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法人税更正処分等取消請求事件
事件番号平成27(行ウ)695
事件名法人税更正処分等取消請求事件
裁判年月日令和2年9月1日
裁判所名東京地方裁判所
分野行政
裁判日:西暦2020-09-01
情報公開日2021-03-22 18:01:16
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令和2年9月1日判決言渡
平成27年(行ウ)第695号

法人税更正処分等取消請求事件

主1文
船橋税務署長が原告に対し平成25年12月24日付けでした原告の平成22年12月1日から平成23年11月30日までの課税期間に係る消
費税及び地方消費税の更正処分(ただし,いずれも平成27年6月1日付け裁決による一部取消し後のもの。)のうち,納付すべき消費税額マイナス1223万1150円を超える部分及び納付すべき地方消費税額マイナス305万7787円を超える部分並びに同更正処分に伴う過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,上記裁決による一部取消し後のもの。)のう
ち550万2500円を超える部分を取り消す。
2
原告のその余の請求をいずれも棄却する。

3
訴訟費用はこれを10分し,その1を被告の負担とし,その余を
原告の負担とする。
事実及び理由

第1
1
請求
船橋税務署長が原告に対し平成25年12月24日付けでした原告の平成22年12月1日から平成23年11月30日までの事業年度に係る法人税の更正処分のうち,所得金額2582万1137円,納付すべき税額674万5600円を超える部分及び同更正処分に伴う過少申告加算税の賦課決定処分のう
ち99万2000円を超える部分を取り消す。
2
船橋税務署長が原告に対し平成25年12月24日付けでした原告の平成22年12月1日から平成23年11月30日までの課税期間に係る消費税及び地方消費税の更正処分(ただし,平成27年6月1日付け裁決による一部取消
し後のもの。)のうち,納付すべき消費税額マイナス2817万7895円を超える部分及び納付すべき地方消費税額マイナス704万4473円を超える部分並びに同更正処分に伴う過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,上記裁決による一部取消し後のもの。)のうち251万3000円を超える部分を取り消す。
第2

事案の概要
本件は,飲食店の経営等を目的とする会社である原告が,競売により一括取
得した東京都港区(住所省略)所在の土地,建物及び附属設備について,その落札金額を按分してそれぞれの取得価額を算出し,これを基に,法人税に係る減価償却費の額及び消費税の課税仕入れに係る支払対価の額を計算して,原告の平成22年12月1日から平成23年11月30日までの事業年度(以下本件事業年度という。)に係る法人税の申告並びに平成22年12月1日
から平成23年11月30日までの課税期間(以下本件課税期間という。)に係る消費税及び地方消費税(以下消費税等という。)の確定申告をしたところ,船橋税務署長(処分行政庁)から,上記建物及び附属設備の取得価額の計算が誤っているとして,法人税及び消費税等の各更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことから,被告を相手に,これらの処分
(ただし,裁決により一部が取り消されたものは,その取消し後のもの。)の取消しを求める事案である。
1
関係法令等の定め
本件に関係する法令等の定めは,次のとおりである。

(1)

法人税法(平成23年法律第114号による改正前のもの。以下同じ)
31条1項は,内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につきその償却費として同法22条3項(各事業年度の損金の額に算入する金額)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は,その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額のうち,その取得をした日及びその種類の区分に応じ政令で定める償却の方法の中からその内国法人が当該資産について選定した償却の方法に基づき政令で定めるところにより計算した金額(以下償却限度額という。)に達するまでの金額とする旨規定している。
(2)

法人税法施行令(平成23年政令第379号による改正前のもの。以下
同じ)13条1号は,法人税法2条23号に定める減価償却資産(建物,構築物,機械及び装置,船舶,車両及び運搬具,工具,器具及び備品,鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるもの。以下同じ)の一つとして,建物に係る附属設備(暖冷房設備,照明設備,通風設備,昇降機その他建物に附属する設備。以下建物附属設備ということがある。)を規定している。

(3)

法人税法施行令48条1項は,平成19年3月31日以前に取得された
減価償却資産に係る償却方法につき,①当該資産が建物である場合は,平成10年3月31日以前に取得された建物のときは旧定額法(当該減価償却資産の取得価額からその残存価額を控除した金額にその償却費が毎年同一となるように償却率を乗じて計算した金額を償却限度額とする方法。以下同じ)又は旧定率法(当該減価償却資産の取得価額にその償却費が毎年一定の割合で逓減するように償却率を乗じて計算した金額を償却限度額とする方法。以下同じ)を,それ以外の建物のときは旧定額法を用いるものとし(同項1号),②当該資産が建物附属設備である場合は,旧定額法又は旧定率法を用いるものとしている(同項2号)。

(4)

法人税法施行令48条の2第1項は,平成19年4月1日以後に取得さ
れた減価償却資産に係る償却方法につき,①当該資産が建物である場合は,定額法(当該減価償却資産の取得価額にその償却費が毎年同一となるように償却率を乗じて計算した金額を償却限度額とする方法。以下同じ)を用いるものとし(同項1号),②当該資産が建物附属設備である場合は,定額法又は定率法(当該減価償却資産の取得価額にその償却費が毎年一定の割合で逓減するように償却率を乗じて計算した金額〔当該計算した金額が償却保証額に満たない場合には,改定取得価額にその償却費がその後毎年同一となるように改定償却率を乗じて計算した金額〕を償却限度額とする方法。以下同じ)を用いるものとしている(同項2号)。
(5)
法人税法施行令54条1項は,減価償却資産の取得価額につき,購入し
た減価償却資産の場合は,当該資産の購入の代価(引取運賃,荷役費,運送保険料,購入手数料,関税その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には,その費用の額を加算した金額)及び当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額とする旨規定している(同項1号)。(6)

減価償却資産の耐用年数等に関する省令(平成23年財務省令第81号
による改正前のもの。以下耐用年数省令という。)1条1項は,減価償却資産の耐用年数につき,法人税法施行令13条1号に掲げる資産の場合は,耐用年数省令別表第1(機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表)に定めるところによる旨規定している。
同表は,鉄筋コンクリート造の建物については,①飲食店用の場合は,延
べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が3割を超えるものの耐用年数を34年,その他のものの耐用年数を41年とし,②細目の2つ目以下のいずれにも当たらない場合(左記以外のものに当たる場合)は,耐用年数を50年としている。
また,同表は,建物附属設備については,その構造又は用途として,①電
気設備(照明設備を含む。),②給排水又は衛生設備及びガス設備,③冷房,暖房,通風又はボイラー設備,④昇降機設備,⑤消火,排煙又は災害報知設備及び格納式避難設備,⑥エヤーカーテン又はドアー自動開閉設備,⑦アーケード又は日よけ設備,⑧店用簡易装備,⑨可動間仕切り,⑩それ以外のものを掲げ,それぞれにつき(一部のものについては更に細目に区分した上
で)耐用年数を定めている。
(7)

耐用年数の適用等に関する取扱通達(平成23年12月21日課法2-17等による改正前のもの。以下耐用年数通達という。)1-2-3は,建物の内部に施設された造作については,その造作が建物附属設備に該当する場合を除き,その造作の構造が当該建物の骨格の構造と異なっている場合においても,それを区分しないで当該建物に含めて当該建物の耐用年数を適用するものとしている。
(8)

耐用年数通達2-1-2は,一の建物のうち,その階の全部又は適宜に
区分された場所を間仕切り等をしないで賃貸することとされているもので間仕切り等の内部造作については賃借人が施設するものとされている建物のその賃貸の用に供している部分の用途の判定については,耐用年数省令別表第1の左記以外のものに該当するものとしている。
(9)

消費税法(平成24年法律第68号による改正前のもの。以下同じ)3
0条1項は,事業者が,国内において行う課税仕入れ(事業者が,事業として他の者から資産を譲り受け,若しくは借り受け,又は役務の提供を受けること。以下同じ)については,当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から,当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに係る支払対価の額に105分の4を乗じて算出した金額。以下控除対象仕入税額という。)を控除する旨規定している。なお,土地の譲渡については非課税とされている(消費税法6条1項,別表第1)ことから,土地の取得価額は,課税仕入れに係る
支払対価の額に該当しない。
(10)

地方税法(平成24年法律第69号による改正前のもの。以下同じ)3
41条1項4号は,固定資産税における償却資産の用語の意義について,土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(鉱業権,漁業権,特許権その他の無形減価償却資産を除く。)でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの(これに類する資産で法人税又は所得税を課されない者が所有するものを含む。)をいい,自動車税又は軽自動車税の課税客体である自動車,原動機付自転車等を除く旨規定している。
2
前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)

原告は,飲食店の経営等を目的とする株式会社である。

(2)ア

原告は,担保不動産競売(東京地方裁判所平成22年(ケ)第〇号。
以下本件競売という。)の対象とされた別紙2記載の土地及び建物(以下,同別紙記載1から4までの土地を本件土地といい,同別紙記載5の建物を本件建物といい,これらを併せて本件不動産という。なお,本件不動産には,後記ウの建物附属設備等の資産が含まれる。)につき,25億8975万5895円で買受けの申出をし,平成23年5月20日付けで売却許可決定を受け(以下,原告が売却許可決定を受けた上記申出の額を本件落札金額という。),同年6月1日,本件不動産の
所有権を取得し,同月2日,その所有権移転登記をした(甲1~6)。イ
本件建物は,K株式会社(以下K社という。)が平成18年4月

18日に新築したものであり,同年5月26日,同社を債務者として,極度額50億円の根抵当権が設定された(甲5。以下本件根抵当権という。)。

本件建物には,耐用年数省令に定める建物附属設備(関係法令等(6))
として,電気設備(以下本件電気設備という。),給排水又は衛生設備及びガス設備(以下本件給排水設備という。),冷房,暖房,通風又はボイラー設備(以下本件空調設備という。),昇降機設備(以下本件エレベーターといい,以上の各設備と併せて本件附属設備という。)が設置されていたほか,次の(ア)から(ウ)までの各資産が設置されていた(以下,これらの資産と本件建物及び本件附属設備とを併せて,本件建物等という。なお,別表においては,これを
本件家屋対象資産と表記することがある。)。
(ア)

本件建物の正面側壁面の3階から10階上までの部分に設置され

たアクリル製の化粧壁(乙2の現況写真1,乙12。以下本件アクリル壁という。)
(イ)

本件建物の正面側壁面の3階及び4階の部分に設置されたLED

ディスプレイ及びその制御装置(乙2の現況写真1,乙12。以下本件ディスプレイ設備という。)(ウ)

本件建物の4階に設置された内部造作(甲31の1~16,乙1

0〔16~19枚目〕。以下本件内部造作という。)


原告が本件競売(上記ア)により本件不動産の所有権を取得した平成
23年6月1日当時,本件建物の1階から6階までのうち4階を除く部分は,K社との間で賃貸借契約を締結した賃借人が店舗として占有していた(なお,本件内部造作が設置された本件建物の4階は,空室となっていた。)。これらのうち,上記イの本件根抵当権設定前に賃貸借契約が締結されたため,原告が賃貸人たる地位を承継したものは,別紙3記載のとおり,1階,2階,5階及び6階である(乙10〔22枚目以下〕。以下,これらの賃貸借に係る賃借人を本件賃借人という。)。オ
本件競売においては,裁判所に選任された評価人が作成した評価書
(乙10〔37枚目以下〕。以下本件競売評価書という。)における本件不動産の評価額(合計17億2193万円。評価日は平成22年12月29日)を踏まえ,売却基準価額が定められた。本件競売評価書においては,本件不動産の積算価格を24億2476万円(うち本件土地が19億7174万円,本件建物等が4億5302万円),収益価格
を29億5091万円とした上(9~10頁,12頁),これらの価格を同等に評価して調整した後の合計価格を26億8784万円とし(13頁),マイナス30%の競売市場修正等を行って,本件不動産の評価額を17億2193万円と評価した(13頁)。
なお,本件競売評価書においては,上記26億8784万円から評価額を導くに当たり,引受債務相当額(本件不動産の競落人が賃貸人の地位を承継することにより引き受ける敷金返還債務〔以下本件敷金債務
という。〕の額)として,本件建物等の価格から1億5957万円を控除している(13頁。以下,この控除された額を本件敷金債務相当額という。)。
(3)
原告は,平成24年1月31日,本件事業年度の法人税及び本件課税期
間の消費税等についてそれぞれ確定申告をした(甲7,8,乙6の1,7の1。以下,これらを併せて本件確定申告という。)。
本件確定申告は,本件土地及び本件建物等の価額を,本件土地については路線価に基づき,本件建物等については類似物件を参考とした再調達価格に基づき算出して,これらの価格比により本件落札金額を按分し,本件土地を
13億1925万5895円,本件建物等を12億7050万円(そのうち本件建物は6億8010万円)と算出した上で,本件建物等に係る減価償却費を合計1億6588万2000円と計上し,これを損金に算入して法人税の確定申告を行うとともに,本件建物等の取得価格12億7050万円を本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に含めて控除対象仕入税額を計
算し,消費税等の確定申告をした(甲9,10)。これにより,原告の本件事業年度における所得金額はマイナス5282万9651円(別表1のA列①欄),納付すべき法人税額はマイナス4万0606円(別表1のA列⑦欄),本件課税期間における納付すべき消費税額はマイナス4171万8934円(別表2のA列⑧欄),地方消費税額はマイナス1042万9733
円(別表2のA列⑭欄)となった(甲7,8,乙6の1,7の1。なお,税額のマイナスは,還付金を示す。以下同じ)。
(4)

船橋税務署長による更正決定等
船橋税務署長は,固定資産税評価額による土地と建物の各評価額の比率により本件不動産の区分を行うのが合理的であり,これによると,本件土地の取得価格は22億0792万2726円,本件建物等の取得価格は3億8183万3169円(そのうち本件建物は2億0439万5701
円)となり,償却限度額は4985万3794円となるから,本件確定申告における減価償却額は上記限度額を超過しているとして,原告に対し,平成25年12月24日付けで,法人税の更正処分(納付すべき法人税額1696万1800円〔別表1のB列⑦欄〕,差引納付すべき法人税額1700万2400円〔別表1のB列⑨欄〕。以下本件法人税更正処分
という。)をするとともに,これに伴う過少申告加算税の賦課決定処分(過少申告加算税の額252万5000円〔別表3のA列⑧欄〕。以下本件法人税賦課決定処分という。)をした(甲9)。また,船橋税務署長は,同日付けで,本件建物等の取得価格は上記のとおり3億8183万3169円であるから本件課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額が
過大となっているとして,原告に対し,消費税等の更正処分及びこれに伴う過少申告加算税の賦課決定処分をした(甲10)。

上記アの各処分に対し,原告が異議申立てをしたところ,船橋税務署長は,平成26年5月20日付けで,同申立てをいずれも棄却する旨の決定をした(甲11)。


原告は,平成26年6月12日,上記アの各処分の取消しを求め,審査請求をした(乙1。以下本件審査請求という。)。
原告は,本件審査請求の手続において,不動産鑑定士であるLが作成した平成26年9月24日付け不動産鑑定評価書(乙2の資料1。以下L評価書という。)及びこれを踏まえた意見書(同年10月17日付け。以下本件意見書という。)を東京国税不服審判所に提出し,本件確定申告における時価による按分(上記(3))に代えて,L評価書における評価額(本件土地が24億4000万円,本件建物が12億2000万円)に基づき按分すべきこと等を主張した(乙2)。また,原告は,同審判所に提出した反論書(同年11月25日付け。以下本件反論書といい,本件意見書と併せて本件意見書等という。)において,L評価書を踏
まえた上記主張に基づく減価償却超過額(確定申告において損金に算入した減価償却費のうち,償却限度額を超える額。以下同じ)を一部訂正する旨の主張をした(乙3)。
本件審査請求は,その審査請求書の記載によれば,上記アの各処分の全部の取消しを求めるものであったが,本件意見書等における減価償却超過
額の主張等を前提として法人税及び消費税等の額等を計算すると,上記アの各処分はその一部が取り消されるという関係にあった。

国税不服審判所長は,平成27年6月1日付けで,本件法人税更正処分及び本件法人税賦課決定処分については審査請求を棄却したが,消費税等
の更正処分及びこれに伴う過少申告加算税の賦課決定処分については,その一部を取り消す旨の裁決をした(甲12。以下本件裁決といい,本件裁決による一部取消し後の消費税等の更正処分を本件消費税等更正処分といい,同取消し後の過少申告加算税の賦課決定処分を本件消費税等賦課決定処分という。また,これらの処分を本件法人税更正処分及び
本件法人税賦課決定処分と併せて本件各処分という。)。
本件裁決による一部取消しの結果,本件課税期間の納付すべき消費税額はマイナス961万4882円(別表2のB列⑧欄),差引納付すべき消費税額は3210万4000円(別表2のB列⑪欄),納付すべき地方消費税額はマイナス240万3720円(別表2のB列⑭欄),差引納付す
べき地方消費税額は802万6000円(別表2のB列⑰欄),本件消費税等更正処分に伴う過少申告加算税の額は599万4500円(別表4のA列⑫欄)となった。

(5)

なお,本件各処分に係る経緯は別表1~4のとおりである。
原告は,平成27年11月27日,本件訴えを提起した。
原告は,平成30年8月23日,本件土地及び本件建物等(ただし,本件
ディスプレイ設備を除く。)の時価評価額について鑑定の申出をし,当裁判
所は,同年9月5日,これを採用し,鑑定人であるM不動産鑑定士は,同年11月30日に不動産鑑定書を提出した(以下本件鑑定といい,本件鑑定に係る鑑定書を本件鑑定書という。)。
3
本件各処分の根拠等
本件各処分の根拠及び適法性に関する被告の主張は別紙4記載のとおりで
あるところ,後記4の争点に関する部分を除き,原告はこれを争わない(なお,同別紙で定義した略称は,本文においても用いる。)。
4
争点及び当事者の主張
(1)

本件で争われているのは次のアからエまでの点であり,これらに関する
当事者の主張の要旨は,別紙5記載のとおりである(なお,同別紙で定義した略称は,本文においても用いる。)。

審査請求前置の有無(争点(1))


本件不動産の取得価額として本件落札金額(25億8975万5895円)のほかに本件敷金債務相当額(1億5957万円)を加算すべきか(争点(2))


本件不動産を構成する各資産(ただし,本件内部造作を除く。)の評価(争点(3))


(2)
本件内部造作の評価(争点(4))
なお,上記(1)以外の点,すなわち,①原告が,本件競売によって,本件
不動産(本件土地及び本件建物のほか,本件建物の付加一体物である本件附属設備,本件アクリル壁,本件ディスプレイ設備及び本件内部造作を含む。)の所有権を取得したこと,②本件不動産は本件競売によって一括取得されたものであり,本件不動産を構成する各資産の個別の取得価額が明らかでないことから,合理的な方法によって取得価額を区分する必要があること,③その区分に当たり,各資産の評価額(客観的な交換価値)を求め,これらの価額比により按分するという方法を用いることが合理的であることについ
ては,当事者間に争いがない。
第3

当裁判所の判断
当裁判所は,本件鑑定の結果等に基づき本件不動産を構成する各資産の取得価額を算出し,これを基に法人税に係る減価償却費の額及び消費税の課税仕入れに係る支払対価の額を計算すると,本件消費税等更正処分及び本件消費税等
賦課決定処分のうち主文第1項の各金額を超える部分は違法であって取り消すべきものであり,その余の部分並びに本件法人税更正処分及び本件法人税賦課決定処分はいずれも適法であるから,原告の請求は主文第1項の限度で認容し,その余の請求は棄却すべきであると判断する。
その理由の詳細は,以下のとおりである。

1
認定事実
前記前提事実に証拠(各掲記のもの)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。
(1)


本件不動産の概要等
本件不動産は,東京都港区(住所省略)に所在する本件土地並びにその地上建物である本件建物及びその附属設備等により構成されている(前提事実(2)ア)。
本件不動産は,東京メトロ日比谷線N駅の南東方約260mに位置しており,幹線道路である幅員約23.5mの都道(O通り)に面している。
周辺は高層ビル(店舗や事務所等)が建ち並ぶ商業地域である。(本件鑑定書17頁)

本件建物は,K社が平成18年4月18日に新築したものであり(前提事実(2)イ),本件競売までは,同社により,いわゆるスケルトン貸し(内装が空の状態で賃貸し,賃借人において内装工事を行うもの)として賃貸されていた。
本件建物の新築工事に係る請負契約は,平成17年3月25日付けのも
の(乙13の1。代金額5億7300万円〔税込〕)と同年9月29日付けのもの(乙13の3。代金額5700万円〔税込〕)の2つがあるところ,これらのうち,前者の契約に係る見積書には,同契約に係る工事内容として次のとおり記載されていた(乙13の2)。なお,これらの金額は,別表8-2の各工事等に係る合計欄に記載された金額と
同じである。
A
建築工事

3億4046万9000円

C
電気設備工事

3370万円

D
給排水衛生設備工事

2250万円

E
空調換気設備工事

1810万円

F
昇降機設備工事

2820万円

G
外構工事

210万円

H
解体工事

1600万円

I
現場管理費

3420万6000円

J
2373万8000円

B
共通仮設工事

経費

3070万円

(値引)
(合計)


5億4571万4286円

(消費税)
399万8714円

2728万5714円

原告が本件競売により本件不動産の所有権を取得した当時,本件建物の4階は空室となっていたところ,前賃借人が施したいわゆる高級クラブの内装(石貼等を多用し,厨房設備,バーカウンターのほか,客席等を多数設けたもの〔本件内部造作〕。)がそのまま残されていた(乙10〔15~16枚目〕,甲31の1~16)。
平成18年当時に本件内部造作の設計及び施工を行ったP(なお,当時は株式会社Qの代表取締役であった。)が在籍しているR社は,本件訴
訟の提起後,原告から本件内部造作に係る工事費等につき尋ねられたが,当時の見積書等は既に廃棄されていたため,新たに平成29年4月11日付けでR社名義による見積書(甲44。本件見積書)を作成した。本件見積書には,仮設/建築工事(金属工事,硝子工事,軽鉄・ボード工事,表装工事,家具・什器工事等。7507万2100円),電気設備工事(1439万4000円),空調換気設備工事(1389万1200円),給排水・衛生・ガス・厨房設備工事(1114万6200円)及び竣工写真費(30万円)の合計1億1480万3500円に,現場管理費344万4100円及び諸経費688万8200円を加算し,13万5800円を値引きして得られた1億250
0万円が,見積額(税抜き価格)として記載されている。

一般に,スケルトン貸しにおいて,旧賃借人が施した内装を新賃借人が使用する場合には,スケルトン仕様(内装なし)を前提とした賃貸借契約を賃貸人との間で締結する一方,旧賃借人から新賃借人に対する内部造作の譲渡が行われる。なお,この内部造作の譲渡は無償でされること
が多く,有償の場合でも,50万円から100万円程度での譲渡が主流であり,相当に手をかけた内装であったとしても,数百万円以上で譲渡されることは稀である。(本件鑑定書15頁)

なお,平成23年6月1日時点の不動産賃貸市場の動向は,同年3月の東日本大震災後の自粛ムードが払拭されつつあり,駅から近い物件の1階,アクセスの良い2階・地下1階,坪単価2万円程度(10~20坪)の居抜物件等に対する需要は旺盛になってきたものの,駅から遠い物件,上層階の物件,高額賃料物件,スケルトン店舗(スケルトン貸しにより賃貸される店舗),リース店舗(内装付きで賃貸される店舗)等については,空室が長期化していた。また,T地区の店舗賃料は下落傾向にあった。(本件鑑定書14~15頁)

(2)

本件不動産の価額に関する各評価
本件競売評価書
本件競売において評価人が作成した本件不動産に係る評価書(本件競売評価書。乙10〔37枚目以下〕,前提事実(2)オ)は,平成22年12月29日を評価日として,本件不動産を一括して売却した場合における
本件不動産の評価額を導くに当たり,本件土地の積算価格を19億7174万円,本件建物等の積算価格を4億5302万円としている。本件建物等の積算価格は,建物の再調達原価につき,評価日現在の建物建築費の推移動向等を考慮した上,標準的な建築費に比準して,1㎡当たり23万円とし,これに現況延床面積(2647.40㎡)を乗じ,さら
に,耐用年数に基づく方法及び観察減価法を併用した減価修正(以下,建物の積算価格の計算においては,単に減価修正という。)を行って算出したものである。(本件競売評価書10頁)

L評価書
L評価書(乙2の資料1。前提事実(4)ウ)は,本件審査請求の手続において原告が提出したものであり,平成23年6月1日時点における本件土地を24億4000万円,本件建物等を12億2000万円(合計36億6000万円)と評価するものである。これらの評価の具体的内容は次のとおりである。

(ア)

本件土地の評価
本件土地については,取引事例比較法により求めた20億2000万円と,土地残余法(収益還元法)により求めた28億5000万円を同等に評価して,24億4000万円と評価した(L評価書24頁)。(イ)

本件建物等の評価
本件建物等については,①再調達原価を1㎡当たり49万2000円
として求め,これに減価修正をして,本件建物等の積算価格を10億0400万円とする(L評価書24~25頁,同評価書別表4)とともに,②建物残余法(収益還元法)を用いて,本件不動産の純収益から土地帰属純収益を控除して得た建物帰属純収益を建物還元利回りで除して,本件建物等の収益価格を14億3000万円とした上(同評価書29~3
3頁,同評価書別表5),上記①及び②を同等に評価して,本件建物等の評価額を12億2000万円とした(同評価書33頁)。
上記①の積算価格を求めるに当たっては,財団法人建設物価調査会による建物実例データ集改訂版建物の鑑定評価必携(以下建物実例データ集という。)に掲載された2つの建設事例の工事価格(いずれも平成22年10月時点で,1㎡当たり38万6000円と31万4000円)が引用されている。本件建物等は,構造が鉄筋コンクリート造(RC造),階数が地上10階地下1階であるのに対し,L評価書に引用された2つの建設事例は,1番目の例については構造が鉄骨造(S造),階数が地上8階地下2階,2番目の例については階数が地上
5階地下2階であった。また,1番目の例については,方形(四角形)の建物ではなく,壁にはアルミパネル等が,建具にはアルミサッシ,ステンレスドア等が,玄関床には一般的に高価な花こう岩等がそれぞれ使用され,2番目の例については,バルコニー付きであり,壁には花こう岩が,建具にはアルミサッシ,ステンレスドア等が使用されていた。そ
して,建物実例データ集に掲載された工事費分布図によれば,1番目の例については,一般的な工事価格の範囲を大きく超え,また,2番目の例についても,一般的な工事価格の範囲の最上位であった。(乙21)次に,上記②の収益価格を求めるに当たっては,総収益の基礎となる賃料収入につき,評価日当時における現行賃料(評価日当時に空室であった部分は,その後の実際の賃料等を参考にした賃料)に基づき,賃料収入(月額)を2690万4571円としている(L評価書別表5
(2))。

本件鑑定
(ア)

本件鑑定(前提事実(5))は,本件訴訟の手続において当裁判所が
採用したものである。本件鑑定においては,本件不動産につき,原価法による積算価格(29億9000万円)と収益還元法による収益価格(30億4000万円)を求めた上で,本件不動産の類型,地域性,市場参加者の属性等を総合的に勘案した結果,上記積算価格については参考にとどめ,上記収益価格を標準とすることとし,本件不動産の平成23年6月1日時点における評価額を30億4000万円とした(本件鑑
定書27~28頁)。その上で,本件土地,本件建物等(本件ディスプレイ設備,本件内部造作を除く。以下,ウにおいて同じ)及び本件内部造作の内訳については,配分法により,それぞれの資産の積算価格の割合に応じて配分し,本件土地を24億7456万円(81.40%),本件建物等を5億5480万円(18.25%),本件内部造作を10
64万円(0.35%)とした(本件鑑定書28頁)。なお,本件ディスプレイ設備の評価は,本件鑑定の対象外である(前提事実(5))。(イ)

各資産の積算価格は,次のように算出された。
まず,本件土地の積算価格を求めるに当たっては,公示価格のほか類
似する4つの取引事例を用いて1㎡当たりの単価を求め,これに本件土地の合計面積を乗じて,本件土地の積算価額を24億3390万円と評価した(本件鑑定書25頁,同鑑定書別表1)。
次に,本件建物等については,本件建物等の建設に要した実際の工事費(ファサード工事を含む。)に基づき時点修正を行って得た再調達原価を重視しつつ,類似する建物の工事価格に基づく再調達価格や,鉄筋コンクリート造の事務所ビルの東京基準単価を基礎に,本件建物のグレードを考慮して求めた格差率を乗じて査定した再調達価格等を考慮して,本件建物等の再調達原価を1㎡当たり23万円とし,これに延床面積を乗じ,減価修正をして,本件建物等の積算価格を5億4560万円と評価した(本件鑑定書25頁,同鑑定書別表2)。
また,本件内部造作の積算価格については,本件見積書に記載された
見積額(1億2500万円)を基礎として,同見積書が作成された平成29年4月の建築費指数と評価時である平成23年6月の建築費指数の比による調整をして,同月当時における価格(1億0900万円)に修正した上で,さらに,造作譲渡における譲渡価格水準(上記(1)エ)や,本件内部造作が施されていることによるリース店舗(内装付きで賃貸さ
れる店舗)としての賃料の増額分が本件不動産の価格に及ぼす影響等を考慮して,90%の減価とし,本件内部造作の積算価格を1050万円と評価した(本件鑑定書25頁)。
以上から,本件鑑定は,本件不動産の積算価格につき,本件土地が24億3390万円,本件建物等が5億4560万円,本件内部造作が1
050万円の合計29億9000万円と評価した(上記の各資産の構成割合は,本件土地が81.40%,本件建物等が18.25%,本件内部造作が0.35%である。)。
(ウ)

本件不動産の収益価格は,次のように算出された。
まず,賃料収入の算定については,平成23年6月1日時点現在の不
動産賃貸市場動向(上記(1)オ)を考慮して,当時の本件建物の各賃貸物件に係る現行賃料は市場相場よりも高位にあったとし,そのことから,市場参加者が本件不動産の取得を検討するに際しては,将来においてテナントが退出し賃料収入が下落する可能性を考慮した可能性が高いとして,現行賃料ではなく市場賃料に基づく純収益を採用し,かつ,市場水準の還元利回りを採用することとした(本件鑑定書26頁)。そこで,市場賃料に基づき賃料を査定し,これに賃貸面積(鑑定人が本件不動産
を実査した際の概測面積)を乗じて得た賃料収入(月額2037万9870円)に基づいて純収益を算出し,これを市場水準に基づく還元利回り(年5.30%)で資本還元して,本件不動産の収益価格を30億4000万円と評価した(同鑑定書26頁,同鑑定書別表3)。
2
争点(1)(審査請求前置の有無)について
被告は,本件審査請求の手続において原告が提出した本件意見書等(前提事実(4)ウ)によると本件各処分の一部のみが取り消されることとなるから,その余の部分(本件意見書等において原告が認めていた部分)については,適法な審査請求の前置を欠く不適法な訴えであると主張する。

しかしながら,課税処分の取消訴訟における実体上の審理の対象は,当該課税処分によって確定された税額の適否であり,課税処分における課税要件の認定等の誤りではない(最高裁平成2年(行ツ)第155号同4年2月18日第三小法廷判決・民集46巻2号77頁参照)ところ,課税処分に対する不服申立て手続である審査請求における実体上の審理の対象についても,これと同様
であると解される。
しかるに,本件において,原告は本件審査請求の手続において課税要件に係る事実等の一部を認める旨の主張をしたものにすぎず,これにより本件審査請求における実体上の審理の対象が変更されたものということはできないのであるから,本件審査請求における審理の対象は,船橋税務署長がした平成25年
12月24日付けでした法人税及び消費税等に係る更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(前提事実(4)ア)の全部に及ぶというべきである。そうすると,本件訴訟における審理の対象は,その全部が本件審査請求における審理の対象とされていたものといえるから,本件訴えに適法な審査請求前置を欠く部分があるとは認められず,被告の上記主張は採用することができない。したがって,本件訴えが適法であることを前提に,本案に係る以下の争点につき検討する。

3
争点(2)(本件不動産の取得価額として本件落札金額のほかに本件敷金債務相当額を加算すべきか)について
(1)

法人税法施行令54条1項1号は,購入した減価償却資産の取得価額に
ついて,当該資産の購入の代価(引取運賃,荷役費,運送保険料,購入手数料,関税その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には,その費用の額を加算した金額)及び当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額とする旨を定めている(関係法令等(5))。
原告が本件競売により一括して所有権を取得した本件不動産は,非減価償却資産である本件土地と,減価償却資産である本件建物等によって構成され
るところ,原告は,本件敷金債務相当額が本件建物の購入のために要した費用に当たると主張するので,この点について検討する。(2)

減価償却とは,建物や装置等の減価償却資産に係る取得価額について,
取得時の費用として計上する代わりに,当該資産の耐用年数にわたって徐々に費用として計上するものであるから,上記取得価額は,取得時に係る事業年度の終了の日までに確定していなければならない。もっとも,実際に支出されるのが上記事業年度の後であっても,取得時にその支出が予定されているものについては上記取得価額に含める余地もあるが,その場合であっても,支出額が上記事業年度の終了の日までに確定していることが必要であると解される。

(3)

本件敷金債務相当額は,原告が本件競売により本件建物を取得したこと
に伴い,前所有者であるK社が本件根抵当権に優先する本件賃借人に係る各賃貸借契約について賃貸人たる地位を承継したことにより負うことになった敷金債務に係るものである(前提事実(2)エ,オ)。
一般に,家屋賃貸借契約における敷金は,賃貸借存続中の賃料債権や,賃貸借終了後家屋明渡義務履行までに生ずる賃料相当損害金債権を含め,賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得し得る一切の債権を担保し,賃貸借終了後,家屋明渡がされた時において,それまでに生じた上記一切の被担保債権を控除しなお残額があることを条件として,その残額につき敷金返還請求権が発生するものである(最高裁昭和46年(オ)第357号同48年2月2日第二小法廷判決・民集27巻1号80頁参照)。K社と本件賃借人
との各賃貸借契約において引用されている本件約款(乙24)においても,賃借人は,当該契約から生ずる一切の担保として約定の敷金を預け入れ(6条1項),賃貸人は,当該物件の明渡しがあったときは,敷金から約定の償却費(賃料の1~2か月分)を控除した残額を賃借人に返還するが,その際,賃料の滞納,原状回復に要する費用の未払い,その他の賃借人の債務不履行
が存在する場合には,その債務の額を敷金から差し引くことができるものとされている(同条4項)。
そうすると,賃貸人が当該物件の明渡時に支払うこととなる敷金の額は,明渡時までに賃借人の債務不履行が存するか否か,また,これが存するとした場合の債務の額によって異なることとなるから,原告が本件競売により本
件建物の所有権を取得した時(及び取得に係る事業年度の終了の日)には,原告が将来支払うべき敷金の額は確定していなかったものである。原告が主張する本件敷金債務相当額は,当該物件の明渡時に本件賃借人に債務不履行がないとした場合に支払うべき敷金の額に基づくものであって,これを本件建物の購入のために要した費用として減価償却資産の取得価
額に加えることはできない(なお,上記の説示に照らせば,購入のために要した費用のみならず,購入の代価又は事業の用に供するために直接要した費用としても,本件敷金債務相当額を減価償却資産の取得価額に加える余地がないことは明らかである。)。
(4)

したがって,本件不動産を構成する各資産について価額比による按分を
するに当たり,その按分の対象となる金額(取得価額)として,本件落札金額のほかに本件敷金債務相当額を加算することはできない。

そこで,按分の対象が本件落札金額のみであることを前提に,以下の争点について検討する。
4
争点(3)(本件不動産を構成する各資産〔ただし,本件内部造作を除く。〕の評価)について

(1)

固定資産評価額の価額比を用いる評価に関し
被告は,固定資産評価基準に従って評価された価格は特段の事情がない限
り適正な時価であると推認されるため,本件不動産を構成する各資産に係る固定資産税評価額の価額比を用いて本件落札金額を按分することが合理的である旨を主張する。
しかしながら,固定資産評価基準の定める評価方法が,適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものであるとしても,この評価方法に従って決定された価格は,特段の事情のない限り当該資産の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないことが推認されるにとどまるものというべきである(最高裁平成24年(行ヒ)第79号同25年7月1
2日第二小法廷判決・民集67巻6号1255頁参照)。また,地方税法が,固定資産税の課税標準に係る固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を総務大臣の告示に係る評価基準に委ねている(388条1項)のは,固定資産税の賦課期日における土地課税台帳等の登録価格が同期日における当該資産の客観的な交換価値を上回らないようにすることのみならず,
全国一律の統一的な評価基準による評価によって,各市町村全体の評価の均衡を図り,評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を解消することをも目的とするものであり,かかる目的の下に行われる評価は,適正な鑑定の評価の過程において考慮の対象とされるような当該資産の個別的な事情については,ある程度捨象されることも前提としているものということができる。
これらに照らすと,本件のように,法人税に係る減価償却費の額及び消費
税の課税仕入れに係る支払対価の額を計算するために,一括して取得された土地及び建物等の取得価額を按分する方法として,当該資産の客観的な交換価値を上回らない価額と推認される固定資産税評価額による価額比を用いることは,一般的には,その合理性を肯定し得ないものではないが,当該資産の個別事情を考慮した適正な鑑定が行われ,その結果,固定資産税評価額と異なる評価がされた場合には,もはや,固定資産税評価額による価額比を用いて按分する合理性を肯定する根拠は失われ,適正な鑑定に基づく評価額による価額比を用いて按分するのが合理的となるというべきである。そこで,以下,本件において適正な鑑定による評価額が得られたといえる
か否かにつき検討する。
(2)

本件鑑定に関し
本件鑑定は,本件訴訟手続において,原告の鑑定の申出により当裁判所が
採用したものであり(前提事実(5)),鑑定人が公正かつ中立な立場から実施したものである。その鑑定の手法については認定事実(2)ウのとおりであるところ,これにつき不適切ないし不合理な点は見当たらない(なお,本件内部造作の評価に関しては,後記5において検討する。)。
そして,本件建物等の積算価格を求めるに当たり,本件鑑定は,本件建物等の建設に要した実際の工事費のほか,類似建物の工事価格,鉄筋コンクリート造の事務所ビルの東京基準単価,本件建物のグレード等を考慮して,本
件建物等の再調達原価を1㎡当たり23万円としたものであり,その評価は適正である(なお,本件競売評価書においても,1㎡当たりの再調達原価は同額である。)。
次に,本件不動産の収益価格を求めるに当たり,本件鑑定は,本件不動産が我が国でも有数の商業地域であるT地区に所在し,東京メトロ日比谷線N駅の南東方約260m,O通り沿いという立地であること(認定事実(1)ア)や,本件建物についてスケルトン貸しによる店舗の賃貸がされてきたこと(認定事実(1)イ),評価時(平成23年6月1日)が東日本大震災から約3か月後であったこと等を踏まえ,当時の東京(特にT地区)の不動産賃貸市場の動向につき,東日本大震災後の自粛ムードが払拭されつつあり一定の物件については需要が回復してきたものの,高額賃料物件やスケルトン店
舗・リース店舗については空室が長期化していたこと,T地区の店舗賃料は下落傾向にあったこと等を考慮して,当時の本件建物に係る各賃貸物件の現行賃料が市場相場よりも高位にあったとし,このことが本件不動産の価格に及ぼす影響(将来においてテナントが退出し賃料収入が下落する可能性等)を考察した結果,現行賃料ではなく市場賃料に基づく純収益を採用し,かつ,
市場水準の還元利回りを採用することとしたものであり(認定事実(1)オ,(2)ウ(ウ)),その評価は,不動産鑑定士としての専門的知見に基づく適正なものである。
また,以上のような本件不動産の類型や地域性等に照らせば,本件不動産を取得しようとする者は,本件建物を賃貸することにより得られる収益的価
値をより重視するものと考えられるから,本件鑑定において,本件不動産の積算価格(29億9000万円)よりも収益価格(30億4000万円)を優位とし,後者の価格を各資産の積算価格の割合に応じて配分したこと(認定事実(2)ウ(ア))も,適正な評価である。
以上によれば,本件鑑定の評価額は適正な鑑定に基づくものといえるから,
本件不動産を構成する各資産の価額(ただし,本件鑑定の対象とされていない本件ディスプレイ設備及び後記5において後述する本件内部造作を除く。)は,固定資産税評価額によらずに,本件鑑定の評価額によることが相当である。
(3)

原告の主張について
L評価書に係る主張に対し
原告は,L評価書における評価額(認定事実(2)イ)を基本的に採用すべきである旨を主張する。
しかしながら,L評価書において本件建物等の積算価格の基礎とされた再調達原価は1㎡当たり49万2000円であって(認定事実(2)イ(イ)),これは,本件鑑定における再調達原価(1㎡当たり23万円)の
2倍を超える上,本件建物等の実際の工事価格(時点修正後の価格は,1㎡当たり約22万円)とも大きくかい離している。このような結果となったのは,L評価書において再調達原価を求めるに当たり参照された建設事例が,いずれも,地下2階建てであるなど本件建物等と構造や階数が異なる上,建具にも高価な部材等が使用されるなど,一般的な工事価格の範囲
と比較しても相当高額な工事価格によるものであったことに起因するものと解されるところ,これらの建設事例を参照した理由につき合理的な説明がされたとは認められない。
また,L評価書において本件建物等の収益価格の基礎とされた賃料収入は,評価日当時における現行賃料に基づくものである(認定事実(2)イ
(イ))が,上記(2)のとおり,評価日である平成23年6月1日時点の不動産賃貸市場の動向によると,当時の本件建物の各賃貸物件に係る現行賃料は市場相場よりも高位にあったのであるから,L評価書が現行賃料に基づいて賃料収入を算定したことは,当時の市場動向を十分に考慮せずにされたものといわざるを得ない。

以上によれば,L評価書における評価額は,適正な鑑定に基づくものといえず,本件落札金額の按分に用いることができない。

そのほか,原告は,按分の方法として,①請負工事原価(本件建物等を新築した時の工事価格)による按分や,②本件競売評価書における評価額に基づく按分についても主張する。
しかしながら,上記①については,本件建物等が新築されてから評価日(平成23年6月1日)までの間に約5年2か月が経過しているにかかわ
らず,その間における市場動向の変化等を考慮せず,本件建物等を新築した当時の工事価格を按分に用いるというものであるから,評価日における価額比による按分の方法として適切ではない。
また,上記②については,本件競売評価書は本件不動産が裁判所の競売手続により売却に付されることを前提としたものであり,競売不動産に特
有の各種の制約等を反映させたものであると認められるから,これをそのまま,法人税に係る減価償却費の額及び消費税の課税仕入れに係る支払対価の額を計算するための本件落札金額の按分に用いることは相当でない。ウ
(4)

したがって,原告の上記主張はいずれも採用することができない。小括
以上によれば,本件落札金額の按分の基礎となる本件不動産に係る各資産
(本件ディスプレイ設備及び本件内部造作を除く。)の価額については,本件鑑定による各資産の評価額によることが相当である。
なお,本件鑑定における本件建物等の評価額には,本件附属設備の評価額も含まれるところ,これについては,本件建物等の新築時の工事費(別表8-1)の比率に基づいて各資産に按分することが相当である(別表10のB列③~⑨欄)。これに対し,本件アクリル壁(前提事実(2)ウ(ア))は,本件建物の壁面の一部であり,その評価額は本件鑑定における本件建物等の評価額に含まれるところ,これが建物附属設備に当たらないことは明らかであ
るから,本件建物と一体のものとして減価償却されるべきである。また,本件鑑定の対象とされていない本件ディスプレイ設備については,平成23年1月1日時点における固定資産税評価額2343万3552円から5か月分の減価額を控除した2142万2173円と評価するのが相当である(この点につき,原告は,本件ディスプレイ設備の設置時の見積書〔甲24。平成18年1月24日付け〕に基づき,定額法に準ずる方法により未償却残高を計算して算出した3359万1667円と評価すべきである旨主
張するが,かかる価格が本件ディスプレイ設備の平成23年6月1日当時の時価を示すものとはいえず,固定資産税評価額以外にその時価といい得る価額は見当たらない。)。
5
争点(4)(本件内部造作の評価)について
(1)

本件内部造作は,原告が本件不動産の所有権を取得した当時,空室とな
っていた本件建物の4階に施されていた高級クラブの内装であり,電気設備,給排水・衛生・ガス設備,空調設備等の建物附属設備を含むものである(認定事実(1)ウ)。
被告は,このような本件内部造作の評価額は,既に本件建物等の評価額に含まれているから,本件建物等の評価額を算定するに当たり,上記4における価額(本件鑑定における本件建物等〔本件ディスプレイ設備及び本件内部造作を除く。〕の評価額5億5480万円に,本件ディスプレイ設備の評価額2142万2173円を加算したもの。)に,さらに本件内部造作の評価額を加算するのは相当でない旨を主張する。

(2)

しかしながら,本件鑑定においては,上記5億5480万円の評価額と
は別に,本件内部造作について1064万円の価値を有するものと評価している。
これは,①一般に,スケルトン貸しにおいては,賃借人が施した内部造作について,賃借人の交替の際に旧賃借人から新賃借人への有償又は無償の譲渡の対象となること(認定事実(1)エ),②本件内部造作は,もともとスケルトン貸しが行われていた本件建物の4階について前賃借人が内装を施したものであり,賃貸借契約が終了した後も本件内部造作がそのまま残されていた(前賃借人が所有権を放棄した)ため,本件競売により本件不動産の所有権を取得した原告が本件内部造作の所有権も取得するに至ったこと(認定事実(1)イ,ウ)などの事情を踏まえたものと解される。そして,本件鑑定は,本件見積書に記載された本件内部造作の見積額(1億2500万円)に時点修正を施した上で,造作譲渡における譲渡価格水準や,本件内部造作が施されていることによるリース店舗としての賃料の増額分が本件不動産の価格に及ぼす影響等を考慮し,90%の減価により本件内部造作の積算価格を1050万円と評価し,かかる積算価格が全体に占める割合(0.35%)に基
づき本件不動産の評価額を按分して,本件内部造作の評価額を1064万円としたものである(認定事実(2)ウ(ア),(イ))。
このように,本件鑑定における本件内部造作の評価は,店舗等の賃貸借における内部造作の取扱いや本件における事情を踏まえ,適正に行われたものということができる。

(3)

そうすると,本件建物等の評価額を算定するに当たっては,上記4にお
ける価額に,本件内部造作の評価額を加算するのが相当である。
(4)

当事者の主張について
本件鑑定における本件内部造作の評価に対し,①被告は,本件鑑定におい
て本件見積書の見積額を基礎としたことは誤りである旨を主張し,②原告は,本件鑑定の評価は低額に過ぎる(9525万1860円と評価すべきである)旨を主張する。

本件見積書における見積額を基礎としたことに関し
本件見積書を作成したR社のPは,平成18年当時に本件内部造作の設計及び施工を実際に行った者である(認定事実(1)ウ)から,本件内部造
作の写真を参照するなどして,本件内部造作と同等の内装を施すのに必要な部材等を選定し,その数量を計算し,本件見積書作成時(平成29年4月)の単価に基づき積算することは可能であると考えられるところ,本件見積書における積算の具体的内容について信用性を疑わせる事情は認められない。また,本件見積書における1億2500万円という見積額は,T地区の高級クラブの内装として想定し得ない金額ではなく(第6回弁論準備手続調書の鑑定人の説明参照),その見積額が過大である
ということもできない。
そうすると,本件見積書が平成29年4月に作成されたことや,その作成に用いられた資料が明らかにされていないことなど被告の指摘する事情を考慮しても,本件鑑定において本件見積書を基礎として本件内部造作の評価をしたことが誤りであるとはいえない。


上記の基礎額に対する時点修正に関し
まず,本件鑑定において,本件見積書が作成された平成29年4月の建築費指数と評価時である平成23年6月の建築費指数の比による調整(時点修正)をした点については,本件見積書に,平成18年当時の見
積書等は既に廃棄されてしまったため再度見積書を作成した旨が記載されていること(甲44)に照らせば,R社(P)が平成29年4月に本件見積書を作成するに当たり,平成18年当時の単価を用いることができたとは考え難く,平成29年当時の単価を用いて積算したものと推認される。そうすると,本件鑑定において上記の時点修正を行ったことに
誤りがあるとはいえない。
次に,本件鑑定において,上記の時点修正後の工事価格から90%の減価をした点については,一般に,旧賃借人から新賃借人に対する内部造作の譲渡は,無償による場合が多く,有償による場合でも,50万円から100万円程度での譲渡が主流であり,数百万円以上で譲渡されるの
は稀であること(認定事実(1)エ)に照らせば,工事価格からの大幅な減価は免れないというべきである。他方,本件内部造作に係る工事価格が1億0900万円(時点修正後)であって,店舗の内装としてはかなりの高額であることを考慮すると,上記減価後における本件内部造作の積算価格(1050万円)が過大に過ぎるということもできない。

以上によれば,本件鑑定における本件内部造作の評価は相当であり,原告及び被告の上記各主張はいずれも採用することができない。

なお,本件内部造作は上記(1)のとおり建物附属設備を含むところ,これらについては,本件見積書に記載されている工事費(本件見積書の大項目の記号AからDまでに記載されている各工事に対応する各金額)の比率に基づいて各資産に按分した上,建物附属設備に相当する部分は各設備に係る耐用年数を適用し,その余の部分は本件建物と同じ耐用年数を適
用すべきである(別表10のC列⑩~⑭欄,E列⑪~⑭欄)。
6
本件各処分の適法性について
(1)

以上によれば,本件不動産を構成する各資産のうち,①本件土地は24
億7456万円,②本件建物等(本件内部造作及び本件ディスプレイ設備を除く。)は5億5480万円,③本件内部造作は1064万円,④本件ディスプレイ設備は2142万2173円とするのが相当であるから,上記①から④までの合計額である30億6142万2173円が,本件不動産の時価評価額である。
そこで,上記時価評価額に占める各資産の割合に従って本件落札金額25
億8975万5895円を按分すると,各資産の取得価額は,別表10のD列各欄記載のとおりである。
以上を前提に,本件各処分の適法性について検討する。
(2)

法人税に関し
本件法人税更正処分につき
上記(1)のとおり本件不動産を構成する各資産の取得価額を区分すると,減価償却資産に係る償却限度額は,別表10のI列各欄記載のとおり(合計1899万1822円)となり,本件確定申告(前提事実(3))における減価償却超過額は1億4689万0178円となる。これを前提に,法人税について計算すると,本件事業年度における所得金額は9073万7051円(別表11の④欄),納付すべき法人税額は2622万0400円(別表11の⑦欄)となる。本件法人税更正処分は,これらをいずれも
下回るから,適法である。

本件法人税賦課決定処分につき
上記アのとおり本件法人税更正処分は適法であるところ,同処分に伴う過少申告加算税の額は252万5000円であり,本件法人税賦課決定処分における過少申告加算税の額と同額であるから,本件法人税賦課決
定処分は適法である(別紙4の2参照)。
(3)

消費税等に関し
本件消費税等更正処分につき
上記(1)のとおり本件不動産を構成する各資産の取得価額を区分すると,本件土地の取得価額は20億9331万0228円(別表10のD列②
欄),本件建物等の取得価額は4億9644万5667円(別表10のD列①欄の金額から②欄の金額を控除した額)となるから,控除対象仕入税額(関係法令等(9))は1896万5110円(別表12の④欄),本件課税期間の納付すべき消費税の額はマイナス1223万1150円(別表12の⑧欄),納付すべき地方消費税の額はマイナス305万7787円
(別表12の⑭欄)となる。したがって,本件消費税等更正処分のうち,これらの金額を超える部分は,違法である。

本件消費税等賦課決定処分につき
上記アによれば,本件課税期間に係る差引納付すべき消費税額は29
48万7700円(別表12の⑪欄),差引納付すべき譲渡割額は737万1900円(別表12の⑰欄)となるから,これを前提とすると,本件消費税等更正処分に伴う過少申告加算税の額は550万2500円となる(別表13の⑫欄)。したがって,本件消費税等賦課決定処分のうち,これらの金額を超える部分は,違法である。
第4
結論
以上によれば,原告の請求のうち本件法人税更正処分及び本件法人税賦課決定処分の取消しを求める請求はいずれも理由がないから棄却することとし,本件消費税等更正処分及び本件消費税等賦課決定処分の取消しを求める請求は,上記第3の6(3)の各税額を超える限度で理由があるから,これを認容し,その余の部分を棄却することとして,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第51部

裁判長裁判官

清水知恵子
裁判官進藤壮一郎及び同伊藤愉理子は,転補のため,いずれも署名押印することができない。

裁判長裁判官


(別紙1省略)
(別紙2省略)
(別紙3省略)
(別表1省略)
(別表2省略)
水知恵子
(別表3省略)
(別表4省略)
(別表5省略)
(別表6省略)
(別表7省略)
(別表8省略)
(別表9省略)
(別表10省略)
(別表11省略)

(別表12省略)
(別表13省略)

(別紙4)
本件各処分の根拠及び適法性に関する被告の主張
1
本件法人税更正処分について
(1)

本件法人税更正処分の根拠
被告が主張する原告の本件事業年度の法人税の所得金額及び納付すべき法
人税額は,次のとおりである。
なお,所得金額の冒頭に△を付したものは,当該金額が欠損金額であることを示し,税額の冒頭に△を付したものは,当該金額が還付金額であることを示す。

所得金額(別表5④欄)

8956万0311円

上記金額は,次の(ア)の金額に(イ)の金額を加算し,(ウ)の金額を減算した金額である。
(ア)

確定申告における所得金額(別表5①欄)

△5282万9651


上記金額は,本件事業年度の法人税の確定申告書(乙6の1。以下
本件法人税申告書という。)別表1(1)の所得金額又は欠損金額欄に記載された金額と同額である。(イ)

減価償却超過額(別表5②欄)

1億4571万3438


上記金額は,原告が,本件競売により一括取得した本件不動産について,本件落札金額を本件土地及び本件建物等の取得価額に区分した上で,損金の額に算入した本件建物等に係る減価償却費のうち,法人税法31条1項に規定する償却限度額を超える金額であり,原告の所得金額に加算すべき金額である。

(ウ)

繰越欠損金の損金算入額の増加額(別表5③欄)
332万3476円
上記金額は,原告の平成21年12月1日から平成22年11月30日までの事業年度に係る次年度(本件事業年度)に繰り越す欠損金の額332万3476円(本件法人税申告書別表7(1)の控除未済欠損金額の計欄に記載された金額)と同額であり,法人税法57条1項の規定により,本件事業年度の損金の額に算入される金額である。


所得金額に対する法人税額(別表5⑤欄)

2590万8000円

上記金額は,上記アの所得金額(ただし,国税通則法〔以下通則法という。〕118条1項の規定に基づき1000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額)に,法人税法66条1項及び2項並びに租税特別措置法42条の3の2(平成21年法律第13号により追加され,平成23年法
律第114号による改正前のもの。)に規定する税率(所得金額のうち年800万円以下の金額については100分の18,それを超える金額については100分の30)を乗じて計算した金額である。

法人税額から控除される所得税額等(別表5⑥欄)
4万0606円

上記金額は,法人税法68条1項の規定により法人税の額から控除され
る金額であり,本件法人税申告書別表1⑴の控除税額の計算の所得税の額欄に記載された金額と同額である。エ
納付すべき法人税額(別表5⑦欄)

2586万7300円

上記金額は,上記イの金額から上記ウの金額を差し引いた金額(ただし,通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数金額を切り捨てた
後の金額。後記カにおいて同じ。)である。

既に納付の確定した法人税額(別表5⑧欄)

△4万0606円

上記金額は,本件法人税申告書別表1(1)の所得税額等の還付金額欄に記載された金額と同額である。

差引納付すべき法人税額(別表5⑨欄)

2590万7900円

上記金額は,上記エの金額から上記オの金額を差し引いた金額であり,原告が新たに納付すべき法人税額である。

翌期へ繰り越す欠損金額(別表5⑩欄)

0円

原告は,本件法人税申告書において,翌期へ繰り越す欠損金額を,本件事業年度に繰り越された本件事業年度前に生じた欠損金額332万3476円及び本件事業年度の欠損金額5282万9651円の合計額である5
615万3127円と記載しているが,本件事業年度前に生じた欠損金額332万3476円は本件事業年度の損金の額に算入され(上記ア(ウ)),また,本件事業年度の所得金額は8956万0311円であり(上記ア),本件事業年度に生じた欠損金額はないから,翌期へ繰り越す欠損金額はない。

(2)

本件法人税更正処分の適法性
被告が主張する原告の本件事業年度の法人税の所得金額,納付すべき法人
税額及び翌期へ繰り越す欠損金額は,所得金額8956万0311円(上記(1)ア),納付すべき法人税額2586万7300円(同エ)及び翌期へ繰り越す欠損金額0円(同キ)であるところ,本件法人税更正処分における所
得金額及び納付すべき法人税額は,いずれも上記金額を下回り,翌期へ繰り越す欠損金額は上記金額と同額であるから,本件法人税更正処分は適法である。
2
本件法人税賦課決定処分について
(1)

本件法人税賦課決定処分の根拠
前記1(2)のとおり,本件法人税更正処分は適法であるところ,本件法人
税更正処分により原告が新たに納付すべき法人税の額については,その計算の基礎となった事実について,原告がこれを計算の基礎としなかったことに,通則法65条4項に規定する正当な理由があるとは認められない。したがって,本件法人税更正処分に伴って課されるべき過少申告加算税の額は,本件法人税更正処分の差引納付すべき法人税額1700万円(通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後の金額)に100分の10の割合を乗じて算出した金額170万円及び当該差引納付すべき法人税額1700万2400円のうち50万円を超える部分に相当する税額1650万円(通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後の金額)に100分の5の割合を乗じて算出した金額8
2万5000円の合計額252万5000円となる(通則法65条1項及び2項)。
(2)

本件法人税賦課決定処分の適法性
上記(1)における過少申告加算税の額252万5000円は,本件法人税
賦課決定処分における過少申告加算税の額と同額であることから,本件法人
税賦課決定処分は適法である。
3
本件消費税等更正処分について
(1)

本件消費税等更正処分の根拠
被告が主張する原告の本件課税期間に係る消費税等の課税標準額及び納付
すべき税額は,次のとおりである。

課税標準額(別表6①欄)

1億6834万9000円

上記金額は,本件課税期間の消費税等の確定申告書(乙7の1。以下本件消費税等申告書という。)の課税標準額欄に記載された金額
と同額である。

課税標準額に対する消費税額(別表6②欄)

673万3960円

上記金額は,消費税法29条の規定により,上記アの金額に税率100分の4を乗じて算出した金額である。

控除対象仕入税額(別表6④欄)

1607万5855円

上記金額は,消費税法30条の規定に基づき算出した金額であり,次の(ア)の金額から(イ)の金額を控除した金額4億2199万1203円に105分の4を乗じて算出した金額である。
(ア)

確定申告における課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)
12億7188万8477円
上記金額は,本件消費税等申告書の付表2課税仕入れに係る支払い対価の額(税込み)欄に記載された金額である。(イ)

課税仕入れに係る支払対価の額に含まれない本件土地の取得価額
8億4989万7274円
上記金額は,原告が本件建物等の取得価額の一部の金額であるとして
課税仕入れの額に含めていた金額であり,当該金額は課税仕入れに係る支払対価の額に含まれない土地の取得価額の一部であることから,課税仕入れに係る支払対価の額に該当しない金額である。


控除不足還付税額(別表6⑧欄)

934万1895円

上記金額は,上記ウの金額から上記イの金額を控除した金額である。オ
既に還付の確定した本税額(別表6⑩欄)

4171万8934円

上記金額は,本件消費税等申告書の控除不足還付税額欄に記載された金額である。


差引納付すべき消費税額(別表6⑪欄)

3237万7000円

上記金額は,上記オの金額から上記エの金額を控除した金額(通則法119条1項の規定に基づき100円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。

地方消費税の課税標準額(別表6⑫欄)

934万1895円

上記金額は,上記エの金額と同額であり,地方税法72条の82の規定に基づく地方消費税の課税標準額である。

還付すべき譲渡割額(別表6⑭欄)

233万5473円

上記金額は,地方税法72条の83の規定に基づき,上記キの金額に税率100分の25を乗じて算出した金額である。


既に還付の確定した譲渡割額(別表6⑯欄)
1042万9733円

上記金額は,本件消費税等申告書の譲渡割額(還付額)欄に記載された金額である。

差引納付すべき譲渡割額(別表6⑰欄)

809万4200円

上記金額は,上記ケの金額から上記クの金額を差し引いた金額(地方税法20条の4の2第3項に基づき100円未満の端数金額を切り捨てた後
のもの)である。

差引納付すべき消費税等の額(別表6⑱欄)

4047万1200円

上記金額は,上記カの金額及び上記コの金額の合計額であり,原告が新たに納付すべき消費税等の額である。
(2)

本件消費税等更正処分の適法性
被告が主張する原告の本件課税期間に係る消費税等の額は,控除不足還付
税額934万1895円(上記⑴エ)及び還付すべき譲渡割額233万5473円(同ク)の合計額1167万7368円であるところ,本件消費税等更正処分における控除不足還付税額(別表2B列⑧欄)及び還付すべき譲渡割額(別表2B列⑭欄)は,いずれも上記金額を下回ることから,本件消費
税等更正処分はいずれも適法である。
4
本件消費税等賦課決定処分について
(1)

本件消費税等賦課決定処分の根拠
前記3(2)のとおり,本件消費税等更正処分は適法であるところ,原告が
新たに納付すべき消費税等の額については,その計算の基礎となった事実について,原告がこれを計算の基礎としなかったことに,通則法65条4項に規定する正当な理由があるとは認められない。
したがって,本件消費税等更正処分に伴って課されるべき過少申告加算税の額は,差引納付すべき消費税額3210万4000円及び差引納付すべき
譲渡割額802万6000円の合計額4013万円(通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後の金額)に100分の10の割合を乗じて算出した金額401万3000円及び当該差引納付すべき消費税額及び譲渡割額の合計額4013万円のうち50万円を超える部分に相当する税額3963万円(通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後の金額)に100分の5の割合を乗じて算出した金額198万1500円の合計額599万4500円となる(通則法65条1項及び2項)。
(2)

本件消費税等賦課決定処分の適法性
上記(1)の過少申告加算税の額599万4500円は,本件消費税等賦課
決定処分における過少申告加算税の額と同額であることから,本件消費税等賦課決定処分は適法である。
以上

(別紙5)
争点に関する当事者の主張の要旨
1
争点(1)(審査請求前置の有無)について
(被告の主張)

税務署長が行った処分のうち所得金額及び納付すべき税額について一定額を超える額に相当する部分の取消しのみを求めて不服申立てがされた場合には,その後提起される取消しの訴えにおいて当該一定額を超えない部分の適法性を争うことにつき,当該一定額を超えない部分には不服申立てがされていないから,通則法115条1項が要求する不服申立てを経ていないというべきである。
原告は,本件審査請求に係る審査請求書においては,本件各処分の全部の取消しを求めていたものの,その後に提出した本件意見書では,減価償却超過額が1億1602万8206円(別表1のB列②欄)であるとした本件法人税更正処分に対し,減価償却超過額とすべき額は5847万5718円であるとして,同処分の一部の取消しを求める主張に変更し,さらに,本件反論書において,再度,
本件法人税更正処分の取消しを求める範囲を変更する(減価償却超過額とすべき額は7759万6613円であるとの主張〔別表1のC列②欄〕)とともに,本件消費税等更正処分についても一部の取消しを求める内容に主張を変更している(別表2のC列⑧欄,⑭欄)。
そうすると,原告は,本件審査請求に当たり,本件法人税更正処分のうち,所
得金額2144万3486円(別表1のC列④欄)及び納付すべき税額543万2200円(別表1のC列⑦欄)を超えない部分並びに本件法人税賦課決定処分のうち,過少申告加算税額79万5500円(別表3のB列⑧欄)を超えない部分を争わず,当該部分の取消しを求めていない。また,原告は,本件消費税等更正処分のうち,納付すべき税額マイナス2796万6602円(別表2のC列⑧
欄)及び納付すべき地方消費税額マイナス699万1650円(別表2のC列⑭欄)を超えない部分並びに本件消費税等賦課決定処分のうち,過少申告加算税額255万3500円(別表4のB列⑫欄)を超えない部分を争わず,当該部分の取消しを求めていないことが認められるから,原告が争わず,取消しを求めていない上記の各部分については,適法な不服申立ての前置を欠いており,不適法な訴えとして却下されるべきである。
(原告の主張)

争点主義の下では,不服申立て手続における審理の対象は基本的課税要件事実の同一性が失われない範囲では理由の差替えが認められていることに照らすと,本件審査請求の審理の対象も,基本的課税要件事実の同一性が失われない範囲においては,その全部に及ぶと解すべきである。
原告は,本件審査請求におい本件各処分の全部の取消しを求めたのであり,こ
れに対する答弁書が提出された後に,審査請求の理由の一部を変更したにすぎない。そして,原告は,異議申立てにおいても本件各処分の全部を不服として取消しを求めていたのであるから,原告は,全部取消しを求める異議申立ての趣旨及び審査請求の趣旨を変更していない。よって,本件訴えが適法な不服申立ての前置を欠くとはいえない。

2
争点(2)(本件不動産の取得価額として本件落札金額のほかに本件敷金債務相当額を加算すべきか)について
(原告の主張)
按分計算の基礎となる金額は,本件落札金額(25億8975万5895円)
に,原告が前所有者から賃貸人の地位を承継したことに伴い負担するに至った敷金返還債務である本件敷金債務相当額(1億5957万円〔前提事実(2)オ〕)を加算した,27億4932万5895円とすべきである。
(1)

対抗力ある賃貸借の場合には,競売による所有権移転とともに,買受人は
賃貸人たる地位を当然に承継するのであり,旧賃貸人に差し入れられた敷金に関する法律関係も,賃貸人たる地位の承継とともに,当然に買受人に移転するというのが確立した判例である。本件において,本件根抵当権の設定日(平成18年5月26日)より前に締結された対抗力ある賃貸借契約は4つある(1階,2階,5階及び6階)ところ,本件競売評価書において,売却基準価額の算定に当たり,本件敷金債務相当額1億5957万円を本件建物等の価額から控除しているのであり,これは,買受人である原告が賃貸人たる地位を承継し,それに伴い敷金返還債務も承継することを踏まえたものであるから,原告は上記1億5957万円の本件敷金債務を承継したものである。
(2)

法人税法施行令54条1項1号は,購入した減価償却資産の取得価額につ
いて,当該資産の購入の代価(引取運賃,荷役費,運送保険料,購入手数料,関税その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には,その費用の額を加算した金額)と当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額との合計額である旨を規定している(関係法令等(5))。
原告が上記(1)のとおり承継した本件敷金債務は,同号にいう資産の購入のために要した費用に当たるから,本件競売により取得した資産の取得価額に含まれることになる。

(3)

被告は,販売費・一般管理費等の費用のうち償却費以外のものについては
債務の確定を要件としているところ,本件敷金債務については債務が確定していないから,これを本件落札金額に加算することは許されない旨を主張する。しかしながら,債務確定主義が問題となるのは,法人税法22条3項3号所定の費用についてのものである。本件敷金債務の承継は,費用ではなく,個別の固定資産の取得行為自体に関して生じたものであり,実質的にみてその代価を構成すべきものとして,資産の取得価額に加算されるものであるから,これを費用として債務の確定を要件とすることは誤りである。
(4)

原告は,本件敷金債務相当額を本件不動産の取得価額とせず,簿外の債務
として経理処理していたところ,これは,本件敷金債務が直ちに支出を伴うものでないことに伴う経理上の誤りであり,原告がこうした経理上の処理をしていたからといって,本件敷金債務が生じたという事実には変わりがない。(被告の主張)
(1)

本件敷金債務相当額が本件不動産の按分計算の基礎となる金額に加算
されるか否かは,本件敷金債務相当額が本件不動産の取得価額となるか否かの問題であるところ,以下のとおり,本件敷金債務相当額は本件不動産の取得価額とならない。
(2)

法人税法施行令54条1項1号は,購入した減価償却資産の取得価額につ
いて,当該資産の購入の代価(引取運賃,荷役費,運送保険料,購入手数料,関税その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には,その費用の額を加算した金額)及び当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額とする旨規定している(関係法令等(5))。そして,同令は,土地のような非減価償却資産の取得価額の範囲については特に規定していないものの,非減価償却資産の取得価額についても減価償却資産の取得価額についての規定を類推適用すべきである。

まず,本件敷金債務相当額が本件不動産の購入の代価に該当するかについて検討すると,本件不動産は,東京地方裁判所が行った競売という特殊な事情により原告が取得したものであるところ,①原告と本件不動産の所有者であったK社は,直接の取引関係になく,原告とK社との間で本件不動産の購入の代価を本件落札金額に本件敷金債務相当額を加算した27億4932万5895円とする旨の同意がなされていたと認められる事実がないこと,
また,原告とK社との間で本件敷金債務相当額に係る金員及び債務の引継ぎが行われた事実も認められないこと,②本件競売評価書に引受債務相当額の記載はあるものの,具体的に債務が生じている旨の記載はなく,競落予定価格から明示的に本件敷金債務相当額が控除されたとする事実がないこと,③競落人に承継されるべき敷金の額がいくらかということは,競売事件
における評価書や物件明細書の記載によって定まることではないことからすると,本件敷金債務相当額は,本件不動産の購入の代価とはいえない。なお,本件競売に係る物件明細書(乙24〔34枚目以下〕。以下本件物件明細書という。)においても,本書面は,現況調査報告書,評価書等記録上表れている事実とそれに基づく法律判断に関して,執行裁判所の裁判所書記官の一応の認識を記載したものであり,関係者の間の権利関係を最終的に決める効力はありません(訴訟等により異なる判断がなされる可能性もあります)。(36枚目)と記載されており,本件物件明細書の記載内容は,飽くまで,売却基準価額を決めるための参考にすぎないものであって,競落人と賃借人の間の債権債務の存在や本件敷金債務相当額を最終的に確定するものではない。

次に,本件敷金債務相当額が本件不動産の購入のために要した費用又は事業の用に供するために直接要した費用に該当するかを検討するに,これらはいずれも費用を前提とするものであるところ,法人税法22条3項2号は,販売費・一般管理費等の費用として各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額について債務の確定を
要件としている。そして,債務が確定しているというためには,当該事業年度終了の日までに当該費用に掛かる債務が成立していること,当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること,当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること,以上の全ての要件に該当することが必要で
ある。
原告は,本件建物を取得したことに伴い,K社が本件根抵当権に優先する各賃借人(本件賃借人)と締結した賃貸借契約における貸主としての地位を承継したところ,K社が本件賃借人と取り交わした契約書(乙24〔2枚目から33枚目まで〕)で引用されている事業用定期建物賃貸借契約約款
(以下本件約款という。)6条4項は,賃貸人は,賃借物件の明渡しがあったときは,契約書の(2)(賃貸借条件)に記載した敷金より償却費(本件建物の1階については,賃料の1か月分であり,2階,5階及び6階については,賃料の2か月分である。)を取得し,残額を所定の時期(物件明け渡し後6か月以内)までに賃借人に対して返還する旨を定めているが,本件競売時において本件賃借人は賃借物件を明け渡していないことから,本件敷金債務相当額は,債務の確定の要件である具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していない。さらに,本件約款4条4項は,契約書に定められた賃料の改定時期(3年ごと)のほか,①土地又は建物に対する租税その他の負担の増減により賃料が不相当となった場合,②土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により賃料が不相当となった場合,③近隣の建物の賃料に比較して賃料が不相当となった場合のいずれかに該当する場合には,契約期間中であっても,賃貸人及び賃借人の協議の上,賃料を改定することができる旨を定めている。以上のとおり,本件賃借人に係る賃料が,賃貸人と当該賃借人との協議の上,いつでも改定できるものであることからすると,本件競売時において本件賃借人に対して返還されるべき敷金の額が確定して
いないことから,本件敷金債務相当額は,債務の確定の要件である金額を合理的に算定することができるものであるともいえない。したがって,本件敷金債務相当額は,原告が本件不動産を落札(取得)した本件事業年度において,その返還時期及び返還額が確定していたものではなく,債務が確定した費用とはいえないから,本件不動産の購入のために要した費用又は事業の用に供するために直接要した費用とは認められない。

上記のほか,原告が,本件事業年度の確定した決算においても,本件不動産の取得価額の合計額を求めるに当たり,本件敷金債務相当額を本件不動産
の取得価額としておらず,その後の事業年度においても同様であって,本件敷金債務相当額は取得価額とならないとの認識を有していたことがうかがわれること,L評価書においても,本件敷金債務相当額は本件不動産の評価額の算出の基礎とされていないことを併せ踏まえると,本件敷金債務相当額は本件不動産の取得価額とはならず,本件不動産の各資産の按分計算の基礎となる金額に加算されない。したがって,本件不動産の取得価額は,本件不動産の購入の代価として原告が支払った本件落札金額である25億8975万
5895円となる。
(3)

原告は,本件敷金債務相当額が本件不動産の購入のために要した費用である旨主張する一方で,期間費用として認識することは誤りであると主張し,資産の取得価額となる費用と事業年度の損金の額に算入すべき費用を別異に解し,債務の確定は問題にならない旨主張する。

しかしながら,当期の費用に該当するもののうち,資産等の購入のために要した費用又は資産等を事業の用に供するために直接要した費用は,かかる資産等の取得価額となり,当期の所得金額の計算において損金の額に算入されないものであり,また,当期の費用が当該事業年度終了の日までに債務の確定したものであることを要件としていることは上記(2)で述
べたとおりであるから,資産の取得価額となる費用についての債務の確定と各事業年度の所得の金額の計算上,当該事業年度の損金の額に算入すべき費用についての債務の確定とで,別異に解すべき理由はない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
3
争点(3)(本件不動産を構成する各資産〔ただし,本件内部造作を除く。〕の評価)について
(被告の主張)
(1)

地方税法341条5号は,固定資産税における価格の意義を適正な時価と規定しており,この適正な時価とは,正常な条件の下に成立する取引価格,すなわち客観的な交換価値をいうものと解されている。固定資産税評価額は,総務大臣の告示する固定資産評価基準により算出されたものであり,土地については売買実例価額,家屋については再建築価額に基づいて評価されているものであるため,土地及び家屋の適正な時価を反映していると解される上,土地と家屋の価額の算出機関及び算出時期が同一であるから,土地及び家屋の固定資産税評価額はいずれも同一時期の時価を反映していると考えられる。また,本件においては,本件落札金額を区分する際に用いる価額比は本件競売によって取得した各資産の時価によるべきであるところ,①時価は,課税の明確性や公平を確保する観点からは,一定の客観的な基準によって認定された価額であることが要請されるものであること,②固定資産税評価額は,固定資産税評価において適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有する固
定資産評価基準に従って決定される価格であり,適正な時価と推認するのが相当とされている価格であることからすれば,客観的な基準によって認定された時価であるといえること,③各資産の時価として評価された価額を按分計算の比率として用いる場合には,その価額間の評価の整合性も求められるところ,固定資産税評価額は,土地,家屋及び償却資産の間の評価の均衡が図られた価
格であることからすれば,各資産の固定資産税評価額の価額比を用いて按分する方法は合理的であるといえる。そして,上記①の要請は,固定資産税の課税の場面のみならず法人税法及び消費税法においても当然に妥当するものであり,上記②及び③については,法人税法及び消費税法の適用に当たっても,資産の取得価額(及び課税資産と非課税資産の譲渡の対価の額)を合理的に区分する
方法において固定資産評価基準に従って決定された固定資産税評価額を用いる場合には,その合理性を担保すべく当然に考慮される要素なのであるから,各資産の固定資産税評価額の価額比を用いて按分する方法は,法人税法及び消費税法においても合理性を欠くものとはいえない。
したがって,本件において,本件落札金額を区分する際の価額比は,固定資
産税評価額の価額比を用いることが合理的であるから,本件土地の固定資産税評価額並びに本件建物及び本件ディスプレイ設備の各固定資産税評価額に相当する額の価額比を用いて本件落札金額を按分することが相当である。また,当該価額比については,同一時期における価額比を基準とすることにより合理性が担保されると解されるため,原告が本件不動産を取得した平成23年における固定資産税の賦課期日である平成23年1月1日現在の,本件土地の固定資産税評価額並びに本件建物及び本件ディスプレイ設備の固定資産税評価額相当額を価額比として用いることが相当である。
(2)

この点,原告は,固定資産評価基準における土地,家屋及び償却資産の評
価方法が異なることや,本件建物はUの繁華街にある飲食店舗用のビルであり,実際の売買においてはその収益性が重視されることから,収益還元法に依る評価が必要不可欠であり,固定資産税評価額による按分は相当でない旨を主張する。
しかしながら,固定資産税評価額は,正常価格を求めるという統一された共通原則の下,土地,家屋及び償却資産の間の評価の均衡が図られた価格であるといえるほか,固定資産税評価基準における土地,家屋及び償却資産の評価方
法が異なるのは,各資産の価格を構成する条件に多くの相違点が認められることなどから,各資産に適した評価方法を採用した結果であり,各資産に適した評価方法の検討に当たっては,収益の額を基準として評価する方法についても考慮した上で,土地については売買実例価格を,家屋については再建築価格を,償却資産については取得価格をそれぞれ基準として評価する方法によるべきも
のとしたものである。
したがって,固定資産評価基準における土地,家屋及び償却資産の評価方法が異なること及び固定資産評価基準における評価方法が収益還元法による評価を用いていないことをもって,本件落札金額を区分するに当たり,各資産の固定資産税評価額を用いる按分方法が合理的ではないとはいえず,原告の上記主
張には理由がない。
(3)

L評価書について
原告は,本件落札金額を区分する方法として,不動産鑑定士による鑑定評価書であるL評価書が存在する以上,本件落札金額はL評価書における評価額に基づいて区分されるべきである旨を主張する。
しかしながら,確かに,土地と建物を一括取得した場合における各資産の取得価額を区分する方法として,不動産鑑定士による評価額を用いて区分する方法も考えられるものの,L評価書は適切な評価を行ったものではなく信頼性を欠くものであり,また,合理的なものとも認められないから,L評価書における評価額を用いて本件落札金額を区分する方法は適切ではない。
すなわち,そもそも,原告はL評価書を修正した上で,按分計算をしている
ところ,L評価書に修正すべき項目が含まれることを自ら認めているし,内容についても,①L評価書が建物再調達原価の算出の前提とした建設事例は,いずれも本件建物と構造や階数等が異なっており,本件建物と類似したものとはいえないこと,②L評価書が建物再調達原価の算出の前提とした2つの建設事例は,いずれも工事価格が高額であるとの特殊性を有するものであるこ
と,③L評価書には,本件建物の再調達原価の査定について,建設事例の純工事費(単価)の格差修正に合理性が欠け,その他付帯費用として企業家利潤を含めるなど,その根拠が明らかではない評価内容が含まれること,⑤L評価書の査定した再調達原価を基に評価した本件建物の評価額は実際の新築請負代金とのかい離が大きく合理的なものではないという問題点があり,合
理性があるものとはいえない。
したがって,L評価書は本件落札金額を区分する方法として適切ではなく,そうである以上,L評価書の一部を修正して按分計算することにも合理性がないというべきである。
(4)

本件鑑定について
本件鑑定は,本件不動産(ただし,本件ディスプレイ設備を除く。)の平成
23年6月1日時点の時価評価額として,原価法による積算価格及び収益還元法による収益価格を算定し,鑑定額を合計30億4000万円とし,その内訳として本件土地を24億7456万円,本件建物(本件附属設備を含む。)を5億5480万円及び本件内部造作を1064万円としている。
本件内部造作についての評価については後記4において述べるが,これを措くとしても,本件鑑定をもって,固定資産税評価額を用いた按分方法により行った本件各処分における取得価額等の算定が誤りとなるものではない。すなわち,土地等の固定資産の時価を算出するに当たっては,時価自体に幅があるものであるところ,適正な時価とは,正常な条件の下に成立する取引価格すなわち客観的な交換価値と解され,これは評価的な概念であり,その鑑定
評価は必ずしも一義的に算出され得るものではなく,性質上,その鑑定評価には一定の幅があり得るものである。また,地方税法は,課税対象となる全国の大量の固定資産について,限りある人的資源及び時間的制限の下に,評価方法を総務大臣の定める評価基準によらしめたものであるから,固定資産評価基準に基づき算出された固定資産評価額は,鑑定評価理論に従った個別的な評価と
同様の正確性を有しないことは制度上やむを得ないものというべきであり,固定資産評価額と不動産鑑定士による評価とが一致しない場合が生ずることも当然に予定されているものというべきである。
そうすると,仮に本件鑑定が本件不動産の適正な時価を反映したものであると認められた場合であっても,直ちに固定資産税評価額が客観的な交換価値す
なわち適正な時価を反映していないことにはならないのであるから,法人税及び消費税等の計算において,本件落札金額を区分するに当たり,固定資産税評価額を用いる按分方法が否定されることにはならない。
(5)

固定資産税評価額を前提とした税額の計算
以上のとおり,本件落札金額を各資産の固定資産税評価額を用いる按分方法
により区分することは十分合理的であるというべきである。これを前提として,原告に係る法人税及び消費税等の額を計算すると,次のとおりである。ア
まず,平成23年1月1日当時の本件土地及び本件建物等の固定資産税評価額相当額は,別表8-1のA列各欄記載のとおり,本件土地が14億6929万1890円,本件建物等(本件ディスプレイ設備を除く。以下,(5)において同じ)が2億6146万4805円,本件ディスプレイ設備が2343万3552円である。これを前提として,本件落札金額を按分すると,
同表のB列各欄記載のとおりとなり,本件建物等の取得価額は3億8600万7174円となる。

次に,本件建物等は本件建物とその他の資産で構成されるから,これを合理的に区分することが必要となるところ,この区分に当たっては,本件建物
新築時の工事費(別表8-2)により求められる比率に基づくことが最も合理的である。
これによれば,本件建物及び本件附属設備の新築時の工事費は,別表8-1のC列各欄記載のとおりであるところ,これらの金額は,本件建物が新築された平成18年4月当時のものであるから,旧定額法により,原告が取得
した平成23年6月1日までの時の経過による価値の減耗損を評価すると,同表のD列各欄記載のとおりとなる。そこで,同欄記載の各価額の比率に基づき,上記アの本件建物等の取得価額3億8600万7174円を按分した結果を併せると,原告が本件競売によって取得した資産の取得価額は,同表のE列各欄記載のとおりとなる。

そして,これを前提として,本件建物については定額法を,本件附属設備及び本件ディスプレイ設備については定率法をそれぞれ適用し,本件建物の耐用年数を45年,本件電気設備の耐用年数を10年,本件給排水設備の耐用年数を10年,本件空調設備の耐用年数を10年,本件エレベーターの耐用年数を12年,本件ディスプレイ設備の耐用年数を5年として,それぞれ
の資産に係る減価償却限度額を求めると,別表7の被告主張額の④列各欄記載のとおりとなり,本件確定申告における償却限度超過額は,同表の⑤列の合計欄記載のとおり,1億4571万3438円となる。これを前提とした原告の納付すべき法人税額の計算については,別紙4の1で述べたとおりである。
また,本件建物,本件附属設備及び本件ディスプレイ設備の各資産の取得価額(合計4億2060万2726円〔別表8-1のB列②欄及び⑧
欄〕)は,課税仕入れに係る支払対価の額にも該当する。これを前提とした原告の納付すべき消費税等額の計算については,別紙4の3で述べたとおりである。
(原告の主張)
(1)

固定資産税評価額の価額比による按分には種々の問題点があること以下のとおり,按分の具体的な方法として,被告が主張する固定資産税評価
額の価額比により按分することは,本件においては適切ではない。ア
法人税及び消費税に係る法令及び通達のいずれにおいても,土地建物の一括譲渡の場合における各取得価額の区分について,固定資産税評価額を用いなければならない旨を定めた規定はない。固定資産を保有する法人及び個人
に幅広く賦課される固定資産税と異なり,法人税は,合理的な純経済人を前提とするものであるから,むしろ鑑定評価等を参考にして妥当と信じる申告を行うことは当然というべきであり,こうした申告が制限される理由はない。イ
土地の固定資産税評価額は,売買実例等を基にした算出価額の7割程度とされているのに対し,建物の固定資産税評価額は,固定資産評価基準に従い再調達価格による原価を基に決定されている。そして,個別性の高い建物の価額は,その評価において土地以上に大きな差異が生じ得るところ,とりわけ,本件建物は,Uの繁華街にある飲食店舗用のビルであり,実際の売買においてはその収益性が重視されることから,収益還元法による評価は不可欠
であるところ,固定資産税評価額の決定に当たってはそのような評価はされていない。

固定資産税評価は,固定資産税の賦課・徴収という固有の目的で行われており,固定資産税が各自治体の財源となっていることから,評価の安定性・市町村全体の評価のバランスの確保,財源維持等,純粋な評価以外の要素も加わるものである。また,画一的な評価の取扱いを行うことが一般納税者の利便にも資することから,逆に,物件ごとの個別事情は必ずしも反映されて
いない。

被告は,土地及び建物の固定資産税評価の算出機関及び算出時期が同一であるから,固定資産税評価はいずれも同日時期の時価を反映している旨を主張するが,同一の算出機関(同一の自治体)の中であっても,建物については土地と異なり安全率による7割評価等による調整等は行われていないので
あるから,算出機関及び算出時期が同じであったとしても,そのことから適正な時価の算定が保障されるものではない。
(2)

本件における按分は,L評価書による鑑定評価を修正したものによるべき
こと

一般に,鑑定による評価額を用いて土地と建物等の取得価額を区分する方法には合理性が認められるのであり,本件裁決も一般論としてこれを是認しているのであるから,本件においては,不動産鑑定士が作成した鑑定評価書(L評価書)に基づき,本件落札金額を按分し,税額が計算されるべきである。

被告は,L評価書に信用性が欠ける旨主張するが,形状等に差があるからといって直ちに単位面積当たりの価額に大きな差が生じるものではないし,構造の異なる建物を参照しているからといって,構造の違いが工事費全体に及ぼす影響は必ずしも大きいものではないから,妥当性に問題はない。本件不動産は,都内有数の繁華街に存在する飲食店を含むテナントが入居するビ
ルであって,L評価書が参照した建設事例等と比較して工事費が高位に位置するのは当然である。被告が主張する格差修正は,不動産鑑定士が,不動産評価の専門家としての経験等に基づき,本件建物と参照した建設事例との相違を適切に修正したものであるから,何ら問題はないし,不動産鑑定評価基準においても企業家利潤を含めて再調達原価を算定することが認められている。実際の新築請負代金とのかい離が大きいことは,被告が主張する固定資産税評価額相当額による評価も同様なのであるから,L評価書が合理性を欠
く根拠となるものではない。
そうすると,L評価書が信用性を欠くとはいえない。

ところで,原告は,本件審査請求においては,L評価書に直接依拠した税額等を主張していたところ,本件内部造作の存在は本件固有の問題であり,L評価書において比較された建設事例には対応する項目が存在しないと考え
られるから,本件訴訟においては,L評価書から内部造作,その他動産を除外した上で,別途,本件内部造作を取得資産に含める等の修正をした上で,按分額を主張している。被告は,このような修正をすること自体からL評価書は信用性を欠く旨を主張するが,原告が行う修正は,①L評価書においては,本件内部造作の再調達価額を本件建物の純工事費に含めて計算され
ていたところ,本件内部造作の取得価額を別建てて行うことにしたこと(その理由については,後記4において主張するとおりである。),②本件裁決と同一の償却割合で行うこととしたこと,③本件ディスプレイ設備の減価償却を行ったこと,④本件敷金債務相当額を本件落札金額に加算したことであり,いずれも,L評価書の信用性を損なうものではないから,被告の主張は
失当である。

そして,原告が主張する上記イの修正を経て本件不動産を構成する各資産を区分した上で,各資産の減価償却限度額等を計算すると,別表9の1記載のとおりである。

(3)

工事原価等による区分
仮に,L評価書を修正した方法(上記(2))による区分の合理性が認められないとしても,本件においては,K社が実際に工事に要した費用が明らかになっていることから,これによる区分が合理的な方法として認められるべきである。
この方法によって本件不動産を構成する各資産を区分した上で,各資産の減価償却限度額等を計算すると,別表9の2記載のとおりである。

(4)

本件競売評価書による区分
また,本件においては,評価人による本件競売評価書が存在するから,L評
価書を修正した方法(上記(2))による区分の合理性が認められない場合には,本件競売評価書による区分が合理的な方法として認められるべきである。この方法によって本件不動産を構成する各資産を区分した上で,各資産の減
価償却限度額等を計算すると,別表9の3記載のとおりとなる。
4
争点(4)(本件内部造作の評価)について
(被告の主張)
(1)

建物について行った内部造作については,その内部造作が建物附属設備に
該当する場合を除き,それを区分しないで当該建物に含めて当該建物の耐用年数を適用して減価償却を行うこととなる(耐用年数通達1-2-3)。仮に,原告が主張するように本件内部造作が本件建物から区分される独立した資産(建物附属設備)であるとするならば,本件内部造作が,耐用年数省令別表第1の種類が建物附属設備である資産のうちのいずれの構造又は用途」及び「細目の資産に該当するかについて,具体的な主張立証をした上で,耐用年数を主張する必要があることは明らかである。
しかしながら,原告は,そもそも本件内部造作が本件建物から区分される独立した資産となる理由を具体的に主張立証していない上,償却限度額の計算における耐用年数は2年であると主張するものの,本件内部造作が耐用年数
省令別表第1の種類が建物附属設備である資産のうちのいずれの構造又は用途」及び「細目の資産に該当するかを具体的に主張立証していない。なお付言すれば,原告は,耐用年数省令3条1項2号の具体的適用関係も明らかにしていない。
本件内部造作は,本件建物を建築したK社ではなく前の賃借人が施したものであり,原告は本件内部造作を資産として活用することを前提に入札したとするが,原告は,本件競売に伴い,本件建物等を一体の資産として取得しており,本件内部造作を本件建物と別に取得していない上,そもそも,減価償却資産は,建物,構築物,機械及び装置(法人税法2条23号参照)などその資産の種類によって区分されるものであるから,本件建物を建築したK社ではなく前の賃借人が施したことや,原告が資産として活用することを前提に入札しても,本件内部造作が本件建物から区分される独立した資産となる理由とならない。本件競売評価書における本件建物等の評価額は,同評価書を作成した評価人が,本件内部造作の存在を了知した上で算出したものと考えるのが合理的であり,本件建物等の評価額には本件内部造作の評価額を含むものと認められるから,原告の上記主張には理由がない。

(2)

また,本件内部造作の価額について,原告は,甲31の1~16の写真を
示すものの,それ以上にその詳細な内容を明らかにしていない上,原告が本件内部造作の見積金額の算出の根拠とした内装工事(甲23)が本件内部造作と類似する具体的な理由についても何ら主張立証していない。
これらの点をおくとしても,原告が提出する株式会社R(以下R社という。)作成の本件内部造作の見積書(以下本件見積書という。)において,

※平成18年当時に設計施工をしましたが,以前の見積もりは期限が経過した為,破棄してしまったので,この度,再度,見積もりを作成しました。

(甲44)と記載されているところ,このように平成18年当時の見積書を破棄しているとしながら,何に基づいて再度本件見積書を作成することができた
のかについては明らかにされていない。また,本件内部造作を実際に設計施工した者であれば,見積書ではなく,実際に行った工事内容が記載された請求書等を提示すべきであるにもかかわらず,見積書をもって設計施工した根拠であるとする説明もされていない。
したがって,R社が作成した本件見積書や原告の主張自体が信ぴょう性のないものであるから,原告の主張は,その前提において理由がない。(3)

本件鑑定における本件内部造作の評価について
本件鑑定は,本件内部造作について,原告が提出した本件見積書の見積額及
び写真を根拠として,その鑑定額を1064万円と算定している。しかしながら,上記(2)のとおり,本件見積書にはおよそ信ぴょう性がないといわざるを得ず,上記写真や本件見積書を根拠としても,これらによって本件内部造作の具体的な資産内容を特定し,かかる本件内部造作の平成23年6月1日時点の時価を適正に算出することは到底困難であるといわざるを得ない。また,上記のとおり本件見積書自体に信ぴょう性がない以上,これに基づき算出された本件内部造作の再調達原価に乗じるべき減価率も変動し得るものといわざるを得ない。

以上のことからすると,本件鑑定による本件内部造作の積算価格における再調達原価及び減価額は,本件内部造作が設計・施工された当時の取得価額を前提とした再調達原価及び減価額と評価し得るものとはいえないから,本件内部造作の鑑定額は,原告が本件内部造作を取得した平成23年6月1日時点の適正な時価を反映したものといい切るには疑問が解消されない。

(原告の主張)
被告は,本件建物等の固定資産税評価額に本件内部造作の評価を含めていないが,原告は,本件内部造作に高い経済的価値を認め,資産として活用することを前提として入札しており,かかる本件内部造作を無価値と評価することはおよそ経済実態に沿うとはいえない。本件内部造作は,見積金額が1億4454
万円と多額に及び,按分に与える影響も大きいものであって,現に,原告は,本件内部造作が設置された本件建物の4階部分について,テナントとの間で,本件内部造作の存在を前提とする店舗の賃貸借契約を締結しているところ,この賃貸借契約は,本件内部造作が存在しない3階部分の賃貸借契約の賃料と比較して高額なものとなっているなど,賃貸借契約の内容に差異が生じているのであるから,本件建物等の価額を求めるに当たっては,本件内部造作について,原告による見積もりを基にした価額である9525万1860円を本件建物から独立した資産として積算すべきである。
以上

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