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行政文書不開示決定処分取消請求事件
事件番号平成27(行ウ)141
事件名行政文書不開示決定処分取消請求事件
裁判年月日令和2年10月1日
裁判所名東京地方裁判所
裁判日:西暦2020-10-01
情報公開日2021-03-23 16:00:39
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令和2年10月1日判決言渡
平成27年(行ウ)第141号

行政文書不開示決定処分取消請求事件

主1文
原告らの訴えのうち,
行政文書の開示決定の義務付けを
求める訴えをいずれも却下する。

2
その余の原告らの請求をいずれも棄却する。

3
訴訟費用は原告らの負担とする。

第1
1実及び理由
請求
原告A(以下原告Aという。)の処分取消しの訴え
内閣官房副長官補が原告Aに対して平成26年12月25日付けでした行政文書開示等決定(閣副第B号。ただし,別紙2行政文書開示変更決定目録記載1の各決定により一部変更された後のもの)のうち,次の①から③までの部分を除く部分を不開示とした部分を取り消す。


別紙3の1開示文書目録1記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の1一部不開示部分の特定1記載の一部不開示部分を除く。)


別紙3の2開示文書目録2記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の2一部不開示部分の特定2記載の一部不開示部分を除く。)

2
関係者及び東京電力株式会社取締役の個人が識別される部分

原告C(以下原告Cという。)の処分取消しの訴え
内閣官房副長官補が原告Cに対して平成26年12月25日付けでした行政文書開示等決定(閣副第D号。ただし,別紙2記載2の各決定により一部変更された後のもの)のうち,次の①から③までの部分を除く部分を不開示とした部分を取り消す。



別紙3の1記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の1記載の一部不開示部分を除く。)


別紙3の2記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の2記載の一部不開示部分を除く。)


3
関係者及び東京電力株式会社取締役の個人が識別される部分

原告E(以下原告Eという。)の処分取消しの訴え
内閣官房副長官補が原告Eに対して平成26年12月25日付けでした行政
文書開示等決定(閣副第F号。ただし,別紙2記載3の各決定により一部変更された後のもの)のうち,次の①から③までの部分を除く部分を不開示とした部分を取り消す。


別紙3の1記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の1記載の一部不開示部分を除く。)



別紙3の2記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の2記載の一部不開示部分を除く。)


4
関係者及び東京電力株式会社取締役の個人が識別される部分

原告H(以下原告Hという。)の処分取消しの訴え
内閣官房副長官補が原告Hに対して平成26年12月25日付けでした行政
文書開示等決定(閣副第I号。ただし,別紙2記載4の各決定により一部変更された後のもの)のうち,次の①から③までの部分を除く部分を不開示とした部分を取り消す。


別紙3の1記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の1記載の一部不開示部分を除く。)



別紙3の2記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の2記載の一部不開示部分を除く。)


5
関係者及び東京電力株式会社取締役の個人が識別される部分

原告J(以下原告Jといい,以上の原告らを合わせて原告Aらという。)の処分取消しの訴え
内閣官房副長官補が原告Jに対して平成26年12月25日付けでした行政文書開示等決定(閣副第K号。ただし,別紙2記載5の各決定により一部変更された後のもの)のうち,次の①から③までの部分を除く部分を不開示とした部分を取り消す。


別紙3の1記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の1記載の一部不開示部分を除く。)



別紙3の2記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の2記載の一部不開示部分を除く。)


6
関係者及び東京電力株式会社取締役の個人が識別される部分

原告L(以下原告Lという。)の処分取消しの訴え
内閣官房副長官補が原告Lに対して平成25年9月4日付けでした行政文書
不開示決定(閣副第N号。ただし,別紙2記載6の各決定により一部変更された後のもの)のうち,次の①から④までの部分を除く部分を不開示とした部分を取り消す。


別紙3の1記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の1記載の一部不開示部分を除く。)



別紙3の2記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の2記載の一部不開示部分を除く。)



7
Oの聴取結果書
関係者及び東京電力株式会社取締役の個人が識別される部分

原告Aの義務付けの訴え
処分行政庁は,原告Aに対して,東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会が作成した聴取結果書全て(ただし,別紙2記載1の各決定により開示された部分及び次の①から④までの部分を除く。)を開示せよ。①

別紙3の1記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の1記載の一部不開示部分を除く。)



別紙3の2記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の2記載の一部不開示部分を除く。)


8
Oの聴取結果書
関係者及び東京電力株式会社取締役の個人が識別される部分

原告Cの義務付けの訴え
処分行政庁は,原告Cに対して,東京電力福島原子力発電所における事故調
査・検証委員会が作成した聴取結果書全て(ただし,別紙2記載2の各決定により開示された部分及び次の①から④までの部分を除く。)を開示せよ。①

別紙3の1記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の1記載の一部不開示部分を除く。)



別紙3の2記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の2記載の一部不開示部分を除く。)



9
Oの聴取結果書
関係者及び東京電力株式会社取締役の個人が識別される部分

原告Eの義務付けの訴え
処分行政庁は,原告Eに対して,東京電力福島原子力発電所における事故調
査・検証委員会が作成した聴取結果書全て(ただし,別紙2記載3の各決定により開示された部分及び次の①から④までの部分を除く。)を開示せよ。①

別紙3の1記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の1記載の一部不開示部分を除く。)



別紙3の2記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の2記載の一部不開示部分を除く。)



10
Oの聴取結果書
関係者及び東京電力株式会社取締役の個人が識別される部分
原告Hの義務付けの訴え

処分行政庁は,原告Hに対して,東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会が作成した聴取結果書全て(ただし,別紙2記載4の各決定により開示された部分及び次の①から④までの部分を除く。)を開示せよ。①

別紙3の1記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の1記載の一部不開示部分を除く。)



別紙3の2記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の2記載の一部不開示部分を除く。)



Oの聴取結果書



関係者及び東京電力株式会社取締役の個人が識別される部分

11

原告Jの義務付けの訴え
処分行政庁は,原告Jに対して,東京電力福島原子力発電所における事故調
査・検証委員会が作成した聴取結果書全て(ただし,別紙2記載5の各決定により開示された部分及び次の①から④までの部分を除く。)を開示せよ。①

別紙3の1記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の1記載の一部不開示部分を除く。)



別紙3の2記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の2記載の一部不開示部分を除く。)



Oの聴取結果書



関係者及び東京電力株式会社取締役の個人が識別される部分

12

原告Lの義務付けの訴え
処分行政庁は,原告Lに対して,東京電力福島原子力発電所における事故調
査・検証委員会が作成した聴取結果書全て(ただし,別紙2記載6の各決定により開示された部分及び次の①から④までの部分を除く。)を開示せよ。①

別紙3の1記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の1記載の一部不開示部分を除く。)



別紙3の2記載の各文書中の不開示部分(ただし,別紙4の2記載の一部不開示部分を除く。)



Oの聴取結果書

第2

関係者及び東京電力株式会社取締役の個人が識別される部分

事案の概要
本件は,原告らが,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下情報公開法という。)に基づき,内閣官房副長官補に対し,東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(以下政府事故調という。)が作
成した聴取結果書についてそれぞれ開示請求をしたが,その全部又は一部を不開示とする旨の各決定
(後記原決定)
を受けたため,
これらの各決定
(ただし,
変更決定により開示することとされた文書に係る部分を除く。)の一部(具体的には,別紙5で特定された各不開示部分を開示しない部分)の取消しを求めるとともに,上記各不開示部分の開示決定の義務付けを求める事案である。
1
関係法令の定め
本件に関係する法令の定めは,別紙6記載のとおりである。

2
前提事実(後掲の各証拠等により認める。)
(1)


東北地方太平洋沖地震等による本件事故の発生と政府事故調の設置平成23年3月11日,東北地方太平洋沖地震及び同地震に伴う津波により,東京電力株式会社(以下東京電力という。)福島第一原子力発電所(以下福島第一原発という。)及び東京電力福島第二原子力発電所(以下福島第二原発という。)における事故(以下本件事故と
いう。)が発生した(公知の事実)。


政府は,平成23年5月24日,閣議決定(以下本件閣議決定という。)に基づき,本件事故の原因及び本件事故による被害の原因(以下本件事故原因等という。)を究明するための調査・検証を,国民の目線に立って開かれた中立的な立場から多角的に行い,もって本件事故による被害の拡大防止及び同種事故の再発防止等に関する政策提言を行うことを目的として,政府事故調を設置した(乙3)。

(2)

政府事故調の概要
政府事故調は,P委員長を始めとする10名の学識経験者等により構成され,さらに,専門的,技術的事項について助言を得るため,委員長の指名により2名の技術顧問が置かれた(乙4〔1頁〕)。
(3)

政府事故調による本件事故の関係者等に対する事情聴取等
政府事故調は,
本件事故当時の関係事業者の従業員,
関係機関の役職員,
閣僚等の本件事故の関係者及び学識経験者ら合計772名(以下本件事故関係者等という。)に対するヒアリング(以下,単にヒアリングという。)を行い,その結果,本件事故関係者等に係る聴取結果書(以下本件全聴取結果書という。)が作成された(乙4〔3頁〕,弁論の全趣旨)。


政府事故調は,平成23年12月26日に中間報告を,平成24年7月23日に最終報告をそれぞれ公表し,同年9月28日,閣議決定により廃止された(乙4,6の1,7)。

(4)

原告らの開示請求に係る対象文書(聴取結果書)の概要
原告らの開示請求に係る対象文書は,O(以下O氏という。)を除く
本件事故関係者等771名に対するヒアリングの結果作成された合計793通の聴取結果書(聴取者において,被聴取者から聴取した内容を記録した文書)であり,その合計頁数は7480頁である。
平成28年2月16日時点において,上記聴取結果書のうち,59通につきその全部を開示する旨の決定が,176通につきその一部を不開示とする旨の決定が(以上の合計235通は,別紙3の1及び別紙3の2記載の各文書である。),558通(乙25の1~558の各文書である。)につき全部不開示とする旨の決定がされていた(以上につき弁論の全趣旨)。(5)


原告らによる開示請求とこれらに対する決定等
原告Lによる開示請求とこれに対する決定等
(ア)原告Lは,内閣官房副長官補に対し,平成25年8月7日,情報公開法4条1項に基づき,本件全聴取結果書(ただし,関係者及び東京電力取締役の個人が識別される部分を除く。)の開示請求をした(乙2)。(イ)内閣官房副長官補は,平成25年9月4日,原告Lに対し,上記(ア)の行政文書の全部を不開示とする旨の決定
(閣副第N号)
をした
(甲1)

(ウ)原告Lは,平成25年10月31日付けで,内閣総理大臣に対し,上
記(イ)の決定について,審査請求をした(甲11)。
(エ)内閣官房副長官補は,平成26年10月27日付け,平成27年1月22日付け及び同年9月29日付けで,原告Lに対し,前記(イ)の決定の一部を撤回し,本件全聴取結果書の一部を開示する旨の各変更決定をした(別紙2記載6(1)~(3)。甲188,194,197)。
(オ)内閣総理大臣は,平成28年3月8日,前記(ウ)の審査請求に対し,前記(イ)の決定のうち,
一部について取り消すとともに,
その余の部分に対
する審査請求を棄却する旨の裁決をした(乙29の1)。
(カ)内閣官房副長官補は,平成28年3月31日,原告Lに対し,本件全聴取結果書
(ただし,
前記(エ)で開示することとされた聴取結果書を除く。


の一部を開示する旨の変更決定をした
(別紙2記載6(4)。
乙29の2)

(キ)処分行政庁は,平成28年4月1日,内閣府設置法4条2項及び原子力規制組織等の改革に関する業務の基本方針について(平成28年3月18日閣議決定)に基づき,内閣官房副長官補から,原告らに対する不開示決定に関する事務を承継した(乙15,弁論の全趣旨)。
(ク)処分行政庁は,平成29年3月31日,平成30年3月30日及び同年8月24日,原告Lに対し,本件全聴取結果書(前記(エ)及び(カ)の各決定により開示することとされた部分を除く。)の一部について,更に開示する旨の各変更決定をした
(別紙2記載6(5)~(7)。
乙30,
48,
52)。


原告Aらによる開示請求とこれに対する決定等
(ア)原告Aらは,平成26年6月5日,内閣官房副長官補に対し,情報公開法4条1項に基づき,本件全聴取結果書のうちO氏の聴取結果書を除いた771名分の聴取結果書について,各開示請求をした(乙1の1~5)。
(イ)内閣官房副長官補は,平成26年8月1日,原告Aらに対し,上記(ア)の各開示請求の対象とされた聴取結果書のうち松下忠洋に係る聴取結果書について,各不開示決定をした(乙9の1~5)。
(ウ)原告Aらは,平成26年9月30日付けで,内閣総理大臣に対し,上記(イ)の各決定について,各審査請求をした(乙32の1~5)。
(エ)内閣官房副長官補は,平成26年12月25日,原告Aらに対し,前記(ア)の各開示請求の対象とされた聴取結果書(ただし,前記(イ)に係る聴取結果書を除く。)のうち一部を開示とし,その余を不開示とする旨の各決定をした(甲189~193。以下原告Aら各決定といい,前記ア(イ)の決定と併せて原決定という。)。

(オ)内閣官房副長官補は,平成27年9月29日,原告Aらに対し,上記(エ)の各決定の一部を撤回し,
一部の聴取結果書を開示する旨の各変更決
定をした(別紙2記載1~5の各(1)。甲198~202)。
(カ)内閣総理大臣は,
平成28年3月16日,
前記(ウ)の各審査請求に対し,
前記(イ)の決定のうち,一部について取り消すとともに,その余の部分に
対する審査請求を棄却する旨の各裁決をした(乙32の1~5)。(キ)内閣官房副長官補は,平成28年3月31日,原告Aらに対し,前記(イ)に係る聴取結果書の一部を開示する旨の各変更決定をした
(別紙2記
載1~5の各(2)。乙33の1~5)。
(ク)処分行政庁は,平成29年3月31日,平成30年3月30日及び同
年8月24日,
原告Aらに対し,
前記(ア)の開示請求の対象とされた聴取
結果書(これまでの決定により開示することとされた部分を除く。)の一部について,更に開示する旨の各変更決定をした(別紙2記載1~5の各(3)~(5)。乙34の1~5,49の1~5,53の1~5)。(6)

本件訴えの提起
原告らは,平成27年3月5日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な
事実)。

3
争点
本件の争点は,原告らに対する各行政文書不開示決定(ただし,変更決定により開示することとされた文書に係る部分を除く。)のうち,別紙5で特定された各不開示部分(以下本件不開示部分といい,別紙5通番欄の番号
を用いて通番○○などという。)を不開示とする部分の適否である。そして,被告は,本件不開示部分に記録された内容について,別紙5不開示情報の概要等欄のとおりである旨主張した上で,類型別主張欄の類型(③,④,⑥,⑪,⑫及びその組合せ。以下,単に類型③などという。)ごとに,該当条文欄の各規定による不開示情報に該当する旨主張しており,本件に
おける具体的な争点は下記(1)から(4)までのとおりである。なお,本件不開示部分のうち通番236~238(以下本件不開示部分③という。)について,原告らは,不開示決定の取消しを求めているものの(令和元年10月29日付け請求の趣旨の変更申立書の別紙3の1),本件不開示部分③に記録された情報(公にされていない官邸危機管理センターの施設内の
配置並びに設備及び仕様に関する情報。
類型③)
が情報公開法5条3号,
4号,
6号柱書き所定の不開示情報に該当することを争わない旨の陳述をしていること(第7回弁論準備手続期日で陳述された第16準備書面)から,上記各不開示情報該当性は争点に掲げていない(なお,本件不開示部分③が上記各不開示情報に該当することは,
甲112の3及び弁論の全趣旨からも認められる。。


(1)

本件不開示部分のうち通番110,111(以下本件不開示部分④と
いう。)に記録された情報(類型④・後出の本件争訟事務情報)が情報公開法5条5号,6号ロ所定の不開示情報に該当するか否か
(2)

本件不開示部分のうち通番52,57~59,106,108,109,
206~208,306~310,313,314,578~580(以下本件不開示部分⑪という。)に記録された情報(類型⑪・後出の本件日米外交情報及び本件他国評価等情報,類型⑫・後出の本件外交検討情報)が情報公開法5条3号,5号,6号柱書き所定の不開示情報に該当するか否か
(3)

本件不開示部分のうち,
本件不開示部分③,
④,
⑪を除いた部分
(以下
本件不開示部分⑥という。)に記録された情報(類型⑥・後出の本件不開示希望情報)が情報公開法5条5号,6号柱書き所定の不開示情報に該当
するか否か
(4)
4
争点に関する当事者の主張の要旨
(1)

理由付記の違法の有無(原告Aら関係)

争点(1)(本件不開示部分④に記録された情報(類型④)が情報公開法5
条5号,6号ロ所定の不開示情報に該当するか否か)について
(被告の主張)

本件不開示部分④には,国を当事者とする訴訟について,国が当該訴訟における対応方針の検討及び協議をするために行った準備活動に関する情報(類型④。以下本件争訟事務情報という。)が具体的に記録されて
いる。すなわち,通番111には,国が,平成24年4月16日(ヒアリング実施日)に先立って,国を当事者とする特定の係属中訴訟の対応方針の検討及び協議をするために行った準備活動で使用した資料の内容に関する情報が記録され,通番110には,同情報がこのような検討及び協議に用いることを目的として作成された資料である旨が同資料の作成経緯等と
併せて記録されている。
なお,記録内容については,情報公開・個人情報保護審査会(以下審査会という。)においても,実際に文書を見分した上で,本件不開示部分④に特定の訴訟についての具体的な情報が記録されている旨の判断がされている。

本件争訟事務情報が公にされるのであれば,訴訟当事者として対等の立場にある国を相手方当事者に比して一方的に不利な地位に置くものである
し,国の機関が,このような不利益を回避するため,訴訟対応に係る情報収集活動並びに収集した情報に基づく率直な検討及び協議を差し控えるなどする結果,適切な訴訟対応をすることが困難になることも十分に考えられる。したがって,本件争訟事務情報は,公にすることにより国の訴訟当事者としての地位を不当に害するおそれがあるものであり,情報公開法5
条6号ロ所定の不開示情報に該当する情報である。
また,本件争訟事務情報は,国の機関相互間における検討又は協議に関する情報であって,これを公にすることにより,上記のとおり,国の機関相互間における率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれがある。したがって,本件争訟事務情報は,情報公開法5条5号所定の不開示情報に該
当する情報である。

本件争訟事務情報は,国を当事者とする具体的な訴訟が係属する前の段階で入手された情報であるが,訴訟における対応方針の検討及び協議に当たっては,訴訟係属の前後を問わず,当該時点で保有している全情報を前提として行うことが当然であるから,入手時期が訴訟の係属前であること
より本件争訟事務情報が情報公開法5条6号ロ及び5号所定の不開示情報に該当しなくなるとはいえない。

原告らは,本件争訟事務情報が,本件事故により発生する放射性物質による汚染等の被害に関してその機序を明らかにするのに資する情報であり,
人の生命及び身体の安全を確保するのに資する情報であって,開示することに大きな利益がある旨主張する。しかしながら,前記イのとおり,これを開示することにより,国の訴訟当事者としての地位を不当に害するおそれ及び国の機関相互間における率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれがある。また,仮に本件事故により発生する放射性物質による汚染等の被害に関してその機序を明らかにするのに資する情報が含まれていたとしても,このような情報は既に公表されている情報からも明らかになるもの
と考えられるから,少なくとも公益的な開示の必要性に比して不利益の方が大きい。
(原告らの主張)

通番110は,前後の文脈から,本件事故発生直後において,本件事故により放射性物質による汚染等の被害が具体的にどの程度に及ぶのかを予
測する目的で得られた情報であると推測される。また,通番111は,通番110と対応し,被聴取者が説明を兼ねて提出等した資料であり,本件事故発生直後において,本件事故により放射性物質による汚染等の被害が具体的にどの程度に及ぶのかを予測する目的で得られた情報であると推測される。そうすると,被告が通番110,111の各情報を入手した時点
において,これに関連する具体的な訴訟が被告において係属しているわけではない上,そもそも被告を当事者とする訴訟の準備を目的として得られた情報でもない。
したがって,仮に通番110,111が,事後的かつ偶然に国を当事者とする訴訟に関連する情報に該当し得るとしても,これを公開することに
よって国の訴訟当事者としての地位を害するおそれはなく,また国の機関相互間における率直な意見の交換を損なうおそれもない。

情報公開法5条6号ロは,国の当事者としての地位を不当に害するおそれを,同条5号は,国の機関相互間における率直な意見の交換が不当に損なわれるおそれを,それぞれ要件とするところ,これらの不当にに該当するか否かは,当該情報を開示することによる利益と不利益とを比較衡量した上で判断される。
本件争訟事務情報は,前後の文脈から,本件事故により発生する放射性物質による汚染等の被害に関してその機序等を含めて明らかにするのに資する情報であり,ひいては人の生命及び身体の安全を確保するのに資する情報であると推測され,このような情報は,国民の生命及び身体の安全を
確保する見地から,開示することについて大きな利益が存する。
したがって,本件争訟事務情報を公開したとしても,国の訴訟当事者としての地位を不当に害することも,国の機関相互間における率直な意見の交換を不当に損なうものでもない。
(2)

争点(2)(本件不開示部分⑪に記録された情報(類型⑪,⑫)が情報公開
法5条3号,5号,6号柱書き所定の不開示情報に該当するか否か)について
(被告の主張)

本件不開示部分⑪には,①我が国と米国との間で本件事故への対応についてされた意見交換等の様々なやり取りに関する情報(以下本件日米外交情報という。),②被聴取者による他国に対する評価並びに他国関係者の言動に対する評価及び意見等に関する情報(以下本件他国評価等情報という。),③本件事故への対応の過程で生じた外交事務について行われた,我が国の機関内部又は相互間における検討及び協議の過程やその内容等に関する情報(以下本件外交検討情報といい,上記各情報と併
せて本件各外交情報という。)がそれぞれ具体的に記録されている(なお,
上記①及び②の情報が類型⑪に,
上記③の情報が類型⑫に当たる。。


我が国と他国等との間の交渉,渉外に関する事務(以下外交事務という。)においては,信頼関係を構築し,保持し続けることが肝要である
ことから,
相手方の信頼に沿って秘密を厳守することが必要不可欠であり,
また,情報の提供元やその内容を公開しないことが国際的外交慣行になっている。このような他国からの信頼又は国際的外交慣行に反する取扱いをした場合には,我が国と当該他国等との信頼関係が損なわれるとともに我が国が当該他国等との交渉上不利益を被ることが十分に考えられるのみならず,国際社会全体の我が国に対する信頼を損なう結果となりかねない。ウ(ア)情報公開法5条3号に該当する旨の行政機関の長の判断については,社会通念上合理的なものとして許容される限度を超えない限り,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。
(イ)本件日米外交情報は,通番52,57,58,106,108,109,206~208,306~310,313,314,579,58
0に記録され,これらには,本件事故当時,政府において,内閣官房副長官,内閣総理大臣補佐官,内閣危機管理監等の地位にあった者の他,関係省庁と米国のエネルギー省,原子力規制委員会,米軍関係者等を構成員として設置された協議会(以下日米協議という。)において,本件事故への対応等についてされた率直な意見交換等の様々なやり取り
の内容等に関する情報や,
本件事故当時,
政府において,
内閣総理大臣,
内閣官房長官,内閣官房副長官等の地位にあった者と米国大統領,米国駐日大使等の米国関係者との間で,本件事故への対応についてされた率直な意見交換等の様々なやり取りの内容等に関する情報が具体的に記録されている。

そして,
日米協議その他の会談等については,
いずれも非公開,
かつ,
公開することを前提としないで行われたものであるから,本件日米外交情報について,我が国は,国際的外交慣行上,秘密として開示しない取扱いが求められる。
(ウ)本件他国評価等情報は,通番59,106,108,310に記録さ
れ,これらには,本件事故当時,政府において,内閣総理大臣,内閣官房副長官,内閣官房副長官補,原子力委員会委員長等の一定の地位にあった者による,他国に対する率直な評価及び他国関係者の個々の言動に対する率直な評価,意見等に関する情報が具体的に記録されている。そして,本件他国評価等情報は,その内容を問わず,公にすることにより他国等との信頼関係を損なうおそれがあるし,このように公にすることが想定されない情報である本件他国評価等情報を公にする行為自体が,当該他国又はその他の他国との関係に配慮しない行為と受け止められるなどして,他国との相互の信頼に基づき保たれている正常な関係に支障を及ぼすことが考えられる。
(エ)本件外交検討情報は,通番207,578,580に記録され,これ
らには,本件事故への対応の過程で生じた外交事務について,我が国の機関内部又は相互間においてされた検討及び協議における関係者の率直な言動,他国又は他国関係者の言動に対する率直な評価及び見解,当該外交事務に対する個々の対応方針並びに一定の結論に至る過程,背景事情等の情報が具体的に記録されている。

このように,本件外交検討情報には,本件他国評価等情報と同様の情報も具体的に記載されているため,
これを公にした場合,
上記(ウ)と同様
に,他国等との信頼関係が損なわれるとともに他国等との交渉上不利益を被ることが十分に考えられる。また,本件外交検討情報には,我が国が外交事務の検討及び協議に当たって重視している点,個々の対応方針
及びその傾向等が明らかになる情報が含まれているのであるから,これを公にした場合,将来予想される交渉に関して我が国が執ろうとしている立場が明らかにされ,又は具体的に推測されるなどして,他国等との交渉上不利益を被ることも十分に考えられる。
(オ)したがって,本件各外交情報を公にすることにより,他国等との信頼
関係が損なわれるおそれ及び他国等との交渉上不利益を被るおそれがあると内閣官房副長官補が認めたことには十分な理由があり,その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があるとか,事実に対する評価が明白に合理性を欠くといった事情は存在しないから,本件各外交情報が情報公開法5条3号に該当するとした内閣官房副長官補の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。
以上によれば,本件各外交情報は,情報公開法5条3号所定の不開示
情報に該当する。

本件各外交情報は,情報公開法5条6号柱書きにいう国の機関〔中略〕が行う事務〔中略〕に関する情報に該当する。そして,前記ウ(イ)から(エ)までのとおり,本件各外交情報を公にすることにより,他国等との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国等との交渉上不利益を被るおそれがあるか
ら,本件各外交情報を公にすることにより,外交事務の性質上,外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある(同号柱書き)というべきである。
したがって,本件各外交情報は,情報公開法5条6号柱書き所定の不開示情報に該当する。


本件外交検討情報は,情報公開法5条5号にいう国の機関〔中略〕の内部又は相互間における検討又は協議に関する情報に該当する。そして,本件外交検討情報に係る外交事務に関する検討及び協議は,いずれも非公開で行われ,かつ,その検討及び協議は,公表されることを前
提とせずに,率直に意見交換をし,中立に意思決定を行うことが予定されていたものであり,現に,本件外交検討情報には,そのような検討及び協議の過程における我が国の関係者の率直な意見交換の内容及び特定の意思決定に至る過程,その背景事情等が具体的に記録されているのみならず,他国に対する率直な評価並びに他国関係者の言動に対する率直な評価及び
意見,当該外交事務に対する我が国の個々の対応方針等が具体的に記録されている。このような情報が公にされた場合,今後行われるべき外交事務の検討及び協議について,国内外からの圧力や干渉等を懸念し,自らの保有する機密性の高い情報等への言及やこれに基づく率直な意見の表明を控えたり,意思決定前に第三者から圧力や干渉等を受けたりするなどして,率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある。したがって,本件外交検討情報は,情報公開法5条5号所定の不開示情
報に該当する。

原告らは,不開示情報である類型⑪(本件日米外交情報)が記録されているとして当初不開示とされていた部分の一部が,内閣府ホームページで公表された10日後に不開示情報に該当しなくなったとして追加開示され
たことにつき,この公表によって不利益が発生していない以上,被告が主張する開示による不利益はいずれも単なる抽象的可能性にすぎない旨主張する。
しかしながら,上記追加開示部分は,既に同一の情報が公にされている以上,これを公にすることにより情報公開法5条3号,6号柱書き所定の
おそれが生じるか否かを検討すべき情報ではなくなっていたものである(な
お,原告らは,上記追加開示以前においても本件各外交情報に当たる部分が原告らに開示されていたと主張するが,これらの部分についても開示決定に先立って内閣官房ホームページで公開されていたものである。)。また,取消訴訟による行政処分の違法性の判断基準時は原処分時である
から,仮に上記公表時において情報公開法5条3号,6号柱書き所定のおそれがなくなっていたとしても,原決定時において上記のおそれがなかったとはいえない。
なお,情報公開法5条3号所定の不開示情報該当性の判断については,外交上の高度の専門的かつ政策的判断を伴うものであるところ,平成30
年8月24日付け変更決定後もなお不開示情報に該当すると判断されている情報は,いずれも外交上の機微に触れる情報である上,処分行政庁の当該判断は,外務当局の意見をも踏まえて行われているものである。(原告らの主張)

処分行政庁は,平成30年8月24日付け変更決定により,本件日米外交情報に該当するとして当初不開示としていた情報を追加開示したが,それ以前より開示されている部分においても,本件日米外交情報又は本件他
国評価等情報に該当すると考えられるものがあり,被告が主張する本件各外交情報の不開示の範囲と,実際の開示文書における開示,不開示の判断には著しい齟齬があるといえる。

また,被告は,上記アの変更決定による追加開示部分について,平成30年8月14日,内閣府ホームページで公表し,これに基づいて,その僅
か10日後の同月24日に,情報公開法5条3号,6号柱書き所定のおそれが生じるか否かを検討すべき情報ではなくなったとして上記部分を追加開示した。しかしながら,この公表により開示による不利益は発生しておらず,被告の主張する開示による不利益はいずれも単なる抽象的可能性にすぎない。このような恣意的な開示,不開示の判断がされていること自体
が,上記のおそれの判断が恣意的にされていたことを推認させる。ウ
さらに,被告は,前記アの変更決定時に上記イのおそれがなくなっていたとしても,原決定時にこれがなかったとはいえない旨主張する。しかしながら,原決定時と上記変更決定時において異なることは,上記のおそれの有無ではなく,行政庁自身による公表の有無のみであり,上記変更決定
後,現に上記のおそれが生じていないことは,原決定時における内閣官房副長官補の判断の誤りを示すものである。
(3)

争点(3)(本件不開示部分⑥に記録された情報(類型⑥)が情報公開法5
条5号,6号柱書き所定の不開示情報に該当するか否か)について(被告の主張)

本件不開示希望情報の概要
本件不開示部分⑥には,次の(ア)及び(イ)記載のとおり,ヒアリングの被聴取者が不開示とすることを希望している情報(類型⑥。以下,下記(ア)及び(イ)を併せて本件不開示希望情報という。)が含まれている。(ア)当該聴取結果書に係る被聴取者本人が当該聴取結果書の全部又は一部について不開示とすることを希望している情報(以下本件不開示希望情報(本人)という。)(イ)当該聴取結果書の記載その他の情報と照合することにより,当該聴取結果書に係るヒアリングの被聴取者本人以外の被聴取者(以下非本人被聴取者という。)である特定の個人がヒアリングを受けたことを推知させる情報や当該個人がヒアリングにおいて供述した内容が明らかに
なる情報(当該個人がヒアリングにおいて当該内容の供述をしたという情報)であり,かつ,非本人被聴取者が,自らがヒアリングを受けた事実及びその供述内容について不開示とすることを希望している情報(以下本件不開示希望情報(非本人)という。通番32,33,50,51,145,146,318,323~325,519~525,5
64,577)

本件不開示希望情報が情報公開法5条6号柱書き所定の不開示情報に該当すること
(ア)本件不開示希望情報が国の機関が行う事務に関する情報に該当するこ

本件不開示希望情報は,国の機関である政府事故調において,本件事故原因等を究明するための調査及び検証の一環として,本件事故関係者等から聴取した内容に関する情報であるから,情報公開法5条6号柱書きにいう国の機関〔中略〕が行う事務〔中略〕に関する情報に該当
する。
(イ)本件不開示希望情報を公にすることにより,事務の性質上,将来における同種の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあること
a
本件事故のように多数の国民に被害を与える重大事故は,将来も発生し得るものであり,そのような場合,国の機関としては,公共の利益のため,事故の関係者から事故に関して事情聴取を行い,その原因を究明するとともに,再発防止策の策定等をする事務(以下重大事故調査等という。)を行うことが想定される。そして,国民に深刻な被害を与えるような重大事故においては,その事故に関わりを持つことになった者に対する責任追及等がされることは当然に予想されるところであり,当該事故の関係者等が上記事情聴取に任意に応じて供述した結果が,自らが被聴取者であることも含
め,自らの意思に反して外部に開示される可能性があるというのであれば,その居住地において嫌がらせを受けるおそれや,本件事故関係者等及びその親族並びにこれらの者が所属する組織等が不利益を受けるおそれのほか,責任を追及された個人や組織から何らかの形で報復をされるおそれ等について不安に思い,事情聴取に対してありのまま
の事実を述べることや事情聴取に協力すること自体にちゅうちょすることが想定される。
そのため,将来における重大事故に関する調査において,関係者からありのままの事実を聴取するためには,関係者からの事情聴取結果を責任追及の目的に使用せず,かつ,これを本人の意思に反して外部
に開示しないことを前提とし,被聴取者がこの前提に対する信頼を有する状況において,
被聴取者から,
自己の利益,
不利益にかかわらず,
ありのままの事実について供述してもらうことが必要不可欠となる。b
政府事故調は,①責任追及を目的とした調査等を行わないこと,②ヒアリングは原則として非公開で行い,ヒアリングの相手方が聴取結果書について不開示を希望する場合には,聴取結果書は外部に開示しないこと(以下本件ヒアリング方針という。)を公表し,周知し
ていたから,本件事故関係者は,本件ヒアリング方針等を前提として政府事故調による非公開のヒアリングに任意に応じたものといえる。したがって,政府事故調と被聴取者である本件事故関係者等との間では,本件事故関係者等において,自らの利益,不利益にかかわらず,
ありのままの事実を述べたとしても,被聴取者の意思に反して聴取結果書を外部に開示しない旨の信頼関係が生じていた。
仮に被聴取者の意思に反して本件不開示希望情報(本人)を公にした場合,当該被聴取者との間における上記の信頼関係が破壊されることは明らかであるし,非本人被聴取者の意思に反して本件不開示希望
情報(非本人)を公にした場合にも,国と当該非本人被聴取者との間における上記の信頼関係が破壊されることになる。そして,本件不開示希望情報が被聴取者の意思に反して外部に開示された場合,報道機関によって広く報道されることなどにより,国民一般との関係においても,本件ヒアリング方針のような外部への非公開等を前提とする国
の調査方法に対する信頼が失われることが十分に考えられる。このことは,被聴取者の属性には関わりなく,また,個別の被聴取者に対し本件ヒアリング方針を説明していたか否かにもよらない。
c
そうすると,将来における重大事故調査等において外部への非公開等を前提とする事情聴取方針を採ったとしても,この方針について信頼を得られず,
事情聴取の結果が自己の意思に反して外部に開示され,
責任追及等に利用されることを恐れる関係者から,ありのままの事実を供述してもらうことが困難となることはもとより,事情聴取に応じること自体を拒否されることが十分に考えられるから,重大事故調査
等に支障を及ぼすおそれがあることは明らかである。
(ウ)原告らの主張に理由がないこと
a
原告らは,本件ヒアリング方針が政府事故調の開催趣旨に反する旨主張する。しかしながら,本件閣議決定においては,政府事故調の開催趣旨として調査及び検証を国民の目線に立って開かれた中立的な立場から行うことを掲げているが,これは,情報の内容を問わず,政府事故調が行う調査及び検証並びに政府事故調が保有していた全て
の情報について公にすることを意味するものではなく,情報公開法5条各号の不開示情報該当性を問うことなく全てを公にすることを意味するものでもない。
b
原告らは,被聴取者が自らの供述の要点が政府事故調の作成する報告書に引用されること等を了承していることから,本件不開示希望情
報が公にされることを了承している旨主張する。しかしながら,被聴取者は,ヒアリングにおいて誰がどの程度述べたかが明らかになる聴取結果書の開示までも了承したものとはいえない。
c
原告らは,O氏を被聴取者とする平成23年8月16日付け聴取結果書(甲195。以下本件O調書という。)の記載から,O氏が,発言が公にされる可能性があることを認識し,これを承諾してヒアリングに応じたことがうかがわれる旨主張する。
しかしながら,政府事故調は本件ヒアリング方針を公表し,複数の報道機関で報道されていたのであるから,政府事故調の職員が同方針
について個々の被聴取者に対し説明していたか否かにかかわらず,これに反して本件不開示希望情報を開示すれば,
前記(イ)cの支障を及ぼ
すおそれがあるといえる。
また,O氏がヒアリングの冒頭で述べた

結構でございます。

との発言は,質問者からヒアリングについて種々の説明がされた後に一
言発言したものにすぎない上に,O氏は,聴取結果書がそのまま無条件に公になるということではなく,事と次第によってはという留
保を付した上で,供述内容がそのままの形で報告書に記録されて公になる可能性があるという飽くまで一般的な可能性について説明したことに対し了解したにすぎない。なお,質問者がO氏に対して上記の説明を行ったのは,O氏が本件事故当時,Q所長という要職にあり,事故対応において重要な役割を果たしたことから,言動の主要部分について,内容を慎重に吟味した上で,中間報告及び最終報告にほぼそのままの形で記録され,報告書の形で公にされる可能性があったからである。
d(a)原告らは,被聴取者の属性を類型化した上で,それぞれ聴取結果
書が公表されることを了承していた旨主張する。しかしながら,前記(イ)bのとおり,
ヒアリングにおいては,
全ての被聴取者との間で,
特に開示に同意しない限り,聴取結果書を外部に開示しない旨の信頼関係が生じていたのであるから,被聴取者の属性に着目した原告らの主張には理由がない。

(b)原告らは,政治家である被聴取者について,供述内容が開示される可能性を十分に認識していた旨主張する。しかしながら,聴取結果書の開示に同意するかは個々の被聴取者の判断次第であり,被告は,被聴取者の同意の有無を確認した上で,同意の得られない部分を本件不開示希望情報として不開示としているものである。政治家
が開示に同意したことが相対的に多かったとしても,かかる結果論をもって,一律に政治家の聴取結果書が開示されるべきであるとはいえない。また,政治家を含む全被聴取者がヒアリングを公開で行うことを求めなかったにもかかわらず,その結果である聴取結果書について,政治家のものは当然に開示されることが前提とされてい
たとはいえない。ヒアリング時に被聴取者から特に不開示の要望があった部分について,聴取結果書の該当部分に下線を引いたものがあるとしても,その趣旨は,聴取結果書自体は原則不開示であることを前提として,下線を引いた部分についてはその内容が中間報告等に引用されることをも拒否する旨要望したものと解される。
さらに,政治家の聴取結果書が本人の意思に反して開示されるこ
とになれば,政治家自身又は親族等は居住地域等において嫌がらせを受けるおそれがあり,
実際に嫌がらせが行われた事実も存在する。
加えて,政治家の聴取結果書が本人の意思に反して開示されることになれば,有権者の投票行動に与える影響を考慮するなどして,被聴取者がありのままの供述をちゅうちょすることも考えられる。こ
れらにより,将来における重大事故調査等に重大な支障が生じることは明らかである。
(c)原告らは,公務員である被聴取者について,客観的な知識等を提供するにすぎず,責任追及や嫌がらせ,過度な取材のおそれはないなどと主張するが,供述内容は客観的な知識等に限られないし,被
聴取者と本件事故との関わりが明らかになることにより,嫌がらせや過度の取材を受けるなどするおそれも十分にある。
また,原告らは,公務員である被聴取者は職務遂行の一環として
ヒアリングに応じており,将来も同様の調査に応じる義務があると主張するが,政府事故調は公務員である被聴取者の意思に反してヒ
アリングを強制する権限を有していなかったものであるし,公務員である被聴取者が,今後,今回のヒアリングのような調査自体に応じたとしても,ありのままに供述することをちゅうちょすることも考えられるから,聴取結果書が本人の意思に反して開示されれば,将来における重大事故調査等に重大な支障が生じることは明らかで
ある。
(d)原告らは,原発の審査に関与した有識者及び公的機関の職員である被聴取者について,公務員である被聴取者(上記(c))に準じた取扱いをすべきであると主張するが,これらがいかなる者を指すのか不明確な上,公務員である被聴取者について原告らの主張に理由がないことは上記(c)のとおりである。
また,
上記有識者の供述が開示
される場合にも,被聴取者が嫌がらせや過度の取材を受けるおそれ
があるほか,供述する知識,内容の性質から,開示される場合を慮って供述態度が慎重になる結果,十分な供述をしなくなるおそれがある。公益財団法人又は一般財団法人の職員(公的機関の職員)には,公務員に準じる法的義務を負う法令上の根拠はなく,上記職員が公務員に準じる立場にあるとする原告らの主張の根拠は不明とい
うほかない。
(e)原告らは,東京電力の役員及びGM以上の者である被聴取者について,率先して本件事故の解明に協力する義務があるから,明示的に非開示を希望した部分以外については聴取結果書が公開されることが前提にされていた旨主張する。

しかしながら,原告らが指摘する事情をもって,東京電力の役員
及びGM以上の者に原告らが主張するような義務が発生するとはいえない。また,本件事故に対する法的,社会的責任の有無,程度をもって聴取結果書が開示されるべきであるなどとすることは,本件ヒアリング方針の意義を没却するものである。さらに,被聴取者の
意思に反して聴取結果書が開示されるとすれば,被聴取者が責任追及や嫌がらせを受けることをおそれ,ありのままの供述を行うというヒアリングへの協力をちゅうちょすることが考えられる。

本件不開示希望情報が情報公開法5条5号所定の不開示情報に該当すること
本件不開示希望情報は,国の機関である政府事故調が本件事故原因等について検討又は協議する過程において作成され,使用された情報である。そして,本件不開示希望情報は,それのみでは本件事故に関する情報としては未成熟で,事実関係の確認が不十分な情報であるところ,そのような情報を公にすれば,その性質上,当該聴取結果書の内容に誤り等があったとしても,国民にその記載どおりの事実があったと受け取られることな
どにより,不当に国民の間に混乱を生じさせることが十分に考えられる。また,本件不開示希望情報を公にした場合,その性質上,被聴取者やその家族等は,嫌がらせを受けたり,過度な取材等を受けること等により,プライバシーが侵害されて平穏な生活を送ることが著しく困難になったりするなどの不利益を受けることが十分に考えられる。

したがって,本件不開示希望情報を公にすることによる利益を考慮したとしても,本件不開示希望情報を公にすることにより,不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ及び特定の者に不当に不利益を及ぼすおそれがあることは明らかであるから,本件不開示希望情報は,情報公開法5条5号所定の不開示情報に該当する。

(原告らの主張)

本件不開示希望情報が情報公開法5条6号柱書き所定の不開示情報に該当しないこと
(ア)a情報公開法5条6号柱書きにいう事務又は事業の適正な遂行に
支障を及ぼすおそれの有無を判断するに当たっては,当該事務又は事業の根拠となる規定及びその趣旨に照らし,公益的な開示の必要性等種々の利益を衡量する必要がある。
b(a)被告の主張は,被聴取者の同意がない限り聴取結果書が開示されない旨の本件ヒアリング方針が,事務又は事業の根拠となる規定や
その趣旨に当たることを前提としている。
(b)しかしながら,本件ヒアリング方針は,そもそも法的性質,策定手続及び策定根拠が不明である上,被聴取者の希望により無条件に聴取結果を外部に開示しない旨の本件ヒアリング方針の内容は,調査,検証を国民の目線に立って開かれた中立的な立場から多角的に行い,その結果を報告書の形で公表することを予定する政府事故調の開催趣旨と整合せず,情報公開法の趣旨にも反するものである。(c)また,本件ヒアリング方針のうち,同意がない限り聴取結果が開示されないとする点については,ヒアリングが実施される以前の資料等において基本的に言及されていないし,ヒアリング実施後の資料等における記載は,国会に設置された東京電力福島原子力発電所
事故調査委員会(以下国会事故調という。)において聴取結果
書が利用されることに制限を加える目的に基づくものである可能性が高い。そして,上記の点については,ヒアリング実施時に聴取者から被聴取者に対して説明がされておらず,かえって本件O調書の記載からは,O氏は,自身が話した言葉としてほぼそのままの形で
公にされる可能性があることを認識し,これを承諾してヒアリングに応じたことがうかがわれる。
このことは,
被聴取者の属性の検討からも認められる。
すなわち,
本件全聴取結果書の被聴取者のうち,政治家は,国民からの負託を受けて選出された政治家という公的な立場に基づきヒアリングに応
じたものであり,自らの供述内容が開示されることがあることも十分に認識していたはずであるし,そのために,聴取結果書については聴取当時に被聴取者が非開示の要望を明示した部分には下線を引くという取扱いがされていた。また,公務員は,本件事故の対応状況の報告,原因究明,再発防止のために,その職務遂行の一環とし
てヒアリングに応じている以上,自らの供述内容が開示されることがあることも十分に認識していたはずである上に,そもそも公務員は,
ヒアリングにおいて客観的な知識,
情報等を提供するにすぎず,
公務員個人に対する責任追及や嫌がらせ,過度な取材のおそれもない。さらに,公務員である被聴取者は職務遂行の一環としてヒアリングに応じており,将来も同様のヒアリングに応じる義務がある。原発の審査に関与した有識者は,非常勤公務員であり,ヒアリング
において客観的な知識,情報等を提供したものであるし,公的機関の職員も公務員に準じる立場でヒアリングを受けたものであるから,いずれも公務員に準じるものとして考えるべきである。さらに,東京電力が本件事故の当事者であることや公的な資金交付を受けていることからすると,東京電力役員,東京電力のGM以上の者という
責任ある立場の者については,率先して本件事故の解明に協力する義務があるから,
聴取当時に明示的に非開示を希望した部分を除き,
聴取結果書の公開を前提にしたものと解される。
(d)したがって,本件ヒアリング方針は,ヒアリングに係る事業の根拠となる規定やその趣旨に当たらない。

c
被聴取者は,少なくとも聴取結果の要点が政府事故調の報告書に引用されることについては同意しており,自己の発言がどのように要約され,引用されるかについては政府事故調の判断に一任しているのであるから,本件不開示希望情報が開示されたとしても,被聴取者との信頼関係が著しく損なわれることはない。

d
本件事故は極めて深刻な原子力災害であり,二度と同様の被害を生じさせないために,
原因について徹底的に究明することが必要であり,
この原因究明こそがこのような事故を起こしてしまった日本の責務であるといえるから,事故原因の究明に必要な情報である本件不開示希望情報は,公益的開示の必要性が非常に高い。

e
以上からすれば,本件不開示希望情報を開示したとしても,将来における重大事故調査等の適正な遂行
(情報公開法5条6号柱書き)
に支障を及ぼすおそれがあるとはいえない。
(イ)a情報公開法5条6号柱書きにいう,
事務又は事業の適正な遂行の
支障の程度は,名目的なものでは足りず,実質的なものが要求され,当該支障を及ぼすおそれの程度は,単なる確率的な可能性ではな

く,法的保護に値する蓋然性のあることが要求される。
b
被告が主張する本件ヒアリング方針に対する信頼は,同方針及びこれに基づく聴取結果書の作成経緯からの一般的な推測にすぎず,これが損なわれることによる支障は名目的なものにとどまり,そのおそれの程度も抽象的なものにすぎない。

また,本件不開示希望情報が開示されたとしても,被聴取者との信頼関係が著しく損なわれることはないことは,
前記(ア)cのとおりであ
り,政府事故調の報告書に引用される発言内容に限定がない以上,被聴取者において,誰がどのような事項についてどの程度述べたのかについても明らかになる形での引用がされる可能性も含めて,開示され
ることを了承していたといえる。
そして,被聴取結果を責任追及のために使用しない条件(本件ヒアリング方針)の下でヒアリングが行われたとしても,これは政府事故調,日本政府が被聴取結果を責任追及のために使用しないことを約束したにとどまり,行政文書として開示されることにより第三者が責任
追及を行わないことまで約束したということはできない。
したがって,本件不開示希望情報を開示したとしても,将来における重大事故調査等に支障を来すおそれがあるとは認められない。
c
被聴取者の属性に基づく検討からも,以下のとおり,被告が主張する支障及びおそれは認められない。
(a)政治家については,居住地域等における自身又は親族等に対する嫌がらせを受けるおそれは存在しない。また,自己の供述内容が有権者の投票行動に与える可能性等をも懸念し,今後の事故調査においてありのままの事実を述べることをちゅうちょするという事態が生じることについても,抽象的可能性があるにすぎない。。
(b)公務員についても,被聴取者本人,親族,所属組織等が嫌がらせを受けることや,報道機関による過度の取材等の契機となることを裏付けるとの懸念は,抽象的なものにすぎない。嫌がらせや過度の取材等を受けることがあるとしても,聴取結果書の開示,不開示とは関連性が薄いものであって,いわれのない個人攻撃や組織に対す
る嫌がらせとは評価し得ないもの,本件事故直後に生じたもので聴取結果書の開示,不開示の判断と無関係なもの,あるいはジャーナリストによる冷静かつ分析的な取材によるものにすぎない。また,職務遂行の一環としてヒアリングに応じるものである以上,こうした調査等に応じないという事態や,一旦応じた調査等に協力しなく
なるという事態は考え難い。
(c)原発の審査に関与した有識者の聴取結果書は,その大部分が客観的な知識,情報の提供に係る内容であり,仮に被聴取者自身の主観的な意見や考えが含まれていたとしても,部分開示として当該部分のみを不開示とすることも可能であるから,全部不開示とすること
は認められない。また,被告は,聴取結果書を開示されることにより,嫌がらせや過度な取材を受けるおそれがある旨主張するが,政府の事情聴取に応じただけの有識者が嫌がらせ等を恐れなければならない状況は皆無といってよく,聴取結果書の公表により嫌がらせ等が起きた事例や,本件事故に係る刑事裁判において証言した多く
の専門家に嫌がらせが発生した事実もない。加えて,上記有識者の供述内容に,専門者間においても議論が未熟な内容の知識,情報が含まれることは当然のことであり,それが開示されるからといって当該有識者の供述態度が慎重になることは考え難い。
(d)公的機関の職員は,客観的な知識,知見,情報を提供しており,公務員や有識者に比べて本件事故との関わりが薄いこと,本件事故が重大であること,任意でヒアリングに応じたことからすれば,これらの者に係る聴取結果書について不開示とすべき理由はない。
(e)東京電力役員,東京電力のGM以上の者については,本件事故の性質上,国民に対する情報提供の必要性が極めて高く,再発防止の観点からも政府事故調が情報を対外的に公開することが予測できた
以上,本件事故の当事者又は関係者としてヒアリングで述べた内容のうち,本件事故や事前,事後の対応状況等の客観的事実に係る部分について開示されることがあることは容易に予測できたはずであるから,聴取結果書が開示されることで被聴取者の信頼を著しく損なうとはいえない。また,民事上,刑事上の責任追及を受けている
のは専ら東京電力の役員であって,GM以上の者について責任追及の動きはない。福島第一原発及び福島第二原発の所員であることを理由として嫌がらせを受ける可能性があるとしても,東京電力役員及びGM以上の者の多くは上記各原発にはいなかったものである。東京電力に対し,落書きや投石,会長,社長の法人登記上の住所の
インターネット上での掲載,コールセンターへの抗議電話があったこと等の事情は,未曾有の災害と人身生命に対する危害が発生している状況下で起きた,本件事故直後の市民の反応の一つにすぎないといえるし,抗議電話等は企業に不祥事があればいつも起きている当然の反応といえるのであって,聴取結果書の公開とは何の関係も
ない。東京電力役員に対する業務上過失致死傷の刑事裁判において東京電力のGM以上の者に対する証人尋問が実施されたが,これらの者がその証言によって,個人攻撃や嫌がらせを受けたということは報じられていない。

本件不開示希望情報が情報公開法5条5号所定の不開示情報に該当しないこと

(ア)本件不開示希望情報は,政府事故調が中間報告及び最終報告を取りまとめる上で審議,検討又は協議の前提となったデータが記録された文書であって,政府事故調の委員の審議や検討,協議の内容が記録されたものではない。
しかも,
政府事故調は,
既に本件事故の最終報告を公表し,
その任務を終えている。

したがって,行政機関としての適正な意思決定が損なわれることを防ぐために当該情報を不開示とする情報公開法5条5号の趣旨に照らしても,本件不開示希望情報は審議,検討又は協議に関する情報に該当しない。
(イ)本件不開示希望情報は,客観的事実関係とは異なるものが含まれてい
る可能性があるとはいえ,それ自体が被聴取者の当時の事故発生状況等に対する認識に関する情報であり,本件事故関係者等の本件事故当時の認識という意味においては,未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報とはいえない。したがって,情報公開請求に基づき開示されたとしても,客観的事実として開示されるわけではなく,本件事故関係者等と
いう利害関係人の認識として批判的な目で検証されるのであるから,国民の誤解や臆測を招くなどということはあり得ない。
また,聴取結果書の一部が既に公開されたものの,これにより混乱や支障は生じていないし,本件不開示希望情報が公益的開示の必要が高い情報であることからすれば,開示によって生じ得る混乱よりも,結論の
みが開示されることで国民に十分な情報が開示されずに議論が混乱することが問題であるといえる。
したがって,
本件不開示希望情報について,
情報公開法5条5号の
不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれはない。
(ウ)本件不開示希望情報は,
本件事故等関係者へのヒアリング結果であり,
政府事故調の中間報告及び最終報告の資料となったものであって,当該情報が審議,検討段階における当時の被聴取者の主観的な認識を示した
にすぎないものであることは,その性質上十分周知されている。
また,上記(イ)のとおり,開示によって生じ得る混乱よりも,結論のみが開示されることで国民に十分な情報が開示されずに議論が混乱することが問題であるといえる。
被告は,本件事故の関係者等が責任追及や嫌がらせ等を受けている旨
主張するが,法的責任を負う者が責任追及されることや,客観的根拠に基づいた合理的な批判を受けることが,
情報公開法5条5号の
不利益
に当たらないことは明らかである。また,仮に本件不開示情報が開示されれば,いわれなき責任追及や嫌がらせが減少すると考えられるのであるから,開示により不利益を生じさせるものとはいえない。

したがって,本件不開示情報が開示されたとしても,情報公開法5条5号の
特定の者に不当に不利益を及ぼすおそれ
があるとはいえない。
(4)

争点(4)(理由付記の違法の有無(原告Aら関係))

(原告らの主張)
行政文書の一部不開示決定においては,根拠規定に加え,少なくとも当該行政文書中のどのような情報を,どのような理由で不開示としたのかを示さなければならない。
しかしながら,原告Aら各決定においては,不開示部分と理由の対比が明らかにされておらず,各マスキング部分の情報の内容,不開示理由が不明で
あるから,付記すべき理由が不十分であり,行政手続法8条に違反する。(被告の主張)
争う。
第3
1
当裁判所の判断
争点(1)(本件不開示部分④に記録された情報(類型④)が情報公開法5条5号,6号ロ所定の不開示情報に該当するか否か)について

(1)ア

証拠(乙54の4)及び弁論の全趣旨によれば,通番110には,原子
力委員会委員長であるRに対し平成24年4月16日に実施されたヒアリングの聴取内容のうち,

不測事態シナリオにおいて,避難範囲拡大の要因となる放射性物質放出は,主に4号機使用済燃料プールから放出されるものと理解してよろしいでしょうか。

という質問に対し,これを肯定する回答及び補足説明と併せて回答された情報が記録されており,通番11
1には,同人が,燃料棒の損傷や溶融と水素発生の関係について,別添3の注釈1のとおりで間違いないかと質問されたのに対し,

このとおりでよいと私は思う。

と回答した当該別添3の情報が記録されていることが認められる。

そして,証拠(乙23の1,82)及び弁論の全趣旨によれば,通番111の記録に係る書類は,上記聴取に先立ち,国を当事者とする特定の訴訟の対応方針に関する検討及び協議に用いることを目的として作成された資料の内容そのものが記録され,通番110には,上記の目的で作成された資料である旨が,同資料の作成経緯とともに具体的に記録されていることが認められる。


そうすると,本件不開示部分④に係る情報は,国を当事者とする訴訟について,国が当該訴訟における対応方針を検討及び協議するために行った準備活動等の情報といえるところ,これが開示された場合には,訴訟の相手方が同情報を利用した訴訟活動を行うことができることとなり,対等で
ある訴訟当事者としての地位を不当に害するおそれがある。したがって,上記情報は,情報公開法5条6号ロ所定の不開示情報に該当する。(2)ア

これに対し,原告らは,被告(国)において通番110,111に係る
各文書を入手した時点で当該情報に関連する具体的な訴訟が係属していたわけではないなどとして,本件不開示部分④に記録された情報が情報公開法5条6号所定の不開示情報に該当しない旨主張する。
しかしながら,情報公開法5条6号ロの争訟に関する事務は,現に
係属する争訟に限られず,係属が具体的に予想される争訟及び係属し得べき争訟に対するための一般的事務も含まれると解されるところ(最高裁平成8年(行ツ)第236号同11年11月19日第二小法廷判決・民集53巻8号1862頁参照),前記(1)アのヒアリングが実施された時点において,本件事故に関連する国家賠償請求訴訟等が係属することが具体的に
予想されていたといえることからすれば,仮に被告が上記各文書を入手した時点において本件事故に関する特定の訴訟が係属していなかったとしても,そのことをもって,本件不開示部分④に係る情報が争訟に関する事務に係る情報に当たらず,同号ロ所定の不開示情報に該当しないということはできない。

したがって,原告らの主張を採用することはできない。

原告らは,本件争訟事務情報が,本件事故により発生する放射性物質による汚染等の被害に関してその機序等を含めて明らかにするのに資する情報であり,人の生命及び身体の安全を確保するのに資する情報であると考
えられ,開示することについて大きな利益が存するから,開示しても当事者としての国の地位を不当に害したり,国の機関相互間における率直な意見の交換を不当に損なうとはいえない旨主張する。
確かに,本件不開示部分④には,燃料棒の損傷や溶融と水素発生の関係について,原子力委員会委員長の認識に沿う内容が記録されているといえ
るところ,このような情報は,本件事故により発生する放射性物質による汚染等の被害に関して,その機序等を含めて明らかにすることに資するものと考えられる。
しかしながら,このような情報を開示した場合には,前記(1)ウのとおりの不利益が具体的に生じることが想定されるのに対し,原子力委員会委員長の認識に沿う内容の情報であるからといって,それが客観的に真実であることが担保されるものでもないことからすれば,これを開示すべき公益
上の必要性が高いということはできない。
したがって,原告らの主張を採用することはできない。
(3)

以上のとおり,本件不開示部分④に記録された情報は,情報公開法5条6
号ロ所定の不開示情報に該当する(なお,同条5号所定の不開示情報に該当するか否かについては,事案に鑑み判断しないこととする。)。

2
争点(2)(本件不開示部分⑪に記録された情報(類型⑪,⑫))が情報公開法5条3号,5号,6号柱書き所定の不開示情報に該当するか否かについて(1)ア

証拠(乙54の1~3・5~7・9)及び弁論の全趣旨によれば,通番
52,57,58,106,108,109,206~208,306~310,313,314,579,580には,日米協議において本件事故への対応等についてされた率直な意見交換等の様々なやり取りの内容等に関する情報や,本件事故当時,政府において,内閣総理大臣,内閣官房長官,内閣官房副長官等の地位にあった者と米国大統領,米国駐日大使等の米国関係者との間で,本件事故への対応についてされた率直な意見交換
等の様々なやり取りの内容等に関する情報(本件日米外交情報)が具体的に記録されていると認められる。
外交事務を適正に遂行するには,必要な情報を他国等から入手したり,外交工作のための協力等を得たりすることが必要となるところ,そのためには,相手方との間に緊密かつ強固な信頼関係が必要である。そして,こ
のような信頼関係を構築し,保持し続けるためには,他国等の信頼を損なわないよう秘密を厳守することが不可欠であり,このようにして得た情報の提供元やその内容を公開しないことは,国際的な慣行になっているといえる(乙28の1・2,弁論の全趣旨)。そして,このような他国からの信頼又は国際的な慣行に反して情報等を公開した場合には,我が国と当該他国等との信頼関係が損なわれるほか,国際社会からの信頼を損なうこととなりかねず,また,我が国が他国等との交渉上不利益を被るおそれもあ
るといわざるを得ない。
そして,本件日米外交情報に記録されている日米協議その他の会談等については,いずれも非公開の方法により,公開することを前提としないで行われたものであるから(弁論の全趣旨),本件日米外交情報を開示した場合には,他国等との信頼関係が損なわれるおそれ及び交渉上不利益を被
るおそれがあるというべきである。

証拠(乙54の2・3・9)及び弁論の全趣旨によれば,通番59,106,108,310には,本件事故当時において,内閣総理大臣,内閣官房副長官,内閣官房副長官補,原子力委員会委員長等,政府において本件事故への対応に関し一定の地位にあった者による,他国に対する率直な
評価に関する情報や他国関係者の個々の言動に対する率直な評価,意見等に関する情報(本件他国評価等情報)が具体的に記録されていることが認められる。
本件他国評価等情報が公にされた場合には,その内容を問わず,他国等との信頼関係を損なうおそれがあり,また,公にすることが想定されない
情報である本件他国評価等情報を公にすること自体,他国等との関係に配慮しない行為と受け止められ,他国等との相互の信頼関係に支障を及ぼすおそれがあるというべきである。

証拠(乙54の5~7)及び弁論の全趣旨によれば,通番207,578,580には,本件事故への対応の過程で生じた外交事務について,我が国の機関内部又は相互間における検討及び協議においてされた関係者の率直な言動,他国等又はその関係者の言動に対する率直な評価及び見解,当該外交事務に対する個々の対応方針,結論に至る過程及び背景事情等の情報(本件外交検討情報)が具体的に記録されていることが認められる。本件外交検討情報には,本件他国評価等情報(上記イ)と同様の具体的な情報も含まれているため,これを公にした場合,同様に,他国等との信
頼関係が損なわれるとともに,他国等との交渉上不利益を被るおそれがあるといえる。また,本件外交検討情報を公にした場合,我が国が外交事務の遂行に関して検討及び協議を行うに当たり重視する事項,対応方針等が明らかになることから,将来の他国等との交渉において不利益を被ることも十分に考えられる。


以上に対し,原告らは,本件日米外交情報として当初不開示としていた情報が内閣府ホームページで公表されたが,開示による不利益が生じていないことから,本件各外交情報としてなお開示されていない情報についての前記アからウまでのおそれは抽象的可能性にすぎない旨主張する。
しかしながら,政府が,上記公表時点において,当該公表された情報について,開示による具体的な不利益を被るおそれがあるとはいえないとの判断を行ったものであるとしても,他方において,処分行政庁が外務当局の意見を踏まえなお本件各外交情報の不開示の判断を維持している部分があること(弁論の全趣旨)からもうかがわれるように,本件日米外交情報
として当初不開示としていたものについて,一律に開示しても具体的な不利益を被るおそれがないものであるとはいえない。加えて,情報の持つ意義や重要性,これらを踏まえた秘匿の必要性は,時間が経過することにより変化し得ることも考慮すれば,原告らの上記主張に係る事実をもって,原決定時において前記アからウまでのおそれが具体的になかったことが裏
付けられるものということはできない。
したがって,原告らの主張を採用することはできない。

以上によれば,本件各外交情報を公にすることにより,他国等との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国等との交渉上不利益を被るおそれがあると内閣官房副長官補が認めたことには十分な理由があり,その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があるとか,事実に対する評価が明白に合理性を欠くといった事情は存在しないから,本件各外交情報が情報公開法5条
3号に該当するとした内閣官房副長官補の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。
したがって,本件各外交情報は,情報公開法5条3号所定の不開示情報に該当する。

また,本件各外交情報は,情報公開法5条6号柱書きにいう国の機関〔中略〕が行う事務〔中略〕に関する情報に該当する。そして,前記アからウまでに検討したところによれば,本件各外交情報を公にすることにより,他国等との信頼関係が損なわれるおそれ及び他国等との交渉上不利益を被るおそれがあるといえるから,本件各外交情報を公にすることにより,外交事務の性質上,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある(同号柱書き)というべきである。したがって,本件各外交情報は,情報公開法5条6号柱書き所定の不開示情報に該当する。
(2)

以上によれば,
本件不開示部分のうち,
本件不開示部分⑪に記録された情

報(本件各外交情報)は,情報公開法5条3号,6号柱書き所定の不開示情
報に該当するといえる(なお,同条5号所定の不開示情報に該当するか否かについては,事案に鑑み判断しないこととする。)。
3
争点(3)(本件不開示部分⑥に記録された情報(類型⑥)が情報公開法5条5号,6号柱書き所定の不開示情報に該当するか否か)について

(1)

認定事実
前記前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。

福島第一原発及び福島第二原発は,平成23年3月11日,東北地方太平洋沖地震とこれに伴う津波によって被災し,福島第一原発から放射性物質が放出されるなどの本件事故が発生した。これにより,福島第一原発から半径20km圏内の地域は警戒区域として原則として立入りが禁止され,
その他の地域においても計画的避難区域が設定されるなどし,多数の住民が避難生活を余儀なくされた。また,放出された放射性物質が東日本の広範な地域に拡散し,人々に健康への影響に対する不安を与え,農畜水産物の生産者等に甚大な被害をもたらすとともに,消費者の不安も招くなど,本件事故は,国民生活に極めて広範かつ深刻な影響を及ぼし,また,近隣
諸国のみならず広く世界の国々に衝撃を与えた(乙4)。

政府は,
平成23年5月24日,
政府事故調を設置する旨の閣議決定
(本
件閣議決定)をした。本件閣議決定においては,①本件事故原因等を究明するための調査及び検証を,国民の目線に立って開かれた中立的な立場か
ら多角的に行い,もって本件事故による被害の拡大防止及び同種事故の再発防止等に関する政策提言を行うことを目的として,政府事故調を開催すること,②政府事故調は,必要に応じ,内閣総理大臣を始めとする関係大臣,関係行政機関の職員,関係事業者の役職員,原子力に関する国際機関の職員その他の関係者の出席を求めることができること,③関係大臣及び
関係行政機関の職員は,政府事故調の運営に最大限協力するものとし,正当な理由がない限り,政府事故調からの説明聴取(ヒアリング)等の要請を拒むことはできないものとすること,④関係大臣は,政府事故調から関係事業者を対象とする説明聴取等の要請があった場合には,法令に定められた権限に基づき,これに応じるよう事業者に対し指示を行うものとする
ことなどが定められた(乙3)。
もっとも,政府事故調に関し,その調査権限,調査方法等について定めた法令は存在しない(顕著な事実)。

政府事故調は,平成23年6月7日,第1回会合を開催し,本件事故の真の原因究明を行うためには,本件事故に関与した者等に,考えた事柄,行動した事柄をそのまま述べてもらう必要があることから,責任追及を目的とした調査や検証は行わないという方針を採ることとし,この方針を前
提としてヒアリングを含めた調査や検証を進めることとした。このような方針は,翌日までに複数の報道機関により報道された。また,同年7月4日,上記会合の開催情報が政府事故調のホームページに掲載された(乙6の1,19の1・2,21,22の1~4)。

政府事故調は,平成23年7月8日,第2回会合を開催し,同日付け申合せヒアリングの方法等について(本件ヒアリング方針,乙20の3)を定め,①ヒアリングは原則として非公開で行うこと,②ヒアリングで得た供述内容を,事故責任を追及する目的では使用しないこと,③調査結果の取りまとめに際して,非公開を前提に調査に協力した個人については,事故原因の作出や被害拡大にどのように関与したかにつき,各個人が特定
されないような記載の仕方に配慮し,非公開で行ったヒアリングにおける聴取結果書については,必要な範囲で開示するが,被聴取者の特定につながる部分及び被聴取者が非開示を希望している部分については開示しないこと,などについて異議なく申合せをした。政府事故調においてヒアリングを非公開で行うこと等の方針については,翌日,複数の報道機関により
報道され,同月13日,上記第2回会合の開催情報が政府事故調のホームページ上に掲載された(乙6の1,20の1~3,21,22の5~7)。オ
政府事故調は,平成23年7月以降,被聴取者に対し非公開でのヒアリングを実施した。なお,被聴取者772名中2名については,政府事故調
の第2回会合の直前である同月6日にヒアリングが実施されたが(甲78の1,乙25の71),その余のヒアリングは,いずれも上記会合後の同月9日以降に実施された(甲18~187,乙25の1~558)。カ
政府事故調は,調査の結果を踏まえて,本件事故原因等について検討・協議を行い,その結果を取りまとめたものとして,中間報告(平成23年12月26日)及び最終報告(平成24年7月23日)を公表し,政府は,同年9月28日,政府事故調を廃止した(前記前提事実(3)イ,乙4)。

内閣官房は,平成26年6月27日,政府事故調による聴取結果書(ヒアリング記録)は開示しない扱いとしているが,開示について本人の同意がある場合には,第三者の権利,利益や国の安全等に係る部分を除き,聴取結果書を開示しても特段の問題はないと考えられるとして,被聴取者に対し,聴取結果書の開示に関する意向確認を行うこととした。そして,①
開示の意向を有する被聴取者の聴取結果書のうち,これを閲覧した上で特定の部分につき不開示とすることを希望する部分,及び,開示の意向を有しない被聴取者の聴取結果書に記録された情報(本件不開示希望情報(本人)),②当該聴取結果書の記載その他の情報と照合することにより,非本人被聴取者である特定の個人がヒアリングを受けたことを推知させる情報
又は当該個人がヒアリングにおいて供述した内容が明らかになる情報(本件不開示希望情報(非本人))を含む情報を除き,聴取結果書をホームページ上で公開した(乙42,57,弁論の全趣旨)。
(2)
検討

ア(ア)上記(1)のとおり,政府事故調は,本件事故原因等の調査,検証を目的として閣議決定により設置された機関であるが,本件関係者等からの資料の収集やヒアリング等の調査を強制的に実施する権限はなく,本件関係者等の任意の協力を得てこれらの調査を行うほかなかったところ,上記目的を達成するためには,本件関係者等の任意の協力を確保する必要
があった。そこで,政府事故調は,責任追及を目的とした調査や検証は行わない旨を第1回会合において明確に打ち出し,その旨はヒアリングが開始される前に報道等により周知され,さらに,第2回会合において,本件ヒアリング方針を含むヒアリングの方針について異論なく申合せがされた。本件ヒアリング方針は,ヒアリングを原則として非公開で行うことや,ヒアリングで得た供述内容を責任追及の目的で使用しないこと等を内容とするものであり,その内容は,本件閣議決定にも沿う合理的なものであると認められるところ,被聴取者合計772名に対するヒアリングのほぼ全てが,本件ヒアリング方針を含む上記申合せがされた平成23年7月8日より後に実施されたものである(なお,上記申合せの2日前に被聴取者2名に対するヒアリングが実施されているが,いずれ
も第1回会合の後に非公開で実施されたものである。)。
聴取結果書の基となるヒアリングが以上のようにして実施されたことからすれば,被聴取者は,ヒアリングにおける発言内容について,発言者が特定されない形で要約され,中間報告や最終報告(調査結果の取りまとめ)に記載されることがあるとしても,聴取結果書については,被
聴取者の特定につながる部分及び被聴取者が非開示を希望する部分を除き,必要な範囲に限って開示することとすることを前提として,ヒアリングに応じていたものと理解することが相当であり,このことは,各ヒアリングの冒頭にその旨の説明が明示的に行われたか否かにかかわらないものというべきである。

(イ)原告らは,O氏が,話した言葉がほぼそのままの形で公にされる可能性があることを認識し,これを承諾してヒアリングに応じたとして,O氏以外のヒアリングの被聴取者も聴取結果書の開示に同意していた旨主張する。
そこで検討すると,証拠(甲195)によれば,平成23年7月22
日に実施されたO氏に対するヒアリング(本件O調書に係るもの)において,冒頭,質問者から,ここでお答えいただいたことを記録に取りますが,その記録が公になるという可能性がある。何から何まで,どう出るか,それは今はわかりませんが,事と次第によっては,お話しいただいた言葉がほぼそのままの形で公にされる可能性があるということをお含みいただいて,それでこのヒアリングに応じていただきたいと思います。との説明があり,その後,O氏はその他の説明事項を含めて

結構でございます。

と回答したことが認められる。もっとも,前記(1)エのとおり,O氏に対するヒアリングの前である同月8日に本件ヒアリング方針ついて申合せがされ,その方針が報道等されるなどしていたところ,O氏に対する上記の説明においては,O氏からの聴取内容につい
ての取扱いが本件ヒアリング方針の例外的な取扱いである旨の説明がなかったものである。そして,政府事故調がO氏に対し,国会事故調にO氏の聴取結果書を提出することの可否について,完成した聴取結果書の内容の確認を求めた上で,その可否に関する意思を改めて確認し,O氏も,その際の上申書において,上記聴取結果書の国会事故調への開示は
国会事故調が内部で調査のために用いる限りで承諾するものであるとし,第三者に対し開示,漏洩されることがないように取り扱うことを求めていること(乙6の2,51)からすれば,ヒアリングの冒頭における上記回答をもって,O氏が,自身の意思にかかわらずヒアリング結果そのものである聴取結果書が無条件に公になることについて同意したものと
いうことはできない。
そうすると,他の被聴取者においても,一般的に聴取結果書が無条件に公になることについて同意していたとはいえず,原告らの主張を採用することはできない。
(ウ)a原告らは,ヒアリングの被聴取者のうち,政治家,公務員等の属性
を有する者について,聴取結果書の開示を前提としてヒアリングが実施された旨主張する。
しかしながら,聴取結果書完成後の開示に係る意向確認の手続において,被聴取者個人の考えから開示に同意する者が一定の属性の者に多くみられたとしても,本件ヒアリング方針において,被聴取者の属性を分けた取扱いがされていたものではなく(前記(1)エ),実際のヒアリングにおいて異なる取扱いが行われていたことを裏付ける的確な
証拠がない以上,一定の属性の者に対し聴取結果書の開示を前提としてヒアリングが実施されたとはいえず,原告らの主張を採用することはできない。
b
原告らは,政治家である被聴取者について,聴取当時において聴取結果書が開示されることが原則とされ,聴取当時に被聴取者から明示
の非開示の要望があり下線を引いた場合は例外として非開示とするものとされていた旨主張する。
しかしながら,政治家である被聴取者に限らず,一部の調査結果書の中には,下線部については先方から特に強い非開示の要望があった旨の記載があるものがみられるところ
(甲110,
乙54の2・8等)


その記載の表現振りに照らしても,下線部以外については非開示を求めないという趣旨であったとは読み取れない。また,政治家である被聴取者の中には,聴取結果書は当初非公開とすることとされていた旨述べる者がいること(乙60)からすれば,回答内容が全面公開されることを前提としてヒアリングに応じた旨の菅直人元首相の説明(甲
229)は,政治家である被聴取者に共通するものではなく,個人的な考えを述べたものにすぎないとみるのが相当である。
したがって,原告らの主張を採用することはできない。
c
原告らは,東京電力の役員及びGM以上の者である被聴取者について,東京電力が本件事故の当事者であって,公的な資金援助を受けている企業であり,被聴取者が同社において責任がある立場にあることから,明示的に非開示を希望した部分以外については聴取結果書が開示されることとされていた旨主張する。しかしながら,同社や上記の者が本件事故に関して上記のような立場にあったからといって,直ちに政府事故調のヒアリングに関して上記の者らの聴取結果書が開示されることとされていたとはいえず,そのような扱いとされていたことを認めるに足りる証拠もないから,原告らの主張を採用することはできない。
(エ)以上によれば,被聴取者は,被聴取者の特定につながる部分や,被聴取者(当該被聴取者又は非本人被聴取者)が非開示を希望する部分を除
き,必要な範囲に限って聴取結果書を開示することがあることを前提としてヒアリングに応じていたものと認めることができる。
イ(ア)政府事故調による本件事故原因等の調査,検証は,既に終了しているものであるが,将来,社会的影響の大きな事故等が発生し,その原因等について政府が同様の調査・検証委員会を設置するなどして調査を実施
する場合があり得ることは容易に想定されるところ,このような場合において,本件ヒアリング方針と同様に,関係者の任意の協力を確保するために,被聴取者の特定につながるような情報や聴取内容が明らかになるような情報等を原則として公表しないなどの方針の下に,一定の調査事務を行うことは十分に考えられる。

仮に,上記ア(エ)のヒアリングの前提に反して,被聴取者が不開示とすることを希望するような場合にまで聴取結果書が公になるとすれば,被聴取者だけでなく国民一般にとって,政府事故調が定めた方針(本件ヒアリング方針等)が遵守されることに対する信頼が損なわれることとなり,将来における重大事故調査等において,関係者の協力を得るために
本件ヒアリング方針と同様の方針を定めたとしても,これが遵守されることに対する信頼を得られないことから,関係者の任意の協力を十分に確保することができなくなるおそれが生じるものといえる。
したがって,被聴取者が開示を希望しない聴取結果書に記録された情報を開示することは,同種の調査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるといえるから,本件不開示希望情報は,情報公開法5条6号所定の不開示情報に該当するというべきである。
(イ)また,聴取結果書は,政府事故調が行う本件事故原因等の調査,検証の過程で,その基礎資料として作成された文書であり,国の機関〔中略〕の内部〔中略〕における審議,検討又は協議に関する情報に該当する。

そして,本件事故は国民生活に極めて広範かつ深刻な影響を及ぼすものであったところ,証拠(甲234~236,乙13の1・2・5,61~70,73~81)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故直後の時期において,東京電力や国の施設に対する犯罪行為,東京電力役職員に対する差別,中傷及びプライバシー侵害,原子力発電所行政に関わる公
務員に対する批判等が行われていたこと,本件事故以降,原子力発電の維持継続の是非等が国民の間で見解の分かれる大きな政治的争点となっていること,本件事故への対応等に関して東京電力役員に対する強制起訴が行われたほか,国,東京電力に対して損害賠償請求を求める民事訴訟が提起されていることが認められる。

そうすると,被聴取者は,ヒアリングの実施時点において,東京電力関係者を中心として民事上又は刑事上の責任追及の対象とされるおそれがあったほか,被聴取者が本件事故に関与した者であるということのみをもって,本人や家族等の関係者が嫌がらせを受けたり,報道関係者等による過度な取材を受けたりするおそれもあったといえるところ,本件
不開示希望情報が公になるとすれば,本件事故の関係者であること等が公になることにより上記のおそれが顕在化するといわざるを得ず,そのようなおそれは客観的に認められるものというべきである。。
したがって,本件不開示希望情報を開示することは,特定の者に不当に不利益を及ぼすおそれがあるといえるから,当該情報は情報公開法5条5号所定の不開示情報に該当するというべきである。
(ウ)以上に対し,原告らは,公務員等の被聴取者について,職務遂行の一
環としてヒアリングに応じている以上,将来実施され得る調査においても同様に応じることになる旨主張する。
しかしながら,本件不開示希望情報を開示した場合,公務員等の被聴取者が,上記(イ)の不利益が及ぶおそれを懸念して,将来の調査自体には応じるとしても,開示されることを希望しない情報を調査において提供
しないことも想定され,これにより適正な調査が達成できなくなることは十分に考えられるから,上記主張の点をもって,本件不開示希望情報が情報公開法5条6号柱書き及び同条5号に該当しないものということはできない。
(3)

まとめ
以上によれば,原告らのその余の主張を踏まえても,本件不開示部分⑥に
記録された情報(本件不開示希望情報)は,情報公開法5条6号柱書き及び同条5号所定の不開示情報に該当するものということができる。
4
争点(4)(理由付記の違法の有無(原告Aら関係))について
(1)

原告Aらは,原告Aら各決定において,不開示部分と理由の対比が明らか
にされておらず,各マスキング部分の情報の内容,不開示理由が不明であるから,上記各決定は理由付記が不十分であり,行政手続法8条に違反する旨主張する。
(2)
行政手続法8条1項本文が,
申請により求められた許認可等を拒否する処

分をする場合には,申請者に対し,同時に,当該処分の理由を示すべきものとしているのは,申請者に許認可等の法令上の利益を付与しないという申請拒否処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を申請者に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして,同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,上記のような同項本文の趣旨に照らし,当該処分の根拠法令の規定内容,
当該処分に係る審査基準の存否及び内容並びに公表の有無,

当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮して決定すべきである(最高裁平成21年(行ヒ)第91号同23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁参照)。
(3)

証拠(甲189~193)によれば,原告Aら各決定に係る各通知書に付
記された不開示の理由には,該当条文として情報公開法5条1号,2号,3
号,4号,5号及び6号が摘示され,各条項の要件に該当している事実関係が一応記載されているから,開示請求者において,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して処分が行われたかをその記載自体から一応了知し得るものということができ,不開示部分ごとにその内容,不開示理由を特定して付記しなければ上記(2)の理由提示の要請に応えていないとまではいえな
い。
したがって,原告Aら各決定における理由付記に行政手続法8条1項本文に違反する違法があるとはいえない。
5
原告らの義務付けの訴えについて
いわゆる申請型の義務付けの訴え(行政事件訴訟法3条6項2号)は,法令に基づく申請を却下し又は棄却する旨の処分がされた場合においては,当該処分が取り消されるべきものであり,又は無効若しくは不存在でなければ提起することができず(同法37条の3第1項2号),また,義務付けの訴えは,処分の取消訴訟等を併合して提起しなければならない(同条第3項2号)。
前記1から4までに検討したところによれば,原決定(別紙2記載の各決定により一部変更された後のもの)はいずれも適法であり,また,原告Aらは,松下忠洋に係る聴取結果書の開示決定の義務付けについて,処分の取消訴訟等を併合して提起していない。
したがって,原告らの訴えのうち,行政文書の開示決定の義務付けを求める訴えはいずれも行政事件訴訟法37条の3所定の要件を満たさず,不適法である。

6
結論
以上によれば,
原決定
(別紙2記載の各決定により一部変更された後のもの)
は,いずれも適法であって,原告らの取消請求はいずれも理由がないから棄却し,本件訴えのうち,義務付けの訴えに係る部分はいずれも不適法であるから
却下することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部

裁判長裁判官

森英
裁判官

小川
裁判官

鈴鹿明弘持
(別紙1省略)
(別紙2省略)
(別紙3の1省略)
(別紙3の2省略)
(別紙4の1省略)
祥吾
(別紙4の2省略)
(別紙5省略)
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