判例検索β > 令和2年(行ケ)第10133号
審決取消請求事件 商標権 行政訴訟
事件番号令和2(行ケ)10133
事件名審決取消請求事件
裁判年月日令和3年3月30日
裁判所名知的財産高等裁判所
権利種別商標権
訴訟類型行政訴訟
裁判日:西暦2021-03-30
情報公開日2021-03-31 18:01:52
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令和3年3月30日判決言渡
令和2年(行ケ)第10133号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

令和3年2月18日
判決原告
京都府茶協同組合

同訴訟代理人弁理士

被告特
同指定代理人

阿曾裕樹半田正人石小塚利恵主許良庁平長官文1
原告の請求を棄却する。

2林
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求
特許庁が不服2019-009420号事件について令和2年9月30日にした審決を取り消す。

第2

事案の概要

1
特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)


原告は,Ujichaの文字を標準文字で表して構成される商標(以下本願商標という。)について,第30類に属する願書記載のとおりの
商品を指定商品として,平成29年3月7日に登録出願された商願2017-29699に係る商標法11条3項の規定による団体商標登録出願として,
同年9月6日に登録出願をした。
その後,平成30年6月1日付けの手続補正書(甲14)により,その指定商品は第30類京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用した菓子,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したパン,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したサンドイッチ,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用した中華まんじゅう,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したハンバーガー,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したピザ,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したホットドッグ,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したミートパイ,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用した調味料,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したアイスクリームのもと,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したシャーベットのもと,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用した穀物の加工品,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したチョコレートスプレッド,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用した即席菓子のもとと補正された。⑵

原告は,平成31年4月10日付けの拒絶査定を受けたので,令和元年7月12日,拒絶査定不服審判を請求した。

特許庁は上記請求を不服2019-009420号事件として審理をした上,令和2年9月30日,

本件審判の請求は,成り立たない。

との審決(以下本件審決という。)をし,その謄本は,同年10月20日,原告に送達された。


原告は,令和2年11月11日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。

2
本件審決の理由の要旨
本件審決の理由の要旨は以下のとおりである。


本願商標は,宇治茶の語を英語読み風に欧文字で表記したものと容易に認識できるもので,構成文字全体として(京都)宇治地方で製造又は販売した茶程度の意味合いを認識できる。また,本願商標の指定商品と関連する食品や飲料の取引において,京都府宇治地方から産出する茶である宇治茶が製造,販売され,その欧文字表記としてUjichaの欧文字が広く採択されている実情がある。そうすると,本願商標は,その指定
商品との関係において,単に商品の産地,販売地,品質又は原材料を普通に用いられる方法で表示するにすぎないから,
商標法3条1項3号に該当する。



本願商標とつづりを共通にする欧文字は,遅くとも十数年前から,原告の構成員が我が国において販売する緑茶の包装に表示されていたが,当該欧文字は他の語と結合していて単独で表示されておらず,原告固有の商標として表示しているのか単なる産地表示や品質表示として表示しているのかは,外形から必ずしも明らかではないこと等から,当該表示に接する需要者をし
て,本願商標について原告又はその構成員固有の出所識別標識であると直ちに認識,理解されるとは評価し難い。本願商標は,原告又はその構成員により使用をされた結果,需要者が何人か(原告又はその構成員)の業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認められず,商標法3条2項の要件を具備しない。

第3

当事者の主張

1
取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)
(原告の主張)


本願商標が出所識別機能を有することについて
漢字表記の
宇治茶
については,
本願商標の指定商品と同じ第30類
京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を指定商品として,原告を権利者として,
地域団体商標登録がされている
(第5050328号。
以下,この登録商標を本件地域団体商標という。)。

宇治茶は,
京都府宇治地方から産出する茶という意味を持つほか,
本件地域団体商標の存在により,商品に付された場合,原告の業務に係る商品であることを示す出所識別機能を有する。


本願商標は欧文字表記であり普通に用いられる方法で表示するものでないことについて

仮に,漢字表記の宇治茶が商品の産地等を普通に用いられる方法で表示するものであるとしても,欧文字表記のUjichaは普通に用いられる方法で表示するものでない。したがって,本願商標は,商標法3条1項3号に該当しない。


地域団体商標制度の趣旨を没却することについて
仮に,本願商標が商標法3条1項3号に該当するとすれば,同法26条1
項2号により,本件地域団体商標に係る商標権の効力(同法37条1号に規定する排他権)は,Ujichaの商標に及ばないこととなる。
しかし,このようにUjichaが何人も自由に使用することができるとなると,地域団体商標制度を設けた趣旨が没却される。


小括
以上によれば,本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした本件審決の判断は誤りである。

(被告の主張)


商標法3条1項3号該当性について
本願商標は,宇治茶の語の表音を欧文字で表記したものと容易に認識
できるもので,その表記方法や書体に,特段の特徴はない。
宇治は,

京都府南部の旧郡。

(コンサイス日本地名事典第5版三省堂,乙1)を指称する語であり,茶は,

茶の若葉・若芽を摘み,飲料用に製したもの。葉茶。また,その飲料。

(大辞泉第二版
小学館,乙2)の意味を有する語であるところ,両語を結合した宇治茶は,(京都)宇治地方で製造又は販売する茶であることを認識させるものであり,辞書や書籍等で古くから親しまれている(乙3ないし6)。さらに,本願商標の指定商品と関連する食品や飲料の取引において,宇治茶(UJICHA)や宇治(UJI)等の文字は,(京都)宇治地方で産出する茶を指称する産地表示や品質表示として,広く採択,使用
されている実情がある(乙7ないし29)。
そうすると,本願商標は,その指定商品との関係において,(京都)宇治地方で製造又は販売する茶であることを認識,理解させるにすぎず,単に商品の産地,販売地,品質又は原材料を普通に用いられる方法で表示するものであり,商標法3条1項3号に該当する。

地域団体商標制度の趣旨を没却するとの主張について
原告は,本願商標が商標法3条1項3号に該当するとすれば,本件地域団体商標に係る商標権の効力は,Ujichaの商標に及ばないこととなり,地域団体商標制度の趣旨が没却されると主張する。
しかし,地域団体商標と商標(団体商標を含む。)は登録要件が異なるし(商標法7条の2第1項と同法3条2項),仮に,本願商標が登録された場
合には,産地表示等として使用する第三者にとっては,地域団体商標登録に対する先使用権(同法32条の2)で認められていた範囲よりも限定的な先使用権(同法32条)のみしか認められなくなり,また,影響を受ける商品分野や取引業界も拡大するから,公益に与える影響は深刻である。⑶

小括
以上によれば,本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした本件審決の判断に誤りはない。

2
取消事由2(商標法3条2項該当性の判断の誤り)
(原告の主張)


本願商標の使用状況
本願商標を付した本件指定商品は,概ね10年以上前から日本全国で販売されている(甲1ないし8)。
また,少なくとも甲第5及び6号証(以下,書証については,単に甲5,6などという。)によれば,当該欧文字は他の語と結合せず単独で表示されており,原告固有の商標として表示されている。

漢字表記の宇治茶が商品の産地等を普通に用いられる方法で表示するものであるとしても,欧文字表記のUjichaは普通に用いられる方
法で表示するものでないから,本願商標は出所を需要者に認識させるものである。
よって,本願商標は,原告又はその構成員により使用された結果,需要者が何人か(原告又はその構成員)の業務に係る商品であることを認識することができるに至っている。


宇治茶が地域団体商標として登録されていること
地域団体商標として登録されるには,その商標が使用をされた結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている(商標法7条の2第1項)ことを要するから,その
要件を充足する商標は,当然に,同法3条2項の需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるとの要件を充足することになる。


小括
以上によれば,本願商標が商標法3条2項の要件を具備しないとした本件
審決の判断には誤りがある。
(被告の主張)


本願商標の使用について

商標法3条2項の要件を具備するためには,使用商標は,出願商標と同一であることを要し,出願商標と類似のもの(例えば,文字商標において
書体が異なるもの)を含まないと解すべきである。
なぜなら,同条項は,本来的には自他商品識別力がなく,特定の者による独占にもなじまない商標について,特定の商品に使用された結果として自他商品識別力を有するに至ったことを理由に商標登録を認める例外的規定であり,実際に商品に使用された範囲を超えて商標登録を認めるのは
妥当ではないからである。
原告提出の使用例のうち,UJICHAの文字を単独で表示しない
事例(UJICHATEABAG(甲2))は,Ujicha

の文字よりなる本願商標とは,文字構成が相違し,互いに異なる語を表してなるから,同一ではない。
したがって,本願商標の商標法3条2項該当性の検討においては,上記事例を考慮することは適切ではないから,本件において考慮できるのは,原告の組合員である株式会社矢野園(以下矢野園という。
)がUJICHAの文字を商品の包装に表示する2例(甲5,6)にすぎない。イ
商標法3条2項所定の需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものとは,特定の者の出所表示としてそ
の商品又は役務の需要者の間で広く認識されているものをいうと解される。
本願商標に通じる宇治茶は,(京都)宇治地方で産出する茶を
指称する語として古くから親しまれ,それに相当する産地表示や品質表示として,広く採択,使用されている実情があるから,茶の産地表示として
知名度を有するところ,当該知名度は,不特定多数の者による長年の地域経済活動により育まれた地域の名声であって,特定の主体(例えば原告又はその組合員)のみにより形成されたものではない。また,当該産地表示としての知名度は,漠然とした地域との関連性を想起させるとしても,特定の主体(例えば原告又はその組合員)を想起させるような性質のもので
はない。
矢野園の前記2例(甲5,6)についてみても,これらは,矢野園が取り扱う蔵出し煎茶及び蔵出し玉露であって,その包装にはUJICHAの文字の他に,産地直送宇治などの産地表示を強調す

る記載はあるが,原告との関連やUJICHAの文字が出所表示であ
ることを示す記載はない。
本願商標に係る商品の販売実績についても,矢野園による10年以上
前の散発的な販売実績(甲7,8)を除いて,継続した販売実績(販売数量,販売額)や,矢野園以外の組合員(請求人には計137社の組合員がいる。甲4)全体による販売実績や広告宣伝実績も明らかではない。また,
宇治茶
(UJICHA)等と称して市場に流通する商品(宇治
地方で産出する茶)
のうち,
原告又はその組合員による商品が占める割合

等も明らかではない。
加えて,原告は,どの程度の地理的範囲において,本願商標が,原告の出所表示であると認識されているのかを明らかにする具体的な証拠を提出していない。


宇治茶が地域団体商標として登録されていることについて
地域団体商標と商標(団体商標を含む。)は,制度趣旨及び登録要件が異なるから,商標法7条の2第1項の要件を充足する地域団体商標が当然に同法3条2項の要件を充足することになるとはいえない。



小括
したがって,本願商標は,原告(又はその組合員)により使用をされた結
果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているものではないから,
商標法3条2項の要件を具備せず,
本件審
決の判断に誤りはない。
第4
当裁判所の判断

1
取消事由1(商標法3条1項3号該当性の判断の誤り)について


本願商標の構成
本願商標は,Ujichaの文字を標準文字で表して構成されるものであり,我が国におけるローマ字の普及状況に鑑みれば,需要者において,宇治茶の語の表音を欧文字で表記したものと容易に認識できると解され
る。


本願商標の商標法3条1項3号該当性について

広辞苑第7版(乙3,2018年1月12日発行)によれば,宇治茶は,

京都府宇治地方から産出する茶。室町時代から茶道で賞美。

であるとされ,新茶業全書(乙4,昭和63年10月1日発行),茶道辞典(乙5,昭和54年9月20日発行),
新・食品事典11水・飲料
(乙

6,1992年10月20日発行)といった書籍においても,宇治茶が,京都府宇治地方から産出する茶である旨の記載がある。
また,多数のウェブサイトにおいて,本願の指定商品又は関連する商品に関して,宇治茶,UJICHA,Ujicha,Ujicha,UJI-CHAあるいは宇治,Uji,“Uji”,UJIといった文字を包装に表示したものが掲載されている(乙7ないし29)。
そうすると,本願商標は,その指定商品との関係において,京都府宇治地方で製造又は販売する茶であることを認識,理解させるにすぎず,単に商品の産地,販売地,品質又は原材料を普通に用いられる方法で表示するも
のであって,商標法3条1項3号に該当するものというべきである。⑶

原告の主張について

原告は,漢字表記の宇治茶は,京都府宇治地方から産出する茶
という意味を持つほか,本件地域団体商標の存在により,商品に付された場合,原告の業務に係る商品であることを示す出所識別機能を有すると主
張する。
しかし,商標法7条の2は,地域名と商品名からなる商標は自他識別力を有しないため,原則として同法3条1項3号又は6号に該当すると解されることから,一定の要件を備えた場合に,

第3条の規定(同条第1項1号又は第2号に係る場合を除く。)にかかわらず,

地域団体商標の商
標登録を受けることができるとしているものであり,地域団体商標の登録を受けたからといって,当然に同法3条1項3号に該当しない(出所識別
機能を有する)ことになるわけではないことは明らかである。

原告は,欧文字表記のUjichaは商品の産地等を普通に用いられる方法で表示するものでないと主張する。しかし,前記のとおり,多数のウェブサイトにおいて,本願の指定商品
又は関連する商品に関して,UJICHA,Ujicha,Ujicha,UJI-CHA,Uji,“Uji”,UJIといった文字が包装に使用されていることが認められるし,
さらに,
国際化の進展による外国人需要者の増加や,我が国におけるローマ字の普及状況も考慮すれば,欧文字表記は,取引者において一般的に使用する範囲に属するものであって普通に用いられる方法に当たるというべきであるから,原告の主張は採用することができない。

原告は,本願商標が商標法3条1項3号に該当するとすれば,同法26条1項2号により,本件地域団体商標に係る商標権の効力(同法37条1号に規定する排他権)は,
Ujichaの商標に及ばないこととなり,

地域団体商標制度を設けた趣旨が没却されると主張する。
しかし,地域団体商標の登録を受けたからといって,当然に当該商標が同法3条1項3号に該当しないことになるわけではないことは前記アのとおりであるし,本件地域団体商標に係る効力がそれとは異なるUjichaの商標に及ばないからといって,地域団体商標制度を設けた趣旨が
没却されるとは到底いえないから,
原告の主張は採用することができない。


小括
以上によれば,本願商標が商標法3条1項3号に該当するとした本件審決の判断に誤りはない。

2
取消事由2(商標法3条2項該当性の判断の誤り)について


商標法3条2項の趣旨
商標法3条2項は,同法3条1項3号ないし5号に該当する商標でも,使
用をされた結果,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるに至ったときは,商標登録を受けることができる旨定める。これは,このような商標でも,特定の者がその業務に係る商品又は役務について使用した結果,その商品又は役務と密接に結びついて,自他識別力を有することがあるからである。
このような自他識別力を取得するには,商品又は役務の主体が特定の者であることが商品又は役務の需要者の間で全国的に認識され,また,出願商標と使用商標は少なくとも実質的に同一であることを要すると解される。⑵

使用による識別力の獲得について


原告は,
本願商標の使用の事実を立証するものとして,
原告の組合員
(甲
4)である株式会社伊藤久右衛門(以下伊藤久右衛門という。)の使用に係る甲1,2と,矢野園の使用に係る甲5,6を提出する。


まず伊藤久右衛門の使用について判断すると,同社は,かぶせ茶,煎茶,ほうじ茶についてそれぞれティーバッグを販売しているところ(甲1),
甲2は,そのうちかぶせ茶の包装について,中央上部に大きくかぶせ茶の横書きの記載があり,その下に急須用ティーバッグ,さらにその下にUJICHATEABAGと横書きで記載されており,煎茶や

ほうじ茶についても中央上部にそれぞれ茶の種類が記載されているものと推認される。
そうすると,本願商標Ujichaと甲2の表示は,その文字数や記載ぶりが大きく異なるものというべきであるから,両者が実質的に同一であると認めることはできない。
よって,伊藤久右衛門による甲2の表示については,商標法3条2項にいう使用がされたものとは認められない。


次に,矢野園の使用については,同社は,その商品の包装の中央部に,煎茶については産地直送宇治蔵出し煎茶の,玉露については産地直送宇治蔵出し玉露の大きな縦書きの記載をし,その下部に横書きで
UJICHAの記載をしているが,同包装には,原告との関連性を示す記載はない(甲5,6)。
このような記載では,原告固有の商標として表示しているのか,単なる産地表示や品質表示として表示しているのかが明らかとはいえず,当該表示に接する需要者が,本願商標について,原告又はその構成員固有の出所識別標識であると直ちに認識,理解するとはいえない。

甲7,8によれば,矢野園が包装にUJICHAの記載をした煎茶について,平成20年に東京に1万本,平成21年に金沢に1万本売り上
げたことが認められるが,販売期間,累計の販売数量,売上金額,販売地域を裏付ける証拠はなく,原告の他の組合員に関しては,本願商標を付した指定商品の売上に関する証拠は提出されていないし,原告又はその組合員による本願商標を付した指定商品の市場占有率を裏付ける証拠もない。他方で,本願の指定商品又は関連する商品に関して,原告の組合員以外の
ウェブサイトにおいて,UJICHA(乙7,8,12,13),Ujicha(乙14),Ujicha(乙9),UJI-CHA(乙10,11)といった宇治茶の欧文字表記を包装に表示した商品が掲載されている。

以上を前提に検討すると,本願商標に通じる宇治茶は,前記1⑵のとおり,京都府宇治地方で産出する茶を指称する語として広く受け入れられ,もともと特定の主体と結びつき難いものである一方,原告の組合員である伊藤久右衛門による甲2の表示については,そもそも商標法3条2項にいう使用がされたものとは認められないし,矢野園による本願商標の使用態様も,原告固有の商標として表示しているのか,単なる産地表示
や品質表示として表示しているのかが明らかとはいえない態様のものである。また,原告の組合員による本願商標を付した指定商品の販売期間,
販売数量,累計の売上金額,販売地域,市場占有率等については,矢野園による平成20年及び平成21年の散発的な販売実績を除き,これを裏付ける証拠はなく,結局,原告又はその構成員による本願商標の使用状況は明らかでない。さらに,原告の組合員以外の者が,
UJICHA,
Ujicha,Ujicha,UJI-CHAといった宇治茶の欧文字表記を包装に表示した商品を販売しているという実情がある。
これらを総合すると,本願商標が,原告又はその構成員により使用をされた結果,需要者が原告又はその構成員の業務に係る商品であると全国的に認識されているとはいえず,本願商標は商標法3条2項の要件を具備しないというべきことは明らかである。


原告の主張について
原告は,地域団体商標として登録されるには,その商標が使用をされた結果自己又はその構成員の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている(商標法7条の2第1項)ことを要するから,その要件を充足する商標は,当然に,同法3条2項の需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるとの要件を充足することになると主張する。
しかし,地域団体商標制度が,同法3条2項よりも緩和された要件で地域
の名称及び商品・役務の名称からなる商標の登録を認めるもので,例えば,要求される周知性の程度が,同項に基づき登録を受ける場合に求められるより緩やかで足りる(全国的な周知性までは求められない。)と解されることに照らせば,原告の主張が採用できないことは明らかである。


小括
以上によれば,本願商標は商標法3条2項の要件を具備しないとした本件審決の判断に誤りはない。

3
結論
よって,原告主張の取消事由は理由がなく,本件審決について取り消されるべき違法は認められないから,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官
菅野雅之本吉弘行岡山忠広
裁判官
裁判官
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