判例検索β > 令和1年(行ヒ)第333号
法人税更正処分取消請求事件
事件番号令和1(行ヒ)333
事件名法人税更正処分取消請求事件
裁判年月日令和3年3月11日
法廷名最高裁判所第一小法廷
裁判種別判決
結果棄却
原審事件番号平成29(行コ)388
原審裁判年月日令和元年5月29日
裁判日:西暦2021-03-11
情報公開日2021-03-11 14:00:04
裁判所の詳細 / 戻る / PDF版
令和元年(行ヒ)第333号
令和3年3月11日

法人税更正処分取消請求事件

第一小法廷判決

主文
本件上告を棄却する
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人清野正彦ほかの上告受理申立て理由について
1
内国法人である被上告人は,平成24年4月1日から同25年3月31日ま
での連結事業年度(以下本件連結事業年度という。)において,外国子会社から資本剰余金及び利益剰余金を原資とする剰余金の配当(以下本件配当という。)を受け,このうち,資本剰余金を原資とする部分(以下本件資本配当という。)は法人税法(平成27年法律第9号による改正前のもの。特に断らない限り,以下同じ。)24条1項3号所定の資本の払戻しに,利益剰余金を原資とする部分(以下本件利益配当という。)は同法23条1項1号所定の剰余金の配当にそれぞれ該当するとして,本件連結事業年度の法人税の連結確定申告(以下本件申告という。)をした。これに対し,所轄税務署長は,本件配当の全額が上記の資本の払戻しに該当するとして,本件連結事業年度の法人税の更正処分(以下本件更正処分という。)をした。
本件は,被上告人が,上告人を相手に,本件更正処分のうち本件申告に係る申告額を超える部分の取消しを求める事案である。
2
(1)

関係法令の定めは,大要,以下のとおりである。
法人税法23条1項柱書きは,内国法人が同項各号に掲げる配当等の額
(同項1号に掲げる金額にあっては外国法人から受けるものを除く。)を受けるときは,その全部又は一部は,その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,益金の額に算入しない旨を規定し,同項1号は,

剰余金の配当(株式又は出資に係るものに限るものとし,資本剰余金の額の減少に伴うもの及び分割型分割によるものを除く。)

の額を掲げる。同法23条の2第1項は,内国法人が同項所定の外国子会社から受ける同法23条1項1号に掲げる剰余金の配当等の額がある場合には,当該剰余金の配当等の額から当該剰余金の配当等の額に係る費用の額に相当するものとして政令で定めるところにより計算した金額(法人税法施行令(平成26年政令第138号による改正前のもの。以下同じ。)22条の4第2項により,剰余金の配当等の額の100分の5に相当する金額)を控除した金額は,その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,益金の額に算入しない旨を規定する。
(2)ア

法人税法24条1項柱書きは,法人の株主等である内国法人が当該法人
の同項各号に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合において,その金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額が当該法人の資本金等の額のうちその交付の基因となった当該法人の株式又は出資(以下株式等という。)に対応する部分の金額(以下株式対応部分金額という。)を超えるときは,その超える部分の金額は,同法23条1項1号に掲げる金額とみなす旨を規定し(以下,同号に掲げる金額とみなされる金額をみなし配当金額という。),同法24条1項3号は,

資本の払戻し(剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)のうち,分割型分割によるもの以外のものをいう。)

(以下資本の払戻しという。)を掲げる。また,同条3項は,株式対応部分金額の計算の方法等は政令で定める旨を規定する。

法人税法施行令23条1項3号は,資本の払戻しの場合における株式対応部
分金額の計算方法について,以下のとおり規定する。
(ア)

まず,資本の払戻しを行った法人(以下払戻法人という。)の当該資
本の払戻しの直前の資本金等の額(以下直前資本金額という。)に下記①に掲げる金額(以下簿価純資産価額という。)のうちに下記②に掲げる金額の占める割合(以下施行令規定割合という。)を乗ずることにより,払戻法人の当該
資本の払戻しの直前の払戻等対応資本金額等(以下直前払戻等対応資本金額等という。)を計算する。なお,施行令規定割合は,直前資本金額が零以下である場合には零と,直前資本金額が零を超え,かつ,簿価純資産価額が零以下である場合には1とする。


当該払戻法人の前期期末時の資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した
金額。ただし,当該前期期末時から当該資本の払戻しの直前の時までの間に資本金等の額等が増加し,又は減少した場合には,その増加した金額を加算し,又はその減少した金額を減算した金額。


当該資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額(以下減少資本剰余金額という。)。ただし,この金額が簿価純資産価額を超える場合には,簿価純資産価額。
(イ)

そして,直前払戻等対応資本金額等を当該払戻法人の当該資本の払戻しに
係る株式の総数又は出資の総額で除し,これに法人税法24条1項に規定する内国法人が当該資本の払戻しの直前に有していた当該払戻法人の当該資本の払戻しに係る株式の数又は出資の金額を乗ずることにより,株式対応部分金額を計算する。(3)

法人税法61条の2第1項は,内国法人が有価証券の譲渡をした場合に
は,その譲渡に係る対価の額と原価の額との差である譲渡利益額又は譲渡損失額は,その譲渡に係る契約をした日(その譲渡が剰余金の配当によるものである場合には,当該剰余金の配当の効力が生ずる日)の属する事業年度の所得の金額の計算上,益金の額又は損金の額に算入する旨を規定し,同項1号は,有価証券の譲渡に係る対価の額は,同法24条1項の規定によるみなし配当金額がある場合には,その金額に相当する金額を控除した金額とする旨を規定する。
また,同法61条の2第17項は,内国法人がその有する株式等を発行した法人の資本の払戻しとして金銭の交付を受けた場合における有価証券の譲渡に係る原価の額は,当該資本の払戻しの直前の帳簿価額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額とする旨を規定し,これを受けて,法人税法施行令119条の9第
1項は,上記金額は,当該資本の払戻しの直前の当該株式等の帳簿価額に当該資本の払戻しに係る同令23条1項3号に規定する割合(施行令規定割合)を乗じて計算した金額とする旨を規定する。
3
(1)

原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
米国デラウェア州リミテッド・ライアビリティ・カンパニー法(以下LLC法という。)に基づき組成された法人であるKyo-yaPacificCompany,LLC(以下KPC社という。)は,被上告人が本件連結事業年度を通じてその出資の持分の全部を保有しており,法人税法23条の2第1項所定の外国子会社に当たる。被上告人は,KPC社及びその子会社から資金を被上告人に還流させることを企図して,税務上の取扱いも踏まえた上で,平成24年(2012年)11月12日,KPC社に対し,総額6億4400万ドルを資本の払戻し(Returnofcapital)としての1億ドルと利益の分配(Dividend)としての5億4400万ドルとに切り分けて分配を行うべき旨等を連絡した。
(2)

KPC社は,その子会社であるKyo-ya

Company,LLC(以下KC社と

いう。)から,利益の配当として6億4400万ドルの送金を受け,更にこれを被上告人に還流するため,平成24年(2012年)11月12日付けで,LLC法に基づき,KPC社の唯一の社員である被上告人との間で,同意書及びこれに添付された各決議書を取り交わした。
上記同意書は,署名者(KPC社の役員ら及び被上告人代表者)が,添付された各決議書について,その効力発生日を同日として採択することに同意することを内容とするものであり,各決議書は,KPC社に対し,資本金の額を減少させ,その減少額を追加払込資本に振り替えた上で,追加払込資本の払戻しとして被上告人に対して1億ドルの分配を行うこと,留保利益から被上告人に対して5億4400万ドルの分配を行うこと等の権限を付与することをその内容とするものであった。なお,追加払込資本は我が国の会社法上の資本剰余金に,留保利益は同じく利益剰余金にそれぞれ該当する。

(3)

被上告人は,平成24年11月14日,KPC社から,本件配当に係る6
億4400万ドル(512億0444万円)の送金を受けた。KPC社は,同月30日付けで,資本から追加払込資本に1億0381万ドルを振り替え,KC社から送金された6億4400万ドルを配当収入とした上で,追加払込資本1億ドル及び留保利益5億4400万ドルをそれぞれ減少させる会計上の処理を行った。(4)

被上告人は,平成25年7月31日,本件申告をした。本件申告における
本件配当の処理は,大要,以下のとおりである。

KPC社の追加払込資本から配当を受けた部分(本件資本配当)である79
億5100万円(1億ドル)は,法人税法24条1項3号の資本の払戻しにより交付を受けた金銭に該当する。KPC社の直前資本金額は2億1105万7771.56ドルであるところ,簿価純資産価額は直前資本金額を下回る9768万4743.50ドルであり,これが減少資本剰余金額を下回ったため,法人税法施行令23条1項3号による計算を行うと,施行令規定割合は1,直前払戻等対応資本金額等は直前資本金額と同額の2億1105万7771.56ドルとなり,被上告人はKPC社の出資の持分の全部を保有しているから株式対応部分金額も同額となる。したがって,みなし配当金額となる部分はないから,本件資本配当の全額が法人税法61条の2第1項にいう有価証券の譲渡に係る対価の額となる。イ
被上告人の本件配当の直前におけるKPC社に対する出資の帳簿価額は20
8億6980万9622円であり,施行令規定割合が1であることからその全額が有価証券の譲渡に係る原価の額となるところ,本件資本配当79億5100万円(有価証券の譲渡に係る対価の額)との差額である129億1880万9621円(備忘価額1円を考慮)を,法人税法61条の2第1項に基づき,有価証券譲渡損失額として損金の額に算入する。

KPC社の留保利益から配当を受けた部分(本件利益配当)である432億
5344万円(5億4400万ドル)は,法人税法23条1項1号の剰余金の配当の額に該当するから,同法23条の2第1項に基づき,当該金額から5%相当額を
控除した410億9076万8000円を益金の額に算入しない。エ
その結果,連結所得金額はマイナス149億6420万3607円,翌期へ
繰り越す連結欠損金額は295億2004万5412円である。
(5)

所轄税務署長は,平成26年4月28日付けで,被上告人に対し,本件資
本配当及び本件利益配当のそれぞれの効力発生日が同一であること等から,本件配当の全額6億4400万ドルが法人税法24条1項3号の資本の払戻しにより交付を受けた金銭に該当するとして本件更正処分をした。その概要は,以下のとおりである。

法人税法施行令23条1項3号による計算を行うと,前記(4)アのとおり株
式対応部分金額が2億1105万7771.56ドルとなるから,その結果,みなし配当金額は,本件配当の額から株式対応部分金額を控除した344億2323万6583円(4億3294万2228.44ドル)となる。

法人税法23条の2第1項に基づき,上記みなし配当金額から5%相当額を
控除した327億0207万4754円を益金の額に算入しない。ウ
本件配当の額からみなし配当金額を控除した167億8120万3417円
(有価証券の譲渡に係る対価の額)と,被上告人の本件配当の直前におけるKPC社に対する出資の帳簿価額208億6980万9622円(有価証券の譲渡に係る原価の額)との差額である40億8860万6204円(備忘価額1円を考慮)を,法人税法61条の2第1項に基づき,有価証券譲渡損失額として損金の額に算入する。

その結果,連結所得金額はマイナス69億0988万7134円,翌期へ繰
り越す連結欠損金額は214億6572万8939円である。
4
原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断して,被上告人
の請求を認容すべきものとした。
法人税法24条1項3号の資本の払戻しとは,その文理からすれば,資本剰余金の額の減少によって行う剰余金の配当,すなわち,資本剰余金を原資とする配当をいうものと解すべきである。そうすると,資本剰余金及び利益剰余金の双方を原資として配当が行われた場合には,資本剰余金を原資とする配当には同号が,利益剰余金を原資とする配当には同法23条1項1号がそれぞれ適用されることになる。もっとも,この場合であっても,いずれの配当が先に行われたとみるかによって課税関係に差異が生ずるようなときには,例外的に,配当全体が資本の払戻しと整理され,同法24条1項3号の規律に服すると解されるが,本件は上記の差異が生ずる場合ではない。したがって,本件資本配当には同号が,本件利益配当には同法23条1項1号がそれぞれ適用されることとなる。
5
しかしながら,法人税法24条1項3号の解釈に関する原審の上記判断は是
認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)

平成17年法律第87号による改正前の商法(以下旧商法という。)
は,株主に対する会社財産の払戻しについて,利益の配当(290条1項)と資本の減少(375条1項1号)とを別個の手続としていた。平成18年法律第10号による改正(以下平成18年改正という。)前の法人税法は,この手続の違いに応じて,23条1項1号の利益の配当と24条1項3号の株式の消却を伴わない資本の減少による払戻しを区別していた。
これに対し,会社法(平成17年法律第86号)は,旧商法における利益の配当については利益剰余金を原資とする剰余金の配当と,株式の消却を伴わない資本の減少による払戻しについては資本金を資本剰余金へ振り替えた上での資本剰余金を原資とする剰余金の配当とそれぞれ整理したため,両者は剰余金の配当(453条)という同一の手続により行われることとなった。そこで,平成18年改正後の法人税法においては,23条1項1号と24条1項3号の適用の区別につき,会社財産の払戻しの手続の違いではなく,その原資の会社法上の違いによることとされた。
(2)

そして,会社法における剰余金の配当をその原資により区分すると,①利
益剰余金のみを原資とするもの,②資本剰余金のみを原資とするもの及び③利益剰
余金と資本剰余金の双方を原資とするものという3類型が存在するところ,法人税法24条1項3号は,資本の払戻しについて

剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)…

と規定しており,これは,同法23条1項1号の規定する

剰余金の配当(…資本剰余金の額の減少に伴うもの…を除く。)

と対になったものであるから,このような両規定の文理等に照らせば,同法は,資本剰余金の額が減少する②及び③については24条1項3号の資本の払戻しに該当する旨を,それ以外の①については23条1項1号の剰余金の配当に該当する旨をそれぞれ規定したものと解される。
したがって,利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当は,その全体が法人税法24条1項3号に規定する資本の払戻しに該当するものというべきである。
以上によれば,利益剰余金及び資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当について,利益剰余金を原資とする部分には法人税法23条1項1号が適用されるとした原審の判断には法人税法の解釈を誤った違法がある。
6
(1)

以上を前提として,本件更正処分の適法性について検討する。
前記3(5)のとおり,本件更正処分は,本件配当の全体が法人税法24条1
項3号に規定する資本の払戻しに該当するとした上で,同項柱書き所定の株式対応部分金額を法人税法施行令23条1項3号の規定に従って計算した結果に基づくものである。そして,その計算においては,KPC社の簿価純資産価額が直前資本金額を下回ったこと等から,直前払戻等対応資本金額等が減少資本剰余金額すなわち本件資本配当の額を上回り,その結果,本件利益配当の額の一部がみなし配当金額ではなく有価証券の譲渡に係る対価の額に算入されることとなっている。(2)

法人税法22条1項は,内国法人の各事業年度の所得の金額は,当該事業
年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする旨を規定し,同条2項は,その益金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,資産の販売等の取引で資本等取引(同条5項)以外のものに係る当該事業年度の収益の
額とする旨を規定する。株主等である法人が受け取る配当は,企業会計上は収益であるから,本来は課税の対象となるべきものであるが,二重課税の防止等の見地から,上記の別段の定めである同法23条又は23条の2の規定により,その全部又は一部が益金の額に算入されないこととされている。
また,同法は,法人の財産のうち株主等から出資を受けた部分(以下資本部分という。)に相当する資本金等の額(2条16号)と,法人がその事業活動により稼得した金額であって株主等に分配することなく留保している部分(以下利益部分という。)に相当する利益積立金額(同条18号)について,それぞれ政令でその算定方法を規定することとし(法人税法施行令8条,9条),これらをしゅん別することを原則としている。
(3)

法人税法24条1項3号は,法人の株主等である内国法人が当該法人から
資本の払戻しにより金銭の交付を受けた場合において,株式対応部分金額を超える部分をみなし配当金額とする。また,資本の払戻しを行った払戻法人においては,当該資本の払戻しの額のうち,直前払戻等対応資本金額等に相当する額が資本金等の額から減算され(法人税法施行令8条1項16号),直前払戻等対応資本金額等を超える部分の金額(みなし配当金額)が利益積立金額から減算されることとされている(同令9条1項11号)。これらの規定は,資本剰余金のみを原資とする配当であっても実質的観点からは利益部分の分配が含まれているものと評価し得ることから,その全部又は一部を受取配当とみなすことにより,配当に係る課税の回避を防止し,適正な課税を実現することをその趣旨とするものであると解される。他方において,利益剰余金にも資本部分が含まれている可能性は否定できないところである。しかし,旧商法上の利益の配当に関する税務上の扱いを定めていた平成18年改正前の法人税法23条1項1号は,旧商法の平成13年法律第79号による改正により資本準備金の取崩しをした上で資本剰余金を原資として利益の配当をすることが可能となった後も改正されることはなく,それが旧商法上の利益の配当の手続に基づいて行われる以上,実質的に資本部分の払戻しであっても通常の利
益の配当と同様に受取配当として扱っていた。そして,会社法施行に伴う平成18年改正後の法人税法23条1項1号においても,利益剰余金のみを原資とする剰余金の配当については,これが全額課税の対象となり得ることを前提に,その全部又は一部を益金の額に算入しないこととし,また,法人税法施行令9条1項8号は,同法23条1項1号の剰余金の配当が行われた場合には,その配当に係る金額を当該配当を行った法人の利益積立金額から減算することとしており,その一部を資本部分の払戻しとして扱うこととはしていない。
(4)

以上によれば,法人税法は,資本部分と利益部分とをしゅん別するという
基本的な考え方に立ちつつも,会社財産の株主への払戻しについて,その原資の会社法上の違いにより23条1項1号と24条1項3号の適用を区別することとし,利益剰余金のみを原資とする払戻しは,23条1項1号により,資本部分が含まれているか否かを問わずに一律に利益部分の分配と扱った上でその全部又は一部を益金の額に算入しないこととする一方で,資本剰余金のみを原資とする払戻しは,24条1項3号により,資本部分の払戻しと利益部分の分配とに分け,後者の金額を23条1項1号の配当とみなすこととするという仕組みを採っているものということができる。
上記の仕組みに照らしてみれば,法人税法24条1項3号は,利益剰余金及び資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当の場合には,そのうち利益剰余金を原資とする部分については,その全額を利益部分の分配として扱う一方で,資本剰余金を原資とする部分については,利益部分の分配と資本部分の払戻しとに分けることを想定した規定であり,利益剰余金を原資とする部分を資本部分の払戻しとして扱うことは予定していないものと解される。
(5)

法人税法24条3項の委任を受けて株式対応部分金額の計算方法について
規定する法人税法施行令23条1項3号は,会社財産の払戻しについて,資本部分と利益部分の双方から純資産に占めるそれぞれの比率に従って比例的にされたものと捉えて株式対応部分金額を計算しようとするものであるところ,直前払戻等対応
資本金額等の計算に用いる施行令規定割合を算出する際に分子となる金額(前記2(2)イ(ア)②)を当該資本の払戻しにより交付した金銭の額ではなく減少資本剰余金額とし,資本剰余金を原資とする部分のみについて上記の比例的な計算を行うこととするものであるから,この計算方法の枠組みは,前記の同法の趣旨に適合するものであるということができる。しかしながら,簿価純資産価額が直前資本金額より少額である場合に限ってみれば,上記の計算方法では減少資本剰余金額を超える直前払戻等対応資本金額等が算出されることとなり,利益剰余金及び資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当において上記のような直前払戻等対応資本金額等が算出されると,利益剰余金を原資とする部分が資本部分の払戻しとして扱われることとなる。
そうすると,株式対応部分金額の計算方法について定める法人税法施行令23条1項3号の規定のうち,資本の払戻しがされた場合の直前払戻等対応資本金額等の計算方法を定める部分は,利益剰余金及び資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当につき,減少資本剰余金額を超える直前払戻等対応資本金額等が算出される結果となる限度において,法人税法の趣旨に適合するものではなく,同法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである。
7
以上説示したところによれば,本件資本配当の額を超える直前払戻等対応資
本金額等に基づいて,本件配当におけるみなし配当金額及び有価証券の譲渡に係る対価の額を計算することは誤りであるといわざるを得ず,被上告人の本件連結事業年度における連結所得金額が本件申告の額を超え,翌期へ繰り越す連結欠損金額が本件申告の額を下回るものと認めることはできないから,本件更正処分のうち本件申告に係る申告額を超える部分は違法である。したがって,その余の点について判断するまでもなく,被上告人の請求を認容すべきものとした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は,結局,採用することができない。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官

深山卓也

裁判官

池上政幸

裁判官

小池


裁判官

木澤克之

裁判官

山口

厚)

トップに戻る

saiban.in