判例検索β > 令和2年(行ケ)第10084号
審決取消請求事件 商標権 行政訴訟
事件番号令和2(行ケ)10084
事件名審決取消請求事件
裁判年月日令和3年2月25日
裁判所名知的財産高等裁判所
権利種別商標権
訴訟類型行政訴訟
裁判日:西暦2021-02-25
情報公開日2021-04-08 14:03:02
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令和3年2月25日判決言渡
令和2年(行ケ)第10084号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

令和2年12月16日
判決原告
株式会社セフト研究所

原告株
両名訴訟代理人弁護士

鮫島正洋高橋正憲篠田淳郎被告特
同指定代理人

式許会庁綾社長空調服官郁奈子冨加出浩子石1美小主澤塚利恵文
特許庁が不服2017-14295号事件について令和2年4月30日にした審決を取り消す。

2
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求

主文と同旨
第2

事案の概要

本件は,商標登録出願拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,商標法3条1項3号該当性及び同条2項該当性である。1
商標登録出願及び特許庁における手続の経緯等
(1)原告株式会社セフト研究所(以下原告セフト研究所という。)は,平
成28年3月18日,指定商品を第25類被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴として,空調服の文字を標準文字で表してなる商標(以下本願商標という。)の商標登録出願(商願2016-030424号。以下本願という。)をし(甲78,乙1),原告株式会社空調服(以下原告空調服という。)は,同年11月7日付けで,本願について共同出願人となった。
(2)原告セフト研究所及び原告空調服(以下,併せて原告らといい,原告ら又はそのうちの一社を選択的にいう語として原告各社の語を用いる。)は,本願について,平成29年6月22日付けで拒絶査定(甲83。以下本件拒絶査定という。)を受けたため,同年9月27日,これに対する不服審判の請求(不服2017-14295号。以下本件審判請求という。)をした。また,原告らは,同日までに,本願商標について,指定商品を第25類通気機能を備えた作業服・ワイシャツ・ブルゾン(以下本願指定商品ということがある。)とする手続補正をした(甲79の1,甲80,乙2)。
(3)特許庁は,令和2年4月30日,

本件審判の請求は,成り立たない。

との審決(以下本件審決という。)をし,その謄本は,同年5月29日に原告らに送達された。
2
本件審決の理由の要点
(1)商標法3条1項3号該当性について

商標法3条1項3号の趣旨について

商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは,そのような商標が取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであ
るから,特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解されるところ,この趣旨に照らすと,当該商標が指定商品の品質等を表すものとして,審決時に需要者,取引者に広く認識されている場合はもとより,将来を含め,需要者,取引者にその商品の品質等を表すものと認識される可能性があって,これを特定人に独占使用させることが公益上適当でないと判断されるときは,その商標は,同号に該当すると解するのが相当である。

本願商標の商標法3条1項3号該当性について

本願商標の構成中,
空調の語は空気調節の略の意味を,
服の語は身につけるものの意味を有するいずれも平易な語であることから,空調服の構成文字全体からは,空気を調節する服(空調機能を備えた服)程の意味合いを容易に認識させるものである。
そして,インターネット情報や新聞記事情報等において,空調服の文字が,本願商標の指定商品の分野並びに指定商品を取り扱う小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(以下小売等役務という。)の分野において,上着内に送風機を備え,服の中に風を取り入れ体の熱を冷ます機能を有する商品(ファン付き作業着)の意味合いで使用されている実情が見受けられる。加えて,これらの空調服の文字の使用状況には,原告各社及び原告各社のライセンスに基づき使用している業者(以下ライセンシーといい,原告各社と併せて原告各社等という。)の使用に係るものが含まれているとしても,作業服の種類としての使用や,他人による使用も多数見受けられる。
このような状況からすると,本願商標を指定商品通気機能を備えた作業服・ワイシャツ・ブルゾンに使用するときは,空気を調節する服(空調機能を備えた服),すなわち,その商品の品質を表示するものとして認識されるというのが相当であり,自他商品の識別標識としては機能し得ないものというべきであるから,
本願商標は,商標法3条1項3号に該当する。
(2)商標法3条2項該当性について

本願商標の使用状況について

原告各社は,原告各社が製造,販売するファン付き衣服(以下原告商品という。)について,本願商標を平成16年から現在に至るまで継続的に使用していると主張するが,その事実を客観的に確認できないことに加え,本願商標である空調服の文字が,本願商標の指定商品の分野及び指定商品を取り扱う小売等役務の分野において,上着内に送風機を備え,服の中に風を取り入れ体の熱を冷ます機能を有する商品(ファン付き作業着)の意味合いで使用されている実情がある。また,原告各社が主張する原告商品の販売数及び売上高を立証する証拠の提出もなく,実際の売上高が客観的に立証されたものとみることはできない。さらに,原告各社が主張する市場シェアについて,証拠(甲50の4,甲72)で示された数値は,
メーカー各社の自己申告に基づいて集計が行われているもので,
集計方法等が明らかでなく,推計にとどまるものといわざるを得ない。そして,原告各社において,複数県の企業に商品を納品している事実(甲77)や,大手ゼネコンなどのユーザー企業に直接商品を納入する販売形式を採っているという事情(甲55,56)はうかがえるものの,具体的な販売数量や売上高は証明されていない。

需要者の本願商標の認識度について

原告各社が主張する自社ウェブサイトやインターネットショッピングサイトにおける広告の回数や規模,
商品カタログ,
折込みチラシ及びダイレクトメールの作成・
頒布の事実,頒布時期,頒布数及び頒布先を客観的に示す証拠は見いだせない。また,原告各社が,令和元年7月15日から同月21日に,JRの主要駅構内に設置された大型ビジョンにおいて行った広告(甲70の26~28)については,7日間という短い期間である上,広告上に原告各社に係る記載が確認できず,当該広告に接する者が空調服を付した商品を原告各社が取り扱っていると認識する
ことは困難であるから,空調服が原告商品に係る商標であることが知られているとはいえない。
加えて,原告各社が主張する展示会への出展について,証拠(甲70の4・8・11,甲71の10・22・43・47・57・118・120,甲73の27,甲74の141)からは,展示会への出展の事実は確認できるものの,当該展示会において,本願商標がどのように使用され,どのように来訪者の目に触れたのか,具体的な展示の内容が不明であるものが多い上,展示会自体の規模や原告各社の展示ブースへの来訪者数が明らかにされていないことから,これらの展示会への出展から,本願商標に係る需要者,取引者の認識度を推し量ることはできない。さらに,原告各社は,人気タレントを起用したウェブCMを平成28年8月に公開し,当該CMを全国のユナイテッド・シネマ,シネプレックス30劇場(南古谷・上里・久山・あしかが・熊本の5劇場を除く。)において,平成29年8月11日から同月26日の間に15秒のスクリーン広告として放映したことがうかがえるものの(甲32,甲76の8),当該15秒のCM動画は,映画館での放映用に編集されたものであって,実際に映画館で放映されたCMの全容が不明であることに加え,上記期間中に,30の劇場において何人程度の鑑賞客に向けてどのくらい放映されたのか明らかでなく,需要者,取引者が,原告商品を表すものとして本願商標を認識するかどうかについて判断することができない。
また,
原告各社が主張するテレビ番組における原告商品の紹介について,(甲証拠
39の1・2,甲40,甲71の11・12・42・141,甲75)から,原告商品が紹介されたテレビ番組の視聴者数は確認できない。
そして,原告商品は,平成29年4月1日時点において,各種の雑誌や新聞に合計148回掲載され(甲41,42,100~104,108,121,128~133[枝番を含む。]),以後も現在に至るまで雑誌,新聞,インターネット上のメディアにおいて,本願商標が原告商品か企業名を表すものとして154回程度掲載されている
(甲71の1~10・13~41・43~140・142~161)
が,平成16年以降現在までの15年の期間との関係からみて決して多い数とはいえない。
一方で,前記のとおり,インターネット情報や新聞記事情報等において,空調服の文字が,原告各社以外の者によって,本願商標の指定商品の分野及び指定商品を取り扱う小売等役務の分野において,上着内に送風機を備え,服の中に風を取り入れ体の熱を冷ます機能を有する商品(ファン付き作業着)の意味合いで多数使用されている実情がある。

公的機関からの表彰や認定について

平成29年12月の空調服の開発・商品化と普及を理由とする地球温暖化防止活動環境大臣表彰の技術開発・製品化部門の受賞(甲43,44)や,公益社団法人全関東電気工事協会からの推奨品としての認定(甲58)については,どのような基準で表彰,認定対象を選定するのか,また,これらに表彰,認定されることと,本願商標の周知性がどのように結びつくのか明らかにされていない。エ
小括

上記ア~ウによると,原告各社は平成16年から本願商標をその指定商品に使用しているといえるものの,その具体的な使用実績,使用期間,売上高,市場シェア及び使用規模が客観的に証明されていないこと,広告宣伝においても,広告の回数や規模,商品カタログ,折込みチラシ及びダイレクトメールの作成・頒布の事実,頒布時期,頒布数及び頒布先が確認できないこと,JRの主要駅構内における広告では本願商標と原告各社の関係性の表示が確認できないこと,展示会への出展,CMの映画館での放映及びテレビ番組等での紹介においては,その影響を客観的に推し量るための数値が示されていないこと,さらには公的機関からの表彰や認定における本願商標の周知性との関連性が不明であることから,本願商標が,原告各社による使用の結果,需要者,取引者が原告各社の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものであるということはできない。
したがって,本願商標は,商標法3条2項の要件を具備しない。

3
原告らの主張する審決取消事由
(1)取消事由1―商標法3条1項3号該当性に関する認定判断の誤り
次のとおり,本願商標は,商標法3条1項3号に該当しない。しかるに,本件審決は,この点について誤った認定・判断をしたもので違法である。ア
判断に係る規範について
(ア)商標法3条1項3号に該当する商標の類型としては,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないもの(以下独占不適商標ということがある。)と,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないもの(以下自他商品識別力欠如商標ということがある。)とがあるから,本願商標が同号に該当するか否かは,独占不適商標及び自他商品識別力欠如商標に該当するか否かという観点から判断されるべきである。
(イ)被告は,将来の認識可能性を含めて判断すべき旨を主張するが,およそ予測のつかない将来についてまで登録要件を満たす必要があるならば,登録要件を満たす商標などないに等しい。また,仮に,将来のことが加味されるとしても,原告らは,既に保有している空調服関連の登録商標を根拠にして,空調服の誤用をしているメディア,通販サイトに対して注意を促しており,注意を受けたメディア等(日本経済新聞,テレビ東京,フジテレビ,電機新聞,農村ニュース,日経XTECH)は,空調服が原告各社の商品を表す商標であるとの訂正を行っている(甲219,289,344,甲345の1~5)。このように,空調服の商標が原告各社の商品名を表す商標であることは,
取引界に浸透しつつあり,
将来についても,本願商標を原告らに独占させることが公益上適当でないということはできない。

本願商標が独占不適商標に該当しないこと

次のとおり,本願商標は,ファン付き作業服の取引において,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものとはいえず,特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものともいえない。(ア)ファン付き作業服の製造業者が自社商品に空調服との標章を用いていないこと
原告各社は,原告各社の代表者であるA(以下原告ら代表者という。)がファン付き作業服を開発し,平成16年に空調服の販売を開始して以来,ファン付き作業服における圧倒的なシェアと知名度を誇り,本願商標を長年にわたって独占的に使用してきた。平成27年以降になって,ファン付き作業服(エレクトリックファンウェア。EFウェア)の後発品がみられるようになってからも,依然として,原告商品は,ファン付き作業服市場のトップシェアを占めてきた。そして,原告各社等は,自社のファン付き作業服について積極的に空調服との商標を用いている。
これに対し,原告各社等以外に,ファン付き作業服の商品名として空調服を用いている例は確認されていない。例えば,令和元年のファン付き作業服の主要なメーカー(甲72の1)は,全て,それぞれ独自の商品名を用い,自社ブランドについて商標登録出願をしており,ウェブサイトやカタログにおいて,空調服との文字を用いていない(甲172~188)。
これは,ファン付き作業服は服とファンが取外し可能であるところ,メーカー各社においては,不良や事故の発生を防ぐため,使用者には自社ブランドの服と自社ブランドのファンやバッテリーとを適切に組み合わせて使用してもらう必要があり(甲49の2),他社品との差別化を図っていることによると考えられる。また,空調服は,原告空調服の会社名と同じであるから,メーカー各社においては,自社の商品に空調服と使用すると原告空調服の宣伝になってしまうおそれがあるため,これを避けているものと考えられる。
(イ)原告各社が空調服に関連する登録商標を複数保有していること等原告各社は,別紙1の表に示すように,商標登録第4871177号,第571
5570号,第5774691号などのようにクーチョーフクとの称呼が生じる登録商標を始め,ファン付きの商品に関する商標を複数保有しており,他社が商品に空調服との名称を付けることは,原告各社の商標権の侵害となるおそれがある。特に,原告各社は,電池,ケーブル等の指定商品について,空調服の文字に係る商標登録(商標登録第6072017号)をしているから,服,ファン及びバッテリーが一体となって機能するファン付き作業服において,事実上,原告各社以外の者が空調服という商標を用いることはできないと解される。したがって,現在のみならず,将来においても,他のファン付き作業服メーカーが,空調服との名称の使用を欲することは考えられない。
(ウ)本件審決が指摘する事実からも第三者が空調服との商標を自他商品識別標識として使用していることは確認できないこと
本件審決が指摘する事実からも,原告各社等以外の者が空調服との標章を商品名などの自他商品識別標識として使用していることは確認できない。この点,ネット通販サイトにおいては,数社から販売されているファン付き作業服の中で原告商品の認知度が高いため,これらの代表的な存在として,空調服の表記が用いられているものにすぎず,同表記が原告商品以外の商品の自他商品識別標識として用いられているわけではない。このような通販サイトにおける商標の使用態様は,いわゆるSEO(SearchEngineOptimization)対策として,周知著名な登録商標についてよくみられるものである。消費者がその周知著名商標を検索ワードとして検索を行うと,その周知著名商標が載っているウェブページがヒットするからである(その例として,甲318,319)。

本願商標が自他商品識別力欠如商標に該当しないこと

次のとおり,本願商標は,通気機能を備えた作業服という商品の品質等を表示するものではなく,自他商品識別力欠如商標に該当しない。
(ア)本願商標が商品の品質等を表す商標ではないこと
a
本願商標を分離して解釈することができないこと

空調服という語は,原告各社が独自開発した,それまで世の中に存在しなかった商品に対し,原告各社が付した造語であり,原告各社による開発まで,当該商品も空調服という語も世の中に存在していなかった(甲189)。この点,空調の語は,

空気調節の略。エアーコンディショニング。

を意味するとされる(甲190)が,エアーコンディショニングの語は,

室内の空気の温度。湿度・清浄度などの調節。

を意味するとされ(甲191),空調
は,室内の空気調整に対して使用される語であって,服の語とは観念的に親和性に乏しく,両語を結合することにその必然性がない。したがって,原告各社が生み出した空調服の文字構成には強い独創性があり,かつ,空調という語と服という親和性の乏しい語とを結合させて意味付けることは困難である。また,空調服の語は,漢字3文字から構成される短い用語で,クーチョーフクというように一連一体の語として発音され,切れ目がないから,ひとまとまりの造語として,需要者,取引者に認識されてきた。したがって,本願商標の自他商品識別力の有無を検討するに当たり,空調と服とを分離して検討することはできない。
そして,空調服との語を,ひとまとまりの語として正しくみた場合,その構成自体から特段の観念は生じず,ファン付き作業服や,通気機能を備えた作業服といった観念は,一切生じない。
しかるに,空調服を分離して解釈した上で,空調服が空気を調整する服程の意味合いを容易に認識させるとした本件審決の認定は,誤りである。b
仮に分離して解釈しても,品質を表すものとはいえないこと

仮に,空調服を空調と服とに分離して解釈したとしても,空調
の意味からすると,空調服が,通気機能を備えた作業服の品質を表すものとはいえない。
空調及びエアーコンディショニングの上記aの意義のほか,電気機械器具品質表示規程(平成29年3月30日消費者庁告示第6号)により,ヒートポンプ型の冷暖房空調機器をエアーコンディショナーと称するものと定められ,扇風機やファンとエアコンが明確に区別されていることからして,空調は,温度,湿度,清浄度などを調節することやそのための機器を意味し,扇風機やファンのような単に風を送るだけの機器を空調とはいわない。
したがって,空調に服を結合させた語は,温度調節機能を有するエアコンの付いた服を表すと解するのが合理的である。
しかるに,通気機能を備えた作業服という商品は,エアコンが付いた服ではないから,空調服が,通気機能を備えた作業服という商品の品質等を表す商標ではないことは明らかである。
c
本件審決も空調機能を備えた服との意味を認定していること

本件審決は,空調服の構成文字全体からは空気を調節する服(空調機能を備えた服)程の意味合いを容易に認識させるものであるなどと認定するところ,空調機能とはまさにエアコン機能のことをいうから,本件審決も,空調服がエアコン機能を備えた服という意味合いを生ずると認定しているといえる。そして,上記のように,エアコンとファンは明確に異なるものであるから,エアコン機能を備えた服という意味合いを生ずる空調服が,ファン付き作業服(通気機能を備えた作業服)という商品の品質を表す商標ではないことは明らかである。(イ)空調服がファン付き作業服を指す標章として一般的に使用されるものではないこと
上記のとおり,空調服との標章は,原告各社等以外のファン付き作業服メーカーには一切使用されておらず,一般的に使用される標章ではない。むしろ,ファン付き作業服を指す用語としては,EFウェア,ファン付き作業服といった語が定着している(甲74の1~199)。最近でも,繊維ニュース,繊研新聞という業界専門紙が,引き続き,一般名称として,EFウェア,電動ファン付ウェアといった用語を用いており(甲192の1~99),読売新聞といった全国紙や地方紙も同様である(甲192の100~109)。また,日本建築学会誌等の学術論文においてもファン付き作業服の一般名称が使用されている(甲192の110~113)。さらに,ユニフォームを着用して業務に当たる社員・職員が在籍し,ユニフォームによる猛暑対策が必要な労働環境であると考える企業・官公庁・団体のユニフォーム担当者(すなわち需要者)を調査対象としたものと考えられる,公益財団法人日本ユニフォームセンターによる調査においても,電動ファンつきウェア,EFウェアの語が用いられている(甲192の114)。
(ウ)本件審決が指摘する事実等によっても自他商品識別力が否定されないこと
a
本件審決が指摘する一部のネット通販サイトにおける空調服の

使用例については,数社から販売されているファン付き作業服の中で原告商品の認知度が高いため,これらの代表的な存在として,空調服の表記が用いられたものにすぎず,同表記が原告商品以外の商品の自他商品識別表示として用いられているわけではない。
b
また,ネット通販は,ファン付き作業服の取引のごく一部を占める
にすぎず,ネット通販サイトにおける記載をもって需要者,取引者の認識を判断することはできない。
ファン付き作業服を含む作業服の分野では,需要者の大多数を占める法人が従業員に配布するために作業服を一括購入することが一般的であり,販売店やメーカーから企業等の法人への直接納入が大多数である。原告各社においても,空調服の売上げの●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●にすぎない(甲243の1~3の各1・2)。
また,作業服は,危険を伴う肉体労働で使用するもので,フィット感,使用感を確かめてから購入することが購入者にとって重要であって,ネット通販での購入になじまないため,
個人向けの作業服販売において,
大多数は実店舗での販売であり,
ネットを通じた販売はごく一部である(甲169~171,328)。ファン付き作業服は,ファンを通して取り入れた空気を服全体に行き渡らせて排出することにより,汗を気化して体温を下げるという商品であり,通常のサイズよりもワンサイズ大きめのものを着用することによって効果が最大限発揮される(甲329)。そのため,実際に試着しないとベストサイズが分からないが,ネット販売では試着をすることができない。したがって,ファン付き作業服は,作業服の中でも特にネット販売になじまない商品である。
よって,ネット通販サイトにおける記載をもって,ファン付き作業服の需要者,取引者の認識を判断することはできない。ファン付き作業服の取引の大多数が法人向けの直接納入であることに鑑みると,ファン付き作業服の需要者,取引者の認識を検討するには,ファン付き作業服メーカーのカタログ,業界紙,展示会等が重要である。
c
被告が指摘する空調服の使用例については,取引の実情からす

るとごく一部にすぎない個人・零細業者向けネット通販における誤用例を切り取ったもので,
ファン付き作業服の取引の実情を反映したものではないものや,空当該調服が原告商品を指しているものが含まれている。また,日本経済新聞などのメディアについては,順次,空調服が原告らの商標であることについての訂正がされている。さらに,特許出願明細書や実用新案登録出願の明細書に記載する内容は,各出願人個人の自由であり,出願人がファン付き作業服の需要者や取引者であるとは限らず,需要者,取引者の認識を表すなどとはいえない。したがって,被告が指摘する使用例は,本件審決時の需要者,取引者の認識状況を反映したものとはいえない。
(2)取消事由2―商標法3条2項該当性に関する認定判断の誤り次のとおり,本願商標は,原告商品の商標として,ファン付き作業服の需要者,取引者に周知となっていたもので,商標法3条2項に該当する。しかるに,本件審決は,これについて誤った認定・判断をしたもので違法である。

判断に係る規範について
商標法3条2項の趣旨は,特定人が特定の商標をその業務に係る商品の自他識別標識として他人に使用されることなく永年独占排他的に継続使用した実績を有する場合には,当該商標は,例外的に自他商品識別力を獲得したものということができる上に,当該商品の取引界において当該特定人の独占使用が事実上容認されている以上,他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請は低いということができるから,当該商標の登録を認めようというものと解される。そして,ある標章が同項所定の使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものに該当するか否かは,出願に係る商標と外観において同一とみられる標章が指定商品とされる商品に使用されたことを前提として,その使用開始時期,使用期間,使用地域,使用態様,当該商品の販売数量又は売上高等,当該商品又はこれに類似した商品に関する当該標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断されるべきである。イ
本願商標の使用開始時期,使用期間,使用地域及び使用態様について(ア)使用開始時期及び使用期間について

原告各社は,
本願商標を,
平成16年から現在まで約16年にわたって継続的に,
ファン付き作業服に使用している。
原告商品は,平成11年頃に独自に開発が開始され(甲32,甲42の1,甲100,101,甲128の1~13,甲129の1~24),平成16年に空調服との名称で市場に投入され(甲32,甲42の1,甲100,101,103,甲128の1~13,
甲129の1~24),
自社ウェブサイト,
ネット通販サイト,
カタログ等に掲載され,販売が継続され(甲13,32,甲33の1~2,甲34の1~4,甲35,36,甲42の1,甲100,101,105,甲128の1~13,甲129の1~24),広く知られることとなった。平成16年当時,着用することにより体温を冷やすファン付き作業服という分野は存在せず,原告各社が原告商品を市場に投入することで,当該分野が確立された。その後,平成27年頃まで同タイプの商品は登場せず,原告各社は,約10年間以上にわたり市場を独占してきたもので(甲32),その後も,ファン付き作業服のトップシェアを維持しながら,原告商品に本願商標を継続的に使用している。
(イ)使用地域及び使用態様について
原告各社は,原告商品を全国に販売し,本願商標を日本全国で使用していたもので,使用態様は,次のとおり,原告商品のカタログにおける使用,原告商品へのタグにおける使用,新聞・雑誌への広告,展示会への出展など様々である。a
カタログ

原告各社は,平成17年から現在に至るまで,毎年,見やすい位置に株式会社空調服との社名を記載し,原告商品の商品名やブランド名として空調服との標章を記載した原告商品のカタログ(甲10,13,68,105,甲193の1~7)を製作し(甲115,194,320,甲330の1~4,甲331の1~20),多数の部数のそれらのカタログを全国的に頒布している(甲194,甲332の1~7)。
b
商品外観・タグ

原告各社は,本願商標を,原告商品の商品タグに見やすいように表示して納品している(甲55,56,甲107の1・2)。
c
新聞,雑誌等における宣伝広告

原告各社は,原告商品の宣伝広告として,新聞や雑誌等に広告を掲載してきた。原告各社は,電気新聞,農機新聞,日刊工業新聞,鉄鋼新聞,繊維ニュース,繊研新聞などの,ファン付き作業服の需要者,取引者が多く購読している電気,機械,農業,建設,鉄鋼,繊維関連の専門日刊紙や専門雑誌に集中的に広告を出してきたほか,近年,日経ビジネス,Wedge,読売新聞といった購読者数の多い一般向けの新聞,雑誌にも積極的に広告を出している。その宣伝広告の態様は,例えば,株式会社空調服と社名を表示し,原告商品を着用したモデルの写真に重ねて
空調服で熱中症対策
との宣伝文句を記載し,
さらに,見やすい位置に,原告商品を表すマークとともに空調服と大きく表示するものである。そして,原告各社は,平成17年から平成27年までの間,原告商品の広告費に毎年数百万円規模の額を費やし(甲113),その後,宣伝広告を爆発的に増やしている(甲247の1~6)。
原告各社の新聞,雑誌等における宣伝広告の状況は,次のとおりである。(a)平成27年~平成29年
平成27年

甲46の4

平成28年

甲42の67

平成29年

甲6,甲42の71,甲48の1~8・10・11・14~16・
18・19・24~28・41・44・48・52・53
(b)平成30年


繊維業界向け専門紙

繊維ニュース

1月11日(甲49の2),8月9日(甲49の56),1

0月22日(甲71の72)


建設,電気,農業,物流向け業界専門紙

電気新聞

6月8日(甲49の20)
,6月15日(甲49の26)
,6月2

8日(甲49の32)
,7月4日(甲49の36)
,7月11日(甲49の37)
,7
月18日
(甲49の41)7月25日

(甲49の47)8月3日

(甲49の55)

9月25日(甲70の15)
,11月16日(甲70の18)
農機新聞

5月15日(甲49の10)
,6月19日(甲49の23)
,7月

3日(甲49の35)
,7月17日(甲49の40)
,7月24日(甲49の45)

10月9日(甲70の16)
建設の安全11月号(甲70の17)
日刊建設産業新聞
日本物流新聞


7月3日(甲49の34)

7月25日(甲49の49)

その他の業界専門紙

積算資料

4月号(甲49の7)
安全と健康

5月号(甲49の8),6月号(甲49の15),7月号(甲

49の29)
日刊工業新聞

4月23日(甲49の9),5月23日(甲49の13),

6月21日(甲49の28)
鉄鋼新聞

5月23日(甲49の12),6月26日(甲49の31),7

月25日(甲49の46)
朝雲

7月12日(甲49の38)

商経機械新聞


7月26日(甲49の51)

雑誌

日経ビジネス
Wedge

8月27日号(甲71の65)
9月号(甲71の62)

(c)令和元年(平成31年)


繊維業界向け専門紙

繊維ニュース

6月18日(甲72の1),8月8日(甲70の34),1

1月29日(甲195)
ユニフォームプラス
繊研新聞


5月号(甲72の3),10月号(甲196)

1月9日(甲70の20),6月17日(甲70の12)

建設,電気,農業,物流向け業界専門紙

電気新聞

1月4日(甲70の19),7月29日(甲70の29),8月

29日(甲70の35)
広報とらっく
建設の安全

5月1日号(甲70の24),5月20日号(甲70の5)
3月号外(甲70の21),4月号(甲70の23),5月号

(甲70の10),6月号(甲70の7),7/8月号(甲70の3)③

全国紙・一般紙

読売新聞

7月27日(甲70の30),7月28日(甲70の32),7

月31日(甲70の33),8月28日(甲197)
日本経済新聞


その他の業界専門紙

安全と健康
安全衛生⑤7月11日(甲71の131,甲198),5月号(甲70の9),7月号(甲71の13)図書・用品カタログ2019(甲70の22)
雑誌

モノ・マガジン5月16日号
(甲71の44)7月16日号

(甲70の2)

9月16日号(甲70の35)


日本全国の主要都市にあるJR各駅の構内の大型ビジョン(JR池袋駅,新
宿駅,渋谷駅,東京駅,秋葉原駅,品川駅,恵比寿駅,上野駅,赤羽駅,巣鴨駅,吉祥寺駅,八王子駅,国分寺駅,三鷹駅,横浜駅,桜木町駅,浦和駅,大宮駅,船橋駅,高田馬場駅,大阪駅,新大阪駅,三ノ宮駅,京都駅,天王寺駅,名古屋駅の構内に設置された大型ビジョン)

7月15日~21日(甲70の26~28,甲

199の1・2,甲321の1・2)
(d)令和2年


繊維業界向け専門紙

繊維ニュース
繊研新聞


4月24日(甲200)

1月10日(甲201)

建設,電気,農業,物流向け業界専門紙

農機新聞

4月9日(甲202の1),4月14日(甲202の2),4月

21日(甲202の3),5月12日(甲202の4),5月19日(甲202の5),5月26日(甲202の6)
広報とらっく
電気新聞


5月27日(甲204)

その他の業界専門紙

安全と健康


5月20日(甲203)

5月号(甲205)

雑誌
モノ・マガジン
d
5月16日号(甲206)

展示会への出展

原告各社は,日本最大級の中小企業ビジネスイベントである中小企業総合展に出展し(甲121),猛暑対策展その他ファン付き作業服の需要者,取引者が集まる展示会に,原告商品を出展してきた(甲32,甲49の56,甲70の4・8・11,甲71の10・22・43・47・118・120・136,甲73の27,甲207~209,甲321の1・2,甲322,323,甲354の1~18)。その状況は,別紙2のとおりである。
e
メールマガジンの頒布

原告各社は,メールマガジンを頒布し,需要者,取引者に向けて原告商品を紹介していた(甲126,甲127の1,甲324の1~3)。なお,原告商品の売上高が後記のとおり全売上げの●●●超を占める原告各社において配信するメールマガジンが,原告商品空調服の紹介や販売促進を内容とするものであったことは明らかである。
f
インターネットにおける宣伝広告

原告各社は,自社ウェブサイトでの原告商品の紹介,プレスリリース,YouTubeのプロモーションビデオ等,インターネットにおける原告商品の宣伝広告も行ってきた(甲32,甲33の2,甲34の1~4,甲36,38,甲48の48・52・53,甲49の4・21・22,甲70の37,甲210の1~20)。g
ライセンシーによる本願商標の使用

原告各社は,作業服の大手製造メーカー各社等に,本願商標及びファン付き作業服に関する特許権,商標権及びノウハウをライセンス等しており,ライセンシー各社は,空調服という本願商標を付してファン付き作業服を販売している。そのようなライセンシーとして,例えば,山田辰株式会社(以下山田辰という。),株式会社メドウニクス(以下メドウニクスという。),株式会社ジーベック(以下ジーベックという。),アイトス株式会社(以下アイトスという。),株式会社タカヤ商事,株式会社自重堂(以下自重堂という。),株式会社アルトコーポレーション,株式会社寅壱,株式会社エヌ・エス・ピー(以下NSPという。),旭蝶繊維株式会社が挙げられる(甲42の38,甲48の30・32・49,甲49の1・50,甲71の143,甲91,211~222)。そして,これらのライセンシーは,独自に本願商標を用いた広告を行ったり(甲223~226),原告各社の社名,本願商標及び本願商標が原告各社の商標であることが記載されたファン付き作業服のカタログやタグを作成し配布したりしている(甲227~236,甲237の1・2,甲238,239,甲342の1~21)ほか,製品展示会においても,原告各社の社名,本願商標及び本願商標が原告各社の商標であることを,会場の見やすい位置に表示している(甲240,甲241及び242の各1・2)。
h
法人向け販売,大手ゼネコンや大手電気工事業者等へのオリジナル
ファン付き作業服の納入販売
原告商品は,法人向けが大多数であり,公開されている主な販売先だけでも,大手企業が多数にわたる(甲243[枝番を含む。],甲244,甲343の1~82)。
そして,原告各社は,大口顧客に対し,オリジナル仕様の原告商品を納入することが多く,オリジナル仕様の原告商品についても,本願商標が付されている(甲48の33~35,甲55,56)。原告商品は,平成16年9月には全関東電気工事協会の推奨品として認定され(甲58),電気工事業界において,ファン付き作業服のスタンダードとなっている。建設業界においても,原告各社は,大手ゼネコン各社に向けて,
オリジナル仕様又は通常の原告商品を大量に納入している
(甲8,
甲42の61・63,甲49の19,甲50の5,甲54,56,60,61,64,65,245)。

原告商品の販売数量又は売上高等について
(ア)原告商品の市場シェア
空調服の販売開始から平成27年までは,原告商品がファン付き作業服における市場シェアの100%を占めていたもので,その後,原告商品を始めとするファン付き作業服の有用性が世の中に認知され,市場が100億円規模に成長し,市場拡大が進んだ現在でも,原告商品は,ファン付き作業服を創出した先駆者の商品として,1位のシェア(令和元年[平成31年]で約38%~39%)を誇っている(甲72の1~3,甲246,327,甲334の1~3,甲335の1~8,甲336の1~19,
甲337の1~5,
甲338の1~9,
甲339~341)

この点,繊維ニュースは,繊維業界のニュースを専門的に取り扱う二つの日刊新聞のうちの一つであり(甲255,326),ユニフォーム,作業服の専門紙として,ほぼ連日ファン付き作業服のニュースを取り上げており,ファン付き作業服の各メーカーにも頻繁にコンタクトをとっている。上記の38%~39%とのシェアは,そのような繊維ニュースが各ファン付き作業服メーカーから聴き取った出荷予定数をもとに算出したもので,十分に客観性,信用性が担保されたものである。
(イ)原告商品の売上高
平成30年の原告商品の売上高は,ライセンシーによる売上げを含め,約130億円(販売数65万点[甲72の1]に,1点当たり販売価格約2万円[甲71の155]を乗じたもの)であった。同様に,令和元年(平成31年)の原告商品の売上高は,ライセンシー各社による売上げを含め,およそ260億円と推定される(販売数130万点)。
原告らの直近3年分の決算報告書(甲247の1~6)から認められる原告らの売上額に,原告商品の占める割合(●●●[甲333の4~8,甲351])を乗じた額に,ジーベック,アイトス,自重堂など,作業服分野における大手メーカーがライセンシーに数多く含まれていることを考慮すると,原告商品の売上高が260億円を超えるとの上記推定は,十分に合理的である(例えば,自重堂は,東証2部上場企業であり,連結売上高が200億円規模の大企業である。ジーベックの売上高は約130億円,アイトスの売上高は約200億円である。)。エ
原告商品又はこれに類似した商品に関する本願商標に類似した他の標章
の存否について
ファン付き作業服について,本願商標と同一の商標が自他商品識別標識として使用されている例はない。
一部のネット通販サイトにおいて,ファン付き作業服の紹介の際に,空調服との語を用いている例があるが,それらの使用は,自他商品識別標識としての使用ではない。
また,
ファン付き作業服の取引の実情からすると,
ネット通販サイトは,
取引全体のごく一部を占めるにすぎず,その影響は無視できるほど小さい。なお,他者によって同一又は類似商標が使用されている場合に直ちに商標法3条2項の適用が否定されるべきではなく,他者による使用態様,規模等に鑑みて,本願商標の使用状況等を含めて総合判断がされるべきである。

原告商品の知名度の裏付けとなるメディアにおける原告商品の紹介につ
いて
次のとおり,原告商品は,テレビ,ラジオ,新聞雑誌といったマスメディアにおいて,現在に至るまでほぼ連日のように紹介されており,本願商標が原告商品を表すものであるとして需要者,取引者に周知であることが裏付けられる。(ア)テレビ(いずれも全国放送)
原告商品は,テレビ番組において数多く取り上げられている(甲39の2)。この点,ガイヤの夜明けの視聴率はコンスタントに5%以上であり(甲248),ドキュメンタリー番組として代表的な番組であって(甲249),成年男性の視聴率が高いことから,ファン付き作業服の需要者,取引者にも視聴されたと推測される。度々再放送もされている(甲325)。
また,マツコ&有吉の怒り新党は,毎週水曜日に放送されており,原告商品が紹介された回の前の週の回の視聴率は10.6%であった(甲250)。さらに,サタデープラスでは,熱中症対策商品として,原告商品が,空調服という商品名とともに,株式会社空調服というように,原告空調服の名称が分かりやすいよう放送された。
同番組の視聴率は,
概ね5%前後と推測される
(甲
251)。
その他,スーパーJチャンネル,テイバン・タイムズ,AI・DOLPROJECT,Nスタ,あさチャンでも原告商品が紹介された(甲71の11・12・42・141,甲75の1~3,甲252の1~3)。このうちNスタでは,空調服が原告各社の商品名であることが強調されて紹介された。
(イ)ラジオ(全国放送)
原告商品は,TBSのラジオ番組久米宏ラジオなんですけどでも紹介された(甲70の4,甲71の34)。
(ウ)新聞,雑誌
原告商品は,発売開始以来,新聞,雑誌等で何度となく紹介されている。特に原告商品を取り上げる回数の多い繊維ニュースの発行部数は6万8000部であり(甲253),繊研新聞は20万部である(甲254)。繊維業界のニュースを専門的に取り扱う日刊新聞はこれら2紙のみであり,繊維業界や作業服を含む服飾業界の取引業者が購読者の中心である。その他,ファン付き作業服は,建設業界,電機工事業界,農業分野,熱中症対策分野等が需要の中心であるところ,原告商品は,これらの業界の業界紙及び専門紙に頻繁に取り上げられている。新聞,雑誌への掲載状況は,次のとおりである。
a
平成14年~平成29年

平成14年

甲42の1,甲98,100

平成15年

甲101

平成16年

甲42の2~4,甲103,104,甲128の1~13,甲12
9の1~24,甲130の1~9
平成17年

甲42の5~12,甲128の1~13,甲129の1~24,甲130の1~9,甲131の1~15
平成18年

甲42の13~16,甲128の1~13,甲129の1~24,
甲131の1~15
平成19年

甲42の17~26,甲120,121,甲128の1~13,甲
129の1~24,甲131の1~15
平成20年

甲42の27~34,甲128の1~13,甲129の1~24,
甲131の1~15
平成21年

甲42の35~38,甲132の1~10

平成22年

甲42の39~42,甲119,甲129の1~24

平成23年

甲42の43~51,甲128の1~13,甲129の1~24,
甲130の1~9,甲131の1~15
平成24年

甲42の53・54,甲111

平成25年

甲42の55,甲130の1~9

平成26年

甲42の56・57,甲129の1~24

平成27年

甲42の61・63・64,甲46の1・4・6,甲86,109,
110
平成28年

甲7,8,甲42の66・68・69,甲47の5,甲108,1
23,125,甲129の1~24,甲130の1~9,甲131の1~15平成29年

甲42の71,甲48の9・10・12・17・20・21・23・
29・38~40・42・45・46・49,甲50の1
b


平成30年

繊維業界向け専門紙

繊維ニュース特集繊維街道私の道中記

10月22日~26日(甲7

1の72・75・77・79)
繊維ニュース

1月9日(甲49の1),1月11日(甲49の2),2月

14日(甲49の5),5月29日(甲49の14),6月1日(甲49の17),6月6日(甲49の19),6月18日(甲49の24),7月17日(甲49の39),8月1日(甲49の53),8月9日(甲49の56),9月3日(甲71の66),9月12日(甲74の4),10月2日(甲74の6),10月9日(甲74の8),10月11日(甲74の9),11月29日(甲74の24),12月20日(甲74の33)
繊研新聞


9月7日(甲71の69),11月19日(甲71の111)

建設,電気,農業,物流向け業界専門紙

建設通信新聞
電気新聞

8月20日(甲71の59)

6月8日(甲49の20),9月6日(甲71の67),9月1

3日(甲71の71),10月22日(甲71の74)
物流ニッポン
農機新聞

11月1日(甲71の83)

1月1日(甲43),6月19日(甲49の23),11月13

日(甲71の84)
日本屋根経済新聞

7月28日(甲49の52)

日本農業新聞

6月4日(甲49の18),6月7日(甲50の7)

日本物流新聞

6月10日(甲49の25)

安全と健康
電気現場

7月号(甲49の29)
7月1日(甲49の33)

農業ビジネス


夏号(甲49の44)

全国紙・一般紙

毎日新聞

8月22日(甲71の63)

デーリー東北(甲71の85),フジサンケイビジネスアイ(甲71の86),沖縄タイムズ(甲71の87),中部経済新聞(甲71の88),四国新聞(甲71の89),信濃毎日新聞(甲71の90),大分合同新聞(甲71の91),北日本新聞(甲71の92),神奈川新聞(甲71の93),日本海新聞(甲71の94),富山新聞(甲71の95),岩手日報(甲71の96),中国新聞(甲71の97),河北新報(甲71の98),京都新聞(甲71の99),長崎新聞(甲71の100),秋田魁新報(甲71の101),神戸新聞(甲71の102),上毛新聞(甲71の103),山口新聞(甲71の104),東奥日報(甲71の105),熊本日日新聞(甲71の106),室蘭民報(甲71の107)


以上につき8月23日
その他の業界専門紙

日刊産業新聞

8月24日(甲71の108),8月28日(甲71の10

9)
日刊工業新聞

4月23日(甲49の9),5月23日(甲49の11)

隔月刊地球温暖化
ユニフォームプラス
積算資料


9月号(甲71の148)

4月号(甲49の7)

雑誌

週刊新潮

8月2日号(甲49の54)

Wedge
c


3月号(甲49の6),5月号(甲49の16)

9月号(甲65)

令和元年(平成31年)

繊維業界向け専門紙

繊維ニュース1月9日(甲71の114),1月10日(甲73の29),1月17日(甲74の38),1月24日(甲74の42),1月25日(甲74の43),2月6日(甲74の49),4月15日(甲71の123),5月28日(甲71の3),6月12日(甲74の101),6月20日(甲71の5),7月9日(甲71の132),8月7日(甲71の137),8月8日(甲71の138),9月12日(甲71の150),11月13日(甲256の1),11月26日(甲256の2),11月29日(甲256の3),12月18日(甲256の4)
繊研新聞

5月28日(甲71の46),5月29日(甲71の1),6月

4日(甲74の98)
ユニフォームプラス9月号
(甲71の148)10月号

(甲257の1)

12月号(甲257の2)


建設,電気,農業,物流向け業界専門紙

建設通信新聞
農機新聞

6月17日(甲71の45)

4月2日(甲71の120),5月28日(甲71の9),6月

11日(甲70の11),6月25日(甲71の10),8月6日(甲71の136),9月24日(甲258の1),10月8日(甲258の3),10月22日(甲258の2・4)
電気と工事

1月号(甲71の112)

TRUSCOPROTOOL「日本屋根経済新聞
電気管理技術

マガジン」(甲73の28)

3月28日(甲71の119),8月8日(甲259)

4月号(甲71の121)

日刊建設産業新聞

4月5日(甲71の122)

ArchitectureRoofingSealing5月5日(甲

71の58)
GETRUCK

7-8月合併号(甲71の130)

物流Weekly
ビルメン

9月号(甲71の149)

機械化農業

9月号(甲260)

日本農業新聞


8月26日(甲71の158)

10月31日(甲261)

全国紙・一般紙

日本経済新聞会社情報DEGITAL

日刊スポーツ
産経新聞

5月24日(甲74の113)

7月4日(甲71の14)

7月23日(甲71の133),8月8日(甲71の143)
日本経済新聞
読売新聞

8月18日(甲71の144)

8月21日(甲71の145),8月28日(甲71の159)

日刊ゲンダイ


8月29日(甲71の160)

その他の業界専門紙

日刊帝国ニュース

3月5日(甲71の117)

隔月刊地球温暖化

5月号(甲71の161)

財経新聞

5月28日(甲71の32)

警備保障タイムズ
日刊産業新聞
理念と経営

7月5日(甲262の1),11月22日(甲262の2)
9月号(甲71の146)

石油化学新聞


7月11日(甲208)

12月9日(甲263)

雑誌

モノ・マガジン

5月16日号(甲71の44),8月2日号(甲71の1

40),8月16日・9月2日号(甲71の134),9月16日号(甲71の147)
Under400
オートバイ

9月号(甲71の142)

日経コンピュータ
ASKUL
VOGUEd①7月号(甲71の157)10月3日号(甲264)春・夏号(甲71の155)JAPAN
9月号(甲265)

令和2年

繊維業界向け専門紙

ユニフォームプラス
繊維ニュース

3月号(甲266),5月号(甲267)

1月8日(甲268の1),1月10日(甲268の2),

1月21日(甲268の3),2月7日(甲268の4),2月10日(甲268の5),2月21日(甲268の6),2月28日(甲268の7),4月9日(甲268の8),4月15日(甲268の9),4月24日(甲268の10),4月28日(甲268の11),5月20日(甲268の12)
繊研新聞

1月10日(甲269の1),2月26日(甲269の2),3

月30日(甲269の3)


建設,電気,農業,物流向け業界専門紙

農機新聞

1月23日(甲270の1),2月11日(甲270の2),3

月10日(甲270の3)
日本農業新聞
機械化農業


4月6日(甲271,272)
4月号(甲273)

その他の業界専門紙

日刊産業新聞


2月14日(甲274),3月13日(甲275)

雑誌

AERA

3月16日号(甲276)

モノ・マガジン

5月16日号(甲277)

(エ)作業服の販売店による原告商品の商品名としての本願商標の使用作業服の販売店も,原告商品の商品名として,本願商標をチラシやカタログに表示している(甲278,279)。
(オ)ウェブメディア
ウェブメディアにおいても原告商品は紹介されている。その状況は,次のとおりである。
a
平成26年~平成29年

平成26年

甲42の65

平成27年

甲46の7~9

平成28年

甲46の5,甲47の1~4・6・7,甲71の151,甲124
平成29年

甲9の1,甲48の22・30~37,甲280

b
平成30年
サンスポ

1月17日(甲49の3)

ITmediaビジネスオンライン
建設通信新聞Digital
ロケットニュース24

5月22日(甲71の126)

8月20日(甲71の31・60)

7月17日(甲71の28)

産経ニュース

7月21日(甲49の42)

日本経済新聞

7月25日(甲49の48)

AGRIJOURNAL

ライブドアニュース
c
8月10日(甲49の57)

10月30日(甲71の82)

令和元年(平成31年)

エキサイトニュース
ニコニコニュース
財経新聞

3月26日(甲71の36)
5月27日(甲71の38)

5月28日(甲281)

YAHOOニュース(MONEYPLUS)6月6日(甲71の30),
8月23日(甲282),8月30日(甲283)
電撃ホビーウェブ

6月6日(甲71の29)

WWDジャパン.com
PRTIMES
産経ニュース
IZA

7月12日(甲284)
7月22日(甲285)

7月22日(甲286)

SankeiBiz
BCN+R

web

8月17日(甲289)

ポータル経済」

日刊ゲンダイ「LIMO

7月24日(甲287)

8月3日(甲288)

日経新聞電子版
au6月21日(甲71の125)Digital

8月23日(甲290)
8月29日(甲291)

8月30日(甲292)

現代ビジネス

9月13日(甲293)
日経XTECH

9月30日(甲294)

物流Weekly
インプレス

10月2日(甲296)

繊維ニュース

11月13日(甲297),12月18日(甲298)

ニューススイッチ
d
12月2日(甲299)

令和2年

Rakuten「MONEY9月30日(甲295)InfoseekPLUS
News」

2月6日(甲300)

2月6日(甲301)

gooニュース

3月17日(甲302)

AXISMagagine

web

繊維ニュース

5月12日(甲303)

1月8日(甲304),1月21日(甲305),2月7日

(甲306),2月10日(甲307),4月15日(甲308),4月28日(甲309),5月20日(甲310)
(カ)受賞歴
原告商品は,これまでに各種の賞を複数回受賞している。原告商品の受賞歴は,原告各社がファン付き作業服のオリジネーターであること,本願商標が原告商品を表す商標として周知であることが,賞という形で結実したものである。原告セフト研究所は,平成29年12月,空調服の開発・商品化と普及により,
平成29年度地球温暖化防止活動環境大臣表彰を受賞している
(甲43,
44)

受賞理由から明らかなように,原告セフト研究所は,環境大臣によって,ファン付き作業服の開発者,すなわちオリジネーターであることが認められたといえる。また,原告商品は,令和元年に,グッドデザイン賞を受賞した(甲311,312)が,その審査員のコメントでも,原告セフト研究所がファン付き作業服のオリジネーターであり,原告商品空調服がベースとなったデザインが評価されたことが示されている。
さらに,原告商品は,同年,公益社団法人日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)デザインミュージアムセレクションにも選定された(甲313)。同セレクションは,美しく豊かな生活を目指してをテーマに,インダストリアルデザインが社会に寄与する質の高い製品を選定し表彰するとともに,その製品を収集保管して次世代に伝え,教育,産業,生活へ文化的貢献を行うことを目的とするものである。その選定基準には,初代であったり,その時代のマーケットをリードした製品であることが含まれており,原告各社及び原告商品がファン付き作業服のオリジネーターであり,ファン付き作業服マーケットをリードしてきたことが評価されたものと解される。

被告の主張に対するその他の反論
(ア)被告は,本件における需要者,取引者の認識は,本願指定商品である
通気機能を備えた作業服・ワイシャツ・ブルゾンの需要者,取引者の認識をもとに判断すべきであると主張する。
しかし,通気機能を備えた作業服・ワイシャツ・ブルゾンの需要者,取引者は,ファン付き作業服の需要者,取引者とほぼ一致する。一方,ファン付き作業服以外の,通気機能を備えたワイシャツ・ブルゾンについては,これから市場を立ち上げようとする段階であり(甲321の1),ファン付き作業服の市場に比較して著しく僅少である。
(イ)空調服を始めとするファン付き作業服は,初夏から夏にかけて需要が高まる季節商品であり,
一年中メディアに取り上げられるような商品ではない。
また,需要が爆発的に高まったのはここ数年のことである。148回という掲載回数が決して多くないなどという被告の主張は,取引の実情を理解しないでされた主観的な主張にすぎない。
(ウ)需要者が建築業者,工場従事者,電機工事従事者,
その他作業服を着用
する者等に限られ,取引者が作業服専門店等に限られるファン付き作業服という商品の取引の実情に鑑みると,全国紙よりも,繊維・ユニフォーム業界の専門誌の方が,需要者,取引者の認識をより強く反映していることは明白である。また,専門誌が全国紙よりも証拠として劣るかのような被告の主張は,商標審査基準(甲353)の内容とも明らかに矛盾するものである。
広告の出稿先についても,取引の実情からすると,上記と同様,繊維や作業服関連の専門誌に出稿した方が,需要者,取引者への訴求効果が高いといえる。(エ)原告らの出稿する広告は,
特に最近のものについては,
スペースの許す
限り,必ず,
空調服の文字が目立つようにゴシック体で表記され,かつ,『空調

服』は,株式会社セフト研究所・株式会社空調服の商標及び登録商標です。

との表記がされている(甲200~206)
。また,原告空調服の社名でもある空調服
とのゴシック体表記に加えて,登録商標であるDCマーク
(図式化したDとCと
を組み合わせた表示であり,別紙1の登録番号5794161の商標欄の表示。以下DCマークという。
)が付されていることから,原告各社の名称の表
示があることが明らかである(甲70の5・9・11~13・24,甲71の44,甲72の1)

(オ)JRの主要駅構内における原告商品の大々的な広告については,原告空調服の社名を踏まえると,
空調服に加えて,DCマークが付されている広告に
ついては,出所が表示されているといえる。
(カ)YouTubeの再生回数は,YouTubeのウェブサイトにアクセスすることで第三者が容易に確認できるものであるから,プレスリリースにおいて虚偽の再生回数を述べるはずがない。
(キ)映画館で放映した原告商品のCMについて,
ユナイテッド・シネマ,シ
ネプレックス劇場の座席数は1シアター当たり平均190席であり,広告を入れた映画が1日当たり2回放映されたことから,190席×2本(広告した映画の数)×2(1日あたり2回放映)×34(CMを放映した映画館の数)=1日当たり2万5840人が鑑賞できることになる(甲76の8,甲347,348)。これを平
成29年8月11日から同月26日までの16日間放映したから,およそ40万人が視聴したと推定できる。
(ク)地球温暖化防止活動環境大臣表彰の受賞については,原告らがファン付き作業服を開発し,平成17年から販売を開始し,約34万着を売り上げたことが,
建築・建設関係を始めとする各業界のCO2排出削減に貢献したと評価されてのものであり,原告各社による空調服の開発,販売数の多さが評価されたことが明らかである。また,グッドデザイン賞については,受賞の事実がメディア等で取り上げられる契機となり,原告商品の知名度アップにもつながっている。(3)取消事由3―証拠を適切に評価しておらず審理不十分であること原告らは,客観的資料に基づいて,本願商標の商標法3条1項3号非該当性及び同条2項該当性を主張するにもかかわらず,本件審決は,次のとおり,原告らが提出した証拠を適切に評価することなく,多くの証拠を見落としたもので,その審理は甚だ不十分である。これは,本件審決の結論に影響を与えるものであり,本件審決は,違法なものとして取り消されるべきである。

本願商標の使用の事実の見落とし

原告らは,平成16年以降の毎年分の原告商品のカタログを証拠として提出している。これらのカタログには,全て,見やすい位置,大きさで,本願商標が表示されており,原告らが平成16年以降継続して本願商標を使用してきたことが明らかである。また,原告らによる宣伝広告についても,多数の証拠を提出している。本件審決は多数の証拠を見落としているといわざるを得ない。

ファン付き作業服における原告商品のシェアの見落とし

繊維ニュースは,繊維業界に関するニュースを専門とする業界紙で,ほぼ毎日ファン付き作業服についての記事を掲載しているものであり,そのような繊維ニュースが発表しているファン付き作業服のシェアは,十分に客観性及び信頼性を有する。また,業界シェアの多くは,その業界に属する各メーカーに対する聴取り調査に基づいて作成されるものであり,メーカー各社の自己申告に基づいて集計が行われるものであることに何ら問題はない。
本件審決は,証拠を正当に評価することなく,誤った理由に基づいて,証拠を排除するものである。

原告商品の大手ゼネコンへの納入の事実の見落とし

本件審決は,大手ゼネコンへの納入の事実に係る証拠(甲48の33~35),納入量に係る証拠(甲42の61・63,甲49の19,甲54,60,61等)を見落とし,誤った判断をしている。
4
被告の主張
(1)取消事由1について―本願商標が商標法3条1項3号に該当すること
次のとおり,本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした本件審決の認定,判断に誤りはない。

商標法3条1項3号の趣旨等

商標法3条1項3号の趣旨に照らすと,当該商標が指定商品の品質等を表すものとして,審決時に需要者,取引者に広く認識されている場合はもとより,将来を含め,需要者,取引者にその商品の品質等を表すものと認識される可能性があって,これを特定人に独占使用させることが公益上適当でないと判断されるときは,その商標は,同号に該当すると解するのが相当である。

空調服の文字について

本願商標の構成中の空調の文字は

空気調節の略。エアーコンディショニング。

の意味を有する語であり(乙3),服の文字は身につけるものの意味を有する語である(乙4)。

通気機能を備えた作業服・ワイシャツ・ブルゾンに関連した分野で
の空調服の文字の使用状況について
近年,通気機能を備えた作業服・ワイシャツ・ブルゾンに関連した分野の新聞記事情報,インターネット情報及び公開特許公報等(次の(ア)~(ウ))において,空調服の文字は,例えば,小型ファンで,服の中に外気を取り入れ,体の表面に大量の風を流すことにより汗を気化させて,涼しく快適にすごしていただくための製品や上着内に送風機を備え,服の中に風を取り入れ体の熱を冷ます機能を有する商品(ファン付き作業着)の説明と共に,空気を調節する服(空調機能を備えた服)を表すものとして使用されている。(ア)新聞記事情報
日本経済新聞(乙5,11,13,18),河北新報(乙6),北海道新聞(乙7),日刊建設工業新聞(乙8,15),琉球新報(乙9),電気新聞(乙10,16),熊本日日新聞(乙12),化学工業日報(乙14),建設通信新聞(乙17),大阪読売新聞(乙19)
(イ)インターネット情報
WORK―UNIFORMのウェブサイト(乙20~22),SAFETYUNIのウェブサイト(乙23,24),ワークストリート作業服館
のウェブサイト(乙25,26),YAHOO!JAPANショッピング内のミチオショップヤフーショッピング店のウェブサイト(乙27,28),作業着デポのウェブサイト(甲141の1・2),楽天市場内の倉敷通商のウェブサイト(甲142の4,乙29),YAHOO!JAPANショッピングのウェブサイトにおける空調服の検索結果(220,085件)(乙30),Wowma!のウェブサイト(甲144の1・2),空調服専門サイトのウェブサイト(甲145の2,乙31),空調服専門店TKネットショップ
のウェブサイト(乙32,33),ALBIC-丸十服装株式会社のウェブサイト(乙34,35),MITSUFUJIのウェブサイト(乙36),建設通信新聞公式記事ブログ(乙37),日本経済新聞(電子版)のウェブ
サイト(乙38),UEDAironwareのウェブサイト(乙39),
ワークショップオオタのウェブサイト(乙40),Yahoo!ショッピングのウェブサイト内のワークショップタマイ(乙41)(ウ)公開特許公報等による情報
公開特許公報(特開2017-101354。乙42),公開特許公報(特開2016-56467。乙43),登録実用新案公報(実用新案登録第3206518号。乙44),登録実用新案公報(実用新案登録第3197081号。乙45),登録実用新案公報(実用新案登録第3195731号。乙46),登録実用新案公報(実用新案登録第3187092号。乙47),登録実用新案公報(実用新案登録第3186431号。乙48)

小括

以上のことから,本件審決当時,本件商標が,その指定商品である通気機能を備えた作業服・ワイシャツ・ブルゾンに使用されたときは,空気を調節する服(空調機能を備えた服)といった商品の品質(機能)を表示するものとして,需要者,取引者によって一般に認識されるものであって,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであったものと認められるから,特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに,自他商品識別力を欠くものというべきである。
また,本願商標は,標準文字で構成されているから,空調服の文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものである。
したがって,本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした本件審決の認定,判断に誤りはない。

原告らの主張に対するその他の反論
(ア)原告らは,空調服に関連する登録商標を複数所有していると主張
するが,原告らは,本願指定商品に包含されるファン付き作業服について空調服の文字のみを普通に用いられる方法で表示する商標の権利を保有しているものではないし,原告ら以外のファン付き作業服の製造業者や販売業者等は,自己の商品の出所表示としてではなく,取引に際し,ファン付き作業服であるという商品の品質を記述するために,上記ウのとおり空調服の文字の使用を欲するのである。
そして,ライセンシー以外のファン付き作業服の製造業者及び販売業者はもとより,ライセンシーにおいても,上記ウのように,空調服の文字をファン付き作業服という商品のカテゴリー,すなわち品質を表すものとして使用している実情があることからすると,空調服の文字は,何人にも,取引に際して商品の品質を記述するために必要適切な表示であるというのが相当であって,特定人による本願商標の独占使用を認めることは公益上適当でないというべきである。(イ)原告らは,原告各社等は積極的に空調服との商標を用いていると主張するが,ライセンシーにおいても,原告らの出所表示とはいえない方法で空調服の文字を使用している例があり(甲223,224,甲241の1,甲242の1)そのようなライセンシーによる本願商標の使用状況からすると,,
需要者,
取引者は空調服の文字をファン付き作業服の品質表示と理解するとみるべきである。
また,『空調服』は,(株)セフト研究所,(株)空調服の商標である旨のごく小さな付記的な記載があるライセンシーのカタログ,チラシ等(甲211,212,221,225,227~239)は,ほぼ令和2年に販売する商品に係るもので,これより前の使用において同旨の記載があったのかについては明らかでない。同旨の記載があったとしても,ごく小さく表示された付記的な記載から,これらのカタログ等を参照する需要者,取引者が,直ちに空調服の文字を原告らの出所表示として認識するとはいい難い。
(ウ)仮に,空調服の文字がファン付き作業服の自他商品識別標識として,原告ら以外の第三者によって使用されている事実が確認できないとしても,本件審決は,空調服の文字が,上記ウのように,自他商品識別標識としてではなく,
作業服のカテゴリー,
すなわち品質を表すものとして使用されているからこそ,
そのような状況を総合的に勘案した上で,本願商標が自他商品識別標識としての機能を果たさないと認定判断したものである。
(エ)SEO対策にすぎないという原告らの主張や,ネット通販サイトにおいて,数社から販売されているファン付き作業服の中で原告商品の認知度が高いために代表的な存在として空調服の表記が用いられたとの原告らの主張については,そのような表記方法が取引において一般的であるとはいえない上,これを裏付ける証拠の提出もなく,何ら根拠のないものといわざるを得ない。(オ)原告らは,本願商標は分離して解釈できないなどと主張するが,本願商標の構成中の空調の文字は空気調節の略の意味を有する語であり,服
の文字は身につけるものの意味を有し,本願指定商品との関係において商品の一般的な総称を表す語であることから,本願商標は,空調と服の語を結合したものと容易に認識されるものというべきであり,また,容易に語義を理解できる語を組み合わせたものである。
また,原告らは,
エアーコンディショニングの意味のみをたどった上で,
空調服の文字からは温度調整機能を有するエアコンの付いた服という意味が生じるなどと主張するが,本願商標を構成する空調の語について,空気調節の略という意味で理解されることを捨象すべき特段の事情はなく,
原告らの解釈は,
空調の語が上記意味を有することを無視した,飛躍した解釈である。さらに,原告らは,上記解釈を前提に,本件審決が認定した意味合いである空気を調節する服(空調機能を備えた服)が,本願指定商品の品質を表すものではないと主張するが,そもそもの語義からして,

通気(内部と外部の空気を互いに通わせること。)

によって,空気調節をしているのであるから,上記意味合いについて認定した上で,空調服の文字の使用状況を総合的に勘案し,本願指定商品の品質を表すと判断することにつき,論理が破綻しているとはいえない。その他,空調服の文字が,ファン付き作業服を表すものとして一般的に使用されていることは,ファン付き作業服を表す他の表現が存在することによって否定されるものではない。そして,空調服の文字が,作業服のカテゴリー,すなわち品質を表すものとして相当数使用されているとの実情について,それらの使用のうちにライセンシーによるものが含まれるとしても,それに接する需要者,取引者においてライセンスに係る詳細な背景事情までを直ちに認識することは困難であり,また,
作業服のカテゴリーを示すような方法で使用されていることからすると,空調服の文字に接する需要者,取引者は,これを原告商品の出所識別標識として理解し得ないというのが相当である。
(カ)空調服の文字が作業服のカテゴリー,すなわち品質を表すものとして,原告ら以外の者によって用いられていることについて,本件審決は,上記ウのとおり,インターネット情報のみならず,新聞記事情報等における使用例も相当数あることを総合的に勘案した上で,本願指定商品の需要者,取引者の認識を認定判断したものであり,インターネット通販サイトの記載のみをもって本願指定商品の需要者,取引者の認識を認定したものではない。
また,ファン付き作業服を含む作業服の分野では販売店やメーカーから企業等法人への直接納入が大多数であること,作業服の取引においては個人向け販売の中でも実店舗における販売が大多数でネットによる販売は一部であること,ファン付き作業服は購入に際して実際に着てみることが重要であり,特にネット販売に不向きであることといった原告らの主張については,本件審決時には,主張も立証もされていなかったことである上,本件において,需要者,取引者の認識は,本願指定商品である通気機能を備えた作業服・ワイシャツ・ブルゾンの需要者,取引者の認識をもとに判断すべきであり,ファン付き作業服を含む作業服の分野の取引の実情に限って考慮すべきものではない。
さらに,上記主張は,原告らが,インターネットショッピングサイトに店舗を構え,顧客にメールマガジンを配信したり,ネット通販サイトにおいて広告宣伝を行ったりしていることによって,本願商標が使用による識別力を獲得していると主張する点や,インターネット販売を根拠にして本願商標を全国規模で使用していると主張する点とも矛盾している。
(2)取消事由2について―本願商標が商標法3条2項の要件を具備しないことア
商標法3条2項該当性の判断方法

商標法3条2項は,同条1項3号~5号に該当する商標であっても,使用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識できるに至った場合,すなわち,使用により自他商品識別力を獲得するに至った場合には,商標登録を受けることができるものと規定するところ,当該商標が同条2項に該当するか否かについては,使用に係る商標又は商品,使用開始時期及び使用期間,使用地域,商品の販売数量,広告宣伝のされた期間・地域及び規模などの諸事情を総合考慮して判断するのが相当である。その場合,使用に係る商標又は商品等は,原則として,出願に係る商標及び指定商品と同一であることを要する。また,上記需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識できるに至った場合に該当するというためには,永年使用されることにより,特定の者の出所表示としてその商品又は役務の需要者の間で全国的に認識されるに至っている(すなわち特別顕著性が認められる)ことを要するものと解するのが相当である。イ
本願商標の使用について

次のとおり,原告らが提出する証拠によっては,本願商標が付された原告らの製造販売に係るファン付き衣服が使用された結果等を総合的に考慮しても,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものということはできず,本願商標は,商標法3条2項の要件を具備するものといえない。(ア)使用開始時期及び使用期間について
a
原告セフト研究所は,平成11年から,ファン付き作業服の企画及
び開発を行い,原告空調服はその子会社であり,平成16年に空調服との名称で市場に商品を投入し当該商品の販売を行っているとされ,空調服の文字を当該商品に使用しているというが,
原告らが提出する商品カタログの写し等
(甲10,
13,68,105,甲193の1~7)には,発行年の記載がなく,いつ発行されたカタログであるのか不明なものも含まれている。また,商品カタログの製作・頒布の事実,頒布時期,頒布数及び頒布先を示す証拠として本件審決までに提出されていたものは,平成28年のカタログ製作に係る請求書(甲115)の一点のみであるが,これが原告商品のカタログであるかも明らかでなく,原告ら代表者の陳述書(甲32,194)については,客観的信頼性に乏しい。
上記の具体性及び客観性に欠ける証拠をもってしては,空調服の文字が原告らによって原告商品に継続的に使用されてきたと判断することはできない。b
原告商品に係るカタログの製作・頒布の事実があったとしても,カ
タログにおいて,
空調服の文字は,多くが記述的に用いられていること(甲10
5)から,それらカタログに接する需要者が,出所識別標識として,空調服の文
字に着目するとは考えにくいし,当該記述に接する需要者は,それを単なる商品紹介の説明と理解するにとどまるとみるのが自然である。
そのため,広告等において,本願商標が,原告各社固有の出所識別標識であることを強調する言及や表現方法を伴う記載で継続的に用いられない限り,本願商標に関する周知効果は限定的であるというべきである。
(イ)原告商品の売上高
原告らが主張する原告商品の売上額や販売合計額を裏付ける証拠は,原告ら代表者の陳述書(甲32)であり,客観的信頼性に乏しい。
また,原告らは,令和元年(平成31年)の原告商品の販売数は130万点(甲72の1)で,1点につき18,500円(税込19,980円)で販売されているから,売上高はおよそ260億円であると主張するが,当該売上高は,商品単価と市場投入数から導かれた推定にすぎない。
さらに,原告らは,この売上高には,ライセンシーによるものも含まれると主張し,
ライセンシーによる本願商標の使用状況の一部を示す証拠
(甲211~242)
を提出するが,これらの証拠におけるアイトスの空調服(甲223),スタッフが着用しているのは,タルテックス・長袖ジャケット(空調服)・・・アイトスのラインナップの中でもカジュアル感が漂う・・・(甲224)のような空調服の文字の用いられ方を考慮すると,原告らの主張する売上高に含まれるライセンシーの販売した商品については,本願商標が原告らの出所を表示するものとして認識されるような態様で使用されていたのか明らかでないといわざるを得ず,その余のライセンシーによる本願商標の使用状況については不明である。以上のとおり,原告らの主張する原告商品の売上高は,客観的信頼性の乏しい売上高及び推定売上高である上,その売上高には,原告らの出所表示として本願商標が使用されているとはいい難いものを含み,ライセンシーがどのように本願商標を用いているのかは不明であるから,これらをもってしては,原告商品の客観的な販売実績に基づいた,本願商標の使用状況を把握することはできない。(ウ)原告商品の市場シェア
a
原告らは,原告商品の販売開始以来,平成27年までは,他社から
ファン付き作業服が販売されることはなかったから,原告商品のファン付き作業服におけるシェアは100%であり,同タイプの商品が出始めた平成28年においても,原告商品のシェアは84%と圧倒的であったとし,原告商品は,平成29年時点で,ファン付き作業服の3割以上のシェアを占め(甲50の4,甲72),多数の後発品メーカーの参入にもかかわらず,ファン付き作業服市場において変わらずにトップグループに位置していると主張するが,上記証拠によると,原告らが主張する3割以上というシェアには,ライセンシーによって出荷された商品のシェアも含まれている。
また,上記証拠で示された繊維ニュースに掲載された市場シェア(出荷ベース)
は,
平成30年8月27日付けの意見書
(甲85)
における説明を踏まえると,
推計にすぎないといわざるを得ず,十分に客観的信頼性が担保されたものといえない。
以上のとおり,原告らの主張する市場シェアは,ライセンシーによって出荷された商品のシェアも含むものであり,繊維ニュースに掲載された市場シェア(出荷ベース)は,客観的信頼性の乏しいものであるから,この数値をもってしては,原告商品の正確な市場シェアを把握することはできない。
b
原告らは,ライセンシーによる本願商標の使用状況を示す証拠(甲
211~242)を提出するが,当該証拠における空調服の文字の用いられ方を考慮すると,原告らの主張する市場シェアに含まれるライセンシーの出荷した商品については,本願商標が原告らの出所を表示するものとして認識されるような態様で使用されていたのかは明らかでないといわざるを得ない。
また,アイトス下げ札等(甲342の3~6)は,いずれも本件審決後に
撮影されたものであることに加え,ライセンシーが,原告らの主張する表記を行うようになったのは,
主に令和元年
(平成31年)
頃からと,
ごく最近のことである。
そして,例えば,令和元年6月19日に印刷された,ライセンシーである自重堂の商品販売記事(甲71の7)の1頁,6頁及び10頁の記載を踏まえると,同月に,当該商品販売記事に接した需要者は,空調付き作業服の1カテゴリーである空調服について,自重堂が製造販売するZ-DRAGONと称する商品は,原告らから技術提供を受けて製造されたものであることや,
DIRECTCOOLINGなるロゴは,原告らの登録商標であることを認識するにとどまるということが自然であって,これらの記載により,需要者が空調服の文字を,原告らの出所識別標識として認識することは困難であるというべきである。同様に,ライセンシーであるNSPの平成30年のカタログとされるもの(甲73の10)の記載からすると,需要者が,商品について,同社のオリジナルの空調服であると認識することはあっても,
空調服の文字を,原告らの出所識別標識と
して認識することは困難であるというべきである。その他,ライセンシーの使用状況について,甲71の17・18・27・50・52,甲73の35も同様である。そうすると,これらのライセンシーによる空調服の文字の使用に接した需要者が,
空調服の文字を原告らの出所識別標識として認識するとはいえない。(エ)本願商標の使用地域
原告らは,原告商品はインターネット販売を行っており,発売以来,平成18年には47都道府県の全てにおいて販売を行い,それ以降,各都道府県における売上げを伸ばしていると主張するが,
これを裏付ける証拠は,
原告ら代表者の陳述書
(甲
32)であり,客観的信頼性に乏しい。
この点,原告らは,令和元年5月から7月にかけて,北海道,岐阜県及び福岡県の1道2県における企業等に原告商品を納品しているとして,納品書又は納品書兼請求書の控えを提出する(甲77)が,納品書等において確認できるのは,上記期間において1道2県における企業等に原告商品を納品していることのみであり,本願商標が原告商品にどのように使用されているのか明らかでない。また,原告らは,原告商品にネームタグや企業名を刺繍するなどした特注品を,大手ゼネコンなどのユーザー企業に直接納入しているとして,いずれも空調服のタグが付されたKYUDENKOの刺繍がある作業服の写真(甲55)及びSHIMIZUCORPORATION
のネームタグがある作業服の写真
(甲

56)を提出するが,上記甲55の写真からはファン付き作業服であるのかを確認することができない。上記甲55,56の写真には空調服の文字が表示されたタグがみられるとしても,他の大手ゼネコンへの納品物について本願商標がどのように付されていたのかは明らかでない。
さらに,原告ら以外の者による紹介記事において,大手建設会社である株式会社大林組(以下大林組という。)が平成27年7月に協力会社組織から400着を超える原告商品の要望を取り,
大林組の社内向けにも1810着注文したこと
(甲
42の61・63),大和ハウスグループの大和リース株式会社(以下大和リースという。)が平成30年に社員用に374着の原告商品を支給し,協力会社の作業員に500着を補助支給すること(甲49の19),ダイダン株式会社(以下ダイダンという。)が平成29年8月7日に協力会社へ原告商品を約1500着斡旋したと発表したこと(甲55),三菱電機ビルテクノサービス株式会社(以下三菱ビルテクノサービスという。)が平成30年6月14日に同社及び協力会社に原告商品1万1000着を配布すると発表したこと(甲60)をうかがい知ることができるとしても,大手ゼネコンなどのユーザー企業との具体的取引の事実について,
原告らと原告商品の購入者が実際に取引したことを示す書類
(注文伝票,
出荷伝票,納入伝票,請求書,領収書又は商業帳簿)等の提出がないから,納入日や納入量等に基づく取引事実を確認することができない。
以上より,
原告らが1道2県の企業に原告商品を納品していること
(甲77)
や,
大手ゼネコンなどのユーザー企業と取引があること(甲48の33~35)はうかがえるものの,具体的事実を示す証拠に乏しいため,本願商標が原告商品について全国的に使用されている状況を把握することはできない。
(オ)広告宣伝の方法,期間,地域及び規模,表彰
a
ウェブサイト,
インターネットショッピングサイト,
商品カタログ,

メールマガジンによる広告
原告らは,原告空調服のウェブサイト(甲33の1・2,甲36)において,原告商品の紹介をしており,
また,
インターネットショッピングサイト楽天において,
平成17年,平成19年,平成23年及び平成26年に原告商品を販売していると主張し,さらに,平成29年の商品カタログ(甲13)及び平成13年の商品カタログ(甲30)を提出する。
しかし,上記のうち,平成17年及び平成19年のインターネットショッピングサイトについては,空調服の文字は確認できるものの,当該ウェブサイトに掲載された商品が原告らの販売に係る商品であることを示すような記載が見当たらない(甲34の1・2)。また,カタログについては,その製作・頒布の事実,頒布時期,頒布数及び頒布先を示す証拠として提出されているものは,平成28年のカタログ製作に係る請求書(甲115)における,カタログ製作代一式35,000部の記載のみである上,
これが原告商品のカタログであるかも明らかでない。
そして,原告空調服のウェブサイトにおける原告商品の紹介,インターネットショッピングサイトにおける販売及び原告製作の商品カタログについて,原告ら代表者の陳述書(甲32)における記載を踏まえても,その期間,回数及び規模を,客観的に把握することができない。
また,原告らは,折込チラシを2万400件,ダイレクトメールを3万2529件送付したと主張し,その写しを提出する(甲37,甲73の5・16・37)が,上記送付数を示す証拠は,原告ら代表者の陳述書(甲32)であり,客観的信頼性に乏しい。
さらに,原告らは,平成17年~平成27年に,各年2回~59回,楽天ショップ空調服からメールマガジンを頒布したと主張する。しかし,頒布年月日と頒布回数を示す証拠(甲126)については,その作成者,作成時期,いかなる目的で作成された表であるのかが不明であり,かつ,メールマガジンの配信先の数が明らかにされていない。
また,
メールマガジンの内容に係る証拠
(甲127)
については,
二つの例にすぎず,その他のメールマガジンにおいて本願商標がどのように用いられたのかは不明である。
加えて,カタログの製作部数,頒布部数等に係る原告ら代表者の陳述書(甲194)は,客観的信頼性に乏しく,令和元年(平成31年)及び令和2年のメールマガジンの配信状況に係る証拠(甲324)については,当該メールマガジンの内容が不明であって,本願商標がどのように用いられたのか不明である。以上によると,これらの客観的信頼性に乏しく,数量や規模の明らかでないウェブサイト,インターネットショッピングサイト,商品カタログ,メールマガジンによる広告をもってしては,本願商標が,本願指定商品に係る需要者,取引者の間に強く印象づけられたとは直ちにいい難く,
本願商標に係るこれらの広告宣伝効果は,
把握できないというべきである。
b
新聞,雑誌等における紹介及び広告

原告らは,原告ら代表者の陳述書(甲41)における記載を根拠として,空調服の文字が用いられた原告商品は,平成29年4月1日時点において,各種の雑誌や新聞に合計148回掲載されたと主張し,記事の写しを提出するが,平成16年以降平成29年4月1日までの期間との関係からみて,148回の掲載は,決して多い数ではない。また,全国規模の新聞である朝日新聞,
読売新聞,
日本経済新聞,産経新聞,毎日新聞への掲載は10件にすぎず,ほとんどが発行部数等が多くない専門誌,地方紙等に掲載された記事である。加えて,平成14年から平成28年までに,各種の新聞,雑誌等において紹介されている記事(甲42,46~48)には,発行元が不明である情報誌等の記事(甲42の6・56,甲46の3・4),外国語の記事(甲42の16・47・52),空調服の文字はあるものの原告らの名称の表示がない記事(甲42の43・50・67,甲48の10)及び空調服の文字の記載自体がない記事(甲47の2~4・7・10,甲48の34~36)等が含まれている。
他方,
平成30年以降の原告商品が紹介された記事の写し
(甲71の45・59・
63・72・75・77・79,甲74の4等)のうち,全国規模の新聞に掲載されたものは,毎日新聞(甲71の63),産経新聞(甲71の133・143),日本経済新聞(甲71の144)及び読売新聞(甲71の145・159)の6件のみであり,空調服の文字が用いられた原告商品の広告が誌面に比して小さいものも少なくなく,例えば,発行部数が,1回の発行につき10万部を超える規模の雑誌(乙49,50)に掲載されたものは,
日経ビジネス
(甲
71の65)及びWedge
(甲71の62)の2件のみであって,その余は,
発行部数等が多くない専門誌等の媒体に掲載された記事である。
また,平成30年以降の全国紙,雑誌及び業界紙等の記事における広告(甲70の2・3・5・7・9~13・15~24・29・30・32~36,甲71の13・44・62・72・131,甲72の1)においては,空調服の文字は用いられているとしても,例えば,空調服の文字の記載はあるが原告らの名称の表示がないもの
(甲70の5・9・11~13・24,
甲71の44,
甲72の1)

『空調服』は,株式会社セフト研究所・株式会社空調服の商標および登録商標です。

の記載がごく小さいもの(甲70の2・30・32~34・36)など,空調服
の文字が,
直ちに原告らの出所識別標識として,
需要者,
取引者に認識され,
印象づけられるような態様で用いられているとはいい難いものも散見される。その他,原告らは,
繊維ニュース及び繊研新聞の発行部数を示す証拠(甲
253,254)を提出するが,これらは何人も書き込みが可能で掲載情報の真偽も明らかとはいえないフリー百科事典ウィキペディアであり,その掲載内容を裏付ける証拠は提出されていない。
さらに,原告らは,令和2年における広告宣伝を示す証拠(甲195~198,200~207,210)を提出するが,これらのうち,全国規模の新聞への掲載は2件にすぎず,ほとんどが発行部数等が多くない専門誌,地方紙等に掲載されたものである上,空調服の文字が用いられた原告商品の広告が誌面に比して小さいものも少なくなく,広告において空調服の文字は用いられているとしても,原告らの名称の表示がごく小さく,直ちに原告らの出所識別標識として,需要者,取引者に認識され,印象づけられるような態様で用いられているとはいい難いものも散見される。
以上の新聞,雑誌等における紹介及び広告をもってしては,本願商標が,原告らの出所識別標識として,本願指定商品の需要者,取引者の間に強く印象づけられるとはいい難く,本願商標に係る新聞,雑誌による広告宣伝効果は,限定的であるというべきである。
c
JRの主要駅構内に設置された大型ビジョンにおける広告

令和元年7月15日~21日の間にJRの主要駅構内に設置された大型ビジョンにて行われた原告商品の広告(甲70の26~28)は,7日間という短い期間である上,空調服の文字が表示された画面は,原告商品を着用したモデルと拡大したファンが全面に映し出され,その左上に

風を着る。空調服(小さく「TM

の文字が付されている。)」の文字が,広告全体の8分の1ほどの大きさで表示されているものの,原告らの名称が表示されていない上,原告らの登録商標であるDCマークなる標章が表示されているとしても,DCマークが原告らの出所表示として広く知られているというような事情も見いだせない。したがって,当該広告に接する者が,これを原告らの出所表示と理解し,空調服を付した商品を原告らが取り扱っていると認識するとはいい難い。
そうすると,上記広告をもってしては,本願商標が,原告商品の出所識別標識として,本願指定商品の需要者,取引者の間に強く印象づけられるとはいい難く,上記広告は,それほど効果的であるとはいえない。
d
展示会への出展

原告らは,原告ら代表者の陳述書(甲32)における記載を根拠として,平成16年~平成29年4月1日に全国で原告商品を42回展示会に出展したと主張し,これに加え,平成29年~令和元年に展示会に出展した事実を示す資料(甲49の56,甲70の4・8・10,甲71の11・22・43・47・57・118・120・136,甲73の27)を提出する。
しかし,上記資料からは,原告らが原告商品を展示会へ出展したことはうかがえるものの,本願商標の使用状況を把握できるものは一部の展示会に係るものに限られる。また,展示会自体の規模や原告らの展示ブースへの来訪者数も明らかにされていない。
そして,展示会の様子を示す資料(甲207)については,展示会自体の規模や原告らの展示ブースへの来訪者数も明らかにされておらず,広告コンサルタントの報告書(甲321の1)については,いつ,どこで開催された展示会であるのか,その規模や原告らの展示ブースへの来訪者数も明らかにされておらず,展示会の出展報告書(甲322,323)については,原告らの展示会出展担当者の作成によるもので,その掲載内容を客観的に裏付ける証拠は提出されていない。その余の展示会において,本願商標がどのように使用され,どのように来訪者の目に触れたのか,具体的な展示状況は不明といわざるを得ない。
したがって,上記の展示会への出展をもってして,本願指定商品に係る需要者,取引者における,本願商標の認識度を客観的に把握することはできない。e
ウェブCM

ウェブCM及びそのYouTubeでの再生回数について,原告空調服のプレスリリース(甲38)及び原告ら代表者の陳述書(甲32)は,客観的信頼性に乏しい。
また,当該CMが映画館でも展開され,全国のユナイテッド・シネマ,シネプレックス30劇場(南古谷・上里・久山・あしかが・熊本の5劇場を除く。)において,平成29年8月11日~26日の間に15秒のスクリーン広告として放映されたことはうかがえるものの,上記期間中の上記30の劇場における当該CMの鑑賞人数,放映回数は明らかにされていない。
したがって,上記CMをもって,本願指定商品に係る需要者,取引者における,本願商標の認識度を客観的に推し量ることはできない。
f
広告宣伝費

原告らの主張する原告商品の広告宣伝費用を裏付ける証拠は,原告ら代表者の陳述書(甲32)であり,客観的信頼性に乏しい。また,令和元年(平成31年)度の広告宣伝費用に係る証拠(甲76の1~7,甲247)は,いずれも,本願商標を用いた原告商品の広告宣伝費に係るものであるのか不明である。したがって,本願商標の使用期間における,本願商標を用いた原告商品に係る広告宣伝費の規模を客観的に把握することはできない。
g
テレビ放送等での紹介

原告商品は,テレビ番組の中で紹介されており,平成29年4月1日までに,ニュースや情報番組,バラエティー番組等において,全国ネットで合計35回にわたり,地方局においても合計35回にわたり紹介され,BS,CS,ケーブルテレビ放送等でも8回にわたり紹介された(甲39,40,134)ことがうかがえるほか,同日以後も現在に至るまで,全国放送を含むテレビ番組及びラジオ番組の中で紹介された(甲70の4,甲71の11・12・34・42・141,甲75)。しかし,原告商品が紹介されたテレビ番組等の視聴者数は不明である。この点,ガイヤの夜明け(甲39の1)等の視聴率(甲248,250,251)のほか,視聴率も不明である。
また,それら番組の中には,
空調服の文字が登場しないもの(甲40の10・
16・19・23・31・39・52・56・58),原告らのいずれの名称も登場しないもの(甲40の2・6~8・11・15・16・20・25・34・38・40・51~53・55・56・58,甲71の141,甲99),放送時間帯が早朝であるもの(甲40の4),空調ざぶとん,ベスウォーマー,空調スーツ及び空調リュック等,原告らの他の商品の紹介であって原告商品がメインで紹介されていないもの(甲40の10・24・48・49・57,甲252の3),英語で放送されたもの(甲40の23),新聞の番組表のみであって放送内容が不明なもの(甲75)もある。
そして,DVD(甲40,99,134)によると,日経スペシャルガイヤの夜明け(甲134の12)とじゃぱんセールスマン(甲40の19)を除き,原告商品の紹介時間は,おおむね15秒から4分程度である。さらに,じゃぱんセールスマンは,30分ほどの放送であるものの,番組中に空調服の文字は見いだせない。
その他,原告らの従業員が作成した動画視聴報告書(甲252の1・2)は,客観的信頼性に乏しい。
そうすると,これらのテレビ放送,ラジオ放送における紹介をもって,本願商標が,本願指定商品の需要者,取引者の間に強く印象づけられるとは考えにくく,本願商標に係るテレビ放送,ラジオ放送による広告宣伝効果は,限定的であるというべきである。
h
公的機関からの表彰,認定等

地球温暖化防止に顕著な功績のあった個人又は団体に対して表彰を行う地球温暖化防止活動環境大臣表彰の技術開発・製品化部門について,どのような基準で表彰がされるのか,また,公益社団法人全関東電気工事協会からの推奨品としての認定について,どのような基準で認定対象が選定されるのか,これらに表彰や認定がされることと,本願商標が原告商品を表す商標として周知であることがどのように結びつくのかは,明らかにされていない。
また,上記環境大臣表彰の具体的な受賞理由(甲44)によると,当該受賞については,技術的側面が評価の対象となっていることが明らかであり,本願商標が原告商品を表す商標として周知であることが表彰されたものとは到底いえない。さらに,原告らが他社と共同で開発した商品空調服エレファンがグッドデ
ザイン賞を受賞したことについては,

建設業従事者がより安全・安心・快適な作業ができるよう独自の工夫がこらされている。

と評価されており(甲311),上記受賞と本願商標が原告商品を表す商標として周知であることが,どのように結びつくのか不明である。
そうすると,これら公的機関からの表彰,認定等をもって,本願商標が,原告商品の出所識別標識として,本願指定商品の需要者,取引者の間に強く印象づけられるとは考えにくい。
(カ)小括
上記(ア)~(オ)によると,原告らは,平成16年から本願商標を原告商品に使用しているといえるとしても,その使用期間,使用地域等の具体的な使用実績,本願商標を使用した原告商品の売上高,市場シェアは,量的規模等の客観的な事実に基づいて証明されていない。そして,広告宣伝等について原告らが提出する証拠によって,本願商標が付された原告商品が使用された状況を総合的に考慮しても,本願商標は,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものということはできない。
したがって,本願商標が,商標法3条2項の要件を具備しないとした本件審決の認定判断に誤りはない。

原告らの主張に対するその他の反論

原告らは,新聞記事やインターネット通販サイト等の記載について,順次,訂正がされていることや,記事中の空調服が原告商品を指していることは明らかであること等を主張するが,それらの事情を需要者が理解しているといった事実は見いだせない。また,実際に原告らが空調服の文字の用い方について新聞社に対して申入れをしたのは,本件審決の数か月前にすぎない。むしろ,原告らは,平成16年に原告商品の販売を開始して以来,15年程にわたり,
空調服の文字を自
ら記述的に使用し,また,ライセンシーに対し,原告らの出所表示とは認識できない方法で
空調服
の文字を使用することを事実上許容してきたことがうかがえる。
そして,上記15年の間に,各種新聞記事や作業服販売に係るウェブサイトにおいて,
空調服の文字が,作業服のカテゴリー,すなわち品質を表すものとして,原告ら以外の者によって用いられてきたのである。しかるに,本件審判請求後1年程度の,原告らによる申入れ等の活動をもって,
空調服の文字が,作業服の品質を
表すとの認識を覆し,原告らの出所識別標識として,需要者の間に広く浸透したということはできない。
(3)取消事由3について

前記(2)イ(ア)のとおり,原告らが空調服の文字を本願指定商品に使
用していることは確認できるものの,提出された商品カタログの写し等について,製作・頒布の事実,頒布時期,頒布数及び頒布先は,原告ら代表者の陳述書(甲32)に記載されているにとどまり,それらを示す証拠として提出されているものは平成28年のカタログ製作に係る請求書(甲115)一点のみである上,これが原告商品のカタログであることも不明である。それゆえ,本件審決は,平成16年以降,本願商標が現在に至るまで原告らによって継続的に使用されてきた事実について,提出された商品カタログの写し等からは量的に確認できないと判断したものであり,その他の要素を総合的に勘案しても,本願商標が商標法3条2項の要件を具備すると認められるほどの使用実績があるとはいえない。本件審決は,本願商標の使用の事実を見落としたものではなく,証拠を適正に評価した上で,十分に審理したものである。

ファン付き作業服における原告商品の市場シェアについては,繊維ニュースに掲載された市場シェア(出荷ベース)は,集計方法等が明らかとはいえず,原告らの市場シェアについては繊維ニュースの記載のものよりも低い可能性も否定できず,十分に客観的信頼性が担保されたものとはいえない。また,ファン付き作業服の3割以上の市場シェアは,ライセンシーによって出荷された商品の市場シェアも含み,原告らによって直接出荷された商品のみの市場シェアではないことに加え,ライセンシーが出荷した商品について,本願商標がどのように用いられたのかも明らかでない。仮に,ファン付き作業服が100億円規模の市場であり,原告らのみで3割の市場シェア(約33億円)を有していたとしても,本願指定商品通気機能を備えた作業服・ワイシャツ・ブルゾンの市場規模は,明らかにファン付き作業服の市場規模より大きい。そうすると,例えば,市場規模が5165億円である(甲328の9頁)作業服全体においてみると,原告らのファン付き作業服の市場シェア(約33億円)は0.6%程度となる。本願指定商品の市場規模は明らかでないものの,ファン付き作業服の市場規模よりは大きいものであることは明らかであるから,本願指定商品の需要者,取引者における本願商標の認識度に及ぼす影響は決して大きいものとはいえない。さらに,大手ゼネコンへの納入について,前記(2)イ(エ)のとおり,原告らと大手ゼネコンなどのユーザー企業との取引は,原告ら以外の者による紹介記事によってうかがい知ることができるにとどまり,納品書の控え(甲77)が大手ゼネコンなどのユーザー企業との取引に係るものであるのか不明であり,原告らと大手ゼネコンなどのユーザー企業が実際に原告商品を取引したことを示す書類は提出されていない。
したがって,
この点について,
本件審決は,
証拠を適正に評価した上で,
十分に審理したものである。

なお,本件審決は,令和元年8月14日付けの審尋(甲135)におい
て,原告らに対し,客観的な証拠の提出を求めた上でされたものであるところ,そのように客観的な証拠の提出を求めた上で,提出された証拠を基に,本願商標の商標法3条2項該当性を判断した本件審決には,手続上の瑕疵及び認定判断についての誤りはなく,
審決の違法性の有無を判断するという審決取消訴訟の性質からして,本件訴訟において,本件審決時に提出していなかった証拠(本件審決時以降の使用に係る証拠を含む。
)を提出し,それらの証拠を合わせた上で,本件審決における認
定判断は違法であるとする原告らの主張は,失当である。
第3
1
当裁判所の判断
認定事実
(1)空調等の語の意義

広辞苑第六版株式会社岩波書店(平成20年1月11日発行)に

よると,空調は,

空気調節の略。エア・コンディショニング。

を意味する語であり,空気調節は,

エア・コンディショニングの訳語。空調。

を意味する語である(甲190)から,空調は,エア・コンディショニングの同義語である。そして,上記広辞苑第六版によると,エア・コンディショニングは,

室内の空気の温度・湿度・清浄度などの調節。空気調節。空気調和。空調。エアコン。

を意味する語である(甲191)。イ
上記広辞苑第六版によると,服は,

①身につけるもの。きもの。

,②(和服を着物というのに対して)洋服の略などを意味する語である(乙4)。
(2)平成16年頃から平成27年頃までの原告商品である空調服の開発及び販売等の状況

原告各社について

原告空調服は,原告セフト研究所の子会社であり,平成16年2月2日に商号を株式会社ピーシーツービーとして設立され,平成17年1月7日に現商号に変更した。原告セフト研究所が主として原告商品である空調服の企画及び開発をし,原告空調服が原告商品の販売を行っている。(甲3,32,189)イ
原告商品の開発及び販売並びに新聞,雑誌等の記事等
(ア)原告ら代表者は,エアコンによる電力消費の増大への危惧等から,省
電力で涼しくする仕組みについて検討を開始し,空間全体を冷やさなくても人だけを冷やせばよいのではないかという発想に至り,生理機能により生じる汗を風によって気化させ気化熱を奪うことで人体を冷却すればよいという発想にたどり着いた(なお,
原告ら代表者は,
このような考え方を
生理クーラー理論
と呼んでいる。。

原告ら代表者が設立し,かねてディスプレー関連装置の製造販売等を行っていた原告セフト研究所は,
それらの発想の商品化のため,
平成11年頃から開発を開始し,
服の内部に適切な空気の流れを生じさせるためにファンを取り付けるなどした上衣を空調服と名付け,平成16年には,ユニフォームメーカーである株式会社サンエス(以下サンエスという。)とも協力の上,作業服としての空調服(ワ
イシャツ型,ジャンパー型,ヘルメット作業対応型[フード付き]など。いずれも1着当たり税込み9900円)の販売を開始するに至った。原告空調服が原告商品空調服
の販売を開始した当時,
衣服にファンを取り付けた製品
(電動ファン
(E
F)付きウェア。以下ではEFウェアという。)は,他に類を見ないものであった。上記の空調服は,その販売の開始前も含め,例えば,
冷房いらずの“空調服”(甲100),発汗利用し“冷房服”(甲102)といった見出しを付して,原告各社の名称,空調服との名称やその概要,基本的な原理のほか,ときに空調服の写真(甲42の1,甲101~103,甲128の1,甲129の1・2,甲130の1,甲133の1・2)や原告ら代表者の紹介等とともに,新聞等(フジサンケイビジネスアイ,中国新聞,建設通信新聞,夕刊フジ,電気新聞,日本農業新聞,ITmediaニュース,朝日新聞等)や雑誌(AERA,日経エコロジー等)で取り上げられた。(甲3,16,20,25,27,29,32,甲33の1,甲42の1・2・5,甲49の33,甲65,66,甲71の34・44・59・75・121・143・146,甲73の28,甲98,100~104,甲128の1~3,甲129の1・2,甲130の1,甲131の2・4・6・9・12,甲133の1・2・7,甲189,甲193の5,甲207,甲210の9,甲282)
(イ)原告空調服は,楽天市場を通じてのインターネット販売を含め,平成16年のうちに上記(ア)の空調服を少なくとも6500着程度販売した。そのような空調服の売れ行きを踏まえ,原告空調服は,上記アのとおり平成17年1月7日に現商号への商号変更をした上で,同年春頃以降,自社のウェブサイトにおける販売を含め,原告商品空調服の本格的な販売を開始し,メールマガジンの配信も行うようになった。(甲32,甲33の1,甲34の1,甲42の7・9,甲126,甲127の1,甲131の3,甲132の3・8,甲133の3,甲167,189,甲193の5)
その後,原告各社は,実際の現場での使用に基づいた意見を踏まえて原告商品の改良を重ねるとともに,使用される現場における需要等に即した形で,新たな形態の空調服を開発し,販売していった。平成19年までに,作業着タイプ,ブルゾンタイプ,
ワイシャツタイプのほか,
食品工場向けの
空調服
(甲129の5)

USBポート給電対応型の空調服(甲133の4),防蜂用空調服(甲42の15・17・22・23・25,甲129の9,甲131の8),農作業用空調服(甲129の6・11)など,様々な空調服が発売された。このような様々な空調服は,例えば,作業服と『冷房』合体(甲128の5),涼しさか,人目かどちら?(甲128の8)といった見出しを付して,原告各社の名称,空調服との名称やその概要,基本的な原理,作業着タイプ,ブルゾンタイプ,ワイシャツタイプ等のラインアップのほか,
空調服の写真(甲42の7・
10・11・13・14・19・24,甲120,121,甲128の4・6・7・10,甲129の3~8・12,甲130の2~5,甲131の2・3~9,甲132の1~3・5,甲133の3・4,甲167)や原告ら代表者の紹介等とともに,新聞等(ITmediaニュース,日刊工業新聞,日本石材工業新聞,日刊ゲンダイ,The

Japan

Food

Journal,全国農業新聞,農機新

聞,朝日新聞,鹿児島建設新聞,日本経済新聞,大分合同新聞,空調タイムス,読売新聞,産経新聞,農村ニュース,建設通信新聞,日本農業新聞,岐阜新聞,埼玉新聞,
繊維ニュース)
や雑誌等
(R25,
EarthGuardian,
THE
USINESS

SUPPORT,TRUCK

ステーション,Mullion
e,THE

B
NAVIGATION,デジモノ

Life,Car

Goods

Magazin

21,仏事,環境ビジネス,Sabra,サクセスVショット,埼玉県版帝国ニュース,VENTURE

Link,TPMエイジ,ショッパー,発明

ライフ,日経コンストラクション,介護ビジョン,林業新知識,日経MJ,農業経営者,ビジネスチャンス,展コミ,元気な企業ガイド等)において度々取り上げられた。平成17年からいわゆるクールビズが開始されたことから,原告商品は,暑さ対策のアイデア商品などとして取り上げられた。
(甲34の1・2,甲42の5・
7~11・13~15・17~20・22~26・29,甲105[1枚目~6枚目],甲120,121,甲128の4~10,甲129の3~9・11・12,甲130の2~5,甲131の1~9,甲132の1~3・5・6,甲133の3・4,甲167,甲193の5)
なお,
空調に関する業界誌である
空調タイムス
では,
平成18年7月26日,
東京電力主催のエネルギーソリューション&蓄熱フェア‘06特集という記事の中で,空調服が取り上げられ,服の中を空調するアイデア製品,

室内環境を空調するエアコン等とは異なるアイデア性は各方面から注目度も高く,販売量も右肩上がりに増加し今年度も二万五千着規模の販売を見込む。

などと紹介された(甲129の12)。
また,原告各社は,空調服と同様に空気の流れを利用した冷却機能を備えた空調ズボン,空調ベッド及び空調ざぶとんを開発して販売を開始し,それらについても新聞や雑誌等で取り上げられた(甲17,甲42の13・18・20・24,甲132の6,甲193の5)。
(ウ)平成20年以降も,原告各社は,屋外作業用空調服(甲129の14~19)といった新商品の開発を含め,原告商品の改良や販売拡大のための活動を継続し,バッテリの改良によるファンの駆動時間の長期化等による利便性の向上や,猛暑,クールビズの浸透,地球温暖化問題への関心や平成23年に発生した東日本大震災後の節電対策への関心の高まり等により,原告商品の販売を拡大していった。原告各社が製造・販売する空調服は,平成27年までの間に,①

トヨタ自動車やデンソーなど大手企業から高い評価を獲得。工場や工事現場などでの活用が進んでいる。

(平成20年6月2日の新聞物流Weekly。甲129の13),②

効果はテレビ番組などで紹介されたこともあって,各方面からの注目を集めた。特に大手自動車メーカーや自動車部品メーカーなどから高い評価を得て,工場や作業現場などでの活用が進んでいる。

(平成20年6月25日の雑誌ニュートラック。甲131の12),③『涼しくて一度着たら手放せない』というファンが増加中(平成20年11月号のユニフォームプラス。甲131の10),④

毎年,猛暑の到来と共にテレビニュースなどでも取り上げられるなど,真夏の定番商品としてお馴染みとなっている。

(平成22年7月13日の農機新聞。甲42の40),⑤売り切れが出るほどの人気になっている『空調服』(平成23年7月8日のねとらぼのウェブサイト。甲133の9),⑥

大手自動車企業や鉄鋼会社から食品,工事会社まで,作業員に空調服を導入している企業は実に1000社近くに上るが,最近ではオフィスで働く会社員や主婦などからも注文が舞い込んでくるという。

(平成23年7月20日のAFPBBNewsのウェブサイト。甲133の10),⑦

実用性と利便性の評判は口コミでも広がり,2008年あたりからオーダも定着してきている。猛暑の昨年につづき今年もすでに主力製品は完売状態である。(平成23年9月号の雑誌

ツールエンジニア。甲131の13),⑧

『空調服』という会社をご存じだろうか。その会社が開発したユニークな作業服がいま大ヒットしているのだ。

(平成26年7月8日のプレジデントオンラインのウェブサイト。甲71の33)などといった説明を付して,原告各社の名称,空調服との名称やその概要,基本的な原理のほか,空調服の写真(甲42の27・28・31・32・35~37・40・42~46・48~51・54・55・58・65,甲46の2・9,甲71の33,甲109,111,119,甲128の11・12,甲129の13~19・21,
甲130の6~8,
甲131の10~13,
甲132の7~10,
甲133の6・7・9~13)や時には原告ら代表者の紹介等とともに,新聞等(物流Weekly,農機新聞,釣具界,建設工業新聞,農業共済新聞,日本農業新聞,埼玉新聞,花卉園芸新聞,訪販ニュース,フジサンケイビジネスアイ,朝日新聞,北國新聞,毎日新聞,読売KODOMO新聞,AFPBB

News,日本経済新

聞,電気新聞,日刊ゲンダイ,化学工業日報)や雑誌等(鋼構造ジャーナル,Big
Life,ニュートラック,あんしんLife,農耕と園藝,農業経営者,洗
濯の科学,ユニフォームプラス,アクセス埼玉,ハーモネート,長崎の果樹,戦略経営者,ダイム,モノ・マガジン,アスキー,日経トレンディネット,経理ウーマン,地上,石垣,ツールエンジニア,GOSMANIA,GetNavi,ビル経営,散歩の達人,メカトロニクス,自動車リサイクル,NTTファシリティーズジャーナル,森林組合,ケンプラッツ,プレジデントオンライン,サンケイビズ)で取り上げられた。(甲30,甲42の27~37・39~46・48~51・53~55・58・65,甲46の2・7~9,甲71の33,甲109,111,119,甲128の11~13,甲129の13~22,甲130の6~8,甲131の10~13,甲132の7~10,甲133の5~13,甲189,甲192の17)

カタログについて
(ア)原告空調服は,平成17年から平成27年までの間,毎年,原告商品
の写真や空調服との名称等を掲載したカタログを作成し,頒布していた(甲105[1枚目~6枚目・13枚目~32枚目],甲194)。
(イ)カタログの作成数は,平成17年版が2000部(甲330の1),平成18年版が4300部(甲331の1~3),平成19年版が8000部(甲330の2・3)平成20年版から平成23年版が各9000部

(甲330の4,
甲331の4~6),平成24年版が1万部(甲331の7),平成25年版及び平成26年版が各1万2000部(甲331の8・9),平成27年版が3万5000部(甲331の10・11)であった(甲194)。
(ウ)原告空調服は,平成17年から平成27年まで,それらのカタログを全国的に配布していた(甲194,甲332の1~7)。

展示会への出展について
(ア)原告空調服は,平成18年10月頃に東京国際フォーラムで開催され
たアグリビジネス創出フェアに出展し,防蜂用空調服を展示した(甲42の15)。
(イ)原告空調服は,平成19年5月18日から同月20日まで,ポートメッセなごや(名古屋市国際展示場)で開催された,国際福祉健康産業展ウェルフェア2007に出展し,空調服や空調ベッド等を展示した(甲32,甲42の20,甲120)。同展の来場者数は,約8万人であった(甲354の2)。(ウ)原告空調服は,平成19年7月11日から同月13日まで,東京ビッグサイトで開催された省エネ&リサイクルフェア2007に出展した(甲120)。
(エ)原告空調服は,平成19年10月18日及び同月19日に,福井県産業会館で開催された北陸技術交流テクノフェア2007に出展した(甲32,120)。同展の来場者数は,約2万人であった(甲354の3)。(オ)原告空調服は,平成19年10月31日から同年11月2日まで,東京ビッグサイトで開催された,中小企業基盤整備機構が主催する中小企業総合展2007(日本全国から約500社が出展)に出展し,空調服を展示するなどした(甲32,121)。同展の来場者数は,約3万6000人であった(甲354の4)。
(カ)原告空調服は,平成19年11月27日及び同月28日に,東京国際フォーラムで開催されたアグリビジネス創出フェアに出展した(甲120)。(キ)原告空調服は,平成19年11月28日から同月30日まで,東京ビッグサイトで開催されたパテントソリューションフェアに出展した(甲32,120)。
(ク)原告空調服は,その後も,平成28年までの間に,毎年,上記のような各種の展示会に出展した(甲32,116,弁論の全趣旨)。

原告商品のテレビ番組における紹介について
(ア)空調服は,その発売前の平成14年頃から,テレビのニュースや
TBSテレビのサンデージャポンで取り上げられたりし(甲40の13,甲99),平成16年末頃までに,各地のニュースやテレビ朝日のスーパーJチャンネル,日本テレビの億万のココロ等で,原告各社の社名や空調服という商品名を示して紹介された(甲40の5・33・37・38・41~46,甲134の1~4)。
(イ)平成17年以降も,空調服は,春から夏頃の時期を中心に,TBSテレビの
朝ズバッ!
等を含む全国放送又は地方放送のニュースや情報番組で,
原告各社の社名や空調服という商品名を示して紹介された。原告ら代表者が,フジテレビの
笑っていいとも!
に出演し,
原告空調服の名称を示して
空調服
の紹介をしたこともあった。また,平成26年には,テレビ東京の日経スペシャルガイアの夜明け空調服で
が取り上げられ,
原告空調服の社名はもとより,

空調服が3年前から兵庫県姫路市の大和軌道製造という会社で導入されていることや,4年前にリチウムバッテリーに変更してから一気に大ヒット商品となり,今年は既に25万着を売り上げており,既に売り切れ状態であることなどを含め,空調服が詳しく紹介された。(甲40の3・4・9・10・12・14・17・18・21・22・26~30・32・35・47~50・54・57,甲134の5~10・12)
(ウ)上記の各テレビ番組における紹介は,平成14年頃から平成27年までの間において多数回にわたるものであり,その中では,作業服のみならず,番組によっては,ワイシャツやブルゾンについても取り上げられていた(上記(ア),(イ)の括弧内掲記の各証拠)。

原告商品の企業における導入例について
(ア)電気設備工事を業とする株式会社関電工(以下関電工という。)
は,平成23年,配電部門に空調服を導入した(甲50の5,甲111)。(イ)電気設備工事を業とする株式会社トーエネック
(以下
トーエネック
という。)は,平成27年,酷暑期の環境改善策として,
空調服を採用した(甲
48の33~35)。
(ウ)建築業界で
空調服
が普及し始め,
平成27年7月には,
大林組が,
現場作業着に空調服を採用した。同月15日までの時点で,協力会社からは400着超の要望を受け,社内向けには1810着を発注し,その後の3年間で導入実績は6000着となった。(甲42の61~63,甲46の5・7・9,甲50の5,甲71の127・128・133,甲86,110,甲131の15)(エ)戸田建設株式会社は,平成27年度から,協力会社の作業員に対し,空調服の購入に係る補助制度を開始し,約3600名の作業員に空調服を支給した(甲8)。
(オ)大林組による導入は,平成27年7月28日の日本経済新聞や,その他のメディア(フジサンケイビジネス,サンケイビズ等)で報道されたほか,上記(ア)~(エ)の事実は,業界誌への掲載等によって広く知らされた(上記(ア)~(エ)の括弧内掲記の各証拠)。
(3)平成28年頃以降におけるEFウェアの市場の拡大と原告商品の販売等の状況

他社の参入等について

前記(2)イのとおり,EFウェアという商品分野は,従来,原告商品空調服の販売により開拓され拡大されてきたものであり,平成27年頃までは,EFウェアの市場は,原告空調服と,原告セフト研究所から空調服の製造及び販売に関して許諾を受けたサンエスによって独占されていたが,その需要が急速に拡大したことにより,平成27年頃には他社がEFウェア市場に参入するようになり,平成28年に原告各社がサンエスとの提携関係を解消したことにより,サンエスが空調風神服の販売を開始し,
さらに,
アパレル各社がEFウェアを売り出すなどした。
そして,
平成29年以降,
市場が更に拡大し,
様々なメーカーがEFウェアの開発,
販売を行い,多彩な形態のEFウェアが次々と販売されていく状況となった。このような中で,原告各社も,ベスト型の空調服や制電空調服(静電気を嫌う環境での着用に適した空調服),ゴルフウェアの空調服などを開発し,発売するとともに,空調リュックなど,EFウェア以外でも空調シリーズの商品を販売していった。(甲32,甲42の71,甲47の1・7,甲48の9・10・20・30・36・37・39,甲49の2・4,甲50の1~4,甲51の1,甲53,甲71の30・116・124・132・133・138・145・157・158・161,甲72の3,甲73の26・27,甲74の3・4・12・18・22・27・53・59・74・85・93~99・108・109・111~114・120・121・131~133・139・140・143・153・156・160・164・168・175~177・180・183・187,甲189,甲192の2・14・17・83・102,甲281)イ
原告商品の新聞,雑誌等の記事等について
(ア)原告各社が製造・販売する
空調服
については,
平成28年以降も,

①各地の農機展示会でもすっかりおなじみの製品,

毎年猛暑の到来とともにテレビニュースなどでも取り上げられるなど,真夏の定番商品となった感がある。

(平成30年1月1日の農機新聞。甲43),②

全国の建設現場で空調服(東京都板橋区)の“空調服”が活躍している。

『一度着たら手放せない製品』として評価を高めている。

(平成30年8月20日の建設通信新聞のウェブサイト。甲71の31・60),③

『これが支給されるかどうかで,求人募集への反応が左右される』(作業服販売店)というほど,ファン付きウェアは夏の現場では必須の存在となった。

生みの親とされるのは,その名も『株式会社空調服』(東京都板橋区)だ。

(令和元年8月21日の読売新聞。甲71の145,甲192の17),④

『空調服』(東京)が開発した,腰に小型ファンを付けた作業着の今夏の販売は前年同期の1.5倍を超える。

(平成30年8月22日の毎日新聞及び同月23日の多数の地方紙等の新聞。甲71の63・85~107),⑤ファンウェアが,主要マーケットである建設業界だけでなく一般市場でも注目され始めている。スポーツメーカーを筆頭に多くの企業がファン付きウエア開発に乗り出す中,その先陣を切っているのが『空調服(TM)』だ。,

現在はスーパーゼネコンを筆頭にゼネコン各社,電気設備工事各社,エレベーター各社など数多くの企業の作業着として採用されている。

作業着分野で不動の地位を確立した『空調服(TM)』が目指すのは,新たな市場の開拓だ。

(令和元年6月21日のWWDJAPANのウェブサイト。甲71の125,甲21
0の9),⑥熱中症対策の欠かせない工事現場や工場で,いまや必需品となっているのがファン付きの作業着だ。元祖の『空調服』は今年,130万着の販売を見込む。開発したのはその名も『空調服』という東京都板橋区の会社の会長(令和元年8月18日の
日本経済新聞甲71の144)

などといった説明を付して,
原告各社の名称,
空調服との名称やその概要,基本的な原理のほか,
空調服
の写真(甲42の66,甲48の39,甲49の3・16・25・30・33・48・57,甲71の113・118~120・123・146・149・157・159~161,甲108,甲129の24,甲130の9,甲131の14・15)や時には原告ら代表者の紹介等とともに,新聞等(日本経済新聞,電気新聞,繊維ニュース,農機新聞,アグリジャーナル,日本屋根経済新聞,日本物流新聞,建設通信新聞,毎日新聞,物流ニッポン,日刊帝国ニュース,日刊ゲンダイ,サンスポ,読売新聞,フジサンケイビジネスアイ,多くの地方紙)や雑誌等(ユニフォームプラス,
理念と経営,
ビル経営,
ビルメン,
ワークウエアMONOスペシャル,
戦略経営者,電気と工事,電気現場,電気管理技術,地球温暖化,オートバイ,WWD

JAPAN,
Under400)
で取り上げられた
(甲42の66,
甲43,

甲47の1,甲48の39,甲49の3・6・16・20・25・30・33・48・52・57,甲71の31・60・63・72~80・83・85~107・112・113・117~121・123・125・142・144~146・149・157・159~161,甲108,甲129の23・24,甲130の9,甲131の14・15,甲210の9)。
(イ)平成30年8月20日のWedge(甲65,甲71の62)や同月27日の日経ビジネス(甲71の65)では,空調服を着た原告ら代表者の写真を掲載し,空調服を説明する記事が掲載された。
また,令和元年8月17日の現代ビジネスの一度着たら手放せない!猛暑の救世主『空調服』ヒットの背景では,例年通り今年も,猛暑の折『空調服』が多くのメディアで取り上げられている。最近では“ファン付きウェア”とも呼称されつつあるが,ポータブルオーディオプレーヤーがその元祖である『ウォークマン』と世界中で呼ばれ続けたように,ファン付きウェアも巷では空調服と呼ばれることのほうが多いように思う。と記載した上で,空調服がヒットしたことについて記載がされている(甲192の102)。
(ウ)EFウェアと
空調服
や原告空調服との関係について,
上記(ア)の③,
④及び⑥のほかに,次のような記事がある。a
令和元年6月4日(同月24日の訂正後のもの)の繊研新聞の

EFウェアは原告空調服が平成16年に発売したのが最初とされている旨の記事(甲74の98・142)
b
令和元年7月17日の読売新聞及び同月28日の読売新聞オンラインのファン付きウェアについての

作業服メーカーの空調服が2004年にこうしたウェアを発売し,建設現場など屋外で働く作業員の熱中症対策として主に利用されてきた。

との記事(甲74の153・164,甲192の100・101)
c
令和元年7月22日の
産経WEST同月23日の

産経新聞


同月24日のサンケイビズ及び同年8月8日の産経新聞のファン付き作業服を平成16年に『空調服』の商標で売り出したのが,同じ社名の原告空調服である旨の記事(甲71の133・143,甲285,287)d
令和元年8月17日の日経新聞電子版のファン付き作業着の元祖である『空調服』の開発者が,原告空調服の会長である原告ら代表者である旨の記事(甲289)
e
令和元年8月23日の
auWebポータル経済ITニュース


の『空調服』の製品を開発したのは,原告ら代表者である旨の記事(甲290)及び同日のYahooニュースの原告ら代表者が『空調服』の生みの親である旨の記事(甲282)f
令和元年8月29日の日刊ゲンダイDIGITALの『空調服』が原告空調服の特許商品である旨の記事(甲291)g
令和元年8月30日のLIMOの『空調服』の開発者が原告ら代表者である旨の記事(甲283,292)h
令和元年9月8日の読売新聞のEFウェアの生みの親とされるのは原告空調服である旨の記事(甲74の187,甲192の19)i
令和元年9月30日の
日経XTECH
及び同年10月3日の
日経コンピュータの
ファン付き作業服の『空調服』はベンチャーである『空調服』が15年ほど前に開発した旨の記事(甲264,294)ウ
カタログについて
(ア)原告空調服は,原告商品の写真や空調服との名称等を掲載したカ
タログを,平成28年~令和2年の各年に作成し,頒布した(甲10,13,68,甲105[33枚目~35枚目],甲193の2・3)。
(イ)カタログの作成数は,平成28年版が4万5000部(甲115,320,甲331の12・13),平成29年版が4万7000部(甲331の14・15),平成30年版が7万5000部(甲331の16・17),令和元年版及び令和2年版が各●●●(甲331の18~20)であった(甲194)。(ウ)原告空調服は,平成28年から令和2年4月まで,それらのカタログを全国的に配布した(甲194,甲332の7)。

原告商品の広告等について
(ア)原告空調服の広告宣伝費は,平成29年から令和元年(平成31年)にかけて大幅に増えており,平成30年及び令和元年(平成31年)はそれぞれ前年の約倍額の宣伝広告費が支出された(甲247の1~3)。また,これらの期間において,原告セフト研究所の宣伝広告費も大幅に増えた(甲247の4~6)。(イ)平成28年
a
平成28年7月21日の
読売新聞
には,
ブルゾン型の
空調服

をプレゼントする企画に関し,原告らの空調服の写真が掲載された(甲42の67)。
b
原告空調服は,芸能人であるBを起用した2分間のウェブムービー
を制作して,これを平成28年8月1日から同年10月31日まで,YouTubeで公開し,このことは,同年10月号の雑誌ブレーンや同年11月-12月号の雑誌CMNOWで紹介された(甲42の68・69,甲122)。同年
9月5日時点で,
上記ウェブムービーの再生回数は50万回を超えていた
(甲38)

上記ウェブムービーを15秒に再編集したものが,
全国のユナイテッドシネマ,

シネプレックス30劇場(南古谷・上里・久山・あしかが,熊本の5劇場を除く。)において,平成29年8月11日から同月26日の間に,スクリーン広告として上映された(甲32,甲76の8,甲122)。
c
原告空調服は,平成28年11月29日の繊維ニュースに,
空調服を発明して,14年という記載並びに空調服の写真及び原告空調服の名称等の記載のある広告を掲載した(甲42の70)。
(ウ)平成29年及び平成30年
原告空調服は,平成29年及び平成30年に,空調服を発明して,15年など(年数は時期により異なる。)という記載並びに空調服の写真及び原告空調服の名称等の記載のある広告(甲6,甲42の71,甲48の1・5~8・11・14~16・18・19・24~28,甲49の2)や,

選ぶなら,空調服で熱中症対策。

という記載並びに空調服の写真及び原告空調服の名称等の記載のある広告(甲49の7~9・12・13・15・20・26~29・31・32・34・36・37・41・46・47・49・51・55・56,甲70の15・17・18,甲71の72)を,業界紙等(電気新聞,繊維ニュース,日刊建設産業新聞,日本物流新聞,日刊工業新聞,鉄鋼新聞,機械新聞,農機新聞,建設の安全,安全と健康,積算資料公表価格版)に掲載した。
また,原告空調服は,空調服の写真及び名称並びに原告空調服の社名(単に空調服とするものを含む。)の記載のある広告(甲48の10,甲49の38,甲70の16)や,空調服の写真及び名称等を記載した広告(甲49の10・23・35・40・45)を,同様の業界紙等(繊維ニュース,農機新聞,朝雲)に掲載した。
(エ)令和元年(平成31年)
a
原告空調服は,令和元年(平成31年)度の空調服のイメージ

キャラクターとして,サッカー元日本代表のC(以下Cという。)を起用し,Cが青空を背景に青い空調服を着て立っている画像(以下本件画像という。)を広告に用いることとし,その旨の記事が,同年7月4日までに,読売新聞オンライン,日刊スポーツ,農機新聞,建設通信新聞,繊研新聞で本件画像と共に掲載された(甲70の31,甲71の9・14・45・46,甲74の122~124,甲210の3,甲321の1)。
そして,原告空調服は,本件画像に

この空と空調服。

などという記載及びDCマークの右側に空調服の語を配置した表示(以下,この表示をDC空調服の表示という。)を付した広告を,雑誌モノ・マガジンの令和元年5月2日号の裏表紙の一面広告
(甲71の44)同年7月2日号の一面広告

(甲70の2)

同年9月2日号の見開き広告(甲70の36)として掲載した。また,原告空調服は,同様の広告を,同年7月27日,同月28日及び同月31日の読売新聞に掲載した(甲70の30・32・33)。さらに,原告空調服は,同様の広告を,同年のうちに,業界紙等(繊維ニュース,繊研新聞,ユニフォームプラス,広報とらっく)にも掲載した(甲70の5・12・24・34,甲72の1,甲195,196)。
他方で,原告空調服は,本件画像に

風を着る。空調服TM

などという記載やDCマークを付した広告を,同年7月15日から21日までの7日間にわたり,多くの者が利用する首都圏の主要なターミナル駅20駅(池袋駅,新宿駅,渋谷駅,東京駅,秋葉原駅,品川駅,恵比寿駅,上野駅,赤羽駅,巣鴨駅,吉祥寺駅,八王子駅,
三鷹駅,
国分寺駅,
横浜駅,
桜木町駅,
浦和駅,
大宮駅,
船橋駅,
高田馬場駅)

関西エリアの主要なターミナル駅5駅(大阪駅,京都駅,三ノ宮駅,天王寺駅,新大阪駅)及び名古屋駅の各構内の柱等に設置された画面(首都圏合計232面,関西エリア合計204面,名古屋駅50面)において,15秒広告として,首都圏では6分間に1回の頻度で午前5時から深夜零時まで,関西エリアでは6分間に1回の頻度で午前6時から深夜零時まで,名古屋駅では合計2720回以上放映した。なお,
この広告について,
原告空調服は,
同月16日にプレスリリースを配信した。
(甲70の26~28・31,甲199の1・2,甲210の6~8,甲321の1)
b
原告空調服は,この空と空調服と題する2分13秒のウェブ動

画を制作し,令和元年6月6日にこれを公開し,これとともに,複数の動画クリエイターにより関連動画がアップされた(甲70の1・37,甲71の4~6・8・10・54)。
c
原告空調服は,令和元年7月11日の日本経済新聞に,東芝エ

レベータ株式会社(以下東芝エレベータという。)が空調服を導入している旨を記載するとともに,空調服の写真やその原理,原告空調服の名称等を記載した一面広告を掲載した(甲71の131,甲198)ほか,同年8月28日の読売新聞に,
空調服であるFANFITシリーズの広告(写真,空調服という名称及び社名の記載があるもの)を掲載した(甲197)。また,原告空調服は,空調服TMを発明した企業としてなどという記載や空調服の写真,DC空調服の表示及び原告空調服の名称の記載のある広告(甲70の3・7・9・10・13・19・20~23・29・35,甲71の13)を,業界紙等(繊研新聞,電気新聞,建設の安全,安全と健康,農機新聞,中央労働災害防止協会の図書・用品カタログ2019)に掲載した。

展示会への出展等について
(ア)平成29年及び平成30年
a
原告空調服は,平成29年7月19日から同月21日まで,東京ビ
ッグサイトで開催された第3回猛暑対策展に出展し,空調服の試着等の提供をした(甲48の12・29)。
b
原告空調服は,平成29年7月26日から同月28日まで,東京ビ
ッグサイトで開催された総務・人事・経理ワールド2017のうち第8回省エネ・節電EXPOに出展し,空調服を展示するなどした(甲48の13・17)。
c
原告空調服は,平成29年11月8日から同月10日まで,神戸国
際展示場で開催された緑十字展2017に,販売代理店であるNSPと共同で出展し,空調服を展示するなどした(甲48の42・45,甲50の2,甲71の57)。
d
原告空調服は,平成30年5月22日から同月25日まで,東京ビ
ッグサイトで開催された地球温暖化防止展に出展し,空調服を展示するなどした(甲49の14)。同展の来場者数は,約15万8000人であった(甲354の14)。
e
原告空調服は,
平成30年6月13日に開催された
熱中症ゼロへ

プロジェクトのイベントの観測員用に,空調服を提供した(甲49の22)。f
原告空調服は,平成30年6月19日から同月27日,渋谷ロフト
の間坂ステージにおいて,空調服を含む原告空調服の商品を取り揃えたポップアップショップを開き,空調服の試着の提供,販売等をし,約900人が来場した(甲49の21・23・39,甲71の22・55・69,甲74の83,甲210の1)。
g
原告各社は,平成30年7月18日から同月20日まで,東京ビッ
グサイトで開催された猛暑対策展に出展し,空調服を展示するなどし(甲49の43・56),そのことは,繊維ニュース(甲71の47)のほか,同月21日放送のTBSテレビのサタデープラスで,空調服の名称及び画像並びに原告空調服の社名を明示して取り上げられ(甲69),また,同年8月2日の雑誌週刊新潮の熱中症に関する記事で,空調服の名称及び原告空調服の名称と共に平成16年から販売を開始した旨等が記載されて取り上げられた(甲49の54)。
h
原告ら代表者は,平成30年9月頃,空調服の発明に係る書籍

社会を変えるアイデアの見つけ方を出版し(甲52),空調服の発明者の著作である旨の説明や書評等が,繊維ニュース(甲71の66),BOOKウオッチ(甲71の81),ライブドアニュース(甲71の82),雑誌宣伝会議(甲71の110)に掲載された。i
原告空調服は,平成30年10月中旬,横浜市内で開催された緑十字展2018に出展し,空調服を展示するなどした(甲73の27,甲74の24)。
(イ)令和元年(平成31年)
a
原告空調服は,平成31年3月12日から同月15日まで,東京ビ
ッグサイトで開催された2019NEW環境展に出展し,空調服を展示するなどした(甲71の118)。
b
原告空調服は,平成31年4月6日及び同月7日,代々木公園のイ
ベント広場で開催されたOUTDOORDAYJAPAN2019に出展
した(甲70の4,甲71の120)。
c
原告空調服は,令和元年5月29日から同月31日まで東京ビッグサイトで,同年6月6日及び同月7日にインテックス大阪で,それぞれ開催された運輸・交通システムEXPO2019に出展し,空調服を展示するなどした(甲70の8・11,甲71の43・130,甲74の101)。d
原告空調服は,令和元年7月24日から同月26日まで,東京ビッ
グサイトで開催された第5回猛暑対策展2019に出展した(甲71の10・136・146・148,甲74の162,甲192の7,甲207,208,259,甲262の1,甲284)。
e
原告空調服は,令和元年10月25日から同月28日まで,京都パ
ルスプラザで開催された緑十字展2019に出展した(甲192の35,甲256の2・3,甲257の2,甲258の2・4)。
f
原告空調服は,令和元年11月27日から同月29日まで,千葉の
幕張メッセで開催された鉄道技術展2019に出展した(甲192の50,甲262の2)。

原告商品のテレビ番組等における紹介について
(ア)

平成28年に,テレビ朝日のマツコ&有吉の怒り新党,NHK
テレビのシブ5時,TBSテレビのあさチャン,日本テレ
ビのヒルナンデス,テレビ東京のワールドビジネスサテライト等の番組において,空調服又は空調服の語を含む商品名が,原告空調服の社名又はライセンシーであるヨツギ株式会社若しくはNS

(イ)

Pの社名と共に紹介された(甲4,甲40の58,甲87)。

(イ)平成29年5月20日,テレビ朝日のスーパーJチャンネルで,あの空調服が劇的進化リュック通勤に“涼感”などとして,原告空調服の社
名を示し,空調リュックが紹介された(甲71の11)。
(ウ)令和元年6月22日,原告ら代表者は,TBSラジオ久米宏ラジオなんですけどに出演して,空調服を持参して説明するなどし,その様子がTBSラジオのウェブサイトでも紹介された(甲70の4,甲71の34)。(エ)令和元年6月23日,BS朝日テイバン・タイムズで,原告空調服が取り上げられ,原告ら代表者が空調服について説明をした。そのことは,BS朝日のウェブサイトでも,原告空調服が空調服のメーカーであることを明記して紹介された。(甲71の12・42)
(オ)令和元年7月22日,テレビ東京AI・DOLPROJECT
で,原告ら代表者が空調服を紹介した(甲71の141,甲75の3)。キ
原告商品の企業における導入例及び取引先等について
(ア)清水建設株式会社(以下清水建設という。)は,平成28年に,
空調服を採用した(甲71の133,甲74の176,乙12,14,17)。原告空調服が清水建設に販売している同社向けの空調服には空調服と表示したタグが付されている(甲56)。
(イ)東芝エレベータは,平成28年夏,約3000人の社員を対象に空調服を導入するとともに,協力会社の約1000名にも貸与を決定し,合計8000着を導入した(甲245)。
(ウ)関電工は,平成28年度に,全部門の熱中症対策として空調服を導入し,
平成29年5月頃の時点では,
関係・協力会社も含め3000着以上の
空調服が現場で活用されていた(甲50の5)。
(エ)トーエネックは,原告空調服と共同で,EFウェアである作業服を開発し,平成29年6月9日から,順次,現場作業員に配備した(甲48の34・35)。
(オ)ダイダンは,平成29年8月,建設作業現場における熱中症対策と職場環境改善のため,協力会社110社を対象に,空調服1500着の購入をあっせんした(甲54,甲73の20,乙8)。
(カ)大和ハウス工業株式会社のグループ会社である大和リースは,平成28年から,試験的に協力会社の作業員向けに導入の支援を行った上で,平成30年に,建設現場での熱中症の発症を抑制するために空調服を導入し,社員用に374着を支給し,協力会社の作業員に500着の支給を補助した(甲49の11・17・19,
甲50の5,
甲64,
甲71の126,
甲73の22,
甲74の90)

(キ)エレベータの保守点検を業とする三菱電機ビルテクノサービスは,平成29年度に一部支社で試験導入を行った後,平成30年6月から,空調服約1万1000着を全社で導入した(甲60,61,甲73の15,甲74の85)。(ク)建築物の金属製内装工事を業とする菊川工業株式会社は,協力関係にある職人への空調服の無償支給を決め,令和元年7月18日に,贈呈式をした(甲71の135・137)。
(ケ)以上の(ア)~(ク)の事実は,業界誌への掲載等で広く知らされた(上記(ア)~(ク)の括弧内掲記の各証拠)。
(コ)平成28年までの時点で,原告空調服の主要取引先には,多数の自動車,鉄道,機械,金属,建設,電気,物流,食品等の幅広い企業が含まれており(甲87),原告らは,その後も幅広い各企業との取引を行っている(甲243の1~3の各1,甲343の1~82)。
(サ)株式会社九電工に原告空調服が納入している空調服には,空調服とのタグが付されている(甲55)。ク
受賞等について
(ア)平成28年9月,空調服について,公益社団法人全関東電気工事
協会の推奨品としての認定がされた(甲48の33,甲58)。
日本経済新聞では,平成29年,上記認定の事実とともに,

電力業界でも,多くの企業で空調服の採用が進んでいる。

近年空調服の導入件数が大幅に伸びている。

電力工事業界では,共同研究を行った関電工や,今年新たなオリジナル仕様の空調服を導入するトーエネック,きんでん,九電工をはじめとして,ユアテック,北陸電工,四電工など多くの企業が導入している。

まさに電力業界の熱中症対策のスタンダードとなる勢いである。

との報道がされた(甲48の33)。
(イ)原告空調服は,平成29年頃から,一般財団法人日本気象協会推進の熱中症ゼロへのオフィシャルパートナーとなっている(甲48の51,甲71の35)。
(ウ)原告セフト研究所は,平成29年12月4日,平成29年度地球温暖化防止活動環境大臣表彰において,空調服の開発・商品化と普及により,技術開発・製品化部門で受賞し,そのことが業界紙(繊維ニュース,農機新聞)で報道された(甲43,44,甲48の43・46・48,甲70の6)。(エ)原告セフト研究所と栄光マシーンセンター株式会社が共同で開発した空調服エレファンが,2019年グッドデザイン賞を受賞し,令和元年11
月13日の繊維ニュース及び雑誌ユニフォームプラス同年12月号で,原告セフト研究所が
空調服
の開発元であることを明記してその旨が報道された
(甲
256の1,甲258の3,甲297,311,312)。
(4)原告らの空調服の売上げ・シェア等

前記(3)アのとおり,平成27年頃までは,EFウェアの市場は,原告ら
及びサンエスが独占しており,ほぼ100%のシェアを占めていた。イ
繊維ニュースの取材やアンケートに基づく試算によると,平成30
年及び令和元年
(平成31年)
のEFウェアの市場規模や,
原告各社等の
空調服
のシェアは,次のとおりである。
(ア)平成30年の市場規模は,出荷ベースで80億円(ウエア,デバイス全て含む。),
ウエアは150万~160万点であり,原告各社等による空調服
の占めるシェアは,その3分の1程度である。
(イ)令和元年
(平成31年)
の市場規模は,
出荷ベースで約100億円
(ウ
エア,デバイス全て含む。),ウエアは340万~350万点であり,原告各社等による空調服の占めるシェアは,3分の1程度で業界トップである。(以上の(ア),(イ)につき,甲71の124,甲72の1,甲74の24・27・93・109,甲192の46)

ライセンシーは,原告各社との取決めに従って,ライセンスに基づいて
製造販売する空調服の商品タグやカタログにおいて,空調服が原告各社の商標である旨等を表記することとしている(甲342の1・7~21)。エ
原告各社の売上高の合計は,平成29年が約●●●●,平成30年が約
●●●●,令和元年(平成31年)が約●●●●であった(甲247の1~6,弁論の全趣旨)。そして,そのうちの●●●●が,空調服(デバイスを含む。)の売上げであった(甲333の5~7,甲351)。
(5)原告ら以外の者による空調服等の用語の使用について

新聞・雑誌,ネットショッピングサイト等
(ア)遅くとも平成30年頃以降の新聞・雑誌(繊維ニュース,繊研新聞,
建設通信新聞,電気新聞,日本農業新聞,日本物流新聞,山陽新聞,毎日新聞,中部経済新聞,読売新聞,ユニフォームプラス等),ネットショッピングサイト等のほか,EFウェアに関連する論文においては,EFウェアを示す語として,ファン付き作業服,電動ファン付き作業服,電動ファン(EF)ファン付きウエア,EFウェア,ファンウェア,EF付きウェア,ファンベスト,EF付きベスト,ファン付きベストといった名称が多く用いられている(甲72の27,甲74の1~63・67・79・81・86・87・91~102・104~114・117・119・127~133・135~140・143~153・155~194・196・199,甲192の1~103・110~114)。
(イ)他方で,EFウェア一般を示す語として空調服の語が用いられているとみられるものとして,少なくとも,被告が指摘する次のような例がある。a
新聞記事
(a)日本経済新聞の記事(乙5[平成30年4月12日],乙11[平
成29年4月11日],乙13[平成28年7月30日],乙18[平成28年5月19日]),日本経済新聞(電子版)の記事(乙38[平成27年8月26日])(b)北海道新聞の記事(乙7[平成29年8月22日])
(c)日刊建設工業新聞の記事(乙15[平成28年7月25日])(d)琉球新報の記事(乙9[平成29年7月16日])
(e)電気新聞の記事(乙10[平成29年7月6日])
(f)大阪読売新聞の記事(乙19[平成18年8月10日])
なお,①熊本日日新聞の記事(乙12[平成28年10月3日]),化学工業日報の記事(乙14[平成28年7月7日])及び建設通信新聞の記事(乙17[平成28年7月7日]は,

清水建設に関する記事であるが,
前記(3)キ(ア)のとおり,
清水建設は原告商品を採用しており,また,日刊建設工業新聞の記事(乙8[平成29年8月8日])は,ダイダンに関する記事であるが,前記(3)キ(オ)のとおり,ダイダンは原告商品を採用しているので,これらの記事は原告商品を示す語として空調服を用いたと認められるし,後記3(1)のとおり,平成27年頃には,空調服が原告商品を指すものとして需要者,取引者に広く知られていることからすると,需要者,取引者においても,これらの記事は,原告商品に関する記事と認識するものというべきである。さらに,②電気新聞の記事(乙16[平成28年7月13日])は,株式会社四電工に関する記事であるが,同社は原告空調服の取引先であり(甲244),また,河北新報の記事(乙6[平成29年8月25日])は,宮城県農業・園芸総合研究所に関する記事であるが,同研究所は,原告空調服の取引先である(甲355)から,これらの記事は原告商品を指す語として空調服を用いたと認められるし,上記①と同様に,需要者,取引者においても,これらの記事は,原告商品に関する記事と認識するというべきである。③他にも,上記の新聞記事の中には,証拠上必ずしも明らかでないものの,同様のものが存する可能性がある。
b
ウェブサイト等
(a)WORK―UNIFORM
(乙20~22。ただし,乙21,
22では,空調服とファン付き作業服が併記されている。),ワークストリート作業服館(乙25,26),ミチオショップヤフーショッピング店(乙27,28),作業着デポ(甲141の1・2),倉敷通商(甲142の2,乙29),
空調服専門店TKネットショップ
(乙32,33),

丸十服装株式会社(乙34,35),UEDAironware(乙3
9),ワークショップタマイ(乙41),Wowma!(甲144の1・2)といったネットショッピングサイト
(b)YAHOO!JAPANショッピングにおける空調服の検索結果(乙30)
(c)空調服専門サイト(甲145の2,乙31)
(d)ミツフジ株式会社のウェブサイト(乙36[平成29年11月16日])
(e)

建設通信新聞の公式記事ブログ
(乙37
[平成27年8月5日]


なお,SAFETYUNI(乙23,24)とワークショップオオタ
(乙40)の扱っている商品である自重堂,ジ―ベック,Z-DRAGON,山田辰は,いずれも原告空調服のライセンシーの商品であると認められる(甲71の7,甲72の1)から,これらのウェブサイトがEFウェア一般を示す語として空調服の語を用いているということはできないし,後記3(1)のとおり,平成27年頃頃には,空調服が原告商品を指すものとして需要者,取引者に広く知られていることからすると,需要者,取引者においても,これらのウェブサイトにおいてEFウェア一般を示す語として空調服の語を用いていると認識するとは認められない。
c
公開特許公報及び登録実用新案公報
(a)特開2017-101354(乙42[平成27年12月2日出
願]),特開2016-56467(乙43[平成26年9月8日出願])(b)実用新案登録第3206518号(乙44[平成28年6月28日出願],
)実用新案登録第3197081号
(乙45
[平成27年2月6日出願],

実用新案登録第3195731号(乙46[平成26年11月18日出願]),実用新案登録第3187092号(乙47[平成25年8月30日出願]),実用新案登録第3186431号(乙48[平成25年7月25日出願])イ
EFウェアのメーカーに係る用語の使用等

原告ら以外のEFウェアの主要なメーカー(サンエス,村上被服株式会社,中国産業株式会社,株式会社ブレイン,株式会社バートル,シンメン株式会社,クロダルマ株式会社,株式会社マキタ,タジマ[株式会社TJMデザイン],株式会社桑和等)は,EFウェアに空調服以外の名称を付しており,平成30年以降のカタログ等においても空調服の語を用いてはいない。この点,サンエスは空調風神服,村上被服株式会社はHOOH(鳳凰),中国産業株式会社はWINDZONE,株式会社ブレインは空調エアコン服,株式会社バートルは
エアークラフト(AIRCRAFT),シンメン株式会社はS-AIR,
クロダルマ株式会社はAIRSENSOR-1,株式会社マキタは充電式ファンジャケット,タジマは清涼ファン風雅,株式会社桑和はG.GROUND,サイクロンエアーなどと,各メーカーがそれぞれ独自のブランド名や商品名を用いている。他方で,空調服の語は,上記各メーカーのEFウェアの名称と並列的に,
原告空調服が手駆けるEFウェアの名称として用いられている。
(甲
50の1・3,甲59,甲72の1・2,甲74の2・3・10・24・37~39・41・46・62・67・70~72・80・82・92・109・134・156・157・197・198,甲172~188,267,弁論の全趣旨)(6)その他の事情

平成25年から平成29年までの期間において,ワーキングウェアの市
場における売上高については,主に大企業,官公庁向けの販売が約7割,主に自営業,一般向けの販売が約3割であった(甲168)。
平成30年の原告セフト研究所の売上高は,全て法人に対するものである(甲243の1の1・2,甲243の3の1・2)。また,同年の原告空調服の売上高のうち,●●●●が法人に対するものである(甲243の2の1・2)。イ
平成30年において,衣類・服装雑貨等の物販系分野における電子商取
引(EC)化率は,約13%である(甲169)。この点,作業服やユニフォームの分野におけるEC取引の比率もいまだ大きくなく,卸売業全体における比率よりもはるかに低い(甲170・171)。
2
商標法3条1項3号該当性について
(1)本願商標の検討

前記1(1)からすると,本願商標である空調服は,
室内の空気の温度・湿度・清浄度などの調節を意味する空調の語及び身につけるもの等を意味する服の語から構成されるところ,上記のとおり,
空調の語は,
室内の空気
について用いられるものであるから,
それが

の語と結びつけられた
空調服
の意味内容を,本来の字義から直ちに理解することには一定の困難がある。もっとも,一般に服によってその内側と外側が隔てられることからすると,服の内側を室内と同様の空間であるとみて,空調服について,服の内部の空間にある空気の温度・湿度・清浄度などの調節に関する服であると理解することも,相応に可能であるといえる。
また,空調と同義語であるエア・コンディショニング,特にその略語であるエアコンについて,上記の本来の空調の意義からは離れ,日常的には,冷暖房設備や電気式の冷暖房機器の意味で用いられることが多いことも公知の事実である。そして,服が末尾に来る名詞において,一般に,服に先立つ語が当該服の用途(作業服,潜水服,礼服,喪服など),当該服が用いられる環境(夏服,冬服,宇宙服など),当該服を着用する者の性質(学生服など)のほか,当該服の特徴(気密服など)を表すことも公知の事実である。それらの点を考慮すると,空調服の語については,冷暖房に関する用途や特徴を有する服という意味合いを容易に認識させるものであるということができる。そうすると,本件審決時である令和2年4月30日の時点において,本願商標である空調服は,本願指定商品である通気機能を備えた作業服・ワイシャツ・ブルゾンに使用されるときは,通気機能を備えることにより,空気の温度等を調節する機能を有する服と認識されるから,商品の品質を表示する標章に当たるということができる。
そして,本願商標は,空調服のみからなり,空調服の語を標準文字で記すという,普通に用いられる方法で表示する商標であるから,商標法3条1項3号に該当するというべきである。
(2)原告らの主張について

原告らは,原告各社が生み出した空調服の文字構成には強い独創性
があり,かつ,空調という語と服という親和性の乏しい語とを結合させて意味付けることは困難であること,空調服の語は,漢字3文字から構成される短い用語で,一連一体の語として発音され,切れ目がなく,ひとまとまりの造語として需要者,取引者に認識されてきたことから,空調と服とを分離して検討することはできないと主張する。
しかし,空調という語と服という語の親和性の程度が本来的には高いといい難いことを考慮しても,空調服の語が特定の意味合いを有すると理解できることは,上記(1)のとおりである。また,上記(1)で指摘した,服が末尾に来る一般的な名詞の例に照らしても,漢字3文字から構成される短い用語であること等から,
空調の語と服の語を分離できないということはできない。そして,空調服という文字構成を原告各社が生み出したという事情は,空調服という語を分離して解釈できるか否かを左右するものではない。

原告らは,空調服を空調と服とに分離して解釈したとして

も,空調の意味からすると,空調服が通気機能を備えた作業服の品質を表すものとはいえないと主張するが,空調の語の意義を考慮すると,通気機能を備えることにより,空気の温度等を調節する機能を有する服を認識させるものと解されることは,上記(1)のとおりである。電気機械器具品質表示規程の定めは,この認定を左右するものではない。

原告らは,空調服の語の一般的な使用例について,①原告各社等以
外のEFウェアのメーカーによっては一切使用されておらず,EFウェア等の語が定着していること,②ネット通販サイトにおける空調服の使用例については,EFウェアにおける原告商品の認知度の高さゆえに空調服の表記が用いられたものにすぎず,同表記が原告商品以外の商品の自他商品識別表示として用いられているわけではないこと,③EFウェアの取引のごく一部に係るものにすぎないネット通販サイトにおける記載(誤用例)をもって需要者,取引者の認識を判断することはできないこと,④当該空調服が原告商品を指しているものが含まれていること,⑤日本経済新聞などのメディアについては,順次,空調服が原告各社の商標であることについての訂正がされていること,⑥特許出願明細書や実用新案登録出願の明細書については,出願人がファン付き作業服の需要者や取引者であるとは限らず,
需要者,
取引者の認識を表すとはいえないことなどを主張する。
しかし,他にEFウェア等の語が存在することから直ちに,空調服の語がEFウェア等の語とは異なる意義を有するということはできないし,作業服メーカーによる用語法をもって直ちに本願指定商品の需要者の認識を表すものということはできない。また,他に原告らが主張する事情は,商標法3条2項に該当するかどうかについて考慮することができる事情とはいえても,上記(1)の認定判断を左右するものとはいえない。
3
商標法3条2項該当性について
(1)特別顕著性について

原告商品空調服は,原告ら代表者の発案により原告セフト研究所が
開発したもので,原告空調服が空調服の販売を本格的に開始した平成17年当時,空調服のほかにEFウェアは存在せず,空調服は,極めて独自性の強いものであった(前記1(2)イ)。そして,ファンが衣服に取り付けられているという空調服は,平成17年当時,他に例のない形態で,これを目にした者に強い印象を与えるものであったと解される。
また,前記2(1)で指摘したように,本願商標空調服の語の意味内容を,本来の字義から直ちに理解することには一定の困難があり,上記のように,EFウェアという商品分野がいまだ存在しなかった当時においては,空調服という語の構成も,強い独自性を有していたということができる。
そうすると,空調服という商品やその空調服という名称は,強い訴求力を有していたといえる。

上記アの事情に加えて,EFウェアという商品分野において,平成27
年頃まで約10年間は,
原告各社等によって市場は独占されていたこと
(前記1(3)
ア)及び前記1(2)イ~カで認定した諸事情,特に,空調服が原告らの商品を指すものとして,全国紙を含む新聞や雑誌で多数回にわたって取り上げられたこと,全国放送の番組を含むテレビ番組でも多数回にわたって同様に取り上げられたこと,建設会社等の企業に導入されたことなどを踏まえると,
平成27年頃までには,
空調服は,通気機能を備えた作業服・ワイシャツ・ブルゾンという商品分野において,原告らの商品として,需要者,取引者に全国的に広く知られるに至っていたものと認めるのが相当である。

その後,平成27年頃から他社がEFウェアの市場に参入するようにな
り(前記1(3)ア),新聞記事やネットショッピングサイト等においてEFウェアを示す語として空調服の語が用いられること(前記1(5)ア(イ))もあったが,原告商品空調服が上記のとおり広く知られていたために同種の商品を空調服と呼ぶ例が生じたと認められる。そして,①前記1(3)ア~クで認定した諸事情,特に,平成28年以降においても,空調服が原告商品を指すものとして,又はEFウェアの元祖が原告空調服の空調服であるとして,全国紙を含む新聞や雑誌で多数回にわたり取り上げられ,また,全国放送を含むテレビ番組等においても同様に取り上げられ,原告空調服による広告もいろいろな形態で行われ,企業における空調服の導入例も拡大してきたことなどの事情,②空調服以外にEFウェアを指す一般的な用語が用いられていること(前記1(5)ア(ア)),③EFウェアの他のメーカーにおいては,空調服とは異なる商品名やブランド名で販売活動を行っていること(前記1(5)イ),④多くの他業者の参入があっても,なお,平成30年及び令和元年(平成31年)の時点において,原告各社等による空調服はEFウェアの3分の1程度のシェアを占めていること
(前記1(4)イ)
を考慮する
と,空調服は,原告らの商品の出所を示すという機能を失うことなく,その認知度を高めていったものと認めることができる。

したがって,本件審決時である令和2年4月30日の時点において,本
願商標空調服は,使用をされた結果,本願指定商品の需要者,取引者が,原告各社の業務に係る商品であることを認識することができるものであるから,商標法3条2項に該当するというべきである。
(2)被告の主張について

被告は,原告らの主張する本願商標の使用に対し,需要者において空調服の文字を原告らの出所識別標識として認識することは困難であって,周知効果は限定的なものというべき旨等を主張し,例えば,①原告らが提出するカタログにおいて,空調服の文字は,多くが記述的に用いられていることから,需要者が出所識別標識として空調服の文字に着目するとは考えにくい,②ライセンシーの出荷した商品については,本願商標が原告らの出所を表示するものとして認識されるような態様で使用されていたのか明らかでない,この点,ライセンシーである自重堂やNSPの商品販売記事(甲71の7)やカタログとされるもの(甲73の10)の各記載からしても,需要者において,
空調服の文字を,原告らの出所
識別標識として認識するとはいえない,③新聞・雑誌等の記事及び広告について,空調服の文字が,直ちに原告らの出所識別標識として,需要者,取引者に認識され,
印象づけられるような態様で用いられているとはいい難いものが散見される,平成16年以降平成29年4月1日まで148回という掲載回数は決して多くないし,全国規模の新聞への掲載は少なく,ほとんどが発行部数等が多くない専門誌,地方紙等に掲載されたものである,④JRの主要駅構内に設置された大型ビジョンにおける広告についても,7日間という短い期間である上,原告らの名称が表示されていないことなどから,当該広告に接する者が,空調服を付した商品を原告らが取り扱っていると認識するとはいい難い,⑤展示会において,本願商標がどのように使用され,どのように来訪者の目に触れたのか,具体的な展示状況は不明といわざるを得ない,⑥テレビ放送等での紹介については,放送時間帯が早朝であるもの,原告商品がメインで紹介されていないもの,時間が短いものなどがあり,視聴率も不明である,⑦公的機関からの表彰,認定等をもって,本願商標が,原告商品の出所識別標識として,本願指定商品の需要者,取引者の間に強く印象づけられるとは考えにくいなどと主張する。
しかし,上記①について,カタログにおいて,空調服の文字が記述的に用いられている例があるとしても,前記(1)で判示した各事情,特に,平成27年頃まで原告各社等がEFウェアの市場を独占していたことからすると,そのような記述的な表現についても,EFウェアという商品の種類を指すものではなく,原告商品を指すものとして,十分な出所識別機能を有していたというべきである。また,上記②についても,同様に,ライセンシーの出荷した商品であったとしても,需要者,取引者は,原告商品と認識するというべきである。
上記③及び④についても,前記1(2)イ並びに(3)イ及びエのとおりであって,これらの新聞,雑誌等における記事や広告は,空調服の特別顕著性を認めるべき有力な事情ということができ,このことは,空調服の文字が用いられた原告商品の広告が誌面に比して小さいものや,空調服の文字が用いられていても,原告らの名称の表示がないものや小さいものなどがあるとしても,左右されない。また,前記1(6)の空調服の販売先に関する事情などからすると,専門誌に多くの広告が掲載されていることは,空調服の特別顕著性を積極的に裏付ける事情であるといえる。
上記⑤については,商品を来場者に訴求する場である企業の展示会において,原告各社が,空調服の表示を行わないなどということは,経験則上,考え難いところである。
上記⑥については,被告が主張する事情は,テレビ番組等における紹介を空調服の特別顕著性認定の根拠とすることを何ら妨げるものではない。
前記1(2)オ及
び(3)カのテレビ番組等には,その名が広く知られている著名な番組が含まれていることは公知の事実であり,
視聴率まで立証することが必要とされるとはいえない。
上記⑦については,公的機関からの表彰,認定等は,原告商品空調服が社会的に有用なものとして認められたことを示しており,空調服の特別顕著性を認定する根拠となることは明らかである。

被告は,原告商品の売上げや広告宣伝費用を客観的に明らかにする証拠
が提出されていない,繊維ニュースに掲載された市場シェアは推計にすぎず,原告商品の正確な市場シェアを把握することはできない,ユーザー企業との具体的取引の事実についても,原告らと原告商品の購入者が実際に取引したことを示す書類等の提出がないから,納入日や納入量等に基づく取引事実を確認することができないなどと主張する。
しかし,原告らは,平成29年~令和元年(平成31年)については,前記1(3)エ(ア)及び(4)エのとおり,信頼できる証拠に基づいて売上高や宣伝広告費の額を立証しているのであり,また,繊維ニュースについても,その内容は,当該業界の購読者が参考とするに足りる信用性を有しているものと認められるから,その記載に基づいて原告商品の市場シェアを認めることができる。さらに,被告が指摘する書類等は,
特別顕著性の認定に必須のものであるとまではいえず,
本件において,
そのような書類等の提出がないことから特別顕著性を否定することは,実態をみない判断であって相当でないというほかない。

その他,
被告が主張する様々な点も,
前記(1)の認定判断を左右するもの

ではないことが明らかである。
なお,原告らは,本件審判請求の手続において提出していなかった証拠であっても,商標法3条1項3号及び同条2項に関する本件審決を取り消すべき事由があることを立証するために提出することができることは明らかであって,それが妨げられる理由はない。
4
まとめ

以上によると,本願商標について,商標法3条2項該当性を否定した本件審決には誤りがあり,原告ら主張の取消事由2が認められるから,本件審決は,その余の点について判断するまでもなく,取消しを免れない。
第4

結論

以上の次第で,原告らの請求には理由があるから,これを認容することとして,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部

裁判長裁判官
森義之
裁判官
佐野信
裁判官
中島朋宏
(別紙1)
登録番号

商標

区分

出願日

登録日

登録4697002

空調

2002/10/24

2003/8/1

登録4755308

12,20,24,25

2002/11/28

2004/3/12

登録4871177

2004/2/12

2005/6/10

登録4992236

20,24

2006/3/30

2006/9/29

2013/12/6

2014/9/12

登録5715570

9,11

2013/10/25

2014/11/7

登録5774691

2015/1/28

2015/6/26

登録5794161

09,11,20,24,25

2015/4/24

2015/9/18

11,18

2016/10/17

2017/7/21

09,11,17,25

2017/7/26

2017/11/24

(標準文字)

登録5702232

空調ヘルメット
(標準文字)

登録5965315

空調リュック
(標準文字)

登録5999161

登録6072017

空調服

09,10,11,12,17,20,242016/9/20

2018/8/17

2018/9/7

(標準文字)
登録6077558

空調ズボン
(標準文字)
2018/3/27

(別紙2)
1年
開催日

2006年
2007年

2006/12/14-16エコプロダクツ2006
2007/5/18-20
第10回国際福祉健康産業展 ウェルフェア2007
2007/8/18-19
戸田ふるさと祭り
2007/10/18-19テクノフェア2007
2007/10/31-11/2中小企業総合展2007intokyo2007/11/28-30パテントソリューション2007
2007/11/27-28アグリビジネス創出フェア2007
2007/12/13-15エコプロダクツ2007
2008/2/14-15
彩の国ビジネスアリーナ
2008/10/1-3
パテントソリューション2008
2008/10/29-30アグリビジネス創出フェア2008
2008/11/26-28中小企業総合展2008
2008/12/11-13エコプロダクツ2008
2009/1/27-28
彩の国ビジネスアリーナ
2009/5/27-29
2009電設工業展
2009/6/16-18
安全健康快適フェア2009
2009/10/22-23苦情・クレーム博覧会
2009/11/4-6
中小企業総合展2009
2009/11/25-27パテントソリューション2009
2009/12/10-12エコプロダクツ2009
2010/1/27-28
彩の国ビジネスアリーナ2010
2010/5/25-28
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2010/9/14-17
国際物流総合展2010
2010/10/13-15パテントソリューション2010
2010/11/10-12中小企業総合展2010
2011/1/26-27
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2011/5/24-27
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2011/11/9-11
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2012/5/22-25
2012NEW環境展
2012/5/30-6/1電設工業展2012
2012/10/10-12中小企業総合展2012 JISMEE2013/1/30-31
彩の国ビジネスアリーナ2013
2013/5/21-23
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2013/10/30-11/1緑十字展2013
2013/10/30-11/1中小企業総合展2013
2014/5/27-30
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2014/10/22-24緑十字展2014
2014/11/12-14ホームアンドビルドショーHEADベストセレクション2014/11/19-21新価値創造展2014
2015/2/6農業・男女共同参画フォーラム
2015/5/26-5/292015NEW環境展
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2015/10/28-30緑十字展2015
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2016/5/24-27
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2016/7/13-15
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2016/7/20-22
猛暑対策展2016
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2016/11/15-17新価値創造展2016
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2017/4/8-9
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2017/5/23-26
2017NEW環境展
2017/7/26-28
省エネ・節電EXPO
2017/7/19-21
猛暑対策展2017
2017/11/8-10
緑十字展2017
2017/11/15-17新価値創造展2017
2017/6/25熱中症ゼロへ (気象庁への協賛)

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

2017年

展示会名

場所
来場者数

ビックサイト
152,966
ポートメッセ名古屋
80,681
埼玉戸田競艇場
約90,000
福井県産業会館
19,856
ビックサイト
36,000
ビックサイト
不明
東京国際フォーラム
9,409
ビックサイト
164,903
さいたまアリーナ
12,050
ビックサイト
不明
東京国際フォーラム
11,031
ビックサイト
35,000
ビックサイト
173,917
さいたまアリーナ
12,700
ビックサイト
88,532
パシフィコ横浜
不明
福井県産業会館
不明
ビックサイト
不明
ビックサイト
不明
ビックサイト
182,510
さいたまアリーナ
14,807
ビックサイト
172,515
ビックサイト
不明
ビックサイト
不明
ビックサイト
47,004
さいたまアリーナ
14,898
ビックサイト
157,905
インテック大阪
15,328
ビックサイト
不明
さいたまアリーナ
15,491
ビックサイト
162,586
インテック大阪
93,744
ビックサイト
不明
さいたまアリーナ
16,487
ビックサイト
165,810
インテック大阪
18,949
ビックサイト
不明
ビックサイト
167,210
ビックサイト
10,832
ビックサイト
13,927
ビックサイト
48,550
武蔵野スイングホール
約150
ビックサイト
167,540
ビックサイト
2,635
名古屋市中小企業振興会館
20,552
ビックサイト
49,551
ビックサイト
167,540
ビックサイト
35,017
ビックサイト
30,679
神戸
20,552
ビックサイト
49,551
池袋サンシャインビル
5,000
代々木公園イベント広場
102,640
ビックサイト
158,197
ビックサイト
45,384
ビックサイト
38,463
神戸
ビックサイト
池袋サンシャインビル
6,000

2
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