなわち上方方向位置を,
マーカを移動させる等の間接的な方法を指定することで当該透視像を回転させることもできるのであり,必ずしも操作用液晶ディスプレイ装置のX線透
視像そのものを同期回転させることが唯一の選択肢であるとはいえないし,また,
(操作者用液晶ディスプレイの付属した)C型アーム(台車)を患部に対して回転しても,操作者用液晶ディスプレイに表示されるX線透視像は,操作者からみた患者(患部)の視認像の向きに一致するように回転されることになるから,C型アームを移動させる場合に,前記ディスプレイに表示さ
れた像において所望の向きに移動させれば,C型アームの画角を患部(関心領域)に対し所望の向きに移動させられることになり,C型アームの移動方向と操作者用ディスプレイに表示された患部画像の移動する方向が同一となるので,引用発明における操作者に技術事項2を適用することについては,阻害要因はない。

第4
1
当裁判所の判断
本件明細書の記載事項について
本願に係る明細書及び図面(ただし,本件補正後のもの。以下,これらを併せて本件明細書という。甲3,5,18)には,別紙1のとおりの記載が
あり,この記載によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明に関し,次のような開示があることが認められる。
(1)

手術室に搬入されて使用される外科用X線透視撮影装置においては,X線
透視画像又はX線撮影画像(以下,これらをX線画像という。
)は,本体
とは別に設けられたモニタ台車における表示部に表示され,モニタ台車は,手術等の治療を実行する医師と対向する位置に配置され,
治療時においては,
オペレータが本体の表示部に表示されたX線画像を確認することによりC型アームの位置決めを行っているが,本体における表示部には医師と対向配置されたモニタ台車に表示されるX線画像と同一のX線画像が表示されるため,本体における表示部に表示されるX線画像の向きと被検者の向きとは一般的
に異なっており,したがって,オペレータが本体における表示部に表示されたX線画像を確認しながらC型アームの位置決めを行うことは困難であり高
度の熟練を要するという問題があり,また,医師とオペレータの情報共有を図るため,医師が見ているモニタ台車の表示部の画像とオペレータが見ている本体の表示部の画像との向きを同一にしたいという要望があった(【00
02】【0003】【0006】【0007】。




(2)この発明は,上記の課題を解決するためにされたものであり,本体の
表示部に表示されるX線画像のみを回転させることにより,本体の表示部に表示されるX線画像の向きをオペレータに適した方向とすることが可能となり,オペレータは,本体の表示部に表示されるX線画像を容易に認識することができ,これによりC型アームの位置決め等を容易に実行することが可能となる(
【0008】【0014】。



2
引用例の記載事項について
(1)

引用文献1には,別紙2のとおりの記載があり,この記載によれば,引用
文献1には,引用発明の課題につき次のような開示があるものと認められ,また,
【0012】ないし【0015】及び図2によれば,引用発明は,前記第2の3(2)アのとおりの発明であると認められる。

X線装置では,操作者が被検者に対してX線管やX線撮像手段のポジショニングを行うとともに,その手元で管電圧や管電流などのX線条件の設定操作を行い,それとは離れた場所に置かれた診断用画像モニタ装置を医師等が観察して診断を行うことがあり,また,その際,操作者が,X線条
件等の設定操作だけでなく,コリメータやTVカメラの調整を行うことがあるが,操作者が行うコリメータやTVカメラの調整は,X線照射中に行うようにすれば確実ではあるものの,診断目的に合致した画像を得るように調整できるまで被検者に対してX線を曝射しなければならず,被検者のみならず操作者に対してもX線被曝が問題となり,そのような不必要なX
線被曝を避けるため,X線照射停止中に画像処理装置を利用してX線照射中と同様の調整を行えるようにしているものがあるが,画像処理装置を備
えていない安価なX線映像装置ではこうしたX線曝射しない状態での表示,調整をすることはできず,画像処理装置を備えた高価なX線映像装置であっても,画像処理後の画像は,操作者からは離れた場所に置かれる診断用モニタ装置に表示されるため,操作者がその画像を見て確認するには不便であるという問題があった(
【0002】ないし【0005】。



この発明の課題は,X線曝射しない状態でコリメータ・カメラの操作に対応した画像を表示するために大掛かりな画像処理を必要とせず,簡単・安価な処理で済み,さらには操作者の手元で表示することができるようにしたX線映像装置を提供することにある(
【0006】。


(2)ア

引用文献2には,別紙3のとおりの記載があり,この記載によれば,引
用文献2には,発明の課題ないし目的につき次のような開示があるものと認められる。
(ア)

X線画像装置のなかでも,特に循環器診断装置は,心血管をはじめ
として,頭部,腹部,下肢血管などの全身の動静脈,主として動脈系が診断対象となり,血管内に造影剤を注入し,血流をX線透過像で診断することから,全身に対していろいろな角度からX線による透視及び撮影が可能でなければならないところ,そのような循環器診断装置では,一般に保持装置がCアーム形になっており,天板(テーブル)が片持ちされた検診台(カテーテル寝台)と組み合わせることにより被検体を動か
すことなく自由な角度での透視・撮影位置を取ることができるが,このようなX線画像診断装置において術者が検査や手術を実施する場合,透視用モニタに表示された透視像を観察しながらカテーテルの先端を血管内に誘導し,所定の位置まで挿入し,再び透視用モニタ装置を観察しながらCアームを動かし診断部位を最適位置に再セットするといったよう
に,従来のシステムでは,診断又は手術中に透視用モニタを確認するために,術者が被検体及びカテーテル挿入部から何度も目を離さなければ
ならず,また,天板及びCアームを最適位置に動かすためにはフットスイッチを足で操作したり,術者以外の専門の技師を必要としており,フットペダルでCアームを制御する方法では,術者の立ち位置が変わった場合やフットペダルの数が多くなった場合には誤動作につながるという危険性があり,また,専門の技師が操作室などでCアームを制御する方
法では,
術者と技師との間でお互いの連絡が取りにくいなどの理由から,
術者の所望する照射部位に迅速にCアームを移動させることが難しいという問題があった(
【0002】ないし【0004】【0006】。


(イ)

本発明は,術者が人手を介することなく,容易に所望のX線画像を
得ることを可能にし,操作性に優れた放射線画像装置及びその制御方法
を提供することを目的とするものである(
【0009】【0012】。



前記ア(ア)及び(イ)のような課題ないし目的を前提にしつつ,引用文献2
の【0014】ないし【0017】【0020】【0022】


,図1,図1
4によれば,
引用文献2には,
HMDを装着し操作者を兼ねた術者が見るHMDの画像表示部に表示されるX線画像と実際の患者の患部の位置把握を容易にするために,上記術者の床面上の位置情報に基づいて上記X線画像の回転処理を行うとの技術事項(以下技術事項2’という。)が
記載されているものと認められるべきである。本件審決は,回転処理されるX線の画像は術者が装着したHMDの画像であること,操作者を兼ねた術者の位置情報が床面
(センサ)
からのものであるという構成を捨象して,

X線画像を見る者によるX線画像と実際の患者の位置把握を容易にするために,X線画像を見る者の位置情報に基づいてX線画像302の回転処理を行うという技術事項(技術事項2)を認定したものであり,技術事項の範囲を不当に抽象化,拡大化するものといえ,誤りである。3
取消事由(容易想到性の判断の誤り)について
(1)ア

前記2(1)イのとおり,
引用発明は,
医師等が観察して診断を行う診断用

画像モニタ装置と離れて,操作者が被検者に対してX線装置のコリメータやTVカメラの調整等を行う際の被検者及び操作者のX線被爆を避けるために,X線曝射しない状態でコリメータやカメラの操作ができ,簡単かつ安価で操作者の手元で表示することができるX線映像装置を提供することを目的とするものである。
そして,引用文献1は,こうした課題を解決するために,医師等が観察する診断用画像モニタ装置とは別に,1対の平行コリメータ位置マーカ24,24や円形コリメータ位置マーカ25,カメラ画像正立位置マーカ26の画像を,制御ユニット18の制御の下で,X線照射停止直前に撮像さ
れ画像メモリ19に格納されたX線透視像を画像と重ねて操作用液晶ディスプレイ装置21に表示し,マーカ24,25,26上を指などで触れてドラッグすると,その位置情報が制御ユニット18に取り込まれて演算されて新たな表示位置が求められ,その位置へ各マーカが動いていくような表示がされ,この入力情報に応じて制御ユニット18が指令をコリメー
タ12及びTVカメラ15へ出し,コリメータ12の遮蔽板の位置や方向が変更され,TVカメラ15の回転角度が調整され,現実に動いた位置・方向の情報が制御ユニット18に返され,これに応じて制御ユニット18が平行コリメータ位置マーカ24,24又は円形コリメータ位置マーカ25の表示位置を固定するとともに,表示されたX線透視像23及びカメラ
画像正立位置マーカ26を回転させる(
【0018】【0019】

)という
構成を開示している。
このように,引用発明は,あくまで,医師等が観察して診断を行う診断用画像モニタ装置とは別に,X線被爆を避けるために,X線曝射しない状態で操作ができ,画像を操作者の手元で表示することができるX線映像装
置を提供することを目的とするものであって,こうした技術的意義を有する引用発明において,引用文献1には,操作者が医師等の術者が被検者を
見る方向と異なる方向から被検者を見ることにより,操作者が被検者を見る方向と操作用画像表示装置に表示される患部の方向とが一致しないという課題(課題B2)があるといった記載や示唆は一切ない。

この点につき,被告は,前記第3の2(1)のとおり,当業者であれば,課題B2の存在を理解し,手術中に被検者の患部を表示する画像表示装置において,
操作者が異なる方向から被検者に対向する場合,各々の被検者
を見る向き(視認方向)に一致させるという周知の課題(乙3,4)を参照し,異なる方向から被検者に対向する操作者が見る操作用液晶ディスプレイ21の画像の向きを,操作者が被検者を見る向き(視認方向)に一致
させるという課題を当然に把握し,引用発明に技術事項2を適用する動機づけがある旨主張する。
しかし,当業者であれば,課題B2の存在を当然に理解するという点については,これを裏付けるに足りる証拠の提出はなく,むしろ,原告が主張するように,術者と操作者との力関係や役割の違いに照らせば,操作者
は,従前は,このような課題を具体的に意識することもなく,術者の指示に基づきその所望する方向に画像を調整することに注力していたものであるのに対して,本願発明は,その操作者の便宜に着目して,操作者の観点から画像の調整を容易にするための問題点を新たに課題として取り上げたことに意義があるとの評価も十分に可能である。

また,乙3には,
本発明の手術用顕微鏡システムでは,前記画像表示手段を複数備え,少なくとも一つの画像表示手段で表示される画像の向きが変更可能であることが望ましい。このような構成では,術者と助手とが向き合って手術する時のように,撮像部分を異なる方向から見る場合においても,それぞれの見る方向に応じて画像の向きを変えることにより,撮像部分を見るのと同じ向きの画像を表示することが可能となり,より手際のよい手術が行えるようになる。(【0007】,)本発明の手術用顕微鏡システムは,・・・前記画像処理装置は,各電気光学撮像手段からの撮像信号に基づいて,基準画像信号を生成して,基準画像を前記画像表示手段に表示させる基準画像生成部と,前記各撮像信号に基づいて,基準画像と上下または左右が反転した反転画像信号を生成して,前記画像表示手段に表示させる反転画像生成部とを備えることを特徴とする。(【0008】)との記
載があるように,術者とそれを補助する術者が向き合って手術をするときのように撮像部分を異なる方向から見る場合でも,画像表示手段で表示される画像の向きをそれぞれの見る方向に応じて変更する構成により,撮像部分を見るのと同じ向きの画像を表示することが可能となり,より手際の
よい手術が行えるようになるとの課題が示されているにとどまり,術者とX線撮影装置の操作者についてそのような課題があると開示するものではない。
さらに,乙4には,
本実施例の装置の動作について,図を参照して説明する。まず,図1において術者Aは第1モニタ4を見て,術者Bは第2モニタ7を見て手技を行っている。ここで術者Bは内視鏡2に対向しているので,内視鏡2の原画像をそのまま第2のモニタ7に表示すると,上下左右が逆の感覚で見えてしまう。このため,画像処理装置8にて,第2モニタ7の画面のみを上下左右反転させた倒立像を映し出す。(【0022】,)
本実施例では,第2モニタ7を倒立像にすることで,術者Bが上下左右逆の感覚で手技を行うことがないので,スムーズに手技を行うことができる。また,第1モニタ4及び第2モニタ7のいずれでも倒立像にできるので,内視鏡2の向きや術者の位置が変わっても,容易に対応できる。(【0025】との記載があるように,

術者Aと術者Bがそれぞれ異なるモニタ
を見て手技を行う場合において,術者Bが見ている第2のモニタ7に内視
鏡2の原画像を見てそのまま表示すると,上下左右が逆の感覚で見えてしまうという課題が示されているにとどまり,術者とX線撮影装置の操作者
についてそのような課題があると開示するものではない。
そうすると,上記の乙3,4の各文献に記載された課題は,あくまで術者と助手又は術者と術者がそれぞれ異なるモニタを見ることによって生じる課題を指摘するにとどまり,術者とは異なる操作者が操作を行うという引用発明の場合において,操作者の便宜のために,操作者が見る患部の
向きの方向と,操作者が見る操作用液晶ディスプレイの患部の向きとを一致させるという課題を示唆するものとはいえないから,当業者がこのような課題を当然に把握するともいえない。
(2)
また,仮に,引用発明について,前記課題B2の存在を認識し,異なる方
向から被検者に対向する操作者が見る操作用液晶ディスプレイ21の画像の向きを,操作者が被検者を見る向き(視認方向)に一致させるという課題を把握して,操作用液晶ディスプレイ装置21に表示されるX線画像のみを回転させるという相違点の構成とする動機づけがあると仮定しても,前記2(2)
のとおり,技術事項2’は,HMDを装着し操作者を兼ねた術者が見るHM
Dの画像表示部に表示されるX線画像と実際の患者の患部の位置把握を容易にするために,上記術者の床面上の位置情報に基づいて上記X線画像の回転処理を行うものであるから,回転処理がされるX線画像はHMDの画像表示部であり(引用文献2の【0014】【0020】

,図14等)
,また,画像
回転処理の基になる位置情報は,床面に設けられた感圧センサによるもので
ある(引用文献2の【0022】。

こうした技術事項2’の構成は,キャビネット43に設置された診断用画像モニタ17は術者である医師が使用し,台車41に設けられた操作用液晶ディスプレイ装置21は撮像装置のセッティング等のために操作者が状況に応じて自由に移動し,また台車41に様々な立ち位置を取ることができる引
用発明の具体的な構成と大きく異なるものであるから,引用発明と引用文献2に記載されたX線装置は同一の技術分野に属し,X線画像を表示する装置
を有する点で共通するとしても,HMDに表示されるX線画像の回転処理が行われるという技術事項のみを抽出して引用発明に適用する動機づけがあるとはいえない。
さらに,技術事項2’は,操作者を兼ねた術者が装着したHMDに表示されるX線透視像を床面の位置情報に基づいて回転させるという構成を有するものであるから,こうした構成を無視して,表示されたX線画像のみを回転させるという技術事項のみを適用し,本願発明の相違点の構成に想到するとはいえない。
(3)

以上によれば,本願発明と引用発明との相違点は,本願発明は前記X線画像のうち,前記表示部に表示されるX線画像のみを回転させる画像回転機構を備えているのに対し,引用発明は,そのような特定がない点に尽きるが(本願発明における画像回転機構自体については目新しいものとはいえない。,引用文献1には,

操作用液晶ディスプレイ装置21を見て操作する
操作者の視認方向が診断用画像モニタ装置17を見る術者の被検者の視認方向と一致しないという課題(課題B2)について記載も示唆もなく,被告が提出した文献からは,手術中に被検者の患部を表示する画像表示装置において,異なる方向から被検者に対向する操作者が見る操作用液晶ディスプレイ21の画像の向きを,
操作者が被検者を見る向き
(視認方向)
に一致させるという課題があると認めるに足りないから,こうした課題があ
ることを前提として,引用発明との相違点の構成にする動機づけがあるとはいえず,また,本件審決の技術事項2の認定に誤りがあり,引用文献2に記載された事項
(技術事項2’から引用発明との相違点の構成に想到するとも

いえないから,結局のところ,本願発明は,引用発明及び引用文献2に記載された技術事項2’に基づいて当業者であれば容易に想到し得たものとはい
えず,これと異なる本件審決の判断は,その余の点につき判断するまでもなく,誤りである。

4
結論
以上によれば,原告主張の取消事由は理由があるから,本件審決は取り消されるべきである。
よって,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官
菅野中村岡山雅之
裁判官

裁判官

忠広
(別紙1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,X線透視またはX線撮影を行うX線透視撮影装置に関する。【背景技術】
【0002】
このようなX線透視撮影装置としては,例えば,手術室に搬入されて使用される外科用X線装置と呼称されるものが使用される。このようなX線透視撮影装置は,
X線管と,このX線管から照射され被検体を通過したX線を検出するイメージインテンシファイア(I.I.
)やフラットパネルディテクタ(FPD)等のX線検出器
を備えたX線検出部と,円弧状の形状を有し,X線管とX線検出部とを支持する略C字状のC型アームを備えている。このC型アームは,X線透視撮影装置の本体に対して水平方向を向く軸心を中心に回転可能に支持されており,本体は,下部にキ
ャスターを付設して移動可能に構成されている。
【0003】
このようなX線透視撮影装置においては,X線透視画像またはX線撮影画像(この明細書において,
X線画像という)は,本体とは別に設けられたモニタ台車に
おける表示部に表示される。また,X線画像を,本体に設けられたLCDタッチパ
ネル等から成る表示部に表示するX線診断装置も提案されている
(特許文献1参照)

【0004】
さらに,被検者における撮影部位や撮影条件等に対応させて,モニタ台車における表示部に表示するX線画像を回転させるようにした移動型X線撮影装置も提案されている(特許文献2参照)


【先行技術文献】
【特許文献】

【0005】
【特許文献1】特開平11-299766号公報
【特許文献2】特開2010-214126号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなX線透視撮影装置においては,モニタ台車は手術等の治療を実行する医師と対向する位置に配置される。
そして,
治療時においては,
オペレータにより,
C型アームを移動させる等の操作が実行される。
このC型アームの移動時において,
特許文献1に記載されたようにX線透視撮影装置の本体における表示部と,モニタ
台車における表示部とを備えたX線透視撮影装置を使用する場合においては,オペレータは,本体の表示部に表示されたX線画像を確認することにより,C型アームの位置決めを行っている。
【0007】
このとき,本体における表示部とモニタ台車における表示部とを備えたX線透視
撮影装置においては,これらの表示部に表示されるX線画像は,同一のものとなっている。すなわち,本体における表示部には,医師と対向配置されたモニタ台車に表示されるX線画像と同一のX線画像が表示される。このため,本体における表示部に表示されるX線画像の向きと被検者の向きとは,一般的に異なっている。従って,オペレータが本体における表示部に表示されたX線画像を確認しながらC型ア
ームの位置決めを行うことは困難であり,高度の熟練を要するという問題がある。また,医師とオペレータの情報共有を図るため,医師が見ているモニタ台車の表示部の画像とオペレータが見ている本体の表示部の画像との向きを同一としたいという要望がある場合もある。
【0008】

この発明は上記課題を解決するためになされたものであり,本体の表示部に表示されるX線画像のみを回転させることにより,本体の表示部に表示されるX線画像
の向きをオペレータに適した方向とすることが可能となり,C型アームの位置決め等を容易に実行することが可能なX線透視撮影装置を提供することを目的とする。【発明の効果】
【0014】
請求項1から請求項5に記載の発明によれば,本体の表示部に表示されるX線画像を回転させることにより,本体の表示部に表示されるX線画像の向きをオペレータに適した方向とすることが可能となり,オペレータが本体の表示部に表示されるX線画像を容易に認識することができる。これにより,アームの位置決め等の操作を容易に実行することが可能となる。

【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は,この発明に係るX線透視撮影装置の概要図である。また,図2は,この発明に係るX線透視撮影装置における撮影部1の斜視図である。

【0017】
このX線透視撮影装置は,外科において手術等を実施するときに,透視撮影および一般撮影を実行するためのものである。このX線透視撮影装置は,撮影部1と,モニタ台車2とから構成される。
【0018】

撮影部1は,複数の車輪12により移動可能な本体11を備える。また,撮影部1は,X線管21と,このX線管21から照射されるX線の照射領域を制限してX線照射野を形成するコリメータ23とを有するX線照射部と,X線管21から照射され被検体である患者を通過したX線を検出して映像化するイメージインテンシファイア(I.I.
)32と,イメージインテンシファイア32で映像化された画像を
撮影するカメラ33とを有するX線検出部と,これらのX線照射部とX線検出部とを支持するC型アーム13を備える。なお,この実施形態においては,X線を検出
して映像化するイメージインテンシファイア32と,イメージインテンシファイア32で映像化された画像を撮影するカメラ33とからなるX線検出部を使用しているが,X線検出部としてフラットパネルディテクタ(FPD)を使用してもよい。【0019】
撮影部1における本体11の上部には,液晶タッチパネルからなる表示部10が配設されている。この液晶タッチパネルからなる表示部10は,X線画像等の表示機能と,後述するX線画像の回転操作を含む各種の操作を実行させるための操作部としての機能とを有する。
【0020】

撮影部1におけるC型アーム13は,円弧状の形状を有し,X線照射部とX線検出部とを支持している。このC型アーム13は,アーム支持部14に対してスライド可能に支持されている。また,アーム支持部14は,本体11に対して水平方向および上下方向に移動可能に支持されている。このC型アーム13は,オペレータが,図示を省略したハンドル等を把持して操作することにより,移動させることが
できる。
【0021】
一方,モニタ台車2は,X線検出部により検出したX線に基づいてX線画像を表示するLCD等の表示部17と,台車本体15に対して収納可能なキーボード等から成る入力部16とを備える。このモニタ台車2は,撮影部1と同様,複数の車輪
18の作用により移動可能となっている。
【0022】
図3は,患者41に対して手術を行うときに,この発明に係るX線透視撮影装置により透視を行う様子を示す説明図である。
【0023】

手術に伴って透視を行う場合には,患者41は手術台19上で臥位となる。医師42は手術対象の患者41に最も近い位置で手術を行う。X線透視撮影装置の撮影
部1およびモニタ台車2は,
医師42の邪魔にならない位置に配置される。
そして,
オペレータ44が,医師42の邪魔にならない位置で,C型アーム13の移動等のX線透視撮影装置の操作を行う。このときには,モニタ台車2における表示部17には,患者41のX線画像が表示される。このX線画像は,例えば,医師42が患者41を,直接,目視した方向と同じ方向を向いている。但し,このX線画像は,手術内容に応じて,医師が最も理解しやすい方向を向く場合もある。また,撮影部1の本体11に配設された表示部10にも,患者41のX線画像が表示される。【0024】
図4は,撮影部1の本体11に配設された表示部10に表示される画像を示す模
式図である。
【0025】
この表示部10は,上述したように,液晶タッチパネルから構成され,画像の表示と情報の入力とが可能となっている。この表示部10には,X線画像を表示するための画像表示領域10aと,スイッチ表示領域10bとが配置される。そして,
スイッチ表示領域10bには,後述するように,表示部10に表示されるX線画像を回転させるために使用される一対のスイッチ51,52が表示される。スイッチ表示領域10bに表示されたこれらのスイッチ51,52を押圧したときには,後述するように,表示部10に表示されるX線画像が回転する。
【0026】

図5は,この発明に係るX線透視撮影装置の主要な制御系を示すブロック図である。
【0027】
この制御部60は,X線管21と,高電圧発生部を有するX線制御部29を介して接続されている。
また,
この制御部60は,
イメージインテンシファイア32と,

カメラ33を介して接続されている。さらに,この制御部60は,撮影部1の本体11に配設された表示部10と,モニタ台車2における表示部17とに接続されて
いる。
【0028】
また,この制御部60は,各所の画像処理を実行するための画像処理部61を備える。この画像処理部61は,撮影部1の本体11に配設された表示部10と,モニタ台車2における表示部17とに表示するX線画像の画像信号を生成するX線画像表示部62を備える。また,画像処理部61は,撮影部1の本体11に配設された表示部10に表示させる画像を回転させるための画像回転部63を備える。さらに,画像処理部61は,撮影部1の本体11に配設された表示部10に,X線画像を回転させるときに使用される一対のスイッチ51,52を表示させるためのスイ
ッチ表示部64を備える。
【0029】
なお,
この制御部60は,
撮影部1における本体11の内部に配設されてもよく,
また,モニタ台車2における台車本体15の内部に配設されてもよい。あるいは,この制御部60は,撮影部1における本体11の内部と,モニタ台車2における台
車本体15の内部とに分割して配設されてもよい。
【0030】
次に,上述したX線透視撮影装置において,撮影部1の本体11に配設された表示部10における画像表示領域10aと,モニタ台車2における表示部17とに表示されるX線画像について説明する。図6は,撮影部1の本体11に配設された表
示部10における画像表示領域10aと,モニタ台車2における表示部17とに表示されるX線画像の方向を説明するための説明図である。
【0031】
図3に示すように,手術に伴って透視を行う場合には,医師42は手術台19上の患者41に最も近い位置で手術を行う。このときには,モニタ台車2における表
示部17には,患者41のX線画像が,例えば,医師42が患者41を,直接,目視した方向と同じ方向を向いて表示される。すなわち,図3に示すように,医師4
2から見た患者41の方向A,Bは,図6(a)に示すように,モニタ台車2における表示部17上でも,医師42の視認方向と同一方向に表示される。このX線画像は,
図5に示す画像処理部61のX線画像表示部62により作成される。そして,
撮影部1の本体11に配設された表示部10にも,通常は,モニタ台車2における表示部17と同一方向を向くX線画像が表示される。
【0032】
このとき,オペレータ44が,図3において実線で示す,撮影部1の本体11の後方の位置において撮影部1の操作を行っていた場合には,撮影部1の本体11に配設された表示部10に表示されるX線画像の向きが,実際の患者41の向きとは
異なっていることから,C型アーム13の移動等の操作を好適に実行することができない。
【0033】
このような場合には,オペレータ44は,撮影部1の本体11に配設された表示部10のスイッチ表示領域10bに表示されるスイッチ51,52のいずれかを押
圧する。これにより,図5に示す画像処理部61の画像回転部63の作用により,撮影部1の本体11に配設された表示部10における画像表示領域10aに表示されるX線画像と,
モニタ台車2における表示部17とに表示されるX線画像のうち,撮影部1の本体11に配設された表示部10における画像表示領域10aに表示されるX線画像のみが回転する。そして,オペレータ44は,撮影部1の本体11に
配設された表示部10における画像表示領域10aに表示されるX線画像が図6(b)に示す向きに配置されたときに,スイッチ51,52の押圧を中止する。これにより,撮影部1の本体11に配設された表示部10における画像表示領域10aに表示されるX線画像の方向と,オペレータ44による患者41の視認方向を一致させることが可能となる。

【0034】
なお,図3において仮想線で示すように,オペレータ44が,撮影部1の本体1
1の側方の位置において撮影部1の操作を行う場合においても,撮影部1の本体11に配設された表示部10における画像表示領域10aに表示されるX線画像の向きを患者41の向きと一致させるためには,X線画像を図6(b)に示す方向に配置すればよい。
【0035】
なお,上述した説明においては,撮影部1の本体11に配設された表示部10に表示されるX線画像の向きを患者41の向きと一致させる場合について説明したが,撮影部1の本体11に配設された表示部10に表示されるX線画像の向きをモニタ台車2における表示部17に表示されるX線画像の向きと一致させたい場合には,
オペレータ44は,スイッチ51,52を操作することにより,表示部10に表示されるX線画像の向きをそのような向きに調整する。
すなわち,
オペレータ44が,
図3において実線で示す,撮影部1の本体11の後方の位置において撮影部1の操作を行っていた場合には,表示部10に表示されるX線画像の向きを,図6(a)に示す表示部17に表示されるX線画像の向きと同様の向きとする。また,図3に
おいて仮想線で示すように,オペレータ44が,撮影部1の本体11の側方の位置において撮影部1の操作を行う場合には,表示部10に表示されるX線画像の向きを,図6(c)に示す向きとする。
【0036】
以上のように,この発明に係るX線透視撮影装置によれば,撮影部1の本体11
における表示部10に表示されるX線画像を回転させることにより,本体11の表示部10に表示されるX線画像の向きをオペレータ44に適した方向とすることが可能となり,オペレータ44がこの表示部10に表示されるX線画像を容易に認識することができる。これにより,C型アーム13の位置決め等の操作を容易に実行することが可能となる。

【0037】
次に,この発明に係るX線透視撮影装置の他の実施形態について説明する。図7
は,この発明の第2実施形態に係るX線透視撮影装置における表示部10付近の斜視図であり,図8は,その側面概要図である。
【0038】
上述した実施形態においては,図5に示す画像処理部61の画像回転部63により,撮影部1の本体11における表示部10に表示されるX線画像を回転させている。これに対して,この第2実施形態においては,撮影部1の本体11における表示部10自体を,表示部回転機構53により回転させる構成を採用している。この表示部回転機構53は,撮影部1の本体11と表示部10との間に配設され,表示部10を本体11に対して回転させる構成を有する。

【0039】
このような構成を採用した場合においても,撮影部1の本体11における表示部10を回転させることにより,オペレータ44がこの表示部10に表示されるX線画像を容易に認識することができる。これにより,C型アーム13の位置決め等の操作を容易に実行することが可能となる。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

(別紙2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,X線を利用して透視や撮影を行なう,医療の分野などで用いるのに好適な,X線映像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線映像装置では,たとえば下記特許文献1に示された外科用X線TV装置のよ
うに,操作者が被検者に対してX線管やX線撮像手段のポジショニングを行うとともに,その手元で管電圧や管電流などのX線条件の設定操作を行い,それとは離れた場所に置かれた診断用画像モニタ装置を医師等が観察して診断を行うことがある。またその際,操作者は,X線条件等の設定操作だけでなく,コリメータやTVカメラの調整なども行うことがある。ここで,コリメータの調整とは,画像のどの一部
を覆う(絞る)かに応じて平行コリメータの開閉度や方向(角度)を定めたり,円形コリメータの大きさや位置を決めたりするものであり,TVカメラの調整とは,カメラを入射光軸を中心に回転させることにより撮像した画像の回転角度を定めるものである。
【特許文献1】特開2001-043994号公報

【0003】
これらのコリメータやTVカメラの調整は,X線照射中に行うようにすれば確実である。つまり,X線画像を撮像しその画像を表示させ,その画像を観察すれば,画像がどのように覆われ,
どのように回転しているかを実際に確認できる。
しかし,
そうすると,診断目的に合致した画像を得るよう調整できるまで被検者に対してX
線曝射しなければならず,被検者のみならず操作者についてもX線被曝が問題となる。

【0004】
そこで,最近の一部のX線映像装置では,そのような不必要なX線被曝を避けるため,X線停止中にX線照射中と同様な調整が行えるようにしている。すなわち,X線照射を停止する直前の画像を画像メモリに記憶させておき,調整時にこれを読み出し,
コリメータの開閉・回転,
TVカメラの回転などの操作が行われたときに,
その操作に対応して画像がどのように覆われ,どのように回転するかを計算・処理し,その処理によって得られた画像を診断用画像モニタ装置に表示するようにしている。そして,そのような計算・処理を,X線画像の空間フィルタ処理や階調変換などの各種画像処理を行う画像処理装置を利用して行うように構成するのが通常で
ある。
【0005】
そのため,画像処理装置を備えていない安価なX線映像装置では,こうしたX線曝射しない状態での表示・調整はできない。くわえて,画像処理装置を備えた高価なX線映像装置であったとしても,画像処理後の画像は,操作者からは離れた場所
に置かれる診断用画像モニタ装置に表示されるため,操作者がその画像を見て確認するには不便である点も問題である。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の課題は,X線曝射しない状態でコリメータ・カメラの操作に対応した
画像を表示するのに大掛かりな画像処理を必要とせず,簡単・安価な処理で済み,さらには操作者の手元で表示することができるようにした,X線映像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】

上記の目的を達成するため,この発明による請求項1記載のX線映像装置においては,X線発生手段と,該X線発生手段の前面に設けられたX線を絞るためのコリ
メータ手段と,被写体を透過したX線による画像を撮像するための回転可能な撮像手段と,該撮像手段からの画像信号が送られてX線画像を表示する診断用画像モニタ手段と,該画像信号を記憶する画像メモリ手段と,コリメータ位置を示すマーカ画像および撮像手段の回転位置を示すマーカ画像を生成する画像生成手段と,操作用画像表示手段と,上記コリメータ手段からのコリメータ位置情報および撮像手段からの回転位置情報に基づいて上記マーカ画像を,上記の画像メモリ手段から読み出したX線画像に重ねて上記操作用画像表示手段に表示させる制御手段とが備えられることが特徴となっている。
【発明の効果】

【0009】
請求項1記載のX線映像装置によれば,画像メモリ手段によって記憶したX線照射停止直前の画像を操作用画像表示手段に表示するとともに,この画像に重ねてマーカ画像を表示し,このマーカ画像の表示位置・角度が実際のコリメータ位置・角度および撮像手段の回転角度に対応したものとするという簡単な構成で,X線照射
を停止した状態で,この操作用画像表示手段の表示を観察しながら,視覚的にX線コリメーションや撮像画像回転の調整作業を容易に行うことができる。【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は,この発明の一実施例の信号系統・制御系統および表示形態を模式的に示
すブロック図である。この実施例はこの発明をいわゆる外科用X線映像装置に適用したもので,図2はその外観を模式的に示す斜視図である。まず図2を参照して説明すると,この外科用X線映像装置では,台車41上に多軸方向に自在に保持されたC型アーム42の端部のそれぞれに,X線管11とコリメータ12,およびイメージインテンシファイア14とTVカメラ15とを組み合わせた撮像装置が取り付
けられており,それらの間に被写体(図示しないがたとえば被検者の上肢や下肢)が配置されて,X線画像信号が得られるようになっている。この画像信号は,台車
41とは別体に構成されたキャビネット43上に設置された診断用画像モニタ装置に送られて,X線画像が表示される。
【0013】
X線管11には,図1に示すようにX線制御装置13によりX線曝射用高電圧が供給される。
このX線制御装置13によりX線管11の管電圧
(kV)
や管電流
(m
A)などのX線条件が定められる。このX線制御装置13には制御ユニット18からX線条件などの指令が与えられる。これらX線制御装置13および制御ユニット18は,図1に示した台車41内に収められる。この制御ユニット18はたとえばマイクロコンピュータユニットなどにより構成される。この制御ユニット18には
画像メモリ19と画像生成器20とが接続されるが,これらはマイクロコンピュータユニットに備えられたメモリを利用したり,あるいはその演算ユニットおよび画像生成用ソフトウェアなどで構成することもできる。
【0014】
台車41は,操作者が手押しで移動させ,またC型アーム42のポジショニング
を手動で行うものとなっており,さらに操作者がX線条件設定などの操作を行うようタッチ式スイッチ(図では省略)やタッチパネル装置22付き操作用液晶ディスプレイ装置21が台車41の上面に設けられている。このタッチパネル装置22付き操作用液晶ディスプレイ装置21というのは,液晶ディスプレイの前面に透明タッチパネルを重ねて配したもので,液晶ディスプレイによって表示された特定個所
を指などで接触することにより,特定の入力ができるようにしたものである。たとえば,X線条件設定モードでは,液晶ディスプレイ装置21にはX線条件入力用の各種ボタンが表示され,そのボタンに触れることにより所望の管電圧などの設定ができる。こうした入力に応じて制御ユニット18がX線制御装置13にX線条件などの指令を与える。

【0015】
また,X線透視モードでは,TVカメラ15からカメラ制御ユニット16を経て
出力される映像信号は診断用画像モニタ装置17に送られてX線透視像が表示されるとともに,制御ユニット18を経て操作用液晶ディスプレイ装置21に送られ,操作用液晶ディスプレイ装置21においてもX線透視像が表示されるようになっている。
【0016】
そして,コリメータ12は,そのコリメーション(絞り)の調整が可能なものとなっており,駆動用モータ等により平行遮蔽板よりなる平行コリメータの開口幅を狭めたりを回転させて方向を変えたり,あるいは円形コリメータの開口の大きさを変化させることができるよう構成されている。制御ユニット18からの指令に基づ
きこれらの調整がなされるとともに,移動または回転させられたコリメータ(遮蔽板)の位置情報を制御ユニット18に戻すようにしている。
【0017】
TVカメラ15についても同様で,モータ駆動等によりTVカメラ15の撮像部が入射光軸を回転中心軸として回転するよう構成されていて,診断用画像モニタ装
置17や操作用液晶ディスプレイ装置21に表示されるX線透視像の角度(方向)を任意のものとすることができるようにされている。制御ユニット18からの指令によりモータが駆動してこの回転が行われ,その回転位置情報が制御ユニット18に返される。
【0018】

コリメーションや画像回転角度の調整時には,X線を照射してX線透視像を観察しながら調整作業をすれば実際の被写体に対するX線コリメーションや透視画像表示方向を確認できて確実であるが,そうするとX線被曝の問題を生じる。そこで,X線照射を停止した状態でこの調整を行う。このコリメーション・画像回転角度調整モードでは,X線照射停止直前に撮像したX線透視像が画像メモリ19に格納さ
れ,これが読み出されて操作用液晶ディスプレイ装置21に表示される。これにより,図1に示すようにX線透視像23が表示される。

【0019】
そして,このモードでは,1対の平行コリメータ位置マーカ24,24や円形コリメータ位置マーカ25が液晶ディスプレイ装置21上に表示されるとともに,カメラ画像正立位置マーカ26が表示される。すなわち,これらの画像が画像生成器20によって生成されて制御ユニット18の制御の下で,X線透視像23と重ねて表示される。
これらのマーカ24,
25,
26上を指などで触れてドラッグすると,
その位置情報が制御ユニット18に取り込まれ演算されて新たな表示位置が求められ,その位置へマーカ24,25,26が動いていくような表示がなされる。この入力情報に応じて制御ユニット18が指令をコリメータ12およびTVカメラ15
へ出し,コリメータ12の遮蔽板の位置や方向が変更され,TVカメラ15の回転角度が調整される。そして,その現実に動いた位置・方向の情報が制御ユニット18に返されるので,これに応じて制御ユニット18が,平行コリメータ位置マーカ24,
24あるいは円形コリメータ位置マーカ25の表示位置を固定するとともに,表示されたX線透視像23を回転させるとともにカメラ画像正立位置マーカ26も
回転させる。
【0020】
したがって,表示されたX線透視像23が直前の記憶画像である点を除いて実際にX線を照射してX線透視像を表示している場合と同様に,コリメーションや画像回転角度の調整作業を行うことができる。この実施例ではタッチパネル装置22に
よってマーカ24~26をドラッグして調整するため,操作は視覚的で直截的であり,きわめて容易である。しかも,操作者は台車41に設けられた操作用液晶ディスプレイ装置21で観察しながら調整でき,キャビネット43上の診断用画像モニタ装置17を観察するために台車41から離れる必要もなくなる。【産業上の利用可能性】

【0023】
この発明のX線映像装置によれば,コリメータの位置や方向を示すマーカや撮像
画像の回転角度を示すマーカの画像データを生成し,これらを,記憶した直前X線画像に重ねて操作用画像表示手段において表示するというきわめて簡単な構成で,操作者がその位置を離れることなく,X線を照射しない状態で視覚的に直截的なコリメータ位置・角度調整や撮像画像回転角度調整を行うことができる。また操作用画像表示手段に重ねて配置したタッチパネル手段によりその画面上での座標情報入力を行うようにすれば,さらにより直截的な調整作業が可能となる。
【図1】

【図2】

(別紙3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,被検体内部を放射線投影して得られた放射線画像を表示する放射線画像取得装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像診断装置のなかでも,特に循環器診断装置は,心血管をはじめとして,
頭部,腹部,下肢血管などの全身の動静脈,主として動脈系が診断対象となる。この種のX線診断装置では,血管内に造影剤を注入し,血流をX線透過像で観察して診断する。したがって,全身に対して,いろいろな角度からX線による透視及び撮影が可能でなければならない。
【0003】

そのような循環器診断装置は,X線管,X線受像部(イメージインテンシファイア・TVカメラ,又はフラットパネルディテクタ)
,それらを保持する保持装置,検
診台(カテーテル寝台)およびX線高電圧装置とその制御部を備えている。循環器診断装置では,全身をいろいろな角度から透視・撮影できるように,一般に保持装置がCアーム形になっている。そして,天板(テーブル)が片持ちされた検診台(カ
テーテル寝台)と組み合わせることにより,被検体を動かすことなく自由な角度での透視・撮影位置をとることができる。
【0004】
このX線画像診断装置において術者が検査や手術を実施する場合は,透視用モニタに表示された透視像を観察しながらカテーテルの先端を血管内に誘導し,所定の
位置まで挿入する。そして再び透視用モニタを観察しながらCアームを動かし診断部位を最適位置に再セットする。このように従来のシステムでは,診断または手術
中に,透視用モニタを確認するためには,術者が被検体及びカテーテル挿入部から何度も目を離さなければならなかった。また天板およびCアームを最適位置に動かすためにはフットスイッチを足で操作したり,術者以外の専門の技師が装置をコントロールしていた。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,
上記従来例で述べたフットペダルでCアームを制御する方法では,術者の立ち位置が変った場合や,フットペダルの数が多くなった場合には,誤動作につながるという危険性があった。また専門の技師が操作室などでCアームを制御
する方法では,術者と技師の間でお互いの連絡がとりにくいなどの理由から,術者の所望する照射部位に迅速にCアームを移動させることが難しいという問題があった。また,上記従来例で述べた特許文献1による画像診断装置では,HMD上に仮想動作制御盤のスイッチ群を表示し,
視線入力によってメニュー選択を行っている。
しかしながら,制御用のスイッチを視線入力したあとに,X線画像を再表示して位
置を確認するという動作が繰り返し行われる。そのため,Cアームを所望の位置に移動させるまでに,時間がかかりすぎるという問題がある。
【0008】
以上のように,従来のX線画像診断装置では,術者がX線画像を注視したまま,視線の動きだけで天板及びCアームの動作を立体的にコントロールでき,所望の照
射部位に迅速に移動できる機能を有したものは未だ存在しない。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり,術者が人手を介することなく,容易に所望のX線画像を得ることを可能にし,操作性に優れた放射線画像取得装置及びその制御方法を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0010】

上記の目的を達成するための本発明の一態様による放射線画像表示装置は以下の構成を備える。すなわち,
放射線発生部及び放射線受像部を有し,被検体の放射線画像を取得する放射線画像取得装置であって,
前記放射線発生部及び前記放射線受像部の移動と,前記被検体を載せる検診台の移動の少なくともいずれかにより,前記被検体に対する照射位置を移動する移動機構と,
前記放射線発生部及び前記放射線受像部から取得された放射線投影画像を表示する表示手段と,

前記表示手段によって表示された放射線投影画像に対する,観察者の視線位置を検出する視線検出手段と,
前記視線検出手段で検出された視線位置に基づいて前記移動機構を制御して,前記照射位置を移動する移動制御手段とを備える。
【0011】

上記の目的を達成するための本発明の一態様による放射線画像表示装置の制御方法は,
放射線発生部及び放射線受像部と,前記放射線発生部及び前記放射線受像部の移動と,前記被検体を載せる検診台の移動の少なくともいずれかにより,前記被検体に対する照射位置を移動する移動機構とを有し,被検体の放射線画像を取得する放
射線画像取得装置の制御方法であって,
前記放射線発生部及び前記放射線受像部から取得された放射線投影画像を表示部に表示する表示工程と,
前記表示部に表示された放射線投影画像に対する,観察者の視線位置を検出する視線検出工程と,

前記視線検出工程で検出された視線位置に基づいて前記移動機構を制御して,前記照射位置を移動する移動制御工程とを備える。

【発明の効果】
【0012】
本発明によれば,術者が人手を介することなく,容易に所望のX線画像を得ることが可能な,操作性に優れた放射線画像取得装置及びその制御方法が提供される。【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下,添付の図面を参照して,本発明の好適な実施形態を説明する。実施形態では,被検体の放射線画像を取得する放射線画像取得装置として,X線画像診断装置を例に挙げて本発明を説明する。図1は実施形態によるX線画像診断
装置の構成を示す図である。
【0014】
図1に示されるように,本実施形態のX線画像診断装置は,検査室に設けられ,・天井走行部101によって矢印X-Y方向に移動する天井懸垂部102と,・その天井懸垂部102の先端で矢印A方向に回転し矢印B方向に(アームに沿っ
て)スライドするCアーム103と,
・Cアーム103の一方の端部に保持された放射線発生部としてのX線管104と,・Cアーム103の他方の端部にX線管104と対向して取り付けられ,矢印C方向(X線管104とX線受像部105を結ぶ軸方向)に前進後退する,放射線受像部としてのX線受像部105と,

・被検体を載せ矢印D方向にスライドする天板106を有し,上下(矢印E方向)に昇降する検診台107と,
・上述の各可動部で構成される移動機構(矢印A,B,C,D,EおよびX-Y方向への各部の移動を実現するための機構)とシステム全体を制御する制御装置108と,

・撮像したX線画像を表示する表示装置109と,
・術者の頭部に装着しX線画像と実際の患者の様子を観察することができるととも
に,得られたX線画像を表示するための表示部を提供するシースルータイプのヘッドマウントディスプレイ(HMD110)と,
・HMD110を装着した術者(観察者)の視線位置を検出する視線検出部と,・上記術者(観察者)の検察室における位置を検出するマット上の感圧センサ111とを備えている。
【0015】
シースルー型のHMD110は,ヴァーチャルリアリティの技術分野において公知のものであり,外見的には水中眼鏡型やヘルメット型をしており,術者等の頭部に装着される。本実施形態で採用されるHMD110は,HMDの視線正面方向の
一部,例えば下半分が透明なカバーまたはレンズ等で覆われ,前方の視界が観察可能になっている。そして,この視野の一部(例えば上側)に小型液晶ディスプレイ等の表示装置が配置され,映像信号を受けて画像を表示できるようになっている。【0016】
本実施形態のX線画像診断装置においては,術者は頭部にシースルー型のHMD
110を装着して,HMD110上に表示したX線画像の一部を注視したり,頭部を動かすだけで,所望の照射部位にCアーム103を移動することを可能とする。なお,本実施形態では,X線撮影及びX線透視を総称してX線投影という。【0017】
図11は本実施形態におけるX線画像診断装置の制御装置108の機能を説明す
るブロック図である。天板106に横臥した被検体1にX線管104からX線が照射され,被検体1を透過したX線(透過X線)は,X線受像部105に入射する。X線受像部105は,透過X線をイメージインテンシファイアで光学像に変換し,テレビカメラでその光学像をアナログ信号に変換する。このアナログ信号はA/D変換部1101でディジタル信号に変換され,画像処理部1102に送られる。画
像処理部1102は,送られてきたディジタル画像信号に対して,コントラスト,ガンマ特性変換等の画像処理を施し,ディスク等の記録部1103に記録・収集す
る。その後,デジタル画像信号はHMD110の画像表示部1121に被検体1のX線画像として表示される。このとき,感圧センサ111によって検出された検査室内の術者の位置に基づいて,HMD110の画像表示部1121に表示させるX線画像の回転を制御する。また,HMD110の視線検出部1122で検出された視線情報と,頭部の傾きを検出する頭部方位検出部1123で検出された方位情報に基づいて,位置算出部1104は移動後のX線管104とX線受像部105及び天板106の仮想座標位置と移動量を算出する。なお,頭部方位検出部1123としては,ジャイロセンサなどを用いることができる。移動制御部1105では,上記算出された移動量に基づいて,Cアーム103と天板106が接続されたシステ
ム全体の動作をコントロールする。画像処理部1102,位置算出部1104,移動制御部1105の機能は,コンピュータ可読メモリに記憶されたプログラムを読み出し,CPUが実行することによって達成できるが,ハードウェアによって実現してもよい。
【0018】

次に図2のX線画像診断装置の処理フローチャートを用いて,本実施形態のX線画像診断装置による処理の流れについて詳しく説明する。
【0019】
<ステップS201>
装置の主電源がONされると,ステップS201において,視線検出機能を有す
る視線検出部1122と角度検出機能を有する頭部方位検出部1123を具備したHMD110が起動される。視線検出機能とジャイロセンサなどの角度検出機能を用いて装着者が見ようとする視線位置と頭部の傾きを検出することができる。なお,
視線検出機能と角度検出機能を有するHMD,すなわち,視線検出部1122と頭部方位検出部1123とを有するHMDとしては,
例えば特開平8-328512や,

特開平11-177907に記載された装置を適用することができる。また,検査室のCアーム103および検診台107の周囲の床に敷かれた感圧センサ111から
術者の位置情報を取得する。
【0020】
<ステップS202>
次に,ステップS202においてHMDの画像表示部1121にX線画像を表示する。
【0021】
図3は,HMDに表示する画像の初期設定状態を示した図である。図3の301はシースルー機能を有するHMDを通して装着者が実際の風景を観察可能な表示領域である。図3の302はX線画像であり,画像処理部1102で補正処理がなさ
れた画像データが装着者が実際に見ている表示領域301の風景の上に重ねて表示される。このように,本実施形態の画像表示部1121は,術者(観察者)の頭部に装着が可能なシースルー型のヘッドマウントディスプレイである。そして,このヘッドマウントディスプレイには,シースルー画像の表示領域301の一部に放射線が投影されることによって得られる放射線投影画像であるX線画像302を表示
する表示画面が設けられている。
【0022】
なお,画像処理部1102は,感圧センサ111からの術者の位置情報に基づいてX線画像302の回転処理を行う。図14は,その具体例を示すものである。図14(a)に示すように,術者が天板106の下側(患者の下方)に位置する場合
には,実際の患者の方向とX線画像の表示方向が合っているので,画像処理部1102は,X線画像の回転処理を実行しない。また,図14(b)に示すように,術者が天板106の左側に位置する場合には,画像処理部1102は,表示されるX線画像302の90度の右回転処理を行い,実際の患者の方向に合わせる。また,図14(c)に示すように,術者が天板106の右側に位置する場合には,画像処
理部1102は,表示されるX線画像302の90度の右回転処理を行い,実際の患者の方向に合わせる。

このような処理により,術者によるX線画像と実際の患者の患部の位置把握が容易となる。
【0023】
<ステップS203>
次にステップS203において,視線検出部1122は,HMD装着者の視点を抽出し,図3のX線画像302を注視したかどうかを判定する。
【0024】
以下に,HMD装着者がX線画像302を注視したか否かの判定の方法について図4を用いて詳しく述べる。

【0025】
まず,視線検出部1122により,HMD装着者の視線位置の計測を行う。視線位置の計測は定期的に繰り返し行われ,視点を図4の401,402,403のように検出したとする。視点の位置座標を(X1,Y1)(X2,Y2)(X3,Y3),


検出した時の相対時刻をt1,t2,t3とし,相対時刻の関係がt1<t2<t3に
なっているとする。この場合,視点がX線画像302の表示領域内に,連続して所定の時間以上存在する場合に,X線画像が注視されたとみなし,処理を次のステップ204に移行させる。また,視点がX線画像302の領域内に連続して所定時間以上存在しなかった場合,或いは,X線画像302の領域外に視点が検出された場合は,X線画像が注視されていないと判断され,S203の処理が繰り返される。
【0026】
<ステップS204>
上述のステップS203によりX線画像が注視されていると判断された場合,照射位置を移動制御するステップに移行する。視線検出部1122と頭部方位検出部1123は,HMD110の装着者の視点位置と頭の傾きを抽出する。図6は,X
線画像302の部分領域と,その領域内で視点が検出された場合に移動する相対位置の関係を示した図である。

【0027】
領域Aで視点が検出された場合はX線管104とX線受像部105の天板106(被検体1)に対する2次元的な移動は行わない。それ以外のB,C,D,E,F,G,H,I領域で視点が検出された場合は,それぞれ図6の一覧表に示した方向に移動する処理が行われる。たとえば,図7の701に示す領域Hに視点が検出された場合には,造影剤やカテーテルがさらに現在の位置から702で示すベクトル方向に移動していくことが想定される。従って,照射部位を現在の位置よりも702で示すベクトル方向に移動させる処理を行う。これにより,照射部位は図8の801から802に移動することになる。より具体的には,図1の天井懸垂部10
2をX方向にx1,Y方向にy1だけ移動させることにより,図8の803に示すベクトル量の移動が可能になる。具体的には,視線検出部1122は,視点の検出を一定の時間ごとに繰り返し行う。
そして,
視点がどの領域で検出されたかにより,
移動する方向が決定され,移動制御部1105により,予め定められた移動量で2次元的な照射位置が移動する仕組みになっている。このように,移動制御部110
5は,視線検出部1122が検出した視線位置に基づいて,2次元的な照射位置を制御する。
【0028】
また,図5に示されるように,X線画像302の周囲に矢印アイコン501~508を表示し,この矢印アイコンを視線入力する方法でもよい。この場合は,X線
画像302と矢印アイコン501~508を画像処理部1102において画像合成し,HMD110の画像表示部1121に表示する。どの矢印アイコンが視線で選択されたかによって移動方向が決まる。また,移動制御部1105は,矢印アイコンが選択されるごとに予め定められた移動量で照射位置の移動制御を実行する。【0029】

次に,HMD110を装着した術者が,頭を左右上下に動かした場合のCアーム103の移動方向について図9を用いて説明する。HMD110に取り付けたジャ
イロセンサなどの方向センサを具備した頭部方位検出部1123は,図9の901~905に示すような頭部の傾きを検出する。901のように頭の傾きがほぼまっすぐのときは,Cアームの回転移動は行わない。902,903のように,頭の傾きが左右に傾いた場合は,
図1の天井懸垂部102の先端で矢印A方向に回転する。
更に,904,905のように頭の傾きが前後に傾いた場合は,Cアームを矢印B方向にスライドさせる。
【0030】
よって,それぞれの頭の動きに対応したCアーム103の回転方向は以下のようになる。
・901(傾きなし)

・・・回転移動なし

・902(頭部が右に傾いている)

・・・A時計回り

・903(頭部が左に傾いている)

・・・A反時計回り

・904(頭部が後ろに傾いている)
・・・B下方向に回転
・905(頭部が前に傾いている)
・・・B上方向に回転

X線画像302を注視していると判定された状態で,頭部を所定の時間(S秒)以上,上記いずれかの方向に傾けた場合に,その傾けた方向に従って,上記901~905のどれか一つの移動が選択されたとみなす。このとき,基本移動量をβ度とすると,回転移動の移動量は(首を傾けている時間÷S)×βとなり,傾ける度に基本移動量だけ移動する。このように,移動制御部1105は,頭部方位検出部1
123が検出した頭部の傾きに基づいて照射角度(照射方向)を制御する。【0031】
また,本実施形態ではX-Y方向の移動と,回転移動を同時にコントロールすることを特徴としている。従って,術者が図7の701を注視しながら,頭部を図9の903のように左に傾けた場合は,図8の803に示すようなのベクトル移動を
行いながら,天井懸垂部102の先端で矢印A方向に反時計回りにCアームが回転する。このようにして,術者は移動するX線画像を観察しながら,照射部位の移動
や照射角度をリアルタイムにコントロールすることが可能になる。【0032】
<ステップS205>
ステップS205において,位置算出部1104は,Cアームおよび天板の相対位置を算出する。
【0033】
図10はCアーム103と天板106の相対位置を示した図である。Pを中心とする3次元の仮想空間にCアーム103及び天板106の位置座標を記録していく。視線及び頭部の傾きの検出後Cアーム103や天板106の移動量が算出されるの
で,移動後の位置座標を算出し記録していく。図10において,X線受像部105のP1~P4の相対位置と,X線管104のQ1~Q4の相対位置と,天板106のT1~T4及びS1~S4の相対位置を算出する。天板106の上部の四隅T1~T4は,天板106上に被検体1が横たわったときを想定し,予め被検体の高さを含んだ座標位置になっている。これによりバーチャルな3次元空間において,リ
アルタイムにCアーム103及び天板106の現在の位置を確認することができる。【0034】
本実施形態のGUIにおいては,装置のバーチャルな座標位置を表示した例は説明していないが,例えば図10のようなコンピュータグラフィックを作成し,HMD110上にリアルタイムに表示することは充分に可能である。すなわち,X線管
104,X線受像部105及び天板106の3次元空間における位置情報に基づいて,それらの位置関係を3次元仮想空間により仮想表示するようにしてもよい。これにより,例えば,装置の動作のシミュレーションを目的とした表示や,視線入力の練習を目的とした表示において,これら各点の相対位置をユーザに提示することも可能になる。

【0040】
<ステップS208>

一方,ステップS206で接触の危険がないと判断された場合には,ステップS208において,移動制御部1105は,ステップS205で算出された移動量に基づいて移動機構を制御し,Cアーム103および天板106を移動させる。すなわち,移動制御部1105は,視線検出部1122で検出された視線位置と頭部方位検出部1123で検出された術者の頭部の傾きとに基づいて移動機構を制御する。これにより,術者が意図する照射位置,照射方向によるX線投影画像が取得され,画像表示部1121に表示される。
【0041】
このように本実施形態のX線画像診断装置においては,術者が装置を直接触らな
いで,X線画像を注視したり頭部を動かしたりすることで所望する位置にコントロールすることが可能になる。
【0042】
以上のように,
本実施形態のX線画像診断装置によれば,
シースルー型HMDに,
実写像とX線画像の両方を表示するとともに,X線画像を注視する術者の視線位置
に応じて投影部位(照射部位)を移動させる。このため,術者は,HMDにおいて,例えばカテーテル注入部(実写)とカテーテル先端部(X線画像)の両方を観察できる。また,X線画像上のカテーテル先端部を注視することにより,カテーテルの先端部の移動に応じて自動的に照射部位が移動するので,術者は移動機構の操作から解放される。

【0043】
以上説明したように,本実施形態のX線画像診断装置によれば,シースルー型HMDに表示されるX線画像の映像を注視しながら天板やCアームの動きを制御することができるので,治療作業の中断が行われずに効率のよい診断や治療が可能になる。また,これまで専門の技師でなければできなかった複雑なCアームの移動操作
が,術者一人の感覚的な操作だけで可能になるので,少人数でも安全で迅速な診断が可能になり,コスト削減にも効果がある。

【0044】
また,術者はフットスイッチなどの操作のために注意を払わなくてもよいので,格段に診断や治療にへの集中力が高まり,被検者の人命にかかわる装置の安全性が飛躍的に向上することになる。
【0046】
なお,Cアーム103や天板106の移動は上記実施形態に限られるものではない。例えば,検診台107の天板106を起倒動,左右動,長手動,上下動及びローリング運動が可能なように構成しても良い。視線位置と頭部の傾きの検出に応じた照射位置,照射方向の変更はCアーム103または天板106の移動,またはそ
れらの組み合わせにより実現されればよい。

【図1】

【図9】

【図10】

【図11】

【図14】

(別紙

被告作成図面1)

トップに戻る

saiban.in