判例検索β > 令和2年(行ケ)第10064号
審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
事件番号令和2(行ケ)10064
事件名審決取消請求事件
裁判年月日令和3年3月22日
裁判所名知的財産高等裁判所
権利種別特許権
訴訟類型行政訴訟
裁判日:西暦2021-03-22
情報公開日2021-03-25 16:01:57
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令和3年3月22日判決言渡
令和2年(行ケ)第10064号
口頭弁論終結日

審決取消請求事件

令和3年1月25日
判決原告
ヴィルトゲン

ゲゼルシャフ


ミット

ベシュレンクテ


ハフツング

同訴訟代理人弁理士

山田同阿部同池田成
同訴訟復代理人弁理士

今村玲英子
同訴訟復代理人弁護士

松阪絵里佳被
範多機械株式会社

告行一寛人
同訴訟代理人弁護士

冨宅恵同西村啓
同訴訟代理人弁理士

高山主嘉成文
1
原告の請求を棄却する。

2
訴訟費用は,原告の負担とする。

3
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定
める。

第1

実及び理由
請求
特許庁が無効2018-800136号事件について令和2年1月7日にした審決を取り消す。

第2
1
事案の概要
特許庁における手続の経緯等
(1)

原告は,平成25年3月8日(優先日平成24年3月8日(以下本件優先日という。,優先権主張国ドイツ)を国際出願日とする特許出願(特願)
2013-46747号)の一部を分割して,平成26年8月1日,発明の名称を路面切削用の自走式道路切削機,特に大型切削機,および路面切削の方法とする発明について新たな特許出願(特願2014-157748号)をし,平成28年11月11日,特許権の設定登録(特許第6038846号。請求項の数14。
)を受けた。
(甲17)

(2)

被告は,
平成30年12月4日,
上記特許のうち請求項1ないし6及び1

1ないし14に係る発明につき,無効審判請求をした(無効2018-800136号事件)(甲18)

(3)

上記無効審判請求事件において,被告は,平成30年12月4日,酒井機
工株式会社の敷地内に所在する酒井重工業株式会社製ロードカッタER550F(甲2。車台番号MER6-10136
。以下検甲1発明と
いう。
)の検証を求める旨の証拠保全の申立てをした。特許庁は,平成31年1月30日,この申立てを認める旨の決定をし,同年2月6日,検甲1発明の検証を実施した。
(甲19,20,26,28)
(4)

原告は,
令和元年10月1日付けで,
請求項1ないし14を一群の請求項

として訂正することを求める旨の訂正請求をした
(以下
本件訂正
という。。

(甲38)

(5)

特許庁は,令和2年1月7日,本件訂正を認めた上で,

特許第6038846号の請求項1ないし6,11ないし14に係る発明についての特許を無効とする。

との審決(出訴期間として90日を附加。以下本件審決という。
)をし,その謄本は,同月17日,原告に送達された。
(6)

原告は,
令和2年5月15日,
本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起

した。
2
特許請求の範囲の記載
本件訂正がされた後の請求項1ないし6及び11ないし14に係る特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(以下,各請求項に記載された発明を,請
求項の番号に従い本件発明1等といい,併せて本件各発明と総称する。また,本件訂正がされた後の明細書及び図面(甲17,38)を併せて本件明細書という。。)
【請求項1】
高さ調節可能な車体(4)と,

進行方向に見て,前記車体の前車軸および後車軸と,
前記車体(4)により支持された機械フレーム(8)と,
前記機械フレーム(8)に配置された切削ローラハウジング(10)と,前記切削ローラハウジング(10)に回転自在に支持された単一の切削ローラ(12)と,

前記切削ローラ
(12)
に一体化された切削ローラ駆動ユニット
(14)
と,
進行方向に見て前方向に前記切削ローラ(12)により削り取られた切削物を除去するためのコンベヤベルト手段(18)であって,大型切削機の外側面に対して左寄せまたは右寄せする前記切削ローラ(12)の位置間で,前記切削ローラ(12)と,前記コンベヤベルト手段(18)の下端を含めた前記切
削ローラハウジング(10)とを変位させるように前記切削ローラハウジング(10)と協働する,前記コンベヤベルト手段(18)とを具備する路面(2)
切削用の自走式大型切削機(1)であって,
前記切削ローラ(12)は,前記切削ローラハウジング(10)と共に,前記切削ローラ(12)が垂直及び進行方向に移動しないように垂直および進行方向に前記機械フレーム(8)で強固に支持され,前記切削ローラ駆動ユニット(14)は,前記機械フレーム(8)での支持によって,前記切削ローラ(12)が前記進行方向に対して横断方向にのみ可動であるように,前記進行方向に対して横断方向に変位可能に支持され,
前記切削ローラハウジング(10)の横方向前端が,縁部または障害物のできるだけ近くで切削が行われるようにするために,前記機械フレーム(8)の
横外側面(26,28)の一つ,いわゆるゼロ側と選択的にほぼ面一である,自走式大型切削機(1)において,
前記切削ローラハウジング(10)は,前記前車軸および後車軸の間に配置され,
作業を中断させることなく切削作業中に前記切削ローラ(12)を前記切削
ローラハウジング(10)と共に変位させることができ,前記ゼロ側を,前記機械フレーム(8)の一方の前記外側面(26,28)またはその反対側の前記外側面(26,28)に選択的に画定することができ,前記切削ローラ(12)は,切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に,その前縁に追加のチゼルツールを具備することを特徴とする,自走式大型切削機。
【請求項2】
前記切削ローラハウジング(10)を,前記機械フレーム(8)の進行方向に互いに間隔を置いて配置された2つのリニアガイド(34,36)に沿って直線的に変位させることを特徴とする,請求項1に記載の自走式大型切削機。【請求項3】

前記リニアガイドの第1のガイド(34)が位置決め軸受を画定する筒状ガイドであり,前記リニアガイドの第2のガイド(36)が平面間に配置される
とともに,非位置決め軸受を画定するガイドであることを特徴とする,請求項2に記載の自走式大型切削機。
【請求項4】
前記切削ローラ(12)の最大横走行距離が,500~1000mmの範囲であることを特徴とする,請求項1~3のいずれか一項に記載の自走式大型切削機。
【請求項5】
前記コンベヤベルト手段(18)の下端(44)を受けるためのベルトシュー(40)が,前記切削ローラハウジング(10)に高さ調節可能に固定され
ることを特徴とする,
請求項1~4のいずれか一項に記載の自走式大型切削機。
【請求項6】
前記コンベヤベルト手段(18)が,前記ベルトシュー(40)に関節連結されることを特徴とする,請求項5に記載の自走式大型切削機。
【請求項11】

前記ベルトシュー(40)が,同期ガイド(60)を介して高さ調節可能であることを特徴とする,請求項5~10のいずれか一項に記載の自走式大型切削機。
【請求項12】
進行方向に見て,前記切削ローラハウジング(10)の後端が,前記切削ロ
ーラ
(12)
の切削軌道
(68)
に横方向に載置されるとともに,
前記路面
(2)
に直交して延びる前記切削軌道(68)の切削縁(70)に対して弾性的に当接される高さ調節可能なストリッパシールド(64)と面一であることを特徴とする,請求項1~11のいずれか一項に記載の自走式大型切削機。【請求項13】

前記進行方向に見て,前記切削ローラハウジング(10)の後端は,下縁(78)が高さ調節可能なストリッパシールド(64)と実質的に面一であり,前
記ストリッパシールド(64)は,それぞれの可動シールド要素(74)を両側端に具備し,前記可動シールド要素(74)は,その下縁(78)が実質的に前記ストリッパシールド
(64)
と面一であり,
前記ストリッパシールド
(6
4)と共に高さ調整可能であり,高さ調節可能な前記ストリッパシールド(64)と共に,切削作業中にストリッパシールド幅を前記切削ローラ(12)の切削軌道(68)に動的に適合させるばね付勢に抗して調節可能であることを特徴とする,請求項1~12のいずれか一項に記載の自走式大型切削機。【請求項14】
請求項1に記載の自走式大型切削機(1)を用いた路面(2)の切削の方法
であって,
前記自走式大型切削機(1)が,
横外側面(26,28)を含む機械フレーム(8)と,
切削ローラハウジング
(10)
に回転自在に支持された単一の切削ローラ
(1
2)と,

前記切削ローラ(12)用の切削ローラ駆動ユニット(14)と
を具備し,
前記切削ローラハウジング(10)の横方向前端が,縁部または障害物のできるだけ近くで切削が行われるようにするために,前記機械フレーム(8)の前記横外側面(26,28)の一つ,いわゆるゼロ側と選択的にほぼ面一であ
る,路面(2)の切削の方法において,
前記切削ローラ駆動ユニット(14)を前記切削ローラ(12)にー体化させ,かつ前記切削ローラ駆動ユニット(14)と共に,前記切削ローラ(12)を進行方向に対して横断方向に変位可能に支持することにより,前記ゼロ側が前記機械フレーム(8)の一方の外側面(26,28)またはその反対側の外
側面(26,28)に選択的に画定されるように適合され,
切削作業中に前記切削ローラを前記切削ローラハウジング(10)と共に変
位させることができ,前記切削ローラ(12)は,切削作業中に前記切削ローラ(12)を変位させる為に,その前縁に追加のチゼルツールを具備することを特徴とする,路面の切削の方法。
3
本件審決の理由の要旨
(1)

本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであり,要するに,
本件発明1ないし4及び12ないし14は,検甲1発明及び周知技術(甲6ないし8)に基づいて,本件発明5,6及び11は,検甲1発明,周知技術(甲6ないし8)及び甲第9号証に記載された技術事項に基づいて,それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を欠くというものである(甲6ないし9の各文献は,次のとおりであり,以下,それぞれの書証番号に従い甲6文献等という。。

甲第6号証

特開平9-21107号公報

甲第7号証

特開2009-13777号公報

甲第8号証

野田正治,
製品と技術中型路面切削機CRP-160L型
,建設機械,Vol.26

No.5,平成2年5月

1日,p.72-74
甲第9号証
(2)

特表2002-510000号公報

本件審決が認定した検甲1発明並びに本件各発明と検甲1発明との一致
点及び相違点は,次のとおりである。

検甲1発明
以下の構成を有する大型切削機。a車体は,車体の進行方向に見て,車体の前側に車軸及び後側に車軸を有している。車体は自走できる。b車体は,フレーム部を有し,フレーム部には,切削ローラが内部に配されたハウジング部が配置されている。cハウジング部には,単一の切削ローラが回転自在に支持されている。d切削ローラは,切削ローラを駆動するための駆動部を一体化して有している。e車体には,車体の進行方向に連なって第1,第2コンベアベルト部を有している。第1コンベアベルト部は車体内部前方に配置されており,第2コンベアベルト部は車体前方に延出して配置されている。第1,第2コンベアベルト部のコンベアベルトで運搬することによって,切削ローラにより削り取られた切削物を除去することができる。f切削ローラ及びハウジング部は車体の外側面に対して,左寄せ及び右寄せすることができる。切削ローラ及びハウジング部が前記左寄せ及び右寄せすると,第1コンベアベルト部の下端は,切削ローラにより削り取られた切削物を除去することができるように,切削ローラ及びハウジング部に追随する。g切削ローラ及びハウジング部は,車体の垂直,横断及び進行方向にフレーム部によって支持されている。h駆動部は,切削ローラが車体の進行方向に対して横断方向に可動であり,かつ垂直方向に可動であるように,ハウジング部を介して,フレーム部に支持されている。iハウジング部の横方向前端が,フレーム部の横外側面の一つとほぼ面一にすることができる。jハウジング部は,車体の前側の車軸と後側の車軸の間に配置されている。k車体全体を前進させながら,切削作業中に切削ローラ及びハウジング部は,左右に移動させることができると共に,フレーム部の両側の横外側面のいずれにも合わせることができる。l切削ローラは,円柱形状であり,切削ローラの側面のほぼ全面に複数の略円錐状の爪部が設けられており,側面の底面よりの部分には,底面側に先端が向いている爪部が設けられている。mフレーム部には,上下方向変位用の油圧シリンダを介して車体の進行方向に互いに間隔を置いて2つの棒状ガイドが横断方向に設けられており,2つの棒状ガイドはハウジング部に取り付けられており,ハウジング部は,2つの棒状のガイドに沿って直線的に変位させることができる。1つの棒状ガイドには,水平方向変位用の油圧シリンダが取り付けられている。nコンベアベルト部の下端の両側には,一体的に側板が取り付けられており,当該側板は,ハウジング部に高さ調節可能に固定されている。o側板が,ガイドを介して,高さ調節可能となっている。pハウジング部の後端は,切削ローラによって切削される路面の切削面の横断方向に,切削面と略同じ幅で配置されている。ハウジング部の後端に沿って,3枚の板状体が横断方向に並んで,路面に向かって,高さ調節可能に垂下している。3枚の板状体は切削面と略同幅である。qハウジング部の後端は,3枚の板状体とほぼ面一である。3枚の板状体の下縁は高さ調節可能である。両側の板状体の両側縁には,側板要素が略直角に取り付けられている。側板要素の下縁は,3枚の板状体の下縁とほぼ面一であり,3枚の板状体と共に高さ調節可能である。3枚の板状体は切削面に当接可能であり,側板要素の下縁は切削面の外縁部に当接可能となっている。r側板要素は,切削作業中に3枚の板状体の幅を切削面に適合させるためのばね付勢を用いて調節可能である。
(以下,上記gの構成を構成g
,上記mの構成を構成mということ
がある。


本件各発明と検甲1発明との一致点及び相違点
(ア)

本件発明1

(一致点)
車体と,
進行方向に見て,前記車体の前車軸および後車軸と,
前記車体により支持された機械フレームと,
前記機械フレームに配置された切削ローラハウジングと,
前記切削ローラハウジングに回転自在に支持された単一の切削ローラと,
前記切削ローラに一体化された切削ローラ駆動ユニットと,
進行方向に見て前方向に前記切削ローラにより削り取られた切削物を
除去するためのコンベヤベルト手段であって,大型切削機の外側面に対して左寄せまたは右寄せする前記切削ローラの位置間で,前記切削ローラと,前記コンベヤベルト手段の下端を含めた前記切削ローラハウジングとを変位させるように前記切削ローラハウジングと協働する,前記コンベヤベルト手段とを具備する路面切削用の自走式大型切削機であって,
前記切削ローラは,前記切削ローラハウジングと共に,垂直および進行方向に前記機械フレームで支持され,
前記切削ローラ駆動ユニットは,
前記機械フレームでの支持によって,前記切削ローラが前記進行方向に対して横断方向に可動であるように,前記進行方向に対して横断方向に変位可能に支持され,

前記切削ローラハウジングの横方向前端が,縁部または障害物のできるだけ近くで切削が行われるようにするために,前記機械フレームの横外側面の一つ,いわゆるゼロ側と選択的にほぼ面一である,自走式大型切削機において,
前記切削ローラハウジングは,前記前車軸および後車軸の間に配置さ
れ,
作業を中断させることなく切削作業中に前記切削ローラを前記切削ロ
ーラハウジングと共に変位させることができ,前記ゼロ側を,前記機械フレームの一方の前記外側面またはその反対側の前記外側面に選択的に画定することができ,
前記切削ローラは,切削作業中に前記切削ローラを変位させる為に,その前縁に追加のチゼルツールを具備する,自走式大型切削機。
(相違点1)
高さ調節に関して,本件発明1は高さ調節可能な車体であるのに
対し,検甲1発明は切削ローラ(ハウジング部)が垂直方向に可動である点。
(相違点2)
切削ローラに関して,本件発明1は前記切削ローラハウジング(10)と共に,前記切削ローラ(12)が垂直及び進行方向に移動しないように垂直および進行方向に前記機械フレーム(8)で強固に支持されているのに対し,検甲1発明は切削ローラ及びハウジング部は,車体の垂直,横断及び進行方向にフレーム部によって支持されている点。(相違点3)
切削ローラ駆動ユニットに関して,本件発明1は前記切削ローラ駆動ユニット(14)は,前記機械フレーム(8)での支持によって,前記切削ローラ(12)が前記進行方向に対して横断方向にのみ可動であるように,前記進行方向に対して横断方向に変位可能に支持されているのに対し,検甲1発明は,
駆動部は,切削ローラが車体の進行方向に対して横断方向に可動であり,かつ垂直方向に可動であるように,ハウジング部を介して,フレーム部に支持されている点。(イ)

本件発明2及び本件発明3
いずれも上記相違点1ないし3で相違する。

(ウ)

本件発明4

上記相違点1ないし3に加え,以下の相違点4で相違する。
(相違点4)
切削ローラの最大横走行距離について,本件発明4は500~1000mmの範囲であるのに対し,検甲1発明はそのような特定がなされていない点。
(エ)

本件発明5
上記相違点1ないし3に加え,以下の相違点5で相違する。

(相違点5)
本件発明5は,
コンベヤベルト手段(18)の下端(44)を受けるためのベルトシュー(40)が,前記切削ローラハウジング(10)に高さ調節可能に固定されるのに対し,検甲1発明は,コンベアベルト部の下端の両側には,一体的に側板が取り付けられており,当該側板は,ハウジング部に高さ調節可能に固定されている点。(オ)

本件発明6
上記相違点1ないし3及び5に加え,以下の相違点6で相違する。
(相違点6)
本件発明6は前記コンベヤベルト手段(18)が,前記ベルトシュー(40)に関節連結されるに対し,検甲1発明はそのような特定がなされていない点。
(カ)

本件発明11
上記相違点1ないし3及び5に加え,以下の相違点7で相違する。
(相違点7)
本件発明11は前記ベルトシュー(40)が,同期ガイド(60)を介して高さ調節可能であるのに対し,検甲1発明はそのような特定がなされていない点。
(キ)

本件発明12ないし本件発明14

いずれも上記相違点1ないし3で相違する。
4
取消事由
原告が主張する取消事由は,本件各発明の検甲1発明に対する進歩性についての判断の誤りである(なお,原告は,相違点4についての判断の誤りは主張していない。。


第3
1
原告の主張
取消事由1(相違点1についての判断の誤り)
(1)

動機付けがないこと
切削ローラの路面に対する高さを調節する方法には,①本件各発明のように切削機の車体を上下動させる方法と,②検甲1発明のように切削ロー
ラを機械フレームに対して昇降させる方法とがある。
そして,道路切削機である検甲1発明において,切削ローラを昇降させる構成は,主たる構成であるところ,このような主たる構成を排除して,それとは両立しない車体を上下動させる構成に置き換えることを当業者が想到するはずはなく,そのような動機付けは生じない。


また,検甲1発明には,既に切削ローラをフレーム部に対して昇降させる構成が備えられているから,更に車体を上下動させる構成を追加するという動機付けは生じ得ない。


さらに,検甲1発明において,車体を上下動させる構成を採用するためには,切削ローラ及びハウジング部の構造計算のやり直し,材料変更,構
成要素の配置変更等,無数の煩雑な作業が必要となるから,同構成の採用は単純な設計事項であるとはいえず,当業者が同構成を採用しようとすることはあり得ない。

したがって,検甲1発明において,切削ローラの路面に対する高さを調節する方法として,切削機の車体を上下動させる構成を採用する動機付けは存しない。

(2)

阻害要因があること


検甲1発明において,上下方向変位用の油圧シリンダは,水平方向変位用の油圧シリンダと一体となって,切削ローラを横断方向に移動させる機能も果たしている。例えば,検甲1発明においては,上下方向変位用の油圧シリンダが可動機構によって右側に可能な限り移動し,水平方向変位用
の油圧シリンダがハウジング部を更に右に移動させることによって,最大のドラムシフト量450mmを達成している。

そして,検甲1発明において,切削ローラを機械フレームに対して昇降させる構成に代えて車体を上下動させる構成を採用すると,上下方向変位用の油圧シリンダが除かれることとなるが,そうすると,上記最大のドラ
ムシフト量を実現することができなくなり,検甲1発明の機能が損なわれてしまう。

したがって,検甲1発明において,切削ローラの路面に対する高さを調節する方法として,車体を上下動させる構成を選択し,これに伴って上下方向変位用の油圧シリンダを除くことについては,阻害要因が存在する。
2
取消事由2(相違点2,3についての判断の誤り)
(1)

構成g及び相違点2の認定の誤り


本件審決は,検甲1発明の構成gにつき,
切削ローラ及びハウジング部は,車体の垂直,横断及び進行方向にフレーム部によって支持されていると認定しているが,切削ローラ及びハウジング部は,車体の垂直,横断及び進行方向に,上下方向変位用の油圧シリンダ及び4本の連結棒を介して,フレーム部によって支持されていると認定すべきである。イ
(2)

また,同様に,構成gに関連する相違点2の認定も誤りである。
相違点に係る構成が開示されていないこと
甲6文献に記載された発明の切削ローラは,切削ローラハウジングがス
ライドレールを介して横断方向に移動可能であるときに,切削ローラハウ
ジングと共に垂直にも移動することができるから,垂直方向に強固に支持されていない。また,同発明においては,ロック具がロックされる場合にのみ,切削ローラハウジングが垂直方向及び進行方向に移動しないようにすることが可能であるが,この場合は横断方向にも移動することができなくなる。

したがって,甲6文献には,相違点2及び3に係る本件発明1の構成が開示されていない。

甲7文献に記載された発明における切削ローラは,横断方向に移動しないものであるから,甲7文献には,相違点2及び3に係る本件発明1の構成が開示されていない。


甲8文献には,相違点2及び3に係る本件発明1の構成が具体的には記載されていない。
また,甲8文献に記載されたシフトテーブルは,具体的にどのような構造なものであるか不明であるから,これが存在するというだけでは,相違点2及び3に係る本件発明1の構成が開示されているとはいえない。

以上のとおり,相違点1に係る本件発明1の構成が記載されているとされる甲6文献ないし甲8文献には,相違点2及び3に係る本件発明1の構成が全く記載されておらず,示唆も存しない。
このほか,両構成を同時に改良することを記載又は示唆する文献も存在しない。

(3)

阻害要因があること
検甲1発明において,上下方向変位用の油圧シリンダは,切削ローラの路面に対する高さを調節するための,
発明の本質的部分をなす構成である。
したがって,検甲1発明から上下方向変位用の油圧シリンダを除いてし
まうと,検甲1発明は切削機としての機能を失うことになるから,当業者がそのような選択をすることはあり得ない。


取消事由1において主張したとおり,検甲1発明において,上下方向変位用の油圧シリンダを除いて他の構造に置き換えると,最大のドラムシフト量を実現することができなくなる。
また,
同様に,
検甲1発明において,
4本の連結棒を除くと,最大のドラムシフト量を実現することができなくなり,検甲1発明の機能が損なわれる。


以上のとおり,検甲1発明において,相違点2及び3に係る本件発明1の構成を採ることについては,阻害要因が存在する。

(4)

検甲1発明の切削ローラ及びハウジング部の支持に関する本件審決の判
断の誤りについて

検甲1発明のハウジング部は,上下方向変位用の油圧シリンダを介してフレーム部に支持されており,同油圧シリンダによって垂直方向に移動するから,垂直方向にフレーム部に強固に支持されているものではない。したがって,これが強固に支持されていることを前提に,検甲1発明において,切削ローラの路面に対する高さを調節する方法として車体を上下
動させる構成を選択した場合には,上下方向変位用の油圧シリンダを除くことが選択され,切削ローラが垂直方向に強固に支持されることとなるから,相違点2及び3に係る本件発明1の構成を採ることは容易想到であるとした本件審決の判断には誤りがある。

検甲1発明においては,切削ローラ及びハウジング部が,それぞれがフレーム部における旋回点を中心に揺動するように構成された上下方向変位用の油圧シリンダ及び4本の連結棒を介してフレーム部に支持されている(以下,このような切削ローラ及びハウジング部の平行を保つための機構を平行リンク機構という。。そのため,ハウジング部が垂直方向)
又は横断方向に移動すると,連結棒のハウジング部側の端部が,フレーム
部にある旋回点を中心として円弧を描き,必然的にハウジング部が進行方向に移動することとなる(別紙原告主張図面目録記載の図6及び図7のと
おり。。そうすると,検甲1発明のハウジング部は,進行方向に対して横)
断方向にのみ可動であるように,進行方向にフレーム部で強固に支持されているものではない。
したがって,これが強固に支持されていることを前提に,相違点2及び3に係る本件発明1の構成を採ることは容易想到であるとした本件審決
の判断には誤りがある。
3
取消事由3(本件発明3についての進歩性判断の誤り)
(1)

本件発明3には,
リニアガイド
(位置決め軸受を画定する
第1のガイド

及び非位置決め軸受を画定する第2のガイド
)が備えられているところ,
このうち第1のガイドは,切削ローラハウジングを,上記リニアガイドに沿って,進行方向に対して横断方向にのみ直線的に変位させることができる。これに対し,検甲1発明の2つの棒状ガイドのうち水平方向変位用の油圧シリンダが取り付けられた棒状ガイドは,上下方向変位用の油圧シリンダを介してフレーム部に取り付けられているため,ハウジング部を,棒状ガイ
ドに沿って,進行方向に対して横断方向にのみ直線的に変位させることはできない。
また,検甲1発明において,上下方向変位用の油圧シリンダを単に除くことにより,水平方向変位用の油圧シリンダが取り付けられた棒状ガイドが,ハウジング部の移動の自由度を横断方向のみに制限する位置決めの用を
果たすことになるとはいえない。
したがって,検甲1発明には,本件発明3の第1のガイドは存在しない。
(2)

検甲1発明においては,既に横断方向への移動を支える2つの棒状ガイ
ドが存在するのであるから,水平方向変位用の油圧シリンダが取り付けられていない方の棒状ガイドを,シフトテーブルを用いた平面間に配置されるガイドに置き換える必要性は全くなく,このような置換えをする動機付けはな
い。
また,道路切削機において,シフトテーブルを用いた平面間に配置されるガイドを用いることが周知であったことを示す証拠は存しない。
したがって,検甲1発明において,水平方向変位用の油圧シリンダが取り付けられていない方の棒状ガイドを,本件発明3の第2のガイドに置き
換えることを想到することが容易であったとはいえない。
4
取消事由4(本件発明5に関する相違点5についての判断の誤り)(1)

甲9文献には,
粉砕機の機械フレームにベルト・シューが取り付けられる

ことは開示されているが,本件発明5の構成である切削ローラハウジング(10)に対応する構成要素は何も示されておらず,前記切削ローラハウジング(10)に高さ調節可能に固定されるベルトシューは示されていない。
(2)

したがって,検甲1発明に対して甲9文献に記載された事項を適用した
としても,相違点5に係る本件発明5の構成には至らない。
5
取消事由5(本件発明6に関する相違点5及び6についての判断の誤り)(1)

取消事由4で主張したところによれば,
甲9文献の記載を根拠に,
相違点

5及び6に係る本件発明6の構成を,当業者が必要に応じて適宜設定し得る設計事項であるということはできない。
(2)

したがって,
甲9文献の記載を根拠に,
相違点5及び6に係る本件発明6

の構成を,当業者が容易に想到し得たということはできない。

6
取消事由6(本件発明11に関する相違点5及び7についての判断の誤り)(1)

取消事由4で主張したとおり,
甲9文献には,
本件発明5の構成要素であ

る切削ローラハウジング(10)に対応する構成要素が開示されていない上,同期ガイドに関する記載も存しない。
(2)

したがって,
甲9文献の記載を根拠に,
相違点5及び7に係る本件発明1

1の構成を,当業者が容易に想到し得たということはできない。

第4
1
被告の主張
取消事由1(相違点1についての判断の誤り)について
(1)

動機付けがあること
甲6文献ないし甲8文献やその他の文献等によれば,道路切削機において,切削ローラを車体側に取り付けた上で,車輪の支柱を上下させて車体
の高さを調整することにより,切削ローラの路面に対する高さを調節する方法は,本件優先日時点における周知技術であった。また,切削ローラが一体化した駆動部を垂直方向に可動とすることにより,切削ローラの路面に対する高さを調節する方法も,本件優先日時点における周知技術であった。

そうすると,切削ローラの路面に対する高さを調節する方法として,車体を上下動させる構成又は切削ローラを昇降させる構成のいずれを採用するかは,当業者にとって二者択一の選択的事項でしかない。

切削ローラの路面に対する高さを調節する方法として,切削ローラを昇降させる構成に代えて車体を上下動させる構成を採用した場合,上下方向
変位用の油圧シリンダが不要となる。そうすると,同油圧シリンダを含まない別のフレーム等によって切削ローラとフレーム部との連結を実現する構成に置き換えることは,自然な設計的発想であるから,原告が主張するような困難さが生じるものではなく,当業者にとっては単なる設計事項にすぎない。


本件発明1については,検甲1発明の切削ローラを昇降させる構成に追加して,甲6文献ないし甲8文献に記載された車体を上下動させる構成を採用することが想定されているものではないから,構成の追加を論じる原告の主張は失当である。

(2)

阻害要因がないこと
検甲1発明から上下方向変位用の油圧シリンダを除いたとしても,車体
を上下動させる構成を採れば,切削ローラを上下方向に変位させることが可能であるから,同油圧シリンダを除くことについて阻害要因は存しない。イ
検甲1発明においては,上下方向変位用の油圧シリンダの下端に,水平方向変位用の油圧シリンダが取り付けられているものの,切削ローラを水平方向及び上下方向に移動するに当たり,これらの油圧シリンダが不可分
でなければならない技術的必然性はなく,これらが分離して設けられたとしても,切削ローラを水平方向及び上下方向に移動することに問題はない。ウ
検甲1発明において,上下方向変位用の油圧シリンダを,車体に固定したフレームや支柱等に置き換えるに当たって,当業者が試行錯誤を繰り返さなければならないということはない。

2
取消事由2(相違点2,3についての判断の誤り)について
(1)

構成g及び相違点2の認定について
検甲1発明の認定において,上下方向変位用の油圧シリンダは既に構成mにおいて認定されていること,構成gの車体の垂直,横断は4本の連結棒を指しているといえることからすれば,構成gにおいて,原告が主
張するような認定を加える必要はない。

また,原告が認定に加えるべきと主張する4本の連結棒は,平行リンク機構のことであるところ,平行リンク機構は,ハウジング部が上下又は左右に移動する際に,前後左右に傾かないようにする部材であり,当該技術は技術常識の範ちゅうに含まれるものであるから,当該構成が容易想到性
の判断に影響を及ぼすことはなく,認定の有無を議論する意味はない。(2)

相違点に係る構成が開示されていること
甲6文献ないし甲8文献に記載された道路切削機は,いずれも切削ローラ
の路面に対する高さを調節する方法として車体を上下動させる構成を採用したものである上,
相違点2及び3に係る本件発明1の構成を備えているから,
同各文献には,同構成が記載されているといえる。

(3)

阻害要因がないこと
取消事由1における主張と同じ。

(4)

検甲1発明の切削ローラ及びハウジング部の支持に関する本件審決の判
断に誤りはないこと

検甲1発明の切削ローラ及びハウジング部は,少なくとも道路を切削するという機能との関係において,垂直方向に移動しないように,本件発明1のような車体を上下動させる構成が採用されている道路切削機と同程度に,フレーム部に強固に支持されているといえる。また,検甲1発明において,切削ローラの高さを調節する方法として車体を上下動させる構成を採用した場合には,上下方向変位用の油圧シリンダが不要となるから,
同油圧シリンダが別の支持手段に置き換えられ,切削ローラ及びハウジング部が垂直方向にフレーム部に強固に支持される構造となる。

検甲1発明の切削ローラは,進行方向に移動せずに,進行方向に対して横断方向にのみ可動であるように,進行方向にフレーム部で強固に支持されている。また,検甲1発明において,相違点1に係る本件発明1の構成
を採用した場合には,切削ローラ及びハウジング部を水平に保つための平行リンク機構が不要となり,切削ローラ及びハウジング部が左右にスライドするようにフレーム部に直接支持される構造が採用されることとなるから,平行リンク機構の存在によって生じるずれの存在を考慮する必要はない。

仮に,平行リンク機構によるずれを考慮するとしても,それは,路面の状況次第では本件発明1においても生じ得る誤差の範囲内であり,克服すべき課題として提示されたこともないから,これを取り上げることに技術的な意味はない。
3
取消事由3(本件発明3についての進歩性判断の誤り)について
(1)

検甲1発明においては,
横断方向に2つの棒状ガイドが設けられ,
これら

のガイドは,上下方向変位用の油圧シリンダを介してハウジング部に取り付けられており,ハウジング部をこれらのガイドに沿って直線的に変位させることができるようになっている。
そして,うち1つの棒状ガイドには,水平方向変位用の油圧シリンダが取り付けられており,同ガイドは,位置を決めるために機能しているから,本
件明細書にいう位置決め軸受を画定しており,本件発明3の第1のガイドに相当する。また,水平方向変位用の油圧シリンダが取り付けられていない方の棒状ガイドは,本件明細書にいう非位置決め軸受を画定しており,本件発明3の第2のガイドに相当する。
(2)

本件発明3における第2のガイドは,
平面間に配置されるとされ

ているところ,この平面間とは,本件明細書の図3におけるガイド部の上下の平面のことを指し,ガイド部は,シフトテーブルを表している。そして,スライド機構としてシフトテーブルを用いることは,周知の技術にすぎない。
したがって,検甲1発明において,水平方向変位用の油圧シリンダが取り
付けられていない方の棒状ガイドを,シフトテーブルを用いた平面間に配置されるガイドに置き換えることは,当業者が容易に想到することができる。4
取消事由4(本件発明5に関する相違点5についての判断の誤り)について(1)

検甲1発明及び甲9文献に記載された事項は,いずれも道路切削機であ
り,コンベヤベルト手段や切削ローラの位置関係も同様である。また,切削された土砂等を切削ローラからコンベヤベルト手段に効果的に移行するようにすることは,自明の課題である。
そうすると,検甲1発明に対して甲9文献に記載されたベルト・シューを適用する動機付けが存在するといえる。

(2)

したがって,
検甲1発明において,
相違点5に係る本件発明5の構成とす

ることは,当業者が容易に想到することができる。

5
取消事由5(本件発明5に関する相違点5,6についての判断の誤り)について
(1)

相違点5が容易想到であることは,取消事由4で主張したとおりである。
(2)

コンベヤベルト手段とベルトシューとをどのように連結するかは,当業
者にとっては設計事項でしかない。また,本件発明6においては,関節連結
について具体的な構造が特定されていないところ,甲9文献においては,コンベヤベルトがコネクティング・ストラットによってベルト・シューに関節連結される技術が開示されている。
したがって,検甲1発明において,相違点6に係る本件発明6の構成とすることは,当業者が容易に想到することができる。

6
取消事由6(本件発明11に関する相違点5,7についての判断の誤り)について
(1)

相違点5が容易想到であることは,取消事由4で主張したとおりである。
(2)

甲9文献には,リンキング・ロッドがベルト・シューの両側の平行な案内
を同期させていることが記載されている。

したがって,検甲1発明において,相違点7に係る本件発明11の構成とすることは,当業者が容易に想到することができる。
第5
1
当裁判所の判断
本件各発明
(1)

特許請求の範囲
本件各発明の特許請求の範囲は,前記第2の2のとおりである。

(2)

本件明細書の記載
本件明細書には,次のとおり記載されている(甲17,38。図1ないし
5は,別紙本件明細書図面目録記載のとおりである。。


技術分野

【0001】

本発明は,請求項1の前文に記載の路面切削用の自走式道路

切削機,特に大型切削機,および請求項14の前文に記載の路面切削の方法に関する。

背景技術

【0002】約1500mm以上の切削幅を有する道路切削機は,例えば,
大型切削機と称される。このような道路切削機は重量が大きく,したがって,通常はクローラ式走行装置(crawler-typetravelinggears)を具備する車体により支持される。切削ローラは,前車軸の走行装置と後車軸の走行装置との間に車軸と離間した関係で機械フレームに支持される。大型切削機は,それぞれ前車軸と後車軸とを画定
する前側走行装置と後側走行装置とを含む高さ調節可能な車体を具備する。機械フレームは車体により支持され,切削ローラハウジングは,前側走行装置の車軸と後側走行装置の車軸との間で機械フレームに配置され,切削ローラハウジング内に回転自在に支持された単一のローラミルを具備する。切削ローラハウジングには,進行方向に見て,前方向に切削ロー
ラにより削り取られかつ排出された切削物を除去するためのコンベヤベルト手段がベルトシューを介して連結される。
【0004】

切削ローラハウジングの先端は,縁部または障害物のできる

だけ近くで切削が行われるようにするために,機械フレームの外側面,いわゆるゼロ側とほぼ面一である。切削ローラハウジングは,高い切削力ひいては大きな切削深さを生み出すために機械の全重量を切削ローラに伝達できるように,機械フレームに対して高さ調節可能ではない。
【0007】

右側通行の道路の場合,道路切削機のゼロ側を,進行方向に

見て,機械の右側に設けることが好ましい。左側通行の道路の場合には,ゼロ側を(進行方向に見て)左側に設けることが好ましい。旋回操縦のための十分な余地があるときには大型切削機を方向転換させることができ,したがって,進行方向に見て,右側にゼロ側を有する大型切削機を左側通
行の道路でも使用できることが理解される。これには,道路工事が行われる場合で道路を完全に閉鎖できないときに,進行方向に見て,右側にゼロ側を有する道路切削機が,交通の移動と逆方向に走行しなければならないという欠点がある。例えば,幹線道路で,左側車線をその道路の左側と面一に切削するときに,このような状況に遭遇する。これは,道路切削機の
前方で削り取られた物を受け取るトラックもまた,道路切削機の前面への交通の流れと逆方向に走行し,次いで,その場から離れなければならないという点で不利である。更に,狭路に関する場合,大型切削機の向きを変えずに,道路の左側または右側を選択的に切削できることがしばしば望まれる。


発明が解決しようとする課題

【0009】

本発明の目的は,より汎用的に使用可能であり,操縦性が改

善された上記タイプの自走式道路切削機および路面切削の方法を提供することである。

課題を解決するための手段

【0011】

本発明によれば,切削ローラ駆動ユニットは,切削ローラに

一体化された油圧駆動ユニットまたは電気駆動ユニットであることが好ましく,切削ローラは,切削ローラハウジングおよび切削ローラ駆動ユニットと共に,進行方向に対して横断方向に変位可能に機械フレームに支持され,ゼロ側は,機械フレームの一方の外側面またはその反対側の外側面に画定されるように適合される。
【0012】

本発明による解決策には,切削ローラを車体の車軸間に配置

することにより,実質的に機械の全重量が切削ローラに作用し,これにより,高い前進速度で大きな切削深さを達成できるという利点がある。切削ローラが変位可能であるので,進行方向を維持しながら,障害物に沿って右寄せまたは左寄せして選択的に工事を行うことができるように,ゼロ側
を一方の外側面またはその反対側の外側面に選択的に画定することができる。切削作業中に切削ローラを変位させることができ,このためには,切削ローラがその前縁に追加のチゼルツールを具備することが好ましい。切削ローラを切削ローラハウジングおよび切削ローラに一体化された切削ローラ駆動ユニットと共に,機械フレームの進行方向に対して横断方向に直線的に変位させる。機械フレームより下方での直線案内には,切削ローラの切削深さも切削ローラの左右傾斜も直線変位による影響を受けないという利点がある。これは,高さ調節可能な車体の助けによる道路切削機のレベル調整に対して重要である。本質的な利点は,必要であれば,修
正をするために機械フレームの位置だけを監視すればよいことである。別の利点は,作業を中断することなく作業中に切削ローラを変位させることができることである。
【0013】

切削深さは,高さ調節可能な車体を介して調節可能である。

機械フレームを介して切削ローラハウジングとの関連で切削ローラにより与えられる高圧荷重は,1回の通過の間に路面を完全に除去できるように,少なくとも30cmの切削深さを可能にする。
【0014】

ベルト駆動部と好ましくは2つのモータの切削ローラへの組

み込みとを含む通常の機械駆動概念からの転換を図ることで,進行方向を横断する切削ローラの位置を変化させることができる。
【0015】

切削ローラ駆動部を両端に,すなわち,切削ローラの先端に

一体化された2つの駆動手段を用いて実現することが好ましい。
【0016】

好ましくは,切削ローラハウジングを機械フレームの進行方

向に互いに間隔を置いて配置された2つのリニアガイドに沿って直線的に変位させる。
【0017】

正確な切削深さ調節を維持するために,2つのリニアガイド

により,切削ローラハウジングを機械フレームで強固に支持し,それによ
って切削ローラを上下方向に強固に支持することができる。更に,切削ローラハウジングは,切削ローラが進行方向に対して横断方向にのみ可動であるように進行方向に強固に支持される。
【0018】リニアガイドの第1のガイドは,
筒状ガイドであるとともに,
位置決め軸受を画定し,また,リニアガイドの第2のガイドは,2つの平面間に配置されたガイドであるとともに,非位置決め軸受を画定する。【0019】

したがって,切削ローラハウジングの支持体は,位置決め軸

受と非位置決め軸受とを具備し,非位置決め軸受の平面間の隙間が調節可能であってもよい。
【0020】

好ましくは,リニアガイドは,機械フレームより下方の位置

で機械フレームに固定される。
【0021】

リニアガイドが機械フレームより下方にある配置では,切削

ローラハウジングを介して機械の重量力を切削ローラに直接伝達でき,また,スペースを取らない方式でガイドを配置できるという利点がある。【0022】

切削ローラハウジングは,上下方向および進行方向に機械フ

レームに強固に固定される。
【0026】

コンベヤベルト手段の下端を受けるためのベルトシューを,

切削ローラハウジングに高さ調節可能に固定することができる。ベルトシューは,コンベヤベルト手段の下端が切削ローラハウジングの切削物排出開口に常に配置されるように,進行方向に対して横断方向へ切削ローラハウジングの移動に追従することができる。
【0027】

このために,コンベヤベルト手段がベルトシューに関節連結

(articulated)される。
【0028】
コンベヤベルト手段の下端をベルトシューに関節連結するた

めに,ベルトシューは,コンベヤベルト手段の下端の下側と協働する実質的に凹状,好ましくは球状の受けソケットを具備し,下側の形状は受けソ
ケットの形状に適合される。
【0029】

機械フレームにおけるコンベヤベルト手段の前側は,コンベ

ヤベルト手段の長手方向軸線に沿って長手方向に変位するように適合され,カルダン継手により支持される。
【0030】

コンベヤベルト手段は,その前側において,機械フレームが

水平方向に一直線となるときに垂直になる垂直軸線,および切削ローラ軸線に平行に延びる横軸線を中心に揺動するように適合される。
【0031】

少なくとも前側において,コンベヤベルト手段は,可撓性の

支持を確保するために,好ましくは凸状の軸受面を有しかつコンベヤベルト手段の長手方向に実質的に延びるコンベヤベルト側支持要素を下側に
具備し,前記支持要素が,横方向に案内されるとともに,好ましくは凸状の支持面を有しかつ進行方向に対して横断方向に機械フレームに固定されたフレーム側支持要素に載置される。軸受面および支持面は,カルダン継手を画定し,このカルダン継手には,コンベヤベルト手段の長手方向軸線を中心とした僅かなローリング運動でさえ可能であるという追加の利
点がある。
【0032】

コンベヤベルト側支持要素および/またはフレーム側支持要

素を,丸みを帯びた断面の形状または中空形状により画定することができる。これらの支持要素は,好ましくは,互いの上部に載せられ,これにより,コンベヤベルト手段の長手方向軸線に沿った変位を許容する点支持を
可能にする。
【0033】

ベルトシューは,同期ガイドを介して高さ調節可能であるこ

とが好ましい。昇降のためのベルトシューの案内は,ベルトシューの右側および左側で同じ量だけ同期的に高さ調節がなされる直線案内の形で実行される。


発明を実施するための形態

【0042】

図1は,機械フレーム8と,進行方向31に見て,前側走行

装置5および後側走行装置6を含む車体4とを具備する道路切削機1,特に大型切削機を示している。走行装置5,6は,操舵可能な前車軸および操舵可能な後車軸を画定する。車体4は,昇降支柱7を介して機械フレーム8に連結され,昇降支柱7の助けにより機械フレーム8から路面2までの距離が調節可能である。各車軸は,少なくとも1つのクローラ式走行装置5,6またはホイール式走行装置を具備する。
【0043】

削り取られた切削物を除去するための垂直にかつ横方向に揺

動可能なコンベヤベルト手段18が,進行方向に見て,道路切削機1の前側に配置される。
【0044】

車体4の前側走行装置5および後側走行装置6は,クローラ

式走行装置またはホイール式走行装置であってもよい。
【0045】

機械フレーム8は,道路切削機1の長手方向中心軸線に実質

的に垂直にかつ平行に延在する横外側面26,
28を備える。
外側面26,
28は,道路切削機1の長手方向中心軸線に完全に垂直にかつ全く平行に延在する必要はなく,多少のずれは許容できることが理解される。外側面26,28は一体であることが好ましく,外側面26と28が同一平面に存在することが好ましい。
【0046】

切削ローラ軸と共に,切削ローラハウジング10内に支持さ

れる切削ローラ12は,走行装置5,6間に配置される。
【0047】

切削ローラ12の一方の先端22は,図1にゼロ側として示

す機械フレーム8の外側面26,28にまで及ぶ。ゼロ側において,道路縁部または障害物の極めて近くで切削を行えるように,切削ローラ12の対応する先端22は,道路切削機1の外側面の極めて近くに位置決めされる。
【0050】

切削ローラ12は,進行方向31に見て,前側走行装置5と

後側走行装置6との間の中央に配置されることが好ましい。
【0051】

切削ローラ12はツール13を備える。切削ローラ12は,

図2の右側から見て時計回りの方向に回転する。
【0057】
図1において,切削ローラハウジング10が,ストリッパシ

ールド64を上昇させた状態で示されており,切削ローラ12の位置を示すために側部シールド15もまた上昇させている。切削ローラハウジング10は,機械フレーム8に支持されて,進行方向31に対して横断方向に直線的に変位するように適合され,これにより,ゼロ側を機械フレーム8の一方の外側面26,28またはその反対側の外側面26,28に選択的
に画定することができる。
【0058】

切削ローラハウジング10の変位は,機械フレーム8の進行

方向に互いに間隔を置いて配置され,リニアガイドとして構成された2つのガイド34,36の助けにより行われる。
【0059】
リニアガイド34の第1のガイドは,図2~図4において,

切削ローラハウジング10の上側に配置された筒状ガイドである。【0060】

第2のリニアガイド36もまた,切削ローラハウジング10

の上側に離間した関係で配置される。図2および図3で最も良く分かるように,平面37,38間で直線案内が行われる。平面37は,フランジ部41を用いて機械フレーム8の下側の適所に固定された梁39の上側と下側の両方に設けられる。平面37は,切削ローラハウジング10の適所に固定され,かつ梁39の平面37と接している平面38を具備するガイド部43により取り囲まれる。平面37と接している平面38の間隔は,ガイド部43の助けにより平面37と38との間の隙間を調節できるようにして調節可能である。

【0061】

第1のリニアガイド34の筒状ガイドが位置決め軸受を画定

する一方で,第2のリニアガイド36は,非位置決め軸受を画定する。
【0062】

筒状ガイドは,フランジ部42を介して機械フレーム8の下

側の適所に固定された内管33からなり,切削ローラハウジング10の適所に固定された中空シリンダ35は,この内管33上を摺動することができる。
【0063】

一端が機械フレーム8に固定され,他端が切削ローラハウジ

ング10に固定されたピストンシリンダユニット45は,道路切削機1の外側面に対して左寄せまたは右寄せする切削ローラ12の位置間で,切削ローラ12と,コンベヤベルトユニット18の下端44を含めた図2および図3に示す切削ローラハウジング10のその他の要素とを含む切削ローラハウジング10のユニット全体を変位させるように適合されている。【0064】

ピストンシリンダユニット45のストロークは,約500m

m~約1000mmの範囲であることが好ましい。これはつまり,図2および図3に示す全ての構成要素を含む切削ローラハウジング10を,進行方向31に対して横断方向に,この移動距離だけ変位させることができることを意味する。
例えば,
切削ローラ12の先端が,
進行方向31に見て,
機械の左側でかつ外側面26,28の反対側または近傍の位置にある場合,機械のゼロ側は左側に設けられる。
【0065】

ピストンシリンダユニット45のストロークは,大型切削機

では,約1500mm以上,典型的には2000mmである切削ローラ12の幅に関連して考慮される。ピストンシリンダユニット45は,切削作業中であっても,切削ローラ12を含む切削ローラハウジング10を変位させるのに十分に大きな力を発揮することができる。このために,切削ローラのそれぞれの先端に追加のツール13を設けてもよい。
【0066】

機械フレーム8の進行方向に見て,互いに離間した関係で配

置された2つのリニアガイド34,36は,できるだけ互いに間隔を置いて配置されることが好ましい。これらのリニアガイドは,大きな切削深さ
で大きな切削力を生み出すために,切削ローラハウジング10と切削ローラハウジングに支持された切削ローラ12とに機械重量を伝達することができる。
【0067】

リニアガイド34,36を組み合わせることで,発生する力

とトルクを最適に吸収することが可能になる。

(3)

本件各発明の特徴
以上によれば,本件各発明は,次のとおり理解することができる。

本件各発明は,路面切削用の自走式道路切削機,特に大型切削機及び路面切削の方法に関するものである。【0001】




約1500mm以上の切削幅を有する大型切削機には,高さ調節可能な車体により支持された機械フレームが具備されている上,切削ローラハウジングが前側走行装置の車軸と後側走行装置の車軸との間で機械フレームに配置され,切削ローラハウジング内に回転自在に支持された単一のローラミルが具備されている。また,切削ローラハウジングには,進行方向の前方向に,切削ローラにより削り取られ,かつ排出された切削物を除去
するためのコンベヤベルト手段が,ベルトシューを介して連結される。(
【0002】


上記のような大型切削機の切削ローラハウジングの先端は,縁部又は障害物のできるだけ近くで切削が行われるようにするために,機械フレーム
の外側面,いわゆるゼロ側とほぼ面一とされている。そして,ゼロ側は,通行する車線側に設けることが好ましいとされており,旋回操縦のための十分な余地があれば,方向転換をすることにより,ゼロ側とは反対側の車線を切削することができる。
しかしながら,工事が行われる道路を完全に閉鎖できない場合には,切
削をする車線の進行方向とは逆方向に走行しなければならないという欠点がある。また,狭路を切削する場合,切削機の向きを変えずに,道路の
左側又は右側を選択的に切削できることがしばしば望まれる。

【0004】【0007】



本件各発明の目的は,より汎用的に使用可能であり,操縦性が改善された上記タイプの自走式道路切削機及び路面切削の方法を提供することである。【0009】




本件各発明は,切削ローラを,切削ローラハウジング及び切削ローラ駆動ユニットと共に,進行方向に対して横断方向に変位可能なように,機械フレームに支持し,ゼロ側を一方の外側面又はその反対側の外側面に選択的に画定することができるようにすることにより,進行方向を維持しながら,障害物に沿って右寄せ又は左寄せして選択的に工事を行うことを可能
とする。【0011】【0012】




本件各発明は,切削ローラを車体の車軸間に配置して実質的に機械の全重量を切削ローラに作用させることにより,高い前進速度で大きな切削深さを達成することができるという利点を有する。切削深さは,高さ調節可能な車体を介して調節可能である上,本件各発明においては,少なくとも
30cmの切削深さを得ることができる。【0012】【0013】(



本件各発明においては,正確な切削深さ調節を維持するために,2つのリニアガイドにより,切削ローラハウジングが上下方向に機械フレームに強固に支持され,
これにより,
切削ローラが上下方向に強固に支持される。
また,切削ローラハウジングは,切削ローラが進行方向に対して横断方向
にのみ可動であるように,
進行方向に強固に支持される。

【0016】

【0
017】【0022】


2
検甲1発明並びに本件各発明と検甲1発明との一致点及び相違点
(1)

検甲1発明
証拠(甲1ないし5,11,28)及び弁論の全趣旨によれば,検甲1発
明は,本件優先日よりも前に公然知られた発明又は公然実施された発明であ
ること,同発明の内容は,構成gを以下のとおり認定するほかは(本件審決における認定との相違部分に下線を付した。,
)本件審決が認定したとおり
(前
記第2の3(2)ア)であることが認められる。

g切削ローラ及びハウジング部は,車体の垂直,横断及び進行方向に,上下方向変位用の油圧シリンダが取り付けられた2つの棒状ガイド及び4本の連結棒を介して,フレーム部によって支持されている。

(2)

本件各発明と検甲1発明との一致点及び相違点
上記1及び上記(1)によれば,本件各発明と検甲1発明との一致点及び相
違点については,相違点2を以下のとおり認定し(本件審決における認定との相違部分に下線を付した。,本件発明3につき新たに以下の相違点Aを認)

定するほかは,本件審決が認定したとおり(前記第2の3(2)イ)であると認められる。

相違点2
切削ローラに関して,
本件発明1は
前記切削ローラハウジング(10)と共に,前記切削ローラ(12)が垂直及び進行方向に移動しないように垂直および進行方向に前記機械フレーム(8)で強固に支持されているのに対し,検甲1発明は切削ローラ及びハウジング部は,車体の垂直,横断及び進行方向に,上下方向変位用の油圧シリンダが取り付けられた2つの棒状ガイド及び4本の連結棒を介して,フレーム部によって支持されている点。


相違点A
非位置決め軸受を確定するガイドが,本件発明3では平面間に配置されるガイドであるのに対し,検甲1発明では棒状ガイドである点。

3
周知技術等
(1)

甲6文献
本件優先日よりも前に頒布された刊行物である甲6文献には,次の事項
が記載されている(甲6。図1ないし5は,別紙甲6文献図面目録記載のとおりである。。

(ア)

発明の属する技術分野

【0001】
本発明は,舗装道路の掘削方法に関し,詳しくは,舗装道

路において亀裂などが入った表層の補修部分を効率よく剥離し,剥離に伴う掘削物を効率よく回収し,
このことで,
補修箇所に掘削物が残留し,
これらを除去するための多大な労力及び人手をなくそうとする技術に係るものである。
(イ)

発明の実施の形態

【0008】

以下本発明の舗装道路の掘削方法の一実施の形態を実施し

た掘削作業車の一例の図面に基づいて詳述する。図1は全体平面図を示し,図2及び図3は全体側面図を示している。走行車体1には搭載された原動機にて駆動される車輪6が装備され,操作部によるハンドル操作にて一般車両として走行できるようにしてある。走行車体1にはガイド脚9が例えば4本立設され,このガイド脚9を介して昇降基体10が油圧駆動にて昇降できるようにしてある。昇降基体10には,舗装道路の表層のアスファルト層a及び下地層を剥離するとともに掘削し,その破砕物を順次取出す回転掘削放出手段3と,移送取出し手段4並びに搬出手段5が搭載されて,破砕物を伴走する大型ダンプカーなどに走行しな
がら移載できるようにしてある。以下,種々の手段の構成を詳述する。【0009】

図5乃至図8は回転掘削放出手段3を示していて,回転掘

削放出手段3は,回転ドラム3aに掘削爪3bが複数条の螺旋条に植設された回転カッター3cに構成されている。・
・・回転掘削放出手段3は,
そのハウジング3dを介して昇降基体10の後部に搭載されていて,昇降基体10を走行車体1に対して下降させることで,回転カッター3cを路面レベルよりも下方に下降させ,回転カッター3cが後方から前方
上方に高速回転されることで,舗装道路の表層のアスファルト層a及び下地層をを(判決注:
下地層をの誤記と認める。
)掘削し,直径が約
20mm程度の粒径に破砕された破砕物を回転カッター3cの全巾において掘削とともに前方上方に放出することができるようにしてある。【0013】

回転掘削放出手段3のハウジング3dは,昇降基体10の

前後のスライドレール11,11の上にスライド移動自在に載置され,ハウジング3dの両端部が,図9に示すようなチェーン12に連結され,このチェーン12を昇降基体10に搭乗している作業者の操作により,スプロケット13を油圧モータ16を介して油圧駆動して,巻回しているチェーン12を往復動させ,回転掘削放出手段3を車巾方向の任意の
箇所に移行させ,しかして,走行車体1は一定位置を走行しながら,掘削位置を変更することができるようにしてある。このように,回転掘削放出手段3を車巾方向に移行させることで,道路の表層の亀裂の蛇行に容易に追随させることができ,一度の走行で,亀裂に沿った掘削がおこなえるものである。


上記アによれば,甲6文献には,次のような構成を備えた自走式の舗装道路の掘削作業車が記載されているものと認められる。
(ア)

走行車体に4本のガイド脚が立設され,このガイド脚を介して昇降
基体が油圧駆動によって昇降することができる。
(イ)

舗装道路のアスファルト層及び下地層を剥離し,掘削するために高
速回転する回転カッターが,ハウジング部を介して,昇降機基体の後部に搭載されている。
(ウ)

昇降基体を走行車体に対して下降させることで,回転カッターを下
降させることができる。
(エ)

ハウジング部は,昇降基体の前後のスライドレール上に移動自在に
載置され,車幅方向の任意の箇所に移行させることができる。

(2)

甲7文献


本件優先日よりも前に頒布された刊行物である甲7文献には,次の事項が記載されている(甲7。図1は,別紙甲7文献図面目録記載のとおりである。。

(ア)

技術分野

【0001】

本発明は,請求項1および12のそれぞれのプリアンブル

部に記載の自動路面切削装置,とくには大型の自動路面切削装置に関する。
(イ)

発明を実施するための最良の形態

【0033】

図1が,路面切削装置1を示しており,とくには装置フレ

ーム4と,操舵可能なフロントアクスル2およびやはり操舵可能なリアアクスル3を備える車台とを有する大型の切削装置を示している。車台は,装置フレーム4の地面または路面8からの距離の調節を可能にする昇降支柱32を介して,装置フレーム4へと接続されている。
【0037】

地面または路面8を切削するための切削ドラム6が,切削

ドラム軸7を装置フレーム4に支持させて,履帯ユニット30の間に配置されている。切削ドラム6の一方の端面が,ゼロ側12と呼ばれる装置フレーム4の外側まで達する一方で,切削ドラム6のための駆動装置は,装置フレーム4の反対側の外壁に配置されている。

上記アによれば,甲7文献には,次のような構成を備えた自走式の舗装道路の掘削作業車が記載されているものと認められる。
(ア)

車台が,装置フレームの地面又は路面からの距離の調節を可能とす
る昇降支柱を介して,装置フレームへと接続されている。
(イ)

地面又は路面を切削するための切削ドラムが,切削ドラム軸を装置
フレームに支持させて,履帯ユニットの間に配置されている。

(3)

甲8文献


本件優先日よりも前に頒布された刊行物である甲8文献には,次の事項が記載されている(甲8。図面は,別紙甲8文献図面目録記載のとおりである。。

(ア)
(イ)

中型路面切削機CRP-160L型
(72頁の表題)

・・・ここで中型機と言える1.6mの切削幅を持つCRP-160Lを紹介する。2.仕様および構造・・・4本のタワーシリンダーにより車体の昇降を行い,フレーム中央の切削ドラムにより切削を行い・・・

(72頁左欄9行~18行)

(ウ)

(5)切削ドラムユニット切削ドラムは右サイドの減速機付油圧モータと左サイドの重荷重用ローラベアリングに支持されシフトテーブルに取付けられている。・・・また,このドラムユニットは左右,計400mmのシフトができ,左サイドを基準として外に150mm出すことが可能である。このことにより縁石へのフラッシュカットや切削面の障害物の回避を容易にしている。(74頁右欄2行~13行)

上記アによれば,甲8文献には,次のような構成を備えた自走式の中型路面切削機が記載されているものと認められる。
(ア)

4本のタワーシリンダーにより車体の昇降を行い,フレーム中央の
切削ドラムにより切削を行う。
(イ)

切削ドラムは,シフトテーブルに取り付けられており,左右に計4
00mmのシフトができる。
(4)

甲9文献
本件優先日よりも前に頒布された刊行物である甲9文献には,次の事項が記載されている(甲9。図1ないし4は,別紙甲9文献図面目録記載の
とおりである。。

(ア)

発明の詳細な説明

【0001】

本発明は,請求項1の前文に定義した,地表面,特に車道

を粉砕する装置に関する。
【0018】

以下に,本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説

明する。
【0019】

図1は,地表面2,特にアスファルト車道,コンクリート

車道等を粉砕する装置を示し,この装置は,機械フレーム6を支持するトラック・アセンブリ4と,機械フレーム6で支持され,トラック・アセンブリ4の走行方向に対して横向きに延在する粉砕ロール8とを備える。粉砕の深さは,後輪の垂直方向調節によって設定される。この種の機械は,粉砕された材料を走行方向前方に搬送して運搬車両に載せるので,フロント・ローダ粉砕機と称される。粉砕ロール8の前方走行方向に,コンベヤベルト12付きの第1の搬送手段10が配置され,機械
フレーム6のシャフト内に傾斜を付けて配され,粉砕された材料を別のコンベヤ・ベルト15を有する第2の搬送手段14に搬送する。第2の搬送手段14は,可変傾斜角度内で縦方向調節可能であり,さらに横方向に,たとえば±30度旋回するのに適し,それによってフロント・ローダ粉砕機の脇に停車した運搬車両に積載することができる。

【0020】

粉砕された材料をほぼすべて運搬するため,粉砕ロール8

はロール・ケーシング18によって囲繞され,ケーシングの走行方向の壁に粉砕材料の通過開口22が設けられる。通過開口22は,粉砕深度の変更時であっても常に粉砕ロール8に対して同じ位置にある。
【0021】
粉砕ロール8は,螺旋状に配置された掘削工具を備え,粉

砕材料がロール・ケーシング18の通過開口22へと運搬されるように配置される。

【0022】

ベルト・シュー16が機械フレーム6に縦方向調節可能に

取り付けられる。ベルト・シュー16の縦方向調節は,機械フレーム17に取り付けられたピストン・シリンダ・ユニット17によって行う。このピストン・シリンダ・ユニットを用いることによって,ベルト・シューは垂直方向に持上げることができ,たとえば障害物等を越えることができる。この場合,ベルト・シュー16は下降させることはできず,所望時に上昇のみ可能である。粉砕深度が増した場合には,ベルト・シュー16の位置は地表に接することによって自動的に設定される。【0023】

ベルト・シュー16は,搬送手段10の粉砕ロールに面す

る端部を収容する。搬送手段10の後端は,ベルト・シュー16と搬送手段10の間の固定点で支持される。ベルト・シュー16前端の両側にコネクティング・ストラット20が設けられ,搬送手段10に対するベルト・シュー16の旋回を防止する。
【0024】

ベルト・シュー16は,地表と平行に延在し,押さえ手段

およびスライディング・シューの役をするグリッド28により構成される。グリッド28は,走行方向に平行に配向された複数のグリッド・バー32を備える。グリッド28の両側は,垂直方向の側壁33によって限定される。ベルト・シュー16の後端で,フロント・シート35が搬送手段10のコンベヤ・ベルト12とほぼ平行に延在する。ベルト・シ
ューの後端に,コンベヤ・ベルト12を保護する保護シールド34が配置され,
縁が鋭利な材料によるコンベヤ・ベルト12の損傷を防止する。
走行方向にわずかに傾斜したシールド42には,上部にU字形のリセスがあり,浮いた材料の通過開口を形成する。
【0025】

図4に最もよく示してあるように,粉砕ロール8を囲繞す

るロール・ケーシング18に補完リセスがあり,浮いた材料の通過開口22を備える。

【0026】

ピストン・シリンダ・ユニット17の一端はベルト・シュ

ー16の側壁33に蝶着され,他端は機械フレーム6に固定される。ピストン・シリンダ・ユニット17は,コネクティング・ストラット20に実質的に平行に延在し,ベルト・シュー16および搬送手段10によって形成される構造ユニットの持上げ手段の役をする。ピストン・シリンダ・ユニット17の傍らでは,第1のコネクティング・ロッド24が側壁33に蝶着され,このコネクティング・ロッドは第2のコネクティング・ロッド26に蝶着される。
第2のコネクティング・ロッド26は,
機械フレーム6に蝶着される。第2のコネクティング・ロッド26は,
トグル・レバー状に屈曲し,トグル部でリンキング・ロッド30を介してベルト・シュー16の他方の側の対応する第2のコネクティング・ロッド26に接合される。したがって,コネクティング・ロッド30(判決注:
リンキング・ロッド30の誤記と認める。
)はベルト・シュー
16の両側の平行な案内を同期させる。ピストン・シリンダ・ユニット
17およびコネクティング・ストラット20は,ベルト・シューの両側に設けられる。
コネクティング・ロッド24および26によってベルト・
シューが平行に案内されるため,シールド42は極くわずかに旋回できるのみで,その下向きの運動は走行方向に延在する突条44によって制限される。最低位置で,突条44は当り止め36に当接する。また,ロ
ール・ケーシング18の当り止め38は,ベルト・シュー16の粉砕ロール8側への運動を制限する。
(イ)

図面の簡単な説明

【図1】
【図2】
本発明による地表面粉砕装置を示す図である。
最大粉砕深度における粉砕ロールに対するベルト・シューの機

械フレーム内の位置を示す模式図である。
【図3】

最小粉砕深度におけるベルト・シューの位置を示す図である。

【図4】

図1のIV-IV線に沿った上面図である。

上記アによれば,甲9文献には,次のような構成を備えた自走式のアスファルト車道等の粉砕装置が記載されているものと認められる。
(ア)

機械フレーム6を支持するトラック・アセンブリと,機械フレーム
で支持され,トラック・アセンブリの走行方向に対して横向きに延在す
る粉砕ロールとを備える。
(イ)

粉砕ロールの前方走行方向に,コンベヤベルト付きの第1の搬送手
段が配置されており,搬送手段の粉砕ロールに面する端部を収容するベルト・シューが,縦方向に調節することが可能なように,機械フレームに取り付けられている。

(ウ)

ベルト・シューの側壁に第1のコネクティング・ロッドが蝶着され,
第1のコネクティング・ロッドは,第2のコネクティング・ロッドに蝶着され,第2のコネクティング・ロッド26は,機械フレーム6に蝶着されている。
(エ)

第2のコネクティング・ロッドは,トグル・レバー状に屈曲し,ト
グル部でリンキング・ロッドを介してベルト・シューの他方の側に対応する第2のコネクティング・ロッドに接合される。これにより,リンキング・ロッドは,ベルト・シューの両側の平行な案内を同期させる。4
取消事由1及び2(相違点1ないし3の容易想到性)について
(1)

検討
前記のとおり,相違点1は,切削ローラの路面に対する高さを調節するための機構に関するものであるところ,相違点2は,切削ローラの移動方向を踏まえた切削ローラ及びこれを支持する切削ローラハウジングとフレームとの支持構造に関するものであり,また,相違点3は,切削ローラ
に一体化された切削ローラ駆動ユニットの可動方向を踏まえた同ユニットの支持構造に関するものである。

そうすると,これらは相互に密接に関連するものといえるから,相違点1ないし3の容易想到性については,併せて判断するのが相当である。イ
そこで検討するに,上記2(1)のとおり,検甲1発明においては,切削ローラ及び切削ローラと一体化した駆動部がハウジング部に支持され,ハウ
ジング部は,上下方向変位用の油圧シリンダが取り付けられた2つの棒状ガイド及び4本の連結棒を介してフレーム部に支持されているところ,切削ローラの路面に対する高さの調節に関しては,切削ローラを油圧シリンダ等の駆動機構によって垂直方向に移動させる構成が採られている。これに対し,本件発明1においては,上記1(3)のとおり,切削ローラ及
び切削ローラハウジングが上下方向及び進行方向に機械フレームに強固に支持されているところ,切削ローラの路面に対する高さの調節に関しては,切削ローラを車体の上下動によって垂直方向に移動させる構成が採られている。
そして,本件優先日時点において,これらの方法以外に,自走式道路切
削機における切削ローラの路面に対する高さを調節する方法があったことをうかがわせる証拠は存しないから,当業者としては,上記2つの方法のいずれかを採るほかなかったものといえる。そうすると,これらの方法のいずれを採るかは,当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎないというべきである(なお,切削ローラを上下させるために,油圧シリンダ等によ
り切削ローラそのものを垂直方向に移動させることは誰しも思いつくところであるといえるし,また,上記3(1)ないし(3)によれば,甲6文献ないし甲8文献には,いずれも,自走式道路切削機における切削ローラの路面に対する高さを調節する方法として,車体の上下動を用いる構成を採ることが記載されていることからすれば,本件優先日当時の自走式道路切削
機の技術分野において,同構成は,周知の技術であったといえる。したがって,これらの2つの方法のうちいずれかを採用することには技術的創意
を要するから設計事項には当たらないなどといった議論は成り立たない。。

これらの事情を考慮すると,検甲1発明において,相違点1に係る本件発明1の構成を採ることは,容易に想到し得るものであったといえる。ウ
また,検甲1発明において,切削ローラの路面に対する高さを調節する方法として,上下方向変位用の油圧シリンダを用いる構成に代えて,車体の上下動を用いる構成を採る場合には,ハウジング部を垂直方向に移動させるための機構であった同油圧シリンダが不要となるところ,同油圧シリンダが設置されていた棒状ガイドとフレーム部との間に,敢えて新たな別の部材を設置する必要はない。そうすると,当業者としては,棒状ガイド
をフレーム部で直接支持するような構造を採ろうとするのが自然な技術的発想であるといえる。
そして,上記のように,検甲1発明において,棒状ガイドをフレーム部で直接支持するような構造を採る場合には,切削ローラ及びハウジング部は,横断方向にのみ移動することができるようにすればよいのであって,
敢えてこれらを垂直方向又は進行方向にも移動することができるようにする必要はない。そうすると,当業者としては,切削ローラ,ハウジング部及び切削ローラと一体化した駆動部を,垂直方向及び進行方向に移動しないように,垂直方向及び進行方向にフレーム部で強固に支持し,進行方向に対して横断方向にのみ変位可能に支持する構造を採ろうとするのが
自然な技術的発想であるといえる。

以上によれば,検甲1発明において,相違点1に係る本件発明1の構成を採った場合には,必然的に,相違点2及び3に係る本件発明1の構成を採ることとなるというべきである。

したがって,検甲1発明において,相違点2及び3に係る本件発明1の構成を採ることは,相違点1と同様に,容易に想到し得るものであったと
いえる。
(2)

原告の主張について
相違点1に関する主張
(ア)

原告は,切削ローラを昇降させる構成は,道路切削機である検甲1
発明の主たる構成であるところ,このような主たる構成を排除して,それとは両立しない車体を上下動させる構成に置き換えることを当業者が想到するはずはなく,そのような動機付けは生じない旨主張する。しかしながら,既に説示したとおり,切削ローラの路面に対する高さを調節する方法として,切削ローラそのものを上下させる構成を採用す
るか,車体を上下動させる構成を採用するかは設計事項にすぎないというべきであるから,動機付けについて論ずるまでもなく,いずれを採用することも容易というべきである。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
(イ)

原告は,検甲1発明には既に切削ローラを昇降させる構成が備えら
れているから,更に車体を上下させる構成を追加するという動機付けは生じ得ない旨主張する。
しかしながら,上記(1)において検討したのは,検甲1発明において,上下方向変位用の油圧シリンダを残したまま,車体を上下動させる構成を追加するという方法ではない。
したがって,原告の上記主張は,その前提を欠く。

(ウ)

原告は,検甲1発明において,切削ローラを昇降させる構成に代え
て車体を上下動させる構成を採用するためには,無数の煩雑な作業が必要となるから,同構成の採用は単純な設計事項であるとはいえない旨主張する。
しかしながら,
上記(1)において検討したとおり,
本件優先日当時の当
業者は,道路切削機における切削ローラの路面に対する高さを調節する
ための方法として,上記の各構成のいずれかを選択するほかなかったといえるところ,いずれを選択するかは正に設計事項であるというべきである。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
(エ)

原告は,検甲1発明において,上下方向変位用の油圧シリンダは,
水平方向変位用の油圧シリンダと一体となって,切削ローラを横断方向に移動させる機能も果たしているため,車体を上下動させる構成を採用することに伴って上下方向変位用の油圧シリンダが除かれると,検甲1発明における最大のドラムシフト量450mmを実現することができなくなり,検甲1発明の機能が損なわれてしまうから,車体を上下動させ
る構成を選択し,これに伴って上下方向変位用の油圧シリンダを除くことについては阻害要因が存在する旨主張する。
しかしながら,検甲1発明において,切削ローラの路面に対する高さ調節の方法として車体を上下動させる構成を採用し,これに伴って上下方向変位用の油圧シリンダを除くこととなった場合であっても,切削ロ
ーラの横断方向の移動を全て水平方向変位用の油圧シリンダによって行うことにより,十分なドラムシフト量を確保することができるように設計することが技術的に困難であるというべき証拠は存しない。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。

相違点2及び3に関する主張
(ア)

原告は,甲6文献ないし甲8文献には相違点2及び3に係る本件発
明1の構成が開示されていない旨主張する。
しかしながら,
上記(1)で検討したとおり,
甲6文献ないし甲8文献に
おいては,道路切削機の切削ローラの路面に対する高さを調節する方法として車体を上下動させる構成が開示されており,当業者は,検甲1発明において相違点1に係る本件発明1の構成を採ることを容易に想到し
得るところ,自然な技術的発想に基づけば,同構成を採ることによって必然的に相違点2及び3に係る本件発明1の構成を採ることとなるのであるから,甲6文献ないし甲8文献において相違点2及び3に係る本件発明1の構成が直接的に開示されているか否かは,前記の判断を左右しないというべきである。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
(イ)

原告は,検甲1発明において,発明の本質的部分に当たる上下方向
変位用の油圧シリンダを除いてしまうと道路切削機としての機能を失うことになること,同油圧シリンダを除いて他の構造に置き換え,又は4本の連結棒を除いてしまうと最大のドラムシフト量を実現することができなくなることから,検甲1発明において相違点2及び3に係る本件発明1の構成を採ることには阻害要因が存在する旨主張する。
しかしながら,上記ア(ア)及び(エ)で検討したところに照らせば,原告が指摘する各点はいずれも理由がない。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。

(ウ)

原告は,検甲1発明のハウジング部は上下方向変位用の油圧シリン
ダを介してフレーム部に支持されており,垂直方向にフレーム部に強固に支持されているものではない旨主張する。
しかしながら,
上記(1)で検討したとおり,
検甲1発明において相違点
1に係る本件発明1の構成を採った場合,
自然な技術的発想に基づけば,
必然的に相違点2及び3に係る本件発明1の構成を採ることとなるのであって,この場合には上下方向変位用の油圧シリンダは除かれるのであるから,検甲1発明のハウジング部が同油圧シリンダを介してフレーム部に支持されていることが,前記の結論を左右するものではないという
べきである。
この点を措くとしても,そもそも,検甲1発明における上下方向変位
用の油圧シリンダは,切削作業中は油路が閉鎖されて上下動しないよう設計されているものと考えられるから,検甲1発明のハウジング部は,垂直方向にフレーム部に強固に支持されているものというべきである。したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
(エ)

原告は,検甲1発明においては,平行リンク機構が採用されている
ため,切削ローラが,進行方向に対して横断方向にのみ可動であるように進行方向にフレーム部で強固に支持されているものではない旨主張する。
しかしながら,
上記(1)で検討したとおり,
検甲1発明において相違点
1に係る本件発明1の構成を採った場合,
自然な技術的発想に基づけば,
必然的に相違点2及び3に係る本件発明1の構成を採ることとなり,この場合には,上下方向変位用の油圧シリンダが除かれることとなる。そして,平行リンク機構は,同油圧シリンダによってハウジング部を上下に移動させる際にハウジング部の平行を保つための機構であるから,同
油圧シリンダを用いないのであれば,平行リンク機構も不要となるというべきである。そうすると,検甲1発明において相違点1に係る本件発明1の構成を採った場合には,上下方向変位用の油圧シリンダのみならず,平行リンク機構も除こうとするのが自然な技術的発想であるといえる。

以上によれば,検甲1発明において平行リンク機構が用いられていることが,前記の結論を左右するものではないというべきである。
この点を措くとしても,そもそも,平行リンク機構によって生じる切削ローラの進行方向への変位は,
不可避的に生じる微小な変位にすぎず,
切削作業に影響を与えるようなものではないというべきであるから,検
甲1発明の切削ローラは,水平方向にフレーム部に強固に支持されているものというべきである。

したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
(3)

小括
以上によれば,本件優先日当時の当業者は,検甲1発明において相違点1ないし3に係る本件発明1の構成を採ることを,容易に想到することができたものといえる。


また,相違点1ないし3のみが検甲1発明との相違点である本件発明2及び12ないし14についても同様に,本件優先日当時の当業者は,相違点1ないし3に係る各発明の構成を採ることを,容易に想到することができたものといえる。


したがって,本件発明1,2及び12ないし14は,いずれも進歩性を欠くものといえる。

5
取消事由3(本件発明3の進歩性)について
(1)

検討
相違点の認定について
(ア)

上記1(2)によれば,本件発明3における第1のガイドは,切削
ローラハウジングの横断方向の位置決めをするための筒状ガイドであるところ(本件明細書【0016】ないし【0018】,上記2(1)のと)
おり,検甲1発明のハウジング部に取り付けられた2つの棒状ガイドのうち水平方向変位用の油圧シリンダが取り付けられた棒状ガイドは,ハウジング部の横断方向の位置決めをすることができる。
したがって,検甲1発明の2つの棒状ガイドのうち水平方向変位用の油圧シリンダが取り付けられた棒状ガイドは,本件発明3の第1のガイドに相当する。(イ)

また,
上記1(2)によれば,
本件発明3における
第2のガイド
は,

切削ローラハウジングの横断方向の位置決めをする機能を有さず,2つの平面間に配置されたガイドであるところ(本件明細書【0018】,)

上記2(1)のとおり,
検甲1発明の水平方向変位用の油圧シリンダが取り
付けられていない方の棒状ガイドは,ハウジング部の位置決めをする機能を有しない。
したがって,検甲1発明の2つの棒状ガイドのうち水平方向変位用の油圧シリンダが取り付けられていない方の棒状ガイドは,本件発明3の
第2のガイドに相当する。
(ウ)

もっとも,本件発明3及び検甲1発明は,位置決め機能を有しない
ガイドが,本件発明3においては平面間に配置されるガイドであるのに対し,検甲1発明では,棒状ガイドである点で相違する。
(エ)

以上によれば,
上記2(2)のとおり,
本件発明3と検甲1発明とは,

相違点1ないし3に加え,相違点Aで相違するものと認められる。イ
相違点1ないし3の容易想到性
上記4で検討したところによれば,本件優先日当時の当業者は,検甲1発明において相違点1ないし3に係る本件発明3の構成を採ることを,容易に想到することができたものといえる。


相違点Aの容易想到性
(ア)

切削ローラを横断方向に移動させるためのガイドに用いる部材を

いかなる構造のものとするかは,当業者が適宜選択することができる設計事項であるといえる。
そして,上記1(2)によれば,本件発明3は,
第2のガイドの上下
を平面で挟む構造のシフトテーブルを有するものと認められる(本件明細書【0018】【0060】

,図2,図3)ところ,上記3(3)のとお
り,甲8文献には,切削ドラムをシフトテーブルに取り付けることによって左右方向にシフトさせる構成が記載されているから,本件発明3の
構成は,当業者が適宜選択し得る範ちゅうの構成であるといえる。これらの事情を考慮すると,検甲1発明の2つの棒状ガイドのうち,
水平方向変位用の油圧シリンダが取り付けられておらず,位置決め機能を有しない方の棒状ガイドを,甲8文献に記載されたような平面間に配置されたガイドとすることは,
容易に想到し得るものであったといえる。
(イ)

したがって,本件優先日当時の当業者は,検甲1発明において相違
点Aに係る本件発明3の構成を採ることを,容易に想到することができ
たものといえる。
(2)

原告の主張について
原告は,検甲1発明の2つの棒状ガイドのうち水平方向変位用の油圧シリンダが取り付けられた棒状ガイドは,上下方向変位用の油圧シリンダを介してフレーム部に取り付けられているため,ハウジング部を横断方向に
のみ直接的に変位させることはできず,また,検甲1発明において同油圧シリンダを単に除くことにより,同棒状ガイドが位置決めの用を果たすことになるとはいえないから,検甲1発明には,本件発明3の第1のガイドは存在しないし,本件発明3のリニアガイドに係る構成とすることを容易に想到することができるものではない旨主張する。

しかしながら,
上記(1)アで検討したとおり,
検甲1発明の上記棒状ガイ
ドは,本件発明3の第1のガイドに相当するものであるところ,上記4で検討したところに照らせば,原告が指摘する上記の各点が,この結論を左右するものではないというべきである。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。


原告は,検甲1発明においては,既に横断方向への移動を支える2つの棒状ガイドが存在するのであるから,そのうち1つをシフトテーブルを用いた平面間に配置されるガイドに置き換える必要性は全くなく,このような置換えをする動機付けはないから,検甲1発明において,水平方向変位
用の油圧シリンダが取り付けられていない方の棒状ガイドを,本件発明3の平面間に配置される第2のガイドに置き換えることを想到すること
が容易であったとはいえない旨主張する。
しかしながら,上記4で検討したとおり,検甲1発明において相違点1に係る本件発明1の構成を採る場合,当業者であれば,不要となる上下方向変位用の油圧シリンダを除き,棒状ガイドを直接フレーム部に支持する構造とすることが自然であるといえる。そして,この場合には,上記のと
おり,検甲1発明の2つの棒状ガイドのうち,水平方向変位用の油圧シリンダが取り付けられた棒状ガイドが位置決めの機能を果たすこととなるのであるから,同油圧シリンダが取り付けられていないもう一方の棒状ガイドは,ハウジング部をガイドに沿ってスライドさせる機能を有していれば足りることとなる。

そうすると,検甲1発明において,水平方向変位用の油圧シリンダが取り付けられていない方の棒状ガイドを,シフトテーブルのような平面間に配置されるガイドとすることは,上記(1)ウのとおり当業者が適宜選択することができる設計事項であるといえる上,相違点1について本件発明1の構成を採ることによる必然的な結果であるともいえるから,容易に想到
し得るものであったといえる。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
(3)

小括
以上によれば,本件優先日当時の当業者は,検甲1発明において相違点1ないし3及びAに係る本件発明3の構成を採ることを,容易に想到する
ことができたものといえる。
イ6
取消事由4ないし6(相違点5ないし7の容易想到性)について
(1)

したがって,本件発明3は,進歩性を欠くものといえる。


相違点5の容易想到性(本件発明5,6及び11)
相違点5は,本件発明5においては,検甲1発明とは異なり,コンベヤベルト手段の下端に,高さを調節することが可能なベルトシューが設けら
れているというものである。

そこで検討するに,上記3(4)によれば,甲9文献には,アスファルト車道等の粉砕装置において,コンベヤベルト付きの第1の搬送手段の粉砕ロールに面する端部を収容するベルト・シューが,縦方向に調節することが可能であるように機械フレームに取り付けられていることが記載されて
おり,これは,コンベヤベルト手段の下端を受けるために,高さを調節することが可能なベルトシューを設けることが記載されているものと理解することができる。
そして,検甲1発明及び甲9文献に記載された技術は,いずれも道路切削機に関するものであり,コンベヤベルト手段や切削ローラの位置関係も
共通するほか,切削した土砂等を切削ローラからコンベヤベルト手段へと効果的に移行させるという課題も共通にするものといえるから,検甲1発明に対して甲9文献に記載された技術を適用することは,容易に想到し得るものであったといえる。

以上によれば,本件優先日当時の当業者は,検甲1発明において相違点5に係る本件発明5,6及び11の構成を採ることを,容易に想到することができたものといえる。

(2)

相違点6の容易想到性(本件発明6)
相違点6は,本件発明6においては,検甲1発明とは異なり,コンベヤベルト手段がベルトシューに関節連結されるというものである。


そこで検討するに,コンベヤベルト手段とベルトシューとをどのような構造で連結するかは,当業者が適宜選択することができる設計事項にすぎず,コンベヤベルト手段とベルトシューとを一般的な関節構造で連結することも,当業者が適宜選択することができるものといえる。


以上によれば,本件優先日当時の当業者は,検甲1発明において相違点6に係る本件発明6の構成を採ることを,容易に想到することができたも
のといえる。
(3)

相違点7の容易想到性(本件発明11)
相違点7は,本件発明11においては,検甲1発明とは異なり,同期ガイドを介してベルトシューの高さを調節することが可能であるというものである。


そこで検討するに,上記(1)で検討したとおり,甲9文献には,コンベヤベルト手段の下端を受けるために,高さを調節することが可能なベルトシューを設けることが記載されている。また,上記3(4)によれば,甲9文献には,ベルト・シューの両側のコネクティング・ロッドをリンキング・ロッドを介して接合することにより,ベルト・シューの両側の平行な案内を
同期させることが記載されており,これは,同期ガイドを介してベルトシューの高さを調節することが可能であることが記載されているものと理解することができる。
そして,前記のとおり,検甲1発明に対して甲9文献に記載された技術を適用することは,容易に想到し得るものであったといえる。


以上によれば,本件優先日当時の当業者は,検甲1発明において相違点7に係る本件発明11の構成を採ることを,容易に想到することができたものといえる。

(4)

原告の主張について
原告は,相違点5ないし7に関し,甲9文献には,粉砕機の機械フレームにベルト・シューが取り付けられることは開示されているが,本件発明5の構成である切削ローラハウジング(10)に対応する構成要素は何も示されておらず,
前記切削ローラハウジング(10)に高さ調節可能に固定されるベルト・シューが示されていないから,検甲1発明に対して
甲9文献に記載された事項を適用したとしても,相違点5に係る本件発明5の構成には至らないことなどを主張する。


しかしながら,上記(1)で検討したとおり,甲9文献には,コンベヤベルト手段の下端を受けるために高さを調節することが可能なベルト・シューを設けることが記載されており,相違点5に係る本件発明5の構成が記載されているといえるところ,原告の上記主張は,甲9文献に記載された技術を検甲1発明に適用することができない理由を具体的に述べるもので
はないから,主張自体失当である。

(5)

したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
小括
以上によれば,本件優先日当時の当業者は,検甲1発明において相違点5に係る本件発明5,6及び11の各構成,相違点6に係る本件発明6の
構成並びに相違点7に係る本件発明11の構成を採ることを,容易に想到することができたものといえる。

また,上記4で検討したところによれば,本件優先日当時の当業者は,検甲1発明において相違点1ないし3に係る本件発明5,6及び11の各構成を採ることを,容易に想到することができたものといえる。


したがって,本件発明5,6及び11は,いずれも進歩性を欠くものといえる。

7
まとめ
(1)

以上検討したところによれば,本件発明1ないし3,5,6及び11ない
し14は,いずれも進歩性を欠くものといえる。
(2)

また,
本件発明4については,
検甲1発明と相違点1ないし4で相違する

ところ,上記4で検討したところによれば,本件優先日当時の当業者は,検甲1発明において相違点1ないし3に係る本件発明4の構成を採ることを,容易に想到することができたものといえる。そして,原告は,検甲1発明において相違点4に係る本件発明4の構成を採ることを,当業者が容易に想到することができたことについては争っていない。

したがって,本件発明4も,進歩性を欠くものといえる。
8
結論
以上によれば,本件審決が,本件発明1ないし6及び11ないし14について,いずれも当業者が容易に想到することができたものであり,進歩性を欠く
と判断したことに誤りはなく,原告が主張する各取消事由は,いずれも理由がない。
よって,原告の請求は,理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第3部

裁判長裁判官
鶴岡中平都野稔彦
裁判官

裁判官
道紀
(別

紙)
本件明細書図面目録

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