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観察処分期間更新決定取消等請求事件
事件番号平成30(行ウ)289
事件名観察処分期間更新決定取消等請求事件
裁判年月日令和2年9月29日
裁判所名東京地方裁判所
分野行政
裁判日:西暦2020-09-29
情報公開日2021-03-22 18:01:08
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令和2年9月29日判決言渡
平成30年(行ウ)第289号

観察処分期間更新決定取消等請求事件

主1文
本件訴えのうち,別紙2決定目録記載第2の決定の効力がDらの集団こと原告に対して及ばないことの確認を求める部分を却下する。

2
原告のその余の請求を棄却する。

3
訴訟費用は原告の負担とする。

第1
1実及び理由
請求
処分行政庁が,平成30年1月22日付けで,Eを教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体に対してした,別紙2決定目録記載第1の決定のうち,Dらの集団こと原告に関する部分を取り消す。
2
処分行政庁が,平成12年1月28日付けで,Eを教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人
及び同教義に従う者によって構成される団体に対してした,別紙2決定目録記載第2の決定の効力が,Dらの集団こと原告に対して及ばないことを確認する。第2

事案の概要
本件は,処分行政庁が,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法
律(以下団体規制法という。
)5条3項から5項までに基づき,
Eを教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体(以下本団体という。
)に対してした,公安調査庁長官の観察に付する処分の期間更新
等に係る決定(以下本件更新決定という。
)について,原告が,同決定の

うち原告に関する部分の取消しを求めるとともに,上記観察に付する処分の効力が原告に対して及ばないことの確認を求める(以下,この確認の訴えを本件確認の訴えという。)事案である。
1
団体規制法の定め
本件に関係する団体規制法の定めは,別紙3団体規制法の定めに記載のとおりである。

2
前提事実(後掲の証拠等によって認める。

(1)

当事者等
昭和59年2月頃,Eを教祖・創始者として,
オウム神仙の会が活動
を開始し,昭和62年7月頃,
オウム真理教にその名称を変更し,Eの
説くオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的として活動を続けた。
オウム真理教は,平成元年8月25日,東京都知事から宗教法

人法に基づく規則の認証を受けて,同月29日,宗教法人オウム真理教(代表役員E
)の設立の登記がされた(以上につき,乙B2の1・2)


オウム真理教の構成員らは,平成6年6月27日,長野県松本市内でサリンを散布し,8名を殺害するとともに,143名にサリン中毒症の傷害を負わせる事件(以下松本サリン事件という。
)を敢行し,平成7年3

月20日,東京都内を走行中の地下鉄電車5本内でサリンを散布し,12名を殺害するとともに,3000名を超える者にサリン中毒症の傷害を負わせる事件(以下地下鉄サリン事件といい,松本サリン事件と併せて両サリン事件という。
)を敢行した(乙B2の1~3,3の1)
。オウ
ム真理教の構成員らは,両サリン事件を含め,多数の殺人等の犯罪行為を
敢行した(乙3の2)


宗教法人オウム真理教については,平成7年12月19日,宗教法人法に基づく解散命令が確定し,その清算手続中の平成8年3月28日,破産宣告がされた(乙B4の1)


公安調査庁長官は,平成8年7月11日,処分行政庁に対し,本団体について破壊活動防止法(以下破防法という。
)7条の解散指定処分の請
求(以下解散指定請求という。
)をしたが,処分行政庁は,平成9年1
月31日,同請求を棄却する旨の決定をした(乙C10)


平成12年2月4日,
宗教団体・アレフが正式に発足したこと,及び
Fがその代表者に就任したことが公表された。
宗教団体・アレフは,平
成15年2月6日には,その名称を宗教団体アーレフに変更し,さら
に,平成20年5月20日には,その名称をAlephに変更した(以下,名称変更の前後を問わずAlephという。以上につき,乙B4の1)


Hを中心とするAlephの一部構成員は,平成19年3月8日,Alephから脱退した旨を表明し,同年5月7日,
ひかりの輪を設立した

旨発表し,Alephとは分派して活動するようになった(乙B1の1,2の1,3の60)


原告は,昭和63年12月,オウム真理教の出家信者となり,宗教法人オウム真理教の解散後,Alephに所属して活動していたが,平成27年1月,Alephを離脱し,その後,原告と同時期にAlephを
離脱した複数名とともに,α市(以下省略)所在の建物(以下α施設という。
)等において活動をしている(争いのない事実)

(2)

観察処分及びその期間更新決定の経緯
公安調査庁長官は,平成11年12月27日,処分行政庁に対し,本団体につき,団体規制法5条1項の観察処分の請求をし,処分行政庁は,平
成12年1月28日,別紙2記載第2の決定(以下本件観察処分という。
)をし,同月31日,本団体の代理人にその旨通知するとともに,同年2月1日,官報に公示した(甲2,乙A1,2,弁論の全趣旨)


処分行政庁は,平成15年1月23日(第1回)
,平成18年1月23日
(第2回)
,平成21年1月23日(第3回)
,平成24年1月23日(第
4回)及び平成27年1月23日(第5回)
,それぞれ本件観察処分の期間
を3年間更新するとともに,
本団体が公安調査庁長官に報告すべき事項
(以
下報告事項という。
)を定める旨の決定(以下,更新の回数に応じ,
第1回更新決定などという。
)をした(乙A4,6,8,10,12)


処分行政庁は,平成30年1月22日,本件観察処分の期間を3年間更新するとともに報告事項を定める旨の決定(別紙2記載第1。本件更新決
定)をし,原告を中心とする集団(以下Dらの集団という。,Ale)
ph及びひかりの輪のそれぞれの代理人に通知するとともに,
同月30日,
官報に公示した(乙A14,弁論の全趣旨)

エ3
原告は,平成30年7月20日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。

争点
(1)

本件確認の訴えについて,確認の利益があるか否か

(2)

Dらの集団が団体規制法にいう団体に該当すること等により,本団
体に包摂されるか否か,その他,Dらの集団が本団体に包摂されるとすることは違法か否か
(3)

Dらの集団を含む本団体が団体規制法5条1項各号に該当するか否か
(4)

Dらの集団を含む本団体について引き続き活動状況を継続して明らかに
する必要があるか否か
4
争点に関する当事者の主張
(1)

本件確認の訴えについて,確認の利益があるか否か(争点(1))について
(原告の主張)

本件更新決定は,Dらの集団こと原告に関する限り違法である以上,Dらの集団こと原告に対して本件観察処分の効力が及ぶことはない。しかし,
被告は,本件更新決定以前から事実上Dらの集団こと原告に対して本件観察処分の効力が及ぶ取扱いをしており,本件更新決定が取り消されたとし
ても,同様の取扱いを続ける蓋然性が高い。したがって,本件観察処分の効力がDらの集団こと原告に及ばないことについて,確認を求める必要がある。
また,Dらの集団に訴訟適格が認められないことから,原告に対して本件更新決定の取消しが認められても,Dらの集団という社会的存在に対しては本件更新決定の事実上の効力が継続する現実的な危険がある。例えば,
原告の居住地であるα施設とは別に,公安調査庁長官がDらの集団の活動
拠点として認定した東京都β市所在のマンションの一室(以下β施設という。
)に関して,本件更新決定の効力が事実上継続する可能性がある。さらに,公安調査庁長官がDらの集団と原告を切り離し,原告及びα施設に対しては本件更新決定の効力が及ばないとしながらも,Dらの集団の原告以外の構成員とされる個々人に対して事実上の効力を継続させる現実の
危険がある。したがって,Dらの集団の原告以外の構成員及びα施設以外の活動拠点についても,本件更新決定の効力が及ばないことの確認を求める必要がある。
これらの紛争の抜本的解決のためには確認訴訟によるほかなく,確認訴訟を選択することは必要かつ適切である。


本件確認の訴えは,処分の効力という法律関係に関する確認を求めるものであり,確認の対象は適切に選択されている。


公安調査庁長官が本件更新決定前からDらの集団こと原告に対して本件観察処分の効力を及ぼしていたことから,即時確定の利益がある。

以上によれば,本件確認の訴えについては,確認の利益がある。

(被告の主張)
原告を中心とする集団であるDらの集団が,団体規制法に基づき,公安調査庁長官に対する報告義務を負ったり,公安調査官による立入検査を受けたりするのは,本件観察処分や同処分の更新決定の効力がDらの集団に及んでいることが前提となっている。そのため,本件更新決定のうちDらの集団を対象とする部分が取り消されれば,Dらの集団に本件観察処分や本件更新決定の効力は及ばないことになるから,
公安調査庁長官は,
Dらの集団に対し,
上記の報告義務を課したり,立入検査を実施したりすることができないことになる。
しかるところ,原告は,本件更新決定のうちDらの集団を対象とする部分の取消しを求めており(以下,この請求を本件取消請求という。),これが認容されれば,上記の報告義務や立入検査の受忍義務を課されることはなく,
その目的を達成することができる。
すなわち,
本件確認の訴え以外に,
本件取消請求という有効適切な方法が存するといえる。
したがって,本件確認の訴えは,方法選択として不適切であり,確認の利
益を欠き,不適法である。
(2)

Dらの集団が団体規制法にいう団体に該当すること等により,本団体
に包摂されるか否か,その他,Dらの集団が本団体に包摂されるとすることは違法か否か(争点(2))について
(被告の主張)

団体規制法にいう団体について
(ア)

団体規制法4条2項は,

この法律において『団体』とは,特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体(中略)をいう。

と規定しているところ,一般に,上記の結合体とは,多数人の組織体であって,その構成単位たる個人を離れて,結合体としての独自の意思を決定し得るものをいうと定義されている。この点に関して,原告は,Dらの集団の構成員とされた個々人は団体を構成していない旨主張している上,本団体を構成する集団は,ひかりの輪やAlephなどと称する各集団に分派,分裂し,Dらの集団もAlephとは一定の距離を置いて活動をしていることから,これら
の多数人や各集団が一つの結合体たり得るかが問題となり得る。
(イ)

団体規制法における団体とは,当該団体の活動状況を明らかに
し又は無差別大量殺人行為の再発を防止するという同法の趣旨及び目的を実現するために規制対象を的確に画する概念として機能すべきものであり,無差別大量殺人行為を行う危険性を保持した社会的実体として認識される団体又は集団の実態を踏まえて,これらをどのように,どの範囲で包摂して規制対象とするのが適切かという観点から,法的に観念されるべきものである。そして,同法において規制対象となる集団は,事柄の性質上,そもそも組織実態及び意思決定等が行われる指揮系統が判然としないものであるばかりか,様々な要因で,名称,組織構成等の変更及び離合集散をする特徴を有するものであり,長期間の観察処分下に
おいて,様々な変化が生じることが当然に想定されるものである。同法の関連条文の諸規定(同法16条,17条,24条3項,25条2号等)も,物的設備の中心である主たる事務所も判然とせず,中心的な意思決定機関たり得る代表者等の氏名や所在も不明である集団,すなわち,当該団体の主要な組織実態や指揮系統の所在や在り方が判然としない集団
についても
団体
として規制対象とすることを予定しているといえる。
以上を踏まえると,同法は,特定の共同目的を中核的概念として構成し,特定の共同目的を達成するための継続的結合体,すなわ
ち多数人の組織体であって,その構成単位たる個人を離れて,結合体としての独自の意思を決定し得るものという要件のみを求める独自の
団体概念を採用しているものと解される。
そうすると,上記の結合体の該当性を判断するに当たっては,無
差別大量殺人行為に及ぶ危険性を伴った多数人又は各集団の活動実態を客観的にみて,結合体として独自の意思を決定し得ることを基礎付ける事情が存するか否かという観点から判断されるべきである。

しかるところ,当該多数人又は当該各集団において,同一の特定の共同目的を有し,これに起因する客観的な危険性の要素(人的属性,綱領,活動状況等〔団体規制法5条1項各号参照〕)が実質的に共通である場合,すなわち,当該多数人又は分派,分裂した当該各集団がいずれも同一の特定の共同目的を有することに加え,当該多数人又は当該各集団における構成員の人的属性,首謀者の影響,綱領,活動状況等の客観的な事情を総合的に考慮し,当該多数人又は当該各集団が,特定の共同目的を共有しつつ,実質的に共通した活動を行っていると認められる場合には,客観的にみて,一つの結合体として意思決定をすることに支障は存在しないといえる。したがって,このような場合には,当該多数人又は当該各集団は,結合体として独自の意思を決定し得るも
のといえるから,一つの継続的結合体であり,一つの団体であると判断されるべきである。

Dらの集団は,それ自体として捉えても,Aleph及びひかりの輪を含めて捉えても,観察処分の対象とされた本団体に包摂されること
(ア)
Dらの集団はそれ自体が団体であること
Dらの集団は,原告を中心とし,在家構成員や新規構成員らと共に集
団を形成し,オウム真理教の教義を広める活動を継続していくという活動方針の下,α施設に加え,β施設を賃借するなどして,活動拠点を増やしており,
各施設には,
Eの写真やEの説法が収録された大量の教本,
DVD,PSI(パーフェクト・サーヴェーション・イニシエーション。Eが教団の構成員にその着用を奨励してきた装置で,ヘッドギアのような形状であり,
着用によりEの脳波と同調できるとされる。
)等が保管さ
れ,立位礼拝の詞章が掲げられるなどし,多数の構成員らが共に修行を行い得る環境が整えられている。
さらに,Dらの集団に係る収支の状況をみても,セミナー代等の科目
で毎月数十万円にも上る継続的かつ高額な収入があり,他方で,年間20回前後もの多数回に及ぶイベント開催費の支出が認められる。かかる収支やこれに伴うセミナー,イベント等の活動は,Dらの集団における個々人を主体とするものとは考え難く,かえってDらの集団それ自体を主体とした集団としての収支であることを強く推認させるものというべきである。
加えて,Dらの集団における信者獲得に向けた勧誘活動等として,教団資料を大量作成,配布することを企図して,上位者の指示の下に,スキャンバクティと称する教材のPDF化作業を行い,対象者聞き取りリストと題する詳細な聞き取り項目を設けたリストを用いるなどし,原告に対し,勧誘活動の進捗状況について報告したり,構成員らで
情報共有したりするなどして組織的な勧誘活動が行われている。
以上の諸事情に照らせば,Dらの集団の構成員らが各々,別々に活動しているなどと到底いうことはできず,Dらの集団における構成員らの活動は,オウム真理教の教義を広め,これを実現する特定の共同目的を有する多数人の継続的結合体,すなわち団体としての活動で

あることは明らかである。
(イ)
a
Dらの集団が本団体に包摂されること
団体規制法においては,観察処分の対象となる団体が組織構成等の変更をしたり,離合集散をしたりすることがあり得ることを当然に予定しており,観察処分を受けた団体そのものが分派,分裂し,複数の
団体であると評価せざるを得なくなったとしても,それら各団体の人的属性や活動実態等に照らし,観察処分を受けた団体と基本的性質を異にするに至ったと認められる特段の事情がない限り,かかる事態は同法が予定する範囲内での事後的な在り方の変化にすぎず,当初の観察処分の効力は上記各団体のいずれにも及んでおり,上記各団体につ
いて,同法5条4項の期間更新の要件の充足性が判断されることになるものと解される。
b
そこで,この点をDらの集団についてみると,Dらの集団は,その形成経緯として,平成27年1月,Alephとは一定の距離を置いて活動を始めるに至ったものであり,
そもそも観察処分の対象団体か
ら分派,分裂した団体である。そして,その代表者は,Eに対する
絶対的帰依及び宗教的受容に何ら変化が認められない原告であり,集団として教義を広めていく確たる活動方針を有している。その構成員をみても,本件更新決定直前に構成員として報告された者
は,合計17名であるところ,出家した構成員2名全員,在家の構成員15名のうち8名が両サリン事件以前からのオウム真理教の

信徒であり,また,構成員全員がAlephの構成員であったのであるから,オウム真理教の深い宗教受容を基礎とした強固な結び付きを有している者らによって構成されているというべきであるし,物的側面をみても,Dらの集団は,Aleph時代から修業等に使用されていた施設を継続して利用している。

そして,Dらの集団は,①発足当時から,一貫してオウム真理教の組織形態の本質である位階制度に基づく師長補の位階にある
原告を代表者としており,その構成員の半数以上が両サリン事件からのオウム真理教の信徒であり,②Eの写真や肖像画を掲出したり,Eを投影した神仏の宗教画を掲出したりして,これらを構成員らに示す
ことで,Eに対する個人崇拝を浸透させており,③取り分け,Eの説法の内容を暗記する教本や説法映像等を保管している上,立位礼拝,イニシエーション,PSI,甘露水及びマインド・コントロールを用いた修行を行うなど,オウム真理教の修行形態の最も基礎的でかつ本質的で特徴的な部分を継承し,オウム真理教の教義であるタントラ・
ヴァジラヤーナの実践を継続している。
したがって,Dらの集団は,それ自体が,本件更新決定時においても,Eを教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現することを特定の共同目的とする多数人の継続的結合体であって,本団体とその目的を共通にしており,かつ,その活動状況においても本団体との共通性が認められる。
以上によれば,Dらの集団は,観察処分の対象とされた本団体と基本的性質を異にするに至ったとは到底認められず,Aleph及びひかりの輪と一体であるか否かを論ずるまでもなく,単体で捉えたとしても,本団体に包摂される結合体であると認められる。
c
また,Aleph及びひかりの輪も,オウム真理教の教義を広め,これを実現するという特定の共同目的を有し,客観的にみてDら
の集団と共通した活動を行っていることに照らせば,Dらの集団,Aleph及びひかりの輪は,一つの継続的結合体として本団体に包摂されると評価し得るものである。


被告の主張が憲法に違反する旨の原告の主張について
(ア)
a
憲法20条に違反しないこと
憲法20条が保障する信教の自由は,外部的行為として現れる宗
教的行為等の場合は,外部的行為に及ぶ他の精神的自由権の保障の場合と同様に絶対無制限のものではなく,公共の福祉の観点から必要かつ合理的な制約を受けるものである。

団体規制法は,無差別大量殺人行為を行った団体を適用対象とす
るものであり,そもそも宗教団体及び当該団体に属する信徒の精神的,
宗教的側面に容かいする意図で立法されたものではない。
また,
同法の定める観察処分の内容は,当該団体に一定の作為義務(報告義務)や不作為義務(立入検査の受忍義務)を課すにとどまり(同法
5条2項,3項,7条2項),当該団体の活動を直接制約するものではない。さらに,観察処分を行うに当たっては,準司法的機関である処分行政庁の慎重な審理手続が法定されており(公安審査委員会設置法1条,3条,5条,団体規制法20条),規制手続の適正も確保されている。
以上によれば,団体規制法による観察処分及び期間更新処分は,
過去に無差別大量殺人行為を行い,現在もその属性として無差別大量殺人行為に関する危険な要素を保持している団体に対し,当該団体の活動状況を継続して明らかにするために合理的かつ必要でや
むを得ない法的措置であって,何ら憲法20条に違反するものではない。

b
原告は,本件更新決定について,本件観察処分の効力の対象を信
仰内容に着目して広げようとするものであると主張する。
しかしながら,本件観察処分の対象団体は,本団体である。そし
て,本件更新決定に際しては,Dらの集団につき,その外形的事情を踏まえて,オウム真理教の教義を広め,これを実現するとの

特定の共同目的を共有しつつ,実質的に共通の活動をしている
ことから,本団体に包摂されるものと認定し,本件更新決定を行ったものにすぎない。このように,本件更新決定は,信仰内容に着目して行ったものでもなければ,本件観察処分の対象団体の概念を拡張したものでもない。

(イ)

憲法21条1項に違反しないこと
憲法21条1項が保障する結社の自由は,他の精神的自由権の保障
の場合と同様に絶対無制限のものではなく,公共の福祉の観点から必要かつ合理的な制約を受けるものである。
これを観察処分についてみると,上記(ア)のとおり,その目的は合理的であって,その内容は団体の活動を直接制約するものではない上,規制手続の適正も確保されている。
そうすると,本件更新決定によってその期間が延長された本件観察処分は,何ら憲法21条1項に違反するものではない。
(ウ)

憲法31条に違反しないこと
原告は,公安調査庁長官が特定の私人を本団体に包摂されると解す
ることにより,突然観察処分の効力が及ぶことになる点で,憲法31
条に定める適正手続に反する旨主張する。
原告がいう突然処分の効力が及ぶの意味は,必ずしも明らかで
はないが,本件更新決定において,初めてDらの集団について報告義務を課されることになったことをいうものと解される。しかしながら,
本件更新決定前の時点で,
既にDらの集団がAlephから分派,
分裂し,別個の団体と評価せざるを得ない状況にあったとしても,前記のとおり,Dらの集団が観察処分の対象とされた本団体と基本的性質を異にすると至ったと認められる特段の事情はなく,第5回更新決定により更新された本件観察処分の効力は,本件更新決定以前からD
らの集団に及んでいたものであって,本件更新決定により突如又
は初めて本件観察処分の効力が及んだものではない。
したがって,件更新決定は,

憲法31条に違反するものではない。

提出証拠の証拠能力を否定する原告の主張について
原告は,本件更新決定前にはDらの集団に本件観察処分の効力が及ば
ないことを前提として,本件更新決定前に行われた立入検査等によって採取された証拠について,違法収集証拠類似の理論に基づき,証拠能力が否定されなければならないなどと主張する。
原告が違法であると主張する立入検査は,第5回更新決定時においてAlephの幹部構成員として把握されていた原告が,Alephと同
様の活動を行っていたことが確認された状況下において,原告らが管理する施設に対して行われたものである。
しかしながら,本件更新決定に先立つ第5回更新決定の効力はDらの集団にも及んでいたと認められる以上,上記立入検査は,本件観察処分の執行として,当然に適法である。すなわち,処分行政庁は,本団体に包摂されるAlephに対し,意見聴取等の手続を履践した上で第5回更新決定を行っており,十分な手続保障が図られていたものであって,その時点において,Dらの集団がAlephと距離を置き,活動を開始していたことは認め難く,実質的にはDらの集団にも手続保障が及んでいたものと解される。さらに,団体規制法は,観察処分の対象となる団体が組織構成等の変更をしたり,離合集散したりすることがあり得るこ
とを当然に予定しており,分派又は分裂し,複数の集団になった場合においても,観察処分を受けた団体と基本的性質を異にするに至ったと認められる特段の事情がない限り,当該観察処分の効力が及ぶことになると解される。しかるところ,第5回更新決定の後,新たな期間更新の請求前に,十分な手続保障が図られていたAlephと距離を置いて活動
を開始したDらの集団において,本団体と基本的性質を異にするに至ったという事情は認められない以上,第5回更新決定の効力は当然に及んでいるものと認められ,第5回更新請求の時点と同様の手続保障を再度履践する必要があるとはいえない。
このように,第5回更新決定に基づく立入検査は当然に適法であっ
て,原告の上記主張は前提を欠くものといわざるを得ず,理由がない。(原告の主張)

本件更新決定前に実施された立入検査等によって採取された証拠は,証拠能力が否定されること
そもそも,本件更新決定に先立つ第5回更新決定には,Dらの集団又は
原告に関する記載は一切なく,Dらの集団又は原告について,Alephから分派,
分裂した別個の集団として本件観察処分の効力を及ぼすことは,
本来できないはずである。
元の観察処分の対象団体が分派,分裂した場合に,更新決定により各集団に観察処分の効力を及ぼすことができる場合としては,①当該複数の集団を併せて1つの団体と認めることができる場合と,②各集団について,独自に,団体規制法にいう団体であること,観察処分の対象団体と同一性
があること,団体規制法上の更新の要件を満たすことという3つの要件を満たす場合がある。このような場合に,更新決定により各集団に観察処分の効力を及ぼすことができるのは,手続的な保障として,観察処分の期間の更新に当たって,各集団からの意見聴取の手続を行うことが可能であること,また,各集団についてそれぞれ観察処分の期間更新の要件を満たす
ことが必要であるから,他団体の意思決定に基づく行為が原因となって自団体が対象となる観察処分が継続するという事態が考え難いことによるものである。
原告はAlephを離脱しており,原告とAlephは団体として一体のものとはいえないから,原告自体について,単独で観察処分の期間更新
の要件を満たすか否かを考慮せず,また,原告に対する手続的な保障を充足せずに,本件更新決定前から一方的に本件観察処分の効力を及ぼし,強制的な手段に基づいて実施された公安調査官の事実調査は違法である。したがって,本件更新決定前に実施された立入検査等によって採取された証拠は,違法収集証拠類似の理論に基づき,証拠能力が否定される。そ
うすると,原告らと本団体の同一性や原告らが団体規制法5条1項各号に該当することを認める余地はない。

本団体とAleph,ひかりの輪及び原告らという結合体
(以下本件結合体という。
)には同一性がないこと

(ア)

団体規制法には,観察処分の対象団体が分派,分裂した場合の規定
がなく,分派,分裂した団体には,別途処分をすることが予定されており,当初の観察処分の効力を及ぼすことはできない。
もっとも,分派,分裂が仮装であるなど,実質的には分派,分裂していない場合には,分派,分裂後の団体は観察処分の対象団体と同一性があることになる。この点については,両団体が人的,物的に独立しているか,一つの組織体として意思決定を下し得るか,また,その意思決定に各構成員が従うかということを考慮して判断すべきところ,本件結合体には団体というほどのまとまりがない上,本団体の後継団体であるAlephとひかりの輪又は原告らとは,人的にも物的にも完全に独立しており,役職員等の連絡はなく,財産の共有,使用関係もなく,意
思決定機関も完全に独立しており,活動状況も全く連携がなく,行動の指針も異なる。したがって,Alephとひかりの輪又は原告らとの間に同一性はなく,本団体の後継団体はAlephだけであり,分派,分裂したひかりの輪や原告らに本団体との同一性を認めることはできない。(イ)a

団体規制法4条2項は,
団体について,
特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体
と定めるところ,
共同目的を達成するためには,意思疎通がなければならない。
次に,団体規制法では,
団体には代表者等の役職員
(同
法1条)や役員
(同法5条1項3号)がおり,これらの者が団体独
自の意思決定
(同号)に関与することが想定されている上,
団体

には,意思決定の基礎となる綱領
(同項4号)があり,
土地や
建物を始めとする団体独自の資産や負債
(同条2項)があ
ることが想定されている。また,
団体は,処分の名宛人となり,手
続保障や代理人選任権といった権利や,報告,立入検査受忍等の各種義務の帰属主体となる。したがって,
団体とは,少なくとも権利能

力なき社団である必要があり,単に意思決定をすることに支障がないだけの集合体では,団体となり得ない。
さらに,団体規制法においては,
団体の中に団体が存在する
ことは全く想定されていない。本団体にそれぞれ独立した権利能力なき社団であるAlephとひかりの輪が含まれるとすることは,同法と齟齬を来すことになる。
b
被告は,客観的にみて,一つの結合体として意思決定をすることに支障は存在しない場合には,当該多数人又は当該各集団は,結合体として独自の意思を決定し得るものといえるから,一つの継続的結合体であり,一つの団体であると判断されるべきであるとするが,被告の解釈は団体規制法2条の禁止する拡張解釈に当たり,許されない。
c
本件結合体は,Aleph,ひかりの輪及び原告らから構成されるところ,これらの各集団や個人は,相互に意思疎通しておらず,本件結合体が独自に意思決定することは不可能であるから,
本件結合体は,
団体に当たらない。したがって,本団体に対する本件観察処分の
効力を本件結合体に及ぼすことはできない。

(ウ)

以上のとおり,
本団体と本件結合体に同一性を認めることはできず,

原告らが本団体に包摂される余地はない。

原告らは,団体規制法にいう団体ではないこと
(ア)

前記アのとおり,元の観察処分の対象団体が分派,分裂し,併せて
一つの団体と認めることができない場合に,更新決定により各集団に観察処分の効力を及ぼすためには,各集団について独自に,①団体規制法にいう団体であること,②観察処分の対象団体と同一性があること,③団体規制法上の更新の要件を満たすことという要件を満たす必要がある。(イ)

前記イ(イ)aのとおり,団体規制法にいう団体は,意思決定の

主体であり,また処分の客体である以上,少なくとも権利能力なき社団である必要があるが,原告らは,その要件を満たさないから,
団体で
はない。
(ウ)

仮に,
団体の要件である多数人の継続的結合体について,2

人以上の特定人からなり,その構成単位たる個人を離れて,結合体として独自の意思を決定し得る組織体であって,社会的に相当の期間にわたって存続するものを指すと解しても,原告らは,平成27年1月頃,個人である原告が1人で宗教活動に従事することを決意してAlephを
離脱し,また,原告と親しくしていたJが,その後しばらくしてからAlephを離脱し,それぞれ支え合いながら,個人として宗教活動に従事するようになったにすぎない。原告らは,自他ともに団体と認めたことはなく,何らの組織性もなく,法律行為の主体となったこともないから,組織として意思決定や法律行為をする機関も存在しない。また,原
告らは,財産の帰属主体となったこともなく,原告やJが普段生活する土地家屋(α施設)は原告の単独所有であり,東京で宗教活動に従事する際に利用するマンション(β施設)は別の個人が単独で賃借するものであるし,祭具や書籍等の宗教活動に用いる動産は,全て個人に帰属している。原告らは,
その構成単位たる個人を離れて,結合体としての独自の意思を決定し得る組織体ではなく,
社会的に相当の期間にわたって存続するものでもない。
したがって,いずれにせよ,原告らは,団体規制法にいう団体で
はない。
(エ)

原告らが団体規制法にいう団体ではない以上,原告らに本件観

察処分の効力が及ぶ余地はなく,本件更新決定は違法である。

原告らが団体であるとしても,本団体(オウム真理教)と同一性がないこと
(ア)

仮に,原告を含むDらの集団という複数人の集まりが団体であ

るとしても,原告らの多くは,Alephと敵対し,Alephから正式に離脱した者であり,複数の団体を組織して,Alephやひかりの輪との間で役割分担をしながら組織活動を続けていくといった意図を有している者はおらず,設立の経緯において,Eやその家族の意思は全く関係がない。原告らは,その設立の経緯からして,本団体と同一性を認めることはできない。
(イ)

次に,オウム真理教は,最盛期には1万人を超える信者を抱え,出
家信者だけでも1000人以上を抱えていたが,原告らのうち両サリン事件以前からオウム真理教の出家信者であった者は,原告とJのみであり,原告らの7割は,オウム真理教が消滅した後にAlephの構成員となった者である。さらに,オウム真理教において,原告は,
師とい
う宗教ステージにはいたものの,団体としての意思決定に関与したことはなく,組織内の幹部職にも就いていなかったし,Jも同様である。その上,
原告らには,
オウム真理教による違法行為に加担した者はいない。
したがって,原告らには,本団体と人的な面での同一性は認められない。

(ウ)

オウム真理教は,位階制度を設け,官庁制を採用し,Eというカリ
スマを頂点として組織的に活動していた。一方,原告らは,位階制度を採用しておらず,意思決定についての機関や手続も存在しない,ただの人の集まりである。組織体制の点でも,位階制度や官庁制といった強固な統治システムを築いていたオウム真理教(本団体)と原告らとの間に同一性を認めることはできない。
(エ)

オウム真理教は,多数の施設を保有し,多額の預貯金を始めとする
金融資産を有していた。一方,原告らの保有財産としては,原告自身が個人として保有する100万円以下の預貯金と原告のα市内の自宅不動産があるのみである。財産の点からも,原告らと本団体との同一性は認められない。
(オ)

そもそも,信仰内容に着目して原告らと本団体との間に同一性を認めることは,
信教の自由の侵害であり許されないが,
信仰内容をみても,
原告らが理解しているオウム真理教の教義は各種犯罪を肯定するものではなく,原告らは,両サリン事件を始めとする違法行為がオウム真理教の教義上肯定的に評価されるとは考えておらず,帰依についても,Eの宗教家としての側面を重視しているにすぎないのであって,Eの指示に
従って違法行為に従事するという考えはない。
また,原告とJは,オウム真理教時代と同様の修行内容を実践しているが,その内容は,ヒナヤーナ(小乗)にとどまっており,最終奥義とされていたタントラ・ヴァジラヤーナやマハームドラーは,Eの指示がなければ実践できないものであり,全く実践していない。Alephや
ひかりの輪がオウム真理教時代から引き続き実践するイニシエーション等も,原告とJのステージでは実践できないため,実践していない。結局,原告とJは,表面的には,オウム真理教時代と類似の修行内容に従事しているものの,Eや幹部がいないために本質的には似て非なるものとなっている。

したがって,この点からも,原告らと本団体との間に同一性は認められない。

被告の主張する解釈は憲法上の権利を侵害すること
(ア)

憲法20条及び憲法21条1項に違反すること
仮に,被告の主張するように,本団体から分派,分裂した各集合体に
ついて,オウム真理教の教義を広め,これを実現する特定の共同目的を有し,構成員らに対し,Eに対する個人崇拝を浸透させるとともに,オウム真理教の修行体系の最も基礎的かつ本質的で特徴的な部分を継承した活動をしている場合には,本団体とその基本的性質を異にするに至ったと認められる特段の事情のない限り,本団体と同一性があるとされるとすると,オウム真理教を信仰し,オウム真理教の修行体系を実践している場合には,同一の法人格を継承する後継団体でなくとも,本件観察処分の効力が及ぶことになる。これは,信仰活動に着目して,極めて広範に団体規制法の効力を及ぼすものであって,信教の自由に反するものである。被告の主張を前提とする本件更新決定は,原告に関する限り,憲法20条に違反するとともに,同じ信仰活動に従事する仲間で集まる
ことに強大な制限をかけるものであり,結社の自由を侵害するものとして,憲法21条1項にも違反する。
(イ)

憲法31条に違反すること
前記アのとおり,第5回更新決定には,Dらの集団又は原告に関する
記載は一切なく,Dらの集団又は原告をAlephから分派,分裂した
別個の集団として本件観察処分の効力を及ぼすことはできないところ,被告の主張するとおり,原告について,本団体とその基本的性質を異にすると至ったと認められる特段の事情がなく,本団体に包摂される集団であり,本件結合体に含まれるため,本件観察処分の効力が及ぶのだとすると,個人,団体を問わず,公安調査庁長官が本団体に包摂される集
団であると解した瞬間,突然,当該個人や団体に本件観察処分の効力が及ぶことになる。これは,行政機関が全く法律に定められていない概念を独自に創設し,これにより何らの手続を要せず私人に一方的に観察処分の効力を及ぼすものであり,適正手続に反する。したがって,本件観察処分の効力が原告らに及ぶことを前提とする本件更新決定は,原告に
関する限り,憲法31条に違反する。

小括
以上によれば,原告らと本団体(オウム真理教)との間に団体としての同一性を認めることはできず,原告は本団体に包摂されない。

(3)

Dらの集団を含む本団体が団体規制法5条1項各号に該当するか否か
(争点(3))について
(被告の主張)

団体規制法5条1項1号に該当すること
両サリン事件は,いずれもEが独裁者として統治する祭政一致の専制国家を樹立するという政治上の主義を実現するために,Eが各犯行を実行することを決定し,オウム真理教の信徒らに指示するなどしたものであり,
Eが両サリン事件の首謀者であることは明らかである。また,本団体については,Dらの集団はもとより,Aleph及びひかりの輪においても,Eに対する個人崇拝を維持しており,Eが説いた教義や修行体系を継承するなどして,Eの意思を推し量りながら活動しており,本件更新決定時においてもなお,E及びEの説くオウム真理教の教義が本団体の存立,
運営の基盤を成していることが認められ,Eが,その活動に絶対的ともいえる影響力を有しているものと認められる。
したがって,Dらの集団を含む本団体は,団体規制法5条1項1号に該当する。また,Dらの集団は,個別にみても同号に該当する。

団体規制法5条1項3号に該当すること
前記(2)(被告の主張)イ(イ)cのとおり,ひかりの輪は本団体に包摂されるところ,ひかりの輪のHは,両サリン事件当時,オウム真理教の役員であり,かつ,本件更新決定時に至るまで,本団体の重要な一部を構成するひかりの輪の代表役員として活動して,その意思決定に関与し,かつ,事務に従事している。したがって,Hは現在も本団体の役員であると認め
られ,Dらの集団を含む本団体は団体規制法5条1項3号に該当する。ウ
団体規制法5条1項4号に該当すること
オウム真理教においては,教祖であるEを尊師又はグルと尊称
してEに絶対的に帰依し,かつ,最終目的である衆生救済を実現するため
にはタントラ・ヴァジラヤーナの実践が不可欠であるとした上で,その具体的規範として,結果のためには手段を選ばず,殺人を行うことも肯定されるとする五仏の法則を説き,殺人の実行もマハームドラーの修行として正当化されるという反社会的な危険な教義を有していたところ,本団体においては,Dらの集団はもとより,Aleph及びひかりの輪においても,上記の教義を継承し,幹部構成員による指導方針がそれぞれ深く浸透している。これらのことなどに鑑みれば,本団体においては,危険な
内容を含む教義が,幹部構成員による説法,教材等を通して構成員に周知徹底されており,構成員においても,危険な内容を含む教義全体を正しいものとして受け入れ,
その教義に従う意思を有しているものと認められる。
したがって,
殺人を暗示的に勧める本団体の危険な教義は,
本団体の
綱領に当たると認められ,Dらの集団を含む本団体は,団体規制法5条1項4号に該当する。また,Dらの集団は,個別にみても同号に該当する。エ
団体規制法5条1項5号に該当すること
本団体については,Dらの集団を始め各集団において,①本件更新決定時において,両サリン事件の首謀者であるEが本団体の活動に絶対的とも
いえる影響力を有し,構成員がEを絶対的帰依の対象としていること,②両サリン事件当時,Eを頂点とした上命下服の独自の閉鎖社会を構築していたことを基礎として,組織的かつ秘密裏に両サリン事件が計画,敢行されたところ,本件更新決定時においても従前と同質の組織構造を継続して有していることに加え,本団体においては,出家構成員を管理下の施設に
集団居住させて,
一般社会と隔絶した独自の閉鎖社会を維持していること,
③政治上の主義を推進するための武装化の過程で武器等製造法違反事件を敢行して服役した構成員やその他犯罪に関与した構成員を含め,両サリン事件が行われた当時構成員であった者を本件更新決定時においても多数構成員として擁していること,④Aleph及びひかりの輪の構成員らは,
両サリン事件に理解を示す発言をしていること,⑤武装化の過程で炭疽菌の散布等で重要な役割を果たしたHが,現在もひかりの輪の代表役員として活動していること,⑥Alephにおいて,第5回更新決定後,巧妙な手段による様々な勧誘活動を組織的に展開することにより構成員の総数を増加させるとともに,現金等の資産を大幅に増加させていることが認められることに加え,⑦Alephにおいて,小中学生等の若年者に対し,Eの説法に関する子供向けの教材を使用して教学させたり,立位礼拝等の修行を行わせたりして,E及びEの説くオウム真理教の教義に絶対的に従う意識を扶植する指導を行っていることが認められることなど,本団体については,本件更新決定時においても,団体規制法5条1項1号から4号までに掲げる事項以外にも,無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があったと認められる。
したがって,Dらの集団を含む本団体は,団体規制法5条1項5号に該当する。
また,Dらの集団は,個別にみても,上記①,②に加え,実質的に集団生活に近い形態で活動を行い,立入検査時に非協力的態度をとるなど,一
般社会と隔絶した独自の閉鎖社会を維持していること,
第5回更新決定後,
構成員の総数を増加させていることなどからして,団体規制法5条1項5号に該当する。
(原告の主張)

原告が本団体に包摂されるとしても,原告について独自に観察処分の要件が認められる必要があること

前記(2)(原告の主張)アのとおり,分派,分裂した集団,個人に対し,当初の観察処分の効力を及ぼし,観察処分の更新決定をするには,手続保障の点から,当該集団,個人が,独立して団体規制法5条1項各号の要件を満たす必要がある。

団体規制法5条1項1号に該当しないこと
原告は,Eに対する個人崇拝を維持していない。東京拘置所にいるEに面会に行ったことはなく,Eから何らかの連絡があったこともない。原告は,Eの家族とも連絡を取り合っていない。
確かに,原告は,今でもEが説いた教義や修行体系を継承しており,Eに対する帰依を続けていることも隠していない。しかし,それは,あくまでEの宗教家としての側面を重視しているにすぎず,Eが指示した地下鉄
サリン事件を始めとする違法行為について,教義上肯定的に評価されるものとは全く考えていない。また,原告は,公安調査庁長官が原告らの構成員とみなす人々に対し,Eが説いた教義や修行体系について指導したり,Eへの帰依を強制したりしておらず,修行が進んでいる原告やJが修行の相談に乗っているにすぎない。

原告がEの意思を推し量りながら活動しているとすれば,Eがオウム真理教の後継団体と認めたAlephと決別しないし,Alephと決別したとしても,その後も集団を形成し,構成員を増やすための活動をするはずであるが,そのような活動を一切していない。
したがって,Eの原告らに対する影響力は,教義等を通じた間接的かつ
抽象的なものであり,あくまで宗教的側面に限られ,その活動に絶対的な影響力を有しているとはいえないから,原告らは,団体規制法5条1項1号に該当しない。

団体規制法5条1項3号に該当しないこと
原告は,オウム真理教の役員,すなわち団体の意思決定に関与し得る者であって,当該団体の事務に従事するものであったことはなく,その他原告らの中にオウム真理教の役員であった者はいない。したがって,原告らは,団体規制法5条1項3号に該当しない。
被告は,ひかりの輪のHの存在を挙げて,団体規制法5条1項3号に該
当する旨主張するが,原告らは,ひかりの輪とは一切関わりがないのであるから,誤っている。

団体規制法5条1項4号に該当しないこと
原告らには,綱領など存在しない。被告が危険な教義とするタントラ・ヴァジラヤーナ等は,原告らの綱領ではない。
また,原告がタントラ・ヴァジラヤーナ等を団体の方針等となるべき事項として原告らの構成員に示し,原告らの構成員がこれを是認してそれに
従う意思を有しているということはない。
そもそも,原告らは,タントラ・ヴァジラヤーナを含め,いかなる教義も犯罪を肯定するものとは解していない。地下鉄サリン事件を始めとする違法行為についても,オウム真理教の教義上肯定的に評価されるものとは考えていない。

そして,E自身が,破防法に基づく解散指定請求の弁明手続において,タントラ・ヴァジラヤーナを封印したことを明言している。
以上によれば,原告らは,殺人を明示的又は暗示的に勧める綱領を保持しているとは認められず,団体規制法5条1項4号に該当しない。オ
団体規制法5条1項5号に該当しないこと
原告らは,上命下服の組織でもなければ,構成員が集団で居住しているという事実もない。また,前記イのとおり,Eの原告らに対する影響力は間接的かつ抽象的なものであり,その影響は宗教的側面に限定されており,絶対的なものではない。原告らのうち,原告,Jほか数名が両サリン事件
当時オウム真理教の信者であったが,いずれもオウム真理教の違法行為には関与せず,さらに,原告らの中には,オウム真理教の違法行為に理解を示す発言をしている者は一人もなく,原告らに危険性はない。
なお,被告は,ひかりの輪の事情を原告らに援用しようとするが,原告らとひかりの輪は全く関係がなく,交渉がないのであるから,ひかりの輪
の代表役員のHが武装化の過程で重要な役割を果たしたとしても,そのことは原告らの危険性を肯定する事情にはならない。
また,
被告が主張するように,Alephが構成員の総数等を増加させ,若年者に指導を行っているとしても,原告らはAlephと決別したのであり,原告らの危険性を肯定する事情にはならない。そして,原告らは,構成員の総数等を増加させていないし,原告らの中には若年者もいない。したがって,原告らが無差別大量殺人行為に及ぶ危険性は全くなく,原
告らは団体規制法5条1項5号に該当しない。
(4)

Dらの集団を含む本団体について引き続き活動状況を継続して明らかに
する必要があるか否か(争点(4))について
(被告の主張)
本団体については,第5回更新決定後も,いずれの集団においても,一般社会と融和しない独自の閉鎖社会を構築しているほか,本件観察処分に基づく公安調査官の立入検査の際にも,公安調査官が来訪を告げてから十数分以上経ってようやく出入口の開扉に応じたり,公安調査官の質問に対して

答える義務はありません。

などと述べたり,無視したりするなどといった非
協力的な姿勢を組織ぐるみでとり,公安調査官の検査に対し極めて不誠実な対応をしたことなどが認められ,本団体は,その活動実態を積極的に明らかにしようとせず,その体質は依然として閉鎖的で透明性に欠けるというほかない。
また,本団体は,いずれの集団も,団体規制法5条3項に基づく公安調査
庁長官宛ての報告書において,構成員の一部を殊更記載せず,Dらの集団及びAlephにおいては管理下にある施設の一部を,ひかりの輪においては資産の一部を殊更記載していないなど,不正確な報告を繰り返し,団体の活動の用に供される不動産の利用開始や用途変更に関する事項等については,当該団体の活動に関する意思決定の内容として報告すべきところ,これ
らを報告していないなど,報告義務の懈怠も繰り返しており,依然として欺まん的な組織体質を有すると認められる。Dらの集団について具体的にみると,在家構成員であるK名義でβ施設を賃借し,東京都内に居住する在家構成員の修行場等として利用していたのに,平成29年8月6日付け報告書まで,団体の活動の用に供されている土地及び建物にこれを記載せず,また,平成27年5月以降,原告及びJのほか元Alephの在家の構成員10数名がβ施設に頻繁に出入りしているにもかかわらず,平成29年11月12日付け報告書において,β施設に居住または訪れる人として東京都内に居住する8名を新たに記載したのみであるなど,報告書に不十分な記載をしている。
本団体には,上記のとおり,閉鎖的,欺まん的な組織体質が認められ,そ
の活動状況を把握することが困難な実情にある上,
その組織体質に起因して,
依然として全国各地で地域住民が本団体に対する恐怖感,不安感を抱き,その結果,国に対して本件観察処分の期間の更新を要請するなどしており,これら地域住民の恐怖感,不安感を受け,地方公共団体において,団体規制法5条1項の観察処分を受けた団体に対する調査,命令等を行う権限等を定め
る条例を制定するなど独自の取組が行われている。
これらの事情等に鑑みれば,引き続き本団体の活動状況を継続して明らかにする必要があると認められ,また,Dらの集団について個別にみても,同様に団体規制法5条4項の要件を満たすものである。
(原告の主張)


原告らは立入検査を拒否していないこと
被告は,立入検査における原告らの対応が組織ぐるみの非協力的,不誠実なものであったなどと主張する。
しかしながら,立入検査には強制力がなく,原告らは公安調査官の質問に対して回答する義務がないのであるから,回答拒否等を非難するのは誤
っている。また,そもそも本件更新決定前の立入検査は違法であるから,その拒絶は非難に値しない。
さらに,被告は,検査に着手してから出入口が開扉されるまでの時間を問題にしているが,そもそも被告が参照する調査書自体,原告らの言動のみ記載され,公安調査官の言動等は全く記載されていない一方的な内容であり,信用性が低い。しかも,公安調査官が立入検査に訪れるのは,いつも突然,早朝であり,立入検査に応じる態勢を整えるために時間がかかる
のはやむを得ないことであって,
この点について非難されるいわれはない。
むしろ,原告らが立入検査の受忍義務について争いながら,立入検査を拒絶したことは一度もないことからすれば,原告らは立入検査に協力的であるというべきである。

原告らに不正確な報告や報告義務の懈怠はないこと
平成29年11月12日付け報告書に係る報告までの間,原告らは,Kらとは別に活動していたところ,両者が話し合った結果,一緒に活動していくことになり,そのことを正式に報告するに至ったのであるから,原告らが不正確な報告を繰り返したという事実はない。
また,原告らは,不動産の利用開始や用途については報告しており,原
告らが団体の活動の用に供される不動産の利用開始や用途変更に関する事項等について,
当該団体の活動に関する意思決定の内容
として報告をし
ていないことは,書面の形式という些細な問題にすぎない。
さらに,被告は,原告らが原告の自宅以外の場所で修練等を行っている事実を報告書に記載していないなどと主張するが,原告やJがK宅(β施
設)に出入りしているとしても,それは団体としての活動ではないから,報告義務はない。
そのほか,原告が報告義務を懈怠したことはない。

地域住民の恐怖感,不安感は抽象的なものにすぎないこと
被告の主張する地域住民が原告らに対し抱いているという恐怖感,不安感は,あくまで抽象的なものにすぎず,α市やβ市等において,条例の制定等の独自の取組みが行われていることもない。

小括
以上のとおり,原告らは立入検査に応じており,不正確な報告をしたこと等もない。地域住民の恐怖感等は,オウム真理教のイメージのみに基づくものであって,抽象的なものにすぎない。原告らの活動状況を継続して
明らかにする必要があるとはいえない。
第3
1
当裁判所の判断
本件確認の訴えについて,確認の利益があるか否か(争点(1))について(1)

本件更新決定は,
その内容に照らして原告に本件観察処分の効力が及ぶこ

とを前提とするものであり,本件更新決定のうち原告に関する部分が取り消
されれば,原告に本件観察処分の効力は及ばないことになる。そして,原告は,本件更新決定のうち原告に関する部分の取消しを求めているところ,この請求が認容されれば,原告に本件観察処分の効力が及ばないことの確認を求めずとも,その目的を達することができる。
(2)

これに対し,原告は,本件更新決定が取り消されたとしても,原告に対し
て本件観察処分を事実上適用したり,Dらの集団と原告を切り離し,Dらの集団の原告以外の構成員とされる個々人に対して本件更新決定の事実上の効力を継続させたりする現実の危険性があるとして,本件確認の訴えには確認の利益がある旨主張する。
しかしながら,本件更新決定のうち原告に関する部分が取り消されれば,
原告に対し本件観察処分の効力を及ぼすことはできず,また,原告が代表者であるとされるDらの集団に本件更新決定の効力を及ぼすことができないことも明らかであるから,原告の主張は理由がない。
(3)

以上によれば,
本件確認の訴えは,
確認訴訟によることが適切とはいえな

いから,確認の利益を欠き,不適法である。

2
認定事実
前記前提事実に加え,後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
(1)

オウム真理教の沿革,組織,活動実態等
オウム真理教の沿革,組織規模等
(ア)

オウム真理教は,Eを教祖・創始者として活動を開始して,徐々に
組織を拡大させ,出家制度を創設した。出家信徒(サマナ)は,自己の全財産を布施と称してオウム真理教に寄進し,現世との関わりを一切断った上で,施設内で起居し,Eに絶対的に帰依して修行するとともに,ワークと称してオウム真理教のための無償労働に従事した。他方,在家信徒は,各自の居宅からオウム真理教の支部,道場等に通い,出家信徒の指導の下に,その教義を学び修行していた(以上につき,乙B2の1,C4,5)。
オウム真理教は,平成元年8月29日,宗教法人オウム真理教の
設立の登記をし,平成6年6月頃までに,国内に合計24か所の支部,
道場等を設け,構成員数を出家信徒約1000人,在家信徒約1万人に増大させるなどして,その勢力を拡大した(前記前提事実(1)ア,乙B2の2)。
(イ)

オウム真理教は,構成員に対し,修行の進度や精神の発達度に応じ
て心の成熟や霊性の高さの度合いを示すとするステージという独特の位階(最終解脱者であるEの位階である尊師(グル)を頂点とし,正大師(大乗のヨーガを成就したと認定された者),正悟師(マハームドラー又はジュニアーナ・ヨーガを成就したと認定された者),師(クンダリニー・ヨーガを成就したと認定された者)等の称号があり,平成6年7月以降改正されている。)を与え,この位階制度により,Eを頂点
として位階の高い者が位階の低い者を支配,管理する上命下服の組織構造を有していた。オウム真理教は,このような組織構造の下,出家信徒を教団施設等に集団居住させ(出家制度),構成員を支配,管理し,一般社会と隔絶した独自の閉鎖社会を構築していった(以上につき,乙B2の1・2・5,C5,15,35)。

オウム真理教の教義
オウム真理教の教義は,
原始仏教,
チベット密教,
小乗仏教,
大乗仏教,
秘密金剛乗等の教義を混合したEの説く教えを取りまとめたものであり,その要旨は,主神をシヴァ神として崇拝し,創始者であるEの説く教義を根本とし,全ての生き物を輪廻の苦しみから救済して,絶対自由・絶対幸福・絶対歓喜の世界(マハー・ニルヴァーナ,涅槃の境地)に導くこと(衆
生救済)を最終目的として,シヴァ神の化身であるEに対する絶対的な浄信と帰依を培った上,自己の解脱・悟りに到達する道である小乗(ヒナヤーナ)を修めるとともに,衆生救済を主眼とする道である大乗(マハーヤーナ)及び衆生救済の最速の道である秘密金剛乗(タントラ・ヴァジラヤーナ)の各修行を実践するというものである(乙B2の1・2,6の4・
5・6)。
Eは,その中でも,タントラ・ヴァジラヤーナを最も重視し,これに関する具体的規範である五仏の法則(この中には,悪業を積んでいる魂は早く命を絶つべきであるとするアクショーブヤの法則や,真理の実践を行う者にとっては結果が第一であり,結果のためには手段を選ばないとするア
モーガシッディの法則がある。)の重要性を強調し,タントラ・ヴァジラヤーナを実践すれば必ず最終解脱できる旨を説くとともに,

グルがやれといったこと全てをやることができる状態,例えば,それは殺人を含めてだ,これも功徳に変わるんだよ。

例えば,グルがそれを殺せと言う時は,例えば,相手はもう死ぬ時期に来ている。そして,弟子に殺させることによって,その相手をポアさせる。一番いい時期に殺させるわけだね。

(昭和62年1月4日の説法),わたしたちは,(中略)すべての魂を救済したいと考える。(中略)しかし,時がない場合,それをセレクトし,そして必要のない魂を殺してしまうこともやむなしと考える智慧ある者,あるいは徳のある魂がいたとしてもそれはおかしくはない。(平成5年4月18日の説法)などと,真理のため,また,教祖であり,最終解脱者であるEの指示ならば殺人も許されることを説き,死者の魂はポア
あるいはポワされて高次の精神世界へ転生するなどと説いた(乙B2の1・2,6の8,C2,3)。
そして,Eは,タントラ・ヴァジラヤーナに関する修行方法として,Eが弟子の一人一人の煩悩の特質を見抜いて特別な課題や試練を与え,それを弟子に取り組ませることによって,自己の意思を捨て,Eと心を合一に
することを達成するマハームドラーの修行が重要であることを強調していた(乙B2の1,6の11~13)。

オウム真理教の修行体系等
(ア)

オウム真理教の修行体系は,
Eへの絶対的な帰依を求め,
教学


功徳(喜びのエネルギーのことで,布施・奉仕によって蓄えることができるとされる。),行法・瞑想修行,イニシエーション(グ
ルから修行を行う許可を受けて行われる秘儀の伝授。本来は少数の高弟にのみ伝授される最奥義に当たり,数生,数十生かかる修行を一気に進める働きがあるとされる。その内容としては,超純水甘露水(甘露水と
は,
アストラル・テレポーターという機械を使い,
Eのマントラ
〔真言,
詞章〕のデータを電気信号に変換したものを水に流して作った水。肉体レベルの浄化を徹底的に行うとされる。)を摂取するなどという甘露水イニシエーション,解脱者が被伝授者の体に直接触れ,高次元のエネルギーを移入するというシャクティ―パット等がある。)を修行
の四つの柱として位置付けていた(以上につき,乙C4,37,51,52)。
(イ)

また,オウム真理教の修行体系は,以下のとおり,一般社会から隔
絶された孤立的,閉鎖的なコミュニティーを形成し,出家により一般社会から隔離して構成員の後戻りを困難なものとしつつ,
苛酷な環境の下,
日々,Eへの絶対的な帰依(自己を捨て,Eと同じ見方,考え方をすること)を求め,教義を深く受容させようとするものであった(乙C4~
6)。
a
オウム真理教においては,出家信徒は,極限の布施と称して,
不動産,現金,預貯金を始めとしてテレホンカードに至るまで自己所有の財産を全て布施することが求められ,自己の一般社会における経済的基盤の全てを喪失させられた上で出家していた。

b
そして,出家信徒は,日々与えられていたワークと称する無償
活動に従事しつつ修行をすることを求められ,外部からの情報を遮断され,慢性的な栄養不足や睡眠不足の状態に置かれた中,特別教学システム教本(Eの説法を掲載した教学用教本)やビデオテープ等による修行のほか,長時間の立位礼拝,呼吸法,座法,瞑想等の苛酷
な修行を行い,いわゆるマインド・コントロールの状態に置かれるようになった。

オウム真理教の政治上の主義とその発現
(ア)

オウム真理教は,Eの唱える理想郷(シャンバラ)の建設に向け,
日本シャンバラ化計画を打ち出し,布施集めや勢力拡大を図った。そして,オウム真理教は,平成元年頃には,政治の力を使って衆生救済を実現するため,Eを独裁者とする祭政一致の専制国家を樹立するという政治上の主義を有するに至った(以上につき,乙B2の1・2)。
(イ)

Eは,Eを始めとするオウム真理教構成員合計25名が,平成2年
2月18日施行の衆議院議員総選挙に立候補したがいずれも落選したことや,全国各地でオウム真理教の進出に反対する住民運動が起こったこともあり,
社会に対する反発を強めるようになった。
Eは,
同年頃には,
現行民主主義制度内で政治的支配力を強め日本シャンバラ化計画を実現することは不可能であり,上記(ア)の政治上の主義の実現のためには,武力によって我が国の現行国家体制を破壊し,オウム真理教の活動に反対する勢力は真理の実践を妨げる悪業を積むものであるからこれを抹殺
するしかないとの認識を有するに至り,そのための手段として,ボツリヌス菌や炭疽菌等の生物兵器の開発(平成2年3月頃から),サリンの生成(平成5年11月頃から),サリン量産用プラントの建設(平成6年12月頃),ロシア製自動小銃の模倣品の製造(同年6月下旬頃から)等の武装化を進めた(乙B2の2,C10)。

(ウ)

オウム真理教の構成員は,上記(ア)の政治上の主義を推進する上で
の障害を除去すること等を目的として,Eを首謀者として,両サリン事件を敢行し,不特定多数の者を死傷させたほか,数多くの殺人事件等の犯罪行為を敢行した
(前記前提事実(1)イ,
乙B2の2,
3の2,
C10)

(2)

本件更新決定までの概況
本件観察処分までの概況(平成11年頃まで)
(ア)

宗教法人オウム真理教については,平成7年12月19日,宗

教法人法に基づく解散命令が確定し,その清算手続中の平成8年3月28日,破産宣告がされた。また,公安調査庁長官は,同年7月11日,処分行政庁に対し,
本団体について破防法7条の解散指定請求をしたが,
処分行政庁は,
平成9年1月31日,
同請求を棄却する旨の決定をした。
(以上につき,前記前提事実(1)ウ)
(イ)

オウム真理教は,破防法7条の解散指定請求が棄却されると,パソ
コンショップ等による事業収益を拡大させ,活動拠点を急増させていった。このこともあり,オウム真理教の構成員数は,平成8年11月時点で約1000名(出家信徒約500名,在家信徒約500名)まで減少していたが,平成11年12月の団体規制法制定時頃には,約1500名(出家信徒約500名,在家信徒約1000名)に増加した(以上につき,乙B4の1)。
(ウ)

オウム真理教は,平成7年11月頃から平成8年1月頃までの間,
Eの説法集等を取りまとめた尊師ファイナルスピーチと題する書籍
全4巻を出版,頒布し,平成9年4月以降,構成員に閲読を義務付けていた(乙B2の2)。

上記アの間のEの言動
(ア)

Eは,平成7年11月頃,自己の刑事事件の弁護人を介して,破防
法7条に基づく解散指定処分を受けた後の新団体の名称として,アレフ(ユダヤ文字でアルファを意味する。)とすることを指示した(乙B2の4)。
(イ)

Eは,平成8年5月に行われた破防法に基づく弁明手続における弁
明期日において,オウム真理教には,先ほど述べましたとおり,タントラ・ヴァジラヤーナとして6ヨーガ(中略)がございます。今,私どもは起訴勾留の身でございますけれども,私の説いた内容が一般の信徒に対して誤解を招くとするならば,それはやはり封印しなければならないと考えております。,

私はヴァジラヤーナコースの教学テキストそのものを知らなかったわけですけれども,(中略)完全な封印をしたいと思います。

と述べた(乙B1の5,C5)。(ウ)

その一方で,
東京拘置所に留置中のEは,
接見した弁護士に対して,

私の指示で動く動かないかが決まるということだろうが,そのために私は2歳と3歳の子供を教祖にした。,「破防法が適用されたら,

②教団からもう一度Eを教祖に担ぐ動きを起こすように動いてほしい。,」

ヴァジラヤーナ教学システムは,私の数百ある説法から作っている。元々,五百いくつか説法がある。今は,日本人の常識からみて危険なものは,全て外した方がいい。本質的な部分であっても外していい。根本の道から枝が出ているので,何本かの枝が切り落とされても,全く問題ない。公庁や審査委員会がそこまで理解して判断するとは思えないので,先生方も教義を深く学ばない状態で判断された方がいい。,④

破防法に対しては,二つのグループに分かれ,(中略)第1のグループは第2のグループの敗北が予想されるので,敗北した場合に吸収ができるように準備しておく。,「私が物理的に教団を離れることは本意です。

⑤(中略)また,ノストラダムスに99年真理の弟子達が集まるとありますから,破防法の適用はこの年までなのではないでしょうか。したがって,3年しのげるような体制作りをしっかりと行うべきです。教団をア
レフとオウム真理教のアーと二つに分けるかどうかについては,正大師や妻達と十分に話し合ってください。」,⑥

小さな寺を作るよう言っていたのに,どうして作らなかったのか。

,⑦

例えば,弟子が何をしたら破防法違反になるのか。仏教→他の宗派にもある。教団の分解→名称や教えを別にしても脱法行為になるのか。

などのメッセージを発
信した(B1の1・5)。

本件観察処分から第1回更新決定までの概況(平成12年頃から平成14年頃まで)
(ア)

処分行政庁は,平成12年1月28日,本団体に対する本件観察処
分をした(前記前提事実(2)ア)。
平成12年2月4日,Aleph(宗教団体・アレフ)が正式に発足したこと及びFがその代表者に就任したことが公表された(前記前提事実(1)エ)。
本件観察処分に対し,Alephはその取消しを求める訴えを提起し
たが,東京地方裁判所は,平成13年6月13日,Alephの請求を棄却する旨の判決を言い渡し,同判決は確定した(乙B4の1)。(イ)

Alephは,本件観察処分やその取消訴訟の敗訴判決を受けて,
以下のとおり教団改革を発表した。
a
Alephは,平成12年1月18日,①Eの両サリン事件等の刑事責任については,係争中であるため断定し得ないものの,教団執行部の見解として,関与したのではないかと思われるという認識を有し
ており,②新団体では教祖を置かず,Eは開祖であり,観想の対象・霊的存在であって,信者に指示する存在ではないと位置付け,③危険とされる教義を破棄し,Eが作ったオウム真理教のインドヨーガ,原始仏教,大乗仏教の教えに限定した教典を作成し,信者に周知徹底させ,④従来の信者から改めて入会申込書と無差別大量殺人行為を行わ
ないこと等の誓約書の提出を求め,また,反省の意を示さない重大事件の関与者との連絡を禁止し,⑤長老部を廃止するなどして上層部への権力集中を緩和すること等から成る事件に関する総合的見解表明及び抜本的教団改革の概要と称する教団改革案(以下平成12年改革案という。)を発表した(乙B5の21)。
b
Alephは,平成13年8月24日,①Eの公判傍聴を自粛すること,②尊師ファイナルスピーチを回収すること,③自治体及び地域住民に対する施設の公開及び情報提供を定期的に行うことなどを内容とする宗教団体・アレフ2001年度教団改革の指針を発

表した(乙B1の5,C22)。

c
Alephは,平成14年2月,①祭壇からのEの写真の排除,②Eの書籍,説法,ビデオ映像,マントラ,歌等の使用制限,③Eの公式呼称を旧団体代表とし,尊師,グルの呼称の使用を禁
止することなどを内容とする宗教団体・アレフ活動規定を施行し
た(乙B1の5,C22)


上記ウの間のHの言動等
Hは,平成11年12月29日に広島刑務所を出所し,オウム真理教の運営に携わっていたところ,平成14年1月30日,Fに代わって,Alephの代表者に就任した(乙B1の1,C11)。
Hは,平成12年改革案等を制定するなどして,外形上,Eの影響力を払拭したかのように装いながら,以下のとおり,E及びオウム真理教の教義に対する絶対的な帰依を要求する指導をAleph構成員に対して行い,Alephは,
尊師ファイナルスピーチを使用し,Eを尊師やグルの尊称で呼称し,Eのマントラや映像を使用し続け,真実はEに対する絶対的帰依を維持しつつ,Eの説く教義を広め,Eの意思を実現するこ
とを目的とする活動(以下E隠しという。)を展開していった(乙B1の1)。
(ア)

Hは,平成14年1月26日の説法において,今日は私が正式に正大師に復帰し,代表就任することになった宗教的な意味合いを話す。今後なすべきことは,グルの救済計画の手伝いである。具体的には,長期的なものと短期的なものがある。一つ目は,長期的なものである。これは未来際においても皆さんがグルと一緒に転生し,救済活動の手伝いをしつづけるためのものである。二つ目は,短期的なもので,皆さんの徳をできるだけ増大させ,グルの手伝いをするということである。(中略)来世では,皆さんを再びグルの救済活動に導くのが自分の役割である。E尊師の予言では,私は来世E尊師の弟子としてまた生まれ変わる。(中略)今生まれ変わっている者の中では,私とE尊師の縁がもっとも濃い。(中略)今後の教団を誰が主導するかもE尊師は話していた。それに基づいて,今教団は動いている。(中略)グルが物理的にコンタクトできない状態で,将来どうなるか分からないが,皆さんがしっかりと宗教団体・アレフにいる,グルと極めて縁の濃い者,来世が確定している者に帰依し,称賛し,教えを学び,奉仕し,供養するならば,再び皆さんはグルと真理勝者方の教えに巡り合うことができるだろう。と述べ,質疑応答において,礼拝の対象を問われた際,

礼拝の対象及び観想の対象は,E尊師でいいと思いますね。

と説明したほか,Eとの関係について,皆さんと真理勝者の縁であるE尊師,これを排除して教団が進むことはないだろうと説明した(乙B5の16,C9)。
(イ)

Hは,平成15年1月の説法において,

その教えをね,Eという名色,これを無しで多くの人に広め,多くのエッセンスを理解して,した段階でね,その教えの源になったものは何か,ということを明かす,という形,これをどう考えるかということになる。

と述べた(乙B1の5)。


第1回更新決定から第2回更新決定までの概況(平成15年頃から平成17年頃まで)
(ア)

処分行政庁は,平成15年1月23日,第1回更新決定をした。こ
れに対し,Alephは取消訴訟を提起したが,東京地方裁判所は,平成16年10月29日,Alephの第1回更新決定の取消請求を棄却する旨の判決を言い渡し,その後,同判決は確定した(以上につき,前記前提事実(2)イ,弁論の全趣旨)。
なお,Alephは,平成15年2月6日付けで,ヘブライ語のalephの本来の正確な発音は
アーレフ
であることを理由として,

その名称を宗教団体アーレフに変更した(前記前提事実(1)エ,乙B5の19)。
東京地方裁判所は,平成16年2月27日,Eに対する殺人等被告事件(両サリン事件を含む。)について,Eを死刑に処する旨の判決を宣告した(乙B3の2)。

(イ)

Eの妻であり正大師の位階にあるLが,平成14年10月に刑務所
を出所すると,従来の活動形態を維持し,Eを前面に出して活動することがEに対する真の帰依であるとしてE隠しに反対する姿勢を示して,Eの三女と共にAlephの組織運営に介入するようになり,HのE隠しによる組織運営も新規構成員の獲得や財務運営面で功を奏しなかったことから,Hの活動方針に反対する者が増加していった。このように,Eの家族の組織運営への関与が強まる中,Aleph内では,
Hの考えに賛同する者を中心とした一派であるH派(Hの団体内での名称(マイトレーヤ)の頭文字からM派とも呼ばれる。)とHの方針に反対する反H派
(Eの三女の団体内での名称(アーチャリー)
の頭文字からA派とも呼ばれる。),H派として活動するまでには至らないものの,これに理解を示す中間派と呼ばれる構成員が存在
するようになった(乙B1の1,C12~14,20~22)。

第2回更新決定からひかりの輪の分派に至るまでの概況(平成18年頃から平成19年前半頃まで)
(ア)

第2回更新決定及びEに対する刑事事件等
処分行政庁は,平成18年1月23日,第2回更新決定をした(前記
前提事実(2)イ)。
また,Eに対する殺人等被告事件の1審判決は,平成18年9月15日確定した(乙B1の1)。
(イ)
ひかりの輪の設立
Hは,第2回更新決定がされたこと等を受けて,平成18年4月頃以
降,Alephに対する観察処分等が新規構成員の獲得や現役構成員の減少,収益事業への圧迫,全般的活動の不活発化につながっているとして,教団を存続させ,観察処分等を免れさせるためには,Alephとは別団体の設立が必要であると考えるようになった。Hは,平成19年3月8日,Hを中心とする出家信徒62名,在家信徒3名が同月7日付けで,Aleph代表に就任していたNに対し,Alephから脱退する旨を通知し,
同年5月7日には,
ひかりの輪を設立した旨発表した
(以
上につき,乙B3の60・79,C22~26)。

ひかりの輪の分派から本件更新決定までの概況
(平成19年後半頃以降)
(ア)

Alephの名称変更等
Alephは,平成20年5月20日,その名称をアーレフからAl
ephに改め,従来の活動形態を維持しつつ,各修行を実践して,Eの意思を実現することが重要であって,それがEに対する真の帰依であるとの観点から,Eを前面に出し,Eに対する絶対的帰依を明示的に強調することを活動方針とした(前記前提事実(1)エ,乙B2の4,C22,弁論の全趣旨)。
(イ)

第3回更新決定
処分行政庁は,平成21年1月23日,第3回更新決定をした。これ
に対し,Alephは取消訴訟を提起し,東京地方裁判所は,平成23年12月8日,第3回更新決定のうち,報告事項の決定に関する部分の一部を取り消し,その余の請求を棄却する旨の判決を言い渡した。東京高等裁判所は,平成25年1月16日,上記判決中被告敗訴部分を取り消し,
Alephの請求を棄却する旨の判決を言い渡した
(以上につき,
前記前提事実(2)イ,乙B1の2,弁論の全趣旨)。
(ウ)

第4回更新決定
処分行政庁は,平成24年1月23日,第4回更新決定をした(前記
前提事実(2)イ)。
(エ)

第5回更新決定
処分行政庁は,平成27年1月23日,第5回更新決定をした。これ
に対し,Aleph及びひかりの輪はそれぞれ取消訴訟を提起し,東京地方裁判所は,各取消訴訟において,平成29年9月25日,第5回更新決定のうちひかりの輪に関する部分を取り消す旨の判決を言い渡した。被告はいずれの判決についても控訴をし,東京高等裁判所は,ひかりの輪の提起した取消訴訟において,平成31年2月28日,被告敗訴部分を取り消し,ひかりの輪の請求を棄却する旨の判決を言い渡した(以上につき,前記前提事実(2)イ,甲3,弁論の全趣旨)。
(オ)

原告のAlephからの離脱
原告は,Eの二男のAlephへの復帰をめぐる意見対立の中,名古
屋市内の施設で長期修行を命じられていたが,平成27年1月5日,Jの援助の下,長期修行を脱出してα施設に移り,JらAlephを離脱した者らと活動を開始した。原告,Jらは,代理人弁護士を通じて,同日付けで,Alephに対し,4ヶ月以上が経過しても(中略)修行終了の許しは頂けず,下痢が一ヶ月以上続いたため,診断書を提出した上でせめて修行の環境だけでも変えて欲しいと要望しても聞いて頂けない等の事情が生じたため,(中略)心身の限界を感じ,今回の修行を出ることを決め,αに戻っています。(中略)心身の健康が回復し,今後の方針が確定するまで,当分の間,通知人らとの直接の接触は避け,話し合いは全て当職(注:代理人)を通じて下さい。などとする通知書を送付した。
Alephは,
同年1月23日付けで,
原告,Jらに対し,

無断外泊は実質的に下向と同じになる旨の従来の規定等に基づき,本年1月23日の当団体の合同会議において下向と判断されました。


どとする通知書を送付した。原告,Jらは,代理人弁護士を通じ,同月30日付けで,Alephに対し,今後は,貴団体とは一線を画した上で,αを中心に,通知人ら自身の宗教的理念に基づいた真理の実践を行っていきます。(中略)通知人らは,貴団体の会員を含めた第三者に対し,自分たちの実際に経験したことや,自分たちの宗教的理念等を伝えることは積極的にしていく考えであり,更に通知人らの宗教的理念に賛同してくれる方については,受け入れるつもりですなどとする通知書を送付した(以上につき,甲8,9,乙B2の1・8)。
(カ)

本件更新決定
処分行政庁は,平成30年1月22日,本件更新決定をした(前記前
提事実(2)ウ)。
(3)

原告の状況等
原告のAleph離脱に至るまでの活動等
原告は,昭和61年10月,オウム神仙の会に入信し,昭和63年12月,オウム真理教の出家信徒となり,Alephが設立されると,その出家構成員となり,活動を継続してきた。原告の位階は師の中の師長に次ぐ師長補であり,Alephが提出した公安調査庁長官宛て
の報告書においても,平成12年3月2日付け第1回報告書から平成26年11月13日付け第60回報告書まで,師長補の位階にある幹部構成員として,平成20年8月15日付け第35回報告書から平成26年11月13日付け第60回報告書まで,
役職員
として報告されていた
(以
上につき,甲8,乙B2の11,3の54)。

また,原告は,Alephにおいて,α施設及び東京都杉並区γ所在の施設(以下γ施設という。)の責任者を務めていた(甲8,乙B2の13)。

原告のAleph所属当時の言動
(ア)

原告は,平成19年12月発行のAlephの機関誌ボーディサッ
トヴァ12号において,それから,イニシエーション(秘儀瞑想)のお布施に関して言いますと,(中略)本来は,わたしたちがグルに対してお布施をする,これが先に来ます。そこには目的はありません。そして,グルはその功徳に対してイニシエーションを与えるわけです。なぜグルがイニシエーションをわたしたちに与えるかというと,それは,背景に衆生済度があるからです。-これが,イニシエーションの伝授の正しい流れなんですね。,グルとの縁を深めるという点について,なぜそうなるのかというと,秘儀瞑想の中には,グルに対して功徳を積む(供養),ザンゲする,合一するといった,グルに対する帰依の骨格となる要素がすべて含まれているからです。(中略)わたしたちがこの苦界から救済されていくための“切り札”の一つとして,この秘儀瞑想というものが与えられているわけですから,ぜひとも皆さんには,伝授を受けていない瞑想法があれば伝授を受け,修習していないものについては,どんどん修習していっていただきたいと思います。などと述べている(乙C72)。また,原告は,平成20年2月発行のAlephの機関誌ボーディサ
ットヴァ14号において,グルとのパイプというのは,グルのご意思を実践して初めて維持されるものですし,また,頑張りようによっては太くしていくことも可能です。グルのご意思というのは,当然衆生済度ですし,『多くの魂を引き上げなさい』とおっしゃられているわけですから,それをどうやって一人で実践していくのかっていうことがありますね。,

自己の修行をするだけでなく救済計画を推し進め,かつ,グルの教えを純粋な形で次世代へと残していかなければならないわけですから,なおさらです。

などと述べている(乙C73)。さらに,原告は,平成21年4月発行のAlephの機関誌ボーディサットヴァ28号において,

『特別教学システム(改訂版)』等によって,真理のデータを内側に深く根付かせておくだけでなく,行法もしっかりと行なって,いつもエネルギーを高い状態に保っておくことが必要です。

などと述べている(乙C74)。加えて,原告は,平成22年11月発行のボーディサットヴァ47号において,

例えば,出家した人たちが最も引っ掛かりやすいものの一つに,情がありますよね。これは,人間界だからやはり根深いものがあります。だから,在家でいるうちに,そういう心を捨断しておくと。

,人に対する執着だけでなく,物に対する執着も落としておいた方がいいですね。わたしのころは,出家する際に荷物検査があって,衣装ケース二個分の私物しか認められませんでした。つまり,それを超えるものについては,全部お布施しなければならなかったんです。,結局,どのような環境にいたとしても,自分自身が解脱・悟りに近づいていく,自分自身が高い霊性を具足し心を成熟させていく,そして,グルの救済活動のお手伝いをする-それこそが一番大切なことであり,わたしたち弟子が行なわなければならないことなんです。,

出家してからは,必ずや解脱・悟りを得て,そのエネルギーを救済に向け,世の中をどんどん浄化していっていただきたいと思います。それこそが,グルの救済計画を成功させるただ一つの道だと思いますから。

などと述べている(乙C75)。
(イ)

原告は,平成20年4月27日,横浜市内の施設において,私たち弟子として,いかに,一人一人の人たちが,グルに涅槃しては困るっていう形の実践,ね。祈りだけではチベットも滅びたっていうふうに言ってましたよね。だから,実践として,皆さんが布施,功徳を積む,教学,瞑想を行う,バクティを行う,来道する。こういう形のことが,今,グルに,要するに,信徒さんのデータっていうのはグルに行ってる訳なんですよ。,できるだけ,死刑が止まるような形に私たちが実践することが,これからの皆さん,グルの,長く生きていただくっていう形のね,涅槃されない形になっていくことになるわけなんですね。これを,皆さんは,今日は,肝に銘じていただいて,自分たちの修行というのを,もう一度初心に戻って,やり直していただきたいと思います。などと説法をした(乙C76)。

また,原告は,平成22年2月28日,γ施設におけるE尊師生誕祭において,今日は尊師のご生誕間近ということで,あらためて尊師の必要性,尊師から与えられている恩恵を再確認したいと思う。これからの真理の実践の土台としていただきたい。(中略)今日1日じっくりとグルのことを思っていただきたい。,

修行を成功させるためにも頭頂にグルを掲げるような態度でグルに接していただきたい。

などと説法をした(乙C78)。

さらに,原告は,同年9月26日,γ施設において,尊師に出会い,偉大なグル方に供養させていただける対象がいることの有り難さを学んで,この聖なる法則を与えていただいたことに感謝し,私たちもいつか真の修行者,真の救済者になれるように,尊師の要素を自分の中に拡散できるように本当に努力していただきたいと思います。などと説法を
した(乙C77)。

Aleph離脱後の原告らの活動状況等
(ア)

報告書記載の原告の地位等
公安調査庁長官に対する平成28年2月15日付け第65回(Dらの
集団においては第壱回と表記)報告書において,
原告はDらの集団の代表
者として記載されており,Dらの集団がガンゴートリーという名称の事業所において営む小売業等の収益事業の責任者は原告であるとされている(乙C71)。
(イ)

報告書記載のDらの集団の構成員数
Dらの集団は,公安調査庁長官に対する平成29年11月12日付け
第72回(Dらの集団においては第8回と表記)報告書において,構成員数17名(出家2名,在家15名)と報告していた。同報告書に記載されている構成員のうち,両サリン事件発生前から構成員であった者は少なくとも8名(約47パーセント)であり,17名全員がAlephの構成員であった者である(乙C80)。
(ウ)

Dらの集団の施設
Dらの集団は,Alephと対立して活動を始めた当時,従来から使用してきたα施設のみが修行等をする拠点であったが,
平成27年5月
頃までには,
在家のK名義で賃借していたβ施設を活動拠点とし,
活動
拠点を増やしている(甲8,9,乙B4の13・14)。
(エ)

Dらの集団の勧誘活動等
公安調査官による平成29年9月18日実施のβ施設への立入検査に
おいて,詳細な聞き取り項目のある対象者聞き取りリストと記載された書類,勧誘対象者とみられる人物の氏名,職業,人間関係等の個人情報や真理に繋がる興味・関心・実践等として聞き出した思考傾向等に関する情報が記載されるとともに,V師(ヴィサーカーと
いうホーリーネームを有し,かつ師長補の位階を有する原告のことを指すものと認められる。)に報告したり相談したりしている旨の記載がある書類,勧誘対象者とみられる人物についてのメールを共有するなどし,この方,いかがでしょうかと伺いを立てている旨の内容が記
載された書類,勧誘活動への意欲に言及する記載がある書類が発見された(乙B4の16,C82)。
(オ)

Dらの集団の経済活動
Dらの集団においては,
平成27年1月から平成30年1月までの間,

①セミナー等のイベントを開催した際の収入であるセミナー代
科目,
②カロリーメイトを修法(Eの唱えたマントラ等によって,高次元のエネルギーを注入すること)して一緒に活動している者らに1個400円で販売していたことや,修行するぞプリントタオルを1枚2000円で販売していたこと等の各種物品の販売による物販科目,③その他科目等について,ほぼ毎月売上があり,これらの収入科目の合計
額が毎月20数万円から80数万円に及んでいた(乙C84,85)。(カ)

Dらの集団の教義に係る活動内容等
a
施設の状況等
公安調査官が平成27年から平成29年までに実施した立入検査
において,
α施設及びβ施設について,以下の状況が確認された(乙B
2の10,3の1・33・56,4の17,6の39,弁論の全趣旨)。
(a)


α施設
平成27年4月14日実施の立入検査
祭壇付近の壁に掲出されたEの写真,Eが自身と同一視するよ
う説法していたグヤサマジャ,シヴァ神及びヴィシュヌ神の宗教画の祭壇上への掲出,生死を超える,イニシエーション,マハーヤーナ・スートラ等のEの著書やAlephの機関誌であるボーディサットヴァ48号,72号等を含
む教本等1430冊以上の保管,立位礼拝の詞章の掲示,PSI
3個の保管,検査時におけるマントラの再生,甘露水を製造
するタンクの設置,オウム三唱ビデオ,転生秘儀テープ

等のEの説法映像を収録したDVD等2700本以上の保管等
が確認された。


平成28年11月21日実施の立入検査
祭壇付近の壁に掲出されたEの写真,グヤサマジャ,シヴァ神及びヴィシュヌ神の宗教画の祭壇上への掲出,生死を超える,イニシエーション,マハーヤーナ・スートラ等のEの著書を含む教本等210冊以上の保管,立位礼拝の詞章の掲示,PSIの部品の保管,検査時におけるマントラの再
生,甘露水を製造するタンクの設置,Eの説法映像を収録し
たDVD等410本以上の保管等が確認された。

教材等については,新特別教学システム入門別教学システム入門四~十課問題,特問題と題するファイル,改訂版特別教学システム教本,新・特別教学システム教本,
真理インフォメーション1994.8(MONTHLY真理№40)等の保管が確認された。
(b)
β施設
平成29年9月18日実施の立入検査において,
Eの写真の保管,

グヤサマジャ,シヴァ神及びヴィシュヌ神の宗教画の
保管,生死を超える,イニシエーション,マハーヤーナ・スートラ等のEの著書やAlephの機関誌であるボーディサットヴァ48号等を含む教本等260冊以上の保管,PSI4個の保管,グルヨーガ・マイトレーヤ・イニシエーション等のEの説
法映像を収録したDVD等1600本以上の保管等が確認された。教材等については,改訂版本試・追試,新特別教学システム入門1課~5課特別教学システム入門題するファイル,「新・特別教学システム教本本試・追試などと第7課

ハイエス

ト・ダンマ」,尊師ファイナルスピーチ(Ⅰ~Ⅳ)等の保管が確
認された。
さらに,複数いた在家の者らの中には,Eの写真を所持している
者もいた。
b
保管されていた機関誌及び教学の内容等
(a)

機関誌の内容
Dらの集団は,Alephが発行した機関誌をα施設及びβ施

設で保管していたところ,これらの機関誌には,以下のとおり,EやEの説く教義への帰依の重要性を強調する内容が掲載されてい
た(乙C88,89)。


平成22年12月発行のボーディサットヴァ48号
Eの説法,出家信徒の体験談を引用しながら,

本当に真理と巡り合い,真理を実践したい人は,社会的な条件はどうでもいいから,とにかく出家をして早く至福の生活に入っていただきたいと思います。

などと出家の重要性を強調する内容等が記載されている。


平成24年12月発行のボーディサットヴァ72号
Eの説法を引用するとともに,
東日本大震災を引き合いに出し,
そう遠くない将来に,次なるカルマの解放(中略)が起こることが,容易に推測されるなどと危険をあおった上で,死後の世界でグルに救済されるためには,生きているうちに,グルに対する帰依の実践を徹底的に行なっておく必要があるなどとEに対する帰依の重要性を強調する内容等が記載されている。
(b)

教学の内容
Dらの集団が保管していた教本等には,以下のようなEの説法等

が記載されていた(乙B4の17)。


新・特別教学システム教本第7課ハイエスト・ダンマ

に掲載されたEの説法

さあ,あなたも,もし時間がおありになるなら,この素晴らしいタントラ・ヴァジラヤーナの道を実践してみてはいかがでしょうか。



真理インフォメーション1994.8(MONTHLY真理NO.40)」に掲載されたEの説法すべての衆生を済度するために,ラトナサンバヴァ,アクショーブヤ,アミターバ,アモーガシッディ,ヴァイローチャナの五つの真理勝者の法則,五つの仏陀の法則を実践することができるとするならば,その魂は『なんと偉大なタントラ・ヴァジラヤーナの修行者だ』と絶賛を集めることになるのである。③

尊師ファイナルスピーチⅢに掲載されたEの説法
つまりわたしたちは,すべての魂を,できたら引き上げたいと,すべての魂を救済したいと考える。どうだ。しかし,時がない場合,それをセレクトし,そして必要のない魂を殺してしまうこともやむなし,と考える智慧ある者,あるいは徳のある魂がいたとしても,それはおかしくはない。④尊師ファイナルスピーチⅣ
に掲載された
歌詞集(サマナ用)
のうち進軍

まさに今,ヴァジラヤーナの時代である。すべての魂を悪趣から解放せよ。そのためにはポワしかない。

⑤尊師ファイナルスピーチⅣ
に掲載された
歌詞集(サマナ用)
のうちエマホ
進め悪趣のために進めポワとフォースの限り尽くし功徳に包まれ神の栄光を現わす神の威光に抱かれながらグルの世界へ至る(c)予言のためにエマホ
保管されていたDVD等の内容
オウム三唱ビデオやビデオ教学システム入門には,Eの

説法映像が収録されており,グルヨーガ・マイトレーヤ・イニシエーションでは,Eに対する絶対的帰依が説かれており,転生秘儀テープには,

心においてグルと合一し,言葉においてグルと合一し,そして,行動は,グルがなすであろう行動を実践すべきである。

などとEと合一することの必要性や

来世絶対にグルと同じ世界へ転生するんだということを達成できるためには,当然タントラ・ヴァジラヤーナの実践が必要である。

などとタントラ・ヴァジラヤーナの重要性を説くEの説法映像が含まれていた(乙B3の36,6の22,弁論の全趣旨)。
c
セミナー等の開催
Dらの集団は,平成27年4月12日,α施設において,Eの説法
映像を視聴することなどを内容とする密儀ヨーガの会・7つのプロセスと題するセミナーを実施した(乙B3の59)。また,Dらの集団は,平成27年12月30日から平成28年1月1日までの間,施設において,
α
Eの説く教義に従った修行を行う
年末年始セミナーを実施した(乙B3の57)。

さらに,Dらの集団は,平成29年9月16日から同月18日にかけて,β施設において,Eの説く教義に従った修行を行う秋セミナーを実施した(乙B3の57)。これらに加え,前記(オ)のとおり,Dらの集団には,平成27年1月から平成30年1月までの間,毎月,セミナー代科目による売

上が相当額あった。
(4)

原告離脱後のAlephの状況等
原告離脱後のAlephの状況等は以下のとおりである。


Alephは,Eについて尊師又はグルの呼称を用いているほ
か,Eが定めた規律に則り,Eの意思を忖度しながら活動している(乙B
3の1・4・5)。
また,Alephは,ほとんどの施設において,祭壇上又は祭壇付近の壁にEの写真を掲出し,常にEを意識させながら修行させ,Eが唱えるマントラを再生する中,構成員らに対し,Eへの帰依をうたった詞章を大声で唱和させたり,
立位礼拝を繰り返させたりするなどし,生死を超える」
,「イニシエーション及びマハーヤーナ・スートラを始めとするEの説法が収録されたEの著書やEの説法が収録されたCD,DVD等を使用し,特別教学システムなどとして,Eの教えを修習・暗記させ,PSIを用いた修行をし,
甘露水と称する飲料水を摂取させるなどオウム真
理教のイニシエーションを継承し,構成員に対し,E及びEの説く教義へ絶対的に帰依し,Eの意思を実現することの重要性を強調する指導をしている(乙B3の1・4~11・14・16~18・23~40・42~5
1,6の22・23,8の5)。

Alephは,運営全般に係る事項について,師以上の位階にある出家した構成員を中心に構成されている合同会議において,また,在家の構成員の指導に係る事項等については,正悟師らを中心に構成さ
れている道場会議において,Eの意思を推し量りながら決定している(乙B2の1・6)。

Alephが公安調査庁長官に対し平成29年11月14日付けで提出した第72回報告書には,役職員として23名の者が報告されているが,これらの者は全て地下鉄サリン事件以前からオウム真理教の信徒であった
ものである。また,Alephが同報告書で報告した構成員は,合計1254名であるところ,
このうち出家した構成員184名のうち169名
(約
91.8%)が地下鉄サリン事件以前からオウム真理教に加入していた者であり,在家の構成員1070名のうち269名(約25.1%)が地下鉄サリン事件以前からオウム真理教に加入していた者である(乙C46)。

3
Dらの集団が団体規制法にいう団体に該当すること等により,本団体に包摂されるか否か,その他,Dらの集団が本団体に包摂されるとすることは違法か否か(争点(2))について
(1)

団体規制法にいう団体の意義等
団体規制法は,
団体について,
特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体又はその連合体と規定するところ(4条2項),同法
が観察処分やその期間更新(以下観察処分等という。
)の対象としてい
るのは,その役職員又は構成員が団体の活動として過去に無差別大量殺人行為を行った団体であり,現在も無差別大量殺人行為の実行に関連する危険な要素を有している団体であること(1条,5条1項,4項)も考慮すれば,
特定の共同目的としては,多数人の集団に,個々の構成員個人の
意思とは離れて独自に形成され,又は存在する目的であって,構成員各人
が当該集団としての行動をする際の指針となり得ると評価できる程度の特定の共同目的があれば足りると解される。また,
結合体としての多数人
の集団の結び付きの強さの程度としては,各構成員がこの共同目的を達成するためにこれに沿った行動をとり得る関係にあることを要するところ,特定の共同目的が個々の構成員個人の意思とは離れて独自に形成され,又
は存在し,各構成員がこのような共同目的に沿った行動を行うには,当該集団において,構成単位である個人を離れて組織体としての独自の意思を決定し得ることがその前提となるものであるから,
結合体というには,
そのような組織体としての独自の意思を決定し得るものであることを要するものと解される。

したがって,団体規制法4条2項にいう継続的結合体とは,多数人の組織体であって,その構成単位である個人を離れて組織体としての独自の意思を決定し得るもので,相当の期間にわたって存続すべきものをいうと解される。

次に,団体規制法は,その規制が思想,信教,集会,結社等の国民の基本的人権に重大な関係を有するものであり,これらの権利が不当に制限されてはならないこと(2条,3条参照)から,観察処分の期間について3年を超えないものとするとともに,これを超えて観察処分を継続するためには更新の手続を経ることを要するものとし,更新の要件として,①当該
団体がその更新時において5条1項各号のいずれかに該当すること,②引き続き当該団体の活動状況を継続して明らかにする必要があると認められることを要するものと定めている(同条4項)ところ,同法がその規制の対象となる団体について特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体又はその連合体と規定しているのは,観察処分後に構成員の変動,名称や組織の変更,分派,分裂,新団体の設立等の事態が生じることが想定されることに鑑み,これらのような事態があっても継続して規制を受け得るものとしなければ,
規制を容易に潜脱することが可能となり,
同法の目的を達成することができなくなってしまうためであると解される。そうすると,
多数人の継続的結合体又はその連合体には,観察処分を
受けた当時に存在していた団体(以下当初団体という。
)のみならず,

その後に構成員の変動,名称や組織の変更,分派,分裂,新団体の設立等がされた結果,その後に存在することとなった団体も含むものと解すべきである。また,分派,分裂,新団体の設立等により複数の団体が存在することとなった場合には,これらの団体間に対立関係が生じている事態も通常想定し得ることに照らすと,これらの団体に観察処分の効力が及ぶため
には,これらの団体間に相互の意思連絡,協同関係等が存することを要するものではなく,それぞれの団体が特定の共同目的を有し,当初団体との連続性を有することにより,観察処分の対象とされた団体に包摂されるものと評価することができれば足りると解するのが相当である。他方,団体規制法上の規制について同法の目的を達成するために必要な最小限度
において行うものとする観点(同法2条,3条1項参照)からは,分派,分裂,
新団体の設立等により更新時に存在することとなった複数の団体が,いずれも観察処分の対象団体に包摂されると評価される場合に,その対象団体に対する更新決定の効力が更新時に存在することとなった上記複数の団体に及ぶには,これらの団体がそれ自身として更新の要件を満たしてい
るか,あるいは,更新の要件を満たす他の包摂される団体と同視することができるような事情が存することを要するものというべきである。(2)

オウム真理教について
前記認定事実(1)イによれば,
オウム真理教の教義は,
Eに絶対的に帰依
し,かつ,最終目的である衆生救済を実現するためにはタントラ・ヴァジラヤーナの実践が不可欠であるとした上で,その具体的規範として,結果のためには手段を選ばず,殺人を行うことも肯定されるとする内容を含む
五仏の法則を説き,殺人の実行もEの意に沿うものであれば正当化されるというものであり,その内容は反社会的で危険なものであることが認められる。

次に,前記認定事実(1)ウによれば,オウム真理教の修行体系等は,出家制度により一般社会から隔絶された孤立的,閉鎖的なコミュニティーを形
成し,出家した構成員の後戻りを困難なものとしつつ,苛酷な環境の下,日々,Eへの絶対的な帰依(自己を捨て,Eと同じ見方,考え方をすること)
を求め,
上記アの反社会的で危険な教義を不可逆的に深く受容させて,
構成員の犯罪に対する反対動機の形成を無力化するものであったということができる。前記認定事実(1)エのとおり,オウム真理教の構成員らは,こ
のような修行の結果,衆生救済を実現し,Eを独裁者とする祭政一致の専制国家を樹立する上での障害を除去すること等を目的として,Eを首謀者として無差別大量殺人行為である両サリン事件等の犯罪行為を組織的に敢行するに至ったものである。

前記前提事実(2)ア及び別紙2第2のとおり,
本件観察処分は,
対象団体
をEを教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体(本団体)として,平成12年1月28日付けでされたものであ
るところ,前記ア及びイによれば,オウム真理教は,衆生救済を実現し,
Eを独裁者とする祭政一致の専制国家を樹立する目的と密接不可分なオウム真理教の教義を広め,
これを実現することを共同目的としており,
また,
団体規制法5条1項所定のその団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体に該当し,本団体に包摂されていたことは明らかである。
(3)

Alephについて
前記前提事実(1)エのとおり,
Alephが正式に発足した旨公表された
のは,
本件観察処分がされた直後である平成12年2月4日であるところ,前記認定事実(2)イのEの言動に照らせば,
Alephは,
Eの指示により
オウム真理教の後継団体として設立されたものと認められ,その発足当時において,本団体に包摂されるものであったと認められる。


次に,第1回更新決定から本件更新決定までの各更新決定は,いずれもAlephが本団体に包摂されることを前提とするものであるところ(弁論の全趣旨)
,前記認定事実(2)ウ,エ及びキ並びに(4)ア及びイのとおり,Alephは,
E隠しを展開していたが,次第にEへの絶対的帰依を前
面に出すようになった。
前記認定事実(4)アのとおり,
本件更新決定時にお

いても,Alephは,ほとんどの施設において,祭壇上又は祭壇付近の壁にEの写真を掲出し,常にEを意識させながら修行させ,Eが唱えるマントラを再生する中,構成員らに対し,Eへの帰依をうたった詞章を大声で唱和させたり,立位礼拝を繰り返させたりするなどするほか,Eの説法を収録した教材を使用し,さらに,PSIを用いた修行をし,
甘露水と

称する飲料水を摂取させるなど,オウム真理教のイニシエーションを継承していたのであって,オウム真理教と同様の修行や儀式が行われていたものである。また,前記認定事実(4)イ及びウのとおり,Alephは,オウム真理教と同様,位階制度を運営の根本に置いていたものと認められ,さらに,その構成員にも地下鉄サリン事件以前からオウム真理教の信者であ
った者を多数含んでおり,オウム真理教との同質性が認められる。そうすると,Alephは,その設立から本件更新決定までの間においても,本団体に包摂されているものと認められる。
(4)

Dらの集団について
はじめに
前記認定事実(2)キ(オ)のとおり,
原告は平成27年1月5日,
Jの援助
を得てAlephに命じられた長期修行を抜け出し,Alephは同月2
3日,原告を下向者と認定し,原告も同月30日付けでAlephに対し一線を画して活動する意思を示している。このような経緯に照らすと,Dらの集団が実質的にAlephから分派,分裂し,活動を開始したのは,第5回更新決定がされた同月23日より後の同月30日頃であると認められる。その後,原告を中心とする集団(Dらの集団)も本団体に包摂され
ることを前提として本件更新決定がされている。
そこで,
前記(1)の解釈を前提として,
Dらの集団が本団体に包摂される
か否か検討する。

Dらの集団が団体であるか
(ア)

前記認定事実(2)キ(オ)のとおり,
原告は,
Alephを離脱する際,

Alephに対する平成27年1月30日付け通知書において,貴団体の会員を含めた第三者に対し,自分たちの実際に経験したことや,自分たちの宗教的理念等を伝えることは積極的にしていく考えであり,更に通知人らの宗教的理念に賛同してくれる方については,受け入れるつもりですと表明している。このことからすれば,原告は,Alephを離脱後,原告を中心とする集団を形成し,オウム真理教の教義を広める活動をする方針を有していたものと認められる。
(イ)

また,前記認定事実(3)ウ(エ)によれば,Dらの集団は,
対象者聞き取りリストと題する詳細な聞き取り項目を設けたリストを用いるなどし,原告に対し,勧誘活動の進捗状況について報告したり,集団で情報を共有したりし,組織的な勧誘活動をしていたことが認められる。そして,前記認定事実(3)ウ(イ)のとおり,Dらの集団は,公安調査庁長官に対する平成29年11月12日付け第72回報告書においては,構成員数が17名である旨報告しており,相応の人数で共に活動しているものと認められる。
さらに,前記認定事実(3)ウ(ウ)のとおり,Dらの集団は,原告のAl
eph離脱時はα施設を活動拠点としていたが,その後β施設も活動拠点とし,活動拠点を増やしている。
(ウ)

そして,前記(ア)及び(イ)の事実によれば,Dらの集団は,オウム
真理教の教義を広め,これを実現するという共同目的を有するものと認められる。

(エ)

加えて,
前記認定事実(3)ウ(オ)及び(カ)cのとおり,
Dらの集団に

は,セミナー代等の科目による毎月数十万にも上る高額の収入があり,その一方で,多数回に及ぶセミナーの開催等による費用を支出しているものと認められるところ,収入及び支出の状況等からすれば,これらの収入及び支出は個人ではなく,集団に帰属するものと認められる。
(オ)

以上によれば,Dらの集団は,オウム真理教の教義を広め,これを
実現するという共同目的のため,個々の構成員個人の意思を離れた組織体として,
独自の意思を決定し,
勧誘活動を推進し,
活動拠点を増やし,
資金調達を行い,各種イベントを開催するなどの継続的な活動をしており,その状況に照らし相当の期間にわたって存続すべきものといえるか
ら,
特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体
,すなわ
ち団体規制法にいう団体であると認めることができる。

Dらの集団が本団体に包摂されるか
(ア)

前記認定事実(3)ア及びイによれば,
Dらの集団の中心である原告は,

Alephに所属していた際,Eに対し絶対的に帰依しており,構成員に対し,修行を積み,Eの意思である衆生救済を図ることを推し進めることなどを指導していたものと認められる。そして,前記認定事実(2)キ(オ)のとおり,原告はAlephを離脱したが,それはEの二男のAlephへの復帰をめぐる対立が原因であり,離脱に当たり,原告とAlephとの間でEに対する絶対的帰依やオウム真理教の教義の受容をめぐって対立があったことを認めるに足りる証拠はない。また,前記認定事実(3)ウ(イ)のとおり,
本件更新決定直前にDらの集団が構成員とし
て報告した者は,17名(出家構成員2名,在家構成員15名)であるところ,このうち8名が両サリン事件以前からのオウム真理教の信徒であり,また,構成員全員がAlephの構成員であったというのである
から,Dらの集団は,もともとオウム真理教の教義を深く受容する者らによって構成されているといえる。
また,前記認定事実(3)ウ(カ)aによれば,Dらの集団は,施設内にEの写真やEを投影した神仏の宗教画を掲出し,これらを共に活動する者に対して示すなどし,Eに対する個人崇拝を浸透させているものと認め
られる。
さらに,前記認定事実(1)ウ並びに(3)ウ(カ)a及びbによれば,Dらの集団は,Eの説法を収録したり,Eに対する帰依を説いたりしている教本,機関誌,DVD等を保管している上,立位礼拝,PSI,甘露水等を用いた修行を行うなど,オウム真理教と同様の修行を続けているも
のと認められる。
これらのことからすれば,Dらの集団に属する者のEに対する絶対的帰依やオウム真理教の教義の受容については,いずれもAleph所属時と変化はないものというべきである。
(イ)

以上のとおり,Dらの集団は,構成員全員がAlephに所属して
いた者である上,Eに対する絶対的帰依やオウム真理教の教義の受容に変化がない上に,前記イ(ウ)のとおり,オウム真理教の教義を広め,これを実現するという共同目的を有していることからすれば,オウム真理教やAlephとの連続性を有し,本団体に包摂されるものと認めることができる。

原告の主張について
(ア)

原告は,被告による団体の意義の解釈について,法律上の権利

や効果の帰属主体よりも範囲を広げて,団体規制法が禁止する拡張解釈(同法2条)
をするものである旨主張しており,
この主張は前記(1)の解
釈に対しても当てはまるものと解される。
しかしながら,団体規制法4条2項は,同法にいう団体について,特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体又はその連合体と定めており,その文言からして,必ずしも法律上の権利や効果の帰属主体に限られるものではないことは明らかである。
そして,
前記(1)
の解釈は,同法の目的について,それを達成するために必要な最小限度において行うものとする観点から導かれるものであり,拡張解釈に当た
るものとはいえない。
(イ)

また,原告は,団体規制法の解釈に関する被告の主張に対して,オ
ウム真理教を信仰し,その修行体系を実践していることを理由としてDらの集団が本団体に包摂されるものと認めることは,信仰活動に着目して極めて広範に同法の効力を及ぼすものであり,原告の信教の自由を侵害し,憲法20条に違反するとともに,原告の結社の自由を侵害し,憲法21条1項に違反する旨主張しており,
この主張は前記(1)の解釈に対
しても当てはまるものと解される。
そこで検討すると,憲法20条が保障する信教の自由は,内心における信仰の自由にとどまる限りは絶対的な保障を受け得るものの,それに
とどまらない外部的行為すなわち宗教上の行為や宗教上の結社については,絶対無制限のものではなく,公共の福祉の観点から必要かつ合理的な制約を受けるものと解するのが相当である(最高裁昭和36年(あ)第485号同38年5月15日大法廷判決・刑集17巻4号302頁参照)そして,

信教の自由を制約する法律の規定が公共の福祉による必要
かつ合理的なものといえるかどうかは,当該法律について,①規制目的の内容と規制の必要性,②規制される自由の内容及び性質,③具体的な規制の態様及び程度,④規制手続の内容等を比較衡量して決するべきである。
団体規制法は,団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体につき,現在も無差別大量殺人行為の実行
に関連性を有する危険な要素を有している場合に,
必要な処分を行って,
迅速かつ適切に対処することを目的としたものであり
(1条)その立法

の必要性があるものと認められる。また,観察処分等の対象が宗教団体であったとしても,同法は,過去に団体の役職員や構成員が無差別大量殺人行為を当該団体の行為として行った団体で,現在も無差別大量殺人
行為の実行に関連性を有する危険な要素を有しているという世俗的側面だけに着目して,無差別大量殺人行為に及ばぬよう専ら世俗的目的から観察処分等の規制を及ぼすものであり,当該団体や信者の信教の自由に介入する目的のものとはいえない。
さらに,団体規制法の定める観察処分等は,団体に対し,当該団体の
役職員の氏名,住所及び役職名並びに構成員の氏名及び住所,当該団体の活動の用に供されている土地及び建物の所在・地積(土地について)・
規模(建物について)
・用途,当該団体の資産及び負債等の当該団体の活
動に関する一定事項の報告義務と当該団体の所有又は管理する土地又は建物への立入り,設備,帳簿書類等の検査の受忍義務を課すにとどまり
(同法5条2項,3項,5項,7条2項)
,当該団体の結成や活動そのも
のを制約するものではなく,専ら当該団体の世俗的側面における活動状況を解明するものとして行われるものになっており,現在も無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素を有している団体の活動状況を明らかにさせるには必要なものであり,かつ,その程度も合理的な範囲内にとどまるといえる。
加えて,観察処分等の手続は,調査機関,請求者側の公安調査庁とは
別個の組織であり,準司法機関的性格(公安審査委員会設置法1条,3条から5条まで参照)
を有する処分行政庁の下で,
対象団体に意見陳述,
証拠提出の機会等を付与するなど団体規制法3章の手続規定に基づいて行われ,手続の適正さも担保されている。
そして,団体規制法に係る前記(1)の解釈も,あくまで,団体の世俗的
側面だけに着目して,無差別大量殺人行為に及ばぬよう専ら世俗的目的から観察処分等の規制を及ぼすものであり,当該団体の信教の自由や結社の自由に介入するものではない。
以上によれば,
前記(1)の解釈を含めた団体規制法による観察処分等は,
必要かつ合理的なものであって,合理的な制約といえるから,この解釈を前提として,オウム真理教を信仰し,オウム真理教の修行体系を実践していることなどを理由にDらの集団が本団体に包摂されると認めることは,憲法20条及び21条1項に違反するものとはいえない。
(ウ)

さらに,原告は,被告による団体規制法の解釈について,公安調査
庁長官が本団体に包摂されると解釈した瞬間,突然,本件観察処分の効力が及ぶことになり,適正手続に反し,憲法31条に違反する旨主張しており,
この主張は前記(1)の解釈に対しても当てはまるものと解される。しかしながら,観察処分の対象となっていた本団体に包摂されていた団体から分派,分裂した後も本団体に包摂されている団体について,当
該観察処分の効力が及ぶことになるとしても,分派,分裂前から及んでいた効力が引き続き及ぶにすぎないのであって,突然,分派,分裂後に観察処分の効力が及ぶことになるわけではなく,適正手続に反し,憲法31条に違反するものではない。
(エ)

原告は,原告らが理解しているオウム真理教の教義は犯罪を肯定す
るものではなく,
原告らは両サリン事件を始めとする違法行為について,
オウム真理教の教義上肯定的に評価されるとは考えず,帰依についてもEの宗教家としての側面を重視しているのであって,Eの指示に従って違法行為に従事するという考えはないから,原告らと本団体との間に同一性は認められない旨主張する。
しかしながら,前記ウのとおり,Dらの集団は,Eに対し絶対的に帰
依しているものと認められ,オウム真理教の教義を反社会的で危険な側面も含めて放棄したものとは認められないから,原告の主張は理由がない。
(オ)

原告は,原告とJは,表面的にはオウム真理教時代と類似の修行内
容に従事しているものの,最終奥義とされていたタントラ・ヴァジラヤーナやマハームドラーはEの指示がないため実践できず,イニシエーション等も原告とJのステージでは実践できないため実践しておらず,その修行は本質的には似て非なるものとなっており,原告らと本団体との間に同一性はない旨主張する。
しかしながら,Dらの集団がEに対し絶対的に帰依し,オウム真理教
の教義を受容していることは前述のとおりであり,タントラ・ヴァジラヤーナ,マハームドラーやイニシエーション等を実践していないとしても,Eの指示がないため,あるいはDらの集団の構成員がオウム真理教における実践可能なステージにないためにすぎず,これをもってDらの集団が本団体に包摂されないということはできない。

(カ)

原告は,本件更新決定前から原告に対して一方的に本件観察処分の
効力を及ぼし,強制的な手段に基づき実施した公安調査官の事実調査は違法であるから,本件更新決定前に実施された立入検査等によって採取された証拠の証拠能力が否定される旨主張する。
しかしながら,前記(1)イのとおり,当初団体からの分派,分裂,新団体の設立等により複数の団体が存在することとなった場合には,これらの団体間に対立関係が生じている事態も通常想定し得ることに照らすと,
これらの団体に観察処分の効力が及ぶためには,団体間に相互の意思連絡や協同関係等が存することを要するものではなく,それぞれの団体が特定の共同目的を有し,当初団体との連続性を有することにより,観察処分の対象とされた団体に包摂されるものと評価することができれば足りる。そして,Dらの集団は,第5回更新決定後にAlephから
分離して活動を開始したものであるところ,Alephからの分離後も本団体に包摂されているのであるから,その分離の時点で,Dらの集団に対しては本団体に対する第5回更新決定の効力が及んでいたというべきである。そうすると,第5回更新決定の効力がDらの集団に対して及んでいることを前提として本件更新決定前に実施されたDらの集団に対
する立入検査等は適法であるから,原告の主張は理由がない。
4
Dらの集団を含む本団体が団体規制法5条1項各号に該当するか否か(争点(3))について
(1)

判断枠組み
前記3(1)イのとおり,分派,分裂,新団体の設立等により観察処分の更新
時に存在することとなった複数の団体がいずれも観察処分の対象団体に包摂されると評価される場合に,その対象団体に対する更新決定の効力が更新時に存在することとなった上記複数の団体に及ぶには,これらの団体がそれ自身として更新の要件を満たしているか,あるいは,更新の要件を満たす他の包摂される団体と同視することができるような事情が存することを要するものというべきである。そこで,Dらの集団について,更新の要件の一つである団体規制法5条1項各号に該当するか否かについて検討する。
(2)

団体規制法5条1項1号について
団体規制法5条1項は,過去に,その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行い,現在も,団体の属性として無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険性を有する団体について,
その活動状況を継続して明らかにする必要があると認められる場合に観察処分に付すこととし,その危険性を示す事情として,同項各号の事由を列挙したものである。したがって,同項1号にいう当該無差別大量殺人行為の首謀者とは,当該無差別大量殺人行為の計画遂行に関して主導的役割を担った者を指し,首謀者が当該団体の活動に影響力を有している
とは,観察処分時又は更新決定時において,首謀者の言動が当該団体の活動の基本的方向性を左右する力を有することを指すものと解される。そして,上記首謀者の言動については,現時点における直接的な言動のみに限られることはなく,過去における言動であって,現時点において首謀者本人において否定されていないものも含まれるものと解される。


前記3(2)のとおり,
オウム真理教の教義は,
最終目的である衆生救済の
実現のため,Eを独裁者とする祭政一致の専制国家体制を樹立するという政治上の主義と密接不可分に結び付いており,両サリン事件は,オウム真理教の構成員らが,この政治上の主義を推進する上での障害を除去するこ
とを目的として,Eを首謀者として敢行したものである。したがって,Eは,無差別大量殺人行為である両サリン事件の計画遂行に関して主導的役割を担った者として,その首謀者に該当するものと認められる。
そして,
前記3(4)ウのとおり,
Dらの集団は,
Eに対し絶対的に帰依し,
オウム真理教の教義を受容していることからすれば,Eの言動は,本件更
新決定時において,Dらの集団の活動の基本的方向性を左右する力を有していたと認められる。
以上によれば,Dらの集団は,団体規制法5条1項1号に該当する。(3)

団体規制法5条1項5号について
団体規制法5条1項5号にいう無差別大量殺人行為に及ぶ危険性とは,過去に団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体について,現時点においてその団体の属性として無差
別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素を有していることをいうものと解され,それを超えて,その危険な要素が集積されるなどした結果当該団体が無差別大量殺人行為を実行することそのものについての蓋然性を直接的に問題とするものではないと解すべきである。

前記3(4)ウのとおり,Dらの集団は,Eに絶対的に帰依し,反社会的で危険なオウム真理教の教義を受容していることからすれば,無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素を有するものと認められるから,団体規制法5条1項5号に該当する。

(4)

小括
以上によれば,Dらの集団は,更新の要件の一つである団体規制法5条1
項1号及び5号に該当する(なお,Dらの集団が同項3号及び4号に該当するか否かについては,事案に鑑み判断しないこととする。。

5
Dらの集団を含む本団体について引き続き活動状況を継続して明らかにする必要があると認められるか否か(争点(4))について

上記4のとおり,
Dらの集団は,
団体規制法5条1項1号及び5号に該当し,
本件更新決定時において,団体として無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素を保持しているところ,このこと自体,Dらの集団について,引き続き活動状況を継続して明らかにする必要があることを強く基礎付けるものである。

その上,Dらの集団については,①β施設において,構成員のうち10数名が出入りを繰り返し,同施設の近隣に転居する者やほぼ毎日のように同施設に出入りする者がいるなど,実質的に集団居住に近い形態で活動を行い,同施設で行う修行による騒音で近隣住民に迷惑を掛けているにもかかわらず,修行をしていることを説明していないこと(乙B4の13・14)
,②β施設を集会
所として利用していることについて,同施設のマンション管理組合から,管理規約で禁止される行為であり,止めるよう文書で注意されたが,謝罪や弁明を一切せず,従前と同様に集会所としての利用を継続していること(乙C81)が認められ,これらの事実からすれば,Dらの集団は,一般社会との関係で隔絶性,閉鎖性を有するものといわざるを得ない。そして,Dらの集団については,①東京都内に居住する在家の構成員がおり,その修行場等としてβ施設を
有していたにもかかわらず,平成29年8月6日付け第71回(Dらの集団においては第7回と表記)報告書まで,
団体の活動の用に供されている土地及び建物としてα施設を,
構成員として石川県,富山県及び福井県に居住
する在家の構成員7名のみしか記載しなかったこと
(乙B2の9,
8の38)

②平成27年5月以降,原告及びJのほか,在家の構成員10数名がβ施設に
頻繁に出入りしているにもかかわらず,平成29年11月12日付け第72回(Dらの集団においては第8回と表記)報告書において,β施設に居住または訪れる人として,東京都内に居住する8名を新たに記載したのみであったこと(乙B4の13・15,11)など,不正確な報告を繰り返していることも認められる。

なお,原告は,平成29年11月12日付け報告書に係る報告までの間,β施設に係るマンションの一室を賃借していたKとは別に活動していたところ,両者が話し合った結果,一緒に活動していくことになり,そのことを正式に報告することになったのであるから,原告らが不正確な報告を繰り返したことはない旨主張するが,上記の原告及びJの平成27年5月以降のβ施設への出入
り状況に照らせば,同月以前からKらと共に活動していたことは明らかであり,原告の主張は採用することができない。
以上によれば,Dらの集団については,本件更新決定時において,引き続きその活動状況を継続して明らかにする必要があることが認められる。6
結論
以上のとおり,原告を中心とするDらの集団は,本団体に包摂され,それ自
体で,団体規制法5条1項1号及び5号に該当し,引き続きその活動状況を継続して明らかにする必要があると認められるから,観察処分の更新の要件を満たすものと認められる。したがって,本件更新決定のうち原告に対する部分は適法である。
よって,本件確認の訴えは不適法であるからこれを却下することとし,原告
のその余の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官


裁判官


裁判官

三英明川弘持納有子貫
(別紙1省略)

別紙2
決定目録
第1
1
平成30年1月22日付け公安審査委員会決定
被請求団体等の表示

(1)

被請求団体
Eを教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現すること
を目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体
(2)から(4)は記載を省略
2
主文
(1)

平成15年1月23日付け,平成18年1月23日付け,平成21年1
月23日付け,平成24年1月23日付け及び平成27年1月23日付けで期間更新決定を受けた,平成12年1月28日付け当委員会決定に係る被請求団体を,3年間,公安調査庁長官の観察に付する処分の期間を更新する。(2)

被請求団体は,法(注:無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関す
る法律。以下,別紙2において同じ。
)5条5項において準用する同条3項
6号に規定する公安審査委員会が特に必要と認める事項として,次の事項を公安調査庁長官に報告しなければならない。

被請求団体の構成員に関する出家信徒及び在家信徒の別並びに出家信徒の位階


被請求団体作成のインターネット上のホームページに係る接続業者名,契約名義人の氏名及び掲載の管理・運営責任者の氏名


被請求団体(その支部,分会その他の下部組織を含む。以下,この項において同じ。
)の営む収益事業(いかなる名義をもってするかを問わず,実
質的に被請求団体が経営しているものをいう。
)の種類及び概要,
事業所の
名称及びその所在地,当該事業の責任者及び従事する構成員の氏名並びに各事業に関する会計帳簿を備え置いている場所(その会計帳簿が電磁的記録で作成されている場合には,当該電磁的記録の保存媒体の保管場所)第2
1
平成12年1月28日付け公安審査委員会決定
被請求団体等の表示

(1)

被請求団体
Eを教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現すること
を目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体
(2)から(5)は記載を省略

2
主文
(1)
(2)

被請求団体を,3年間,公安調査庁長官の観察に付する。
被請求団体は,法5条2項5号及び3項6号に規定する公安審査委員会が特に必要と認める事項として,次の事項を公安調査庁長官に報告しなければならない。

被請求団体の構成員に関する出家信徒及び在家信徒の別並びに出家信徒の位階


被請求団体作成のインターネット上のホームページに係る接続業者名,契約名義人の氏名及び掲載の管理・運営責任者の氏名

以上

別紙3
団体規制法の定め
1
1条(目的)
この法律は,団体の活動として役職員(代表者,主幹者その他いかなる名称であるかを問わず当該団体の事務に従事する者をいう。以下同じ。)又は構成

員が,例えばサリンを使用するなどして,無差別大量殺人行為を行った団体につき,その活動状況を明らかにし又は当該行為の再発を防止するために必要な規制措置を定め,もって国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与することを目的とする。
2
2条(この法律の解釈適用)
この法律は,国民の基本的人権に重大な関係を有するものであるから,公共の安全の確保のために必要な最小限度においてのみ適用すべきであって,いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあってはならない。

3
3条(規制の基準)
(1)

1項
この法律による規制及び規制のための調査は,1条に規定する目的を達成
するために必要な最小限度においてのみ行うべきであって,いやしくも権限を逸脱して,思想,信教,集会,結社,表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し,及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を,不当に制限するようなことがあってはならない。

(2)

2項
この法律による規制及び規制のための調査については,いやしくもこれを
濫用し,労働組合その他の団体の正当な活動を制限し,又はこれに介入するようなことがあってはならない。
4
4条(定義)
(1)

1項
この法律において無差別大量殺人行為とは,破壊活動防止法4条1項2号ヘに掲げる暴力主義的破壊活動であって,不特定かつ多数の者を殺害し,又はその実行に着手してこれを遂げないもの(この法律の施行の日から起算して10年以前にその行為が終わったものを除く。
)をいう。
(2)

2項
この法律において団体とは,特定の共同目的を達成するための多数人
の継続的結合体又はその連合体をいう。ただし,ある団体の支部,分会その他の下部組織も,この要件に該当する場合には,これに対して,この法律による規制を行うことができるものとする。
5
5条(観察処分)
(1)

1項
公安審査委員会は,その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として
無差別大量殺人行為を行った団体が,次の各号の掲げる事項のいずれかに該当し,その活動状況を継続して明らかにする必要があると認められる場合には,当該団体に対し,3年を超えない期間を定めて,公安調査庁長官の観察に付する処分を行うことができる。
1号

当該無差別大量殺人行為の首謀者が当該団体の活動に影響力を有していること。

2号
〔略〕

3号

当該無差別大量殺人行為が行われた時に当該団体の役員(団体の意思決定に関与し得る者であって,当該団体の事務に従事するものをいう。以下同じ。
)であった者の全部又は一部が当該団体の役員であること。

4号

当該団体が殺人を明示的に又は暗示的に勧める綱領を保持していること。

5号

前各号に掲げるもののほか,当該団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があること。
(2)

2項
前項の処分を受けた団体は,政令で定めるところにより,当該処分が効力
を生じた日から起算して30日以内に,次に掲げる事項を公安調査庁長官に報告しなければならない。
1号

当該処分が効力を生じた日における当該団体の役職員の氏名,住所及び役職名並びに構成員の氏名及び住所

2号

当該処分が効力を生じた日における当該団体の活動の用に供されている土地の所在,地積及び用途

3号

当該処分が効力を生じた日における当該団体の活動の用に供されている建物の所在,規模及び用途

4号

当該処分が効力を生じた日における当該団体の資産及び負債のうち政令で定めるもの

5号
(3)
その他前項の処分に際し公安審査委員会が特に必要と認める事項

3項
1項の処分を受けた団体は,政令で定めるところにより,当該処分が効力
を生じた日からその効力を失う日の前日までの期間を3月ごとに区分した各期間(最後に3月未満の区分した期間が生じた場合には,その期間とする。以下この項において同じ。
)ごとに,当該各期間の経過後15日以内に,次に
掲げる事項を,公安調査庁長官に報告しなければならない。
1号

当該各期間の末日における当該団体の役職員の氏名,住所及び役職名並びに構成員の氏名及び住所

2号

当該各期間の末日における当該団体の活動の用に供されている土地の所在,地積及び用途

3号

当該各期間の末日における当該団体の活動の用に供されている建物の所在,規模及び用途

4号

当該各期間の末日における当該団体の資産及び負債のうち政令で定めるもの
5号

当該各期間中における当該団体の活動に関する事項のうち政令で定めるもの

6号
(4)

その他1項の処分に際し公安審査委員会が特に必要と認める事項

4項
公安審査委員会は,1項の処分を受けた団体が同項各号に掲げる事項のい
ずれかに該当する場合であって,引き続き当該団体の活動状況を継続して明らかにする必要があると認められるときは,その期間を更新することができる。
(5)

5項
3項の規定は,
前項の規定により期間が更新された場合について準用する。

この場合において,3項中当該処分が効力を生じた日からとあるのは,期間が更新された日からと読み替えるものとする。
(6)
6
6項

〔略〕

7条(観察処分の実施)
(1)

1項
公安調査庁長官は,5条1項又は4項の処分を受けている団体の活動状況
を明らかにするため,公安調査官に必要な調査をさせることができる。(2)

2項
公安調査庁長官は,5条1項又は4項の処分を受けている団体の活動状況
を明らかにするために特に必要があると認められるときは,公安調査官に,同条1項又は4項の処分を受けている団体が所有し又は管理する土地又は建物に立ち入らせ,設備,帳簿書類その他必要な物件を検査させることができる。
(3)

3項以下〔略〕

以上

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