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贈与税決定処分取消等請求事件
事件番号平成28(行ウ)413
事件名贈与税決定処分取消等請求事件
裁判年月日令和2年10月1日
裁判所名東京地方裁判所
裁判日:西暦2020-10-01
情報公開日2021-03-23 16:00:36
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令和2年10月1日判決言渡
平成28年(行ウ)第413号

贈与税決定処分取消等請求事件

主1文
α税務署長が平成25年7月8日付けで原告に対してした,平成21年分の贈与税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分(ただし,いずれ
も平成28年3月7日付け国税不服審判所長の裁決による一部取消し後のもの。)を取り消す。
2
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由

第1

請求
主文1項と同旨

第2
1
事案の概要等
事案の概要
原告は,平成21年2月28日に株式会社E(以下Eという。)の株式
20株(以下本件株式という。)の贈与を受けた(以下本件贈与という。)が,本件株式の価額は0円であり,平成21年分の贈与税の課税価格に係る贈与税額はないとして,法定申告期限までに贈与税の納税申告書を提出しなかった。
これに対し,α税務署長(処分行政庁)は,Eがその発行済み株式の全てを
保有する外国子会社の所有に係る船舶70隻(以下本件各船舶という。)の価額を適正に評価すると,本件株式の価額は43億2113万4200円になるとして,平成21年分の贈与税について,課税価格を43億2113万4200円,納付すべき税額を21億5776万7000円とする決定処分及びこれに伴う無申告加算税4億3152万7000円の賦課決定処分をした(そ
の後,国税不服審判所長の裁決によりその一部が取り消され,贈与税の額は4億4987万5000円,
無申告加算税の額は8994万9000円となった。
以下,上記一部取消し後の決定処分及び賦課決定処分を,それぞれ本件決定処分及び本件賦課決定処分といい,これらを併せて本件各処分という。)。
本件は,原告が,本件各処分は本件株式の価額(本件各船舶の価額)の評価を誤った違法なものであるとして,被告を相手に,本件各処分の取消しを求め
る事案である。
2
関係法令等の定め
(1)

本件に関する相続税法
(平成21年法律第13号による改正前のもの。

下同じ)の定めは別紙2-1,租税特別措置法(平成21年法律第13号による改正前のもの。以下同じ)の定めは別紙2-2,法人税法の定めは別紙2-3,
国税通則法
(平成21年法律第13号による改正前のもの。
以下
通則法
という。の定めは別紙2-4,

金融商品取引法の定めは別紙2-5,
財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56・直審(資)17による国税庁長官通達。ただし,平成20年改正後のもの〔乙41〕。以下評価通達という。)の定めは別紙2-6記載のとおりである。(2)

財産の評価に関する定め
相続税法22条は,相続,遺贈又は贈与により取得した財産の価額は,原
則として当該財産の取得の時における時価による旨規定する。
この財産の評価に関する基本的な取扱いを定める評価通達は,船舶の価額について,原則として,売買実例価額や,精通者意見価格(船価鑑定を行い船舶取引の実情に通じた精通者の意見価格をいう。以下同じ)等を参酌して評価するものとし,これらが明らかでない船舶については,同種同型の船舶(又は最も類似する船舶)を課税時期において新造する場合の価額から償却費等を控除した価額によって評価するものとしている(評価通達136)。
なお,平成20年の評価通達改正前は,原則として調達価額(業者等から取得する場合の価額)に相当する価額によって評価するものとされていたが,中古船舶について取引市場が形成されてきたことや,インターネット等の情報通信技術の発達等により納税者等において取引価額等を把握することも容易になってきたことなどの理由から,売買実例価額等を参酌して評価することとされたものである(乙41,42)。
3
前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)

本件贈与
海上運送業等を目的とするG株式会社(愛媛県(住所省略))の代表取締
役である原告は,平成21年2月28日(以下本件贈与日という。),原告の母が保有するEの株式20株
(本件株式)
の贈与を受けた
(本件贈与)

これは,平成20年9月に発生したいわゆるリーマン・ショック以降,船舶の価値が大幅に下落していたことから,原告は,本件各船舶を所有する外国子会社の株式を保有するEの価値は0円となったと考え,これを機に,母が有する本件株式の贈与を受けることとしたものである(その後,Eは,平成
22年6月1日にG株式会社と吸収合併し,消滅した。)。原告は,本件株式の価額は0円であり,平成21年分の贈与税の課税価格に係る贈与税額はないとして,
法定申告期限までに贈与税の納税申告書を提出しなかった。
(甲
1,乙1)
なお,本件株式は,本件贈与日当時,評価通達168(3)の取引相場のない株式で,かつ,評価通達189の特定の評価会社の株式のうち(4)開業後3年未満の会社等の株式に該当するものであったため,その価額は評価通達185所定の純資産価額の方式(以下純資産価額方式という。)によって評価すべきものであり,この点については当事者間に争いがない。

(2)

本件贈与日当時のEの資産状況
一般に,我が国の海運業において広く採用されている便宜置籍船の仕組みは,日本法人が海外子会社(多くはペーパーカンパニー)を設立し,その海外子会社が船舶を所有するというものである。これにより,船舶は外国籍となるため,日本籍船と比べて,税負担や船舶の登録費用等が安くなり,海外の賃金の安い船員を雇用することができる上,為替相場の円高時に収入が実質的に減少することを免れるという利点があるとされている。
(乙34)

Eも,本件贈与日当時,上記アのような便宜置籍船の仕組みを採用しており,パナマ共和国を本店所在地とするペーパーカンパニーであるH(以下本件外国子会社という。)の発行済み株式の全部(以下本件外国株式という。)を保有し,本件外国子会社が,別表4の船舶名欄記
載の船舶70隻
(本件各船舶。
以下,
これらの船舶を個別に示すときには,
同表に付された各番号に基づき,船舶1などと表記する。)を所有していた。
なお,本件外国株式は,外国法人が発行する株式相場のない株式に準ずる株式であったため,その価額を純資産価額方式に準じて評価すべきこと
は,当事者間に争いがない。

本件各船舶には,本件贈与日当時,いずれも定期傭船契約(船舶所有者が,船員を乗船させ,備品等を備えた運航可能な状態にして船舶を貸し渡し,傭船者が,その対価として,契約期間につき定額の傭船料〔以下定期傭船料という。〕を支払う契約のこと。以下,定期傭船契約が付され
ている船舶を定期傭船契約付き船舶という。)が付されていた。
(3)

本件各処分に至る経緯
α税務署長(処分行政庁)は,平成23年10月,原告に係る平成21年分の贈与税の調査に着手し,本件各船舶の価格に関する資料として,原
告からJ株式会社作成に係る鑑定書の提出を受けた。しかし,α税務署長は,同社の用いた鑑定方法が合理的であるとは認められないと判断し,社団法人K(乙9。以下原処分庁鑑定業者という。)に対し本件各船舶の価格鑑定を依頼した。

原処分庁鑑定業者は,①本件各船舶(全70隻)のうち34隻については,取引事例比較法(取引事例に必要な修正等を加えることにより対象資
産の価格を求める方法)により価格鑑定を行い,②その余の36隻については,取引事例比較法によることが困難であるとして,当該船舶の建造に実際に要した価格(以下建造船価という。)に対し,船種に応じた調整率及び建造時からの経過年数による調整を行う方法(以下建造船価償却法という。により価格鑑定を行った

(以下
原処分庁鑑定
という。。


なお,原処分庁鑑定において採用された建造船価償却法は,船価鑑定の一手法として通常用いられている原価法(評価基準時における対象資産の再調達原価を求め,これに減価修正を行って対象資産の価格を求める方法)とは異なるものである。
原処分庁鑑定における鑑定方法の概要は,別紙3(同別紙で定義した略
語は本文においても用いる。)記載1のとおりである。原処分庁鑑定で用いられた取引事例比較法は,抽出された売買実例(比較対象実例)による比較対象船舶の価格に,船齢差や積載能力差等に係る調整のほか,定期傭船料に係る調整が行われている。これは,定期傭船契約付き船舶が中古船市場において取引されることはほとんどないため,抽出された比較対象実
例はいずれも定期傭船契約が付されていない船舶
(以下
カラ船
という。

に係るものであることを考慮したものである。そして,その具体的な調整の方法としては,評価対象船舶に係る定期傭船契約によって合意された傭船料(契約傭船料)と,本件贈与日における定期傭船料の市場水準(市場傭船料)との差額に基づく調整を行っているところ,本件贈与日における
市場傭船料の指標は傭船期間が3年までのものしか公表されていなかったとの理由から,残存傭船期間が3年を超える場合は3年の限度で調整することとしている。(以上につき,乙3~6,8,11,13,59〔枝番号を含む。〕,証人L〔以下証人Lという。〕)
原処分庁鑑定により得られた本件各船舶の価格(以下原処分庁鑑定価格という。)は,別表4の被告原処分庁鑑定価格欄記載のとおりである(なお,船舶12,22,36及び59については,当初は同欄
の括弧内に付記された金額のとおり鑑定されたが,後に国税不服審判所長の裁決〔甲6の別表7〕により誤りを指摘されたことを受け,本件訴訟提起後に鑑定額の修正がされた〔乙8の1~4〕。修正後の鑑定価格は同欄の括弧外の金額である。)。また,本件各船舶のうち,別表4の被告評価方法欄に取引事例比較法と記載のあるものが,取引事例比較

法によって評価された船舶(以下取引事例比較法に係る船舶という。)であり,同欄に建造船価償却法と記載のあるものが,建造船価償却法によって評価された船舶(以下建造船価償却法に係る船舶という。)である。(乙3~5,8〔枝番号を含む。〕)

α税務署長は,
原処分庁鑑定価格を評価通達136の
精通者意見価格
として参酌し,本件各船舶の価額を合計2226億5341万0201円(なお,本件訴訟における被告の主張額は,上記イのとおり原処分庁鑑定価格が修正されたことに伴い,合計2224億5979万0201円となっている。)と評価した上で,その評価額に基づき,本件各船舶を所有す
る本件外国子会社の全株式(本件外国株式)の価額(純資産価額)を374億5768万2000円と評価し,さらに,これに基づき,本件外国株式を保有するEの株式20株(本件株式)の価額を評価したところ,本件株式の価額は43億2113万4200円となったことから,平成25年7月8日付けで,原告に対し,平成21年分の贈与税について,別表1の
本件決定処分等欄記載のとおり,課税価格を43億2113万4200円,納付すべき税額を21億5776万7000円とする決定処分及びこれに伴う無申告加算税4億3152万7000円の賦課決定処分をした(甲2)。
(4)

本件訴訟に至る経緯
原告は,
上記(3)ウの各処分を不服として,
平成25年9月6日付けで異
議申立てをしたが,α税務署長は,同年12月5日付けでこれを棄却する旨の決定をした(甲3,4)。

イ(ア)

原告は,上記アの決定を不服として,平成25年12月25日付け
で審査請求をし(甲5),証拠書類として原告が鑑定を依頼した有限会社M(現在は株式会社。以下原告鑑定業者という。)の鑑定結果を提出した。なお,原告鑑定業者は同年9月に鑑定書を作成したが,審査請求手続の過程での指摘及び本件訴訟提起後の被告の指摘を受け,適宜修正した(甲13,15。以下,これらの修正を経たものを原告鑑定という。)。
(イ)

原告鑑定においては,①本件贈与日において売却が予定されており,
その後現に売却されている船舶1,2及び13(以下本件売却船舶という。)については,実際の売却価格から売買手数料等の諸費用を控除した価格を鑑定価格とし,
②それ以外の本件各船舶
(67隻。
以下
本件係争船舶という。)については,不動産の価格鑑定の一手法としての収益還元法(将来生み出すであろうと期待される純利益の現在価値の
総和を求めることにより対象資産の価格を求める方法)のうち,DCF法(DiscountCashFlow;連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格をその発生時期に応じて現在価値に割り引き,それぞれを合計することにより対象資産の価格を求める方法)により価格の鑑定を行っている。原告鑑定におけるDCF法の概要は,別紙3記載2のとおりであ
る。
また,原告鑑定による本件各船舶の価格(以下原告鑑定価格とい
う。)は,別表4の原告原告鑑定価格欄記載のとおりであると
ころ,本件売却船舶(3隻)については,被告が主張する原処分庁鑑定価格の合計額が原告鑑定価格の合計額を下回ることから,原告は被告が主張する評価額を争っていない(第13回口頭弁論調書参照)ため,本件訴訟において原告が主張する本件各船舶の評価額は合計1719億0888万4338円となる(同表の原告相続税評価額欄の合計欄)。そうすると,本件外国子会社においては資産額よりも負債額の方が上回ることになる(後記ウ参照)から,本件外国株式の価額及び本件株式の価額はいずれも0円となる。

(以上につき,甲13,14,16,証人N〔以下証人Nという。〕)(ウ)

国税不服審判所長は,平成28年3月7日付けで,別表1の裁決

欄記載のとおり,
上記(3)ウの決定処分のうち課税価格9億0535万0
800円及び納付すべき贈与税額4億4987万5000円を超える部分並びに賦課決定処分のうち無申告加算税額8994万9000円を超える部分を取り消す旨の裁決(甲6。以下本件裁決という。)をした(本件裁決による取消し後の決定処分及び賦課決定処分が,本件訴訟で原告が取消しを求めている本件決定処分及び本件賦課決定処分である。)。
本件裁決の理由は,要旨,①本件売却船舶(3隻)については,実際
の売却価格(ただし,諸経費を控除しない価格)に基づいてその価額を評価すべきである,②本件係争船舶(67隻)のうち,㋐取引事例比較法に係る船舶(33隻)については,原処分庁鑑定における鑑定方法は合理的であると認められるから,原処分庁鑑定を参酌してその価額を評価すべきである,㋑建造船価償却法に係る船舶(34隻)については,
原処分庁鑑定における鑑定方法が合理的であるとは認められないから,原処分庁鑑定価格ではなく原告鑑定価格を参酌してその価額を評価すべきであるというものであり,これらの判断による本件各船舶の評価額は1854億5160万7169円であり,本件外国株式の価額(純資産額価額)は80億1127万3000円であった(甲6)。

原告は,平成28年9月9日,本件訴訟を提起した。
なお,被告の主張によれば,本件外国子会社の本件贈与日における本件
各船舶以外の資産の額は375億4072万8000円であり,負債の合計額は2149億8110万2000円である(別表3-1参照)から,本件各船舶の評価額が1774億4037万4000円を超えれば,本件外国株式及び本件株式の価額がプラスに転じることになる。
4
争点及び当事者の主張
(1)

本件の争点は,本件各処分の適法性であり,具体的には,平成21年2月
28日(本件贈与日)時点における本件株式の価額(すなわち,その算定の基礎となる本件各船舶の価額)であるところ,本件売却船舶(3隻)については上記3(4)イ(イ)のとおり当事者間に争いがないため,
争われているのは
その余の67隻(本件係争船舶)の価額である。
(2)

争点に関する当事者の主張の要旨は,別紙4記載のとおりである。また,
被告が主張する本件各処分に係る課税の根拠及び計算は,別紙5記載のとおりであるところ,原告は,争点となっている点を除き,これを争うことを明らかにしていない。なお,上記各別紙で定義した略語は,本文においても用いる。
(3)

原告の主張によれば,前提事実(4)イ(イ)のとおり本件各船舶の評価額は
合計1719億0888万4338円となり,本件外国子会社において資産額よりも負債額の方が上回る(損益分岐点は1774億4037万4000円〔前提事実(4)ウ〕)から,本件外国株式及び本件株式の価額はいずれも0円となって,原告の平成21年分の贈与税の課税価格はない(納付すべき贈与税額は0円)こととなる。
これに対し,被告の主張によれば,原処分庁鑑定価格(修正後のもの)を採用するため,
前提事実(3)イ及びウのとおり本件各船舶の評価額は合計22
24億5979万0201円となり,本件外国株式の価額(純資産額)は450億1941万6000円,本件株式の価額(すなわち平成21年分の贈与税の課税価格)は51億9829万5400円となって,納付すべき贈与
税額は25億9634万7500円となる(別紙5)。なお,本件裁決による一部取消し後の納付すべき贈与税額は4億4987万5000円である(前提事実(4)イ(ウ))から,被告が主張する納付すべき贈与税額は,これを上回ることとなる。
第3

当裁判所の判断
当裁判所は,被告が主張する原処分庁鑑定価格は,本件係争船舶(67隻)で取引事例比較法が適用された船舶のうち残存傭船期間が3年以下である10隻に限って,これを精通者意見価格として参酌することができ,その余の57隻については,原告が主張する原告鑑定価格を精通者意見価格として参酌することができ,これらの価格に当事者間に争いのない本件売却船舶(3隻)の価
額を加えると,本件各船舶(全70隻)の評価額は合計1747億3573万5370円となり,本件外国子会社において資産額よりも負債額の方が上回ることとなるため,本件外国株式及び本件株式の価額はいずれも0円となって,原告の平成21年分の贈与税の課税価格に係る贈与税額はないこととなるから,本件各処分は違法であり,その取消しを求める原告の請求は認容すべきものと
判断する。その理由の詳細は,以下のとおりである。
1
認定事実
前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。

(1)

本件各船舶
本件各船舶は,①バルカー(ばら積み貨物船)
,②コンテナ船,③冷凍船,
④RO/RO船(荷物を車ごと積み降ろしする特殊船),⑤原油タンカー,⑥
プロダクトタンカー
(石油精製品を運搬するタンカー)⑦ケミカルタンカー,
(化学薬品等を運搬するタンカー)及び⑧LPGタンカーであり,本件贈与日当時,その全てに定期傭船契約が付されており,これらの契約に係る傭船者は20社であった(前提事実(2)ウ,甲13,乙35)

なお,バルカーの大きさは,小さいものから順に,㋐スモールハンディ,㋑ハンディマックス,
㋒パナマックス
(パナマ運河を運航可能な最大船型)

㋓ケープサイズ(パナマ運河を通過することができず,ケープタウン〔喜望峰〕を迂回しなければならない大型船)等と呼称される(乙34,35)。

(2)

定期傭船契約の仕組み等(乙34~36)
定期傭船契約において,船舶所有者は,船舶に船員を乗船させ,運航に必要な用品・備品,潤滑油,水・食料品等を備えて,船舶を運航可能な状態にした上で,
傭船者に対し船舶を貸し渡す。
船舶を借り受けた傭船者は,
その対価として船舶所有者に定期傭船料(ドル建て)を支払い,自ら船舶の運航を指示し,荷主との運送契約に基づいて貨物を運搬する。

船舶所有者は,船舶の維持管理に係る費用(船員費,船用品費,潤滑油費〔エンジン用〕,修繕費,入渠費〔ドック費〕,船体保険料,P&I保険料〔船主責任保険〕等。以下,これらの費用を総称して船舶管理費という。)を負担し,傭船者は,運航に関する費用(燃料費,港費,水先料等)を負担する。このほか,船舶所有者は,金融機関から借り入れた船
舶の購入資金に係る債務の金利負担も負う。
契約期間(延長期間を含む。)が満了し,再契約されることなく定期傭船契約が終了すると,船舶所有者は,他の傭船者と新たな傭船契約を締結するか,船舶を売却してその売却益を得るのが通常である。

このように,定期傭船契約を締結する船舶所有者は,傭船料収入の中から船舶管理費を支出して利益を得るほか,契約終了後の売却益も見込むことができる一方,その活動に伴う様々な経済上のリスクも負っている。すなわち,為替リスク(借入金の返済や経費の支払を円貨で行う場合),金利リスク,船舶管理費上昇リスク,中古船価下落リスク,傭船リスク(傭船料下落〔再契約時〕,傭船者の信用悪化に伴う債務不履行等),海難リスク(事故やこれに伴う油濁等),戦争・海賊リスクなどである。
これらのリスクのうち,船舶管理費上昇リスクについては,船員費,船用品費,潤滑油費,修繕費等が年々増加していくリスクのほか,特に,船舶数が増加すると,船員不足による船員費の高騰,修繕ドック不足による修繕費の上昇等のリスクが高まるとされている。

傭船者の側から見ると,
定期傭船契約を締結するに当たり,
船体の内容・
状態のほか,船舶所有者による船舶管理(船員の配乗,備品等の整備,修繕等)を評価する。そのため,定期傭船契約が付されたまま船舶が売買される
(船舶の購入者が定期傭船契約上の地位を引き継ぐ)
ことは稀であり,
中古船市場における定期傭船契約付き船舶の売買契約成立事例は,海運市場の好況・不況にかかわらず,極めて少ない。

(3)

海運市場の動向
海運市場は,昭和の終わり頃から平成15年にかけて総じて安定的に推移してきたが,同年後半以降,100年に1度といわれる未曾有の好景気(いわゆる海運バブル)に突入した。すなわち,中華人民共和国の自由貿易による輸入拡大に伴い,大型船から小型船に至る全ての船舶需要が急拡
大し,これに伴い,新造船の価格や市場傭船料も急上昇し,中古船価格も高騰した。新規の造船数も伸び,新興国を中心として荷動きが増加するとの見通しから,平成20年までに新造船の発注件数が急増した。(甲3の添付資料4,乙34)

しかし,平成20年9月15日,アメリカ合衆国の投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻したことを契機に,世界規模の金融危機であるリーマン・ショックが発生すると,それまで高騰を続けていた市場傭船料は暴落し,これに伴い,新造船の発注件数及び中古船市場における売買成約件数も激減した。もっとも,新造船については,リーマンショック前に大量に発注された分が契約どおりに竣工された・
(発
注から竣工までには通常は2年半ほどかかるが,この当時は造船所の空きがなく着工待ちが多かった関係で,竣工までに4年以上かかることも少なくなかった〔乙17〕。)こともあって,リーマン・ショック後は船腹過剰(船腹量〔運搬可能な船荷の総量〕が過剰であること。以下同じ)の状態が続き,これにより大きな需給ギャップが生じて,市場傭船料の低迷が
続く要因となった。(甲3の添付資料4,乙34)
なお,クラークソン社(イギリスの海運調査会社)の情報誌に基づくバルカー(パナマックス)の本件贈与日前後5年間に係る市場傭船料(傭船期間3年)の分析(乙28)によれば,リーマン・ショック前の相場の上昇基調のピーク時となる平成19年10月においては,1日当たりの市場
傭船料が6万5000ドルに達していたのが,リーマン・ショック後の平成20年11月には1万2000ドルに下落し(本件贈与日を含む平成21年2月には1万5500ドル),その後上昇の動きを見せたものの,平成22年4月の2万1500ドルが最高であり(リーマン・ショック前でいえば平成16年後半と同程度の水準),その後は再び下落し,平成24
年12月には10年間を通じて最低額の8750ドルとなった(乙28,43)。また,株式会社O作成の○○(乙34)によれば,リーマン・ショック後から平成29年10月現在に至る状況について,世界全体の海上荷動きは微増にとどまる一方,海運バブル期に大量に竣工した新造船の増加による船腹過剰の状態は同月現在も解消しておらず,未だに傭船料市
況は低迷しており,市況回復の見通しは立っていないとされている。このように,リーマン・ショック後は傭船料市況が低迷する一方,定期傭船契約において船舶所有者が負担する船員費や修繕費等のコストについては,船腹量の増加に伴い,むしろ高騰していたものである(上記(2)イ参照)。

本件贈与日(平成21年2月28日)当時における中古船市場の状況について見ると,リーマン・ショック直後から平成20年12月までは売買成約事例がほとんど見られなかったが,平成21年に入り傭船市場が再び上昇し始めると,傭船市場の回復を期待する買い手側と,傭船市場の急落により保有船を手放す決意をした売り手側との合意が成立するようになり,搬送貨物が多種多様で汎用性の高いバルカー(特にパナマックス以下の大
きさのもの)を中心に,売買成約件数が従前の水準に回復した(ただし,成立した契約における売却価格は,リーマン・ショック前の20~80%の水準にとどまっていた。)。一方,コンテナ船やタンカー等の中古船市場は,平成21年に入ってからも落ち込んだ状態が続いていた。(甲3の添付資料4,乙6)

(4)ア

原処分庁鑑定業者
原処分庁鑑定業者は,大正10年に株式会社Qとして設立され,昭和8
年に社団法人に改組し,名称を現在のもの(社団法人K)に変更した。事業内容は,①海事仲裁,②標準契約書式の作成・販売,③鑑定(船価鑑定のほか,工事費用の評価や船舶の接触事故に関する鑑定等)
,④情報誌の
出版,⑤セミナー・講演会の開催,⑥相談・情報提供等である(乙9)。
船価鑑定については,昭和2年以来の実績を有しており,本件各船舶の鑑定を行った時点では,3~4名の担当者(最もベテランの者は40年以上の鑑定歴を有している。
)が年間100件程度の船価鑑定を行っており,
評価通達136にいう精通者に当たる。ただし,原処分庁鑑定業者が
定期傭船契約付き船舶についての価格鑑定の依頼を受ける際(例えば,金融機関が担保価値の評価をするために価格鑑定を依頼する場合等)には,その船舶自体の価値の評価(カラ船としての価格の算定)を依頼されることがほとんどであったため,船価鑑定において定期傭船契約が付されていることを考慮に入れた価値の評価を行ったという実績はほとんど有していない。
(乙10,12,証人L)

原告鑑定業者
原告鑑定業者は,昭和58年12月に設立された,海運,造船,貿易に関するコンサルティングサービス(各種調査,鑑定,講演等)の提供等を目的とする株式会社(本件各船舶を鑑定した当時は有限会社)であり,現在,船主や金融機関等から依頼を受け,年間150~200隻程度の船舶について価格鑑定を行っており,評価通達136にいう精通者に当た
る。なお,本件各船舶の価格鑑定は,原告鑑定業者が初めて手掛けた定期傭船契約付き船舶の鑑定業務であったが,原告鑑定業者は,その後も,同様の鑑定方法により,定期傭船契約付き船舶の価格鑑定(カラ船としてではなく,定期傭船契約が付されていることを考慮に入れた価値の評価)を数多く行っている。
(甲16,証人N)

(5)

価格鑑定に関する一般的知見
不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な方法は,原価法,取引事例比較
法及び収益還元法の3方式に大別されるところ,これは船価の鑑定においても基本的に異なるものではない
(後記(6)の訴外各専門業者においても,
実際
にどの方式をどの程度用いているかは別として,船価鑑定の方法につき上記の3方式が挙げられるとする点では共通している
〔乙15~19〕)このよ
。。
うな鑑定評価の3方式は,一つの価格にそれぞれ別の側面からアプローチを試みるものであり
(いわゆる価格の三面性)相互に補完し合い同一の価格を

指向するものと考えられている。
上記3方式の概要は,
以下のとおりである。

(甲3の添付資料4。乙38,63)

原価法
評価基準時における対象不動産の再調達原価(対象不動産を評価時において再調達することを想定した場合において必要とされる適正な原価の総額)を求め,これについて減価修正を行って,対象不動産の価格を求める方法である。原価法は,再調達原価の把握及び減価修正を適切に行うことができるときに有効な方法とされている。

船舶の場合には,評価時における再調達原価から,スクラップに至るまでの償却期間に応じた減価修正を行うのが通常である。

取引事例比較法
多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い,これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行うなどして,対象不動産の
価格を求める方法である。取引事例比較法は,類似地域等において対象不動産と類似の不動産の取引が行われている場合等に有効な方法とされている。
船舶の場合には,評価対象船舶に対し,船型・船齢が近い類似船の評価時に近接した時期における売買実例を参考にして,事情補正や時点修正を
行い算定するのが通常である。

収益還元法
対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純利益の現在価値の総和を求めることによって,その価格を求める方法であり,直接還元法とD
CF法とに大別される。収益還元法は,賃貸用不動産等の価格を求める場合に特に有効な方法とされている。
船舶の場合には,評価対象船舶に付された傭船契約に基づき,評価時から契約終了時までに得られる傭船料収入から,その期間中に発生する費用を差し引くことにより運航収益を算定し,これに契約期間満了時における
推定売船価格を加え,現在価値に割り引くのが通常である。
(ア)

直接還元法
1つの期間に発生する純収益を還元利回りによって還元することにより対象不動産の価格を求める方法である。
(イ)

DCF法
連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格をその発生時期に
応じて現在価値に割り引き,それぞれを合計することにより対象不動産
の価格を求める方法である。
(6)

船価鑑定に関する訴外各専門業者へのヒアリング結果
被告は,本件訴訟提起後に,船価鑑定に係る専門業者(訴外各専門業者)
である①株式会社R(以下Rという。,②一般社団法人S(以下S)
という。,③U株式会社(U)

,④一般社団法人V(以下Vという。
)及
び⑤W株式会社(以下Wという。
)に対し,船価鑑定の方法についてヒア
リングを行い,そのうち上記①及び③に対しては,原告も質問をし,口頭又は書面による回答を得た。その結果の概要は以下のとおりである。なお,定期傭船契約付き船舶については,訴外各専門業者の見解がまちま
ちであることからも明らかなように,確立した船価鑑定の方法が存在していない。

R(甲10,乙15)
Rにおいては,銀行などから依頼を受けて,年間1000隻程度の船価鑑定を行っている。鑑定方法としては,取引事例比較法,原価法及び収益
還元法の3手法を用いているが,最も多く用いるのは取引事例比較法である。
取引事例比較法を用いる場合で,評価対象船舶に定期傭船契約が付されているときには,①残存傭船期間が3年未満の船舶については,契約傭船料と市場傭船料との差額に基づいて調整を行い,②残存傭船期間が3年を
超える船舶については,4年目以降の市場傭船料の指標が公表されていないことから,3年目までの契約傭船料と市場傭船料との差額を徐々に割り引いていく(傾斜を付けて年々小さくしていく)形で残存傭船期間の全部について調整を行っている。具体的には,仮に残存傭船期間が5年である場合には,評価対象船舶の傭船者等に対しヒアリングを行い,評価時点において評価対象船舶と同種同型の船舶について傭船期間5年の定期傭船契約を締結するとした場合にどのくらいの傭船料とするかについての意
見を聴いた上で,そのような意見に基づいて得られた契約傭船料との差額から,さらにリスクプレミアムとして数%程度の割引率を適用した調整額としている。
収益還元法を用いる場合には,㋐残存傭船期間中の収益価値から何割か差し引いた額に,㋑定期傭船契約終了時の船舶価値(将来の船価は分から
ないため,鑑定時期の市場における売買実例を参考に設定する。
)を加え
ることにより,船価を算定している。なお,上記㋐の算定に当たり,船舶管理費を毎年増やすかどうかは,近い数年のデータから上昇傾向があると判断されるか否かによって決めている。

S(乙16〔なお,ヒアリングの対象者は,一般論につき説明責任を果たせない可能性があるとして,質問応答記録書への署名押印を拒否している。)

Sにおいては,年間150隻程度の船価鑑定を行っている。鑑定方法としては,評価対象船舶と類似する船舶の売買実例がある場合には取引事例
比較法を,
そうでない場合には原価法を用いることが多い。
収益還元法は,
船価鑑定の方法の一つであるが,Sでは収益還元法を用いた鑑定は行っていない。
評価対象船舶に定期傭船契約が付されている場合でも,同契約の存在を船価には反映させず,カラ船として評価している。定期傭船契約が船価に
及ぼす影響は,様々な条件の下で判断されるものであり,売買当事者が将来の状況をどのように予測するかによっても異なるため,これを評価に反映させることはできないと考えているからである。

U(甲3,11,乙17,40,56)
(ア)

Uは,平成12年に海運大手数社の出資で設立された株式会社であ
り,金融機関等の依頼により船価鑑定を行っている。船価鑑定の手法は原則として取引事例比較法又は原価法を用いているが,収益還元法による鑑定も年間200隻程度行っている。
(乙17,56)
(イ)

定期傭船契約付き船舶に関し,その契約内容を加味して評価する場
合には,収益還元法を用いるのが一般的である。取引事例比較法による評価金額をベースとして市場傭船料と契約傭船料との差額を加減算する方法も考えられなくはないが,評価対象船舶の収支に基づく収益還元法による評価の方がより実態を反映するものと考え,収益還元法を用いることとしている。なお,上記のような取引事例比較法による方法を採用するとした場合でも,公表されている市場傭船料の指標以外に,ヒアリング等の情報に基づき損益分岐点(船舶の建造費用を回収できる価格)
に係る検証を行うことによって,残存傭船期間が3年を超える場合であっても客観性のある市場傭船料を導き出すことは可能である。
(甲11,
乙40)
(ウ)

収益還元法を用いる場合には,①残存傭船期間中の収益価値に,②
定期傭船契約終了時の船舶価値を加え,③これを現在価値に割り引くことにより船価を算定している。
なお,上記①に関し,㋐残存傭船期間を設定するに当たっては,延長オプションの行使による延長期間は含めないのが原則であるが,過去に延長オプションが行使された実績がある(行使の蓋然性が認められる)場合には延長期間を含めることもある。㋑契約傭船料が一定の幅(レン
ジ)をもって定められている場合の契約傭船料の設定については,市場傭船料の指標が存在しないときは,レンジの中間値を採用し,指標が存在するときは,市場傭船料(又はこれに最も近いレンジ内の値)からレンジの中間値に向けて残存傭船期間を通じて比例按分(残存傭船期間の最終年に中間値に至るよう調整)していくこととしている。㋒船舶管理費(船員費,潤滑油費,保険料,雑費等)については一律2%のインフレ率を設定しているが,これは,船腹量が大きく膨らんだ結果として船
員不足が常態化し,船舶管理費全体が上昇基調にあったことや,船舶管理会社が船主に対して将来の採算の見積りを示すときにも年2~3%のストレスをかけるようにしていたことに基づくものである。

上記②に関し,○契約終了時の船舶価値の算定に当たっては,現在及
び過去の中古船市場の水準を参考にしている。


上記③に関し,○収益価値及び契約終了時の船舶価値を現在価値に割
り引く際の割引率を8%としているが,これは,船種や傭船者によって期待収益に幅が出てくることを考慮し,その平均をとったものである。(以上につき,乙17,40,56)

V(乙18)
Vにおいては,年間200隻程度の船価鑑定を行っている。鑑定方法としては,取引事例比較法と原価法とを組み合わせた独自の手法を用いている。収益還元法については,船価鑑定の手法の一つではあるが,船舶管理費について根拠のある金額を設定することが困難であるため用いていない。

評価対象船舶に定期傭船契約が付されている場合でも,当該契約に関する情報を有していないため,
同契約がないものとして,
船舶本体の価値
(カ
ラ船としての価値)のみを評価している。

W(乙19)
Wにおいては,年間50件から70件程度の船価鑑定を行っている。鑑定方法としては,取引事例比較法と原価法とを組み合わせた独自の手法を用いているが,船齢が古く原価法が使用できないような船舶(スクラップ価格しかないような船舶)の評価を行う際には,収益還元法を併用することもある。
評価対象船舶に定期傭船契約が付されている場合でも,市場傭船料は変動が激しく,売買当事者の個別の事情や将来の傭船料相場の考え方によっ
て高いか安いかが決まるため,一定の評価は困難であると考え,定期傭船契約の有無は鑑定に当たり考慮しないこととしている。
2
争点(本件係争船舶の価額)についての判断
(1)


船舶の価値の評価に係る基本的な考え方について
相続税法22条は,相続,遺贈又は贈与により取得した財産の価額は,原則として当該財産の取得の時における時価による旨規定するところ,この時価とは,正常な条件の下に成立する当該財産の取引価格,すなわち,客観的な交換価値をいうと解される。
そして,
評価通達は,
上記の財産の評価に関する基本的な取扱いとして,

船舶の価額については,原則として売買実例価額又は精通者意見価格等を参酌して評価するものとしている(関係法令等(2))が,これは,平成20年の評価通達改正時までに中古船舶の取引市場が形成されてきたことなどを踏まえたものであるとともに,評価時の市況や評価対象船舶の内容等によっては適切な売買実例が抽出できない場合があることも考慮して,船価
鑑定を行い船舶取引の実情に通じた精通者による価格評価(精通者意見価格)を参酌するとしたものと解され,このような考え方は合理性を有するものである。
もっとも,精通者意見価格をもって当該船舶の客観的な交換価値であるというためには,
少なくとも,
当該精通者による当該船舶の価値の評価が,

鑑定の目的に照らして合理的に行われたものであることが前提となる。そして,船価鑑定に一定の実績を有する訴外各専門業者からのヒアリング結果(認定事実(6))からも明らかなように,船価鑑定の具体的な手法は精通者の間においても一様ではなく,鑑定方式の選択や価格形成要因の評価等の取扱いが異なっていることに照らせば,その合理性の認定は慎重に行われなければならない。

定期傭船契約付き船舶の評価に関する基本的な考え方
本件の争点となっている本件係争船舶には,いずれも定期傭船契約が付されている。定期傭船契約とは,船舶所有者が,自己の所有する船舶に船員を乗船させ備品等を備えた運航可能な状態にして当該船舶を貸し渡し,傭船者が,その対価として契約期間につき定額の傭船料(定期傭船料)を
支払うという契約であり(前提事実(2)ウ)
,船舶所有者となろうとする者
は,傭船料収入の中から船舶管理費を支出して得る運航収益と,契約終了後の船舶の売却益を見込んで,
船舶を購入し,
定期傭船契約を締結する
(認
定事実(2))
。そして,定期傭船契約における傭船料の設定は,船舶所有者
にとっては,究極的には船舶への投資費用を回収することを目的として行
われるものであるが,傭船者との関係では,当該船舶の船種・船型・船齢・積載能力等のほか,傭船料の市況,海上荷動きの見通し,船舶所有者の船舶管理能力その他の事情が考慮され,船舶所有者と傭船者との交渉によって決定されるものであるから,契約ごとの個別性が高く,見込まれる運航収益の多寡によって当該船舶の経済的価値は大きく異なり得るものである。
これらに照らせば,定期傭船契約付き船舶の客観的な交換価値を得るためには,評価時以降も当該契約が存続する蓋然性がある限り,当該契約において見込まれる収益価値を考慮して評価を行うことが相当というべきである。
訴外各専門業者の中には,
定期傭船契約付き船舶の鑑定を行う場合でも,

当該契約において見込まれる収益価値の評価をせず,船体自体の価値(カラ船としての価格)のみを評価するという取扱いを行っている者もある(認定事実(6)イ,エ,オ)が,これは,当該業者が,鑑定依頼者との関係で,カラ船としての価格評価を提供するという合意の下に行われている取扱いとして理解すべきものである(例えば,評価時に定期傭船契約が付されている船舶であっても,当該契約を解約して船舶を売却する前提で鑑定を依頼する場合や,当該船舶の担保価値を把握するための参考として鑑
定を依頼する場合など。。これに対し,本件のように,内国法人の株式の)
贈与時における,外国子会社の所有する定期傭船契約付き船舶の客観的な交換価値が評価の対象とされている場合には,当該契約が評価時以降も存続することが当然の前提となるといえるから,船体自体の価値を評価することのみでは足りず,当該契約において見込まれる収益価値の評価も行う
ことが必要となる。

鑑定方式の選択について
一般に,船価鑑定の方式としては,取引事例比較法,収益還元法及び原価法があり(認定事実(5))
,原処分庁鑑定においては取引事例比較法を,

原告鑑定においては収益還元法を用いているところ,これらの方式が定期傭船契約付き船舶の価格鑑定の方法として合理的といえるか否かを検討する(このほか,原処分庁鑑定において用いられた建造船価償却法については,後記(2)において検討する。。

(ア)

収益還元法は,評価対象船舶に付された定期傭船契約に基づき,評
価時から契約期間満了時までに得られる傭船料収入からその期間中に発生する費用を差し引くことにより運航収益を算定し,これに契約期間満了時における推定売船価格を加え,現在価値に割り引くのが通常であり(認定事実(5)ウ)
,原告鑑定もこのような方法を採用している。この方
法によれば,運航収益及び契約期間満了時の売却益の双方を評価するこ
とができ,定期傭船契約付き船舶に係る鑑定手法として相当である。訴外各専門業者の中では,R(認定事実(6)ア)及びU(同ウ)が,実際に収益還元法を用いて定期傭船契約付き船舶の価格を鑑定している。(イ)

取引事例比較法は,評価対象船舶に対し,船型・船齢が近い類似船
の評価時に近接した時期における売買実例を参考にして,事情補正や時点修正を行い算定するのが通常である(認定事実(5)イ)ところ,実際の中古船市場において定期傭船契約が付されたまま船舶が売買されることは稀である(認定事実(2)ウ)ため,定期傭船契約付き船舶の売買実例を抽出することは困難であり,同契約が付されていない船舶(カラ船)の売買実例を参考にせざるを得ない。
もっとも,貨物船の所有者は当該船舶を傭船に出して収入を得るのが
一般的であるから,実際の売買において売買価格を決定する際にも,購入した船舶を傭船に出した場合にどの程度の運航収益を得られるかにつき,市場傭船料の相場を参考にした検討がされているものと考えられる(証人L)そうすると,

上記のように売買実例を参考にして得られた価
格には,市場傭船料により試算される運航収益の見込みが反映されてい
るということができるから,契約傭船料と市場傭船料との差額に基づく調整を適正に行えば,取引事例比較法によっても,定期傭船契約付き船舶の価値(当該契約において見込まれる収益価値を考慮した価値)を評価することができる。
訴外各専門業者の中では,(認定事実(6)ア)
R
が,
このような調整方法により取引事例比較法を用いて定期傭船契約付き船
舶の価格を鑑定している。
(なお,
残存傭船期間につき公表された市場傭
船料の指標が存在しない場合の問題については,
後記(2)において検討す
る。。

(ウ)

したがって,定期傭船契約付き船舶の価格鑑定の方式としては,取
引事例比較法,収益還元法のいずれも合理性を有するものであるから,これらの方式のうちいずれを採用するかによって直ちにその価格評価の適否が決せられるものではなく,これらの方式を用いて行われた鑑定の具体的な評価・算定方法の適否が更に検討されるべきものである。本件では,被告が本件各処分の適法性の根拠として本件各船舶の価格につき原処分庁鑑定価格
(修正後のもの。
以下同じ)
を主張している
(前
記第2の4参照)ことから,以下においては,まず,原処分庁鑑定における評価対象船舶の価格評価が合理的に行われたものであるか否かにつ
いて検討し,その合理性が否定される場合に,原告鑑定における価格評価を採用することができるか否かについて検討することとする。
なお,我が国において船価鑑定を行う専門業者は極めて限られているため,本件訴訟の過程においていずれの当事者からも鑑定申請はされておらず,原処分庁鑑定及び原告鑑定のほかに,本件係争船舶に係る精通
者の意見は提出されていない(訴外各専門業者へのヒアリングは,認定事実(6)のとおり,
いずれも一般論としての見解や当該業者における取扱
いについて聴取したにとどまるものである。。

(2)

原処分庁鑑定における価格評価の合理性について
取引事例比較法に関し
(ア)

原処分庁鑑定においては,本件係争船舶のうち33隻につき取引事
例比較法を用いて価格鑑定を行っているところ,その概要は,比較の対象として抽出された売買実例(比較対象実例)における船舶(比較対象船舶。
いずれも定期傭船契約が付されていない船舶である。の価格に,

①船齢差,②積載能力差及び③装備等の差異に係る各調整に加え,④定期傭船料に係る調整を行うことにより算定したものである(別紙3の1(1))。
本件贈与日当時における中古船市場の状況について見ると,リーマン・ショック直後から平成20年12月までは売買成約事例がほとんど
見られなかったが,平成21年に入ると,搬送貨物が多種多様で汎用性の高いバルカー(ばら積み貨物船)を中心に売買成約件数が回復したことが認められ(認定事実(3)ウ),原処分庁鑑定業者が本件贈与日に近接した平成21年1月から同年2月までの2か月間について売買実例を収集したことが合理性を欠くものとはいえない。そして,原処分庁鑑定業者がこのような売買実例の収集を試みた結果,中型のバルカーやタンカー等については,総数は少ないものの,価格算定の参考となる売買実例を収集することができた(別紙3の1(1)ア)のであり,これらを比較対象実例として用いたことに不合理な点は見当たらない(なお,本件係争船舶のうち,価格算定の参考となる売買実例を収集することができなかった大型のバルカー,コンテナ船,LPG船等の34隻については,後
記イのとおり建造船価償却法が採用されており,取引事例比較法は用いられていない。)。
そして,原処分庁鑑定業者が,比較対象船舶の価格に基づき,上記①から③まで(船齢差,積載能力差及び装備等の差異)に係る各調整を行ったことについても,不合理な点は見当たらない。
以上に対し,上記④の定期傭船料に係る調整(契約傭船料と市場傭船
料との差額に基づく調整額を加減算すること)に関しては,このような調整を行うこと自体は相当である(上記(1)ウ(イ))ものの,原処分庁鑑定が行った調整(具体的には,調整対象期間の設定。)が適正なものであるかは問題となるため,以下,この点について検討する。
(イ)

調整対象期間の設定の合理性
原処分庁鑑定は,定期傭船料に係る調整を行う調整対象期間につき,
本件贈与日当時,市場傭船料の指標が傭船期間3年までのものしか公表されておらず,4年目以降の市場傭船料を予測することは困難であったことなどの理由から,調整対象期間を3年に限定している(別紙3の1(1)オ,乙13,24,59,証人L)。
しかしながら,市場傭船料も傭船期間が1年のものと3年のものとでは大きな差が生じ得る(乙28参照)ように,傭船期間は,それ自体が傭船料を決定する際の重要な考慮要素の一つとなり得るものであって,このことは,原処分庁鑑定業者の担当者らが,被告からのヒアリングにおいて,一般的には傭船期間が長期になるほど傭船料は安くなる傾向にある旨を述べていること(乙24〔答5〕)からも明らかである。また,原処分庁鑑定業者の担当者らは,被告からのヒアリングにおいて,新造時からの長期の傭船契約は個別性が強く一定の基準として公表するには適さない旨を述べている(乙24〔答4〕)が,このことからすると,残存傭船期間が3年を超えるような長期の定期傭船契約におい
ては,当該契約に係る個別の事情の考慮により傭船料が決定されている傾向が強くなるから,一般的にいって,契約傭船料が市場傭船料とかい離する可能性も高まるものといえる。
そうすると,傭船期間3年の市場傭船料と,残存傭船期間が3年を超えるような長期の定期傭船契約に係る契約傭船料を比較したときに,残
存傭船期間の当初の3年において差額(かい離)が発生している場合には,その4年目以降においても,市場傭船料と契約傭船料との間にかい離が発生する蓋然性が高いということができる。
したがって,原処分庁鑑定のように,調整対象期間を3年に限定し,残存傭船期間の4年目以降につき定期傭船料に係る調整を全く行わない
ことは,当該定期傭船契約において見込まれる収益価値の正当な評価を損なうものといわざるを得ず,取引事例比較法を採用する場合の定期傭船料に係る調整の在り方として,合理性を欠くものといわざるを得ない(なお,この点に関する合理的な調整の方法の例としては,訴外各専門業者のうちRが採用しているように,残存傭船期間の当初の3年におけ
る契約傭船料と市場傭船料との差額に基づき,4年目以降においても徐々に低減しながら調整するという方法も考えられる
〔認定事実(6)ア〕

また,傭船料の市況等に鑑み,このような方法で調整を行うことが相当でない場合は,収益還元法など他の鑑定方式を選択することも考えられる。)。
以上に対し,被告は,取引事例比較法に係る船舶の中に,残存傭船期間の満了前に売却された船舶が複数隻あること(乙29,30)を根拠に,
調整対象期間を3年に限定しても不合理とはいえないと主張するが,このような評価時(本件贈与日)後に生じた事情によって,評価時において当該定期傭船契約により得られることが見込まれる収益価値の評価が左右されるものではないから,被告の上記主張は採用することができ
ない。
(ウ)

取引事例比較法に係る小括
以上によれば,原処分庁鑑定における取引事例比較法の適用は,定期
傭船料に係る調整を行う調整対象期間を3年に限定している点において合理性を欠くものといえるから,取引事例比較法に係る船舶のうち本件贈与日における残存傭船期間が3年を超えるものについては,原処分庁鑑定価格を精通者意見価格として参酌することができない。なお,このような定期傭船料に係る調整において,延長オプションが行使された場合の延長期間を調整対象期間に含めないとしても,そのような調整方法が必ずしも不合理であるとは認め難いから,原処分庁鑑定価格を参酌す
ることができない範囲は,基本契約期間との関係で残存傭船期間が3年を超える船舶に係る鑑定とするのが相当である。
そして,証拠(甲13,乙58)によれば,本件係争船舶のうち原処分庁鑑定において取引事例比較法が適用された33隻(別表5の船舶名欄記載の各船舶)のうち,残存傭船期間が3年以下の船舶は10隻
であり(同表の3年超欄に×と記載されたもの。以下取引事例比較法に係る3年以下の10隻という。),その余の23隻については残存傭船期間が3年を超える船舶である
(同表の
3年超○
欄に
と記載されたもの。)と認められる。
したがって,取引事例比較法に係る3年以下の10隻については,原処分庁鑑定価格を精通者意見価格として参酌することができるが,その余の23隻については,これを参酌することができない。


建造船価償却法に関し
(ア)

原処分庁鑑定業者は,価格算定の参考となり得る売買実例を収集す
ることができない船型の船舶
(本件係争船舶のうち34隻)
については,
取引事例比較法によるのが困難であるとして,建造船価を基準に,建造時から本件贈与日までの経過年数に基づく減価修正(償却)を行うことで,評価対象船舶の価格を算定している(別紙3の1(2))。
このような建造船価償却法は,評価時における評価対象船舶の再調達原価ではなく,評価対象船舶の建造船価(当該船舶の建造に実際に要した価格)を用いている点で,船価鑑定の一手法として通常用いられてい
る原価法とは異なる鑑定方法である。原処分庁鑑定業者は,上記34隻につき原価法を用いることができなかった理由について,①本件贈与日当時はリーマン・ショックの影響により新造船市場における契約成立件数が激減しており,再調達原価を設定する上で参考となる造船契約が見当たらなかった,②新造船価の推測値は公表されていたものの,契約成
立件数が激減した状況下において客観性が十分に担保されているとはいえないため,これに基づいて再調達原価を設定することもできなかったなどと説明する。また,建造船価償却法を用いた理由については,③船舶所有者は,一般に,定期傭船契約における運航収益と,契約終了時の売却益との総和に見合う価格で船舶を建造するものであるから,建造船
価は当該船舶の個別性や収益性を反映したものといえる,④新造船価の推測値について,評価対象船舶の造船契約締結時(建造時)のものと本件贈与日のものとを比較すると,同水準であるか,又は造船契約締結時の方が低水準であるから,建造船価を基準にしても,本件贈与日当時の客観的な交換価値を上回らない適正な評価ができるなどと説明する(乙11,13,59)。
(イ)

しかしながら,上記③の説明のように建造船価が当該船舶の個別性
や収益性を反映するものであったとしても,それは飽くまで造船契約締結時の市況下において形成されたものであるから,建造船価償却法によって得られる船価は,評価時ではなく,造船契約締結時の市況を反映したものである。そうすると,建造船価償却法は,造船契約締結時から評価時までの市況の変化について適切な補正がされているか,あるいは補正を要しない特段の事情が認められない限り,評価時の船価を鑑定する方法としては合理性を欠くものといわざるを得ない。
この点,原処分庁鑑定においては,造船契約締結時から評価時までの市況の変化に係る補正は行われていないところ,被告は,本件において
補正を要しない理由として,造船契約締結時における新造船価の推測値が,本件贈与日と同水準であるか,又は本件贈与日よりも低水準であったと主張し(上記④と同旨),これに沿う報告書(乙23)を提出する。しかしながら,本件贈与日当時は,リーマン・ショックの影響により新造船の発注件数が激減していたのであって(認定事実(3)イ),本件贈与
日当時に公表されていた新造船価の推測値は,基礎となる造船契約のデータの不足のため,客観性が十分に担保されているとはいい難いものであった(原処分庁鑑定業者も,上記②においてこれを自認している。)から,新造船価の推測値を根拠として補正の不要をいう被告の上記主張は,その前提を誤るものであって採用することができない。

また,本件訴訟に至る経過のとおり,本件係争船舶のうち建造船価償却法に係る船舶34隻についての原処分庁鑑定価格は,本件裁決においても採用すべきでないものとされている(前提事実(4)イ(ウ))ところ,本件裁決における本件各船舶の評価額約1854億円と被告が主張する本件各船舶の評価額約2224億円との差(すなわち,建造船価償却法に係る船舶34隻について原処分庁鑑定価格と原告鑑定価格のいずれを採用するかによる差)は約370億円であるのに対し,原告が主張する
本件各船舶の評価額約1719億円と本件裁決における本件各船舶の評価額約1854億円との差(すなわち,取引事例比較法に係る船舶33隻について原処分庁鑑定価格と原告鑑定価格のいずれを採用するかによる差)は約135億円である。このように,原処分庁鑑定において建造船価償却法を採用した34隻の価格は,取引事例比較法を採用した33
隻と比べても,原告鑑定価格との評価額の差が著しく大きなものとなっているといえるから,このことに照らしても,原処分庁鑑定において建造船価償却法を採用するに際し,造船契約締結時から評価時までの市況の変化について補正を要しない特段の事情があったということはできない。

(ウ)

建造船価償却法に係る小括
以上に照らせば,原処分庁鑑定における建造船価償却法の適用は,造
船契約締結時から評価時までの市況の変化について補正を要しない特段の事情が認められないにもかかわらず,その補正をしなかった点で合理性を欠くものであるから,本件係争船舶のうち建造船価償却法に係る船
舶34隻については,原処分庁鑑定価格を精通者意見価格として参酌することができない。

原処分庁鑑定に係るまとめ
以上に検討したところによれば,原処分庁鑑定は,本件係争船舶で取引
事例比較法が適用された船舶のうち残存傭船期間が3年以下であるもの(取引事例比較法に係る3年以下の10隻)に限って,その価格評価に合理性があると認められ,その余の船舶の価格評価については合理性を欠くものであるから,原処分庁鑑定価格のうち精通者意見価格として参酌することができるのは,上記10隻に係る価格評価のみである。
したがって,その余の57隻の評価につき,原告鑑定価格を精通者意見価格として参酌することができるか否かについて,以下検討する。
(3)

原告鑑定における価格評価の合理性について
原告鑑定においては,本件係争船舶につき収益還元法(DCF法)を用いて価格鑑定を行っているところ,その概要は,①評価対象船舶が残存傭船期間中に生み出す収益価値につき,契約傭船料の収入から船舶管理費の
支出を控除し,所定の割引率により現在価値に割り引くことによって求める(別紙3の2(1))とともに,②定期傭船契約の終了時点の船舶価値(復帰価値)として算定した価格を,上記の割引率により現在価値に割り引くことによって求める(同(2))というものであり,このような方法を採用することは,上記(1)ウ(ア)のとおり合理性を有するものといえる。
これに対し,被告は,本件において収益還元法を用いることはそもそも不適切であったと主張するが,その主張する内容(被告準備書面(6)参照)を見ても,算定の基礎となる船舶管理費や割引率等の各要素の設定により評価額が変動するという収益還元法自体に内在する性質を指摘するにとどまっており,このような性質を有すること自体をもって収益還元法という
鑑定方式を採り得ないことの理由とすることができるものではなく(収益還元方法が船価鑑定の方式の一つであることは,訴外各専門業者においても認識が一致するところである〔認定事実(5)〕。),算定の基礎となる各要素の設定が適正にされているか否かが当該鑑定における価格評価の合理性を左右するものである。このことに鑑みると,被告の主張は,原告鑑定
における上記各要素の設定が合理性を欠くものであるとの主張に帰するものと解される。
また,被告は,割引率の基礎となるリスクフリーレート(リスクが存在しないで恒常的に一定の収益を産む安全資産に投資した場合の収益率)に関し,リーマン・ショック後における米国債金利が著しく低下していたことを指摘するが,原告鑑定においてこのような低水準の米国債金利をリスクフリーレートとして用いたことは,割引率を小さくする(収益還元法に
よる評価額を高くする)要素であるから,少なくとも被告の主張として採用し得るものではないし,上記指摘の事情をもって本件における収益還元法の適用自体を不当とする根拠となるものとも解されない。
そこで,以下においては,原告鑑定における収益還元法の内容に関し,被告が合理性を欠くと主張する点について検討することとし,
具体的には,

①残存傭船期間の設定(延長オプションの行使による延長期間を含めるか否か),②契約傭船料の設定(契約傭船料に幅〔レンジ〕が設けられている場合の設定の在り方),③船舶管理費の設定(船員費等に係るインフレ率の設定の在り方等),④割引率の設定(リスクフリーレートに対するリスクプレミアムの加算の在り方),⑤契約終了時における船舶価値の算定
(割引率の適用を含む。)について,順次検討する。

残存傭船期間の設定に関し
(ア)

一般に,定期傭船契約に延長オプションが付されていても,傭船者
が必ずこれを行使するとは限らないから,延長オプションの行使による延長期間を残存傭船期間に含めることができるのは,傭船者が延長オプションを行使する蓋然性があると認められる場合であると解される。この点につき,原告鑑定においては,①本件贈与日における市場傭船料の指標を確認することができる船種については,契約傭船料が市場傭船料よりも割安となる場合は延長オプション行使の蓋然性があるものと
し,②市場傭船料の指標を確認することができない船種については,㋐当該定期傭船契約に買取オプションが付されている場合は,その買取オプションの優先的な行使が見込まれるため,延長オプション行使の蓋然性がないものとし,㋑買取オプションが付されていない場合は,契約傭船料が明らかに割高であるときや,延長オプション行使後の傭船料額が取り決められていないときは,延長オプション行使の蓋然性がないものとし,
それ以外のときは同蓋然性があるものとしている
(別紙3の2(1)
ア)。
このような,個々の定期傭船契約における実際の取決めを前提に,傭船者が採り得る判断を複数のパターンに分けて想定するという原告鑑定の手法は,各パターンの設定及び傭船者が採り得る判断の想定のいずれ
においても不自然なものではなく,傭船者による延長オプション行使の蓋然性を認定する方法として不合理であるとはいえない。
(イ)

これに対して,被告は,上記①に関し,傭船者が延長オプションを
行使するか否かは当該船舶の必要性等も含めて総合的に判断されるべき事柄であり,
市場傭船料との高低のみに依拠すべきものではない,
また,
契約傭船料と比較すべきであるのは,本件贈与日時点ではなく基本契約期間満了時点の市場傭船料であるなどと主張する。しかしながら,契約傭船料が割安であるかどうかは,傭船者が延長オプションを行使するか否かを判断するに当たって最も重要な考慮事項の一つであるといえるから,これに基づいて延長オプション行使の蓋然性を認定することが不合
理であるとはいえない。また,比較の対象を本件贈与日における市場傭船料としている点についても,延長オプション行使の蓋然性の認定が評価時を基準として行われるべきことに照らせば,不合理であるとはいえない。
なお,被告は,原告鑑定において残存傭船期間に延長期間を含めるこ
ととした船舶13隻のうち6隻が,延長期間の満了前に売却されたこと(乙58)を指摘するが,このような評価時後に生じた事情によって,評価時における延長オプション行使の蓋然性の認定が左右されるものではない。
(ウ)

以上によれば,被告の上記主張はいずれも採用することができず,
原告鑑定における残存傭船期間の設定には合理性が認められる。

契約傭船料の設定に関し
(ア)

一般に,定期傭船契約において契約傭船料が一定の幅(レンジ)を
もって定められ,後から確定することとなっている場合には,評価時に見込まれる運航収益の算定のため,そのレンジの中で契約傭船料を設定する必要がある。
この点につき,原告鑑定においては,①市場傭船料が契約傭船料のレ
ンジ内である場合には,
市場傭船料と同じ額を契約傭船料として設定し,
②市場傭船料が契約傭船料のレンジの上限より高い場合には,レンジの中間値を契約傭船料として設定し,③市場傭船料が契約傭船料のレンジの下限より低い場合には,レンジの最低値を契約傭船料として設定している(別紙3の2(1)イ)。
(イ)

被告は,上記②及び③に関し,市場傭船料が契約傭船料のレンジの
上限より高い場合にはレンジの中間値を契約傭船料として設定しながら,下限より低い場合にはレンジの最低値を契約傭船料として設定している点が不合理であると主張する。
しかしながら,原告鑑定がこのような契約傭船料の設定をしたのは,リーマン・ショック後(本件贈与日当時)の船腹過剰の状態(認定事実(3)イ)
を前提に,
レンジの範囲で契約傭船料を確定する場面においても
傭船者の交渉力が船舶所有者に勝ることになると想定し,市場傭船料が契約傭船料のレンジの下限よりも低い場合には,レンジの最低値を契約
傭船料とすることを求める傭船者に有利な合意が成立する蓋然性があるとしたものであって(甲13),かかる契約傭船料の設定は,評価時の海運市場の状況を踏まえた合理的なものということができる。
(ウ)

したがって,被告の上記主張は採用することができず,原告鑑定に
おける契約傭船料の設定には合理性が認められる。

船舶管理費の設定について
(ア)

原告鑑定は,船舶管理費(船員費,船用品費,潤滑油費,修繕費,
入渠費〔ドック費〕,船体保険料,P&I保険料〔船主責任保険〕,雑費,店費等)について,海運ブローカー,船主及び金融機関等に対するヒアリングに基づき設定しているところ,船舶管理費を構成する上記の各費用のうち,船員費については年2%,修繕費については年3%,P&I保険料については年5%のインフレ率を設定している(別紙3の2(1)ウ)。
(イ)

被告は,原告鑑定において船員費等につき上記のインフレ率を設定
したことが不合理であると主張する。
しかしながら,本件贈与日当時においては,平成20年までに生じた船舶建造ブームの影響により船舶の隻数が大きく膨らみ,これによる船腹過剰の状態下で,船員不足による船員費の上昇,修繕ドック不足による修繕費の上昇,船舶事故の増加見通しに伴う保険料の上昇等の事態が生ずることが見込まれていたのであるから(認定事実(2)イ,(3)イ,甲14),原告鑑定において,船員費,修繕費及びP&I保険料にインフ
レ率を設定したことは,評価時の海運市場の状況を踏まえた合理的なものということができる。そして,原告鑑定において設定されたインフレ率の高さ(船員費につき年2%,修繕費につき年3%,P&I保険料につき年5%)についても,訴外各専門業者のうちUが船舶管理費につき一律に2%のインフレ率を設定していることや,船舶管理会社が船主に
対して将来の採算の見積りを示すときに年2~3%のインフレ率を設定していること(認定事実(6)ウ(ウ))に照らせば,不合理であるとはいえない。
(ウ)

また,被告は,原告鑑定において設定した船舶管理費が本件係争船
舶に係る実績値に基づかないことを指摘するが,評価時における評価対象船舶の客観的な交換価値を構成する運航収益価値を評価するに当たり,船舶管理費が実績値に基づいて設定されることは必ずしも必要であると
はいえないから,指摘の事情は原告鑑定における船舶管理費の設定の合理性を左右するものではない。
(エ)

したがって,被告の主張はいずれも採用することができず,原告鑑
定における船舶管理費の設定には合理性が認められる。

割引率の設定について
(ア)

原告鑑定は,割引率の設定につき,基礎となるリスクフリーレート
に,
4%の基準リスクプレミアム
(船舶への投資リスクに見合う利回り)
及び傭船者の信用力の程度に応じて設定した信用リスクプレミアムを加算している(別紙3の2(1)エ)。
まず,4%の基準リスクプレミアムを加算した点について見ると,船舶所有者は,船舶を購入して傭船に出すに当たり,為替リスク,金利リスク,船舶管理費上昇リスク,中古船価下落リスク,傭船リスク,海難リスク,戦争・海賊リスク等を負っているのであるから(認定事実(2)イ),これらのリスク(ただし,後述の,傭船者の信用力に伴うリスク
を除く。)に見合った利回りとして基準リスクプレミアムを加算することは相当である。
次に,信用リスクプレミアムを加算した点について見ると,傭船者の信用力に伴うリスク(信用の悪化に伴う債務不履行のリスク)は,為替リスク等の上記各リスクとは異なり,定期傭船契約の相手方によってそ
の程度が異なることから,これを別途括りだして,信用力の程度に応じて設定した信用リスクプレミアムとして加算することは,不合理であるとはいえない。
(イ)

原告鑑定が加算した信用リスクプレミアムの具体的な内容につい

て更に検討すると,傭船者の信用力の程度に応じた区分の基準として,①契約の履行に何ら問題ないもの(A格・正常先),②契約の履行に何らかの問題が発生する可能性があるもの(B格・要注意先),③傭船料の減額依頼などの動きがあるもの(C格・不履行懸念先),④事実上破綻しているもの(D格・実質破綻先)の4つの区分を設け,A格については0%,B格については1%,C格については3%の信用リスクプレミアムを加算することとしている(別紙3の2(1)エ(ウ))。これらの区
分設定は,傭船者の信用力の程度をそれぞれの根拠を示して明確に区分するものであって,不合理であるとはいえない。
そして,原告鑑定業者が本件各船舶の傭船者20社につき格付けを行った結果は,
A格が12社,
B格が6社,
C格が2社
(D格は該当なし。

であるところ,B格(1%の信用リスクプレミアム)に格付けされた会
社については,その信用力の低下を懸念する理由が具体的に記載されており,C格(3%の信用リスクプレミアム)に格付けされた2社については,バラ積み船,タンカーなど不定期船偏重型の事業構成で,海運市況の波を一挙に被る懸念を持つ。1985年に1度倒産を経験しているが,今回のリーマン・ショックの影響を受けることは不可避と考えられ,乗り切ることが出来るかどうか不安視される。,

2009年2月末時点で既にリスケの噂や傭船なしの発注が目立っており,経営の安定性に懸念を持つ。

など債務不履行の具体的な危険が高いとされる根拠が明示されている(甲13)。これらに照らせば,上記の区分に従って原告鑑定業者が行った実際の格付けについても,不合理な点はうかが
われない。
(ウ)

また,原告鑑定においてリスクフリーレートに基準リスクプレミアム及び信用リスクプレミアムを加算して得られた割引率の数値について見ると,4%台が5隻,5%台が11隻,6%台が17隻,7%台が23隻,8%台が6隻,9%以上が7隻となっている。9%以上の7隻はいずれも信用リスクプレミアムの格付けがC格となった2社に係るものであり,船舶11が9.92%,船舶29が9.37%,船舶35が10.18%,船舶44が9.92%,船舶49が9.37%,船舶60が10.18%,船舶69が10.27%である。(甲13)
このように,原告確定において実際に適用された割引率は,その8割以上が4%台から7%台までの範囲内にあるところ,これは,訴外各専
門業者のうちUが割引率を一律8%に設定していることと比較すると,むしろ控えめな数値であるということができる。これは,Uにおいては傭船者ごとに信用力の格付けを行うことをせず,その信用力に伴うリスクについても一律に加味してその平均値を8%と設定しているのに対し,原告鑑定においては信用力に不安材料のある傭船者についてのみ信用リ
スクプレミアムを加算することとした結果であると解される。また,上記のとおり,原告鑑定において割引率が9%を超えているのは傭船者の信用力の格付けがC格とされたものだけであり,その具体的な数値を見ても,Uにおいて平均値としている8%と比べて大きくかい離したものとはなっていない。
これらに鑑みると,原告鑑定における基準リスクプレミアム及び信用
リスクプレミアムは,その数値においても合理性を欠くものとはいえない。
(エ)

以上に対し,被告は,①船舶所有者が負うリスクは傭船者が債務不
履行に陥るリスクのみであり,原告鑑定においてはリスクを恣意的に過大評価している,②基準リスクプレミアムは具体的な検証に基づいて設定されたものではない,③信用リスクプレミアムについては,このような傭船者ごとの信用力の区別はそもそも難しい上,その根拠も曖昧であるなどと主張する。しかしながら,上記(ア)に説示したとおり,船舶所有者は,傭船者が債務不履行に陥るリスク以外にも様々なリスクを負っているのであり,原告鑑定業者の説明によれば,これらの多様なリスクを評価するために基準リスクプレミアムを加算することとし,船舶所有
者が負うリスクと株主が負うリスクの見合いから,その割合を4%に設定したというのであって(甲14,証人N),基準リスクプレミアムの設定が具体的な検証に基づかずにされたものともいえない。また,原告鑑定における信用リスクプレミアムの設定が不合理なものといえないことは,上記(イ)及び(ウ)に説示したとおりである。

(オ)

したがって,被告の上記主張はいずれも採用することができず,原
告鑑定における割引率の設定には合理性が認められる。

契約終了時における船舶価値の算定に関し
(ア)

原告鑑定においては,定期傭船契約の契約終了時(残存傭船期間に
延長オプションの行使による延長期間が含まれる場合は,その期間の満了時。)における船舶価値につき,本件贈与日を基準に,取引事例比較法,原価法又は収益還元法に基づいて算定した上で,これを上記オと同じ割引率で現在価値に割り引いている(別紙3の2(2))。
(イ)

被告は,原告鑑定において契約終了時点における船舶価値を算定す
るにつき本件贈与日を基準として算定したことは不合理であると主張する。しかしながら,鑑定の目的が,評価時(本件贈与日)において評価対象船舶により得られることが見込まれる運航収益及び売却益を評価することであることに照らせば,評価時の市況を前提として契約終了時の船齢に基づき契約終了時の船舶価値を算定することが不合理であるとは
いえない。
また,被告は,傭船者の信用力により契約終了時の船舶価値が左右されるものではないから,原告鑑定において,契約終了時の船舶価値を現在価値に割り引くに当たり,上記オと同じ割引率(信用リスクプレミアムが加算された割引率)を用いたことは不合理であると主張する。しかしながら,原告鑑定においてこのような割引率を適用したのは,契約終了後に船舶を売却する場面においても,仮に傭船者が破たんした場合には,当該船舶が海外で差押えを受けるなどして売却益の取得に支障が生じるおそれがあることから,傭船者の信用力に伴うリスクを加味した割引率を適用することとしたものであり(証人N),このような割引率の適用が不合理であるとはいえない。なお,訴外各専門業者のうちUも,
傭船者の信用力に伴うリスクの考慮を含む8%の割引率を,契約終了時の船舶価値を現在価値に割り引く際にもそのまま用いている(認定事実(6)ウ(ウ))。
(ウ)

なお,被告は,原告鑑定において船舶68の契約終了時の船舶価値
を原価法を用いて算定するに当たり,同船舶の引渡日(本件外国子会社が造船所から引渡しを受けた日)が本件贈与日に近接していたにもかかわらず,その取得価格を再調達原価としなかったことが不合理であると主張する。しかし,船舶68の取得価格は同船舶に係る造船契約締結時の市況を反映するものであるところ,新造船の発注から竣工までは通常でも2年半ほどを要するとされ,本件贈与日当時はリーマン・ショック
前の大量発注の影響から竣工までに4年以上かかることも少なくなかったというのであるから(認定事実(3)イ),造船契約締結時の市況と本件贈与日当時の市況とは異なっていたものということができる。そうすると,原告鑑定において船舶68の取得価格を再調達原価としなかったことが不合理であるとはいえない。

(エ)

したがって,被告の上記主張はいずれも採用することができず,原
告鑑定における契約終了時における船舶価値の算定には合理性が認められる。

原告鑑定に係るまとめ
以上に検討したところによれば,原告鑑定は,被告の主張に係るいずれの点についても合理性が認められ,そのほかについても不合理な点はうかがわれないから,原告鑑定における価格評価は精通者意見価格として参酌
することができる。
(3)

本件各船舶の価格評価に係る総括
上記(1)及び(2)のとおり,被告が本件各処分の適法性の根拠として援用す
る原処分庁鑑定価格は,本件係争船舶のうち取引事例比較法に係る3年以下の10隻に限ってその価格評価を精通者意見価格として参酌することができ,
その余の57隻については,原告鑑定価格を精通者意見価格として参酌することができるから,これらの参酌によって本件係争船舶の価額を評価すべきである。
したがって,別表6の裁判所の認定欄記載のとおり,取引事例比較法に係る3年以下の10隻については被告評価額をもって,その余の57隻に
ついては原告評価額をもって,それぞれ本件係争船舶の価額と認めるのが相当であり,その総額は1721億7174万3532円となる。
3
本件各処分の適否について
(1)

本件各船舶の価額(1747億3573万5370円)
本件係争船舶67隻の価額に,当事者間に争いのない本件売却船舶3隻の
価額を加えた1747億3573万5370円が本件各船舶の評価額である。(2)

本件外国株式の価額(0円)
本件外国子会社の純資産価額は,別表3-2の相続税評価額による純資産価額(「相続税評価額の合計①欄-相続税評価額の合計②欄)」欄の金額のとおりマイナス27億0463万9000円であり,その計算根拠は,本件各船舶の評価額が1747億3573万5000円(上記(1)の金額から,通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後の金額。)であるほかは,被告が主張する課税の根拠及び計算(別紙5の第2の2)記載のとおりである。
よって,本件外国株式を純資産価額方式に準じて評価すると,その価額は0円となる。

(3)

本件株式の価額(0円)
Eの純資産価額は,別表2-2の3.1株当たりの純資産価額の計算
課税時期現在の純資産価額欄記載のとおりマイナス2億0652万6000円であり,その計算根拠は,本件外国株式の価額が0円であるほかは,被告が主張する課税の根拠及び計算(別紙5の第2の1(2))記載のと
おりである。
よって,本件株式を純資産価額方式に基づいて評価すると,その価額は0円となる。
(4)

本件各処分の適否
上記(3)のとおり,
本件株式の価額は0円であるから,
原告の平成21年分

の贈与税の課税価格も0円となり,これに係る贈与税額はないということになる。
したがって,
原告に対してされた平成21年分の贈与税の決定処分
(本
件決定処分)及びこれに伴う無申告加算税の賦課決定処分(本件賦課決定処分)は,いずれも違法であって,取り消すべきものである。
第4

結論
以上によれば,原告の請求は理由があるから,これを認容することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第51部

裁判長裁判官

清水知恵子
裁判官進藤壮一郎及び裁判官松原平学は,転補のため,署名押印することができない。

裁判長裁判官


(別紙1省略)
(別表1省略)
(別表2省略)
(別表3省略)
(別表4省略)
(別表5省略)
(別表6省略)

水知恵子
(別紙2-1)

第金

評二時遺与


時こけ

そ時にの得別六万百円の財財めるし


た産のに額つげのあ額額かはのら

除該く産か取百百当財ほの分百続の務債ののののの十十四十三十二五るる六前万もれ改にをかてそ合ぞ控の正よ十額ら後控額課の金の金円除たのれ十計よ格金の十に定し五号価し分三規た分、

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(別紙2-2)

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(別紙2-3)

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いう金は商す売う第認有す


せ協店る証有条会八場価


可融品と買市


第開十をは取品法閣へ認お法有商引内のに融に制価該




り簿場ば品録買当律よ員頭市を金定略法商原券な義


に登証柄店銘条5二の



価1定略十


こ規






の金有第6す2の類る買売種登4項

売11設頭七頭に7十の簿1店六一
(別紙2-6)



財産評価基本通達

4-3(邦貨換算)
外貨建てによる財産及び国外にある財産の邦貨換算は,原則として,納税義務者の取引金融機関(外貨預金等,取引金融機関が特定されている場合は,その取引金融機関)が公表する課税時期における最終の為替相場(邦貨換算を行なう場合の外国為替の売買相場のうち,いわゆる対顧客直物電信買相場又はこれに準ずる相場をいう。また,課税時期に当該相場がない場合には,課税時期前の当該相場のうち,課税時期に最も近い日の当該相場とする。)による。(以下略)
15(奥行価格補正)
一方のみが路線に接する宅地の価額は,路線価にその宅地の奥行距離に応じて奥行価格補正率を乗じて求めた価額にその宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価する。

89(家屋の評価)
家屋の価額は,その家屋の固定資産税評価額(地方税法第381条《固定資産課税台帳の登録事項》の規定により家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録された基準年度の価格又は比準価格をいう。以下この章において同じ。)に別表1に定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する。

91(建築中の家屋の評価)
課税時期において現に建築中の家屋の価額は,その家屋の費用原価の100分の70に相当する金額によって評価する。

136(船舶の評価)
船舶の価額は,原則として,売買実例価額,精通者意見価格等を参酌して評価する。
ただし,
売買実例価額,
精通者意見価格等が明らかでない船舶については,
その船舶と同種同型の船舶(同種同型の船舶がない場合においては,その評価する船舶に最も類似する船舶とする。)を課税時期において新造する場合の価額から,その船舶の建造の時から課税時期までの期間(その期間に1年未満の端数があるときは,その端数は1年とする。)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した価額によって評価する。この場合における償却方法は,定率法によるものとし,その耐用年数は耐用年数省令に規定する耐用年数による。

168(評価単位)
株式及び株式に関する権利の価額は,それらの銘柄の異なるごとに,次に掲げる区分に従い,その1株又は1個ごとに評価する。
(1)

上場株式
(略)

(2)

気配相場等のある株式
(略)

(3)

取引相場のない株式((1)及び(2)に掲げる株式以外の株式をいう。以下同じ)
(4)以下(略)

169(上場株式の評価)
上場株式の評価は,
次に掲げる区分に従い,
それぞれ次に掲げるところによる。
(1)

(2)に該当しない上場株式の価額は,その株式が上場されている金融商品取
引所(国内の2以上の金融商品取引所に上場されている株式については,納税義務者が選択した金融商品取引所とする。(2)において同じ。)の公表する課税時期の最終価格によって評価する。ただし,その最終価格が課税時期の属する月以前3か月間の毎日の最終価格の各月ごとの平均額(以下最終価格の月平均額という。)のうち最も低い価額を超える場合には,その最も低い価額によって評価する。
(2)

負担付贈与又は個人間の対価を伴う取引により取得した上場株式の価額は,
その株式が上場されている金融商品取引所の公表する課税時期の最終価格によって評価する。

178(取引相場のない株式の評価上の区分)
取引相場のない株式の価額は,
評価しようとするその株式の発行会社
(以下
評価会社という。)が次の表の大会社,中会社又は小会社のいずれに該当するかに応じて,それぞれ次項の定めによって評価する。ただし,同族株主以外の株主等が取得した株式又は特定の評価会社の株式の価額は,それぞれ188≪同族株主以外の株主等が取得した株式≫又は189≪特定の評価会社の株式≫の定めによって評価する。(以下略)

183(評価会社の1株当たりの配当金額等の計算)
180《類似業種比準価額》の評価会社の1株当たりの配当金額,1株当たりの利益金額及び1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)は,それぞれ次による。(以下略)
185(純資産価額)
179《取引相場のない株式の評価の原則》の1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)は,課税時期における各資産をこの通達に定めるところにより評価した価額(この場合,評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地及び土地の上に存する権利(以下土地等という。)並びに家屋及びその附属設備又は構築物(以下家屋等という。)の価額は,課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとし,当該土地等又は当該家屋等に係る帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には,当該帳簿価額に相当する金額によって評価することができるものとする。以下同じ)の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額及び186-2((評価差額に対する法人税額等に相当する金額))により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除した金額を課税時期における発行済株式数で除して計算した金額とする。(以下略)
189(特定の評価会社の株式)
178《取引相場のない株式の評価上の区分》の特定の評価会社の株式とは,評価会社の資産の保有状況,営業の状態等に応じて定めた次に掲げる評価会社の株式をいい,その株式の価額は,次に掲げる区分に従い,それぞれ次に掲げるところによる。
なお,評価会社が,次の(2)又は(3)に該当する評価会社かどうかを判定する場合において,課税時期前において合理的な理由もなく評価会社の資産構成に変動があり,その変動が次の(2)又は(3)に該当する評価会社と判定されることを免れるためのものと認められるときは,その変動はなかったものとして当該判定を行うものとする。
(1)~(3)(略)
(4)

開業後3年未満の会社等の株式
課税時期において次に掲げるイ又はロに該当する評価会社(次の(5)又は(6)
に該当するものを除く。以下開業後3年未満の会社等という。)の株式の価額は,189-4《土地保有特定会社の株式又は開業後3年未満の会社等の株式の評価》の定めによる。

開業後3年未満であるもの


183《評価会社の1株当たりの配当金額等の計算》の(1),(2)及び(3)に定める1株当たりの配当金額,1株当たりの利益金額及び1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)のそれぞれの金額がいずれも0であるもの
(注)配当金額及び利益金額については,直前期末以前2年間の実績を反映して判定することになるのであるから留意する。
(5)~(6)(略)

189-4(土地保有特定会社の株式又は開業後3年未満の会社等の株式の評価)189《特定の評価会社の株式》の(3)の土地保有特定会社の株式又は同項(4)の開業後3年未満の会社等の株式の価額は,185《純資産価額》の本文の定めにより計算した1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって評価する。(以下略)

214(生命保険契約に関する権利の評価)
相続開始の時において,
まだ保険事故
(共済事故を含む。
この項において同じ。

が発生していない生命保険契約に関する権利の価額は,相続開始の時において当該契約を解約するとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額(解約返戻金のほかに支払われることとなる前納保険料の金額,剰余金の分配額等がある場合にはこれらの金額を加算し,解約返戻金の額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額がある場合には当該金額を減算した金額)
によって評価する。
(注略)
以上

(別紙3)
本件各船舶の価格鑑定に用いられた鑑定方法の概要

1
原処分庁鑑定における鑑定方法の概要
(1)

取引事例比較法について
原処分庁鑑定においては,個々の鑑定の評価の対象となる船舶(以下評価対象船舶という。の価格を算出するに当たり,

後記アからオまでのとおり,
比較の対象として抽出された売買実例における船舶の価格(以下,抽出された売買実例を比較対象実例,比較対象実例における船舶を比較対象船舶という。)に,①船齢差,②積載能力差及び③装備等の差異に係る各調整に加え,④定期傭船料に係る調整を行うことにより算定した。定期傭船契約付き船舶は中古船市場において取引されることがほとんどないため,抽出された比較対象実例はいずれも定期傭船契約が付されていない船舶に係るものである。そこで,原処分庁鑑定業者は,定期傭船契約付き船舶であ
る本件各船舶の価格を算定するために,上記④の調整を行った(具体的には,後記オのとおりである。)。

比較対象実例の抽出
本件贈与日当時,リーマンショックの影響により中古船の売却価格が急激な下落傾向を示していたことから,本件贈与日に近接した平成21年1月か
ら同年2月までの2か月間に絞って売買実例を収集したところ,中型のバルカー(穀物や鉱石などの梱包されていない船荷を運搬するための貨物船〔ばら積み貨物船〕)やタンカー等の船型については,総数は少ないものの,価格算定の参考となる売買実例を収集することができた。
そこで,これらの船型の船舶については,取引事例比較法に基づいて鑑定
を行うこととし,ClarksongenceShippingWeekly,DrewryIntelliShippingInsight等の一般的に入手可能な定期刊行物,海運ブローカーが作成した資料,海運ブローカーを含む海運市場関係者へのヒアリング結果等を通じて得られた情報に基づき,収集した売買実例の中から,比較対象実例とすべきもの,すなわち,評価対象船舶と船種,船型,船齢等が類似する船舶の中で最も適切と判断されるものを抽出した。


船齢差による調整
比較対象船舶の船齢と,評価対象船舶の船齢(本件贈与日当時)との差を調整するため,船型が同型で船齢の異なる複数の売買実例を比較して1年当たりの船価の変化率(逓減率)を算出し,これに基づき船齢による調整率を設定した。

船舶7を例に挙げれば,比較対象船舶の船齢が4年,評価対象船舶の船齢が10年,調整率が4%であるため,比較対象船価に0.96(1-0.04)の6乗(船齢差6年分)を乗じて調整を行った。

積載能力差による調整
比較対象船舶と評価対象船舶の積載能力差(船舶に積載できる貨物の重量
又は容量の差)を調整するため,積載能力差が新造船価及び中古船価に及ぼしている影響を勘案し,船種ごとに調整率を設定した。

装備等の差異による調整
比較対象船舶と評価対象船舶との間の,①荷役装置の有無,②氷海域の航行機能の有無,③木材積載装備の有無等の差異を調整するため,所要の調整
を行った。
船舶7を例に挙げれば,比較対象船舶には評価対象船舶と異なりログスタンション(木造積載装備の一種)が装備されていたため,調整率を2.5%と定め,比較対象船価に0.975(1-0.025)を乗じて調整を行った。


定期傭船料に係る調整
比較対象船価に,上記イ~エの調整を加えることによって,定期傭船契約が付されていない場合の価格(以下傭船料調整前価格という。)が算定されることになる。そこで,これに,評価対象船舶に係る契約傭船料(当該定期傭船契約によって合意された具体的な傭船料をいう。以下同じ)と本件贈与日における定期傭船料の市場水準(以下市場傭船料という。)との差額に基づく調整額を加減算することで,評価対象船舶の価格を算定した。そして,本件贈与日における市場傭船料の指標は,傭船期間が3年までのものしか公表されていなかったため,評価対象船舶における定期傭船契約の残存期間(以下残存傭船期間という。)が3年以下の場合はその全部を
調整の対象とし,3年を超える場合は3年の限度で調整の対象とすることとした
(以下,
これらの調整の対象とされた期間を
調整対象期間
という。。

なお,3年目までの市場傭船料の指標が存しない船種については,3年未満の指標を引き延ばしたり,スポット傭船料(1度の航海について借り切る場合の傭船料)を参考にしたりして,3年目までの定期傭船料を推定した。
具体的な調整の算定式は,次のとおりである
(契約傭船料の日額-市場傭船料の日額)×残存傭船期間
×年間稼働率(0.97)
例えば,契約傭船料が日額5000米ドル,市場傭船料が日額8000米ドル,残存傭船期間が4年(調整対象期間は3年)である場合には,
(5000米ドル-8000米ドル)×1096日×0.97
=-318万9360米ドル
となり,このようにして得られた調整額を傭船料調整前価格に加算して評価対象船舶の価格を得ることとなる(上記式のように,契約傭船料が市場傭船料を下回り,調整額がマイナスとなる場合には,その分が減算されることと
なる。)。
なお,評価対象船舶に係る契約傭船料が一定の幅の範囲内で事後に合意することとされているものについては,その最高額と最低額の中間値に基づいて定期傭船料に係る調整を行った。
(2)

建造船価償却法について
上記(1)アにおいて価格算定の参考となり得る売買実例を収集することがで
きなかった船型(大型のバルカー,コンテナ船,LPG船〔液化石油ガスを運
ぶ貨物船〕等)の船舶については,取引事例比較法によるのが困難であることから,建造船価を基準に,建造時から本件贈与日までの経過年数に基づく減価修正(償却)を行うことで,その価格を算定した。なお,減価修正に必要な調整率(減価率)は,船種に応じた数値を設定した。
具体的には,建造船価×(1-減価率)(経過年数)乗」の算定式により,評価対象船舶の価格を算定した。2原告鑑定におけるDCF法の概要原告鑑定においては,評価対象船舶の価格を算出するに当たり,後記(1)及び(2)のとおり,①定期傭船契約の契約期間中の収益価値に,②契約終了時の船舶価値(いわゆる復帰価格)を加えることにより算定した。なお,上記①及び②は,いずれも現在価値に割り引いたものである。(1)契約期間中の収益価値の算定と現在価値への割引定期傭船契約の契約期間中の収益価値は,残存傭船期間(後記ア)を1年単位に区切り,そのそれぞれについて,評価対象船舶がその間に生み出す収益価値(契約傭船料〔後記イ〕から船舶管理費〔後記ウ〕を控除したもの。)を所定の割引率(後記エ)に基づいて現在価値に割り引いた上で,これらを合計することにより算定した。ア残存傭船期間本件贈与日の翌日から基本契約期間(ファーム期間)の終期までの期間である。ただし,当該定期傭船契約に,傭船者の希望により傭船期間を一定期間延長することができる旨のオプション(以下「延長オプションという。)が付されている場合には,以下の区分に従い,残存傭船期間を設定した。(ア)

市場傭船料の指標を確認することができる船種について
契約傭船料が本件贈与日時点の市場傭船料よりも割安となる場合は,延
長オプションが行使されるものとして,その行使により延長された契約期間(以下延長期間という。)の終期までを残存傭船期間とした。

(イ)
a
市場傭船料の指標を確認することができない船種について
買取オプションが付与されている場合
当該定期傭船契約に,傭船者の希望により当該船舶を契約終了後に買い取ることができる旨のオプション(以下買取オプションという。)が併せて付されている場合には,傭船者が買取オプションを優先的に行
使することが見込まれるため,延長オプションは行使されないものとして,基本契約期間の終期までを残存傭船期間とした。
b
傭船者に買取オプションが付与されていない場合
(a)

原則
延長オプションが行使されるものとして,延長期間の終期までを残
存傭船期間とした。
(b)

例外
契約傭船料が明らかに割高である場合,又は延長オプション行使後
の傭船料額が取り決められていない場合には,同オプションは行使されないものとして,基本契約期間の終期までを残存傭船期間とした。

契約傭船料
契約傭船料が一定の幅(レンジ)をもって定められており,かつ,市場傭船料の指標を確認することができる船型の船舶については,以下の区分にしたがって契約傭船料を設定した。

(ア)

市場傭船料が契約傭船料のレンジ内である場合
市場傭船料を契約傭船料とする。
(イ)

市場傭船料が契約傭船料のレンジの上限より高い場合
レンジの中間値を契約傭船料とする。

(ウ)

市場傭船料が契約傭船料のレンジの下限より低い場合
レンジの最低値を契約傭船料とする。


船舶管理費
主要な船舶管理費は,①船員費,②船用品費,③潤滑油費,④修繕費,⑤入渠費
(ドック費)⑥船体保険料,

⑦P&I保険料
(Protection&Indemnity
Insurance船主責任保険。船舶所有者が船舶の運航による事故等で負う責任及び費用をてん補する。),⑧雑費,⑨店費等である。これらは,海運ブローカー,船主,金融機関等に対するヒアリングに基づいて設定した。
なお,平成18年から平成20年までに生じた船舶建造ブームの影響により,船舶の隻数が大きく膨らみ,船員費の上昇,船用品価格の上昇,船舶事故の増加に伴う保険料の上昇等の事態が生ずることが見込まれたため,船員費については年2%,修繕費については年3%,P&I保険料については年5%のインフレ率を設定した(これらの費用については,設定額を1年ごと
に当該インフレ率分を増額した。)。

割引率
割引率は,①リスクフリーレート(リスクが存在しないで恒常的に一定の収益を産む資産
〔安全資産〕
に投資した場合の収益率をいう。
以下同じ)
に,

②基準リスクプレミアム(船舶への投資リスクに見合う利回り。以下同じ)及び③信用リスクプレミアム(傭船者の契約を履行する能力〔信用力〕に見合う利回り。以下同じ)を加えた割合とした。
(ア)

リスクフリーレート
リスクの少ない米国債金利をリスクフリーレートとした。

(イ)

基準リスクプレミアム
株式の保有に当たって株主が要求する期待利回りに関する議論を参考に4%と設定した。
(ウ)

信用リスクプレミアム
傭船者を,その信用力に基づいて,A格・正常先(契約の履行に何ら問
題ないとされる傭船者),B格・要注意先(契約の履行に何らかの問題が発生する可能性がある,又は履行能力に関する情報開示が不十分とされる
傭船者),C格・不履行懸念先(傭船料の減額依頼などの動きがある傭船者)
及びD格・実質破綻先
(事実上破綻している傭船者)
の4つに区分し,
A格については0%,B格については1%,C格については3%の信用リスクプレミアムをそれぞれ設定した。なお,D格の傭船者が傭船する船舶については,定期傭船契約自体の価値の評価を行わないこととした。
(2)

契約終了時の船舶価値の算定と現在価値への割引
定期傭船契約が終了した時点の船舶価値(復帰価値)は,以下の方法で算定
した船舶価値を,
上記(1)エの割引率に基づいて現在価値に割り引くことにより
算定した。

原則的な算定方法
契約終了時(基本契約期間の終期。ただし,上記(1)ウにおいて延長オプションの行使が見込まれるものについては,延長期間の終期。)における船舶価値は,本件贈与日を基準に,①取引事例比較法,②原価法及び③収益還元法のうちの最も時価に近くなると考えられる方法によって算定した。

例外的な算定方法
傭船者に買取オプションが付されている場合であって,同オプションに係る価格が上記アで算定した価格よりも割安となるときは,同オプションが行使されるものとして,同オプションに係る価格を契約終了時の船舶価値とした。
以上

(別紙4)
争点に関する当事者の主張の要旨

第1
被告の主張の要旨

1
価額評価の枠組み
相続税法22条は,贈与により取得した財産の価額は,原則として当該財産の取得の時における時価による旨規定するところ,ここでいう時価とは,課税時期における当該財産の客観的交換価値をいうものと解される。もっとも,
財産の客観的交換価値は必ずしも一義的に確定されるものではないから,
納税者間の公平等の観点から,財産の価額は,評価通達によって評価することが著しく不適当と認められる特段の事情がない限り,評価通達に定められた評価方式によって画一的に評価するのが相当である。
そして,①評価通達の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的合理性を有するものであり,かつ,②評価の対象となる資産の価額が当該
評価方法に従って決定されたものである場合には,その価額は,当該評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別な事情が存しない限り,当該資産の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないと推認されるというべきである(最高裁平成24年(行ヒ)第79号同25年7月12日第二小法廷判決・民集67巻6号1255頁参照)。

これを船舶の価額の評価についてみると,評価通達136は,船舶の価額について,原則として,売買実例価額,精通者意見価格等を参酌して評価することとし,これらが明らかでない船舶については,原価法によって評価する旨規定しているところ,このような評価方法は,船舶の適正な時価を算定する方法として合理的であるというべきである。そうすると,精通者意見価格を参酌し
て評価した船舶の価額は,当該精通者が用いた価格の鑑定方法が不合理であるなど,当該評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別な事情が存しない限り,当該船舶の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないと推認されることになる。
2
本件係争船舶の評価額について
被告が主張する本件係争船舶の評価額(別表4の被告相続税評価額
欄記載の価額。以下被告評価額という。)は,評価通達136に基づき,精通者である原処分庁鑑定業者(後記(1))の意見価格(原処分庁鑑定価格)を参酌して評価されたものである(なお,原処分庁鑑定価格から控除されている同別表被告控除金額欄記載の金額については,別紙5〔課税の根拠及び計算〕記載第2の2(2)ア(キ)b参照。)。そして,原処分庁鑑定における
鑑定方法は合理的なものであり(後記(2),(3)),そのほかに上記評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別な事情もうかがわれないのであるから,被告評価額は,本件係争船舶の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないと推認されるというべきである。なお,原告鑑定価格の存在は,上記の特別な事情に当たるものではないし,
そもそも原告鑑定における鑑定方法は,それ自体合理性を欠くものであるから(後記(4))被告評価額が適正な時価を上回るものではないと推認されること,
に,何の影響も及ぼさない。
したがって,被告評価額をもって,本件贈与日における本件係争船舶の価額と認めるのが相当である。

(1)

原処分庁鑑定業者が評価通達136に定める精通者意見価格を算定し得
る精通者であること
原処分庁鑑定業者は,大正10年に設立された公正中立な一般社団法人であり,船価鑑定の分野においても約90年の実績を有している。原処分庁鑑定業者においては,
長い経験に裏打ちされ,
市場にも精通した専門鑑定人が,
最新の情報に基づく船価鑑定を行っているのであり,その鑑定結果は,船舶売買,船舶資産評価,船舶衝突損害額の算定,共同海損等において,幅広く利用されている。
以上の事情に鑑みれば,原処分庁鑑定業者は,船舶鑑定や船舶取引について高い信頼性を有する精通者と認めるのが相当であって,評価通達136に定める精通者意見価格を算定し得る精通者に当たるというべきである。(2)

原処分庁鑑定における取引事例比較法による鑑定が合理的であること定期傭船契約付き船舶であっても取引事例比較法によって適正に鑑定することができること
原処分庁鑑定において採用された取引事例比較法は,売買実例の中から評価対象船舶と船種,船型,船齢等が類似する比較対象実例を抽出し,必要に応じて①船齢差,②積載能力差,③装備等による価格差に係る調整を
行い,更に④定期傭船料に係る調整を行うという合理的なものである。原処分鑑定における比較対象実例は,いずれも定期傭船契約が付されていない船舶(カラ船)に係るものであるが,定期傭船契約付き船舶とカラ船との価格差は,専ら定期傭船契約の有無によって生ずると考えられるから,比較対象実例がカラ船に係るものであったとしても,上記④の定期傭
船料に係る調整を行うことで,定期傭船契約付き船舶の価格を適正に鑑定することができる。

定期傭船料の調整対象期間を3年に限定したことには合理性が認められること

本件贈与日における市場傭船料の指標は,傭船期間が3年までのものしか公表されておらず,また,当時はリーマン・ショックの影響で傭船料相場が乱高下していたため,4年目以降の市場傭船料を予想することは困難であった。そのため,原処分庁鑑定業者は,定期傭船契約付き船舶の価格に影響を及ぼすのは,市場傭船料の指標が存する3年分についてのみであ
ると考え,調整対象期間を3年に限定したものである。
そもそも,財産の評価に当たって考慮される要素は客観的なものに限られ,主観的なものは排除されるべきであるところ(乙27),原処分庁鑑定業者は,客観的に認められる3年までの市場傭船料を考慮したのであるから,その判断に何ら不合理な点はない。
したがって,原処分庁鑑定業者が定期傭船料の調整対象期間を3年に限定したことには合理性が認められる。

(3)

原処分庁鑑定における建造船価償却法が合理的であること
原処分庁鑑定においては,価格算定の参考となり得る売買実例を収集することができなかった船型の船舶について,取引事例比較法によるのが困難であることから,建造船価を基準に,建造時から本件贈与日までの経過
年数に基づく減価修正を行うことで,その価格を算定している(建造船価償却法)。
評価対象船舶の建造船価は,定期傭船契約に定められた将来の傭船料収入と,契約終了時点で見込まれる船舶の売却価格との総和に見合う価格となっていると考えられるところ,このような価格は,評価対象船舶に付さ
れた定期傭船契約の個別性や収益性を反映するものというべきである。また,評価対象船舶について,造船契約締結当時と本件贈与日当時とを比較すると,新造船価の推測値は同水準であるか,又は造船契約締結当時の方が低水準であったのだから,上記両時点における新造船価の差異が鑑定結果に影響を及ぼすおそれもない(少なくとも,本件贈与日の水準より
も高額な鑑定結果が出ることはない。)。この点,本件裁決は,建造船価償却法について,リーマン・ショックにより市場価格が急激に下落した時点における時価を算定する方法としては合理性に欠ける旨説示しているが,上記のとおり,造船契約締結当時と本件贈与日当時とでは,新造船価の推測値は同水準であるか,又は造船契約締結当時の方が低水準であっ
たのだから,本件裁決がこのことを看過しているのは明らかであって,その判断過程には誤りがあったというべきである。
以上の点に鑑みれば,
原処分庁鑑定業者の用いた建造船価償却法は合理
的であるというべきである。

なお,建造船価償却法は,評価基準時における対象資産の再調達原価に基づく原価法とは異なる鑑定方法であるが,
本件贈与日当時は,
リーマン・
ショックの影響により,再調達原価の設定に必要な新規の造船契約が存在
していなかったため,原価法を用いて本件各船舶の鑑定を行うことは困難であった。
また,取引事例比較法と原価法のいずれによることも困難な場合には,収益還元法(DCF法)を用いて鑑定をすることも考えられなくはない。しかし,本件贈与日当時は,リーマン・ショックの影響により,DCF法
の利用に必要な市場傭船料の推移や定期傭船契約終了時の船舶価格(復帰価格)を予測することが極めて難しく,しかも,リスクフリーレートに用いられる各種金利の低下により,DCF法を用いても合理的な結果が得られない状態にあったため,収益還元法を用いて鑑定をすることは困難であり,また不適切であった。

したがって,原処分庁鑑定業者が建造船価償却法を用いたことは,他に取り得る鑑定方法が見当たらなかったという観点からも,合理的というべきである。
(4)
原告鑑定における鑑定方法が合理的であるとはいえないこと
原告鑑定業者は,DCF法を用いて本件係争船舶の鑑定を行っているが,
上記(3)イで述べたとおり,
リーマン・ショック後の時期においてDCF法を
用いることはそもそも不適切であった。また,DCF法は,専門家の知見による適正な収益等の予測と割引率の設定によって行われるべきものであるところ,原告鑑定業者が行った収益等の予測と割引率の設定は,以下のとおり客観性に乏しく恣意的なものであった。したがって,原告鑑定業者の用いた鑑定方法が合理的であるということはできない。

契約期間中の収益価値の算定及び現在価値への割引について
(ア)

残存傭船期間の設定に当たり,延長オプションの行使について客観
性を欠く恣意的な判断を行っていること
原告鑑定業者は,残存傭船期間の設定に当たり,契約傭船料と本件贈与日当時の市場傭船料とを比較して,延長オプションが行使されるか否かを判断している。しかし,将来における延長オプションの行使の有無は,当該船舶の必要性等も含めて総合的に判断されるべき事柄であるから,傭船料の比較のみに依拠して行われた原告鑑定業者の判断は,十分な検討を欠くものといわざるを得ない。
また,傭船料を比較するとしても,延長オプションの行使に関して契
約傭船料と比較すべきは,本件贈与日当時ではなく基本契約期間の満了時点の市場傭船料であるから,原告鑑定業者が行った判定は,結局,本件贈与日当時の市場傭船料の水準が基本契約期間の満了時点まで継続するとの根拠のない仮定に基づくものということになる。
以上のとおりであるから,原告鑑定業者が行った延長オプションの行
使に関する判断は,客観性を欠く恣意的なものというべきである。(イ)

契約傭船料に幅(レンジ)が設けられている船舶に係る契約傭船料
の設定が恣意的であること
原告鑑定業者は,契約傭船料が一定の幅(レンジ)をもって定められており,かつ,市場傭船料の指標を確認することができる船型の船舶について,市場傭船料が契約傭船料のレンジより高い場合にはレンジの中間値を契約傭船料として設定する一方,低い場合にはレンジの中間値ではなく最低値を契約傭船料として設定している。このような一貫性のない契約傭船料の設定方法は,恣意的なものであるといわざるを得ない。
(ウ)

船舶管理費について客観性を欠く恣意的なインフレ率を設定して

いること
原告鑑定業者は,船舶管理費のうち船員費,修繕費及びP&I保険料についてインフレ率を設定しているが,
このようなインフレ率の設定
(す
なわち将来予測)について具体的な根拠は示されておらず,仮に,海運ブローカーのヒアリング等を通じて短期的なインフレ率を予測することができたのだとしても,リーマン・ショックの影響下においてそれが長期間継続することを予測することは困難であるから,結局,原告鑑定業者のインフレ率の設定は具体的な根拠を欠くものであるといわざるを得ない。したがって,原告鑑定者が行ったインフレ率の設定は,客観性を欠く恣意的なものというべきである。

(エ)

客観的な根拠なく恣意的に割引率を設定していること
原告鑑定業者は,割引率の設定において,リスクフリーレートに基準
リスクプレミアム(4%)及び信用リスクプレミアム(傭船者の信用力の区分に応じて設定)を加算している。
しかし,基準リスクプレミアムとして用いられた4%という数値は,株式に係る裁判例(東京地裁平成20年3月14日決定・判例タイムズ1266号120頁,東京高裁平成22年5月24日決定・金融商事判例1345号12頁)において用いられたリスクプレミアムにすぎないのであって,具体的な検証に基づいて設定されたものではないから,これを船舶のリスクプレミアムとして用いた原告鑑定業者の判断は,専門
家としての知見に基づくものとは評価できない。
また,
原告鑑定業者は,
信用リスクプレミアムの設定に当たり,傭船者をその信用力に基づいて4つに区分しているが,このような信用力の区分はそもそも難しい上,区分の根拠も曖昧にしか示されていない。
さらに,定期傭船契約において,傭船者は船舶所有者に対して定期傭
船料の支払義務を負う債務者としての地位に立つものであるから,船舶所有者が負うリスクとは,結局,傭船者が債務不履行に陥るリスクのみである。そのため,リスクフリーレートには,本件係争船舶の傭船者の中で最も信用力の低い者の格付けに対応する信用リスクプレミアム(具体的にはBB格付けに対応する米国社債スプレッド)のみを加算すべきであって,原告鑑定業者の割引率の設定は,リスクを恣意的に過大評価しているものといわざるを得ない。

以上によれば,原告鑑定業者が行った割引率の設定は,客観性を欠く恣意的なものというべきである。

契約終了時の船舶価値の算定方法及び現在価値への割引について
(ア)

客観性を欠く恣意的な船舶価値の算定を行っていること
原告鑑定においては,定期傭船契約の契約終了時の船舶価値(復帰価
値)を,本件贈与日を基準に算定しているところ,このような判断は,本件贈与日当時の船舶価格の市場水準が契約終了時点まで継続するとの仮定に基づくものといわざるを得ない。そして,このような仮定には,何の根拠もないのであるから,原告鑑定における契約終了時の船舶価値の算定は,客観性を欠く恣意的なものというべきである。

(イ)

信用リスクプレミアムが加算された割引率を用いることが不合理

であること
原告鑑定業者は,船舶価値を現在価値に割り引くに当たって,収益価値を割り引くのと同様の割引率を用いている。
しかし,定期傭船契約終了時の船舶価値は,傭船者に係る契約の履行
能力に左右されるものではなく,これを現在価値に割り引くに当たって傭船者の信用リスクを考慮する必要がないのであるから,信用リスクプレミアムが加算された割引率を用いることは不合理というべきである。第2
原告の主張の要旨
被告は,被告評価額は,精通者である原処分庁鑑定業者の意見価格(原処分庁鑑定価格)を参酌して評価されたものであり,かかる評価方法によって適正な時価を適切に算定することのできない特別な事情もうかがわれないから,被告評価額は本件係争船舶の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないと推認されると主張する。
しかし,後記1のとおり,原処分庁鑑定における鑑定方法は合理性を欠くものであって,上記の特別な事情が認められることになるから,被告評価額につ
いて適正な時価を上回るものではないとの推認は及ばないというべきである。他方,精通者である原告鑑定業者が用いた鑑定方法は,後記2のとおり合理的なものであるから,原告鑑定業者の意見価格(原告鑑定価格)を参酌して評価した本件係争船舶の価額(別表4原告相続税評価額欄記載の価額。以下原告評価額という。)をもって,本件贈与日時点における本件係争船舶
の価額と認めるのが相当である。
そして,原告評価額及び当事者間に争いのない本件売却船舶の評価額を前提にすれば,本件株式の価額は0円であり,原告について平成21年分の贈与税の課税価格に係る贈与税額はないということになるから,原告に対してされた本件各処分は違法であって,取消しを免れない。

1
原処分庁鑑定における鑑定方法が合理性を欠くものであること
(1)

原処分庁鑑定における取引事例比較法について
鑑定方法の選択が合理性を欠くものであること
本件係争船舶は,そのいずれにも定期傭船契約が付されているところ,
定期傭船契約付き船舶が売買されることは少ないため(通常はカラ船の形で売買される),取引事例比較法を用いるのに必要な売買実例は,そもそも乏しい状況にあった。しかも,本件贈与日当時は,平成20年9月に発生したリーマン・ショックの影響により,中古船市場における売却価格は大幅に下落しており(リーマン・ショック前比20%~80%減),契約
成立件数も急減した上,個別性の強いものが目立つ状況となっていた。そのため,本件係争船舶の鑑定に取引事例比較法を用いることには,相当な制約が伴っていたところ,後記2のとおり,DCF法を用いて本件係争船舶の価格を合理的に鑑定することは可能だったのであるから,本件係争船舶の鑑定方法としては,DCF法を選択するのが合理的であったというべきである。しかし,原処分庁鑑定業者は,DCF法を選択せず,あえて制約の多い取引事例比較法を選択しているのであるから,原処分庁鑑定業者
の鑑定方法の選択は合理性を欠くものである。

定期傭船料に係る調整対象期間を3年に限定したことが不合理であること
原処分庁鑑定においては,比較対象船舶の価格に各種調整を加えて定期
傭船契約が付されていない場合の価格(傭船料調整前価格)を算定した上で,これに定期傭船料に係る調整を加える(契約傭船料と市場傭船料の差額に基づく調整額を加減算する)ことで,定期傭船契約付き船舶である評価対象船舶の価格を算定している。もっとも,定期傭船料に係る調整を加えるに当たり,残存傭船期間が3年を超える船舶については,3年のみを
調整対象期間とし,3年経過後の期間については何の調整も加えていない。原処分庁鑑定業者は,
調整対象期間を3年に限定した理由について,

定期傭船契約が付された船舶の価格に影響を及ぼすのは,市場傭船料の指標が存する(公表されている)3年分についてのみであると考えた。

と説明する。しかし,定期傭船契約付き船舶の売却価格決定に当たり,市場傭
船料の指標が公表されている期間に限って実際の定期傭船料と市場傭船料との差額を加減算するような取引慣行は存在していないのであるから,原処分庁鑑定業者の上記説明はおよそ実証的なものとはいい難い。また,被告が別途ヒアリングをした船価鑑定に係る専門業者5社(以下訴外各専門業者という。)のうち,定期傭船契約付き船舶の鑑定に当たって,
同契約が船価に与える影響を考慮すると回答した2社も,残存傭船期間の全てを考慮対象に含めるとしている。
以上のように,原処分庁鑑定業者が定期傭船料に係る調整対象期間を3年間に限定したことについては,実証的な根拠はなく,訴外各専門業者の取扱いとも異なるものであるから,原処分庁鑑定業者が用いた取引事例比較法は,この点において特に不合理というべきである。
(2)

原処分庁鑑定における建造船価償却法について
原処分庁鑑定においては,取引事例比較法によることが困難であると判断
した船舶について,建造船価を基準として,建造時から本件贈与日までの経過年数に基づく減価修正
(償却)
を行うことで,
その価格を算定している
(建
造船価償却法)。
しかし,本件係争船舶の建造時点から本件贈与日までの間に,船舶の市場
価値は大きく変動しているところ(乙23),建造船価償却法では,評価対象船舶の価格は常に建造時点の市場価格に基づいて評価され,建造時点から本件贈与日までの市場価格の変動は鑑定結果に一切反映されないこととなるから,建造船価償却法は,本件贈与日における本件係争船舶の価格を鑑定する手段としては合理性を欠くというべきである。このことは,本件裁決にお
いて国税不服審判所長が同旨の説示をしていることからも明らかである。2
原告鑑定における鑑定方法が合理的なものであること
原告鑑定業者は,その専門的知見を活用し,かつ,評価対象船舶に付された定期傭船契約の内容を個別かつ詳細に精査した上で,DCF法に基づき,評価
対象船舶が契約期間中に生み出す収益価値と,
契約終了時の船舶価値を算定し,
これを適正に設定した割引率によって現在価値に割り引くことで,評価対象船舶の価格を鑑定しているのだから,原告鑑定における鑑定方法が合理的なものであることは明らかである。なお,被告は,原告鑑定における鑑定方法に合理性がない旨主張するが,以下のとおり,いずれも理由がない。

(1)

契約期間中の収益価値の算定及び現在価値への割引について
残存傭船期間の設定における延長オプション行使の判断について
被告は,原告鑑定業者が行った残存傭船期間の設定について,本件贈与日当時の市場傭船料の水準が基本契約期間の満了時点まで継続すると根拠なく仮定していると主張する。
しかし,このような仮定を行ったのは,将来の市場傭船料水準を予測することが困難であり,予測結果が予測者の主観に大きく左右されるもので
あったため,本件贈与日当時(評価日時点)の市場水準を価格算定の前提とすることが最も中立公正であると考えたからである。このような原告鑑定業者の判断に,何ら不合理な点はないから,被告の上記主張は失当である。

契約傭船料に幅(レンジ)が設けられている船舶に係る契約傭船料の設定について
被告は,原告鑑定業者が,市場傭船料が契約傭船料のレンジより高い場合にはレンジの中間値を契約傭船料として設定する一方,低い場合にはレンジの中間値ではなく最低値を契約傭船料として設定したことが,一貫性のない恣意的な判断であると主張する。

しかし,定期傭船契約において契約傭船料にレンジが設けられているのは,船舶所有者が負うことになるコストの高騰に備えるためであるから,そのような事態が生じていない限り,市場傭船料がレンジより高いからといって,傭船者が傭船料をレンジの最高値とすることに応じるとは限らない。しかも,本件贈与日当時は,リーマン・ショックの影響により買い手市場の状態にあったため,交渉力においても傭船者が優位に立っていた。原告鑑定業者は,これらの事情を考慮し,レンジより高い場合には中間値,低い場合には最低値を契約傭船料として設定したのであるから,原告鑑定業者の判断に,何ら不合理な点はない。したがって,被告の上記主張は失当である。


船舶管理費に関するインフレ率の設定について
被告は,原告鑑定業者が船舶管理費のうち船員費,修繕費及びP&I保険料について設定したインフレ率について,客観性を欠く恣意的なものであると主張する。
しかしながら,原告鑑定業者が上記のインフレ率を設定したのは,平成18年から平成20年までに生じた船舶建造ブームの影響により,船舶の
隻数が大きく膨らみ,船員費の上昇,船用品価格の上昇,船舶事故の増加に伴う保険料の上昇等の事態が生ずることが見込まれたからであり,このように将来変動する可能性の高い船舶管理費について上昇リスクを織り込むことは,海運業界にとっても常識であった。現に,訴外各専門業者のうちU株式会社(以下Uという。)は,収益還元法を用いて定期傭船
契約付き船舶の価格を鑑定するに当たり,船舶管理費に一律2%のインフレ率を設定するとしている。
以上のとおり,原告鑑定業者によるインフレ率の設定は,専門的知見に基づいて行われた合理的なものであるから,被告の上記主張は失当である。エ
割引率の設定について
被告は,原告鑑定業者がリスクフリーレートに基準リスクプレミアム及び信用リスクプレミアムを加算して割引率を設定したことに対し,船舶所有者が負うリスクは傭船者が債務不履行に陥るリスクのみであるから,原告鑑定業者はリスクを過大評価していると主張する。

しかし,船舶を保有し,貸船業を行うということは,単に傭船者が債務不履行に陥るリスクを負うだけではなく,船舶の運航における事故等(座礁,これに伴う油濁,第三者の保有する船舶や港湾設備の損壊等)の様々なリスクを負うのであって,かかるリスクを株式リスクプレミアムに関する議論等を参考に数値化したものが上記の基準リスクプレミアムである。
このように,基準リスクプレミアムと信用リスクプレミアムとは,その性質を異にするものであるから,その双方を加算したからといって,リスクを過大評価することにはならない。したがって,被告の上記主張は失当である。
なお,Uは,収益還元法を用いて定期傭船契約付き船舶を鑑定するに当たり,一律8%という割引率を設定している。原告鑑定業者が設定した割引率は,本件各船舶70隻のうち55隻について8%を下回っており,こ
のことからも,原告鑑定業者が割引率の設定においてリスクを過大評価していないことが明らかである。
(2)

契約終了時の船舶価値の算定及び現在価値への割引について
被告は,原告鑑定業者が行った定期傭船契約の契約終了時の船舶価値(復
帰価値)の算定について,本件贈与日当時の船舶価格の市場水準が契約終了時点まで継続すると根拠なく仮定していると主張する。
しかし,このような仮定を行ったのは,上記(1)アで述べたのと同様に,本件贈与日当時の市場水準を価格算定の前提とすることが最も中立公正であると考えられたからであって,このような原告鑑定業者の判断に何ら不合理な
点はないから,被告の上記主張は失当である。
以上

(別紙5)
課税の根拠及び計算

第1
1
本件各処分の課税の根拠及び計算
本件決定処分について
(1)

被告主張額の根拠
被告が本件訴訟において主張する本件決定処分に係る原告の贈与税の課税
価格及び納付すべき税額は,以下のとおりである。

課税価格の合計額

51億9829万5400円

当該金額は,
相続税法21条の2に規定する贈与税の課税価格であり,

件株式の1株当たりの金額2億5991万4770円(別表2-1の3.1株当たりの純資産価額の計算課税時期現在の1株当たりの純資産価額(相続税評価額)欄の金額)に本件贈与に係る本件株式の株数である20を乗じた金額である。
なお,本件株式の1株当たりの金額の算定根拠については,後記第2
で述べるとおりである。

納付すべき贈与税額

25億9634万7500円

当該金額は,上記アの課税価格から相続税法21条の5及び租税特別措置法70条の2の規定により,贈与税の基礎控除額110万円を控除した後の金額51億9719万5400円(ただし,通則法118条1
項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後の金額)に,相続税法21条の7に規定する税率を適用して算出した金額である。
(2)

本件決定処分の適法性
被告が本件訴訟において主張する原告の納付すべき贈与税額は上記(1)
のとおり25億9634万7500円であるところ,当該金額は,本件決定処分における原告の納付すべき贈与税額4億4987万5000円を上回るから,本件決定処分は適法である。
2
本件賦課決定処分について
(1)

本件賦課決定処分の根拠
上記1で述べたとおり,本件決定処分は適法であるところ,原告が平成
21年分の贈与税の申告書を法定申告期限内に提出しなかったことに,通則法66条1項ただし書に規定する正当な理由があるとは認められない。
そして,原告の納付すべき贈与税額に係る無申告加算税の額は,次のア及びイの金額を合計した8994万9000円である。


通則法66条1項の規定により課される無申告加算税額
6748万0500円
当該金額は,本件決定処分により納付すべきこととなる税額4億49
87万5000円(上記1(2)。ただし,通則法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの。)に100分の15の割合を乗じて算出した金額である。


通則法66条2項の規定により加算される無申告加算税額
2246万8500円
当該金額は,本件決定処分により納付すべきこととなる税額4億49
87万5000円のうち,50万円を超える部分に相当する金額4億4937万5000円(ただし,通則法118条3項の規定により1万円
未満の端数を切り捨てた後のもの)に100分の5の割合を乗じて算出した金額である。
(2)

本件賦課決定処分の適法性
原告の納付すべき贈与税額に係る無申告加算税額は上記(1)のとおり8
994万9000円となるところ,当該金額は,本件賦課決定処分における無申告加算税額と同額であるから,本件賦課決定処分は適法である。第2
1
本件株式の1株当たりの金額の算定根拠
本件株式の1株当たりの金額について
(1)

本件株式は,取引相場のない株式であり,直前期末以前2年間において
剰余金の配当を行っていないこと,直前期末以前1年間又は直前期末以前2年間の各事業年度の法人税の課税所得金額に基づいて算定した利益金額の合計額が負数になっていること,並びに直前期末における資本金等の額及び法人税法2条18号に規定する利益積立金に相当する金額の合計額も負数となっていることから,
評価通達183の(1)から(3)までに定める
1株当たりの配当金額,1株当たりの利益金額及び1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)のそれぞれの金額がいずれも0である会社に該当し,評価通達189(4)の特定の評価会社の株式のうち開業後3年未満の会社等の株式に該当するため,その価額は純資産価額方式により算定することとなる(評価通達178ただし書,189柱書本文,189-4)。

(2)

本件株式の1株当たりの純資産価額は,評価通達185所定の方式(純
資産価額方式)に基づき,次のとおり,Eの平成21年2月28日(事業年度の末日)現在の貸借対照表の価額(以下Eの帳簿価額という。)に基づき計算し算定した価額である。

資産の部(別表2-1の1.資産及び負債の金額(課税時期現在)資産の部欄)について
(ア)

現金預金(現金預金相続税評価額欄の金額)
Eの帳簿価額に利息相当額9万1548円を加算し,外貨預金につ
いては評価通達4-3(邦貨換算)の定めに基づき,本件贈与日現在における対顧客直物電信買相場(以下TTBという。)である1
米ドル当たり96.81円を乗じて邦貨換算を行った金額である。(イ)

繰延税金資産(繰延税金資産相続税評価額欄の金額)
繰延税金資産は,財産性を有しない擬制的な資産であることからその相続税評価額は0円となる。
(ウ)

建物(建物相続税評価額欄の金額)
評価通達89(家屋の評価)の定めに基づき,平成21年度の固定
資産税評価額3872万7914円に1.0を乗じた金額である。
(エ)

土地(土地相続税評価額欄の金額)
評価対象物件に接面する路線価額(1平方メートル当たり3万70
00円)を基に,評価通達15(奥行価格補正)の定めに基づき,奥行価格補正0.99を適用して計算した金額である。
(オ)

投資有価証券(投資有価証券相続税評価額欄の金額)
投資有価証券は上場株式であり(愛媛銀行の株式1万株),評価通
達169(上場株式の評価)(1)の定めに基づき,課税時期における1株当たりの価額289円に株数を乗じた金額である。
(カ)

本件外国株式(本件外国株式相続税評価額欄の金額)
本件外国株式の金額は,後記2のとおりである。

(キ)

保険金積立(保険金積立相続税評価額欄の金額)
評価通達214(生命保険契約に関する権利の評価)の定めに基づ
き,本件贈与日における解約返戻金相当額の金額である。
(ク)

その他の資産
その他の資産については,Eの帳簿価額と同額である。


負債の部(別表2-1の1.資産及び負債の金額(課税時期現在)負債の部欄)について
負債については,Eの帳簿価額と同額である。

2
本件外国株式の金額について
本件外国株式の金額については,別表3-1の相続税評価額による純資産価額(「相続税評価額の合計①欄-相続税評価額の合計②欄)」欄の金額のとおりであり,その計算根拠は次のとおりである。(1)

外国法人が発行する取引相場のない株式に準ずる株式については,当該
外国法人の規模にかかわらず,純資産価額方式により評価することとなる。本件外国株式は,金融商品取引法2条16項に規定する金融商品取引所若しくは同取引所に類するものであって外国に所在するものに上場されていない又は当該上場の申請がされていない株式であり,かつ,同法67条の11第1項に規定する店頭売買有価証券登録原簿若しくは同登録原簿に類するものであって外国に備えられるものに登録されていない又は当該登録の申請がされていない株式である。そして,本件外国子会社はパナマを
本店所在地としていることから,本件外国株式の算定においては,外国法人が発行する取引相場のない株式に準ずる株式として,上記のとおり,純資産価額方式により評価することとなる。
(2)

本件外国株式の1株当たりの純資産価額は,評価通達185所定の方式
(純資産価額方式)に準じ,次のとおり,本件外国子会社の平成21年4月30日(事業年度の末日)現在における資産及び負債の金額及び同年2月28日現在における資産及び負債の金額(以下本件外国子会社帳簿価額という。)を基に,本件外国子会社の各種帳簿・原始記録からそれぞれの資産及び負債の金額を修正し,算定した金額である。

資産の部(別表3-1の資産の部欄)
(ア)

現金預貯金(現金預貯金相続税評価額欄の金額)

円建て普通預金については,本件外国子会社帳簿価額の金額に既経過利息相当額4204円を加算し,外貨預金については,本件外国子会社帳簿価額の金額に評価通達4-3の定めに基づき,本件贈与日現在におけるTTBを乗じて邦貨換算を行った金額である。
(イ)

船用金(船用金相続税評価額欄の金額)
本件外国子会社帳簿価額と同額である。
(ウ)

短期貸付金(短期貸付金相続税評価額欄の金額)
本件外国子会社帳簿価額と同額である。

(エ)

未収入金(未収入金相続税評価額欄の金額)
本件外国子会社帳簿価額と同額である。

(オ)

立替金(立替金相続税評価額欄の金額)
本件贈与日以前に発生していた立替金の額である。

(カ)

仮払金(仮払金相続税評価額欄の金額)

平成21年4月30日(事業年度の末日)に仮払金を前期損益修正損として減算しているため,本件外国子会社帳簿価額から478万2259円を減算した金額である。
(キ)
a
船舶(船舶相続税評価額欄の金額)
船舶の価額は,本件各船舶の価額であり,別表4の被告相続税評価額合計欄の金額(括弧外のもの)である。b
本件各船舶の評価額は,評価通達136の定めに基づき,精通者
意見価格等を基にした金額,すなわち,船舶取引の精通者である原処分庁鑑定業者が鑑定した価格である(原処分庁鑑定価格。ただし,修正後のもの。)。
なお,
本件外国子会社が船舶保有会社との間の裸傭船契約
(乗組員
の付かない船舶そのものの賃貸借を内容とする契約をいう。以下同
じ)に基づきリースを受けている船(以下リース船舶という。)
については,
法人税法64条の2第1項の規定により本件外国子会社
が取得したものとみなされ,
裸傭船契約において,
当該契約終了時に
当該契約に係る支払が完了している場合に限りリース船舶を本件外国子会社が購入する旨の定めがあり,
かつ,
当該購入価格が明らかな

リース船舶については,
当該購入価格をリース船舶の評価額から差し
引くべきであるから,原処分庁鑑定評価額から控除した(別表4被告控除金額欄)。また,購入価格が外貨の場合は,評価通達4-3の定めに基づき,
本件贈与日現在のTTBを乗じて邦貨換算を行
った金額である。
(ク)

建設仮勘定(建設仮勘定相続税評価額欄の金額)

本件外国子会社が保有する建設中と経理していた船舶のうち,本件
贈与日において,実質的に供用が開始されていた船舶の帳簿価額の合計額を本件外国子会社帳簿価額の建設仮勘定から減算し,減算後の建設仮勘定の金額250億1995万5862円に評価通達91(建築中の家屋の評価)に準じ0.7を乗じた金額である。
(ケ)

長期貸付金(長期貸付金相続税評価額欄の金額)

本件外国子会社帳簿価額に,本件贈与日に存在していたG株式会社等に対する長期貸付金4億3225万2667円を加算した金額である。
(コ)

創業費

創業費は繰延資産であり,財産性を有しない擬制的な資産であるこ
とから,相続税評価額は0円となる。

負債の部(別表3-1の負債の部欄)
(ア)

未払金(未払金相続税評価額欄の金額)

本件外国子会社の平成21年4月30日現在の帳簿価額から,平成21年3月又は4月に発生した未払金2億1248万3103円を減算し,建設仮勘定からの船舶への振替金額1億3676万2797円,長期借入金にかかる経過利息2億7038万0220円及びリース料に係る経過利息1億6501万5708円を加算した金額である。(イ)

前受金(前受金相続税評価額欄の金額)

船舶の定期傭船主から船主である本件外国子会社に対して,本件贈与日にまたがる船舶に係る傭船契約に基づく傭船料につき,本件贈与日以降の傭船料を期間計算した金額である。
(ウ)

仮受金(仮受金相続税評価額欄の金額)

平成21年4月30日(決算時)に前期仮受金を前期損益修正益として減算された価額であったため,本件外国子会社帳簿価額から973万2335円を減算した金額である。
(エ)

短期借入金(短期借入金相続税評価額欄の金額)
本件外国子会社帳簿価額と同額である。

(オ)

長期借入金(長期借入金相続税評価額欄の金額)

本件外国子会社帳簿価額から平成21年3月又は4月に発生した長期借入金を減算し,同年3月又は4月に返済した長期借入金を加算した金額である。
(カ)

圧縮記帳引当金(圧縮記帳引当金相続税評価額欄の金額)

圧縮記帳引当金は,実質負債性を有しないため相続税評価額は0円となる。
以上

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