事件番号 | 令和1(行ウ)179 |
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事件名 | 入札無効決定取消等請求事件 |
裁判年月日 | 令和2年9月10日 |
裁判所名 | 大阪地方裁判所 |
裁判日:西暦 | 2020-09-10 |
情報公開日 | 2021-03-23 16:00:49 |
令和元年(行ウ)第179号 入札無効決定取消等請求事件 主文12 本件訴えをいずれも却下する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 第1 及び理由1 請求の趣旨 大阪市長が原告に対し令和元年9月13日付けでした入札無効の決定を取り消す。 2 大阪市長がA株式会社に対し令和元年9月13日付けでした落札者の決定を取り消す。 第2 事案の概要 別紙物件目録記載の各建物(以下本件各建物という。 )を所有する被告は, 令和元年9月13日,本件各建物について,あらかじめ定められた貸付条件に従った管理運営をすることなどの条件の下に,借地借家法38条に規定する定期建物賃借権の設定を目的とする内容の賃貸借契約(以下本件契約という。)を締 結する相手方(賃借人)を募集する条件付一般競争入札(以下本件入札という。 )を実施し,開札の結果,その落札者をA株式会社(以下Aという。)で ある旨の決定(以下本件落札決定という。 )をした。 本件は,本件入札に参加した業者の中で最高の価格をもって入札したにもかかわらず,入札書に原告の適式な押印がないことを理由として本件入札が無効である旨の決定(以下本件入札無効決定という。 )を受けたとする原告が,本件入 札無効決定はあらかじめ定められていない新たな無効事由を作出してされたものであり,また,本件落札決定は最高の価格をもって入札した者と異なる者を落 札者であると決定するもので,いずれも違法であると主張して,被告に対し,本件入札無効決定及び本件落札決定の取消しを求める事案である(なお,原告は,請求の趣旨2項に関し,取消しを求めている本件落札決定が令和元年9月18日付けでされたとするが, これは同月13日付けであるから, そのように解する。。 ) 被告は,本件において,本件入札無効決定及び本件落札決定は,行政事件訴訟法3条2項に定める処分その他公権力の行使に当たる行為に当たらないから本件訴えは不適法なものとしていずれも却下されるべきである旨主張するため,当裁判所は,本件訴えの適法性に関する中間の争いについて裁判をすることとし,当該中間の争いの内容に応じ,裁判の結果として中間判決(本件訴えが適法である場合)又は終局判決(本件訴えが不適法である場合)をすることとしたものである。 1 関係法令の定め 別紙関係法令の定めのとおり。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠等により容易に認定することができる事実。以下,書証番号は特記しない限り各枝番を含む。) (1) ア 当事者等 原告は,平成23年に設立された,不動産の売買,仲介,あっせん,賃貸及び管理等を目的とする, 資本金5000万円の株式会社である。 (甲2 4,弁論の全趣旨) イ 被告は,本件各建物を所有する地方公共団体である。 ウ Aは,市街地再開発事業等によって建築された建築物の管理,運営を行い,また,同事業に関連する施設の建設,経営を行うことにより市街地再 開発の円滑な促進に寄与することを目的とし,市街地再開発事業等により建築された建築物の管理及び運営等を主な事業としている株式会社である。 (甲7) (2) ア 本件入札の経緯等 被告は,本件各建物をB協会に賃貸していたが,同法人との賃貸借契約の期間が令和元年11月30日に満了することから,本件各建物について,同年12月1日から令和12年3月31日までの期間を賃貸期間とする本件契約の相手方となる新たな賃借人を募集することとし,本件契約の内容を市有財産定期建物賃貸借契約書(案)にまとめるとともにC町リバープレイス・D地区文化交流プラザ定期建物賃貸借契約による貸付の条件付一般競争入札募集要項(以下本件募集要項という。 )を作成して 本件入札を行うこととし,令和元年7月頃,その公告をした。本件募集要項においては,その予定価格として,本件契約における本件各建物の合計賃料を月額1091万1100円と定めること,入札参加応募の手続として,入札参加希望者は令和元年7月17日から同年8月8日までの間に事前登録をした上で,所定の日時・場所において開催される現地見学会に参 加することのほか,入札及び開札を同年9月13日に実施することとし,入札参加者は,入札書に記載する賃料(月額・消費税等抜き)の6か月分以上の入札保証金を納付することなどが明記された。 (以上につき, 甲11, 12) イ 原告は,令和元年8月7日,大阪市都市整備局市街地整備部区画整理課において入札参加申請をし,同月19日及び同月20日に開催された現地見学会に参加した。 (甲12~16,19,弁論の全趣旨) ウ 原告は,令和元年9月13日,大阪市都市整備局市街地整備部区画整理課において,本件入札の受付手続をするとともに,1億2000万円の金 額を記載した入札保証金納付書及び同額面の金融機関振出小切手を大阪市担当職員に交付し,入札保証金を納付した。 (甲18,弁論の全趣旨) 原告は,大阪市担当職員から交付された入札書に原告の本店所在地,商号,代表者の肩書及び氏名並びに原告が希望する月額賃料( 2000万円を記載するとともに, ) 原告の認め印 (実印とは異なるもの) を押捺し, これを提出して入札した。 (甲24,26) 大阪市担当職員は,入札を締め切った上で開札をし,入札書を提出した原告,A及びE株式会社(以下Eという。 )に対し,それぞれの入札価 格(月額賃料)が,順に,2000万円,1652万0095円及び1508万円である旨を説明した上で,原告の入札が無効であるとして原告の入札書に印を押捺して 無効 と表示し, 本件入札無効決定をした。 なお, 大阪市担当職員は,原告の求めに応じ,原告が提出した入札書に原告の実 印が押捺されていないことが本件入札無効決定の理由である旨を説明した。 (以上につき,甲26,弁論の全趣旨) エ 被告は, 令和元年9月13日, 本件入札の落札者をAとする旨の決定 (本 件落札決定)をし,同月18日,本件入札における入札参加者が3者であり,その落札者はA,落札価格は月額1652万0095円(消費税等を 除く。 )である旨をウェブサイトにおいて公表した。 (甲28,弁論の全趣 旨) オ 被告は,令和元年10月4日,入札保証金1億2000万円の返還をすべく原告に対して同年9月13日に現実に提供したものの,原告がその受領を拒否したとして同額を供託した。 (甲29) (3) 本件訴えの提起 原告は,令和元年12月6日,本件訴えを提起した。 (当裁判所に顕著な事 実) 3 中間の争いに係る争点 (1) 本件入札無効決定が処分その他公権力の行使に当たる行為 (行政事件 訴訟法3条2項)に当たるか(争点1) (2) 本件落札決定が処分その他公権力の行使に当たる行為 (行政事件訴訟 法3条2項)に当たるか(争点2) 4 中間の争いに係る争点についての当事者の主張 (1) 争点1 (本件入札無効決定が 処分その他公権力の行使に当たる行為 〔行 政事件訴訟法3条2項〕に当たるか)について (原告の主張) 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に該当するか否かを判断するに当たっては,具体的な法制度における当該行政活動が果たす役割,特に,私人の権利義務に及ぼす影響を検討しなければならない。 この点についてみると,地方自治法234条3項は,一般競争入札を実施 する場合に,最高価格で入札した者を自動的に落札者とする旨を定め,最高価格による入札者が,地方公共団体との間で一定の契約を締結する権利を有するとともに,同契約の締結を義務付けられることを明らかにしている。このことは,一般競争入札が実施され,最高価格による入札をした者は,地方公共団体との間においてその相手方として契約を締結する地位を取得し,保護されるべき利益を有するに至ったということができるから,一般競争入札において落札者を決することは,入札参加者の権利義務に影響を及ぼす法的効果があるというべきであるし,同条1項に基づいたこのような法的効果を有する一般競争入札を行い得ること自体,地方公共団体の優越的地位に基づ く公権力の発動に他ならないというべきである。 そうすると,地方公共団体が行う一般競争入札において,入札者に対し,その入札(入札書の提出)が無効である旨の決定をすることは,当該入札者が落札者となる可能性を奪うものとして地方自治法234条3項によって保護されるべき利益を失わせるものであるから,このような決定も行政庁の 処分その他公権力の行使に当たる行為として取消訴訟の対象となるというべきである。 したがって,本件入札において最高金額の入札書を提出した原告の入札を無効とする本件入札無効決定は, 処分その他公権力の行使に当たる行為 (行政事件訴訟法3条2項)に当たることは明らかである。 (被告の主張) ア 本件契約のような賃貸借契約の締結は,一般の私人間の契約と同様に対等当事者間の法律関係である私法上の行為であり,その相手方を決める入札において落札者が決定されたとしても,被告と落札者は,契約上の効果として当該契約の契約当事者となり得る地位,すなわち予約当事者の地位に立たせられるものにすぎない。このような契約相手を決める入札にあっては,入札(入札書の提出)が無効であるとされたり,落札者を決めたり といった事柄は,締結される契約の準備的行為にすぎないというべきである。 したがって,本件契約においても本件入札はその準備的行為にすぎず,本件入札においてされた本件入札無効決定についても,法の認める優越的な意思の発動や,優越的地位に基づく公権力の発動でないことは明らかで あるから,これが,権力の主体としての公共団体が行う行為のうちで,その行為により直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものに当たるとはいえず, 処分その他公権力の行使に当たる行為 (行政事件訴訟法3条2項) に該当しないことは明らか である。 イ これに対し,原告は,最高価格をもって申込みをした者には地方自治法234条3項に基づいて保護されるべき利益がある旨主張する。しかし,同項は,地方自治体の売買,賃借,請負,その他の契約において一般競争入札又は指名競争入札を実施する場合に,公正性,価格の有利性等を確保する観点から同項のルールに基づいて契約の相手方を選定することを明 らかにしているにすぎず,通常の私人間の契約締結に当たり,自由競争の範囲内で最良の条件を提示する相手方を契約相手に選定することと変わりがないものであるから,いわゆる処分性の有無とは何ら関係がない。(2) 争点2(本件落札決定が処分その他公権力の行使に当たる行為 〔行政 事件訴訟法3条2項〕に当たるか)について (原告の主張) 上記(1)の(原告の主張)のとおり,地方公共団体が一般競争入札において落札者を決することは,地方自治法234条1項に基づき一般競争入札を行い得るという地方自治体の優越的地位に基づく公権力の発動に他ならないし,これを一般競争入札の参加者からみると,地方自治体の契約相手方としてその権利義務に直接影響を及ぼす法的効果を受けることとなる。そうする と,最高金額の入札者をもって落札者とする一般競争入札における落札者の決定は, 処分その他公権力の行使に当たる行為に当たり,取消訴訟の対象 となる。 したがって,本件入札においてされた本件落札決定も処分その他公権力の行使に当たる行為(行政事件訴訟法3条2項)に当たる。 (被告の主張) 上記(1)の(被告の主張)のとおり,契約締結の相手方を決める入札における落札者の決定は, 契約締結の準備的行為にすぎないから, 落札者の決定が, 法の認める優越的な意思の発動や,優越的地位に基づく公権力の発動でないことは明らかである。 そうすると, 本件入札においてされた本件落札決定は, 権力の主体である公共団体が行う行為のうちで,その行為により直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものとはいえないから, 処分その他公権力の行使に当たる行為 (行政事件訴 訟法3条2項)に当たるとはいえない。 第3 1 当裁判所の判断 処分その他公権力の行使に当たる行為の意義について 争点1,2は,いずれも取消訴訟の対象とされる処分その他公権力の行使に当たる行為(行政事件訴訟法3条2項)の該当性に関わるところ, 処分その他公権力の行使に当たる行為とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行 う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう (最高裁昭和37年 (オ) 第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁等参照) 。 2 争点1(本件入札無効決定が処分その他公権力の行使に当たる行為〔行政 事件訴訟法3条2項〕に当たるか)について (1) 一般競争入札についての地方自治法等の定めと検討 地方自治法は,一般競争入札を,指名競争入札及び随意契約等と併せて, 地方公共団体が貸借等の契約を締結する際の契約締結方法の1つとした上で(234条1項) ,これを原則的な契約締結方法として位置付けている(同 条2項) 。そして,地方自治法は,普通地方公共団体が一般競争入札に付する場合においては,契約の目的に応じ,予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもって申込みをした者を契約の相手方とし(同条3項本文),当該契約につき契約書を作成する場合には契約当事者による契約書への記名押印により契約が確定する旨定めている(同条5項) 。 また,被告において,賃貸借等の契約締結について定める大阪市契約規則 (制定昭和39年4月1日規則18。甲10)においても,一般競争入札を指名競争入札及び随意契約等と並ぶ契約締結方式の1つとして位置付けるとともに (12条~18条)入札について, , 入札方法 (25条) 及び入札 (入 札書の提出)が無効とされる場合(28条)等を定めた上で,各契約締結方式を通じ, 一定の場合には契約書の作成を省略することができ (34条1項) , 契約書の作成を省略したときは,落札者等が記名押印した見積書,請書その他の文書をもって契約書に代用するものとする一方 (同条2項)契約書を作 , 成する場合には,契約管財局長が同規則32条1項の規定に従って提出された落札者等の記名押印のある契約書に記名押印した時に契約が確定するとし(同条4項) ,この契約確定前において,契約を締結することが著しく不適 当であると認められるときは,契約管財局長が契約締結を行わないものとする旨定めている(同条2項) 。 これらの定めは,一般競争入札による契約締結が機会均等などの理念に最も適合して公正であり,かつ,価格の有利性を確保し得ることから,地方公共団体が契約を締結する場合にはこれによることを原則とすることで,地方公共団体が締結する契約について,価格等の契約内容や契約の相手方の選考及び確定方法を明らかにするとともに,一般に,契約が申込みと承諾によって成立し,契約書の作成に特別の効力があるわけではないことを踏まえ,一般競争入札の方法によってされる地方公共団体の契約締結における契約の確定時期に関し,契約書を作成する場合等について特に定めたものと解することができる。そうすると,本件入札は,契約書の作成が省略される場合に 該当しない本件契約の締結の前段階として,本件契約の相手方の選考方法であるとともに,本件契約によって被告が受領する対価の額を決する過程として位置付けることができ,本件契約の準備的行為にすぎないということができる。そして,本件契約の準備的行為である本件入札において,入札(入札書の提出)が適式なものでないことを理由として入札(入札書の提出)が無 効である旨の決定がされたとしても,これは,本件契約の相手方の選考等の過程において,選考等の前提としての適式な申込みがなかったことを明らかにしたものにすぎず,事実を通知したものというべきである。 したがって,本件入札無効決定は,被告による本件契約の相手方の選考等の過程において,適式な申込みがなかったという事実を通知したものであっ て,公権力の行使に当たる行為として,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定する性質を有するものとはいえない。 (2) 原告の主張について これに対し,前記第2の4(1)の(原告の主張)のとおり,原告は,地方自 治法234条3項は,一般競争入札においては,最高価格で入札した者を自動的に落札者とする旨を定め,最高価格による入札者が,地方公共団体と一定の契約を締結する権利を有するとともに同契約の締結を義務付けられているから,入札(入札書の提出)を無効とする旨の決定についても,入札した者に対して落札者となる可能性を奪うものとして,直接国民の権利義務に影響を及ぼす法的効果を有している旨主張する。 しかしながら,地方自治法234条3項が,一般競争入札において最高価格で入札した者を落札者とする旨を定めているのは,自由競争の範囲内で地方公共団体にとって最良の条件を提示する者をその契約の相手方とするという選考方法・基準を明確にしたものというべきであるし,最高価格による入札者が地方自治体と一定の契約の締結(契約書の作成)を義務付けられているのも,このような入札者を落札者と決めて契約の相手方及び価格につい ての両者の意思が合致することにより,当該契約の予約が成立したことによる効果であると解される。そうすると,この過程は,私人間における契約の締結と基本的に異なるところがなく,入札(入札書の提出)を無効とする旨の決定は,契約の相手方の選考においてその選考対象から除外されたことを意味するものにすぎないから,公権力の主体たる公共団体が行う行為のうち, その行為により直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定するものに当たるとはいえない。なお,原告は,最高裁判所平成15年(行ヒ)第206号同16年4月26日第一小法廷判決・民集58巻4号989頁,最高裁判所平成14年(行ヒ)第207号同17年7月15日第二小法廷判決・民集59巻6号1661頁を指摘して,本件入札無効決定についても取消訴 訟の対象とすべき旨主張するが,前者は,食品衛生法に基づき検疫所長が食品等の輸入の届出をした者に対して行う当該食品等が同法に違反する旨の通知が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとしたもの,後者は,医療法に基づき都道府県知事が病院を開設しようとする者に対して行う病院開設中止の勧告が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとしたものであって, いずれも事案を異にし,本件に適切でない。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 (3) 小括 よって, 本件入札無効決定は, 処分その他公権力の行使に当たる行為 (行 政事件訴訟法3条2項)に当たるとはいえない。 3 争点2(本件落札決定が処分その他公権力の行使に当たる行為 〔行政事件 訴訟法3条2項〕に当たるか)について 上記2において説示したとおり,本件入札は,被告が本件契約の相手方を選考するための方法として,本件契約の準備的行為にすぎないというべきであるから,本件入札においてAを落札者であるとした決定(本件落札決定)も,本件契約の準備的行為としてその相手方についての選考結果を明らかにしたものというべきである。 したがって,本件落札決定も,公権力の行使に当たる行為として,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定する性質を有するものとはいえず,処分その他公権力の行使に当たる行為 (行政事件訴訟法3条2項) に当たる とはいえない。 4 結論 以上によれば,原告が取消しを求めている本件入札無効決定及び本件落札決定は,いずれも処分その他公権力の行使に当たる行為 (行政事件訴訟法3条 2項)に当たるとはいえず,取消訴訟の対象に該当しないから,その余の点について判断するまでもなく,本件訴えは,不適法な訴えとしていずれも却下す べきである。 よって,本件訴えは不適法であるからいずれも却下することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官 山地修 裁判官 新宮智之 裁判官 渡邊直樹 (別紙(物件目録)省略) (別紙) 関係法令の定め 1 地方自治法の定め (1) 地方自治法234条1項は,売買,貸借,請負その他の契約は,一般競争 入札,指名競争入札,随意契約又はせり売りの方法により締結するものとす る旨規定する。 (2) 地方自治法234条2項は, 同条1項の指名競争入札, 随意契約又はせり 売りは,政令で定める場合に該当するときに限り,これによることができる旨規定する。 (3) 地方自治法234条3項本文は, 普通地方公共団体は, 一般競争入札又は 指名競争入札に付する場合においては,政令の定めるところにより,契約の目的に応じ,予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもって申込みをした者を契約の相手方とするものとする旨規定する。 (4) 地方自治法234条5項は,普通地方公共団体が契約につき契約書等を 作成する場合においては,当該普通地方公共団体の長又はその委任を受けた 者が契約の相手方とともに,契約書に記名押印するなどしなければ,当該契約は,確定しないものとする旨規定する。 2 大阪市契約規則(制定昭和39年4月1日規則18。甲10) (1) 大阪市契約規則1条は,大阪市において売買,賃借,請負その他の契約を する場合においては,別に定めがあるもののほか,この規則の定めるところによる旨規定する。 (2)ア 大阪市契約規則第3節(12条から18条まで)は,契約方式別の手続 について,一般競争入札,指名競争入札,随意契約及びせり売りの契約方式がある旨規定する。 イ 大阪市契約規則第4節(19条から31条の4まで)は入札について規定するところ,同規則25条は,一般競争入札の入札方法を規定し,同規則28条は,入札者の記名押印がない入札(同条4号)及びその他入札に関する条件に違反した入札(同条10号)等は,無効である旨規定する。(3)ア 大阪市契約規則32条1項前段は,大阪市から落札者に決定する旨又 は契約の相手方とする旨の通知を受けた者は,契約管財局長が指定する期限までに契約書に記名押印の上,契約管財局長が定める書類を添えてこれ を提出しなければならない旨規定する。 イ 大阪市契約規則32条2項は,同条4項の規定により契約が確定する前において,落札者に決定する旨又は契約の相手方とする旨の通知を受けた者と契約を締結することが公正な取引の秩序を乱すこととなるおそれがあることその他の理由により著しく不適当であると認められるときは,契約 管財局長は契約の締結を行わないものとする旨規定する。 ウ 大阪市契約規則32条4項は,契約は,契約管財局長が同条1項の規定により提出された契約書に記名押印した時に確定する旨規定する。 (4)ア 大阪市契約規則34条1項は,同項に定める一定の場合に該当すると きは,契約書の作成を省略することができる旨規定する。 イ 大阪市契約規則34条2項は,同条1項により契約書の作成を省略したときは,落札者又は相手方が記名押印した見積書,請書その他の文書をもって契約書に代用するものとする旨規定する。 |